(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】GIP誘導体、またはその持続型結合体を含む肺疾患の予防用または治療用の薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/22 20060101AFI20240201BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240201BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240201BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240201BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240201BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240201BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240201BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20240201BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
A61K38/22
A61P11/00
A61K47/68
A61P43/00 105
A61P11/06
A61P31/14
A61K39/395 Y
C07K14/00 ZNA
C07K16/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546299
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2023-07-31
(86)【国際出願番号】 KR2022001472
(87)【国際公開番号】W WO2022164222
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0013179
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516132149
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェ、チェ ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ウン チョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ウォン キ
(72)【発明者】
【氏名】ハン、スン ス
(72)【発明者】
【氏名】シン、ミン キョン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC15
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA19
4C084BA23
4C084DB37
4C084NA14
4C084ZA59
4C084ZB21
4C084ZB33
4C085AA25
4C085CC22
4C085DD52
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA19
4H045EA20
4H045FA10
4H045GA21
(57)【要約】
GIP誘導体、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、またはその持続型結合体を含む肺疾患の予防用または治療用の薬学的組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺疾患の予防または治療のための薬学的組成物であって、
薬学的に許容される賦形剤と、配列番号1~26のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドと、を薬学的有効量で含む、薬学的組成物。
【請求項2】
前記ペプチドは、持続型結合体の形態であり、前記持続型結合体は、下記化学式1で表される、請求項1に記載の薬学的組成物:
【化1】
ただし、ここに、Xは、配列番号1~26のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドであり、
Lは、エチレングリコール繰り返し単位を含むリンカーであり、
Fは、免疫グロブリンFc領域であり、
-は、XとLとの共有結合、LとFとの共有結合の連結を示す。
【請求項3】
前記ペプチドは、そのC末端がアミド化された、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記ペプチドは、配列番号11,17、及び配列番号19~26によって構成された群のうちから選択されたアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記ペプチドは、配列番号11,17,21及び24によって構成された群のうちから選択されたアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記L内のエチレングリコール繰り返し単位部分の化学式量は、1~100kDaの範囲にある、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記Fは、IgG Fc領域である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記薬学的組成物は、下記のうちいずれか1以上の効果を有するものである、請求項1または2に記載の薬学的組成物:
(i)肺の炎症抑制;
(ii)肺胞上皮細胞の上皮間葉転換(EMT)の抑制;及び
(iii)肺気腫の改善。
【請求項9】
前記肺疾患は、間質性肺疾患、進行性線維化間質性肺疾患、特発性間質性肺炎、非特異性間質性肺炎、肺線維症、間質性肺線維症、特発性肺線維症、肺胞炎、肺炎、肺気腫、気管支炎、喘息、肺線維化症・肺気腫複合疾患(CPFE)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及びコロナウイルス感染症によって構成された群のうちから選択された1以上のものである、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記コロナウイルス感染症は、コロナウイルス感染症19(COVID-19)である、請求項9に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GIP誘導体、またはその持続型結合体を含む肺疾患の予防用または治療用の薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
肺は、呼吸を主に担当する器官であり、有害物質、ウイルス、免疫異常などにより、肺疾患が発病する。肺疾患は、肺機能低下や呼吸不全などを引き起こすために、発病原因による適切な治療が要求される。
【0003】
肺と係わる疾患としては、間質性肺疾患、進行性線維化間質性肺疾患、特発性間質性肺炎、非特異性間質性肺炎、肺線維症、間質性肺線維症、特発性肺線維症、肺胞炎、肺炎、肺気腫、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)、肺線維化症・肺気腫複合疾患(CPFE:combined pulmonary fibrosis and emphysema)、喘息及び呼吸器感染疾患(例えば、コロナウイルス感染症(COVID-19))を挙げることができる。そのような肺疾患は、互いに関連し、さまざまな症状が混在されて示されるので、治療剤選択に注意が必要であると知られている。肺疾患の主要発病メカニズムとしては、肺損傷及び炎症反応、並びに線維化を挙げることができる。
【0004】
具体的には、肺において、ウイルス、微生物、有害物質などによる炎症反応が起これば、肺胞の大食細胞による炎症サイトカイン(例えば、IL-1、IL-6、TNF-α)分泌、好中球の誘引、プロテアーゼ分泌などが進められ、肺組織を構成する線維を分解するプロテアーゼ(例えば、エラスターゼ)の分泌により、肺組織の弾力性及び構造が損傷され、肺の線維化につながると知られている。肺の炎症と線維化は、多くの肺疾患の進行過程において先行されるので、肺疾患の予防及び治療において、根本的なメカニズムであると言うことができる。
【0005】
肺疾患の代表的な例である慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、タバコ、大気汚染または毒性吸入物質により、肺の異常な炎症反応により、気道が狭くなりながら、徐々に気道閉塞が起こる疾患を意味し、大きく見て、慢性気管支炎と肺気腫とを特徴とする。特に、喫煙が慢性閉塞性肺疾患の主要原因と知られている。喫煙は、肺組織内において、強力な刺激物質ととして作用し、多様な伝染症因子、成長因子、酸化物質及び化学走性因子の生成を増大させ、炎症性信号伝達体系を活性化させ、好中球及び大食細胞を始めとする多くの炎症細胞の流注を促進させ、肺の炎症をさらに悪化させ、それは、結局、肺組織の異常な変化、言わば、気道壁の肥厚、肺線維化を引き起こし、肺機能を低下させる。そのために、慢性閉塞性肺疾患の予防及び治療のために、肺の炎症改善が1つの治療方法と理解されている。
【0006】
そのように、肺の炎症及び線維化は、肺疾患の発病及び発展の主な原因になるので、肺の炎症及び線維化の改善は、さまざまな肺疾患の治療メカニズムとして研究されてきている。
【0007】
なお、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP:glucose-dependent insulinotropic polypeptide)は、代表的な胃腸ホルモンであると共に、神経ホルモンであり、飲食物摂取に刺激を受けて分泌される。該GIPは、小腸のK細胞から分泌される42個アミノ酸によって構成されたホルモンであり、血糖濃度に依存し、膵臓におけるインスリン分泌を促進させ、血糖濃度を低くするのに一助となる機能を遂行し、GLP-1の活性増大効果、抗炎症効果などが報告されている。研究によれば、GIP受容体は、さまざまな組織で発現されると知られており、肺も、そのうちの一つである。従って、GIPが肺に直接作用し、抗炎症効果を介し、肺疾患の治療剤として効力を期待することができる。
【0008】
また、現在まで、COPDに係わる多様な研究が進められているが、実質的に効果的な治療剤の開発は、整えられていないな状態であるが、持続的な治療剤開発の必要性がある。
【0009】
それにより、本発明者らは、ヒトGIP受容体において高活性を示し、体内持続性が改善された持続型GIP誘導体結合体を開発し、その肺疾患に対する治療剤としての可能性を確認し、本発明の完成に至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、GIP誘導体、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、またはその結合体を含む肺疾患の予防用または治療用の薬学的組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、有効量の前記GIP誘導体、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、またはその結合体、あるいは前記薬学的組成物をそれを必要とする個体に投与する段階を含む、肺疾患を予防または治療する方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、肺疾患の予防用または治療用の薬剤を製造するのに使用するための、前記GIP誘導体、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、またはその結合体の用途を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書全般において、天然に存在するアミノ酸に係わる一般的な1文字コード及び3文字コードが使用されるだけではなく、Aib(α-アミノイソ酪酸)のような他のアミノ酸につき、一般的に許容される3文字コードが使用される。また、本明細書において、略語でもって言及されたアミノ酸は、IUPAC-IUB命名法によって記載されている。
【0014】
アラニンAla、A アルギニンArg、R
アスパラギンAsn、N アスパラギン酸Asp、D
システインCys、C グルタミン酸Glu、E
グルタミンGln、Q グリシンGly、G
ヒスチジンHis、H イソロイシンIle、I
ロイシンLeu、L リシンLys、K
メチオニンMet、M フェニルアラニンPhe、F
プロリンPro、P セリンSer、S
トレオニンThr、T トリプトファンTrp、W
チロシンTyr、Y バリンVal、V
【0015】
一態様は、GIP誘導体、その薬学的に許容可能な塩、またはその溶媒化物を含む、肺疾患の予防用または治療用の薬学的組成物を提供する。
【0016】
「GIP(glucose-dependent insulinotropic polypeptideまたはgastric inhibitory polypeptide)」とは、飲食物摂取に刺激を受け、小腸のK細胞から分泌されるホルモンであり、血中糖濃度調節に関与する物質と最初に報告された。
【0017】
前記「GIP誘導体」とは、天然型GIP配列において、少なくとも1以上のアミノ酸に改変が起こった天然型GIPの誘導体であり得る。前記改変は、置換(substitution)、追加(addition)、除去(deletion)、改質(modification)、及びそれらの2以上の組み合わせによって構成された群のうちからも選択される。前記追加されるアミノ酸配列は、天然GIPアミノ酸配列に由来するものであり得るが、それに制限されるものではない。
【0018】
前記GIP誘導体は、GIP受容体に対して活性を有するペプチドであり得る。前記「GIP受容体に対して活性を有するペプチド」とは、前記GIP受容体に対し、有意レベルの活性を有し、具体的には、GIP受容体に対し、インビトロ(in vitro)活性が、天然型リガンド(天然型GIP)対比で、約0.1%以上、1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上、100%~500%、または100%~200%を示すものを意味しうる。そのようなGIP受容体に対して活性を有するペプチドのインビトロ活性を測定する方法は、本願明細書の実施例2を参照することができるが、特別にそれに制限されるものではなく、当業界に知られた方法であるならば、適切に使用し、インビトロ活性を測定することができる。
【0019】
「約」とは、±0.5、±0.4、±0.3、±0.2、±0.1などをいずれも含む範囲であり、「約」という用語後に出る数値と、同等であるか、あるいは類似した範囲の数値をいずれも含むが、それに制限されるものではない。
【0020】
一具体例において、前記GIP誘導体は、天然型または非変異のGIPタンパク質において、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれ以上のアミノ酸において、保存的置換が起こったものであり得るが、それに制限されるものではない。
【0021】
「保存的置換(conservative substitution)」とは、1つのアミノ酸を、類似した構造的及び/または化学的な性質を有する他のアミノ酸で置換させることを意味する。前記GIP誘導体は、天然型または非変異のGIPタンパク質の生物学的活性を以前として保有しながら、例えば、1以上の保存的置換を有しうる。そのようなアミノ酸置換は、一般的に、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性及び/または両親媒性(amphipathic nature)における類似性に基づいても生じる。例えば、正に荷電された(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リシン及びヒスチジンを含み、負に荷電された(酸性)アミノ酸は、グルタミン酸及びアスパラギン酸を含み、芳香族アミノ酸は、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンを含み、疎水性アミノ酸は、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、タイロシン及びトリプトファンを含む。また、アミノ酸は、電荷を帯びる(electrically charged)側鎖を有するアミノ酸と、電荷を帯びていない(uncharged)側鎖を有するアミノ酸とに分類されうる。電荷を帯びる側鎖を有するアミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジンを含み、電荷を帯びていない側鎖を有するアミノ酸は、さらに、非極性(nonpolar)アミノ酸または極性(polar)アミノ酸にも分類される。該非極性アミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリンを含み、該極性アミノ酸は、セリン、トレオニン、システイン、アスパラギン、グルタミンを含むものであり得る。前述のような類似した性質を有するアミノ酸における保存的置換は、同一であるか、あるいは類似した活性を示すと期待することができる。
【0022】
前記GIP誘導体は、非自然的に生じる(non-naturally occurring)ものであり得る。
【0023】
前記GIP誘導体は、分離されたペプチドであり得る。
【0024】
一具体例において、前記GIP誘導体は、下記一般式1で表されるアミノ酸配列を含むペプチドである:
Tyr-Aib(aminoisobutyric acid)-Glu-Gly-Thr-Phe-Ile-Ser-Asp-Tyr-Ser-Ile-Xaa13-Xaa14-Xaa15-Xaa16-Xaa17-Ala-Xaa19-Xaa20-Xaa21-Phe-Xaa23-Xaa24-Trp-Leu-Xaa27-Xaa28-Xaa29-Xaa30-Xaa31-Xaa32-Xaa33-Xaa34-Xaa35-Xaa36-Xaa37-Xaa38-Xaa39-Xaa40-Xaa41-Xaa42-Xaa43(一般式1)
前記一般式1で、
Xaa13は、アラニン(Ala、A)、Aib、チロシン(Tyr、Y)またはグルタミン(Gln、Q)であり、
Xaa14は、メチオニン(Met、M)またはロイシン(Leu、L)であり、
Xaa15は、アスパラギン酸(Asp、D)またはグルタミン酸(Glu、E)であり、
Xaa16は、アラニン(Ala、A)、リシン(Lys、K)またはグリシン(Gly、G)であり、
Xaa17は、イソロイシン(Ile、I)またはグルタミン(Gln、Q)であり、
Xaa19は、グルタミン(Gln、Q)またはアラニン(Ala、A)であり、
Xaa20は、グルタミン(Gln、Q)、Aibまたはリシン(Lys、K)であり、
Xaa21は、アスパラギン酸(Asp、D)またはグルタミン酸(Glu、E)であり、
Xaa23は、バリン(Val、V)またはイソロイシン(Ile、I)であり、
Xaa24は、アスパラギン(Asn、N)、アラニン(Ala、A)またはグルタミン(Gln、Q)であり、
Xaa27は、ロイシン(Leu、L)またはイソロイシン(Ile、I)であり、
Xaa28は、アラニン(Ala、A)またはAibであり、
Xaa29は、グルタミン(Gln、Q)またはグリシン(Gly、G)であり、
Xaa30は、リシン(Lys、K)、グリシン(Gly、G)またはヒスチジン(His、H)であり、
Xaa31は、プロリン(Pro、P)、グリシン(Gly、G)またはシステイン(Cys、C)であり、
Xaa32は、セリン(Ser、S)またはリシン(Lys、K)であるか、あるいは存在せず、
Xaa33は、セリン(Ser、S)またはリシン(Lys、K)であるか、あるいは存在せず、
Xaa34は、グリシン(Gly、G)またはアスパラギン(Asn、N)であるか、あるいは存在せず、
Xaa35は、アラニン(Ala、A)またはアスパラギン酸(Asp、D)であるか、あるいは存在せず、
Xaa36は、プロリン(Pro、P)またはトリプトファン(Trp、W)であるか、あるいは存在せず、
Xaa37は、プロリン(Pro、P)またはリシン(Lys、K)であるか、あるいは存在せず、
Xaa38は、プロリン(Pro、P)またはヒスチジン(His、H)であるか、あるいは存在せず、
Xaa39は、セリン(Ser、S)、アスパラギン(Asn、N)またはシステイン(Cys、C)であるか、あるいは存在せず、
Xaa40は、システイン(Cys、C)またはイソロイシン(Ile、I)であるか、あるいは存在せず、
Xaa41は、トレオニン(Thr、T)であるか、あるいは存在せず、
Xaa42は、グルタミン(Gln、Q)であるか、あるいは存在せず、
Xaa43は、システイン(Cys、C)であるか、あるいは存在しない。
そのようなペプチドの例示的な種類は、配列番号1~26によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むものであり得る。
【0025】
他の具体例において、前記ペプチドは、下記一般式2で表されるアミノ酸配列を含むものであり得る:
Tyr-Aib(aminoisobutyric acid)-Glu-Gly-Thr-Phe-Ile-Ser-Asp-Tyr-Ser-Ile-Xaa13-Xaa14-Xaa15-Xaa16-Xaa17-Ala-Xaa19-Xaa20-Xaa21-Phe-Val-Xaa24-Trp-Leu-Xaa27-Xaa28-Xaa29-Xaa30-Xaa31-Xaa32-Xaa33-Xaa34-Xaa35-Xaa36-Xaa37-Xaa38-Xaa39-Xaa40-Xaa41-Xaa42-Xaa43(一般式2)
前記一般式2で、
Xaa13は、アラニン(Ala、A)、Aibまたはチロシン(Tyr、Y)であり、
Xaa14は、メチオニン(Met、M)またはロイシン(Leu、L)であり、
Xaa15は、アスパラギン酸(Asp、D)またはグルタミン酸(Glu、E)であり、
Xaa16は、アラニン(Ala、A)またはリシン(Lys、K)であり、
Xaa17は、イソロイシン(Ile、I)またはグルタミン(Gln、Q)であり、
Xaa19は、グルタミン(Gln、Q)またはアラニン(Ala、A)であり、
Xaa20は、グルタミン(Gln、Q)、Aibまたはリシン(Lys、K)であり、
Xaa21は、アスパラギン酸(Asp、D)またはグルタミン酸(Glu、E)であり、
Xaa24は、アスパラギン(Asn、N)またはグルタミン(Gln、Q)であり、
Xaa27は、ロイシン(Leu、L)またはイソロイシン(Ile、I)であり、
Xaa28は、アラニン(Ala、A)またはAibであり、
Xaa29は、グルタミン(Gln、Q)またはグリシン(Gly、G)であり、
Xaa30は、リシン(Lys、K)、グリシン(Gly、G)またはヒスチジン(His、H)であり、
Xaa31は、プロリン(Pro、P)またはグリシン(Gly、G)であり、
Xaa32は、セリン(Ser、S)またはリシン(Lys、K)であり、
Xaa33は、セリン(Ser、S)またはリシン(Lys、K)であり、
Xaa34は、グリシン(Gly、G)またはアスパラギン(Asn、N)であり、
Xaa35は、アラニン(Ala、A)またはアスパラギン酸(Asp、D)であり、
Xaa36は、プロリン(Pro、P)またはトリプトファン(Trp、W)であり、
Xaa37は、プロリン(Pro、P)またはリシン(Lys、K)であり、
Xaa38は、プロリン(Pro、P)またはヒスチジン(His、H)であり、
Xaa39は、セリン(Ser、S)、アスパラギン(Asn、N)またはシステイン(Cys、C)であり、
Xaa40は、システイン(Cys、C)またはイソロイシン(Ile、I)であるか、あるいは存在せず、
Xaa41は、トレオニン(Thr、T)であるか、あるいは存在せず、
Xaa42は、グルタミン(Gln、Q)であるか、あるいは存在せず、
Xaa43は、システイン(Cys、C)であるか、あるいは存在しない。
そのようなペプチドの例示的な種類は、配列番号11,17、及び配列番号19~26によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むものであり得る。
さらに他の具体例において、前記ペプチドは、下記一般式3で表されるアミノ酸配列を含むものであり得る:
Tyr-Aib(aminoisobutyric acid)-Glu-Gly-Thr-Phe-Ile-Ser-Asp-Tyr-Ser-Ile-Xaa13-Xaa14-Xaa15-Xaa16-Xaa17-Ala-Xaa19-Xaa20-Xaa21-Phe-Val-Asn-Trp-Leu-Leu-Xaa28-Xaa29-Xaa30-Xaa31-Xaa32-Xaa33-Xaa34-Xaa35-Xaa36-Xaa37-Xaa38-Xaa39-Xaa40-Xaa41-Xaa42-Xaa43(一般式3)
前記一般式3で、
Xaa13は、アラニン(Ala、A)またはAibであり、
Xaa14は、メチオニン(Met、M)またはロイシン(Leu、L)であり、
Xaa15は、アスパラギン酸(Asp、D)またはグルタミン酸(Glu、E)であり、
Xaa16は、アラニン(Ala、A)またはリシン(Lys、K)であり、
Xaa17は、イソロイシン(Ile、I)またはグルタミン(Gln、Q)であり、
Xaa19は、グルタミン(Gln、Q)またはアラニン(Ala、A)であり、
Xaa20は、グルタミン(Gln、Q)またはAibであり、
Xaa21は、アスパラギン酸(Asp、D)またはグルタミン酸(Glu、E)であり、
Xaa28は、アラニン(Ala、A)またはAibであり、
Xaa29は、グルタミン(Gln、Q)またはグリシン(Gly、G)であり、
Xaa30は、リシン(Lys、K)、グリシン(Gly、G)またはヒスチジン(His、H)であり、
Xaa31は、プロリン(Pro、P)またはグリシン(Gly、G)であり、
Xaa32は、セリン(Ser、S)またはリシン(Lys、K)であり、
Xaa33は、セリン(Ser、S)またはリシン(Lys、K)であり、
Xaa34は、グリシン(Gly、G)またはアスパラギン(Asn、N)であり、
Xaa35は、アラニン(Ala、A)またはアスパラギン酸(Asp、D)であり、
Xaa36は、プロリン(Pro、P)またはトリプトファン(Trp、W)であり、
Xaa37は、プロリン(Pro、P)またはリシン(Lys、K)であり、
Xaa38は、プロリン(Pro、P)またはヒスチジン(His、H)であり、
Xaa39は、セリン(Ser、S)またはアスパラギン(Asn、N)であり、
Xaa40は、システイン(Cys、C)またはイソロイシン(Ile、I)であり、
Xaa41は、トレオニン(Thr、T)であるか、あるいは存在せず、
Xaa42は、グルタミン(Gln、Q)であるか、あるいは存在せず、
Xaa43は、システイン(Cys、C)であるか、あるいは存在しない。
【0026】
そのようなペプチドの例示的な種類は、配列番号11,17,21及び24によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むものであり得る。
【0027】
さらに他の具体例において、前記一般式3で、
Xaa13は、アラニン(Ala、A)またはAibであり、
Xaa14は、ロイシン(Leu、L)であり、
Xaa15は、アスパラギン酸(Asp、D)またはグルタミン酸(Glu、E)であり、
Xaa16は、リシン(Lys、K)であり、
Xaa17は、グルタミン(Gln、Q)であり、
Xaa19は、グルタミン(Gln、Q)またはアラニン(Ala、A)であり、
Xaa20は、グルタミン(Gln、Q)またはAibであり、
Xaa21は、アスパラギン酸(Asp、D)またはグルタミン酸(Glu、E)であり、
Xaa28は、アラニン(Ala、A)またはAibであり、
Xaa29は、グルタミン(Gln、Q)であり、
Xaa30は、グリシン(Gly、G)またはヒスチジン(His、H)であり、
Xaa31は、プロリン(Pro、P)であり、
Xaa32は、セリン(Ser、S)であり、
Xaa33は、セリン(Ser、S)であり、
Xaa34は、グリシン(Gly、G)であり、
Xaa35は、アラニン(Ala、A)であり、
Xaa36は、プロリン(Pro、P)であり、
Xaa37は、プロリン(Pro、P)であり、
Xaa38は、プロリン(Pro、P)であり、
Xaa39は、セリン(Ser、S)であり、
Xaa40は、システイン(Cys、C)であり、
Xaa41~Xaa43は、存在しないのである。
【0028】
そのようなペプチドの例示的な種類は、配列番号17,21及び24によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むものであり得る。
【0029】
さらに他の具体例において、前記一般式1で、
Xaa13は、アラニン(Ala、A)であり、
Xaa14は、メチオニン(Met、M)であり、
Xaa15は、アスパラギン酸(Asp、D)であり、
Xaa16は、アラニン(Ala、A)であり、
Xaa17は、イソロイシン(Ile、I)であり、
Xaa19は、グルタミン(Gln、Q)であり、
Xaa20は、グルタミン(Gln、Q)であり、
Xaa21は、アスパラギン酸(Asp、D)であり、
Xaa23は、バリン(Val、V)であり、
Xaa24は、アスパラギン(Asn、N)であり、
Xaa27は、ロイシン(Leu、L)であり、
Xaa28は、アラニン(Ala、A)であり、
Xaa29は、グルタミン(Gln、Q)であり、
Xaa30は、リシン(Lys、K)であり、
Xaa31は、グリシン(Gly、G)であり、
Xaa32は、リシン(Lys、K)であり、
Xaa33は、リシン(Lys、K)であり、
Xaa34は、アスパラギン(Asn、N)であり、
Xaa35は、アスパラギン酸(Asp、D)であり、
Xaa36は、トリプトファン(Trp、W)であり、
Xaa37は、リシン(Lys、K)であり、
Xaa38は、ヒスチジン(His、H)であり、
Xaa39は、アスパラギン(Asn、N)であり、
Xaa40は、イソロイシン(Ile、I)であり、
Xaa41は、トレオニン(Thr、T)であり、
Xaa42は、グルタミン(Gln、Q)であり、
Xaa43は、システイン(Cys、C)であり得る。
【0030】
ただし、前記一般式1~3で、Xaa32~Xaa43のうちいずれか1つのアミノ酸が存在しない場合、その後のアミノ酸配列は、存在しないのであり得る。一例として、Xaa32が存在しない場合、Xaa33~Xaa43は、存在しないのである。他の例として、Xaa41が存在しない場合、Xaa42~Xaa43は、存在しないのであり得る。
【0031】
さらに他の具体例において、前記ペプチドは、配列番号1~26によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むものであり得る。また、前記ペプチドは、配列番号1~26によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって必須に構成されたものであるか、あるいは前記ペプチドは、配列番号1~26によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって構成されたものであり得る。前記配列番号1~26のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含む(または、必須に構成されるか、あるいは構成される)ペプチドは、GIP受容体に対し、インビトロ活性が、天然型GIP対比で、約1%以上であり得る。従って、配列番号1~26のペプチドは、天然型GIPより高活性を示し、すぐれた薬理効果を示しうる。
【0032】
さらに他の具体例において、前記ペプチドは、配列番号1~7、及び配列番号10~26によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むものであり得る。また、前記ペプチドは、配列番号1~7、及び配列番号10~26によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって必須に構成されたものであるか、あるいは前記ペプチドは、配列番号1~7、及び配列番号10~26によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって構成されたものであり得る。前記配列番号1~7、及び配列番号10~26のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含む(または、必須に構成されるか、あるいは構成される)ペプチドは、GIP受容体に対し、インビトロ活性が、天然型GIP対比で、約10%以上であり得る。従って、配列番号1~7、及び配列番号10~26のペプチドは、天然型GIPより有意に高活性を示し、すぐれた薬理効果を示しうる。
【0033】
さらに他の具体例において、前記ペプチドは、配列番号1、配列番号11~13、配列番号15,17、及び配列番号19~26によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むものであり得る。また、前記ペプチドは、配列番号1、配列番号11~13、配列番号15,17、及び配列番号19~26によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって必須に構成されたものであるか、あるいは前記ペプチドは、配列番号1、配列番号11~13、配列番号15,17、及び配列番号19~26によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって構成されたものであり得る。前記配列番号1、配列番号11~13、配列番号15,17、及び配列番号19~26のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含む(または、必須に構成されるか、あるいは構成される)ペプチドは、GIP受容体に対し、インビトロ活性が、天然型GIP対比で、約30%以上であり得る。従って、配列番号1、配列番号11~13、配列番号15,17、及び配列番号19~26のペプチドは、天然型GIPより有意に高活性を示し、すぐれた薬理効果を示しうる。
【0034】
さらに他の具体例において、前記ペプチドは、配列番号11,17、及び配列番号19~26によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むものであり得る。また、前記ペプチドは、配列番号11,17、及び配列番号19~26によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって必須に構成されたものであるか、あるいは前記ペプチドは、配列番号11,17、及び配列番号19~26によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって構成されたものであり得る。前記配列番号11,17、及び配列番号19~26のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含む(または、必須に構成されるか、あるいは構成される)ペプチドは、GIP受容体に対し、インビトロ活性が、天然型GIP対比で、約60%以上であり得る。従って、配列番号11,17、及び配列番号19~26のペプチドは、天然型GIPより有意に高活性を示し、顕著にすぐれた薬理効果を示しうる。
【0035】
さらに他の具体例において、前記ペプチドは、配列番号11,17,21及び24によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むものであり得る。また、前記ペプチドは、配列番号11,17,21及び24によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって必須に構成されたものであるか、あるいは前記ペプチドは、配列番号11,17,21及び24によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって構成されたものであり得る。前記配列番号11,17,21及び24のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含む(または、必須に構成されるか、あるいは構成される)ペプチドは、GIP受容体に対し、インビトロ活性が、天然型GIP対比で、約100%以上、具体的には、約110%以上であり得る。従って、配列番号11,17,21及び24のペプチドは、天然型GIPより有意に高活性を示し、顕著にすぐれた薬理効果を示しうる。
【0036】
さらに他の具体例において、前記ペプチドは、配列番号17,21及び24によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むものであり得る。また、前記ペプチドは、配列番号17,21及び24によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって必須に構成されたものであるか、あるいは前記ペプチドは、配列番号17,21及び24によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって構成されたものであり得る。前記配列番号17,21及び24のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含む(または、必須に構成されるか、あるいは構成される)ペプチドは、特に、持続型結合体形態である場合、GIP受容体に対し、インビトロ活性が、天然型GIP対比で、約120%以上であり得る。従って、配列番号17,21及び24のペプチドは、特に、持続型結合体形態である場合、天然型GIPより有意に高活性を示し、顕著にすぐれた薬理効果を示しうる。
【0037】
本願において、「特定配列番号によって構成されるペプチド」と記載しているとしても、当該配列番号のアミノ酸配列によってなるペプチドと同一あるいは相応する活性を有する場合であるならば、当該配列番号のアミノ酸配列先後の無意味な配列追加、または自然に生じうる突然変異、あるいはその沈黙突然変異(silent mutation)を除くものではなく、そのような配列追加あるいは突然変異を有する場合にも、本発明の範囲内に属することが自明である。すなわち、一部配列の差があっても、一定レベル以上の配列同一性を示し、GIP受容体に対する活性を示すならば、本発明の範囲に属しうる。具体的には、前記ペプチドは、配列番号1~26のアミノ酸配列と、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むものであり得るが、それらに制限されるものではない。
【0038】
「相同性(homology)」または「同一性(identity)」とは、2つの与えられたアミノ酸配列または塩基配列と、互いに関連する程度を意味し、百分率によっても表される。任意の2つのペプチド配列が、相同性、類似性または同一性を有するか否かということは、例えば、Pearson et al (1988) [Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85]: 2444におけるようなデフォルトパラメータを利用し、「FASTA」プログラムのような公知のコンピュータアルゴリズムを利用しても決定される。または、EMBOSSパッケージのニードルマンプログラム(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice et al., 2000, Trends Genet. 16: 276-277)(バージョン5.0.0またはそれ以後のバージョン)で遂行されるような、ニードルマン・ブンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズム(Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48: 443-453)が使用されて決定されうる(GCGプログラムパッケージ(Devereux, J., et al, Nucleic Acids Research 12: 387 (1984)), BLASTP, BLASTN, FASTA (Atschul, [S.] [F.,] [ET AL, J MOLEC BIOL 215]: 403 (1990); Guide to Huge Computers, Martin J. Bishop, [ED.,] Academic Press, San Diego, 1994及び [CARILLO ETA/.] (1988) SIAM J Applied Math 48: 1073を含む)。例えば、国立生物工学情報データベースセンターのBLASTまたはClustalWを利用し、相同性、類似性または同一性を決定することができる。
【0039】
ペプチドの相同性、類似性または同一性は、例えば、Smith and Waterman, Adv. Appl. Math (1981) 2: 482に公知されているように、例えば、Needleman et al. (1970), J Mol Biol.48: 443のようなGAPコンピュータプログラムを利用し、配列情報を比較することによっても決定される。要約すれば、GAPプログラムは、2つの配列において、さらに短い方における記号の全体数でもって、類似した配列された記号(すなわち、アミノ酸)の数を除した値と定義する。GAPプログラムのためのデフォルトパラメータは、(1)一進法比較マトリックス(同一性のために1の値、そして非同一性のために0の値を含む)、及びSchwartz and Dayhoff, eds., Atlas Of Protein Sequence And Structure, National Biomedical Research Foundation, pp. 353-358 (1979)に開示されているように、Gribskov et al (1986) Nucl. Acids Res. 14: 6745の加重された比較マトリックス(または、EDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックス)、(2)各ギャップのための3.0のペナルティ、及び各ギャップにおける各記号のためのさらなる0.10ペナルティ(または、ギャップ開放ペナルティ10、ギャップ延長ペナルティ0.5)、及び(3)末端ギャップのための無ペナルティを含むものであり得る。従って、本発明で使用されているものとして、用語である「相同性」または「同一性」とは、配列間の関連性(relevance)を示す。
【0040】
一具体例において、多様なペプチド製造のためのさまざまな方法の組み合わせにより、一様相による一般式1のアミノ酸配列を含むペプチドを製造することができる。
【0041】
一態様によるペプチドは、その長さにより、本分野で周知されている方法、例えば、自動ペプチド合成器によって合成することができ、遺伝子操作技術によって生産することもできる。具体的には、前記ペプチドは、標準合成方法、組み換え発現システム、または任意の他の当該分野の方法によっても製造される。従って、一様相によるペプチドは、例えば、下記のところを含む方法を含む多数の方法によっても合成されるが、それらに制限されるものではない:
(a)ペプチドを固相方法または液相方法の手段により、段階的または断片組み立てによって合成し、最終ペプチド生成物を分離及び精製する方法、または
(b)ペプチドをコーディングする核酸作製物を宿主細胞内で発現させ、発現生成物を宿主細胞培養物から回収する方法、または
(c)ペプチドをコーディングする核酸作製物の無細胞試験管内発現を行い、発現生成物を回収する方法、または
(a)、(b)及び(c)の任意の組み合わせによってペプチドの断片を得て、次に、該断片を連結させてペプチドを得て、該ペプチドを回収する方法。
【0042】
また、前記ペプチドの製造は、L-型あるいはD-型のアミノ酸、及び/または非天然型アミノ酸を利用した改変、並びに/または天然型配列の改質、例えば、側鎖作用基の改変、分子内共有結合、例えば、側鎖間環形成、メチル化、アシル化、ユビキチン化、リン酸化、アミノヘキサン化、ビオチン化のように改質することによって改変することをいずれも含む。また、前記改変は、非天然型化合物による置換をいずれも含む。
【0043】
前記改変に利用される、置換されるか、あるいは追加されるアミノ酸は、ヒトタンパク質において一般的に観察される20個のアミノ酸だけではなく、非定形または非自然発生のアミノ酸を使用することができる。非定形アミノ酸の商業的出処には、Sigma-Aldrich、ChemPep及びGenzyme pharmaceuticalsが含まれうるが、それらに制限されるものではない。例えば、Aib(aminoisobutyric acid)は、アセトンから、ストレッカーのアミノ酸合成によっても製造されるが、それに制限されるものではない。そのような非定形または非自然発生のアミノ酸が含まれたペプチドと、定形的なペプチドとの配列は、商業化されたペプチド合成会社、例えば、米国のAmerican Peptide CompanyやBachem、または韓国のAnygenを介して合成及び購入することができるが、それらに制限されるものではない。
【0044】
また、前記ペプチドは、N末端及び/またはC末端が改変されないものであり得るが、生体内のタンパク質切断酵素から保護され、安定性を向上させるために、そのN末端及び/またはC末端が化学的に改変されるか、有機端によって保護されるか、あるいはペプチド末端などにアミノ酸が追加されて改変された形態も、前記様相によるペプチドの範疇に含まれる。C末端が改変されていない場合、ペプチド末端は、自由カルボキシル基を有するが、特別にそれに制限されるものではない。
【0045】
特に、化学的に合成されたペプチドの場合、N末端及びC末端が電荷を帯びているために、そのような電荷を除去するために、N末端及び/またはC末端を改変させることができる。例えば、N末端に対するアセチル化(acetylation)及び/またはC末端に対するアミド化(amidation)を行うことができるが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0046】
一具体例において、前記ペプチドは、そのC末端が改変されていないか、あるいはアミド化されたものであり得るが、それらに制限されるものではない。
【0047】
一具体例において、前記ペプチドは、そのC末端がアミド化されたものであり得る。
【0048】
前記ペプチドは、ペプチドそれ自体、その塩(例えば、前記ペプチドの薬学的に許容可能な塩)、またはその溶媒化物の形態をいずれも含む。
【0049】
前記塩の種類は、特別に制限されるものではない。ただし、個体、例えば、哺乳類に安全であり、効果的な形態であることが望ましいが、特別にそれに制限されるものではない。
【0050】
また、前記ペプチドは、薬学的に許容される任意の形態であり得る。
【0051】
用語「薬学的に許容可能な」とは、治療効果を示しうるほどの十分な量と副作用を起こさないこととを意味し、疾患の種類、患者の年齢・体重・健康・性別、患者の薬物に対する敏感度、投与経路、投与方法、投与回数、治療期間、配合、または同時使用される薬物のように、医学分野に周知されている要素により、当業者によって容易に決定されうる。
【0052】
一具体例において、前記ペプチドは、その薬学的に許容可能な塩の形態であり得る。前記塩は、薬学分野、例えば、肺疾患治療剤分野で使用される一般的な酸付加塩、例えば、塩酸、臭素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸または硝酸のような無機酸から誘導された塩;及び酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、メタンスルホン酸、酒石酸、リンゴ酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、シュウ酸またはトリフルオロ酢酸のような有機酸から誘導された塩を含む。また、前記塩は、アンモニウム、ジメチルアミン、モノメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミンのような塩基付加塩であり得る。また、前記塩は、一般的な金属塩形態、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムまたはカルシウムのような金属から誘導された塩を含む。前記酸付加塩、塩基付加塩または金属塩は、一般的な方法によっても製造される。薬学的に許容可能な塩、及びそれを製造する一般方法論は、関連技術分野に広く公知されている。例えば、文献[P. Stahl, et al. Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection and Use, 2nd Revised Edition (Wiley-VCH, 2011)]; [S.M. Berge, et al., "Pharmaceutical Salts," Journal of Pharmaceutical Sciences, Vol. 66, No. 1, January 1977]を参照することができる。
【0053】
保護されたアミノ酸またはペプチドの縮合のために、ペプチド合成に有用な各種活性化試薬、特に、望ましくは、トリスホスホニウム塩、テトラメチルウロニウム塩、カルボジイミドなどが使用されうる。トリスホスホニウム塩の例は、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、ブロモトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBroP)、7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyAOP)を含み、テトラメチルウロニウム塩の例は、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、2-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TBTU)、2-(5-ノルボルナン-2,3-ジカルボキシイミド)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TNTU)、O-(N-スクシンイミジル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TSTU)を含み、カルボジイミドの例は、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCDI)、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI・HCl)などを含む。それらを利用する縮合のために、ラセミ化阻害剤[例えば、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸イミド(HONB)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)、3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン(HOOBt)、エチル2-シアノ-2-(ヒドロキシイミノ)アセテート(Oxyma)など]の添加が望ましい。縮合に使用される溶媒は、ペプチド縮合反応に有用なものとして公知されたもののうちからも適切に選択される。例えば、無水または水含有のN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンのような酸アミド;塩化メチレン、クロロホルムのようなハロゲン化された炭化水素;トリフルオロエタノール、フェノールのようなアルコール;ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド;ピリジンのような3級アミン;ジオキサン、テトラヒドロフランのようなエーテル;アセトニトリル、プロピオ二トリルのような二トリル;酢酸メチル、酢酸エチルのようなエステル;それらの適切な混合物などが使用されうる。反応温度は、ペプチド結合反応に使用可能であると公知された範囲から適切に選択され、通常約-20℃~90℃の範囲から選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は、通常1.5~6倍過剰に使用される。固相合成において、ニンヒドリン反応を利用する試験が、縮合が不十分であることを示す場合、十分な縮合は、保護基の除去なしに、縮合反応を反復することよっても遂行される。反応を反復した後にも、縮合が以前として不十分である場合、未反応アミノ酸は、酸無水物、アセチルイミダゾールなどによってもアセチル化されるので、後続反応に対する影響が回避されうることになる。
【0054】
出発アミノ酸のアミノ基に係わる保護基の例は、ベンジルオキシカルボニル(Z)、tert-ブトキシカルボニル(Boc)、tert-ペンチルオキシカルボニル、イソボニルオキシカルボニル、4-メトキシベンジルオキシカルボニル、2-クロロベンジルオキシカルボニル(Cl-Z)、2-ブロモベンジルオキシカルボニル(Br-Z)、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2-二トロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、トリチルなどを含む。
【0055】
出発アミノ酸に係わるカルボキシル保護基の例は、前述のC1-6アルキル基、C3-10シクロアルキル基、C7-14アラルキル基以外に、アリール、2-アダマンチル、4-二トロベンジル、4-メトキシベンジル、4-クロロベンジル、フェナシル及びベンジルオキシカルボニルヒドラジド、tert-ブトキシカルボニルヒドラジド、トリチルヒドラジドなどを含む。
【0056】
セリンまたはトレオニンのヒドロキシル基は、例えば、エステル化またはエーテル化によっても保護される。エステル化に適する基の例は、アセチル基のような低級(C2-4)アルカノイル基、ベンゾイル基のようなアロイル基、及び有機酸などに由来する基を含む。また、エーテル化に適する基の例は、ベンジル、テトラヒドロピラニル、tert-ブチル(But)、トリチル(Trt)などを含む。
【0057】
チロシンのフェノール性ヒドロキシル基に係わる保護基の例は、Bzl、2,6-ジクロロベンジル、2-二トロベンジル、Br-Z、tert-ブチルなどを含む。
【0058】
ヒスチジンのイミダゾールに係わる保護基の例は、p-トルエンスルホニル(Tos)、4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル(Mtr)、ジ二トロフェニル(DNP)、ベンジルオキシメチル(Bom)、tert-ブトキシメチル(Bum)、Boc、Trt、Fmocなどを含む。
【0059】
アルギニンのグアジノ基に係わる保護基の例は、Tos、Z、4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル(Mtr)、p-メトキシベンゼンスルホニル(MBS)、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル(Pmc)、メシチレン-2-スルホニル(Mts)、2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル(Pbf)、Boc、Z、NO2などを含む。
【0060】
リシンの側鎖アミノ基に係わる保護基の例は、Z、Cl-Z、トリフルオロアセチル、Boc、Fmoc、Trt、Mtr、4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシルリデニル(Dde)などを含む。
【0061】
トリプトファンのインドリルに係わる保護基の例は、ホルミル(For)、Z、Boc、Mts、Mtrなどを含む。
【0062】
アスパラギン及びグルタミンに係わる保護基の例は、Trt、キサンチル(Xan)、4,4’-ジメトキシベンズヒドリル(Mbh)、2,4,6-トリメトキシベンジル(Tmob)などを含む。
【0063】
出発物質中の活性化されたカルボキシル基の例は、対応する酸無水物、アジド、活性エステル[アルコールとのエステル(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5-トリクロロフェノール、2,4-ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N-ヒドロキシスクシアミド、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt))]などを含む。出発材料内の活性化されたアミノ基の例は、対応するリンアミドを含む。
【0064】
保護基を除去する方法の例は、Pd-ブラックまたはPd-炭素のような触媒の存在下における水素ストリーム中の触媒還元;無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸(TFA)、トリメチルシリルブロミド(TMSBr)、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、テトラフルオロホウ酸、トリス(トリフルオロ)ホウ酸、三臭化ホウ素、またはその混合物溶液を利用した酸処理;ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどを利用した塩基処理;及び液体アンモニア中におけるナトリウムによる還元などを含む。前述の酸処理による除去反応は、一般的に、-20℃~40℃の温度で行われ、酸処理は、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール及びパラクレゾール;ジメチルスルフィド、1,4-ブタンジチオール、1,2-エタンジチオール、トリイソプロピルシランのような陽イオンスカベンジャー(cation scavenger)を添加することにより、効率的に行われる。また、ヒスチジンのイミダゾールの保護基として使用される2,4-ジ二トロフェニル基は、チオフェノール処理によって除去され、トリプトファンのインドールの保護基として使用されるホルミル基は、1,2-エタンジチオール、1,4-ブタンジチオールなどの存在内における酸処理によるものだけではなく、希釈水酸化ナトリウム、希釈アンモニアなどによるアルカリ処理による脱保護によって除去される。
【0065】
出発物質と保護基との反応に関与してはならない作用基の保護、保護基の除去、反応に関与する作用基の活性化などは、公知された保護基、及び公知された手段から、適切に選択されうる。
【0066】
本明細書で言及されたペプチドにつき、左側端部が、一般的なペプチドマーキングにより、N末端(アミノ末端)であり、右側端部が、C末端(カルボキシル末端)である。ペプチドのC末端は、アミド(-CONH2)、カルボキシル基(-COOH)、カルボキシレート(-COO-)、アルキルアミド(-CONHR’(ここで、R’は、アルキルである))、及びエステル(-COOR’(ここで、R’は、アルキルまたはアリールである))のうちいずれか一つであり得る。
【0067】
ペプチドのアミドを製造する方法において、それは、アミド合成のために樹脂を利用する固相合成によって形成されるか、あるいはカルボキシ末端アミノ酸のα-カルボキシル基がアミド化され、ペプチド鎖がアミノ基側に向け、目的とする鎖長に延長され、その後、ペプチド鎖のみのN末端α-アミノ基に係わる保護基が除去されたペプチド、及びC末端カルボキシル基に係わる保護基だけがペプチド鎖から除去されたペプチドが製造され、それら2つのペプチドは、前述の混合された溶媒中で縮合される。縮合反応に係わる詳細につき、前述のようなことが適用される。縮合によって得られた保護されたペプチドが精製された後、全ての保護基が、前述の方法によって除去され、目的とするペプチドを得ることができる。そのペプチドを、主な分画の精製及び凍結乾燥の各種の公開的に公知された手段を利用して精製することにより、ペプチドの目的とするアミドが製造されうる。
【0068】
一具体例において、前記ペプチドは、その溶媒化物の形態であり得る。「溶媒化物」とは、前記ペプチド、またはその塩が、溶媒分子と複合体を形成したものを意味する。
【0069】
一具体例において、前記ペプチドは、持続型結合体の形態であり得る。前記結合体は、天然型GIPと同等であるか、あるいはそれ以上のGIP受容体に対する活性を示すと共に、キャリア(または、生体適合性物質)が結合されていない天然型GIPまたはGIP誘導体に比べて向上された効力の持続性を示しうる。従って、前記結合体は、持続型結合体であり得る。用語「持続型結合体」とは、生体適合性物質が結合されていない天然型GIPまたはGIP誘導体に比べ、効力の持続性が増大された結合体を意味する。従って、前記結合体は、「持続型GIP誘導体結合体」、「持続型GIP誘導体」または「持続型GIP結合体」とも称される。そのような結合体は、前述の形態だけではなく、生分解性ナノパーティクルに封入された形態などをいずれも含む。
【0070】
前記結合体は、分離された結合体であり得る。
【0071】
前記結合体は、非自然的に生じる(non-naturally occurring)ものであり得る。
【0072】
一具体例において、前記ペプチドは、生体内半減期を延長させる生体適合性物質が結合された結合体の形態であり得る。従って、前記薬学的組成物は、前記GIP誘導体と、生体内半減期を延長させる生体適合性物質とが結合された結合体を含むものであり得る。前記生体適合性物質は、キャリア(carrier)とも混用される。
【0073】
前記生体適合性物質は、前記GIP誘導体と、共有化学結合または非共有化学結合によって互いに結合されるものでもあり、共有化学結合、非共有化学結合、またはそれらの組み合わせにより、リンカー(L:linker)を介し、互いに結合されるものであり得る。GIP誘導体内の1以上のアミノ酸側鎖は、生体内において、可溶性及び/または半減期を増大させ/させるか、あるいは生体利用率を上昇させるために、そのような生体適合性物質にも接合される。そのような改変は、また治療学的タンパク質及びペプチドの消去(clearance)を低減させることができる。前述の生体適合性物質は、水溶性(両親媒性または親水性)及び/または無毒性、及び/または薬学的に許容可能なものであり得る。
【0074】
前記生体適合性物質は、高分子重合体、脂肪酸、コレステロール、アルブミン及びその断片、アルブミン結合物質、特定アミノ酸配列の繰り返し単位の重合体、抗体、抗体断片、FcRn結合物質、生体内結合組織、ヌクレオチド、フィブロネクチン、トランスフェリン(transferrin)、糖類(saccharide)、ヘパリン、及びエラスチンによって構成された群のうちから選択されるものであり得るが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0075】
前記高分子重合体の例として、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール・プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖類、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン、ヒアルロン酸、オリゴヌクレオチド、及びそれらの組み合わせによって構成された群のうちから選択される高分子重合体を挙げることができ、前記多糖類としては、デキストランが含まれうる、特別にそれらに制限されるものではない。
【0076】
前記ポリエチレングリコールは、エチレングリコール同種重合体、PEG共重合体、またはモノメチル置換されたPEG重合体(mPEG)の形態をいずれも包括する用語であるが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0077】
前記脂肪酸は、生体内アルブミンと結合力を有するものであり得るが、特別にそれに制限されるものではない。
【0078】
前記生体適合性物質は、ポリリシン、ポリアスパラギン酸及びポリグルタミン酸のようなポリアミノ酸を含むが、それらに制限されるものではない。
【0079】
前記エラスチンの場合、水溶性前駆体であるヒトトロポエラスチン(tropoelastin)でもあり、それらのうち一部配列あるいは一部繰り返し単位の重合体でもあり、例えば、エラスチン類似ポリペプチドである場合をいずれも含むが、特別にそれに制限されるものではない。
【0080】
一具体例において、前記生体適合性物質は、FcRn結合物質であり得る。具体的には、前記FcRn結合物質は、免疫グロブリンFc領域でもあり、さらに具体的には、IgG Fc領域、さらに具体的には、非糖鎖化されたIgG4 Fc領域であり得るが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0081】
「免疫グロブリンFc領域」とは、免疫グロブリンの重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを除いた、重鎖不変領域2(CH2)部分及び/または重鎖不変領域3(CH3)部分を含む部位を意味する。前記免疫グロブリンFc領域は、一様相による結合体のモイエティをなす一構成であり得る。
【0082】
そのような免疫グロブリンFc領域は、重鎖不変領域にヒンジ(hinge)部分を含むものであり得るが、それに制限されるものではない。
【0083】
一具体例において、免疫グロブリンFc領域は、N末端に特定ヒンジ配列を含むものであり得る。
【0084】
用語「ヒンジ配列」とは、重鎖に位置し、内部二硫化結合(inter disulfide bond)を介し、免疫グロブリンFc断片の二量体を形成する部位を意味する。
【0085】
一具体例において、前記ヒンジ配列は、下記のアミノ酸配列を有するヒンジ配列のうち一部が欠失され、1つのシステイン残基のみを有するように変異されたものであり得るが、それに制限されるものではない:
【0086】
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号27)
【0087】
前記ヒンジ配列は、配列番号27のヒンジ配列において、8番目または11番目のシステイン残基が欠失され、1つのシステイン残基のみを含むものであり得る。一具体例によるヒンジ配列は、1つのシステイン残基のみを含む、3~12個のアミノ酸によって構成されたものであり得るが、それに制限されるものではない。さらに具体的には、一具体例によるヒンジ配列は、次のような配列を有しうる:
【0088】
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号28)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Pro(配列番号29)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser(配列番号30)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Pro(配列番号31)、Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser(配列番号32)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号33)、Glu-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号34)、Glu-Ser-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号35)、Glu-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号36)、Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号37)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号38)、Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号39)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号40)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号41)、Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro(配列番号42)、Glu-Ser-Lys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号43)、Glu-Ser-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号44)、Glu-Pro-Ser-Cys(配列番号45)、Ser-Cys-Pro(配列番号46)。
【0089】
さらに具体的には、前記ヒンジ配列は、配列番号37(Pro-Ser-Cys-Pro)または配列番号46(Ser-Cys-Pro)のアミノ酸配列を含むものであり得るが、それらに制限されるものではない。
【0090】
一具体例による免疫グロブリンFc領域は、ヒンジ配列の存在により、免疫グロブリンFc鎖2つの分子が二量体を形成した形態であり得る。また、一具体例による化学式1の結合体は、リンカーの一末端が、二量体の免疫グロブリンFc領域の1つの鎖に連結された形態であり得るが、それに制限されるものではない。
【0091】
用語「N末端」とは、タンパク質またはポリペプチドのアミノ末端を意味するものであり、アミノ末端の最末端、または最末端から、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個以上のアミノ酸まで含むものであり得る。本発明の免疫グロブリンFc断片は、ヒンジ配列をN末端に含むものであり得るが、それに制限されるものではない。
【0092】
また、前記免疫グロブリンFc領域は、天然型と実質的に同等であるか、あるいは向上された効果を有する限り、免疫グロブリンの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のみを除き、一部または全体の重鎖不変領域1(CH1)及び/または軽鎖不変領域1(CL1)を含む拡張されたFc領域であり得る。また、CH2及び/またはCH3に該当するかなり長い一部アミノ酸配列が除去された領域であり得る。
【0093】
例えば、前記免疫グロブリンFc領域は、(a)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン;(b)CH1ドメイン及びCH2ドメイン;(c)CH1ドメイン及びCH3ドメイン;(d)CH2ドメイン及びCH3ドメイン;(e)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメインのうち、1個または2個以上のドメインと、免疫グロブリンヒンジ領域またはヒンジ領域の一部との組み合わせ;並びに(f)重鎖不変領域各ドメインと軽鎖不変領域との二量体によって構成された群のうちからも選択されるが、それらに制限されるものではない。
【0094】
前記免疫グロブリンFc領域は、二量体形態(dimeric form)でもあり、該二量体形態の1つのFc領域に、GIP誘導体1分子が共有結合的に連結されき、この場合、前記免疫グロブリンFcとGIP誘導体は、非ペプチド性重合体によっても互いに連結される。一方、該二量体形態の1つのFc領域に、GIP誘導体2つの分子が対称的に結合することも可能である。この場合、前記免疫グロブリンFcとGIP誘導体は、非ペプチド性リンカーによっても互いに連結されえる。しかしながら、前述の例に制限されるものではない。
【0095】
また、前記免疫グロブリンFc領域は、天然型アミノ酸配列だけではなく、その配列誘導体を含む。アミノ酸配列誘導体とは、天然アミノ酸配列のうち1以上のアミノ酸残基が、欠失、挿入、非保存的または保存的な置換、またはそれらの組み合わせにより、異なる配列を有するものを意味する。
【0096】
例えば、IgG Fcの場合、結合に重要であると知られた214~238番、297~299番、318~322番、または327~331番のアミノ酸残基が、改変のために適切な部位としても利用される。また、二硫化結合を形成することができる部位が除去されるか、あるいは天然型Fcにおいて、N末端のいくつかのアミノ酸が除去されるか、あるいは天然型FcのN末端に、メチオニン残基が付加しうるというように、多様な種類の誘導体が可能である。また、エフェクタ機能をなくすために、補体結合部位、例えば、C1q結合部位が除去され、ADCC(antibody dependent cell mediated cytotoxicity)部位が除去されうる。そのような免疫グロブリンFc領域の配列誘導体を製造する技術は、国際特許公開WO97/34631号、国際特許公開WO96/32478号などに開示されている。
【0097】
分子の活性を全体的に改変させないタンパク質及びペプチドにおけるアミノ酸交換は、当該分野に公知されている(H.Neurath, R.L.Hill, The Proteins, Academic Press, New York, 1979)。最も一般的に起こる交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、糖化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)、アセチル化(acetylation)及びアミド化(amidation)などにより、改変(modification)されてもいい。
【0098】
前述のFc誘導体は、前記Fc領域と同等な生物学的活性を示し、Fc領域の熱、pHなどに対する構造的安定性を増大させたものであり得る。
【0099】
また、そのようなFc領域は、ヒト、牛、ヤギ、豚、マウス、ラビット、ハムスター、ラットまたはギニアピッグのような動物の生体内で分離された天然型からも得られ、形質転換された動物細胞、または微生物から得られた組み換え型、またはその誘導体であり得る。ここで、天然型から獲得する方法は、全体免疫グロブリンを、ヒトまたは動物の生体から分離した後、タンパク質分解酵素を処理して獲得する方法であり得る。パパインを処理する場合には、Fab及びFcで切断し、ペプシンを処理する場合には、pF’c及びF(ab)2で切断する。それをサイズ排除クロマトグラフィ(size-exclusion chromatography)などを利用し、FcまたはpF’cを分離することができる。さらに具体的な実施例においては、ヒト由来のFc領域を微生物から得た組み換え型免疫グロブリンFc領域である。
【0100】
また、免疫グロブリンFc領域は、天然型糖鎖、天然型に比べて増大された糖鎖、天然型に比べて低減した糖鎖、または糖鎖が除去された形態であり得る。そのような免疫グロブリンFc糖鎖の増減または除去には、化学的方法、酵素学的方法、及び微生物を利用した遺伝工学的方法のような一般的な方法が利用されうる。ここで、Fcで糖鎖が除去された免疫グロブリンFc領域は、補体(c1q)との結合力が顕著に低下され、抗体依存性細胞毒性または補体依存性細胞毒性が低減または除去されるので、生体内において、不要な免疫反応を誘発しない。そのような点において、薬物のキャリアとしての本来の目的にさらに符合する形態は、糖鎖が除去されるか、あるいは非糖鎖化された免疫グロブリンFc領域といえる。
【0101】
「糖鎖の除去(deglycosylation)」とは、酵素から糖を除去したFc領域を言い、非糖鎖化(aglycosylation)は、原核動物、さらに具体的な実施例においては、大腸菌で生産され、糖鎖化されていないFc領域を意味する。
【0102】
また、免疫グロブリンFc領域は、IgG,IgA,IgD,IgE,IgM由来、それらの組み合わせ(combination)、またはそれらの混成(hybrid)によるFc領域であり得る。さらに具体的な実施例においては、ヒト血液に最も豊富であるIgG由来またはIgM由来であり、一層具体的な実施例においては、リガンド結合タンパク質の半減期を向上させると公知されたIgG由来である。さらに一層具体的な実施例において、前記免疫グロブリンFc領域は、IgG4 Fc領域であり、最も具体的な実施例において、前記免疫グロブリンFc領域は、ヒトIgG4由来の非糖鎖化されたFc領域であるが、それに制限されるものではない。
【0103】
「組み合わせ(combination)」とは、二量体または多量体を形成するとき、同一起源一本鎖免疫グロブリンFc領域を暗号化するポリペプチドが、異なる起源の一本鎖ポリペプチドと結合を形成することを意味する。すなわち、IgG Fc、IgA Fc、IgM Fc、IgD Fc及びIgEのFc断片によってなるグループのうちから選択された2個以上の断片から、二量体または多量体の製造が可能である。
【0104】
前記GIP誘導体は、リンカーを介し、生体適合性物質と連結されうる。
【0105】
前記リンカーは、ペプチド性リンカーまたは非ペプチド性リンカーであり得る。
【0106】
前記リンカーがペプチド性リンカーであるとき、1個以上のアミノ酸を含むものでもあり、例えば、1個から1,000個のアミノ酸を含むものであり得るが、特別にそれに制限されるものではない。前記ペプチド性リンカーは、Gly,Asn及びSer残基を含むものでもあり、Thr及びAlaのような中性アミノ酸も含まれうる。前記生体適合性物質とGIP誘導体とを連結するために、公知の多様なペプチドリンカーが使用されうる。また、機能的一部分間の適切な分離を達成するため、あるいは必須な内部モイエティ(inter-moiety)の相互作用を維持するためのリンカー最適化を考慮し、コピー数「n」を調節することができる。当該技術分野において、他の可撓性リンカーが知られているが、例えば、水溶性を向上させるために、極性アミノ酸残基を追加するだけではなく、柔軟性を維持させるために、T及びAのようなアミノ酸残基を追加したGリンカー及びSリンカーがありうる。従って、一具体例において、前記リンカーは、G,S及び/またはT残基を含む柔軟性リンカーであり得る。前記リンカーは、(GpSs)n及び(SpGs)nから選択される一般式を有することができ、その場合、独立して、pは、1~10の整数であり、s=0~10の0または整数であり、p+sは、20以下の整数であり、nは、1~20の整数である。さらに具体的には、リンカーの例は、(GGGGS)n、(SGGGG)n、(SRSSG)n、(SGSSC)n、(GKSSGSGSESKS)n、(RPPPPC)n、(SSPPPPC)n、 (GSTSGSGKSSEGKG)n、(GSTSGSGKSSEGSGSTKG)n、(GSTSGSGKPGSGEGSTKG)nまたは(EGKSSGSGSESKEF)nであり、前記nは、1~20、または1~10の整数である。
【0107】
前記「非ペプチド性リンカー」とは、繰り返し単位が2個以上結合された生体適合性重合体を含む。前記繰り返し単位は、ペプチド結合ではない任意の共有結合を介して互いに連結される。前記非ペプチド性リンカーは、前記結合体のモイエティをなす一構成であり得る。
【0108】
前記「非ペプチド性リンカー」とは、「非ペプチド性重合体」と混用されて使用されうる。
【0109】
一具体例において、前記結合体は、両末端に、生体適合性物質、具体的には、免疫グロブリンFc領域、及びGIP誘導体と結合されうる反応基を含む非ペプチド性リンカーを介し、生体適合性物質と、GIP誘導体が互いに共有結合的に連結されたものであり得る。
【0110】
具体的には、前記非ペプチド性リンカーは、脂肪酸、糖類(saccharide)、高分子重合体、低分子化合物、ヌクレオチド、及びそれらの組み合わせによって構成された群のうちから選択されるものであり得る。
【0111】
特別にこれらに制限されるものではないが、前記非ペプチド性リンカーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール・プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖類、ポリビニルエチルエーテル、PLA(polylactic acid)及びPLGA(polylactic-glycolic acid)のような生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸、オリゴヌクレオチド、並びにそれらの組み合わせによって構成された群のうちから選択されるものであり得る。前記多糖類は、デキストランでもあるが、それに制限されるものではない。
【0112】
さらに具体的な実施形態において、前記非ペプチド性重合体は、ポリエチレングリコールであり得るが、それに制限されるものではない。従って、前記リンカーは、エチレングリコール繰り返し単位を含むものであり得る。また、当該分野に周知であるそれら誘導体、及び当該分野の技術レベルで容易に製造することができる誘導体も、本発明の範囲に含まれる。
【0113】
前記非ペプチド性リンカーは、生体内タンパク質分解酵素に抵抗性ある重合体であるならば、制限なしに使用されうる。非ペプチド性重合体の化学式量は、1~1,000kDa範囲、具体的には、1~100kDa範囲、さらに具体的には、1~20kDa範囲であるが、それらに制限されるものではない。また、前記非ペプチド性リンカーは、一種類の重合体だけではなく、異なる種類の重合体の組み合わせが使用されうる。一具体例において、前記エチレングリコール繰り返し単位部分の化学式量は、1~100kDa範囲、さらに具体的には、1~20kDa範囲にあるものであり得る。
【0114】
一具体例において、前記非ペプチド性リンカーの両末端は、それぞれ生体適合性物質、例えば、免疫グロブリンFc領域のアミン基またはチオール基、及びGIP誘導体のアミン基またはチオール基に結合することができる。
【0115】
具体的には、前記非ペプチド性重合体は、両末端に、それぞれ生体適合性物質(例えば、免疫グロブリンFc領域)、及びGIP誘導体と結合されうる反応基、具体的には、GIP誘導体、あるいは生体適合性物質(例えば、免疫グロブリンFc領域)のN末端またはリシンに位置したアミン基、またはシステインのチオール基と結合されうる反応基を含むものであり得るが、それらに制限されるものではない。
【0116】
また、生体適合性物質、例えば、免疫グロブリンFc領域及びGIP誘導体と結合されうる、前記非ペプチド性重合体の反応基は、アルデヒド基、マレイミド基及びスクシンイミド誘導体によって構成された群のうちからも選択されるが、それらに制限されるものではない。前述のところにおいて、アルデヒド基として、プロピオンアルデヒド基またはブチルアルデヒド基を例として挙げることができるが、それらに制限されるものではない。前述のところにおいて、スクシンイミド誘導体としては、スクシンイミジルバレレート、スクシンイミジルメチルブタノエート、スクシンイミジルメチルプロピオネート、スクシンイミジルブタノエート、スクシンイミジルプロピオネート、N-ヒドロキシスクシンイミド、ヒドロキシスクシンイミジル、スクシンイミジルカルボキシメチルまたはスクシンイミジルカボネートが利用されうるが、それらに制限されるものではない。
【0117】
また、アルデヒド結合による還元性アルキル化によって生成された最終産物は、アミド結合で連結されたものよりはるかに安定している。アルデヒド反応基は、低いpHにおいて、N末端に選択的に反応し、高いpH、例えば、pH9.0条件においては、リシン残基と共有結合を形成することができる。
【0118】
また、前記非ペプチド性リンカーの両末端の反応基は、互いに同一であるか、あるいは互いに異なるものでもあり、例えば、一方末端には、マレイミド基を有し、他方末端には、アルデヒド基、プロピオンアルデヒド基またはブチルアルデヒド基を有しうる。しかしながら、非ペプチド性リンカーの各末端に、生体適合性物質、具体的には、免疫グロブリンFc領域とGIP誘導体とが結合されることができるものであるならば、特別にそれらに制限されるものではない。例えば、前記非ペプチド性リンカーの一方末端には、反応基としてマレイミド基を含み、他方末端には、アルデヒド基、プロピオンアルデヒド基またはブチルアルデヒド基などを含むものであり得る。
【0119】
両末端に、ヒドロキシ反応基を有するポリエチレングリコールを、非ペプチド性重合体として利用する場合には、公知の化学反応により、前記ヒドロキシ基を、前記多様な反応基に活性化させるか、あるいは商業的に入手可能な改変された反応基を有するポリエチレングリコールを利用し、前記持続型結合体を製造することができる。
【0120】
一具体例において、前記非ペプチド性重合体は、GIP誘導体のシステイン残基、さらに具体的には、システインの-SH基に連結されるものであり得るが、それに制限されるものではない。
【0121】
もしマレイミド-PEG-アルデヒドを使用する場合、マレイミド基は、GIP誘導体の-SHとチオエーテル(thioether)結合で連結し、アルデヒド基は、生体適合性物質、具体的には、免疫グロブリンFcの-NH2と還元的アルキル化反応を介して連結することができるが、それに制限されず、それは、一例に該当する。
【0122】
また、前記結合体において、非ペプチド性重合体の反応基が、免疫グロブリンFc領域のN末端に位置した-NH2と連結されたものであり得るが、それは、一例に該当する。
【0123】
従って、前記一様相による結合体は、下記化学式1で表されうる:
【0124】
【0125】
ただし、ここに、Xは、GIP誘導体であり、
Lは、リンカーであり、
Fは、Xの生体内半減期を延長させる生体適合性物質であり、
-は、XとLとの結合連結、LとFとの結合連結を示す。
前記化学式1で、GIP誘導体、リンカー及び生体適合性物質については、前述の通りである。
前記化学式1で、Lは、Laでもあり、ここで、aは、0または自然数であり、ただし、aが2以上であるとき、それぞれのLは、互いに独立してもいる。
【0126】
具体的には、前記リンカーは、下記化学式2で表されるポリエチレングリコール(PEG)であり得るが、それに制限されるものではない:
【0127】
【0128】
ここで、n=10~2,400、n=10~480、またはn=50~250であるが、それらに制限されるものではない。
【0129】
前記持続型結合体においてPEGモイエティは、-(CH2CH2O)n-構造だけではなく、連結要素とそれ-(CH2CH2O)n-間に介在する酸素原子も含むものであり得るが、それに制限されるものではない。
【0130】
前記ポリエチレングリコールは、エチレングリコール同種重合体、PEG共重合体、またはモノメチル置換されたPEG重合体(mPEG)の形態をいずれも包括する用語であるが、特別にそれに制限されるものではない。
【0131】
一具体例において、前記-は、XとLとの共有結合、LとFとの共有結合連結を示しうる。
【0132】
前記GIP誘導体、またはその結合体は、大食細胞に作用し、炎症関連サイトカインIL-6,IL-12/23 p40,IL-1β及びTNF-αを抑制することにより、抗炎症効果を示し、肺胞上皮細胞の炎症関連遺伝子IL-6,IL-12,TNF-αを抑制して抗炎症効果を示し、肺胞上皮細胞の上皮間葉転換(EMT)を抑制することにより、肺線維化を改善させることができるということを確認した。また、インビボ(in vivo)においても、持続型GIP誘導体が、肺の炎症、及び肺気腫を改善させることができるということを確認した。
【0133】
具体的には、前記薬学的組成物は、下記のうちいずれか1以上の効果を有するものであり得る:
(i)i肺の炎症抑制;
(ii)肺胞上皮細胞の上皮間葉転換(EMT)の抑制;及び
(iii)肺気腫の改善
【0134】
前記肺の炎症抑制は、炎症関連サイトカインIL-6,IL-12/23 p40、IL-1β及びTNF-αのうちいずれか1以上を抑制させることによるものであり得る。前記肺の炎症抑制は、肺胞上皮細胞において、炎症関連遺伝子IL-6,IL-12及びTNF-αのうちいずれか1以上を抑制させることによるものであり得る。
【0135】
また、前記薬学的組成物は、肺胞上皮細胞の上皮間葉転換(EMT)を抑制することにより、肺線維化を改善させることができる。
【0136】
従って、前記GIP誘導体、またはその結合体は、肺疾患の予防または治療の用途、例えば、肺の炎症、肺線維化、肺気腫と係わる肺疾患の予防または治療の用途として使用されうる。
【0137】
用語「予防」とは、前記組成物の投与により、肺疾患の発病を抑制または遅延させる全ての行為を意味する。
【0138】
用語「治療」とは、前記組成物の投与により、肺疾患の症状が好転するか、あるいは望ましくなる全ての行為を意味する。
【0139】
前記「肺疾患(lung diseases)」とは、肺、気管支、またはそれらの組み合わせによって生じた疾患を意味する。一具体例において、前記肺疾患は、肺の炎症、肺線維化、肺気腫、またはそれらの2以上の組み合わせを発病メカニズムとする疾患であり得る。例えば、前記肺疾患は、間質性肺疾患、進行性線維化間質性肺疾患、特発性間質性肺炎、非特異性間質性肺炎、肺線維症、間質性肺線維症、特発性肺線維症、肺胞炎、肺炎、肺気腫、気管支炎、喘息、肺線維化症・肺気腫複合疾患(CPFE)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及びコロナウイルス感染症19(COVID-19)によって構成された群のうちから選択された1以上のものであり得るが、それらに制限されるものではない。
【0140】
前記「間質性肺疾患(ILD:interstitial lung disease)」とは、肺間質部の増殖と共に、多様な炎症細胞の浸潤、及びときには、線維化が伴われ、異常なコラーゲン沈着を示す疾患の総称である。前記間質性肺疾患は、進行性線維化間質性肺疾患を含む。
【0141】
前記「特発性間質性肺炎(IIP:idiopathic interstitial pneumonia)」とは、肺胞壁が炎症を起こして線維化され、呼吸困難が生じる疾病である。
【0142】
前記「非特異性間質性肺炎(NSIP:non-specific interstitial pneumonia)」とは、特発性間質性肺炎の一類型であり、特発性間質性肺炎患者において、病理学的に、通常間質性肺炎(UIP:usual interstitial pneumonia)、剥離性間質性肺炎(DIP:desquamative interstitial pneumonia)、特発性器質化肺炎(COP:cryptogenic organizing pneumonia)、急性間質性肺炎(AIP:acute interstitial pneumonia)のうちいずれの類型にも分類することができない間質性肺炎を意味する。
【0143】
前記「肺線維症(pulmonary fibrosis)」とは、肺組織が損傷されて傷つ基、厚くて硬く変性され、肺が正常に作動しない疾患である。前記肺線維症は、間質性肺線維症、特発性肺線維症などを含むものであり得る。
【0144】
前記「肺胞炎(alveolitis)」とは、肺胞に生ずる炎症を意味する。
【0145】
前記「肺炎(pneumonia)」とは、末梢気管支や肺胞などによってなる肺実質に生じる炎症性呼吸器疾患を意味する。
【0146】
前記「肺気腫(emphysema)」とは、末梢気道部位肺胞の破壊と、不規則的な拡張とを示す状態を意味する。前記肺気腫は、慢性閉塞性肺疾患の一原因である。肺気腫の原因のうち最も有意の危険因子は、喫煙であり、職業性粉塵、化学物質、室内外大気汚染なども関連性がある。
【0147】
前記「気管支炎(bronchitis)」とは、肺の気管支に生じる炎症である。前記気管支炎は、急性気管支炎及び慢性気管支炎に分類される。一具体例において、前記気管支炎は、慢性気管支炎であり得る。
【0148】
前記「喘息(asthma)」とは、特定誘発原因物質に露出されたとき、気管支の炎症により、気管支がはなはだしく細くなり、咳、呼吸困難のような症状が反復的に生じる疾患である。
【0149】
前記「肺線維化症・肺気腫複合疾患(CPFE:combined pulmonary fibrosis and emphysema)」とは、肺線維化症と肺気腫とが伴われる疾患である。
【0150】
前記「慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)」とは、タバコ、大気汚染または毒性吸入物質により、肺の異常な炎症反応によって気道が細くなりながら、徐々に気道閉塞が起こる疾患を意味し、大きく見て、慢性気管支炎と肺気腫とを特徴とする。
【0151】
前記「コロナウイルス感染症(coronavirus disease)」とは、コロナウイルスによって感染される感染性疾患である。前記コロナウイルス感染症は、コロナウイルス感染症19であり得るが、それに制限されるものではない。前記「コロナウイルス感染症19(COVID-19)」とは、重度急性呼吸器症侯群コロナウイルス2(SARS-CoV-2:severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)によって感染される感染性疾患である。COVID-19は、感染者の飛沫(唾液滴)が、呼吸器や目、鼻または口の粘膜に浸透されるときに伝染されうる。COVID-19は、発熱、倦怠感、咳、呼吸困難、肺炎、痰、咽喉痛、頭痛、喀血及び悪心、または下痢の症状が示されうる。一具体例において、前記肺疾患は、COVID-19による肺炎(肺の炎症)または肺線維症であり得る。
【0152】
前記薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含むものであり得る。薬学的に許容される担体は、経口投与時には、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素及び香料などを使用することができ、注射剤の場合には、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤及び安定化剤などを混合して使用することができ、局所投与用の場合には、基剤、賦形剤、潤滑剤及び保存剤などを使用することができる。
【0153】
一具体例において、前記薬学的組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含むものであり得る。
【0154】
前記薬学的組成物の剤形は、前述のところのような薬学的に許容可能な担体と混合されて多様に製造されうる。例えば、経口投与時には、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ及びウェーハなどの形態に製造することができ、注射剤の場合には、単位投薬アンプルまたは多数回投薬形態に製造することができる。それ以外にも、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル及び徐放性製剤などにも剤形化される。
【0155】
なお、製剤化に適する担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、澱粉、アカシア、アルジネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウムまたは鉱物油などが使用されうる。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤及び防腐剤などをさらに含むものであり得る。
【0156】
前記薬学的組成物は、肺疾患を治療するための1以上の他の製剤をさらに含むものであり得る。具体的には、前記他の製剤は、抗炎症剤または免疫抑制剤であり得るが、それらに制限されるものではない。さらに具体的には、前記他の製剤は、肺疾患治療剤であり得るが、それに制限されるものではない。
【0157】
「抗炎症剤」とは、炎症性疾患、またはそれと係わる症状の治療のための化合物を称する。該抗炎症剤は、非制限的例として、非ステロイド性抗炎症性薬物(NSAID)(例:アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、サリチル酸メチル、ジフルニサル、インドメタシン、スリンダク、ジクロフェナック、ケトプロフェン、ケトロラック、カプロフェン、フェノプロフェン、メフェナム酸、ピロキシカム、メロキシカム、メトトレキサート、セレコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブ及びニメスリド)、副腎皮質ステロイド(例:プレドニゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、コルチゾン、デックサメタソン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン及びフルチカゾン)、ラパマイシン(例:文献[Migita et al.、Clin. Exp. Immunol. (1997) 108: 199-203]; [Migita et al., Clin. Exp. Immunol. (1996) 104: 86-91]; [Foroncewicz et al., Transpl. Int. (2005) 18: 366-368]参照)、高密度脂質タンパク質(HDL)及びHDLコレステロール上昇化合物(例:文献[Birjmohun et al. (2007) Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol., 27:1153-1158]; [Nieland et al. (2007) J. Lipid Res., 48:1832-1845];抗炎症剤として、ロジグリタゾンの用途を開示した[Bloedon et al. (2008) J. Lipid Res., Samaha et al. (2006) Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol., 26:1413-1414]、[Duffy et al. (2005) Curr. Opin. Cardiol., 20:301-306]参照)、rhoキナーゼ抑制剤(例:文献[Hu, E. (2006) Rec. Patents Cardiovasc. Drug Discov., 1: 249-263参照)、抗マラリア剤(例:ヒドロキシクロロキン及びクロロキン)、アセトアミノフェン、糖質コルチコイド、ステロイド、ベータ-作用剤、抗コリン剤、メチルキサンチン、金注入(例:金チオリンゴ酸ナトリウム)、スルファサラジン、ペニシラミン、抗血管形成剤、デプソン、ソラレン、抗ウイルス剤、スタチン(例:文献[Paraskevas et al. (2007) Curr. Pharm. Des., 13: 3622-36]; [Paraskevas, K.I. (2008) Clin. Rheumatol. 27: 281-287] 参照)、及び抗生物質(例:テトラサイクリン)を含む。特定具体例において、抗炎症剤は、スタチンまたは高密度脂質タンパク質(HDL)、及びHDLコレステロール上昇化合物である。
【0158】
「免疫抑制剤」及び「免疫抑制性製剤」とは、免疫反応、またはそれと係わる症状を抑制する化合物または組成物を含む。該免疫抑制剤は、非制限的例として、プリン類似体(例:アザチオプリン)、メトトレキサート、シクロスポリン(例:シクロスポリンA)、シクロホスファミド、レフルノミド、ミコフェノレート(ミコフェノール酸モフェチル)、ステロイド(例:糖質コルチコイド、副腎皮質ステロイド)、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、非ステロイド性抗炎症性薬物(NSAID)、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、クロラムブシル、CD20拮抗剤(例:リツキシマブ、オクレリズマブ、ベルツズマブまたはオファツムマブ)、アバタセプト、TNF拮抗剤(例:インフリキシマブ、アダリムマブ、エタネルセプト)、マクロライド(例:ピメクロリムス、タクロリムス(FK506)及びシロリムス)、ジヒドロエピアンドロステロン、レナリドミド、CD40拮抗剤(例:抗CD40L抗体)、アベチムスナトリウム、BLys拮抗剤(例:抗BLyS(例:ベリムマブ))、ダクチノマイシン、ブシラミン、ペニシラミン、レフルノミド、メルカプトプリン、ピリミジン類似体(例:シトシンアラビノシド)、ミゾリビン、アルキル化剤(例:窒素マスタード、フェニルアラニンマスタード、ブスルファン及びシクロホスファミド)、葉酸拮抗剤(例:アミノプテリン及びメトトレキサート)、抗生物質(例:ラパマイシン、アクチノマイシンD、ミトマイシンC、フラマイシン及びクロラムフェニコール)、ヒトIgG、抗リンパ球グロブリン(ALG)、抗体(例:抗CD3(OKT3)、抗CD4(OKT4)、抗CD5、抗CD7、抗IL-2受容体(例:ダクリズマブ及びバシリキシマブ)、抗アルファ/ベータTCR、抗ICAM-1、ムロモナブ-CD3、抗IL-12、アレムツズマブ及び免疫毒素に対する抗体)、1-メチルトリプトファン、並びにその誘導体及び類似体を含む。特定具体例において、免疫抑制剤は、メトトレキサート、ヒドロキシクロロキン、CD20拮抗剤(例:リツキシマブ、オクレリズマブ、ベルツズマブまたはオファツムマブ)、アバタセプト、TNF拮抗剤(例:インフリキシマブ、アダリムマブ、エタネルセプト)、シロリムス、及びBLyS拮抗剤(例:抗BLyS(例:ベリムマブ))によって構成された群のうちから選択される。
【0159】
「肺疾患治療剤」とは、肺疾患と係わる症状を抑制するか、あるいはそれを治療する化合物または組成物を含む。前記肺疾患治療剤は、公知の物質を使用することができる。例えば、前記肺疾患治療剤は、ロフルミラスト(roflumilast)などであり得る。
【0160】
前記薬学的組成物の投与量と回数は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢・性別及び体重、疾患の重症度のようなさまざまな関連因子と共に、活性成分である薬物の種類によって決定される。
【0161】
前記薬学的組成物は、生体内持続性及び力価にすぐれているので、投与回数及び投与頻度を顕著に低減させることができる。
【0162】
他の態様は、有効量の前記GIP誘導体、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、または前記結合体、あるいは前記薬学的組成物を、それを必要とする個体に投与する段階を含む、肺疾患を予防または治療する方法を提供する。
【0163】
前記GIP誘導体、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、前記結合体、前記薬学的組成物、及び肺疾患については、前述の通りである。
【0164】
「有効量」または「薬学的有効量」とは、患者に、単一用量または多回用量で投与されたとき、診断下または治療下において、患者において所望する効果を提供する、前記GIP誘導体、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、またはその結合体の量または用量を称する。該有効量は、公知技術を使用したり、類似環境下で得た結果を観察したりすることにより、関連技術分野の一般的な技術者であり、主治医の診断により、容易に決定されうる。患者に対する有効量を決定するとき、哺乳動物種;その大きさ、年齢、及び一般的な健康状態;連累する具体的な疾患または障害;疾患または障害の連累程度または重症度;個別患者の反応;投与される特定化合物;投与モード;投与される製剤の生体利用性特徴;選択された投薬療法;同時薬物処置使用;及び他の関連環境を含むが、それらに制限されるものではない多数の因子が主治医の診断によって考慮される。
【0165】
「個体」とは、疾患の治療を必要とする対象を意味し、さらに具体的には、ヒト、または非ヒトである霊長類、マウス(mouse)、鼠(rat)、犬、猫、馬及び牛のような哺乳類を意味する。
【0166】
「投与」とは、ある適切な方法により、患者に所定物質を導入させることを意味する。投与経路は、患者の生体内標的に逹しうるいかなる一般的な経路であり得る。前記投与は、例えば、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、非内投与、直腸内投与であり得るが、それらに制限されるものではない。
【0167】
投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢・体重・性別、病的状態、飲食物、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因により、多様に処方され、当業者であるならば、そのような要因を考慮し、投与量を適切に調節することができる。投与回数は、1日1回、または臨床的に容認可能な副作用の範囲内において、2回以上が可能であり、投与部位についても、1ヵ所または2ヵ所以上に投与することができ、毎日、または2日~5日間隔であり、総投与日数は、1回治療時、1日から30日まで投与されうる。必要な場合、適正時期後、同一治療を反復させることができる。ヒト以外の動物についても、kg当たり、ヒトと同一投与量にするか、あるいは、例えば、目的とする動物とヒトとの器官(心臓など)の容積比(例えば、平均値)などにより、前述の投与量を換算した量を投与することができる。
【0168】
前記方法において、有効量の前記GIP誘導体、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、またはその結合体は、有効量の1以上の他の活性成分と同時に、個別的または順次に投与することができる。前述の1以上の他の活性成分は、肺疾患を治療するための1以上の他の製剤であり得るが、それに制限されるものではない。
【0169】
さらに他の態様は、肺疾患の予防用または治療用の薬剤を製造するのに使用するための、前記GIP誘導体、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、または前記結合体の用途を提供する。
【0170】
前記GIP誘導体、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、前記結合体、及び肺疾患については、前述の通りである。
【0171】
本願で開示されるそれぞれの説明及び実施例は、それぞれの他の説明及び実施例にも適用されうる。すなわち、本願で開示された多様な要素の全ての組み合わせが、本発明の範疇に属する。また、下記で記述される具体的な敍述により、本発明の範疇が制限されるとすることはできない。
【発明の効果】
【0172】
一態様によるGIP誘導体、またはその持続型結合体は、肺の炎症を抑制し、肺胞上皮細胞の上皮間葉転換を抑制し、肺線維化を改善させ、肺気腫を改善させる効果があるので、COPDなど肺疾患の予防または治療の用途で使用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【
図1】GIP誘導体(配列番号11,17,21及び24)-PEG-免疫グロブリンFc領域結合体を製造し、SDS-PAGEで分析した結果を示した図である。
【
図2A】天然型GIPまたは持続型GIP誘導体の処理後、炎症関連遺伝子IL-6,IL-12,IL-1β及びTNF-αの相対的な発現程度を示したグラフである。
【
図2B】天然型GIPまたは持続型GIP誘導体の処理後、炎症関連サイトカインIL-6,IL-12/23 p40,IL-1β及びTNF-αの濃度(ng/mL)を示したグラフである。
【
図3A】天然型GIPまたは持続型GIP誘導体の処理後、炎症関連遺伝子IL-6,IL-12及びTNF-αの相対的な発現程度を示したグラフである。
【
図3B】天然型GIPまたは持続型GIP誘導体の処理後、EMTマーカーフィブロネクチン、Col1α1及びCol3α1の相対的な発現程度を示したグラフである。
【
図4】正常マウス対照群、賦形剤対照群、ロフルミラスト投与群及び持続型GIP誘導体投与群の肺気腫程度を確認した結果である。
【
図5A】正常マウス対照群、賦形剤対照群、ロフルミラスト投与群及び持続型GIP誘導体投与群の投与3週後の肺重量を示したグラフである。
【
図5B】正常マウス対照群、賦形剤対照群、ロフルミラスト投与群及び持続型GIP誘導体投与群における、肺組織内炎症性サイトカインIL-1β,IL-6,IL-12及びTNF-αの相対的な発現程度を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0174】
以下、本発明について、実施例を介し、さらに詳細に説明する。しかしながら、それら実施例は、本発明について例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0175】
実施例1:GIP受容体に対して活性を有するGIP誘導体の製造
ヒトGIP受容体に活性を示すGIP誘導体を製造し、下記表1にその配列を示した。
【0176】
【0177】
前記表1に記載された配列において、Aibと表記されたアミノ酸は、非天然型アミノ酸であるAib(aminoisobutyric acid)である。
【0178】
前記GIP誘導体ペプチドは、必要により、C末端をアミド化させたGIP誘導体として利用する。
【0179】
実施例2:GIP誘導体のインビトロ活性の測定
前記実施例1で製造されたGIP誘導体の活性を測定するために、GIP受容体が形質転換された細胞株を利用し、インビトロで細胞活性を測定する方法を利用した。前記細胞株は、CHO(Chinese hamster ovary)に、それぞれのヒトGIP受容体遺伝子を発現するように形質転換されたものであり、GIPの活性を測定するのに適する。
【0180】
前記実施例1で製造されたGIP誘導体のヒトGIP受容体における活性測定のために、ヒトGIPを、16nMから4倍ずつ、0.000015nMまで連続して希釈し、前記実施例1で製造されたGIP誘導体を、16nMから4倍ずつ、0.000015nMまで連続して希釈した。前記培養されたヒトGIP受容体が発現されたCHO細胞から培養液を除去し、連続して希釈された各物質を、5μlずつ前記細胞に添加した後、cAMP抗体が含まれた緩衝液を5μlずつ追加した後、15分間常温で培養した。その後、細胞溶解緩衝液(cell lysis buffer)が含まれたdetection mixを10μlずつ加え、細胞を溶解させ、90分間常温で反応させた。前記反応が完了した細胞溶解物を、LANCE cAMP kit(PerkinElmer、米国)に適用し、蓄積されたcAMPを介し、EC50値を算出した後、相互比較した。
【0181】
ヒトGIP受容体において、ヒトGIP対比における相対力価は、下記表2に示されている。
【0182】
【0183】
実施例3:持続型GIP結合体の製造
前記実施例1で製造されたGIP誘導体を含む持続型結合体を製造した。具体的には、配列番号11,17,21及び24のGIP誘導体を、それぞれ非ペプチド性重合体であるPEGを介し、免疫グロブリンFc領域と連結させた。
【0184】
具体的な持続型結合体の製造工程は、次の通りであり、同一行程を、配列番号11,17,21及び24のGIP誘導体結合体を製造するために反復した。免疫グロブリンFc領域のN末端にペギル化させるために、免疫グロブリンFc領域とMAL-10K PEG-ALD(マレイミド(maleimide)基とプロピオンアルデヒド(propion aldehyde)基とをそれぞれ有している10kDa PEG、NOF、日本)とのモル比1:1~2、全体タンパク質濃度40~60mg/ml、pH6.0~6.5、4~8℃で約3~4時間反応させた。この際、ナトリウムシアノボロヒドリド(sodium cyanoborohydride(NaCNBH3))還元剤を添加して反応させ、反応液は、CaptoQ ImpRes(GE Healthcare Life Science、米国)カラムを利用し、単一ペギル化された免疫グロブリンFc領域を精製した。
【0185】
精製された単一ペギル化された免疫グロブリンFc領域とGIP誘導体とを結合させるために、単一ペギル化された免疫グロブリンFc領域とGIP誘導体(配列番号11,17,21及び24)とのモル比1:1~3、全体タンパク質濃度0.1~0.5mg/mlにし、イソプロパノールを含むバッファで、4~8℃で約14~18時間反応させた。反応液は、Source 15ISO(GE Healthcare Life Science、米国)カラムを使用し、免疫グロブリンFc領域にGIP誘導体(配列番号11,17,21及び24)とが、それぞれPEGによって共有結合によって連結された結合体を精製した。
【0186】
その結果、精製された配列番号11のGIP誘導体・PEG・免疫グロブリンFc領域結合体、精製された配列番号17のGIP誘導体・PEG・免疫グロブリンFc領域結合体、精製された配列番号21のGIP誘導体・PEG・免疫グロブリンFc領域結合体、及び精製された配列番号24のGIP誘導体・PEG・免疫グロブリンFc領域結合体が、90%以上の高純度に製造されたことを確認し、SDS-PAGE分析結果は、
図1の通りである。
【0187】
実施例4:持続型GIP結合体のインビトロ活性の測定
前記実施例3で製造された持続型GIP結合体の活性を測定するために、前記実施例2と同様に、GIP受容体が形質転換された細胞株を利用し、インビトロで細胞活性を測定する方法を利用した。
【0188】
具体的には、持続型GIP結合体のヒトGIP受容体における活性測定のために、ヒトGIPを、16nMから4倍ずつ、0.000015nMまで連続して希釈し、持続型GIP結合体を、50nMから4倍ずつ、0.000048nMまで連続して希釈した。前記培養されたヒトGIP受容体が発現されたCHO細胞から培養液を除去し、連続して希釈された各物質を5μlずつ前記細胞に添加した後、cAMP抗体が含まれた緩衝液を5μlずつ追加した後、15分間常温で培養した。その後、細胞溶解緩衝液(cell lysis buffer)が含まれたdetection mixを10μlずつ加えて細胞を溶解させ、90分間常温で反応させた。前記反応が完了した細胞溶解物を、LANCE cAMP kit(PerkinElmer、米国)に適用し、蓄積されたcAMPを介し、EC50値を算出した後、相互比較した。
【0189】
ヒトGIP受容体における、ヒトGIP対比における相対力価は、下記表3に示されている。
【0190】
【0191】
前記実施例は、本発明のGIP誘導体が、天然型GIPの活性を保有し、特に、持続型結合体として製造されたときには、天然型GIPと同等であるか、あるいはそれより高活性を示しながらも、半減期が増大されるので、薬物として、すぐれた性質を有することを示す。
【0192】
実施例5:持続型GIP結合体の抗炎症のインビトロ効力の確認
COPDに対する持続型GIP誘導体の抗炎症効力を、インビトロ上で確認するために、ヒト単核球/大食細胞細胞株であるTHP-1細胞株を使用した。該大食細胞は、感染初期に、サイトカイン及びケモカインを分泌し、他の免疫細胞を動員し、炎症の進行を誘導すると知られている。
【0193】
THP-1細胞株は、RPMI 1640を基に、10% FBS(fetal bovine serum)、100μg/mLストレプトマイシン、100U/mLペニシリンそして0.05mM β-メルカプトエタノール(mercaptoethanol)を添加した培地において、37℃、5%二酸化炭素の条件で培養した。細胞株にLPS(lipopolysaccharide)を1μg/mLで添加し、炎症反応を誘導し、そこに、天然型GIP及び持続型GIP誘導体の処理時、LPSによる炎症反応にいかなる影響を与えるかということをmRNAレベルで確認した。天然型GIPは、10μM濃度、持続型GIP誘導体は、1または10μMの濃度に希釈して添加した。該持続型GIP誘導体は、実施例3で製造された持続型GIP結合体(配列番号17)を使用した。
【0194】
処理が完了されたTHP-1細胞株は、RNeasy Mini Kit(Qiagen、米国)を利用してRNAを分離させ、iScriptTM cDNA Synthesis Kit(Bio-rad、米国)を利用し、cDNAを合成した。合成されたcDNAに対し、QuantStudio 6 Flex Real-Time PCR System(Applied Biosystems、米国)を利用し、炎症関連遺伝子の発現程度を確認した。ΔΔCt法(Delta Delta Ct method)を利用し、ハウスキーピング(housekeeping)遺伝子としては、β-アクチンを使用した。炎症関連遺伝子として、IL-6、IL-12、IL-1β、TNF-αを確認した。
【0195】
図2Aは、天然型GIPまたは持続型GIP誘導体の処理後、炎症関連遺伝子IL-6,IL-12,IL-1β及びTNF-αの相対的な発現程度を示したグラフである。
【0196】
図2Aに示されているように、LPS処理時、嫌気反応が誘導され、前記炎症関連遺伝子の発現程度が増大することを確認することができ、天然型GIPと持続型GIP誘導体との処理時には、それらの発現がまた低減されることを確認することができた。そのような結果は、持続型GIP誘導体結合体が濃度依存的に現れることを確認することができた。
【0197】
さらには、THP-1細胞株の、培地上における炎症関連サイトカインであるIL-6、IL-12/23 p40、IL-1β及びTNF-αの濃度を測定するために、PMA(phorbol 12-myristate 13-acetate)150nMとLPS 0.1μg/mLとを添加して炎症反応を誘導し、天然型GIPは、1μM濃度、持続型GIP誘導体は、0.1または1μMの濃度に希釈して処理した。培地は、ヒトIL-6 ELISA Kit(Abcam、米国)、ヒトIL-12/23 p40 ELISA Kit(Abcam、米国)、ヒトIL-1β ELISA Kit(Abcam、米国)、ヒトTNFalpha ELISA Kit(Abcam、米国)を利用して定量した。
【0198】
図2Bは、天然型GIPまたは持続型GIP誘導体の処理後、炎症関連サイトカインIL-6,IL-12/23 p40,IL-1β及びTNF-αの濃度(ng/mL)を示したグラフである。
【0199】
図2Bに示されているように、PMA及びLPSの処理時、培地上の嫌気サイトカインの濃度が上昇することを確認することができ、天然型GIPと持続型GIP誘導体との処理時には、また低下することを確認することができた。
【0200】
従って、持続型GIP誘導体が、直接大食細胞に作用し、PMA及びLPSで誘導された炎症反応を防ぐ抗炎症効力を示すことを確認することができた。その抗炎症効果は、GIPの作用によるものであるということを、天然型GIPの結果として類推することができる。
【0201】
実施例6:持続型GIP結合体の炎症及び線維化改善インビトロ効力の確認
COPDに対する持続型GIP誘導体の炎症及び線維化の改善効力をインビトロ上で確認するために、ヒト肺胞上皮細胞であるA549細胞株を使用した。肺線維化過程に重要であると知られている肺胞上皮細胞の上皮間葉転換(EMT:epithelial mesenchymal transition)に対する影響を確認するものである。
【0202】
A549細胞株は、F-12Kを基に、10% FBS(fetal bovine serum)、100μg/mLストレプトマイシン及び100U/mLペニシリンを添加した培地において、37℃、5%二酸化炭素の条件で培養した。細胞株に、TGF-β1及びLPSを順次に処理し、炎症反応及びEMTを誘導した。天然型GIPは、10μM濃度、持続型GIP誘導体は、1または10μMの濃度に希釈して添加した。持続型GIP誘導体は、実施例3で製造された持続型GIP結合体(配列番号17)を使用した。
【0203】
処理が完了されたA549細胞株は、RNeasy Mini Kit(Qiagen、米国)を利用してRNAを分離させ、iScriptTM cDNA Synthesis Kit(Bio-rad、米国)を利用し、cDNAを合成した。合成されたcDNAに対し、QuantStudio 6 Flex Real-Time PCR System(Applied Biosystems、米国)を利用し、炎症及びEMT関連遺伝子の発現程度を確認した。ΔΔCt法(Delta Delta Ct method)を利用し、ハウスキーピング(housekeeping)遺伝子としては、β-アクチンを使用した。炎症関連遺伝子として、IL-6、IL-12、TNF-αを、EMTマーカーとしては、フィブロネクチン(fibronectin)、Col1α1(collagen, typeI, alpha1)及びCol3α1(collagen, typeIII, alpha1)を確認した。
【0204】
図3Aは、天然型GIPまたは持続型GIP誘導体の処理後、炎症関連遺伝子IL-6,IL-12及びTNF-αの相対的な発現程度を示したグラフである。
【0205】
図3Bは、天然型GIPまたは持続型GIP誘導体の処理後、EMTマーカーであるフィブロネクチン、Col1α1及びCol3α1の相対的な発現程度を示したグラフである。
【0206】
図3Aに示されているように、TGF-β及びLPSの処理時、嫌気反応が誘導され、前記炎症関連遺伝子の発現程度が増大することを確認することができ、天然型GIPと持続型GIP誘導体との処理時には、それらの発現がまた有意に低減されることを確認することができた。
【0207】
図3Bに示されているように、TGF-β及びLPSの処理時、EMTマーカーの発現が増大するが、それらも、天然型GIPと持続型GIP誘導体との処理時、再び低減された。
【0208】
従って、持続型GIP誘導体が、肺胞上皮細胞の炎症及び上皮間葉転換(EMT)を抑制することにより、慢性気管支炎及び肺線維化を改善させることができるということを確認した。
【0209】
実施例7:持続型GIP誘導体のCOPDのインビボ効力の確認
前記実施例で確認したインビトロ効力と併せ、代表的な肺疾患であり、肺の炎症による疾患であるCOPDの治療効果を、インビボ上で示しうるか否かということを確認するものである。CODP動物モデルとしては、エラスターゼ(ELA:elastase)が投与されたマウスを利用した。
【0210】
具体的には、C57BL/6マウス(DBL Co., Ltd,、韓国)に、ELA 0.2U/匹を投与したCOPD動物モデルマウスを、賦形剤対照群、持続型GIP誘導体(3.16mg/kg、Q2D、皮下)投与群、抗炎症剤であり、COPD治療剤であるロフルミラスト(10mg/kg、QD、経口)投与群に分け、それぞれ3週間繰り返して投与を進めた。持続型GIP誘導体は、実施例3で製造された持続型GIP結合体(配列番号17)を使用した。
【0211】
その後、剖検で、各マウスの肺組織を取り、ヘマトキシリン・エオジン)染色(H&E staining)を介し、肺組織の肺気腫程度を評価した。また、肺重量を測定し、賦形剤、持続型GIP誘導体またはロフルミラスト投与による肺組織内炎症性サイトカインの発現変化程度を、qPCRを介して確認し、炎症に対する効力を評価した。
【0212】
図4は、正常マウス対照群、賦形剤対照群、ロフルミラスト投与群及び持続型GIP誘導体投与群の肺気腫程度を確認した結果である。
【0213】
図4に示されているように、持続型GIP誘導体の繰り返し投与時、賦形剤対照群対比及びロフルミラスト投与群対比で、すぐれた肺気腫改善効能を確認することができた。
【0214】
図5Aは、正常マウス対照群、賦形剤対照群、ロフルミラスト投与群及び持続型GIP誘導体投与群の投与3週後の肺重量を示したグラフである。
【0215】
図5Bは、正常マウス対照群、賦形剤対照群、ロフルミラスト投与群及び持続型GIP誘導体投与群における、肺組織内炎症性サイトカインIL-1β,IL-6,IL-12及びTNF-αの相対的な発現程度を示したグラフである。
【0216】
図5Aに示されているように、肺重量を介し、炎症程度を間接的に確認することができるが、持続型GIP誘導体投与時、賦形剤対照群対比及びロフルミラスト対比で、肺重量が有意に低減された。
【0217】
また、
図5Bに示されているように、肺組織内炎症性サイトカインの遺伝子発現は、持続型GIP誘導体投与群が、対照群に比べ、有意に低減される傾向性を認めた。
【0218】
従って、持続型GIP誘導体が、肺の炎症、及び肺気腫を改善させることができるということをインビボ上で確認した認めた。
【0219】
纏まると、持続型GIP誘導体は、大食細胞に作用し、炎症関連サイトカインIL-6,IL-12/23 p40,IL-1β及びTNF-αを抑制することにより、抗炎症効果を示し、肺胞上皮細胞の炎症関連遺伝子IL-6、IL-12、TNF-αを抑制して抗炎症効果を示し、肺胞上皮細胞の上皮間葉転換(EMT)を抑制することにより、肺線維化を改善させることができるということを確認した。また、インビボにおいても、持続型GIP誘導体が、肺の炎症、及び肺気腫を改善させることができるということを確認した。それは、持続型GIP誘導体が、肺炎、肺胞炎、喘息、肺線維症、肺気腫、慢性気管支炎、COPD、COVID-19のような肺疾患の治療剤として使用されうるということを意味する。
【配列表】
【国際調査報告】