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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】新型キメラ抗原受容体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20240201BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20240201BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20240201BHJP
   C12N 15/863 20060101ALI20240201BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240201BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240201BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240201BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20240201BHJP
   C12N 15/87 20060101ALI20240201BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240201BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240201BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240201BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240201BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240201BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240201BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240201BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240201BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/867 Z
C12N15/861 Z
C12N15/863 Z
C12N15/864 100Z
C12N5/0783
C12N5/10
C12N15/85 Z
C12N15/87 Z
A61P35/00
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K35/17
A61K35/76
A61K31/7088
A61K48/00
C12N15/12
C12N15/13
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546352
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-07-31
(86)【国際出願番号】 CN2021135963
(87)【国際公開番号】W WO2022166365
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】202110147730.4
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523087364
【氏名又は名称】バイオヘン セラピューティクス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOHENG THERAPEUTICS LIMITED
【住所又は居所原語表記】Suite #4-210, Governors Square, 23 Lime Tree Bay Avenue, PO Box 32311, Grand Cayman KY1-1209 (KY)
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】周 亜麗
(72)【発明者】
【氏名】陳 功
(72)【発明者】
【氏名】郭 ▲ティン▼▲ティン▼
(72)【発明者】
【氏名】姜 小燕
(72)【発明者】
【氏名】任 江涛
(72)【発明者】
【氏名】賀 小宏
(72)【発明者】
【氏名】王 延賓
(72)【発明者】
【氏名】韓 露
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA13
4C084ZB26
4C084ZB27
4C085AA13
4C085BB31
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC22
4C085DD61
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA13
4C086ZB26
4C086ZB27
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA13
4C087ZB26
4C087ZB27
(57)【要約】

本発明は、キメラ抗原受容体を提供し、それは、抗原結合領域と、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達領域とを含み、前記抗原結合領域は、CD7を特異的に標的とする抗体を含み、前記細胞内シグナル伝達領域は、共刺激ドメインと、一次シグナル伝導ドメインと、γc鎖又はその細胞内領域とからなる。キメラ抗原受容体を含む操作された免疫細胞及びその薬物組成物、及び前記操作された免疫細胞/薬物組成物の、癌の処置における使用にも関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ抗原受容体であって、抗原結合領域と、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達領域とを含み、前記抗原結合領域は、CD7を特異的に標的とする抗体を含み、前記細胞内シグナル伝達領域は、共刺激ドメインと、一次シグナル伝導ドメインと、γc鎖又はその細胞内領域とからなる、キメラ抗原受容体。
【請求項2】
前記抗体は、IgG、Fab、Fab’、F(ab’)、Fd、Fd′、Fv、scFv、sdFv、線形抗体、シングルドメイン抗体、ナノ抗体とダイアボディから選択される、請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項3】
前記膜貫通ドメインは、TCRα鎖、TCRβ鎖、TCRγ鎖、TCRδ鎖、CD3ζサブユニット、CD3εサブユニット、CD3γサブユニット、CD3δサブユニット、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD28、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137とCD154というタンパク質の膜貫通ドメインから選択される、請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項4】
前記一次シグナル伝導ドメインは、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79bとCD66dというタンパク質のシグナル伝導ドメインから選択される、請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項5】
前記共刺激ドメインは、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、CARD11、CD2、CD7、CD8、CD18、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54、CD83、CD134、CD137、CD150、CD152、CD223、CD270、CD272、CD273、CD274、CD276、CD278、CD357、DAP10、LAT、NKG2C、SLP76、LIGHT、TRIM、CD94、LTB及びZAP70というタンパク質から選択される共刺激シグナル伝導ドメインである、請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項6】
前記γc鎖は、SEQ ID NO:63又は65と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項7】
前記CD7を標的とする抗体は、SEQ ID NO:1に示すCDR-L1、SEQ ID NO:2に示すCDR-L2、SEQ ID NO:3に示すCDR-L3、SEQ ID NO:4に示すCDR-H1、SEQ ID NO:5に示すCDR-H2とSEQ ID NO:6に示すCDR-H3を含む、請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項8】
前記CD7を標的とする抗体は、SEQ ID NO:7、10、13、16と19から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有する軽鎖可変領域と、SEQ ID NO:8、11、14、17と20から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖可変領域とを含む、請求項7に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項9】
前記抗原結合領域は、第二の抗原を標的とする抗体をさらに含み、前記第二の抗原は、TSHR、CD19、CD123、CD22、BAFF-R、CD30、CD171、CS-1、CLL-1、CD33、EGFRvIII、GD2、GD3、BCMA、GPRC5D、Tn Ag、PSMA、ROR1、FLT3、FAP、TAG72、CD38、CD44v6、CEA、EPCAM、B7H3、KIT、IL-13Ra2、メソテリン、IL-l lRa、PSCA、PRSS21、VEGFR2、LewisY、CD24、PDGFR-β、SSEA-4、CD20、Folate受容体α、ERBB2(Her2/neu)、MUC1、EGFR、NCAM、Claudin18.2、Prostase、PAP、ELF2M、Ephrin B2、IGF-I受容体、CAIX、LMP2、gploo、bcr-abl、チロシナーゼ、EphA2、Fucosyl GMl、sLe、GM3、TGS5、HMWMAA、o-アセチル-GD2、Folate受容体β、TEM1/CD248、TEM7R、CLDN6、GPRC5D、CXORF61、CD97、CD 179a、ALK、ポリシアル酸、PLAC1、GloboH、NY-BR-1、UPK2、HAVCR1、ADRB3、PANX3、GPR20、LY6K、OR51E2、TARP、WT1、NY-ESO-1、LAGE-la、MAGE-A1、レグマイン、HPV E6、E7、MAGE Al、ETV6-AML、精子タンパク質17、XAGE1、Tie 2、MAD-CT-1、MAD-CT-2、Fos関連抗原1、p53、p53変異体、前立腺特異的タンパク質、生存タンパク質とテロメラーゼ、PCTA-l/Galectin 8、MelanA/MARTl、Ras変異体、hTERT、肉腫転座切断点、ML-IAP、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、アンドロゲン受容体、Cyclin Bl、MYCN、RhoC、TRP-2、CYP1B 1、BORIS、SART3、PAX5、OY-TES 1、LCK、AKAP-4、SSX2、RAGE-1、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2、腸内カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、CD79a、CD79b、CD72、LAIR1、FCAR、LILRA2、CD300LF、CLEC12A、BST2、EMR2、LY75、GPC3、FCRL5、IGLL1、PD1、PDL1、PDL2、TGFβ、APRIL、NKG2Dとそれらのいずれかの組み合わせから選択される、請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項10】
前記第二の抗原を標的とする抗体は、CD19を標的とする抗体であり、
(1)SEQ ID NO:44に示すCDR-L1、SEQ ID NO:45に示すCDR-L2、SEQ ID NO:46に示すCDR-L3、SEQ ID NO:47に示すCDR-H1、SEQ ID NO:48に示すCDR-H2とSEQ ID NO:49に示すCDR-H3、又は
(2)SEQ ID NO:50に示すCDR-L1、SEQ ID NO:51に示すCDR-L2、SEQ ID NO:52に示すCDR-L3、SEQ ID NO:53に示すCDR-H1、SEQ ID NO:54に示すCDR-H2とSEQ ID NO:55に示すCDR-H3を含む、請求項9に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項11】
前記CD19を標的とする抗体は、SEQ ID NO:56又は59に示すアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有する軽鎖可変領域と、SEQ ID NO:57又は60に示すアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖可変領域とを含む、請求項10に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のキメラ抗原受容体をコードする配列を含む、核酸。
【請求項13】
請求項12に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項14】
前記ベクターは、線形核酸分子、プラスミド、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、ポリオーマウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ファージ、コスミド又は人工染色体である、請求項13に記載のベクター。
【請求項15】
請求項1から11のいずれか1項に記載のキメラ抗原受容体、請求項12に記載の核酸、又は請求項13又は14に記載のベクターを含む、操作された免疫細胞。
【請求項16】
前記免疫細胞は、T細胞、マクロファージ、樹状細胞、単球、NK細胞又はNKT細胞から選択される、請求項15に記載の操作された免疫細胞。
【請求項17】
前記免疫細胞は、CD4+/CD8+二重陽性T細胞、CD4+ヘルパーT細胞、CD8+T細胞、腫瘍浸潤細胞、記憶T細胞、ナイーブT細胞、CD4-CD8-T細胞、調節性T細胞、γδ-T細胞とαβ-T細胞から選択されるT細胞である、請求項16に記載の操作された免疫細胞。
【請求項18】
前記免疫細胞の内因性CD7の発現が抑制又はサイレンシングされる、請求項15から17のいずれか1項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項19】
前記免疫細胞の少なくとも一つのTCR/CD3遺伝子の発現が抑制又はサイレンシングされる、請求項15から18のいずれか1項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項20】
前記免疫細胞の少なくとも一つのMHC-II系関連遺伝子の発現が抑制又はサイレンシングされる、請求項15から19のいずれか1項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項21】
前記TCR/CD3遺伝子は、TRAC、TRBC、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζとそれらの組み合わせから選択される、請求項19又は20に記載の操作された免疫細胞。
【請求項22】
前記MHC-II系関連遺伝子は、HLA-DPA、HLA-DQ、HLA-DRA、RFX5、RFXAP、RFXANK、CIITAとそれらの組み合わせから選択される、請求項20に記載の操作された免疫細胞。
【請求項23】
前記操作された免疫細胞の内因性CD7と、TRACとTRBCから選択される少なくとも一つのTCR/CD3遺伝子と、RFX5、RFXAP、RFXANKとCIITAから選択される少なくとも一つのMHC-II系遺伝子との発現は、抑制又はサイレンシングされる、請求項22に記載の操作された免疫細胞。
【請求項24】
一つ又は複数の免疫細胞抗原結合領域と、膜貫通ドメインと、共刺激ドメインとを含む免疫抑制分子をさらに発現する、請求項15から23のいずれか1項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項25】
前記免疫抑制分子は、一次シグナル伝導ドメインを含まない、請求項24に記載の操作された免疫細胞。
【請求項26】
前記免疫細胞抗原結合領域は、免疫細胞抗原を標的とする抗体、免疫細胞抗原のリガンド又はその組み合わせである、請求項24に記載の操作された免疫細胞。
【請求項27】
前記免疫細胞抗原は、NKG2A、NKG2B、NKG2C、NKG2D、NKG2E、NKP46、LIR1、LIR2、LIR3、LIR5、LIR8、PD-1、TIGIT、TIM3、LAG3、KIR、CEACAM1、LAIR1、SIGLEC7、SIGLCE9、KLRG1、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD16a、CD16b、CD25、CD27、CD28、CD30、CD38、CD45、CD48、CD50、CD52、CD56、CD57、CD62L、CD69、CD94、CD96、CD100、CD102、CD122、CD127、CD132、CD137、CD160、CD161、CD178、CD218、CD226、CD244、CD279、CD305、CD337、CS1とそれらの組み合わせから選択される、請求項24に記載の操作された免疫細胞。
【請求項28】
前記免疫細胞抗原のリガンドは、HLA-E、HLA-F、HLA-G、カドヘリン(例えばE-カドヘリン、N-カドヘリン、R-カドヘリン)、コラーゲン、OCIL、シアル酸、PD-L1、PD-L2、CD155、CTLA4、CD112、CD113、Gal-9、FGL1又はその細胞外領域から選択される、請求項26に記載の操作された免疫細胞。
【請求項29】
請求項1から11のいずれか1項に記載のキメラ抗原受容体、請求項12に記載の核酸、請求項13又は14に記載のベクター又は請求項15から28のいずれか1項に記載の操作された免疫細胞と、一つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤を含む、薬物組成物。
【請求項30】
請求項1から11のいずれか1項に記載のキメラ抗原受容体、請求項12に記載の核酸、請求項13又は14に記載のベクター、請求項15から28のいずれか1項に記載の操作された免疫細胞又は請求項29に記載の薬物組成物の、CD7の発現に関連する疾患を処置するための薬物の製造における使用。
【請求項31】
前記CD7の発現に関連する疾患は、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性顆粒球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髓性白血病、Tリンパ芽球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫、結節外NK/T細胞リンパ腫、γδT細胞リンパ腫と初期のプロTリンパ芽球性白血病から選択される、請求項30に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫療法分野に属する。より具体的には、本発明は、CD7を標的とする新型キメラ抗原受容体、及びその疾患の処置における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
CD7は、細胞表面糖タンパク質であり、分子量が約40kDaであり、免疫グロブリンスーパーファミリーの一員に属する。CD7は、ほとんどのT細胞、NK細胞、骨髄細胞、T細胞急性リンパ球性白血病/リンパ腫、急性顆粒球性白血病と慢性顆粒球白血病に発現している。CD7分子がそのリガンドK12/SECTM1との結合により、T細胞活性化期間に共刺激シグナルの役割を果たすことが報告されている。そして、マウスT前駆細胞におけるCD7分子を破壊すると、依然として正常なT細胞の発育と体内バランスが発生し、表明CD7は、T細胞の発育と機能に重要な影響を与えないようであり、急性リンパ球性白血病(ALL)を処置するのに非常に適切な処置標的となっていることが示される。実際には、CD7は、白血病とリンパ腫を処置する細胞傷害性分子の標的としてすでに広く研究されている。
【0003】
現在、CD7に対するCAR-T療法は、非常に限られている。そのため、本発明は、効率的なCD7を標的とするCAR細胞療法を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0004】
第一の態様によれば、本発明は、新型キメラ抗原受容体を提供し、この新型キメラ抗原受容体は、抗原結合領域と、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達領域とを含み、前記抗原結合領域は、CD7を特異的に標的とする抗体を含み、前記細胞内シグナル伝達領域は、共刺激ドメインと、一次シグナル伝導ドメインと、γc鎖又はその細胞内領域とからなる。
【0005】
一つの好ましい実施形態では、γc鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:14に示し、その細胞内領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:16に示す。
【0006】
一つの実施形態では、前記抗体は、IgG、Fab、Fab’、F(ab’)、Fd、Fd′、Fv、scFv、sdFv、線形抗体、シングルドメイン抗体、ナノ抗体とダイアボディから選択され、好ましくは、Fab、scFv、シングルドメイン抗体とナノ抗体から選択され、最も好ましくは、scFvである。
【0007】
一つの実施形態では、前記抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、マウス化抗体とキメラ抗体から選択される。
【0008】
一つの実施形態では、前記膜貫通ドメインは、TCRα鎖、TCRβ鎖、TCRγ鎖、TCRδ鎖、CD3ζサブユニット、CD3εサブユニット、CD3γサブユニット、CD3δサブユニット、CD45、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD33、CD28、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137とCD154というタンパク質の膜貫通ドメインから選択される。好ましくは、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28とCD278の膜貫通ドメインから選択される。
【0009】
一つの実施形態では、前記共刺激ドメインは、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、CARD11、CD2、CD7、CD8、CD18(LFA-1)、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD270(HVEM)、CD272(BTLA)、CD276(B7-H3)、CD278(ICOS)、CD357(GITR)、DAP10、LAT、NKG2C、SLP76、PD-1、LIGHT、TRIM、CD94、LTB及びZAP70というタンパク質から選択される一つ又は複数の共刺激シグナル伝導ドメインである。好ましくは、前記共刺激ドメインは、CD27、CD28、CD134、CD137又はCD278の共刺激シグナル伝導ドメインである。
【0010】
一つの実施形態では、前記一次シグナル伝導ドメインは、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79bとCD66dというタンパク質のシグナル伝導ドメインから選択される。好ましくは、前記一次シグナル伝導ドメインは、CD3ζのシグナル伝導ドメインを含む。
【0011】
一つの実施形態では、前記キメラ抗原受容体の抗原結合領域は、第二の抗原を標的とする抗体をさらに含み、前記第二の抗原は、TSHR、CD19、CD123、CD22、BAFF-R、CD30、CD171、CS-1、CLL-1、CD33、EGFRvIII、GD2、GD3、BCMA、GPRC5D、Tn Ag、PSMA、ROR1、FLT3、FAP、TAG72、CD38、CD44v6、CEA、EPCAM、B7H3、KIT、IL-13Ra2、メソテリン、IL-l lRa、PSCA、PRSS21、VEGFR2、LewisY、CD24、PDGFR-β、SSEA-4、CD20、Folate受容体α、ERBB2(Her2/neu)、MUC1、EGFR、NCAM、Claudin18.2、Prostase、PAP、ELF2M、Ephrin B2、IGF-I受容体、CAIX、LMP2、gploo、bcr-abl、チロシナーゼ、EphA2、Fucosyl GMl、sLe、GM3、TGS5、HMWMAA、o-アセチル-GD2、Folate受容体β、TEM1/CD248、TEM7R、CLDN6、GPRC5D、CXORF61、CD97、CD 179a、ALK、ポリシアル酸、PLAC1、GloboH、NY-BR-1、UPK2、HAVCR1、ADRB3、PANX3、GPR20、LY6K、OR51E2、TARP、WT1、NY-ESO-1、LAGE-la、MAGE-A1、レグマイン、HPV E6、E7、MAGE Al、ETV6-AML、精子タンパク質17、XAGE1、Tie 2、MAD-CT-1、MAD-CT-2、Fos関連抗原1、p53、p53変異体、前立腺特異的タンパク質、生存タンパク質とテロメラーゼ、PCTA-l/Galectin 8、MelanA/MARTl、Ras変異体、hTERT、肉腫転座切断点、ML-IAP、ERG(TMPRSS2ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、アンドロゲン受容体、Cyclin Bl、MYCN、RhoC、TRP-2、CYP1B 1、BORIS、SART3、PAX5、OY-TES 1、LCK、AKAP-4、SSX2、RAGE-1、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2、腸内カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、CD79a、CD79b、CD72、LAIR1、FCAR、LILRA2、CD300LF、CLEC12A、BST2、EMR2、LY75、GPC3、FCRL5、IGLL1、PD1、PDL1、PDL2、TGFβ、APRIL、NKG2Dとそれらのいずれかの組み合わせから選択される。
【0012】
第二の態様によれば、本発明は、本発明のキメラ抗原受容体をコードする配列を含む核酸、前記核酸を含むベクター、及び前記核酸又はベクターを含む免疫細胞をさらに提供する。
【0013】
一つの実施形態では、本発明は、核酸を提供し、この核酸は、本発明のキメラ抗原受容体をコードする配列を含む。好ましくは、前記核酸は、DNA又はRNAである。
【0014】
一つの実施形態では、本発明は、上記核酸を含むベクターを提供する。具体的には、前記ベクターは、線形核酸分子、プラスミド、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、ポリオーマウイルスとアデノ随伴ウイルス(AAV)、ファージ、ファージミド、コスミド又は人工染色体から選択される。いくつかの実施形態では、このベクターは、免疫細胞内で自律的に複製される始点、選択マーカー、制限酵素切断部位、プロモーター、ポリアデニル酸テール(polyA)、3’UTR、5’UTR、エンハンサー、ターミネーター、インシュレーター、オペロン、選択マーカー、レポーター遺伝子、標的配列及び/又はタンパク質精製タグなどの要素をさらに含む。一つの具体的な実施形態では、前記ベクターは、インビトロで転写されたベクターである。
【0015】
一つの実施形態では、本発明は、本発明のキメラ抗原受容体を発見できる、本発明の核酸又はベクターを含む操作された免疫細胞を提供する。一つの具体的な実施形態では、前記免疫細胞は、T細胞、マクロファージ、樹状細胞、単球、NK細胞又はNKT細胞から選択される。好ましくは、前記T細胞は、CD4+/CD8+二重陽性T細胞、CD4+ヘルパーT細胞、CD8+T細胞、腫瘍浸潤細胞、記憶T細胞、ナイーブT細胞、CD4-CD8-T細胞、調節性T細胞、γδ-T細胞又はαβ-T細胞である。
【0016】
一つの実施形態では、前記操作された免疫細胞の内因性CD7と少なくとも一つのTCR/CD3遺伝子の発現が抑制又はサイレンシングされる。好ましくは、前記免疫細胞の少なくとも一つのMHC-II系関連遺伝子の発現が抑制又はサイレンシングされる。
【0017】
一つの実施形態では、前記TCR/CD3遺伝子は、TRAC、TRBC、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζとそれらの組み合わせから選択され、前記MHC-II系関連遺伝子は、HLA-DPA、HLA-DQ、HLA-DRA、RFX5、RFXAP、RFXANK、CIITAとそれらの組み合わせから選択される。
【0018】
一つの具体的な実施形態では、前記操作された免疫細胞の内因性CD7と、TRACとTRBCから選択される少なくとも一つのTCR/CD3遺伝子と、RFX5、RFXAP、RFXANKとCIITAから選択される少なくとも一つのMHC-II系遺伝子との発現は、抑制又はサイレンシングされる。
【0019】
第三の態様によれば、本発明は、薬物組成物を提供し、この薬物組成物は、上記で定義された本発明のキメラ抗原受容体又はそのコード核酸、ベクター又はそれらを含む操作された免疫細胞と、一つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0020】
第四の態様によれば、一つの態様では、本発明は、CD7の発現に関連する疾患の被験者を処置する方法をさらに提供し、この方法は、有効量の本発明に記載の操作された免疫細胞又は薬物組成物を前記被験者に投与することを含む。そのため、本発明は、操作された免疫細胞及びそれを含む組成物の、CD7の発現に関連する疾患を処置するための薬物の製造における使用をさらにカバーする。
【0021】
一つの実施形態では、CD7の発現に関連する疾患は、好ましくは急性リンパ球性白血病(ALL、例えばT-ALL、NK-ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性顆粒球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髓性白血病、Tリンパ芽球性リンパ腫(T-LBL)、非ホジキンリンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、結節外NK/T細胞リンパ腫、γδT細胞リンパ腫と初期のプロTリンパ芽球性白血病(ETP-ALL)から選択される。
【0022】
発明の詳細な説明
特に断りのない限り、本明細書に使用されるすべての科学技術用語の意味は、本発明の当業者が一般的に理解しているものと同じである。
【0023】
キメラ抗原受容体
本明細書で使用されるように、用語である「キメラ抗原受容体」又は「CAR」とは、人工的に構築されたハイブリッドポリペプチドであり、このハイブリッドポリペプチドの基礎構造は、抗原結合領域(例えば抗体の抗原結合部分)、膜貫通ドメイン、共刺激ドメインと一次シグナル伝導ドメインを含む。CARは、モノクローナル抗体の抗原結合特性を利用して非MHC制限的方式でT細胞と他の免疫細胞の特異性と反応性を、選択された標的にリダイレクトすることができる。非MHC制限的抗原認識は、CARを発現するT細胞に抗原処理とは無関係に抗原を認識する能力を与えるため、腫瘍脱出の主なメカニズムを迂回している。なお、T細胞内で発現した場合、CARは、内因性T細胞受容体(TCR)のα鎖とβ鎖と二量化しないことが有利である。
【0024】
一つの実施形態では、本発明による新型キメラ抗原受容体は、抗原結合領域と、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達領域とを含み、前記抗原結合領域は、CD7を特異的に標的とする抗体を含み、前記細胞内シグナル伝達領域は、共刺激ドメインと、一次シグナル伝導ドメインと、γc鎖又はその細胞内領域とからなる。言い換えれば、本発明のキメラ抗原受容体の細胞内領域は、共刺激ドメイン、一次シグナル伝導ドメイン、及びγc鎖又はその細胞内領域を除き、シグナル伝導作用を有する他の構造を含まない。そのため、従来のCAR構造の細胞内領域(一次シグナル伝導ドメイン、又は一次シグナル伝導ドメインと共刺激ドメインを含む)と比べて、本発明の新型キメラ抗原受容体の細胞内領域は、γc鎖又はその細胞内領域をさらに含む。一つの実施形態では、前記細胞内シグナル伝達領域に含まれる共刺激ドメイン、一次シグナル伝導ドメイン及びγc鎖又はその細胞内領域は、細胞膜からの距離の近い順に並べられる。即ち共刺激ドメインは、細胞膜から最も近いが、γc鎖又はその細胞内領域は、細胞膜から最も遠い。本明細書で使用されるように、「抗原結合領域」とは、抗原と結合できる任意の構造又はその機能的変異体である。抗原結合領域は、抗体又はその抗原結合部分であってもよい。本明細書で使用されるように、用語である「抗体」は、当業者に理解される最も広い意味を有するとともに、モノクローナル抗体(完全抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多価抗体、多重特異的抗体(例えば二重特異的抗体)と、所望の生体活性を示すことができる、一つ又は複数のCDR配列を担持した抗体断片又は合成ポリペプチドを含む。本発明の抗体は、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、マウス化抗体、キメラ抗体及びその抗原結合部分も含む。「抗体断片」又は「抗原結合部分」とは、完全抗体の一部であり、一般的には完全抗体の抗原結合部位を含み、且つそのため、抗原を結合する能力を保持する。本発明における抗体断片の実例は、Fab、Fab’、F(ab’)、Fd断片、Fd′、Fv断片、scFv、ジスルフィド結合-連結のFv(sdFv)、抗体の重鎖可変領域(VH)又は軽鎖可変領域(VL)、線形抗体、二つの抗原結合部位を有する「ダイアボディ」、シングルドメイン抗体、ナノ抗体、前記抗原の天然リガンド又はその機能的断片などを含むが、それらに限らない。そのため、本発明の「抗体」は、上記で定義された抗体の抗体断片又は抗原結合部分をカバーする。
【0025】
そのため、一つの実施形態では、本発明の抗体は、IgG、Fab、Fab’、F(ab’)、Fd、Fd′、Fv、scFv、sdFv、線形抗体、シングルドメイン抗体、ナノ抗体とダイアボディから選択され、好ましくは、Fab、scFv、シングルドメイン抗体とナノ抗体から選択され、最も好ましくは、scFvである。本発明では、抗体は、1価又は2価であってもよく、且つ単特異性、二重特異性又は多重特異性の抗体であってもよい。
【0026】
「Fab」とは、免疫グロブリン分子がパパインによって溶解された後に発生した二つの同じ断片のうちのいずれかであり、ジスルフィド結合によって連結された完全軽鎖と重鎖N端部分からなり、ここで、重鎖N端部分は、重鎖可変領域とCH1とを含む。完全なIgGと比べて、Fabは、Fc断片がなく、流動性と組織透過能力が比較的高いとともに、抗体効果を媒介することなく抗原を1価結合することができる。
【0027】
「一本鎖抗体」又は「scFv」は、抗体の重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)がリンカーを介して連結された抗体である。リンカーの最適な長さ及び/又はアミノ酸組成を選択することができる。リンカーの長さは、scFvの可変領域の折り畳みと相互作用に明らかに影響する。実は、短いリンカー(例えば5~10個のアミノ酸の間)を使用すると、鎖内の折り畳みを防止することができる。リンカーの大きさと組成の選択については、例えば、Hollingerら、1993Proc Natl Acad.Sci.U.S.A.90:6444-6448、美国特許出願公開番号2005/0100543、2005/0175606、2007/0014794、及びPCT公開番号WO2006/020258とWO2007/024715を参照し、その全文は、援用により本明細書に組込まれる。よく使われるリンカーは、例えばGSTSGSGKPGSGEGSTKG(SEQ ID NO:66)、GGGGSGGGGSGGGGS(SEQ ID NO:67)である。scFvは、任意の順序で連結されたVHとVL、例えばVH-リンカー-VL又はVL-リンカー-VHを含んでもよい。
【0028】
「シングルドメイン抗体」又は「sdAb」とは、天然の軽鎖欠失抗体であり、この抗体は、一つの重鎖可変領域(VHH)と二つの通常のCH2とCH3領域のみを含み、「重鎖抗体」とも呼ばれる。
【0029】
「ナノ抗体」又は「Nb」とは、単独でクローンして発現したVHH構造であり、原重鎖抗体に相当する構造安定性及び抗原との結合活性を有し、現在既知の標的抗原と結合可能な最小単位である。
【0030】
用語である「機能的変異体」又は「機能的断片」とは、前記変異体が親のアミノ酸配列の生体活性を保持するという条件で、基本的に、親のアミノ酸配列を含むがこの親のアミノ酸配列と比べて少なくとも一つのアミノ酸修飾(即ち置換、欠失又は挿入)を含む変異体である。一つの実施形態では、前記アミノ酸修飾は、好ましくは保存的修飾である。
【0031】
本明細書で使用されるように、用語である「保守的修飾」とは、このアミノ酸配列を含む抗体又は抗体断片の結合特徴に明らかに影響しないか又は変えないアミノ酸修飾である。これらの保存的修飾は、アミノ酸の置換、添加及び欠失を含む。修飾は、当分野で知られている規格技術、例えば部位特異的変異誘発とPCRにより媒介される変異誘発によって本発明のキメラ抗原受容体に導入することができる。保守的アミノ酸の置換は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換された置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーは、すでに当分野で定義されており、塩基性側鎖(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非電荷極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン酸、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β-分岐側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。保守的修飾は、例えば極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性及び/又は関与する残基の両親媒性の類似性に基づいて選択することができる。
【0032】
そのため、「機能的変異体」又は「機能的断片」は、親のアミノ酸配列と少なくとも75%、好ましくは少なくとも76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するとともに、親のアミノ酸の生体活性、例えば結合活性を保持する。
【0033】
本明細書で使用されるように、用語である「配列同一性」は、二つの(ヌクレオチド又はアミノ酸)配列が比較において同じ位置に同じ残基を有する程度を表すとともに、一般的には百分率として表される。好ましくは、同一性は、比較される配列の全長にわたって決定される。そのため、全く同じ配列を有する二つのコピーは、100%の同一性を有する。当業者は、規格パラメータを用いて配列同一性を決定するために、いくつかのアルゴリズム、例えばBlast(Altschulらの(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402)、Blast2(Altschulらの(1990)J.Mol.Biol.215:403-410)、Smith-Waterman(Smithらの(1981)J.Mol.Biol.147:195-197)とClustalWを使用できることを認識する。
【0034】
一つの実施形態では、本発明のキメラ抗原受容体に含まれるCD7を標的とする抗体は、SEQ ID NO:1、2、と3に示すCDR-L1、CDR-L2とCDR-L3、とSEQ ID NO:4、5と6に示すCDR-H1、CDR-H2とCDR-H3を含む。好ましくは、本発明のCD7を標的とする抗体は、SEQ ID NO:7、10、13、16と19から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域と、SEQ ID NO:8、11、14、17と20から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域とを含む。より好ましくは、本発明のキメラ抗原受容体は、抗CD7抗体を含み、そのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:9、12、15、18又は21に示す。
【0035】
一つの実施形態では、CD7を標的とする抗体に加えて、本発明のキメラ抗原受容体の抗原結合領域は、第二の抗原を標的とする抗体をさらに含み、前記第二の抗原は、TSHR、CD19、CD123、CD22、BAFF-R、CD30、CD171、CS-1、CLL-1、CD33、EGFRvIII、GD2、GD3、BCMA、GPRC5D、Tn Ag、PSMA、ROR1、FLT3、FAP、TAG72、CD38、CD44v6、CEA、EPCAM、B7H3、KIT、IL-13Ra2、メソテリン、IL-l lRa、PSCA、PRSS21、VEGFR2、LewisY、CD24、PDGFR-β、SSEA-4、CD20、AFP、Folate受容体α、ERBB2(Her2/neu)、MUC1、EGFR、CS1、CD138、NCAM、Claudin18.2、Prostase、PAP、ELF2M、Ephrin B2、IGF-I受容体、CAIX、LMP2、gploo、bcr-abl、チロシナーゼ、EphA2、Fucosyl GMl、sLe、GM3、TGS5、HMWMAA、o-アセチル-GD2、Folate受容体β、TEM1/CD248、TEM7R、CLDN6、GPRC5D、CXORF61、CD97、CD 179a、ALK、ポリシアル酸、PLAC1、GloboH、NY-BR-1、UPK2、HAVCR1、ADRB3、PANX3、GPR20、LY6K、OR51E2、TARP、WT1、NY-ESO-1、LAGE-la、MAGE-A1、レグマイン、HPV E6、E7、MAGE Al、ETV6-AML、精子タンパク質17、XAGE1、Tie 2、MAD-CT-1、MAD-CT-2、Fos関連抗原1、p53、p53変異体、前立腺特異的タンパク質、生存タンパク質とテロメラーゼ、PCTA-l/Galectin 8、MelanA/MARTl、Ras変異体、hTERT、肉腫転座切断点、ML-IAP、ERG(TMPRSS2ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、アンドロゲン受容体、Cyclin Bl、MYCN、RhoC、TRP-2、CYP1B1、BORIS、SART3、PAX5、OY-TES 1、LCK、AKAP-4、SSX2、RAGE-1、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2、腸内カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、CD79a、CD79b、CD72、LAIR1、FCAR、LILRA2、CD300LF、CLEC12A、BST2、EMR2、LY75、GPC3、FCRL5、IGLL1、PD1、PDL1、PDL2、TGFβ、APRIL、NKG2Dとそれらのいずれかの組み合わせから選択される。好ましくは、前記第二の抗原は、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD38、CD123、CD138、CD171、MUC1、AFP、Folate受容体α、CEA、PSCA、PSMA、Her2、EGFR、IL13Ra2、GD2、NKG2D、EGFRvIII、CS1、BCMA、メソテリンとそれらのいずれかの組み合わせから選択される。当分野で知られている上記腫瘍抗原を標的とする抗体は、いずれも本発明に用いることができる。
【0036】
一つの好ましい実施形態では、前記第二の抗原を標的とする抗体は、CD19を標的とする抗体であり、それは、
(1)SEQ ID NO:44に示すCDR-L1、SEQ ID NO:45に示すCDR-L2、SEQ ID NO:46に示すCDR-L3、SEQ ID NO:47に示すCDR-H1、SEQ ID NO:48に示すCDR-H2とSEQ ID NO:49に示すCDR-H3、又は
(2)SEQ ID NO:50に示すCDR-L1、SEQ ID NO:51に示すCDR-L2、SEQ ID NO:52に示すCDR-L3、SEQ ID NO:53に示すCDR-H1、SEQ ID NO:54に示すCDR-H2とSEQ ID NO:55に示すCDR-H3を含む。
【0037】
一つの好ましい実施形態では、前記第二の抗原を標的とする抗体は、CD19を標的とする抗体であり、それは、SEQ ID NO:56又は59に示すアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域配列と、SEQ ID NO:57又は60に示すアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変領域配列とを含む。より好ましくは、本発明のキメラ抗原受容体は、CD7を標的とする抗体と、CD19を標的とする抗体とを含み、前記CD19を標的とする抗体のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:58又は61に示す。
【0038】
本明細書で使用されるように、用語である「膜貫通ドメイン」とは、キメラ抗原受容体を免疫細胞(例えばリンパ球、NK細胞又はNKT細胞)の表面に発現させるとともに、免疫細胞の標的細胞に対する細胞応答を誘導できるポリペプチド構造である。膜貫通ドメインは、天然又は合成であってもよく、任意の膜結合タンパク質又は膜貫通タンパク質に由来してもよい。キメラ受容体ポリペプチドが標的抗原と結合すると、膜貫通ドメインは、シグナル伝導を行うことができる。特に本発明に適用される膜貫通ドメインは、例えばTCRα鎖、TCRβ鎖、TCRγ鎖、TCRδ鎖、CD3ζサブユニット、CD3εサブユニット、CD3γサブユニット、CD3δサブユニット、CD45、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD33、CD28、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154及びその機能的断片に由来してもよい。又は、膜貫通ドメインは、合成であってもよく且つ、疎水性残基、例えばロイシンとバリンを主に含んでもよい。好ましくは、前記膜貫通ドメインは、ヒトCD8α鎖に由来し、それは、SEQ ID NO:22に示すアミノ酸配列又はSEQ ID NO:23に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%又は99%又は100%の配列同一性を有する。
【0039】
一つの実施形態では、本発明のキメラ抗原受容体は、抗原結合領域と膜貫通ドメインとの間に位置するヒンジ領域をさらに含んでもよい。本明細書で使用されるように、用語である「ヒンジ領域」は、一般的には膜貫通ドメインを抗原結合領域に連結するように作用する任意のオリゴペプチド又はポリペプチドである。具体的には、ヒンジ領域は、抗原結合領域のためにより大きな柔軟性とアクセス可能性を提供するために用いられる。ヒンジ領域は、最大300個のアミノ酸、好ましくは10~100個のアミノ酸且つ最も好ましくは25~50個のアミノ酸を含んでもよい。ヒンジ領域は、全部又は一部が天然分子に由来し、例えば全部又は一部がCD8、CD4又はCD28の細胞外領域に由来し、又は全部又は一部が抗体定常領域に由来してもよい。又は、ヒンジ領域は、天然存在するヒンジ配列に対応する合成配列であってもよく、又は、完全に合成されたヒンジ配列であってもよい。好ましい実施の形態では、前記ヒンジ領域は、CD8α鎖、CD28、CD4、FcγRIIIα受容体、IgG4又はIgG1のヒンジ領域部分、より好ましくはCD8α、CD28又はIgG4ヒンジを含み、それは、SEQ ID NO:38、40又は42に示すアミノ酸配列又はSEQ ID NO:39、41又は43に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%又は99%又は100%の配列同一性を有する。
【0040】
本明細書で使用されるように、用語である「一次シグナル伝導ドメイン」とは、エフェクター機能シグナルを伝導し、特定の機能を行うよう細胞に指導するタンパク質部分である。一次シグナル伝導ドメインは、抗原結合領域で抗原が結合した後の細胞内一次シグナル伝導を担当、それによって免疫細胞と免疫反応の活性化をもたらす。言い換えれば、一次シグナル伝導ドメインは、そのうちのCARを発現する免疫細胞の正常なエフェクター機能の少なくとも一つの活性化を担当する。例えば、T細胞のエフェクター機能は、サイトカインの分泌を含む細胞溶解活性又は補助活性であってもよい。
【0041】
一つの実施形態では、本発明のキメラ抗原受容体に含まれる一次シグナル伝導ドメインは、抗原受容体結合後に一次シグナル伝導を開始するために共に作用するT細胞受容体と共受容体の細胞質配列、及びこれらの配列の任意の誘導体又は変異体と同じ又は類似の機能を有する任意の合成配列であってもよい。一次シグナル伝導ドメインは、多くの免疫受容対チロシン活性化モチーフ(Immunoreceptor Tyrosine-based Activation Motifs、ITAM)を含んでもよい。本発明の一次シグナル伝導ドメインの非制限的実施例は、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79bとCD66dに由来するそれらのものを含むが、それらに限らない。好ましい実施の形態では、本発明によるCARの一次シグナル形質導入ドメインは、CD3ζシグナル伝導ドメインを含んでもよく、このシグナル伝導ドメインは、SEQ ID NO:30又は32に示すアミノ酸配列又はSEQ ID NO:31又は33に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%又は99%又は100%の配列同一性を有する。
【0042】
一つの実施形態では、本発明のキメラ抗原受容体の細胞内シグナル伝達領域は、一つ又は複数の共刺激ドメインを含んでもよい。共刺激ドメインは、共刺激分子に由来する細胞内機能的シグナル伝導ドメインであってもよく、それは、前記共刺激分子の細胞内部分全体、又はその機能断片を含む。「共刺激分子」とは、T細胞上で共刺激リガンドと特異的に結合することによって、T細胞の共刺激反応(例えば増殖)を媒介する相同結合パートナーである。共刺激分子は、クラス1 MHC分子、BTLAとTollリガンド受容体を含むが、それらに限らない。本発明の共刺激ドメインの非制限的実施例は、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、CARD11、CD2、CD7、CD8、CD18(LFA-1)、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD270(HVEM)、CD272(BTLA)、CD276(B7-H3)、CD278(ICOS)、CD357(GITR)、DAP10、LAT、NKG2C、SLP76、PD-1、LIGHT、TRIM、CD94、LTB及びZAP70のタンパク質に由来する共刺激シグナル伝導ドメインを含むが、それらに限らない。
【0043】
一つの好ましい実施形態では、前記共刺激ドメインは、DAP10、DAP12、CD27、CD28、CD134、4-1BB又はCD278というタンパク質から選択される一つ又は複数の細胞内領域を含む。例えば、一つの実施形態では、前記共刺激ドメインは、4-1BBの細胞内領域を含む。一つの実施形態では、前記共刺激ドメインは、CD28の細胞内領域を含む。一つの実施形態では、前記共刺激ドメインは、4-1BBの細胞内領域とCD28の細胞内領域とを含む。
【0044】
一つの実施形態では、4-1BBの細胞内領域は、SEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%又は99%又は100%の配列同一性を有し、又はそのコード配列は、SEQ ID NO:29に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%又は99%又は100%の配列同一性を有する。一つの実施形態では、CD28の細胞内領域は、SEQ ID NO:26に示すアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%又は99%又は100%の配列同一性を有し、又はそのコード配列は、SEQ ID NO:27に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%又は99%又は100%の配列同一性を有する。
【0045】
一つの実施形態では、共刺激ドメインと一次シグナル伝導ドメインがシグナル伝導として用いられることに加えて、本発明のキメラ抗原受容体は、シグナル伝導を補強するためにγc鎖又はその細胞内領域をさらに含む。この実施形態では、本発明のキメラ抗原受容体の細胞内領域(即ち、シグナル伝導のための構造)は、共刺激ドメインと、一次シグナル伝導ドメインと、γc鎖又はその細胞内領域との3つのシグナル伝導構造からなる。これは、本発明のキメラ抗原受容体が第4種類のシグナル伝導構造、例えば他のサイトカインのシグナル伝導領域、例えばIL-2Ra、IL2Ra、IL2Rb、IL4Ra、IL7Ra、IL9Ra、IL15Ra、IL21Raなどの細胞内領域を含まないことを意味する。
【0046】
本明細書で使用されるように、用語である「γc鎖」とは、サイトカインIL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、IL-21の受容体が共有するγ鎖である。γc鎖は、最初IL-2受容体に同定されたが、その後IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、IL-21などの受容体の組成にも関与していることを発見したため、汎用γ鎖とも呼ばれる。例えば、IL-2受容体は、3つの形式があり、α鎖(IL-2Rαとも呼ばれる)、β鎖(IL-2Rβとも呼ばれる)とγc鎖(IL-2Rγ又はIL-2Rgとも呼ばれる)の異なる組み合わせで形成されており、ここで、他の組み合わせと比べて、3つの鎖すべてを含むIL-2受容体は、IL-2サイトカインと最も高い親和力を有する。IL-2受容体の3つの鎖は、細胞膜にアンカーされ、IL-2と結合することで生化学的シグナルを細胞内に伝導する。これらのγ鎖依存的サイトカインのうち、サイトカイン受容体特有の成分、例えばIL-2Rβ、IL-4Rα、IL-7Rα、IL-9Rα、IL-21Rなどは、JAK1との結合を担当するが、γc鎖は、JAK3と結合する。これらのサイトカイン受容体がサイトカインと結合すると、MAPキナーゼ、PI3キナーゼとJAK-STAT経路を含む三つの主なシグナル経路が活性化され、さらにT細胞とNK細胞の生存及び増殖を制御する。
【0047】
γc鎖は、分子量64kDの糖タンパク質であり、347個のアミノ酸からなり、そのうちは、232個のアミノ酸の細胞外領域と、29個のアミノ酸の膜貫通領域と、86個のアミノ酸の細胞内領域とを含む。細胞内領域には、Src相同領域が含まれ、細胞の生長及びIL-2により媒介されるc-myc、c-fos、c-junなどの遺伝子の発現を促進するのに重要である。一つの実施形態では、本発明に使用できるγc鎖は、SEQ ID NO:62に示すアミノ酸配列又はSEQ ID NO:63に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%又は99%又は100%の配列同一性を有する。一つの実施形態では、本発明に使用できるγc鎖細胞内領域は、SEQ ID NO:64に示すアミノ酸配列又はSEQ ID NO:65に示すヌクレオチド配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%又は99%又は100%の配列同一性を有する。好ましくは、本発明のγc鎖は、SEQ ID NO:63に示し、その細胞内領域は、SEQ ID NO:65に示す。一つの実施形態では、本発明のCARは、それが細胞、例えばT細胞で発現された場合、新生タンパク質が内質網に誘導されて、その後、細胞表面に誘導されるように、シグナルペプチドをさらに含んでもよい。シグナルペプチドのコアは、長い疎水性アミノ酸セグメントを含んでもよく、それは、単一のα-らせんを形成する傾向がある。シグナルペプチドの末端には、一般的にシグナルペプチダーゼによって認識と切割されるアミノ酸セグメントがある。シグナルペプチダーゼは、游離シグナルペプチドと成熟タンパク質を産生するために、変位期間又は完了後に切割されてもよい。そして、游離シグナルペプチドは、特定のプロテアーゼによって消化される。本発明に使用できるシグナルペプチドは、当業者によく知られており、例えばCD8α、IgG1、GM-CSFRαなどに由来するシグナルペプチドである。
【0048】
一つの実施形態では、本発明のCARは、CARの発現時間を制御するためのスイッチ構造をさらに含んでもよい。例えば、スイッチ構造は、該当するリガンドとの結合によってコンホメーション変化を生じさせ、細胞外の抗原結合領域を露出させ、標的される抗原と結合させることによって、シグナル伝導経路を活性化する二量化ドメインの形式であってもよい。又は、スイッチ構造を使用してそれぞれ抗原結合領域とシグナル伝導ドメインとを連結してもよく、スイッチ構造が互いに結合している場合(例えば誘導化合物が存在している場合)にのみ、抗原結合領域とシグナル伝導ドメインは、二量体を介して連結され、それによってシグナル経路を活性化することができる。スイッチ構造は、マスキングペプチドの形式であってもよい。マスキングペプチドは、細胞外の抗原結合領域を遮蔽し、標的される抗原との結合を阻止することができ、例えばプロテアーゼによりマスキングペプチドを切断した後、細胞外の抗原結合領域を露出させ、「通常」のCAR構造とすることができる。当業者に知られている様々なスイッチ構造は、いずれも本発明に用いることができる。
【0049】
一つの実施形態では、本発明のCARは、自殺遺伝子をさらに含んでもよく、即ち、必要に応じて(例えば深刻な毒性副作用が発生する場合)CAR細胞を除去するために、外来物質によって誘導され得る細胞死シグナルを発見させる。例えば、自殺遺伝子は、挿入されたエピトープの形式、例えばCD20エピトープ、RQR8などであってもよく、必要に応じて、これらのエピトープを標的とする抗体又は試剤を加えることにより、CAR細胞を除去することができる。自殺遺伝子は、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)であってもよく、この遺伝子は、ガンシクロビル処置を受けて細胞を誘導して死亡させることができる。自殺遺伝子は、iCaspase-9であってもよく、化学誘導薬物、例えばAP1903、AP20187などによってiCaspase-9の二量化を誘導し、それによって下流のCaspase3分子を活性化し、アポトーシスを引き起こすことができる。当業者に知られている様々な自殺遺伝子は、いずれも本発明に用いることができる。
【0050】
核酸
本発明は、核酸をさらに提供し、この核酸は、本発明のキメラ抗原受容体をコードする配列を含む。
【0051】
本明細書で使用されるように、用語である「核酸」は、リボヌクレオチドとデオキシリボヌクレオチドの配列、例えば修飾された又は修飾されていないRNA又はDNAを含み、それぞれが一本鎖及び/又は二本鎖形式の線形又は環状、又はそれらの混合物(ヘテロ分子を含む)である。そのため、本発明に係る核酸は、DNA(例えば、dsDNA、ssDNA、cDNA)、RNA(例えば、dsRNA、ssRNA、mRNA、ivtRNA)、それらの組み合わせ又は誘導体(例えば、PNA)を含む。好ましくは、前記核酸は、DNA又はRNA、より好ましくはmRNAである。
【0052】
核酸は、通常のリン酸ジエステル結合又は非通常の結合(例えばアミド結合、例えばペプチド(PNA)において発見される)を含んでもよい。本発明の核酸は、一つ又は複数の修飾された塩基、例えば、トリフェニルメチル化された塩基と一般的ではない塩基(例えば、イノシン)をさらに含んでもよい。本発明の多鎖CARがポリヌクレオチドから発現することができる限り、化学的、酵素的又は代謝的修飾を含む他の修飾も考えられる。核酸は、分離された形式で提供されてもよい。一つの実施形態では、核酸は、調節配列、例えば転写制御要素(プロモーター、エンハンサー、オペロン、インヒビターと転写終了シグナルを含む)、リボソーム結合部位、イントロンなどを含んでもよい。
【0053】
本発明の核酸配列をコドン最適化して必要な宿主細胞(例えば、免疫細胞)において最適な発現を行い、又は細菌、酵母菌又は昆虫細胞において発現するために用いられてもよい。コドン最適化とは、目的配列に存在する特定の種の高度発現遺伝子における一般的にまれなコドンを、その種の高度発現遺伝子において一般的によく見られるコドンに置き換えることであり、置き換え前後のコドンは、同じアミノ酸をコードする。そのため、最適なコドンの選択は、宿主ゲノムのコドン使用の選好に依存する。
【0054】
ベクター
本発明は、ベクターをさらに提供し、このベクターは、本発明に記載の一つ又は複数の核酸を含む。
【0055】
本明細書で使用されるように、用語である「ベクター」は、(外来)遺伝子物質を宿主細胞に移送する媒介核酸分子として用いられ、この宿主細胞において前記核酸分子は、例えば複製及び/又は発現可能である。
【0056】
ベクターは、一般的に標的ベクターと発現ベクターとを含む。「標的ベクター」は、例えば相同組換えにより又は特異的な標的部位に配列するヘテロ組換え酵素を用いて分離された核酸を細胞内部に送達する媒体である。「発現ベクター」は、非相同核酸配列(例えば本発明のキメラ抗原受容体ポリペプチドをコードするそれらの配列)の適切な宿主細胞における転写及びそれらのmRNAの翻訳のためのベクターである。本発明に使用できる適切なベクターは、当分野で知られているとともに、多くは市販から入手可能である。一つの実施形態では、本発明のベクターは、線形核酸分子(例えばDNA又はRNA)、プラスミド、ウイルス(例えばレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、ラウス肉腫ウイルス(RSV、ポリオーマウイルスとアデノ随伴ウイルス(AAV)など)、ファージ、ファージミド、コスミドと人工染色体(BACとYACを含む)を含むが、それらに限らない。ベクター自体は、一般的にヌクレオチド配列であり、一般的にはインサート(遺伝子組み換え)のDNA配列とベクターの「骨格」としての比較的大きい配列を含む。工学的ベクターは、一般的に宿主細胞において自律的に複製される始点(ポリヌクレオチドの安定的な発現が必要な場合)と、選択マーカーと、制限酵素切断部位(例えばポリクローナル部位、MCS)をさらに含む。ベクターは、プロモーター、ポリアデニル酸テール(polyA)、3’UTR、エンハンサー、ターミネーター、インシュレーター、オペロン、選択マーカー、レポーター遺伝子、標的配列及び/又はタンパク質精製タグなどの要素をさらに含んでもよい。一つの具体的な実施形態では、前記ベクターは、インビトロで転写されたベクターである。
【0057】
操作された免疫細胞
本発明は、操作された免疫細胞を提供し、この操作された免疫細胞は、キメラ抗原受容体又はそのコード核酸を含む。
【0058】
本明細書で使用されるように、用語である「免疫細胞」とは、免疫系の一つ又は複数のエフェクター機能(例えば、細胞傷害性細胞殺傷活性、サイトカインの分泌、ADCC及び/又はCDCの誘導)を有する任意の細胞である。例えば、免疫細胞は、T細胞、マクロファージ、樹状細胞、単球、NK細胞及び/又はNKT細胞であってもよい。一つの実施形態では、免疫細胞は、乾細胞、例えば成体乾細胞、胚性乾細胞、臍帯血乾細胞、前駆細胞、骨髓乾細胞、誘導多能性乾細胞、全能性乾細胞又は造血乾細胞などから誘導される。好ましくは、免疫細胞は、T細胞である。T細胞は、任意のT細胞、例えばインビトロで培養されたT細胞、例えば初代T細胞であってもよく、又はインビトロで培養されたT細胞系、例えばJurkat、SupT1などのT細胞、又は被験者から得られたT細胞に由来してもよい。被験者の例としては、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット及びその遺伝子組み換え種を含む。T細胞は、様々な源から得られてもよく、末梢血単球、骨髓、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位に由来する組織、腹水、胸膜貯留液、脾組織及び腫瘍を含む。T細胞は、濃縮又は精製されてもよい。T細胞は、任意のタイプのT細胞であってもよく且つ任意の発育段階にあってもよく、CD4+/CD8+二重陽性T細胞、CD4+ヘルパーT細胞(例えばTh1とTh2細胞)、CD8+T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、腫瘍浸潤細胞、記憶T細胞、ナイーブT細胞、CD4-CD8-T細胞、調節性T細胞、γδ-T細胞、αβ-T細胞などを含むが、それらに限らない。一つの好ましい実施形態では、免疫細胞は、ヒトT細胞である。当業者に知られている様々な技術を用いることができ、例えばFicoll分離は、被験者の血液からT細胞を得る。本発明では、免疫細胞は、キメラ抗原受容体ポリペプチドを発見するようにエンジニアリング化される。
【0059】
当分野で知られている一般的な方法(例えば形質導入、トランスフェクション、形質転換など)を採用することで、キメラ抗原受容体ポリペプチドをコードする核酸配列を免疫細胞に導入し、本発明のキメラ抗原受容体ポリペプチドを発見させることができる。「トランスフェクション」とは、核酸分子又はポリヌクレオチド(ベクターを含む)を標的細胞に導入するプロセスである。一例は、RNAトランスフェクションであり、即ちRNA(例えば、インビトロで転写されたRNA、ivtRNA)を宿主細胞に導入するプロセスである。この用語は、主に真核細胞における非ウイルス方法に用いられる。用語である「形質導入」は、一般的にウイルスにより媒介される核酸分子又はポリヌクレオチドの移送を記述するために用いられる。動物細胞のトランスフェクションは、一般的に細胞膜に瞬間的な穴又は「洞」を開け、材料の取り込みを許容することに関する。リン酸カルシウムを用いて、エレクトロポレーションにより、細胞押し出しにより、又はカチオン性脂質と材料とを混合し、細胞膜と融合してそれらの担体を内部に沈着させたリポソームを産生することにより、トランスフェクションを行うことができる。真核宿主細胞をトランスフェクションするための例示的な技術は、脂質小胞により媒介される取り込み、熱ショックにより媒介される取り込み、リン酸カルシウムにより媒介されるトランスフェクション(リン酸カルシウム/DNA共沈)、マイクロインジェクションとエレクトロポレーションを含む。用語である「形質転換」は、核酸分子又はポリヌクレオチド(ベクターを含む)の細菌へ、非動物真核細胞(植物細胞を含む)における非ウイルスへの移送を記述するために用いられる。そのため、形質転換は、細菌又は非動物真核細胞の遺伝子改変であり、細胞膜を介してその周囲から直接取り込み、その後に外来遺伝子物質(核酸分子)を取り込むことによって発生する。形質転換は、人工的な手段で実現することができる。形質転換を起こすためには、細胞又は細菌は、感受性状態でなければならない。原核形質転換に対して、技術は、熱ショックにより媒介される取り込み、完全細胞の細菌プロトプラストとの融合、マイクロインジェクションとエレクトロポレーションを含んでもよい。
【0060】
一つの実施形態では、本発明による操作された免疫細胞の内因性CD7の発現は、抑制又はサイレンシングされる。一つの実施形態では、本発明による操作された免疫細胞の少なくとも一つのTCR/CD3遺伝子の発現は、抑制又はサイレンシングされる。一つの実施形態では、本発明による操作された免疫細胞の内因性CD7と少なくとも一つのTCR/CD3遺伝子の発現は、抑制又はサイレンシングされる。
【0061】
CD7は、腫瘍細胞、例えばT細胞急性リンパ球性白血病/リンパ腫、急性顆粒球性白血病と慢性顆粒球白血病に発現されるだけでなく、ほとんどの正常なT細胞とNK細胞にも発現される。そのため、CD7を標的とするCAR細胞間の相互認識と殺傷を回避するために、CAR細胞の内因性CD7遺伝子の発現を抑制又はサイレンシングする必要がある。
【0062】
T細胞表面受容体(T cell receptor、TCR)は、すべてのT細胞表面の特徴的なマーカーであり、非共有結合でCD3と結合してTCR/CD3複合体を形成し、抗原提示細胞表面の特異的MHC-抗原ペプチド複合体と結合することにより、特異的抗原刺激シグナルを生成し、T細胞を活性化し、殺傷作用を発揮する。そのため、CAR-T細胞における内因性TCR/CD3遺伝子の発現を抑制又はサイレンシングさせることは、患者体内の正常な細胞又は組織への攻撃を回避し、さらに移植片対宿主病(GvHD)の発生リスクを回避又は低減させることができる。TCRは、2つの異なるペプチド鎖から構成されるヘテロダイマーであり、一般的には、α/β型とγ/δ型の2種類に分けられ、ここで、95%以上の末梢Tリンパ球性は、いずれもTCRα/βを発現する。TCRα鎖は、TRAC遺伝子によりコードされ、β鎖は、TRBC遺伝子によりコードされる。TCRの各ペプチド鎖は、可変領域(V領域)と、定常領域(C区)と、膜貫通領域と、細胞質領域とを含み、ここで、細胞質領域は、非常に短く、抗原刺激シグナルを伝導する能力を備えない。TCR分子は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、その抗原特異性は、V領域に存在し、V領域には、さらに三つの高変位領域CDR1、CDR2、CDR3があり、そのうち、CDR3の変異が最も大きく、TCRの抗原結合特異性を直接決める。TCRがMHC-抗原ペプチド複合体を認識する時、CDR1、CDR2は、MHC分子を認識して結合するが、CDR3は、抗原ペプチドに直接結合する。CD3は、4種類のサブユニット:γ、δ、ε、ζを含み、一般的には二量体εγ、εδ、ζζの形式で存在する。これらの4種類のサブユニットは、いずれも保存された免疫受容対チロシン活性化モチーフ(Immunoreceptor tyrosine-based activation motif、ITAM)を含み、そのうちの2つのチロシン残基は、チロシンタンパク質キナーゼによってリン酸化された後、T細胞に活性化シグナルを伝導する。そのため、一つの実施形態では、少なくとも一つのTCR/CD3遺伝子は、TRAC、TRBC、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζから選択される。
【0063】
一つの実施形態では、本発明による操作された免疫細胞の少なくとも一つのMHC-II系関連遺伝子の発現は、抑制又はサイレンシングされる。一つの実施形態では、本発明による操作された免疫細胞の内因性CD7と少なくとも一つのMHC-II系関連遺伝子の発現は、抑制又はサイレンシングされる。一つの実施形態では、本発明による操作された免疫細胞の少なくとも一つのTCR/CD3遺伝子と少なくとも一つのMHC-II系関連遺伝子の発現は、抑制又はサイレンシングされる。一つの実施形態では、本発明による操作された免疫細胞の内因性CD7、少なくとも一つのTCR/CD3遺伝子と少なくとも一つのMHC-II系関連遺伝子の発現は、抑制又はサイレンシングされる。この実施形態では、MHC-II系関連遺伝子は、MHC-II系遺伝子自体、及びMHC-II系遺伝子と相互作用するか又はその発見を制御する遺伝子を含む。
【0064】
主要組織適合性複合体(major histocompatibility complex、MHC)は、最初に移植反応において主な役割を果たすタンパク質として特徴付けられ、すべての高等脊椎動物の表面に発現されるとともに、マウスではH-2と呼ばれ、ヒト細胞ではHLAと呼ばれる。MHCは、主にI類とII類の2種類がある。I類MHCタンパク質は、二つのタンパク質のヘテロダイマーであり、一つは、MHC I遺伝子によりコードされる膜貫通タンパク質α鎖であり、別は、MHC遺伝子クラスター内にない遺伝子によりコードされる細胞外タンパク質のβ2ミクログロブリン鎖である。α鎖は、三つのドメインを含み、外来ペプチドは、N末端でも最も可変な二つのドメインα1、α2と結合する。II類MHCタンパク質は、ヘテロダイマーでもあり、MHC複合体内の遺伝子によりコードされる二つの膜貫通タンパク質を含む。I類MHC/抗原複合体は、細胞傷害性T細胞(例えばCD8+T細胞)と相互作用するが、II類MHCは、ヘルパーT細胞(例えばCD4+T細胞)に抗原を提示する。なお、I類MHCタンパク質は、ほぼすべての有核細胞と血小板(及びマウスにおける赤血球)で発見される傾向があるが、II類MHCタンパク質は、より選択的に発現される。一般的には、II類MHCタンパク質は、B細胞、いくつかのマクロファージと単球、活性化されたT細胞、ランゲルハンス細胞(Langerhans cell)と樹状細胞に発現される。
【0065】
ヒトのII類HLAクラスターは、三つの主要遺伝子座DP、DQとDRを含む。II類分子は、共に膜にアンカーされたα鎖とβ鎖からなるヘテロダイマーであり、ここで、α鎖は、約33-35kDaであるとともに、5つのエクソンを含む。エクソン1は、前駆ペプチドをコードし、エクソン2と3は、二つの細胞外ドメインをコードし、エクソン4は、膜貫通ドメインをコードし、エクソン5は、細胞質尾部をコードする。そのため、一つの実施形態では、MHC-II系関連遺伝子は、HLA-DPA、HLA-DQとHLA-DRAから選択される。
【0066】
MHC-II系遺伝子の発現は、さらに様々な重要なフォワードコントロールタンパク質、例えばRFX複合体、CIITAなどに依存している。RFX複合体は、三つのサブユニット:RFXANK(RFXBとも呼ばれる)、RFX5とRFXヘルパータンパク質(RFXAPとも呼ばれる)からなる。RFX複合体は、他の転写因子のII類MHC分子のプロモーターへの結合を促進し、プロモーター結合の特異性を補強することにより、II類MHC分子の発現を促進する。CIITAは、II類MHC発現の主な制御因子である。CIITAは、酸性アミノ酸に富むN端、Pro、Ser、Thrに富むPST領域、中間のGTP結合領域及びLeu反復配列(LRR)に富むC端を含み、ここで、N端酸性領域とPST領域は、転写活性化領域である。そのため、一つの実施形態では、MHC-II系関連遺伝子は、RFX5、RFXAP、RFXANKとCIITAから選択される。
【0067】
そのため、一つの実施形態では、MHC-II系関連遺伝子は、HLA-DPA、HLA-DQ、HLA-DRA、RFX5、RFXAP、RFXANKとCIITAから選択され、好ましくは、RFX5、RFXAP、RFXANKとCIITA、より好ましくはRFX5又はCIITAから選択される。
【0068】
一つの実施形態では、CAR-T細胞における内因性MHC-I系遺伝子(例えばHLA-A、HLA-B、HLA-C、B2Mなど)は、機能性である。別の実施形態では、CAR-T細胞における内因性MHC-I系遺伝子の発現も抑制又はサイレンシングされる。
【0069】
一つの実施形態では、本発明に記載の発現CD7を標的とするキメラ抗原受容体の操作された免疫細胞の内因性CD7、少なくとも一つのTCR/CD3遺伝子と少なくとも一つのMHC-II系関連遺伝子の発現が抑制又はサイレンシングされ、ここで、前記少なくとも一つのTCR/CD3遺伝子は、TRAC、TRBC、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζとそれらの組み合わせから選択され、前記少なくとも一つのMHC-II系関連遺伝子は、HLA-DPA、HLA-DQ、HLA-DRA、RFX5、RFXAP、RFXANKとCIITAから選択される。一つの好ましい実施形態では、本発明に記載の発現CD7を標的とするキメラ抗原受容体の操作された免疫細胞の内因性CD7と、TRACとTRBCから選択される少なくとも一つのTCR/CD3遺伝子と、RFX5、RFXAP、RFXANKとCIITAから選択される少なくとも一つのMHC-II系遺伝子との発現が抑制又はサイレンシングされる。より好ましくは、本発明に記載の発現CD7を標的とするキメラ抗原受容体の操作された免疫細胞の内因性CD7、TRACとTRBCから選択される少なくとも一つのTCR/CD3遺伝子とRFX5の発現が抑制又はサイレンシングされる。より好ましくは、本発明に記載の発現CD7を標的とするキメラ抗原受容体の操作された免疫細胞の内因性CD7、TRACとTRBCから選択される少なくとも一つのTCR/CD3遺伝子とCIITAの発現が抑制又はサイレンシングされる。一つの実施形態では、前記操作された免疫細胞におけるMHC-I系遺伝子、例えばHLA-A、HLA-B、HLA-CとB2Mの発現は、機能性である。
【0070】
一つの実施形態では、CD7、MHC-II系関連遺伝子とTCR/CD3遺伝子に加えて、本発明の操作された免疫細胞は、CD52、GR、dCKと免疫検査点遺伝子、例えばPD1、LAG3、TIM3、CTLA4、PPP2CA、PPP2CB、PTPN6、PTPN22、PDCD1、HAVCR2、BTLA、CD160、TIGIT、CD96、CRTAM、TNFRSF10B、TNFRSF10A、CASP8、CASP10、CASP3、CASP6、CASP7、FADD、FAS、TGFBRII、TGFRBRI、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMAD10、SKI、SKIL、TGIF1、IL10RA、IL10RB、HMOX2、IL6R、IL6ST、EIF2AK4、CSK、PAG1、SIT、FOXP3、PRDM1、BATF、GUCY1A2、GUCY1A3、GUCY1B2とGUCY1B3から選択される少なくとも一つの遺伝子の発現が抑制又はサイレンシングされるをさらに含んでもよい。
【0071】
遺伝子の発現を抑制するか又は遺伝子をサイレンシングさせる方法は、当業者に良く知られているものであり、例えば通過広範囲ヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEヌクレアーゼ又はCRISPR系におけるCas酵素の媒介によるDNA切断、又は通過アンチセンスオリゴヌクレオチド、RNAi、shRNAなどの技術による遺伝子の不活性化を含むが、それらに限らない。
【0072】
一つの実施形態では、本発明の操作された免疫細胞は、免疫抑制分子をさらに発見し、前記免疫抑制分子は、一つ又は複数の免疫細胞抗原結合領域と、膜貫通ドメインと、共刺激ドメインとを含む。本発明の操作された免疫細胞を被験者に投与する場合、前記免疫抑制分子は、前記被験者体内の免疫細胞(例えばNK細胞、T細胞)の外来性操作された免疫細胞に対する免疫反応を抑制又は低減させ、さらにHvGリスクを低減させることができる。一つの実施形態では、前記免疫抑制分子は、一次シグナル伝導ドメインを含まない。膜貫通ドメイン、共刺激ドメインと一次シグナル伝導ドメインは、上記のように定義される。
【0073】
一つの実施形態では、前記免疫細胞抗原結合領域は、免疫細胞抗原を標的とする抗体、免疫細胞抗原のリガンド又はその組み合わせである。好ましくは、前記抗体は、Fab、Fab’、F(ab’)、Fd、Fd′、Fv、scFv、sdFv、線形抗体、シングルドメイン抗体、ナノ抗体とダイアボディから選択される。好ましくは、前記免疫細胞抗原は、NKG2A、NKG2B、NKG2C、NKG2D、NKG2E、NKP46、LIR1、LIR2、LIR3、LIR5、LIR8、PD-1、TIGIT、TIM3、LAG3、KIR、CEACAM1、LAIR1、SIGLEC7、SIGLCE9、KLRG1、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD16a、CD16b、CD25、CD27、CD28、CD30、CD38、CD45、CD48、CD50、CD52、CD56、CD57、CD62L、CD69、CD94、CD96、CD100、CD102、CD122、CD127、CD132、CD137、CD160、CD161、CD178、CD218、CD226、CD244、CD279、CD305、CD337、CS1とそれらの組み合わせから選択される。好ましくは、前記免疫細胞抗原は、NKG2A、NKG2B、CD94、LIR1、LIR2、LIR3、SIGLEC7、SIGLCE9、KIR、CEACAM1、LAIR1、KLRG1とそれらの組み合わせから選択される。一つの実施形態では、前記免疫細胞抗原のリガンドは、HLA-E、HLA-F、HLA-G、カドヘリン(例えばE-カドヘリン、N-カドヘリン、R-カドヘリン)、コラーゲン、OCIL、シアル酸、PD-L1、PD-L2、CD155、CTLA4、CD112、CD113、Gal-9、FGL1又はその細胞外領域から選択される。好ましくは、前記免疫細胞抗原のリガンドは、HLA-E、HLA-F、HLA-G、E-カドヘリン、PD-L1、PD-L2又はその細胞外領域から選択される。一つの実施形態では、前記免疫細胞抗原結合領域は、抗NKG2A抗体、抗LIR1抗体、抗SIGLEC7抗体、抗SIGLCE9抗体、抗KIR抗体、抗KLRG1抗体、PD-L1細胞外領域、PD-L2細胞外領域、E-カドヘリン細胞外領域、HLA-E細胞外領域、HLA-G細胞外領域又はそれらの組み合わせを含む。一つの実施形態では、前記操作された免疫細胞は、第二の抗原を標的とする第二のキメラ抗原受容体をさらに含み、前記第二の抗原は、上記のように定義される。この実施形態では、前記第二のキメラ抗原受容体は、γc鎖又はその細胞内領域を含んでも又は含まなくてもよい。
【0074】
一つの実施形態では、様々な免疫細胞を提供し、各免疫細胞は、一つ又は複数のキメラ抗原受容体を発見するように改変される。例えば、いくつかの実施形態では、一つの免疫細胞を、CD7を結合する及び/又は標的とするキメラ抗原受容体(例えば、本発明に記載の抗CD7抗体のCARを含む)を発見するように改変するとともに、別の細胞を、他の抗原を結合する及び/又は標的とするキメラ抗原受容体を発見するように改変する。一つの実施形態では、免疫細胞は、多重特異的キメラ抗原受容体も発見することができ、それは、CD7を含む一つ又は複数の抗原を標的とする。例えば、このような多重特異的キメラ抗原受容体は、CD7を標的とする多重特異的抗体を含み、又は本発明に記載の抗CD7抗体と他の抗原を標的とする抗体を同時に含んでもよい。このような実施形態では、前記様々な操作された免疫細胞は、一緒に又は個別に投与されてもよい。一つの実施形態では、前記様々な免疫細胞は、同一組成物に又は異なる組成物にあってもよい。細胞の例示的な組成物は、本出願の次の章に記述された組成物を含む。
【0075】
薬物組成物
本発明は、薬物組成物をさらに提供し、それは、活性剤として本発明に記載のキメラ抗原受容体、核酸、ベクター又は操作された免疫細胞と、一つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤を含む。そのため、本発明は、前記キメラ抗原受容体、核酸、ベクター又は操作された免疫細胞の、薬物組成物又は薬物の製造における使用をさらにカバーする。
【0076】
本明細書で使用されるように、用語である「薬学的に許容される賦形剤」とは、薬理学的及び/又は生理学的に被験者と有効成分に適合する(即ち、任意の望ましくない局所的又は全身的な作用を引き起こすことなく、必要な処置効果を誘発することができる)ベクター及び/又は賦形剤であり、それは、当分野において公知である(例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences.Edited by Gennaro AR、19th ed.Pennsylvania:Mack Publishing Company、1995を参照する)。薬学的に許容される賦形剤の実例は、充填剤、結合剤、崩壊剤、コーティング剤、吸着剤、付着防止剤、流動促進剤、酸化防止剤、調味剤、着色剤、甘味剤、溶媒、共溶媒、緩衝剤、キレート剤、画面活性剤、希釈剤、潤湿剤、防腐剤、乳化剤、被覆剤、等張化剤、吸収遅延剤、安定剤と張力調節剤を含むが、それらに限らない。当業者は、本発明の所望の薬物組成物を製造するために適切な賦形剤を選択することが知られている。本発明の薬物組成物において使用される例示的な賦形剤は、塩水、緩衝塩水、グルコースと水を含む。一般的には、適切な賦形剤の選択は、特に使用される活性剤、処置される疾患と薬物組成物の所望の剤形に依存する。
【0077】
本発明に係る薬物組成物は、様々な経路での投与に適用されてもよい。一般的には、胃腸外で投与が完了する。胃腸外送達方法は、局所、動脈内、筋内、皮下、髓内、鞘内、心室内、静脈内、腹膜内、子宮内、膣内、舌下又は鼻内投与を含む。
【0078】
本発明に係る薬物組成物は、処置すべき疾患の処置及び/又は予防に適用される一つ又は複数の他の薬剤と組み合わせて投与することもできる。組み合わせに適用される薬剤の好ましい実例は、既知の抗癌薬物、例えばシスプラチン、メイタンシン誘導体、ラケルマイシン(rachelmycin)、カリケアマイシン(calicheamicin)、ドセタキセル、エトポシド、ゲムシタビン、イホスファミド、イホスファミド、イホスファミド、ミトキサントロン、ソルフィマーソディウムホトフィリンII(sorfimer sodiumphotofrin II)、テモゾロマイド、トポテカン、トリメトレキサート(trimetreate glucuronate)、オーリスタチンE(auristatin E)、ビンクリスチン及びドキソルビシン、ペプチド細胞毒素、例えばジフテリア、ジフテリア毒素、シュードモナス細菌外毒素A、DNA酵素とRNA酵素、放射性核種、例えばヨウ素131、レニウム186、インジウム111、イットリウム90、ビスマス210と213、アクチニウム225とアスタチン213、前薬、例えば抗体指向性酵素プロドラッグ、免疫増強剤、例えばIL-2、ケモカイン例えば、IL-8、血小板第4因子、メラノーマ増殖刺激タンパク質など、抗体又はその断片、例えば抗CD3抗体又はその断片、補体活性化剤、非相同タンパク質ドメイン、相同タンパク質ドメイン、ウイルス性/細菌性タンパク質ドメインとウイルス性/細菌性ペプチドを含む。なお、本発明の薬物組成物は、他の一つ又は複数の処置方法、例えば化学療法、放射線療法と組み合わせて使用することもできる。
【0079】
処置応用
本発明は、CD7の発現に関連する疾患に罹患している被験者を処置する方法をさらに提供し、この方法は、有効量の本発明に記載の免疫細胞又は薬物組成物を前記被験者に投与することを含む。そのため、本発明は、前記操作された免疫細胞及び薬物組成物の、CD7の発現に関連する疾患を処置する薬物の製造における使用をさらにカバーする。
【0080】
一つの実施形態では、有効量の本発明の免疫細胞及び/又は薬物組成物を被験者に直接投与する。
【0081】
別の実施形態では、本発明の処置方法は、エクソボ療法である。具体的には、この方法は、(a)免疫細胞を含むサンプルを提供するステップと、(b)本発明のキメラ抗原受容体及び他の外来性遺伝子(ある場合)をインビトロで前記免疫細胞に導入し、前記免疫細胞における特定の遺伝子(例えば内因性CD7、TCR/CD3遺伝子とMHC-II系関連遺伝子)の発現を抑制又はサイレンシングさせ、修飾された免疫細胞を得るステップと、(c)前記修飾された免疫細胞を必要のある被験者に投与するステップとを含む。好ましくは、ステップ(a)で提供される免疫細胞は、マクロファージ、樹状細胞、単球、T細胞、NK細胞及び/又はNKT細胞から選択されるとともに、前記免疫細胞は、当分野で知られている一般的な方法により被験者のサンプル(特に血液サンプル)から得られる。しかしながら、本発明のキメラ抗原受容体を発見でき、且つ本明細書に記載の所望の生物学的効果機能を発揮できる他の免疫細胞を使用することもできる。なお、一般的に選択される免疫細胞は、被験者の免疫系と適合であり、即ち好ましくは、前記免疫細胞は、免疫原性応答を誘発しない。例えば、「汎用受容体細胞」、即ち所望の生物学的効果機能を発揮する、一般的に適合性のある、インビトロで成長と増幅可能なリンパ球性を使用することができる。このような細胞の使用は、被験者自体のリンパ球性の取得及び/又は提供を必要としない。ステップ(c)のエクスビボ導入は、エレクトロポレーションを介して本明細書に記載の核酸又はベクターを免疫細胞に導入するか又はウイルスベクターで免疫細胞を感染させることによって実施することができ、前記ウイルスベクターは、前記に記載のレンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター又はレトロウイルスベクターである。他の考えられる方法は、トランスフェクション試剤(例えば、リポソーム)の使用又は瞬時RNAトランスフェクションを含む。
【0082】
一つの実施形態では、前記免疫細胞は、自己又は同種異系の細胞、好ましくはT細胞、マクロファージ、樹状細胞、単球、NK細胞及び/又はNKT細胞、より好ましくはT細胞、NK細胞又はNKT細胞である。
【0083】
本明細書で使用されるように、用語である「自己」とは、個体に由来の任意の材料が後でこの同じ個体に再導入されることである。
【0084】
本明細書で使用されるように、用語である「同種異系」とは、任意の材料が、この材料が導入された個体と同じ種の異なる動物又は異なる患者に由来することである。一つ又は複数の遺伝子座における遺伝子が異なる場合、二つ又は複数の固体が互いに同種であると考えられる。いくつかの場合に、同一種の各個体に由来する同種異系材料の遺伝子的な相違は、抗原相互作用を起こすのに十分である可能性がある。
【0085】
本明細書で使用されるように、用語である「被験者」は、哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類動物、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ又はウシであってもよいが、これらの実例に限らない。ヒト以外の哺乳動物は、癌動物モデルを代用する被験者として有利に用いることができる。好ましくは、前記被験者は、ヒトである。
【0086】
一つの実施形態では、CD7の発現に関連する疾患は、非固形腫瘍(例えば血液学的腫瘍、例えば白血病とリンパ腫)と固形腫瘍を含む。血液学的腫瘍は、血液又は骨髓の癌であり、急性白血病、例えば急性リンパ球性白血病(ALL、例えばT-ALL、NK-ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性骨髓性白血病と骨髄芽球性、前骨髄球性、顆粒単球型、単球性と赤白血病、慢性白血病、例えば慢性顆粒球性白血病、慢性骨髓性白血病と慢性リンパ球性白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(無痛性と高位性)、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、血管免疫芽球 T細胞リンパ腫 (AITL)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、結節外NK/T細胞リンパ腫、多発性骨髓瘤、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、骨髄異形成症候群、有毛細胞白血病、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、Tリンパ芽球性リンパ腫(T-LBL)、γδT細胞リンパ腫、初期のプロTリンパ芽球性白血病(ETP-ALL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)と骨髄異形成症候群を含むが、それらに限らない。固形腫瘍は、一般的に嚢胞又は液体領域を含まない組織の異常な腫瘤であり、それは、良性又は悪性であってもよい。異なるタイプの固形腫瘍は、それらを形成する細胞タイプで命名される(例えば肉腫、癌とリンパ腫)。固形腫瘍の実例は、繊維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫中皮瘤、膵臓癌、卵巣癌、腹膜、大網膜と腸間膜癌、咽頭癌、前立腺癌、直腸癌、腎癌、皮膚癌、小腸癌、黒色瘤、腎癌、喉頭癌、軟部癌、胃癌、精巣癌、結腸癌、食道癌、子宮頸癌、胞巣型横紋筋肉腫、膀胱癌、骨癌、脳癌、乳腺癌、肛門癌、眼癌、肝内胆管癌、関節癌、頸部癌、胆のう癌、胸膜癌、鼻癌、中耳癌、口腔癌、外陰癌、甲状腺癌と尿管癌を含むが、それらに限らない。
【0087】
一つの実施形態では、CD7の発現に関連する疾患は、好ましくは急性リンパ球性白血病(ALL、例えばT-ALL、NK-ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性顆粒球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髓性白血病、Tリンパ芽球性リンパ腫(T-LBL)、非ホジキンリンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、結節外NK/T細胞リンパ腫、γδT細胞リンパ腫と初期のプロTリンパ芽球性白血病(ETP-ALL)から選択される。
【0088】
以下は、図面を参照して実例を結び付けながら本発明を詳細に説明する。説明すべきこととして、当業者は、本発明の図面及びその実施例がただ例示の目的であり、本発明に対して任意の制限を構成しないことを理解すべきである。矛盾することなく、本出願における実施例及び実施例における特徴は、互いに組み合わせられる可能である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
図1】bbz-dKO T細胞とbbzg-dKO T細胞におけるscFvの発現レベルを示す。
図2】bbz-dKO T細胞とbbzg-dKO T細胞による標的細胞の殺傷能力を示す。
図3】bbz-dKO T細胞とbbzg-dKO T細胞を標的細胞と共培養した後のサイトカイン放出レベルを示す。
図4】bbz-tKO T細胞とbbzg-tKO T細胞におけるscFvの発現レベルを示す。
図5】bbz-tKO T細胞とbbzg-tKO T細胞による標的細胞の殺傷能力を示す。
図6】bbz-tKO T細胞とbbzg-tKO T細胞を標的細胞と共培養した後のサイトカイン放出レベルを示す。
図7】CAR7X19 T細胞による二つの標的細胞の殺傷能力を示す。
図8】CAR7x19 T細胞を二つの標的細胞と共に培養した後のサイトカイン放出レベルを示す。
図9】免疫抑制分子No.1(A)、No.2-3(B)、No.4-10(C)を発見するUNKi-T細胞によるNK細胞の殺傷効果の抑制作用である。Mock T:TRAC/B2M/RFX5の3つの遺伝子をノックアウトしたT細胞である。
図10】免疫抑制分子No.11-13(A、Mock T:B2MをノックアウトしたT細胞)とNo.14(B、Mock T:B2MをノックアウトしたT細胞)を発見するUNKi-T細胞によるNK細胞の殺傷効果の抑制作用である。
図11】bbzg-EA CAR-T細胞とbbzg-PA CAR-T細胞による標的細胞Jurkatの殺傷能力である。
図12】bbzg-EA CAR-T細胞によるNK細胞の殺傷作用の抑制効果である。
図13】bbzg-PA CAR-T細胞によるT細胞の殺傷作用の抑制効果である。
【発明を実施するための形態】
【0090】
実施例1:デュアルノックアウトCD7-UCAR T細胞の製造
以下のタンパク質のコード配列を合成し、pLVXベクター(Public Protein/Plasmid Library(PPL)、品番:PPL00157-4a):CD8αシグナルペプチド(SEQ ID NO:36)、抗CD7 scFv(SEQ ID NO:12)、CD8αヒンジ領域(SEQ ID NO:38)、CD8α膜貫通領域(SEQ ID NO:22)、4-1BB共刺激ドメイン(SEQ ID NO:28)、CD3ζ一次シグナル伝導ドメイン(SEQ ID NO:32)に順にクローンし、従来のbbz-CARプラスミドを得、そしてシークエンスにより目的配列の正しい挿入を確認した。同様な方法でbbzg-CARプラスミドを得、bbz-CARプラスミドとの唯一の相違点は、CD3ζ一次シグナル伝導ドメインと結合するγ鎖細胞内領域(SEQ ID NO:65)をさらに含み、ここで、γ鎖細胞内領域がCD3ζのC端に位置することである。
【0091】
無菌チューブに3ml Opti-MEM(Gibco、品番31985-070)を加えて上記プラスミドを希釈した後、さらにプラスミド:ウイルス包装ベクター:ウイルスエンベロープベクター=4:2:1の割合で包装ベクターpsPAX2(Addgene、品番12260)とエンベロープベクターpMD2.G(Addgene、品番12259)を加えた。そして、120ul X-treme GENE HP DNAトランスフェクション試剤(Roche、品番06366236001)を加えると、即座に均一混合し、室温で15minインキュベートし、そしてプラスミド/ベクター/トランスフェクション試剤混合物を293T細胞の培養瓶に1滴ずつ加えた。24時間と48時間にウイルスを収集し、それを統合した後、超速遠心分離(25000g、4℃、2.5時間)して濃縮bbz-CARレンチウイルスとbbzg-CARレンチウイルスを得た。
【0092】
DynaBeads CD3/CD28 CTSTM(Gibco、品番40203D)でT細胞を活性化し、37℃と5%COで1日培養した。そしてCRISPR/Cas9系を用いて野生型T細胞におけるTCR/CD3成分(具体的にはTRAC遺伝子)とCD7遺伝子をノックアウトし、TCR/CD7ダブルノックアウトのdKO-T細胞を得た。遺伝子がノックアウトされていない野生型T細胞(即ち、NT細胞)を対照とした。
【0093】
FITC Mouse Anti-Human CD3(BD Pharmingen、品番555916)抗体とPE mouse anti-human CD7(biolegend品番395604)を用いて、フローサイトメトリーによりT細胞におけるTCRとCD7の遺伝子編集効率を検出し、結果を表1に示す。
【0094】
表1.T細胞における遺伝子の発現効率
【0095】
【0096】
表1から分かるように、本発明により製造されたdKO-T細胞では、関連する遺伝子の発現は、効果的に抑制又はサイレンシングされた。
【0097】
濃縮後のレンチウイルスをdKO-T細胞に加え、二つのUCAR-T細胞(即ち、bbz-dKO T細胞とbbzg-dKO T細胞)を得た。37℃と5%COで11日培養した後、Biotin-SP(long spacer)AffiniPure Goat Anti-Mouse IgG、F(ab’)Fragment Specific(min X Hu、Bov、Hrs Sr Prot)(jackson immunoresearch、品番115-065-072)を一次抗体として用い、APC Streptavidin(BD Pharmingen、品番554067)又はPE Streptavidin(BD Pharmingen、品番554061)を二次抗体として用い、フローサイトメトリーによりUCAR T細胞上のscFvの発現レベルを検出し、結果を図1に示す。
【0098】
結果から分かるように、本実施例により製造されたUCAR-T細胞におけるscFvは、いずれも効果的に発現されることができ、γ鎖細胞内領域の加えがCAR構造の表面発現に影響しないことを示す。
【0099】
実施例2:UCAR T細胞による標的細胞の殺傷効果とサイトカイン放出
2.1 UCAR-T細胞による標的細胞の殺傷効果
CAR-T細胞による標的細胞の殺傷能力を検出するために、まず1x10/ウェルでルシフェリン遺伝子を担持したJurkat標的細胞を96ウェルプレートに敷き詰め、そして2.5:1のエフェクター標的比で二つのCAR T細胞とNT細胞を96ウェルプレートに敷き詰めて共培養し、8時間後に酵素マーカーを用いて蛍光値を測定した。計算式:(標的細胞蛍光平均値-サンプル蛍光平均値)/標的細胞蛍光平均値×100%に基づいて、殺傷効率を算出し、結果を図2に示す。
【0100】
結果から分かるように、NTと比べて、bbz-dKO T細胞とbbzg-dKO T細胞は、標的細胞に対していずれも特異的殺傷があるとともに、本発明のbbzg-dKO T細胞による標的細胞の殺傷効果は、従来のbbz-dKO T細胞よりも有意に高かった。
【0101】
2.2 UCAR-T細胞のサイトカイン放出
T細胞が標的細胞を殺傷すると、標的細胞数が減少するとともにサイトカインIL2とIFN-γなどが放出された。以下のステップに従って、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を用いて本発明のUCAR T細胞が標的細胞を殺傷する時のサイトカインIL2の放出レベルを測定した。
【0102】
(1)細胞共培養上清の収集
1x10/ウェルでJurkat標的細胞を96ウェルプレートに敷き詰め、そして1:1の割合で二つのUCAR T細胞とNT細胞(陰性対照)をそれぞれ標的細胞と共培養し、8時間後に細胞共培養上清を収集した。
【0103】
(2)ELISAによる上清におけるIL2分泌量の検出
捕捉抗体Purified anti-human IL-2 Antibody(Biolegend、品番500302)を用いて96ウェルプレートで4℃インキュベートして一晩を過ごし、そして抗体溶液を除去し、2%BSA(sigma、品番V900933-1kg)含有PBST(0.1%トウェインを含む1XPBS)溶液250μLを加え、37℃で2時間インキュベートした。そしてPBST 250μL(0.1%トウェインを含む1XPBS)でプレートを3回洗浄した。各ウェルに50μLの細胞共培養上清又は標準品を加え、37℃で1時間インキュベートし、そしてPBST 250μL(0.1%トウェインを含む1XPBS)でプレートを3回洗浄した。そして各ウェルにそれぞれ検出抗体Anti-IL-2抗体50μLを加え、37℃で1時間インキュベートした後、PBST 250μL(0.1%トウェインを含む1XPBS)でプレートを3回洗浄した。さらにHRP Streptavidin(Biolegend、品番405210)を加え、37℃で30分間インキュベートした後、上清を捨て、PBST 250μL(0.1%トウェインを含む1XPBS)を加え、5回洗浄した。各ウェルにTMB基質溶液を50μL加えた。反応を室温で暗所で30分間発生させ、その後各ウェルに1mol/L HSOを50μL加えて反応を停止させた。反応停止から30分間、酵素マーカーを用いて450nmで吸光度を検出し、検量線(根据標準品の読み取り値と濃度からプロット)からサイトカインの含有量を計算し、結果を図3に示す。
【0104】
結果から分かるように、bbz-dKO T細胞とbbzg-dKO T細胞による標的細胞の因子放出は、いずれも対照NT群よりも有意に高く、且つbbzg-dKO T細胞の放出レベルは、bbz-dKO T細胞よりも有意に高かった。
【0105】
実施例3:トリノックアウトのCD7-UCAR T細胞の製造とその機能の検証
DynaBeads CD3/CD28 CTSTM(Gibco、品番40203D)でT細胞を活性化し、37℃と5%COで1日培養した。そしてCRISPR/Cas9系を用いて野生型T細胞におけるTCR/CD3成分(具体的にはTRAC遺伝子)、CD7遺伝子とMHC-II系関連遺伝子(具体的にはRFX5)をノックアウトし、TCR/CD7/RFX5トリノックアウトのtKO-T細胞を得た。遺伝子がノックアウトされていない野生型T細胞(即ち、NT細胞)を対照とした。
【0106】
FITC Mouse Anti-Human CD3(BD Pharmingen、品番555916)抗体、PE mouse anti-human CD7(biolegend品番395604)とAPC anti-human DR、DP、DQ(biolegend、品番361714)抗体を用いて、フローサイトメトリーによりT細胞におけるTCR/CD7/RFX5の遺伝子編集効率を検出し、結果を表2に示す。
【0107】
表2.T細胞における遺伝子の発現効率
【0108】
【0109】
表2から分かるように、本発明により製造されたtKO-T細胞では関連する遺伝子の発現は、効果的に抑制又はサイレンシングされた。
【0110】
実施例1により製造されたbbz-CARレンチウイルスとbbzg-CARレンチウイルスをtKO-T細胞に加え、二つのUCAR-T細胞(即ち、bbz-tKO T細胞とbbzg-tKO T細胞)を得、フローサイトメトリーによりUCAR T細胞上のscFvの発現レベルを検出し、結果を図4に示す。結果から分かるように、本実施例により製造されたUCAR T細胞におけるscFvは、いずれも効果的に発現されることができる。
【0111】
実施例2に記載の方法に従って、UCAR-T細胞による標的細胞の特異的殺傷活性(エフェクター標的比が5:1、2.5:1と1.25:1である)とサイトカインIL-2の放出レベルを検出し、結果をそれぞれ図5図6に示す。bbz-tKO T細胞とbbzg-tKO T細胞による標的細胞の特異的殺傷とサイトカイン放出は、いずれも対照NT群よりも有意に高く、且つbbzg-tKO T細胞の放出レベルは、bbz-tKO T細胞よりも高かった。
【0112】
実施例4:二標的UCAR-T細胞の製造とその機能の検証
以下のタンパク質をコードする配列を合成し、pLVXベクター(Public Protein/Plasmid Library(PPL)、品番:PPL00157-4a):CD8αシグナルペプチド(SEQ ID NO:36)、抗CD7scFv(SEQ ID NO:12)、結合ペプチド(SEQ ID NO:67)、抗CD19scFv(SEQ ID NO:58)、CD8αヒンジ領域(SEQ ID NO:38)、CD8α膜貫通領域(SEQ ID NO:22)、4-1BB細胞内領域(SEQ ID NO:28)、CD3ζ細胞内シグナル伝導ドメイン(SEQ ID NO:32)とγ鎖細胞内領域(SEQ ID NO:65)に順にクローンし、そしてシークエンスにより目的配列の正しい挿入を確認した。
【0113】
実施例1の方法に従って上記プラスミドベクターをレンチウイルスとしてパッケージングし、tkO-T細胞に感染させ、CAR7X19T細胞を得た。修飾されていない野生型T細胞を陰性対照(NT)とした。
【0114】
実施例2に記載の方法に従って、CAR7X19 T細胞による標的細胞(Nalm6とJurkat)の殺傷機能を検出し、結果を図7に示すように、Purified anti-human IFN-γAntibody(Biolegend、品番506502)でサイトカインIFN-γの放出レベルを検出し、結果を図8に示す。
【0115】
結果から分かるように、NT細胞と比べて、CAR7X19 T細胞は、Nalm6とJurkatの二つの標的細胞に対していずれも有意に上昇した特異的殺傷活性とサイトカイン放出レベルがあった。
【0116】
実施例5:免疫抑制分子によるNK細胞の殺傷作用の抑制効果
表3に示すように免疫抑制分子No.1-14を合成し、実施例1に記載の方法に従って、pLVXベクタープラスミド(Public Protein/Plasmid Library(PPL)、品番:PPL00157-4a)にクローンし、そしてレンチウイルスにトランスフェクションし、活性化されたT細胞に感染させ、免疫抑制分子を発現するT細胞を得た。CRISPR系を用いて免疫抑制分子No.1-10を発現する細胞におけるTCR/CD3成分(具体的にはTRAC遺伝子)とMHC関連遺伝子(具体的にはB2MとRFX5)をノックアウトし、免疫抑制分子No.11-14を発現する細胞におけるB2M遺伝子をノックアウトし、フローサイトメトリーにより各遺伝子が効果的にノックアウトされたことを確認し、UNKi-T細胞を得た。

【0117】
表3.免疫抑制分子構造
【0118】
ここで、抗KIR scFvのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:71に示し、抗LIR1scFv-1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:72に示し、抗LIR1scFv-2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:73に示し、Eカドヘリン細胞外領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:74に示し、提示ペプチドのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:75に示し、突然変異型B2Mの核酸配列は、SEQ ID NO:76に示し、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:77に示し、HLA-E細胞外領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:78に示し、HLA-Gのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:79に示し、抗NKG2A scFvのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:80に示し、抗SIGLEC7scFvのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:81に示し、抗SIGLEC7/SIGLEC9scFvのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:82に示し、抗KLRG1scFvのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:83に示し、PDL1シグナルペプチドのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:68に示し、PDL1細胞外領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:69に示し、PDL1膜貫通領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:70に示し、IgG4ヒンジ領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:42に示し、CD28ヒンジ領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:40に示し、CD8α膜貫通領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:22に示し、CD28膜貫通領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:24に示し、CD28共刺激ドメインのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:26に示し、B2Mシグナルペプチドのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:34に示し、CD8αシグナルペプチドのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:36に示す。
【0119】
そして以下の方法に従って免疫抑制分子No.1-13を発現するUNKi-T細胞によるNK細胞の殺傷作用の抑制効果を検出し、即ち、Far-Red(invitrogen、品番C34564)で本発明により製造されたUNKi-T細胞とMock-T細胞を標識した。そして1x10つの細胞/ウェルの濃度で標識されたUNKi-T細胞とNT細胞を96ウェルプレートに敷き詰め、2:1のエフェクター標的比でNK92細胞(免疫抑制分子No.3-10を発現するためUNKi-T細胞とMock T細胞)又はNK92-KLRG1細胞(免疫抑制分子No.1-2と11-13を発現するためUNKi-T細胞で、KLRG1遺伝子をNK92細胞に導入することで製造される)を加えて共培養した。16-18時間後に、フローサイトメトリーにより培養物におけるT細胞の割合を検出し、さらにNK細胞によるT細胞の殺傷効果を計算し、結果を図9図10Aに示す。
【0120】
以下の方法で免疫抑制分子No.14を発見するT細胞によるNK細胞の殺傷作用の抑制効果を検出し、即ち、T細胞を培養してマイトマイシンCで処理するとともに、二つの異体由来のPBMC(donor1とdonor2)をFar-Redで標識した後、T細胞:PBMC=1:2の割合で共培養した。2-3日ごとに半換液処理を行った。8d後に細胞計数してPE anti-human CD3(メーカbiolegend、品番:317308)とFITC anti-human CD56(メーカ:biolegend、品番:362546)を用いて染色し、そしてフローサイトメトリーによりNK細胞群の割合を検出した。細胞総量*NK細胞群割合に基づいてNK細胞数を計算し、結果を図10Bに示す。
【0121】
図9図10から分かるように、免疫抑制分子を発現しないT細胞と比べて、免疫抑制分子No.1-14を発現するUNKi-T細胞は、いずれもNK細胞によるT細胞の殺傷作用を著しく低下させることができる。そして、免疫細胞抗原結合領域と膜貫通ドメイン(即ち、共刺激ドメインを含まない)のみを発見するT細胞(G0、E0、Ecad0)と比べて、共刺激ドメインを加えることにより、T細胞によるNK細胞の殺傷抑制(G28、E28、ECad28、図9C参照)をさらに著しく補強することができる。そのため、上記免疫抑制分子は、NK細胞によるUNKi-T細胞の殺傷作用を著しく低下させることができ、それによってHvGDリスクを効果的に低減させることができる。
【0122】
実施例6:二つの免疫抑制分子を発現するCAR-T細胞の殺傷活性及びそれによる免疫細胞の殺傷作用の抑制効果
実施例1で製造されたbbzg-CARプラスミドには、表1に示す免疫抑制分子No.5と10(2Aペプチドを介して連結)がさらに含まれ、bbzg-EAプラスミドを得、又は、免疫抑制分子No.14と10(2Aペプチドを介して連結)をさらに含み、bbzg-PAプラスミドを得た。実施例1に記載の方法に従って、上記二つプラスミドをウイルスに封入し、TCR/CD7/CIITA三遺伝子をノックアウトしたT細胞にトランスフェクションし、bbzg-EAとbbzg-PAを発見する汎用型CAR-T細胞を得た。TCR/CD7/CIITA三遺伝子をノックアウトしたT細胞を対照(Mock T細胞)とした。
【0123】
実施例2に記載の方法に従って上記汎用型CAR-T細胞によるJurkat標的細胞の殺傷効果を検出し、結果を図11に示す。結果から分かるように、様々なエフェクター標的比で、bbzg-EAとbbzg-PAを発現する汎用型CAR-T細胞は、Jurkat標的細胞に対していずれも強い殺傷効果を示す。
【0124】
以下の方法に従ってbbzg-EAを発見する上記汎用型CAR-T細胞によるNK細胞の殺傷作用の抑制効果を検出し、即ち、Far-Red(invitrogen、品番C34564)で本発明により製造されたbbzg-EA-CAR T細胞とNT細胞を標識した。そして1x10つの細胞/ウェルの濃度で標識されたbbzg-EA-CAR T細胞とNT細胞を96ウェルプレートに敷き詰め、4:1、2:1又は1:1のエフェクター標的比でNK92細胞を加えて共培養した。16-18時間後、フローサイトメトリーにより培養物におけるT細胞の割合を検出し、さらにNK細胞によるT細胞の殺傷率を計算し、結果を図12に示す。結果から分かるように、異なるエフェクター標的比で、この汎用型CAR-T細胞は、いずれもNK細胞による殺傷効果を著しく抑制することができる。
【0125】
なお、以下の方法に従ってbbzg-PAを発見する上記汎用型CAR-T細胞によるT細胞の殺傷作用の抑制効果を検出し、即ちCAR-T細胞とNT細胞を培養してマイトマイシンCで処理するとともに、三つの異体由来のPBMC(donor1、donor2とdonor3)をFar-Redで標識した後、T細胞:PBMC=1:2の割合で共培養した。2-3日ごとに半換液処理を行った。8d後に細胞計数し、PE anti-human CD8(メーカbiolegend、品番:344706)で染色し、そしてフローサイトメトリーによりT細胞群の割合を検出した。細胞総量*T細胞群の割合からT細胞数を計算した。結果を図13に示す。結果から分かるように、二つの免疫抑制分子の組み合わせを発見する汎用型CAR-T細胞は、T細胞の殺傷作用を著しく抑制することができる。
【0126】
以上をまとめると、免疫抑制分子は、CAR-T細胞の殺傷活性に影響しないとともに、免疫細胞(例えばNK細胞、T細胞など)による殺傷作用を著しく抑制することができる。
【0127】
説明すべきこととして、上位機は、本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を制限するものではなく、当業者にとって、本発明は、様々な変更と変化が可能である。当業者が理解するように、本発明の精神と原則の範囲内において行われた任意の修正、同等の置き換え、改良などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
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【国際調査報告】