(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】核酸送達
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20240201BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240201BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20240201BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20240201BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240201BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240201BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240201BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240201BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240201BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240201BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240201BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20240201BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240201BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240201BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240201BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240201BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240201BHJP
C12N 15/87 20060101ALI20240201BHJP
C07K 7/00 20060101ALI20240201BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
A61K48/00
A61K47/42
A61K47/44
A61K31/711
A61K31/7105
A61K31/713
A61K39/00 H
A61P35/00
A61P35/02
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A61P21/00
A61P21/04
A61P9/10
A61K47/24
A61K9/08
A61K47/12
C12N15/11 Z
C12N15/87 Z
C07K7/00
C12N15/09 200
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023546009
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-21
(86)【国際出願番号】 EP2022052145
(87)【国際公開番号】W WO2022162200
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523285546
【氏名又は名称】ヌンティウス セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】クウォク、 アルバート
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA11
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4H045AA10
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4H045EA20
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4H045FA10
(57)【要約】
本発明は、核酸などの治療用分子を哺乳動物細胞、並びにヒト及び動物の身体に送達することができる脂質/デンドリマー系を提供する。例えば、本発明は、リンパ系器官、骨格筋、脳、及び脂肪組織、並びに腫瘍組織、肝臓、及び肺への核酸の有効な送達を可能にする系を提供する。DNA及びRNAの送達が、提供される。特に、本発明の系は、mRNAを送達することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬における使用のための、ペプチドデンドリマーと、核酸と、脂質と、を含む、組成物であって、
前記ペプチドデンドリマーが、少なくとも、コアペプチド配列と、第1の分岐残基と、2つの第1のペプチドモチーフと、を含み、前記分岐残基が、リジン、2,4-ジアミノ酪酸、オルニチン、又はジアミノプロピオン酸であり、
前記核酸が、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、又は少なくとも50ヌクレオチドの核酸を含む、組成物。
【請求項2】
前記核酸が、RNAである、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記RNAが、mRNA、ssRNA、dsRNA、sgRNA、crRNA、tracrRNA、lncRNA、siRNA、saRNA、及び/又は自己増幅RNAから選択される、請求項2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記RNAが、mRNAである、請求項3に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記核酸が、DNAである、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記DNAが、ssDNA、dsDNA、プラスミド、及び/又はcDNAを含む、請求項5に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記組成物が、RNA核酸及びDNA核酸を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
前記RNA核酸及びDNA核酸が、単一核酸分子の一部である、請求項7に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
前記核酸が、修飾核酸を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
前記核酸が、導入遺伝子をコードし、標的細胞において前記導入遺伝子を発現することができる、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
前記使用が、内因性遺伝子の発現又は活性を調節することによる対象における疾患の治療を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
前記調節が、前記遺伝子の前記発現及び/又は前記遺伝子の更なるコピーの外因性発現の増加である、請求項11に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
前記調節が、前記遺伝子の前記発現の減少である、請求項11に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
前記内因性遺伝子が、タンパク質又はペプチドに翻訳される、請求項11~13のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
前記タンパク質又はペプチドが、抗原、ホルモン、受容体、キメラ抗原受容体、転写因子、並びに/又はサイトカイン、例えば、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-21、及び/若しくはインターフェロンを含む、請求項14に記載の使用のための組成物。
【請求項16】
前記導入遺伝子が、腫瘍抗原、ウイルスタンパク質、細菌タンパク質、又は哺乳動物に寄生する微生物のタンパク質を含む、請求項10に記載の使用のための組成物。
【請求項17】
前記組成物が、ワクチンである、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項18】
前記核酸が、自己増幅RNAを含むか又はコードする、請求項17に記載の使用のための組成物。
【請求項19】
前記使用が、前記対象における遺伝性障害の治療を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項20】
前記核酸が、前記対象において非機能的であるか、下方制御されているか、不活性であるか、又は損なわれている遺伝子の機能的バージョンを発現する、請求項19に記載の使用のための組成物。
【請求項21】
前記核酸が、ゲノムを編集するための系又は遺伝子発現を変化させるための系の1つ以上の成分をコードする、かつ/又は含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項22】
前記ゲノムを編集するための系又は遺伝子発現を変化させるための系が、CRISPR/Cas系である、請求項21に記載の使用のための組成物。
【請求項23】
前記核酸が、Casタンパク質若しくはペプチドをコードし、かつ/又はsgRNA、crRNA、及び/若しくはtracrRNAを含む、請求項21又は22に記載の使用のための組成物。
【請求項24】
前記核酸が、Casタンパク質又はペプチドをコードするmRNA、及びsgRNAを含むRNA配列を含む、請求項23に記載の使用のための組成物。
【請求項25】
前記Casタンパク質又はペプチドをコードするmRNA、及び前記sgRNAを含むRNA配列が、別個の分子である、請求項24に記載の使用のための組成物。
【請求項26】
前記sgRNA、crRNA、tracrRNA、及びCasタンパク質をコードする核酸のうちの1つ以上が、存在する場合、単一核酸の一部である、請求項23又は24に記載の使用のための組成物。
【請求項27】
前記sgRNA、crRNA、tracrRNA、及びCasタンパク質をコードする核酸のうちの1つ以上が、存在する場合、2つ以上の核酸上に存在する、請求項23又は24に記載の使用のための組成物。
【請求項28】
前記組成物が、脾臓、リンパ組織、肺、骨、胸腺、肝臓、腫瘍組織、心臓組織、骨格筋、腎臓、脂肪組織、及び/又は脳を標的とする、請求項1~27のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項29】
前記組成物が、脾臓、リンパ組織、肺、及び/又は骨を標的とする、請求項28に記載の使用のための組成物。
【請求項30】
前記核酸が、RNA、例えば、mRNAである、請求項29に記載の使用のための組成物。
【請求項31】
前記使用が、前記核酸が、白血球、例えば、Bリンパ球、Tリンパ球、単球、好中球、樹状細胞、マクロファージ、若しくは単球;リンパ節組織細胞、骨髄細胞、線維芽細胞、筋細胞、骨格筋細胞、内皮細胞、肝細胞、星細胞、ニューロン、アストロサイト、脾細胞、肺細胞、心筋細胞、腎細胞、脂肪細胞、幹細胞、及び/又は腫瘍細胞である細胞に送達されるように、前記組成物を対象に投与することを含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項32】
前記使用が、前記核酸が免疫細胞に送達されるように、前記組成物を対象に投与することを含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項33】
前記核酸が、前記細胞において免疫分子又は転写因子を発現する、請求項31又は32に記載の使用のための組成物。
【請求項34】
前記免疫分子が、T細胞受容体、キメラ抗原受容体、サイトカイン、デコイ受容体、抗体、共刺激受容体、共刺激リガンド、チェックポイント阻害剤、免疫コンジュゲート、又は腫瘍抗原である、請求項33に記載の使用のための組成物。
【請求項35】
前記細胞が、Bリンパ球、Tリンパ球、好中球、樹状細胞、マクロファージ、単球、骨髄由来サプレッサ細胞(MDSC)、腫瘍関連マクロファージ、又は腫瘍関連好中球である、請求項31~34のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項36】
前記核酸が、RNA、例えば、mRNAである、請求項35に記載の使用のための組成物。
【請求項37】
前記組成物が、前記対象におけるがんを治療する方法における使用のためのものである、請求項1~36のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項38】
前記がんが、血液がん、例えば、白血病、リンパ腫、骨髄腫、骨髄異形成症候群;又は肺がん、噴門がん、肉腫、若しくは肝臓がんである、請求項37に記載の使用のための組成物。
【請求項39】
前記方法が、抗がん剤の投与を含む、請求項37又は38に記載の使用のための組成物。
【請求項40】
前記組成物が、前記対象における肺疾患又は自己免疫疾患を治療する方法における使用のためのものである、請求項1~39のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項41】
前記方法が、前記対象におけるポンペ病、筋肉消耗性疾患、ミオパチー、又は筋ジストロフィー、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療である、請求項19~28のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項42】
前記核酸が、DNAである、請求項41に記載の使用のための組成物。
【請求項43】
前記方法が、前記対象における糖尿病性四肢虚血などの四肢虚血のための治療であり、前記導入遺伝子が、肝細胞増殖因子(HGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)及び/又は線維芽細胞増殖因子(FGF)である、請求項1~31のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項44】
前記2つの第1のペプチドモチーフが、独立して、単一のアミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、又はテトラペプチドモチーフからなる、請求項1~43のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項45】
前記ペプチドデンドリマーが、2つの第2の分岐残基(例えば、リジン)及び4つの第2のペプチドモチーフを更に含み、
前記第2の分岐残基のうちの一方が、前記第1のペプチドモチーフのうちの一方と共有結合し、他方の前記第2の分岐残基が、他方の前記第1のペプチドモチーフと共有結合し、各第2の分岐残基が、2つの第2のペプチドモチーフと共有結合する、請求項1~44のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項46】
前記4つの第2のペプチドモチーフが、独立して、単一のアミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、又はテトラペプチドモチーフからなる、請求項45に記載の使用のための組成物。
【請求項47】
前記ペプチドデンドリマーが、4つの第3の分岐残基(例えば、リジン)及び8つの第3のペプチドモチーフを更に含み、
各第2のペプチドモチーフが、各第3の分岐残基が1つの第2のペプチドモチーフと共有結合するように、前記第3の分岐残基のうちの1つとそれぞれ共有結合し、各第3の分岐残基が、2つの第3のペプチドモチーフと共有結合する、請求項45又は46に記載の使用のための組成物。
【請求項48】
前記8つの第3のペプチドモチーフが、独立して、単一のアミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、又はテトラペプチドモチーフからなる、請求項47に記載の使用のための組成物。
【請求項49】
前記第1、第2、及び/又は第3のペプチドモチーフが、塩基性側鎖を有するアミノ酸を含む、請求項44~48のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項50】
前記第1、第2、及び/又は第3のペプチドモチーフが、非極性側鎖を有するアミノ酸を含む、請求項44~49のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項51】
前記第1、第2、及び/又は第3のペプチドモチーフが、酸性側鎖を有するアミノ酸を含む、請求項44~50のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項52】
前記第1、第2、及び/又は第3のペプチドモチーフが、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸を含む、請求項44~51のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項53】
前記第1、第2、及び/又は第3のペプチドモチーフが、ロイシン(L)及び/又はアルギニン(R)残基を含む、請求項44~52のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項54】
前記コア配列が、少なくとも2つのアミノ酸を含む、請求項44~53のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項55】
前記コア配列が、30個までのアミノ酸を含む、請求項44~54のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項56】
前記コア配列が、ヒスチジンなどのイオン化可能なアミノ酸を含む、請求項44~54のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項57】
前記ペプチドデンドリマーが、表2に示される構造を含む、請求項1~56のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項58】
前記ペプチドデンドリマーが、組織及び/又は細胞標的化モチーフを更に含む、請求項1~57のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項59】
前記組織又は細胞標的化モチーフが、筋標的化モチーフ、例えば、GAASSLNIA(配列番号1)、インテグリン標的化モチーフ、例えば、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸、又は化学修飾、例えば、マンノース糖鎖付加を含む化学修飾を含む、請求項58に記載の使用のための組成物。
【請求項60】
前記ペプチドデンドリマーが、細胞透過性ペプチド(CPP)を更に含む、請求項1~59のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項61】
前記細胞透過性ペプチドが、ペプチド配列XRXRRBRRXRRBRXB(配列番号2)(式中、Xは6-アミノヘキサン酸であり、Bはベータ-アラニンである)を含む、請求項60に記載の使用のための組成物。
【請求項62】
前記細胞透過性ペプチドが、TAT由来配列を含む、請求項60に記載の使用のための組成物。
【請求項63】
前記ペプチドデンドリマーが、アルキル鎖、アルケニル鎖、抗体若しくはその断片、標的化ペプチド、糖、細胞透過性ペプチド、エンドソームエスケープペプチド、核局在化モチーフ、及び/又は脂肪酸を更に含む、請求項1~62のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項64】
前記アルキル鎖又はアルケニル鎖が、前記コアペプチド配列にコンジュゲートしている、請求項63に記載の使用のための組成物。
【請求項65】
前記アルキル鎖若しくはアルケニル鎖、抗体若しくはその断片、前記標的化ペプチド、糖、標的化ペプチド、細胞透過性ペプチド、エンドソームエスケープペプチド、核局在化モチーフ、及び/又は脂肪酸が、前記ペプチドデンドリマーのC末端にコンジュゲートしている、請求項63又は64に記載の使用のための組成物。
【請求項66】
前記アルキル鎖若しくはアルケニル鎖、抗体若しくは前記その断片、標的化ペプチド、糖、標的化ペプチド、細胞透過性ペプチド、エンドソームエスケープペプチド、核局在化モチーフ、及び/又は脂肪酸が、前記ペプチドデンドリマーのN末端にコンジュゲートしている、請求項63~65のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項67】
前記アルキル鎖又はアルケニル鎖が、約5個の炭素~約50個の炭素、好ましくは約12個~約30個の炭素を含む、請求項63~66のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項68】
前記脂質が、カチオン性脂質、中性脂質、アニオン性脂質、及び/又はイオン化可能な脂質を含む、請求項1~67のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項69】
前記脂質が、飽和脂肪酸を含む、請求項1~68のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項70】
前記脂質が、不飽和脂肪酸を含む、請求項1~69のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項71】
前記脂質が、1、2、3、4、5、又は6個の脂肪酸鎖を含む、請求項69又は70に記載の使用のための組成物。
【請求項72】
前記脂質が、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)及び/又はN-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)を含む、請求項1~71のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項73】
前記脂質が、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)及びジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)を含む、請求項1~72のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項74】
N/P比が、約0.01:1~100:1である、請求項1~73のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項75】
前記N/P比が、1:1~50:1である、請求項74に記載の使用のための組成物。
【請求項76】
対象への投与後に、肝臓よりも脾臓及び/又はリンパ節において、より高い割合の前記組成物が観察される、請求項75に記載の使用のための組成物。
【請求項77】
前記N/P比が、0.01:1~1:1である、請求項75に記載の使用のための組成物。
【請求項78】
対象への投与後に、肝臓よりも肺、脾臓、及び/又はリンパ節において、より高い割合の前記組成物が観察される、請求項77に記載の使用のための組成物。
【請求項79】
前記ペプチドデンドリマー、核酸、及び脂質が、正に荷電した粒子を形成する、請求項1~78のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項80】
前記ペプチドデンドリマー、核酸、及び脂質が、負に荷電した粒子又は中性電荷を有する粒子を形成する、請求項1~79のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項81】
標的組織又は細胞への前記核酸の送達が、脂質ベースの核酸送達系を使用した同じ組織又は細胞型への同じ核酸の送達と比較して、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、65%、75%、85%、90%、95%、100%増加する、請求項28~32のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項82】
前記標的組織が、脾臓、リンパ節、肺、肝臓、又は骨である、請求項81に記載の使用のための組成物。
【請求項83】
前記脂質ベースの核酸送達系が、DOTMA/DOPEである、請求項81又は82に記載の使用のための組成物。
【請求項84】
前記投与が、静脈内、筋肉内、腫瘍内、皮下、皮内、又は腹腔内である、請求項1~83のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項85】
前記組成物が、液体内に含まれる、請求項1~84のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項86】
ペプチドデンドリマーと、核酸と、脂質と、を含む組成物であって、前記ペプチドデンドリマーが、少なくとも、コアペプチド配列と、第1の分岐残基と、2つの第1のペプチドモチーフと、を含み、前記分岐残基が、リジン、2,4-ジアミノ酪酸、オルニチン、又はジアミノプロピオン酸であり、
前記核酸が、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、又は少なくとも50ヌクレオチドの一本鎖核酸を含む、組成物。
【請求項87】
前記一本鎖核酸が、RNAである、請求項86に記載の組成物。
【請求項88】
前記RNAが、mRNA、ssRNA、sgRNA、crRNA、tracrRNA、lncRNA、及び/又は自己増幅RNAから選択される、請求項87に記載の組成物。
【請求項89】
前記RNAが、mRNAである、請求項88に記載の組成物。
【請求項90】
前記組成物が、2つ以上のRNAを含む、請求項86~89のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項91】
前記一本鎖核酸が、ssDNAである、請求項86に記載の組成物。
【請求項92】
前記組成物が、RNA核酸及びDNA核酸を含む、請求項86~91のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項93】
前記RNA核酸及びDNA核酸が、単一核酸分子の一部である、請求項92に記載の組成物。
【請求項94】
前記一本鎖核酸が、修飾核酸を含む、請求項86~93のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項95】
前記一本鎖核酸が導入遺伝子をコードし、標的細胞において前記導入遺伝子を発現することができる、請求項86~94のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項96】
前記一本鎖核酸が、内因性遺伝子の発現又は活性を調節することができる、請求項86~95のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項97】
前記調節が、前記遺伝子の前記発現及び/又は前記遺伝子の更なるコピーの外因性発現の増加である、請求項96に記載の組成物。
【請求項98】
前記調節が、前記遺伝子の前記発現の減少である、請求項96に記載の組成物。
【請求項99】
前記内因性遺伝子が、タンパク質又はペプチドに翻訳される、請求項96~98のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項100】
前記タンパク質又はペプチドが、抗原、ホルモン、受容体、キメラ抗原受容体、転写因子、並びに/又はサイトカイン、例えば、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-21、及び/若しくはインターフェロンを含む、請求項99に記載の組成物。
【請求項101】
前記導入遺伝子が、ウイルスタンパク質、細菌タンパク質、及び/又は哺乳動物に寄生する微生物のタンパク質を含む、請求項95に記載の組成物。
【請求項102】
前記組成物が、ワクチンである、請求項86~101のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項103】
前記一本鎖核酸が、自己活性化RNAを含むか又はコードする、請求項108に記載の組成物。
【請求項104】
使用が、対象における遺伝性障害の治療を含む、請求項86~100のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項105】
前記核酸が、前記対象において非機能的であるか、下方制御されているか、不活性であるか、又は損なわれている遺伝子の機能的バージョンを発現する、請求項104に記載の組成物。
【請求項106】
前記一本鎖核酸が、ゲノムを編集するための系又は遺伝子発現を変化させるための系の1つ以上の成分をコードする、かつ/又は含む、請求項86~105のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項107】
前記ゲノムを編集するための系又は遺伝子発現を変化させるための系が、CRISPR/Cas系である、請求項106に記載の組成物。
【請求項108】
前記一本鎖核酸が、Casタンパク質若しくはペプチドをコードし、かつ/又はsgRNA、crRNA、及び/若しくはtracrRNAを含む、請求項106又は107に記載の組成物。
【請求項109】
前記一本鎖核酸が、Casタンパク質又はペプチドをコードするmRNA、及びsgRNAを含む、請求項108に記載の組成物。
【請求項110】
前記sgRNA、crRNA、tracrRNA、及びCasタンパク質をコードする核酸のうちの1つ以上が、存在する場合、単一核酸の一部である、請求項108又は109に記載の組成物。
【請求項111】
前記sgRNA、crRNA、tracrRNA、及びCasタンパク質をコードする核酸のうちの1つ以上が、存在する場合、2つ以上の核酸上に存在する、請求項108又は109に記載の組成物。
【請求項112】
前記組成物が、前記核酸を脾臓、リンパ組織、肺、骨、肝臓、心臓組織、腫瘍組織、骨格筋、腎臓、脂肪組織、及び/又は脳に標的化するのに適している、請求項86~111のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項113】
前記組成物が、前記核酸を脾臓、リンパ組織、肺、及び/又は骨に標的化するのに適している、請求項112に記載の組成物。
【請求項114】
前記核酸が、RNA、例えば、mRNAである、請求項113に記載の組成物。
【請求項115】
対象におけるがんを治療する方法における使用のための、請求項86~114のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項116】
前記がんが、血液がん、例えば、白血病、リンパ種若しくは骨髄腫、噴門がん、肉腫、又は肝臓がんである、請求項115に記載の使用のための組成物。
【請求項117】
前記方法が、抗がん剤の投与を含む、請求項115又は116に記載の使用のための組成物。
【請求項118】
対象における肺疾患又は自己免疫疾患を治療する方法における使用のための、請求項86~114のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項119】
対象におけるポンペ病、筋肉消耗性疾患、ミオパチー、又は筋ジストロフィー、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療における使用のための、請求項86~114のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項120】
前記核酸が、DNAである、請求項119に記載の使用のための組成物。
【請求項121】
前記組成物が、前記核酸を前記対象における白血球、例えば、Bリンパ球、Tリンパ球、単球、好中球、樹状細胞、マクロファージ、若しくは単球;リンパ節組織細胞、骨髄細胞、線維芽細胞、筋細胞、骨格筋細胞、肝細胞、星細胞、ニューロン、アストロサイト、脾細胞、肺細胞、心筋細胞、腎細胞、脂肪細胞、又は腫瘍細胞に送達する、請求項86~120のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項122】
前記使用が、前記核酸が免疫細胞に送達されるように、前記組成物を対象に投与することを含む、請求項86~121のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項123】
前記核酸が、前記細胞において免疫分子又は転写因子を発現する、請求項121又は122に記載の使用のための組成物。
【請求項124】
前記免疫分子が、T細胞受容体、サイトカイン、デコイ受容体、抗体、共刺激受容体、共刺激リガンド、チェックポイント阻害剤、免疫コンジュゲート、又は腫瘍抗原である、請求項123に記載の使用のための組成物。
【請求項125】
前記細胞が、Bリンパ球、Tリンパ球、単球、好中球、樹状細胞、マクロファージ、又は単球である、請求項121~124のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項126】
前記核酸が、RNA、例えば、mRNAである、請求項125に記載の使用のための組成物。
【請求項127】
前記2つの第1のペプチドモチーフが、独立して、単一のアミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、又はテトラペプチドモチーフからなる、請求項86~97のいずれか一項に記載の組成物又は請求項115~126のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項128】
前記ペプチドデンドリマーが、2つの第2の分岐残基(例えば、リジン)及び4つの第2のペプチドモチーフを更に含み、前記第2の分岐残基のうちの一方が、前記第1のペプチドモチーフのうちの一方と共有結合し、他方の前記第2の分岐残基が、他方の前記第1のペプチドモチーフと共有結合し、各第2の分岐残基が、2つの第2のペプチドモチーフと共有結合する、請求項127に記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項129】
前記4つの第2のペプチドモチーフが、独立して、モノペプチド、ジペプチド、トリペプチド、又はテトラペプチドモチーフからなる、請求項128に記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項130】
前記ペプチドデンドリマーが、4つの第3の分岐残基(例えば、リジン)及び8つの第3のペプチドモチーフを更に含み、
各第2のペプチドモチーフが、各第3の分岐残基が1つの第2のペプチドモチーフと共有結合するように、前記第3の分岐残基のうちの1つとそれぞれ共有結合し、各第3の分岐残基が、2つの第3のペプチドモチーフと共有結合する、請求項127又は128に記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項131】
前記8つの第3のペプチドモチーフが、独立して、モノペプチド、ジペプチド、トリペプチド、又はテトラペプチドモチーフからなる、請求項130に記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項132】
前記第1、第2、及び/又は第3のペプチドモチーフが、塩基性側鎖を有するアミノ酸を含む、請求項127~131のいずれか一項に記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項133】
前記第1、第2、及び/又は第3のペプチドモチーフが、非極性側鎖を有するアミノ酸を含む、請求項127~132のいずれか一項に記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項134】
前記第1、第2、及び/又は第3のペプチドモチーフが、酸性側鎖を有するアミノ酸を含む、請求項127~133のいずれか一項に記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項135】
前記第1、第2、及び/又は第3のペプチドモチーフが、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸を含む、請求項127~134のいずれか一項に記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項136】
前記第1、第2、及び/又は第3のペプチドモチーフが、ロイシン(L)及び/又はアルギニン(R)残基を含む、請求項127~135のいずれか一項に記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項137】
前記ペプチドデンドリマーが、表2に示される構造を含む、請求項86~136のいずれか一項に記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項138】
前記ペプチドデンドリマーが、組織及び/又は細胞標的化モチーフを含む、請求項86~137のいずれか一項に記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項139】
前記組織標的化モチーフが、筋標的化モチーフ、例えば、GAASSLNIA(配列番号1)、インテグリン標的化モチーフ、例えば、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸、又は化学修飾、例えば、マンノース糖鎖付加を含む化学修飾を含む、請求項138に記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項140】
前記ペプチドデンドリマーが、細胞透過性ペプチドを含む、請求項86~139のいずれか一項に記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項141】
前記細胞透過性ペプチドが、TAT由来配列を含む、請求項140に記載の使用のための組成物。
【請求項142】
前記細胞透過性ペプチドが、ペプチド配列XRXRRBRRXRRBRXB(配列番号2)(式中、Xは6-アミノヘキサン酸であり、Bはベータ-アラニンである)を含む、請求項140に記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項143】
前記ペプチドデンドリマーが、アルキル鎖、アルケニル鎖、抗体若しくはその断片、糖、及び/又は脂肪酸を含む、請求項86~142のいずれか一項に記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項144】
前記アルキル鎖又はアルケニル鎖が、前記コアペプチド配列にコンジュゲートしている、請求項143に記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項145】
前記アルキル鎖又はアルケニル鎖が、前記ペプチドデンドリマーのC末端にコンジュゲートしている、請求項144に記載の使用のための組成物。
【請求項146】
前記アルキル鎖又はアルケニル鎖が、前記ペプチドデンドリマーのN末端にコンジュゲートしている、請求項144に記載の使用のための組成物。
【請求項147】
前記アルキル鎖又はアルケニル鎖が、約5個の炭素~約50個の炭素、好ましくは約12個~約30個の炭素を含む、請求項143~146のいずれか一項に記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項148】
前記ペプチドデンドリマーが、前記ペプチドデンドリマーのC末端にコンジュゲートされた脂肪酸を含む、請求項143に記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項149】
前記ペプチドデンドリマーが、前記ペプチドデンドリマーのN末端にコンジュゲートされた脂肪酸を含む、請求項143に記載の使用のための組成物。
【請求項150】
前記脂質が、カチオン性脂質、中性脂質、アニオン性脂質、及び/又はイオン化可能な脂質を含む、請求項86~149のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項151】
前記脂質が、飽和脂肪酸を含む、請求項86~150のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項152】
前記脂質が、不飽和脂肪酸を含む、請求項86~151のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項153】
前記脂質が、1、2、3、4、5、又は6個の脂肪酸鎖を含む、請求項151又は152に記載の使用のための組成物。
【請求項154】
前記脂質が、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)及び/又はN-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)を含む、請求項86~153のいずれか一項に記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項155】
前記脂質が、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)及びジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)を含む、請求項86~154のいずれか一項に記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項156】
N/P比が、約0.01:1~100:1である、請求項86~155のいずれか一項に記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項157】
前記N/P比が、1:1~50:1である、請求項156に記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項158】
対象への投与後に、肝臓よりも脾臓及び/又はリンパ節において、より高い割合の前記組成物が観察される、請求項157に記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項159】
前記N/P比が、0.01:1~1:1である、請求項156に記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項160】
対象への投与後に、肝臓よりも肺、脾臓、及び/又はリンパ節において、より高い割合の前記組成物が観察される、請求項159に記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項161】
標的細胞を前記組成物とインビトロで接触させた後、前記標的細胞への前記核酸の送達が、脂質ベースの核酸送達系を使用した同じ細胞型への同じ核酸の送達と比較して、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、65%、75%、85%、90%、95%、100%増加する、請求項86~160のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項162】
前記標的細胞が、がん細胞又は免疫細胞である、請求項161に記載の使用のための組成物。
【請求項163】
前記脂質ベースの核酸送達系が、Lipofectamine 2000である、請求項161又は162に記載の使用のための組成物。
【請求項164】
前記ペプチドデンドリマー、核酸、及び脂質が、正に荷電した粒子を形成する、請求項86~163のいずれか一項に記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項165】
前記組成物が、液体内に含まれる、請求項86~164のいずれか一項に記載の組成物又は使用のための組成物。
【請求項166】
前記組成物が、粉末組成物である、請求項86~165のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項167】
核酸の送達を必要とする対象の細胞内へ核酸を送達する方法であって、薬学的有効量の請求項1~165のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸などの治療用分子を哺乳動物細胞、並びにヒト及び動物の身体に送達することができる組成物に関する。特定の細胞型への送達、例えば、リンパ組織及び循環中の白血球への送達が示されている。特定の器官及び組織への送達も示されている。例えば、本発明は、脾臓、リンパ系器官、骨格筋、脳、及び脂肪組織、並びに肺、腫瘍組織、心臓、骨格筋、脂肪組織、脳、肝臓、及び腎臓への核酸の有効な送達を可能にする組成物を提供する。DNA及びRNAの送達が、提供される。特に、mRNAの送達が示されている。
【背景技術】
【0002】
ヘルスケアを変えるための次世代の精密医薬品としての核酸療法の完全な可能性を実現するために、薬物送達の重要な課題に対処する必要がある。現在のウイルス及び非ウイルスベクタープラットフォームの限界は、開発を著しく妨げており、多くの療法は、オフターゲット効果、免疫系の活性化、及び大規模製造の困難に起因して、臨床転換段階で失敗している。
【0003】
核酸のインビボ送達の状況において、ウイルス由来の薬剤は、最も強力なベクターであり、臨床において非常に進歩しているものもある(Sheridan et al,2011)。特に、アデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus、AAV)は、インビボ送達のための有効な系である(Wang et al,2019)。しかしながら、このような系の適用は、5kb未満のDNAを輸送することができるのみであり、RNA又はより大きなDNAを輸送することができないので、限定される。更に、ウイルスベクターの進歩にもかかわらず、潜在的なランダム挿入及び免疫毒性のような問題が、この種の核酸送達ベクターの使用に関連している。例えば、AAV送達は、特に高用量が肝臓以外の標的組織に必要とされる場合、高度に免疫原性であり得る。AAV送達系はまた、反復投与について制限されている。患者は、典型的には、AAV送達系に対する免疫を獲得し、反復投与が不可能となる。最後に、AAV送達系の製造は高価であり、大規模かつ適正製造規範(Good Manufacturing Practice、GMP)グレードで製造することが困難である。
【0004】
ウイルス系の欠点を考慮して、インビボで細胞及び組織に核酸を送達するための非ウイルスベクターが調査されている。siRNA及びアンチセンスオリゴヌクレオチド(antisense oligonucleotide、ASO)などのより小さな核酸の送達のために、様々な送達技術が開発されている。これらには、siRNA又はASOが抗体又はリガンドにコンジュゲートしているバイオコンジュゲートオリゴヌクレオチド送達系が含まれる(Benizri et al,2019)。しかしながら、siRNA及びASO療法は、遺伝子発現ではなく、遺伝子サイレンシング又はエクソンスキッピングのみを達成することができる。多くの疾患について、DNA又はmRNAを有する機能的遺伝子を発現することは有利である。プラスミドDNA又はmRNAなどの大きな遺伝子ペイロードの有効な送達のためにコンジュゲート系を適用することは困難である。プラスミドDNA又はmRNAは、負に荷電した大きな分子であり、負に荷電した細胞膜を容易に通過することができない。送達ビヒクルがそれらをカプセル化し、有効な送達のために電荷を中和する場合に有用である。
【0005】
非ウイルス送達ビヒクルを封入するものとしての脂質ナノ粒子(lipid nanoparticle、LNP)は、例えば、COVID-19ワクチンにおけるmRNA送達に使用されている(Qui et al,2021)。ウイルスと戦うための免疫系を育てるには、比較的少数の免疫細胞及び筋肉細胞を注射部位に局所的にトランスフェクトすれば十分である。したがって、RNAベースのCOVID-19ワクチンが筋肉内投与される。しかしながら、広範な疾患は、特定の型の多くの細胞がトランスフェクトされる場合にのみ効果的に治療することができ、静脈内注射が必要となり得る。臨床で現在使用されているLNPの表面特性は、静脈内投与された場合に肝臓を標的とするのにそれらを良好に適合させる。しかしながら、現在臨床で使用されているLNPは、多くの他の組織を標的とするのにはあまり適していない。
【0006】
例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(dioleoylphosphatidylethanolamine、DOPE)などの非荷電脂質及び/又は1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパンクロリド(1,2-dioleoyl-3-trimethylammonium-propane chloride、DOTAP)及びN-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(N-[1-(2,3-dioleyloxy)propyl]-N,N,N-trimethylammonium chloride、DOTMA)などのカチオン性脂質を含む、様々なリポソームベースの系も同様に調査されている(Braum,2019、Ren et al,2000)。同様のリポソームが核酸送達のために臨床で使用されており、中程度の有効性を示している。
【0007】
脂質ベースのベクターへのペプチドの付加が調査されている。ペプチド/脂質ハイブリッド系では、ペプチド及び脂質が核酸と会合して、細胞によって内在化され得るナノ粒子を形成する。ペプチド要素は、直鎖状(Kwok et al,2016)であってもよく、ペプチドデンドリマー(Kwok et al,2013)などの分岐状であってもよい。しかしながら、ペプチド/脂質ハイブリッド系に対するこの以前の研究は、インビボ条件とは実質的に異なる無血清インビトロ条件において、二本鎖プラスミドDNA(plasmid DNA、pDNA)及び短鎖干渉RNA(short interfering RNA、siRNA)に対してのみ実施された。この系がインビボでの核酸送達のために使用され得るかどうかは明らかではなかった。ペプチドデンドリマー/脂質ナノ粒子を使用する短い一本鎖オリゴヌクレオチドの送達のみが、インビボで報告されており(Saher et al,2018、Saher et al,2019)、ASO単独と比較して、ASO肝臓送達における20~30%の低い増加が観察されている。このデータから、ペプチドデンドリマー系は、mRNAなどの更に大きな核酸をインビボで組織に送達することができない可能性があると結論付けることができる。mRNAなどの長い核酸の送達は、ペプチドデンドリマー/脂質ハイブリッド系を用いて以前にインビボで実証されたことがない。
【0008】
本発明は、上記の考慮事項に鑑みてなされたものである。
【発明の概要】
【0009】
核酸療法の開発は、効率的な核酸送達に依存する。本発明者らは、ペプチドデンドリマーを使用して、核酸送達のためのフレームワークを開発した。これらのデンドリマーは、デンドリマー分子内で分岐単位として作用する「分岐残基」の間に1、2、3、又は4個のアミノ酸残基を示す分岐ペプチドである。本発明は、驚くべきことに、より大きな核酸(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ASOよりも大きい)を送達するのに有効である。ASOなどの一部のより小さな核酸は、ベクター系がなくても細胞に容易に取り込まれるが、本発明の組成物は、mRNAなどのより大きな核酸の効果的な送達を可能にする。これは、ウイルス送達ベクターを必要とすることなく、CRISPR媒介性遺伝子編集及び関連技術などの分野を臨床応用に開放する。
【0010】
肝臓をバイパスする臨床mRNA又はCRISPRカセット(すなわち、sgRNA及びCas9 mRNA)送達系が依然として欠如しているので、組織特異的mRNA送達系を特異的に開発することは、著しい進歩を意味する。本発明は、細胞中のCRISPRカセット及びmRNAを様々な組織、特に肺及び免疫細胞に富む組織(脾臓、リンパ節、及び骨髄を含む)に効果的に送達することができる。これにより、肝外組織に対するmRNA及びCRISPR療法の開発が可能になる。免疫細胞、更には、単球、マクロファージ、好中球、及び樹状細胞を含む骨髄細胞にmRNAを送達することができることにより、この技術は、全てのがん型(固形腫瘍、及び骨髄異形成症候群(Myelodysplastic Syndrome、MDS)及び慢性骨髄単球性白血病(Chronic Myelomonocytic Leukemia、CMML)などの血液がん、自己免疫疾患(例えば、リウマチ性関節炎、クローン病、ブドウ膜炎、炎症性大腸炎)、並びにゴーシェ病などの他の免疫細胞関連障害を含む、を治療するために開発されることが可能になる。本発明はまた、mRNAが肺及び/又は免疫細胞に送達されることを可能にし、肺関連疾患(例えば、嚢胞性線維症及び慢性閉塞性肺疾患)の治療を可能にする。
【0011】
本発明者らはまた、それらのデンドリマーベースの系が驚くほど汎用性であることを見出した。DNA及びRNA分子は、ある範囲の第1世代、第2世代、及び第3世代デンドリマーを使用して送達することができる。一例では、脂質と会合したG1,2,3-KLデンドリマー(「第3世代」デンドリマー)などのデンドリマーに基づくベクター系は、Lipofectamine 2000などのいくつかの主要な市販試薬と比較して、DNAの細胞トランスフェクションを6~10倍改善することができる。別の例では、脂質と会合したG1,2-RL,3-LRデンドリマー(「第3世代」デンドリマー)などのデンドリマーに基づくベクター系は、Lipofectamine 2000などのいくつかの主要な市販試薬と比較して、mRNAなどの細胞トランスフェクション核酸を10倍改善することができる。更に、特定の器官及び組織を標的とすることができる。以下により詳細に記載されるように、本発明者らは、デンドリマーベースの系が、驚くほど頑強かつ汎用性であり、血清の存在下、インビトロで高い活性を示し、インビボで予想外の組織標的化特性を示すことを見出した。DNA及びRNAの効果的な送達を、以下で考察する。
【0012】
本発明者らは、DNA送達のために、G1,2,3-KL及びG1,2,3-RL(「第3世代」デンドリマー)並びにある程度までG1,2-KL、G1,2-RL(両方とも「第2世代」デンドリマー)が、血清の存在下でHeLa及びNeuro2A細胞をトランスフェクトすることができることを見出した。(血清成分は、アルブミンなどの成分がカチオン性製剤に干渉し得るので、インビボDNA送達、特に全身送達に関する課題を示す)。この予想外の発見により、本発明者らは、細胞侵入の根底にある機構を調査し、このベクター系の能力をインビボで評価するに至った。驚くべきことに、G1,2,3-RLベースのベクターは、全身送達後の特定の組織への機能的核酸の有効な送達を媒介することが見出された。肝臓及び骨格筋は、高度に標的となる。エンドサイトーシス経路分析により、G1,2,3-RL DNA複合体がクラスリン、カベオラ媒介性エンドサイトーシス、及びマクロピノサイトーシスの両方を介してDNAを送達することが示される。
【0013】
本発明者らは、mRNA送達のために、第1又は第2世代デンドリマー(例えば、RHCG1-R、RHCG1,2-R、RHCG1-LR、RHCG1-RL、2-LR)が、細胞を効果的にトランスフェクトし得、第3世代デンドリマーと同様のトランスフェクション効率を媒介し得ることを見出した(血清を含む完全成長培地条件下でのHeLa細胞のトランスフェクションの有効性を示す
図28Aを参照されたい)。これは、RNA送達のためのハイブリッド系の特定の汎用性を示す。
【0014】
本発明において使用されるデンドリマーは、第1、第2、又は第3世代ペプチドデンドリマーであり、これは、そのペプチドデンドリマーが、リジンなどの「分岐」残基間に散在するペプチドモチーフ(典型的にはジペプチドモチーフである)の最大3つの「層」を有することを意味する。第1世代デンドリマーは、N末端からC末端への配向で示され、Lysを分岐単位とする以下の構造を有する。
(N末端-Pep1)2-Lys-(コア)-(C末端)
【0015】
第2世代デンドリマーは、N末端からC末端への配向で示され、Lysを分岐単位とする以下の構造を有する。
(N末端-Pep2)4-Lys2-(Pep1)2-Lys-(コア)-(C末端)
【0016】
第3世代デンドリマーは、N末端からC末端への配向で示され、Lysを分岐単位とする以下の構造を有する。
(N末端-Pep3)8-Lys4-(Pep2)4-Lys2-(Pep1)2-Lys-(コア)-(C末端)
【0017】
第3世代デンドリマーは、
図31において図式的に表される(左側にN末端及び右側にC末端を有する)。
【0018】
丸は、コア配列を表す。各三角は、リジンなどの分岐残基を表す。各長方形は、ペプチドモチーフを表す。第3世代デンドリマーの第1の層には2つのペプチドモチーフがあり、第2の層には4つのペプチドモチーフがあり、第3の層には8つのペプチドモチーフがある。N末端及びC末端は、本明細書で考察されるように、更なる化学モチーフで誘導体化されてもよい。例えば、誘導体化されていない実施形態では、C末端はカルボン酸であるが、他の実施形態では、デンドリマーを合成するために使用される化学経路の結果として、C末端は、例えば、一級アミド基であるCONH2を(COOHの代わりに)含むように誘導体化される。標的化部分(例えば、抗体、ペプチド基、糖基、及び/又は脂質鎖)などの機能的に重要な誘導体化も想定され、これらの部分は、N末端及び/若しくはC末端に、又はデンドリマーに沿った他の位置に結合することができる。
【0019】
本明細書に記載されているように、デンドリマーは、第1、第2、又は第3世代であり得る。これは、構造的に次のように定義することができる。第1世代デンドリマーは、コアペプチド配列と、第1の分岐残基と、2つの第1のペプチドモチーフと、を含む。2つの第1のペプチドモチーフは、独立して、単一のアミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、又はテトラペプチドモチーフからなる。第2世代デンドリマーは、2つの第2の分岐残基(例えば、リジン)及び4つの第2のペプチドモチーフを更に含み、第2の分岐残基のうちの一方は、第1のペプチドモチーフのうちの一方と共有結合し、他方の第2の分岐残基は、他方の第1のペプチドモチーフと共有結合し、各第2の分岐残基は、2つの第2のペプチドモチーフと共有結合する。4つの第2のペプチドモチーフは、独立して、単一のアミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、又はテトラペプチドモチーフからなる。第3世代デンドリマーは、4つの第3の分岐残基(例えば、リジン)及び8つの第3のペプチドモチーフを更に含み、各第2のペプチドモチーフは、各第3の分岐残基が1つの第2のペプチドモチーフと共有結合するように、第3の分岐残基のうちの1つとそれぞれ共有結合し、各第3の分岐残基は、2つの第3のペプチドモチーフと共有結合する。8つの第3のペプチドモチーフは、独立して、単一のアミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、又はテトラペプチドモチーフからなる。第1、第2、及び第3のペプチドモチーフの各々は、存在する場合、(1)塩基性側鎖を有するアミノ酸、例えば、限定されないが、リジン(K)又はアルギニン(R)又はヒスチジン(H)、(2)酸性側鎖を有するアミノ酸、例えば、限定されないが、アスパラギン酸(D)及びグルタミン酸(E)、(3)非極性側鎖を有するアミノ酸、例えば、限定されないが、グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、ベータ-アラニン(B)、トリプトファン(W)、プロリン(P)、アミノヘキサン酸(X)、及びシステイン(C)、並びに(4)非荷電極性側鎖を有するアミノ酸、例えば、限定されないが、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、及びチロシン(Y)を含み得る。
【0020】
好ましいデンドリマーを以下の表2に示す。特定の例を特に説明する。例えば、各ペプチドモチーフがArg-Leu(RL)ジペプチドであるデンドリマーでは、この構造は、G1-RL、G1,2-RL、及びG1,2,3-RLと表すことができる。各ペプチドモチーフがLys-Leu(KL)ジペプチドであるデンドリマーでは、この構造は、G1-KL、G1,2-KL、及びG1,2,3-KLと表される。各ペプチドモチーフがLeu-Arg(LR)ジペプチドであるデンドリマーでは、この構造は、G1-LR、G1,2-LR、及びG1,2,3-LRと表される。
【0021】
(「G1」、「G2」、及び「G3」は、それぞれ、第1、第2、及び第3の層の「世代1」、「世代2」、及び「世代3」ペプチドモチーフを指す。各アミノ酸残基は、L-アミノ酸又はD-アミノ酸であり得る。D-アミノ酸は、一文字コードの小文字を使用して示され得る。あるいは、各アミノ酸がD-アイソフォームであるデンドリマーは、デンドリマーの短縮形表記の前に「D-」を先行させて書くことができる。)
【0022】
したがって、第1の態様では、本発明は、医薬における使用のための組成物であって、第1、第2、又は第3世代ペプチドデンドリマーと、核酸と、脂質と、を含む、組成物を提供する。組成物は、核酸及び脂質を更に含む。ペプチドデンドリマーは、少なくとも、コアペプチド配列と、第1の分岐残基と、2つの第1のペプチドモチーフと、を含む。分岐残基は、リジン、2,4-ジアミノ酪酸、オルニチン、又はジアミノプロピオン酸であってもよい。核酸は、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、又は少なくとも100ヌクレオチドの核酸を含む。
【0023】
第2の態様では、本発明は、ペプチドデンドリマーと、核酸と、脂質と、を含む組成物であって、ペプチドデンドリマーが、少なくとも、コアペプチド配列と、第1の分岐残基と、2つの第1のペプチドモチーフと、を含む、組成物を提供する。分岐残基は、リジン、2,4-ジアミノ酪酸、オルニチン、又はジアミノプロピオン酸であってもよい。核酸は、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、又は少なくとも100ヌクレオチドの一本鎖核酸を含む。
【0024】
第3の態様では、本発明は、核酸の送達を必要とする対象の細胞内へ核酸を送達する方法であって、薬学的有効量の組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。組成物は、ペプチドデンドリマーと、核酸と、脂質と、を含み、ペプチドデンドリマーは、少なくとも、コアペプチド配列と、第1の分岐残基と、2つの第1のペプチドモチーフと、を含む。分岐残基は、リジン、2,4-ジアミノ酪酸、オルニチン、又はジアミノプロピオン酸であってもよい。核酸は、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、又は少なくとも100ヌクレオチドの核酸を含む。核酸は、一本鎖であってもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、核酸は、RNAである。例えば、RNAは、mRNA、ssRNA、dsRNA、sgRNA、crRNA、tracrRNA、lncRNA、siRNA、saRNA、及び/又は自己増幅RNAから選択され得る。好ましくは、RNAは、mRNAである。
【0026】
いくつかの実施形態では、核酸は、DNAである。例えば、DNAは、ssDNA、dsDNA、プラスミド、及び/又はcDNAを含んでもよい。
【0027】
疑義を避けるために、組成物は、2つ以上の核酸(例えば、2つ以上のタイプのRNA分子)を含んでもよい。同様に、組成物は、2つ以上の脂質を含んでもよい。組成物は、2つ以上のペプチドデンドリマーを含んでもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、組成物は、RNA核酸及びDNA核酸を含む。RNA核酸及びDNA核酸は、単一核酸分子の一部であってもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、核酸は、修飾核酸を含む。例示的な核酸修飾が、本明細書に記載される。
【0030】
好ましくは、核酸は、導入遺伝子をコードし、標的細胞において導入遺伝子を発現することができる。導入遺伝子は、タンパク質又はペプチドであってもよい。更に又はあるいは、核酸は、内因性遺伝子の発現又は活性を調節することができる。調節は、遺伝子の発現及び/若しくは遺伝子の更なるコピーの外因性発現の増加であり得るか、又は調節は、遺伝子の発現の減少であり得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、調節された内因性遺伝子は、タンパク質又はペプチドを発現する遺伝子である。
【0032】
いくつかの実施形態では、タンパク質又はペプチドは、抗原、ホルモン、受容体、キメラ抗原受容体、転写因子、及び/又はサイトカインを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、腫瘍抗原、ウイルスタンパク質、細菌タンパク質、又は哺乳動物に寄生する微生物のタンパク質を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、組成物は、ワクチンとして使用することができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、核酸は、自己増幅RNAを含むか又はコードする。
【0036】
いくつかの実施形態では、使用は、対象における遺伝性障害の治療を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、核酸は、対象において非機能的であるか、下方制御されているか、不活性であるか、又は損なわれている遺伝子の機能的バージョンを発現する。
【0038】
いくつかの実施形態では、核酸は、ゲノムを編集するための系又は遺伝子発現を変化させるための系の1つ以上の成分をコードする、かつ/又は含む。例えば、ゲノムを編集するための系又は遺伝子発現を変化させるための系は、CRISPR/Cas系であってもよい。核酸は、Casタンパク質若しくはペプチドをコードしてもよく、かつ/又はsgRNA、crRNA、及び/若しくはtracrRNAを含む。核酸は、Casタンパク質又はペプチドをコードするmRNA、及びsgRNAを含むRNA配列を含んでもよい。組成物は、Casタンパク質又はペプチドをコードするmRNA、及びsgRNAを含む別のRNAを(別々の分子として)含み得る。いくつかの実施形態では、sgRNA、crRNA、tracrRNA、及びCasタンパク質をコードする核酸のうちの1つ以上が、存在する場合、単一核酸の一部である。いくつかの実施形態では、sgRNA、crRNA、tracrRNA、及びCasタンパク質をコードする核酸のうちの1つ以上が、存在する場合、2つ以上の核酸上に存在する。
【0039】
いくつかの実施形態では、組成物は、脾臓、リンパ組織、骨格筋、脳、及び脂肪組織、並びに肺、腫瘍組織、心臓、骨格筋、脂肪組織、脳、肝臓、及び腎臓を標的とする。
【0040】
いくつかの実施形態では、組成物は、脾臓、リンパ組織、肺、及び/又は骨を標的とする。これらの実施形態では、核酸は、RNA、例えば、mRNAであってもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、核酸は、白血球、例えば、Bリンパ球、Tリンパ球、単球、好中球、樹状細胞、マクロファージ、若しくは単球;リンパ節組織細胞、骨髄細胞、線維芽細胞、筋細胞、骨格筋細胞、内皮細胞、肝細胞、星細胞、ニューロン、アストロサイト、脾細胞、肺細胞、心筋細胞、腎細胞、脂肪細胞、幹細胞、及び/又は腫瘍細胞である細胞に送達される。
【0042】
いくつかの実施形態では、組成物は、核酸が免疫細胞に送達されるように、対象に投与される。
【0043】
いくつかの実施形態では、核酸は、標的細胞において免疫分子又は転写因子を発現する。免疫分子は、T細胞受容体、キメラ抗原受容体、サイトカイン、デコイ受容体、抗体、共刺激受容体、共刺激リガンド、チェックポイント阻害剤、免疫コンジュゲート、又は腫瘍抗原であってもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、細胞は、Bリンパ球、Tリンパ球、単球、好中球、樹状細胞、マクロファージ、単球、骨髄由来サプレッサ細胞(myeloid derived suppressor cell、MDSC)、腫瘍関連マクロファージ、又は腫瘍関連好中球である。
【0045】
いくつかの実施形態では、核酸は、RNA、例えば、mRNAである。
【0046】
いくつかの実施形態では、組成物は、対象におけるがんを治療する方法における使用のためのものである。がんは、血液がん、例えば、白血病、リンパ腫、骨髄腫、若しくは骨髄異形成症候群;又は肺がん、噴門がん、肉腫、若しくは肝臓がんであってもよい。治療はまた、抗がん剤の投与を含んでもよい。がんは、非小細胞肺がん、進行性黒色腫、前立腺がん、卵巣がん、乳がん、肺がん、胆管がん(Bile duct cancer)(胆管がん(Cholangiocarcinoma))、胆のうがん、神経内分泌腫瘍、肝細胞がん、結腸直腸がん、膵臓がん、及び固形腫瘍であってもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、組成物は、肺疾患を治療する方法における使用のためのものである。例えば、組成物は、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease、COPD)又は嚢胞性線維症(cystic fibrosis、CF)の治療における使用のためのものであってもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、組成物は、対象における自己免疫疾患を治療する方法における使用のためのものである。
【0049】
いくつかの実施形態では、組成物は、対象におけるポンペ病、筋肉消耗性疾患、ミオパチー、又は筋ジストロフィー、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療における使用のためのものである。これらの実施形態では、核酸は、DNAであってもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、組成物は、対象における糖尿病性四肢虚血などの四肢虚血のための治療における使用のためのものであり、導入遺伝子が、肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor、HGF)、血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor、VEGF)及び/又は線維芽細胞増殖因子(Fibroblast growth factor、FGF)である。
【0051】
いくつかの実施形態では、2つの第1のペプチドモチーフは、独立して、単一のアミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、又はテトラペプチドモチーフからなる。
【0052】
いくつかの実施形態では、ペプチドデンドリマーは、2つの第2の分岐残基(例えば、リジン)及び4つの第2のペプチドモチーフを更に含み、第2の分岐残基のうちの一方は、第1のペプチドモチーフのうちの一方と共有結合し、他方の第2の分岐残基は、他方の第1のペプチドモチーフと共有結合し、各第2の分岐残基は、2つの第2のペプチドモチーフと共有結合する。
【0053】
いくつかの実施形態では、4つの第2のペプチドモチーフは、独立して、単一のアミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、又はテトラペプチドモチーフからなる。
【0054】
いくつかの実施形態では、ペプチドデンドリマーは、4つの第3の分岐残基(例えば、リジン)及び8つの第3のペプチドモチーフを更に含み、各第2のペプチドモチーフは、各第3の分岐残基が1つの第2のペプチドモチーフと共有結合するように、第3の分岐残基のうちの1つとそれぞれ共有結合し、各第3の分岐残基は、2つの第3のペプチドモチーフと共有結合する。
【0055】
いくつかの実施形態では、8つの第3のペプチドモチーフは、独立して、単一のアミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、又はテトラペプチドモチーフからなる。
【0056】
各ペプチドモチーフは、独立して、天然に存在するL-若しくはD-アミノ酸及び/又は天然に存在しないL-若しくはD-アミノ酸、例えば、ベータ-アラニン(B)又はアミノヘキサン酸(X)を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、第1、第2、及び/又は第3のペプチドモチーフは、塩基性側鎖を有するアミノ酸を含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、コア配列は、ヒスチジンなどのイオン化可能な基を有するアミノ酸残基を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、第1、第2、及び/又は第3のペプチドモチーフは、非極性側鎖を有するアミノ酸を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、第1、第2、及び/又は第3のペプチドモチーフは、酸性側鎖を有するアミノ酸を含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、第1、第2、及び/又は第3のペプチドモチーフは、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、第1、第2、及び第3のペプチドモチーフ(存在する場合)は、a)アルギニン(R)若しくはリジン(K);及び/又はb)ロイシン(L)、バリン(V)、ヒスチジン(H)、若しくはイソロイシン(I)を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、第1、第2、及び/又は第3のペプチドモチーフは、ロイシン(L)及び/又はアルギニン(R)残基を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、ペプチドデンドリマーは、表2に記載される構造を含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、ペプチドデンドリマーは、組織及び/又は細胞標的化モチーフを更に含む。組織又は細胞標的化モチーフは、筋標的化モチーフ、例えば、GAASSLNIA(配列番号1)、インテグリン標的化モチーフ、例えば、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)、又は化学修飾、例えば、マンノース糖鎖付加を含む化学修飾を含み得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、ペプチドデンドリマーは、細胞透過性ペプチドを更に含む。細胞透過性ペプチドは、TAT由来配列を含んでもよい。細胞透過性ペプチドは、ペプチド配列XRXRRBRRXRRBRXB(配列番号2)(式中、Xは6-アミノヘキサン酸であり、Bはベータ-アラニンである)を含んでもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、ペプチドデンドリマーは、アルキル鎖、アルケニル鎖、抗体若しくはその断片、糖、及び/又は脂肪酸を更に含む。アルキル鎖又はアルケニル鎖は、例えば、ペプチドデンドリマーのC末端で、コアペプチド配列にコンジュゲートしていてもよい。あるいは、アルキル鎖又はアルケニル鎖は、ペプチドデンドリマーのN末端にコンジュゲートしていてもよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、アルキル鎖又はアルケニル鎖は、約5個の炭素~約50個の炭素、好ましくは約12個~約30個の炭素を含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、ペプチドデンドリマーは、ペプチドデンドリマーのC末端にコンジュゲートされた脂肪酸を含む。他の実施形態では、ペプチドデンドリマーは、ペプチドデンドリマーのN末端にコンジュゲートされた脂肪酸を含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、組成物の脂質は、カチオン性脂質、中性脂質、アニオン性脂質、及び/又はイオン化可能な脂質を含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、組成物の脂質は、飽和脂肪酸を含む。更に又はあるいは、組成物の脂質は、不飽和脂肪酸を含んでもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、脂質は、1、2、3、4、5、又は6個の脂肪酸鎖を含む。好ましくは、脂質は、2、3、4、又は6個の脂肪酸鎖を含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、脂質は、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)及び/又はN-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)を含む。いくつかの実施形態では、脂質は、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)及びジオレオイルホスファチジルグリセロール(dioleoylphosphatidylglycerol、DOPG)を含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、N/P比は、約0.01:1~100:1である。例えば、N/P比は、約0.05:1~50:1又は約0.1:1~30:1であってもよい。0.2:1~25:1及び0.5:1~20:1などのより狭い範囲も想定される。
【0075】
いくつかの実施形態では、N/P比は、1:1~50:1である。いくつかの実施形態では、対象への投与後に、肝臓よりも脾臓及び/又はリンパ節において、より高い割合の組成物が観察される。
【0076】
いくつかの実施形態では、N/P比は、0.01:1~1:1である。いくつかの実施形態では、対象への投与後に、肝臓よりも肺、脾臓、及び/又はリンパ節において、より高い割合の組成物が観察される。
【0077】
いくつかの実施形態では、ペプチドデンドリマー、核酸、及び脂質は、正に荷電した粒子を形成する。
【0078】
他の実施形態では、ペプチドデンドリマー、核酸、及び脂質は、負に荷電した粒子又は中性電荷を有する粒子を形成する。
【0079】
いくつかの実施形態では、標的組織又は標的細胞への核酸の送達は、脂質ベースの核酸送達系を使用した同じ組織又は細胞型への同じ核酸の送達と比較して、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、65%、75%、85%、90%、95%、100%増加する。標的細胞又は標的組織は、本明細書で定義される細胞型又は臓器/組織である。例えば、標的組織は、脾臓、リンパ系器官、骨格筋、脳、及び脂肪組織、並びに肺、腫瘍組織、心臓、骨格筋、脂肪組織、脳、肝臓、及び腎臓であってもよい。脂質ベースの核酸送達系は、DOTMA/DOPEであってもよい。
【0080】
組成物は、対象に静脈内、筋肉内、腫瘍内、皮下、皮内、又は腹腔内に投与することができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、組成物は、液体内に含まれる。他の実施形態では、組成物は、乾燥組成物、例えば、乾燥粉末として提供される。乾燥組成物は、凍結乾燥及び/又はフリーズドライ技術を使用して調製され得る。
【0082】
特定の実施形態では、第3世代ペプチドデンドリマーは、第1のリジン残基及び2つの第1のペプチドモチーフと、2つの第2のリジン残基及び4つの第2のペプチドモチーフと、4つの第3のリジン残基及び8つの第3のペプチドモチーフと、第1のリジン残基と共有結合したコアペプチド配列と、を含み、
(i)第1のリジン残基は、2つの第1のペプチドモチーフと共有結合し、2つの第1のペプチドモチーフは、それぞれ2つの第2のリジン残基と共有結合し、
(ii)各第2のリジン残基は、2つの第2のペプチドモチーフと共有結合し、各第2のペプチドモチーフは、それぞれ、第3のリジン残基のうちの1つと共有結合し、
(iii)各第3のリジン残基は、第3のペプチドモチーフのうちの2つと共有結合し、第1、第2、及び第3のペプチドモチーフは、独立して、モノペプチド、ジペプチド、トリペプチド、又はテトラペプチドモチーフである。第1、第2、及び第3のペプチドモチーフの各々は、アルギニン(R)若しくはリジン(K);及び/又はb)ロイシン(L)、バリン(V)、ヒスチジン(H)、若しくはイソロイシン(I)を含んでもよい。(「共有結合した」という用語は、いかなる介在原子も持たない、記載された部分間の直接共有結合を意味する。したがって、モノ-、ジ-、トリ-、又はテトラ-ペプチドモチーフのみが、第1のリジン残基と各第2のリジン残基との間に存在し、モノ-、ジ-、トリ-、又はテトラ-ペプチドモチーフのみが、各第2のリジン残基と各第3のリジン残基との間に存在する)。
【0083】
いくつかの実施形態では、第1、第2、及び第3のペプチドモチーフの各々は、存在する場合、(1)塩基性側鎖を有するアミノ酸、例えば、限定されないが、リジン(K)又はアルギニン(R)又はヒスチジン(H)、(2)酸性側鎖を有するアミノ酸、例えば、限定されないが、アスパラギン酸(D)及びグルタミン酸(E)、(3)非極性側鎖を有するアミノ酸、例えば、限定されないが、グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、ベータ-アラニン(B)、トリプトファン(W)、プロリン(P)、アミノヘキサン酸(X)、及びシステイン(C)、並びに(4)非荷電極性側鎖を有するアミノ酸、例えば、限定されないが、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、及びチロシン(Y)を含み得る。
【0084】
好ましくは、第1、第2、及び第3のペプチドモチーフのうちの少なくとも1つは、アルギニン(R)を含む。第1、第2、及び第3のペプチドモチーフのうちの少なくとも2つは、アルギニン(R)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、第1、第2、及び第3のペプチドモチーフの全てが、アルギニン(R)を含む。
【0085】
好ましくは、第1、第2、及び第3のペプチドモチーフのうちの少なくとも1つは、ロイシン(L)を含む。第1、第2、及び第3のペプチドモチーフのうちの少なくとも2つは、ロイシン(L)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、第1、第2、及び第3のペプチドモチーフの全てが、ロイシン(L)を含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、第1、第2、及び第3のペプチドモチーフの各々は、ジペプチドモチーフである。いくつかの実施形態では、第1、第2、及び第3のペプチドモチーフの各々は、トリペプチドモチーフである。いくつかの実施形態では、第1、第2、及び第3のペプチドモチーフの各々は、テトラペプチドモチーフである。いくつかの実施形態では、第1、第2、及び第3のペプチドモチーフの各々は、独立して、モノ-、ジペプチド、トリペプチド、又はテトラペプチドモチーフである。好ましくは、第1、第2、及び第3のペプチドモチーフのうちの少なくとも1つは、ロイシン(L)及びアルギニン(R)の両方を含むジペプチドモチーフである。いくつかの実施形態では、第1、第2、及び第3のペプチドモチーフのうちの少なくとも2つは、ロイシン(L)及びアルギニン(R)の両方を含むジペプチドモチーフである。特に好ましい実施形態では、各ペプチドモチーフは、ロイシン(L)及びアルギニン(R)の両方を含むジペプチドモチーフである。各アミノ酸残基は、独立して、L-アイソフォーム又はD-アイソフォームから選択される。
【0087】
いくつかの実施形態では、ペプチドデンドリマーは、表2に列挙されるペプチドデンドリマーのうちのいずれか1つから選択される。
【0088】
いくつかの実施形態では、ペプチドデンドリマーは、G1,2,3-RLであり、(RL)8(KRL)4(KRL)2K-コアを含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、ペプチドデンドリマーは、G1-LR,G2,3-RLであり、(RL)8(KRL)4(KLR)2K-コアを含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、ペプチドデンドリマーは、G1,2,3-rlであり、(rl)8(krl)4(krl)2k-コア(式中、「r」はD-アルギニンであり、TはD-ロイシンであり、「k」はD-リジンである)を含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、ペプチドデンドリマーは、G1,2-RL,G3-LRであり、(LR)8(KRL)4(KRL)2K-コアを含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、ペプチドデンドリマーは、G1,2-LR,G3-RLであり、(RL)8(KLR)4(KLR)2K-コアを含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、ペプチドデンドリマーは、G1,2,3-LRであり、(LR)8(KLR)4(KLR)2K-コアを含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、ペプチドデンドリマーは、RHCG1-Rであり、(R)2KRHC-NH2を含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、ペプチドデンドリマーは、RHCG1,2-Rであり、(R)4(KR)2KRHC-NH2を含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、ペプチドデンドリマーは、RHCG1-LRであり、(LR)2KRHC-NH2を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、ペプチドデンドリマーは、RHCG1-RL,2-LRであり、(LR)4(KRL)2KRHC-NH2を含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、ペプチドデンドリマーは、G1,2-RL,3-LRであり、(LR)8(KRL)4(KRL)2KGSC-NH2を含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、ペプチドデンドリマーは、RHCG1-RLRであり、(RLR)2KRHC-NH2を含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、ペプチドデンドリマーは、RHCG1,2-RLRであり、(RLR)4(KRLR)2KRHC-NH2を含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、ペプチドデンドリマーは、G1-LRLRであり、(LRLR)2KGSC-NH2を含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、ペプチドデンドリマーは、RHCG1,2-RL,3-LRであり、(LR)8(KRL)4(KRL)2KRHC-NH2を含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、ペプチドデンドリマーは、G1,2,3-RLであり、(RL)s(KRL)4(KRL)2KGSC-NH2を含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、ペプチドデンドリマーは、NTX1であり、(LR)8(KRL)4(KRL)2KGSCGAASSLNIAXRXRRBRRXRRBRXB-NH2(式中、X=6-アミノヘキサン酸及びB=ベータ-アラニン)を含む。
【0105】
(「G1」は、第1の層の「世代1」ペプチドモチーフを指す。「G2」は、第2の層の「世代2」ペプチドモチーフを指す。「G3」は、第3の層の「世代3」ペプチドモチーフを指す。)
【0106】
したがって、本発明は、医薬における使用のための、本明細書に記載される核酸と、脂質と、デンドリマーと、を含む、組成物を提供する。デンドリマーは、第1世代デンドリマー、又は第2世代デンドリマー、又は第3世代デンドリマーであってもよい。好ましくは、核酸の量(骨格中の1-荷電リン酸基の数Pによって測定される)に対するペプチドの量(ペプチド上の1+荷電窒素原子の数Nによって測定される)であるN/P比は、0.05:1より大きく、例えば、0.1:1より大きい。(用語N/P比は、「N/P」、「N:P」、又は「NP」)と表すことができる。)いくつかの実施形態では、N/P比は、0.15:1、又は約0.15:1、又は少なくとも0.15:1である。いくつかの実施形態では、N/P比は、0.16:1、又は約0.16:1、又は少なくとも0.16:1である。いくつかの実施形態では、N/P比は、少なくとも1:1以上、例えば、約2:1以上、約2.5:1以上、約3:1以上、約4:1以上、約5:1以上、約10:1、又は最大20:1である。いくつかの実施形態では、N/P比は、約5:1、約8:1、約10:1、又は約20:1である。いくつかの実施形態では、N/P比は、約2:1~約20:1、又は約2.5:1~約10:1の範囲内である。
【0107】
組成物の脂質成分は、DOTMA、DOPE、DOPC、及び/又はDOPGを含んでもよい。
【0108】
脂質成分の量は、組成物中の核酸の量に対する重量:重量比(「w/w」又は「w:w」)で表すことができ、1:50~50:1の範囲内であり得る。より好ましくは、脂質の量(重量)は、核酸の量(重量)に対して1:1~50:1、又は2:1~20:1である。脂質:核酸比は、少なくとも2:1であり得る。最も好ましくは、脂質:核酸の重量:重量比は、約10:1である。これらの比は、総脂質の重量を指す。本明細書に記載されるように、組成物は、2つ以上の脂質成分、例えば、2つ、3つ、又は4つの脂質の混合物を含む脂質を含んでもよい。脂質成分の重量は、これらの脂質成分の合計(合わせた)重量である。好ましくは、各脂質成分は、ほぼ等しい割合で混合される。
【0109】
関連して、本発明は、本明細書に記載される核酸、脂質、及び第1、第2、又は第3世代デンドリマー、並びに薬学的に許容される賦形剤、を含む、薬学的組成物を提供する。
【0110】
本発明の組成物の一部を形成する核酸は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(antisense oligonucleotide、ASO)であってもよい。好ましくは、ASOは、少なくとも20ヌクレオチド長、少なくとも25ヌクレオチド長、少なくとも30ヌクレオチド長、少なくとも35ヌクレオチド長であるか、又は本明細書の他の箇所に開示される核酸に関連して特定される長さ、例えば、少なくとも40ヌクレオチド長を有する。
【0111】
本発明の組成物の一部を形成する核酸は、mRNA分子であってもよい。本発明の組成物の一部を形成する核酸は、lncRNA分子であってもよい。本発明の組成物の一部を形成する核酸は、CRISPR配列を含んでもよい。本発明の組成物の一部を形成する核酸は、二本鎖領域を含んでもよい。核酸は、siRNA分子であってもよい。核酸は、小活性化RNA(small activating RNA、saRNA)分子であってもよい。核酸は、自己増幅RNA分子であってもよい。核酸は、標的細胞においてsiRNA又はsaRNA分子を発現することができるDNAプラスミドであってもよい。核酸は、DNAプラスミド(直鎖状又は環状)、例えば、標的細胞において導入遺伝子を発現することができるプラスミドであってもよい。
【0112】
導入遺伝子は、ウイルスタンパク質、細菌タンパク質、又は哺乳動物に寄生する微生物のタンパク質であってもよい。ウイルスタンパク質、細菌タンパク質、又は寄生微生物タンパク質を発現する組成物は、ワクチンとして使用され得る。例えば、有効量の組成物を対象に全身的に(例えば、静脈内に)送達して、対象の骨格筋におけるウイルスタンパク質、細菌タンパク質、又は寄生微生物タンパク質の発現を達成し、そのウイルスタンパク質、細菌タンパク質、又は寄生タンパク質に対する免疫応答をプライミングしてもよい。したがって、本発明は、対象にワクチン接種する方法、及び対象のワクチン接種における使用のための組成物を提供する。そのような例において、導入遺伝子は、本明細書に記載される免疫細胞、例えば、白血球、例えば、Bリンパ球、Tリンパ球、単球、好中球、樹状細胞、マクロファージ、又は単球;リンパ節組織細胞において発現され得る。
【0113】
導入遺伝子は、遺伝子療法における使用のための治療用タンパク質を発現し得る。遺伝子療法は、患者における遺伝性障害を治療するためのものであってもよい。遺伝性障害は、患者における単一遺伝子障害、例えば、筋ジストロフィーであってもよい。単一遺伝子障害が筋ジストロフィーである実施形態では、導入遺伝子は、ジストロフィンであってもよい。障害が虚血である実施形態では、導入遺伝子は、肝細胞増殖因子(HGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、及び線維芽細胞増殖因子(FGF)であってもよい。障害が筋肉消耗性である実施形態では、導入遺伝子は、フォリスタチンであってもよい。障害が神経筋疾患である実施形態では、導入遺伝子は、酸性α-グルコシダーゼ(α-glucosidase、GAA)であってもよい。導入遺伝子は、本明細書に開示される組織のうちの1つ以上において発現され得るが、発現されたタンパク質は、組織から循環中に分泌され得る。
【0114】
本発明は、ミオパチーを治療するための核酸療法を送達するために使用できることが想定される。また、本発明は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、筋強直性ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、眼咽頭型筋ジストロフィー、エメリー・ドレイフス型筋ジストロフィー、遺伝性筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、及び遠位型ミオパチーなどの筋ジストロフィーを治療するための核酸療法を送達するために使用できることも想定される。
【0115】
核酸療法は、悪液質などの筋肉消耗状態を治療するためのものであってもよい。核酸療法は、遺伝性筋障害、例えば、先天性筋緊張症、又は家族性周期性四肢麻痺などの他の筋障害を治療するためのものであってもよい。核酸療法は、運動ニューロン疾患、例えば、ALS(amyotrophic lateral sclerosis、筋萎縮性側索硬化症)、球脊髄性筋萎縮症(spinal-bulbar muscular atrophy、SBMA)、又は脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy、SMA)を治療するためのものであってもよい。核酸療法は、フリードライヒ運動失調症(Friedreich’s ataxia、FA)などのミトコンドリア病、又はカーンズ・セイヤー症候群(Kearns-Sayre syndrome、KSS)、リー脳症(亜急性壊死性脳筋症)、ミトコンドリアDNA枯渇症候群、ミトコンドリア脳筋症、乳酸アシドーシス及び卒中様発作(mitochondrial encephalomyopathy,lactic acidosis and stroke-like episode、MELAS)、ミトコンドリア神経胃腸管脳筋症(mitochondrial neurogastrointestinal encephalomyopathy、MNGIE)、赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌス脳筋症(myoclonus epilepsy with ragged red fibers、MERRF)、神経障害、運動失調及び網膜色素変性(neuropathy, ataxia and retinitis pigmentosa、NARP)、ピアソン症候群、若しくは進行性外眼筋麻痺(progressive external opthalmoplegia、PEO)などのミトコンドリアミオパチーを治療するためのものであってもよい。核酸療法は、先天性ミオパチー、例えば、capミオパチー、中心核ミオパチー、筋線維タイプ不均等症を伴う先天性ミオパチー、コアミオパチー、セントラルコア病、マルチミニコアミオパチー、ミオシン蓄積ミオパチー、ミオチュブラーミオパチー、又はネマリンミオパチーを治療するためのものであってもよい。核酸療法は、GNEミオパチー/野中ミオパチー/遺伝性封入体ミオパチー(hereditary inclusion-body myopathy、HIBM)、Laing型遠位型ミオパチー、Markesbery-Griggs遅発性遠位型ミオパチー、三好ミオパチー、Uddミオパチー/頸骨筋ジストロフィー、VCPミオパチー/IBMPFD、声帯及び咽頭遠位型ミオパチー、又はWelander遠位型ミオパチーなどの遠位型ミオパチーを治療するためのものであってもよい。核酸療法は、甲状腺機能亢進性ミオパチー又は甲状腺機能低下性ミオパチーなどの内分泌性ミオパチーを治療するためのものであってもよい。核酸療法は、皮膚筋炎、封入体筋炎、又は多発性筋炎などの炎症性ミオパチーを治療するためのものであってもよい。核酸療法は、酸性マルターゼ欠損症(Acid maltase deficiency、AMD、ポンペ病)、カルニチン欠損症、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ欠損症、脱分枝酵素欠損症(debrancher enzyme deficiency)(コリ病、フォーブス病)、乳酸デヒドロゲナーゼ欠損症、ミオアデニレートデアミナーゼ欠損症、ホスホフルクトキナーゼ欠損症(垂井病)、ホスホグリセレートキナーゼ欠損症、ホスホグリセレートムターゼ欠損症、又はホスホリラーゼ欠損症(McArdle病)などの代謝性ミオパチーを治療するためのものであってもよい。核酸療法は、筋原線維性ミオパチー又は肩甲腓骨型ミオパチーを治療するためのものであってもよい。核酸療法は、先天性筋無力症候群(congenital myasthenic syndrome、CMS)、ランバート・イートン筋無力症候群(Lambert-Eaton myasthenic syndrome、LEMS)、又は重症筋無力症(myasthenia gravis、MG)などの神経筋接合部疾患を治療するためのものであってもよい。核酸療法は、シャルコー・マリー・トゥース病(Charcot-Marie-Tooth disease、CMT)又は巨大軸索神経障害(giant axonal neuropathy、GAN)などの末梢神経疾患を治療するためのものであってもよい。核酸療法は、閉塞性血栓性血管炎/バージャー病、糖尿病性末梢神経障害(ALS、重症下肢虚血、及び足部潰瘍においても試験される)、末梢動脈疾患、下肢虚血、重症下肢虚血(包括的高度慢性下肢虚血及び糖尿病性下肢虚血としても知られる)、重症末梢動脈閉塞性疾患(peripheral artery occlusive disease、PAOD)、又は間欠性跛行/動脈硬化などの心臓血管疾患を治療するためのものであってもよい。核酸療法は、COVID-19、HIV、HBV、HCV、エボラ及びマールブルグウイルス、ウエストナイル熱、SARS、鳥インフルエンザ、HPV、サイトメガロウィルス、又はマラリアなどの感染疾患を治療するためのものであってもよい。核酸療法は、肉腫、黒色腫、乳がん、肺がん、膵臓がん、前立腺がん、肝臓がん、急性骨髄性白血病、又はB細胞リンパ腫などのがんを治療するためのものであってもよい。核酸療法は、落花生アレルギーなどのアレルギーを治療するためのものであってもよい。核酸療法は、多発性硬化症(multiple sclerosis、MS)を治療するためのものであってもよい。核酸療法は、骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome、MDS)を治療するためのものであってもよい。
【0116】
ポンペ病は、グリコーゲンから末端α1-4及びα1-6グルコースを切断するリソソーム酵素であるヒト酸性α-グルコシダーゼ(GAA)の欠損に起因する。本発明の組成物は、ポンペ病を治療するために使用され得る。GAAをコードする核酸を含む本発明の組成物は、対象の標的組織に核酸を送達し、本明細書に記載される標的組織、特に肝臓及び骨格筋においてGAAを発現させるために、ポンペ病に罹患している対象に投与され得る。酵素は、組織から循環中に分泌され得る。
【0117】
フォリスタチンは、骨格筋成長を抑制し、筋肉消耗を促進するTGF-βスーパーファミリーリガンドの阻害剤である。フォリスタチンをコードする核酸を含む本発明の組成物は、核酸を対象の標的組織に送達し、本明細書に記載される標的組織、特に肝臓及び骨格筋においてフォリスタチンを発現させるために、筋肉消耗障害に罹患している対象に投与され得る。タンパク質は、組織から循環中に分泌され得る。
【0118】
したがって、本発明は、このような障害を治療するための方法、及びこのような治療における使用のための組成物を提供する。
【0119】
デンドリマーのコアペプチドモチーフは、単一のアミノ酸残基又はジペプチド若しくはトリペプチドモチーフなどの短いペプチドモチーフである。コア配列は、任意のアミノ酸(L-及び/若しくはD-異性体)、例えば、グリシン(G)、セリン(S)、システイン(C)、アラニン(A)、リジン(K)、ロイシン(L)、バリン(V)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、プロリン(P)、スレオニン(T)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、アルギニン(R)、並びに/又はヒスチジン(H)を含んでもよい。コア配列はまた、天然に存在しないアミノ酸(L-及び/若しくはD-異性体)、例えば、ベータ-アラニン(B)及び/又はアミノヘキサン酸(X)を含んでもよい。コアがトリペプチドモチーフである場合、コアは、グリシン(G)、セリン(S)、及びシステイン(C)又はアラニン(A)のいずれかを含んでもよい。好ましくは、コアは、ヒスチジン(H)などのイオン化可能な残基を含む。コア配列は、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)、及びシステイン(C)を含んでもよい。コア配列は、アルギニン(R)又はグリシン(G)、ヒスチジン(H)又はセリン(S)、及びシステイン(C)又はアラニン(A)を含んでもよい。例えば、コア配列は、GSC又はRHCであってもよい。トリペプチドモチーフは、アラニン(A)、リジン(K)、及びロイシン(L)を含んでもよい。例えば、コア配列は、KLAであってもよい。コアペプチドは、更なる部分、例えば、細胞特異的標的化ペプチドと共有結合してもよく、又は脂質分子で誘導体化されてもよい。デンドリマー、例えば、コアペプチドモチーフのアミノ酸のうちの1つ、いくつか、又は全ては、更なる部分、例えば、抗体、細胞特異的標的化ペプチド、糖リガンド、例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、及びGalNAc(若しくはそれらを含むグリカン)、並びに/又は脂質置換基と共有結合してもよい。当業者は、溶解性又は核酸結合特徴に悪影響を及ぼさない更なる部分を容易に選択することができる。
【0120】
組成物の脂質成分は、カチオン性脂質を含む脂質の混合物を含んでもよい。例えば、脂質成分は、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)及びN-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)を含んでもよい。DOPE:DOTMA比は、所定の用途に最適な特性について容易に決定できるが、通常、1:5~5:1の範囲であろう。
【0121】
好ましくは、その範囲は、3:1~1:3又は2:1~1:2である。最も好ましくは、DOPE:DOTMA比は、1:1である。他の実施形態では、脂質は、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパンクロリド(DOTAP)を、例えば、単独の脂質として、又はDOPEと組み合わせて含む。
【0122】
他の実施形態では、組成物の脂質成分は、DOPE及びDOTMAに加えて(又はその代わりに)他の脂質を含んでもよい。例示的な脂質成分を、以下に示す。
【0123】
カチオン性脂質:
N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)
1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパンクロリド(1,2-dioleoyl-3-trimethylammonium-propane chloride、DOTAP)
2,3-ジオレイルオキシ-N-(2[スペルミン-カルボキサミド]エチル)-N,N-ジメチル-1-プロパナミニウムトリフルオロアセテート(2,3-dioleyloxy-N-(2[spermine-carboxamido]ethyl)-N,N-dimethyl-1-propanaminium trifluoroacetate、DOSPA)
3p-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール塩酸塩(3p-[N-(N’,N’-dimethylaminoethane)-carbamoyl]cholesterol hydrochloride、DC-chol)
【0124】
中性脂質:
1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)
1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(1,2-dioleoyl-sn-glycero-3-phosphocholine、DOPC)
コレステロール
【0125】
陰イオン性脂質:
1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(DOPG)
【0126】
イオン化可能な脂質:
DLin-DMA
DLin-KC2-DMA
DLin-MC3-DMA
【0127】
他の可能性のある脂質としては、4-(2-アミノエチル)-モルホリノ-コレステロール-ヘミスクシネート、(4-(2-aminoethyl)-morpholino-cholesterol-hemisuccinate、MoChol)コレステロールヘミスクシネート(cholesterolhemisuccinate、CHEMS)、ホスファチジルコリン(phosphatidylcholine、PC)、ホスファチジルエタノールアミン(phosphatidylethanolamine、PE)、ジミリストイルホスファチジルコリン(dimyristoylphosphatidylcholine、DMPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(dipalmitoylphosphatidylcholine、DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(distearoylphosphatidylcholine、DSPC)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(dimyristoylphosphatidylethanolamine、DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(dipalmitoylphosphatidylethanolamine、DPPE)、コレステロール-(3-イミダゾール-1-イルプロピル)カルバメート(cholesterol-(3-imidazol-1-yl propyl)carbamate、CHIM)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(dimethyldioctadecylammonium bromide、DDAB)、ジオレオイルホスファチジルセリン(dioleoylphosphatidylserine、DOPS)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、コレステロールスルフェート(cholesterol sulfate、chol-SO4)が挙げられる。
【0128】
前述の脂質のいずれも、本発明の組成物において単独で、又は互いに組み合わせて使用することができることが想定される。更に、脂質は、PEG2000などのPEG基への連結を介して誘導体化することができる。
【0129】
本発明は、核酸を標的細胞内へ送達する方法であって、標的細胞を本発明の組成物と接触させることを含む、方法を提供する。標的細胞は、筋細胞、肝細胞、星細胞、ニューロン、アストロサイト、脾細胞、肺細胞、心筋細胞、腎細胞、脂肪細胞、骨髄由来サプレッサ細胞(MDSC)、腫瘍関連マクロファージ若しくは腫瘍関連好中球、幹細胞、又は腫瘍細胞であってもよい。この方法は、インビトロで実施してもよい。細胞は、患者から得られたものであってもよく、細胞は、方法が実施された後に患者に投与されてもよく、すなわち、方法は、エクスビボであってもよい。あるいは、この方法は、医学的使用又は処理の一部としてインビボで実施してもよい。この方法は、クラスリン媒介性エンドサイトーシス、カベオラ媒介性エンドサイトーシス、及び/又はミクロピノサイトーシスを介する細胞侵入を含む。このようなインビボ処理は、特定の標的組織(複数可)、例えば、対象の筋肉及び/又は肝臓へ核酸を送達するために、対象に組成物を投与することを包含し得る。組成物は、単回用量として、又は2回以上の用量として投与することができる。
【0130】
本発明はまた、表2に示されるものなどの新規なデンドリマーを提供する。いくつかの実施形態では、デンドリマーは、第3世代デンドリマー、例えば、G1,2,3-LRデンドリマー、G1,2,3-rlデンドリマー、G1-LR,G2,3-RLデンドリマー、G1,2-RL,G3-LRデンドリマー、及びG1,2-LR,G3-RLデンドリマーであり、これらは、集合的に、第1のリジン残基及び2つの第1のジペプチドモチーフと、2つの第2のリジン残基及び4つの第2のジペプチドモチーフと、4つの第3のリジン残基及び8つの第3のジペプチドモチーフと、第1のリジン残基と共有結合したコアペプチド配列と、を含むペプチドデンドリマーであって、(i)第1のリジン残基が、2つの第1のジペプチドモチーフと共有結合し、2つの第1のジペプチドモチーフがそれぞれ、2つの第2のリジン残基と共有結合し、(ii)各第2のリジン残基が、2つの第2のジペプチドモチーフと共有結合し、各第2のペプチドモチーフがそれぞれ、第3のリジン残基のうちの1つと共有結合し、(iii)各第3のリジン残基が、第3のジペプチドモチーフのうちの2つと共有結合し、第1、第2、及び第3のジペプチドモチーフが各々、ロイシン(L)及びアルギニン(R)を含み、第1、第2、及び第3のジペプチドモチーフのうちの少なくとも1つが、ロイシン-アルギニン(LR)ジペプチドモチーフからなる(「LR」モチーフは標準的なN末端からC末端への慣例に従って記載される)、ペプチドデンドリマーとして定義され得る。各アミノ酸残基は、独立して、L-アイソフォーム又はD-アイソフォームから選択される。これらの新規デンドリマーは、本発明の組成物の一部を形成することができ、本明細書に開示される本発明の他の態様において使用することができる。
【0131】
本発明は、記載された態様及び好ましい特質の組み合わせを、そのような組み合わせが明らかに許容されないか又は明示的に回避される場合を除いて含む。
【図面の簡単な説明】
【0132】
次に、本発明の原理を示す実施形態及び実験について、添付の図面を参照しながら説明する。
【
図1】DNA送達のための異なるリジン及びロイシン配置を有するデンドリマーのトランスフェクション効率の比較。世代内のリジン及びロイシンの位置の変更は、(A)HeLa又は(B)Neuro2A細胞におけるトランスフェクション効率を有意に変化させない。デンドリマーG1,2,3-KLのそのバリアント、例えば、G1,2,3-K(全てのロイシンが除去されたG1,2,3-KLのバージョン)への構造的修飾、及び全てのL型アミノ酸のD型への置換は、(C)HeLa又は(D)Neuro2A細胞におけるトランスフェクション効率を有意に変化させない。(E)HeLa又は(F)Neuro2A細胞において、G0,1,2,3-KL(KLモチーフを有する第0世代のG1,2,3-KLのバージョン)の場合、有意差はない。条件:1×10
4個の細胞に0.25μgのpCI-Lucをトランスフェクトした。エラーバーは、三回行われた実験についての平均±SEMを指す。D/Dは、DOTMA/DOPEである。
【
図2】DNA送達についての、異なる世代(G1、G2、及びG3)並びにカチオン性残基(例えば、KL対RL)を有するデンドリマーのトランスフェクション効率の比較。(A)HeLa細胞におけるトランスフェクション効率、(B)Neuro2A細胞におけるトランスフェクション効率。D/Dを有するペプチドデンドリマーの存在下でルシフェラーゼ発現プラスミド(pCI-Luc)をトランスフェクトされた細胞(トランスフェクションの24時間後に測定)。発光値を、D/D DNA複合体(w/w 1:1、0.25μg)で処理した細胞についての類似値で割ることによって正規化して、トランスフェクションの%を得た。条件:1×10
4個の細胞に0.25μgのpCI-Lucをトランスフェクトした。エラーバーは、三回行われた実験についての平均±SEMを指す。
*は、p<0.05を示す。D/Dは、DOTMA/DOPEである。
【
図3】DNA送達のための、DOTMA/DOPE、ポリエチレンイミン、及びLipofectamine 2000を含む他の市販のトランスフェクション試薬を用いたG1,2,3-RLのトランスフェクション効率の比較。(A)血清の非存在下でのHeLa細胞におけるトランスフェクション、(B)血清の存在下でのHeLa細胞におけるトランスフェクション、(C)血清の非存在下でのNeuro2A細胞におけるトランスフェクション、及び(D)血清の存在下でのNeuro2A細胞におけるトランスフェクション。D/Dを有するG1,2,3-RLの存在下でルシフェラーゼ発現プラスミド(pCI-Luc)をトランスフェクトされた細胞(トランスフェクションの24時間後に測定)。発光値を、D/D DNA複合体で処理した細胞についての類似値で割ることによって正規化して、トランスフェクションの%を得た。条件:1×10
4個の細胞に、0.25μgのpCI-Lucを4時間、無血清又は10%血清中でトランスフェクトした。エラーバーは、三回行われた実験についての平均±SEMを指す。G1,2,3-RLは、HeLa及びNeuro2A細胞において他の試薬よりも有意に強力なトランスフェクションを媒介する。
*は、p<0.05を示し、
***は、p<0.001を示し、
****は、p<0.0001を示す。D/Dは、DOTMA/DOPEである。
【
図4】血清条件でのDNA送達についての、異なる世代(G1、G2、及びG3)並びにカチオン性残基(例えば、KL対RL)を有するデンドリマーのトランスフェクション効率の比較。(A)HeLa細胞におけるトランスフェクション効率、(B)Neuro2A細胞におけるトランスフェクション効率。D/Dを有するペプチドデンドリマーの存在下でルシフェラーゼ発現プラスミド(pCI-Luc)をトランスフェクトされた細胞(トランスフェクションの24時間後に測定)。発光値を、D/D DNA複合体(w/w 1:1、0.25μg)で処理した細胞についての類似値で割ることによって正規化して、トランスフェクションの%を得た。条件:1×10
4個の細胞に、0.25μgのpCI-Lucを4時間、10%血清中でトランスフェクトした。エラーバーは、三回行われた実験についての平均±SEMを指す。G1,2,3-RL(N/P:5~20)は、HeLa及びNeuro2A細胞の両方において、他の群よりも有意に強力なトランスフェクションを媒介する。
*は、p<0.05を示す。G1,2,3-RL(N/P:10、20)は、他の群よりも有意に強力なトランスフェクションを媒介する。
***は、p<0.001を示す。D/Dは、DOTMA/DOPEである。
【
図5】G1,2,3-RL-D/D-DNAナノ粒子の細胞取り込み経路。クロルプロマジンは、クラスリン媒介性エンドサイトーシスを阻害する。ゲニステイン及びロットレリンは、カベオラ媒介性エンドサイトーシス及びミクロピノサイトーシスをそれぞれ阻害する。
【
図6】D/D及びフォリスタチンを発現するプラスミドDNAとともにG1,2,3-RLを含む組成物の静脈内投与後の骨格筋におけるフォリスタチン発現。マウスにG1,2,3-RL複合体を2回注射し、組織を採取して、フォリスタチンのmRNA発現レベルをqPCRによってアッセイした。
【
図7】開示された組成物の静脈内投与後のマウスの体重。
【
図8】DOTMA/DOPE(DNAに対してw/w=1:1)及びルシフェラーゼを発現するミニサークルDNAとともにG1,2,3-RL又はG1,2,3-LRを含む組成物の静脈内投与後のマウス組織におけるルシフェラーゼ発現。組成物を、20:1のNP比で注射した。マウスに組成物を注射し、24時間後に組織を採取して、心臓、腎臓、肝臓、肺、脾臓、及び骨格筋におけるルシフェラーゼシグナルを測定した。
【
図9】DOTMA/DOPE(DNAに対してw/w=1:1)及びルシフェラーゼを発現するミニサークルDNAとともにG1,2-RL,3-LRを含む組成物の筋肉内投与後のマウス骨格筋におけるルシフェラーゼ発現。組成物を、20:1のNP比で注射した。マウスに組成物を注射し、48時間後に骨格筋組織を採取してルシフェラーゼシグナルを測定した。
【
図10】DOTMA/DOPE(mRNAに対してw/w=10:1)及びルシフェラーゼを発現するmRNAとともにG1,2,3-RL(上パネル)又はG1,2-RL,3-LR(下パネル)を含む組成物の静脈内投与後のマウス組織におけるルシフェラーゼ発現。各デンドリマー組成物を、8:1及び0.15:1のNP比で注射した。マウスに組成物を注射し、6時間後に組織を採取して、筋肉(腓腹筋)、肝臓、肺、心臓、脾臓、腎臓、脂肪組織、脳、頸部リンパ節、及び鼠径リンパ節におけるルシフェラーゼシグナルを測定した。G1,2,3-RL及びG1,2-RL,3-LRを含む組成物は、0.15:1のNP比で注射された場合、肺、脾臓、及びリンパ節を含む免疫細胞に富む組織にmRNAを送達することができる。NP8:1で注射されたG1,2-RL,3-LRは、脾臓へのmRNAの送達を標的とすることができる。
【
図11】DOTMA/DOPE(mRNAに対してw/w=10:1)及びルシフェラーゼを発現するmRNAとともにG1,2,3-RL(上パネル)又はG1,2-RL,3-LR(下パネル)を含む組成物の静脈内投与後のマウス組織におけるルシフェラーゼ発現。各デンドリマー組成物を、8:1及び0.15:1のNP比で注射した。マウスに組成物を注射し、6時間後に組織を採取して、筋肉(腓腹筋)、肝臓、心臓、腎臓、脂肪組織、及び脳におけるルシフェラーゼシグナルを測定した。
【
図12】DOTMA/DOPE(mRNAに対してw/w=10:1)及びルシフェラーゼを発現するmRNAとともにG1,2,3-RL又はG1,2-RL,3-LRを含む組成物のNP比8:1での静脈内投与後のマウス組織におけるルシフェラーゼ発現の比較。マウスに組成物を注射し、6時間後に組織を採取して、筋肉(腓腹筋)、肝臓、肺、心臓、脾臓、腎臓、脂肪組織、脳、頸部リンパ節、及び鼠径リンパ節におけるルシフェラーゼシグナルを測定した(
図12A、上パネル)。同じデータが、肺、頸部リンパ節、及び鼠径リンパ節(
図12A、下パネル)と、筋肉(腓腹筋)、肝臓、心臓、腎臓、脂肪組織、及び脳(
図12B)との間の比較を可能にするために提示される。NP比8:1で注射されたG1,2-RL,3-LRを含む組成物は、NP比8:1で注射されたG1,2,3-RLと比較してより高い効率で免疫細胞に富む組織にmRNAを送達することができる。
【
図13】DOTMA/DOPE(mRNAに対してw/w=10:1)及びルシフェラーゼを発現するmRNAとともにG1,2,3-RLを含む2用量の組成物の静脈内投与後のマウス組織におけるルシフェラーゼ発現。デンドリマー組成物を、NP比=0.15:1で注射した。マウスに組成物を注射し、6時間後に組織を採取して、筋肉(腓腹筋)、肝臓、肺、心臓、脾臓、腎臓、脂肪組織、脳、頸部リンパ節、及び鼠径リンパ節におけるルシフェラーゼシグナルを測定した。
【
図14】DOTMA/DOPE(mRNAに対してw/w=10:1)及びルシフェラーゼを発現するmRNAとともにG1,2,3-RL、G1,2-RL,3-LR、又はNTX1を含む組成物の静脈内投与後のマウス組織におけるルシフェラーゼ発現。各デンドリマー組成物を、0.15:1のNP比で注射した。マウスに組成物を注射し、6時間後に組織を採取して、筋肉(腓腹筋)、肝臓、肺、心臓、脾臓、腎臓、脂肪組織、脳、頸部リンパ節、及び鼠径リンパ節におけるルシフェラーゼシグナルを測定した。骨格筋標的化ドメイン及び細胞透過性ペプチドドメインを含むNTX1を含む組成物は、G1,2,3-RL及びG1,2-RL,3-LRを含む組成物と比較してより高い効率で免疫細胞に富む組織にmRNAを送達することができる。
【
図15】DOTMA/DOPE(mRNAに対してw/w=10:1)及びルシフェラーゼを発現するmRNAとともにG1,2,3-RL、G1,2-RL,3-LR、又はNTX1を含む組成物の静脈内投与後の、デンドリマーを含まない、DOTMA/DOPE(mRNAに対してw/w=10:1)及びルシフェラーゼを発現するmRNAを含む組成物を注射したマウスと比較した、マウス組織におけるルシフェラーゼ発現。各デンドリマー組成物を、0.15:1のNP比で注射した。マウスに組成物を注射し、6時間後に組織を採取して、筋肉(腓腹筋)、肝臓、肺、心臓、脾臓、腎臓、脂肪組織、脳、頸部リンパ節、及び鼠径リンパ節におけるルシフェラーゼシグナルを測定した。
【
図16】DOTMA/DOPE(mRNAに対してw/w=10:1)及びルシフェラーゼを発現するmRNAとともにG1,2-RL,3-LRを含む組成物の静脈内投与後の、デンドリマーを含まない、DOTMA/DOPE(mRNAに対してw/w=10:1)及びルシフェラーゼを発現するmRNAを含む組成物を注射したマウスと比較した、マウス組織におけるルシフェラーゼ発現。デンドリマー組成物を、NP比=8:1で注射した。マウスに組成物を注射し、6時間後に組織を採取して、筋肉(腓腹筋)、肝臓、肺、心臓、脾臓、腎臓、脂肪組織、脳、頸部リンパ節、及び鼠径リンパ節におけるルシフェラーゼシグナルを測定した。NTX1、G1,2,3-RL、及びG1,2-RL、3LRを含む組成物は各々、mRNA単独を含む組成物又はDOTMA/DOPE及びmRNAを含む組成物と比較して、全ての組織へのmRNAの送達の増加を示す。
【
図17】デンドリマー組成物又は市販のトランスフェクション試薬をトランスフェクトした後のHeLa又はC2C12細胞におけるルシフェラーゼ及びeGFP発現。1)ルシフェラーゼmRNA単独、G1,2-RL,3-LR(NP=0.16:1)、DOTMA/DOPE(mRNAに対してw/w=10:1)、及びルシフェラーゼmRNAを含む組成物、若しくはLipofectamine 2000(商標)及びルシフェラーゼmRNAを含む組成物(左上パネル)、又は2)eGFP mRNA単独、G1,2-RL,3-LR(NP=0.16:1)、DOTMA/DOPE(mRNAに対してw/w=10:1)、及びeGFP mRNAを含む組成物、若しくはDLin-MC3-DMA:コレステロール:DSPC:DMG-PEG脂質ナノ粒子及びeGFP mRNAを含む組成物(右上パネル)を、HeLa細胞にトランスフェクトした。ルシフェラーゼmRNA単独、G1,2-RL,3-LR(NP=8:1)、DOTMA/DOPE(mRNAに対してw/w=10:1)、及びルシフェラーゼmRNAを含む組成物、Lipofectamine 2000(商標)及びルシフェラーゼmRNA又はポリエチレンイミン及びルシフェラーゼmRNAを含む組成物(下パネル)を、C2C12細胞にトランスフェクトした。ルシフェラーゼ及びeGFP発現をトランスフェクションの24時間後に測定した。本発明のペプチドデンドリマーは、Lipofectamine 2000及びLNPなどの市販のトランスフェクション試薬と比較して、インビトロでHeLa細胞をトランスフェクトする際により効率的である。
【
図18】NP比0.15:1又は8:1で蛍光標識されたsgRNA及びCas9 mRNAを、又はG1,2-RL,3-LRを蛍光標識されたsgRNA及びCas9 mRNAとともに、トランスフェクトした後のHeLa細胞におけるRNAトランスフェクション効率。sgRNAをTM-ローダミンで標識し、Cas9 mRNAをCy5フルオロフォアで標識した。細胞を2時間トランスフェクトし、フローサイトメトリーによってアッセイした。G1,2-RL、3LRを含む組成物に曝露されたHeLa細胞の100%が、sgRNA及びCas9 mRNAについて二重陽性であり、これは、極めて高いトランスフェクション効率を実証している。
【
図19】NP比0.15:1又は8:1で、tracrRNA(trRNA)、crRNA、及びCas9 mRNAを、又はG1,2-RL,3-LRをtracrRNA、crRNA、及びCas9 mRNAとともに、トランスフェクトした後のHeLa細胞におけるRNAトランスフェクション効率。tracrRNAをATTO 55フルオロフォアで標識した。crRNAをフルオレセインで標識し、Cas9 mRNAをCy5フルオロフォアで標識した。細胞を2時間トランスフェクトし、フローサイトメトリーによってアッセイした。
【
図20】tracrRNA(trRNA)、crRNA、又はCas9 mRNAのいずれかをトランスフェクトした後のHeLa細胞におけるRNAトランスフェクション効率。細胞には、G1,2-RL,3-LRをトランスフェクトした、又はトランスフェクトしなかった。tracrRNAをATTO 55フルオロフォアで標識した。crRNAをフルオレセインで標識し、Cas9 mRNAをCy5フルオロフォアで標識した。細胞を2時間トランスフェクトし、フローサイトメトリーによってアッセイした。
【
図21】脾臓内の免疫細胞へのmRNA送達。マウスに、mRNA単独、又はmRNAとNTX1(NP=0.15:1)、G1,2-RL,3-LR(NP=0.15:1)、若しくはG1,2-RL,3-LR(NP=8:1)のいずれかとを静脈内注射した。mRNAをAlexaFluor488で標識した。脾臓を、処理のために注射の2時間後にマウスから採取した。脾臓に存在する広範囲の免疫細胞へのmRNAの送達は、NTX1、G1,2-RL,3-LR(NP8:1)、又はG1,2-RL,3-LR(NP0.15:1)を含む組成物を使用して可能である。
【
図22】骨髄内の免疫細胞へのmRNA送達。マウスに、mRNA単独、又はmRNAとNTX1(NP=0.15:1)、G1,2-RL,3-LR(NP=0.15:1)、若しくはG1,2-RL,3-LR(NP=8:1)のいずれかとを静脈内注射した。mRNAをAlexaFluor488で標識した。骨髄を、処理のために注射の2時間後にマウスから採取した。
【
図23】血液内の免疫細胞へのmRNA送達。マウスに、mRNA単独、又はmRNAとNTX1(NP=0.15:1)、G1,2-RL,3-LR(NP=0.15:1)、若しくはG1,2-RL,3-LR(NP=8:1)のいずれかとを静脈内注射した。mRNAをAlexaFluor488で標識した。血液を、処理のために注射の2時間後にマウスから採取した。血液中に存在する広範囲の免疫細胞へのmRNAの送達は、NTX1、G1,2-RL,3-LR(NP8:1)、又はG1,2-RL,3-LR(NP0.15:1)を含む組成物を使用して可能である。
【
図24】リンパ節内の免疫細胞へのmRNA送達。マウスに、mRNA単独、又はmRNAとNTX1(NP=0.15:1)、G1,2-RL,3-LR(NP=0.15:1)、若しくはG1,2-RL,3-LR(NP=8:1)のいずれかとを静脈内注射した。mRNAをAlexaFluor488で標識した。リンパ節を、処理のために注射の2時間後にマウスから採取した。
【
図25】HeLa及びC2C12細胞へのインビトロDNA送達。DNA単独、G1,2,3-RL(N:P=5:1)及びDOTMA/DOPE(DNAに対してw/w=1:1)とDNA、並びにG1,2,3-RL(N:P=5:1)及びDOPG/DOPE(DNAに対してw/w=1:1)とDNA(上のパネル)、のいずれかをHeLa細胞にトランスフェクトした。DNA単独、ポリエチレンイミンとDNA、G1,2-RL,3-LR(N:P=8:1)及びDOTMA/DOPE(DNAに対してw/w=1:1で)とDNA、並びにNTX2(N:P=8:1)及びDOTMA/DOPE(DNAに対してw/w=1:1)とDNA(下のパネル)、のいずれかを、C2C12細胞(筋肉由来細胞株)にトランスフェクトした。両方の実験で使用したDNAは、ルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードする。NTX2は、筋標的化ペプチドASSLINA((LR)8(KRL)4(KRL)2KGSCGAASSLNIA(Acp)-NH2)にコンジュゲートされたG1,2-RL,3-LRデンドリマーである。
【
図26】mRNA製剤投与後のアスパラギン酸トランスアミナーゼ(Aspartate transaminase、AST、26A、上パネル)、TNF-α(26A、下パネル)、IL-6(26B、上パネル)、及びIL-1β(26B、下パネル)のレベル。マウスを、mRNA単独、又はmRNA、デンドリマー、及びDOTMA/DOPE(mRNAに対してw/w=10:1)のいずれかで処理した。mRNAに対するデンドリマーのN:P比を、X軸に示す。2回投与されたG1,2,3-RL及びG1,2-RL,3-LRとは別に、全ての製剤を1回投与した。2用量を注射したマウスについては、1回目の用量を、2回目の用量の24時間前に注射した。AST又はサイトカインレベルの測定のために、2回目の投与の6時間後にマウスの血漿を採取した。1回投与したマウスについては、AST及びサイトカインレベルの測定のために、投与の6時間後に血漿を採取した。インビボでmRNAを送達するための本発明のデンドリマーの使用は、有意な肝臓毒性又は有意な免疫反応を引き起こさない。
【
図27】DNA製剤投与後のアスパラギン酸トランスアミナーゼ(左上パネル)、TNF-α(右上パネル)、IL-6(左下パネル)、及びIL-1β(右下パネル)のレベル。マウスを、DNA単独、又はG1,2,3-RL及びDOTMA/DOPE(DNAに対してw/w=1:1)のいずれかで処理した。全ての製剤を2回投与した後、血漿試料を採取し、AST又はサイトカインレベルを測定した。インビボでDNAを送達するための本発明のデンドリマーの使用は、有意な肝臓毒性又は有意な免疫反応を引き起こさない。
【
図28】インビトロでの脂質系によるペプチドデンドリマーのmRNAトランスフェクション。mRNA単独、又はmRNAとペプチドデンドリマー(N:P=0.16:1)及びDOTMA/DOPE(mRNAに対してw/w=10:1)を、HeLa細胞にトランスフェクトした。使用したmRNAは、eGFPレポーター遺伝子を発現した。24時間のトランスフェクション後、細胞を採取して、eGFP発現をアッセイした。eGFP発現を、各トランスフェクションのタンパク質の総量で正規化した。遺伝子発現レベルは、G1,2-RL,3-LR、DOTMA/DOPE、及びmRNA処理細胞のトランスフェクション値を正規化することによって計算した。様々なコアと、第1、第2、及び第3世代ペプチドモチーフと、を有する第1、第2、及び第3世代デンドリマーは、試験した条件下で細胞にmRNAを効果的にトランスフェクトすることができる。
【
図29】インビトロでの脂質系によるペプチドデンドリマーのmRNAトランスフェクション。mRNA単独、又はmRNAとペプチドデンドリマー及びDOTMA/DOPE(mRNAに対してw/w=10:1)を、HeLa細胞にトランスフェクトした。G1,2-RL,3-LRのN:P比は0.16:1であったが、他の全てのデンドリマーのN:P比は8:1であった。使用したmRNAは、eGFPレポーター遺伝子を発現した。24時間のトランスフェクション後、細胞を採取して、eGFP発現をアッセイした。eGFP発現を、各トランスフェクションのタンパク質の総量で正規化した。遺伝子発現レベルは、G1,2-RL,3-LR、DOTMA/DOPE、及びmRNA処理細胞のトランスフェクション値を正規化することによって計算した。様々なコアと、第1、第2、及び第3世代ペプチドモチーフと、を有する第1、第2、及び第3世代デンドリマーは、試験した条件下で細胞にmRNAを効果的にトランスフェクトすることができる。
【
図30】DOTMA/DOPE(mRNAに対してw/w=10:1)及びルシフェラーゼを発現するmRNAとともにG1,2-RL,3-LR又はRHCG1-RL,2-LRを含む組成物の静脈内投与後のマウス組織におけるルシフェラーゼ発現。デンドリマー組成物を、N:P比0.15:1又は8:1のいずれかで注射した。マウスに組成物を注射し、6時間後に組織を採取して、筋肉(腓腹筋)、肝臓、肺、心臓、脾臓、腎臓、脂肪組織、脳、及びリンパ節におけるルシフェラーゼシグナルを測定した。世代2デンドリマーは、第3世代デンドリマーG1,2-RL,3-LRよりも高い効率で脾臓及び肺へのmRNA送達を標的とすることができる。
【
図31】第3世代デンドリマーは、図式的に表される(左側にN末端及び右側にC末端を有する)。
【発明を実施するための形態】
【0133】
本発明の態様及び実施形態について、上で特定した図面及び以下に続く技術的定義を参照して説明する。更なる態様及び実施形態は、当業者には明らかであろう。本明細書で言及される全ての文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0134】
現在の免疫療法応答率は約15~20%であり、治療転帰を改善する緊急の必要性が存在する。1つの戦略は、mRNAを送達してタンパク質(CEBPA、IRF8、cGAS-STING、SOCS1、及び/又はSOCS3など)を発現させて、腫瘍微小環境における骨髄細胞の免疫抑制表現型を元に戻すことであり、これは、免疫療法が応答性であるためのより好ましい環境を提供する。別の戦略は、mRNAを腫瘍内の免疫細胞内に移入して、サイトカイン(IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-21、及び/又はインターフェロンなど)を発現させ、免疫細胞を活性化させてがん細胞と戦うことであり得る。マクロファージが活性化されて腫瘍細胞を殺傷することができるように、mRNAをマクロファージに送達して、キメラ抗原受容体を発現させることも可能である。抗原提示細胞において腫瘍抗原を発現させるためにmRNAを送達することは、免疫系を活性化させてがん細胞を攻撃するのを助ける。これらの戦略は、全ての腫瘍、特に非小細胞肺がん、進行性黒色腫、前立腺がん、卵巣がん、乳がん、肺がん、胆管がん(Bile duct cancer)(胆管がん(Cholangiocarcinoma))、胆のうがん、神経内分泌腫瘍、肝細胞がん、結腸直腸がん、膵臓がん、及び固形腫瘍を治療するために適用することができる。
【0135】
核酸の送達
本発明の組成物は、本明細書中に記載される核酸をヒト又は動物の身体の特定の組織に送達するために使用できる。例えば、以下の組織に送達する。
1.骨格筋
2.肝臓
3.肺
4.心臓
5.白色脂肪組織
6.褐色脂肪組織
7.脳
8.脾臓
9.骨髄
10.関節
11.腎臓
12.消化管
13.腫瘍
14.眼
15.胸腺
16.皮膚
17.リンパ節
18.膵臓
19.副腎
20.精巣
21.前立腺
22.卵巣
23.子宮
24.膀胱
25.横隔膜
【0136】
mRNAトランスフェクション
mRNA送達におけるデンドリマーの世代数に対する影響を、完全成長培地条件においてHeLa細胞をトランスフェクトすることによって研究した。本発明者らは、第1又は第2世代デンドリマー(例えば、RHCG1-R、RHCG1,2-R、RHCG1-LR、RHCG1-RL、2-LR)が細胞を効果的にトランスフェクトし、第3世代デンドリマーと同様のトランスフェクション効率を媒介することができることを示した(
図28A)。第1又は第2世代デンドリマーは、完全成長培地中で第3世代デンドリマーと同様に細胞をトランスフェクトしないので、これは実際にDNAトランスフェクションとは非常に異なる(
図4)。興味深いことに、世代1又は世代2デンドリマーのN:P比を0.16から8に増加させると、トランスフェクション効率が更に増加する(
図29A)。
【0137】
本発明者らは、トランスフェクションに対するデンドリマーのコア配列の影響を研究し、GSC(例えば、G1,2-RL,3-LR由来)などのトリペプチド配列が有効であることを示した。KA及びYMなどのジペプチドコア配列も有効である。コアペプチド長のこの変化はmRNAトランスフェクションに影響せず、コア中に2つのアミノ酸を有するデンドリマーが、コア中に3つのアミノ酸を有するデンドリマーと同様にトランスフェクトすることを示唆している(
図28A)。RFW、RYMなどの異なるトリペプチドコア配列は、GSCと同等に機能する。カチオン性基を含有するアルギニンがコアに付加されるが、このアルギニンがトランスフェクションを改善又は減少させることはない。興味深いことに、3つのアミノ酸がコアにおいてGCSからRHCに変化すると、トランスフェクションは50%改善することができる。これは、デンドリマーのコアにおけるヒスチジンなどのイオン化可能な基がトランスフェクションを改善し得ることを示唆する(
図28A)。
【0138】
12個のアミノ酸のコア配列(例えば、デンドリマー「線状GI,2-RL,3-LR」)の使用は、トランスフェクション効果がコア配列の長さの増加によって影響を受けないことを実証している(
図28A)。この結果は、トランスフェクション効率に影響を与えることなく、より長いアミノ酸鎖及び/又はより長い構造をコアに導入することが可能であることを示した。実際、コアに27個のアミノ酸を含むNTX1は、G1,2-RL,3-RLよりも効果的にトランスフェクトする。これは、より長いコア配列が、実際にトランスフェクションを増強し得ることを実証する。NTX1からのトランスフェクションの増強は、コア配列内の細胞透過性ペプチドの存在による可能性が高い。
【0139】
本発明者らは、トランスフェクションにおける世代内のアミノ酸の数に対する影響を調査した。したがって、本発明者らは、1つのアミノ酸(R)、2つのアミノ酸(RL又はLR)、3つのアミノ酸(RLR)、及び4つのアミノ酸(LRLR)のみを有するデンドリマーを試験した。これらの研究は、各世代において1、2、3又は4つのアミノ酸を有するデンドリマーが、依然としてmRNAを細胞に十分にトランスフェクトすることができることを示した(
図28A)。各世代において異なる数のアミノ酸を有するデンドリマーを使用しても、トランスフェクション効率は影響を受けないことが示された。
【0140】
G1,2-RL,3-LR構造に基づいて、本発明者らは、塩基性アミノ酸RをKに置換し、かつ/又は疎水性アミノ酸Lを、Eなどの酸性アミノ酸、並びに/若しくはM、F、ベータ-アラニン(B)、アミノヘキサン酸(X)、及びWなどの非極性側鎖を有するアミノ酸、並びに/又はQ、T及びYなどの極性側鎖を有するアミノ酸に変化させた3世代デンドリマーのライブラリーを設計した。
【0141】
デンドリマー内でRをKに置換すると、mRNAトランスフェクション効率が低下する(
図28A)。しかしながら、疎水性アミノ酸を他の疎水性アミノ酸及び/又は極性若しくは非極性側鎖を有するアミノ酸に変更することは、トランスフェクションに影響を及ぼさない可能性があるか、又はG1,2-RL,3-LRと比較してトランスフェクションを30~40%低下させる可能性がある。しかしながら、これらのデンドリマーは全て、mRNA単独対照よりも有意に高いmRNAトランスフェクションを誘導することができる。
【0142】
本発明者らはまた、mRNAトランスフェクションに対するデンドリマー内のL又はD型アミノ酸の影響を調査した。G1,2-RL,3-LRデンドリマーに基づいて、本発明者らは、デンドリマーの各世代においてアミノ酸の一部又は全部をL型からD型に変化させてもトランスフェクション効率に影響を与えないことを見出した。デンドリマー内でリジンをジアミノ酪酸に置換することは、トランスフェクションを低下させるが、このデンドリマーのトランスフェクションは、mRNA単独対照よりも依然として有意に高い。
【0143】
本発明者らは、DOTMA/DOPE(w/w 10:1)とともにG1-LL,2-RRをN:P比0.16:1で使用した本発明者らの製剤プロトコルを用いてmRNAを送達するためにG1-LL,2-RRを使用できることを実証した。興味深いことに、このデンドリマーは、インビトロ及びインビボで異なる製剤にASOを送達するために使用された(Saher 2018)。使用した製剤は、DOTMA/DOPE(ASOに対してw/w=2:1)及びN:P=20:1、G1-LL,2-RR対ASOであった。本発明者らは、これをトランスフェクト細胞(すなわち、DOTMA/DOPE(mRNAに対してw/w=2:1)及びN:P=20:1、G1-LL,2-RR対mRNA)に対して試みたが、トランスフェクション効率は低い。この製剤(DOTMA/DOPE(mRNAに対してw/w=2:1)及びN:P=20:1、G1-LL,2-RR対mRNA)のmRNAトランスフェクション効率は、本発明者らの改良製剤(DOTMA/DOPE(mRNAに対してw/w=10:1)及びN:P=0.16:1、G1-LL,2-RR対mRNA)のmRNAトランスフェクション効率の10%にしかならない。
【0144】
本発明者らは、mRNA送達のために、異なる世代においてRL又はLR又はrlのいずれかを有する3世代デンドリマーを調査した。本発明者らは、これらのデンドリマーのほとんどが同様に細胞をトランスフェクトし、G1,2-RL,3-LRがmRNAトランスフェクションにおいて最も有効であることを見出した。全体として、本発明者らのデータは、各世代において疎水性アミノ酸及びカチオン性アミノ酸を有するデンドリマーが、細胞への有効なmRNA送達をもたらすことを示唆した。
【0145】
G1,2-RL,3-LRよりも効果的に細胞をトランスフェクトする第1世代及び第2世代デンドリマーが存在するので、本発明者らは、トランスフェクションに関する更なる試験のためにこれらのデンドリマーを選択した。これらのデンドリマーは、一般に、様々なN:P比でG1,2-RL,3-LRよりも良好にトランスフェクトすることができる。特に、N:P=4:1のRHCG1-R、RHCG1,2-R、RHCG1-LR、RHCG1-RL,2-LR、RHCG1-RLR、及びG1-LRLRは、G1,2-RL,3-LRよりも700%~1815%良好にトランスフェクトすることができる。これらのデータは、DNA及びmRNA送達の要件が非常に異なることを実証した。mRNAについては、第1又は第2世代デンドリマーが、完全成長培地条件において第3世代デンドリマーよりも良好に細胞をトランスフェクトする傾向がある。しかしながら、世代3のデンドリマーは、完全成長培地条件において、世代1又は世代2のデンドリマーよりも良好に細胞をDNAでトランスフェクトする(
図4)。
【0146】
mRNA送達に特に好ましい本発明の特定のデンドリマーとしては、RHCG1-R、RHCG1,2-R、RHCG1-LR、RHCG1-RL,2-LR、G1,2-RL,3-LR、RHCG1-RLR、RHCG1,2-RLR、G1-LRL、RHCG1,2-RL,3-LR、及びG1,2,3-RLが挙げられる。
【0147】
RNA干渉
本発明は、核酸の送達によって標的遺伝子発現の治療的下方制御を促進する。これらには、RNA干渉(RNA interference、RNAi)が含まれる。小RNA分子を用いて、遺伝子発現を制御してもよい。
【0148】
これらには、低分子干渉RNA(small interfering RNA、siRNA)によるmRNAの標的分解、転写後遺伝子サイレンシング(post transcriptional gene silencing、PTGs)、マイクロRNA(micro-RNA、miRNA)によるmRNAの発生的に制御された配列特異的翻訳抑制、及び標的転写遺伝子サイレンシングが含まれる。
【0149】
ヘテロクロマチン複合体の標的化及び特定の染色体遺伝子座でのエピジェネティック遺伝子サイレンシングにおけるRNAi機構及び小RNAの役割も実証されている。RNA干渉(RNAi)としても知られる二本鎖RNA(double-stranded RNA、dsRNA)依存性転写後サイレンシングは、dsRNA複合体が短期間でサイレンシングのために相同性の特定の遺伝子を標的とすることができる現象である。これは、配列同一性を有するmRNAの分解を促進するシグナルとして作用する。21-ntのsiRNAは、一般に、遺伝子特異的サイレンシングを誘導するのに十分な長さであるが、宿主応答を回避するのに十分な短さである。標的遺伝子産物の発現の減少は、siRNAの数個の分子によって誘導される90%サイレンシングを伴って広範囲であり得る。
【0150】
当技術分野では、これらのRNA配列は、それらの起源に応じて、「短鎖若しくは低分子干渉RNA」(siRNA)又は「マイクロRNA」(miRNA)と呼ばれる。両方のタイプの配列を使用して、相補的RNAに結合し、mRNA排除(RNAi)を誘発するか、又はmRNAのタンパク質への翻訳を停止することによって、遺伝子発現を下方制御することができる。siRNAは、長い二本鎖RNAのプロセシングによって誘導され、天然に見出される場合、典型的には外因性起源である。マイクロ干渉RNA(miRNA)は、短ヘアピンのプロセシングによって誘導される、内因的にコードされた小分子非コードRNAである。siRNA及びmiRNAは両方とも、RNA切断なしに部分的に相補的な標的配列を有するmRNAの翻訳を阻害し、完全に相補的な配列を有するmRNAを分解することができる。
【0151】
したがって、本発明は、標的遺伝子の発現を下方制御するための、本発明の組成物におけるこれらの配列の使用を提供する。
【0152】
標的遺伝子の機能のRNA媒介下方制御の有効性を最適化するために、siRNAリガンドは、典型的には二本鎖であり、siRNA分子の長さは、mRNA標的のsiRNAによる認識を媒介するRISC複合体によるsiRNAの正確な認識を確実にするように、かつsiRNAが宿主応答を低下させるのに十分短くなるように選択されることが好ましい。
【0153】
miRNAリガンドは、典型的には一本鎖であり、リガンドがヘアピンを形成することを可能にする部分的に相補的な領域を有する。miRNAは、DNAから転写されるが、タンパク質に翻訳されないRNA遺伝子である。miRNA遺伝子をコードするDNA配列は、miRNAよりも長い。このDNA配列は、miRNA配列及び近似逆相補体を含む。このDNA配列が一本鎖RNA分子に転写される場合、miRNA配列及びその逆相補塩基対は、部分的に二本鎖のRNAセグメントを形成する。マイクロRNA配列の設計は、John et al,2004で考察されている。
【0154】
典型的には、siRNA又はmiRNAの効果を模倣することが意図されるRNAリガンドは、10~40リボヌクレオチド(又はその合成類似体)、より好ましくは17~30リボヌクレオチド、より好ましくは19~25リボヌクレオチド、及び最も好ましくは21~23リボヌクレオチドを有する。二本鎖siRNAを使用する本発明のいくつかの実施形態では、分子は、例えば、1つ又は2つの(リボ)ヌクレオチドの対称3’オーバーハング、典型的にはdTdT 3’オーバーハングのUUを有し得る。本明細書に提供される開示に基づいて、当業者は、例えば、AmbionのオンラインsiRNAファインダーなどのリソースを使用して、適切なsiRNA及びmiRNA配列を容易に設計することができる。siRNA及びmiRNA配列は、合成的に産生され、遺伝子下方制御を引き起こすために外因的に添加され得るか、又は発現系(例えば、ベクター)を使用して産生され得る。好ましい実施形態では、siRNAは、合成的に合成される。
【0155】
より長い二本鎖RNAを細胞内でプロセシングして、siRNAを産生してもよい(例えば、Myerset al(2003)を参照されたい)。より長いdsRNA分子は、例えば、1つ又は2つの(リボ)ヌクレオチドの対称3’若しくは5’オーバーハングを有してもよく、又は平滑末端を有してもよい。より長いdsRNA分子は、25ヌクレオチド以上であり得る。好ましくは、より長いdsRNA分子は、25~30ヌクレオチド長である。より好ましくは、より長いdsRNA分子は、25~27ヌクレオチド長である。最も好ましくは、より長いdsRNA分子は、27ヌクレオチド長である。
【0156】
一実施形態では、siRNA、より長いdsRNA、又はmiRNAは、ベクターからの転写によって内因的に(細胞内で)産生される。ベクターは、当技術分野で公知の任意の方法で細胞に導入してもよい。必要に応じて、RNA配列の発現は、組織特異的プロモーターを使用して制御できる。更なる実施形態では、siRNA、より長いdsRNA、又はmiRNAは、ベクターからの転写によって外因的に(インビトロで)産生される。
【0157】
あるいは、siRNA分子は、当該分野で公知の標準的な固相合成技術又は液相合成技術を使用して合成され得る。ヌクレオチド間の連結は、ホスホジエステル結合又は代替物であってもよく、例えば、式P(O)S、(チオエート);P(S)S、(ジチオエート);P(O)NR’2;P(O)R’;P(O)OR6;CO;又はCONR’2(式中、RはH(又は塩)又はアルキル(1~12C)であり、R6はアルキル(1~9C)である)の連結基は、-O-又は-S-を介して隣接するヌクレオチドに接合している。
【0158】
長鎖型非コードRNA
哺乳動物ゲノムは広範に転写され、何千もの長鎖型非コードRNA分子(lncRNA)を含む膨大な数の転写物を産生する。lncRNAは、クロマチン状態、転写、RNA安定性、及び特定の遺伝子の翻訳を制御することができることが示されている。
【0159】
RNA活性化(RNA activation、RNAa)
RNA活性化(RNAa)は、高度に制御され、進化的に保存された経路を介して遺伝子発現を増強するためにRNAによって媒介されるプロセスである。RNAaは、両末端に2ヌクレオチドオーバーハングを有する21ヌクレオチドdsRNAからなる非コードRNAのクラスである小活性化RNA(saRNA)によって誘導することができる。saRNAが配列特異的に遺伝子活性化を媒介するという事実にもかかわらず、saRNAは、siRNAと同一の構造及び化学成分を有する。遺伝子発現を活性化するために、saRNAのガイド鎖をAGO2にロードし、次いで複合体を核に輸送する。核内に入ると、ガイド鎖-AGO2複合体は、遺伝子プロモーター又は関連する転写物に直接結合し、RNAポリメラーゼIIを含む重要な成分を動員して、遺伝子活性化を開始する(Kwok et al.2019)。
【0160】
アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)
アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)は、標的配列に相補的なDNA又はRNAの一本鎖である。ASOは、標的核酸とハイブリダイズする。例えば、ASOは、細胞内のコード又は非コードRNA分子を標的とするために使用され得る。標的結合の後、ASO/標的複合体は、例えば、RNase Hによって酵素的に分解され得る。
【0161】
メッセンジャーRNA(Messenger RNA、mRNA)
当業者は、メッセンジャーRNA(mRNA)が、リボソームによって対応するアミノ酸配列に翻訳される遺伝子のコード配列をとるRNAの一本鎖分子であることを承知している。mRNAは、酵素(RNAポリメラーゼ)が遺伝子を一次転写mRNA(プレmRNAとしても知られる)に変換する転写プロセス中に生成される。このプレmRNAは通常、最終的なアミノ酸配列をコードしない領域であるイントロンを依然として含む。これらはRNAスプライシングの過程で除去され、タンパク質をコードする領域であるエキソンのみが残る。このエキソン配列は、成熟mRNAを構成する。次いで、成熟mRNAがリボソームによって読み取られ、それによってコードされたタンパク質が産生される。本発明は、所望のタンパク質又はペプチドの発現を誘導する手段として、mRNA分子を標的細胞及び組織に送達するために使用され得る。mRNA送達によるペプチド/タンパク質発現の誘導は、一過性発現が所望される場合に特に有用である。
【0162】
mRNA及びlncRNAは、典型的に、負に荷電した側及び疎水性側を有する大きな分子である。したがって、mRNA及びlncRNAは、カプセル化され、かつ標的組織及び細胞に送達されるために、疎水性相互作用と親水性相互作用との間のバランスを必要とする。疎水性相互作用と親水性相互作用との間のこのバランスは、例えば、両側に電荷を有するpDNA及びsiRNAなどの二本鎖核酸とは異なる。mRNA及びlncRNAは、例えば、ASOよりも有意に大きいので、カプセル化及び送達のための要件も異なる可能性が高い。したがって、mRNA及びlncRNA送達のためのデンドリマーの最適なNP比及びDOTMA/DOPEのw/w比は、ASO送達と比較して異なる。
【0163】
修飾核酸
修飾ヌクレオチド塩基は、天然に存在する塩基に加えて使用することができ、それらを含有する核酸に有利な特性を付与することができる。
【0164】
例えば、修飾塩基は、核酸分子の安定性を増加させ、それによって、必要とされる量を低下させ得る。修飾塩基の提供はまた、非修飾核酸よりも多かれ少なかれ安定である核酸分子を提供し得る。
【0165】
「修飾ヌクレオチド塩基」という用語は、共有結合的に修飾された塩基及び/又は糖を有するヌクレオチドを包含する。例えば、修飾ヌクレオチドには、3’位のヒドロキシル基以外及び5’位のリン酸基以外の低分子量有機基に共有結合した糖を有するヌクレオチドが含まれる。したがって、修飾ヌクレオチドはまた、2’置換糖、例えば、2’-O-メチル-;2’-O-アルキル;2’-O-アリル;2’-S-アルキル;2’-S-アリル;2’-フルオロ-;2’-ハロ又はアジド-リボース、炭素環式糖類似体、α-アノマー糖;エピマー糖、例えば、アラビノース、キシロース又はリキソース、ピラノース糖、フラノース糖、及びセドヘプツロースを含み得る。
【0166】
修飾ヌクレオチドは、当技術分野で公知であり、アルキル化プリン及びピリミジン、アシル化プリン及びピリミジン、並びに他の複素環を含む。これらのクラスのピリミジン及びプリンは、当該分野で公知であり、プソイドイソシトシン、N4,N4-エタノシトシン、8-ヒドロキシ-N6-メチルアデニン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6-イソペンチル-アデニン、1-メチルアデニン、1-メチルプソイドウラシル、1-メチルグアニン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-メチルアデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、-D-マンノシルクエオシン、5-メトキシカルボニルメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、プソオラシル(psueouracil)、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、N-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、クエオシン、2-チオシトシン、5-プロピルウラシル、5-プロピルシトシン、5-エチルウラシル、5-エチルシトシン、5-ブチルウラシル、5-ペンチルウラシル、5-ペンチルシトシン、及び2,6,ジアミノプリン、メチルプソイドウラシル、1-メチルグアニン、1-メチルシトシンが挙げられる。
【0167】
核酸ベースのワクチン
世界保健機関(World Health Organisation、WHO)によって定義されるDNAワクチン、及びRNAワクチンは、免疫応答が求められる抗原をコードするDNA配列又はRNAを含有するプラスミドを(ワクチン接種される対象の)適切な組織に直接導入することを伴い、標的抗原のインサイチュ産生に依存する。これらのアプローチは、両方のB細胞及びT細胞応答の刺激、改善されたワクチン安定性、任意の感染因子の非存在、並びに大規模製造の相対的な容易さを含む、伝統的なアプローチを超える多くの潜在的な利点を提供する。DNAワクチン接種の原理の証明として、動物における免疫応答は、インフルエンザウイルス、B型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、狂犬病ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、マラリア原虫、及びマイコプラズマを含む種々の感染因子由来の遺伝子を使用して得られている。場合によっては、動物における疾患からの保護も得られている。しかしながら、DNAワクチンの価値及び利点は、ケースバイケースで評価されなければならず、それらの適用性は、それに対して免疫化される薬剤の性質、抗原の性質、及び防御に必要な免疫応答のタイプに依存する。
【0168】
DNA及びRNAワクチン接種の分野は、急速に発展している。現在開発されているワクチンは、DNAを使用するだけでなく、DNAが細胞に入るのを補助し、それを特定の細胞に標的化するか、又は免疫応答を刺激若しくは指向するアジュバントとして作用し得るアジャンクトも含む。2020年の時点で、WHOは、市販のために認可された最初の核酸ワクチンが細菌細胞由来のプラスミドDNAを使用する可能性が高いが、将来、他のワクチンがRNAを使用し得るか、又は核酸分子及び他の実体の複合体を使用し得ることに注目した。しかしながら、2020年のCOVID-19パンデミックの開始とともに、最初のRNAベースのCOVID-19ワクチンを市場に出すために協奏的な努力がなされ、これらは2020年半ば~後半に使用が承認された。承認されて以来、これらのRNAベースのワクチンは、COVID-19に対して集団を免疫化するために世界中で成功裏に展開されてきた。
【0169】
DNAワクチンの筋肉内送達は、他のワクチン技術と共通して、一般的なアプローチである(Lim et al,2020)。安定な発現がゲノム組み込みに依存しないので、これは、骨格筋における筋細胞(筋肉細胞)の低い複製速度に起因して、DNAワクチン接種の魅力的な標的となる。
【0170】
現在市販されているRNAワクチンは、ペイロードとして抗原をコードするmRNAを使用している。RNAワクチンの有効性を増加させるために現在調査されている領域は、自己増幅RNAの使用である。自己増幅RNAは、mRNAの構造的特質の多くを共有し、5’キャップ、3’ポリAテール、並びに5’及び3’非翻訳領域(untranslated region、UTR)を含み得る。目的の抗原をコードすることに加えて、自己増幅RNAはまた、自己増幅のための系を含む。例えば、自己増幅RNAはまた、RNA依存性RNAポリメラーゼ(RDRA)、プロモーター、及び目的の抗原をコードし得る。
【0171】
対象翻訳機構によるRDRAの翻訳時に、RDRAは、自己増幅RNAに関与し、RNAを複製することができる。自己増幅のための系を含むことは、ワクチンにおいて必要とされる最小RNAを低下させ、結果として、対象が副作用を経験する可能性を低下させる。
【0172】
医学療法:遺伝子療法
本発明は、遺伝子療法レジメンにおける使用を企図する。核酸は、標的細胞に導入された場合、治療用遺伝子産物、例えば、導入遺伝子の発現をもたらす組成物中に存在し得る。標的細胞としては、筋細胞、肝細胞、星細胞、脳細胞(ニューロン、アストロサイト)、脾細胞、肺細胞、心筋細胞、腎細胞、脂肪細胞、幹細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、好中球、B細胞、T細胞、骨髄由来サプレッサ細胞、腫瘍関連マクロファージ、腫瘍関連好中球、又は腫瘍細胞が挙げられる。
【0173】
遺伝子療法が実用的であるためには、(1)治療用配列を標的細胞に指向させ、(2)治療用核酸の標的細胞集団の一部への取り込みを媒介し、かつ(3)治療用途のためのインビボでの使用に適しているDNA/RNA転移系を用いることが望ましい。
【0174】
本発明の核酸含有組成物は、無菌の薬学的に許容される担体中で保存及び投与することができる。水、PBS、エタノール、脂質などを含む様々な滅菌溶液を使用することができる。DNA/RNAの濃度は、治療用量を提供するのに十分であり、これは細胞への輸送効率に依存する。
【0175】
上記のように製剤化された遺伝子配列の実際の送達は、直接注入、肺及び他の上皮表面の点滴注入、又は静脈内注射を含む種々の技術によって行われ得る。投与は、ボーラス、複数回投与、又は持続注入などとして、注射針、トロカール、カニューレ、カテーテルなどによるものであり得る。
【0176】
遺伝子編集
本発明は、CRISPR/Cas(例えば、CRISPR/Cas9系)、TALENS及びジンクフィンガーヌクレアーゼなどの当技術分野で周知の技術を使用する遺伝子編集療法を含む、遺伝子編集療法における使用を企図する。
【0177】
いくつかの実施形態では、CRISPR/Cas系は、Casヌクレアーゼ、crispr RNA(crispr RNA、crRNA)、及びトランス活性化crRNA(trans-activating crRNA、trRNA又はtracrRNA)を含む。この系では、crRNAは、標的DNAに相補的な配列を含み、Casヌクレアーゼをゲノム内の標的部位に指向させる働きをし、tracrRNAは、Cas活性に必要とされるCasヌクレアーゼの結合足場として働く。いくつかの実施形態では、CRISPR/Cas系は、Casヌクレアーゼと、Casヌクレアーゼを標的遺伝子中の標的部位に指向させるための単一ガイドRNA(single-guide RNA、sgRNA)とを含む。sgRNAは、単一核酸中に足場tracrRNAに融合された標的特異的crRNAを含む。
【0178】
いくつかの実施形態では、核酸は、Casタンパク質又はペプチド、例えば、Cas9タンパク質又はペプチドをコードするDNA又はmRNAを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、sgRNAを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、crRNA及び/又はtracrRNAを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、Casタンパク質又はペプチド、crRNA、及びtracrRNAをコードするDNA又はmRNAを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、Casタンパク質又はペプチド及びsgRNAをコードするDNA又はmRNAを含む。
【0179】
CRISPR/Cas系を使用して、標的遺伝子の修復又は修飾を指示することもできる。例えば、CRISPR/Cas系は、DNA修復を促進するための、又は例えば、相同組換え修復を促進することによって外因性核酸配列を標的遺伝子に導入するための核酸鋳型を含むことができる。CRISPR/Cas系はまた、例えば、塩基編集技術を使用して、標的ゲノムDNAに標的化修飾を導入するために使用されてもよい。これは、例えば、国際公開第2017/070633(A2)号(参照により組み込まれる)に開示されるように、シチジンデアミナーゼなどの塩基エディターに融合されたCasタンパク質を使用して達成することができる。別の例では、CRISPR/Cas系は、ゲノム中の核酸配列を「書き換える」ために使用されてもよい。例えば、CRISPR/Cas系は、プライム編集系であり得る。このようなプライム編集系では、融合タンパク質が使用され得る。例えば、融合タンパク質は、触媒的に損なわれたCasドメイン(例えば、「ニッカーゼ」)及び逆転写酵素を含み得る。触媒的に損なわれたCasドメインは、DNAの一本鎖を切断して、ニックの入ったDNA二重鎖を生成することが可能であり得る。プライム編集系は、プライマー結合部位及び逆転写酵素鋳型配列を含む拡張sgRNAを含むプライム編集ガイドRNA(prime editing guide RNA、pegRNA)を含み得る。触媒的に損なわれたCasによるDNA二本鎖のニッキングの際に、プライマー結合部位は、ニッキングされたDNA鎖の3’末端がpegRNAにハイブリダイズすることを可能にし、一方、RT鋳型は、編集された遺伝子情報の合成のための鋳型として役立つ。
【0180】
いくつかの実施形態では、CRISPR/Cas遺伝子編集系は、目的の標的遺伝子の修復を指示する核酸鋳型を含み得る。他の実施形態では、Casタンパク質又はペプチドは、塩基エディターを含み得る。なお更なる実施形態では、CRISPR/Cas系は、プライム編集系であってもよい。
【0181】
CRISPR/Cas遺伝子サイレンシング及び遺伝子活性化
CRISPR/Cas系は、遺伝子サイレンシング及び活性化における使用に適合されている。そのような系は、本発明で使用するために想定される。例えば、いくつかの実施形態では、核酸は、転写リプレッサ又はアクチベータに融合したCasタンパク質又はペプチドを含む融合タンパク質をコードしてもよい。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、触媒活性がない。融合タンパク質は、sgRNA又はcrRNAのいずれかによってゲノム中の目的の部位に指向され得る。目的の部位への融合タンパク質の結合に際して、転写リプレッサ又はアクチベータは、目的の遺伝子の発現を制御し得る。
【0182】
併用療法
本発明の化合物又は本発明の方法によって同定される化合物は、腫瘍及びがんの治療を必要とする対象における腫瘍及びがんの治療に使用することができる。化合物は、単独で又は他の抗がん剤と組み合わせて投与してもよい。
【0183】
「抗がん剤」は、新生物状態の治療に有用な任意の薬剤を指す。抗がん剤の1つのクラスは、化学療法剤を含む。「化学療法」は、静脈内、経口、筋肉内、腹腔内、膀胱内、皮下、経皮、頬側、若しくは吸入を含む様々な方法によるか、又は坐剤の形態での、がん患者への1つ以上の化学療法薬及び/又は他の薬剤の投与を意味する。いくつかの化学療法剤は、細胞毒性である。
【0184】
細胞毒性化学療法剤は、受容体媒介性ではない機構又は手段を介して細胞死を誘発する。細胞毒性化学療法剤は、細胞分裂、代謝又は細胞生存に必要な機能を妨害することによって細胞死を誘発する。この作用機序のために、急速に成長している(増殖又は分裂していることを意味する)細胞又は代謝的に活性な細胞は、そうでない細胞よりも優先的に死滅する。分裂又はエネルギー使用(これは細胞の機能を支持する代謝活性である)としての体内の異なる細胞の状態は、細胞死を引き起こす化学療法剤の用量を決定する。細胞毒性化学療法剤は、非排他的に、アルキル化剤、代謝拮抗剤、植物性アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、抗腫瘍薬及び三酸化ヒ素、カルムスチン、フルダラビン、IDA ara-C、myalotang、GO、mustargen、シクロホスファミド、ゲムシタビン、ベンダムスチン、放射線全身照射、シタラビン、エトポシド、メルファラン、ペントスタチン、及び放射線に関する。
【0185】
抗がん剤はまた、血液及び肺がんを含む多様な範囲のがんの治療に使用することができるプロテインキナーゼ阻害剤を含む。プロテインキナーゼは、典型的には、細胞増殖、生存、及び移動を促進し、がんにおいて構成的に過剰発現されるか又は活性であることが多い。したがって、プロテインキナーゼの阻害剤は、がんの治療における一般的な薬物標的である。臨床で使用するためのキナーゼ阻害剤の例としては、クリゾチニブ、セリチニブ、アレクチニブ、ブリガチニブ、ボスチニブ、ダサチニブ、イマチニブ、ニロチニブ、ポナチニブ、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、イブルチニブ、パルボシクリブ、ソラフェニブ、及びリボシクリブが挙げられる。
【0186】
抗がん剤はまた、抗体を含む、免疫療法における使用のための薬剤を含む。免疫療法は、特定の疾患状況に応じて免疫応答を誘発、増幅、低下、又は抑制することができる。例えば、PDL1リガンドを発現する腫瘍細胞は、T細胞上に発現されるPD-1受容体に結合することによって、対象における正常な免疫応答を抑制する。このようにして、腫瘍細胞は、免疫誘導性アポトーシスに抵抗し、腫瘍進行を促進する。抗PD-1及び抗PDL1抗体は、この免疫チェックポイントを阻害し、かつ腫瘍細胞の免疫細胞媒介性死滅を促進するために、臨床において成功裏に使用されている。免疫療法の他の例としては、腫瘍溶解性ウイルス療法、T細胞療法、及びがんワクチンが挙げられる。
【0187】
薬学的組成物
本明細書で提供される薬学的組成物は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、例えば、溶媒、溶解促進剤、懸濁化剤、緩衝剤、等張化剤、抗酸化剤、又は抗菌保存剤を含んでもよい。「薬学的に許容される」とは、「一般に安全であるとみなされる」分子実体及び組成物、例えば、ヒトに投与された場合に、生理学的に忍容性があり、典型的にはアレルギー性又は同様の有害反応、例えば、胃の不調などを生じない分子実体及び組成物を指す。いくつかの実施形態では、この用語は、連邦食品医薬品化粧品法(Federal Food, Drug and Cosmetic Act)のセクション204(s)及び409に基づくGRASリストとして、米国連邦政府又は州政府の規制当局によって承認された分子実体及び組成物を指し、これは、FDA若しくは同様のリスト、米国薬局方、又は動物、より具体的にはヒトにおける使用のための別の一般的に認識された薬局方によるプレマーケットレビュー及び承認を受ける。使用される場合、組成物の賦形剤は、活性成分の安定性、生物学的利用能、安全性、及び/又は有効性に悪影響を及ぼさない。したがって、当業者は、剤形の成分のうちのいずれかの間に不適合性がない組成物が提供されることを理解するであろう。賦形剤は、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、抗酸化剤、抗菌剤、及び保存剤からなる群から選択され得る。
【0188】
治療用産物の発現
本発明の組成物によって送達される核酸は、治療作用(例えば、標的遺伝子を直接下方制御又は上方制御するように作用することによって)を示し得るか、又はプロモーターに作動可能に連結されたコード配列を含む発現カセットを介して遺伝子産物(治療用タンパク質又は治療用核酸であり得る)を発現し得る。本明細書において、「作動可能に連結された」という用語は、選択されたヌクレオチド配列及び制御ヌクレオチド配列が、コード配列の発現を制御配列の影響下又は制御下に置くような様式で共有結合している状況を含み得る。したがって、制御配列が、選択されたヌクレオチド配列の一部又は全てを形成するコード配列の転写を達成し得る場合、制御配列は、選択されたヌクレオチド配列に作動可能に連結される。適切な場合、次いで、得られた転写物は、所望のタンパク質又はポリペプチドに翻訳され得る。
【0189】
投与経路
本発明の態様による組成物は、静脈内、非経口、動脈内、筋肉内、腫瘍内、皮下、経口、及び経鼻を含むがこれらに限定されないいくつかの経路による投与のために製剤化することができる。組成物は、ヒト又は動物対象への注入によって、例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、皮内、皮下、又は腫瘍内注入によって投与することができる。
【0190】
対象
処理される対象は、任意の動物又はヒトであり得る。対象は、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。対象は、非ヒト哺乳動物であってもよいが、より好ましくはヒトである。対象は、男性であっても女性であってもよい。対象は、患者であってもよい。治療的使用は、ヒト又は動物(獣医学的使用)におけるものであってもよい。
***
【0191】
特定の形態で、又は開示された機能を実施するための手段、又は開示された結果を得るための方法若しくはプロセスに関して表現された、前述の説明、以下の特許請求の範囲、又は添付の図面に開示された特質は、必要に応じて、別々に、又はそのような特質の任意の組み合わせで、本発明をその多様な形態で実現するために利用することができる。
【0192】
本発明は、上述の例示的な実施形態に関連して説明されてきたが、多くの等価な修正形態及び変形形態が、本開示を与えられたときに当業者には明らかになるであろう。したがって、上述した本発明の例示的な実施形態は、例示的なものであり、限定的なものではないと考えられる。説明された実施形態に対する様々な変更が、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく行われ得る。
【0193】
疑義を回避するために、本明細書で提供される任意の理論的説明は、読者の理解を向上させる目的で提供される。本発明者らは、これらの理論的説明のうちのいずれにも束縛されることを望まない。
【0194】
本明細書で使用される任意のセクション見出しは、構成上の目的のみのためであり、記載される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0195】
特許請求の範囲を含む本明細書全体を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」及び「含む(include)」という用語、並びに「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、及び「含んでいる(including)」などの変形は、述べられた整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群の包含を意味するが、任意の他の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群の排除を意味しないことが理解されるであろう。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が明らかに他を指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。範囲は、本明細書において、「約」1つの特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値までとして表現され得る。そのような範囲が表現される場合、別の実施形態は、1つの特定の値から、及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、値が先行詞「約」の使用によって近似値として表される場合、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されるであろう。数値に関する「約」という用語は任意選択であり、例えば、+/-10%を意味する。
【実施例】
【0196】
実施例1-脂質と組み合わせてカチオン性残基及び疎水性残基を提示するペプチドデンドリマーを用いた遺伝子送達
序論
カチオン性脂質に基づく核酸送達系は、現在までに記載されている最も研究された効率的な非ウイルスベクタープラットフォームのうちの1つであり、天然アミノ酸を有するペプチドベクターの合理的な設計及び開発は、アミノ酸の非毒性の性質に起因して、治療用途のために特に魅力的である。本発明者らは、ペプチドデンドリマーを使用して、核酸送達のための構造フレームワークを開発した。構造フレームワークは、リジン残基に結合した3層のペプチド(又はジペプチド)モチーフを含む。本発明者らは、各世代(層)におけるカチオン性アミノ酸残基(Lys又はArg)の分布により、表面上のみに局在する電荷を有するデンドリマーよりも効率的にトランスフェクトするペプチドデンドリマーが得られることを見出した(Kwok et al,2013)。固相ペプチドデンドリマー合成手順を使用して、本発明者らは、樹状足場内に組み込まれた全てのアミノ酸残基の位置を正確に操作することができる。これは、デンドリマーの構造及び機能のより大きな制御を可能にし、これは、修飾が主に分子の表面上で行われたポリマー又は他のデンドリマーなどの以前に研究された系では通常不可能であった。ペプチドデンドリマー/脂質ベクターは、高いトランスフェクション効率、結果の良好な再現性、及び低い毒性を示した。
【0197】
本発明者らは、(1)樹状骨格、(2)デンドリマーの緻密性、(3)樹状サイズ、(4)デンドリマービルディングブロックキラリティ、及び(5)デンドリマー内のアミノ酸組成が、遺伝子導入を改善するための重要なパラメータであり得ると仮定した。本発明者らは、交互のLysLeuモチーフを有する有効なG1,2,3-KLに基づく新しいデンドリマーライブラリーを生成することによって構造的特質を調査し、トランスフェクション活性が世代依存性であり、3世代がトランスフェクションに最適であることを見出した。各世代において均一な電荷分布を達成することは重要であるが、各世代内の電荷の正確な位置は重要ではない。キラリティが異なるデンドリマー及び各世代内でのアミノ酸の数が異なるデンドリマーを使用した場合に、いくらかの活性が観察された。しかしながら、デンドリマー内で陽イオンアミノ酸をLysからArgに(すなわち、LysLeuからArgLeuモチーフに)変化させると、血清条件におけるトランスフェクションが改善された。これは、全身送達を介したインビボ遺伝子導入を可能にし、デンドリマー-DNA複合体の改善された安定性と相関する。G1,2,3-RL複合体は、組織パネルへの遺伝子送達において有効である。
【0198】
結果
核酸送達の有効性を決定する際の分子認識単位の役割
疎水性及びカチオン性特性のバランスを一定に保ちながら、DNAパッケージング及び送達に対するデンドリマーの分子認識単位の微調整に対する効果を評価するために、本発明者らは、G1,2,3-KLの誘導体に基づいて、異なる(1)骨格、(2)緻密性、(3)サイズ、(4)ビルディングブロックにおけるキラリティ、及び(5)アミノ酸組成を有するデンドリマーを調査した。デンドリマー-DNAは、DOTMA/DOPE(D/D)と複合体を形成する。広く使用されているヒト子宮頸がんHeLa細胞及びマウス神経芽細胞腫Neuro2A細胞でのトランスフェクション効率を、以下の表からの特定のデンドリマーを使用して評価した。
【0199】
【表1】
表1.例示的なデンドリマー。G1,2,3-KL、G1,2-KL、G1-KL、G1,2,3-LR、G1-LR,G2.3-RL、G1,2,3-rl、G1,2-RL,G3-LR、G1,2-LR,G3-RL、G1,2,3-RL、G1,2,-RL、G1-RL、G1,2-LK,G3-KL、G1,2,3-LK、Ala-G1,2,3-KL、G1,2,3-K、G0,1,2,3-KL、及びD-G1,2.3-KL(「G1,2,3-kl」とも示される)は、デンドリマー全体にわたって交互の電荷(Lys又はArg)及び疎水性(Leu)残基分布を有する。G1,2,3-Kは、各世代のペプチドモチーフ中にただ1つのアミノ酸を有する。コア配列のC末端に存在するNH
2基は、ペプチド合成法の結果である。分子量(molecular weight、MW)は、対イオン(トリフルオロアセテート)を含まない。
【0200】
mRNA及びDNA送達についてのインビボ及びインビトロトランスフェクション効率もまた、以下の表からの特定のデンドリマーを使用して評価し、以下の実施例において考察した。
【0201】
【表2】
表2.更なる例示的なデンドリマー。コア配列のC末端に存在するNH2基は、ペプチド合成法の結果である。X=6-アミノヘキサン酸、B=ベータ-アラニン、Dab=2,4-ジアミノ酪酸。小文字はD型アミノ酸を意味し、大文字はL型アミノ酸を意味する。Iは、D型ロイシンである。グリシンにはD型もL型も存在しない。
【0202】
流体力学的サイズ、多分散性指数、及びゼータ電位を、表1及び2に開示されるデンドリマーのセットについて決定した。
【0203】
【表3】
表3.ペプチドデンドリマー、脂質、及びmRNA複合体の流体力学的サイズ及びゼータ電位。デンドリマーは、N:P比が0.16:1であり、脂質DOTMA/DOPEは、mRNAに対するw/w比が10:1であった。コア配列のC末端に存在するNH2基は、ペプチド合成法の結果である。X=6-アミノヘキサン酸、B=ベータ-アラニン、Dab=2,4-ジアミノ酪酸。小文字はD型アミノ酸を意味し、大文字はL型アミノ酸を意味する。lは、D型ロイシンである。グリシンにはD型もL型も存在しない。
【0204】
【表4】
表4.ペプチドデンドリマー、脂質、及びmRNA複合体の流体力学的サイズ及びゼータ電位。デンドリマーは、N:P比が8:1であり、脂質DOTMA/DOPEは、mRNAに対するw/w比が10:1であった。コア配列のC末端に存在するNH基は、ペプチド合成法の結果である。X=6-アミノヘキサン酸、B=ベータ-アラニン、Dab=2,4-ジアミノ酪酸。小文字はD型アミノ酸を意味し、大文字はL型アミノ酸を意味する。lは、D型ロイシンである。グリシンにはD型もL型も存在しない。
【0205】
樹状構造、対称性、トポロジー、及びキラリティの変動
種々の樹状構造は、足場内の異なるアミノ酸分布及び分岐点間のアミノ酸の数を提供して、多様な緻密性及びサイズを示す構造を与える(例えば、上記の表1を参照されたい)。
【0206】
トポロジー変動の影響を調査するために、一部又は全てのKLの位置が逆転したデンドリマー(G1,2-LK,3-KL及びG1,2,3-LK)をG1,2,3-KLと比較する。G1,2,3-LKは、G1,2,3-KLと比較して、DNA結合及びトランスフェクションに対して有意差を有しなかった(
図1A、B)。総電荷はG1,2,3-KLと同じであるが、サイズ及び分子量が低下している(G1,2,3-Kの電荷当たりのMWはG1,2,3-KLよりも1.5倍低い)G1,2,3-Kについては、トランスフェクション効率がいくらか低下し、G1,2,3-KLほど有効ではない(
図1C、D)。G1,2,3-Kは、2.5のより低いN/P比でより良好にトランスフェクトされたが、N/P比を増加させると、G1,2,3-KLと比較した場合、効果がより低くなる傾向がある。
【0207】
キラリティの影響を調査するために、D型アミノ酸を有するG1,2,3-KLデンドリマーを合成した(D-G1,2,3KLと示す)。デンドリマーのL型アミノ酸をD型に置換することは、トランスフェクションに有意な影響を及ぼさなかった(
図1C、D)。
【0208】
トランスフェクションにおける焦点でのアミノ酸配列の重要性を、G0,1,2,3-KL及びAla-G1,2,3-KLを試験することによって研究した。焦点におけるGlySerCys配列は、以前に研究された全てのデンドリマーにおいて一定であり、更なる荷電した残基を有するLysLeuAlaによって置換された。変化はトランスフェクションの結果に影響を及ぼさなかった(
図1E、F)。
【0209】
全体として、上記の結果は、デンドリマーの各世代における電荷分布がトランスフェクション効率の決定因子であることを示す。最適な構造に関する更なる変動は、トランスフェクション活性をわずかに変化させ得るが、全体的な効果は、電荷分布それ自体が変化しない限り、重要ではない。この観察は、電荷が外側世代(outer generation)に集中しているだけであり、各世代にわたって均一に分布していないという本発明者らの以前の観察と一致しており、トランスフェクション効率は大幅に減少した。
【0210】
異なる世代のKL及びRLデンドリマーのトランスフェクション効率の比較
送達効率におけるKL反復単位に基づくG1からG2、G3への世代数を調査した。また、KL単位をRL反復単位で置換して、pKaが異なるプロトン化塩基性基の影響を比較した。興味深いことに、本発明者らは、細胞における世代とトランスフェクションとの関係を観察した(
図2)。トランスフェクションに対する世代依存性は、第1世代デンドリマーG1-KL又はG1-RLが、荷電残基としてリジン又はアルギニンを用いてHeLa又はNeuro2A細胞をトランスフェクトしないことを明らかにする。これは、複合体安定性アッセイによって示されるように(データは示さず)、G1ペプチドが、プラスミドDNAを完全にカプセル化して安定なナノ粒子を形成するのに十分なほど物理的に大きくないという事実に起因し得る。
【0211】
しかしながら、第2世代については、アルギニン含有G1,2-RLは、G1,2-KLと比較してより高いトランスフェクション効率を示す(HeLa細胞では10又は20のN/P比で、及びNeuro2A細胞では20のN/P比で)(
図2)。G1,2-KLに対するG1,2-RLのこのようなトランスフェクションの優位性は、G1,2-KLよりも安定なトランスフェクション複合体をDNAと形成するG1,2-RLの能力と一致する(データは示さず)。G2デンドリマーの最適N/P比は、それぞれの最良の活性について、G3デンドリマーの最適N/P比よりも有意に高い。本発明者らの結果はまた、G1,2-KLがNeuro2A細胞よりも高い効率でHeLa細胞をトランスフェクトしたことを示した。これは、ある種の形質転換体の活性が、プロテオグリカンなどの異なる成分、及びトランスフェクション複合体結合及び最終的に細胞への遺伝子送達に影響を及ぼし得る細胞表面上のそれらの濃度に起因して、細胞依存性であり得るという事実を強調する。
【0212】
全体として、G3デンドリマーは、HeLa及びNeuro2A細胞の両方において効率的にトランスフェクトする。本発明者らの第3世代デンドリマーは、HeLa及びNeuro2A細胞において、ポリエチレンイミン(Polyethylenimine、PEI)、リポフェクチン(DOTMA/DOPEとしても知られる)、及びLipofectamine 2000などの広く使用されている一部の市販試薬よりも2~600倍良好にトランスフェクトした(
図3)。
【0213】
血清の存在下では、G1,2,3-RL-デンドリマー/DOTMA/DOPE製剤は、DOTMA/DOPE単独よりも最大800倍効率的であった(D/D単独を使用したトランスフェクションを100%と定義する)。G1,2,3-KLは、HeLa細胞において、D/D単独と比較してトランスフェクション効率を200倍改善した(
図4A)。Neuro 2A細胞において、G1,2,3-KL及びG1,2,3-RLの活性は、DOTMA/DOPE単独よりもそれぞれ340倍及び1500倍高かった(
図4B)。この観察は、RLデンドリマーがKLデンドリマーよりも強くDNAに結合し、したがってそれらがより安定であり、血清中の荷電成分からの攻撃に対して耐性があるという事実によって説明することができる。
【0214】
トランスフェクション試薬によって媒介される細胞毒性は、インビボ用途のための重要なパラメータである。デンドリマー含有製剤の毒性を対照の毒性と比較した。デンドリマーの修飾のほとんどは、HeLa細胞に対してより高い毒性を誘導せず、細胞生存率は、G1,2,3-KL(約40%以上)及び市販の試薬Lipofectamine 2000(約20%)に匹敵し、補充脂質(D/D、約40%)と同様であった。世代数を1から3に増加させても、毒性は増加しなかった。デンドリマー製剤によって引き起こされる毒性の実際の機構はよく知られていないが、製剤からの毒性の一部は、以前に示されたようにD/Dの添加によるものであり、D/D単独対照からも生じた。実際、脂質-デンドリマー-DNA複合体の大部分は、D/D対照と比較してより高い毒性を媒介しなかったが、デンドリマー複合体の大部分は、広く使用されているLipofectamine 2000と比較してより高い細胞生存率をもたらした。無効なG1-KL又はRL製剤も40%の細胞死を誘導したので、デンドリマー複合体の毒性は、トランスフェクション効率に直接関連しなかった。Neuro2A細胞において、ほとんどのデンドリマー-DNA複合体は、HeLa細胞におけるほど毒性ではなかった(80%以上の細胞生存率)。全体として、トランスフェクション後の細胞生存率は、参照試薬Lipofectamine 2000(約45%)よりも有意に高かった。
【0215】
取り込み機構
本発明の組成物の取り込み機構を調査した。クラスリン媒介性エンドサイトーシスを阻害するために、クロルプロマジンを用いた。ゲニステイン及びロットレリンも使用した。これらの薬剤は、カベオラ媒介性エンドサイトーシス及びミクロピノサイトーシスをそれぞれ阻害することが報告されている。
【0216】
本発明者らは、クロルプロマジンの添加がトランスフェクションを80%有意に阻害することを観察し(
図5B)、クラスリン媒介性エンドサイトーシスがデンドリマー系によるDNA送達において重要な役割を果たすことを示唆した。ゲニステイン及びロットレリンは、トランスフェクションを約50%阻害した(
図5D、F)。これは、ペプチドデンドリマー系が、少なくとも3つの異なる経路を介して細胞取り込みを媒介し、クラスリン媒介性エンドサイトーシスが内在化のための重要な経路であることを示唆した。異なる細胞内在化経路を誘発する能力は、異なる細胞型によるナノ粒子の取り込みを可能にし、したがって、このデンドリマー系がインビボでDNAカーゴを送達するという事実を説明するであろう。
【0217】
考察
本発明者らは、トランスフェクションに対するRL及びKL(すなわち、疎水性基とカチオン性基との組み合わせ)ベースの第3世代デンドリマーの電荷分布の影響を以前に報告している(Kwok et al,2013)。3つの世代にわたって均一な分布を提供することにより、効率的なトランスフェクション試薬(DOTMA/DOPEと組み合わせて)が得られたが、表面上(第3世代)のみに電荷が集中することで、DNAトランスフェクションが有意に低下した。本明細書(例えば、上記表1)に開示される第3世代デンドリマーバリアントに関する本調査により、効率的なトランスフェクションのためには、樹状構造における電荷分布が、足場内のアミノ酸のトポロジー及びキラリティよりも重要であることが分かる。
【0218】
本発明者らは、世代数がトランスフェクションに重要であり、世代数の増加がトランスフェクション効率を増強する傾向があることを実証する。改善されたトランスフェクション効率は、改善された複合体安定性と一致する。例えば、G1,2,3-RLは、血清条件でのトランスフェクション及びインビボ遺伝子送達に非常に有効なデンドリマーである(データは示さず)。
【0219】
全身投与により、G1,2,3-RL-DOTMA/DOPE複合体は、アッセイされる全ての組織における機能的遺伝子発現のためのDNAを送達する。遺伝子発現は、肝臓及び骨格筋において特に高く、毒性は観察されなかった。全ての異なる組織へのDNAの送達は、G1,2,3-RL及びDOTMA/DOPE複合体が、全ての細胞型において異なるレベルで発現されるカーゴ取り込みプロセスであるクラスリン媒介性エンドサイトーシス、カベオラ媒介性エンドサイトーシス、及びマクロピノサイトーシスを介して細胞内在化を媒介し得るという観察と一致する(データは示さず)。
【0220】
G1,2,3-RL、DOTMA/DOPE、DNA組成物の生体分布は、当該分野で記載されている他の系とは異なる。例えば、脂質ベース、ペプチドベースの系、及びデンドリマーPAMAM足場は、主にIV投与後に肺及び脾臓にDNAを送達することが観察された。PEI及び両親媒性ペプチドは、DNAを肺及び肝臓に効果的に送達したが、PEIの使用で毒性が観察された。対照的に、本発明は、毒性なしに筋肉に送達する有効な手段を提供する。腎臓及び脾臓における比較的低い遺伝子発現は、本発明の組成物が腎臓及び細網内皮系によるクリアランスに供されないことを意味する。したがって、肝臓における高い遺伝子発現は、主に肝細胞及び星細胞への送達を示唆する(データは示さず)。
【0221】
本発明の組成物は、核酸を脳に機能的に送達することもできる。血液脳関門(blood brain barrier、BBB)を通る又はその周囲の経路は確かではないが、内皮細胞がカーゴを障壁の一端でエンドサイトーシスし、他端でエキソサイトーシスするプロセスであるトランスサイトーシスが可能である。トランスサイトーシスは、ボラ型両親媒性物質系などの他の合成系によってBBBを迂回してカーゴを送達することが報告されている。
【0222】
驚くべきことに、本発明の組成物は、ほとんどの非ウイルス遺伝子送達系がこの標的への効果的でない送達を示すという事実にもかかわらず(データは示さず)、DNAを骨格筋に効果的に送達する。骨格筋は、カベオリン3(caveolin 3、Cav3)のみを発現し、これは、本発明の送達系がCav3成分と相互作用して有効な細胞内在化を媒介することを示唆し得る。
【0223】
本発明のペプチドデンドリマーは、アミノ酸組成、デンドリマーのトポロジー、並びにC末端及びN末端上の可能な修飾に関して利用可能である大きな化学的空間を有する、効率的かつ潜在的に標的に合わせたトランスフェクション試薬を提供する、汎用性のプラットフォームを表す。ペプチドデンドリマー/DOTMA/DOPE系は、生物学的障壁を迂回して、他のアジュバントなしでDNAプラスミドを細胞核にインビボで送達することができる。エンドソーム脱出及び/又は核局在化を助ける細胞特異的標的化ドメイン、ペプチド、又は他の分子をデンドリマーにコンジュゲートして、細胞/組織標的化送達及び遺伝子発現を更に改善することができることが想定される。
【0224】
材料及び方法
分取RP-HPLC後に、G1,2,3-KL((KL)8(KKL)4(KKL)2KGSC-NH2)を泡状無色固体として得た(72.3mg、10.3μmol、9%)。分析用RP-HPLC:tR=1.47分(2.2分でA/D 100/0~0/100、λ=214nm)。MS(ESI+):C218H422N60O39S計算値/実測値:4540.1/4539.0[M]+。
【0225】
分取RP-HPLC後に、G1,2-KL((KL)4(KKL)2KGSC-NH2)を泡状無色固体として得た(90.5mg、27.9μmol、41%)。分析用RP-HPLC:tR=1.36分(2.2分でA/D 100/0~0/100、λ=214nm)。MS(ESI+):C96H182N28O19S計算値/実測値:2096.8/2096.0[M]+。
【0226】
分取RP-HPLC後に、G1-KL((KL)2KGSC-NH2)を泡状無色固体として得た(46.0mg、41.7μmol、60%)。分析用RP-HPLC:tR=1.23分(2.2分でA/D 100/0~0/100、λ=214nm)。MS(ESI+):C38H74N12O9S計算値/実測値:875.1/875.4[M]+。
【0227】
分取RP-HPLC後に、G1,2,3-RL((RL)8(KRL)4(KRL)2KGSC-NH2)を泡状無色固体として得た(14.6mg、2.0μmol、2%)。分析用RP-HPLC:tR=1.50分(2.2分でA/D 100/0~0/100、λ=214nm)。HRMS(NSI+):C218H422N88O39S計算値/実測値:4932.3/4931.4[M]+;5106.3/5105.7[M+TFA+Na+K]+;5220.3/5219.9[M+2TFA+Na+K]+;5616.4/5616.3[M+6TFA]+;5730.4/5730.3[M+7TFA]+;5844.5/5844.3[M+8TFA]+;5958.5/5958.3[M+9TFA]+;6072.5/6072.3[M+10TFA]+。
【0228】
分取RP-HPLC後に、G1,2-RL((RL)4(KRL)2KGSC-NH2)を泡状無色固体として得た(143.2mg、42.1μmol、38%)。分析用RP-HPLC:tR=1.45分(2.2分でA/D 100/0~0/100、λ=214nm)。MS(ESI+):C96H190N40O19S計算値/実測値:2264.9/2264.0[M]+。
【0229】
分取RP-HPLC後に、G1-RL((RL)2KGSC-NH2)を泡状無色固体として得た(78.5mg、56.6μmol、51%)。分析用RP-HPLC:tR=1.37分(2.2分でA/D 100/0~0/100、λ=214nm)。MS(ESI+):C38H74N16O9S計算値/実測値:931.2/931.2[M]+;1045.2/1045.4[M+1TFA]+。
【0230】
分取RP-HPLC後に、G1,2-LK,3-KL((KL)8(KLK)4(KLK)2KCGSC-NH2)を泡状無色固体として得た(56.7mg、8.1μmol、7%)。分析用RP-HPLC:tR=1.47分(2.2分でA/D 100/0~0/100、λ=214nm)。MS(ESI+):C218H422N60O39S計算値/実測値:4540.1/4539.0[M]+。
【0231】
分取RP-HPLC後に、G1,2,3-LK,((LK)8(KLK)4(KLK)2KGSC-NH2)を泡状無色固体として得た(32.4mg、4.6μmol、4%)。分析用RP-HPLC:tR=1.41分(2.2分でA/D 100/0~0/100、λ=214nm)。MS(ESI+):C218H422N60O39S計算値/実測値:4540.1/4539.0[M]+。
【0232】
Ala-G1,2,3-KL((LysLeu)8(LysLysLeu)4(LysLysLeu)2LysGlySerAla-NH2を、TentaGel S RAM(登録商標)樹脂(500mg、0.22mmol g-1)から得、Ala-G1,2,3-KLを、分取RP-HPLC後に泡状無色固体として得た(36.6mg、5.2μmol、5%)。分析用RP-HPLC:tR=1.46分(2.2分かけて100%A:100%D、λ=214nm)。MS(ESI+):C218H422N60O39実測値/計算値:4508.0/4508.1[M]+。
【0233】
分取RP-HPLC後に、G1,2,3-K((K)8(KK)4(KK)2KGSC-NH2)を泡状無色固体として得た(79.9mg、14.6μmol、12%)。分析用RP-HPLC:tR=1.17分(2.2分でA/D 100/0~0/100、λ=214nm)。MS(ESI+):C134H268N46O25S計算値/実測値:2955.9/2956.0[M]+。
【0234】
分取RP-HPLC後に、G0,1,2,3-KL((KL)8(KKL)4(KKL)2KKLC-NH2)を泡状無色固体として得た(54.2mg、7.5μmol、6%)。分析用RP-HPLC:tR=1.47分(2.2分でA/D 100/0~0/100、λ=214nm)。MS(ESI+):C225H437N61O38S計算値/実測値:4637.3/4638.0[M]+。
【0235】
分取RP-HPLC後に、D-G1,2,3-KL((kl)8(kkl)4(kkl)2kgsc-NH2)を泡状無色固体として得た(28.3mg、4.0μmol、5%)。分析用RP-HPLC:tR=1.44分(2.2分でA/D 100/0~0/100、λ=214nm)。MS(ESI+):C218H422N60O39S計算値/実測値:4540.1/4540.0[M]+、少量の不純物を含有
【0236】
DNAトランスフェクション
細胞株、トランスフェクション試薬、及びプラスミド。HeLa細胞を、5%CO2及び37℃の加湿雰囲気中で、10%(v/v)FCS及び1%(v/v)P/Sを含むRPMI培地中で維持した。プラスミドpCI-Lucは、ルシフェラーゼ遺伝子が挿入されたプラスミドpCI(Promega、Southampton,UK)から誘導された。分岐PEI(25kDa)は、Sigma-Aldrichから購入した。Lipofectamine 2000(L2000)及びリポフェクチン(DOTMA:DOPE(1:1(w/w))は、Invitrogenから入手した。PEI、L2000、及びリポフェクチンを製造者の指示に従って陽性対照トランスフェクション剤として使用した。
【0237】
トランスフェクション手順。トランスフェクションの24時間前に、HeLa細胞を96ウェルプレートに播種して(100μL/ウェル中10,000細胞)、70%コンフルエンスに到達させた。プラスミドトランスフェクション複合体は、デンドリマー(100μL、N/P比に応じて60μg~105μg)をリポフェクチン(4μg;100μL)と混合することによって形成した。これらの混合物を、pCI-Luc(4μg;100μL)とともに、25℃で30分間、OptiMEM中において異なるN/P比でインキュベートした。トランスフェクション対照複合体(PEI、リポフェクチン又はL2000)(OptiMEM中合計100μL)を、それぞれの製造業者の推奨濃度でpCI-Luc(4μg;100μL)と混合した。無血清培地中でのトランスフェクションのために、DNA複合体を細胞上に重層する前に、OptiMEMを添加して複合体を希釈し、各複合体が96ウェルプレートの1つのウェル中に100μLの総容量中に0.25μgのDNAを含有するようにした。血清培地中でのトランスフェクションのために、DNA複合体を細胞上に重層する前に、完全成長培地を添加して複合体を希釈し、各複合体が96ウェルプレートの1つのウェル中に100μLの総容量中に0.25μgのDNAを含有するようにした。細胞から完全培地を除去した後、複合体をプレートに加えた。プレートを37℃で4時間インキュベートした。次いで、トランスフェクション溶液を完全成長培地で24時間置換してから、ルシフェラーゼ活性をアッセイした。
【0238】
導入遺伝子発現アッセイ。細胞をPBSで2回洗浄し、レポーター溶解緩衝液(20μL、Promega)とともに4℃で20分間、次いで-80℃で一晩インキュベートした。細胞を室温で解凍した後、ルシフェラーゼアッセイ緩衝液(100μL、Promega;製造者のプロトコルに従って調製した)を各ウェルに加えた。発光生成物を、FLUOstar Optimaルミノメーター(BMG Labtech)において相対光単位(Relative Light Unit、RLU)によって測定した。
【0239】
タンパク質含量決定。溶解物(20μL)をBio-Rad Protein Assay Reagent(180μL、Bio-Rad、Hemel Hempstead,UK)と混合することによって、各細胞溶解物のタンパク質含量を決定した。10分間のインキュベーション後、590nmでの吸光度を測定し、BSA標準曲線を使用してタンパク質濃度に変換した。タンパク質1mg当たりのRLUは、ルシフェラーゼ活性を表した。これら2つの値の比が、タンパク質単位当たりの活性(RLU/mg)である。トランスフェクション図に示された値は、DOTMA/DOPEを用いた対照トランスフェクション実験に対して正規化した後に表され、パーセンテージとして示されている。
【0240】
細胞生存率。細胞を「トランスフェクション手順」に記載したようにトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、培地を除去し、細胞をPBSで2回洗浄した。その後、細胞を室温で1時間乾燥させた(核染色剤を浸透させるため)。クリスタルバイオレット溶液(Sigma-Aldrichによって供給されたストック溶液50μL)を細胞に添加した。それらを室温で15分間インキュベートした。蒸留水(5回)で洗浄した後、細胞を室温で30分間乾燥させた。次いで、MeOH(200μL)を添加し、懸濁液を室温で1時間インキュベートした。生細胞によって保持されたクリスタルバイオレット染色剤の相対量を、550nmでのメタノール溶液の吸光度によって決定した。
【0241】
蛍光消光アッセイ
PicoGreen(Invitrogen)をDNAに添加し、TE緩衝液(10mM Tris/HCl、pH7.5;1mM EDTA)を添加して、最終DNA濃度0.002μg/μLとした。PicoGreenをDNAに1:150(v/v)の比で添加し、100μLの溶液ごとに0.2μgのDNAを含有させた。混合物を室温で10分間インキュベートした。インキュベーションの間、異なる量のトランスフェクション試薬をTE緩衝液で希釈した。次いで、50μLのリポフェクチン(0.2μg)及び50μLのデンドリマー(量は、0.625:1から40:1まで変化させた選択されたN/P比に依存する)を、平底96ウェルプレートのウェルごとに添加した。その後、100μLのDNA-PicoGreen溶液(0.2μg DNA)をウェルごとに添加した。対照として、100μLのDNA-PicoGreen溶液(0.2μg DNA)を100μLのTE緩衝液に添加した。室温で30分間インキュベートした後、100μLのTE緩衝液を各ウェルに添加した。次いで、PicoGreenシグナルを、蛍光プレートリーダー(FLUOstar Optima,BMG Labtech)を用いて、485nmでの励起及び520nmでの発光で検出した。複合体からのPicoGreenシグナルをDNA対照に対して正規化して、検出されたPicoGreenシグナルのパーセンテージを得た。
【0242】
複合体解離アッセイ
PicoGreen(Invitrogen)をDNAに添加し、TE緩衝液(10mM Tris/HCl、pH7.5;1mM EDTA)で0.002μg/μLの最終DNA濃度まで希釈した(100μLごとの溶液が0.2μgのDNAを含有するように、PicoGreenを1:150(v/v)の比でDNAに添加した)。混合物を室温で10分間インキュベートした。インキュベーションの間、異なる量のトランスフェクション試薬をTE緩衝液で希釈した。次いで、50μLのリポフェクチン(0.2μg)及び50μLのデンドリマー(量は、0.625:1から40:1まで変化させた選択されたN/P比に依存する)を、平底96ウェルプレートのウェルごとに添加した。その後、100μLのDNA-PicoGreen溶液(0.2μg DNA)をウェルごとに添加した。対照として、100μLのDNA-PicoGreen溶液(0.2μg DNA)を100μLのTE緩衝液に添加した。室温で30分間インキュベートした後、100μLのTE緩衝液で希釈した異なる濃度のヘパリン(0.2~1.4U/mL、Sigma-Aldrich)を、DNA複合体又はDNA単独(0.2μg、総体積200μL)に添加した。室温で30分間インキュベートした後、PicoGreenからの蛍光シグナルを、マイクロプレートリーダー(FLUOstar Optima,BMG Labtech)を使用して、励起485nm及び発光520nmで記録した。DNA対照を用いてシグナルを正規化した。
【0243】
インビボルシフェラーゼDNA発現アッセイ
デンドリマー、脂質、及びDNA製剤をマウスに注射し、組織を単離し、静脈内及び筋肉内注射のそれぞれ24時間後及び48時間後にルシフェラーゼ発現分析のために急速凍結した。
【0244】
組織を、プロテアーゼ阻害剤を補充した1×レポーター溶解緩衝液でホモジナイズした。組織に応じて、1.5~3倍の溶解緩衝液を組織のホモジナイズに使用した。ホモジナイズ後、溶解物を遠心分離し、上清をルシフェラーゼ発現及びタンパク質含量のアッセイに使用した。ルシフェラーゼ発現レベルを、製造業者の指示に従って、ルシフェラーゼアッセイキット(Promega)を使用して、ルミノメーターで測定した。Bioradタンパク質アッセイキットを使用して、製造業者の指示に従って595nmの吸光度でタンパク質含量を測定した。
【0245】
インビボルシフェラーゼmRNA発現アッセイ
ペプチドデンドリマー-脂質-mRNA粒子
ペプチドデンドリマーをそれぞれの濃度に希釈し、NP=0.15:1又は8:1などの所望のNP比のためにmRNAと混合した。溶液を室温で10分間インキュベートした。DOTMA/DOPEなどの脂質をそれぞれの濃度に希釈し、NP=4.7:1などの所望のNP比のためにデンドリマー-mRNA複合体と混合した。溶液を室温で20分間インキュベートした。必要に応じて、注射前に溶液を更に希釈する。
【0246】
脂質-mRNA粒子制御
DOTMA/DOPEをそれぞれの濃度に希釈し、デンドリマー-mRNA複合体と混合した。溶液を室温で20分間インキュベートした。必要に応じて、注射前に溶液を更に希釈する。
【0247】
マウス及び送達経路
本発明者らの研究において行われた全ての動物手順は、UK法に従っており、倫理承認を含んでいた。6~8週齢の雌CD-1マウス(n=39)を、到着時に1週間馴化させた。全てのマウスを秤量し、製剤を、30Gインスリンシリンジ(BD biosciences)を使用して尾静脈を介して静脈内に送達した(100μl)。
【0248】
生物発光イメージング(Bioluminescence imaging、BLI)
全てのマウスを注射の6時間後に撮像した。BLIは、IVIS Lumina II(Perkin Elmer)イメージングシステムを使用して実施した。マウスにD-ルシフェリン(30mg/mL、XenoLight、Perkin Elmer)を150mg/kgの用量で投与した。マウスを、5%イソフルランを含むチャンバー内でD-ルシフェリンを投与した6分後に麻酔し、次いで、2.5%イソフルランで維持しながら、加熱したイメージングプラットフォーム上に置いた。得られたシグナルが有効な検出範囲(オープンフィルター、ビニング8、f-ストップ1)内にあることを確実にするように設定された曝露時間で、D-ルシフェリン投与の10分後にマウスを撮像した。生物発光シグナルを、Living Imageソフトウェア(Perkin Elmer)を使用して、規定された関心領域(region of interest、ROI)における光子束(光子/秒)を測定することによって定量した。インビボ全身イメージングの後、マウスを安楽死させ、心臓血液を採取し、エクスビボイメージングのために組織を抽出した。ここで、各組織を、PBS中に0.3mg/mLのD-ルシフェリンを含有する24ウェルイメージングプレート(黒色面、Eppendorf)の個々のウェルに入れた。イメージングプレートをイメージングプラットフォーム(Lumina IIシステム)の中心に置き、上で詳述した取得設定を使用してシグナルを測定した。最後に、組織を保存バイアルに入れ、液体窒素中で急速冷凍した。
【0249】
エンドサイトーシス実験
細胞を各阻害剤(クロルプロマジン、ゲンステイン(genstein)、及びロットレリン)とともに37℃で30分間プレインキュベートした。続いて、トランスフェクションのセクションに記載したように、阻害剤の存在下、37℃で更に4時間、トランスフェクションを実施した。
【0250】
インビボ研究
DNAを含む組成物を使用したFST発現の誘導
1日目及び3日目に、フォリスタチンを発現するDNAを単独で、又はフォリスタチンを発現するDNAをG1,2,3-RL及びD/D脂質とともにマウスに注射した。5日目に、RNA抽出のために組織を採取した。次いで、qPCRのためにmRNAからcDNAを合成した。マウスの骨格筋におけるフォリスタチン(follistatin、FST)の相対的発現レベルを
図6に示す。
【0251】
免疫原性/忍容性
体重を、上記で議論したDNA送達のためのタイプのIVプロトコルの間にモニタした。重量損失は観察されなかった(
図7を参照されたい)。
【0252】
1日目及び3日目に、注射を受けなかったマウス、又はDNAのみ若しくはDNA、G1,2,3-RL及びD/D製剤を静脈内注射したマウスについて、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(Aspartate aminotransferase、AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(Alanine aminotransferase、ALT)レベルもモニタした。全ての群について、ASTレベルは実質的に200U/L未満のままであり、ALTレベルは100U/L未満のままであった。(AST及びALTのこれらのレベルは、肝臓損傷(四塩化炭素によって誘導される)の疾患モデルにおける7000U/Lを超える閾値レベルよりもはるかに低い(Bonnet et al 2008))。
【0253】
免疫原性をチェックするために、マウスにおいてサイトカインレベルも測定した。AST及びALTレベルの測定のために5日目に血清を採取した。実質的な上昇は観察されなかった。IFN-ガンマについて、レベルは2pg/mL未満のままであり、有意な増加はなかった(他の非ウイルス系はIFN-ガンマを60,000pg/mLまで上昇させることができた(Bonnet et al 2008))。TNF-アルファについては、レベルは20pg/mL未満のままであり、有意な増加はなかった(リポ多糖類はTNF-アルファを5000pg/mLまで増加させることができた(Bonnet et al 2008))。IL-6については、本発明の組成物を投与したマウス群のレベルは、20pg/mL未満のままであり、有意な増加はなかった(他の非ウイルス系は、IL-6レベルを15000pg/mLまで増加させることができた(Bonnet et al 2008))。IL-1ベータ及びIL-10についても、レベルは非常に低いままであり、有意な増加はなかった。
【0254】
DNAを含む組成物を使用したルシフェラーゼ発現の誘導
注射後のルシフェラーゼ発現を検出するために調製したデンドリマー、脂質、及びDNA製剤をマウスに注射した。静脈内及び筋肉内注射のそれぞれ24時間後及び48時間後に、組織を単離し、ルシフェラーゼ発現分析のために急速凍結した。
【0255】
静脈内注射されたG1,2,3-RL及びG1,2,3-LRの両方を含む組成物は、ルシフェラーゼ発現によって決定されるような、骨格筋へのDNAの標的化送達を標的とし、G1,2,3-LRは、骨格筋への最も有効な送達を示した(
図8)。
【0256】
筋肉内注射されたG1,2-RL,3-LRを含む組成物はまた、ルシフェラーゼ発現によって決定されるように、骨格筋にDNAを送達することができる(
図9)。
【0257】
mRNAを含む組成物を使用したルシフェラーゼ発現の誘導
DOTMA/DOPEと、ルシフェラーゼをコードするmRNAと、G1,2,3-RL(
図10、上パネル;「G1,2,3-RL、脂質、及びmRNA製剤」)又はG1,2-RL,3-LR(
図10、下パネル;(「G1,2,3-RL、脂質、及びmRNA製剤」)のいずれかと、を含む組成物をマウスに注射した。各製剤を調製し、8:1及び0.15:1のNP比で注射した。注射後のルシフェラーゼ発現を検出するためにマウスを準備した。
【0258】
G1,2,3-RL又はG1,2-RL,3-LR製剤のいずれかのNP比を変化させると、マウス組織におけるmRNAの生体内分布が変化する。0.15:1のNP比は、脾臓及びより低い程度でリンパ節を特異的に標的とするNP=8:1と比較して、肺、脾臓、及びリンパ節を含む広範囲の免疫細胞組織を標的とする(
図10)。これは、組成物のNP比を変化させることによって、組成物の組織分布が変化し得ることを実証する。例えば、NP比の増加は、リンパ系器官への標的化を改善することができる。
【0259】
G1,2,3-RL及びG1,2-RL,3-LR、脂質、並びにmRNA製剤はまた、筋肉、肝臓、心臓、腎臓、及び脂肪組織を含む組織にmRNAを首尾よく送達することができる(
図11)。特に、G1,2-RL,3-LR、脂質、及びmRNA製剤は、8:1又は0.15:1のいずれかのNP比で、腓腹筋及び大腿四頭筋組織、肝臓、心臓、腎臓、及び脂肪組織において有意な発現を誘導することができた。
【0260】
ルシフェラーゼ発現の比較を、G1,2,3-RLと、DOTMA/DOPEと、mRNAと、を含む組成物を注射したマウスと、G1,2-RL.3-LRと、DOTMA/DOPEと、mRNAと、を含む組成物を注射したマウスとの間で実施した。試験した全ての組織への送達の増加が、G1,2,3-RLと比較してG1,2-RL,3-LRについて観察された(
図12)。これは、デンドリマー配列の選択が、特定の組織を標的とするために使用され得ることを実証する。
【0261】
反復投与実験
組成物を繰り返し投与し、組織への送達を維持することができるかどうかを決定するために、DOTMA/DOPE、mRNA及びペプチドデンドリマーの単回投与又は反復投与(24時間間隔で2回投与)のいずれかを受けたマウス間の比較を実施した。いずれかの組成物を2回投与されたマウスは、mRNA単独と比較してルシフェラーゼ発現の増加を示した。典型的には、2回投与を受けたマウスにおけるルシフェラーゼ発現は、単回投与を受けたマウスと比較して、ほぼ同程度のルシフェラーゼ発現又は増加したルシフェラーゼ発現のいずれかを示した。ルシフェラーゼ発現を処理の6時間後にアッセイした。
【0262】
組織/細胞標的化ペプチド-デンドリマー融合タンパク質
ルシフェラーゼ発現の比較を、DOTMA/DOPEと、mRNAと、G1,2,3-RL、G1,2-RL,3-LR、又はNXT1のうちの1つと、を含む組成物間で実施した(
図14)。NXTIデンドリマーは、筋肉標的化ペプチド及び細胞透過性ペプチドを含むコアペプチド配列を有するG1,2-RL,3-LRデンドリマーを含む。NXT1は、筋肉を含む多くの組織へのmRNA送達を媒介する上で、G1,2,3-RL及びG1,2-RL,3-LRよりも有効である。驚くべきことに、NXT1はまた、G1,2,3-RL及びG1,2-RL,3-LRと比較して、脾臓及びリンパ節へのmRNAの送達においてより有効である。NXT1及びG1,2-RL,3-LRは、肺へのmRNAの送達において同様の効率を示す。
【0263】
デンドリマーは、脂質単独と比較して、組織へのmRNA送達を増加させる
デンドリマーの存在が組織へのmRNAの送達を改善するかどうかを決定するために、:i)mRNA単独;ii)mRNA及びDOTMA/DOPE;iii)G1,2,3-RL、DOTMA/DOPE、及びmRNA;iv)G1,2-RL,3-LR、DOTMA/DOPE、及びmRNA、又はv)NTX1、mRNA、及びDOTMA/DOPE、のいずれかを含む組成物をマウスに注射して、注射後のルシフェラーゼ発現の検出のために準備した。各デンドリマー組成物中のNP比は、0.15:1であった。
図15に実証されるように、G1,2,3-RL、G1,2-RL,3-LR、及びNTX1のいずれかの存在は、mRNA単独又はmRNA及びDOTMA/DOPE単独と比較して、肺、脾臓、及びリンパ節へのmRNA送達の効率を改善する。
【0264】
i)mRNA単独、ii)mRNA、G1,2-RL,3-LR、及びDOTMA/DOPE、又はiii)mRNA及びDOTMA/DOPE、のいずれかを含む組成物を注射したマウス間でも比較を実施した。この実験におけるNP比は、8:1であった。これは、脾臓へのmRNA送達が、mRNA単独又はmRNA及び脂質と比較して、デンドリマーの存在下で有意に増強されることを実証する。更に、肺、及びリンパ節におけるルシフェラーゼの発現は、脂質単独と比較して、デンドリマーを含む組成物において減少する。このデータは更に、G1,2-RL,3-LRが、DOTA/DOPE単独と比較して、脾臓へのmRNA送達の特異性を改善することを実証する。
【0265】
市販の脂質送達系に対するデンドリマー:脂質送達系の比較
G1,2-RL,3-LR及びDOTMA/DOPE(NP=0.16:1)を含む組成物又は市販のLipofectamine(商標)2000のいずれかを使用して、ルシフェラーゼをコードするmRNAをHeLa細胞にトランスフェクトした。
図17の左上のパネルに示すように、NP比=0.16:1のG1,2-RL,3-LR及びDOTMA/DOPEを含む組成物は、市販のトランスフェクション試薬Lipofectamine(商標)2000と比較して、インビトロでのトランスフェクション効率を約1桁増加させる。同様に、NP比=0.16:1のG1,2-RL,3-LR及びDOTMA/DOPEを使用してeGFPをコードするmRNAをトランスフェクトしたHeLa細胞は、DLin-MC3-DMA:コレステロール:DSPC:DMG-PEG脂質ナノ粒子送達系を使用してトランスフェクトしたmRNAと比較して、eGFP発現を約4倍増加させた(
図17、右上パネル)。
【0266】
mRNA単独、G1,2-RL,3-LR(N:P=8:1)及びDOTMA/DOPE(mRNAに対してw/w=10:1)とmRNA、DOTMA/DOPE(mRNAに対してw/w=10:1)とmRNA、ポリエチレンイミンとmRNA、及びLipofectamine 2000とmRNA、のいずれかをC2C12細胞に24時間トランスフェクトした。
図17の下パネルに示されるように、デンドリマー製剤は、市販の脂質ベースのトランスフェクション試薬と比較して、C2C12細胞へのmRNAの送達を改善する。
【0267】
インビトロCRISPR実験
Label IT(登録商標)核酸標識キット(Mirus Bio LLC)を製造説明書に従って使用してRNAを標識した。簡潔に述べると、tracerRNA(trRNA)と融合したCRISPR RNA(crRNA)からなる単一ガイドRNA(sgRNA)をTM-ローダミンフルオロフォアで標識し、Cas9 mRNAをCy5フルオロフォアで標識した。crRNA及びtrRNAを、それぞれフルオレセイン及びATTO 550フルオロフォアでタグ化した。
【0268】
HeLa細胞に、(1)NP比=0.15:1のG1,2-RL,3-LR及びDOTMA/DOPE、又は(2)NP比=8:1のG1,2-RL,3-LR及びDOTMA/DOPEのいずれかの製剤と標識RNAの異なる組み合わせをトランスフェクトした。全ての組成物における脂質対RNA比は10:1 w/wであり、DOTMA:DOPEは1:1の重量比であった。細胞を各製剤とともに2時間インキュベートし、続いてトリプシン処理し、固定した。細胞におけるRNA取り込みのパーセンテージを、フローサイトメトリーによってアッセイした。製剤を含まないRNAのみを対照として使用した。
【0269】
sgRNA+Cas9 mRNA製剤に曝露されたHeLa細胞のおよそ100%が、sgRNA及びCas9 mRNAに対して二重陽性であることが分かり、G1,2-RL,3-LRデンドリマーが非常に有効なトランスフェクション試薬であることを実証した(
図18)。
【0270】
crRNA、trRNA及びCas9 mRNAを含むデンドリマー及び脂質製剤において、デンドリマー製剤は、細胞の約4%において3つ全ての成分の送達を媒介することができる(
図19)。crRNA、trRNA、又はCas9 mRNAのうちの1つのみを含むデンドリマー及び脂質製剤では、陽性細胞のパーセンテージが変動する。trRNA又はCas9 mRNAのいずれかを含む組成物では、細胞の約100%が核酸について陽性である。対照的に、crRNAのみを含む組成物に曝露された場合、細胞の4%のみがcrRNAに対して陽性である(
図20)。まとめると、このデータは、G1,2-RL,3-LRデンドリマーが、細胞への比較的短いRNA(例えば、本研究において使用されるcrRNAは、36ヌクレオチド長であった)の送達を首尾よく媒介することができる一方で、トランスフェクトされるRNAの長さが増加するにつれて、RNAの送達の成功が増加することを実証する(本研究において使用されるtrRNA及びCas9 mRNAは、それぞれ、67及び5421ヌクレオチド長であった)。
【0271】
免疫細胞標的化
15匹の5~7週齢の雌CD-1マウス(Charles River UK)に、Alexa Fluor488のみで標識されたmRNA、又はNTX1及びDOTMA/DOPEを有するAlexa Fluor488で標識されたmRNA、又はG1,2-RL,3-LR及びDOTMA/DOPEを有するAlexa Fluor488で標識されたmRNA、又はG1,2-RL,3-LR及びDOTMA/DOPEを有するAlexa Fluor488で標識されたmRNAのいずれか1mg/kgを、それぞれ、5ml/kgの用量体積を使用する静脈内注射によって投与した。群1にはビヒクルを与え、群5には対照としてmRNAのみを与えた。全ての群のマウスを、IV投与の2時間後に殺処分した。安楽死の時点で、全血、脾臓、鼠径リンパ節、及び大腿骨を全てのマウスから収集した。フローサイトメトリー分析のために、EDTA処理した全血、脾臓、鼠径リンパ節、及び骨髄から白血球(White Blood Cell、WBC)を得た。要約すると、骨髄(bone marrow、BM)を大腿骨から洗い流し、脾臓及びリンパ節を70μmフィルターに通すことによって単一細胞懸濁液に処理した。血液、BM及び脾臓中の赤血球を溶解した後、全ての組織から単離したWBCを異なる抗体パネルで染色して、免疫細胞の特定の亜集団を同定した。96ウェルプレートフォーマットで染色を実施した後、ACEA Novocyte 3005フローサイトメーターを使用して試料を分析した。
【0272】
NTX1及びG1,2-RL,3-LRは、脾臓に存在する免疫細胞におけるmRNAの取り込みを媒介した(
図21)。デンドリマー及び脂質とともに製剤化されたmRNAは、(A)B細胞、(B)T細胞、(C)単球及びマクロファージ、(D)好中球、並びに(E)樹状細胞によって取り込まれた。特に、デンドリマー及び脂質製剤は、注射から比較的短い時間内(注射後2時間)に単球及びマクロファージ、好中球、並びに樹状細胞にmRNAを送達することができる。NTX1(NP=0.15:1)及びG1,2-RL,3LR(NP=0.15:1及び8:1)は、単球/マクロファージ、好中球、及び樹状細胞の約5%以上へのmRNAの送達を媒介する。注射から組織採取までの期間が短いことを考慮すると、分析される免疫細胞型のそれぞれへのmRNAの送達が経時的に増加すると仮定することは妥当である。
【0273】
NTX1及びG1,2-RL,3-LRは、骨髄に存在する免疫細胞におけるmRNAの取り込みを媒介した(
図22)。デンドリマー及び脂質とともに製剤化されたmRNAは、(A)単球及びマクロファージ、(B)樹状細胞、(C)CD38+細胞、(D)B細胞、並びに(E)好中球によって取り込まれた。特に、デンドリマー及び脂質製剤は、注射から比較的短い時間内(注射後2時間)に単球及びマクロファージ、好中球、並びに樹状細胞にmRNAを送達することができる。注射から組織採取までの期間が短いことを考慮すると、分析される免疫細胞型のそれぞれへのmRNAの送達が経時的に増加すると仮定することは妥当である。
【0274】
インビトロDNA送達
図25の上のパネルは、DNA単独、G1,2,3-RL(N:P=5:1)及びDOTMA/DOPE(DNAに対してw/w=1:1)とDNA、並びにG1,2,3-RL(N:P=5:1)及びDOPG/DOPE(DNAに対してw/w=1:1)とDNA、のいずれかをトランスフェクトしたHela細胞におけるルシフェラーゼ発現を示す。G1,2,3-RL及びDOTMA/DOPE又はDOPG/DOPEのいずれかを含む組成物は、インビトロでHeLa細胞を首尾よくトランスフェクトすることができる。
【0275】
同様に、
図25の下パネルは、DNA単独、ポリエチレンイミンとDNA、G1,2-RL,3-LR(N:P=8:1)及びDOTMA/DOPE(DNAに対してw/w=1:1で)とDNA、並びにNTX2(N:P=8:1)及びDOTMA/DOPE(DNAに対してw/w=1:1)とDNA、のいずれかをトランスフェクトされたC2C12細胞(筋肉由来細胞株)におけるルシフェラーゼ発現を示す。NTX2は、筋標的化ペプチドASSLINA((LR)8(KRL)4(KRL)2KGSCGAASSLNIA(Acp)-NH2)にコンジュゲートされたG1,2-RL,3-LRデンドリマーである。両方のデンドリマーは、インビトロでC2C12細胞を首尾よくトランスフェクトすることができる。筋肉標的化ドメインを含むデンドリマーは、筋肉標的化ドメインを含まないデンドリマーと比較してトランスフェクション効率を更に増加させる。
【0276】
インビボ毒性アッセイ
マウスにmRNA製剤を1回又は2回注射した。2回のIV注射では、2回目の注射の24時間前にマウスに注射した。2回目のIV注射の6時間後、マウスの血漿を採取し、ASTレベル及び他のサイトカインレベルを測定した。1回注射したマウスについては、ASTレベル及び他のサイトカインレベル測定のために、注射の6時間後に血漿を採取した。
【0277】
アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)は、肝臓の健康の尺度として使用することができ、薬剤の肝臓毒性を決定するためのマーカーとしても使用することができるバイオマーカーである。試験した全てのデンドリマー-脂質-mRNA組成物は、DOTMA/DOPE単独を含む組成物と比較してASTレベルの有意な増加を示さず、実際には、mRNA単独と比較してASTレベルの減少を示した(
図26A、上パネル)。これらの結果は、試験したデンドリマー組成物が有意な肝臓毒性を示さないことを示している。
【0278】
種々のデンドリマー-脂質-mRNA製剤の注射を受けたマウスにおいても、TNF-α、IL-6及びIL-1βを測定した。
図26Aの下パネル、並びに
図26Bの上及び下パネルに示すように、試験したデンドリマー組成物はいずれも、mRNA単独又はDOTMA/DOPE及びmRNA組成物と比較して、それぞれTNF-α、IL-6又はIL-1βの血漿レベルを有意に増加させなかった。これらのデータは、デンドリマー組成物が、前記組成物に曝露されたマウスにおいて有意な免疫反応を引き起こさないことを実証する。これは更に、インビボでmRNAを組織に送達する際に使用するためのデンドリマー組成物の安全性を実証する。
【0279】
マウスにはまた、DNA又はG1,2,3-RL、DNA及びDOTMA/DOPE組成物を含む製剤のいずれかを注射し、24時間後にAST、TNF-α、IL-6及びIL-1βの血漿レベルを測定した。
図27に示すように、デンドリマーを含む製剤の注射は、AST(左上)、TNF-α(右上)、IL-6(左下)、又はIL-1β(右下)のいずれの血漿レベルにおいても有意な増加を引き起こさなかった。これらのデータは、本発明のデンドリマーを使用するDNAの送達が安全であり、肝臓損傷又はその間の有害な免疫反応を引き起こさないことを示す。
【0280】
ペプチドデンドリマートランスフェクション効率の比較
mRNA送達におけるデンドリマーの世代数に対する影響を、完全成長培地条件においてHeLa細胞をトランスフェクトすることによって研究した。本発明者らは、第1又は第2世代デンドリマー(例えば、RHCG1-R、RHCG1,2-R、RHCG1-LR、RHCG1-RL、2-LR)が細胞を効果的にトランスフェクトし、第3世代デンドリマーと同様のトランスフェクション効率を媒介することができることを示した(
図28)。第1又は第2世代デンドリマーは、完全成長培地中で第3世代デンドリマーと同様に細胞をトランスフェクトしないので、これは実際にDNAトランスフェクションとは非常に異なる(
図4)。興味深いことに、世代1又は世代2デンドリマーのN:P比を0.16から8に増加させると、トランスフェクション効率が更に増加する(
図29)。
【0281】
本発明者らは、トランスフェクションに対するデンドリマーのコア配列の影響を研究した。本発明者らは、3つのアミノ酸のコア配列GSCを、G1,2-RL,3-LRから、KA及びYMなどの2つのアミノ酸のみに変えた。この変化はmRNAトランスフェクションに影響せず、コアに2つのアミノ酸を有するデンドリマーが、コアに3つのアミノ酸を有するデンドリマーと同様にトランスフェクトすることを示唆している。次に、本発明者らは、3つのアミノ酸のコア配列を、GSCと比較して、RFW、RYMなどの異なるアミノ酸に置換する。カチオン性基を含有するアルギニンがコアに付加されるが、このアルギニンがトランスフェクションを改善又は減少させることはない。興味深いことに、3つのアミノ酸がコアにおいてGCSからRHCに変化すると、トランスフェクションは50%改善する。これは、デンドリマーのコアにおけるヒスチジンなどのイオン化可能な基がトランスフェクションを改善し得ることを示唆する(
図28A)。
【0282】
本発明者らは、デンドリマー(線状G1,2-RL,3-LR)のコアに12個のアミノ酸を導入したが、トランスフェクション効果は影響を受けなかった(
図28A)。この結果は、トランスフェクション効率に影響を与えることなく、より長いアミノ酸鎖及び/又はより長い構造をコアに導入することが可能であることを示す。実際、コアに27個のアミノ酸を含むNTX1は、G1,2-RL,3-RLよりも効果的にトランスフェクトする。これは、より長いコア配列が、実際にトランスフェクションを増強し得ることを実証する。NTX1からのトランスフェクションの増強は、コア配列内の細胞透過性ペプチドの存在による可能性が高い。
【0283】
本発明者らはまた、トランスフェクションにおける世代内のアミノ酸の数に対する影響を調査する。したがって、本発明者らは、1つのアミノ酸(R)、2つのアミノ酸(RL又はLR)、3つのアミノ酸(RLR)、及び4つのアミノ酸(LRLR)のみを有するデンドリマーを試験した。本発明者らのトランスフェクション研究は、各世代において1、2、3又は4個のアミノ酸を有するデンドリマーが、依然としてmRNAを細胞内に十分にトランスフェクトすることができることを示す(
図28A)。本発明者らは更に、各世代において異なる数のアミノ酸を有するデンドリマーを試験し、トランスフェクション効率が影響を受けないことを示した。
【0284】
G1,2-RL,3-LR構造に基づいて、本発明者らは、塩基性アミノ酸RをKに置換し、かつ/又は疎水性アミノ酸Lを、Eなどの酸性アミノ酸、並びに/若しくはM、F、ベータ-アラニン(B)、アミノヘキサン酸(X)、及びWなどの非極性側鎖を有するアミノ酸、並びに/又はQ、T及びYなどの極性側鎖を有するアミノ酸に変化させた3世代デンドリマーのライブラリーを設計した。
【0285】
デンドリマー内でRをKに置換すると、mRNAトランスフェクション効率が低下する(
図28A)。しかしながら、疎水性アミノ酸を他の疎水性アミノ酸及び/又は極性若しくは非極性側鎖を有するアミノ酸に変更することは、トランスフェクションに影響を及ぼさない可能性があるか、又はG1,2-RL,3-LRと比較してトランスフェクションを30~40%低下させる可能性がある。下線パターンははっきりせず、更なる調査が実施される。しかしながら、これらのデンドリマーは全て、mRNA単独対照よりも有意に高いmRNAトランスフェクションを誘導することができる。
【0286】
本発明者らはまた、mRNAトランスフェクションに対するデンドリマー内のL又はD型アミノ酸の影響を調査した。G1,2-RL,3-LRデンドリマーに基づいて、本発明者らは、デンドリマーの各世代においてアミノ酸の一部又は全部をL型からD型に変化させてもトランスフェクション効率に影響を与えないことを見出した。デンドリマー内でリジンをジアミノ酪酸に置換することは、トランスフェクションを低下させるが、このデンドリマーのトランスフェクションは、mRNA単独対照よりも依然として有意に高い。
【0287】
本発明者らは、DOTMA/DOPE(w/w 10:1)とともにG1-LL,2-RRをN:P比0.16:1で使用した本発明者らの製剤プロトコルを用いてmRNAを送達するためにG1-LL,2-RRを使用できることを実証した。興味深いことに、このデンドリマーは、インビトロ及びインビボで異なる製剤にASOを送達するために使用された(Saher 2018)。使用した製剤は、DOTMA/DOPE(ASOに対してw/w=2:1)及びN:P=20:1、G1-LL,2-RR対ASOであった。本発明者らは、これをトランスフェクト細胞(すなわち、DOTMA/DOPE(mRNAに対してw/w=2:1)及びN:P=20:1、G1-LL,2-RR対mRNA)に対して試みたが、トランスフェクション効率は低い。この製剤(DOTMA/DOPE(mRNAに対してw/w=2:1)及びN:P=20:1、G1-LL,2-RR対mRNA)のmRNAトランスフェクション効率は、本発明者らの改良製剤(DOTMA/DOPE(mRNAに対してw/w=10:1)及びN:P=0.16:1、G1-LL,2-RR対mRNA)のmRNAトランスフェクション効率の10%にしかならない。
【0288】
本発明者らは、mRNA送達のために、異なる世代においてRL又はLR又はrlのいずれかを有する第3世代デンドリマーを調査した。本発明者らは、これらのデンドリマーのほとんどが同様に細胞をトランスフェクトし、G1,2-RL,3-LRがmRNAトランスフェクションにおいて最も有効であることを見出した。全体として、本発明者らのデータは、各世代において疎水性アミノ酸及びカチオン性アミノ酸を有するデンドリマーが、細胞への有効なmRNA送達をもたらすことを示唆した。
【0289】
G1,2-RL,3-LRよりも効果的に細胞をトランスフェクトする第1世代及び第2世代デンドリマーが存在するので、本発明者らは、トランスフェクションに関する更なる試験のためにこれらのデンドリマーを選択した。本発明者らは、これらのデンドリマーが一般に、様々なN:P比でG1,2-RL,3-LRよりも良好にトランスフェクトできることを示した。特に、N:P=4:1のRHCG1-R、RHCG1,2-R、RHCG1-LR、RHCG1-RL,2-LR、RHCG1-RLR、及びG1-LRLRは、G1,2-RL,3-LRよりも700%~1815%良好にトランスフェクトすることができる。これらのデータは、DNA及びmRNA送達の要件が非常に異なることを実証した。mRNAについては、第1又は第2世代デンドリマーが、完全成長培地条件において第3世代デンドリマーよりも良好に細胞をトランスフェクトする傾向がある。しかしながら、世代3のデンドリマーは、完全成長培地条件において、世代1又は世代2のデンドリマーよりも良好に細胞をDNAでトランスフェクトする(
図4)。
【0290】
図30は、8:1のNP比で送達されたRHCペプチドコアを含む世代2デンドリマーが、主に脾臓(上パネル)及びより低い程度で肺(下パネル)へのmRNA送達を標的とすることを示す。NP比0.15:1では、肺へのmRNA送達は、NP比8:1と比較して増加する。
【0291】
mRNA発現の調節
mRNA発現は、PEG2000脂質を含む組成物をマウスに注射することによって調節することができる。G1,2-RL,3-LR、DOTMA/DOPE/PEG2000、及びmRNAを含む組成物を注射したマウスは、G1,2-RL,3-LR、DOTMA/DOPE、及びmRNAを含む組成物を注射したマウスと比較して、ルシフェラーゼ発現が減弱していた。
【0292】
番号付けされた項
以下の番号付けされた項は、本発明の特定の特質及び特質の組み合わせを示す。
1.医薬における使用のための組成物であって、当該組成物が、ペプチドデンドリマーと、核酸と、脂質と、を含み、ペプチドデンドリマーが、第1のリジン残基及び2つの第1のペプチドモチーフと、2つの第2のリジン残基及び4つの第2のペプチドモチーフと、4つの第3のリジン残基及び8つの第3のペプチドモチーフと、第1のリジン残基と共有結合したコアペプチド配列と、を含み、
(i)第1のリジン残基が、2つの第1のペプチドモチーフと共有結合し、2つの第1のペプチドモチーフは、それぞれ2つの第2のリジン残基と共有結合し、
(ii)各第2のリジン残基が、2つの第2のペプチドモチーフと共有結合し、各第2のペプチドモチーフは、それぞれ、第3のリジン残基のうちの1つと共有結合し、
(iii)各第3のリジン残基が、第3のペプチドモチーフのうちの2つと共有結合し、第1、第2、及び第3のペプチドモチーフが、独立して、モノペプチド又はジペプチドモチーフからなり、第1、第2、及び第3のペプチドモチーフの各々が、a)アルギニン(R)若しくはリジン(K)、及び/又はb)ロイシン(L)、バリン(V)、ヒスチジン(H)、若しくはイソロイシン(I)を含み、各アミノ酸残基が、独立して、L-アイソフォーム又はD-アイソフォームから選択される、組成物。
2.第1、第2、及び第3のペプチドモチーフのうちの少なくとも2つが、アルギニン(R)を含む、項1に記載の使用のための組成物。
3.第1、第2、及び第3のペプチドモチーフのうちの少なくとも2つが、ロイシン(L)を含む、項1又は2に記載の使用のための組成物。
4.第1、第2、及び第3のペプチドモチーフの各々が、ジペプチドモチーフである、項1~3のいずれか1つに記載の使用のための組成物。
5.第1、第2、及び第3のペプチドモチーフの各々が、ロイシン(L)及びアルギニン(R)を含む、項4に記載の使用のための組成物。
6.核酸が、二本鎖領域を含む、項1~5のいずれか1つに記載の使用のための組成物。
7.核酸が、DNAプラスミドである、項6に記載の使用のための組成物。
8.核酸が、mRNA分子又はアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であるか、又はそれをコードする、項1~7のいずれか1つに記載の使用のための組成物。
9.核酸が、CRISPR配列を含む、項1~8のいずれか1つに記載の使用のための組成物。
10.核酸が、siRNA又はsaRNA分子である、項6に記載の使用のための組成物。
11.DNAプラスミドが、標的細胞においてsiRNA又はsaRNA分子を発現することができる、項7に記載の使用のための組成物。
12.核酸が、標的細胞において導入遺伝子を発現することができる、項7又は8に記載の使用のための組成物。
13.導入遺伝子が、ウイルスタンパク質、細菌タンパク質、又は哺乳動物に寄生する微生物のタンパク質である、項12に記載の使用のための組成物。
14.ワクチンとしての使用のための、項13に記載の使用のための組成物。
15.患者における遺伝性障害のための遺伝子療法における使用のための、項12に記載の使用のための組成物。
16.遺伝性障害が、患者において筋ジストロフィーを引き起こす、項15に記載の使用のための組成物。
17.遺伝性障害が、患者においてミオパチーを引き起こす、項15に記載の使用のための組成物。
18.導入遺伝子が、肝細胞増殖因子(HGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、及び/又は線維芽細胞増殖因子(FGF)である、糖尿病性下肢虚血を治療する方法における使用のための、項12に記載の組成物。
19.コアペプチド配列が、トリペプチドモチーフからなる、項1~18のいずれか1つに記載の使用のための組成物。
20.トリペプチドモチーフが、グリシン(G)、セリン(S)、及びシステイン(C)、及び/又はアラニン(A)を含む、項18に記載の組成物。
19.脂質が、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)及び/又はN-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)を含む、項1~18のいずれか1つに記載の使用のための組成物。
20.脂質が、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)及びジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)を含む、項1~19のいずれか1つに記載の使用のための組成物。
21.使用が、患者の筋肉への核酸の送達を含む、項1~20のいずれか1つに記載の使用のための組成物。
22.項1~21のいずれか1つに記載の組成物と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む、薬学的組成物。
23.核酸を標的細胞内に送達する方法であって、標的細胞を項1~20のいずれか1つに記載の組成物と接触させることを含み、標的細胞が、筋細胞、肝細胞、星細胞、ニューロン、アストロサイト、脾細胞、肺細胞、心筋細胞、腎細胞、脂肪細胞、又は腫瘍細胞である、方法。
24.第1のリジン残基及び2つの第1のペプチドモチーフと、2つの第2のリジン残基及び4つの第2のペプチドモチーフと、4つの第3のリジン残基及び8つの第3のペプチドモチーフと、第1のリジン残基と共有結合したコアペプチド配列と、を含む、ペプチドデンドリマーであって、
(i)第1のリジン残基が、2つの第1のペプチドモチーフと共有結合し、2つの第1のペプチドモチーフは、それぞれ2つの第2のリジン残基と共有結合し、
(ii)各第2のリジン残基が、2つの第2のペプチドモチーフと共有結合し、各第2のペプチドモチーフは、それぞれ、第3のリジン残基のうちの1つと共有結合し、
(iii)各第3のリジン残基が、第3のペプチドモチーフのうちの2つと共有結合し、第1、第2、及び第3のペプチドモチーフが各々、(i)ロイシン-アルギニン(LR)ジペプチドモチーフ、又は(ii)アルギニン-ロイシン(RL)モチーフのいずれかからなり、第1、第2、及び第3のペプチドモチーフのうちの少なくとも1つが、(i)ロイシン-アルギニン(LR)であり、各アミノ酸残基が、独立して、L-アイソフォーム又はD-アイソフォームから選択される、ペプチドデンドリマー。
25.核酸と、脂質と、項24に記載のペプチドデンドリマーと、を含む、組成物。
26.医薬における使用のための、項25に記載の組成物。
27.核酸を細胞にインビトロで又はエクスビボで送達するための、項25に記載の組成物の使用。
28.ポンペ病、筋肉消耗性疾患、又は筋ジストロフィー、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療における使用のための、項1~22又は24~26のいずれか1つに記載の組成物又はペプチドデンドリマー。
【0293】
参考文献
本発明及び本発明が属する技術分野の状況をより完全に記載及び開示するために、多くの刊行物が上で引用されている。これらの参考文献についての完全な引用を以下に示す。これらの参考文献の各々の全体は、本明細書中に組み込まれる。
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