IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイションの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】心臓アンカーソリューション
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546312
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 US2021064832
(87)【国際公開番号】W WO2022164557
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】63/144,281
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500218127
【氏名又は名称】エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロハン・ヨギー・カトバムナ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・エリック・デッカー
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB04
(57)【要約】
例えば、房室弁逆流低減インプラント用などの、心臓アンカーを送達および展開するためのデバイスおよび方法。アンカー展開システムに組み込まれた能動穿刺ツールにより、アンカー展開の位置がより正確に保証される。EKGシステムの1本のリードは、導電性先端を有する穿刺針の後端に接続される。蛍光透視および心エコー法システムのいずれかまたは両方と共にEKGシステムを動作させることで、針先端の正確な配置が可能となる。配置されると、1つ以上のアンカーが針からまたは針の周りに展開される。1つの手袋フック式アンカーは、組織から引き出されずに、埋め込まれたタインを保持する張力の縫合糸を有する。
【選択図】図2C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織アンカーを送達および展開するためのシステムであって、
能動穿刺ツールであって、
そこから遠位に延びる可撓性シースを有する近位制御ハンドルと、
前記シースを通って延在し、前記シースの遠位先端を超えた位置に直線的に移動可能な可撓性穿刺針であって、前記針が遠位先端を有する、可撓性穿刺針と、
前記シースを通して前記針の前記遠位先端を超えた位置に移動可能な組織アンカーと、
心臓からの電気信号を記録するための前記針と電気的に接触する少なくとも1つのリードと、を備える能動穿刺ツールを備える、システム。
【請求項2】
前記システムが心臓アンカーを送達および展開するためのものであり、前記可撓性穿刺針が、前記遠位先端を除いて電気的に絶縁され、前記少なくとも1つのリードが、1つのリードが前記針の近位端と電気的に接触するように接続されたEKGシステムのリードである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記EKGが5リードEKGである、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
房室弁の弁尖内に嵌合するようにサイズ調整され、それらの間の逆流を減少させるために前記弁尖に対して接合するように構成される逆流減少スペーサーであって、前記スペーサーが、前記近位端が前記心房内にあり、前記遠位端が前記心室内に存在するような長さを有する、逆流減少スペーサーと、
前記スペーサーを前記心臓アンカーに接続する可撓性テザーと、をさらに備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記組織アンカーが、組織に当接するように構成された拡張可能なディスク形状アンカーである、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記組織アンカーが、組織に埋め込まれるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記組織アンカーが、
組織内に埋め込まれるように構成された複数の遠位に延びるタインを有する長手方向軸を画定する管状バレルであって、前記タインが前記軸から半径方向に外向きに曲がる、弛緩した構成に向かって付勢されている、管状バレルと、
前記バレルに接続された可撓性近位シャフトと、
前記タインのうちの1つに各々接続され、前記シャフトを通して近位に延在する複数の縫合糸であって、各タインが、前記バレルから外向きに、その遠位端で固定されるそれぞれのタインに沿って延在し、前記縫合糸にかかる張力が、前記アンカーに近位力がかかると、軸に向かって曲がることを妨げることを助け、前記アンカーを組織内から引く傾向にある、複数の縫合糸と、を備える、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記制御ハンドルが、前記シースに対して前記針を軸方向に変位させるように構成されたその上で移動可能な第一のスライダを有し、前記近位制御ハンドルが、前記針に対して前記組織アンカーを軸方向に移動させるように構成されたその上に移動可能な第二のスライダを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記第一および第二のスライダが、共通の移動のために連結されてもよく、前記第二のスライダが前記第一のスライダに対して移動することを可能にするように解除されるように構成されたロックをさらに含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記第一および第二のスライダの各々が、それぞれの機能のインジケータで標識された外側フィンガータブを含む、請求項8~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記制御ハンドルが、前記シースの先端を角度付けるためのアクチュエータをさらに含む、請求項8~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記針が中空であり、前記組織アンカーが前記針内に位置付けられ、前記針内から展開可能である、請求項8~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記制御ハンドルが、前記シースと針との間の空間、および前記針と組織アンカーとの間の空間を含む、前記システム内の同心円状の空間から流体またはガスを導入または引き出すために、それに接続された複数の流体ポートをさらに含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記制御ハンドルが、前記シースの先端を角度付けるためのアクチュエータをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
医学的に埋め込まれたシステムのための組織アンカーであって、
組織内に埋め込まれるように構成された複数の遠位に延びるタインを有する長手方向軸を画定する管状バレルであって、前記タインが前記軸から半径方向に外向きに曲がる、弛緩した構成に向かって付勢されている、管状バレルと、
前記バレルに接続された可撓性近位シャフトと、
前記タインのうちの1つに各々接続され、前記シャフトを近位に貫通する複数の縫合糸であって、各縫合糸が、前記バレルから外向きに、かつその遠位先端で固定されるそれぞれのテインに沿って延長する、複数の縫合糸であって、前記縫合糸上の張力が、前記アンカー上の近位力が前記アンカーを組織内から引き出す傾向にある時に、前記タインが前記軸に向かって曲がることを防止する、複数の縫合糸と、を備える、組織アンカー。
【請求項16】
前記タインの各々が、前記管状バレルも形成する管のレーザー切断部分として形成され、各タインが、前記縫合糸がそれを通して前記遠位先端に到達する前に通過する長さに沿って複数のクリートを有する、請求項15に記載の組織アンカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、心室における房室逆流防止システムなどの固定システムのためのデバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
弁逆流などの心臓弁膜症は、典型的には、罹患した弁を心臓切開手術中に置換または修復することによって治療される。しかしながら心臓切開手術は侵襲性が高く、よって多くの患者にとって選択肢ではない。高リスク患者については、心臓弁の修復のための、より低い侵襲性の方法が概して有利であると考えられる。重度の/激しい三尖弁逆流症の患者では、三尖弁輪および右心室が異常に多量に拡張しているのがしばしば見られ、多くの場合、三尖弁の弁尖の接合が重度に失われる。
【0003】
1つの解決策が、Edwards Lifesciences, Inc.(米国カリフォルニア州アーバイン)のFORMA Transcatheter Tricuspid Repair System、ならびに米国特許第9,474,605号に開示される解決策に見られ、両方とも本明細書に明示的に組み込まれる。これらは、三尖弁にギャップ充填要素を導入して、弁尖の接合を回復させ、三尖弁逆流(TR)および右心房(RA)の圧力を低下させ、それによって、古典的なTR患者の症状を緩和し、クオリティ・オブ・ライフを改善する。心室内の組織に固定されるように適合されている、その遠位端上に心室アンカーを有する可撓性レールが、最初に経皮的に展開される。修復カテーテルは、可撓性レールに沿って通過し、またカテーテルの遠位端にある弁尖の接合部材またはスペーサーは、自己弁尖内に位置する。所定の位置に置かれると、スペーサーは三尖弁の弁尖間のギャップを埋め、自己弁を通した逆流を低減または除去する。様々な代替的固定技術には、アンカー経心膜(RVの基部および心膜を通る)および経中隔(心室中隔を右室から左室まで通る)の展開が含まれる。特許文献1および特許文献2の両方は、代替的な固定技術を文書化しており、本明細書に明示的に組み込まれる。
【0004】
弁下腔に固定されたこれらの心臓インプラントおよびその他の心臓インプラントにもかかわらず、特に心臓が鼓動している間に、心室内にしっかりと固定する作業は依然として困難であり、改善が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第9,474,605号明細書
【特許文献2】国際公開第2020/197854号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2019/0358029号パンフレット
【特許文献4】米国特許第9,636,223号明細書
【特許文献5】米国特許公開第2020/0069426号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は一般に、心臓インプラントシステム用のアンカーを心室に確実に配置するためのデバイスおよび方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示する一実施形態は、心室から心臓の外部へ、および中隔壁を横切って心室間で、の2つのモードでインビボ心筋穿刺を誘導するために、EKGベースの心筋穿刺感知を組み込む、修正針装置の形態の能動穿刺ツールである。修正針装置および送達システムは、心臓内の針先端の位置についての追加的なリアルタイム表示を追加するために、標準的な既製の5リードEKG端子およびモニター(すべての病院で容易に利用可能)を組み入れる。蛍光透視法および心エコー法(造影剤/攪拌生理食塩水注入)と併用すると、針先端の可視化に関するあいまいさが劇的に減少し、処置時間が短縮され、心筋穿刺に関連する処置内での合併症が低減される。
【0008】
経心膜アンカー形成については、修正針装置および付随する方法論を使用して、針先端が何に接触しているかを決定し、特に、針先端を右心室から、心臓を出て、心膜と胸壁との間の空間内にもたらす目的で使用される。針先端の位置は、EKGトレースの観察から様々なゾーンを経て進む中で決定される。すなわち、心室の自由空間/血液内、右心室の基部の内壁と接触した状態、部分的に右心室の心筋を通過(心筋内部に留まっている)、心筋を通過して心膜腔内、心膜を完全に通過して、心膜と内胸壁の間の空間内にある状態が決定される。これらの空間のそれぞれに関連するEKGトレースが記録され、それぞれは、RV心筋穿刺を誘導するために使用できる別個のトレースを有することが示されている。
【0009】
代替的に、経中隔穿刺およびアンカーについては、修正された針装置および方法論は、主に針先端が右心室から左心室に横断するときを決定するために使用される。針先端の位置が、様々なゾーンを通って進む時に、すなわち、右心室の自由空間/血液内、心室間中隔心筋と接触した状態、心室間中隔心筋を部分的に通過しているか、または心室間中隔心筋内にくさび留めされている状態、心室間中隔を完全に通過して、右心室の自由空間内、および左心室の自由壁と接触して遠く進みすぎたときに、ここに記述した個別のEKG信号が見出される。
【0010】
本出願は、能動穿刺ツールを含む、心臓アンカーを送達および展開するためのシステムを開示する。ツールは、そこから遠位に延在する可撓性シースを有する近位制御ハンドルを含む。可撓性穿刺針は、シースを通って延在し、その中でシースの遠位先端を超えた位置に直線的に移動可能であり、針は鋭利な遠位先端を除いて電気的に絶縁されている。心臓アンカーは、シースを通して針に対して、鋭利な遠位先端を超えた位置に移動可能である。最後に、EKGシステムは、1本のリードが針の近位端と電気的に接触するように、ツールに接続される。
【0011】
心臓アンカーの送達および展開システムは、房室弁の弁尖内に篏合するようにサイズ設定され、弁尖に対して接合してそれらの間の逆流を減少させるように構成された、逆流減少スペーサーをさらに含んでもよい。スペーサーは、近位端が心房内に存在し、遠位端が心室内に存在するような長さを有することが好ましい。可撓性テザーは、スペーサーを心臓アンカーに接続する。一形態では、心臓アンカーは、心臓組織に当接するように構成された拡張可能なディスク形状アンカーである。別の形態では、心臓アンカーは、心臓組織に埋め込まれるように構成された組織アンカーである。
【0012】
心臓組織に埋め込まれるように構成された組織アンカーは、
a. 組織内に埋め込まれるように構成された複数の遠位に延びるタインを有する長手方向軸を画定する管状バレルであって、タインが軸から半径方向に外向きに曲がる、弛緩した構成に向かって付勢されている、管状バレルと、
b. バレルに接続された可撓性近位シャフトと、
c. タインのうちの1つに各々接続され、シャフトを通して近位に延在する複数の縫合糸であって、各タインが、バレルから外向きに、その遠位端で固定されるそれぞれのタインに沿って延在し、縫合糸にかかる張力が、アンカーに近位力がかかると軸に向かって曲がることを妨げることを助け、アンカーを組織内から引く傾向にある、複数の縫合糸と、を備える。
【0013】
上述のシステムでは、制御ハンドルは、シースに対して針を軸方向に変位させるように構成された、その上で移動可能な第一のスライダ、および針に対して心臓アンカーを軸方向に変位させるように構成された、その上で移動可能な第二のスライダを有してもよい。システムの第一および第二のスライダは、共通の移動のために連結されてもよく、さらに、第二のスライダが第一のスライダに対して移動することを可能にするように解除され得るロックを含んでもよい。第一および第二のスライダのそれぞれは、それぞれの機能のインジケータで標識された外側フィンガータブを有してもよい。制御ハンドルは、シースの先端を角度付けするためのアクチュエータをさらに含み得る。
【0014】
一実施形態では、針は中空であり、心臓アンカーは針内に位置付けられ、針内から展開可能である。制御ハンドルは、シースと針との間の空間、および針と心臓アンカーとの間の空間を含む、システム内の同心円状の空間から流体またはガスを導入または引き出すために、それに接続された複数の流体ポートをさらに含み得る。EKGは、5リードEKGであってもよい。
【0015】
本明細書に記載される別の態様は、医療的に埋め込まれたシステムのための組織アンカーであり、組織に埋め込まれるように構成された複数の遠位に延在するタインを有する長手方向軸を画定する管状バレルを備え、タインは、弛緩した構成に向かって付勢され、タインは、軸から半径方向に外向きに回転する。可撓性近位シャフトはバレルに接続され、複数の縫合糸がそれぞれタインのうちの1つに接続され、シャフトを通して近位に延在する。各縫合糸は、バレルから、またその遠位端で固定されるそれぞれのタインに沿って、外向きに延在し、縫合糸にかかる張力が、アンカーに近位力がかかると軸に向かって曲がるのを妨げることを助け、アンカーを組織内から引く傾向にある。タインの各々は、管状バレルも形成する管のレーザー切断部分として形成され、各タインは、縫合糸がそれを通って遠位先端に到達する前に通過する長さに沿って複数のクリートを有する。
【0016】
本出願は、心臓アンカーを患者に送達および展開する方法を開示する。方法は、そこから遠位に延びる可撓性シースを備えた近位制御ハンドルを有する能動穿刺ツールを最初に提供することを含む。可撓性穿刺針は、シースを通って延在し、その中でシースの遠位先端を超えた位置に直線的に移動可能であり、針は鋭利な遠位先端を除いて電気的に絶縁されている。心臓アンカーは、シースを通して針に対して、鋭利な遠位先端を超えた位置に移動可能である。EKGシステムも提供されており、方法は、EKGシステムを患者に接続し、1本のリードを針の近位端に接続することを含む。シースは、その遠位先端が心臓内の組織表面に近接するまで、血管系を通して進められる。次に、針は、EKGシステムのモニター上の針の鋭利な遠位先端の位置を監視しながら、シースの遠位先端から進められる。針の前進は、所望の位置で停止され、心臓アンカーは、針内から進められて、所望の位置で心臓アンカーを展開する。
【0017】
方法はまた、弁尖に接合してそれらの間の逆流を減少させるように構成された房室弁の弁尖内に、逆流減少スペーサーを展開することを含んでもよい。望ましくは、スペーサーは、近位端が心房内にあり、遠位端が心室内にあるような長さを有する。
【0018】
逆流減少スペーサーを展開する1つのそのような方法は、シースを、その遠位先端がその内表面に近接した心室の空洞内に入るまで進めることと、針を心臓組織から体腔内に進めることと、針内から心臓アンカーを進めること(心臓アンカーは、外部アンカーを提供するために自己拡張可能である)と、針およびシースを抜去することと、心臓アンカーとスペーサーの間の可撓性テザーを接続することと、を含む。心臓アンカーは、拡張可能なディスク形状アンカーであってもよく、心臓組織は、所望の位置が心臓の外、例えば心膜の外側である心筋であってもよい。心室は第一の心室であってもよく、心臓組織は第一の心室と第二の心室の間の中隔組織であり、所望の位置は第二の心室内にある。
【0019】
逆流減少スペーサーを展開する第二のそのような方法は、シースを、その遠位先端がその内表面に近接した心室の空洞内に入るまで進めることと、針を心臓組織に進めることと、針内から心臓アンカーを進めること(心臓アンカーは、心臓組織に埋め込まれた内部組織アンカーを提供するために自己拡張可能である)と、針およびシースを抜去することと、心臓アンカーとスペーサーの間の可撓性テザーを接続することと、を含む。
【0020】
上述の方法のいずれにおいても、EKGは5リードEKGであり、本方法は、リードのうち4本を患者の胸部に適用することを含む。方法はさらに、針を進める間に、蛍光透視および心エコー法のうちの少なくとも1つを用いて針の鋭利な遠位先端の位置を同時に監視することを含み得る。同様に、本方法はまた、針を進める間に、蛍光透視法を用いて針の鋭利な遠位先端の位置を同時に監視することと、針の鋭利な遠位先端の開口部と流体連通するハンドル内のアクセス管に造影剤を注入することと、を含んでもよい。
【0021】
本発明の性質および利点の更なる理解は、特に、同様の部材が同様の参照符号を有した添付図面と併せて考慮された場合、以下の説明および特許請求の範囲に記載されている。
【0022】
本開示の実施形態の様々な態様をさらに明確にするために、添付図面の様々な態様を参照することによって特定の実施形態のより具体的な説明がなされる。これらの図面は、本開示の典型的な実施形態のみを描写し、したがって本開示の範囲を制限するものとは見なされないことが理解される。さらに、図は、一部の実施形態については正確な縮尺であり得るが、図は、必ずしもすべての実施形態について正確な縮尺ではない。本開示の実施形態は、添付図面を使用して追加的な特定性および詳細を用いて記載および説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、三尖弁内に位置付けられた接合要素またはスペーサーと、鎖骨下静脈から出て、皮下に埋め込まれた状態を保つことが示されているロック用コレットを含む修復カテーテルの近位長とを有する、先行技術の経皮的心臓弁逆流減少システムの最終的な構成の概略図である。
図2図2Aおよび2Bは、アンカー縫合の端部上に拡張可能なディスク形状アンカーを有する右心室内に固定された逆流減少システムのためのスペーサーを示す、ヒト心臓の右側の断面図であり、図2Cは拡張可能なアンカーの詳細図である。
図3図3A~3Cは、図2Cのディスク形状アンカーを展開するときに能動穿刺ツールによって穿刺された心臓の層を示し、図3Dは、心膜の外側の配置を示し、図3Eは、心膜と心筋の外側との間の空間における配置を示す。
図4図4は、心臓の位置を示す、ある人物の胸腔の図であり、図4Aは、心臓の尖部、心膜、および周囲の解剖学的構造の間の関係を示す拡大断面図である。
図5図5は、能動穿刺ツールおよびEKGモニターおよびそれに関連付けられた電極配置の1つの配置を示す患者の概略図である。
図6図6は、本出願の例示的な能動穿刺ツールの斜視図であり、図6Aは、そこから分解されたいくつかの外側カバーを示す。
図7図7Aは、能動穿刺ツールの立面図であり、図7Bは、そこから分解されたいくつかの外側カバーを示し、図7Cは、一対のスライダ上のラベルを示す制御ハンドルの拡大図である。
図8図8Aおよび図8Bは、展開のいくつかの段階における能動穿刺ツールの部分図である。
図9図9は、その上の絶縁を示す穿刺針の遠位端の拡大斜視図である。
図10図10A/10Bは、穿刺針の心臓壁を通る段階的前進を、穿刺針に接続された1つの電極を有するEKGシステムの読み出し情報の相補的な画像と共に示す。
図11図11A/11Bは、穿刺針の心臓壁を通る段階的前進を、穿刺針に接続された1つの電極を有するEKGシステムの読み出し情報の相補的な画像と共に示す。
図12図12A/12Bは、穿刺針の心臓壁を通る段階的前進を、穿刺針に接続された1つの電極を有するEKGシステムの読み出し情報の相補的な画像と共に示す。
図13図13は、代替的なアンカーを有する、能動穿刺ツールの斜視図である。
図14図14は、図13の代替的なアンカーの斜視図であり、図14Aは、それを通した保持システムの起動を示す断面図である。
図15図15は、図14の代替的なアンカーが組織内を進んでいる状態の、組織内に埋め込まれた能動穿刺ツールの穿刺針の図である。
図16図16Aおよび図16Bは、代替的なアンカーを組織に埋め込み、保持する2つの段階を示す断面図である。
図17図17Aは、組織に埋め込まれた従来的なアンカーを示す断面図であり、図17Bは、張力によって組織内から引き出す可能性を示す。
図18図18は、心臓弁輪への弁輪形成バンド展開シースの前進を示す概略図である。
図19図19Aは、本明細書に記載される能動穿刺針を組み込んだ図19のシースを使用した、弁輪形成バンドの展開ステップを示す断面図であり、図19Bは、弁輪形成バンドの一部が弁輪に埋め込まれた後の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の説明は、特定の実施形態を図示する添付図面を参照する。異なる構造および動作を有する他の実施形態は、本開示の範囲から逸脱しない。
【0025】
本出願は、心臓インプラントを固定するためのシステムおよび方法を開示しており、特に心臓弁内の心臓弁逆流減少スペーサーが図示されている。こうした心臓弁逆流減少システムは、心臓の左側または右側内に埋め込まれてもよく、心臓から出て血管系に入り、例えば鎖骨下静脈などへと延在し得る。しかしながら、このような埋め込まれたデバイスを固定するための本明細書に開示される原理は、他の用途にも適している。
【0026】
図1は、三尖弁内に位置付けられた接合要素またはスペーサーと、鎖骨下静脈から出て、皮下に埋め込まれた状態を保つことが示されているロック用コレットを含む修復カテーテルの近位長とを有する、先行技術の経皮的心臓弁逆流減少システムの最終的な埋め込まれた構成の概略図である。システムは、三尖弁TV逆流を減少させるために、心臓の右側に経皮的に送達される修復カテーテル20を含む。修復カテーテル20は、セルディンガー法などの周知の方法を使用して鎖骨下静脈SVに導入された後、上大静脈SVCから右心房RAに入る。修復カテーテル20は、図示するように、鎖骨下静脈SVに挿入され、それが常駐し右心室RVの尖部またはその近くに固定されるまで血管系を通して操向される、より小さな直径の予め取り付けられたアンカーレール22上を追跡されることが好ましい。修復カテーテル20は、例えば、組み込まれた編組み構造またはコイル構造で補強され得る細長い中空シャフト24を含む。
【0027】
遠位デバイスアンカー26は、レール22の遠位端を右心室RVの尖部に、または心室内の他の解剖学的特徴に固定する。アンカーレール22は、編組みのワイヤロッドまたはケーブルとして構築されてもよく、ガイドワイヤ(図示せず)の通過を可能にするために中空であることが望ましい。アンカーレール22およびデバイスアンカー26のさらなる詳細は、特許文献1(Rowe, et al.)に見られる。
【0028】
修復カテーテルシャフト24は、三尖弁TV内に最終的に位置付けられる遠位端部分上に接合要素またはスペーサー30を有し、その弁尖は収縮期に閉じた状態で、かつスペーサー30と接触した状態で示されている。様々な接合要素が利用されてもよく、その共通する特徴は、逆流を軽減またはその他の方法で除去するために、心臓の弁尖内に一種のプラグを提供するという目標である。図示した実施形態では、スペーサー30は、補助的となるように配置された支柱の格子から形成される拡張可能な本体を含むか、または負のポアソン比を有し、これは、例えば、特許文献3に開示するようにin vivoで調整され得るが、その他の接合要素は、特許文献1および特許文献4に開示され、それらの開示全体は参照により本明細書に明示的に組み込まれる。スペーサー30は、使用される切開のサイズを小さくし、血管系での通過を容易にするために半径方向に収縮した状態で送達され、次いで弁尖内で拡張される。
【0029】
三尖弁TV内のスペーサー30の軸方向位置をロックし、固定アンカーレール22に対して、逆流修復カテーテル20上にロック機構が提供される。例えば、修復カテーテルシャフト24の長さに沿ったロック用コレット32は、医師がシャフトの位置を、またそれゆえに接続されたスペーサー30を、アンカーレール22に沿って選択的にロックすることを可能にする。当然ながら、同心ガイドレール上にカテーテルをロックするにはいくつかの方法があり、本出願は図示した実施形態に限定されると考えられるべきではない。例えば、ロック用コレット32ではなく、ステンレス鋼管などの圧着可能なセクションが、修復カテーテルシャフト24上の皮膚入口点の近くの位置に含められ、スペーサー30の位置から間隔が置かれ得る。医師は、スペーサー30を弁尖内に位置付け、カテーテルシャフト24をアンカーレール22上に圧着し、その後、カテーテルとレールの両方を圧着点の上方または近位に切断するだけである。
【0030】
ロック用コレット32を含む修復カテーテル20の近位長は、密封された穿刺を通して鎖骨下静脈SVを出て、皮下に埋め込まれた状態を保ち、図示するようにそれ自体に巻き付けることが好ましい。本処置では、医師はまず、三尖弁TV内のスペーサー30の適切な位置決めを確実にし、ロック用コレット32を作動させることによって、または別の手段によって、アンカーレール22に対して修復カテーテル20をロックしてから、ロック用コレットから近位に延在する修復カテーテルシャフト24の部分を切断する。修復カテーテルシャフト24のコレット32および/またはコイル状部分は、鎖骨下静脈SVの外側の皮下組織に縫合されるか、またはその他の方法で定位置に固定され得る。修復カテーテル20は、アンカーレール22に対して最初にスライドするため、これは、埋め込み中に、スペーサー30を抜去し、処置を中断するために、完全に除去され得ることも注目に値する。埋め込みの構成は、電極付きのペースメーカーを右心房筋組織内に固定し、鎖骨下静脈の外側に配置された関連するパルス発生器までリードを延ばす場合に、実施されるようなものである。実際に、現在の処置は、ペーシングリードのインプラントと併せて行われてもよい。
【0031】
図2Aは、右心室に固定された逆流減少システム用のスペーサー50を示し、近位シースまたはシャフト52がそれに接続され、右心房RAから近位に延びる、ヒト心臓の右側の断面図である。スペーサー50は、右心室RVの外部に位置付けられた、拡張された平面ディスク形態のアンカーテザー54および組織アンカー56を使用して、弁下側に固定され得る。
【0032】
アンカー56は、代替的に、図2Bのように、心室中隔または隔壁SWにわたって配置されてもよく、その結果、アンカーは左心室LV内に展開され、中隔のLV側に対して引っ張られて、三尖弁TV内にスペーサー50を固定する。
【0033】
図2Cに見られるように、例示的なディスク形状アンカー56は、アンカー56の周辺の周りに円状に配置された内部支持リング62を有する布カバー60を備える。支持リング62は、例えば縫合糸などで、カバー60に連結し、好ましくは、リングが直線構成から図2Cに示されるリング形状構成に移動し得るように、可撓性の材料から作製される。1つの実施形態では、支持リング62は、ニチノールなどの超弾性または形状記憶材料から作製され、送達のための線形の構成から、アクセスデバイスを通して弛緩したリング形状のアンカー配置へと自動的に移動するように、形状が設定される。そのような拡張可能なアンカーの1つは、特許文献5に開示されており、その開示全体は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。ディスク形状アンカー56が示されているが、展開前にアンカーを位置付ける本方法は、拡張可能であるか否かにかかわらず、他のアンカーにも有用であり、本開示は図示したアンカーに限定されない。
【0034】
図3A~3Cは、図2Bのディスク形状アンカー56を展開するときに、能動穿刺ツール70によって穿刺された心臓の層を示し、図3Dは、心膜の外側の配置を示し、図3Eは、心膜と心筋の外側との間の空間における配置を示す。能動穿刺ツール70は、EKG監視システムの電極としてフックアップされ、針の先端がどこに位置するかを判定するのに役立つ入力を戻す穿刺針72を含む。
【0035】
図3A~3Cは、ディスク形状アンカー56が最初に直線状または線形の構成であり、鋭利な遠位点を有する可撓性穿刺針72の内腔を通過することを示す。例えば、針72は、線形の構成のディスク形状アンカー56が排出される角度付きの開いた遠位端74を有してもよい。最初に、穿刺針72は心筋および心臓壁の外側心筋層78を通過する。図3Aは、心臓を囲む心膜76の外側への穿刺針72のさらなる前進を示す。図3Bでは、拡張可能な組織アンカー56は、遠位端74から心膜76の外部に現れているのが見える。最後に、図3Cでは、組織アンカー56が完全に拡張され、テザー54に接続された状態で示されており、これは縫合糸であってもよい。
【0036】
この経心膜処置では、以下でより詳細に説明するように、能動穿刺ツール70は、針先端がカテーテル内にまだあるとき、心筋と接触しているとき、心筋内にあるとき、心筋を完全に通過して心膜76内の空間内にあるとき、心膜と接触しているとき、および心膜を通るときを、示す。針のこれらの各々の位置は、容易に識別可能なEKGトレースを有する。
【0037】
したがって、組織アンカー56は、ツール70内に線形の構成で展開部位に送達され、その後、図3Bに見られるように遠位開口部74から排出される。組織アンカー56が排出される際、テザー54の張力が内部支持リング62に作用して巻き込まれ、最終的にはカバー60および支持リング62は図3Cのディスク形状の構成を想定し、テザー54はカバー60から中心軸で近位に延びる。図3Dに示すように、テザー54を引き込むことで、組織アンカー56を心膜76の外部と接触させる。拡張されたとき、組織アンカー56は、約20~25mmの直径を有し得るが、所望に応じて他の直径が利用されてもよい。図2Aのように、穿刺針72は、心臓壁を通って引き戻され、テザー54は、逆流減少スペーサー50に固定するために使用される。
【0038】
心筋および心膜を通過中の穿刺針72の位置の可視化は、蛍光透視法または心エコー法(超音波)技術のみを使用する場合は困難を伴う。ほとんどのカテーテルラボとハイブリッド型手術室には、多くの異なる医療機器処置に広く使用されている利用可能な撮像方法として、蛍光透視法とマルチモーダル心エコー検査技術が装備されている。造影剤ボーラス注入を針の長さに沿って視覚化し、針先端の位置を評価するための蛍光透視法は有用であるが、おおよその位置のみを提供し、不良な蛍光透視角度のため偽の仰角面(plane of attack)に簡単にだまされる。また、患者によっては、画像品質は必ずしも鮮明ではなく、造影剤ボーラス注入は、多くの場合、1つの位置に滞留したり、あまりにも早く洗い流されたりする場合がある。心エコー法は、主に心臓内での針の深さにより妨げられる。経心膜アプローチと経中隔アプローチはどちらも右心室深部の穿刺を行い、経食道心エコー図(TEE)と心内エコー図(ICE)の両方にとって、カテーテル先端の位置を迅速に確認するために必要な適切な解像度を有することが困難になる。
【0039】
現在開示されている能動穿刺ツール70で蛍光透視および心エコー法の一方または両方を補足することは、針先端が適切な位置と接触しているという非視覚的な確認と、針が何と接触しているかについての二次的なリアルタイムの表示とを提供する。能動穿刺ツール70は、これらの撮像方法のいずれも代替するものではなく、経心膜および経中隔経路の両方(またおそらくは心臓内の他の場所における穿刺)での心筋穿刺のナビゲーション、撮像および制御に関して、最適な結果を得るために、それらを補強し、それらと提携して使用されることが意図される。
【0040】
図4は、心臓Hの位置を示す、ある人物の胸腔の図であり、図4Aは、心臓の尖部A、心膜P、および周囲の解剖学的構造の間の関係を示す拡大断面図である。具体的には、心臓Hは、肺Lの2つの葉の間の内側で、胸腔の中心にあり、(患者の視点から)尖部Aが左下を指すように斜めに配向される。心臓Hは、大血管(上大静脈および下大静脈、肺動脈および肺静脈、大動脈)への接続によって、強靭な線維性の嚢である心膜P内に懸架される。心膜Pは横隔膜Dと融合しており、そのため肺Lの吸気中の横隔膜の下方移動により、心臓がより垂直配向に引き込まれる。
【0041】
図3A~3Dで上に示した経心膜アンカーアプローチでは、針72は、右心室の基部を通して、心膜を通して、心膜Pの外表面と胸壁の内表面との間の空間S内に進められる。または、本処置は、図3Eのように、針およびアンカー56を心筋と心膜Pの間に位置付けることができる。穿刺されると、遠位アンカー56が心膜P(または心筋)に送達され、それに対して着座され、心膜への血液の進入(心膜タンポナーデ)および胸膜腔への血液の蓄積(血胸)の両方を最小限に抑えることが極めて重要である。これらは、針先端72の明確な識別によって合理的に軽減され得る、経心膜アプローチに伴う特定の重要なリスクである。例えば、肺Lを穿刺しないように十分な注意を払う必要がある。しかしながら、従来的な撮像(蛍光透視法、心エコー法)の限界のため、針72の先端の位置決めは必ずしもそれほど簡単ではない。これらの制約により、アンカーを迅速に配置し、止血を達成して、前述の故障モードを防止するために費やされるであろう貴重な処置の秒数が犠牲となる可能性がある。
【0042】
本明細書に記載される針装置はまた、図2Bに示すように経中隔アンカーを固定するための利点を提供し、これは、より適切な制御が可能になり、したがって、過穿刺の結果としての患者へのリスクが最小限な状態で、より迅速な心室中隔穿刺が可能になるためである。針は、右心室隔壁の下3分の1を通って左心室内に進められる。穿刺されると、アンカー56は針を通して展開され、左心室隔壁に対して安定化される。ここでの第一の懸念は、針が左心室に深く伸びすぎて左心室自由壁を穿刺し、心膜タンポナーデまたは血胸などの意図しない合併症が生じ、患者を安定化させるために、直ちに外科的介入が必要となる可能性が高いことである。この処置は、上記の経心膜アプローチで説明したように機能し、針先端がカテーテル内にまだあるとき、心室中隔と接触するとき、心室中隔と接触するとき、心室中隔を完全に通過するとき、および左心室の自由壁と接触するときを示す。針のこれらの各々の位置は、容易に識別可能なEKGトレースを有する。
【0043】
図5は、能動穿刺ツールおよびEKGモニターおよびそれに関連付けられた電極配置の1つの配置を示す患者の概略図である。本明細書に記載される能動穿刺ツール70は、広く利用可能な5リードEKG端子およびEKGモニターを組み込み、穿刺針が何と接触しているか(血液、心筋、心膜など)のライブリアルタイム読み出し情報を有する、カスタムの針装置およびアンカー送達システムである。
【0044】
典型的な5リードEKGの設定には、およそ図5に示すように、胸部に置かれた、四肢のそれぞれにつき1本のリード(患者に取り付けられるのは2本の腕および2本の脚、合計4本のリードを意味する)が含まれる。第五のリード「V」は、典型的には心臓の近くの端子上に配置されるが、本発明の目的のために、第五のリード80は、能動針ツール70の後端に直接取り付けられる。さらに、能動針ツール70は、リードとの相互作用を容易にし、針72の遠位先端とモニターとの間の接点信号の正確な1対1の伝達を最小限の損失で促進するカスタム設計を有する。より具体的には、リード80は、損失を減少させる方法で針72の後端にしっかりと取り付けられるクリップ81などの連結器内で終端する。
【0045】
図示したアプローチ技術では、図示するように、能動針ツール70の細長い可撓性シース82は、鼠径領域から大腿静脈を通して上向きに右心房へと進められる。患者を切開し、シース82を大腿静脈に導入するための技術は、鼠径領域から心臓に届くのに十分な長さを持つ可撓性シースおよび針72として周知である。シース82は適切な可撓性ポリマーから形成されてもよく、一方で可撓性穿刺針72はポリマーまたはニチノールであってもよい。明細については詳述しない。もちろん、この概略図は、1つの可能なアクセス経路に過ぎない。同様に、右心房にアクセスするための代替経路は、首から下向きに、内頸静脈または鎖骨下静脈を通る経路が含まれ、本出願は、何らかの特定のアクセス経路に限定されると考えられるべきではない。
【0046】
図6は、本出願の例示的な能動穿刺ツール70の分解した斜視図であり、図6Aは、そこからいくつかの外側カバーが分解されて内部の仕組みが露出されて示されている。図7Aおよび図7Bは、その類似した立面図である。
【0047】
能動穿刺ツール70は概して、そこから可撓性シース82が遠位に延在する近位制御ハンドル84を備える。穿刺針72の後端は、制御ハンドル84の後端から突出している状態で見える。針72は、図示の目的のために、通常よりも長い距離で延在した状態で示されている。針72は中空であり、その遠位端の近くの位置から、および制御ハンドル84を通して近位に、可撓性シース82の長さに沿って延在する。
【0048】
制御ハンドル84は、スリーブ86とその遠位端に向かって回転リング88を有し、これが、可撓性シース82を曲げるための操向機構を作動させる。詳しくは説明しないが、スリーブ86は、ツール70の長手方向軸の周りを回転し、類似のサイズのレール89に適合する細長いスロット87を有する。レール89は、可撓性シース82の長さを下方かつ端部に延在するプルワイヤ(図示せず)を変位させるように構成された回転機構に結合される。可撓性シース82の遠位先端の一方の側にプルワイヤを固定することによって、遠位先端をその側に偏向させてもよい。
【0049】
制御ハンドル84のグリップ部分は、一対のスライダ90、92を収容し、それぞれ穿刺針72および拡張可能アンカー56を、針を通して直線的に変位させる。後述するように、2つのスライダ90、92は、制御ハンドル84の中空ハウジング内で軸方向に一緒に移動するように結合される。さらに、近位スライダ92は、ロックタブ94の作動時に遠位スライダ90に対して軸方向に動くように適合される。特に、中空針72は、可撓性シース82の端部まで延在し、遠位スライダ90は、軸方向移動のために針と係合する。近位スライダ92は、アンカーが中空針72を通って変位し得るように、拡張可能アンカー56のプッシャーと係合する。したがって、シース82に沿って延在するいくつかの同心円状に並んだ管の間に同心円状の空間が形成される。
【0050】
遠位流体ポート96および一対の近位流体ポート98a、98bは、吸引または造影剤の注入のためにハンドル84内の異なるチャンバに接続される。例えば、近位流体ポート98a、98bのうちの1つを使用して、造影剤を針72内に注入し、それがEKG位置決め方法と併せて蛍光透視鏡上で見られるようにしてもよい。あるいは、流体ポート96、98a、98bの各々を使用して、シース82と針72との間の空間、および針72と心臓アンカー56との間の空間を含む、システム内の同心円状の空間から流体またはガスを回収してもよい。
【0051】
図8Aおよび図8Bは、展開のいくつかの段階における能動穿刺ツール70の部分図である。最初に、針72は、可撓性シース82の遠位先端104を通過して変位し得る。説明したように、2つのスライダ90、92は、針72を変位させるために遠位方向に軸方向に一緒に並進する。近位スライダ92は、針72の遠位領域内に位置付けられ、それと共に動くアンカー56の動きを制御する。ロックタブ94は、近位スライダ92と共に移動する。2つのスライダ90、92はそれぞれ、制御ハンドル84のハウジングの上面および底部の長手方向スロット100を通って外向きに延在する一対の対向する人間工学的フィンガータブを有してもよく、ロックタブ94は、ハウジングの横方向の側面の長手方向スロット92を通して近位スライダ92と共に移動するように接続される。人間工学的フィンガータブは、図7Cに示すように、便宜上、(アンカー56について)「NEEDLE(針)」および「PUSHER(プッシャー)」と標識されることが好ましい。
【0052】
図8Bは、ロックタブ92および近位スライダ92が遠位スライダ90に対して近位方向に変位し得るように、ロックタブ92の内向きの作動を示す。上述のように、近位スライダ92は、針72に対してアンカー56を変位させるために結合され、アンカーが針72から排出され、その展開された構成内にカールすることが示されている。
【0053】
この場合も、穿刺針72は、体内からEKGモニターに電気心臓パルスを伝送する電極として構成されていることが注目されるべきである。図9は、その上の絶縁体112を示す穿刺針72の鋭利な遠位先端110の拡大斜視図である。より具体的には、針72は、遠位先端110と、当然ながら、前述のEKGリードと接続するその近位端とを除いて、その全長に沿って絶縁材料で被覆されることが望ましい。これにより、導電性信号が針72によって感知される領域が集束され、それゆえ針位置処置の精度が増大する。一実施形態では、針72の先端110の遠位1~2mmのみが露出し、電気信号を伝導することができる。
【0054】
ただし、穿刺針72は、本位置決めおよび展開システムおよび方法の実践において利用され得る、多数の潜在的プローブまたは位置特定用先端のうちの1つに過ぎない。中空針72は、アンカー56がその遠位先端110から直接展開され得るため、特に有用である。しかし、固体プローブも使用することができ、これはその後、図18図19に示す実施形態に関して以下に説明するように、アンカーをその上に送達するための一種のガイドワイヤとして機能する。同様に、針72または他のプローブが最初に引き込まれてもよく、その後、アンカーが、針/プローブの先端の最後の位置までの既知の距離だけ進められてもよい。この点において、電極プローブまたは電極針という用語は同義であり、心臓組織を出入りして通し、電気信号を伝導する位置決め先端を一般的に画定するために使用され得る。
【0055】
さらに、可撓性の電極プローブまたは電極針は、心臓内、組織の内外から電気パルスを伝導するように作製される。こうしたパルスは、典型的には電圧変化で測定され、したがって、プローブまたは針は、銅または強磁性合金などの導電性材料で作製される。一実施形態では、プローブまたは針は、クロム8%およびニッケル8%を含有する304 SS合金などの導電性ステンレス鋼から形成される。
【0056】
図10A/10B、図11A/11Bおよび図12A/12Bは、経心膜アプローチでの穿刺針の心臓壁を通る段階的前進を、穿刺針72に接続された1つの電極を有するEKGシステムの読み出し情報の相補的な画像と共に示す。最初に、上述のように、可撓性シース82は、三尖弁を通って右心室へとアクセス経路(例えば、大腿静脈)を通って進められる。シース82の遠位先端104は、例えば、心エコー法を使用して非常に可視的である、拡大したエコー源性リングとして形成され得る。シース82は、右心室の内壁に近接して停止され、針72の鋭利な遠位先端110は、図10Aのように心筋内に進められる。この結果、図10Bに示すように、EKGトレースのS-Tセグメントが増加する。
【0057】
その後、図11Aに示すように、心筋を通って心膜内の空間内に遠位先端110をさらに進めることで、EKG読み出し情報の特徴が変化する。すなわち、導電性先端110は、図11Bに示すように、組織ではなく空洞内にあり、EKGトレースは、減少したS-Tセグメントを有するより正常な特性を確保する。
【0058】
最後に、図12Aは、遠位先端110が心膜P内に入るまで針72が前進することを示し、この場合もまた、EKG読み出し情報が変化する。すなわち、S-Tセグメントは再び正常値より上に上昇する。EKGモニターはまた、典型的には、環状トレースの様々なピークおよびトラフの数値も示し、したがって、S-Tセグメントの大きさの変化を容易に見ることができる。
【0059】
蛍光透視およびエコー法の一方または両方との組み合わせにより、能動穿刺ツール70の使用は、アンカー56のその後の展開のために、針72の遠位先端110を迅速かつ正確に位置付ける能力を大幅に強化する。この追加の適応では、このことは、経心膜アプローチにおいて、針72が右心室腔から心膜腔まで移行し、さらに胸腔まで移行した時に、容易に明らかになる。これらの各工程の間、オペレータは、EKGモニター上に、針72が何に直接接触しているかについて固有の信号トレースを伴う、リアルタイムライブ読み出し情報を有することになる。例えば、上述のように、右心室の自由空間から右心室の心筋と接触した状態に移行すると、EKGで著しいS-Tセグメント上昇が生じ、針先端が心筋と接触していることが大きな確信をもって示される。針が胸腔の自由空間に押し込まれると、このS-Tセグメント上昇は消え、オペレータはそれらがアンカーを展開する自由空間内にあることを確認することができる。この追加のセンサー入力を組み込むことで、成功した穿刺の確認に必要な時間が短縮され、実施された動物試験中の処置内合併症が劇的に減少した。
【0060】
図13は、針72から現れる代替的なひっかけかぎ式アンカー120を組み込んだ、能動穿刺ツール70の斜視図である。図14は、近位管状バレル122と、その遠位端上に複数の個々の突起またはタイン124とを備える、代替的なアンカー120の斜視図である。管状バレル122は、アンカー120を逆流減少スペーサーまたは他のインプラントに連結するために使用される中空の可撓性シャフトまたはテザー126の遠位端に取り付けられ得る。
【0061】
複数の保持縫合糸またはフィラメント128は、テザー126を通って、制御ハンドル84に近位に延在する。保持縫合糸128の各々は、管状バレル122の複数の穴130の1つを通って半径方向に外向きに出て、その遠位先端で固定されるタイン124の主に1つの外側に沿って延在する。一実施形態では、一連のクリート132は、各タイン24に沿って形成され、保持縫合糸128は、クリートを通して織られる。例えば、クリート132の各々は、縫合糸128が下に通過し、その後、各タインの厚さを通して再び上に戻るように、ブリッジによって分離された一対の開口部によって形成されてもよい。縫合糸128は、引っ張られるときにそれに対して外側への力が働くように、タイン124の半径方向に外向きに沿って延在する。
【0062】
アンカー120は、管状バレル122の長手方向軸の周りに均等に(すなわち、120°おきに)分布し、厚さよりも比較的幅が広く、かつ丸みのある遠位先端を有する、3つのタイン124とともに図示されている。もちろん、3つ以上のタイン124があってもよく、遠位先端がより尖っていてもよい。タイン124は、管状バレル122の延長部から形成されてもよく、したがって凸状外表面を有するが、それらはまた平坦化されてもよい。好ましくは、アンカー120は、ニチノールの管状ブランクをレーザー切断することによって形成され、弛緩時にタイン124が外向きに回転するように、形状が設定(すなわち、熱処理)される。したがって、タイン124は、それらが針72内に実質的に長手方向に拘束され、遠位方向に延在する、展開されていない構成と、タインが針72内から遠位に前進し、半径方向に外向きに回転する、展開された構成とを有する。タイン124はそれぞれ、その自由端が概して近位方向に延在する弛緩した構成に向かって展開された構成で分離するように、半径方向に外向きのばねの付勢を有する。
【0063】
保持縫合糸128は、それぞれのタイン124の遠位先端に沿って、またそれらに張力を加えるために利用される。図14Aの断面図を参照すると、保持システムの起動が図示されている。すなわち、保持縫合糸128上の近位方向の張力は、それぞれのタイン上でその遠位先端に伝達される。これにより、遠位先端が上向きまたは近位方向に巻かれる。この挙動を容易にするために、タイン124の各々は、針72内に最初に位置付けられた時に真っ直ぐになるように、弛緩した構成で近位曲線を用いて行われてもよい。組織に埋め込まれると、タイン124は近位方向に戻り始め、これは保持縫合糸128の張力によって助けられ得る。
【0064】
図15は、組織に埋め込まれた穿刺針72の図であり、図14の代替的なアンカー120が組織に進んでいる。組織内の穿刺針72の遠位先端の明確な位置は、接続されたEKGモニターによって、また、できれば蛍光透視およびエコー法の一方または両方を使用することによって、再び確認されることが望ましい。この時点で、アンカー120のタインは、図16Aに示す完全に展開された位置に到達するために、外向きに回転し、それ自体に巻き戻され始める。
【0065】
続いて、図16Bに示すように、保持縫合糸128の張力は、矢印によって図示するように、タイン124の遠位先端を内向きに引き、これは、アンカー120を組織内に保持することに役立ち、アンカーが組織から引き出される傾向に効果的に直接的に抵抗する。すなわち、管状バレル122に適用される任意の近位力には、通常は、組織から可撓性タインを引き抜く傾向がある。例えば、図17Aは、組織に埋め込まれた従来的なアンカーを示す断面図であり、図17Bは、張力によって組織内から引き出す可能性を示す。すなわち、縫合糸128の保持作用なしに、従来的なアンカーのタインは、テザーにかかる近位力から組織内で真っ直ぐになり、そこから引き出される傾向がある。したがって、望ましい張力が保持用の縫合糸128内で確立され、その後、縫合糸は、上述の逆流減少スペーサーなど、インプラントの近位に位置付けられた部分に結び付けられる。
【0066】
上述のように、針位置システムおよび方法は、多数の異なる心臓処置に有用である。例えば、図18は、心臓弁輪の近接部への弁輪形成バンド展開シース140の前進を示す概略図である。図19Aは、図18のシース140を使用した、弁輪形成バンド142の展開工程を示す断面図である。シース140は、針を正確に位置付けるために、上述したように、能動穿刺針72を組み込む。針72は、中空バンド142を通って延在するより大きな送達管146内に収容されたコイル状アンカー144を通過し、同心アセンブリは展開シース140を通って弁輪に前進する。
【0067】
図19Bは、弁輪形成バンド142の一部分が弁輪に埋め込まれた後の斜視図である。展開システムは、一連のアンカー144を、弁輪組織の間隔を置いた位置に埋め込み、弁輪の周りに弁輪形成バンド142を連続的に固定する。システムは、Cardioband Mitral and Tricuspid Valve Reconstruction Systemという名称で、Edwards Lifesciences(カリフォルニア州アーバイン)によって販売され、能動穿刺針72が追加されたものと類似している。図示されていないが、EKGシステムのリードは、導電性先端を除いて絶縁され、上述の方法で機能する針72に接続される。前述のシステムとは対照的に、針は逆に、アンカー144の中央を通過する。送達管146内の同心プッシャー(図示せず)は、針72に対してアンカー144を1つずつ進めて回転させる。針72は、各アンカー144が展開された後、送達管146内に収納され、その後、異なる位置で前進されて、次のアンカーが適切な組織深度に埋め込まれることを確実にする。
【0068】
前述は本発明の好ましい実施形態の完全な説明であるが、様々な代替案、改変、および等価物を使用してもよい。さらに、特定の他の修正が、添付の特許請求の範囲内で実施され得ることが明らかであろう。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4-4A】
図5
図6
図6A
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図14A
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図18
図19
【国際調査報告】