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特表2024-505948タンパク質M類似体及び融合タンパク質、並びに抗体機能を阻害するためのそれらの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】タンパク質M類似体及び融合タンパク質、並びに抗体機能を阻害するためのそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/31 20060101AFI20240201BHJP
   C07K 14/30 20060101ALI20240201BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240201BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240201BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240201BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240201BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240201BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20240201BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20240201BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240201BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240201BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240201BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240201BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240201BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240201BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240201BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20240201BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240201BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240201BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240201BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C12N15/31
C07K14/30 ZNA
C07K19/00
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/86 Z
C12N15/88 Z
C12N15/09 110
C12N15/113 Z
C12P21/02 C
A61K39/00 Z
A61K48/00
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P7/00
A61P9/00
A61P37/06
A61K45/00
G01N33/53 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546323
(86)(22)【出願日】2022-02-03
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 US2022015127
(87)【国際公開番号】W WO2022169984
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】63/145,188
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514299550
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【弁理士】
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【弁理士】
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【弁理士】
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】アスキュー チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】リー チェンウェン
(72)【発明者】
【氏名】クールマン ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】シーカー デイビッド フォレスト
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA02
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA26X
4B065AA37Y
4B065AB01
4B065AC13
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA13
4C084AA22
4C084MA02
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZA36
4C084ZA51
4C084ZB08
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA06
4C085BA48
4C085BB11
4C085CC07
4C085DD62
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA11
4H045EA22
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、抗体を結合させるための方法及び組成物に関する。方法は、抗体を単離するため、過剰な抗体と関連する障害を治療するため、自己免疫性又は炎症性応答を止めるために抗体を急性的にブロックするため、及び中和抗体を阻害するために使用され得る。実施形態において、本発明は、異種薬剤が対象に投与される場合に、異種薬剤に対する中和抗体を阻害する方法であって、有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を対象に投与し、それによって異種薬剤の中和を阻害することを含む、方法に関する。本発明は更に、野生型タンパク質Mと比較して増加した熱安定性を有する修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片、及び本発明の方法におけるそれらの使用に関する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片であって、野生型マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片と比較して、前記マイコプラズマタンパク質M若しくはその機能的断片のpH安定性又は熱安定性を増加又は維持する1つ以上のアミノ酸変異を有し、熱安定性が、最大75度、70度、65度、60度、55度、50度、45度、40度、若しくは38度で維持され、かつ/又はpH安定性が、pH2~8、pH2.5~7.5、若しくはpH4.5~7.5で維持される、修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片。
【請求項2】
野生型マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片と比較して、前記マイコプラズマタンパク質M若しくは機能的断片のpH安定性又は熱安定性を増加させる1つ以上のアミノ酸変異を有する、請求項1に記載の修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片。
【請求項3】
前記タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体が、タンパク質M断片である、請求項1又は2に記載の修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片。
【請求項4】
Mycoplasma genitalium、Mycoplasma pneumoniae、又はMycoplasma penetransのタンパク質Mに由来する、請求項1~3のいずれか一項に記載の修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片。
【請求項5】
前記タンパク質Mの機能的断片が、M.genitaliumタンパク質M(配列番号1)のアミノ酸残基17~537、37~556、37~482、37~468、37~442、74~468、74~479、74~482、74~468、若しくは74~442、又は別のタンパク質Mからの同等の残基を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片。
【請求項6】
M.genitaliumタンパク質M(配列番号3)の約残基74~約残基479、又はM.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)の同等の残基の断片である、請求項1~5のいずれか一項に記載の修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片。
【請求項7】
前記1つ以上の変異が、M.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)の残基77、125、165、170、及び280、又はそれらの任意の組み合わせにある、請求項1~6のいずれか一項に記載の修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片。
【請求項8】
前記1つ以上の変異が、M.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)のA77E、K125R、V165Q、H170T、及びA280V、又はそれらの任意の組み合わせである、請求項7に記載の修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片。
【請求項9】
前記1つ以上の変異が、M.genitaliumタンパク質M(配列番号1)の
a)159、
b)182、
c)102、
d)161、
e)86、
f)101、
g)147、
h)236、
i)348、
j)424、
k)147、
l)321、
m)389、
n)442、
o)119、
p)179、
q)186、若しくは
r)103
、又はM.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)の同等の残基、あるいはそれらの任意の組み合わせから選択される残基にある、請求項1~6のいずれか一項に記載の修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片。
【請求項10】
前記1つ以上の変異が、M.genitaliumタンパク質M(配列番号1)の
a)Q159C及びA182C、
b)A102C及びT161C、若しくは
c)I86C及びF101C
、又はM.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)の同等の残基、あるいはそれらの任意の組み合わせから選択され、前記a)、b)、又はc)の修飾残基が、前記修飾残基間にジスルフィド結合を形成することができる(例えば、配列番号34)、請求項9に記載の修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片。
【請求項11】
前記1つ以上の変異が、M.genitaliumタンパク質M(配列番号1)の
a)H147Y、
b)H236Y、
c)H348Y、
d)H424Y、若しくは
e)H147Q
、又はM.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)の同等の残基、あるいはそれらの任意の組み合わせから選択され、前記変異が、低pHでのその部位でのヒスチジンプロトン化を防ぎ、それによってタンパク質不安定化を防ぐことができる、請求項9に記載の修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片。
【請求項12】
前記1つ以上の変異が、M.genitaliumタンパク質M(配列番号1)の
a)N321H、
b)Y389H、
c)N442H、
d)P119H、
e)T179H、
f)G186H、若しくは
g)N103H
、又はM.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)の同等の残基、あるいはそれらの任意の組み合わせから選択され、前記変異が、pH感受性を増加させ、それによって抗体精製の溶出条件を改善することができる、請求項9に記載の修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片。
【請求項13】
前記変異が、M.genitaliumタンパク質M(配列番号1)の残基338(例えば、Y388N)、又はM.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)の同等の残基にある、請求項1~6のいずれか一項に記載の修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片。
【請求項14】
前記修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片が、1つ以上のグリコシル化部位を除去するために更に修飾される、請求項1~13のいずれか一項に記載の修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片。
【請求項15】
M.genitaliumタンパク質M(配列番号1)の約残基185~約残基342、又は別のマイコプラズマタンパク質Mの同等の残基の欠失を有する、修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片。
【請求項16】
前記欠失が、アミノ酸185~342である、請求項15に記載の修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片。
【請求項17】
欠失した前記アミノ酸が、短いリンカーによって置換される、請求項15又は16に記載の修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片。
【請求項18】
新たに露出した疎水性残基が、1つ以上の変異を有する、請求項15~17のいずれか一項に記載の修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片。
【請求項19】
融合タンパク質であって、
請求項1~18のいずれか一項に記載の修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片と、
リンカーと、
ペプチドと、を含む、融合タンパク質。
【請求項20】
前記修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片が、抗体に対する前記修飾マイコプラズマタンパク質M若しくはその機能的断片の親和性又は結合力を増強する1つ以上の変異を有する、請求項19に記載の融合タンパク質。
【請求項21】
前記ペプチドが、二量体化ペプチド(例えば、IL-GCN4、C-IL-GCN4、配列番号36)である、請求項19又は20に記載の融合タンパク質。
【請求項22】
前記ペプチドが、Fab結合ポリペプチド又はFc結合ポリペプチドである、請求項19又は20に記載の融合タンパク質。
【請求項23】
前記Fab結合ポリペプチドが、プロテインLである、請求項22に記載の融合タンパク質。
【請求項24】
前記Fab結合ポリペプチド又はFc結合ポリペプチドが、プロテインA又はその機能的断片である、請求項22に記載の融合タンパク質。
【請求項25】
前記融合タンパク質が、免疫グロブリンのFc部分と結合し、かつ/又は前記免疫グロブリンのFc受容体リサイクリングを減少させ、かつ/又は前記融合タンパク質の免疫グロブリンとの結合を増加させる、請求項24に記載の融合タンパク質。
【請求項26】
前記Fab結合ポリペプチド又はFc結合ポリペプチドが、プロテインG又はその機能的断片である、請求項22に記載の融合タンパク質。
【請求項27】
前記融合タンパク質が、免疫グロブリンのFc部分と結合し、かつ/又は前記免疫グロブリンのFc受容体リサイクリングを減少させ、かつ/又は前記融合タンパク質の免疫グロブリンとの結合を増加させる、請求項26に記載の融合タンパク質。
【請求項28】
前記ペプチドが、二量体化ペプチド及びプロテインLを含む、請求項19又は20に記載の融合タンパク質。
【請求項29】
前記融合タンパク質が、N末端から始まり、二量体化ペプチド、第1のリンカー、プロテインL、第2のリンカー、及び請求項1~18のいずれか一項に記載の修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片を順に含む、請求項28に記載の融合タンパク質。
【請求項30】
前記ペプチドが、Fc結合ポリペプチドである、請求項19又は20に記載の融合タンパク質。
【請求項31】
前記Fc結合ポリペプチドが、Fc受容体である、請求項19又は20に記載の融合タンパク質。
【請求項32】
前記ペプチドが、Fab結合ポリペプチド及びプロテインLを含む、請求項19又は20に記載の融合タンパク質。
【請求項33】
前記融合タンパク質が、N末端から始まり、Fc結合ポリペプチド、第1のリンカー、プロテインL、第2のリンカー、及び請求項1~18のいずれか一項に記載の修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片を順に含む、請求項32に記載の融合タンパク質。
【請求項34】
前記ペプチドが、Fcドメインである、請求項19又は20に記載の融合タンパク質。
【請求項35】
前記Fcドメインが、Fc受容体と結合するための補体結合残基を含む、請求項34に記載の融合タンパク質。
【請求項36】
前記Fcドメインが、Fc受容体と結合するための補体結合残基の1つ以上の変異を有する、請求項35に記載の融合タンパク質。
【請求項37】
前記ペプチドが、Fc受容体タンパク質であり、前記融合タンパク質が、抗体の細胞取り込みを減少させ、抗体リサイクリングを減少させ、抗体リサイクリングの減少により免疫グロブリン枯渇を引き起こすか、又は免疫グロブリンに対する前記融合タンパク質の親和性を増加させる、請求項19又は20に記載の融合タンパク質。
【請求項38】
請求項1~18のいずれか一項に記載の第2の修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片を更に含む、請求項19~37のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項39】
半減期延長部分、例えば、ヒトアルブミン若しくはポリエチレングリコール(PEG)の添加、タンパク質修飾、例えば、アシル化、メチル化、リン酸化、硫酸化、ファルネシル化、ユビキチン化、部位選択的結合、グリコシル化、PTMの導入、PEG化、ライゲーション、タンパク質系開始剤の重合、又は結合、親和性、結合標的、若しくはそれらの任意の組み合わせを変更し得る任意の修飾を更に含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の修飾マイコプラズマタンパク質M若しくはその機能的断片、又は請求項19~38のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項40】
請求項1~18のいずれか一項に記載の修飾マイコプラズマタンパク質M若しくはその機能的断片、又は請求項19~38のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項41】
プロモーターと作動可能に連結されている、請求項40に記載のポリヌクレオチド。
【請求項42】
前記プロモーターが、細菌プロモーターである、請求項41に記載のポリヌクレオチド。
【請求項43】
前記プロモーターが、哺乳動物プロモーターである、請求項41に記載のポリヌクレオチド。
【請求項44】
前記ポリヌクレオチドが、E.coliなどの細菌における発現のためにコドン最適化されている、請求項40~43のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項45】
前記ポリヌクレオチドが、ヒト細胞などの哺乳動物細胞における発現のためにコドン最適化されている、請求項40~43のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項46】
前記ポリヌクレオチドが、E.coliなどの細菌及びヒト細胞などの哺乳動物細胞の両方における発現のためにコドン最適化されている、請求項40~43のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項47】
請求項40~46のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項48】
前記ベクターが、細菌ベクターである、請求項47に記載のベクター。
【請求項49】
前記ベクターが、哺乳動物ベクターである、請求項47に記載のベクター。
【請求項50】
請求項40~46のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、及び/又は請求項47~49のいずれか一項に記載のベクターを含む、形質転換細胞。
【請求項51】
E.coliなどの細菌細胞である、請求項50に記載の形質転換細胞。
【請求項52】
ヒト細胞などの哺乳動物細胞である、請求項50に記載の形質転換細胞。
【請求項53】
前記ポリヌクレオチドが、前記細胞のゲノムに安定して組み込まれる、請求項50~52のいずれか一項に記載の形質転換細胞。
【請求項54】
対象への異種薬剤の投与時に抗体を中和することによって前記異種薬剤の中和を阻害する方法であって、有効量の請求項1~18のいずれか一項に記載のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは請求項19~38のいずれか一項に記載の融合タンパク質を前記対象に投与し、それによって前記異種薬剤の中和を阻害することを含む、方法。
【請求項55】
前記異種薬剤が、核酸送達ベクターである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記核酸送達ベクターが、ウイルスベクターである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記ウイルスベクターが、腫瘍溶解性ベクターである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、バキュロウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、ポリオウイルス、又はアデノウイルスベクターである、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記核酸送達ベクターが、非ウイルスベクターである、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
前記非ウイルスベクターが、プラスミド、リポソーム、荷電脂質、核酸-タンパク質複合体、又は生体高分子(例えば、PEG)である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記異種薬剤が、遺伝子編集複合体である、請求項54に記載の方法。
【請求項62】
前記遺伝子編集複合体が、CRISPR複合体である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記異種薬剤が、タンパク質又は核酸である、請求項54に記載の方法。
【請求項64】
前記タンパク質が、酵素である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記核酸が、アンチセンス核酸又は阻害性RNAである、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記有効量のタンパク質Mが、中和を少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98、99%、99.5%、又は99.9%阻害するのに十分な量である、請求項54~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記有効量のタンパク質Mが、モルベースで約0.5:1~約5:1、例えば、約2:1の前記対象におけるタンパク質Mの総免疫グロブリンに対する比を生成するのに十分な量である、請求項54~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは前記融合タンパク質が、前記異種薬剤の投与前(例えば、約1分~約3日前、約5分~約48時間前、約10分~約24時間前、約20分~約12時間前、約30分~約6時間前、又は約1時間~約3時間前)に前記対象に投与される、請求項54~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは前記融合タンパク質が、前記異種薬剤の投与と同時に前記対象に投与される、請求項54~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記異種薬剤が、前記対象への投与前に、前記タンパク質M、又はその断片若しくは誘導体、あるいは前記融合タンパク質と組み合わされる、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体が、前記対象へ1回よりも多く投与される、請求項54~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
第2の用量が、第1の用量の約2日後~約10年以上後に投与される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体が、前記異種薬剤が前記対象に投与されるときに毎回、前記対象に投与される、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
同じタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体が、毎回投与される、請求項71~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
異なるタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体が、毎回投与される、請求項71~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記対象における抗体濃度を低減させるための追加の治療を前記対象に施すことを更に含む、請求項54~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記追加の治療が、血漿交換、抗体消化酵素、例えば、IdeS若しくはIdeZの投与、FcRn受容体と結合する抗体の投与、FcRn受容体と結合するFc断片の投与、B細胞上のCD19と結合して、若しくはCD20と結合してそれらを枯渇させる抗体の投与、又は他のB細胞枯渇方法、例えば、脾臓摘出術、化学療法、免疫療法、若しくは放射線療法である、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記追加の治療が、前記タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体の投与前、投与中、及び/又は投与後に施される、請求項76又は77に記載の方法。
【請求項79】
前記投与が、局所的である、請求項54~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記投与が、全身的である、請求項54~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記投与が、抗体サイクリングの量を減少させ、前記減少の開始が、約5分~約8週、約5分~約1時間、約1時間~約2日、又は約2日~約8週である、請求項54~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記投与が、抗体サイクリングの量を減少させ、前記減少の開始が、約1時間~約3時間である、請求項54~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記投与が、約1e9vg/kg~約1e14vg/kg、約1e10vg/kg~約1e13vg/kg、又は約1e11vg/kg~約1e12vg/kgのAAV、約1μl~約6Lの血清、及び約1mg/kg~約1000mg/kg、約10mg/kg~約900mg/kg、約25mg/kg~約800mg/kg、約50mg/kg~約600mg/kg、約100mg/kg~約500mg/kg、又は約200mg/kg~約400mg/kgのタンパク質Mを含む、請求項54~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記投与が、タンパク質Mの血清免疫グロブリンに対する約0.5:1~約50:1のモル比を達成するのに十分なタンパク質Mを含む、請求項54~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記投与が、自己中和抗体に勝る、請求項54~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
対象においてポリペプチド又は機能的核酸を発現させる方法であって、(a)前記ポリペプチド又は機能的核酸をコードする核酸送達ベクターと、(b)有効量の請求項1~18のいずれか一項に記載のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは請求項19~38のいずれか一項に記載の融合タンパク質と、を前記対象に投与し、それによって前記対象において前記ポリペプチド又は機能的核酸を発現させること、を含む、方法。
【請求項87】
障害を治療することを必要とする対象においてそれを実施する方法であって、前記障害が、前記対象においてポリペプチド又は機能的核酸を発現させることによって治療可能であり、(a)治療有効量の前記ポリペプチド又は機能的核酸をコードする核酸送達ベクターと、(b)有効量の請求項1~18のいずれか一項に記載のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは請求項19~38のいずれか一項に記載の融合タンパク質と、を前記対象に投与し、それによって前記対象の前記障害を治療することを含む、方法。
【請求項88】
対象の遺伝子を編集する方法であって、(a)有効量の遺伝子編集複合体と、(b)有効量の請求項1~18のいずれか一項に記載のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは請求項19~38のいずれか一項に記載の融合タンパク質と、を前記対象に投与し、それによって前記対象において前記ポリペプチド又は機能的核酸を発現させることを含む、方法。
【請求項89】
自己免疫疾患を治療することを必要とする対象においてそれを実施する方法であって、治療有効量の請求項1~18のいずれか一項に記載のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは請求項19~38のいずれか一項に記載の融合タンパク質を前記対象に投与し、それによって前記自己免疫疾患を治療することを含む、方法。
【請求項90】
過剰な抗体と関連する障害を治療することを必要とする対象においてそれを実施する方法であって、治療有効量の請求項1~18のいずれか一項に記載のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは請求項19~38のいずれか一項に記載の融合タンパク質を前記対象に投与し、それによって前記過剰な抗体と関連する障害を治療することを含む、方法。
【請求項91】
前記過剰な抗体と関連する障害が、多発性骨髄腫、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)、ワルデンストレームマクログロブリン血症、サイトカイン放出症候群、又は急性自己免疫攻撃、例えば、突然発症する重度の自己免疫性血管炎である、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
レシピエント抗体による移植の認識と関連する固形臓器の急性移植拒絶反応を予防及び/又は治療することを必要とする対象においてそれを実施する方法であって、治療有効量の請求項1~18のいずれか一項に記載のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは請求項19~38のいずれか一項に記載の融合タンパク質を前記移植前及び/又は移植後に前記対象に投与し、それによって前記急性移植拒絶反応を治療することを含む、方法。
【請求項93】
前記マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体が、経口、直腸、経粘膜、鼻腔内、吸入、口腔(例えば舌下)、膣、髄腔内、眼球内、硝子体内、蝸牛内、経皮、内皮内、子宮内(又は胚内)、非経口(例えば、静脈内、皮下、皮内、頭蓋内、筋肉内[骨格筋、横隔膜及び/又は心筋への投与を含む]、胸膜内、脳内、及び関節内)、局所(例えば、皮膚及び粘膜表面(気道表面を含む)の両方、及び経皮投与)、リンパ内など、並びに直接的な組織又は臓器注入(例えば、肝臓、眼、骨格筋、心筋、横隔膜筋又は脳)から選択される経路によって、前記対象へ投与される、請求項54~92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体が、骨格筋、平滑筋、心臓、横隔膜、気道上皮、肝臓、腎臓、脾臓、膵臓、皮膚、肺、耳、又は眼へ投与される、請求項54~92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体が、病変組織又は臓器へ投与される、請求項54~94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
前記対象が、ヒトである、請求項54~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
試料から抗体軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域を含む化合物を単離する方法であって、前記方法が、前記化合物を、固体支持体に付着した請求項1~18のいずれか一項に記載の修飾マイコプラズマタンパク質M若しくはその機能的断片、又は請求項19~38のいずれか一項に記載の融合タンパク質と接触させ、次いで、前記化合物を前記修飾マイコプラズマタンパク質M若しくはその機能的断片、又は融合タンパク質から溶出することを含む、方法。
【請求項98】
抗体軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域を含む前記化合物が、抗体又はその抗原結合断片である、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記固体支持体が、ビーズ又は粒子である、請求項97又は98に記載の方法。
【請求項100】
前記固体支持体が、アガロース、ポリアクリルアミド、デキストラン、セルロース、多糖類、ニトロセルロース、シリカ、アルミナ、酸化アルミニウム、チタニア、酸化チタン、ジルコニア、スチレン、ポリビニルジフルオリドナイロン、スチレン及びジビニルベンゼンのコポリマー、ポリメタクリレートエステル、誘導体化アズラクトンポリマー若しくはコポリマー、ガラス、又はセルロースを含む、請求項97~99のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
前記化合物が、pHの変化によって溶出される、請求項97~100のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
固体支持体に付着した、請求項1~18のいずれか一項に記載の修飾マイコプラズマタンパク質M若しくはその機能的断片、又は請求項19~38のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項103】
免疫測定法を実施する方法であって、前記方法が、請求項1~18のいずれか一項に記載の修飾マイコプラズマタンパク質M若しくはその機能的断片、又は請求項19~38のいずれか一項に記載の融合タンパク質を使用して、抗体軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域を含む化合物と結合させることを含む、方法。
【請求項104】
前記免疫測定法が、放射免疫測定法(RIA)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)アッセイ、酵素免疫測定法(EIA)、サンドイッチアッセイ、ゲル拡散沈殿反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、免疫蛍光アッセイ、蛍光活性化セルソーティング(FACS)アッセイ、免疫組織化学アッセイ、プロテインA免疫測定法、プロテインG免疫測定法、プロテインL免疫測定法、ビオチン/アビジンアッセイ、ビオチン/ストレプトアビジンアッセイ、免疫電気泳動アッセイ、沈殿/フロキュレーション反応、免疫ブロット(ウエスタンブロット;ドット/スロット・ブロット);免疫拡散アッセイ;リポソーム免疫測定法、化学発光アッセイ、ライブラリスクリーニング、発現アレイ、免疫沈降、競合結合アッセイ、及び免疫組織化学染色から選択される、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
請求項1~18のいずれか一項に記載の修飾マイコプラズマタンパク質M若しくはその機能的断片、又は請求項19~38のいずれか一項に記載の融合タンパク質、又は請求項102に記載の固体支持体を含む、キット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の陳述
本出願は、2021年2月3日に出願された米国仮出願第63/145,188号の利益を主張し、その内容全体は参照により本明細書中に援用される。
【0002】
本発明は、抗体を結合させるための方法及び組成物に関する。方法は、抗体を単離するため、過剰な抗体と関連する障害を治療するため、自己免疫性又は炎症性応答を止めるために抗体を急性的にブロックするため、及び中和抗体を阻害するために使用され得る。実施形態において、本発明は、異種薬剤が対象に投与される場合に、異種薬剤に対する中和抗体を阻害する方法であって、有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を対象に投与し、それによって異種薬剤の中和を阻害することを含む、方法に関する。本発明は更に、野生型タンパク質Mと比較して増加した熱安定性を有する修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片、及び本発明の方法におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
米国内の約10人に1人が稀な遺伝子疾患を患っており、寿命、生活の質、自立、及び経済情勢に重大な影響を及ぼし得る。遺伝子療法は、遺伝性疾患を矯正するための処置の最も有望な形態である。遺伝子療法の中でも、送達ビヒクル、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが、非常に多くの臨床試験において治療的効果を示している。最初にFDAが承認した遺伝子療法は盲目患者で用いられている。AAV遺伝子療法に関する臨床試験数は、長期の治療的遺伝子発現に関し、その安全性及び多くの異なるタイプの臓器の標的化における成功に起因して実質的に増えている。臨床的な成功にもかかわらず、AAVが介在する遺伝子送達に対する主な障壁は、標的組織のベクター形質導入をブロックする中和抗体(NAb)の高い出現率である。一般集団の90%よりも多くが、自然感染を介してAAVに曝露されており、50%よりも多くの人が、AAVに対するNAbに関して血清陽性である。NAbは治療的有効性を著しく減衰させ、成果の変動性を生じさせるので、臨床試験スクリーニング中の特定の閾値を超える既存のNAbの同定は、患者の登録を不適格にさせる。
【0004】
AAV NAbを克服するために、いくつかのアプローチ:連続的な血漿交換、免疫抑制薬、及び、免疫エピトープを除去するためのベクターカプシドの変更が採用されている。血漿交換は非効率であり、セッションごとに残存するNAbの2~3倍を取り出す複数回を要し、低力価のNAbしか対処することができない。また、血漿交換は時間がかかり、同時の抗体欠乏及び繰り返しの静脈内の針曝露を介して患者を院内感染の伝染リスクに曝す。B細胞を死滅化させるためのステロイド又は薬理学的免疫抑制は重大な健康リスクを有しており、NAbを更に10倍減少させるためには長期のレジメンを必要とする。AAVカプシド工学は革新的な方法であるが、ポリクローナル抗AAV血清に対しては最終的に不十分であり、抗体エスケープのわずか10倍の増加がインビボで観察される。更に、NAb認識エピトープを変更するためのカプシド構造の修飾は、これらの変更された表面領域は多機能性であるので、典型的に、強力でないベクター及び不完全なベクターの産生をもたらす。現在のアプローチは、臨床試験除外に関して設定された典型的な閾値を超える既存の抗AAV NAbをうまく克服せず、又は同じAAVベクターの繰り返し投与を可能にしない。
【0005】
マイコプラズマタンパク質Mは、非特異的に抗体と結合し、抗原と抗体が結合する能力をブロックすることが可能であるとして同定されている(米国特許第9,593,150号;米国公開第2017/0320921号)。
【0006】
本発明は、抗体結合に基づいてNabを普遍的にブロックするベクター非依存性タンパク質に基づく方法、並びに他の方法及び組成物を提供することによって、当該技術分野における欠点を克服する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、NAbを普遍的にブロックするためのベクター非依存性のタンパク質に基づく方法の開発及び当該方法が広範囲の既存のNAb濃度に対して効果的であるという実証に部分的に基づく。本発明は、異種薬剤(例えば、AAVベクター)を対象へ投与した際のNAbによる異種薬剤の中和を防止することにより成功的な遺伝子送達を可能にするために、独特なマイコプラズマ由来タンパク質及びその類似体(タンパク質Mと呼ばれる)の使用を開拓する。タンパク質Mは、抗体軽鎖及び重鎖上の保存領域に普遍的に結合して、抗原認識CDR領域と構造的干渉を生じさせることにより、種及び抗原に依存しない様式で哺乳動物のIgG、IgM、及びIgA抗体クラスをブロックすることが示された。タンパク質Mは、ナノモルの親和性で抗体と結合し、様々な異なる試験された免疫グロブリン/抗原ペアに関して抗原抗体結合を妨げる。本発明者らは、タンパク質Mが抗体によるAAVの認識をブロックすること、及び抗体が介在するAAVの中和を防止することを見出した。NAbからエスケープするAAVベクターのレベルは、NAb力価及び体積、タンパク質Mの量、及びAAVの量に比例することが示された。タンパク質Mが介在するNAbエスケープは、ヒト血清(IVIG)及びAAV免疫化マウス由来の血清を用いてインビトロ及びインビボで確認された。タンパク質Mは、NAb回避のために、AAV投与の前に単独で投与することができ、又はAAVとともに製剤化することができることが示された。このアプローチの有効性は、AAVが中和される前の免疫グロブリンとタンパク質Mの相互作用に依存する。このアプローチは、特有の遺伝子療法適用のための各薬剤の独特又は有益な特性を維持しながら、複数の異種薬剤(例えば、AAVベクター血清型)に対するNAbを克服するために用いることができる。
【0008】
本発明は更に、自己免疫障害の治療、過剰抗体と関連する障害の治療、抗体を単離する方法、及び免疫測定法を行う方法を含む、抗体と結合することが有益である他の方法におけるタンパク質Mの使用に関する。
【0009】
本発明は更に、本発明の方法をインビボ又は高温で実施するために増加した熱安定性及び/又は他の有利な特性(例えば、野生型マイコプラズマタンパク質M若しくはその機能的断片と比較して増加又は維持されたpH安定性)を有する修飾タンパク質Mタンパク質に関する。
【0010】
したがって、本発明の一態様は、野生型マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片と比較して、マイコプラズマタンパク質M若しくはその機能的断片の熱安定性及び/又はpH安定性を増加又は維持する1つ以上のアミノ酸変異を有する、修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片に関する。いくつかの実施形態において、熱安定性は、最大75℃、70℃、65℃、60℃、55℃、50℃、45℃、40℃、若しくは38℃で維持され、かつ/又はpH安定性は、pH2~8、pH2.5~7.5、若しくはpH4.5~7.5に維持される。
【0011】
本発明の別の態様は、修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片と、リンカーと、ペプチドと、を含む、融合タンパク質に関する。
【0012】
本発明の更なる一態様は、本発明の修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片をコードするポリヌクレオチド及びそれを含むベクター又は形質転換された細胞に関する。
【0013】
本発明の別態様は、対象への異種薬剤の投与時に抗体を中和することによって異種薬剤の中和を阻害する方法であって、有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を対象に投与し、それによって異種薬剤の中和を阻害することを含む、方法に関する。
【0014】
本発明の更なる態様は、対象においてポリペプチド又は機能的核酸を発現させる方法であって、(a)ポリペプチド又は機能的核酸をコードする核酸送達ベクターと、(b)有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体と、を対象に投与し、それによって対象においてポリペプチド又は機能的核酸を発現させること、を含む、方法に関する。
【0015】
本発明の更なる態様は、障害を治療することを必要とする対象においてそれを実施する方法であって、障害が、対象においてポリペプチド又は機能的核酸を発現させることによって治療可能であり、(a)治療有効量のポリペプチド又は機能的核酸をコードする核酸送達ベクターと、(b)有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体と、を対象に投与し、それによって対象の障害を治療することを含む、方法に関する。
【0016】
本発明の別の態様は、対象の遺伝子を編集する方法であって、(a)遺伝子編集複合体と、(b)有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体と、を対象に投与し、それによって対象においてポリペプチド又は機能的核酸を発現させることを含む、方法に関する。
【0017】
本発明の更なる態様は、自己免疫疾患を治療することを必要とする対象においてそれを実施する方法であって、有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を対象に投与し、それによって自己免疫疾患を治療することを含む、方法に関する。
【0018】
本発明の更なる態様は、過剰な抗体と関連する障害を治療することを必要とする対象においてそれを実施する方法であって、治療有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を対象に投与し、それによって過剰な抗体と関連する障害を治療することを含む、方法に関する。本発明の別の態様は、レシピエント抗体による移植の認識と関連する固形臓器の急性移植拒絶反応を治療及び/又は予防することを必要とする対象においてそれを実施する方法であって、治療有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を移植前及び/又は移植後に対象に投与し、それによって急性移植拒絶反応を治療することを含む、方法に関する。
【0019】
本発明の別の態様は、試料から抗体軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域を含む化合物を単離する方法であって、方法が、化合物を、固体支持体に付着した本発明の修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片と接触させ、次いで、化合物を修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片から溶出することを含む、方法に関する。
【0020】
本発明の更なる態様は、免疫測定法を実施する方法であって、方法が、本発明の修飾マイコプラズマタンパク質M若しくはその機能的断片を使用して、抗体軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域を含む化合物と結合させることを含む、方法に関する。
【0021】
本発明の更なる態様は、本発明の修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片を含む、キットに関する。
【0022】
本発明のこれら及び他の態様は、以下の本発明の説明においてより詳細に示される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】ヒトIVIGが、用量依存的にAAV形質導入を阻害するAAV中和抗体を含むことを示す。ヒトIVIGの2倍希釈比を用いてAAV2中和プロットを作成した。50μgで始めて、IVIGを1μg未満まで段階的に希釈して、各希釈物をAAV2-ルシフェラーゼの2×10ウイルスゲノムと4℃で1時間インキュベートした後に、各ウェルに播種した。AAV2導入遺伝子発現によって生じる発光レポーターシグナルは、AAV形質導入の関数的読み取り値であり、培養HEK-293細胞を形質導入するのに利用できたAAVの量に比例する。この実験では、48ウェルプレートの各ウェルに1×10細胞を播種して、血清フリー培地中2,000のMOIで形質導入した(条件当たりn=3の技術的レプリケート)。ルシフェラーゼ活性の測定を形質導入の48時間後にプレートリーダー上で細胞溶解及びルシフェリンの添加後に行った。所定のIVIG量に関して中和されたAAVの割合間の関係は、12.5μgのIVIGにおいて、同等の容量のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含むIVIGなし対照と比較して、72%(+/-1.3%)の中和であると決定された。更に、25μgのIVIGはAAV2の96%(±0.2%)を中和し、50μgのIVIGは99%(±0.17%)を中和した。
図2】タンパク質MがヒトIVIGに存在する中和抗体からAAVを保護することを示す。前の図で2x10vgの用量で約70%のAAV2を中和することが確立された12.5μgのIVIGを使用し、抗体媒介中和からのエスケープをタンパク質Mの2倍希釈比を使用して調査した。この場合では、1分子のIgGに対して8分子のタンパク質Mのモル比で実験を始め、それは、1分子のIgGが、完全な抗体不活性化のために占有されるべきであるタンパク質M結合部位を2個有することを考慮すると、4倍過剰のタンパク質Mである。各ウェルにおいて、IVIGを最初に個々のタンパク質M希釈物と4℃で1時間インキュベートし、続いてAAV2-ルシフェラーゼ(2×10vg)を添加し、4℃で更に1時間インキュベートした。次いで、HEK-293細胞(1×10)をウェルに加え、48時間インキュベートした後、ルシフェラーゼレポーターシグナルを測定した。IVIGを含むがタンパク質Mを含まないウェルは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含むIVIGなし対照ウェルと比較して、AAVシグナルの約68%(+/-3.3%)減少を示した。しかしながら、タンパク質Mは、2:1よりも高いモル比で、AAVの中和を用量依存的にブロックし、中和を完全に防止したが(IVIGなし対照の108%~193%)、1:1又は0.5:1の比は部分的にのみ中和をブロックした(それぞれIVIGなし対照の52%及び40%)。更に、8:1及び4:1の比率で、IVIGなし対照よりもAAVルシフェラーゼシグナルの用量依存的な増加が観察された。全てのウェルを、48ウェルプレート中の血清フリー培地(条件当たりn=3の技術的レプリケート)においてトリプリケートで行い、ルシフェラーゼシグナルを形質導入の48時間後に測定した。
図3】過剰なタンパク質Mが、8:1よりも高いモル比では、NAbからの更なる保護をほとんど提供しないこと、及びタンパク質MがAAV形質導入を高めることを示す。AAVの形質導入を保護又は高めるタンパク質Mモル比の上限を確立する試みにおいて、中和抗体の条件とともに又は伴わずに、NAbエスケープアッセイを、8:1又は20:1のモル比で繰り返した。12.5μgのIVIGの添加は、IVIGなしPBS対照ウェルと比較して、80%(+/-2.6%)のAAV2-ルシフェラーゼシグナルを中和した。前の実験と同様に、12.5μgのIVIG(8:1モル比、33μgのタンパク質M)で4℃で1時間、続いてAAVと4℃で1時間インキュベーションしたタンパク質Mは、AAV中和を防止し、PBSを用いたIVIGなし対照の194%(+/-24%)までルシフェラーゼシグナルを増強した。NAbエスケープに必要なタンパク質Mの量の10倍では(20:1モル比、75μgタンパク質M)、PBSを含むIVIGなし対照に対して256%(+/-44%)へと、ルシフェラーゼ活性のわずかな増加が観察された。IVIG存在下で、20:1比のルシフェラーゼシグナルは、8:1比と統計的に違いがなかった。更に、IVIGなしでは、75μg又は33μgのタンパク質Mを単独でAAV2-ルシフェラーゼと4℃で1時間インキュベートした場合、ルシフェラーゼシグナルの量に有意差はなく(それぞれ208%対216%)、PBS対照と比較したルシフェラーゼシグナルの増加が、タンパク質Mに基づく増強に起因することが確認された。各ウェルに血清フリー培地中の1×10HEK-293細胞を播種し、48ウェルプレートのフォーマットにおいて2,000のMOIで形質導入した(ウェル条件当たりn=3の技術的レプリケート)。
図4】AAV形質導入のタンパク質M増強が用量依存的であることを示す。33μgで始めて、2倍希釈比のタンパク質Mは、タンパク質MとAAV2-ルシフェラーゼのインキュベーションが、PBS+AAV対照と比較してルシフェラーゼシグナルの増加をもたらすことを示す。ルシフェラーゼシグナルの増強は、2×10ウイルスゲノムに関して2μg未満のタンパク質Mの濃度において、すなわち、ゲノム含有AAV2-ルシフェラーゼ1粒子に対して40,000分子のタンパク質Mのモル比においては消失する。増強は、2×10ベクター粒子に関して約33μgのタンパク質M、又はゲノム含有AAV2-ルシフェラーゼ1粒子に対して約700,000分子のタンパク質Mで飽和し始める。タンパク質M希釈物を、形質導入前にAAVとともに4℃で1時間インキュベートした。各ウェルに血清フリー培地中の1×10HEK-293細胞を播種し、48ウェルプレートのフォーマットにおいて2,000のMOIで形質導入した(ウェル条件当たりn=3の技術的レプリケート)。
図5】タンパク質Mに基づくAAV形質導入の増強が、AAVカプシドとタンパク質Mの直接的な相互作用に依存することを示す。3つの異なる条件を、AAV2-ルシフェラーゼとともに試験した:形質導入前1時間(-1時間)のAAVとタンパク質Mの事前インキュベーション、形質導入付近の時点(0時間)におけるAAVへのタンパク質Mの添加、又はAAVによる形質導入の18時間後(18時間)のウェルへのタンパク質Mの添加。タンパク質Mを含まない2つの陰性対照条件を使用した:AAVを単独で、細胞播種及び形質導入の前に細胞培養培地中で4℃にて1時間インキュベートし(事前インキュベーション及び形質導入付近の群における条件を表す)、又はAAVをPBS中に希釈して、細胞播種及び形質導入の時点において細胞培養物へ添加した(形質導入後の群における条件を表す)。形質導入の18時間後に、追加容量のPBSをPBS対照群に添加して、同等容量のタンパク質Mが形質導入後の群に添加される条件を模した。タンパク質Mが形質導入付近又は形質導入後に添加されたウェルにおいてはAAVルシフェラーゼシグナルの増強は見られなかったが、事前インキュベーションの群において用量依存的な増強が観察され、AAVとタンパク質Mの相互作用が増強メカニズムに必要であることが示された。全てのウェルには1×10Huh7細胞が播種され、各ウェルは2×10vgのAAVによって形質導入され、48ウェルプレートのフォーマットにおいてウェル条件当たりn=3の技術的レプリケートであった。
図6】タンパク質Mは、NAbがカプシドと結合した後にAAV中和を防止しないことを示す。AAV2-ルシフェラーゼをまず、異なる希釈度のIVIGとともに4℃で1時間インキュベートし、次いでタンパク質Mを添加し、4℃で更に1時間インキュベートした。二重陰性対照群はAAVのみを受け、一方で陽性対照は、形質導入前にAAVと4℃で1時間インキュベートした33μgのタンパク質Mを受けた。200μg、50μg、又は12.5μgを含む3つの異なる希釈のIVIGを用いた。IVIGの希釈物とともにインキュベートされたAAVのみを含むタンパク質M陰性対照群と比較して、33μgのタンパク質Mは、50μg又は200μgのIVIGによって99%のAAVが既に中和されている場合は、中和後の増強又は中和抗体からのエスケープを可能にしない。しかしながら、12.5μgのIVIGがAAVとともにインキュベートされる場合は、約30%のベクターが中和されないままであり(図1、2、及び3を参照)、33μgのタンパク質Mは、AAV及び12.5μgのIVIGを含むタンパク質M陰性対照ウェルと比較して、中和後のこの画分の形質導入を増強することができた。前の図とは異なり、ルシフェラーゼ測定は形質導入後わずか24時間で行われ、12.5μgのIVIG+AAVを有する群によるルシフェラーゼシグナルが二重陰性対照の30%未満である理由を説明することができる。各ウェルに血清フリー培地中の1×10HEK-293細胞を播種し、48ウェルプレートのフォーマットにおいて2,000のMOIで形質導入した(ウェル条件当たりn=3の技術的レプリケート)。
図7】AAVとタンパク質Mの事前インキュベーションが、IVIGによるその後の中和からベクターを保護することを示す。この中和アッセイについては、タンパク質Mの量を同一(8.25μg)に維持したが、様々な量のIVIGを用いて異なるモル比を達成した(50μg~3.12μgのIVIG)。タンパク質Mを最初にAAV2-ルシフェラーゼとともに4℃で1時間インキュベートして、その後IVIGを添加して4℃で1時間インキュベートした後、細胞培養物を形質導入した。陽性対照群は、AAV+33μg、8.25μg、又は1μgのタンパク質Mを含んでおり、陰性対照群はPBSとともにインキュベートされたAAVのみを含んでいた。タンパク質Mが介在することによりAAVの非中和画分が2~3倍増強されることが観察された。各ウェルに血清フリー培地中の1×10HEK-293細胞を播種し、48ウェルプレートのフォーマットにおいて2,000のMOIで形質導入した(ウェル条件当たりn=3の技術的レプリケート)。ルシフェラーゼ測定を形質導入の24時間後に行った。
図8】AAVとタンパク質Mの事前インキュベーションが、過剰なバックグラウンド血清免疫グロブリンにおいてIVIGによる中和からベクターを保護することを示す。この実験については、2×10ウイルスゲノムの用量のAAV2-ルシフェラーゼの約95%を中和することが以前に示された25μgのIVIGを用いた。25μgのヒトIVIGを、10%ウシ胎児血清(FBS)を含む細胞培養ウェルに添加し、製造元が実施したELISAによって測定された推定ウシIgG濃度は350μgであった。同量の10%FBSを含む細胞培養ウェルの別のセットをIVIGなし対照として用いた。モル比4:1、2:1、及び1:1(ウシIgG含有量に基づく)のタンパク質Mを、4℃で1時間、AAVとともにインキュベートした後に、IVIGなし対照ウェル又は25μgのIVIG含有ウェルにそれぞれ10%FBSを添加した。陰性対照群においてはタンパク質Mの代わりにPBSとともにAAVをインキュベートして、10%FBSを含むウェル又は25μgのIVIGとともに10%FBSを含むウェルに添加した。結果は、タンパク質Mの事前インキュベーションは、1分子のウシIgGに対して1分子のタンパク質Mの比でさえもIVIGによる中和からAAV2-ルシフェラーゼを保護したことを示すが、この量のタンパク質M(108μg)は、依然としてヒトIVIG(25μg)よりも12倍高い比であった。各ウェルに1×10HEK-293細胞を播種し、48ウェルプレートのフォーマットにおいて2,000のMOIで形質導入した(ウェル条件当たりn=3の技術的レプリケート)。ルシフェラーゼ測定を形質導入の24時間後に行った。
図9】タンパク質Mが、AAV8免疫化マウスから回収されたプールされたポリクローナル血清において見られる中和抗体からのAAV8のインビトロエスケープを可能にすることを示す。この実験については、AAV8免疫化マウス由来の10μlのプールされたポリクローナル血清をPBS中に段階希釈して、最初に10倍希釈して1μl及び0.1μlの血清含有ウェルを作製した。次いで、0.1μlの血清ウェルを2倍希釈比で更に希釈した。AAV8-ルシフェラーゼベクター(ウェル当たり2×10ウイルスゲノム)を中和血清の希釈物とともに4℃で1時間インキュベートした後に形質導入した。タンパク質Mを、同一のAAV8中和マウス血清の10倍希釈比に、概算で1分子の免疫グロブリンに対して2分子のタンパク質Mの比で添加した。1μlの中和マウス血清中、概算10μgの免疫グロブリンに対して6.5μgのタンパク質Mで始めて、それぞれのタンパク質M及び血清試料を別個に相互希釈した後、4℃で1時間のインキュベーションのために合わせた。次いで、全ての試料をAAV8-ルシフェラーゼともに4℃で1時間インキュベートした後に細胞へ添加した。得られた中和実験からのデータを、AAV8のみを含む血清なし対照ウェルに対して正規化して、次いで、ルシフェラーゼシグナルを二重指数減衰関数に適合させて、データのポイント間の曲線を推測した。モデル化された曲線を使用して、ポリクローナル血清によるAAV8の50%の中和が、1:2,564の有効力価に対して0.0039μlの体積で生じたことが見出された。しかしながら、2:1のモル比のタンパク質Mとインキュベートした同じ血清の50%の中和は、0.2744μlの血清体積で発生し、1:36の推定有効力価をもたらした。この結果は、タンパク質Mが、インビトロで、ほぼ100倍差の血清濃度にわたりAAVを保護することが可能であることを示している。96ウェルプレートのフォーマットにおいて、全てのウェルに5×10HEK-293細胞を播種し(4,000のMOI)、ウェル条件当たりn=3の技術的レプリケートであり、ルシフェラーゼは形質導入の48時間後に測定された。
図10】AAV8に対する受動免疫を有するマウスへのタンパク質Mのインビボ投与が、中和抗体エスケープをもたらすことを示す。この実験では、マウスに、IV注入を介した受動移入によって様々な容量のポリクローナルAAV8血清(以前の図から、力価1:2,564)を与え、その後15~20分以内に、2×1010ウイルスゲノムのAAV8-ルシフェラーゼをIV投与した。これにより、各マウスに送達された血清体積に基づく中和曲線が確立された。血清が受動移入されていないナイーブマウス群と比較して、AAV8-ルシフェラーゼシグナルの50%を超える中和が、1μl~0.001μlの移入された血清で起こることが判明した。しかしながら、推定2:1の比のタンパク質M(6.3mg)が受動移入後、AAV投与前にマウスに送達された場合、次いで、中和抗体からの完全なエスケープは、0.3μlの移入した血清体積で達成され、1μlは、NAb濃度の1,000倍変化のタンパク質Mを介在した中和抗体からのエスケープを示した。更に、中和からのエスケープは、0.3μlの受動移入血清群について用量依存的であり、NAbエスケープが、血清なし対照群と比較して、1:1(3.15mg)及び0.5:1(1.58mg)の概算のモル比が減少することを示す。全ての群に関して、群の条件当たりn=5匹のマウスであり、肝臓からのルシフェラーゼシグナルをAAV投与の24時間後に測定した。
図11図10の結果から定量化された平均の生発光(raw luminescence)を示す。
図12】タンパク質M/抗体複合体が、インビトロでの形成後に安定していることを示す。この実験において、概算で10μgの免疫グロブリンを含む1μlのポリクローナル血清(力価1:2,564)を用いてタンパク質M(2:1モル比、6.6μg)と様々な持続時間でインキュベートした後にAAV8-ルシフェラーゼを添加した。陰性対照群は中和血清+培地を含んでおり、陽性対照群は培地+PBS又はタンパク質M+培地を含んでいた。72時間、48時間、24時間、16時間、4時間、2時間、及び1時間のインキュベーション間隔を全ての群に適用した。全てのインキュベーション持続時間は、培地+PBSの陰性対照と比較して、タンパク質Mが介在する、中和からのAAV8の保護を示した。96ウェルプレートのフォーマットにおいて、5×10HEK-293細胞を播種する時(0時間)にAAV8-ルシフェラーゼをウェルに添加して、4,000のMOIで形質導入した(ウェル条件当たりn=3の技術的レプリケート)。ルシフェラーゼ測定を形質導入の48時間後に行った。
図13】インビボでのタンパク質Mによる中和抗体エスケープの効能が不安定であることを示す。図10及び図11と同一の実験を行ったが、今回は、NAbエスケープの耐久性を試験するために、タンパク質M投与の5分後、又はタンパク質M投与の3時間後にAAV8を添加した。AAV8-ルシフェラーゼシグナルは、AAV8を投与するまで3時間待った後は血清なし対照群の約1/3であったが、タンパク質Mの後にAAV8を投与するまで5分だけ待った場合は、ルシフェラーゼシグナルは血清なし対照群とほぼ同等であった。概算で2:1の比のタンパク質M(6.3mg)を、受動移入後であるがAAV投与前のマウスに、n=3匹のマウスを含む3時間間隔群を除いて、群条件当たりn=5匹のマウスに送達した。肝臓からのルシフェラーゼシグナルをAAV投与の24時間後に測定した。
図14】M.genitalium(MG WT)由来の切断されたタンパク質Mが、体温で不安定であることを示す。融解温度(Tm)を、ナノ示差走査型蛍光透視法(NanoDSF)を用いて決定した。一次導関数の変曲点はTmを示す。タンパク質をE.coli内で組換えにより発現して、測定前にニッケルカラムクロマトグラフィーを用いて精製した。円偏光二色性アッセイにより、MG WTが20℃で少なくとも2時間安定であり、目に見える析出物が形成されないことが示された。しかしながら、37℃では、MG WTは15分後にアンフォールディングし始めて、目に見える析出物が生じた。このことは、タンパク質が標準的なヒト体温付近で不安定であることを示す。0~100℃の温度勾配は、MG WTの即時的なアンフォールディング及び約41.2℃の融解温度(Tm)を示した。アンフォールディングは、目に見える沈殿物の凝集が伴った。
図15A-15B】M.genitalium(MG WT)及びM.pneumoniae(MP WT)由来の切断されたタンパク質M、並びにMG WTよりも融解温度が少なくとも1度改善したタンパク質Mの類似体(A)又はMG WTの融解温度を維持するタンパク質Mの類似体(B)の融解温度を示す。融解温度は、WT及びE.coliからの小スケールのタンパク質生産によって生産された変異体タンパク質類似体に関して、示差走査型蛍光透視法(NanoDSF)によって決定した。変異の数及びそれらの対応するアミノ酸置換を右に列挙する。類似体は様々な熱安定性を示し、多重変異は相加効果を生じさせて融解温度を増加させる。
図16】MG WT及びMG29の融解温度を測定するために示差走査型蛍光透視法(DSF)を用いたデータの例を示す。全ての類似体について融解温度を決定して、MG WT(Tm=41.9℃)及びMG29(Tm=55.2℃)の結果をここに示す。一次導関数の変曲点は融解温度(Tm)を示す。タンパク質をE.coli内で組換えにより発現して、測定前にニッケルカラムクロマトグラフィーを用いて精製した。
図17A-17C】SDS-PAGEによって決定されたタンパク質M類似体の可溶性画分評価を示す。各タンパク質の7個のアリコート(0.4mg/mL)を、37℃で異なる時間インキュベートした。試料を15,000×Gで10分間遠心分離することによって析出タンパク質をペレット化した後に可溶性画分をSDS-PAGEゲル上で泳動した。評価の0、1、4、24、48、72、又は96時間前にタンパク質を加熱した。結果は、加熱の1~4時間後にMG WT(A)が、溶液から析出し始めることを示す。MG27(B)及びMG29(A)は、72時間にわたり可溶性を維持し、MG31(B)及びMG40(C)は24時間にわたり可溶性を維持する。
図18A-18C】異なるタンパク質M類似体が、インビトロ中和アッセイ中に、プールされたヒト静脈内免疫グロブリンガンマ(IVIG)をブロックして、AAV2-ルシフェラーゼベクターの中和を防止することを示す:1時間(A及びB)又は24時間(C)インキュベーションに関する4℃対37℃の熱負荷の比較。4:1比のタンパク質M対IVIG。ルシフェラーゼ活性によって生産された相対発光量を、96ウェルプレートのフォーマットにおいてトリプリケートで行われたAAV2-ルシフェラーゼレポーターベクター(2E8vg)による形質導入の24時間後に細胞培養物から測定した。結果を、AAV2及びリン酸緩衝生理食塩水(PBS)のみを含むウェルに対して正規化した(白いバー)。IVIG(12μg)とともに1時間インキュベートしたAAV2は、AAVのほぼ完全な中和を示した。4℃でインキュベートしたタンパク質M類似体(16μg)は、AAVの前に1時間、一緒にインキュベートした場合、IVIGによるAAVの中和を防止した。これを、IVIGとインキュベートせずに4℃でインキュベートしたタンパク質M類似体と比較した(MG8及びMG24については行わなかった)。類似体がIVIGとのインキュベーション前に37℃で熱負荷された場合、MG WT及びより低い融解温度を有する一部の類似体は中和からAAVを保護しなかったが、より高いTmを有する他の類似体は、中和からAAVを保護する能力を維持した。大部分の変異MG類似体は、1時間の37℃負荷後に、中和抗体をブロックする能力を維持した。しかしながら、MG27、MG29、及びMG46は、24時間の37℃負荷後にAAVの中和を防止した。
図19】一次AAV投与の1ヶ月後のAAV再投与に関して、MG WTがNAbをブロックすることを示す。野生型C57BL6雌マウスを、AAV8-GFP(1E9vg)の腹腔内投与を介して免疫化して、血清を1ヶ月後に回収してAAV中和抗体力価をインビトロで評価した。それから、マウスにAAV8-ルシフェラーゼレポーターベクターを筋肉内投与し(1E9vg/脚)、ここで、マウスの右脚に対してはMG WTとの単純な混合としてAAVを製剤化し(33μg/脚)、又は、マウスの左脚に対してはビヒクル対照としてリン酸緩衝生理食塩水を用いてAAVを製剤化した。脚筋の発光イメージングを、AAV8-ルシフェラーゼ投与の2週間後に実施した。1:10のAAV中和抗体力価を有する3匹のマウスは、生理食塩水で製剤化された脚においてAAVルシフェラーゼレポーターベクターの中和を示したが、AAVルシフェラーゼレポーターベクターは、同じマウスのMG WTが製剤化された脚において中和抗体から保護された。生理食塩水の脚におけるAAVの中和は、MG WTが製剤化された脚よりも80%低い平均ルシフェラーゼシグナルを生じた。この結果は、以前のAAV投与によって誘発された中和抗体の産生後に、タンパク質Mを用いて成功的にAAVを再投与することができることを示している。
図20】MG29が、一次AAV投与の1ヶ月後のAAV再投与に関してNAbをブロックすることを示す。野生型C57BL6雌マウスを、AAV8-GFP(5E8vg)の腹腔内投与を介して免疫化して、血清を1ヶ月後に回収してAAV中和抗体力価をインビトロで評価した。次いで、マウスにAAV8-ルシフェラーゼレポーターベクターを筋肉内投与し(2E9vg/脚)、ここで、マウスの右脚に対しては操作類似体MG29との単純な混合としてAAVを製剤化し(500μg/脚)、又はマウスの左脚に対してはビヒクル対照としてリン酸緩衝生理食塩水を用いてAAVを製剤化した。脚筋の発光イメージングを、AAV8-ルシフェラーゼ投与の2週間後に実施した。1:100未満のAAV中和抗体力価(個々に1:8、1:32、及び1:64)をそれぞれ有する3匹のマウスは、生理食塩水で製剤化された脚においてAAVルシフェラーゼレポーターベクターの中和を示したが、AAVルシフェラーゼレポーターベクターは、同じマウスのMG29が製剤化された脚において中和抗体から保護された。生理食塩水の脚におけるAAVの中和は、MG WTが製剤化された脚よりも少なくとも98%低い平均ルシフェラーゼシグナルを生じた。この結果は、以前のAAV投与によって誘発された中和抗体の産生後に、操作タンパク質M類似体を用いて成功的にAAVを再投与することができることを示している。
図21】操作タンパク質M類似体が、IgGに関して異なる親和性を示すことを示す。特定のタンパク質M類似体の親和性を、バイオレイヤー干渉法(BLI)を用いて測定した。結合定数(KD)を、15.6nM~250nMのタンパク質M濃度範囲にわたる会合速度及び解離速度(動態解析)を用いて計算した。結果は、MG WTと比較した、BLIプローブに付着されたIgGに対する親和性の増加又は低減を示す。
図22】動態解析によって作成されたBLI親和性データの一例を示す。曲線は、動態学的KD値を予測するために用いられる。曲線フィットが、収集データ上に重ねられている。
図23】変異体の安定化の成功率を示す。MG WTに関してRosettaによって予測された変異が、安定性を増加した(Tm+1℃)、低減した(Tm-1℃)、又は影響がなかった頻度を表す。「組み合わせの変異」は、MG WTを個々に安定化した変異構築物のマージによって構築された構築物を表す。
図24】MP WT配列の保存を示す。MP WTのホモロジーモデルを2方向で示し、BLOSUM62マトリックスに従ってMG WT配列に対する保存によって色付けした。残基は、白(同一)から黒(有意に異なる)にわたる保存の程度に従って色付けされている。ホモロジーレベルを、PDB ID:4NZRをテンプレートとして用いて構築した。
図25】タンパク質MのDNA配列のコドン最適化によって、製造収率が高くなることを示す。MG WTタンパク質をコードするDNAプラスミドを、MG281にネイティブの細菌コドン(オリジナルPM)、又は細菌及びヒトコドン使用頻度の両方に対して最適化されたコドン(最適化PM)を用いて生産した。同等濃度のオリジナルPMプラスミド又は最適化PMプラスミドによって形質転換された3つのプールされた細菌コロニーを培養して、同等の一晩の期間、同等の増殖培地容量(10mL)中で増殖させた。細菌をペレット化して、凍結融解及び同等容量の溶解緩衝液中の溶解によって粗溶解物を生産した。粗溶解物を遠心分離して、SDS-PAGEゲル上でのタンパク質分離のために上清を回収した。各溶解物からの同等容量をSDS-PAGEゲル上に流し、ウエスタンブロット上へ移して、次いで、MG WTのアミノ末端に存在する6×ヒスチジンタグに対するマウス抗体を用いてプローブした後に、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートされたヤギ抗マウス二次抗体を用いてプローブした。MG WTタンパク質のバンド強度を、ルミノール化学発光アッセイを用いて測定した。得られたMG WT収率を、細菌ペレットの重量に対して正規化されたウエスタンブロットバンド強度に基づいて計算した。最適化PMプラスミドは、オリジナルPMプラスミドと比較した場合、MG WTタンパク質収率がほぼ4倍増加した。
図26】変異体のpH安定性の改善を示す。融解温度(Tm)を、異なるpH条件でNanoDSFを用いて決定した。タンパク質をPBS中でSECを介して精製して、グリシン(pH2.5及び3.5)、酢酸(pH4.5及び5.5)、及びリン酸(pH6.5及び7.5)緩衝液に緩衝液交換した。
図27A-27D】野生型M.genitaliumタンパク質Mアミノ酸74~479(配列番号3)及び修飾タンパク質M MG1(配列番号4)、MG8(配列番号5)、MG13(配列番号6)、MG15(配列番号7)、MG21(配列番号8)、MG22(配列番号9)、MG23(配列番号10)、MG24(配列番号11)、MG27(配列番号12)、MG28(配列番号13)、MG29(配列番号14)、MG31(配列番号15)、MG33(配列番号16)、MG38(配列番号17)、MG40(配列番号18)、MG43(配列番号19)、MG44(配列番号20)、MG45(配列番号21)、及びMG46(配列番号22)の配列アライメントを示す。
図28】野生型M.genitaliumタンパク質Mアミノ酸74~479(配列番号3)、及びM.pneumoniaeタンパク質Mの同等の断片(配列番号23)の配列アライメントを示す。
図29】投与後の発光の棒グラフである。図29は、投与7日後のインビボ抗体の中和を示す。AAV8で連続的に免疫したマウスから血清を収集し、プールした。インビトロ中和アッセイにより、プールした血清の抗AAV8中和力価がおよそ1:10,000であることが決定された。異なる量の抗AAV8血清(血清体積によって決定される)は、受動移入実験において、AAVナイーブマウス群にIV注射を介して投与し、続いて20~25分後にAAV8-ルシフェラーゼレポーターベクターの2e10ウイルスゲノム(vg)をIV注射した。一部の群のマウスに、AAV投与の5分前にIV注射を介してタンパク質Mを投与した。ルシフェラーゼ活性の非侵襲的なインビボイメージングを7日後に実施して、AAV8ベクターからの遺伝子発現の代用としての発光を定量化し、発光シグナルの減少は、血清によるAAV8ルシフェラーゼ中和を示す。0.0003ulの血清を与えられたマウスは、AAV8を中和できず、2e10vgのAAV8-ルシフェラーゼのみを注射された血清なしナイーブマウスと比較して、ほぼ100%の発光シグナルを生じた。中和血清の量を増加させたマウス群は、AAV8-ルシフェラーゼを徐々に中和し、0.001ul~0.003ulの血清でAAVの約半分が中和され、0.3ul以上の血清でAAVの99%以上が中和された。3ulの血清、続いてMG88又はMG118、次いで2e10vgのAAV8-ルシフェラーゼを投与されたマウスの群は、タンパク質M融合タンパク質MG29(6.3mg)、MG29*(6.3mg)、及びMGWT*(6.3mg)、MG118(9mg)、及びMG88(6.3mg)による中和抗体の抑制による中和からのエスケープを示す遺伝子発現をもたらした。
図30】マウス由来の高力価抗AAV8血清を2倍希釈で滴定し、X軸に示すようにウェルに添加した、インビトロ中和アッセイを示す。次いで、異なるタンパク質M類似体(MG29、MG66、MG71、及びMG64)を、図の凡例に示される分子比でウェルに添加し、1時間インキュベートした。生理食塩水を血清のみのウェルに添加した(黒丸)。次いで、AAV8-ルシフェラーゼ(2×1010ウイルスゲノム)を各ウェルに添加し、1時間インキュベートした後、無血清培地中に5×10のHuh7細胞を添加した。細胞を48時間培養し、中和の代用となるルシフェラーゼレポーターシグナルを読み取り、定量化した。これらのデータは、これらの類似体が中和抗体ブロック機能を有し、それによって中和曲線をシフトさせ、MG64Fc-タンパク質M融合二量体(Fc-PM)がタンパク質M単量体類似体よりも大きく曲線をシフトさせることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、以下により詳細に説明される。この説明は、本発明が実施され得る全ての異なる方法又は本発明に加えられ得る全ての特徴の詳細なカタログであることを意図しない。例えば、一実施形態に関して説明される特徴は、他の実施形態に組み込まれてよく、特定の実施形態に関して説明される特徴は、その実施形態から削除されてよい。更に、本明細書において示唆される様々な実施形態に対する非常に多くのバリエーション及び付加は、本開示に照らして当業者に明らかであり、本発明から逸脱しない。それ故に、以下の明細書は、本発明の一部の特定の実施形態を説明することを意図し、それらの全ての並べ替え、組み合わせ、及びバリエーションを網羅的に特定することを意図しない。
【0025】
文脈が別段の指示をしない限り、本明細書に記載される本発明の様々な特徴は、任意の組み合わせで用いられ得ることが明確に意図される。更に、本発明は、本発明のいくつかの実施形態において、本明細書中に示される任意の特徴若しくは特徴の組み合わせが除外又は省略され得ることも企図する。例示するために、本明細書が、複合体が構成要素A、B、及びCを含むと述べている場合、A、B、又はCのいずれか、又はそれらの組み合わせが、単独又は任意の組み合わせで省略及び免責できることが特に意図される。
【0026】
別段の定義がされない限り、本明細書において用いられる全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する当業者の一人によって一般に理解されるのと同一の意味を有する。本明細書における本発明の説明で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためのみであり、本発明の制限を意図しない。
【0027】
ヌクレオチド配列は、別段の明確な指示がない限り、本明細書において、一本鎖のみによって、5’から3’の方向で、左から右に示される。ヌクレオチド及びアミノ酸は、本明細書において、IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨される様式で、又は、(アミノ酸については)一文字コード又は三文字コードのいずれかによって、どちらも37C.F.R.§1.822及び確立された使用法に従って表される。
【0028】
別段の指示がある場合を除き、当業者に公知の標準的な方法が、組換え及び合成ポリペプチド、抗体又はその抗原結合断片の生産、核酸配列の操作、形質転換された細胞の生産、rAAV構築物、修飾カプシドタンパク質、AAV rep及び/又はcap配列を発現するパッケージングベクター、及び、一時的及び安定的にトランスフェクトされたパッケージング細胞の構築のために用いられ得る。かかる技術は当業者に公知である。例えば、SAMBROOK et al.,MOLECULAR CLONING:ラボマニュアル第2版(Cold Spring Harbor,NY,1989)、F.M.AUSUBEL et al.CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(Green Publishing Associates,Inc.及びJohn Wiley&Sons,Inc.,New York)を参照されたい。
【0029】
本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許、ヌクレオチド配列、アミノ酸配列及び他の参考文献は、参照によってそれらの全体で援用される。
【0030】
定義
本発明の説明及び添付の特許請求の範囲において用いられるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数形も含むことが意図される。
【0031】
本明細書において用いられる「及び/又は」は、関係がある挙げられたアイテムの1つ以上の任意及び全てのあり得る組み合わせ、並びに、選択的に解釈される場合(「又は」)は、組み合わせの欠失を指し、かつ包含する。
【0032】
更に、本発明はまた、本発明のいくつかの実施形態において、
本明細書に記載の任意の特徴若しくは特徴の組み合わせを除外又は省略できることも企図する。
【0033】
更に、本明細書において用いられる用語「約」は、本発明の化合物又は薬剤の量、用量、時間、温度などの測定可能な値を指す場合、規定の量の±10%、±5%、±1%、±0.5%、又は更には±0.1%の変動を包含することを意味する。
【0034】
本明細書において用いられる移行句「から本質的になる」は、列挙された材料又はステップ、及び、特許請求の範囲に記載された発明の基礎的及び新規の特徴(単数又は複数)に実質的に影響を及ぼさないものを包含すると解釈されるべきである。したがって、本明細書において用いられる用語「から本質的になる」は、「含む(comprising)」と同等であると解釈されるべきでない。
【0035】
本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチド配列に適用される用語「から本質的になる」(及び文法上の変形)は、列挙された配列(例えば、配列番号)、及び、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの機能が実質的に変更されないような、列挙された配列の5’及び/又は3’又はN末端及び/又はC末端上又は2つの末端の間(例えばドメイン間)の、合計で10個以下(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個)の更なるヌクレオチド又はアミノ酸の、両方からなるポリヌクレオチド又はポリペプチドを意味する。合計で10個以下の更なるヌクレオチド又はアミノ酸は、更なるヌクレオチド又はアミノ酸の合計数を合わせて含む。本発明のポリヌクレオチドに適用される用語「実質的に変更される」は、列挙された配列からなるポリヌクレオチドの発現レベルと比較して少なくとも約50%以上の、コードされるポリペプチドを発現する能力の増加又は低減を指す。本発明のポリペプチドに適用される用語「実質的に変更される」は、列挙された配列からなるポリペプチドの活性と比較して少なくとも約50%以上の、生物学的活性の増加又は低減を指す。
【0036】
本明細書において用いられる用語「パルボウイルス」は、Parvoviridaeファミリーを包含し、自律複製するパルボウイルス及びディペンドウイルスを含む。自律的パルボウイルスは、パルボウイルス、エリスロウイルス、デンソウイルス、イテラウイルス、及び、コントラウイルス(Contravirus)属のメンバーを含む。例示的な自律的パルボウイルスは、限定されないが、マウスの微小ウイルス、ウシのパルボウイルス、イヌのパルボウイルス、ニワトリのパルボウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコのパルボウイルス、ガチョウのパルボウイルス、H1パルボウイルス、バリケンのパルボウイルス、ヘビのパルボウイルス、及びB19ウイルスを含む。他の自律的パルボウイルスは、当業者に公知である。例えば、FIELDS et al.,VIROLOGY、第2巻、第69章(第4版、Lippincott-Raven Publishers)を参照。
【0037】
ディペンドウイルス属は、制限されないが、AAVタイプ1、AAVタイプ2、AAVタイプ3(タイプ3A及び3Bを含む)、AAVタイプ4、AAVタイプ5、AAVタイプ6、AAVタイプ7、AAVタイプ8、AAVタイプ9、AAVタイプ10、AAVタイプ11、AAVタイプ12、AAVタイプ13、鳥類AAV、ウシAAV、イヌAAV、ヤギAAV、ヘビAAV、ウマAAV、及びヒツジAAVを含む、アデノ随伴ウイルス(AAV)を含む。例えば、FIELDS et al.,VIROLOGY、第2巻、第69章(第4版、Lippincott-Raven Publishers);及び表1を参照。
【0038】
本発明の文脈における用語「アデノ随伴ウイルス」(AAV)は、限定されないが、AAVタイプ1、AAVタイプ2、AAVタイプ3(タイプ3A及び3Bを含む)、AAVタイプ4、AAVタイプ5、AAVタイプ6、AAVタイプ7、AAVタイプ8、AAVタイプ9、AAVタイプ10、AAVタイプ11、鳥類AAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、及びヒツジAAV、並びに、現在知られ又は後に発見される任意の他のAAVを含む。例えば、BERNARD N.FIELDS et al.,VIROLOGY、第2巻、第69章(第4版、Lippincott-Raven Publishers)を参照。多くの追加のAAV血清型及びクレードが同定されており(例えば、Gao et al.,(2004)J.Virol.78:6381-6388及び表1を参照)、それらも用語「AAV」に包含される。
【0039】
本発明のパルボウイルス粒子及びゲノムは、限定されないが、AAV由来であり得る。様々な血清型のAAV及び自律的パルボウイルスのゲノム配列、並びに、ネイティブITR、Repタンパク質、及びカプシドサブユニットの配列は、当技術分野で知られている。かかる配列は、文献又はGenBankのような公共データベースに見られ得る。例えば、GenBank受入番号NC_002077、NC_001401、NC_001729、NC_001863、NC_001829、NC_001862、NC_000883、NC_001701、NC_001510、NC_006152、NC_006261、AF063497、U89790、AF043303、AF028705、AF028704、J02275、J01901、J02275、X01457、AF288061、AH009962、AY028226、AY028223、AY631966、AX753250、EU285562、NC_001358、NC_001540、AF513851、AF513852、及びAY530579を参照されたく、それらの開示は、パルボウイルス及びAAVの核酸並びにアミノ酸配列を教示するために参照により本明細書に組み込まれる。また、例えば、Bantel-Schaal et al.,(1999)J.Virol.73:939、Chiorini et al.,(1997)J.Virol.71:6823、Chiorini et al.,(1999)J.Virol.73:1309、Gao et al.,(2002)Proc.Nat.Acad.Sci.USA99:11854、Moris et al.,(2004)Virol.33-:375-383、Mori et al.,(2004)Virol.330:375、Muramatsu et al.,(1996)Virol.221:208、Ruffing et al.,(1994)J.Gen.Virol.75:3385、Rutledge et al.,(1998)J.Virol.72:309、Schmidt et al.,(2008)J.Virol.82:8911、Shade et al.,(1986)J.Virol.58:921、Srivastava et al.,(1983)J.Virol.45:555、Xiao et al.,(1999)J.Virol.73:3994、国際特許公開第00/28061号、同第99/61601号、同第98/11244号、及び米国特許第6,156,303号も参照されたく、それらの開示は、パルボウイルス及びAAVの核酸並びにアミノ酸配列を教示するために参照により本明細書に組み込まれる。また、表1も参照されたい。AAV1、AAV2、及びAAV3ITR配列の初期の説明は、Xiao,X.,(1996),“Characterization of Adeno-associated virus(AAV)DNA replication and integration”、博士論文、ピッツバーグ大学、ピッツバーグ、ペンシルバニア州によって提供される(その全体で本明細書中に援用される)。
【0040】
「キメラ」AAV核酸カプシドコード配列又はAAVカプシドタンパク質は、2以上のカプシド配列の部分を組み合わせたものである。「キメラ」AAVビリオン又は粒子は、キメラAAVカプシドタンパク質を含む。
【0041】
本明細書において用いられる用語「指向性(tropism)」は、特定の細胞又は組織タイプへのベクター(例えば、ウイルスベクター)の優先的だが必ずしも排他的でない侵入及び/又は特定の細胞又は組織タイプへの侵入を促進する細胞表面との優先的だが必ずしも排他的でない相互作用を指し、任意に、及び好ましくは、細胞における、ベクター内容物(例えばウイルスゲノム)によって保有される配列の発現(例えば転写、翻訳であってもよい)、例えば、組換えウイルスについては、異種ヌクレオチド配列の発現が続く。当業者は、ウイルスゲノム由来の異種核酸配列の転写は、例えば、誘導性プロモーター又は他の方法で調節される核酸配列に関するトランス作用因子が不存在では開始され得ないことを理解している。rAAVゲノムの場合は、ウイルスゲノムからの遺伝子発現は、安定的に組み込まれたプロウイルス由来であってよく、及び/又は、組み込まれていないエピソーム、並びに、ウイルス核酸が細胞内でとり得る任意の他の形態由来であってよい。
【0042】
用語「指向性プロファイル」は、1つ以上の標的細胞、組織及び/又は臓器の形質導入パターンを指す。キメラAAVカプシドの代表的な例は、末梢臓器の形質導入がわずかである中枢神経系(CNS)の細胞の効率的な形質導入によって特徴付けられる指向性プロファイルを有する(例えば米国特許第9,636,370号(McCownら)、及び米国特許公開第2017/0360960号(Grayら)を参照)。特異的な指向性プロファイルを発現するベクター(例えば、ウイルスベクター、例えば、AAVカプシド)は、それらの指向性プロファイルについて「指向性」、例えば、神経指向性、肝臓指向性などと呼ばれ得る。
【0043】
本明細書において用いられる、ウイルスベクター(例えばAAVベクター)による細胞の「形質導入」は、細胞内へのベクターの侵入及びウイルスベクター内への核酸の取り込みによる細胞内への遺伝物質の移行及びウイルスベクターを介した細胞内へのその後の移行を意味する。
【表1】
【0044】
別段の指示がない限り、「効率的な形質導入」、又は「効率的な指向性」、又は同様の用語は、好適な陽性対照又は陰性対照を参照することによって決定することができる(例えば、陽性対照の形質導入若しくは指向性のそれぞれ少なくとも約50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%以上、又は陰性対照の形質導入又は指向性のそれぞれ少なくとも約110%、120%、150%、200%、300%、500%、1000%以上)。
【0045】
同様に、ウイルスが標的組織に対して「効率的に形質導入しない」、又は「効率的な指向性を有さない」、又は同様の用語は、好適な対照を参照することによって決定することができる。特定の実施形態では、ウイルスベクターは、CNS以外の組織、例えば、肝臓、腎臓、生殖腺及び/又は生殖細胞を効率的に形質導入しない(すなわち、効率的な指向性を有さない)。特定の実施形態では、組織(例えば肝臓)の望ましくない形質導入は、望ましい標的組織(例えばCNS細胞)の形質導入レベルの、20%以下、10%以下、5%以下、1%以下、0.1%以下である。
【0046】
用語「5’部分」及び「3’部分」は、2つ以上の要素間の空間的関係を定義するための相対的用語である。したがって、例えば、ポリヌクレオチドの「3’部分」は、別のセグメントの下流であるポリヌクレオチドのセグメントを示す。用語「3’部分」は、セグメントが必ずしもポリヌクレオチドの3’末端にあることを示すことを意図せず、又は、必ずしもポリヌクレオチドの3’の半分にあることさえ意図しないが、そうであってよい。同様に、ポリヌクレオチドの「5’部分」は、別のセグメントの上流であるポリヌクレオチドのセグメントを示す。用語「5’部分」は、セグメントが必ずしもポリヌクレオチドの5’末端にあることを示すことを意図せず、又は、必ずしもポリヌクレオチドの5’の半分にあることさえ意図しないが、そうであってよい。
【0047】
本明細書において用いられる用語「ポリペプチド」は、別段の指示がない限り、ペプチド及びタンパク質の両方を包含する。
【0048】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」又は「ヌクレオチド配列」は、RNA、DNA又はDNA-RNAハイブリッド配列(天然起源及び非天然起源ヌクレオチドの両方を含む)であってよいが、好ましくは一本鎖又は二本鎖DNA配列のいずれかである。
【0049】
用語「調節要素」は、核酸配列の発現のいくつかの態様を制御する遺伝要素を指す。例えば、プロモーターは、作動可能に連結されたコドン領域の転写の開始を促進する調節要素である。他の調節要素は、スプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナル、終結シグナルなどである。1つ以上の調節要素が見られる核酸配列又はポリヌクレオチド内の領域は、「調節領域」と呼ばれ得る。
【0050】
ポリペプチドに適用される場合、断片という用語は、参照ポリペプチド又はアミノ酸配列と比較して長さが減少したアミノ酸配列を意味し、参照ポリペプチド又はアミノ酸配列と同一の連続アミノ酸のアミノ酸配列を含む、本質的にそれからなる、及び/又はそれからなると理解されるであろう。いくつかの実施形態において、そのような断片は、本発明に係るポリペプチド又はアミノ酸配列の少なくとも約4、6、8、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、150、200個、又はそれよりも多くの長さの連続するアミノ酸を有するペプチドを含むことができ、から本質的になることができ、かつ/又は、からなることができる。いくつかの実施形態では、そのような断片は、本発明に係るポリペプチド又はアミノ酸配列の約4、6、8、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、又は500個未満の長さの連続するアミノ酸を有するペプチドを含むことができ、から本質的になることができ、かつ/又は、からなることができる。
【0051】
本明細書において用いられる「機能的断片」は、そのポリペプチドと通常関連する少なくとも1つの生物学的活性(例えば、抗体結合)を実質的に維持するものを指す。「機能的断片」は、修飾されていないポリペプチドが有する活性の全てを実質的に維持する。生物学的活性を「実質的に維持する」とは、ポリペプチドが、ネイティブのポリペプチドの生物学的活性の少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、75%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、又はそれよりも多くを維持する(及び、ネイティブのポリペプチドよりも高い活性レベルを有することもできる)ことを意味する。「非機能性」ポリペプチドとは、そのポリペプチドと通常関連する検出可能な生物学的活性をほとんど示さないか、又は本質的に示さないものを指す(例えば、せいぜい、ほんのわずかな量、例えば約10%未満又は実に5%)。抗体結合のような生物学的活性は、当技術分野でよく知られており本明細書中に記載されるアッセイを用いて測定することができる。
【0052】
核酸に関して本明細書において用いられる用語「作動可能に連結される」とは、2つ以上の核酸の間の機能的な連結を指す。例えば、プロモーター配列は、異種核酸配列の転写を開始及び/又は媒介するため、プロモーター配列は異種核酸配列と「作動可能に連結」されると記載され得る。いくつかの実施形態では、作動可能に連結された核酸配列は、連続しており、かつ/又は、同一のリーディングフレーム内にある。
【0053】
本明細書において用いられる用語「オープンリーディングフレーム(ORF)」は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば遺伝子)の部分を指し、ポリペプチドの転写を開始する開始スタート部位(すなわち、コザック配列)を含む。用語「コード領域」は、オープンリーディングフレームと互換的に用いられ得る。
【0054】
本明細書において用いられる用語「コドン最適化」は、コード配列(例えば、野生型配列、例えばタンパク質Mに関するコード配列を含む)内に通常存在する1つ以上のコドンを、同一(同義)アミノ酸に関するコドンで置換することによって、発現を増加させるように最適化されている遺伝子コード配列を指す。この様式において、遺伝子によってコードされるタンパク質は同一であるが、根底となる遺伝子の核酸塩基配列又は対応するmRNAは異なる。いくつかの実施形態では、最適化は、1つ以上のレアコドン(すなわち、特定の種由来の細胞において相対的に稀に生じるtRNAに関するコドン)を、翻訳の効率を改善するために、より頻繁に生じる同義コドンによって置換する。例えば、ヒトコドン最適化では、コード配列内の1つ以上のコドンは、同一アミノ酸に関してヒト細胞においてより頻繁に生じるコドンによって置換される。コドン最適化は、転写及び/又は翻訳の効率を改善し得る他のメカニズムを通して遺伝子発現を増加することもできる。ストラテジーは、制限されずに、合計GC含有量(すなわち、コード配列全体におけるグアニン及びシトシンのパーセント)の増加、CpG含有量(すなわち、コード配列におけるCG又はGCジヌクレオチドの数)の低減、潜在的スプライスのドナー又はアクセプター部位の除去、及び/又は、コザック配列のようなリボソームエントリー及び/又は開始部位の付加又は除去を含む。望ましくは、コドン最適化遺伝子は、改善されたタンパク質発現を示し、例えば、それによってコードされるタンパク質は、他の点で同様の細胞において野生型遺伝子によって提供されるタンパク質の発現レベルと比較して、細胞において、検出可能により大きなレベルで発現される。コドン最適化はまた、インビトロ又はインビボで、内因性遺伝子及び/又は対応するmRNAからコドン最適化遺伝子及び/又は対応するmRNAを区別する能力を提供する。
【0055】
本明細書において用いられる用語「配列同一性」は、当技術分野における標準的な意味を有する。当技術分野で知られているように、多くの異なるプログラムを用いて、ポリヌクレオチド又はポリペプチドが公知配列と配列同一性又は類似性を有するかどうか同定することができる。配列同一性又は類似性は、Smith&Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)のローカル配列同一性アルゴリズム、Needleman&Wunsch,J Mol.Biol.48:443(1970)の配列同一性アライメントアルゴリズムにより、Pearson&Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:2444(1988)の類似性検索法により、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装により(GAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA、Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575Science Drive、Madison、WI)、Devereux et al.,Nucl.Acid Res.12:387(1984)により記載されるBest Fit配列プログラムを含むがこれらに限定されない、当技術分野で知られている標準的な技術を使用して、好ましくはデフォルト設定を用いて、又は調査により、決定され得る。
【0056】
有用なアルゴリズムの例は、PILEUPである。PILEUPは、プログレッシブ・ペアワイズアライメントを用いて、関連のある配列のグループから複数の配列アライメントを作る。また、アライメントを作るために用いられるクラスタリング関係を示すツリーをプロットすることもできる。PILEUPは、Feng&Doolittle,J.Mol.Evol.35:351(1987)の漸進的アライメント方法を簡略化したものを使用し、この方法は、Higgins&Sharp,CABIOS5:151(1989)に記載されるものと同様である。
【0057】
有用なアルゴリズムの別の例は、Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403(1990)及びKarlin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:5873(1993)に記載されるBLASTアルゴリズムである。特に有用なBLASTプログラムは、WU-BLAST-2プログラムであり、Altschul et al.,Meth.Enzymol.,266:460(1996);blast.wustl/edu/blast/README.htmlから入手した。WU-BLAST-2は、いくつかの検索パラメーターを用いて、それらは好ましくは、デフォルト値に設定されている。パラメーターは、動的な値であり、特定の配列の構成、及び目的の配列が検索されている特定のデータベースの構成に応じて、プログラム自体によって確立されるが;感度を増加させるために値を調整することもできる。
【0058】
追加の有用なアルゴリズムは、Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25:3389(1997)によって報告されるようなギャップBLASTである。
【0059】
アミノ酸配列同一性の値のパーセンテージは、一致する同一残基の数を、アライメントされた領域内の「より長い」配列の残基の総数で割ることによって決定される。「より長い」配列は、アライメントされた領域内の実際の残基が最も多いものである(アライメントスコアを最大化するためにWU-Blast-2により導入されるギャップは無視する)。
【0060】
同様の様式で、核酸配列同一性パーセントは、本明細書において具体的に開示されるポリヌクレオチド内のヌクレオチドと同一である候補配列内のヌクレオチド残基のパーセンテージとして定義される。
【0061】
アライメントは、並べられる配列内のギャップの導入を含んでよい。更に、本明細書において具体的に開示されるポリヌクレオチドよりも多い又は少ないヌクレオチドを含む配列に関して、一実施形態では、配列同一性のパーセンテージは、ヌクレオチドの合計数に対する、同一のヌクレオチドの数に基づいて決定されることが理解される。したがって、例えば、本明細書に具体的に開示される配列よりも短い配列の配列同一性は、一実施形態では、より短い配列におけるヌクレオチドの数を用いて決定される。同一性のパーセントの計算においては、相対的重みづけは、配列バリエーション、例えば挿入、欠失、置換などの様々な出現に割り当てられない。
【0062】
一実施形態では、同一性のみが正にスコアされて(+1)、ギャップを含む全ての形態の配列バリエーションは「0」の値に割り当てられて、配列類似性計算に関して以下に記載される重みづけスケール又はパラメーターの必要性を取り除く。配列同一性パーセントは、例えば、一致する同一残基の数を、アライメントした領域内の「より短い」配列の総残基数で割り、100を掛けることによって計算することができる。「より長い」配列は、アライメントされた領域内で最も多くの実際の残基を有する配列である。
【0063】
本明細書において用いられる「単離された」核酸又はヌクレオチド配列(例えば、「単離されたDNA」又は「単離されたRNA」)は、天然起源の生物又はウイルスの他の構成要素の少なくとも一部、例えば、細胞又はウイルスの構造的構成要素又は核酸又はヌクレオチド配列と関連して一般に見られる他のポリペプチド又は核酸から、分離された又は実質的に含まれない核酸又はヌクレオチド配列を意味する。
【0064】
同様に、「単離された」ポリペプチドは、天然起源の生物又はウイルスの他の構成要素の少なくとも一部、例えば、細胞又はウイルスの構造的構成要素又はポリペプチドと関連して一般に見られる他のポリペプチド又は核酸から、分離された又は実質的に含まれないポリペプチドを意味する。
【0065】
本明細書で使用される場合、用語「修飾された」は、ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列に適用される場合、1つ以上の欠失、付加、置換、又はそれらの任意の組み合わせにより野生型配列とは異なる配列を指す。
【0066】
本明細書において用いられる、ウイルスベクターを「単離する」(又は文法上の同等物)によって、ウイルスベクターが、出発原料中の他の構成要素の少なくとも一部から少なくとも部分的に分離されることを意味する。
【0067】
用語「治療する(treat)」、「治療する(treating)」又は「の治療(treatment of)」(又は文法上の同等の用語)によって、対象の状態の重症度を減少させること、又は、少なくとも部分的に改善又は改良すること、及び/又は、少なくとも1つの臨床症候を緩和、軽減又は低減させること、及び/又は、症状の進行を遅延させることを意味する。
【0068】
本明細書において用いられる用語「予防する(prevent)」、「予防する(prevents)」、又は「予防(prevention)」(及びその文法上の同等物)は、疾患の発症を遅延又は阻害することを意味する。用語は、疾患の完全な消滅を必要とすることを意味せず、症状の発生率を減少させるため、又は症状の発症を遅らせるための、任意のタイプの予防的治療を包含する。
【0069】
本明細書において用いられる「治療有効」量は、対象に対して何らかの改善又は利益を与えるのに十分な量である。別の言い方をすると、「治療有効」量は、対象における少なくとも1つの臨床症候の何らかの緩和、軽減、低減又は安定化を提供する量である。当業者は、何らかの利益が対象に提供される限り治療的効果は完全又は治癒的である必要はないことを理解している。
【0070】
本明細書で使用される「予防有効量」は、本発明の方法が存在しない場合に起こるものと比較して、対象における疾患、障害、及び/若しくは臨床症状の発症を予防並びに/又は遅らせる、かつ/あるいは対象における疾患、障害、及び/若しくは臨床症状の発症の重篤度を軽減並びに/又は遅らせるのに十分な量である。当業者は、何らかの利益が対象に提供される限り予防のレベルは完全である必要はないことを理解している。
【0071】
ウイルスに関する、「異種ヌクレオチド配列」又は「異種核酸」は、それぞれ、ウイルスにおいて天然起源でない配列又は核酸である。一般に、異種核酸又はヌクレオチド配列は、ポリペプチド及び/又は非翻訳RNAをコードするオープンリーディングフレームを含む。
【0072】
「ベクター」は、外来遺伝物質を別の細胞(そこで複製及び/又は発現されることができる)へ運ぶためのビヒクルとして用いられる化合物を指す。外来核酸を含むクローニングベクターは、組換えベクターと呼ばれる。核酸ベクターの例は、プラスミド、ウイルスベクター、コスミド、発現カセット、及び人工染色体である。組換えベクターは典型的に、複製起点、マルチクローニング部位、及び選択可能マーカーを含む。核酸配列は典型的に、挿入物(組換え核酸又は導入遺伝子)及びベクターの「主鎖」として働くより大きな配列からなる。遺伝情報を別の細胞へ移行させるベクターの目的は典型的に、標的細胞において、挿入物を単離、増殖、又は発現させることである。発現ベクター(発現構築物又は発現カセット)は、標的細胞における外因性遺伝子の発現のためのものであり、一般に、外因性遺伝子/ORFの発現を駆動するプロモーター配列を有する。標的細胞へのベクターの挿入は、細菌及び真核生物細胞については形質転換又はトランスフェクションと呼ばれるが、ウイルスベクターの挿入は、しばしば形質導入と呼ばれる。また、用語「ベクター」は一般に、外来遺伝物質を別の細胞、例えば制限されないが、形質転換される細胞又はナノ粒子へ運ぶ働きをするためのアイテムを説明するために用いられてもよい。
【0073】
本明細書において用いられる用語「ベクター」、「ウイルスベクター」、「送達ベクター」(及び同様の用語)は、特定の実施形態では、一般に、核酸送達ビヒクルとして機能するウイルス粒子を指し、ビリオン内にパッケージされたウイルス核酸(すなわち、ベクターゲノム)を含む。本発明に係るウイルスベクターは、本発明に係るキメラAAVカプシドを含み、AAV若しくはrAAVゲノム又は任意の他の核酸(ウイルス核酸を含む)をパッケージすることができる。あるいは、一部の文脈においては、用語「ベクター」、「ウイルスベクター」、「送達ベクター」(及び同様の用語)は、ビリオンが不存在のベクターゲノム(例えば、vDNA)、及び/又は、カプシドにつながれた、又はカプシド内にパッケージされた分子を送達するための輸送体として作用するウイルスカプシドを指すために用いられ得る。
【0074】
本発明のウイルスベクターは更に、国際特許公開第01/92551号に記載される二重パルボウイルス粒子であってよい(その開示は参照によりその全体で本明細書中に援用される)。したがって、いくつかの実施形態では、二本鎖(二重)ゲノムがパッケージされ得る。
【0075】
「組換えAAVベクターゲノム」又は「rAAVゲノム」は、少なくとも1つの逆位末端配列(例えば、1、2、又は3つの逆位末端配列)及び1つ以上の異種ヌクレオチド配列を含むAAVゲノム(すなわち、vDNA)である。rAAVベクターは一般に、ウイルスを産生するためにシスで145塩基の末端反復(単数又は複数)(TR(s))を保持しているが、部分的又は完全に合成の配列を含む修飾AAV TR及び非AAV TRも、この目的を果たすことができる。全ての他のウイルス配列は必ずしも必要でなく、トランスで供給されてよい(Muzyczka,(1992)Curr.Topics Microbiol.Immunol.158:97)。rAAVベクターは、2つのTR(例えば、AAV TR)を含んでもよく、それらは一般に、異種ヌクレオチド配列(単数又は複数)の5’及び3’末端にあるが、それに連続している必要はない。TRは、互いに同一又は異なってよい。ベクターゲノムは、単一のITRをその3’又は5’末端に含んでもよい。
【0076】
用語「末端反復」又は「TR」は、ヘアピン構造を形成して逆位末端配列(ITR)として機能する(すなわち、複製、ウイルスパッケージング、インテグレーション及び/又はプロウイルスレスキューなどの所望の機能を仲介する)、任意のウイルス末端反復又は合成配列を含む。TRは、AAV ITR又は非AAV TRであってよい。例えば、他のパルボウイルス(例えば、イヌパルボウイルス(CPV)、マウスパルボウイルス(MVM)、ヒトパルボウイルスB-19)のもののような非AAV TR配列、又は、SV40複製起源として作用するSV40ヘアピンを、TRとして用いることができ、それは、トランケーション、置換、欠失、挿入及び/又は付加によって更に修飾されてよい。更に、TRは、Samulskiらの米国特許第5,478,745号に記載されている「ダブル-D配列」など、部分的又は完全に合成することができる。
【0077】
パルボウイルスゲノムは、回文構造の配列をその5’及び3’両末端に有する。配列の回文構造の性質は、相補塩基対の間の水素結合の形成によって安定化されるヘアピン構造の形成を生じさせる。このヘアピン構造は、「Y」又は「T」形状をとると考えられている。例えば、FIELDS et al.,VIROLOGY、第2巻、第69&70章(第4版、Lippincott-Raven Publishers)を参照。
【0078】
「AAV逆位末端反復」又は「AAV ITR」は、制限されないが、血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10若しくは11、又は、現在知られ又は後に発見される任意の他のAAVを含む任意のAAV由来であってよい(例えば、表1を参照)。AAV ITRは、ITRが所望の機能、例えば、複製、ウイルスパッケージング、組み込み、及び/又はプロウイルスレスキューなどを媒介する限り、天然のITR配列を有する必要はない(例えば、天然のAAV ITR配列は、挿入、欠失、切断、及び/又はミスセンス変異によって変更され得る)。
【0079】
用語「rAAV粒子」及び「rAAVビリオン」は、本明細書において互換的に用いられる。rAAV粒子」又は「rAAVビリオン」は、AAVカプシド内にパッケージされたrAAVベクターゲノムを含む。
【0080】
本発明のウイルスベクターは更に、国際特許公開第00/28004号及びChao et al.,(2000)Mol.Therapy2:619に記載されている「標的化」ウイルスベクター(例えば、方向付けされた指向性を有する)及び/又は「ハイブリッド」パルボウイルス(すなわち、ウイルスITR及びウイルスカプシドが異なるパルボウイルスに由来する)であり得る。
【0081】
更に、ウイルスカプシド又はゲノム要素は、挿入、欠失及び/又は置換を含む他の修飾を含むことができる。
【0082】
本明細書において用いられる用語「アミノ酸」は、任意の天然起源アミノ酸、それらの修飾された形態、及び合成アミノ酸を包含し、非天然起源アミノ酸を含む。
【0083】
天然起源、左旋性(L-)アミノ酸を表2に示す。
【表2】
【0084】
あるいは、アミノ酸は、修飾アミノ酸残基(非限定的な例を表3に示す)であってもよいし、翻訳後修飾(例えば、アセチル化、アミド化、ホルミル化、ヒドロキシル化、メチル化、リン酸化、又は硫酸化)によって修飾されたアミノ酸であってもよい。
【表3】
【0085】
更に、非天然アミノ酸は、Wang et al.,(2006)Annu.Rev.Biophys.Biomol.Struct.35:225-49によって記載されているような「非天然」アミノ酸であり得る。これらの非天然アミノ酸は、目的分子をAAVカプシドタンパク質に化学的に連結させるために有利に用いることができる。
【0086】
保存的アミノ酸置換は、当技術分野で知られている。特定の実施形態では、保存的アミノ酸置換は、以下の群:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸;アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リジン、アルギニン;及び/又はフェニルアラニン、チロシンの1つ以上における置換を含む。
【0087】
用語「テンプレート」又は「基質」は、本明細書において、パルボウイルスのウイルスDNAを生産するために複製され得るポリヌクレオチド配列を指すために用いられる。ベクター生産の目的のために、テンプレートは、典型的に、制限されないが、プラスミド、ネイキッドDNAベクター、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)又はウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、AAV、バキュロウイルス、レトロウイルスベクターなど)を含む、より大きなヌクレオチド配列又は構築物内に埋め込まれる。あるいは、テンプレートは、パッケージング細胞の染色体内に安定的に組み込まれ得る。
【0088】
本明細書において用いられる、パルボウイルス又はAAV「Repコード配列」は、ウイルス複製及び新たなウイルス粒子の生産を仲介するパルボウイルス又はAAVの非構造的タンパク質をコードする核酸配列を示す。パルボウイルス及びAAV複製遺伝子並びにタンパク質は、例えば、FIELDS et al.,VIROLOGY、第2巻、第69章及び第70章(第4版、Lippincott-Raven Publishers)に記載されている。
【0089】
「Repコード配列」は、パルボウイルス又はAAV Repタンパク質の全てをコードする必要はない。例えば、AAVに関しては、Repコード配列は、4つのAAV Repタンパク質(Rep78、Rep68、Rep52及びRep40)の全てをコードする必要はなく、実際に、AAV5は、スプライスされたRep68及びRep40タンパク質のみを発現すると考えられている。代表的な実施形態では、Repコード配列は、ウイルスゲノム複製及び新しいビリオンへのパッケージングに必要な複製タンパク質を少なくともコードする。Repコード配列は、一般に、少なくとも1つの大きなRepタンパク質(すなわち、Rep78/68)及び1つの小さなRepタンパク質(すなわち、Rep52/40)をコードする。特定の実施形態では、Repコード配列は、AAV Rep78タンパク質、並びにAAV Rep52及び/又はRep40タンパク質をコードする。他の実施形態では、Repコード配列は、Rep68及びRep52及び/又はRep40タンパク質をコードする。更に、更なる実施形態では、Repコード配列は、Rep68及びRep52タンパク質、Rep68及びRep40タンパク質、Rep78及びRep52タンパク質、又は、Rep78及びRep40タンパク質をコードする。
【0090】
本明細書において用いられる用語「大きなRepタンパク質」は、Rep68及び/又はRep78を指す。特許請求の範囲に記載される発明の大きなRepタンパク質は、野生型又は合成のいずれかであってよい。野生型の大きなRepタンパク質は、制限されないが、血清型1、2、3a、3b、4、5、6、7、8、9、10、11、又は13を含む任意のパルボウイルス又はAAV、又は、現在知られ又は後に発見される任意の他のAAV由来であってよい(例えば、表1を参照)。合成の大きなRepタンパク質は、挿入、欠失、トランケーション及び/又はミスセンス変異によって変更され得る。
【0091】
当業者は、複製タンパク質が同一のポリヌクレオチドによってコードされる必要はないことを更に理解する。例えば、MVMに関しては、NS-1及びNS-2タンパク質(スプライスバリアント)は、互いに独立して発現され得る。同様に、AAVに関しては、p19プロモーターは不活化され、大きなRepタンパク質は1つのポリヌクレオチドから発現され、小さなRepタンパク質は異なるポリヌクレオチドから発現され得る。しかしながら、典型的には、単一の構築物から複製タンパク質を発現させる方がより便利である。一部のシステムでは、ウイルスプロモーター(例えば、AAV p19プロモーター)は、細胞によって認識されなくてよく、したがって、別個の発現カセットから大きな及び小さなRepタンパク質を発現する必要がある。他の例では、大きなRepタンパク質及び小さなRepタンパク質を、別個に、すなわち、別個の転写及び/又は翻訳制御要素の制御下で発現することが望ましくあり得る。例えば、小さなRepタンパク質に対する大きな方の比を低減させるように、大きなRepタンパク質の発現を制御することが望ましくあり得る。昆虫細胞の場合は、細胞に対する毒性を避けるために、大きなRepタンパク質(例えば、Rep78/68)の発現を下方調節することが有利であり得る(例えば、Urabe et al.,(2002)Human Gene Therapy13:1935を参照)
【0092】
本明細書において用いられる、パルボウイルス又はAAV「capコード配列」は、機能的なパルボウイルス又はAAVカプシドを形成する(すなわち、DNAをパッケージングして標的細胞に感染することができる)構造タンパク質をコードする。典型的に、capコード配列は、パルボウイルス又はAAVカプシドサブユニットの全てをコードするが、機能性カプシドが生産される限り、全てよりも少ないカプシドサブユニットがコードされてよい。典型的に、必ずしもではないが、capコード配列は、単一の核酸分子上に存在する。
【0093】
自律的パルボウイルス及びAAVのカプシド構造は、BERNARD N.FIELDS et al.,VIROLOGY、第2巻、第69章及び第70章(第4版、Lippincott-Raven Publishers)に更に詳細に記載されている。
【0094】
特性を「実質的に維持する」とは、特性(例えば、活性又は他の測定可能な特徴)の少なくとも約75%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%が維持されることを意味する。
【0095】
抗体と結合するためのタンパク質M及びその誘導体を使用する方法
本発明の一態様は、対象への異種薬剤の投与時に抗体を中和することによって異種薬剤の中和を阻害する方法であって、有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質を対象に投与し、それによって異種薬剤の中和を阻害することを含む、方法に関する。
【0096】
本発明の別の態様は、対象においてポリペプチド又は機能的核酸を発現させる方法であって、(a)ポリペプチド又は機能的核酸をコードする核酸送達ベクターと、(b)有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいはマイコプラズマタンパク質Mも又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質と、を対象へ投与し、それによって対象においてポリペプチド又は機能的核酸を発現させることを含む、方法に関する。
【0097】
本発明の更なる態様は、対象における遺伝子を編集する方法であって、(a)遺伝子編集複合体と、(b)有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質と、を対象に投与し、それによって対象においてポリペプチド又は機能的核酸を発現させることを含む、方法に関する。
【0098】
本明細書において用いられる用語「異種薬剤」は、その薬剤が投与される対象において天然に見られない薬剤を指す。その用語はまた、対象において天然に見られる因子の組換え又は合成バージョンも含む。異種薬剤は、それに対する中和抗体が異種薬剤の投与前に対象内に存在するものであってよく、又は対象への投与の際に中和抗体を産生する可能性があるものであってよい。異種薬剤は、対象へ投与されたことが一度もないものであってよい。異種薬剤は、以前に対象へ投与されたことがあるものであってよい。
【0099】
本明細書において用いられる用語「中和抗体」は、対象へ投与された後に、異種薬剤と特異的に結合して、異種薬剤の1つ以上の生物学的活性を阻害する抗体を指す。
【0100】
いくつかの実施形態では、異種薬剤は、核酸送達ベクター、例えば、ウイルスベクター又は非ウイルスベクターであってよい。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、腫瘍溶解性ベクターである。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、バキュロウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、ポリオウイルス、又はアデノウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、非ウイルスベクターは、プラスミド、リポソーム、荷電脂質、核酸タンパク質複合体、又は生体高分子である。
【0101】
いくつかの実施形態では、異種薬剤は、遺伝子編集複合体、例えばCRISPR複合体である。
【0102】
いくつかの実施形態では、異種薬剤は、タンパク質又は核酸である。いくつかの実施形態では、タンパク質は、酵素、調節タンパク質、又は構造タンパク質、例えば、対象における欠失又は欠陥タンパク質の代わりに用いることができるものである。いくつかの実施形態では、核酸は、機能的核酸、例えば、アンチセンス核酸又は阻害性RNAである。
【0103】
有効量のタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質は、中和抗体による異種薬剤の阻害を少なくとも部分的にブロックする、及び/又は自己中和抗体の異種薬剤と結合する能力を打ち負かす量である。いくつかの実施形態では、有効量のタンパク質M又はその機能性断片若しくは誘導体は、中和を少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98、99%、99.5%、又は99.9%阻害するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量のタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質は、対象におけるタンパク質Mの総免疫グロブリンに対する比がモル基準で約0.5:1~約8:1、又はその中の任意の範囲、例えば、約0.5:1、1:1、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、4.5:1、5.5:1、6:1、6.5:1、7:1、7.5:1、若しくは8:1、又はその中の任意の範囲を生成するのに十分な量である。他の実施形態では、比は、約8:1~約50:1である。いくつかの実施形態では、比は、約0.5:1~約6:1、約0.5:1~約4:1、約0.5:1~約2.5:1、約0.5:1~約2:1、約1:1~約8:1、約1.5:1~約8:1、又は約2:1~約8:1である。一実施形態では、比は、約1:1~約3:1、例えば、約2:1である。
【0104】
いくつかの実施形態では、投与は、約1e9vg/kg~約1e14vg/kg、約1e10vg/kg~約1e13vg/kg、又は約1e11vg/kg~約1e12vg/kgのAAV、約1μl~約6Lの血清、及び約1mg/kg~約1000mg/kg、約10mg/kg~約900mg/kg、約25mg/kg~約800mg/kg、約50mg/kg~約600mg/kg、約100mg/kg~約500mg/kg、又は約200mg/kg~約400mg/kgのタンパク質Mを含む。
【0105】
総免疫グロブリンは、総血清免疫グロブリンであってよい(例えばタンパク質Mの全身投与について)。総免疫グロブリンは、局在化された流体又は組織における合計レベルであってよい(例えば、眼、耳、肺、脳、筋肉、関節などへの特異的な送達について)。総免疫グロブリンは、当技術分野で知られている任意の技術によって、例えば、免疫グロブリンのFc領域と結合する抗体を用いた血清に対するELISAを行うことによって、又は免疫グロブリンと結合するプロテインA又はGを用いることによって、測定され得る。更に、マウスについては、それらの血清は5mg/ml~10mg/mlの免疫グロブリンを含むことが知られている。ヒトにおける血清免疫グロブリンに関する正常範囲は8~10mg/mlである。インビボでの概算については、10mg/mlの最上位(high end)を用いて比を計算することができる。局所的な免疫グロブリン含有量は、組織重量(40mLの血清/1kg体重)、又は特定の体液中のIgの濃度、及び血液血清よりも少ない場合はその臓器内の体液容量(例えば、眼、脳脊髄液)に基づいて概算することができる。
【0106】
タンパク質Mは、中和抗体による異種薬剤の阻害をブロックするのに効果的であることが見出された任意のスケジュールによって対象へ投与され得る。いくつかの実施形態では、タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質は、異種薬剤の投与前、例えば、異種薬剤の投与の少なくとも約、1、5、10、15、20、30、40、若しくは50分、又は少なくとも約1、2、3、4、5、6、12、18、24、48、若しくは72時間前に対象へ投与される。いくつかの実施形態では、タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質は、異種薬剤の投与と同時に対象に投与される。本明細書において用いられる用語「同時に(concurrently)」は、組み合わせた効果を生じるのに十分に近い時間を意味する(すなわち、「同時に(concurrently)」とは、「一緒に(simultaneously)」であってよく、又は、短期間内に互いに前後して生じる2つ以上のイベントであってよい)。
【0107】
いくつかの実施形態では、異種薬剤は、対象への投与前に、タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質と組み合わされ、例えば、2つの成分は、単一の組成物中に、投与される前に一緒に混合される。異種薬剤は、対象への投与の少なくとも約1、5、10、15、20、30、40、若しくは50分、又は少なくとも約1、2、3、4、5、6、12、18、若しくは24時間前に、タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質と組み合わせることができる。他の実施形態では、タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質及び異種薬剤は、別個の組成物で投与される。
【0108】
いくつかの実施形態では、治療的効果又は有益な効果を提供するために、異種薬剤及び/又は、タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質を対象に1回を超えて投与することが必要であり得る。タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質は、例えば、1、2、3、4回、又はそれ以上投与され得る。投与は、数日、数週間、数ヶ月、又は数年(例えば、約2日~約10年以上)間隔であり得る。いくつかの実施形態では、投与は、抗体サイクリングの量を減少させ、減少の開始は、約1時間~約3時間である。いくつかの実施形態では、投与は、抗体サイクリングの量を減少させ、減少の開始が、約5分~約8週、約5分~約1時間、約1時間~約2日、又は約2日~約8週である。いくつかの実施形態では、タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質は、異種薬剤が対象へ投与されるときに毎回、例えば、上述と同様の様式で、例えば、異種薬剤の前又は同じ時間に、対象へ投与される。異種薬剤の各投与に伴うタンパク質Mの使用は、再投与の際にしばしば問題となる異種薬剤に対するNAbの効果が存在し得る。いくつかの実施形態では、同じタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質が、毎回投与される。他の実施形態では、異なるタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質、例えば、以下で更に説明するように、異なる修飾タンパク質Mが毎回投与される。理論によって拘束されずに、各投与で異なるタンパク質M誘導体を使用することは、同一タンパク質の再投与によって生じ得るタンパク質Mに対する阻害抗体の効果を制限し得ると考えられる。また、飽和用量のタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質の投与は、タンパク質Mに対する任意の阻害抗体を打ち負かし、抗原認識を妨げると考えられる。いくつかの実施形態では、投与は、自己中和抗体に勝る。
【0109】
タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質が抗体と非特異的に結合する能力は、抗原との抗体の結合を阻害することが有益な他の方法、例えば、免疫抑制が望ましい場合又は過剰な抗体が存在する場合に有利に使用され得る。
【0110】
本発明の更なる態様は、自己免疫疾患を治療することを必要とする対象においてそれを実施する方法であって、治療有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質を対象に投与し、それによって自己免疫疾患を治療することを含む、方法に関する。
【0111】
本明細書において用いられる用語「自己免疫疾患」は、自己免疫反応と関連する任意の障害を指す。例には、多発性硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、炎症性腸症候群、過敏性腸症候群、ブドウ膜炎、インスリン依存性糖尿病、溶血性貧血(例えば、温式自己免疫性溶血性貧血)、リウマチ熱、グッドパスチャー症候群、ギラン・バレー症候群、乾癬、甲状腺炎、バセドウ病、重症筋無力症、糸球体腎炎、自己免疫性肝炎、免疫性血小板減少性紫斑病、急性炎症性脱髄性多発神経障害、抗体媒介性急速進行性糸球体腎炎、慢性炎症性脱髄性多発神経根神経障害、過粘度症候群、再発性限局性分節性糸球体硬化症、視神経脊髄炎スペクトル障害、クリオグロブリン血症、自己免疫性脳炎、自己免疫性神経障害、ANCA血管炎、自己免疫性好中球減少症、抗GBM疾患、尋常性天疱瘡、シェーグレン症候群、ループス腎炎、及び免疫性血球減少症が含まれるが、これらに限定されない。
【0112】
本発明の更なる態様は、過剰な抗体と関連する障害を治療することを必要とする対象においてそれを実施する方法であって、治療有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質を対象に投与し、それによって過剰な抗体と関連する障害を治療することを含む、方法に関する。本明細書において用いられる用語「過剰抗体と関連する障害」は、障害の原因又は少なくとも1つの症候が、血中又は体内の他の場所における、平均よりも高い抗体レベルに起因する任意の障害を指す。例としては、多発性骨髄腫、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)、ワルデンストレームマクログロブリン血症、サイトカイン放出症候群、又は急性自己免疫攻撃、例えば、突然発症する重度の自己免疫性血管炎が挙げられるが、これらに限定されない。また、方法は、自己免疫性イベント、例えば、サイトカイン放出症候群又は急性自己免疫性発作、例えば、突然発症する重度の自己免疫性血管炎を急速に止めるための全抗体の急性的なブロック、又は抗体が介在する免疫複合体の形成によって引き起こされる移植組織及び/若しくは移植臓器に対する損傷の防止に有用であり得る。
【0113】
本発明の方法のいずれについても、タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質は、有効であることが分かっている任意の投与経路(例えば、局所的又は全身的)によって対象に投与することができる。
【0114】
最も適切な経路は、治療される対象及び治療される障害又は状態に依存する。いくつかの実施形態では、タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質は、経口、直腸、経粘膜、鼻腔内、吸入(例えばエアロゾルによる)、口腔(例えば舌下)、膣、髄腔内、眼球内、硝子体内、蝸牛内、経皮、内皮内、子宮内(又は胚内)、非経口(例えば、静脈内、皮下、皮内、頭蓋内、筋肉内[骨格筋、横隔膜及び/又は心筋への投与を含む]、胸膜内、脳内、及び関節内)、局所(例えば、皮膚及び粘膜表面(気道表面を含む)の両方、及び経皮投与)、リンパ内など、並びに直接的な組織又は臓器注入(例えば、肝臓、眼、骨格筋、心筋、横隔膜筋又は脳)から選択される経路によって、対象へ投与される。
【0115】
タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質は、対象の任意の組織若しくは器官に送達又は標的化され得る。いくつかの実施形態では、タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質は、例えば、骨格筋、平滑筋、心臓、横隔膜、気道上皮、肝臓、腎臓、脾臓、膵臓、皮膚、肺、耳、及び眼へ投与される。いくつかの実施形態では、タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質は、疾患組織又は臓器、例えば、腫瘍に投与される。
【0116】
いくつかの実施形態では、異種薬剤及びタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質は、同じ経路によって投与される。他の実施形態では、異種薬剤及びタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質は、異なる経路によって投与され、例えば、タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質が静脈内投与され、異種薬剤が標的組織又は臓器(例えば、疾患組織又は臓器)に局所的に投与される。
【0117】
任意の上記方法は、抗体濃度を減少させるため、又は対象における抗体機能を阻害するための、追加の治療を対象に施すことを更に含み得る。追加の治療は、当技術分野で知られている任意の方法であり得、血漿交換、IdeS若しくはIdeZのような抗体消化酵素の投与、FcRn受容体と結合する抗体の投与、FcRn受容体と結合するFc断片の投与、免疫抑制剤薬物(例えば、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン、ブデソニド、プレドニゾロン)、Janusキナーゼ阻害剤(例えば、トファシチニブ)、カルシニューリン阻害剤(例えば、シクロスポリン、タクロリムス)、mTOR阻害剤(例えば、シロリムス、エベロリムス)、IMDH阻害剤(例えば、アザチオプリン、レフルノミド、ミコフェノール酸)、又は生物製剤(例えば、アバタセプト、アダリムマブ、アナキンラ、セルトリズマブ、エタネルセプト、ゴリムマブ、インフリキシマブ、イキセキズマブ、ナタリズマブ、リツキシマブ、セクキヌマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、ベドリズマブ、バシリキシマブ、ダクリズマブ)の投与、B細胞上のCD19と結合する抗体若しくはCD20と結合してそれらを枯渇させる抗体の投与、又はB細胞を阻害若しくは破壊するように設計された他の治療(例えば、脾臓摘出術、化学療法、免疫療法、放射線療法)が挙げられるが、これらに限定されない。追加の治療は、タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質の投与前、投与中、及び/又は投与後に投与することができる。
【0118】
タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質が抗体と非特異的に結合する能力は、精製方法において有利に使用され得る。抗体の精製は、抗体のFc領域と結合する薬剤に依拠することが多いが(例えばプロテインA及びプロテインG)、タンパク質Mは、抗体の可変領域に非特異的に結合する。したがって、タンパク質Mを用いて、Fc領域を含まない抗体断片及び抗体誘導体(例えば単鎖可変断片)及び抗体可変領域を取り込んだ他の分子を単離することができる。
【0119】
したがって、本発明の一態様は、試料から抗体軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域を含む化合物を単離する方法であって、化合物を、固体支持体に付着した本発明の修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質と接触させ、次いで、修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質から化合物を溶出することを含む、方法に関する。いくつかの実施形態では、抗体軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域を含む化合物は、抗体又はその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗体軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域を含む化合物は、抗体誘導体、免疫グロブリン足場などである。本発明の修飾タンパク質M又はその機能的断片、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質は、熱安定性の増加により、野生型タンパク質Mよりも有利である。このことは、タンパク質Mを複数の精製に関して再利用可能にさせ、野生型タンパク質Mであれば不安定化させる溶出条件の使用を可能にする。
【0120】
当該方法は、親和性精製の分野でよく知られている技術を用いて行われ得る。固体支持体は、親和性クロマトグラフィー又はバッチ精製に適切な任意の材料であり得る。好適な材料は、限定されないが、アガロース、ポリアクリルアミド、デキストラン、セルロース、多糖類、ニトロセルロース、シリカ、アルミナ、酸化アルミニウム、チタニア、酸化チタン、ジルコニア、スチレン、ポリビニルジフルオリドナイロン、スチレン及びジビニルベンゼンのコポリマー、ポリメタクリレートエステル、誘導体化アズラクトンポリマー若しくはコポリマー、ガラス、又はセルロースを含む。いくつかの実施形態では、固体支持体は、樹脂である。いくつかの実施形態では、固体支持体は、ビーズ又は粒子である。いくつかの実施形態では、固体支持体は、例えばプレート、バイアル、又はカラムの表面である。
【0121】
接触するステップは、任意の好適な方法によって、例えば、化合物を含む試料をカラム内の修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質を通して通過させることによって、又は化合物を含む組成物を修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質とともに容器又はプレートのウェル内でインキュベートすることによって実施され得る。接触するステップは、化合物が修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質と結合することができるのに十分な時間実施され得る。修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質と結合した化合物を試料中の他の成分から分離する、洗浄、遠心分離、又は他の形式の分離後、化合物は、修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質から溶出される。溶出は、当技術分野で知られている任意の方法、例えばイオン濃度、温度などの変化によって実施され得る。一実施形態では、溶出は、pH変化によって実施され得る。本発明の修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片は有利に、野生型タンパク質Mよりも広い範囲のpHにわたって安定である。これにより、修飾タンパク質Mは化合物の溶出を可能にする低いpHで安定した状態を維持することができる。
【0122】
いくつかの実施形態では、接触するステップは、結合緩衝液中で(例えば、中性pHで)実施され、溶出は、中和緩衝液(例えば、pH8~9の1Mリン酸塩又は1Mトリスなどの高イオン強度のアルカリ性緩衝液)中の低pH緩衝液(例えば、0.1MグリシンpH2~3.5又は0.1M酢酸pH3.5~4.5)を用いて実施される。
【0123】
本発明の更なる態様は、上述の固体支持体と付着した修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質に関する。修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質は、例えば、共有結合で、例えば、リンカー分子を使用して、当技術分野で知られている任意の手段によって固体支持体と付着させることができる。
【0124】
タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質が抗体と有利に非特異的に結合する能力は、抗体、その断片又は誘導体、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質を結合するステップを伴う任意の免疫測定法に使用することができる。
【0125】
したがって、本発明の一態様は、免疫測定法を実施する方法であって、方法が、本発明の修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質を使用して、抗体軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域を含む化合物と結合させることを含む、方法に関する。
【0126】
修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合タンパク質は、任意の一般的又は特異的な抗体結合分子、例えば、プロテインA、プロテインG、又は二次抗体を置換することができる。修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片、あるいは有効量のマイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を含む融合は、タンパク質当該技術分野で周知のように、例えば、放射性、化学発光、又は酵素による検出のために標識され得る。
【0127】
免疫測定法の例としては、放射免疫測定法(RIA)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)アッセイ、酵素免疫測定法(EIA)、サンドイッチアッセイ、ゲル拡散沈殿反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、免疫蛍光アッセイ、蛍光活性化セルソーティング(FACS)アッセイ、免疫組織化学アッセイ、プロテインA免疫測定法、プロテインG免疫測定法、プロテインL免疫測定法、ビオチン/アビジンアッセイ、ビオチン/ストレプトアビジンアッセイ、免疫電気泳動アッセイ、沈殿/フロキュレーション反応、免疫ブロット(ウエスタンブロット;ドット/スロット・ブロット);免疫拡散アッセイ;リポソーム免疫測定法、化学発光アッセイ、ライブラリスクリーニング、発現アレイ、免疫沈降、競合結合アッセイ、及び免疫組織化学染色が挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
タンパク質M及びその誘導体
本発明の使用において用いられるタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体は、抗体と結合するタンパク質Mを産生する任意のマイコバクテリア種由来であり得る。いくつかの実施形態では、タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体は、Mycoplasma genitalium、Mycoplasma pneumoniae、又はMycoplasma penetrans由来である。
【0129】
いくつかの実施形態では、タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体は、PCT公開第2014/014897号及び米国公開第2017/0320921号に記載される任意のタンパク質M配列であってよく、それらの全体で参照により本明細書中に援用される。いくつかの実施形態では、タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体は、M.genitaliumタンパク質M(MG281、配列番号1)又はその機能的断片若しくは誘導体(例えば、配列番号3に示される断片又はその誘導体)である。いくつかの実施形態では、タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体は、M.pneumoniaeタンパク質M(MPN400、配列番号23)又はその機能的断片若しくは誘導体(例えば、配列番号24に示される断片又はその誘導体)である。いくつかの実施形態では、タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体は、Mycoplasma penetransタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体である。いくつかの実施形態では、タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体は、タンパク質M断片又はその断片の誘導体、例えば、膜貫通ドメインを含まない、及び/又はC末端を含まない断片、例えば、例えば、M.genitaliumタンパク質M(配列番号1)のアミノ酸残基17~537、37~556、37~482、37~468、37~442、74~468、74~479、74~482、74~468、74~442、若しくは74-556、又は別のタンパク質Mからの同等の残基を含む、本質的にそれらからなる、若しくはそれらからなる機能的断片である。列挙された断片の各々の末端に適用される「約」という用語は、末端残基の一方又は両方がわずかに、例えば、列挙された残基の両側で約5、4、3、又は2アミノ酸ずつ変化し得ることを意味する。別のタンパク質Mからの同等の残基は、M.genitaliumタンパク質Mと他のタンパク質Mとの間の配列アライメントを実施することにより、当業者によって容易に決定され得る。例えば、図27は、野生型M.genitaliumタンパク質Mのアミノ酸74~479(配列番号3)と、M.pneumoniaeタンパク質Mの同等の断片(配列番号24)との配列アライメントを示す。いくつかの実施形態では、タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体は、N末端6-Hisタグとそれに続くトロンビン切断部位を有するタンパク質Mの可溶性形態(配列番号1のアミノ酸残基37~556)である、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。
【0130】
本明細書で使用される場合、「誘導体」という用語は、天然起源のタンパク質M又はタンパク質Mの機能的断片とは、天然起源のポリペプチドへのわずかな修飾によって異なるが、タンパク質Mの生物学的活性を有意に保持しているポリペプチドを指すために使用される。わずかな修飾は、限定されずに、1個又は数個のアミノ酸側鎖の変更、1個又は数個のアミノ酸の変更(欠失、挿入、及び/又は置換を含む)、1個又は数個の原子の立体化学の変更(例えば、D-アミノ酸)、及び、限定されないが以下を含む小さな誘導体化:メチル化、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ミリストイル化、プレニル化、パルミテート化(palmitation)、アミド化、及びグリコシルホスファチジルイノシトールの付加を含む。本明細書において用いられる用語「実質的に維持する」は、天然起源ポリペプチドの活性(例えば、抗体結合)の少なくとも約20%、例えば、約30%、40%、50%又はそれよりも多くを維持する、ポリペプチドの断片、誘導体、又は他の変異体を指す。いくつかの実施形態では、タンパク質M又はタンパク質M機能的断片の誘導体は、20以下のアミノ酸残基の変異(任意の組み合わせでの欠失、挿入、及び/又は置換)、例えば、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、又は2又はそれよりも少ない変異を含む。いくつかの実施形態では、プロテインM誘導体は、M.pneumoniaeタンパク質Mの配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3のアミノ酸配列、又は別のマイコプラズマタンパク質Mの野生型配列、若しくはその機能的断片と少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.9%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体は、インビボでの関連ポリペプチドの生存を促進するために、アミノ末端及び/又はカルボキシル末端にブロッキング剤を付加することによって、インビボで使用するために修飾され得る。これは、ペプチド末端がプロテアーゼによって分解される傾向がある状況で有用であり得る。かかるブロッキング剤としては、限定されないが、投与されるタンパク質のアミノ末端残基及び/又はカルボキシル末端残基と結合され得る追加の関連ペプチド配列又は非関連ペプチド配列が含まれ得る。これは、タンパク質の合成中に化学的に、又は、平均的な技術の当業者に馴染みのある方法による組換えDNA技術によって、行うことができる。あるいは、ブロッキング剤、例えばピログルタミン酸又は当技術分野で知られている他の分子を、アミノ及び/又はカルボキシル末端残基に付着させることができ、又はアミノ末端のアミノ基若しくはカルボキシル末端のカルボキシル基を異なる部分で置換することができる。同様に、タンパク質は、投与前に、薬学的に許容される「担体」タンパク質と共有結合又は非共有結合させることができる。
【0132】
本発明の一態様では、タンパク質M誘導体は、タンパク質Mの熱安定性を増加又は少なくとも維持する変異を含む修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片である。これらの修飾タンパク質M誘導体は、野生型タンパク質Mが変性され得る、高い温度(例えば、約37℃)を必要とするインビボ法及び他の方法での使用に対する改善された適合性を有する。
【0133】
いくつかの実施形態では、タンパク質M誘導体は、野生型マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片と比較して、マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片の熱安定性を増加又は維持する1つ以上のアミノ酸変異を有する、修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片である。いくつかの実施形態では、修飾タンパク質M又はその機能的断片は、野生型タンパク質M又はその機能的断片のTmより少なくとも0.5℃、例えば、0.5℃、1.0℃、1.5℃、2.0℃、2.5℃、3.0℃、3.5℃、4.0℃、4.5℃、5.0℃、5.5℃、6.0℃、6.5℃、7.0℃、7.5℃、8.0℃、8.5℃、9.0℃、9.5℃、10.0℃、11.0℃、12.0℃、13.0℃、14.0℃、15.0℃、16.0℃、17.0℃、18.0℃、19.0℃、20.0℃、25.0℃、30.0℃、又はそれ以上の増加した融解温度(Tm)を有する。いくつかの実施形態では、修飾タンパク質M又はその機能的断片は、野生型タンパク質M又はその機能的断片のTmと比較して維持された(すなわち、0.5℃以内の)Tmを有する。Tmは、示差走査型蛍光透視法又は任意の他の好適な技術によって測定され得る。野生型Mycoplasma genitaliumタンパク質MのTmは約41.9℃であり、野生型Mycoplasma pneumoniaeタンパク質MのTmは約44.1℃である。
【0134】
いくつかの実施形態では、修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個、又はそれよりも多くの変異を有してよい。いくつかの実施形態では、修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片は、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2個、又はそれよりも少ない変異を有してよい。
【0135】
いくつかの実施形態では、修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片は、Mycoplasma genitalium、Mycoplasma pneumoniae、又はMycoplasma penetransのタンパク質Mに由来する。
【0136】
いくつかの実施形態では、修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片は、M.genitaliumタンパク質M(配列番号3)の約残基74(例えば、残基69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79)~約残基479(例えば、残基474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484)の断片、又はM.pneumoniaeタンパク質M(配列番号24)の同等の残基である。
【0137】
いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、熱安定性に影響を与えることが知られているタンパク質Mの部分に位置している。いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、タンパク質Mの生物学的活性において他の役割を有することが知られているタンパク質Mのタンパク質には位置しない。一実施形態では、1つ以上の変異は、M.genitaliumタンパク質M(配列番号1)のタンパク質Mの抗体結合部位の5Å以内の残基(すなわち、残基95、99、102、103、105、106、107、109、110、114、116、117、118、119、120、144、158、160、161、162、163、177、178、179、180、181、186、187、188、191、321、338、340、341、345、381、384、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、426、427、429、436、438、439、440、441、442、444、445、446、447、448、449、452、453、455、456、457、462、466)、又はM.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)の同等の残基にはない。一実施形態では、1つ以上の変異は、M.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)のタンパク質Mの抗体結合部位の5Å以内の残基(すなわち、残基100、104、107、108、110、111、112、114、115、119、121、122、123、124、125、149、163、165、166、167、168、182、183、184、185、186、192、193、196、337、338、354、356、357、399、402、404、405、406、407、408、409、410、411、412、442、443、445、454、455、456、457、458、460、461、462、463、464、465、468、469、472、473、478)にはない。一実施形態では、1つ以上の変異は、M.genitaliumタンパク質M(配列番号1)の残基469~479、又はM.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)の同等の残基のいずれにもない。
【0138】
本発明者らは、コンピュータ分析を用いて、変異した場合にタンパク質のTmを増加又は維持することが予測されるタンパク質M内の残基を同定した。したがって、いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、M.genitaliumタンパク質M(配列番号1)の残基78、81、83、84、85、89、90、91、92、93、94、96、97、100、101、108、111、112、113、122、123、125、126、127、128、130、131、133、134、136、137、139、141、142、146、147、148、149、150、153、154、155、156、164、167、170、175、176、184、185、189、192、193、196、198、201、202、204、205、206、207、209、211、215、218、220、224、225、226、227、231、232、234、235、236、237、239、241、243、244、245、246、247、249、250、252、253、254、255、256、257、258、259、264、269、270、272、274、275、276、279、282、284、286、287、288、291、297、299、300、302、303、304、305、307、308、309、310、311、313、317、318、319、320、322、326、327、329、331、332、333、335、337、342、343、347、348、351、354、355、357、358、359、360、361、362、363、367、369、370、371、372、373、374、375、378、385、399、400、401、402、405、406、407、408、409、411、413、414、417、418、419、424、428、434、435、443、450、459、460、463、464、465、468、若しくはM.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)の同等の残基、あるいはそれらの任意の組み合わせにある。いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、表4に列挙される変異、又はそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、M.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)の残基、あるいはそれらの任意の組み合わせ83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、101、102、103、105、106、109、113、116、117、118、120、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、164、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、187、188、189、190、191、194、195、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、355、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、400、401、403、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、444、446、447、448、449、450、451、452、453、459、466、467、470、471、474、475、476、477、479、480、481、482、483、484にある。
【0139】
いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、M.genitaliumタンパク質M(配列番号1)の残基83、90、92、94、137、142、147、150、156、184、196、198、205、211、215、225、231、232、234、235、236、237、239、243、245、250、255、256、259、264、272、274、275、276、279、282、297、300、302、310、320、326、331、332、335、342、343、347、348、355、357、361、371、374、378、385、401、402、409、413、424、460、463、464、468、若しくはM.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)の同等の残基、あるいはそれらの任意の組み合わせにある。いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、表5に列挙される変異、又はそれらの任意の組み合わせである。
【0140】
本発明者らは、予測される残基リストからの非常に多くの変異を、単独で、又は成功率の高い熱安定性増加(安定化変異)若しくは少なくとも熱安定性維持(中立変異)と組み合わせて、調製及び試験した。図23を参照すると、試験した点変異の79%が安定化又は中立であったことが示されている。データは更に、Tmを増加させる点変異の組み合わせが、更により高いTmを有する修飾されたタンパク質Mを生じさせる傾向があることを示す(図15Aを参照)。
【0141】
したがって、いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、単独で、又は他の変異と組み合わせてのいずれかで、Tmを増加させることが実証されている残基にあり、例えば、1つ以上の変異は、M.genitaliumタンパク質M(配列番号1)の残基150、196、198、201、205、224、232、237、274、282、342、355、373、400、402、407、409、413、135、若しくはM.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)の同等の残基、あるいはそれらの任意の組み合わせにある。
【0142】
いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、M.genitaliumタンパク質M(配列番号1)の以下の残基
a)237(MG1);
b)232(MG8);
c)282(MG13);
d)150、196、198、400、402、407、409(MG15);
e)413、435(MG21);
f)373、400(MG22);
g)402、407、409、413(MG23);
h)342(MG24);
i)150、196、198、232、237、282、342、373、400、402、407、409、413、435(MG27);
j)274(MG28);
k)150、196、198、232、237、342、400、402、407、409(MG29);
l)373、413、435(MG31)
m)205(MG33);
n)355(MG38、MG40);
o)150、196、198、342、373、400、402、407、409(MG43);
p)150、196、198、232、237、342、373、400、402、407、409(MG44);
q)201、224(MG45);
r)150、196、198、201、224、232、237、342、400、402、407、409(MG46);
s)150、196、198、232、237、342、390、400、402、407、409、444(MG47);
t)150、196、198、201、205、224、232、237、274、342、355、400、402、407、409(MG48);若しくは
u)150、196、198、232、237、342、391、400、402、407、409(MG49)
、若しくはM.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)の同等の残基、又は残基の組み合わせから選択される残基にある。
【0143】
いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、M.genitaliumタンパク質M(配列番号1)の
a)F237T(MG1);
b)S232Q(MG8);
c)Q282D(MG13);
d)S150E、S196R、S198P、V400I、N402I、K407P、S409V(MG15);
e)L413I、T435I(MG21);
f)V373I、V400I(MG22);
g)N402L、K407P、S409V、L413I(MG23);
h)A342V(MG24);
i)S150E、S196R、S198P、S232Q、F237T、Q282D、A342V、V373I、V400I、N402I、K407P、S409V、L413I、T435I(MG27);
j)N274D(MG28);
k)S150E、S196R、S198P、S232Q、F237T、A342V、V400I、N402I、K407P、S409V(MG29);
l)V373I、L413I、T435I(MG31)
m)A205P(MG33);
n)T355D(MG38);
o)T355P(MG40);
p)S150E、S196R、S198P、A342V、V373I、V400I、N402I、K407P、S409V(MG43);
q)150、196、198、232、237、342、373、400、402、407、409(MG44);
r)S201C、A224C(MG45);
s)S150E、S196R、S198P、S201C、A224C、S232Q、F237T、A342V、V400I、N402I、K407P、S409V(MG46)
t)S150E、S196R、S198P、S232Q、F237T、A342V、F390E、V400I、N402I、K407P、S409V Y444K(MG47);
u)S150E、S196R、S198P、S201C、A205P、A224C、S232Q、F237T、N274D、A342V、T355P、V400I、N402I、K407P、S409V(MG48);若しくは
v)S150E、S196R、S198P、S232Q、F237T、A342V、A391P、V400I、N402I、K407P、S409V(MG49)
、又はM.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)の同等の残基から選択される。
【0144】
いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、単独で、又は他の変異と組み合わせてのいずれかで、Tmを維持することが実証されている残基にあり、例えば、1つ以上の変異は、M.genitaliumタンパク質M(配列番号1)の残基147、150、156、225、232、245、272、276、277、279、300、310、355、378、468、若しくはM.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)の同等の残基、あるいはそれらの任意の組み合わせにある。
【0145】
いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、M.genitaliumタンパク質M(配列番号1)の以下の残基
a)468(MG2);
b)150(MG4);
c)147(MG5);
d)272(MG10);
e)355(MG12);
f)276、277、279(MG17);
g)300(MG18);
h)378(MG20);
i)156(MG32);
j)232(MG34);
k)245(MG35);
l)276(MG36)
m)225(MG41);若しくは
n)310(MG42)
、又はM.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)の同等の残基、あるいは残基の組み合わせから選択される残基にある。
【0146】
いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、M.genitaliumタンパク質M(配列番号1)の
a)R468Q(MG2);
b)S150E(MG4);
c)H147F(MG5);
d)S272G(MG10);
e)T355G(MG12);
f)S276E、Q277L、N279R(MG17);
g)N300Q(MG18);
h)N378Y(MG20);
i)S156K(MG32);
j)S232L(MG34);
k)A245Q(MG35);
l)S276D(MG36)
m)K225P(MG41)、若しくは
n)V310E(MG42)
、又はM.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)の同等の残基から選択される。
【0147】
いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、M.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)の
a)A77E、
b)K125R、
c)V165Q、
d)H170T、又は
e)A280V
から選択される。
【0148】
いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、M.genitaliumタンパク質M(配列番号1)の
a)159;
b)182;
c)102;
d)161;
e)86;
f)101;
g)147;
h)236;
i)348;
j)424;
k)147;
l)321;
m)389;
n)442;
o)119;
p)179;
q)186、若しくは
r)103
、又はM.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)の同等の残基、あるいはそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0149】
いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、M.genitaliumタンパク質M(配列番号1)の
a)Q159C及びA182C、
b)A102C及びT161C、若しくは
c)I86C及びF101C
、又はM.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)の同等の残基、あるいはそれらの任意の組み合わせから選択され、a)、b)、又はc)の修飾残基は、修飾残基間にジスルフィド結合を形成することができる。
【0150】
いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、M.genitaliumタンパク質M(配列番号1)の
a)H147Y、
b)H236Y、
c)H348Y、
d)H424Y、若しくは
e)H147Q
、又はM.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)の同等の残基、あるいはそれらの任意の組み合わせから選択され、変異は、低pHでのその部位でのヒスチジンプロトン化を防ぎ、それによってタンパク質不安定化を防ぐことができる。
【0151】
いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、M.genitaliumタンパク質M(配列番号1)の
a)N321H、
b)Y389H、
c)N442H、
d)P119H、
e)T179H、
f)G186H、若しくは
g)N103H
、又はM.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)の同等の残基、あるいはそれらの任意の組み合わせから選択され、変異は、pH感受性を増加させ、それによって抗体精製の溶出条件を改善することができる。
【0152】
いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、M.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)の残基155、203、243、248、及び358にある。
【0153】
いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、M.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)のA155E、K203R、H243T、V248Q、及びA358Vである。
【0154】
いくつかの実施形態では、変異は、M.genitaliumタンパク質M(配列番号1)の残基338にある(例えば、Y388N)。
【0155】
修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片は、アミノ酸配列内の変異以外の更なる修飾を含んでよい。いくつかの実施形態では、タンパク質M配列内の1つ以上のグリコシル化部位、例えば、1、2、又は3グリコシル化部位が除去される。3つのN-グリコシル化部位は、NGlycPredサーバを用いた配列及び構造の両方の分析に基づき、M.genitaliumタンパク質Mにおいて予測される。これらは、N177、N213、及びN274を含む。2つのO-グリコシル化部位は、NetOGlyc4.0サーバを用いた構造分析に基づきM.genitaliumタンパク質Mにおいて予測される。これらは、T110及びT206を含む。好適な変異は、限定されずに、N177D、T215Y、N274D、S112I、及びT206Yを任意の組み合わせで含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のグリコシル化部位が、修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片に付加される。グリコシル化パターンの変更は、タンパク質の熱安定性を追加し得て、及び/又は、抗体認識をブロックすることによりタンパク質の免疫原性を変更させ得る。
【0156】
発現及び精製目的のために、修飾マイコプラズマタンパク質M又は機能的断片は、分泌ペプチドを、例えばN末端に含んでよく、それにより、発現されるタンパク質は、それが発現される細胞から分泌され得て、培養培地から回収され得る。好適な分泌ペプチドは、限定されずに、ヒト血清アルブミン由来のもの、インターロイキン-2、CD5、免疫グロブリンκ軽鎖、トリプシノーゲン、又は哺乳動物細胞のプロラクチン、及び細菌細胞のSec又はTatを含む。分泌ペプチドは、タンパク質Mから、本発明の方法において用いられる前に除去されてよく、又は除去されなくてよい。
【0157】
いくつかの実施形態では、修飾マイコプラズマタンパク質M又は機能的断片は、タンパク質の1つ以上の生物学的機能又は物理的特徴を変更する1つ以上の追加の変異を含み得る。いくつかの実施形態では、修飾マイコプラズマタンパク質M又は機能的断片は、抗体に関するタンパク質の親和性を変更する1つ以上の追加の変異を含み得る。本発明者らは、コンピュータ分析を用いて、変異した場合に抗体に関するタンパク質の親和性を増加させることが予測されるタンパク質M内の残基を同定した。したがって、いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、M.genitaliumタンパク質M(配列番号1)の残基95、102、103、106、107、114、116、160、161、162、163、181、186、321、381、384、389、390、391、396、397、426、429、436、438、439、441、442、447、448、449、452、453、455、456、462、若しくは466、又はM.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)の同等の残基、あるいはそれらの任意の組み合わせにある。いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、表6に列挙される変異、又はそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、M.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)の残基、あるいはそれらの任意の組み合わせ100、104、107、108、110、111、112、114、115、119、121、122、123、124、125、149、163、165、166、167、168、182、183、184、185、186、192、193、196、337、338、354、356、357、399、402、404、405、406、407、408、409、410、411、412、442、443、445、454、455、456、457、458、460、461、462、463、464、465、468、469、472、473、478にある。
【0158】
いくつかの実施形態では、修飾マイコプラズマタンパク質M又は機能的断片は、タンパク質のpH感受性を修飾することにより抗体に関するタンパク質の親和性を変更する1つ以上の追加の変異を含み得る。本発明者らは、コンピュータ分析を用いて、変異した場合にpH感受性を修飾することにより抗体に関する親和性を増加させることが予測されるタンパク質M内の残基を同定した。これらの変異体は、溶出のためのpH変化を用いる能力に起因して、抗体単離に特に有用であり得る。したがって、いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、M.genitaliumタンパク質M(配列番号1)の残基95、103、116、186、321、389、429、442、若しくは466、又はそれらの任意の組み合わせ、あるいはM.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)の同等の残基にある。いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、表7に列挙される変異、又はそれらの任意の組み合わせである。
【0159】
いくつかの実施形態では、修飾マイコプラズマタンパク質M又は機能的断片は、抗体に関する親和性を減少又は除去する1つ以上の追加の変異を含み得る。例としては、限定されないが、残基390及び444、例えば、M.genitaliumタンパク質M(配列番号1)の390E及びY444K、又はM.pneumoniaeタンパク質M(配列番号23)の同等の残基における変異が挙げられる。
【0160】
いくつかの実施形態では、修飾マイコプラズマタンパク質M又は機能的断片は、M.genitaliumタンパク質M(配列番号1)の約残基185~約残基342、又は別のマイコプラズマタンパク質Mの同等の残基の欠失を含み得る。いくつかの実施形態では、欠失したアミノ酸は、短いリンカーによって置き換えられる。いくつかの実施形態では、欠失により新たに露出した疎水性残基が生じ、これらの新たに露出した残基は1つ以上の変異を有する。
【0161】
本発明の一態様では、融合タンパク質は、修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片と、リンカーと、ペプチドと、を含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、抗体に対する修飾マイコプラズマタンパク質M若しくはその機能的断片の親和性又は結合力を増強する1つ以上の変異を有する、修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片を有する。いくつかの実施形態では、ペプチドは、二量体化ペプチド(例えば、IL-GCN4、C-IL-GCN4)である。他の実施形態では、ペプチドは、Fab結合ポリペプチド又はFc結合ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、Fab結合ポリペプチドは、プロテインL、プロテインA、又はプロテインGである。いくつかの実施形態では、Fab結合ポリペプチドは、免疫グロブリンのFc部分と結合し、かつ/又は免疫グロブリンのFc受容体リサイクリングを減少させ、及び/又は免疫グロブリンとの融合タンパク質の結合を増加させる。他の実施形態では、ペプチドは二量体化ペプチド及びプロテインLを含む。一実施形態では、融合タンパク質は、N末端から始まり、二量体化ペプチド、第1のリンカー、プロテインL、第2のリンカー、及び修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片を順に含む。
【0162】
他の実施形態では、ペプチドは、Fc結合ポリペプチドであり、それはFc受容体ポリペプチドであり得る。いくつかの実施形態では、ペプチドは、Fc結合ポリペプチド及びプロテインLを含む。一実施形態では、融合タンパク質は、N末端から始まり、Fc結合ポリペプチド、第1のリンカー、プロテインL、第2のリンカー、及び修飾マイコプラズマタンM又はその機能的断片を順に含む。いくつかの実施形態では、ペプチドは、Fcドメインであり、Fc受容体ポリペプチドと結合するための補体結合残基、及び/又はFc受容体ポリペプチドと結合するための補体結合残基の1つ以上の変異を含み得る。いくつかの実施形態では、ペプチドはFc受容体タンパク質であり、融合タンパク質は、抗体の細胞取り込みを減少させ、抗体リサイクリングを減少させ、抗体リサイクリングの減少により免疫グロブリン枯渇を引き起こし、かつ/又は免疫グロブリンに対する融合タンパク質の親和性を増加させる。他の実施形態では、融合タンパク質は、2つ以上の修飾マイコプラズマタンパク質M又はその機能的断片を含む。他の実施形態では、融合タンパク質は、半減期延長部分、例えば、ヒトアルブミン若しくはポリエチレングリコール(PEG)の添加、タンパク質修飾、例えば、アシル化、メチル化、リン酸化、硫酸化、ファルネシル化、ユビキチン化、部位選択的結合、グリコシル化、PTMの導入、PEG化、ライゲーション、タンパク質系開始剤の重合、又は結合、親和性、結合標的、若しくはそれらの任意の組み合わせを変更し得る任意の修飾を含む。
【0163】
本発明に係るタンパク質Mタンパク質は、当技術分野でよく知られており本明細書中に記載される方法、例えば組換え発現によって、生産及び特徴付けられる。
【0164】
本発明の更なる態様は、本発明のタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体をコードする単離ポリヌクレオチド、及びタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を産生するための発現カセットを提供する。
【0165】
ポリヌクレオチドは、タンパク質の発現を助けるための調節要素と作動可能に連結され得る。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、プロモーターと作動可能に連結される。プロモーターは、細菌プロモーター(例えば、E.coliにおいて作動可能)又は哺乳動物プロモーター(例えばヒトプロモーター)であり得る。
【0166】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、宿主細胞におけるタンパク質の発現を高めるためにコドン最適化され得る。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、E.coliなどの細菌における発現のためにコドン最適化される。別の実施形態では、ポリヌクレオチドは、ヒト細胞などの哺乳動物細胞における発現のためにコドン最適化される。1つの例は、ヒト細胞における発現のためにコドン最適化された配列番号26の配列、又はそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは99.5%同一の配列である。更なる実施形態では、ポリヌクレオチドは、E.coliなどの細菌、及びヒト細胞などの哺乳動物細胞の両方における発現のためにコドン最適化される。1つの例は、E.coli及びヒト細胞の両方における発現のためにコドン最適化された配列番号25の配列、又はそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99.5%同一の配列である。
【0167】
本発明の別態様は、本発明のポリヌクレオチドを含む、ベクター、例えば発現ベクターである。ベクターは、限定されずに、プラスミドベクター及びウイルスベクターを含む、当技術分野で知られている任意のタイプのベクターであり得る。ベクターは、例えば、細菌ベクター(例えば、E.coliベクター)又は哺乳動物細胞ベクター(例えば、ヒト細胞ベクター)であり得る。
【0168】
本発明の更なる態様は、本発明のポリヌクレオチド及び/又はベクターを含む細胞(例えば、単離細胞、形質転換細胞、組換え細胞など)に関する。したがって、本発明の様々な実施形態は、ベクター(例えば、発現カセット)を含む組換え宿主細胞を対象とする。そのような細胞は、単離細胞であり得る。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、細胞のゲノム内に安定的に取り込まれる。いくつかの実施形態では、細胞は、E.coliなどの細菌細胞、又はヒト細胞などの哺乳動物細胞であり得る。
【0169】
本発明の更なる一態様は、本発明の修飾マイコプラズマタンパク質M若しくはその機能的断片、ポリヌクレオチド、ベクター、及び/又は形質転換細胞を含むキットに関する。キットは、本明細書に記載の方法の1つを実施するための追加の試薬を含み得る。試薬は、適切なパッケージ又は容器内に含まれ得る。追加の試薬には、緩衝液、標識、酵素、検出試薬などが含まれるが、これらに限定されない。
【0170】
キットが供給される場合、異なる構成要素が別個の容器内にパッケージされて、使用の直前に混合されてよい。構成要素をそのように別個にパッケージすることは、活性成分の機能を失わずに長期保存を可能にし得る。キットは更に、指示資料とともに供給されてもよい。指示は、紙又は別の基材上に印刷されてよく、及び/又は電子可読媒体として供給されてよい。
【0171】
異種薬剤
上述のように、異種薬剤は、異種薬剤の投与前に、それに対する中和抗体が対象内に存在するものであってよく、又は対象への投与の際に中和抗体が産生される可能性があるものであってよい。いくつかの実施形態では、異種薬剤は、核酸送達ベクター(例えば、ウイルスベクター又は非ウイルスベクター)、遺伝子編集複合体(例えば、CRISPR複合体)、タンパク質、又は核酸であり得る。
【0172】
任意の目的の核酸配列は、本発明の核酸送達ベクターにおいて送達され得る。目的の核酸は、治療的(例えば、医薬又は獣医学用途)、免疫原性(例えばワクチンのため)、又は診断ポリペプチドを含む、ポリペプチドをコードする核酸を含む。
【0173】
治療的ポリペプチドには、嚢胞性線維症膜貫通調節タンパク質(CFTR)、ジストロフィン(ミニジストロフィン及びマイクロジストロフィンを含む(例えば、Vincent et al.,(1993)Nature Genetics5:130、米国特許公開第2003/017131号、国際公開第2008/088895号、Wang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA97:13714-13719(2000)、及びGregorevic et al.,Mol.Ther.16:657-64(2008)を参照)、ミオスタチンプロペプチド、フォリスタチン、アクチビンII型可溶性受容体、IGF-1、抗炎症性ポリペプチド、例えば、IカッパB優性変異体、サルコスパン、ユートロフィン(Tinsley et al.,(1996)Nature384:349)、ミニユートロフィン、凝固因子(例えば、第VIII因子、第IX因子、第X因子など)、エリスロポエチン、アンジオスタチン、エンドスタチン、カタラーゼ、チロシンヒドロキシラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、LDL受容体、リポタンパク質リパーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、β-グロビン、α-グロビン、スペクトリン、α-アンチトリプシン、アデノシンデアミナーゼ、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、β-グルコセレブロシダーゼ、スフィンゴミエリナーゼ、リソソームヘキソサミニダーゼA、分岐鎖ケト酸デヒドロゲナーゼ、RP65タンパク質、サイトカイン(例えば、α-インターフェロン、β-インターフェロン、インターフェロン-γ、インターロイキン-2、インターロイキン-4、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、リンホトキシンなど)、ペプチド成長因子、神経栄養因子、及びホルモン(例えば、成長ホルモン、インスリン、インスリン様成長因子1及び2、血小板由来成長因子、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、神経成長因子、神経栄養因子-3及び-4、脳由来神経栄養因子、骨形成タンパク質[RANKL及びVEGFを含む]、グリア由来成長因子、トランスフォーミング成長因子-α及び-βなど)、リソソーム酸α-グルコシダーゼ、α-ガラクトシダーゼA、受容体(例えば、腫瘍壊死増殖因子α可溶性受容体)、S100A1、パルブアルブミン、アデニリルシクラーゼ6型、Gタンパク質共役型受容体キナーゼ2型ノックダウンに影響を与える分子、例えば、切断型構成的活性型bARKct、抗炎症性因子、例えば、IRAP、抗ミオスタチンタンパク質、アスパルトアシラーゼ、及びモノクローナル抗体(単鎖モノクローナル抗体を含む;例示的なMabはHerceptin(登録商標)Mabである)が含まれるが、これらに限定されない。他の例示的な異種核酸配列は、自殺遺伝子産物(例えば、チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、ジフテリア毒素、腫瘍壊死因子)、がん治療に使用される薬剤に対する耐性を付与するタンパク質、腫瘍抑制遺伝子産物(例えば、p53、Rb、Wt-1)、TRAIL、FASリガンド、及びそれを必要とする対象において治療的効果を有する他のポリペプチドをコードする。パルボウイルスベクターは、モノクローナル抗体及び抗体断片、例えば、ミオスタチンに対する抗体又は抗体断片を送達するために使用することもできる(例えば、Fang et al.,Nature Biotechnol.23:584-590(2005)を参照)。
【0174】
ポリペプチドをコードする核酸配列は、レポーターポリペプチド(例えば酵素)をコードするものを含む。レポーターポリペプチドは当技術分野で知られており、限定されないが、グリーン蛍光タンパク質、β-ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ、及びクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子を含む。
【0175】
あるいは、本発明の特定の実施形態では、核酸は、機能的核酸、すなわち、タンパク質に翻訳されずに機能する核酸、例えば、アンチセンス核酸、リボザイム(例えば、米国特許第5,877,022号に記載されているような)、スプライセオソーム媒介トランススプライシングに影響を及ぼすRNA(Puttaraju et al.,(1999)Nature Biotech.17:246、米国特許第6,013,487号、米国特許第6,083,702号を参照)、遺伝子サイレンシングを媒介するsiRNA、shRNA、又はmiRNAを含む干渉RNA(RNAi)(Sharp et al.,(2000)Science287:2431を参照)、及び他の非翻訳RNA、例えば「ガイド」RNA(Gorman et al.,(1998)Proc.Nat.Acad.Sci.USA95:4929、Yuan et alの米国特許第5,869,248号)などをコードし得る。例示的な非翻訳RNAには、多剤耐性(MDR)遺伝子産物に対するRNAi(例えば、腫瘍の治療及び/若しくは予防のため、並びに/又は化学療法による損傷を防ぐための心臓への投与のため)、ミオスタチンに対するRNAi(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)、VEGFに対するRNAi(例えば、腫瘍の治療及び/又は予防)、ホスホランバンに対するRNAi(例えば、心血管疾患の治療のため、例えば、Andino et al.,J.Gene Med.10:132-142(2008)、及びLi et al.,Acta Pharmacol Sin.26:51-55(2005)を参照)、ホスホランバン阻害分子又はドミナントネガティブ分子、例えば、ホスホランバンS16E(例えば、心血管疾患の治療のため、例えば、Hoshijima et al.Nat.Med.8:864-871(2002)を参照)、アデノシンキナーゼに対するRNAi(例えば、てんかん)、サルコグリカン[例えば、α、β、γ]に対するRNAi、ミオスタチン、ミオスタチンプロペプチド、フォリスタチン、又はアクチビンII型可溶性受容体に対するRNAi、抗炎症性ポリペプチドに対するRNAi、例えば、IカッパB優性変異体、並びに病原体及びウイルスに対するRNAi(例えば、B型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、CMV、単純ヘルペスウイルス、ヒトパピローマウイルス)が含まれる。
【0176】
あるいは、本発明の特定の実施形態では、核酸は、プロテインホスファターゼ阻害剤I(I-1)、serca2a、ホスホランバン遺伝子を調節するジンクフィンガータンパク質、Barkct、β2-アドレナリン受容体、β2-アドレナリン受容体キナーゼ(BARK)、ホスホイノシチド-3キナーゼ(PI3キナーゼ)、Gタンパク質共役型受容体キナーゼ2型ノックダウンに影響を与える分子、例えば、切断型構成的活性型bARKct、カルサルシン、ホスホランバンに対するRNAi、ホスホランバン阻害分子又はドミナントネガティブ分子、例えば、ホスホランバンS16E、enos、inos、又は骨形成タンパク質(BNP2、7など、RANKL及び/又はVEGFを含む)をコードし得る。
【0177】
核酸送達ベクターはまた、宿主染色体上の遺伝子座と相同性を共有し、それと組換える核酸を含んでもよい。この手法は、例えば、宿主細胞における遺伝的欠陥を修正するために使用することができる。
【0178】
本発明はまた、例えばワクチン接種のための、免疫原性ポリペプチドを発現する核酸送達ベクターを提供する。核酸は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、インフルエンザウイルス、HIV又はSIV gagタンパク質、腫瘍抗原、がん抗原、細菌抗原、ウイルス抗原などに由来する免疫原を含むがこれに限定されない、当該技術分野で知られている任意の免疫原をコードし得る。
【0179】
ワクチンベクターとしてのパルボウイルスの使用は当技術分野で知られている(例えば、Miyamura et al.,(1994)Proc.Nat.Acad.Sci USA91:8507、Youngらの米国特許第5,916,563号、Mazzaraらの米国特許第5,905,040号、Samulskiらの米国特許第5,882,652号、米国特許第5,863,541号を参照)。抗原は、パルボウイルスカプシド内に存在し得る。あるいは、抗原は、組換えベクターゲノム内に導入された核酸によって発現され得る。本明細書に記載の及び/又は当技術分野で知られているような任意の目的の免疫原を、核酸送達ベクターによって提供することができる。
【0180】
免疫原性ポリペプチドは、限定されないが、微生物、細菌性、原生動物、寄生性、真菌及び/又はウイルス性の感染及び疾患を含む感染及び/又は疾患に対して、免疫応答を引き起こす及び/又は対象を保護するのに適切な任意のポリペプチドであり得る。例えば、免疫原性ポリペプチドは、オルソミクソウイルス免疫原(例えば、インフルエンザウイルス免疫原、例えばインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)表面タンパク質、又はインフルエンザウイルス核タンパク質、又はウマインフルエンザウイルス免疫原)、又はレンチウイルス免疫原(例えば、ウマ伝染性貧血ウイルス免疫原、サル免疫不全ウイルス(SIV)免疫原、又はヒト免疫不全ウイルス(HIV)免疫原、例えば、HIV又はSIVエンベロープGP160タンパク質、HIV又はSIVマトリックス/カプシドタンパク質、及びHIV又はSIV gag、pol及びenv遺伝子産物)であることができる。免疫原性ポリペプチドはまた、アレナウイルス免疫原(例えば、ラッサ熱ウイルス免疫原、例えばラッサ熱ウイルスヌクレオカプシドタンパク質及びラッサ熱エンベロープ糖タンパク質)、ポックスウイルス免疫原(例えば、ワクシニアウイルス免疫原、例えばワクシニアL1又はL8遺伝子産物)、フラビウイルス免疫原(例えば、黄熱病ウイルス免疫原又は日本脳炎ウイルス免疫原)、フィロウイルス免疫原(例えば、エボラウイルス免疫原、又はマールブルグウイルス免疫原、例えばNP及びGP遺伝子産物)、ブニヤウイルス免疫原(例えば、RVFV、CCHF、及び/又はSFSウイルス免疫原)、又はコロナウイルス免疫原(例えば、感染性ヒトコロナウイルス免疫原、例えばヒトコロナウイルスエンベロープ糖タンパク質、又はブタ伝染性胃腸炎ウイルス免疫原、又はトリ伝染性気管支炎ウイルス免疫原)であることもできる。免疫原性ポリペプチドは更に、ポリオ免疫原、ヘルペス免疫原(例えば、CMV、EBV、HSV免疫原)流行性耳下腺炎免疫原、麻疹免疫原、風疹免疫原、ジフテリア毒素又は他のジフテリア免疫原、百日咳抗原、肝炎(例えば、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎など)免疫原、及び/又は、現在当技術分野で知られている、若しくは後に免疫原として同定される任意の他のワクチン免疫原であることもできる。
【0181】
あるいは、免疫原性ポリペプチドは、任意の腫瘍又はがん細胞抗原であり得る。任意に、腫瘍又はがん抗原は、がん細胞の表面上に発現される。例示的ながん及び腫瘍細胞抗原は、S.A.Rosenberg(Immunity10:281(1991))に記載されている。他の例示的ながん及び腫瘍抗原としては、限定されないが、以下が挙げられる:BRCA1遺伝子産物、BRCA2遺伝子産物、gp100、チロシナーゼ、GAGE-1/2、BAGE、RAGE、LAGE、NY-ESO-1、CDK-4、β-カテニン、MUM-1、カスパーゼ-8、KIAA0205、HPVE、SART-1、PRAME、p15、黒色腫腫瘍抗原(Kawakami et al.,(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA91:3515、Kawakami et al.,(1994)J.Exp.Med.,180:347、Kawakami et al.,(1994)Cancer Res.54:3124)、MART-1、gp100 MAGE-1、MAGE-2、MAGE-3、CEA、TRP-1、TRP-2、P-15、チロシナーゼ(Brichard et al.,(1993)J.Exp.Med.178:489)、HER-2/neu遺伝子産物(米国特許第4,968,603号)、CA125、LK26、FB5(エンドシアリン)、TAG72、AFP、CA19-9、NSE、DU-PAN-2、CA50、SPan-1、CA72-4、HCG、STN(シアリルTn抗原)、c-erbB-2タンパク質、PSA、L-CanAg、エストロゲン受容体、乳脂肪グロブリン、p53腫瘍抑制タンパク質(Levine,(1993)Ann.Rev.Biochem.62:623)、ムチン抗原(国際特許公開第90/05142号);テロメラーゼ;核マトリックスタンパク質;前立腺酸性ホスファターゼ;パピローマウイルス抗原;及び/又は以下のがんと関連することが現在知られている、若しくは後に発見された抗原:黒色腫、腺がん、胸腺腫、リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫)、肉腫、肺がん、肝臓がん、結腸がん、白血病、子宮がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、膀胱がん、腎臓がん、膵臓がん、脳がん、及び現在知られている、又は後に特定される他のがん若しくは悪性疾患(例えば、Rosenberg,(1996)Ann.Rev.Med.47:481-91を参照)。
【0182】
当業者であれば、目的の核酸を適切な制御配列と機能的に結合させることができることを理解するであろう。例えば、異種核酸は、発現制御要素、例えば、転写/翻訳制御シグナル、複製起点、ポリアデニル化シグナル、内部リボソームエントリー部位(IRES)、プロモーター、及び/又はエンハンサーなどと、作動可能に結合することができる。
【0183】
当業者であれば、所望のレベル及び組織特異的発現に応じて、様々なプロモーター/エンハンサー要素を使用できることが理解されよう。プロモーター/エンハンサーは、所望の発現パターンに応じて、構成的又は誘導性であることができる。プロモーター/エンハンサーは、ネイティブ又は外来であってよく、天然又は合成の配列であることができる。外来とは、転写開始領域が導入される野生型宿主において、その転写開始領域が見られないことを意図する。
【0184】
特定の実施形態では、プロモーター/エンハンサー要素は、治療される標的細胞又は対象にとってネイティブのものであり得る。代表的な実施形態では、プロモーター/エンハンサー要素は、異種核酸配列にとってネイティブのものであり得る。プロモーター/エンハンサー要素は一般に、目的の標的細胞内で機能するように選択される。更に、特定の実施形態では、プロモーター/エンハンサー要素は、哺乳動物のプロモーター/エンハンサー要素である。プロモーター/エンハンサー要素は、構成的又は誘導性であってよい。
【0185】
誘導性発現制御要素は、典型的には、核酸配列の発現に対する調節を提供することが望ましい用途において有利である。遺伝子送達のための誘導性プロモーター/エンハンサー要素は、組織特異的又は好適プロモーター/エンハンサー要素であってよく、筋肉特異的又は好適(心筋、骨格筋及び/又は平滑筋特異的又は好適を含む)、神経組織特異的又は好適(脳特異的又は好適を含む)、眼特異的又は好適(網膜特異的及び角膜特異的を含む)、肝臓特異的又は好適、骨髄特異的又は好適、膵臓特異的又は好適、脾臓特異的又は好適、及び肺特異的又は好適プロモーター/エンハンサー要素を含む。他の誘導性プロモーター/エンハンサー要素としては、ホルモン誘導性及び金属誘導性要素が挙げられる。例示的な誘導性プロモーター/エンハンサー要素は、限定されないが、Tet on/off要素、RU486誘導性プロモーター、エクジソン誘導性プロモーター、ラパマイシン誘導性プロモーター、及びメタロチオネインプロモーターを含む。
【0186】
核酸配列が、標的細胞において、転写されて、それから翻訳される実施形態では、特異的な開始シグナルが一般に、挿入されたタンパク質コード配列の効率的な翻訳のために含まれる。これらの外因的な転写制御配列は、ATG開始コドン及び隣接配列を含んでよく、天然及び合成の両方の様々な起源であってよい。
【0187】
核酸送達ベクターは、分裂細胞及び非分裂細胞を含む広範な細胞へ核酸を送達するための手段を提供する。核酸送達ベクターは、例えばエクスビボでの遺伝子療法のために、目的の核酸を細胞にインビトロで送達するために用いることができる。核酸送達ベクターは、例えば、免疫原性又は治療的ポリペプチド又は機能性RNAを発現するために、それを必要とする対象へ核酸を送達する方法において更に有用である。この様式において、ポリペプチド又は機能性RNAは、対象においてインビボで生産され得る。対象はポリペプチドが不足しているため、そのポリペプチドを必要とし得る。更に、対象におけるポリペプチド又は機能性RNAの産生が何らかの有益な効果を与え得るため、当該方法が実施され得る。
【0188】
核酸送達ベクターはまた、対象において目的のポリペプチド又は機能性RNAを産生するために用いることもできる(例えば、ポリペプチドを産生するため、又は例えば、スクリーニング法と組み合わせて対象に対する機能的核酸の効果を観察するため、バイオリアクターとして対象を用いる)。
【0189】
一般に、本発明の核酸送達ベクターを用いて、治療的ポリペプチド又は機能的核酸を送達することが有益である任意の病態を治療及び/又は予防するために、ポリペプチド又は機能的核酸をコードする核酸を送達することができる。例示的な疾患状態には、限定されないが、嚢胞性線維症(嚢胞性線維症膜貫通調節タンパク質)及び他の肺疾患、血友病A(第VIII因子)、血友病B(第IX因子)、サラセミア(β-グロビン)、貧血(エリスロポエチン)及び他の血液疾患、アルツハイマー病(GDF;ネプリライシン)、多発性硬化症(β-インターフェロン)、パーキンソン病(グリア細胞株由来神経栄養因子[GDNF])、ハンチントン病(RNAiによるリピート除去)、筋萎縮性側索硬化症、てんかん(ガラニン、神経栄養因子)、他の神経疾患、がん(エンドスタチン、アンジオスタチン、TRAIL、FASリガンド、インターフェロンを含むサイトカイン;VEGF又は多剤耐性遺伝子産物に対するRNAiを含むRNAi)、糖尿病(インスリン)、デュシェンヌ型(ジストロフィン、ミニジストロフィン、インスリン様成長因子I、サルコグリカン[例えば、α、β、γ])、ミオスタチンに対するRNAi、ミオスタチンプロペプチド、フォリスタチン、アクチビンII型可溶性受容体、抗炎症性ポリペプチド、例えば、IカッパB優性変異、サルコスパン、ユートロフィン、ミニユートロフィン、ジストロフィン遺伝子のスプライスジャンクションに対するRNAiによるエクソンスキッピングの誘導[例えば、WO/2003/095647を参照]、エクソンスキッピングを誘導するU7snRNAに対するアンチセンス[例えば、WO/2006/021724を参照]、及びミオスタチン若しくはミオスタチンプロペプチドに対する抗体又は抗体断片)、及びベッカー型を含む筋ジストロフィー、ゴーシェ病(グルコセレブロシダーゼ)、ハーラー病(α-L-イズロニダーゼ)、アデノシンデアミナーゼ欠損症(アデノシンデアミナーゼ)、糖原病(例えば、ファブリー病[α-ガラクトシダーゼ]及びポンペ病[リソソーム酸α-グルコシダーゼ])及び他の代謝異常、先天性肺気腫(α1-アンチトリプシン)、レッシュ・ナイハン症候群(ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ)、ニーマン・ピック病(スフィンゴミエリナーゼ)、テイ・サックス病(リソソームヘキソサミニダーゼA)、メープルシロップ尿症(分岐鎖ケト酸デヒドロゲナーゼ)、網膜変性疾患(眼及び網膜の他の疾患、例えば、黄斑変性症に対するPDGF)、脳などの固形臓器の疾患(パーキンソン病[GDNF]、星状細胞腫[エンドスタチン、アンジオスタチン及び/又はVEGFに対するRNAi]、神経膠芽腫[エンドスタチン、アンジオスタチン、及び/又はVEGFに対するRNAi]を含む)、肝臓、腎臓、うっ血性心不全又は末梢動脈疾患(PAD)を含む心臓(例えば、プロテインホスファターゼ阻害剤I(I-1)、serca2a、ホスホランバン遺伝子を調節するジンクフィンガータンパク質、Barkct、β2-アドレナリン受容体、β2-アドレナリン受容体キナーゼ(BARK)、ホスホイノシチド-3キナーゼ(PI3キナーゼ)、S100A1、パルブアルブミン、アデニリルシクラーゼ6型、Gタンパク質共役型受容体キナーゼ2型ノックダウンに影響を与える分子、例えば、切断型構成的活性型bARKct;カルサルシン、ホスホランバンに対するRNAi;ホスホランバン阻害分子又はドミナントネガティブ分子、例えば、ホスホランバンS16Eなどを送達することによって)、関節炎(インスリン様成長因子)、関節障害(インスリン様成長因子1及び/又は2)、内膜過形成(例えば、enos、inosを送達することによって)、心臓移植の生存率の改善(スーパーオキシドジスムターゼ)、AIDS(可溶性CD4)、筋肉消耗(インスリン様成長因子I)、腎臓欠乏(エリスロポエチン)、貧血(エリスロポエチン)、関節炎(抗炎症性因子、例えば、IRAP及びTNFα可溶性受容体)、肝炎(α-インターフェロン)、LDL受容体欠損症(LDL受容体)、高アンモニア血症(オルニチントランスカルバミラーゼ)、クラッベ病(ガラクトセレブロシダーゼ)、バッテン病、SCA1、SCA2、及びSCA3を含む脊髄性脳失調症、フェニルケトン尿症(フェニルアラニンヒドロキシラーゼ)、自己免疫疾患などが含まれる。本発明は更に、臓器移植の前及び/又は後に、移植の成功を増加させるため、及び/又は、臓器移植の負の副作用を減少させるために、又は、補助療法を、用いることができる(例えば、サイトカイン生産をブロックするための免疫抑制剤又は阻害核酸を投与することにより)。別の例として、骨形成タンパク質(BNP2、7など、RANKL及び/又はVEGFを含む)は、例えば、がん患者の骨折又は外科的除去後に、骨同種移植片とともに投与することができる。
【0190】
遺伝子導入は、病態について理解して療法を提供するための実質的な潜在的用途を有している。欠陥遺伝子が知られており、クローン化されている遺伝性疾患が数多く存在する。一般に、上記病態は2つのクラス:一般に劣性遺伝性であり、通常は酵素の欠乏状態、及び調節又は構造タンパク質が関与し得る、典型的に優勢遺伝性である、不均衡状態に分類される。欠乏状態の疾患については、遺伝子導入は、正常遺伝子を補充療法のために影響を受けた組織へ運ぶため、及び、アンチセンス変異を用いて疾患に関する動物モデルを作製するために、用いることができる。不均衡病態については、遺伝子導入は、モデル系における病態を作製するために用いることができ、それから、病態に対抗する試みにおいて用いることができる。したがって、核酸送達ベクターは、遺伝子疾患の治療及び/又は予防を可能にする。
【0191】
核酸送達ベクターはまた、インビトロ又はインビボで細胞に機能的核酸を提供するためにも用いられ得る。細胞における機能的核酸の発現は、例えば、細胞による特定の標的タンパク質の発現を減少させることができる。したがって、機能的核酸は、特定のタンパク質の発現を低減させるために、それを必要とする対象において投与することができる。
【0192】
核酸送達ベクターは、診断法及びスクリーニング法において用途が見出され、それにより、目的の核酸がトランスジェニック動物モデルにおいて一時的又は安定的に発現される。
【0193】
核酸送達ベクターはまた、当業者に明らかであるように、限定されないが、遺伝子標的化、クリアランス、転写、翻訳などを評価するためのプロトコルにおける使用を含む、様々な非治療的目的のために用いることもできる。核酸送達ベクターはまた、安全性(蔓延、毒性、免疫原性など)を評価する目的のために用いることもできる。そのようなデータは、例えば、臨床有効性の評価前の規制上の承認プロセスの一部として米国食品医薬品局によって考慮される。
【0194】
更なる一態様として、本発明の核酸送達ベクターは、対象における免疫応答を産生するために用いられ得る。この実施形態によれば、免疫原性ポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸送達ベクターを対象に投与して、免疫原性ポリペプチドに対して対象によって能動的な免疫応答を開始することができる。免疫原性ポリペプチドは上記に説明したとおりである。いくつかの実施形態では、防御免疫応答が誘発される。
【0195】
あるいは、核酸送達ベクターは、エクスビボで細胞へ投与されてよく、変更された細胞が対象へ投与される。核酸を含む核酸送達ベクターは細胞に導入され、細胞は対象に投与され、そこで免疫原をコードする核酸が発現され、対象において免疫原に対する免疫応答を誘導することができる。特定の実施形態では、細胞は抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)である。
【0196】
「能動免疫応答」又は「能動免疫」は、「免疫原との遭遇後の宿主組織及び細胞の参加」によって特徴付けられる。それは、リンパ細網組織内の免疫担当細胞の分化及び増殖を含み、抗体の合成若しくは細胞が介在する反応度の発達、又は両方を生じさせる。」 Herbert B.Herscowitz,Immunophysiology:Cell Function and Cellular Interactions in Antibody Formation,in IMMUNOLOGY:BASIC PROCESSES117(Joseph A.Bellanti ed.,1985)。別の言い方をすると、能動免疫応答は、感染又はワクチン接種によって免疫原に曝露された後に宿主によって開始される。能動免疫は、「能動的に免疫化された宿主から非免疫宿主への、予め形成された物質(抗体、伝達因子、胸腺移植組織、インターロイキン-2)の移行」によって獲得される受動免疫と対比することができる。Id.
【0197】
本明細書において用いられる「防御」免疫応答又は「防御」免疫は、免疫応答が、疾患の発生を防止又は減少させるという点で何らかの利益を対象に与えることを示す。あるいは、防御免疫応答又は防御免疫は、疾患、特にがん又は腫瘍の処置及び/又は予防において、(例えば、がん又は腫瘍の形成を防止することにより、がん又は腫瘍の回帰を生じさせることにより、及び/又は、転移を防止することにより、及び/又は、転移小結節の増殖を防止することにより)有用であり得る。防御効果は、治療の利益がその任意の不利な点に勝る限り、完全又は部分的であってよい。
【0198】
特定の実施形態では、核酸送達ベクター又は核酸を含む細胞は、以下に記載するように、免疫原的に有効な量で投与することができる。
【0199】
核酸送達ベクターはまた、1つ以上のがん細胞抗原(又は免疫学的に似ている分子)又はがん細胞に対して免疫応答を産生する任意の他の免疫原を発現する核酸送達ベクターの投与によって、がん免疫療法のために投与することもできる。説明すると、例えば、がんを有する患者を治療するため、及び/又はがんが対象において発生するのを防止するために、がん細胞抗原をコードする核酸を含む核酸送達ベクターを投与することにより、免疫応答が対象においてがん細胞抗原に対して産生され得る。核酸送達ベクターは、本明細書中に記載のように、インビボで、又はエクスビボの方法を用いることにより、対象へ投与され得る。あるいは、がん抗原は、核酸送達ベクターの一部として発現され得る。
【0200】
別の代替としては、当技術分野で知られている任意の他の治療的核酸(例えば、RNAi)又はポリペプチド(例えば、サイトカイン)を投与して、がんを治療及び/又は予防することができる。
【0201】
本明細書において用いられる用語「がん」は、腫瘍形成がんを包含する。同様に、用語「がん性組織」は、腫瘍を包含する。「がん細胞抗原」は、腫瘍抗原を包含する。
【0202】
用語「がん」は、当該分野におけるその理解された意味を有し、例えば、身体の離れた部位へ広がる(すなわち、転移する)潜在性を有する細胞の無制御な増殖である。例示的ながんとしては、限定されないが、黒色腫、腺がん、胸腺腫、リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫)、肉腫、肺がん、肝臓がん、結腸がん、白血病、子宮がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、膀胱がん、腎臓がん、膵がん、脳腫瘍及び任意の他のがん、又は現在既知若しくは後に同定される悪性状態が含まれる。代表的な実施形態では、本発明は、腫瘍形成がんを処置及び/又は予防する方法を提供する。
【0203】
用語「腫瘍」はまた、例えば、多細胞生物内の未分化細胞の異常な塊として、当該分野において理解される。腫瘍は、悪性又は良性であり得る。代表的な実施形態では、本明細書に開示される方法は、悪性腫瘍を予防及び治療するために用いられる。
【0204】
用語「がんを治療する」、「がんの治療」及び同等の用語により、がんの重症度が減少又は少なくとも部分的に除去されること、並びに/又は疾患の進行が遅延及び/若しくは制御されること、並びに/又は疾患が安定することが意図される。特定の実施形態では、これらの用語は、がんの転移が防止若しくは減少又は少なくとも部分的に除去されること、及び/あるいは転移小結節の増殖が防止若しくは減少又は少なくとも部分的に除去されることを示す。
【0205】
用語「がんの予防」又は「がんを予防する」及び同等の用語は、方法が、がんの発症の発生率及び/若しくは重症度を少なくとも部分的に排除、又は減少、及び/又は遅延させることを意図する。別の言い方をすると、対象におけるがんの発症は、可能性又は確率が減少し、かつ/又は遅延される。
【0206】
特定の実施形態では、細胞は、がんを有する対象から取り出して、核酸送達ベクターと接触され得る。それから、修飾細胞が対象に投与され、それによってがん細胞抗原に対する免疫応答が誘発される。この方法は、インビボで十分な免疫応答を開始することができない(すなわち、増強抗体を十分な量で産生することができない)免疫不全の対象で有利に用いることができる。
【0207】
免疫応答は、免疫調節性サイトカイン(例えば、α-インターフェロン、β-インターフェロン、γ-インターフェロン、ω-インターフェロン、τ-インターフェロン、インターロイキン-1α、インターロイキン-1β、インターロイキン-2、インターロイキン-3、インターロイキン-4、インターロイキン5、インターロイキン-6、インターロイキン-7、インターロイキン-8、インターロイキン-9、インターロイキン-10、インターロイキン-11、インターロイキン12、インターロイキン-13、インターロイキン-14、インターロイキン-18、B細胞増殖因子、CD40リガンド、腫瘍壊死因子-α、腫瘍壊死因子-β、単球化学誘引タンパク質-1、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子、及びリンホトキシン)によって増強され得ることが当技術分野で知られている。したがって、免疫調節性サイトカイン(好ましくは、CTL誘導性サイトカイン)は、ウイルスベクターと組み合わせて対象に投与され得る。
【0208】
サイトカインは、当技術分野で知られている任意の方法によって投与され得る。外因性サイトカインを対象に投与してもよく、あるいは、サイトカインをコードする核酸を適切なベクターを使用して対象に送達し、サイトカインをインビボで産生してもよい。
【0209】
対象、薬学的製剤、及び投与モード
本発明の方法は、獣医学及び医療用途の両方での使用を見出す。好適な対象は、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、及び哺乳動物を含む。本明細書において用いられる用語「哺乳動物」は、制限されないが、ヒト、霊長類、非ヒト霊長類(例えば、サル及びヒヒ)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ウサギ、齧歯類(例えば、ラット、マウス、ハムスターなど)などを含む。ヒト対象は、新生児、幼児、青少年、及び成人を含む。任意に、対象は、例えば、本明細書に記載されるものを含む障害を対象が有する又はそのリスクがあると考えられ、又は、本明細書に記載されるものを含むポリヌクレオチドの送達によって利益を得るので、本発明の方法を「必要」とする。更なる選択肢として、対象は、実験動物及び/又は疾患の動物モデルであり得る。好ましくは、対象は、ヒトである。
【0210】
特定の実施形態では、異種薬剤及びタンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体は、対象の人生においてできるだけ早く、例えば、対象が疾患又は障害であると診断されたらすぐに、それを必要とする対象へ投与される。いくつかの実施形態では、方法は、新生児対象に対して、例えば、新生児スクリーニングによって疾患又は障害が同定された後に行われる。いくつかの実施形態では、方法は、10才よりも前、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10才よりも前の対象に対して行われる。いくつかの実施形態では、当該方法は、10才よりも後の若年又は成人対象に対して行われる。いくつかの実施形態では、当該方法は、子宮内の胎児に対して、例えば出生前スクリーニングによって疾患又は障害が同定された後に行われる。いくつかの実施形態では、方法は、対象が疾患又は障害と関連する症候を発症したらすぐに、対象に対して行われる。いくつかの実施形態では、方法は、対象が疾患又は障害と関連する症候を発症する前に、例えば、疾患又は障害を有している疑いがあり、又はそのように診断されるが症候を示し始めていない対象に対して行われる。
【0211】
特定の実施形態では、本発明は、タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体を、単独で、又は異種薬剤、薬学的に許容される担体、及び任意で、他の薬用剤、医薬品、安定化剤、緩衝剤、担体、アジュバント、希釈剤などと組み合わせて含む1つ以上の薬学的組成物を提供する。注射の場合、担体は、通常は液体である。他の投与方法では、担体は、固体又は液体のいずれかであり得る。吸入投与の場合、担体は吸入可能であり、固体又は液体の微粒子形態であり得る。
【0212】
「薬学的に許容される」とは、毒性又は他の望ましくない物質、すなわち、いかなる望ましくない生物学的影響も引き起こすことなく対象に投与され得る物質を意味する。
【0213】
本発明の一態様は、インビトロで、例えばエクスビボ方法の一部として、核酸を細胞へ導入する方法である。異種薬剤(例えば、核酸送達ベクター、例えば、ウイルスベクター)は、特定の標的細胞に好適な標準的な形質導入法に従って、適切な量、例えば、感染多重度で細胞に導入され得る。投与するウイルスベクターの力価は、標的細胞の種類及び数、並びに特定のウイルスベクターに応じて変化し得、当業者であれば過度の実験を伴うことなく決定することができる。代表的な実施形態では、少なくとも約10感染単位、より好ましくは少なくとも約10感染単位が細胞へ導入される。
【0214】
核酸送達ベクターが導入される細胞は任意の種類であり得、限定されないが、神経系細胞(末梢及び中枢神経系の細胞、特に、脳細胞、例えばニューロン及びオリゴデンドロサイトを含む)、肺細胞、眼の細胞(網膜細胞、網膜色素上皮、及び角膜細胞を含む)、血管細胞(例えば、内皮細胞、内膜細胞)、上皮細胞(例えば、消化管及び呼吸器上皮細胞)、筋肉細胞(例えば、骨格筋細胞、心筋細胞、平滑筋細胞及び/又は横隔膜筋細胞)、樹状細胞、膵臓細胞(膵島細胞を含む)、肝細胞、腎細胞、心筋細胞、骨細胞(例えば、骨髄幹細胞)、造血幹細胞、脾臓細胞、ケラチン生成細胞、線維芽細胞、内皮細胞、前立腺細胞、生殖細胞などを含む。代表的な実施形態では、細胞は、任意の前駆細胞であり得る。更なる可能性としては、細胞は、幹細胞(例えば、神経幹細胞、肝臓幹細胞)であり得る。更なる代替としては、細胞は、がん又は腫瘍細胞であり得る。更に、細胞は、上記に記載したような任意の起源の種に由来し得る。
【0215】
核酸送達ベクターは、修飾細胞を対象に投与する目的で、インビトロで細胞に導入することができる。特定の実施形態では、細胞が対象から取り出されて、核酸送達ベクターがその中に導入されて、次いで、細胞が元の対象へ投与される。エクスビボでの操作のために細胞を対象から取り出して、その後に元の対象へ導入する方法は、当技術分野で知られている(例えば、米国特許第5,399,346号を参照)。あるいは、核酸送達ベクターを、ドナー対象由来の細胞へ、培養細胞へ、又は、任意の他の適切な起源由来の細胞へ導入することができ、細胞が、それを必要とする対象(すなわち、「レシピエント」対象)へ投与される。
【0216】
エクスビボでの遺伝子送達に好適な細胞は上述のとおりである。対象へ投与する細胞の投薬量は、対象の年齢、状態及び種類、細胞のタイプ、細胞によって発現される核酸、投与様式などによって変化するであろう。典型的に、少なくとも約10~約10細胞又は少なくとも約10~約10細胞が、薬学的に許容される担体において用量当たり投与される。特定の実施形態では、核酸送達ベクターを用いた細胞形質導入が、治療有効量又は予防有効量で薬学的担体と組み合わせて対象に投与される。
【0217】
いくつかの実施形態では、核酸送達ベクターは、細胞に導入され、細胞は、送達されたポリペプチド(例えば、導入遺伝子として又はカプシド内で発現される)に対する免疫原性応答を誘発するために対象に投与され得る。典型的に、免疫原的有効量のポリペプチドを発現するある量の細胞が、薬学的に許容される担体と組み合わせて投与される。「免疫原的有効量」は、医薬製剤が投与される対象において、ポリペプチドに対する能動的な免疫応答を誘発するのに十分な、発現されるポリペプチドの量である。特定の実施形態では、投薬量は、防御免疫応答(上記に定義)を生じるのに十分である。与えられる防御の程度は、免疫原性ポリペプチドを投与する利益がその任意の不利な点に勝る限り、完全又は永久である必要はない。
【0218】
本発明の更なる一態様は、異種薬剤(例えば、核酸送達ベクター)を対象へ投与する方法である。核酸送達ベクターの、それを必要とするヒト対象又は動物への投与は、当技術分野で知られている任意の手段によることができる。任意に、核酸送達ベクターは、薬学的に許容される担体中で治療有効量又は予防有効量で送達される。
【0219】
核酸送達ベクターは更に、免疫原性応答を誘発するために(例えば、ワクチンとして)投与することができる。典型的に、本発明の免疫原性組成物は、免疫原的有効量の核酸送達ベクターを、薬学的に許容される担体と組み合わせて含む。任意に、投薬量は、防御免疫応答(上記に定義)を生じるのに十分な量である。与えられる防御の程度は、免疫原性ポリペプチドを投与する利益がその任意の不利な点に勝る限り、完全又は永久である必要はない。対象及び免疫原は上述のとおりである。
【0220】
対象へ投与される核酸送達ベクター(例えば、ウイルスベクター)の投薬量は、投与様式、治療及び/若しくは予防される疾患又は状態、個々の対象の状態、特定の核酸送達ベクター、並びに送達される核酸などに依存し、ルーチン的な様式で決定することができる。治療的効果を達成するための例示的な用量は、少なくとも約10、10、10、10、10、1010、1011、1012、1013、1014、1015形質導入単位、任意に約10~1013形質導入単位の力価である。
【0221】
特定の実施形態では、様々な間隔、例えば、毎日、毎週、毎月、毎年などの期間にわたって、1回を超える投与(例えば、2回、3回、4回、又はそれよりも多くの投与)を用いて、所望のレベルの遺伝子発現が達成され得る。
【0222】
例示的な投与様式としては、経口、直腸、経粘膜、鼻腔内、吸入(例えば、エアロゾルによる)、口腔(例えば舌下)、膣、髄腔内、眼球内、経皮、内皮内、子宮内(又は胚内)、非経口(例えば、静脈内、皮下、皮内、頭蓋内、筋肉内[骨格筋、横隔膜及び/又は心筋への投与を含む]、胸膜内、脳内、及び関節内)、局所(例えば、皮膚及び粘膜表面(気道表面を含む)の両方、及び経皮投与)、リンパ内など、並びに直接的な組織又は臓器注入(例えば、肝臓、眼、骨格筋、心筋、横隔膜筋又は脳)が挙げられる。
【0223】
投与は、対象における任意の部位であることができ、限定されずに、脳、骨格筋、平滑筋、心臓、横隔膜、気道上皮、肝臓、腎臓、脾臓、膵臓、皮膚、及び眼からなる群から選択される部位を含む。
【0224】
投与は、腫瘍(例えば、腫瘍又はリンパ節内、又はその付近)に対するものであってもよい。任意の所定の場合における最も好適な経路は、治療及び/又は予防される症状の性質及び重症度、並びに用いられる特定のベクターの性質に依存する。
【0225】
本発明による骨格筋への投与は、限定されないが、四肢(例えば、上腕、前腕、上腿、及び/又は下腿)、背中、首、頭部(例えば、舌)、胸部、腹部、骨盤/会陰、及び/又は指における骨格筋への投与を含む。好適な骨格筋としては、限定されないが、小指外転筋(手の)、小指外転筋(足の)、母趾外転筋、中足骨外転筋、短母指外転筋、長母指内転筋、短母指内転筋、母趾内転筋、長母指内転筋、大内転筋、母指内転筋、肘筋、前斜角筋、関節筋属、上腕二頭筋、大腿二頭筋、上腕筋、腕橈骨筋、頬筋、烏口腕筋、上皺筋、三角筋、口角圧筋、下唇圧筋、二腹筋、背側骨間筋(手の)、背側骨間筋(足の)、短橈側手根伸筋、長橈側手根伸筋、尺側手根伸筋、小指伸筋、指伸筋、短趾伸筋、長趾伸筋、短母趾伸筋、長母趾伸筋、印伸筋、短母指伸筋、長母指伸筋、橈骨手根屈筋、尺側手根屈筋、短小指屈筋(手の)、短小指屈筋(足の)、短趾屈筋、長趾屈筋、深趾屈筋、浅趾屈筋、短母趾屈筋、長母趾屈筋、短母指屈筋、長母指屈筋、前頭筋、腓腹筋、オトガイ舌骨筋、大殿筋、中殿筋、小殿筋、薄筋、頸腸肋筋、腰腸肋筋、胸腸肋筋、腸骨筋、下双子筋、下斜筋、下直筋、棘下筋、棘間筋、横突間筋、外側翼突筋、外側直筋、広背筋、口角挙筋、上唇挙筋、上唇鼻翼挙筋、上眼瞼挙筋、肩甲挙筋、長回旋筋、頭最長筋、頚最長筋、胸最長筋、頭長筋、頚長筋、中様筋(手の)、中様筋(足の)、咬筋、内側翼突筋、内側直筋、中斜角筋、多裂筋、顎舌骨筋、下頭斜筋、上頭斜筋、外閉鎖筋、内閉鎖筋、後頭筋、片舌骨、小指の反対側、母指の反対側、眼輪筋、口輪筋、掌側骨間筋、短掌筋、長掌筋、恥骨筋、大胸筋、小胸筋、短腓骨筋、長腓骨筋、第三腓骨筋、梨状筋、足底骨間筋、足底筋、広頸筋、膝窩筋、後斜角筋、方形回内筋、円回内筋、大腰筋、大腿方形筋、足底方形筋、前頭直筋、外側頭直筋、大後頭直筋、小後頭直筋、大腿直筋、大菱形筋、小菱形筋、笑筋、縫工筋、小斜角筋、半膜様筋、頭半棘筋、頸半棘筋、胸半棘筋、半腱様筋、前鋸筋、短回旋筋(short rotator)、ヒラメ筋、頭棘筋、頚棘筋、胸棘筋、頭板状筋、頚板状筋、胸鎖乳突筋、胸骨舌骨筋、胸骨甲状筋、茎突舌骨筋、鎖骨下筋、肩甲下筋、上双子筋、上斜筋、上直筋、回外筋、棘上筋、側頭筋、大腿筋膜張筋、大円筋、小円筋、胸筋、甲状舌骨、前脛骨筋、後脛骨筋、僧帽筋、上腕三頭筋、中間広筋、外側広筋、内側広筋、大頬骨筋、及び小頬骨筋、並びに当技術分野で知られている他の任意の好適な骨格筋が含まれる。
【0226】
異種薬剤は、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、四肢灌流(任意に、足及び/又は腕の分離式四肢灌流であってもよい;例えばArruda et al.,(2005)Blood105:3458-3464を参照)、及び/又は直接的な筋肉内注入によって、骨格筋に送達することができる。特定の実施形態では、異種薬剤は、四肢灌流、場合によっては隔離された四肢灌流(例えば、静脈内又は静脈内によって、対象(例えば、DMDなどの筋ジストロフィーを有する対象)の四肢(腕及び/又は脚)に投与される。本発明の実施形態では、異種薬剤は、「流体力学」技術を使用せずに有利に投与することができる。従来技術のベクターの組織送達(例えば、筋肉へ)は、多くの場合、流体力学技術(例えば、静脈内/大量の静脈内投与)によって強化され、これにより、血管系内の圧力が増加し、因子が内皮細胞障壁を通過する能力が促進される。特定の実施形態では、異種薬剤は、大量注入及び/又は血管内圧の上昇(例えば、正常な収縮期圧より高い、例えば、正常な収縮期圧を超える血管内圧の5%、10%、15%、20%、25%以下の増加)などの流体力学技術の非存在下で投与することができる。そのような方法は、浮腫、神経損傷及び/又は区画症候群のような、流体力学技術と関連する副作用を減少又は回避し得る。
【0227】
心筋への投与は、左心房、右心房、左心室、右心室及び/又は隔膜への投与を含む。異種薬剤は、静脈内投与、動脈内投与、例えば、大動脈内投与、直接的な心臓注入(例えば、左心房、右心房、左心室、右心室へ)、及び/又は冠動脈灌流によって、心筋へ送達され得る。
【0228】
横隔膜筋への投与は、静脈内投与、動脈内投与、及び/又は腹膜内投与を含む任意の好適な方法によることができる。
【0229】
平滑筋への投与は、静脈内投与、動脈内投与、及び/又は腹膜内投与を含む任意の好適な方法によることができる。一実施形態では、平滑筋内、平滑筋付近、及び/又は平滑筋上に存在する内皮細胞へ投与することができる。
【0230】
標的組織への送達は、異種薬剤を含むデポーを送達することによっても達成することができる。代表的な実施形態では、異種薬剤を含むデポーは、骨格筋、平滑筋、心筋及び/又は横隔膜筋組織へ埋め込まれるか、又は異種薬剤を含むフィルム若しくは他のマトリックスと組織を接触させることができる。そのような埋め込み可能なマトリックス又は基材は、米国特許第7,201,898号に記載されている。
【0231】
特定の実施形態では、異種薬剤は、骨格筋、横隔膜筋及び/又は心筋へ投与される(例えば、筋ジストロフィー又は心疾患[例えば、PAD又はうっ血性心不全]を治療及び/又は予防するため)。
【0232】
代表的な実施形態では、本発明は、骨格筋、心筋及び/若しくは横隔膜筋の障害を治療並びに/又は予防するために用いられる。
【0233】
代表的な実施形態では、本発明は、それを必要とする対象における筋ジストロフィーを治療及び/又は予防する方法を提供し、方法は、治療又は予防有効量の異種薬剤を哺乳動物の対象へ投与することを含み、異種薬剤は、ジストロフィン、ミニジストロフィン、マイクロジストロフィン、ミオスタチンプロペプチド、フォリスタチン、アクチビンII型可溶性受容体、IGF-1、抗炎症性ポリペプチド、例えばIカッパBドミナント変異体、サルコスパン、ユートロフィン、マイクロジストロフィン、ラミニン-α2、α-サルコグリカン、β-サルコグリカン、γ-サルコグリカン、δ-サルコグリカン、IGF-1、ミオスタチン若しくはミオスタチンプロペプチドに対する抗体若しくは抗体断片、及び/又は、ミオスタチンに対するRNAiをコードする核酸を含む。特定の実施形態では、異種薬剤は、本明細書中の他の場所で説明したように、骨格筋、横隔膜筋及び/又は心筋へ投与することができる。
【0234】
あるいは、血中又は他の組織への全身性送達のために通常循環するポリペプチド(例えば、酵素)又は機能性核酸(例えば、機能性RNA、例えば、RNAi、マイクロRNA、アンチセンスRNA)の産生のためのプラットフォームとして用いられる骨格筋、心筋又は横隔膜筋へ核酸を送達するために本発明を実施して、障害を治療及び/又は予防することができる(例えば代謝障害、例えば糖尿病(例えば、インスリン)、血友病(例えば、IX因子又はVIII因子)、ムコ多糖障害(例えば、スライ症候群、ハーラー症候群、シャイエ症候群、ハーラー-シャイエ症候群、ハンター症候群、サンフィリポ症候群A、B、C、D、モルキオ症候群、Maroteaux-Lamy症候群など)又はリソソーム蓄積症(例えばゴーシェ病[グルコセレブロシダーゼ]、ポンぺ病[リソソーム酸α-グルコシダーゼ]又はファブリー病[α-ガラクトシダーゼA])又は糖原病(例えばポンぺ病[リソソーム酸αグルコシダーゼ])。代謝障害を治療及び/又は予防するための他の好適なタンパク質は上述のとおりである。目的の核酸を発現するためのプラットフォームとしての筋肉の使用は、米国特許公開第2002/0192189号に記載されている。
【0235】
したがって、一態様として、本発明は、代謝障害を治療及び/又は予防することを必要とする対象においてそれを実施する方法であって、方法が、治療又は予防有効量の異種薬剤を対象に(例えば、対象の骨格筋に)投与することを含み、異種薬剤が、ポリペプチドをコードする核酸を含み、代謝障害が、ポリペプチドの欠損及び/又は欠陥の結果である、方法を包括する。例示的な代謝障害及びポリペプチドをコードする核酸が本明細書に記載される。ポリペプチドは分泌されてもよい(例えば、その本来の状態で、分泌されるポリペプチドであるポリペプチド、又は例えば、当技術分野で知られている分泌シグナル配列との作動可能な関連性によって、分泌されるように操作されているポリペプチド)。本発明のいかなる特定の理論にも制限されずに、本実施形態によれば、骨格筋への投与は、体循環へのポリペプチドの分泌及び標的組織への送達をもたらすことができる。異種薬剤を骨格筋へ送達する方法は、本明細書中により詳細に記載されている。
【0236】
また、本発明を実施して、全身性送達のためにアンチセンスRNA、RNAi又は他の機能性RNA(例えば、リボザイム)を産生することもできる。
【0237】
本発明はまた、先天性心不全又はPADを治療及び/又は予防することを必要とする対象においてそれを実施する方法であって、方法が、治療又は予防有効量の本発明の異種薬剤を哺乳動物対象に投与することを含み、異種薬剤が、例えば、筋小胞体(sarcoplasmic endoreticulum)Ca2+-ATPase(SERCA2a)、血管新生因子、ホスファターゼ阻害剤I(I-1)、ホスホランバンに対するRNAi;ホスホランバン阻害分子又はドミナントネガティブ分子、例えば、ホスホランバンS16Eなど、ホスホランバン遺伝子を調節するジンクフィンガータンパク質、β2-アドレナリン受容体、β2-アドレナリン受容体キナーゼ(BARK)、PI3キナーゼ、カルサルカン、β-アドレナリン受容体キナーゼ阻害剤(βARKct)、プロテインホスファターゼ1の阻害剤1、S100A1、パルブアルブミン、アデニリルシクラーゼ6型、Gタンパク質共役型受容体キナーゼ2型ノックダウンに影響を与える分子、例えば、例えば、切断型構成的活性型bARKct、Pim-1、PGC-1α、SOD-1、SOD-2、EC-SOD、カリクレイン、HIF、チモシン-β4、mir-1、mir-133、mir-206、及び/又はmir-208をコードする核酸を含む、方法が提供される。
【0238】
注入剤は、液体溶液若しくは懸濁液、注入前の液体中の溶液若しくは懸濁液に好適な固体形態、又はエマルションのいずれかとして、従来の形態で調製することができる。あるいは、全身ではなく局所的な様式で、例えばデポー又は徐放性製剤において、異種薬剤を投与してよい。更に、異種薬剤は、外科的に埋め込み可能なマトリックスに付着させて送達することができる(例えば、米国特許公開第2004-0013645号に記載されている)。
【0239】
本明細書に開示される異種薬剤は、任意の好適な手段によって、任意に、対象が吸入する異種薬剤からなる吸入可能粒子のエアロゾル懸濁液を投与することによって、対象の肺へ投与することができる。呼吸用粒子は、液体又は固体であってよい。異種薬剤を含む液体粒子のエアロゾルは、当業者に公知のように、任意の好適な手段によって、例えば、圧力駆動型のエアロゾル噴霧器又は超音波噴霧器を用いて産生され得る。例えば、米国特許第4,501,729号を参照。異種薬剤を含む固体粒子のエアロゾルは、製薬分野で公知の技術により、任意の固体微粒子薬物エアロゾル発生器を用いて同様に産生され得る。
【0240】
異種薬剤は、CNSの組織(例えば、脳、眼)へ投与することができ、本発明が存在しない場合に観察されるものよりも広範な分配の異種薬剤を有利にもたらし得る。
【0241】
特定の実施形態では、異種薬剤は、遺伝性障害、神経変性障害、精神障害及び腫瘍を含むCNSの疾患を治療するために投与され得る。CNSの例示的な疾患は、限定されないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、カナバン病、リー病、レフサム病、トゥレット症候群、原発性側索硬化症、筋萎縮性側索硬化症、進行性筋萎縮症、ピック病、筋ジストロフィー、多発性硬化症、重症筋無力症、ビンスワンガー病、脊髄又は頭部の傷害に起因する外傷、テイ・サックス病、Lesch-Nyan疾患、てんかん、脳梗塞、気分障害を含む精神障害(例えば、鬱病、双極性感情障害、持続的な情動障害、二次気分障害)、神経分裂症、薬物依存症(例えば、アルコール中毒及び他の物質依存症)、ノイローゼ(例えば、不安、強迫観念的(obsessional)障害、身体表現性障害、解離性障害、悲嘆、産後鬱病)、精神病(例えば、幻覚及び妄想)、認知症、偏執病、注意欠陥障害、精神性的障害、睡眠障害、疼痛性障害、摂食又は体重障害(例えば、肥満、カヘキシー、神経性食欲不振、及び過食症)並びにCNSのがん及び腫瘍(例えば、下垂体腫瘍)を含む。
【0242】
CNSの障害は、網膜、後方路、及び視神経が関与する眼の障害(例えば、網膜色素変性症、糖尿病性網膜症及び他の網膜変性疾患、ブドウ膜炎、加齢黄斑変性、緑内障)を含む。
【0243】
全てではないとしても大部分の眼の疾患及び障害は、3つのタイプの適応症:(1)血管新生、(2)炎症、及び(3)変性のうちの1つ以上と関連する。本発明の異種薬剤を用いて、抗血管新生因子;抗炎症性因子;細胞変性を遅延させ、細胞温存を促進し、又は細胞増殖を促進する因子、及び前述の組み合わせを送達することができる。
【0244】
糖尿病性網膜症は、例えば、血管新生によって特徴付けられる。糖尿病性網膜症は、1つ以上の抗血管新生因子を、眼内(例えば硝子体内)又は眼周囲(例えば、テノン嚢下領域)に送達することによって治療され得る。1つ以上の神経栄養因子もまた、眼内(例えば、硝子体内)又は眼周囲のいずれかに共送達され得る。
【0245】
ブドウ膜炎は炎症を伴う。1つ以上の抗炎症性因子は、本発明の送達ベクターの眼内(例えば、硝子体又は前房)投与によって投与され得る。
【0246】
網膜色素変性症は、比較によって、網膜変性によって特徴付けられる。代表的な実施形態では、網膜色素変性症は、1つ以上の神経栄養因子をコードする異種薬剤の眼球内(例えば、硝子体投与)によって治療され得る。
【0247】
加齢黄斑変性は、血管新生及び網膜変性の両方が関与する。この障害は、1つ以上の神経栄養因子をコードする異種薬剤を眼内(例えば、硝子体)に、及び/又は1つ以上の抗血管新生因子を眼内若しくは眼周囲(例えば、テノン嚢下領域)に投与することによって治療され得る。
【0248】
緑内障は、眼圧の増加及び網膜神経節細胞の喪失によって特徴付けられる。緑内障のための治療は、異種薬剤を用いて、興奮毒性損傷から細胞を保護する1つ以上の神経保護剤を投与することを含む。このような薬剤には、眼内、任意には硝子体内に送達される、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)アンタゴニスト、サイトカイン、及び神経栄養因子が含まれる。
【0249】
他の実施形態では、本発明は、発作を治療するために、例えば、発作の発症、発生率又は重症度を軽減するために使用され得る。発作に対する治療の有効性は、行動(例えば、震え、目又は口のチック)、及び/又は電気記録的手段(ほとんどの発作は特徴的な電気記録的異常を有する)によって評価することができる。したがって、本発明は、経時的な複数の発作を特徴とするてんかんを治療するためにも用いられ得る。
【0250】
代表的な一実施形態では、下垂体腫瘍を治療するために、本発明の異種薬剤を使用してソマトスタチン(又はその活性断片)が脳に投与される。この実施形態によれば、ソマトスタチン(又はその活性断片)をコードする異種薬剤は、微量注入によって下垂体へ投与される。同様に、かかる治療を用いて、先端巨大症(下垂体からの異常な成長ホルモン分泌)を治療することができる。ソマトスタチンの核酸(例えば、GenBank受託番号J00306)及びアミノ酸(例えば、GenBank受託番号P01166;プロセシングされた活性ペプチドソマトスタチン-28及びソマトスタチン-14を含む)配列は、当技術分野で知られている。
【0251】
特定の実施形態では、異種薬剤は、米国特許第7,071,172号に記載の分泌シグナルを含むことができる。
【0252】
本発明の代表的な実施形態では、異種薬剤は、CNS(例えば、脳又は眼)へ投与される。異種薬剤は、脊髄、脳幹(延髄、脳橋)、中脳(視床下部、視床、視床上部、脳下垂体、黒質、松果体)、小脳、終脳(線条体、大脳、以下を含む:後頭、側頭、頭頂及び前頭葉.皮質、基底核、海馬及び扁桃体(portaamygdala))、辺縁系、新皮質、線条体、大脳、及び下丘へ導入され得る。異種薬剤はまた、眼の異なる領域、例えば網膜、角膜及び/又は視神経へ投与され得る。
【0253】
異種薬剤は、異種薬剤のより分散した投与のために、脳脊髄液へ(例えば腰椎穿刺によって)送達され得る。異種薬剤は更に、血液脳関門が撹乱した状況(例えば、脳腫瘍又は脳梗塞)において、CNSへ血管内投与され得る。
【0254】
異種薬剤は、髄腔内、眼内、脳内、脳室内、静脈内(例えば、マンニトールなどの糖の存在下)、鼻腔内、耳内、眼内(例:硝子体内、網膜下、前房)、及び眼周囲(例えば、テノン嚢下領域)送達、並びに運動ニューロンへの逆行性送達を伴う筋肉内送達を含むがこれらに限定されない、当技術分野で公知の任意の経路によってCNSの所望の領域に投与することができる。
【0255】
特定の実施形態では、異種薬剤は、液体製剤において、直接注入(例えば定位的注入)によって、CNS内の所望の領域又は区画へ投与される。他の実施形態では、異種薬剤は、所望の領域への局所適用によって、又はエアロゾル製剤の鼻腔内投与によって提供され得る。眼への投与は、液滴の局所適用によるものであってよい。更なる代替としては、異種薬剤は、固体の徐放製剤として投与され得る(例えば、米国特許第7,201,898号を参照)。
【0256】
更なる実施形態では、異種薬剤を逆行性輸送のために用いて、運動ニューロンが関与する疾患及び障害(例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)など)を治療及び/又は予防することができる。例えば、異種薬剤を筋組織へ送達することができ、そこからニューロンへと移行することができる。
【0257】
タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体は、異種薬剤に関して上述した任意の経路又はスケジュールによって投与され得、タンパク質M又はその機能的断片若しくは誘導体は、異種薬剤とは異なる経路又はスケジュールによって投与され得る。
【0258】
本発明を説明したので、同様のことを、以下の実施例においてより詳細に説明するが、それらは例示目的だけのために本明細書中に含まれており、本発明に対する限定を意図しない。
【実施例
【0259】
実施例1:方法
AAVウイルス産生:AAVベクターを、HEK293細胞に3つのプラスミドをトランスフェクションする標準的なアプローチを用いて生産した。簡潔には、AAV導入遺伝子プラスミドpTR-CBA-Lucを、AAV Rep/Capヘルパープラスミド(pXR2又はpXR8)及びアデノウイルスヘルパープラスミドpXX6-80で共トランスフェクトした。72時間後、細胞培養物を回収して、凍結融解及び超音波処理によって溶解させた。清澄化した細胞溶解物をDNAse処理して、15%/25%/40%/60%イオジキサノール段階勾配中で超遠心分離して、陰イオン交換Q-カラムによって精製した。精製したAAVベクターを、パッケージされたAAV導入遺伝子のセグメントを増幅することを目的とするプライマーを用いたqPCRによって力価測定した。
【0260】
タンパク質産生:タンパク質M、膜貫通ドメイン(アミノ酸74~479)を欠く切断型M.genitaliumタンパク質MG281をコードし、N末端His-Tag及びトロンビン切断部位を有する、プラスミドpET-28b(+)は、Rajeshによって提供された。プラスミドをエレクトロコンピテントDH10B細胞中で増殖させて、InvitrogenによるPureLink Maxi-Prepキットを用いて精製した。pET-28b(+)プラスミドを、一晩のスターター培養を用いてBL21/DE3細胞内に一時的にトランスフェクトした。自己誘導培地(InvitrogenからのMagic培地)にスターター培養物を播種して、1L~4L培養容量で、18℃で3日間増殖させた。次いで、培養物を遠心分離によってペレット化して、-80℃で凍結させた。
【0261】
タンパク質精製:凍結した細菌細胞培養物ペレットを解凍して、超音波処理によって溶解させて、DNAse処理して、遠心分離によって清澄化した。清澄化した細菌溶解物をニッケル結合緩衝液(20mMイミダゾール、50mMリン酸ナトリウム、pH7.4、500mM NaCl、0.02%アジ化ナトリウム)中で透析し、FPLCを用いてニッケルHis-trap FFカラムに通した。次いで、ニッケルカラムと結合したタンパク質Mを、500mMイミダゾールを含んでいるが同一緩衝液ベースによって溶出させた。それから、タンパク質Mを、S-100サイズ排除カラムに通して、2%グリセロールを含むリン酸緩衝生理食塩水中ヘ透析して、分光光度法を用いて定量化した。タンパク質Mの同一性をタンパク質分離のためのSDS-PAGEタンパク質ゲル電気泳動を用いて確認して、その後にクーマシーブルーのタンパク質染色を行い、48kDaのタンパク質Mバンドを正しく同定した。
【0262】
ウエスタンブロット:8%SDS-PAGEゲルでのタンパク質分離後に、タンパク質をPVDFメンブレン上に転写した。免疫ブロット法を5%脱脂乳中で抗His一次抗体1:1000希釈(10μg/ml)を用いて行った。二次ヤギ抗ヒトIgG抗体を、ホースラディッシュペルオキシダーゼとコンジュゲートした(1:10,000希釈)。
【0263】
細胞培養:HEK-293細胞及びHuh7細胞を、それぞれ、全てのインビトロAAV中和実験及び形質導入の増強に用いた。細胞を、10%ウシ胎仔血清及びペニシリン-ストレプトマイシンを補充したダルベッコ改変イーグル培地を用いて5%CO2中37℃で維持した。
【0264】
ヒトIVIG及び免疫化マウス血清:10%ヒトIVIG(Gamunex)をGrifols Therapeutics Inc.(Research Triangle Park,NC,USA)から購入した。12匹の異なるマウス(50%雄、50%雌)に、3×1010ウイルスゲノムのAAV8-FVIIIのIP投与の後、2週間後に同一ベクターのブースト投与、及び1回目の投与の6週間後に2回目のブーストをした後、血清を回収してプールした。ヒトIVIG及びマウス血清を分取して、その後の使用のために-80℃で保管した。
【0265】
インビトロAAV中和アッセイ:NAb分析を、わずかに変更を加えて前述したように行った。細胞を遠心分離によってペレット化して、無血清のX-Vivo10培地中に再懸濁し、次いで、48ウェル又は96ウェルプレートのいずれかのフォーマットでプレーティングした。ヒトIVIG又は血清を、2倍又は10倍のいずれかで連続希釈した。AAV-Lucを、ヒトIVIG又はマウス血清のいずれかと4℃で1時間インキュベートした後、AAVを添加し、4℃で更に1時間インキュベートした。次いで、AAV+血清培養物を、プレーティング時に無血清培地中に懸濁した細胞と混合した。タンパク質Mを用いた中和実験では、4℃で1時間の各ステップで3つの異なるインキュベーションのシナリオを試験した:中和血清を最初にタンパク質Mとインキュベートした後にAAVとインキュベート、AAVを最初に中和血清とインキュベートした後にタンパク質Mとインキュベート、及び、AAVを最初にタンパク質Mとインキュベートした後に中和血清とインキュベートした。細胞を、200μl培地中の48ウェルプレート、又は100μl培地中の96ウェルプレートに播種した。形質導入後、細胞を24~48時間37℃で培養して、AAV-ルシフェラーゼ導入遺伝子を発現させた。Luc活性を測定するために、細胞を受動的溶解緩衝液(Promega,Madison,WI,USA)で溶解させて、ルシフェラーゼシグナルをWallac1420 Victor2自動化プレートリーダーで測定した。NAb力価を、ルシフェラーゼ活性が無血清対照よりも50%低い最大希釈として定義した。
【0266】
NAb血清のインビボAAV中和及び受動的導入:AAV NAbを含んでいる異なる量の血清をC57BL/6マウスの後眼窩静脈内に注入して、20分後にAAVを注入した。AAV投与前にタンパク質M治療を受けたマウスについては、タンパク質M(2:1比で6.3mg、1:1比で3.15mg、又は0.5:1比で1.58mgのいずれか)を、血清注入の5~15分後に眼窩後静脈から送達した。AAVを、2×1012粒子/kgのAAV-Lucベクターの全身注入によって5分後に投与した。イメージングをAAV投与の1日後、並びに注入後1週間及び9日の時点で行った。
【0267】
実施例2:タンパク質Mは、AAV形質導入に対するIVIGの阻害活性を妨げる
タンパク質Mが抗体をブロックする機能を試験するために、ヒト静脈内免疫グロブリンガンマ(IVIG)によるAAVのインビトロ中和アッセイを設定した。IVIGの段階希釈を用いてAAV中和アッセイを行い、所定量のAAV2を中和するIVIGの量を決定した。AAV-ルシフェラーゼベクターを用いた細胞形質導入により生成されたルシフェラーゼ活性は、遺伝子発現の関数的な読み取り値としての役割を果たした。中和を、IVIGなし対照に対して正規化されたルシフェラーゼ活性のパーセントとして決定した。12.5μgのIVIGは75%(+/-5%)のAAV2を中和することが判明し(図1)、この量のIVIGを、実験デザインを進めるのに選択して、AAV中和に対するIVIGのタンパク質Mブロッキングを試験する実験計画を進めた。次に、トロンビン切断によってHisタグを除去することによって収集されたタンパク質M(配列番号2)の用量希釈比を行い、それは12.5μgのIVIGをブロックする能力があり(図2)、タンパク質Mは細胞培養で形質導入する前に、IVIGと1時間、続いてAAV2と4℃で1時間インキュベートした。1分子のIgGに対する2分子のタンパク質Mのモル比は、IVIGなし対照と同等レベルまで中和を防ぐのに十分であることが分かった。更に、IVIGに対するタンパク質Mのより高いモル比は、IVIGなし対照よりも高いレベルまでルシフェラーゼシグナルを増強させることが分かった(図2)。1分子のIgGに対する8分子のタンパク質Mは、ルシフェラーゼ発現を2倍増加させた。より高いモル比によって増強が更に増加するかを確認するために、8:1及び20:1比のタンパク質M対IVIGを同じ実験条件で試験した。タンパク質Mの用量を2.5倍(8:1から20:1の比)増加させても、対応するシグナルは8:1の比よりも0.25倍しか増加しないため、更なる増強はほとんど得られないことが判明した(図3)。更に、タンパク質Mが免疫グロブリンをブロックする活性は、N末端Hisタグの切断に依存しないことが分かり、したがって、Hisタグを切断していないタンパク質Mを次の実験に用いた。
【0268】
実施例3:AAVベクタービリオンとタンパク質Mの相互作用は、AAV形質導入を増強する
本発明者らによる以前に研究により、AAVビリオンと血清タンパク質の相互作用はAAV形質導入を増強させることができることが示されている。AAV形質導入に対するタンパク質Mの増強機能を更に特徴付けるために、IVIGを用いずに2倍段階希釈のタンパク質Mを細胞培養物の形質導入の前にAAVとともに1時間インキュベートして、用量応答アッセイを行った。図4では、以前の実験による8:1比(33μgタンパク質M)のタンパク質Mは、IVIGの非存在下でAAV形質導入を用量依存的に増強することができること、及びその増強は、2×10ウイルス粒子に関して2μgを下回るタンパク質Mの希釈で失われることが分かった。増強が失われるタンパク質M分子対AAV粒子の等価モル比は40,000:1を下回った。次に、タンパク質Mによる形質導入の増強は、AAVとタンパク質Mのインキュベーションに依存することが示された。図5では、細胞培養物の形質導入アッセイを行い、タンパク質Mは、細胞に添加する1時間前にAAVに添加されたか(事前インキュベーション、-1時間時点)、事前インキュベーションせずに、形質導入の時点で添加されたか(形質導入付近、0時間時点)、又はAAVを細胞に添加した18時間後に添加された(形質導入後、18時間時点)。用量依存的増強が、図4と同様に事前インキュベーション群において見られるが、タンパク質M及びAAV2がアッセイの前に一緒にインキュベートされない他の2つの群では見られないことが分かった。更に、この結果は、形質導入の時にタンパク質Mを細胞に添加することはルシフェラーゼシグナルに対して影響を与えなかったので、タンパク質M増強のメカニズムが、ベクターカプシドとの相互作用を含んでおり、細胞に対するタンパク質Mの生物学的効果は含まないことも示している。最後に、タンパク質Mは、IVIGが最初にAAV2と1時間事前インキュベートされて、その後にタンパク質Mと1時間インキュベーションした場合、中和をブロックすることができないこと、及びタンパク質MによるAAV2ルシフェラーゼシグナルの増強は、AAV2がIVIGによって完全に中和されていない場合にのみ生じることが示された。このアッセイについては、12.5μgのIVIG(75~80%のAAV2を中和する)、50μgのIVIG(99%のAAV2を中和する、図1)、又は200μgのIVIG(100%のAAV2を中和する)を用いた。図6では、99~100%のAAV2がIVIG(50μg及び200μg)によって中和された場合、タンパク質Mは中和をブロックすることができず、形質導入の増強を与えることができないことが観察された。図2及び図3のデータと合わせて、この結果は、免疫グロブリンに対する結合後の過剰量のタンパク質Mは、AAVビリオンと相互作用することが可能であり、形質導入の増強をもたらすことを示唆している。
【0269】
実施例4:AAVベクタービリオンとタンパク質Mの事前インキュベーションは、IVIGのAAV中和を保護する
次に、タンパク質Mを最初にIVIGと相互作用させる代わりに、タンパク質Mを最初にAAVと事前インキュベーションして、その後にIVIGとインキュベーションする効果を試験することにした。タンパク質MをAAV2とともに1時間インキュベートした後にIVIGを添加して、更に1時間4℃でインキュベートした後に細胞形質導入を行った場合の、タンパク質Mが中和をブロックする能力を試験した。図7では、タンパク質M濃度を一定(8.25μg)に保ち、IVIGの用量を50μgから3.12μg(タンパク質M対IVIGのモル比1:2から8:1)まで段階的に希釈すると、中和からのベクターの保護が2:1以上の比率で達成されることが判明し、これは、AAV添加前にタンパク質MをIVIGとインキュベートした場合の以前の結果と同様である。IgG以外の他のタイプのタンパク質が血清中に存在するインビボ状況により近い環境をシミュレートする試みにおいて、同様のインビトロ中和試験を、10%ウシ胎児血清(FBS)の存在下で行った。ウシ血清に関する製造元のIgG定量化に従って、培地容量は、ウェル当たり約350μgのウシIgGを含むと概算された。次いで、25μgのIVIG又は無血清培地をウェルの半分にスパイクして、AAVを中和するか、又は中和活性のない対照として機能させた。図8では、タンパク質Mを形質導入前にAAVとともに1時間インキュベートし、総IgG(ヒト及びウシ)を異なるモル比4:1、2:1、及び1:1(タンパク質M対IgG)で添加した場合、中和からの保護が1:1比でさえも観察された。これらの結果は、タンパク質Mが、他の血清タンパク質が存在している場合であっても、免疫グロブリンと結合してブロックすることが可能であることを示す。
【0270】
実施例5:インビトロでの、AAVに対するマウス血清の中和活性に対する、タンパク質Mの効率的なブロック機能
IVIGからの発見を実際の状況に移すために、インビトロでの中和実験を、最初に、AAV8カプシドベクターで免疫化されたマウス由来の血清を用いてAAV8-ルシフェラーゼベクターで行った。免疫化マウス由来の血清及びタンパク質Mの両方を段階希釈して2:1のモル比を維持した場合、結果を血清のみの対照と比較すると、タンパク質Mは、概算で約100倍の希釈の1:2,564の力価の中和血清に対して、中和からエスケープさせることが分かった(タンパク質Mの存在下、0.0039μlの血清対0.2744μlの血清での50%中和、図9)。
【0271】
実施例6:インビボでの、AAVに対するマウス血清の中和活性に対する、タンパク質Mの効率的なブロック機能
次に、インビボ実験を行い、異なる容量の中和血清を、後眼窩注入を介してナイーブマウスに受動移入した。マウスに5~15分間、血清灌流させた後、タンパク質Mを、同じく後眼窩注入を介してマウスに全身投与して、5分後にAAV8-Luc(2×1010ウイルスゲノム)を投与した。図10は、マウスにおける総免疫グロブリンに対して概算のモル比2:1(6.3mg)のタンパク質Mは、1μlのAAV8-NAb血清(力価1:2,564)によるAAV8の中和を防止することができることを示す。このことは、50%よりも多くのAAV8-Lucが1μl~0.001μlの血清容量で中和されて1,000倍差の濃度にわたるAAV NAbエスケープを表す、段階希釈された抗AAV8血清のインビボ中和アッセイと比較される(図11)。
【0272】
実施例7:タンパク質M/免疫グロブリン複合体の安定性
免疫グロブリンとタンパク質Mの複合体がどのくらい安定であるか試験するために、アッセイを最初にインビトロで行った。タンパク質Mをマウス血清と2:1の分子比で、1時間~72時間の異なる持続時間、37℃で事前インキュベートして、それから、中和分析のために4℃で更に1時間、AAV8ベクターを添加した。図12に示すように、マウス血清中の抗AAV8免疫グロブリンとタンパク質Mとの間で事前に形成された複合体は、細胞培養物に添加される前に37℃でインキュベートした場合、中和血清を含むがタンパク質Mを含まない対照又はPBS若しくは培地のみを含む対照と比較すると、72時間以上安定であった。この結果は、タンパク質Mと免疫グロブリンとで形成された複合体は、インビトロで非常に安定であることを示唆している。
【0273】
次に、0.3μlのAAV8中和血清の受動移入後のタンパク質Mのインビボ安定性を調査した。タンパク質Mが投与されて5分ではなく3時間待った場合は、タンパク質Mが抗体をブロックする機能は、3.5×10から1×10光子/秒/cm/自発率(spontaneous rate)に約70%減少することが分かった(図13)。この結果は、タンパク質MのNAbブロック効果がインビボで短期間であることを示す。
【0274】
AAVベクターを用いた遺伝子療法は、臨床試験において成功している。しかしながら、ヒト集団におけるAAV中和抗体の高い出現率は、より多くの患者がこの効果的な遺伝子送達から利益を受けるのを妨げている。本研究では、マイコプラズマ由来のタンパク質Mが、NAbと相互作用してAAV形質導入を増強することが可能であることが見出された。NAb活性をブロックするために必要なタンパク質Mの最小用量は免疫グロブリンの2倍の分子であった。AAVビリオンとタンパク質Mの直接的な相互作用もまた、AAV形質導入を増加させた。中和抗体アッセイは、インビトロでAAV免疫化マウス血清をタンパク質Mとともにインキュベートした場合に、NAb活性が約100倍低減し、タンパク質Mが適用された場合に、NAb陽性血清を養子移入したマウスにおいて1000倍を超える保護が観察されることを示した。免疫グロブリンとタンパク質Mの複合体はインビトロで経時的に安定であったが、タンパク質Mは、インビボで、免疫グロブリンの中和からの、その保護機能を徐々に失う。
【0275】
AAV NAbを克服するために、複数のストラテジーが研究室において利用されている。1つのアプローチは、コーティングのためのポリマー又はエキソソームを用いて、Nab認識をブロックするためにAAV表面をマスクすることである。このアプローチは有望ではあるが、AAV形質導入プロファイルを変更し得る。2つめのアプローチは、エラープローンPCR又はDNAシャッフリングを用いてAAVカプシドバリアントのライブラリを産生し、NAb存在下でNAbエスケープ変異体をインビトロ及びインビボで選択することである。このアプローチは、新規のカプシドを産生したが、これらの変異体は動物組織から単離されて動物組織において試験され、動物試験によるデータは常にヒトに移されるわけではなく、ヒト組織におけるAAV形質導入を予測するために利用できる信頼性のあるシステムは存在しないので、ヒトにおける形質導入効率が未知であるカプシドを生産する潜在的制限を抱えている。3つめのアプローチは、NAb交差反応性が低いか又は存在しない、AAVの代替の血清型を使用することである。この一般的なストラテジーは、論理的かつ動物モデルにおいて成功的であるが、動物では予測され得ない、大部分のヒトにおける交差反応性の存在について懸念が残る。最後の実験アプローチは、AAVカプシド表面上のNAb結合ドメインを合理的に操作してNAb結合部位を除去することである。このストラテジーは、モノクローナル抗体エピトープ及びAAVビリオンの構造に関する情報を必要とし、ヒト血清由来のNAbはポリクローナルであるという事実に起因して本質的に制限され、全ての生産されたNAbを表すヒト由来のmAbを得ることは不可能である。いくつかの臨床関連のアプローチも研究されている:1つの例は、ベクター送達の前に血漿交換を行うことである。しかしながら、各回のアフェレーシスの相対的非効率性及び低力価のNAb(<1:5)でさえAAV形質導入を抑制することができるという事実に起因して、このストラテジーは、AAV NAbの開始力価がより低い患者にのみ適切であり、複数セッションのアフェレーシスを必要とする。同様に、抗CD20抗体(リツキシマブ)の使用は、B細胞の枯渇を達成することができるが、長い時間がかかり(約6~9ヶ月)、少数の対象においてAAV NAbを減少させるのに効果的なだけである。最後の臨床アプローチは、過剰な空AAVカプシドをNAbに関するデコイとして使用することである。空粒子の添加は、AAVカプシドの負荷を増加させ、それにより、カプシド特異的な細胞傷害性免疫応答が介在するAAV形質導入細胞の除去が潜在的に増加し、おそらく、効果的な形質導入に関して完全なAAV粒子と競合するという懸念が残る。更に、空のカプシドは、完全なAAVベクターよりも大きな肝臓炎症を誘導し得る。NAb保護の低効率又は上記アプローチの複雑性と比較して、本研究では、中和抗体活性をブロックするための、より大きな潜在性を有するストラテジーが、免疫グロブリン結合タンパク質Mを用いて示された。タンパク質Mを使用した場合、NAb回避能力はインビトロで100倍、インビボで1000倍を超えて達成された。
【0276】
タンパク質Mは、抗体軽鎖及び重鎖上の保存領域に普遍的と結合して、抗原認識又はCDR領域との構造的干渉を生じさせることによって哺乳動物のIgG、IgM、及びIgA抗体クラスをブロックする普遍的な抗体結合タンパク質として機能する。タンパク質Mは、抗体と結合して、抗原抗体結合を妨げるが、以前に形成された抗原抗体複合体を破壊しない。抗体とタンパク質Mの相互作用は、ウエスタンブロット、ELISA、x線結晶学、電子顕微鏡、及びバイオレイヤー干渉法によって検証されている。タンパク質Mは、ベクターとは独立に用いることができるので、以前にFDAによって承認された遺伝子療法を含む治療レジメンに取り込むことができる。このことは、カプシドに基づく免疫回避よりも有利であり、なぜならば、それぞれの個々のカプシドは、それぞれの疾患標的についてその独自の臨床試験を経なければならないからである。タンパク質Mの特性に基づき、このタンパク質は、任意のウイルスベクターが介在する遺伝子送達に適用することができるだけでなく、体液性免疫応答が介在するクリアランスを回避するためのCRISPR/cas9のような一過性のタンパク質療法にも適用することができる。また、タンパク質Mは、自己抗体により生じる自己免疫障害を治療する潜在性も有する。
【0277】
本研究では、少なくとも2分子又はそれよりも多くのタンパク質Mが、1分子の免疫グロブリンをブロックするために必要であり、全身投与後のNAb回避のために血中の全ての免疫グロブリンと相互作用するためには多くの量のタンパク質Mが必要となり得ることが示された。高用量の組換えタンパク質、例えばヒト血清アルブミン及び免疫グロブリンが臨床試験において用いられているが、高用量のタンパク質Mの潜在的な合併症による懸念は、臨床試験前に大きな動物において対処される必要がある。タンパク質MがAAV投与のために局所的に用いられる場合は大きな問題ではないだろう。
【0278】
インビトロ試験は、タンパク質M/免疫グロブリンの複合体が相対的に長期間安定であることを示したが、インビボ実験では、AAVベクターが、タンパク質M適用のずっと後に投与された場合、タンパク質M機能の喪失が徐々に表れた。血中でのタンパク質M/免疫グロブリン複合体の動力学及び動態学を理解することが重要であり、この情報は、タンパク質Mの投与後のAAV注入に関するウインドウに関する価値のある情報を提供する。
【0279】
他の懸念は、繰り返し投与に関するタンパク質Mの免疫原性である。タンパク質Mは外来タンパク質であるので、体液性免疫応答を誘発して抗体が産生される。タンパク質Mは、全ての免疫グロブリンと結合することによってその保護機能を発揮し、タンパク質Mに対する特異的なIgの量は、全てのIgの非常に小さな部分であり、したがって、高用量のタンパク質MがAAV NAbをブロックする目的のために用いられる場合、タンパク質M特異的なIgの量は、非常に少量のタンパク質Mを中和するだけであり、したがって、投与されるタンパク質Mは、AAV NAbからAAVを保護する機能に影響し得ない。タンパク質Mは、B細胞表面と結合することができ、B細胞の増殖を刺激する潜在性を有する。以前の研究により、無傷のタンパク質MはB細胞の増殖を誘導することが可能であるが、切断されたタンパク質Mは、この機能を失うことが示されている。タンパク質M投与後のインビボでの長期のフォローアップが行われるべきである。
【0280】
結論として、この結果は、1分子のIgGに対してタンパク質Mが2分子以上の分子比で存在する場合に、タンパク質Mは、免疫グロブリンがAAVを中和するのを防止することを示している。AAVベクターの保護は、AAVの免疫グロブリン中和前にタンパク質Mが免疫グロブリンと相互作用することに依存している。タンパク質Mは、インビボで、1,000倍範囲のNAb力価にわたってAAVを中和から保護することができる。この研究は、NAbを有する患者における将来のAAV臨床試験において、又は再投与のために、NAb活性からのAAVベクタービリオンの保護のためのタンパク質Mの使用に対して重要な知見を提供した。
【0281】
実施例8:増強された特性を有する操作されたタンパク質Mバリアント
上記の実施例は、遺伝子療法ベクターに対する中和抗体を回避するための、抗体をブロックするタンパク質としてのマイコプラズマタンパク質Mの使用を説明している。異なるマイコプラズマ種由来の天然起源タンパク質Mホモログは、大部分の哺乳動物抗体クラスにナノモルの親和性で結合するが(Grover et al.,Science343:656(2014))、天然起源タンパク質の多くの特徴は、治療薬としての使用に不適切である。ネイティブのタンパク質Mは可溶性でないが、細菌細胞膜内にそれを固定するN末端膜貫通ドメインによって膜結合されている。更に、ネイティブのタンパク質は、薬物様分子として予想外に挙動し得る無秩序なC末端を有する。N末端膜貫通ドメイン及び無秩序なC末端セグメントが欠失している、ネイティブのタンパク質M切断型(Grover et al.,Science343:656(2014)によるタンパク質M TD)を、治療用抗体ブロッキング分子として用いた検証が行われたが、このタンパク質は、体温(37℃)でインキュベートした場合に構造的安定性がないという重要な知見がなされた。
【0282】
切断されたタンパク質M(配列番号3)を、単純なインビトロでの緩衝液懸濁液中で37℃に曝露すると、目に見える析出及び凝集が短時間(15分~1時間)で生じた。円偏光二色性を用いた分析において、タンパク質を37℃に加熱することは、1時間以内の明瞭なタンパク質アンフォールディングのイベントと関連し、タンパク質の即時的な融解が41.2℃で生じるが、2時間にわたって続く20℃インキュベーションでは、アンフォールディングのイベントは生じないことが判明した(図14)。タンパク質のアンフォールディングは、ウエスタンブロットによって評価される溶液中の可溶性画分の測定される低減とも相関する。不安定なタンパク質を用いることの治療的制限を克服するために、合理的な設計アプローチを使用して、M.genitalium(MG281)及びM.pneumoniae(MPN400)からの変異相同体を含む、切断されたタンパク質Mの変異類似体を生成した。このアプローチは、タンパク質モデリングへの入力としてタンパク質Mの結晶構造及びアミノ酸配列(PDB ID:4NZR及び4NZT)、並びに、Rosettaと呼ばれるエンジニアリング・ソフトウェアを用いた。自由エネルギー計算及び3Dモデルを用いて、どのアミノ酸配列変化が三次構造の安定化をもたらすか予測し、850+を超えるアミノ酸置換のリストを出力した。個々の変異体及び組み合わせた複数の変異体のDNA合成により、合理的に設計されたバリアントのライブラリを用いて変異体タンパク質を産生した。表4は、熱安定性に関して野生型タンパク質よりも良いスコアを有していた885個のコンピュータによって同定された点変異をリスト化している。表5は、熱安定性に関して野生型タンパク質よりも実質的に優れたスコア(デルタスコア-3.0を越える)を示す、コンピュータによって同定された165個の点変異をリスト化している。
【0283】
異なるタンパク質M変異体を、示差走査型蛍光透視法を使用して検証し、タンパク質融解温度を計算した(図15、16)。次いで、変異体を異なる時間、37℃の温度曝露に供して、溶解度(図17A~17C)及びインビトロ中和アッセイにおけるプールしたヒト静脈内IgG(IVIG)によるAAV中和を防止する能力(18A~18C)を測定した。M.genitalium由来のタンパク質Mの類似体を試験するのに加えて、M.pneumoniaに由来する類似体も生産した。それから、いくつかの変異体をバイオレイヤー干渉法(BLI)によって試験して、マウスIgGに対する変異体タンパク質の親和性を決定し、変異体が、免疫グロブリン基質に関する変異体の親和性を変化させることができることが示された(図21、22)。変異体はまた、安定性野生型タンパク質Mよりも広いpH範囲にわたる安定性によって証明されるように安定性の増加も示した(図26)。MG29は、37℃で増加した安定性を有しておりIgGに関するナノモル親和性を維持している、リード類似体の1つであり、AAVカプシドに対するマウスの直接免疫化後のインビボでのAAV中和抗体のブロックを試験するために用いた。一方の脚にリン酸緩衝生理食塩水で製剤化したAAVを筋肉内注入し、他方の脚にMG29で製剤化したAAVを筋肉内注入した結果により、MG29が、AAV免疫化マウスにおいてAAV中和抗体をブロックし、効果的な遺伝子送達及びAAVの再投与を可能することが示された(図19、20)。
【0284】
Rosettaソフトウェアを用いた合理的なエンジニアリング・ストラテジーの第2ラウンドは、親和性及び結合を増強又は減少させる変異体タンパク質M類似体の結合部位の修飾を予測するための、平均モデルの多くのヒト免疫グロブリン構造を用いた変異体タンパク質の親和性の変更を含んでいた。更に、合理的な設計ストラテジーの第3ラウンドは、Rosettaモデル及び異なるマイコプラズマ種由来の天然起源タンパク質M配列の多様性の両方の使用を組み入れて、天然には存在しない抗原的に別個の類似体を作製した。これらの類似体は、全タンパク質又は個々エピトープの、キメラ、モザイク、又はデノボの合理的に変更されたアミノ酸変異体であることができる。同一又は異なる類似体は、タンパク質M類似体に対して生産された阻害抗体の存在下でさえ、複数ラウンドの再投与のためにAAVとともに用いることができる。これは、タンパク質M類似体が抗体結合及び抗原認識のブロック、更には阻害抗体によるそれ自身の認識に関して直接競合するためである。飽和用量のタンパク質M類似体は、初回の免疫曝露後にタンパク質M類似体に対して産生される少量の免疫グロブリンに対して過剰である。更に、エピトープ多様性が増加したタンパク質M類似体の作製は、タンパク質M阻害抗体からの免疫回避の更なる層を提供することができる。リスト化された操作ストラテジーのそれぞれを組み合わせて、又は互いの上に重ねて、複数の異なる特性を有するタンパク質M類似体を作製することができると考えられる。
【0285】
最後に、タンパク質産物収率が増強されたタンパク質MのDNAコドン最適化バージョンを生産した(図25)。親の切断されたタンパク質M配列の2つのコドン最適化バージョンを生産した:一方の配列は、E.coli及びH.sapiensのコドン使用について最適化され、他方はH.sapiensのコドン使用のみについて最適化される。E.coli及びH sapiensの二重コドン構築物をE.coliでタンパク質を生成するために使用し、親の最適化されていないプラスミドと比較して、タンパク質収率の約4倍の増加を示した。H.sapiensのみ最適化された構築物は、IL-2分泌ペプチド又はアルブミン分泌ペプチド配列を含んでおり、培養培地からのタンパク質M類似体の回収のために哺乳動物細胞株からのタンパク質の分泌を可能にする。タンパク質M変異類似体は、両方のタイプの最適化DNA配列にクローニング又は合成されて、増強されたタンパク質生産のために用いられる。37℃で安定なタンパク質M類似体は、分泌後、タンパク質アンフォールディングの影響を受けずにヒト細胞内で成長することができる。更に、類似体MG28(N274D)など、タンパク質M類似体のグリコシル化部位は、結合部位のグリコシル化を除去するため、又は外側表面にグリコシル化を追加するために置換されている。外側表面へのグリコシル化部位の追加は、タンパク質M類似体の免疫回避を増強させるため、及び、タンパク質M類似体の複数回投与に関するタンパク質M阻害抗体の認識を減少させるための、別のメカニズムである。最後に、タンパク質M類似体のDNA配列は、37℃で安定であってグリコシル化部位が除去又は新たに追加された分泌タンパク質を生産するために、哺乳動物細胞株に安定的に組み込まれる。
【0286】
方法
AAVウイルス産生:AAVベクターを、HEK293細胞に3つのプラスミドをトランスフェクションする標準的なアプローチを用いて生産した。簡潔には、AAV導入遺伝子プラスミドpTR-CBA-Lucを、AAV Rep/Capヘルパープラスミド(pXR2又はpXR8)及びアデノウイルスヘルパープラスミドpXX6-80で共トランスフェクトした。72時間後、細胞培養物を回収して、凍結融解及び超音波処理によって溶解させた。清澄化した細胞溶解物をDNAse処理して、15%/25%/40%/60%イオジキサノール段階勾配中で超遠心分離して、陰イオン交換Q-カラムによって精製した。精製したAAVベクターを、パッケージされたAAV導入遺伝子のセグメントを増幅することを目的とするプライマーを用いたqPCRによって力価測定した。
【0287】
タンパク質産生:プラスミドpET-28b(+)は、タンパク質M類似体、膜貫通ドメインを欠くM.genitalium又はM.pneumonia由来の切断型タンパク質をコードし、N末端His-Tag及びトロンビン切断部位を有する。プラスミドをエレクトロコンピテントDH10B細胞中で増殖させて、InvitrogenによるPureLink Maxi-Prepキットを用いて精製した。pET-28b(+)プラスミドを、一晩のスターター培養を用いてBL21/DE3細胞内に一時的にトランスフェクトした。自己誘導培地(InvitrogenによるMagic培地)にスターター培養物を播種して、18℃で3日間増殖させた。それから、培養物を遠心分離によってペレット化して、-80℃で凍結させた。
【0288】
タンパク質精製:凍結した細菌細胞培養物ペレットを解凍して、超音波処理によって溶解させて、DNAse処理して、遠心分離によって清澄化した。清澄化した細菌溶解物をニッケル結合緩衝液(20mMイミダゾール、50mMリン酸ナトリウム、pH7.4、500mM NaCl、0.02%アジ化ナトリウム)中で透析し、FPLCを用いてニッケルHis-trap FFカラムに通した。次いで、ニッケルカラムと結合したタンパク質Mを、500mMイミダゾールを含んでいるが同一緩衝液ベースによって溶出させた。それから、タンパク質Mを、S-100サイズ排除カラムに通して、2%グリセロールを含むリン酸緩衝生理食塩水中ヘ透析して、分光光度法を用いて定量化した。タンパク質Mの同一性をタンパク質分離のためのSDS-PAGEタンパク質ゲル電気泳動を用いて確認して、その後にクーマシーブルーのタンパク質染色を行い、45kDa~48kDaのタンパク質Mバンドを正しく同定した。
【0289】
一部のタンパク質の生産のために、2つのストラテジーのいずれかを実施して、タンパク質Mバリアントを精製した。第1のプロトコル(Ni-Purity)は、NanoDSFのための小スケール生産に関するものであった。溶解は、細胞ペレットを、2.5mg/mLリゾチーム、25%B-PER、75%リン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7.4、及びプロテアーゼ阻害剤(PMSF、ベスタチン、及びペプスタチン)からなる緩衝液と混合することによって実施した。室温で30分間混合した後、粗溶解物を15,000rcfで20分間遠心分離し、上清をNi樹脂と4℃で1時間インキュベートした。次いで、樹脂を洗浄し(PBS+20mMイミダゾール)、タンパク質を(PBS+500mMイミダゾール)で溶出した。溶出したタンパク質を、Zeba脱塩カラムを用いてPBS pH7.4中に交換した後、安定性アッセイを行った。第2のプロトコル(SEC-Purity)は、大スケールの生産に関するものであり、タンパク質試料から更なる汚染物質/凝集体を除去した。超音波処理を介して細胞を溶解させ、ニッケル樹脂を用いて精製し(第1のプロトコルと同一の緩衝液)、最後にPBS+2%グリセロール中へサイズ排除クロマトグラフィーを行った後、試料を凍結させた。
【0290】
ウエスタンブロット:8%SDS-PAGEゲルでのタンパク質分離後に、タンパク質をPVDFメンブレン上に転写した。免疫ブロット法を5%脱脂乳中で抗His一次抗体1:1000希釈(10μg/ml)を用いて行った。二次ヤギ抗ヒトIgG抗体を、ホースラディッシュペルオキシダーゼとコンジュゲートした(1:10,000希釈)。
【0291】
タンパク質の融解温度及びアンフォールディングの決定:融解温度(Tm)を、ナノ示差走査型蛍光定量法(NanoDSF)を用いて決定し、タンパク質のアンフォールディングを、円偏光二色性アッセイを用いて異なる温度で決定した。一次導関数の変曲点は、Tm又はアンフォールディングを示す。タンパク質を、プロトコル1(Ni-Purity)に従って精製した。
【0292】
溶解度アッセイ:熱安定性の経時変化は、各SEC精製タンパク質(0.4mg/mL)の7個のアリコートを37℃で異なる時間インキュベートすることによって行った。析出したタンパク質を、試料を15,000×Gで10分間遠心分離することによってペレット化させてから、SDS-PAGEのためにゲルにロードした。タンパク質を、プロトコル2(SEC-Purity)に従って精製した。
【0293】
バイオレイヤー干渉法による親和性評価:バイオレイヤー干渉法を37℃で行って、タンパク質M構築物の親和性を評価した。タンパク質を、プロトコル2(SEC-Purity)に従って精製した。1000nM~15.6nMの範囲の2倍希釈比の各M構築物は、ForteBio Kinetics緩衝液(PBS+洗浄剤)を用いて行った。抗マウスIgG Fc Captureバイオセンサーに対する結合を評価した。各プロトコルは、ベースライン、会合、及び解離ステップを、それぞれ10分、5分、及び5分含んでいた。データは、緩衝液中の会合ステップと並行して実行された参照センサーから差し引かれた。親和性データを、ForteBioデータ分析v9.0ソフトウェア内の1:1曲線フィットに基づいて計算した。報告された安定状態の結合定数を、各濃度(n=7)における最大応答に基づいて計算した。X2を最小限にするために、反応速度データは、250~15.6nM希釈範囲(n=5)に関するデータのみ含めた。
【0294】
構造モデリング及び合理的なタンパク質操作:タンパク質M(PM)の類似体の熱安定性の最適化を、免疫グロブリンと結合したPMの既存の結晶構造(4NZT及び4NZR)に基づき、インシリコの合理的なタンパク質操作アプローチを用いて達成した。Rosettaソフトウェア・パッケージを用いて、PMペプチドを安定化させる変異を同定した。第1のプロトコルは、部位飽和変異誘発をインシリコで行い、隣接するアミノ酸を変異残基付近に再充填させた。第2のプロトコルは、結晶構造内の充填不足の領域においてコンビナトリアル変異を生じさせた。変異体を、野生型アミノ酸と置換の間のスコアの違いに従ってランク分けした。更なる目視検査を行って、好ましい変異体を同定した。変異体を、pET-28b+ベクター内にTwist Biosciencesによってクローニングして合成した。結合部位の親和性の変更及び別個の抗原性を有するPM類似体の作製のための更なる設計ストラテジーを行った。
【0295】
MP WTの相同性モデルを、Swiss-Modelウェブサーバを用いて構築した(図24)。MG及びMP WTアイソフォームの間の保存スコアを、BLOSUM90マトリックスに従って計算した。画像をPyMolで表した。
【0296】
細胞培養:HEK-293細胞又はHuh7細胞を、全てのインビトロAAV中和実験に用いた。細胞を15cm組織培養プレート上で増殖させ、10%ウシ胎仔血清及びペニシリン-ストレプトマイシンで補充されたダルベッコ修飾イーグル培地を用いて5%CO2中37℃で維持した。
【0297】
インビトロ中和実験のためのヒトIVIG:10%ヒトIVIGのストック(Gamunex)を、Grifols Therapeutics Inc.(Research Triangle Park,NC,USA)から購入した。個々のアリコートをリン酸緩衝生理食塩水中で1mg/mLに希釈して、後の使用のために-80℃で保管した。12匹の異なるマウス(50%雄、50%雌)に、3×1010ウイルスゲノムのAAV8-FVIIIのIP投与の後、2週間後に同一ベクターのブースト投与、及び1回目の投与の6週間後に2回目のブーストをした後、血清を回収してプールした。マウス血清を分取して、後の使用のために-80℃で保管した。
【0298】
インビトロAAV中和アッセイ:Nab分析を、わずかな修正をして以前に記載されるとおりに行った(Wang et al.,Gene Ther.22:984(2015))。細胞を遠心分離によってペレット化して、無血清のX-Vivo10培地中に再懸濁し、次いで、48ウェル又は96ウェルプレートのいずれかのフォーマットでプレーティングした。ヒトIVIG又は血清を、2倍又は10倍のいずれかで連続希釈した。AAV-Lucを、ヒトIVIG又はマウス血清のいずれかと4℃で1時間インキュベートした後、AAVを添加し、4℃で更に1時間インキュベートした。次いで、AAV+血清培養物を、プレーティング時に無血清培地中に懸濁した細胞と混合した。タンパク質Mを用いた中和実験では、4℃、1時間の各ステップで3つの異なるインキュベーションのシナリオを試験した:中和血清を最初にタンパク質Mとインキュベートした後にAAVとインキュベート、AAVを最初に中和血清とインキュベートした後にタンパク質Mとインキュベート、及び、AAVを最初にタンパク質Mとインキュベートした後に中和血清とインキュベートした。細胞を、200μl培地中の48ウェルプレート、又は100μl培地中の96ウェルプレートに播種した。形質導入後、細胞を37℃で24~48時間培養して、AAV-ルシフェラーゼ導入遺伝子を発現させた。Luc活性を測定するために、細胞を受動的溶解緩衝液(Promega,Madison,WI,USA)で溶解させて、ルシフェラーゼシグナルをWallac1420 Victor2自動化プレートリーダーで測定した。Nab力価を、ルシフェラーゼ活性が無血清対照よりも50%低い最大希釈として定義した。
【0299】
AAV免疫化マウスにおけるインビボでのAAV再投与:C57BL/6マウスを、8E5vg又は1E9vgのAAV8-GFPのいずれかのI.P.注入によって免疫化した。およそ1ヶ月後に、AAV8インビトロ中和アッセイによる力価測定のためにマウスから血清を回収した。1日後、I.M.注入を行い、それぞれの脚は、等用量の1E9vg又は2E9vg AAV8-ルシフェラーゼを含み、ここで、一方の脚はリン酸緩衝生理食塩水で製剤化されたAAVを投与し、他方の脚はタンパク質M類似体で製剤化したAAVを注入の直前の単純な混合で投与した。合計容量200μlが、脚ごとに注入された。D-ルシフェリン基質をI.P.投与した後に、AAV-Luc投与の2週間後に発光イメージングを行った。
【0300】
実施例9:修飾タンパク質M及びタンパク質Mとの融合タンパク質の動態
バイオレイヤー干渉法を、タンパク質M濃度の段階希釈で行った。図22は、MG29の例示的なデータを示す。MG29及び他のタンパク質M構築物からのデータを、表8、9、及び図21に要約する。
【表4】
【表5】
【0301】
抗ヒトIgG Fc捕捉(AHC)バイオセンサー及び抗マウスIgG Fc捕捉バイオセンサー(AMC)を、ForteBioから購入した。実験を37℃で10分間の会合及び解離を行って実施した。結果を1:1結合曲線に適合させた。アスタリスク*は、アミノ酸Y338を示す。*のない類似体はN338である。
【0302】
実施例10:インビボでの抗体中和
AAV8で連続的に免疫したマウスから血清を収集し、プールした。インビトロ中和アッセイにより、プールした血清の抗AAV8中和力価がおよそ1:10,000であることが決定された。異なる量の抗AAV8血清(血清体積によって決定される)は、受動移入実験において、AAVナイーブマウス群にIV注射を介して投与し、続いて20~25分後にAAV8-ルシフェラーゼレポーターベクターの2e10ウイルスゲノム(vg)をIV注射した。一部の群のマウスに、AAV投与の5分前にIV注射を介してタンパク質Mを投与した。ルシフェラーゼ活性の非侵襲的なインビボイメージングを7日後に実施して、AAV8ベクターからの遺伝子発現の代用としての発光を定量化し、発光シグナルの減少は、血清によるAAV8ルシフェラーゼ中和を示す。結果を図29に示す。0.0003ulの血清を与えられたマウスは、AAV8を中和できず、2e10vgのAAV8-ルシフェラーゼのみを注射された血清なしナイーブマウスと比較して、ほぼ100%の発光シグナルを生じた。中和血清の量を増加させたマウス群は、AAV8-ルシフェラーゼを徐々に中和し、0.001ul~0.003ulの血清でAAVの約半分が中和され、0.3ul以上の血清でAAVの99%以上が中和された。3ulの血清、続いてMG88又はMG118、次いで2e10vgのAAV8-ルシフェラーゼを投与されたマウスの群は、タンパク質M融合タンパク質による中和抗体の抑制による中和からのエスケープを示す遺伝子発現をもたらした。MG88、MG29、MG29*、及びMGWT*の具体的の用量は6.3mgであり、MG118の用量はマウス当たり9mgであり、マウスの平均体重は21グラムであった。
【0303】
実施例11:タンパク質Mのジスルフィド変異の熱安定性
変異は、以下の変異を含む安定化バージョンのタンパク質M(開始)に追加した:S150E、S196R、S198P、F237T、S232Q、A342V、N274D、A205P、及びT355P(表10)。融解温度(Tm)をNanoDSFで決定した。2つのキャピラリを同じ試料(Tm1及びTm2)で実行した。ΔTmは、開始構築物と比較したTm1及びTm2の平均の差を表す。
【表6】
【0304】
実施例12:インビトロでの抗体中和
図30は、マウス由来の高力価抗AAV8血清を2倍希釈で滴定し、X軸に示すようにウェルに添加した、インビトロ中和アッセイを示す。次いで、異なるタンパク質M類似体(MG29、MG66、MG71、及びMG64)を、図の凡例に示される分子比でウェルに添加し、1時間インキュベートした。生理食塩水を血清のみのウェルに添加した(黒丸)。次いで、AAV8-ルシフェラーゼ(2×1010ウイルスゲノム)を各ウェルに添加し、1時間インキュベートした後、無血清培地中に5×10のHuh7細胞を添加した。細胞を48時間培養し、中和の代用となるルシフェラーゼレポーターシグナルを読み取り、定量化した。
【0305】
このデータは、これらの類似体が中和抗体ブロック機能を有し、それによって中和曲線をシフトさせ、MG64Fc-タンパク質M融合二量体(Fc-PM)がタンパク質M単量体類似体よりも大きく曲線をシフトさせることを示す。バイオレイヤー干渉法に基づき、MG64は免疫グロブリンに対するナノモル以下の親和性を有する。
【0306】
前述の実施例は本発明を例示するものであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。本発明は、好ましい実施形態に関して詳細に説明されているが、以下の特許請求の範囲において記載及び定義されるように、バリエーション及び修飾が本発明の範囲及び趣旨内に存在する。










配列番号3:野生型M.genitaliumタンパク質M断片74~479
SLSLNDGSYQSEIDLSGGANFREKFRNFANELSEAITNSPKGLDRPVPKTEISGLIKTGDNF TIPS FKAGYYDHVASDGSLLSYYQSTEYFNNRVLMPILQTTNGTLMANNRGYDDVFRQVPS F SGWSNTKATTVSTSNNLTYDKWTYFAAKGS PLY DS Y PNHFFEDVKTLAI DAKDI SALKTT I D SEKPT YL I IRGLS GNGS QLNELQL PESVKKVSLYGDYTGVNVAKQIFANVVELEFYSTSKAN S FGFNPLVLGSKTNVINDL FASKPFTHIDLTQVTLQNS DNSAIDANKLKQAVGDIYNYRRFE RQFQGYFAGGYIDKYLVKNVNTNKDSDDDLVYRSLKELNLHLEEAYREGDNTYYRVNENYYP GAS IYENERASRDSEFQNEILKRAEQNGVTFDEN
配列番号4:修飾M.genitaliumタンパク質M MG1
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配列番号5:修飾M.genitaliumタンパク質M MG8
SLSLNDGSYQSEIDLSGGANFREKFRNFANELSEAITNSPKGLDRPVPKTEISGLIKTGDNF TIPS FKAGYYDHVASDGSLLSYYQSTEYFNNRVLMPILQTTNGTLMANNRGYDDVFRQVPS F SGWSNTKATTVSTSNNLTYDKWTYFAAKGS PLY DQY PNHFFEDVKTLAI DAKDI SALKTT I D SEKPT YL I IRGLS GNGS QLNELQL PESVKKVSLYGDYTGVNVAKQIFANVVELEFYSTSKAN S FGFNPLVLGSKTNVINDL FASKPFTHIDLTQVTLQNS DNSAIDANKLKQAVGDIYNYRRFE RQFQGYFAGGYIDKYLVKNVNTNKDSDDDLVYRSLKELNLHLEEAYREGDNTYYRVNENYYP GAS IYENERASRDSEFQNEILKRAEQNGVTFDEN
配列番号6:修飾M.genitaliumタンパク質M MG13
SLSLNDGSYQSEIDLSGGANFREKFRNFANELSEAITNSPKGLDRPVPKTEISGLIKTGDNF ITPSFKAGYYDHVASDGSLLSYYQSTEYFNNRVLMPILQTTNGTLMANNRGYDDVFRQVPSF SGWSNTKATTVSTSNNLTYDKWTYFAAKGS PLY DS Y PNHFFEDVKTLAI DAKDI SALKTT I D S EKPT YL I IRGLS GNGS QLNELDL PESVKKVSLYGDYTGVNVAKQIFANVVELEFYSTSKAN S FGFNPLVLGSKTNVINDL FASKPFTHIDLTQVTLQNS DNSAIDANKLKQAVGDIYNYRRFE RQFQGYFAGGYIDKYLVKNVNTNKDSDDDLVYRSLKELNLHLEEAYREGDNTYYRVNENYYP GAS IYENERASRDSEFQNEILKRAEQNGVTFDEN
配列番号7:修飾M.genitaliumタンパク質M MG15
SLSLNDGSYQSEIDLSGGANFREKFRNFANELSEAITNSPKGLDRPVPKTEISGLIKTGDNF TIPS FKAGYYDHVAEDGSLLSYYQSTEYFNNRVLMPILQTTNGTLMANNRGYDDVFRQVPRF PGWSNTKATTVSTSNNLTYDKWTYFAAKGS PLY DS Y PNHFFEDVKTLAI DAKDI SALKTT I D S EKPT YL I IRGLS GNGS QLNELQL PESVKKVSLYGDYTGVNVAKQIFANVVELEFYSTSKAN S FGFNPLVLGSKTNVINDL FASKPFTHIDLTQVTLQNS DNSAIDANKLKQAVGDIYNYRRFE RQFQGYFAGGYIDKYLVKNVNTNKDSDDDLVYRSLKELNLHLEEAYREGDNTYYRVNENYYP GAS IYENERASRDSEFQNEILKRAEQNGVTFDEN
配列番号8:修飾M.genitaliumタンパク質M MG21
SLSLNDGSYQSEIDLSGGANFREKFRNFANELSEAITNSPKGLDRPVPKTEISGLIKTGDNF ITPSFKAGYYDHVASDGSLLSYYQSTEYFNNRVLMPILQTTNGTLMANNRGYDDVFRQVPSF SGWSNTKATTVSTSNNLTYDKWTYFAAKGS PLY DS Y PNHFFEDVKTLAI DAKDI SALKTT I D S EKPT YL I IRGLS GNGS QLNELQL PESVKKVSLYGDYTGVNVAKQIFANVVELEFYSTSKAN S FGFNPLVLGSKTNVINDL FASKPFTHIDLTQVTLQNS DNSAIDANKLKQAVGDIYNYRRFE RQFQGY FAGGY I DKYL IKIVNTNP DVDDDIVYRSLKELNLHLEEAYREGDNI YYRVNENYY P GAS IYENERASRDSEFQNEILKRAEQNGVTFDEN
配列番号9:修飾M.genitaliumタンパク質M MG22
SLSLNDGSYQSEIDLSGGANFREKFRNFANELSEAITNSPKGLDRPVPKTEISGLIKTGDNF ITPSFKAGYYDHVASDGSLLSYYQSTEYFNNRVLMPILQTTNGTLMANNRGYDDVFRQVPSF SGWSNTKATTVSTSNNLTYDKWTYFAAKGS PLY DS Y PNHFFEDVKTLAI DAKDI SALKTT I D S EKPT YL I IRGLS GNGS QLNELQL PESVKKVSLYGDYTGVNVAKQIFANVVELEFYSTSKAN S FGFNPLVLGSKTNVINDL FASKPFTHIDLTQVTLQNS DNSAIDANKLKQAIGDIYNYRRFE RQFQGY FAGGY I DKYL IKNVNTNKDS DDDLVYRSLKELNLHLEEAYREGDNT YYRVNENYY P GAS IYENERASRDSEFQNEILKRAEQNGVTFDEN
配列番号10:修飾M.genitaliumタンパク質M MG23
SLSLNDGSYQSEIDLSGGANFREKFRNFANELSEAITNSPKGLDRPVPKTEISGLIKTGDNF TIPS FKAGYYDHVASDGSLLSYYQSTEYFNNRVLMPILQTTNGTLMANNRGYDDVFRQVPS F SGWSNTKATTVSTSNNLTYDKWTYFAAKGS PLY DS Y PNHFFEDVKTLAI DAKDI SALKTT I D SEKPT YL I IRGLS GNGS QLNELQL PESVKKVSLYGDYTGVNVAKQIFANVVELEFYSTSKAN S FGFNPLVLGSKTNVINDL FASKPFTHIDLTQVTLQNS DNSAIDANKLKQAVGDIYNYRRFE RQFQGY FAGGY I DKYLVKLVNTNP DVDDDIVYRSLKELNLHLEEAYREGDNT YYRVNENYY P GAS IYENERASRDSEFQNEILKRAEQNGVTFDEN
配列番号11:修飾M.genitaliumタンパク質M MG24
SLSLNDGSYQSEIDLSGGANFREKFRNFANELSEAITNSPKGLDRPVPKTEISGLIKTGDNF TIPS FKAGYYDHVASDGSLLSYYQSTEYFNNRVLMPILQTTNGTLMANNRGYDDVFRQVPS F SGWSNTKATTVSTSNNLTYDKWTYFAAKGS PLY DS Y PNHFFEDVKTLAI DAKDI SALKTT I D SEKPT YL I IRGLS GNGS QLNELQL PESVKKVSLYGDYTGVNVAKQIFANVVELEFYSTSKAN S FGFNPLVLGSKTNVINDL FVSKPFTHIDLTQVTLQNS DNSAIDANKLKQAVGDIYNYRRFE RQFQGYFAGGYIDKYLVKNVNTNKDSDDDLVYRSLKELNLHLEEAYREGDNTYYRVNENYYP GAS IYENERASRDSEFQNEILKRAEQNGVTFDEN
配列番号12:修飾M.genitaliumタンパク質M MG27
SLSLNDGSYQSEIDLSGGANFREKFRNFANELSEAITNSPKGLDRPVPKTEISGLIKTGDNF TIPS FKAGYYDHVAEDGSLLSYYQSTEYFNNRVLMPILQTTNGTLMANNRGYDDVFRQVPRF PGWSNTKATTVSTSNNLTYDKWTYFAAKGS PLY DQY PNHT FEDVKTLAI DAKDI SALKTT I D SEKPT YL I IRGLS GNGS QLNELDL PESVKKVSLYGDYTGVNVAKQIFANVVELEFYSTSKAN S FGFNPLVLGSKTNVINDL FVSKPFTHIDLTQVTLQNS DNSAIDANKLKQAIGDIYNYRRFE RQFQGY FAGGY I DKYL IKIVNTNP DVDDDIVYRSLKELNLHLEEAYREGDNI YYRVNENYY P GAS IYENERASRDSEFQNEILKRAEQNGVTFDEN
配列番号13:修飾M.genitaliumタンパク質M MG28
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配列番号14:修飾M.genitaliumタンパク質M MG29
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配列番号15:修飾M.genitaliumタンパク質M MG31
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配列番号16:修飾M.genitaliumタンパク質M MG33
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配列番号17:修飾M.genitaliumタンパク質M MG38
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配列番号18:修飾M.genitaliumタンパク質M MG40
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配列番号19:修飾M.genitaliumタンパク質M MG43
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配列番号20:修飾M.genitaliumタンパク質M MG44
SLSLNDGSYQSEIDLSGGANFREKFRNFANELSEAITNSPKGLDRPVPKTEISGLIKTGDNF IT PS FKAGYYDHVAEDGSLLSYYQSTEYFNNRVLMPILQTTNGTLMANNRGYDDVFRQVPRF PGWSNTKATTVSTSNNLTYDKWTYFAAKGS PLY DQY PNHT FEDVKTLAI DAKDI SALKTT I D SEKPT YL I IRGLS GNGS QLNELQL PESVKKVSLYGDYTGVNVAKQIFANVVELEFYSTSKAN S FGFNPLVLGSKTNVINDL FVSKPFTHIDLTQVTLQNS DNSAIDANKLKQAIGDIYNYRRFE RQFQGY FAGGY I DKYL IKNVNTNKDS DDDLVYRSLKELNLHLEEAYREGDNT YYRVNENYY P GAS IYENERASRDSEFQNEILKRAEQNGVTFDEN
配列番号21:修飾M.genitaliumタンパク質M MG45
SLSLNDGSYQSEIDLSGGANFREKFRNFANELSEAITNSPKGLDRPVPKTEISGLIKTGDNF IT PS FKAGYYDHVASDGSLLSYYQSTEYFNNRVLMPILQTTNGTLMANNRGYDDVFRQVPS F SGWCNTKATTVSTSNNLTYDKWTYFACKGS PLY DS Y PNHFFEDVKTLAI DAKDI SALKTT I D SEKPT YL I IRGLS GNGS QLNELQL PESVKKVSLYGDYTGVNVAKQIFANVVELEFYSTSKAN S FGFNPLVLGSKTNVINDL FASKPFTHIDLTQVTLQNS DNSAIDANKLKQAVGDIYNYRRFE RQFQGYFAGGYIDKYLVKNVNTNKDSDDDLVYRSLKELNLHLEEAYREGDNTYYRVNENYYP GAS IYENERASRDSEFQNEILKRAEQNGVTFDEN
配列番号22:修飾M.genitaliumタンパク質M MG46
SLSLNDGSYQSEIDLSGGANFREKFRNFANELSEAITNSPKGLDRPVPKTEISGLIKTGDNF IT PS FKAGYYDHVAEDGSLLSYYQSTEYFNNRVLMPILQTTNGTLMANNRGYDDVFRQVPRF PGWCNTKATTVSTSNNLTYDKWTYFACKGS PLY DQY PNHT FEDVKTLAI DAKDI SALKTT I D SEKPT YL I IRGLS GNGS QLNELQL PESVKKVSLYGDYTGVNVAKQIFANVVELEFYSTSKAN S FGFNPLVLGSKTNVINDL FVSKPFTHIDLTQVTLQNS DNSAIDANKLKQAVGDIYNYRRFE RQFQGYFAGGYIDKYLVKNVNTNKDSDDDLVYRSLKELNLHLEEAYREGDNTYYRVNENYYP GAS IYENERASRDSEFQNEILKRAEQNGVTFDEN
配列番号23:野生型M.pneumoniaeタンパク質M
MKLNFKIKDKKTLKRLKKGGFWALGLFGAAINAFSAVL IVNEVLRLQSGETL IASGRSGNLS FQLYSKVNQNAKSKLNS I S LT DGGYRSEI DLGDGSNFREDFRNFANNL SEAT T DAPKDLLRP VPKVEVS GL I KT S S T FIT PNFKAGYYDQVAADGKTLKYYQST EY FNNRVVMP ILQTTNGTLT ANNRAYDDI FVDQGVPKFPGWFHDVDKAYYAGS NGQS EYL FKEWNYYVANGS PLYNVYPNHH FKQIKTIAFDAPRIKQGNIDGINLNLKQRNPDYVIINGLIGDGSTLKDLELPESVKKVS I YG DYHS INVAKQIFKNVLELEFYSTNQDNNFGFNPLVLGDHTNI I YDL FASKP FNY I DLT SLEL KDNQDNI DAS KLKRAVS DI Y IRRRFERQMQGYWAGGY I DRYLVKNTNE KNVNKDNDTVYAAL KDINLHLEET YTHGGNTMYRVNENYY PGASAYEAERAT RDSE FQKEIVQRAEL IGVVFEYGV KNLRPGLKYTVKFES PQEQVALKSTDKFQPVIGSVTDMSKSVIDLIGVLRDNAEILNITNVS KDETVVAELKEKL DRENVFQE I RT
配列番号24:野生型M.pneumoniaeタンパク質M断片
S I SLT DGGYRSEI DLGDGSNFREDFRNFANNLS EAIT DAPKDLLRPVPKVEVS GL IKT S ST F IT PNFKAGYYDQVAADGKILKYYQSTEYFNNRVVMPILQTTNGTLTANNRAYDDIFVDQGVP KFPGWFHDVDKAYYAGSNGQSEYL FKEWNYYVANGS PLYNVYPNHHFKQIKT IAFDAPRIKQ GNT DGINLNLKQRNPDYVI INGLTGDGSTLKDLELPESVKKVS I YGDYHS INVAKQI FKNVL ELEFYSTNQDNNFGFNPLVLGDHTNI I YDL FAS KP FNY I DLT SLELKDNQDNIDASKLKRAV S DI Y I RRRFERQMQGYWAGGY I DRYLVKNTNEKNVNKDNDTVYAALKDINLHLEETYTHGGN TMYRVNENYY PGASAYEAE RAT RD S E FQKE IVQRAEL I GVVFE
配列番号25:細菌及びヒト発現の両方のためにコドン最適化されたM.genitaliumタンパク質Mをコードするポリヌクレオチド
ATGGGCAGC AGC CATCAC CATCATCATCACAGC AGC GGTC TGGTGC C GC GTGGT AGCCACATGAGCCTGAGCCTGAACGATGGTAGCTACCAGAGCGAGATCGACCTG AGCGGCGGTGCCAACTTCCGTGAAAAATTCCGCAACTTTGCTAACGAGCTGAGC GAAGC CATTAC CAATAGC C CAAAGGGC C TGGATC GTC C AGTGC C GAAAAC C GAG ATCAGC GGC C TGATTAAGAC C GGTGACAACTTTATC AC C C C GAGCTTCAAGGC GG GC TACTATGATC AC GTGGC TGAGGAC GGTAGC C TGC TGAGCTACTATCAGAGCAC C GAGTAC TTTAACAAC C GTGTGCTGATGC C GATTCTGC AGAC C AC C AAC GGCAC C CTGATGGC CAACAAC C GTGGTTATGAC GAC GTGTTC C GTCAGGTGC C GC GTTTC C C GGGCTGGAGCAAC AC CAAAGC GAC CAC C GTGAGCAC C AGC AACAAC CTGAC CT AC GACAAGTGGAC CTATTTC GC C GC GAAAGGTAGC C C GCTGTAC GATCAGTATC C GAACCACACCTTTGAGGACGTGAAAACCCTGGCTATCGATGCCAAGGACATTAG C GC GCTGAAAAC C AC C ATC GATAGC GAAAAGC C GAC CTAC C TGATCATTC GC GG TCTGAGCGGCAACGGTAGCCAGCTGAACGAGCTGCAGCTGCCGGAAAGCGTGAA GAAAGTGAGCCTGTACGGCGACTATACCGGTGTGAACGTGGCCAAACAGATTTT TGCGAACGTGGTGGAGCTGGAATTCTATAGCACCAGCAAGGCGAACAGCTTCGG CTTTAACCCGCTGGTGCTGGGTAGCAAAACCAACGTGATCAACGACCTGTTCGTG AGC AAGC C GTTCAC C CACATTGAC CTGAC C CAGGTGAC C CTGCAGAACAGC GAT AAC AGC GC GATC GAC GCTAACAAGCTGAAACAGGC TGTGGGC GATATCTACAAC TATC GTC GCTTC GAGC GTCAGTTTCAGGGTTAC TTC GC C GGC GGTTACATC GATA AGTATCTGGTGAAAAAC GTGAAC AC CAACAAAGACAGC GAC GATGAC CTGGTGT AC C GCAGC CTGAAGGAACTGAAC CTGC AC C TGGAGGAAGC TTATC GTGAGGGC G AC AACAC CTACTATC GC GTGAAC GAAAACTACTATC C GGGTGC C AGCATCTAC G AGAAC GAAC GTGC GAGC C GC GATAGC GAGTTTCAGAAC GAAATTCTGAAGC GTG CGGAGCAGAACGGCGTGACCTTCGACGAAAACTAATAA
配列番号26:ヒト発現のためにコドン最適化されたM.genitaliumタンパク質Mをコードするポリヌクレオチド
ATGAGCCTGAGCCTGAACGATGGCAGCTACCAGAGCGAGATCGACCTGTCTGGC GGAGCCAACTTCAGAGAGAAGTTCAGAAACTTCGCCAACGAGCTGAGCGAGGCC ATCACAAACAGCCCCAAAGGCCTGGACAGACCCGTGCCTAAGACAGAGATCAGC GGCCTGATCAAGACCGGCGACAACTTCATCACCCCTAGCTTCAAGGCCGGCTACT ACGATCACGTGGCCTCTGATGGCAGCCTGCTGAGCTACTACCAGTCCACCGAGTA CTTCAACAACCGGGTGCTGATGCCCATCCTCCAGACCACCAATGGCACCCTGATG GCCAACAACAGAGGCTACGACGACGTGTTCAGACAGGTGCCCAGCTTTAGCGGC TGGTCCAATACCAAGGCCACCACCGTGTCCACCAGCAACAACCTGACCTACGAC AAGTGGACCTACTTCGCCGCCAAGGGCAGCCCTCTGTACGACAGCTACCCCAAC CACTTCTTCGAGGACGTGAAAACCCTGGCCATCGACGCCAAGGATATCAGCGCC CTGAAAACCACCATCGACAGCGAGAAGCCCACCTACCTGATCATCAGAGGACTG AGCGGCAACGGCAGCCAGCTGAATGAACTCCAGCTGCCTGAGAGCGTGAAGAAG GTGTCCCTGTACGGCGATTACACCGGCGTGAACGTGGCCAAGCAGATCTTCGCCA ATGTGGTGGAACTGGAATTCTACAGCACCAGCAAGGCCAACAGCTTCGGCTTCA ACCCTCTGGTGCTGGGCAGCAAGACCAACGTGATCAACGACCTGTTCGCCAGCA AGCCCTTCACACACATCGATCTGACCCAAGTGACCCTCCAGAACAGCGACAACA GC GCCATTGATGCCAACAAGCTGAAACAGGCCGTGGGCGACATCTACAACTACA GAAGATTCGAGCGGCAGTTCCAGGGCTACTTCGCTGGCGGCTACATCGACAAGT ACCTGGTCAAGAACGTGAACACCAACAAGGACAGCGACGACGACCTGGTGTACA GAAGCCTGAAAGAGCTGAACCTGCACCTGGAAGAGGCCTACAGAGAGGGCGAC AACACCTACTACAGAGTGAACGAGAACTACTACCCAGGCGCCAGCATCTACGAG AACGAGAGAGCCAGCAGAGACAGCGAGTTCCAGAACGAGATCCTGAAGCGGGC CGAGCAGAATGGCGTGACCTTCGACGAGAACTGATGA
配列番号27:修飾M.genitaliumタンパク質M MG47
SLSLNDGSYQSEIDLSGGANFREKFRNFANELSEAITNSPKGLDRPVPKTEISGLIKTG DNFITP S FKAGYYDHVAED GS LL SYYQSTEYFNNRVLMPILQTTNGTLMANNRGYD DVFRQVPRFPGWSNTKATTVSTSNNLTYDKWTYFAAKGSPLYDQYPNHTFEDVKTL AIDAKDISALKTTIDSEKPTYLIIRGLSGNGSQLNELQLPESVKKVSLYGDYTGVNVA KQIFANVVELEFY S T S KAN S F GFNPLVL GS KTNVINDLFV S KPFTHIDLTQVTLQN S D NS AIDANKLKQAV GDIYNYRRFERQF QGYEAGGYIDKYLVKNVNTNKDSDDDLVY RSLKELNLHLEEAYREGDNTYYRVNENYKPGASIYENERASRDSEFQNEILKRAEQN GVTFDEN
配列番号28:修飾M.genitaliumタンパク質M MG48
SLSLNDGSYQSEIDLSGGANFREKFRNFANELSEAITNSPKGLDRPVPKTEISGLIKTG DNFITP S FKAGYYDHVAED GS LL SYYQSTEYFNNRVLMPILQTTNGTLMANNRGYD DVFRQVPRFPGWCNTKPTTVSTSNNLTYDKWTYFACKGSPLYDQYPNHTFEDVKTL AIDAKDISALKTTIDSEKPTYLIIRGLSGDGSQLNELQLPESVKKVSLYGDYTGVNVA KQIFANVVELEFYSTSKANSFGFNPLVLGSKTNVINDLFVSKPFTHIDLTQVPLQNSD NS AIDANKLKQAV GDIYNYRRFERQF QGYFAGGYIDKYLVKNVNTNKDSDDDLVY RSLKELNLHLEEAYREGDNTYYRVNENYYPGASIYENERASRDSEFQNEILKRAEQN GVTFDEN
配列番号29:修飾M.genitaliumタンパク質M MG49
SLSLNDGSYQSEIDLSGGANFREKFRNFANELSEAITNSPKGLDRPVPKTEISGLIKTG DNFITPSFKAGYYDHVAEDGSLLSYYQSTEYFNNRVLMPILQTTNGTLMANNRGYD DVFRQVPRFPGWSNTKATTVSTSNNLTYDKWTYFAAKGSPLYDQYPNHTFEDVKTL AIDAKDISALKTTIDSEKPTYLIIRGLSGNGSQLNELQLPESVKKVSLYGDYTGVNVA KQIFANVVELEFYSTSKANSFGFNPLVLGSKTNVINDLFVSKPFTHIDLTQVTLQNSD NSAIDANKLKQAVGDIYNYRRFERQFQGYFPGGYIDKYLVKNVNTNKDSDDDLVYR SLKELNLHLEEAYREGDNTYYRVNENYYPGASIYENERASRDSEFQNEILKRAEQNG VTFDEN
配列番号30:修飾M.pneumoniaeタンパク質M MP29
S I S LTD GGYRS EIDL GD GSNFREDF RNFANNL SEAITDAPKDLLRPVPKVEVSGLIKTS STFITPNFKAGYYDQVAEDGKTLKYYQSTEYFNNRVVMPILQTTNGTLTANNRAYD DIFVDQGVPRFPGWFHDVDKAYYAGSNGQSEYLFKEWNYYVANGSPLYNQYPNHT FKQIKTIAFDAP RIKQ GNTD GINLNLKQRNPDYVIINGLTGD GS TLKDLELPES VKKV S IYGDYHSINVAKQIFKNVLELEFYSTNQDNNFGFNPLVLGDHTNIIYDLFVSKPFNYID LT S LELKDNQDNIDAS KLKRAV S DIYIRRRFERQMQ GYWAGGYIDRYLVKNTNEKN VNKDNDTVYAALKDINLHLEETYTHGGNTMYRVNENYYP GAS AYEAERATRD S EF QKEIVQR
配列番号31:修飾M.genitaliumタンパク質M MG64(分泌ペプチド+IgG1からのFc+15xGSリンカー+MG29dGly1):
MYRMQLL SCIAL SLALVTNSAPLEPKS SDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTL YITREPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNVVYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLT VLHQDWLNGKEYKCKV SNKALPAPIEKTI S KAKGQPREP QVYTLPP S REEMTKNQV S LTCLVKGFYP S DIAVEWE SNGQPENNYKTTPPVLD S D GS FFLY S KLTVDKS RWQ Q G NVFS CSVMHEALKFHYTQKSL SL SP GAGGGS GGGS GGGS GGGMSL SLNDGSYQSEI DL SGGANFREKFRNFANELSEAITNSPKGLDRPVPKTEISGLIKTGDNFITPSFKAGYY DHVAED GS LL SYYQ S TEYFNNRVLMPIL QTTD GTLMANNRGYDDVFRQVPRFP GWS NTKATTVSTSNNLYYDKWTYFAAKGSPLYDQYPNHTFEDVKTLAIDAKDISALKTTI D S EKP TYLIIRGL S GD GS QLNEL QLP ES VKKV S LYGDYTGVNVAKQIFANVVELEFY S TS KAN S F GFNPLVL GS KTNVINDLFV S KPFTHIDLTQVTL QN S DN S AIDANKLKQAV G DIYNYRRFERQFQGYFAGGYIDKYLVKNVNTNKDSDDDLVYRSLKELNLHLEEAYR EGDNTYYRVNENYYP GAS IYENERAS RD S EF QNEILKRAEQNGVTFDEN* *
配列番号32:修飾M.genitaliumタンパク質M MG88(分泌ペプチド+IgG2からのFc+15xGSリンカー+MG29dGly1):
MYRMQLL SCIAL SLALVTNSAPLERKS SVECPPCPAPPAAAS SVFLFPPKPKDTLMI SR TPEVTCVVVDVSAEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVLHQ DWLNGKEYKCKVSNKGLPS SIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCL VKGFYP S DIAVEWE SNGQPENNYKTTPPMLD S D GS FF LY S KLTVDKS RWQ Q GNVF S CSVMHEALHNHYTQKSL SL SP GAGGGS GGGS GGGSGGGMSL SLND GSYQ SEIDL S G GANFREKFRNFANELSEAITNSPKGLDRPVPKTEISGLIKTGDNFITPSFKAGYYDHVA ED GS LL SYYQSTEYFNNRVLMPILQTTDGTLMANNRGYDDVFRQVPRFP GWSNTKA TTVSTSNNLYYDKWTYFAAKGSPLYDQYPNHTFEDVKTLAIDAKDISALKTTIDSEK PTYLIIRGLSGDGSQLNELQLPESVKKVSLYGDYTGVNVAKQIFANVVELEFYSTSKA NSFGFNPLVLGSKTNVINDLFVSKPFTHIDLTQVTLQNSDNSAIDANKLKQAVGDIYN YRRFERQFQGYFAGGYIDKYLVKNVNTNKDSDDDLVYRSLKELNLHLEEAYREGDN TYYRVNENYYPGASIYENERASRDSEFQNEILKRAEQNGVTFDEN* *
配列番号33:修飾M.genitaliumタンパク質M MG118(プロテインA(Z-ドメイン)+10xGSリンカー+MG29):
MKFNKEQQNAFYEILHLPNLNEEQRNAFIQ SLKDDPSQSANLLAEAKKLNDAQAPG GS GGSGGSGSL SLNDGSYQ SEIDL SGGANFREKFRNFANEL SEAITNSPKGLDRPVPK TEI S GLIKTGDNFITP S FKAGYYDHVAED GS LL SYYQSTEYFNNRVLMPILQTTNGTL MANNRGYDDVFRQVPRFPGWSNTKATTVSTSNNLTYDKWTYFAAKGSPLYDQYPN HTFEDVKTLAIDAKDISALKTTIDSEKPTYLIIRGL SGNGSQLNELQLPESVKKVSLYG DYTGVNVAKQIFANVVELEFY S TS KANS F GFNPLVL GS KTNVINDLFV S KP FTHIDLT QVTLQNSDNSAIDANKLKQAVGDIYNYRRFERQFQGYFAGGYIDKYLVKNVNTNKD SDDDLVYRSLKELNLHLEEAYREGDNTYYRVNENYYPGASIYENERASRDSEFQNEI LKRAEQNGVTFDEN*
配列番号34:修飾M.genitaliumタンパク質M MG66(以下の変異を有する:S150E、S196R、S198P、F237T、S232Q、A342V、N274D、A205P、及びT355P):
SLSLNDGSYQSEIDLSGGANFREKFRNFANELSEAITNSPKGLDRPVPKTEISGLIKTG DNFITPSFKAGYYDHVAEDGSLLSYYQSTEYFNNRVLMPILQTTNGTLMANNRGYD DVFRQVPRFPGWSNTKPTTVSTSNNLTYDKWTYFAAKGSPLYDQYPNHTFEDVKTL AIDAKDISALKTTIDSEKPTYLIIRGLSGDGSQLNELQLPESVKKVSLYGDYTGVNVA KQIFANVVELEFYSTSKANSFGFNPLVLGSKTNVINDLFVSKPFTHIDLTQVPLQNSD NS AIDANKL KQ AV GDIYNYRRF ERQF QGYFAGGYIDKYLVKNVNTNKDSDDDLVY RSLKELNLHLEEAYREGDNTYYRVNENYYPGASIYENERASRDSEFQNEILKRAEQN GVTFDEN*
配列番号35:修飾M.genitaliumタンパク質M MG71(プロテインL B1ドメイン+5xGSリンカー+SLSLNDのN末端欠失を有するMG29):
MEEVTIKANLILPGCCTQTAEFKGTFEKATSEAYAYADTLKKDNGEWTVDVADKGY TLNIKFAGGS GGS GSYQ SEIDL SGGANFREKFRNFANELSEAITNSPKGLDRPVPKTEI SGLIKTGDNFITP S F KAGYYDHVAED GS LL SYYQ STEYFNNRVLMPILQTTNGTLMA NNRGYDDVFRQVPRFPGWSNTKATTVSTSNNLTYDKWTYFAAKGSPLYDQYPNHT FEDVKTLAIDAKDISALKTTID SEKPTYLIIRGL S GNGS QLNELQLPESVKKVSLYGDY TGVNVAKQIFANVVELEFYSTSKANSFGFNPLVLGSKTNVINDLFVSKPFTHIDLTQV TLQNSDNSAIDANKLKQAVGDIYNYRRFERQF QGYFAGGYIDKYLVKNVNTNKDSD DDLVYRSLKELNLHLEEAYREGDNTYYRVNENYYPGASIYENERASRDSEFQNEILK RAEQNGVTFDEN*
配列番号36:修飾M.genitaliumタンパク質M MG86(GCN4 ヘリックス+15xGS+MG66を含む二量体)
GGCGGMKQLEDKIEELLSKIYHLENEIARLKKLIGEGGGSGGGSGGGSGGGMSLSLN DGSYQSEIDLSGGANFREKFRNFANELSEAITNSPKGLDRPVPKTEISGLIKTGDNFITP SFKAGYYDHVAEDGSLLSYYQSTEYFNNRVLMPILQTTNGTLMANNRGYDDVFRQ VPRFPGWSNTKPTTVSTSNNLTYDKWTYFAAKGSPLYDQYPNHTFEDVKTLAIDAK DISALKTTIDSEKPTYLIIRGLSGDGSQLNELQLPESVKKVSLYGDYTGVNVAKQIFAN VVELEFYSTSKANSFGFNPLVLGSKTNVINDLFVSKPFTHIDLTQVPLQNSDNSAIDA NKLKQAVGDIYNYRRFERQFQGYFAGGYIDKYLVKNVNTNKDSDDDLVYRSLKEL NLHLEEAYREGDNTYYRVNENYYPGASIYENERASRDSEFQNEILKRAEQNGVTFDE N*
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【配列表】
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【国際調査報告】