(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】燃料電池スタック内の再循環ループのための遮断デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20240201BHJP
H01M 8/04089 20160101ALI20240201BHJP
F16K 11/20 20060101ALI20240201BHJP
F16K 3/24 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/04089
F16K11/20 Z
F16K3/24 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546280
(86)(22)【出願日】2022-02-07
(85)【翻訳文提出日】2023-07-31
(86)【国際出願番号】 DE2022100100
(87)【国際公開番号】W WO2022214120
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】102021108577.2
(32)【優先日】2021-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヤン プファネンミュラー
(72)【発明者】
【氏名】マークス ポップ
【テーマコード(参考)】
3H053
3H067
5H127
【Fターム(参考)】
3H053AA25
3H053BA12
3H053DA01
3H067AA33
3H067BB08
3H067BB14
3H067CC32
3H067DD05
3H067FF11
3H067GG04
5H127AA06
5H127AB04
5H127AC02
5H127AC07
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA58
5H127BA59
5H127BB02
5H127EE19
(57)【要約】
本発明は、燃料電池スタック内の再循環ループ(40)のための遮断デバイスに関し、該再循環ループは、水素入口(10)と、再循環ガス入口(12)と、パージライン(54)と、を備える。いくつかの弁を不要にするために、上流の水素切換弁(22)によって切り換えられる再循環ループ遮断弁(20)が設けられ、圧力逃がし弁(44)としても設計されているパージ弁(44)が一体化されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素入口(10)と、再循環ガス入口(12)と、パージライン(54)と、を備える、燃料電池スタック内の再循環ループ(40)のための遮断デバイスであって、上流の水素切換弁(22)によって切り換えられる再循環ループ遮断弁(20)が設けられ、圧力逃がし弁(44)としても設計されているパージ弁(44)が一体化されていることを特徴とする、遮断デバイス。
【請求項2】
前記再循環ループ遮断弁(20)が、前記パージ弁(44)を機械的に作動させるスライド弁として設計されていることを特徴とする、請求項1に記載の遮断デバイス。
【請求項3】
前記水素切換弁(22)が、電気的に制御されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の遮断デバイス。
【請求項4】
前記水素切換弁(22)及び/又は前記再循環ループ遮断弁(20)及び/又は前記パージ弁(44)が各々、復元機構を有し、好ましくは、各々、一体化された復元ばね(34、42、56)を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の遮断デバイス。
【請求項5】
前記再循環ループ遮断弁(20)の弁スライド(24)が、ある特定の量の漏れを有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の遮断デバイス。
【請求項6】
前記パージ弁(44)が、機械的接続、好ましくは、タペット(60)によって作動されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の遮断デバイス。
【請求項7】
前記水素切換弁(22)及び前記パージ弁(44)が、シート弁であり、前記パージ弁(44)が、好ましくは、逆止ボール弁であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の遮断デバイス。
【請求項8】
ストローク監視デバイス(62)が、前記パージ弁(44)に割り当てられていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の遮断デバイス。
【請求項9】
前記再循環ループ遮断弁(20)が、一方又は両方の端部位置に対して空気圧式端部位置制動を行うことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の遮断デバイス。
【請求項10】
実質的に金属又はプラスチックから作製されていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の遮断デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素入口と、再循環ガス入口と、パージラインと、を備える、燃料電池スタック内の再循環ループのための遮断デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、(通常は空気からの)酸素との反応を通じて燃料の化学的エネルギーを電気に変換する。最も一般的に使用される燃料は、水素である。したがって、以下では、「水素」は、常に燃料を指すために使用されるが、これは、ブタン、プロパン、メタン、メタノール、又は他の炭化水素などの他の気体燃料を明示的に含む。
【0003】
アノードをカソードから分離するイオン伝導性ポリマー電解質を有する低温燃料電池が既知である。水素は、アノード区画に供給され、酸素は、カソード区画に供給される。水素イオンは、電解質を通って移動し、一方、電子は、電気回路及び電池の外側の消費部を通って移動する。そのようなPEM燃料電池は、ポリマー電解質燃料電池(PEFC)、プロトン交換膜燃料電池(PEMFC)、又は固体ポリマー燃料電池(SPFC)とも称される。燃料電池は、普通、約1Vの電圧しか生成しないので、より高い全体電圧を達成するために、通常、いくつかの電池が、いわゆるスタックを形成するように接続されている。
【0004】
動作中、水素燃料電池には化学量論量を超える水素が供給され、これは、水素燃料電池がアノード区画内の水素の全てを消費しないことを意味し、そうでなければ、液体水及び不活性ガスが蓄積することになる。過剰の水素を無駄にしないために、それは再循環される、すなわち再循環システムに供給される。この目的のために、機械的ポンプ又は送風機を用いて水素を能動的に循環させる実現性が存在する。これは、例えば、国際公開第2012/104191号(又は対応する米国特許出願公開第2013/0344406号明細書)から既知である。
【0005】
本デバイスは、再循環ループのための遮断デバイスと、水素入口と、再循環ガス入口と、パージライン又はフラッシングラインと、を有する。本デバイスは、請求項1の前提部分を形成する。
【0006】
また、新鮮な水素のためのノズルを有するジェットポンプを設けることによって、水素を受動的に循環させることも可能であり、このジェットポンプは、より高い新鮮な水素圧力を伴って、再循環される水素を運ぶ。受動的再循環を伴うそのような水素供給は、米国特許出願公開第2020/0144642号明細書から既知である。
【0007】
いくつかの動作状況では、再循環ループの戻りを防止することが必要であるか、又は望ましい。これは、再循環ループのための遮断弁を介して行われる。
【0008】
更に、動作の過程にわたって、再循環ガスは、窒素及び他の望ましくないガスを蓄積し、それらは、動作戦略に応じて時々排気されなければならない。これは、パージ弁又は排出弁を介して行われる。望ましくないガスをパージ又は排出するとき、再循環が防止されると有利である。
【0009】
加えて、安全な動作のために圧力逃がし弁が必要とされる。弁は、ある特定の圧力で自動的に開放し、これにより、損傷から、又は最も極端な場合には、破裂から、全てのコンポーネントを保護する。
【0010】
そのため、安全な動作を可能にするためには、3つの弁が必要である。これは、無視できるとみなされ得る費用ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、再循環ループを有する燃料電池のための弁の費用を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、この目的は、請求項1の特徴を有する遮断デバイスによって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項及び以下の説明に明記されており、これらは各々、個別に又は組み合わせて本発明の態様を表すことができる。
【0013】
本発明によれば、燃料電池スタック内の再循環ループのための遮断デバイスは、水素入口、再循環ガス入口、及びパージラインを備え、上流の水素切換弁によって切り換えられる再循環ループ遮断弁が設けられ、圧力逃がし弁としても設計されているパージ弁が一体化されている。
【0014】
本発明によれば、そのため、3つの弁機能が単一の弁又はコンポーネントに組み合わされている。すなわち、再循環ループのための遮断弁、パージ弁及び圧力逃がし弁である。これは、いくつかの弁に関連するコスト及び労力の両方を節約することができ、3つの機能全てに対して1つのアクチュエータしか必要とされないので、制御労力を大幅に簡略化することができる。本発明による遮断弁は、能動的な再循環及び受動的な再循環の両方を有する燃料電池に好適である。本発明者らは、パージと再循環の遮断との間に特別な関係があることも認識した。
【0015】
好ましい実施形態では、上流水素切換弁は、開口部を開放又は閉鎖する本質的に一般的な制御弁である。一方、再循環ループ遮断弁はスライド弁であり、その弁ピストンは、その移動中に幾分大きいラインを部分的に又は完全に閉鎖することができ、同時にパージ弁を機械的に作動させることができる。次いで、再循環ライン及びパージラインを遮断及び開放するのに、単一のアクチュエータで十分である。摺動ピストンは、好ましくは、開放及び閉鎖されるラインに対して横断方向に移動する。
【0016】
パージ弁は、機械的接続、好ましくは、タペットを介して作動される、すなわち、開放されることが好ましい。このタペットは、好ましくは、再循環ループ遮断弁の弁スライドに直接一体化されている。再循環ループ遮断弁が閉鎖される場合、機械的接続は、直接結合によってパージ弁を自動的に開放する。タペットの一設計変形形態は、再循環ループ遮断弁が完全に閉鎖されたときに、パージ弁が開放されることである。開放時間は、異なるタペット長さに起因して変化する。固定されたタペット長さは、固定された開放時間があることを意味する。以下の図に示すように、パージは、再循環ループが100%閉鎖されるときに開始することができる。他の設計変形形態又はタペット長さを使用することも可能であり、例えば、再循環ループが50%閉鎖されるとき、又は10%閉鎖されるときに、パージを開始することができる。
【0017】
水素切換弁及びパージ弁は、好ましくは、シート弁であり、したがって、完全に封止されている。パージ弁はまた、好ましくは、圧力逃がし弁機能を担うので、ばね荷重式逆止ボール弁として設計されることが推奨され、ばねは、最大許容動作圧力に調整される。
【0018】
本発明によれば、再循環ループ遮断弁は、貯蔵器内の高い水素圧(現在は最大900バール)によって制御され、水素供給圧は、実際の再循環ループ遮断弁の弁スライドを作動させる。これは、最大貯蔵器圧とすることができるが、所望に応じてオペレータによって指定される別のより低い圧力とすることもできる。いくつかの実施形態では、中程度の水素圧範囲、例えば、最大25バールが使用される。特に、受動的再循環の場合に、著しく大きな直径を有することが多い遮断弁は、本発明によれば、それ自体の電気アクチュエータ、すなわち補助力によって移動されるのではなく、いわば、別の力によってトリガ及び開放される。ここで、本発明者らは、貯蔵された新鮮な水素又は中圧範囲で圧力エネルギーとして既に利用可能であり、かつ現場で利用可能である、エネルギーを使用する。結局、水素貯蔵器の相対的に高い圧力(面積当たりの力)は、それがピストン(又はその面積)に当たるときに相対的に高い力を及ぼし、これにより、大きいピストンも安全かつ確実に移動させる。加えて、実際の再循環ループ遮断弁はまた、パージ弁を移動させるので、これもそれ自体の制御を必要としない。
【0019】
この場合、水素圧力を使用するために、水素切換弁は、再循環ループ遮断弁及びパージ弁の上流に接続される。次いで、水素切換弁は、相対的に小さくすることができ、小さいアクチュエータによって移動させることができる。次いで、この上流弁は、より高い水素圧力を再循環ループ遮断弁に切り換える。水素供給圧力は、スタックの再循環ループ内の圧力よりも著しく高いので、再循環ループ遮断弁の実際の弁スライドは、圧力差に起因して「再循環ループ閉鎖」弁位置に移動する。次いで、再循環ループ遮断弁は、再循環ループを完全に閉鎖するが、同時にスタックに新鮮な水素を供給し、これにより、動作を継続することが依然として可能である。
【0020】
3つの弁のストローク及び断面は、広い範囲にわたって自由に選択することができる。再循環ループ遮断弁の弁ストロークが、水素切換弁及びパージ弁の弁ストローク又は電機子ストロークとは無関係であることが好ましい。これは、いわば、再循環ループ遮断弁の移動のための推進力を提供するだけであるため、小さい弁ストロークは、高い水素貯蔵器圧が再循環ループ遮断弁に作用することを可能にするのに十分であり、次に、再循環ループ遮断弁をはるかに大きいストロークで移動させることができる。
【0021】
再循環ループ遮断弁の切り換えられた断面はまた、水素切換弁の断面とは無関係である。小口径の切換弁であっても、高水素圧が、大口径の再循環ループ遮断弁に到達し、再循環ループ遮断弁を移動させることを可能にし得る。再循環ループ遮断弁の断面又は口径は、自由に選択することができ、例えば、水素供給圧とスタック内/上の再循環ループ圧との間の優勢な圧力状態に依存する。
【0022】
水素切換弁は、既知の様式で、例えば、空気圧式で、油圧式で又は機械的に制御することができる。好ましくは、制御は、例えば、プランジャコイル内に電機子を有する電磁弁を介して、電気的又は電磁的とすることができる。
【0023】
アクチュエータによって移動される弁のピストンは、一方向及び反対方向の両方に能動的に押され、例えば、電流の流れによって一方向に移動され、反対の電流によって他の方向に移動されることが可能である。好ましい実施形態では、水素切換弁及び/又は再循環ループ遮断弁及び/又はパージ弁は各々、復元機構を有し、好ましくは、各々、一体化された復元ばねを有する。次いで、この復元コンポーネントは、反対方向の移動を引き起こす。復元要素又は復元ばねは、好ましくは、1つ、2つ、又は3つ全ての弁を、いわゆる、フェイルセーフ位置に移動させる。これは、例えば、水素切換弁の復元ばねが水素切換弁を閉鎖位置に押し、その結果、制御システムにおける停電又は別の故障の際に、水素切換弁が閉鎖され、下流の再循環ループ遮断弁を開放したままにし、これにより、通常の再循環ループを開放に保持することを意味する。これはまた、例えば、再循環ループ遮断弁の復元ばねが再循環ループ遮断弁を開放位置に押し、その結果、制御システムにおける停電又は別の故障の際に、再循環ループ遮断弁が開放している、すなわち、通常の再循環ループが開放したままであることを意味する。これは、2つのばねを介して達成される。パージ弁及び圧力逃がし弁のフェイルセーフ位置は、わずかな過圧下で通常動作を維持するように閉鎖される。
【0024】
直列に接続された2つの弁を伴う実施形態では、一方の弁、ここでは水素切換弁が制御され、他方の弁、ここでは再循環ループ遮断弁が高圧ガス流によって閉鎖位置に押し込まれるが、第2の弁が一定期間後にその初期位置に摺動して戻ることを可能にする機構を設けることが得策である。これは、第1の弁が閉鎖した後に圧力を解放する小さな孔であり、再循環ループ遮断弁である第2の弁が、ある特定の期間後に、その通常の位置に戻ることを可能にし得る。好ましい実施形態では、再循環ループ遮断弁の弁スライドは、ある特定の量の漏れを有し、すなわち、その弁スライドは、ハウジングに対して完全には封止せず、その結果、導入されたガスが逃げ、弁スライドは、例えば、その復元ばねを介して自動的に戻る。この漏れがなければ、均圧は行われない。これは、半径方向のガイド遊びの増加によって、及び/又は孔によって、及び/又は逃がし溝によって行うことができる。
【0025】
燃料電池が車両を駆動することを意図される場合、水素は、車両とともに運搬され、あるタイプのタンクに貯蔵されなければならない。この目的のために、液体形態又は加圧下のいずれかで保存される。液体貯蔵のために極低温度(最大で数ケルビン)が必要とされるので、加圧下(最大約900バール)での貯蔵が、現在確立されている。これは、この高圧範囲のためにも設計されている弁を必要とする。この場合、これらの圧力に抗して移動を行うために、強力な調整要素又はアクチュエータが必要とされることが多い。したがって、本発明の好ましい実施形態では、弁ピストン(又は電磁弁の場合には電機子)のための圧力補償を有する水素切換弁が使用され、これにより、調整力が大幅に低減される。したがって、これは、より軽量かつ脆弱なアクチュエータを使用することができることを意味する。したがって、本発明のこの実施形態では、1つ以上の溢れ孔がハウジング及び/又はアクチュエータに設けられ、この溢れ孔は、高圧水素が弁ピストンの他方の側に到達することを可能にし、これにより、より低い調整力しか必要とされない。ピストン又は電機子に1つ以上の長手方向溝を設けることも可能である。電機子端部止め部における圧力補償は、特に有用である。
【0026】
非常に高い水素圧に対する遮断機能を確実かつ完全に果たすことを可能にするために、水素切換弁及び/又はパージ弁に各々封止弁座を割り当てることができる。例えば、アクチュエータの前側止め部にシート弁を設けることができる。シートは、球シート又は平坦な弁当り面とすることができる。1つ以上のOリング、オーバーモールドシート、又はオーバーモールド弁スライドなどの封止要素を設けることもできる。
【0027】
本発明者らは、パージ中に再循環を行うべきではなく、又は行う必要がないことを認識した。したがって、両方の機能は、本明細書で提案される単一弁を用いて同時に制御することができ、すなわち、再循環が停止されると、パージを開始することができる。次いで、パージが終了すると、再循環を再び開始することができる。再循環を伴わないパージは、高い窒素含有率を有するガスが最初に排出されるという利点を有する。新鮮な水素との混合はなく、これは全体の効率を増加させる。
【0028】
一実施形態では、ストローク監視デバイスが、パージ弁に割り当てられる。この監視デバイスは、例えば、弁ストローク、弁ピストンを監視することによって、又は球ストロークの球を使用するときに、弁のトリガを検出する。これにより、(切換弁が作動されているときの)パージの機能監視と、(切換弁がオフに切り換えられているときの)圧力逃がし弁機能の監視と、がもたらされる。一体化された多機能性のおかげで、再循環遮断の切り換え機能も、このようにしてチェックすることができる。ピストン又は球ストローク監視センサシステムは、例えば、ホールセンサ、リード接点、又は接触抵抗の測定によって実装することができる。パージ弁の開放はまた、例えば、出口内の圧力センサを使用して圧力を測定することによって、又は出口内の水素を監視することによって、間接的に監視することができる。次いで、弁開放は、圧力の増加又は水素含有量の増加によって示される。
【0029】
好ましい実施形態では、再循環ループ遮断弁は、両方のストローク方向の一方又は両方の端部位置に対して空気圧端部位置制動を行う。
【0030】
本発明による遮断デバイスは、任意の好適な材料で作製することができる。材料は、その場所で支配的な機械的荷重及び温度に耐えることができなければならない。そのため、ピストン、ハウジング、及びラインの主要な材料として金属又はプラスチックが推奨される。シールには弾性材料が推奨される。
【0031】
以下において、本発明は、好ましい例示的な実施形態を使用して、添付の図面を参照して実施例として説明され、以下に提示される特徴は、本発明の態様を個別にかつ組み合わせて提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】燃料電池スタック内の水素注入デバイス上の本発明による遮断デバイスを示す。
【
図2】4つの異なる切り換え状況における
図1の遮断デバイスを示す。
【
図3】4つの異なる切り換え状況における
図1の遮断デバイスを示す。
【
図4】4つの異なる切り換え状況における
図1の遮断デバイスを示す。
【
図5】4つの異なる切り換え状況における
図1の遮断デバイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、受動的再循環を有する燃料電池スタック内の水素注入デバイス上の本発明による遮断デバイスを示す。本水素注入デバイスは、水素入口10と、再循環ガス入口12と、ノズル16及びノズルニードル18を有するジェットポンプ14と、を収容している。ジェットポンプ14は、ノズル16を介して、水素入口10から新鮮な水素を注入する。この水素は、高圧下にあり、したがって、高速であり、再循環ガスを再循環ガス入口12及び再循環ループ40からガス出口38の方向にスタックのアノード区画まで運搬し、その結果、受動的再循環が継続される。ガスは、ノズル16の前の吸引チャンバ内で混合し、混合管及びディフューザを通ってガス出口38に達する。水素制御弁32は、電磁石を有する線形アクチュエータによって、前後に移動され、これにより、供給される新鮮な水素の量を制御する。圧力センサ36は、アノード区画内のガス圧を測定し、これにより、必要とされる水素の量の測定値を提供する。
【0034】
水素注入デバイスの下にあるが、ここでは同じハウジングに一体化されているのは、再循環ループ40のための本発明による遮断デバイスの必須のコンポーネント、すなわち、弁ピストン又は弁スライド26を有する水素切換弁22、弁ピストン又は弁スライド24を有する再循環ループ遮断弁20、及びパージ弁44である。
【0035】
水素切換弁22は、線形アクチュエータ28、例えば、電磁石を装備しており、この線形アクチュエータ28は、電機子30を介して、弁スライド26を前後に移動させることができる。水素切換弁22の弁スライド26は、復元ばね34によって右に向かって右側止め部に押圧され、その弁座48によって、水素入口10から循環ループ遮断弁20に至る開口部を閉鎖する(通常は、閉鎖位置)。水素切換弁22には、弁スライド26の横に、圧力補償を保証する2つの溢れ孔が設けられている。
【0036】
該開口部の右側には、再循環ループ遮断弁20があり、その弁スライド24は、復元ばね42によって左に押される。この左側の止め部位置では、再循環ループ40からスタックへのラインが解放され、通常動作のための開放位置に至る(通常は、開放位置)。
図1において、再循環ループ遮断弁20の弁スライド24は、その2つの端部位置のうちの一方に示されていないが、再循環ループ遮断弁20の弁スライド24が再循環ガス入口12とスタックとの間の再循環ループ40を閉鎖する中間位置に示されている。再循環ループ遮断弁20の弁スライド24の場合、2つの端部位置ダンパが、端部止め部に設けられ、これらは、好ましくは、空気圧で機能する。再循環ループ遮断弁20の弁スライド24のための孔の下には、2つの長手方向溝部46があり、これらの長手方向溝46は、ガスが弁スライド24を通過してゆっくりと流れることを可能にし、溢れ孔としての役割を果たす。弁スライド24にはタペット60が取り付けられており、このタペット60は右に向かってパージ弁44の方向に延在している。
【0037】
パージ弁44は、右端に位置している。これは、ばね56によって弁座52に押圧される弁球46を有する。パージ弁44は、再循環ループ40から外部への出口58に至るパージライン54に配置されている。同時に、それは、再循環ループ遮断弁20の近傍に直接位置し、その結果、タペット60は、弁スライド24の移動を球46に機械的に伝達することができる。再循環ループ遮断弁20が閉鎖すると、弁スライド24は右に移動して再循環ループ40のラインを閉鎖し、十分に離れている場合には、この移動をそのタペット60を介して球46に伝達する。これにより、タペット60は、球46をその弁座52から持ち上げ、それによってパージ弁44を開放する。この実施形態では、パージ弁44の球46はまた、ライン54を介してライン40内の(これにより、スタック内の)圧力を指し示す表面を有するので、パージ弁44はまた、圧力逃がし弁として作用する。スタック、ループ40又はライン54内の圧力が予め設定されたレベルを超えて増加する場合、この圧力は、球46をその弁座52から持ち上げ、過剰な圧力が出口58を介して外部に逃げることを可能にする。
【0038】
ストローク監視デバイス62は、球46の近くに位置し、球46の位置を検出し、それを制御システムに報告する。
【0039】
図2~5は、動作モードを説明するために、4つの異なる切り換え状況における、
図1の遮断デバイスを示す。
【0040】
図2は、3つの弁、すなわち、水素切換弁22、再循環ループ遮断弁20、及びパージ弁44のフェイルセーフ位置、すなわち、全てが非通電であるときの休止位置を示す。線形アクチュエータ28は作動していないので、復元ばね34は、水素切換弁22の弁スライド26を右側終端位置に押圧し、この終端位置で弁スライド26は、循環ループ遮断弁20への開口部を閉鎖する。したがって、水素切換弁22は、閉鎖される。次いで、高圧水素ガスは、水素入口10から再循環ループ遮断弁20に到達することができない。
【0041】
第2の復元ばね42は、再循環遮断弁20の弁スライド24を左側終端位置に押圧し、この結果、弁スライド24は、再循環回路40を開放したままにする。したがって、再循環ループ遮断弁20は、開放している。そのため、再循環ガスは、再循環ガス入口12から上方に向かって水素注入デバイスに、したがって、スタックに到達することができる。
【0042】
パージ弁44は、閉鎖されている(フェイルセーフ)。ばね56は、球46を弁座52に押圧する。
【0043】
図3は、異なる位置にある3つの弁、すなわち、水素切換弁22、再循環ループ遮断弁20、及びパージ弁44を示す。ここで、線形アクチュエータ28が通電され、水素切換弁22の弁スライド26をわずかに左に引き、その結果、弁スライド26は、再循環ループ遮断弁20への開口部を開放する。したがって、水素切換弁22は、開放していれる。そのため、高圧水素ガスは、水素入口10から再循環ループ遮断弁20に到達することができる。
【0044】
この高圧ガス(又は水素供給圧力)は、再循環遮断弁20の弁スライド24をばね42の作用に抗して右に押し、その結果、弁スライド24は、再循環ループ40を閉鎖する。したがって、再循環ループ遮断弁20は、閉鎖される。再循環ガスは、もはや再循環ガス入口12から上方に水素注入デバイスに、したがって、スタックに到達することができない。
【0045】
パージ弁44は、依然として閉鎖されている。ばね56は、球46を弁座52に押圧する。
【0046】
図4は、更なる位置にある3つの弁、すなわち、水素切換弁22、再循環ループ遮断弁20、及びパージ弁44を示す。ここで、線形アクチュエータ28が更に通電され、水素切換弁22の弁スライド26をばね34の作用に抗してわずかに左に引き、その結果、弁スライド26は、再循環ループ遮断弁20への開口部を開放したままにする。したがって、水素切換弁22は、開放していれる。そのため、高圧水素ガスは、水素入口10から再循環ループ遮断弁20に到達することができる。
【0047】
この高圧ガス(又は水素供給圧力)は、再循環ループ遮断弁20の弁スライド24をばね42の作用に抗して更に右に押し、その結果、弁スライド24は、再循環ループ40を閉鎖に保持する。したがって、再循環ループ遮断弁20は、閉鎖される。再循環ガスは、もはや再循環ガス入口12から上方に水素注入デバイスに、したがって、スタックに到達することができない。
【0048】
同時に、弁スライド24は、そのタペット60を介してパージ弁44を開放するのに十分に右に押圧される。パージ弁44は、開放している。水素開閉弁22は開放しているので、この圧力により弁44を開放に保持する。溝によって引き起こされる漏れは、新しい水素の供給によって補償される。再循環ループ遮断弁20及びパージ弁44は、開放されている。ここで、水素切換弁22が閉鎖されると、弁スライドの前の圧力は、溝又は半径方向の遊びを介した流出によって低減する。溝又は半径方向の遊びの寸法に応じて、再循環ループ遮断弁20は、より迅速に又はよりゆっくりと開放する。パージ弁44は、弁スライドが移動するのと同時に閉鎖する。
【0049】
図5は、パージ弁44が圧力逃がし弁44としてどのように作用するかを示す。
【0050】
図2のように、水素切換弁22は、非通電とされ、かつ閉鎖されている。
【0051】
水素供給圧力は、再循環ループ遮断弁20の弁スライド24の左に印加されない。したがって、
図2のように開放している。
【0052】
再循環ループ40内の過剰圧力は、パージライン54を介してパージ弁44に到達し、ここで、パージ弁44は、圧力逃がし弁44として動作し、開放して過剰圧力を放出する。
【符号の説明】
【0053】
10 水素入口
12 再循環ガス入口
14 ジェットポンプ
16 ノズル
18 ノズルニードル
20 再循環ループ遮断弁
22 水素切換弁
24 再循環ループ遮断弁の弁スライド
26 水素切換弁の弁スライド
28 線形アクチュエータ
30 電機子
32 水素制御弁
34 水素切換弁の復元ばね
36 圧力センサ
38 スタックへのガス出口
40 スタックからの再循環ループ
42 再循環ループ遮断弁の復元ばね
44 パージ弁/圧力逃がし弁
46 パージ弁の弁球
48 水素切換弁の弁座
52 パージ弁の弁座
54 パージライン
56 パージ弁のばね
58 出口
60 タペット
62 ストローク監視デバイス
【国際調査報告】