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特表2024-505922移動式のガソリン用途のためのNH3低減触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】移動式のガソリン用途のためのNH3低減触媒
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/94 20060101AFI20240201BHJP
   B01J 35/57 20240101ALI20240201BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20240201BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20240201BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20240201BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20240201BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B01D53/94 222
B01J35/04 301J
B01D53/94 228
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/08 B
F01N3/24 E
F01N3/24 C
F01N3/28 301D
F01N3/28 301A
F01N3/035 A
F01N3/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545993
(86)(22)【出願日】2022-02-01
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2022052373
(87)【国際公開番号】W WO2022167431
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】21154708.8
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】マーロウフ,マナレ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルツ,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥンブヤ,カリファラ
(72)【発明者】
【氏名】ヒルゲンドルフ,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】キンネ,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】シュミッツ,トマス
【テーマコード(参考)】
3G091
3G190
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA17
3G091AB02
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(57)【要約】
本発明は、三元変換触媒(TWC)又は四元変換触媒(FWC)を含み、さらにアンモニア酸化触媒(AMOx)又は選択的接触還元触媒(SCR)を含むガソリンエンジンからのアンモニア排出を低減するための排気ガス処理システム、及びアンモニアを除去することができる排気ガス処理システムを備えたガソリンエンジンからの排気ガスを処理する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子フィルタを備えた三元変換触媒(TWC)又は四元変換触媒(FWC)を含む、ガソリンエンジンからのアンモニア排出を低減するための排気ガス処理システムであって、選択的接触還元触媒(SCR)及び/又はアンモニア酸化触媒(AMOx)を含むアンモニア低減触媒を含むことを特徴とする、排気ガス処理システム。
【請求項2】
前記三元変換触媒(TWC)又は前記四元変換触媒(FWC)が、基材、及び前記基材上に存在する少なくとも1つの触媒ウォッシュコートを含み、前記触媒ウォッシュコートが、少なくとも1つの貴金属又は白金族金属(PGM)、酸素貯蔵化合物及び耐火性金属酸化物を含む、請求項1に記載の排気ガス処理システム。
【請求項3】
前記三元変換触媒(TWC)又は前記四元変換触媒(FWC)が近接結合(CC)位置にある、請求項1又は2に記載の排気ガス処理システム。
【請求項4】
前記三元変換触媒(TWC)を前記微粒子フィルタに被覆して前記四元変換触媒(FWC)を形成する、請求項1から3のいずれか一項に記載の排気ガス処理システム。
【請求項5】
前記微粒子フィルタが前記三元変換触媒(TWC)で被覆されず、そして前記三元変換触媒(TWC)の下流に位置する、請求項1から3のいずれか一項に記載の排気ガス処理システム。
【請求項6】
前記アンモニア低減触媒が、前記三元変換触媒(TWC)又は前記四元変換触媒(FWC)の下流に位置する、請求項1から5のいずれか一項に記載の排気ガス処理システム。
【請求項7】
前記アンモニア低減触媒が床下(UF)位置にある、請求項1から6のいずれか一項に記載の排気ガス処理システム。
【請求項8】
前記微粒子フィルタが前記三元変換触媒(TWC)の下流、且つ前記選択的接触還元触媒(SCR)及び/又は前記アンモニア酸化触媒(AMOx)を含む前記アンモニア低減触媒の上流に位置する、請求項1から7のいずれか一項に記載の排気ガス処理システム。
【請求項9】
前記選択的接触還元触媒(SCR)及び/又は前記アンモニア酸化触媒(AMOx)を含む前記アンモニア低減触媒が独立型触媒として構成される、請求項1から8のいずれか一項に記載の排気ガス処理システム。
【請求項10】
前記基材がウォールフローフィルタ基材である、請求項2から9のいずれか一項に記載の排気ガス処理システム。
【請求項11】
前記選択的接触還元触媒(SCR)が貴金属又は白金族金属を含まない、請求項1から10のいずれか一項に記載の排気ガス処理システム。
【請求項12】
前記選択的接触還元触媒(SCR)が、金属で促進された分子篩、好ましくは鉄で促進された又は銅で促進されたゼオライトを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の排気ガス処理システム。
【請求項13】
前記アンモニア酸化触媒(AMOx)が、貴金属又は白金族金属を、前記AMOx触媒の体積の貴金属又は白金族金属の総質量として計算して、約0.1g/ft~約10g/ft、好ましくは約0.3g/ft~約5g/ft、より好ましくは約0.5g/ft~約3g/ftの貴金属又は白金族金属の総担持量で含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の排気ガス処理システム。
【請求項14】
前記アンモニア酸化触媒(AMOx)が、乾燥AMOx触媒成分の質量に対して、約0.01質量%~約2質量%、好ましくは約0.05質量%~約1質量%、より好ましくは約0.08質量%~約0.5質量%の貴金属又は白金族金属の総担持量を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の排気ガス処理システム。
【請求項15】
アンモニアを含むガソリンエンジンからの排気ガス流を提供する工程と、アンモニアを含む前記排気ガス流を請求項1から14のいずれか一項に記載の排気ガス処理システムと接触させて、前記排気ガス流中のアンモニア排出を低減させる工程とを含む、ガソリンエンジンの排気ガス流を処理するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンエンジンの排気ガス処理システムの分野に関する。本発明はまた、ガソリンエンジンからの排気ガス排出の処理又はアンモニア除去の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動式のガソリン用途からの排気ガスに対する排出規制は以前からますます厳しくなっており、今後もさらになお厳しくなることが予想される。よって今後はさらに効果的な自動車用の排気ガス処理システムが求められるであろう。窒素酸化物(NOx)、未燃炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び粒子状物質を含む、ガソリンエンジンからの主要な汚染物質を除去するための効率的な方法は、いわゆる三元変換触媒(TWC)又は四元変換触媒(FWC)をベースとして過去に開発及び商業化されてきた。
【0003】
しかし、将来の排出規制では、排気ガスからの二次排出物に対し、より厳しい制限が課される可能性もある。例えば、EURO7のようなさらに厳しい欧州の排出基準、又は米国における同等の規制が、アンモニア(NH)のテールパイプ排出に制限を課すかもしれない。
【0004】
アンモニアが、人、生態系及び植生に有害な影響を及ぼす可能性があることは、研究によって明らかになっている。アンモニアは大気汚染物質として、大気中の粒子状エアロゾルの形成に寄与し、ひいては人の健康に影響を及ぼす可能性がある。さらに、アンモニアは、土壌、水生生態系、森林及び植生に潜在的な変化をもたらす酸性雨及び富栄養化に寄与する。NHの臭気閾値は、空気中で20ppmである。眼及び喉への刺激は100ppmを超えると顕著になり、400ppmを超えると皮膚刺激が発生し、そしてIDLHは空気中500ppmである。NHは、特にその水溶液の形態で苛性である。さらに、排気触媒の下流にある従来の排気ガス処理ラインの低温領域でアンモニアと水が凝縮すると、排気ガス処理ラインの安定性を含む腐食性混合物が形成される可能性がある。
【0005】
排気ガスからNOxを除去するための確立されたアプローチの1つは「選択的接触還元」(SCR)であり、ここで窒素酸化物の触媒還元は、適切な量の酸素の存在下で尿素又はアンモニアそのもののような還元剤を噴射し、NOxを窒素と水蒸気に変換することを伴う:
4NO+4NH+O→4N+6H
NO+NO+2NH→2N+3H
【0006】
よって、現在使用されている排気ガス処理ラインの未解決の問題の1つは、NOxをパージするのにアンモニア噴射が使用されるSCR触媒からの潜在的な「アンモニアスリップ」に起因する。
【0007】
しかし、アンモニア噴射システムのない排気ガス処理システムにおいてさえ、水素ガスが複数の窒素酸化物と反応してアンモニアを形成する際に、複数の経路でガソリンエンジンの排気ガス中にアンモニアが形成され得る。水素は、ガソリン用途の場合と同様に、定期的な排気処理によって促進される、いわゆる水性ガスシフト反応中に貴金属部位上で生成される。経路には、炭化水素が水と反応して水素を形成する際の、一酸化炭素及び水蒸気からの反応及び/又は350℃よりも高温での水蒸気改質も含まれる。例えば、一酸化窒素(NO)及び二酸化窒素(NO)は、水素の存在下で反応してアンモニアを生成できる。
【0008】
排気ガス中に形成されるアンモニアの量は、エンジンのキャリブレーション及び触媒組成に依存する。排気流中の一酸化炭素及び水素の有効濃度、リッチ過渡状態の継続時間、空燃比、温度及び空間速度はすべて、アンモニアの形成に寄与する要因である。さらに、白金族金属(PGM)及び酸素貯蔵成分(OSC)の相互作用も、水性ガスシフト反応における水素形成に影響を与え得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって、将来の規制におけるアンモニアの具体的な最終規制値はまだ設定されていないものの、将来的に自動車のアンモニアのテールパイプ排出量を大幅に削減するためには、既存の排気ガス処理システムを改善することが合理的である。
【0010】
NOx、HC及びCOのような汚染物質を効果的に除去する必要がある場合、多くの複雑な化学反応が既に関与しているため、ガソリンエンジン用の改善された排気ガス処理ラインのテールパイプでアンモニアをさらに除去するには、様々な汚染物質に対する種々のフィルタ機能の効率を徹底的に調整し、バランスをとる必要がある。
【0011】
例として、アンモニアをテールパイプで効果的にパージする場合、排気ガス処理システムのNOx除去能力が損なわれてはならない。同様に、アンモニアの除去によって、排気ガス処理システムのテールパイプで大量の亜酸化窒素(NO)が形成されてはならない。なぜならNOも望ましくない汚染物質であり、地球温暖化に実質的に寄与することが知られている温室効果ガスだからである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの目的は、本発明の第1の態様によって解決される。それは、微粒子フィルタを備えた三元変換触媒(TWC)又は四元変換触媒(FWC)を含む、ガソリンエンジンからのアンモニア排出を低減するための排気ガス処理システムであって、その排気ガス処理システムは、選択的接触還元触媒(SCR)及び/又はアンモニア酸化触媒(AMOx)を含むアンモニア低減触媒を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の排気ガス処理システムの好ましい実施形態において、三元変換触媒(TWC)又は四元変換触媒(FWC)は、基材、及び前記基材上に存在する少なくとも1つの触媒ウォッシュコートを含み、触媒ウォッシュコートは、少なくとも1つの貴金属又は白金族金属(PGM)、酸素貯蔵化合物及び耐火性金属酸化物を含む。
【0014】
別の好ましい実施形態において、三元変換触媒(TWC)又は四元変換触媒(FWC)は、近接結合(CC)位置にある。
【0015】
別の好ましい実施形態において、三元変換触媒(TWC)を微粒子フィルタに被覆して、四元変換触媒(FWC)を形成する。
【0016】
別の好ましい実施形態において、微粒子フィルタは三元変換触媒(TWC)で被覆されず、そして三元変換触媒(TWC)の下流に位置する。
【0017】
別の好ましい実施形態において、アンモニア低減触媒は、三元変換触媒(TWC)又は四元変換触媒(FWC)の下流に位置する。
【0018】
別の好ましい実施形態において、アンモニア低減触媒は床下(UF)位置にある。
【0019】
別の好ましい実施形態において、微粒子フィルタは三元変換触媒(TWC)の下流、且つ選択的接触還元触媒(SCR)及び/又はアンモニア酸化触媒(AMOx)を含むアンモニア低減触媒の上流に位置する。
【0020】
別の好ましい実施形態において、選択的接触還元触媒(SCR)及び/又はアンモニア酸化触媒(AMOx)を含むアンモニア低減触媒は、独立型触媒として構成される。
【0021】
別の好ましい実施形態において、基材はウォールフローフィルタ基材である。
【0022】
別の好ましい実施形態において、選択的接触還元触媒(SCR)は、貴金属又は白金族金属を含まない。
【0023】
別の好ましい実施形態において、選択的接触還元触媒(SCR)は、金属で促進された分子篩、好ましくは鉄で促進された又は銅で促進されたゼオライトを含む。
【0024】
別の好ましい実施形態において、アンモニア酸化触媒(AMOx)は、貴金属又は白金族金属を、AMOx触媒の体積の貴金属又は白金族金属の総質量として計算して、約0.1g/ft~約10g/ft、好ましくは約0.3g/ft~約5g/ft、より好ましくは約0.5g/ft~約3g/ftの貴金属又は白金族金属の総担持量で含む。
【0025】
別の好ましい実施形態において、アンモニア酸化触媒(AMOx)は、乾燥AMOx触媒成分の質量に対して、約0.01質量%~約2質量%、好ましくは約0.05質量%~約1質量%、より好ましくは約0.08質量%~約0.5質量%の貴金属又は白金族金属の総担持量を含む。
【0026】
本発明の第2の態様において、アンモニアを含むガソリンエンジンからの排気ガス流を提供する工程と、アンモニアを含む排気ガス流を本発明の排気ガス処理システムと接触させて、排気ガス流中のアンモニア排出を低減させる工程とを含む、ガソリンエンジンの排気ガス流を処理するための方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、3つの異なる排気ガスフィルタシステムを示す。
図2図2は、3つの触媒機能(TWC-UF、SCR-UF、AMOx-UF)と触媒機能の入口で測定されたアンモニア排出量を示す。
図3図3は、3つの触媒機能の時間による温度を示す。
図4図4は、3つの触媒機能のNOxテールパイプ排出量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の排気ガス処理システムをより詳細に記載する。
【0029】
ここで使用する「触媒」、「触媒機能」、「触媒成分」、「触媒材料」などの用語は、1つの反応又は複数の反応を促進する材料を指す。よって本発明は一般に、テールパイプからの複数の汚染物質を同時に相乗的に除去するために、1つの排気ガス処理ラインに複数の触媒機能を組み合わせることを特徴とする。
【0030】
個々の触媒機能については、以下でより詳しく定義する。
【0031】
最も重要なことは、排気ガス処理システムは、窒素酸化物(NOx)、炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)を含む、ガソリンエンジンから生じる三大汚染物質を除去できなければならないことである。よってこれら3つの最も重要な汚染物質の除去は、典型的な三元変換触媒(TWC)によって達成されることが好ましい。
【0032】
三元層状触媒(TWC)は、複数の必須触媒成分を含む。好ましくは、三元変換触媒コーティングの組成は、炭化水素(HC)酸化成分、一酸化炭素(CO)酸化成分、及び窒素酸化物(NOx)還元成分を含み、そして排気ガス処理システムからNOx、HC及びCOをパージできるように選択される。
【0033】
好ましい一実施形態において、三元変換触媒コーティングは、耐火性金属酸化物担体に担持された白金族金属(PGM)、より好ましくはロジウム、酸素貯蔵化合物及び/又は安定化アルミナに担持された白金族金属、より好ましくは白金、及びさらにより好ましくは、酸素貯蔵化合物に担持されたパラジウム、及び任意に追加の促進剤成分を含む。
【0034】
三元層状触媒又は触媒コーティングは、典型的には白金族金属を含む。三元変換触媒コーティングは、1つ以上の白金族金属、より好ましくはルテニウム、パラジウム、ロジウム、白金及びイリジウムの1つ以上、より好ましくはパラジウム、ロジウム、及び白金の1つ以上、より好ましくはパラジウム及びロジウムの1つ以上、及びさらにより好ましくはパラジウム及びロジウムを含む。
【0035】
好ましくは、三元変換触媒又は触媒コーティングは、酸素貯蔵化合物をさらに含む。より好ましくは、酸素貯蔵化合物はセリウムを含み、より好ましくは酸化セリウム、酸化セリウムを含む酸化物の混合物、及びセリウムを含む混合酸化物の1つ以上を含み、セリウムを含む混合酸化物は、好ましくはジルコニウム、イットリウム、ネオジム、ランタン、及びプラセオジムの1つ以上をさらに含み、より好ましくはジルコニウム、イットリウム、ネオジム、及びランタンの1つ以上をさらに含み、より好ましくはジルコニウム、イットリウム、ネオジム、及びランタンをさらに含む。さらに、セリウムを含む酸素貯蔵化合物は、2つ以上の異なる混合酸化物からなっていてよく、これらの混合酸化物のそれぞれは、セリウムと、ジルコニウム、イットリウム、ネオジム、ランタン、及びプラセオジムの1つ以上とを含んでよい。
【0036】
より好ましくは、酸素貯蔵化合物は、0.05~1.5ml/gの範囲、より好ましくは0.1~1.0ml/gの範囲、より好ましくは0.15~0.8ml/gの範囲の気孔率を有する。酸素貯蔵化合物の気孔率は、Nの物理吸着及びDIN66134によるBJH(Barett、Joyner、Halenda)分析を介した物理吸着等温線の分析によって決定される。
【0037】
三元変換触媒又は触媒コーティングは、さらに好ましくは耐火性金属酸化物担体を含む。そのような耐火性金属酸化物担体はアルミニウムを含み、より好ましくは、酸化アルミニウム、酸化アルミニウムを含む酸化物の混合物、及びアルミニウムを含む混合酸化物の1つ以上を含み、アルミニウム及び安定化アルミニウムを含む混合酸化物は、より好ましくはジルコニウム、セリウム、ランタン、バリウム、及びネオジムの1つ以上をさらに含み、より好ましくは、耐火性金属酸化物担体は酸化アルミニウム、より好ましくはガンマアルミニウムオキシドを含む。
【0038】
より好ましくは、耐火性金属酸化物担体は、0.05~1.5ml/gの範囲、より好ましくは0.1~1.0ml/gの範囲、より好ましくは0.15~0.8ml/gの範囲の気孔率を有する。耐火性金属酸化物担体の気孔率は、Nの物理吸着及びDIN66134によるBJH(Barett、Joyner、Halenda)分析を介した物理吸着等温線の分析によって決定される。
【0039】
三元変換触媒又は触媒コーティングは、促進剤をさらに含む。本発明の文脈で使用される「促進剤」という用語は、全体的な触媒活性を促進する化合物に関する。より好ましくは、促進剤は、ジルコニウム、バリウム、ストロンチウム、ランタン、ネオジム、イットリウム、及びプラセオジムの1つ以上を含み、より好ましくは、促進剤は、ジルコニウム及びバリウムの1つ以上を含む。より好ましくは、促進剤は、酸化バリウムと酸化ストロンチウムの混合物、及びバリウムとストロンチウムの混合酸化物の1つ以上を含み、より好ましくはそれらである。
【0040】
より好ましくは、三元変換触媒コーティングは、1~200g/ftの範囲、より好ましくは3~180g/ftの範囲、より好ましくは4~150g/ftの範囲の担持量で耐火性金属酸化物担体上に担持された白金族(貴)金属、及び0.1~3g/ftの範囲、より好ましくは0.15~2.5g/ftの範囲、より好ましくは0.2~2g/ftの範囲の担持量の前記耐火性金属酸化物担体を含む。三元変換触媒コーティングは、1~200g/ftの範囲、より好ましくは3~180g/ftの範囲、より好ましくは4~150g/ftの範囲の担持量で酸素貯蔵化合物上に担持された白金族(貴)金属、及び0.1~3g/ftの範囲、より好ましくは0.15~2.5g/ftの範囲、より好ましくは0.2~2g/ftの範囲の担持量の前記酸素貯蔵化合物をさらに含む。三元変換触媒コーティングは、0.001~1.0g/ftの範囲、より好ましくは0.005~0.5g/ftの範囲、より好ましくは0.005~0.2g/inの範囲の担持量で促進剤をさらに含む。
【0041】
好ましくは、三元変換触媒コーティングは、0.1~5g/inの範囲、より好ましくは0.5~4g/inの範囲、より好ましくは0.8~3g/inの範囲の担持量で存在する。当業者は、触媒コーティング上の貴金属又は白金族金属の担持量を判定することに精通しているであろう。例として、XRF(蛍光X線分析法)及び誘導結合プラズマ原子発光分光法(ICP-AES)を触媒担持量の測定に用いることができる。
【0042】
三元変換触媒(TWC)が複数のウォッシュコート層(例として、基材上に連続して位置する2つのウォッシュコート層)を含むことも可能である。複数のウォッシュコート層は、白金族金属(PGM)、酸素貯蔵成分及び/又は耐火性金属酸化物担体の選択及び量が異なる組成物を有することができる。複数の異なるウォッシュコートを有する三元変換触媒(TWC)及びその調製は、例えば、WO2014/116897A1及びWO2020/053350A1に開示されており、これらは両方とも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0043】
Euro6cのような厳しい排出粒子数の排出規制の観点において、ガソリンエンジンから排出される粒子状物質の除去は、重要な要件となっている。従って本発明の排気ガス処理システムは、追加の粒子フィルタ、例えばいわゆるガソリン微粒子フィルタ(GPF)の使用をベースとして、ガソリンエンジンから粒子状物質を除去することができなければならない。三元変換触媒(TWC)が追加の微粒子フィルタ機能と組み合わされる場合、結果として得られる触媒は、いわゆる「四元変換触媒」(FWC)と呼ばれる。
【0044】
微粒子を濾過するために本発明の排気ガス処理システムに四元変換触媒(FWC)が含まれる場合、排気ガス流から粒子状物質を除去するために、本発明には複数の選択肢がある。
【0045】
微粒子除去機能を含むための1つの好ましい選択肢は、追加的な触媒機能によって被覆されていない別個の微粒子フィルタを含むことである。例として、このようなむき出しの微粒子フィルタは、三元変換触媒(TWC)、又は排気ガス流から粒子状物質をパージできるフィルタ機能以外の如何なる他の触媒機能でも被覆されていない。初期のガソリン微粒子除去機能には、三元変換触媒(TWC)の下流に位置する被覆されていないガソリン微粒子フィルタ(GPF)が含まれていた。
【0046】
微粒子フィルタ機能に関する別の好ましい選択肢は、三元変換触媒(TWC)で被覆された微粒子フィルタである。言い換えれば、微粒子フィルタは被覆された微粒子フィルタである。この実施形態において、微粒子フィルタは、微粒子フィルタの表面又は細孔に三元変換触媒(TWC)が被覆された基材として使用される。以下にさらに詳細に記載するように、三元変換触媒(TWC)は、微粒子フィルタ上に存在する場合、例えば2つの異なるウォッシュコート又はコーティングのように、1つの単一ウォッシュコート、又は複数のウォッシュコートの形態で存在することができる。
【0047】
微粒子フィルタのコーティングは、様々な様式で存在することができる。1つの選択肢は、いわゆる「壁内コーティング」によってフィルタ基材に三元変換触媒(TWC)を提示することである。もう1つの選択肢は、このような壁内コーティングを、ウォールフローフィルタ基材上の追加の「壁上コーティング」と組み合わせることである。これらの様式について、以下に詳しく記載する。
【0048】
ここで使用する用語「微粒子フィルタ」とは、好ましくはガソリンエンジンからの排気ガス流において生成された微粒子を捕捉するようにサイズ化及び構成された基材を指す。粒子状物質の捕捉は、例えば微粒子(又は煤)フィルタの使用、微粒子の流れる方向の変化によって微粒子を排気流から落とすような内部の蛇行した経路を有するフロースルー基材の使用、波形金属担体などの金属基材の使用、又は当業者に既知の他の方法によって、行うことができる。好適な基材を以下にさらに詳細に記載するが、他のフィルタ装置、例えば排気流から微粒子を叩き出すことができる粗面化された表面を有するパイプも好適である。屈曲のあるパイプも好適な場合がある。
【0049】
好ましくは、本発明による四元変換触媒は、フロースルーフィルタ基材、より好ましくはウォールフローフィルタ基材及び三元変換触媒コーティングからなり、通常、ウォールフローフィルタ基材は、微粒子の濾過を含む四元変換機能の使用目的に適した材料であれば、特に制限されない。
【0050】
好ましくは、ウォールフローフィルタ基材は、コージェライト、シリコンカーバイド、アルミニウムチタネート、又はそれらの組み合わせを含み、より好ましくはそれらからなる。
【0051】
好ましくは、四元変換触媒において、三元変換機能は、微粒子フィルタ機能の壁に浸透することによって微粒子フィルタ上に存在する。この好ましい実施形態において、微粒子フィルタ機能の壁の表面上に三元変換触媒材料の積層は存在しない。より好ましくは、この好ましい設定において、微粒子フィルタ機能を含む得られた四元変換触媒は、むき出しの微粒子フィルタよりも低い被覆気孔率を有する。より好ましくは、被覆気孔率は非被覆気孔率の75~98%であってよく、又は被覆気孔率は非被覆気孔率の80~95%であってもよく、又は被覆気孔率は、非被覆気孔率の80~93%未満であってよい。
【0052】
四元変換触媒(FWC)の三元変換触媒(TWC)コーティングは、好ましくは、微粒子フィルタの入口側、出口側、又は入口側と出口側との両方に浸透する単一のウォッシュコート組成物から形成することができる。
【0053】
或いは、四元変換触媒(FWC)の複数の三元変換触媒(TWC)コーティング、好ましくは2つのコーティングを、複数の、好ましくは2つのウォッシュコート組成物から形成することができる。異なるウォッシュコート組成物を入口側及び出口側に浸透させるために適用することができる。或いは、1つの単一ウォッシュコート組成物又は複数のウォッシュコート組成物を、微粒子フィルタの入口側及び出口側に適用することができる。
【0054】
三元変換触媒(TWC)材料は、四元変換触媒(FWC)中に約1~約5g/in(約60~約300g/L)の範囲の量で存在してよい。非被覆気孔率は55~70%の範囲であってよい。より好ましくは、四元変換触媒(FWC)は、120~244g/L(約1.0~約4.0g/in)の範囲の量の三元変換触媒(TWC)、及び55~70%の範囲の気孔率を含み、微粒子フィルタ機能は、約152μm(6ミル)~約356μm(14ミル)の範囲の壁厚を含む。この実施形態において、三元変換触媒(TWC)は微粒子フィルタの壁に浸透し、一方、微粒子フィルタの壁の表面には触媒材料の積層はない。好ましくは、微粒子フィルタの壁の細孔の外側には三元変換触媒材料は存在しない。
【0055】
被覆された微粒子フィルタである四元変換触媒(FWC)は、以下のように微粒子フィルタ上に三元変換触媒(TWC)コーティングを適用することによって調製できる。
【0056】
適切な微粒子フィルタ基材を提供し、2~7の範囲のpHを有する三元変換触媒(TWC)材料のスラリーを形成し、そして三元変換触媒(TWC)材料を微粒子フィルタの壁に浸透させて微粒子フィルタ機能を有する四元変換触媒(FWC)を形成し、四元変換触媒(FWC)が微粒子フィルタの非被覆気孔率よりも低い被覆気孔率を有するようにする。スラリーは、20℃で約5~40mPas未満の範囲の動的粘度及び0~25質量%の固形分含量を有してよい。pHは3~5の範囲でよい。好ましくは、任意にウォッシュコートが重なった領域を除いて、微粒子フィルタの壁の表面上に触媒材料の層状化はない。好ましい実施形態において、微粒子フィルタの壁の細孔の外側に触媒材料は存在しない。被覆気孔率は、三元変換触媒(TWC)材料のウォッシュコート担持量に直線的に比例し得る。被覆気孔率は、非被覆気孔率の75~98%、又はさらに非被覆気孔率の80~95%、又はさらに80~93%未満であってよい。好ましくは、微粒子フィルタは、1平方インチあたり200~300セル(OPSI)、及び6~14ミルの範囲の壁厚を含んでよい。
【0057】
一般に原料基材上の背圧上昇を最小化するのに役立つ、より従来的で完全な壁内コーティングに代えて、本発明の四元変換触媒(FWC)には四元変換触媒(FWC)が含まれてよく、ここで三元変換触媒コーティング(TWC)が、ウォールフローフィルタ基材上のいわゆる壁上コーティングと組み合わせて従来の壁内コーティングとして存在できる。
【0058】
一般的な多孔質ウォールフローフィルタ基材は、典型的には、入口端、出口端、入口端と出口端との間に延在する基材の軸方向長さ、及び多孔質ウォールフローフィルタ基材の多孔質内壁によって画定される複数の通路を含む。複数の通路は、開放された入口端と閉塞された出口端とを有する入口通路、及び閉塞された入口端と開放された出口端とを有する出口通路を含む。
【0059】
三元変換触媒(TWC)が壁上コーティングと組み合わせた壁内コーティングによって適用される場合、多孔質内壁の細孔は、従来の壁内コーティングの形態で三元変換触媒(TWC)を含む。さらに、三元変換触媒(TWC)は、多孔質内壁の表面の少なくとも一部にも適用され、その表面は、多孔質内壁と通路との間の界面を画定する。「多孔質内壁の表面」という用語は、壁の「裸の」又は「むき出しの」又は「空白の」表面と理解される。よって四元変換触媒(FWC)は、内壁表面から通路まで延びる多孔質壁上コーティングも含む。
【0060】
このような特定の四元変換触媒及びその調製は、WO2019/149929A1、WO2019/149930A1及びWO2020/043885A1に記載されており、これらはすべて参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0061】
排気ガス流からアンモニアを除去するというさらなる目的に対処するために、三元変換触媒(TWC)、ガソリン微粒子触媒(GPC)のような微粒子フィルタ、及び/又は四元変換触媒(FWC)を、好適なアンモニア低減触媒機能と組み合わせる必要がある。
【0062】
本発明の排気ガス処理システムにおいて、アンモニア低減触媒機能は、排気ガステールパイプからアンモニアをパージするための選択的接触還元触媒(SCR)及び/又はアンモニア酸化触媒(AMOx)を含む。本発明のアンモニア低減機能は、テールパイプのアンモニアを実質的に低減させ、又は、より好ましくは、ガソリンエンジンのテールパイプにおけるアンモニア排出の全除去をも可能とする。
【0063】
アンモニア低減触媒は、好ましくは、三元変換触媒(TWC)、微粒子フィルタ及び/又は四元変換触媒(FWC)の下流に添加される。加えて、又は代替的に、排気ライン中のアンモニア低減触媒は、好ましくは単独触媒として位置する。
【0064】
本発明の排気ガス処理システムのアンモニア低減触媒には、排気流からアンモニアを除去することができる2つの異なる触媒機能が含まれる。それは選択的接触還元(SCR)触媒又はアンモニア酸化触媒(AMOx)であり、これらを以下でさらに詳細に記載する。
【0065】
「選択的接触還元」(SCR)とは、適量の酸素の存在下における還元剤を用いた窒素酸化物の触媒還元を指す。好適な還元剤として、例えば、炭化水素、水素、尿素及び/又はさらにはアンモニアが挙げられる。
【0066】
本発明で使用されるSCR触媒は、例えば、1つ以上の金属酸化物(例えば混合酸化物)、分子篩(好ましくは金属促進分子篩)、又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0067】
SCR触媒は、好ましくは1つ以上の分子篩材料を含む。より好ましくは、SCR触媒材料は、金属促進剤を含有する8員環小細孔分子篩を含む。ここで使用する「小細孔」とは、約5オングストローム(例えば、約2~5Å、約2~4Å、約3~5Å、又は約3~4Å、例えば、およそ~3.8オングストローム)より小さい孔開口を指す。1つの特に好ましい8員環小細孔分子篩は、8員環小細孔ゼオライトである。
【0068】
SCR触媒材料は、好ましくはゼオライトを含み、好ましくはd6r単位を含むゼオライトを含む。よってSCR触媒材料は、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、EMT、ERI、FAU、GME、JSR、KFI、LEV、LTL、LTN、MOZ、MSO、MWW、OFF、SAS、SAT、SAV、SBS、SBT、SFW、SSF、SZR、TSC、WEN、及びこれらの組み合わせから選択される構造型を有するゼオライトを含むことができる。好ましいSCR触媒材料は、CHA、AEI、AFX、ERI、KFL、LEV、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される構造型を有するゼオライトを含む。特に好ましいSCR触媒材料は、CHA及びAEIから選択される構造型を有するゼオライトを含む。最も好ましいSCR触媒材料は、CHA構造型を有するゼオライトを含む。
【0069】
ゼオライトチャバザイトを含むSCR触媒材料は、好ましくは(Ca,Na,K,Mg)AlSi12・6HO(例えば水和カルシウムアルミニウムシリケート)で表される近似式を持つゼオライト群の天然に存在するテクトシリケート鉱物である。本発明のSCR触媒に有利に使用することができるゼオライトチャバザイトの3つの合成形態は、John Wiley&Sonsにより1973年に出版されたD.W.Breckによる「Zeolite Molecular Sieves」に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。Breckが報告した3つの合成型は、ゼオライトK-G(J.Chem.Soc.、第2822頁(1956年)、Barrerら)、ゼオライトD(英国特許第868,846号(1961年)に記載)、及びゼオライトR(米国特許第3,030号、Milton)であり、これら文献はすべて参照により本明細書に組み込まれる。ゼオライトチャバザイトの別の合成形態SSZ-13の合成は、米国特許第4,544,538号(Zornes)に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。チャバザイト構造を有するさらに別の合成分子篩、SAPO-44を製造する方法は、米国特許第6,162,415号(Liuら)に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
本発明のSCR触媒材料として有用な分子篩のシリカ対アルミナの比は、広い範囲にわたって変動させることができる。SCR触媒材料として有用な好ましい分子篩は、シリカ対アルミナのモル比(SAR)を2~300の範囲(5~250、5~200、5~100、及び5~50を含む)に有する。より好ましくは、分子篩は、シリカ対アルミナのモル比(SAR)を10~200、10~100、10~75、10~60、10~50、15~100、15~75、15~60、15~50、20~100、20~75、20~60、及び20~50の範囲に有する。さらにより好ましくは、前述のSAR範囲の任意を有する分子篩について、分子篩の球形粒子は、約1.0~約5ミクロン、及びより具体的には約1.0~約3.5ミクロンの粒度d50を有し、分子篩成分の個々の結晶は、約100~約250nmの範囲の結晶径を有する。
【0071】
好ましいのは、金属で促進されたゼオライト触媒、とりわけ、窒素酸化物を例えばアンモニアで選択的接触還元するための、鉄で促進された及び銅で促進されたゼオライト触媒である。促進金属は、Cu、Fe、Co、Ni、La、Ce、Mn、V、Ag、及びそれらの組み合わせから選択することができる。好ましい促進金属は、Cu、Fe、又はそれらの組み合わせである。好ましいSCR触媒は、例えばロジウム、パラジウム及び/又は白金のような如何なる貴金属又は白金族金属も含有しない。CHA構造型を有し、シリカ対アルミナモル比が1より大きい、金属で促進された、特に銅で促進されたアルミノシリケートゼオライトは、最近、窒素還元剤を使用するリーンバーンエンジンにおける窒素酸化物の選択的接触還元用触媒として高い関心を集めている。このような好ましい触媒中の促進金属含有量は、酸化物として計算し、揮発分を含まないことをベースとして報告して、好ましくは少なくとも約0.1質量%である。好ましくは、促進金属はCuを含み、そしてCu含有量は、CuOとして計算して、揮発分を含まないことをベースとして報告される焼成ゼオライト成分の総質量に対して、各場合とも最大で約10質量%までの範囲、又はより好ましくは9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、及び0.1質量%である。CuOとして計算されるCu含有量は、約1~約4質量%の範囲とすることができる。
【0072】
SCR触媒材料として有用となり得る例示的な分子篩の1つは、アルミノホスフェートである。アルミノホスフェートの種類には、シリコアルミノホスフェート(SAPO)、金属アルミノホスフェート(MeAPO)、及び金属シリコアルミノホスフェート(MeSAPO)が含まれる。例示的なアルミノホスフェート分子篩の合成形態であるシリコアルミノホスフェート34(SAPO-34)の調製は、米国特許第4,440,871号(Lokら)及び米国特許第7,264,789号(Van Denら)に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。さらに別の合成分子篩であるSAPO-44の製造方法は、米国特許第6,162,415号(Liuら)に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0073】
本発明のSCR触媒は、好ましくは金属酸化物、例えば混合酸化物を含む。ここで使用する「混合酸化物」という用語は、複数の化学元素の陽イオン、又は複数の酸化状態の単一元素の陽イオンを含有する酸化物を指す。SCR触媒として好適な混合酸化物には、Fe/チタニア(例えばFeTiO)、Fe/アルミナ(例えばFeAl)、Mg/チタニア(例えばMgTiO)、Mg/アルミナ(例えばMgAlO)、Mn/アルミナ、Mn/チタニア(例えばMnO/TiO)、Cu/チタニア(例えばCuITiO)、Ce/Zr(例えばCeZrO)、Ti/Zr(例えばTiZrO)、及びこれらの混合物が含まれてよい。SCR触媒としての混合酸化物のさらなる例は、米国特許出願公開第2001/0049339号(Schafer-Sindelindgerら)、及び米国特許第4,518,710号(Brennanら)、第5,137,855号(Hegedusら)、第5,476,828号(Kapteijinら)、第8,685,882号(Hongら)、及び第9,101,908号(Jurngら)に見出すことができ、これら文献はすべて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0074】
SCR触媒は、1つ以上のバナジウム含有成分を含むことができる。このような組成物は、本明細書では一般に「バナジアベースの組成物」と称される。このような実施形態において、バナジウムは様々な形態とすることができ、例えば、限定するものではないが、遊離バナジウム、バナジウムイオン、又は酸化バナジウム(バナジア)、例えば五酸化バナジウム(V)が含まれる。ここで使用する「バナジア」又は「酸化バナジウム」は、五酸化バナジウムを含むバナジウムのあらゆる酸化物を対象とすることが意図される。バナジアベースの組成物は、好ましくは、バナジアを含む混合酸化物を含む。混合酸化物中のバナジアの量は変化させることができ、好ましくは、混合酸化物の総質量に対して、約1~約10質量パーセントの範囲である。例えば、バナジアの量は、少なくとも1質量パーセント、少なくとも2質量パーセント、少なくとも3質量パーセント、少なくとも4質量パーセント、少なくとも5質量パーセント、又は少なくとも6質量パーセント、上限は約10質量パーセントとすることができ、又は10質量パーセント以下、9質量パーセント以下、8質量パーセント以下、7質量パーセント以下、6質量パーセント以下、5質量パーセント以下、又は4質量パーセント以下、下限は約1質量パーセントとすることができる。
【0075】
好ましいSCR組成物は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、及びそれらの組み合わせなどの耐火性実酸化物(real oxide)上に担持されたバナジウムを含み、これらは、米国特許第4,010,238号(白石ら)及び米国特許第4,085,193号(中島ら)、及び米国特許出願公開第2017/0341026号(Chenら)に記載されており、これら全体が参照により本明細書に組み込まれる。他の好ましい実施形態において、SCR触媒は、バナジア/チタニアを含む混合酸化物(V/TiO)、例えば、上にバナジアが分散されたチタニアの形態で含む。バナジア/チタニアは、タングステン(例えばWO)で任意に活性化又は安定化させることができ、V/TiO/WOを、例えば上にV及びWOが分散されたチタニアの形態で提供する。バナジアは必ずしも混合金属酸化物の形態であるとは限らず、むしろ金属酸化物成分(例えばチタニア及びバナジア)が個別の粒子として存在することもある。このような実施形態におけるタングステンの量は様々であり、例えば、混合酸化物の総質量に対して約0.5~約10質量%の範囲とすることができる。例えば、タングステンの量は、少なくとも0.5質量パーセント、少なくとも1質量パーセント、少なくとも2質量パーセント、少なくとも3質量パーセント、少なくとも4質量パーセント、少なくとも5質量パーセント、少なくとも6質量パーセント、上限は約10質量パーセントとすることができ、又は10質量パーセント以下、9質量パーセント以下、8質量パーセント以下、7質量パーセント以下、6質量パーセント以下、5質量パーセント以下、又は4質量パーセント以下、下限は約0.5質量パーセントとすることができる。
【0076】
例示的なバナジアベースのSCR組成物は、限定するものではないが、V/TiO、V/WO/TiO/SiO、又はそれらの組み合わせを含むことができる。追加のバナジウム含有SCR触媒組成物は、例えば、米国特許第4,782,039号(Lindsey)及び第8,975,206号(Schermanzら)、及び国際出願公開第WO2010/121280号(Schermanzら)に記載されており、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0077】
或る特定のバナジアベースのSCR組成物は、他の活性成分(例えば、他の金属酸化物)を含むことができる。例えば、一部の実施形態において、開示したシステムでの使用に好適なバナジアベースのSCR組成物は、バナジア及びアンチモンを含む。このようなバナジアベースのSCR組成物は、或る特定の実施形態において、バナジウム及びアンチモンを含む複合酸化物を含み、この複合酸化物は、耐火性金属酸化物(例えば、TiO、SiO、WO、Al、ZrO、又はそれらの組み合わせ)上に担持することができる。バナジア及びアンチモンを含む例示的なバナジアベースのSCR組成物は、米国特許第4,221,768号(井上ら)、国際出願公開第WO2017/101449号(Zhaoら)、及び2016年12月30日に出願された国際出願公開第PCT/CN2016/113637号、2015年4月17日に出願された国際出願公開第PCT/CN2015/076895号、及び2015年12月17日に出願された国際出願公開第PCT/CN2015/097704号に記載されており、これらはすべて参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。或る特定の実施形態において、SCR触媒は、バナジウムベースのSCR組成物と分子篩との混合物を含むことができる。
【0078】
ここで使用する「アンモニア酸化触媒」(AMOx)という用語は、排気システム内の過剰なアンモニアを窒素に変換するのに好適な1つ以上の金属を含有し、一般に担体材料に担持される触媒を指す。アンモニア酸化(AMOx)とは、一般に、アンモニアを好ましくは酸素と反応させて窒素(N)を生成するプロセスを指す。アンモニア酸化触媒AMOxは、過剰なアンモニアをNに主に変換することができ、窒素酸化物NOxのような窒素酸化物副生成物を最小限に抑え、好ましくは、自動車の走行サイクルでアンモニアスリップが発生する可能性のある広い温度範囲で使用される。よってAMOx触媒は、望ましくない温室効果ガスであるNOの生成を最小限に抑える。
【0079】
AMOx触媒の組成は特に限定されず、この目的に好適であることが知られている種々の組成を、開示する排気ガス処理システムの文脈において用いることができる。
【0080】
アンモニア酸化触媒成分は一般に、組成物、好ましくは物理的混合物であることが好ましく、耐火性金属酸化物に担持された1つ以上の白金族金属、及び分子篩材料、好ましくは小細孔分子篩材料上に銅又は鉄を含む分子篩材料を含み、後者はさらにより好ましくは、8個の四面体原子の最大環サイズを有する。
【0081】
AMOx触媒は、好ましくは、排気ガス流からアンモニアを除去するのに有効な担持白金族金属成分を含むことができる。好ましい白金族金属成分には、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀又は金が含まれる。白金族金属成分は、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀及び金の物理的混合物及び/又は化学的及び/又は原子的にドープされた組み合わせを含むことができる。非常に好ましい実施形態において、AMOx触媒は、白金、パラジウム、ロジウム、又はそれらの組み合わせなどの貴金属又は白金族金属(PGM)を含む。AMOx触媒が白金を含むことが特に好ましい。白金族金属、最も好ましくは白金は、Pt族金属担体担持量に対して約0.008質量%~約2質量%(金属)の範囲の量で存在することが非常に好ましい。
【0082】
本発明によるAMOx触媒機能は、貴金属又は白金族金属の総担持量を、AMOx触媒の体積の貴金属又は白金族金属の総質量として計算して、約0.1g/ft~約10g/ft、好ましくは約0.3g/ft~約5g/ft、より好ましくは約0.5g/ft~約3g/ft、さらにより好ましくは約0.8g/ft~約2g/ftで含む。代替的又は追加的に、本明細書に開示するAMOx組成物は、貴金属又は白金族金属の総担持量を、乾燥AMOx触媒成分の質量に対して約0.01質量%~約2質量%、好ましくは約0.05質量%~約1質量%、より好ましくは約0.08質量%~約0.5質量%で含む。
【0083】
好ましくは、アンモニア酸化触媒成分の貴金属成分又は白金族金属は、白金(Pt)を含み、好ましくは白金(Pt)からなる。アンモニア酸化触媒は、白金(Pt)成分を約0.5g/ft~約10g/ftの範囲、より好ましくは約0.01質量%~約2質量%の範囲の量で、又は代替的に、一般的な貴金属又は白金族金属について上記で定義した白金の総担持量及び/又は白金の量で含み、又はこれらからなる。
【0084】
好ましくは、アンモニア酸化触媒成分の貴金属成分又は白金族金属は、パラジウム(Pd)を含み、好ましくは、パラジウム(Pd)からなる。アンモニア酸化触媒は、パラジウム(Pd)成分を、約0.5g/ft~約10g/ftの範囲、より好ましくは約0.01質量%~約2質量%の範囲の量で、又は代替的に、一般的な貴金属又は白金族金属について上記で定義したパラジウムの総担持量及び/又はパラジウムの量で含み、又はこれらからなる。
【0085】
好ましくは、アンモニア酸化触媒成分の貴金属成分又は白金族金属は、ロジウム(Rh)を含み、好ましくはロジウム(Rh)からなる。アンモニア酸化触媒は、ロジウム(Rh)成分を、約0.5g/ft~約10g/ftの範囲、より好ましくは約0.01質量%~約2質量%の範囲、又は代替的に、ロジウムの総担持量及び/又は一般的な貴金属又は白金族金属について上記で定義したロジウムの総担持量及び/又はロジウムの量で含み、又はこれらからなる。
【0086】
当業者は、触媒コーティング上の貴金属又は白金族金属の担持量を判定することに精通しているであろう。例として、XRF(蛍光X線分析法)及び誘導結合プラズマ原子発光分光法(ICP-AES)を触媒担持量の測定に用いることができる。
【0087】
本発明のAMOx触媒の貴金属又は白金族金属は、例えば高表面積耐火性金属酸化物担体上に好ましくは担持される。好適な高表面積耐火性金属酸化物の例には、限定するものではないが、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、及びジルコニア、及びこれらの物理的混合物、化学的組み合わせ、及び/又は原子ドープされた組み合わせが含まれる。耐火性金属酸化物は、シリカ-アルミナ、非晶質又は結晶質のアルミノシリケート、アルミナジルコニア、アルミナ-ランタナ、アルミナ-クロミア、アルミナ-バリア、アルミナ-セリアなどの混合酸化物を含有してよい。例示的な耐火性金属酸化物は、高表面積γ-アルミナを含み、好ましくは約50~約300m/gの比表面積を有する。
【0088】
本発明のAMOx組成物に有用な好ましい耐火性金属酸化物担体は、アルミナ又はドープアルミナ材料、例えばSiドープアルミナ材料(1~10%SiO-Alを含むが、これらに限定されない)、チタニア又はドープチタニア材料、例えばSiドープチタニア材料(1~15%SiO-TiOを含むが、これらに限定されない)、又はジルコニア又はドープジルコニア材料、例えばSiドープZrO(5~30%SiO-ZrOを含むが、これらに限定されない)である。
【0089】
高表面積金属酸化物担体、例えばアルミナ又はチタニア担体材料は、典型的には約50m/g~約400m/g、好ましくは約60m/g~約350m/g、例えば約90m/g~約250m/gの全表面積(BET)を示す。
【0090】
耐火性金属酸化物担体材料は、好ましくは、約0.3~約1.5cm/gの範囲の全細孔容積(BET)を有する。活性アルミナは、約2~約50nmの範囲の平均細孔直径(BET)を有する。
【0091】
AMOx触媒には、少なくともゼオライト分子篩又は非ゼオライト分子篩が含まれ得る。具体的な実施形態において、ゼオライト又は非ゼオライト分子篩は、好ましくは、CHA、AEI、BEA、MFI、FAU、MOR、AFX及びLTAから選択されるが、これらに限定されない骨格型を有する。具体的な実施形態において、ゼオライト分子篩又は非ゼオライト分子篩は、少なくとも金属酸化物担持PGM成分と物理的に混合してもよい。具体的な一実施形態において、PGMは、ゼオライト分子篩又は非ゼオライト分子篩の外部表面上又はチャネル、キャビティ、又はケージ内に分布していてもよい。
【0092】
1つ以上の実施形態において、アンモニア酸化触媒(AMOx)は、少なくともゼオライト成分と、銅成分及び鉄成分の一方又は両方から選択される卑金属成分とを含む。
【0093】
1つ以上の実施形態において、AMOx触媒は、高表面積金属酸化物上に担持されたPtの底部層を有する触媒コーティングを含み、そしてCu-CHA又はCu-AEIの層を有する第2の触媒コーティングをさらに含む。
【0094】
1つ以上の実施形態において、アンモニア酸化触媒(AMOx)は、酸化バナジウム及び酸化モリブデンから選択される少なくとも1つの無機金属酸化物材料を含む。
【0095】
1つ以上の実施形態において、アンモニア酸化触媒(AMOx)は、約1ミクロン~約10ミクロンの粒度分布D50を有し、及び/又はアンモニア酸化触媒は、約2ミクロン~約30ミクロンの粒度分布d90を有する。
【0096】
1つ以上の実施形態において、アンモニア酸化触媒(AMOx)は、約50~約700m/gの範囲の表面積(BET)を有する。1つ以上の実施形態において、アンモニア酸化触媒は、約0.3~約1.5cm/gの範囲の平均細孔容積(BET)を有する。1つ以上の実施形態において、アンモニア酸化触媒は、約2~約50nmの範囲の平均細孔直径(BET)を有する。1つ以上の実施形態において、アンモニア酸化触媒は、約0.3~約3.0g/inの乾燥ゲインを有する基材上に被覆される。
【0097】
既に上述した本発明の排気ガス処理システムの個々の触媒機能は、以下の構成に従って組み合わせることができる。
【0098】
TWCは、最も好ましくは排気ガス処理ラインの上流に位置し、これに続いて他の触媒成分又は機能が「下流」に位置する。
【0099】
本発明で使用される「上流」及び「下流」という用語は、当該技術分野における通常の意味を有し、従って本明細書では一般に、排気ガス流の流れ方向に基づいて、排気ガスシステムにおける別の触媒機能又は構成要素の相対的な位置と比較した場合の、触媒機能又は構成要素の相対的な位置を示すためにも使用される。
【0100】
ガソリン微粒子触媒又はフィルタ(GPC)のような追加の微粒子フィルタがある場合、三元変換触媒(TWC)とガソリン微粒子フィルタ(GPC)のような微粒子フィルタは、一緒に「四元変換触媒(FWC)」を効果的に形成し、これも本発明において最も好ましくは「上流」に位置する。
【0101】
さらに、本発明では、三元変換触媒(TWC)も、最も好ましくは近接結合されていることが好ましい。「近接結合」という用語は、エンジン出口、好ましくはガソリンエンジン出口と流体連通し、そのすぐ下流に位置する、好ましくはエンジン出口から50cm以内、より好ましくは30cm以内、最も好ましくは20cm以内の位置を示す。従って本発明の文脈において、「近接結合」位置とは、当該技術分野において一般的に理解されているように理解され、例えば、従来の「床下」位置(車両の床の下である)よりも実質的にエンジンに近い位置である。一般に、これに限定されるものではないが、このような「近接結合」位置は、好ましくはエンジンコンパートメント内にあり、通常、車両のフードの下にあり、排気マニホールドに隣接している。従って、「近接結合」位置に位置した触媒は、一般に、エンジンが暖機された後、エンジンを出た直後の高温の排気ガスに曝されるため、通常、周囲条件からエンジンを始動した直後の期間である冷間始動時に、炭化水素排出を低減する役割を果たすことが多い。
【0102】
排気ガス処理ラインに四元変換触媒(FWC)がある場合、四元変換触媒(FWC)も、三元変換触媒(TWC)について最も好ましいのと同様に、最も好ましくは「近接結合」に位置する。
【0103】
本発明の排気ガス処理ラインにおいて非被覆微粒子フィルタが使用される場合、非被覆微粒子フィルタは、好ましくは、三元変換触媒(TWC)の下流に、例えばTWCと近い距離に、例えば同じキャニング内に取り付けられる一方でTWCが近接結合され、すなわち、TWCが微粒子フィルタの下流に続く一方で両者が近接結合して位置することが最も好ましい。
【0104】
本発明によれば、三元変換触媒(TWC)、ガソリン微粒子触媒(GPC)のような微粒子フィルタ、及び/又は四元変換触媒(FWC)は、好ましい構成において、選択的接触還元触媒(SCR)及び/又はアンモニア酸化触媒(AMOx)を含むアンモニア低減触媒が下流に続く。換言すれば、選択的接触還元触媒(SCR)及び/又はアンモニア酸化触媒(AMOx)を含むアンモニア低減触媒の相対位置は、好ましくは、排気ガス流の方向に関して、三元変換触媒(TWC)、ガソリン微粒子触媒(GPC)のような微粒子フィルタ、及び/又は四元変換触媒(FWC)の後である。
【0105】
選択的接触還元触媒(SCR)及び/又はアンモニア酸化触媒(AMOx)を含むアンモニア低減触媒の位置は、好ましくは、三元変換触媒(TWC)、ガソリン微粒子触媒(GPC)のような微粒子フィルタ、及び/又は四元変換触媒(FWC)の下流に位置するだけでなく、最も好ましくは「床下」に位置する。
【0106】
本発明で使用される用語「床下」は、当該技術分野で使用される技術的意味を有する。「床下」という用語は、車両キャビンの下方の位置に関する。さらに、「床下」という用語は、近接結合された触媒機能と、好ましくは近接結合された触媒機能と流体連通している「床下」に位置した触媒機能との間の実質的な距離が、50cm~150cm、好ましくは75cm~150cm、最も好ましくは100cm~150cmであることを示す。よって「床下」に位置した触媒機能は、「近接結合」に位置した触媒機能よりもエンジンから遠いので、近接結合触媒機能よりも低い耐熱性が要求される。
【0107】
本発明の非常に好ましい2つの構成は、微粒子フィルタ上に被覆された三元変換触媒(TWC)をベースとし、上流に近接結合されて位置し、これに続いて選択的接触還元触媒(SCR)又はアンモニア酸化触媒(AMOx)のいずれかが、下流に且つ床下に位置する。
【0108】
本発明の他の2つの好ましい構成は、上流に近接結合されて位置し、別個の非被覆微粒子フィルタを含む四元変換触媒(FWC)をベースとし、三元変換触媒(TWC)と、TWCの下流に位置した別個の非被覆微粒子触媒を含み、これに続いて選択的接触還元触媒(SCR)又はアンモニア酸化触媒(AMOx)のいずれかが、下流に且つ床下に位置する。
【0109】
三元変換触媒(TWC)又は四元変換触媒(FWC)、任意にガソリン微粒子触媒(GPC)、及び選択的接触還元触媒(SCR)及び/又はアンモニア酸化触媒(AMOx)を含むアンモニア低減触媒を含む様々な触媒成分又は機能は、適切な基材上に位置し、ガソリンエンジン用排気ガス処理システムの排気ラインを形成する。
【0110】
好適な基材は3次元であり、円柱に類似した長さ、直径及び体積を有する。形状は必ずしも円柱と一致する必要はない。長さは、入口端及び出口端によって定義される軸方向の長さである。本発明の基材は、自動車用触媒の調製に典型的に使用される任意の材料で構成されていてよく、そして典型的には金属又はセラミックのハニカム構造を含む。好ましくは、基材は、その上にウォッシュコート組成物が適用されて付着する複数の壁表面を提供し、それによって触媒組成物の基材として機能する。
【0111】
1つ以上の実施形態によれば、開示する組成物(複数可)の基材は、一般的に自動車触媒を調製するために使用される任意の材料で構成されていてよく、一般的には金属又はセラミックのハニカム構造を含む。基材は通常、ウォッシュコート組成物が適用されて付着する複数の壁面を提供し、それによって触媒組成物の基材として機能する。
【0112】
本発明の基材は、基材の入口又は出口面から基材を貫通して延びる微細で平行なガス流通路を有し、通路がその中を流れる流体に開放されているタイプの典型的なモノリス基材とすることができる(「フロースルー基材」)。
【0113】
フロースルー基材は、フロースルーハニカムモノリシック基材を含むモノリシック基材とすることができる。当業者はフロースルー基材に精通しており、フロースルー基材は、基材の入口端から出口端まで延びる微細で平行なガス流通路を有し、通路は流れる流体に対して開放されている。通路は、その流体入口からその流体出口まで本質的に直線路であり、通路を流れるガスが触媒材料に接触するように触媒コーティングを配置できる壁によって画定される。フロースルー基材の流路は薄壁のチャンネルであり、これは、台形、長方形、正方形、正弦形、六角形、楕円形、円形など、任意の好適な断面形状及びサイズである。フロースルー基材は、以下にさらに記載するように、セラミック製又は金属製である。フロースルー基材は、例えば、約50in~約1200inの体積、約60セル/平方インチ(cpsi)~約1200cpsi又は約200~約900cpsiのセル密度(入口開口部)、又は例えば約300~約600cpsi及び約50~約400ミクロン又は約100~約200ミクロンの壁厚を有することができる。
【0114】
好適な基材は、任意の好適な耐火性材料、例えばコージエライト、コージエライト-α-アルミナ、アルミニウムチタネート、シリコンチタネート、シリコンカーバイド、シリコンニトライド、ジルコンムライト、リシア輝石、アルミナ-シリカ-マグネシア、ジルコンシリケート、シリマナイト、マグネシウムシリケート、ジルコン、ペタライト、α-アルミナ、アルミノシリケートなどで作られたセラミック基材とすることができる。
【0115】
本発明において好適な基材は、1つ以上の金属又は金属合金を含む金属とすることもできる。金属基材には任意の金属基材、例えば開口部又は「型抜き部分」をチャネル壁に有するものなどを含んでよい。金属基材は様々な形状、例えばペレット、波形シート又はモノリスフォームで用いてよい。金属基材の具体的な例には、耐熱性の卑金属合金、特に鉄が実質的な又は主要な成分であるものが含まれる。そのような合金は、ニッケル、クロム及びアルミニウムの1つ以上を含有し得、これら金属の合計は、有利には、各場合とも基材の質量に対して、少なくとも約15質量%の合金、例えば、約10~25質量%のクロム、約1~8質量%のアルミニウム及び約0~約20質量%のニッケルを含み得る。金属基材の例には、直線状のチャネルを有するもの、軸方向のチャネルに沿って突出したブレードを有し、ガスの流れを妨害し、チャネル間のガスの流れの連通を開くものなどがある。
【0116】
本発明において最も好ましい基材は、ウォールフローフィルタ基材である。ウォールフローフィルタ基材は、当業者の理解では、基材の縦軸に沿って延びる複数の微細で実質的に平行なガス流路を有し、一般的に、各流路は基材本体の一端で遮断され、交互の流路は反対側の端面で遮断される(「ウォールフローフィルタ」)。好適なフロースルー及びウォールフロー基材についても、例えば、国際出願公開第WO2016/070090号において教示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0117】
ウォッシュコートとして基材に触媒コーティングを適用することにより、様々な触媒機能又は触媒成分が提供されることが好ましい。
【0118】
ここで使用され、Heck,Ronald and Robert Farrauto,Catalytic Air Pollution Control,New York:Wiley-Interscience、2002年、第18~19頁に記載されているように、ウォッシュコート層は、モノリシック基材の表面に配置された、又は任意に下にあるウォッシュコート層の上に配置された、組成的に異なる材料の層を含む。ウォッシュコートは通常、酸化アルミニウムなどの高表面積担体と、白金族金属又は他の貴金属などの触媒成分から構成される。触媒機能又は材料は1つ以上のウォッシュコート層を含有することができ、そして各ウォッシュコート層はその厳密な組成に依存して固有の化学触媒機能を有することができる。
【0119】
よって本発明のSCR成分及びAMOx触媒成分は、1層、2層又はそれ以上のウォッシュコート層の形態で好ましくは適用することができる。ウォッシュコート層(単数又は複数)は、好適な基材上に被覆され、付着する。
【0120】
例えば、AMOx触媒成分を含有する組成物のウォッシュコート層は、貴金属又は白金族金属前駆体、好ましくは白金の混合物又は溶液を、好適な溶媒、例えば水中に調製することによって形成してよい。一般に、経済性及び環境面の観点から、貴金属又は白金のような白金族金属の可溶性化合物又は錯体の水溶液が好ましい。典型的には、貴金属又は白金族金属の前駆体は、担体上での前駆体の分散を達成するために、化合物又は錯体の形態で利用される。本発明において、「貴金属前駆体」又は「白金族金属前駆体」という用語は、焼成又は使用の初期段階において、分解するか又は触媒活性形態に変換する化合物、錯体などを意味する。好適な錯体又は化合物には、好ましくは、限定するものではないが、塩化白金(例えば[PtCl4]2-、[PtCl2-の塩)、白金水酸化物(例えば[Pt(OH)2-の塩)、白金アミン(例えば[Pt(NH2+、Pt(NH4+の塩)、白金水和物(例えば[Pt(OH2+の塩)、白金ビス(アセチルアセトネート)、及び混合化合物又は複合体(例えば、[Pt(NH(Cl)])が含まれる。代表的な市販の白金源は、Strem Chemicals Inc.社製の99%アンモニウムヘキサクロロプラチネートであり、これは他の貴金属を微量に含有し得る。しかしながら、本発明は、特定の種類、組成、又は純度の白金前駆体に限定されないことが理解されよう。当業者は、白金以外の金属から誘導された貴金属又は白金族金属の類似の錯体及び化合物前駆体にも精通しているであろう。
【0121】
貴金属前駆体又は白金族金属前駆体の混合物又は溶液は、いくつかの化学的手段の1つによって担体に添加される。これには、前駆体の溶液を担体に含浸させる方法があり、その後に酸性成分(例えば酢酸)又は塩基性成分(例えば水酸化アンモニウム)を組み込む固定工程を続けてよい。この湿潤固体は、化学的に還元又は焼成するか、そのまま使用することができる。或いは、担体を好適な媒体(例えば水)に懸濁させて、溶液中で前駆体と反応させてもよい。この後者の方法は、担体がゼオライトであり、前駆体をゼオライト骨格のイオン交換部位に固定することが望まれる場合に、より典型的である。追加の処理工程には、酸性成分(例えば酢酸)又は塩基性成分(例えば水酸化アンモニウム)による固定、化学還元、又は焼成が含まれてよい。
【0122】
SCR触媒機能のウォッシュコート層を利用する1つ以上の実施形態では、層は、周期表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、又はIIB族の1つからの金属が分散されたゼオライト又は非ゼオライト分子篩を含有することができる。この系列の例示的な金属は銅である。例示的な分子篩には、限定するものではないが、以下の結晶構造、CHA、BEA、FAU、MOR、及びMFIの1つを有するゼオライトが含まれる。ゼオライト上に金属を分散させるための好適な方法は、まず、好適な溶媒、例えば水中に、金属前駆体の混合物又は溶液を調製することである。一般に、経済性及び環境面の観点から、金属の可溶性化合物又は錯体の水溶液が好ましい。本発明の目的において、用語「金属前駆体」とは、ゼオライト担体上に分散して触媒活性金属成分をもたらすことができる任意の化合物、錯体などを意味する。例示的なIB族金属銅について、好適な錯体又は化合物には、限定するものではないが、無水及び水和硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、アセチルアセトナート銅、酸化銅、水酸化銅、及び銅アミンの塩(例えば[Cu(NH2+)が含まれる。代表的な市販の銅源は、Strem Chemicals,Inc.社の97%酢酸銅であり、これは微量の他の金属、特に鉄及びニッケルを含有し得る。しかしながら、本発明は、特定の種類、組成、又は純度の金属前駆体に限定されないことが理解されよう。分子篩を金属成分の溶液に添加して懸濁液を形成することができる。この懸濁液を反応させて、銅成分をゼオライト上に分布させることができる。この結果、銅は分子篩の外表面だけでなく、細孔チャネルにも分布することがある。銅は、銅(II)イオン、銅(I)イオン、又は酸化銅として分配される。銅が分子篩上に分配された後、固体は懸濁液の液相から分離され、洗浄され、乾燥される。得られた銅含有分子篩は、銅を固定するために焼成してもよい。
【0123】
本発明の1つ以上の実施形態によるウォッシュコート層を適用するために、SCR成分、アンモニア酸化(AMOx)触媒、又はそれらの混合物からなる触媒の細かく分離した粒子を、適切な媒体、例えば水に懸濁させて、スラリーを形成する。他の促進剤及び/又は安定剤及び/又は界面活性剤は、水又は水混和性の媒体中の混合物又は溶液としてスラリーに添加してよい。1つ以上の実施形態において、スラリーを粉砕し、実質的に全固体が平均直径で約10ミクロン未満、すなわち約0.1~8ミクロンの範囲の粒度を有する結果とする。粉砕は、ボールミル、連続型Eigerミル、又は他の類似の装置で達成してよい。1つ以上の実施形態において、懸濁液又はスラリーは、約2~約7未満のpHを有する。スラリーのpHは、必要に応じて適切な量の無機酸又は有機酸をスラリーに添加することによって調整してよい。スラリーの固形分は、例えば約20~60質量%、及びより具体的には約35~45質量%でよい。次いで基材をスラリー中に浸漬するか、又はそうでなければスラリーを基材上に被覆して、基材上に触媒層の所望の担持量が堆積されるようにしてもよい。その後、被覆された基材を約100℃で乾燥させ、例えば300~650℃で約1~約3時間加熱することによって焼成する。乾燥及び焼成は、典型的には空気中で行う。被覆、乾燥及び焼成プロセスは、担体上の触媒ウォッシュコート層の最終的な所望の重量を達成するために、必要に応じて繰り返してよい。いくつかの場合においては、触媒が使用に供され、運転の間に遭遇する高温にさらされるまで、液状及び他の揮発性成分の完全な除去は起こらない場合がある。
【0124】
焼成後、触媒ウォッシュコートの担持量は、基材の被覆質量及び非被覆質量の差を計算することによって決定することができる。当業者には明らかであるように、コーティングスラリーの固形分及びスラリー粘度を変えることにより、触媒担持量を変えることができる。或いは、基材を被覆スラリー中に繰り返し浸漬させ、その後続いて上記のように過剰のスラリーを除去することができる。
【0125】
本願で開示する触媒及び排気ガス処理システムは、ガソリンエンジンから発生する排気ガスに使用し、アンモニアの排出を低減することができる。
【0126】
さらに重要なことに、本発明の排気ガス処理システムは、AMOx触媒のような追加の酸化触媒を使用するか、又は排気ラインに位置した追加の選択的接触還元触媒(SCR)を使用することにより、ガソリンエンジンによって生成された排気処理ラインからアンモニアを除去することを可能にする。同時に、本発明の排気ガス処理システムが使用される場合、NOxパージは含まれず、及び/又はテールパイプで過剰なNOは形成されない。その結果、本発明は、ガソリンエンジンから発生する排気ガス処理ラインのためのアンモニアの効果的な除去機能を提供する一方で、NOx、HC、CO及び粒子状物質のパージは優れたままであり、特に、テールパイプにおけるNOx及び/又はNOの除去は、アンモニア除去機能の追加に含まれない。
【実施例
【0127】
ハノーバーエンジン研究所(HEL)のシャシーダイノ試験設備で、Euro6較正車両を使用した実験で、3つの異なるシステム構成を検証した。
【0128】
この車両には、必要な分析装置が近接結合触媒の直接上流に、ガソリン粒子フィルタ(GPF)の後ろ且つ床下にある最後のフィルタ部品の後に配置された。
【0129】
これらの装置には、限定するものではないが、主にフーリエ変換赤外(FT-IR)分光計が含まれ、エンジンの直後及び第1触媒の前(エンジンアウト)、GPFの後(ミッドパイプ)及び床下触媒の下流(テールパイプ)でNH排出を捕捉する。
【0130】
あらゆる実験で使用された試験サイクルはWLTC試験プロトコルである。この結果は、実走行エミッション(RDE)又はFTP試験サイクルなど、他の関連する試験サイクルでも有効である。
【0131】
3つの異なる排気ガスフィルタシステム(システム1、2及び3)を調査した。3つのシステム1~3の基本構成は、図1に示すとおりであり、以下に詳しく記載する。
【0132】
システム1(TWC+GPF+TWC)は、近接結合位置に三元変換触媒(TWC)(PGM担持量80g/ft及び容量1.25L)、GPF(1.16L)(非被覆で、TWCの直接後ろで同じキャニングに装着)、それに続く第2の三元変換触媒(uF-TWC、1.2L)を床下位置に含み、この触媒は、主にクリーンアップ用であることから、一般的に貴金属含有量はかなり低い(最大45g/ft)。下流の触媒も別個のキャニングに入れ、車両への実際のシステム適用に必要な特定の長さの配管を用いて、上流のキャニングから分離した。システム1は、ガソリン用途に適用される従来の構成を示し、参照システムの役割を果たした。
【0133】
システム2(TWC+GPF+SCR)は、近接結合位置にシステム1で使用したものと同じ三元変換触媒(TWC)及びGPF、それに続く選択的接触還元(SCR)配合物を床下位置に含んでいた。SCR触媒は、一般的なディーゼルシステムで使用されるCu担持ゼオライト含有触媒であり、貴金属を含まなかった。下流のSCR触媒の位置は、システム1のTWC+GPFキャニングから等距離にあり、床下位置に到達するガス放出と温度は、システム1の下流のTWCが受けるものと同様であった。
【0134】
システム3(TWC+GPF+AMOx)は、近接結合位置にシステム1及び2で使用したものと同じ三元変換触媒(TWC)及び同じGPF、それに続くアンモニア酸化触媒(AMOx)配合物を床下位置に含んでいた。AMOx触媒は、従来のCu担持ゼオライト含有触媒であり、貴金属の担持量は2~10g/ftと非常に低いものであった。下流のAMOx触媒の位置は、システム1及び2で使用されたTWC+GPFキャニングと等距離にあり、その結果、床下位置でのガス放出と温度は同程度となった。
【0135】
オーブンでのエージングは、制御されたフロー条件下で異なるガスを同時に供給するための複数のガスラインを備えた社内オーブンで行った。本研究で適用したシステム構成では、それぞれのモノリスが異なる目的に使用され、そして異なる温度に曝されるため、すべての触媒を別々にエージングした。
【0136】
近接結合位置の三元変換触媒(TWC)は、1100℃で4時間エージングした。システム1の床下に位置した第2の三元変換触媒(TWC)は、同じオーブン内で950℃で5時間エージングした。システム2のSCR触媒とシステム3のAMOx触媒は、それぞれ750℃で16時間のエージングを行った。エージングしたモノリスは缶に入れ、上述した構成と同様にそれぞれのシステムに入れた。
【0137】
実施例1:WLTC高負荷走行時のテールパイプアンモニア排出量
実施例1では、3つの異なる構成の性能特性を、それぞれの排気ガス処理システムのテールパイプに存在するアンモニア排出レベルに関して、上記で説明したようにEuro6車両を使用した世界調和軽負荷試験手順(WLTC、重駆動負荷)で調査した。
【0138】
図2に示すように、床下に位置した3つの追加触媒機能(TWC-UF、SCR-UF、AMOx-UF)は、床下に位置した触媒機能の入口で測定されたアンモニア排出量と比較して、アンモニア排出量を低減できることが判明した。
【0139】
しかし、床下に位置したシステム1の追加三元変換触媒(TWC)では、比較的限定的なアンモニア排出量の削減しかできなかった一方で、システム2及び3の2つの床下触媒SCR及びAMOxでは、床下に位置した触媒機能の入口で測定されたアンモニア排出量の大部分を除去できることが示された。試験結果によると、システム2及びシステム3の構成は、アンモニア排出レベルをそれぞれ80~95%削減することができた。システム3のAMOx触媒は、アンモニアの除去という点で、SCR触媒機能よりもさらに効果的であることが判明した。システム3では、システム3のテールパイプで測定すると、排気流からアンモニアはほぼ完全に除去されていた。
【0140】
実施例2:テールパイプの温度依存性とアンモニア排出量
実施例2では、床下に位置した3つの触媒機能の温度を、3つのシステム1~3すべてについて、時間に依存して調べた。結果を図3に示す。その結果、3つの構成すべてにおいて、床下位置での最高温度は約600℃よりも低いことが判明した。さらに、図3に示すように、3つの構成すべてにおいて、テールパイプでのアンモニア排出が測定された。システム2及び3は、排気ガス流からアンモニアをパージするのに非常に効果的であったが、床下に位置した第2三元変換触媒(TWC)を備えたシステム1は、少なくともアンモニアの排出を部分的に除去することができた。従って、システム2のSCR触媒機能及びシステム3のAMOx触媒機能は、床下に位置したSCR触媒又はAMOX触媒それぞれにおいて、時間又は温度に依存して貯蔵及び変換されるアンモニアの実質的な放出又は漏出を防ぐことができたと結論付けることができる。SCR(システム2)又はAMOx触媒機能(システム3)によって貯蔵されたアンモニアの高温での急激な放出は観察されなかった。
【0141】
実施例3:WLTC高負荷走行時のテールパイプでのNOx排出の影響
実施例3では、3つの異なる構成の性能を、窒素酸化物(NOx)のテールパイプ排出に関して、上記で説明したように、世界調和軽負荷試験手順(WLTC、重駆動負荷)で調べた。
【0142】
図4に示すデータは、システム3の追加的なAMOx触媒機能により、アンモニア排出を大幅に削減できる一方で、NOxテールパイプのレベルは依然として、床下に第2の三元変換触媒(TWC)を使用したシステム1の構成で見出されたNOx排出のレベルに匹敵することを示している。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】