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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】浣腸製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/08 20060101AFI20240201BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20240201BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240201BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20240201BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240201BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240201BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240201BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240201BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240201BHJP
   A61M 3/02 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
A61K9/08
A61K31/711
A61P1/00
A61K31/7125
A61P1/04
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/14
C12N15/11 Z ZNA
A61M3/02 100
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546396
(86)(22)【出願日】2022-09-09
(85)【翻訳文提出日】2023-07-31
(86)【国際出願番号】 EP2022075174
(87)【国際公開番号】W WO2023036961
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】21275126.7
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520430033
【氏名又は名称】インデックス・ファーマシューティカルズ・アクチエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】コロナ、フランツィスカ ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァナー、ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ダテ、ブリッタ
(72)【発明者】
【氏名】サンドウォール、ペルニラ ヘレナ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンソン、クリスティーヌ ディーテリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】アルハデフ、ポール
【テーマコード(参考)】
4C066
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C066AA02
4C066BB01
4C066DD09
4C066EE03
4C066FF02
4C076AA12
4C076BB29
4C076CC16
4C076DD26Z
4C076DD43Z
4C076DD45R
4C076FF39
4C076FF61
4C076FF65
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA10
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA60
4C086NA03
4C086NA10
4C086ZA66
(57)【要約】
本発明は、(i)配列5'-GGAACAGTTCGTCCATGGC-3'(配列番号2)、(ii)少なくとも1つの保存剤及び(iii)クエン酸及びリン酸塩を含む緩衝液を含有する、直腸投与に適した水性製剤を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)配列5'-GGAACAGTTCGTCCATGGC-3'(配列番号2)を含むオリゴヌクレオチド、(ii)少なくとも1つの保存剤、及び(iii)クエン酸及びリン酸塩を含む緩衝液を含有する、直腸投与に適した水性製剤。
【請求項2】
少なくとも1つの保存剤が1以上のパラベン類を含み、好ましくは、該少なくとも1つの保存剤が、メチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
製剤が6.0から8.0の範囲のpHを有し、好ましくは、製剤が6.5から8.0の範囲のpHを有する、先行する請求項のいずれかに記載の製剤。
【請求項4】
リン酸塩がリン酸水素二ナトリウムである、先行する請求項のいずれかに記載の製剤。
【請求項5】
オリゴヌクレオチドが配列5'-GGAACAGTTCGTCCATGGC-3'(配列番号2)を有し、CGジヌクレオチドがメチル化されていない、好ましくは、該オリゴヌクレオチドが配列5'- G*G*A*ACAGTTCGTCCAT*G*G*C-3'(配列番号1)を有し、CGジヌクレオチドがメチル化されていない、より好ましくは、該オリゴヌクレオチドがコビトリモドである、先行する請求項のいずれかに記載の製剤。
【請求項6】
オリゴヌクレオチドが0.5から15mg/mLの濃度で製剤中に存在する、好ましくは、該オリゴヌクレオチドが2.5から12.5mg/mLの濃度で製剤中に存在する、先行する請求項のいずれかに記載の製剤。
【請求項7】
自己投与に適した、予め充填された浣腸であって、
(a)容器;及び該容器内に
(b)請求項1から6のいずれか一項で定義された製剤
を含む、予め充填された浣腸。
【請求項8】
容器が絞れるビンを含み、好ましくは、該絞れるビンがぺしゃんこになる形状のビンである、請求項7に記載の予め充填された浣腸。
【請求項9】
ビンがポリエチレンから形成される、好ましくは、ビンが低密度のポリエチレンから形成される、請求項8に記載の予め充填された浣腸。
【請求項10】
容器が製剤を投薬するのに適したアプリケーターをさらに含み、好ましくは、該アプリケーターが直腸への挿入に適したチップを含む、請求項7から9のいずれか一項に記載の予め充填された浣腸。
【請求項11】
アプリケーターがポリエチレンから形成される、好ましくは、アプリケーターが低密度のポリエチレンから形成される、請求項10に記載の予め充填された浣腸。
【請求項12】
容器内の製剤量が20から60mLである、好ましくは、容器内の製剤量が約50mLである、請求項7から11のいずれか一項に記載の予め充填された浣腸。
【請求項13】
1以上の、請求項7から12のいずれか一項で定義された予め充填された浣腸を含むパック。
【請求項14】
炎症性腸疾患の治療における使用のための、請求項1から6のいずれか一項に記載の製剤であって、好ましくは、炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎又はクローン病である、製剤。
【請求項15】
製剤が、請求項7から12のいずれか一項で定義された予め充填された浣腸を用いて直腸投与される、好ましくは、該製剤が、請求項7から12のいずれか一項で定義された予め充填された浣腸を用いて自己投与される、請求項14に記載の使用のための製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直腸投与に適した製剤に関する。さらに、該発明は該製剤を含有する予め充填された浣腸、並びに炎症性腸疾患を治療するための該製剤及び浣腸の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
潰瘍性大腸炎(UC)は、直腸及び結腸粘膜の慢性炎症によって特徴づけられる疾患であり、第一段階において最も内側の膜を侵す。該疾患は再発性で、病理、症状及び治療において異なる活動期及び休止期の両方の段階を有する。UCの根本原因は理解されておらず、何が該疾患が活動型と休止型との間で繰り返される引き金を弾くのかも不明である(Kobayashi et al. "Ulcerative colitis." Nat Rev Dis Primers 2020, 6(1): 74; Irvine, E. J. (2008) Inflamm Bowel Dis 14(4): 554-565)。活動期のUCの症状としては、出血を伴う進行性の軟便や腸の運動頻度の増加が挙げられる。活発な粘膜炎症は内視鏡により診断される(Harbord M., et al. "Third European evidence-based consensus on diagnosis and management of ulcerative colitis. part 2: current management." J Crohns Colitis 2017, 11(7): 769-7842017)。
【0003】
便は膿、粘液及び血液を含み、しばしば排泄の切迫を伴う腹部痙攣(テネスムス)を伴う。下痢は潜行性に発症するか、あるいは、より稀にきわめて急に始まり得る。重症例では、症状として、発熱や一般的な倦怠感が挙げられ得る。重症段階では、腹部圧痛、頻脈、発熱及び腸穿孔の危険を伴う腸壁の深刻な炎症を発症し得る。さらに、UC患者は、関節痛及び関節炎、結節性紅斑、壊疽性膿皮症、及び眼における炎症等の、追加の腸に関連する兆候に苦しむ場合もある。寛解又は休止期のUCの場合、患者は通常腸の症状がない。
【0004】
粘膜の炎症及び損傷の程度はUC患者によって異なる。直腸のみを侵すUCを潰瘍性直腸炎と呼ぶ。炎症性変化が脾臓の湾曲に至るまでの結腸の左側に存在する場合、その状態を左側大腸炎と呼ぶ。広範囲に及ぶUCにおいては横行結腸も侵され、結腸全体にわたる疾患を全結腸炎という。
【0005】
活発な粘膜炎症は内視鏡により診断され、血管パターン形成の消失、浮腫、点状出血、突発性出血及び線維性滲出液により特徴づけられる。内視鏡像は、直腸に始まり、結腸へと近位に異なる程度に伸びる連続した炎症像である。内視鏡で得られ、組織学的検査に供される生検は、状態を診断するのに役立つ。クロストリジウム・ディフィシル、カンピロバクタ―、サルモネラ菌及び赤痢菌を含む感染原因菌はUCに似た症状を呈し、便培養により排除され得る。
【0006】
UCの医学的管理は、活動期の疾患の治療と寛解の維持とに分けられる。
【0007】
UCの医学的管理は、活動期の疾患の治療と寛解の維持とに分けられる。活動期のUC患者の治療は、炎症を軽減し、結腸の治癒と粘膜の快復を促進することを目的とする。たいていの場合、該疾患は、SP、5-ASA((Sutherland et al. (1987) Gastroenterology 92: 1894-1898)及びGCS(Domenech et al (2014). Dig Dis 32(4): 320-327))を含む従来の薬剤によって制御され得る。直腸や直腸-S状結腸領域に限局される左側疾患は、しばしば5-ASA及びGCSの直腸用製剤により治療される。範囲がより近位及び/又は症状がより重篤な場合、経口のGCSもまた必要である。GCSは、長期使用に固有のかなりの副作用(免疫不全、副腎不全、高血糖、視床下部・下垂体・副腎軸の抑制、ステロイド誘発性骨粗鬆症:骨密度の低下、体重増加、筋破壊等)とステロイド依存性疾患の発症の可能性があるので、一般に再発した該疾患を治療するのに用いられ、寛解の維持には推奨されない。グルココルチコイド薬は非選択的に作用するので、長期においては、多くの健全な同化作用を損なうかもしれない。結果として、全身性のGCSによる維持治療は推奨されない(Prantera, C. and S. Marconi (2013) Therap Adv Gastroenterol 6(2): 137-156)。全身性の活性を制限し、GCSの有害事象を低減する目的で、GCSの新規製剤が開発されている。GCSが無効になり、重度又は中等度のUC炎症に苦しむ患者に対しては、アザチオプリン/6-メルカプトプリン及びシクロスポリン等の免疫調節剤が使用されることもある。しかし、免疫調節剤は遅効性であり、これらの患者における寛解の誘導はしばしば一時的である(Ford et al. (2011) Am J Gastroenterol 106(4): 630-642)。
【0008】
UCの治療選択は近年急速に拡大しており、従前の薬剤選択に加えて、現在、複数の生物薬と小分子薬であるトファシチニブ及びゼポシア/オザニモドとが挙げられる(Ford et al. (2011) Am J Gastroenterol 106(4): 630-642; Fausel, R. and A. Afzali (2015) Ther Clin Risk Manag 11: 63-73; Roda et al. (2016) Clin Transl Gastroenterol 7: e135; Fiorino et al. (2017) Expert Opin Drug Saf 16(4): 437-443;Troncone and Monteleone (2017) Expert Opin Drug Saf 16(7): 779-789; Duijvestein et al. (2018) Curr Treat Options Gastroenterol 16(1): 129-146; Verstockt et al. (2018) J Gastroenterol 53(5): 585-590; Troncone et al. (2020) Clin Exp Gastroenterol 13: 131-139; 及びand also recent results for Zeposia/ozanimod at https://www.healthline.com/health-news/fda-approves-new-drug-for-ulcerative-colitis#Clinical-trial-resultsにおけるゼポシア/オザニモドについての最近の結果も参照のこと)。
【0009】
中等症ないし重症UCの治療に関し、現在承認されている3つのTNFα阻害薬は、インフリキシマブ、アダリムマブ及びゴリムマブである。これらの薬剤はTNFαに結合してその活性を中和し、その受容体への結合を妨げる。インフリキシマブとアダリムマブはまた、活性化したT細胞やマクロファージのアポトーシスを誘導することが示されている、3つのTNFα阻害薬はいずれも、それらの使用に伴う潜在的なリスクを抱えており、制御不能の感染、進行した心不全、神経学的状態を有する患者において、また、がんの既往歴のある患者においても腫瘍の増殖を加速させる潜在的リスクのために避けるべきである。深刻な感染は、抗TNFα抗体で治療した患者の2%-4%において起こる(Fausel, R. and A. Afzali (2015) Ther Clin Risk Manag 11: 63-73)。抗TNFα療法の他の可能性のある副作用としては、アナフィラキシー、痙攣及び低血圧を含む急性かつ重篤な注入反応が挙げられる。注入部位反応や稀なアナフィラキシー反応はまた、皮下投与された抗TNFα薬でも起こり得る。他の可能性のある副作用としては、好中球減少、肝毒性、血清病、白血球破砕性血管炎、乾癬様皮疹を含む皮疹及び自己免疫の誘導を挙げることができる。インフリキシマブを投与された患者の約50%が2年後に抗体を生じる(Fausel, R. and A. Afzali (2015) Ther Clin Risk Manag 11: 63-73)。
【0010】
3つの抗TNα薬はすべて、ほとんど同等の安全性プロファイルで、UC患者において臨床的応答及び寛解を誘導しかつ維持するのに有効であることが示されている。選択される抗TNFα薬に関係なく、アザチオプリンとの併用療法は、抗TNFα薬単独療法よりも寛解の誘導に関しておそらくより有効であろう。しかし、抗TNFα薬を投与される患者のうち誘導投与に反応しない者がなおも50%にまで達し、さらに多くの患者が時間ととも抗TNFα薬に反応しなくなる(Fausel, R. and A. Afzali (2015) Ther Clin Risk Manag 11: 63-73)。2014年に、α4β7インテグリン阻害薬であるベドリズマブがUCの治療に関して承認を受けた。GEMINI 1試験において、ベドリズマブは、臨床的応答、臨床的寛解及び粘膜治癒の誘導及び維持に関し、プラセボよりも有効であることがわかった(Feagan et al. (2013) N Engl J Med 369(8): 699-710.)。理論的には、消化管へホーミングするリンパ球上というα4β7インテグリンのユニークな配置のために、全身に作用する薬剤と比較して、ベドリズマブは全身性の感染やがんのリスクが低いだろうと期待され得る。GEMINI 1試験において、有害事象の観点からは研究群間で重要な差異は認められなかった。
【0011】
トファシチニブは経口の小分子であり、ATPと競合する、JAK-1及びJAK-3の可逆的阻害薬かつ高濃度ではTYK2及びJAK-2経路の阻害薬でもある。興味深いことに、トファシチニブは、経口摂取の後30分でピーク濃度に達するという時間で急速に吸収されるため、IBDに使用される大多数の他の薬物よりも、患者にとってより苦痛のない投与経路と素早い効果の発現が可能となる(D'Amico et al. (2019) Therap Adv Gastroenterol 12: 1756284819848631)。中等症ないし重症UCを有する成人に対するトファシチニブの投与計画は、少なくとも8週間の10mg BIDの後、5mg BID又は10mg BIDである。この投与計画は、OCTAVE臨床開発プログラムからの3つの極めて重要な第III相研究からのデータに基づいている。3つの研究はすべて、それらのそれぞれの主要評価項目を達成し、誘導研究における第8週及び維持研究における第52週において、寛解した患者の割合は、プラセボと比較してトファシチニブで有意に大きかった。
【0012】
しかし、トファシチニブのUC臨床プログラムにおいて観察された有害事象として、帯状疱疹を含む重篤な感染、日和見感染、がん(非メラノーマ皮膚がん及びリンパ増殖性疾患を含む)、胃腸穿孔及び検査所見の異常が挙げられた。EMAとFDAは、トファシチニブが、既にハイリスクである患者において、肺及び深部静脈における血栓のリスクを増大させ得ると結論づけ、血栓のリスクの高いすべての患者においてトファシチニブを注意して使用すべきであると推奨した(FDA (2019). Safety trial finds risk of blood clots in the lungs and death with higher dose of tofacitinib (Xeljanz, Xeljanz XR) in rheumatoid arthritis patients; FDA to investigate, U.S. Food and Drug Administration; EMA confirms Xeljanz to be used with caution in patients at high risk of blood clots, European Medicines Agency. EMA/92517/2020)。
【0013】
ゼポシア又はオザニモドは、「小分子」クラスの医薬に属するスフィンゴシン1リン酸(S1P)受容体調節薬である。オザニモドはS1P受容体1及び5に強固かつ特異的に結合する。これらの受容体に結合することによって、オザニモドは、リンパ球がリンパ節からエスケープする能力を遮断し、それによってそれらをリンパ節に捕捉し、血液、中枢神経系及び炎症組織における数を低減させると考えられている。FDAは最近、成人における中等症ないし重症の活動期の潰瘍性大腸炎の治療についてオザニモドを承認した。オザニモドはリンパ球の機能を調節するので、感染のリスクを増大させ得る。最大の副作用は、最近6カ月のうちに心筋梗塞を起こしたか、あるいは不安定狭心症もしくは心不全のような他の心臓の問題を有する特定の患者に生じる。抗腫瘍、非コルチコステロイド免疫抑制又は免疫調節療法とオザニモドとの併用もまた、免疫抑制のリスクを増大させることが予測され、これらの治療は禁忌となり得る。生弱毒化ワクチンの使用もまたオザニモドによる治療の間及び治療後3カ月間は避けるべきである。
【0014】
ヒトサイトカインIL12及びIL23の共有p40サブユニットに特異的に結合する完全ヒトIgG1κモノクローナル抗体であるウステキヌマブは、成人における中等症ないし重症の活動期のUCに対して、ごく最近承認された治療である。
【0015】
第III相UNIFIプログラムにおいて、中等症ないし重症の活動期のUCを有する患者に誘導用量のウステキヌマブ(130mg又は約6mg/kgの体重幅に基づく用量)を静脈内又はプラセボ投与し、第8週で臨床的応答を示す患者を再ランダム化して90mgのウステキヌマブ(8又は12週毎)を皮下に維持注射又はプラセボ投与した。第8週及び第44週で臨床的寛解にある患者の割合は、プラセボよりもウステキヌマブによる治療を受けた患者で有意に高かった(Sands et al. (2019) N Engl J Med 381(13): 1201-1214)。
【0016】
ウステキヌマブの最もよくある副作用としては、上気道感染、鼻咽頭炎、眩暈、頭痛、口腔咽頭痛、下痢、吐き気、嘔吐、掻痒、背痛、筋肉痛、関節痛、倦怠感、注射部位紅斑及び注射部位の痛みが挙げられる。
【0017】
TNFα阻害薬及びベドリズマブは広く使用され、UCにおけるサードライン治療と位置付けられているが、新規なJAK並びにIL12及びIL23に向けた治療がUCの治療計画においてどのように位置づけられるかはまだ分からない。
【0018】
上記の進歩した治療にもかかわらず、慢性的に活動期の疾患を有するUC患者は、依然として重大な医療的課題を課す難治性となるリスクを負い、残された方策は結腸切除のみである。5年及び10年の結腸切除の累積リスクは左側大腸炎において10ないし15%である(Fumery et al. (2018) Clin Gastroenterol Hepatol., 16(3): 343-356)。全結腸切除は重症UCにおいて治癒の可能性のある選択であるが、pouch非機能、骨盤敗血症、女性不妊及び夜間便失禁等の合併症のリスクを必然的に伴う人生を一変させる手術である。それゆえ、手術は通常、重篤な難治性疾患、手術の緊急性を有する患者、あるいは結腸直腸の異形成又はがんの患者のために留保される(Hoivik et al. (2012) Inflamm Bowel Dis 18(8): 1540-1549)。
【0019】
新たに出現したUCのサードライン治療がコビトリモド(カッパプロクト/DIMS0150)であり、修飾一本鎖デオキシリボ核酸(DNA)をベースにした長さ19塩基の合成オリゴヌクレオチドである。コビトリモドは配列5'- G*G*A*ACAGTTCGTCCAT*G*G*C-3'(配列番号1)を有し、ここでCG字ヌクレオチドはメチル化されていない。星印はホスホロチオエート結合を示す。
【0020】
コビトリモドは、免疫細胞内又は上皮細胞表面上に存在するToll様受容体9(TLR9)を標的化することによって、免疫調節剤として機能する。これらの免疫細胞(即ち、B細胞及び形質細胞様樹状細胞(pDC))及び上皮細胞は、管腔の結腸及び鼻粘膜に非常に豊富に存在する。免疫系はUCの変化の鍵となるメディエーターである。UC患者の結腸及び直腸の粘膜は、慢性的に炎症を起こしており、活性な免疫細胞を含む。コビトリモドは炎症領域に局所投与することができ、それによって多数の目的とする標的細胞に該薬物が近接に接触し、該薬物がTLR9発現細胞に領域リッチに到達するのを確実にする。コビトリモドによるこれらの細胞の活性化は、1型インターフェロンやインターロイキン10(IL-10)等の、古典的な抗炎症性サイトカインであり、コビトリモドの臨床的効果に関して重要であると信じられている種々のサイトカインを誘導する。
【0021】
コビトリモドの臨床的効能は、30mgのコビトリモドを4週感覚で患者に投与した「COLLECT」(CSUC-01/10)臨床試験において実証され、また、異なる投与計画を試験した「CONDUCT」(CSUC-01/16)臨床試験においても実証された。「COLLECT」試験の詳細は、Journal of Crohns and Colitis(Atreya et al. J Crohns Colitis, 2016 May 20)において公表され、「CONDUCT」臨床試験の詳細は、The Lancet Gastroenterology and Hepatology(Atreya et al 2020. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2020 Dec;5(12):1063-1075)においいて公表されている。全体として、コビトリモドに関するデータは慢性UC患者に対する肯定的な損益評価を支持している。コビトリモドは安全で忍容性がよく、慢性UC患者における臨床的応答及び寛解の誘導、並びに難治性の中等症ないし重症の慢性UC患者における症状的及び内視鏡的寛解の誘導に有効であることが示されている。
【0022】
比較的低い(30mg)用量のコビトリモドの投与を含むCOLLECT研究において、コビトリモドの局所投与がスプレーカテーテル装置を用いて実施され、内視鏡検査の間投与された。これは、必然的に医療専門家により実施される侵襲性の医療手順である。さらに、コビトリモドの患者への局所投与の前に、各患者の結腸洗浄を行い、糞便物を除去した。そうすることで、コビトリモドが結腸内の腸管上皮細胞に到達するのが可能になり、内視鏡専門医が結腸粘膜を観察することが可能となった。種々の結腸洗浄の方法が当該技術分野で知られている。例えば、内視鏡検査に先立って、患者は、内視鏡検査の前日から開始して4Lに達するまで液体を飲む必要があり得る。活性な洗浄剤に加えて、腸管前処置は制限食を患者が食すことからなり得る。そのような食事は種子やコーンを避けることを含み得、内視鏡検査前の数日間推奨され得る。通常、該手順の前日には清澄液のみが許される。結腸洗浄に利用可能な薬物、例えば、伝統的なまずい腸洗浄液に代替するようデザインされた約1Lの液状薬物であるPlenvuもある。まとめると、選択される緩下剤によって、患者は通常、内視鏡検査に先立って約1-4Lの液体を飲む必要がある。これは不快な手順であり、患者にとって破壊的で不便である。
【0023】
コビトリモド自体は、無菌的に充填されたガラスバイアル中のコビトリモド水溶液として提供された。患者への投与は、該溶液の希釈やスプレーカテーテルを介した投与に適したシリンジへの移動等のいくつかの前処置を必要とするので、医療職員により行われた。
【0024】
上述のように、活動性の疾患段階にあり、既知の治療に対して難治性である慢性の潰瘍性大腸炎に罹患した患者は、重大な医療的課題を引き起こし、しばしば残された方策は結腸切除のみである。こうした理由で、患者は、そのような侵襲的な手順に関連する不便や不快さにもかかわらず、糞便物除去のための結腸洗浄とスプレーカテーテルを介した局所投与の両方を必要とする医療介入を我慢することとなろう。
【0025】
CONDUCT研究においては、コビトリモドは50mL溶液を含む単回用ガラスバイアル中に提供された。投与に先立ち、研究職員が該溶液をプラスチック製の浣腸に移し、次いで該コビトリモド溶液を左側位に横たわる患者に投与した。この手順は結腸内視鏡検査を必要としなかったが、依然として現場人員によって投与され、該浣腸は保存にも自己投与にも最適ではなかった。
【0026】
しかし、好ましくは患者による自己投与が可能で、かつ好ましくは投与に先立って如何なる清浄化工程も必要としない、潰瘍性大腸炎患者に対する局所治療を提供することが治療上望ましいであろう。この点に関し、自己投与に適し、かつ流通及び保存条件に安定な形式のコビトリモドを提供し、それによって患者が自宅に居ながらにして、専門家の医療介入を必要とせずに該薬物の投与を可能とすることが望ましいであろう。そのような治療はまた、維持療法として(即ち、寛解状態に保つために)コビトリモドを服用し、長期間、例えば、数カ月間もしくは何年間もコビトリモドを服用し得る患者にとって有益であろう。さらに、コビトリモドを自宅での自己投与に適した形態で提供することは、患者が複数回にわたって医療施設に行く必要性や、不急の仕事に対して医療専門家の時間を消費することを避け、それによって、特にCOVID-19パンデミック等の公衆衛生危機の間の、ヘルスケアシステムへの負担を最小限にするのに役立つので、望ましいであろう。
【発明の概要】
【0027】
本発明者らが行った研究により、コビトリモドは、種々の刺激(光、温度上昇、酸化、酸)又は微生物の増殖に応答して、ある特定の分解メカニズム、例えば、ホスホロチオエート結合の酸化の影響を受けやすいことがわかった。上述のように、従前の臨床試験では、投与前に、無菌的に充填されたガラスバイアルを用いてコビトリモド製剤を保存していた。ガラスバイアルは非透過性かつ非反応性であり、それゆえコビトリモドの分解を防止する。しかし、以前の研究で使用されたガラスバイアルは患者による自己投与には適していない。上記説明のとおり、コビトリモドをこの形式で提供すると、該薬物を投与する前に、溶液の希釈及び/又は投与に適した容器への移動等のさらなる工程を取らなければならない。通常、そのような投与は専門家の医療的補助とより複雑な装置(例、結腸内視鏡)を必要とし、そのため患者は病院又はクリニックに行く必要がある。
【0028】
患者がそれら自体を投与できる予め充填された浣腸は好適な選択肢であろう。しかし、そのような浣腸に用いられる容器は通常(無菌ではない)プラスチック製であり、プラスチック容器はガラスよりもずっと周囲のガスに対して透過性であるので、さらなる問題を創出する。長期保存の間、酸素や二酸化炭素等のガスの容器内への透過は該薬物の分解と効能の低下を引き起こす。
【0029】
驚くべきことに、コビトリモドの特定の剤形が長期保存に安定な組成物を提供することが今明らかとなった。特に、本発明の製剤は、薬物の分解と微生物の増殖に対して抵抗性である。さらに、本発明の製剤は、ガラスバイアルとは異なり、該オリゴヌクレオチドを分解し得る周囲の大気中のガス(例、酸素)に対してより透過性が高いプラスチック容器中で使用する場合に安定である。問題の製剤は緩衝系と保存剤を含む。使用される緩衝系はコビトリモドと混合可能であることがわかっており、しかも直腸投与に適したものである。特に、該緩衝系はコビトリモドを長期間、例えば1年間、生理学的pHに保つことができ、微生物の増殖を抑制する低濃度の保存剤を必要とするのみである。
【0030】
本発明はまた、長期保存の間安定な製品を提供する、本発明の製剤で予め充填された浣腸に関する。該浣腸容器は最小限の不快感で患者に該製剤を投与するのによく適応しており、該製剤の実質的にすべてが放出されることを確実にする。
【0031】
それゆえ、本発明は、(i)配列5'-GGAACAGTTCGTCCATGGC-3'(配列番号2)を含むオリゴヌクレオチド、(ii)少なくとも1つの保存剤及び(iii)クエン酸及びリン酸塩を含有する緩衝液を含有する、直腸投与に適した水性製剤を提供する。
【0032】
本発明はまた、自己投与に適した、予め充填された浣腸を提供し、該予め充填された浣腸は:
(a)容器、及び該容器内に
(b)本明細書に記載される製剤
を含む。
【0033】
本発明はまた、1以上の本明細書記載の予め充填された浣腸を含むパックを提供する。
【0034】
本発明はまた、炎症性腸疾患の治療における使用のための本明細書に記載の製剤を提供し、好ましくは、該炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎又はクローン病である。
【0035】
本発明はまた、対象における炎症性腸疾患の治療方法を提供し、該方法は本明細書に記載の製剤を該対象に直腸投与することを含み、好ましくは、該炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎又はクローン病である。
【0036】
本発明はまた、炎症性腸疾患の治療用の医薬の製造のための本明細書に記載の製剤の使用を提供し、好ましくは、該炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎又はクローン病である。
【0037】
発明の詳細な説明
本明細書で引用されるすべての特許、特許出願、及び刊行物は、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0038】
製剤
本発明は、(i)配列5'-GGAACAGTTCGTCCATGGC-3'(配列番号2)を含むオリゴヌクレオチド、(ii)少なくとも1つの保存剤及び(iii)クエン酸及びリン酸塩を含有する緩衝液を含有する、直腸投与に適した水性製剤を提供する。
【0039】
本明細書において用いられる用語「水性製剤」とは、種々の成分(オリゴヌクレオチド、保存剤及び緩衝液を提供するのに使用される化学物質)が水性溶媒中に溶解した製剤のことをいう。水性溶媒は、通常水性溶媒の少なくとも10重量%、好ましくは水性溶媒の少なくとも25重量%、より好ましくは水性溶媒の少なくとも50重量%、さらに好ましくは水性溶媒の少なくとも75重量%の水を含有する。例えば、水性溶媒は水であってよい、即ち、水性溶媒は水からなっていてよい。
【0040】
本明細書で用いられる表現「直腸投与に適した」とは、製剤又は予め充填された浣腸が直腸に損傷を与えることなく安全に直腸に投与され得ることを意味する。直腸用製剤のための種々の検討事項に関するより詳しいことは、Hua “Physiological and Pharmaceutical Considerations for Rectal Drug Formulations” Frontiers in Pharmacology (2019), vol 10, 1196及びJannin et al, “Rectal route in the 21stCentury to treat children” Advanced Drug Delivery Review (2014), 73, 34-49に見出すことができる。
【0041】
本明細書において用いられる用語「オリゴヌクレオチド」とは、複数の連結した個々のヌクレオシド単位から形成されたポリヌクレオチドをいう。そのようなオリゴヌクレオチドは、ゲノムDNAもしくはcDNA、プラスミド、ベクター又は細菌DNAを含む既存の核酸ソースから取得することができるが、好ましくは、合成的方法により製造される。ヌクレオシド残基は数多くの既知のヌクレオシド間結合のいずれかによって互いに結合することができる。そのようなヌクレオシド間結合としては、制限はないが、天然のヌクレオシド間リン酸ジエステル結合、又は、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホネート、アルキルホスホノチオエート、リン酸トリエステル、ホスホロアミダート、シロキサン、カーボネート、カルボアルコキシ、アセトアミダート、カーバメート、モルフォリノ、、ボラノ、チオエーテル、架橋ホスホロアミダート、架橋メチレンホスホネート、架橋ホスホロチオエート、及びスルホンヌクレオシド間結合等であるが、それらに限定されない、実際に修飾されたヌクレオシド間が挙げられる。用語「オリゴヌクレオチド」は、1以上の立体特異的ヌクレオシド間結合(例、(Rp)もしくは(Sp)-ホスホロチオエート、アルキルホスホネート又はリン酸トリエステル結合)を有するポリヌクレオチドをも包含する。本明細書で用いられる用語「オリゴヌクレオチド」及び「ジヌクレオチド」は、任意のそのようなヌクレオシド間結合を有するポリヌクレオチド及びジヌクレオチドを含むことを明示的に意図しており、該結合がリン酸基を含むか否かを問わない。ある特定の好ましい実施態様において、これらのヌクレオシド間結合は、リン酸ジエステル、リン酸トリエステルもしくはホスホロジチオエート結合、又はそれらの組み合わせであり得る。
【0042】
用語「オリゴヌクレオチド」は、制限はないが、タンパク質基、親油性基、インターかレーティング剤、ジアミン、葉酸、コレステロール及びアダマンタンを含む付加的な置換基を有するポリヌクレオチドをも包含する。用語「オリゴヌクレオチド」は、制限はないが、ペプチド核酸(PNA)、リン酸基を有するペプチド核酸(PHONA)、ロックド核酸(LNA)、モルフォリノ骨格を有する核酸、及びアルキルリンカーもしくはアミノリンカーを有する骨格部分を有するオリゴヌクレオチドを含む高分子を含む任意の他のヌクレオチドをも包含する。アルキルリンカーは、分枝もしくは非分枝、置換もしくは非置換、及びキラルに純粋もしくはラセミ混合物であり得る。
【0043】
オリゴヌクレオチドは、天然のヌクレオシド、修飾ヌクレオシド及びそれらの組み合わせを含み得る。本明細書で用いられる用語「修飾ヌクレオチド」は、修飾された複素環塩基、修飾された糖部分、又はそれらの組み合わせを含むヌクレオシドである。いくつかの実施態様において、修飾ヌクレオシドは、本明細書に記載される非天然のプリンもしくはピリミジンヌクレオシドである。いくつかの実施態様において、修飾ヌクレオシドは、2’-置換リボヌクレオシド、アラビノヌクレオシド又は2’-デオキシ-2’-置換-アラビノシドである。
【0044】
本明細書で用いられる用語「混成オリゴヌクレオチド」は、2種以上のヌクレオシドを有するオリゴヌクレオチドである。
【0045】
本明細書において、用語「オリゴヌクレオチド」は、混成及びキメラオリゴヌクレオチドを含む。「キメラオリゴヌクレオチド」は、配列構造内に2種以上のヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドである。そのようなキメラオリゴヌクレオチドを好適な例は、ホスホロチオエート、リン酸ジエステルもしくはホスホロジチオエート領域と、アルキルホスホネートもしくはアルキルホスホノチオエート結合などの非イオン性結合とを含むキメラオリゴヌクレオチドである(US5635377及びUS5366878)。
【0046】
本明細書において、用語「オリゴヌクレオチド」は、環状化バリアント及び環状オリゴヌクレオチドをも含む。
【0047】
好ましくは、該オリゴヌクレオチドは、少なくとも、1つの天然のリン酸ジエステル、又は1つの修飾されたホスホロチオエートもしくはホスホロジチオエートヌクレオシド間結合を含むが、好適な結合又は実際の骨格修飾として、制限はないが、メチルホスホネート、メチルホスホノチオエート、リン酸トリエステル、リン酸チオトリエステル、。ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、トリエステルプロドラッグ、スルホン、スルホンアミド、スルファマート、ホルムアセタル、N-メチルヒドロキシルアミン、2’OMe(2’位のオキシメチル基)、カーボネート、カーバメート、モルフォリノ、ボラノホスホネート、ホスホロアミダートが挙げられ、とりわけ、一級アミノ-ホスホロアミダート、N3ホスホロアミダート、N5ホスホロアミダート、及び立体特異的結合(例、(Rp)もしくは(Sp)-ホスホロチオエート、アルキルホスホネート又はリン酸トリエステル結合)もまた、想定される。
【0048】
ヌクレオシドの糖部分は、非天然の糖部分であり得る。本明細書において、「天然の糖部分」とは、核酸の一部として天然に存在する糖部分、例えば、リボース及び2’-デオキシリボースであり、「非天然の糖部分」とは、核酸の一部として天然には存在しないが、オリゴヌクレオチドの骨格にに用いることができる任意の糖部分であり、例えば、ヘキソースであるが、それに限定されない。アラビノース及びアラビノース誘導体が好適な糖部分の例である。
【0049】
修飾もしくは置換ヌクレオチドは、例えば、細胞への取り込みの増強、核酸標的に対する親和性の増強及びヌクレアーゼの存在下での安定性の増大等の望ましい特性のために、しばしば天然型より好適である。オリゴヌクレオチドは、好ましくは約八(8)と約四十(40)の間、最も好ましくは約八(8)と約二十(20)の間であるが、通常、十(10)を超え百(100)以上までのデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドから構成される。正確なサイズは多くの要素に依存し、同様にして、オリゴヌクレオチドの最終的な機能や用途にも依存する。オリゴヌクレオチドはいかなる様式で製造されてもよく、化学合成、DNA複製、逆転写又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0050】
本発明の製剤中のオリゴヌクレオチドは、配列5'-GGAACAGTTCGTCCATGGC-3'(配列番号2)を含む。本発明の製剤中のオリゴヌクレオチドは、配列5'-GGAACAGTTCGTCCATGGC-3'(配列番号2)からなっていてもよい、即ち、該オリゴヌクレオチドは。配列5'-GGAACAGTTCGTCCATGGC-3'(配列番号2)を有するオリゴヌクレオチドであり得る。
【0051】
通常、該オリゴヌクレオチド中の少なくとも1つのCGジヌクレオチドはメチル化されていない。それゆえ、該オリゴヌクレオチドは、CGジヌクレオチドがメチル化されていない、配列5'-GGAACAGTTCGTCCATGGC-3'(配列番号2)を有し得る。
【0052】
通常、該オリゴヌクレオチド中の少なくとも1つのヌクレオチドは、リン酸骨格の修飾を有する。該骨格修飾は通常、ホスホロチオエート又はホスホロジチオエート修飾である。通常、該骨格修飾は、該オリゴヌクレオチドの5’-及び/又は3’末端に位置する。
【0053】
ホスホロチオエート結合は、配列中、例えば配列:
5'-G*G*A*ACAGTTCGTCCAT*G*G*C-3'(配列番号1)(ここでCGジヌクレオチドはメチル化されていない)中、アスタリスク(*)で表すことができる。好ましくは、該オリゴヌクレオチドは、配列5'-G*G*A*ACAGTTCGTCCAT*G*G*C-3'(配列番号1)(ここでCGジヌクレオチドはメチル化されていない)を有する、即ち、本発明の製剤中のオリゴヌクレオチドは、配列5'-G*G*A*ACAGTTCGTCCAT*G*G*C-3'(配列番号1)(ここでCGジヌクレオチドはメチル化されていない)からなり得る。
【0054】
従って、典型的には、該オリゴヌクレオチドはコビトリモドである。
【0055】
使用されるオリゴヌクレオチド(好ましくはコビトリモド)の濃度は特に制限されず、患者に治療の恩恵を及ぼす任意の濃度であってよい。通常、該オリゴヌクレオチド(好ましくはコビトリモド)は、少なくとも0.1mg/mL、例えば少なくとも0.5mg/mL、あるいは、少なくとも1mg/mL、少なくとも1.5mg/mL、少なくとも2.0mg/mL又は少なくとも2.5mg/mLの濃度で、製剤中に存在する。該オリゴヌクレオチド(好ましくはコビトリモド)は、25mg/mL未満、通常20mg/mL未満、例えば15mg/mL未満の量で、製剤中に存在し得る。従って、通常、該オリゴヌクレオチド(好ましくはコビトリモド)は、0.1から25mg/mL、好ましくは0.5から20mg/mLの量で、製剤中に存在する。典型的には、該オリゴヌクレオチド(好ましくはコビトリモド)は、0.5から15mg/mLの濃度で製剤中に存在する。好ましくは、該オリゴヌクレオチドは2.5から12.5mg/mLの濃度で製剤中に存在する。
【0056】
該オリゴヌクレオチド(好ましくはコビトリモド)は、約2.5mg/mLの濃度で製剤中に存在し得る。該オリゴヌクレオチド(好ましくはコビトリモド)は、約5mg/mLの濃度で製剤中に存在し得る。該オリゴヌクレオチド(好ましくはコビトリモド)は、約10mg/mLの濃度で製剤中に存在し得る。
【0057】
少なくとも1つの保存剤は、該保存剤が該オリゴヌクレオチドを分解することなく微生物の増殖を抑制し得る限り、当業者に公知のいかなる保存剤であってもよい。製剤は1種の保存剤を含有してもよい。あるいは、製剤は2又は3種の保存剤を含有してもよい。
【0058】
通常、製剤中の保存剤の総濃度は、製剤の1重量%未満であり、典型的には、製剤の0.5重量%未満であり、好ましくは、製剤の0.2重量%未満である。製剤中の保存剤の総濃度は、製剤の0.001から1重量%であってよく、例えば、製剤の0.005から0.5重量%、好ましくは、製剤の0.01から0.2重量%であってよい。
【0059】
通常、少なくともつの保存剤は、1以上のパラベン類を含む。該少なくとも1つの保存剤は、1以上のパラベン類からなってもよい。用語「パラベン類」は、製剤化学分野で周知であり、通常、パラヒドロキシベンゾエート、即ち、パラヒドロキシ安息香酸のエステルをいう。
【0060】
適切なパラベン類は当業者に知られていよう。例えば、保存剤は、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ヘプチルパラベン、イソブチルパラベン、イソプロピルパラベン、ベンジルパラベン及びそれらの塩から選択される1以上のパラベン類を含有し得る。該保存剤は、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ヘプチルパラベン、イソブチルパラベン、イソプロピルパラベン、ベンジルパラベン及びそれらのナトリウム塩から選択される1以上のパラベン類を含有し得る。
【0061】
通常、少なくとも1つの保存剤は、メチルパラベンナトリウム及び/又はプロピルパラベンナトリウムを含む。好ましくは、該少なくとも1つの保存剤は、メチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム及びそれらの混合物から選択される。例えば、該少なくとも1つの保存剤は、メチルパラベンナトリウム及びプロピルパラベンナトリウムの混合物からなってもよい。
【0062】
パラベン類の総濃度は、通常、製剤の1重量%未満、典型的には製剤の0.5重量%未満、好ましくは、製剤の0.2重量%未満である。製剤中のパラベン類の総濃度は、0.001から1重量%、例えば、製剤の0.005から0.5重量%、好ましくは、製剤の0.01から0.2重量%であってよい。好ましくは、該製剤は、0.01から0.2重量%のメチルパラベンナトリウム及びプロピルパラベンナトリウムの混合物を含有する。
【0063】
緩衝液はクエン酸及びリン酸塩を含む。当業者は、該2成分のストック溶液を混合することによって、ある特定のpHの緩衝液を調製する仕方を知っていよう。好ましくは、該リン酸塩は、リン酸水素二ナトリウム(NaHPO)である。
【0064】
該製剤は、通常、少なくとも6.0、好ましくは、少なくとも6.5のpHを有する。該製剤は、通常8.5以下、好ましくは8以下のpHを有する。典型的には、該製剤は6.0から8.0の範囲のpHを有する、即ち、該緩衝液は、該製剤のpHを6.0から8.0の範囲内に維持する。好ましくは、該製剤は6.5から8.0の範囲のpHを有する、即ち、該緩衝液は、該製剤のpHを6.5から8.0の範囲内に維持する。
【0065】
従って、典型的には、該製剤は、(i)コビトリモドであるオリゴヌクレオチド、(ii)1以上のパラベン類を含む少なくとも1つの保存剤及び(iii)クエン酸及びリン酸塩を含む緩衝液を含有する。例えば、該製剤は、(i)コビトリモドであるオリゴヌクレオチド、(ii)1以上のパラベン類を含む少なくとも1つの保存剤及び(iii)クエン酸及びリン酸水素二ナトリウム(NaHPO)を含む緩衝液を含有し得る。
【0066】
該製剤は、(i)0.1から25mg/mL、好ましくは0.5から15mg/mLの量のコビトリモドであるオリゴヌクレオチド、(ii)製剤の0.001から1重量%の量の、1以上のパラベン類を含む少なくとも1つの保存剤及び(iii)クエン酸及びリン酸塩を含む緩衝液を含有してもよく、該製剤は6.0から8.0のpH、好ましくは6.5から8.0の範囲のpHを有する。
【0067】
該製剤は、(i)0.1から25mg/mL、好ましくは0.5から15mg/mLの量のコビトリモドであるオリゴヌクレオチド、(ii)メチルパラベンナトリウム及び/又はプロピルパラベンナトリウムを含む少なくとも1つの保存剤(ここで、該少なくとも1つの保存剤は、製剤の0.001から1重量%の量で存在する)、及び(iii)クエン酸及びリン酸水素二ナトリウム(NaHPO)を含む緩衝液を含有してもよく、該製剤は6.0から8.0のpH、好ましくは6.5から8.0の範囲のpHを有する。
【0068】
該製剤は、(i)0.1から25mg/mL、好ましくは0.5から15mg/mLの量のコビトリモドであるオリゴヌクレオチド、(ii)製剤の0.001から1重量%の量の、メチルパラベンナトリウム及びプロピルパラベンナトリウムの組み合わせ、及び(iii)クエン酸及びリン酸水素二ナトリウム(NaHPO)を含む緩衝液を含有してもよく、該製剤は6.0から8.0のpH、好ましくは6.5から8.0の範囲のpHを有する。
【0069】
予め充填された浣腸
本発明はまた、自己投与に適した、予め充填された浣腸を提供し、該予め充填された浣腸は:
(a)容器;及び該容器内に
(b)本明細書に記載の製剤
を含む。
【0070】
通常、予め充填された浣腸は、直腸への自己投与に適している。従って、該浣腸は通常、いかなる専門家、医療装置又は知識を擁することなく、患者自身により投与することができる。
【0071】
当業者であれば、直腸投与に使用され得る種々の可能性のある浣腸容器を熟知していよう。通常、そのような容器はプラスチック容器である。
【0072】
通常、該容器は絞れるビンを含む。例えば、該ビンは、手で容易に圧縮され、それにより製剤を強制的に該容器外に出す材料から作ることができる。該ビンの形状もまた、圧縮を容易にし得る。例えば、絞れるビンはぺしゃんこになる形状の(concertina-shaped)ビンであり得る。そのようなビンにおいて、ひだは容易なビンの圧縮と内側の製剤の効果的な排出を可能にする。
【0073】
通常、該ビンはポリエチレンから形成される。好ましくは、該ビンは、低密度のポリエチレンから形成される。該ビンを形成する材料はまた、少量の他の添加物、例えば二酸化チタン等の乳白剤や着色料を含んでもよい。
【0074】
該ビンは通常、治療上有用な料の製剤を入れるのに適したサイズのものである。通常、該ビンには50mLの製剤が入る。該ビンは通常、4及び12cmの間、好ましくは6から9cm、典型的には約7から9cmの高さを有する。該ビンは通常、3から6cm、好ましくは4から5cmの直径を有する。
【0075】
容器は通常、製剤を投薬するのに適したアプリケーターを含む。従って、ビンが圧縮されると、該製剤は該容器から該アプリケーターを介して排出される。従って、通常、該アプリケーターは、損傷を引き起こさないだけでなく、簡単に裂けないように、柔らかい材料から形成されている。該アプリケーターはプラスチックで形成され得る。通常、該アプリケーターはポリエチレン、好ましくは低密度のポリエチレンから形成される。該アプリケーターを形成する材料はまた、少量の他の添加物、例えば、二酸化チタン等の乳白剤、着色料、又はポリアミドやポリエチレン-ポリ酢酸ビニル共重合体等の少量の他のプラスチック材料を含んでもよい。
【0076】
通常、アプリケーターは、直腸への挿入に適したチップを含む。該チップは、4から15cmの長さであり、通常は4から10cmの長さ、好ましくは5から6cmの長さである。アプリケーターのチップは、投与を容易にするために潤滑剤を塗布してもよい。
【0077】
通常、予め充填された浣腸の容器は、絞れるビンと製剤を投薬するのに適したアプリケーターを含み、該アプリケーターは直腸への挿入に適したチップを含み、該ビンと該アプリケーターは、どちらもポリエチレンから形成される。予め充填された浣腸の容器は、ぺしゃんこになる形状のビンと製剤を投薬するのに適したアプリケーターを含んでいてよく、該アプリケーターは直腸への挿入に適したチップを含み、該ビンと該アプリケーターは、どちらもポリエチレンから形成される。好ましくは、該ビンと該アプリケーターは、どちらも低密度のポリエチレンから形成される。
【0078】
アプリケーターは逆止弁を含んでもよい。通常、該逆止弁はバネとバネ受けを含む。該逆止弁は容器からの製剤の流れを制御し、十分な圧力が容器にかかった場合のみ、アプリケーターを介して容器から製剤が流出するのを可能にする。通常、圧力が緩むと、逆止弁は閉じ、それによって製剤が容器内に逆流するのを防止する。
【0079】
予め充填された浣腸は、該予め充填された浣腸を使用するまでアプリケーターを覆い保護するキャップをさらに含んでもよい。
【0080】
容器内の製剤量は特に制限されず、患者に治療上の恩恵をもたらすいかなる量であってもよい。通常、容器内の製剤量は60mL以下であり、例えば20から60mL、好ましくは30から60mL、より好ましくは40から60mLである。容器内の製剤量は約50mLであり得る。いくつかの例において、容器内の製剤量は約30mLであり得る。
【0081】
予め充填された浣腸は、単回用量のオリゴヌクレオチド、好ましくはコビトリモドを含む。用語「単回用量」とは、特定された化合物量を含有する一回分に分配されるオリゴヌクレオチドの処方をいう。
【0082】
通常、予め充填された浣腸は、100から650mgのオリゴヌクレオチド、好ましくはコビトリモドを含む。例えば、該予め充填された浣腸は、100から350mgのオリゴヌクレオチド、好ましくはコビトリモドを含んでもよい。該予め充填された浣腸は、350から650mgの一回分のオリゴヌクレオチド、好ましくはコビトリモドを含んでもよい。該予め充填された浣腸は、150から350mgの一回分のオリゴヌクレオチド、好ましくはコビトリモドを含んでもよい。該予め充填された浣腸は、約125mgの一回分のオリゴヌクレオチド、好ましくはコビトリモドを含んでもよい。該予め充填された浣腸は、約250mgの一回分のオリゴヌクレオチド、好ましくはコビトリモドを含んでもよい。該予め充填された浣腸は、約500mgの一回分のオリゴヌクレオチド、好ましくはコビトリモドを含んでもよい。
【0083】
従って、本発明は、自己投与に適した、予め充填された浣腸を提供し、該予め充填された浣腸は:
(a)絞れるビン及びアプリケーター(該アプリケーターは直腸への挿入に適したチップを含み、好ましくは、該ビンと該アプリケーターはプラスチックから形成され、好ましくは該アプリケーターは逆止弁をさらに含む);
(b)オリゴヌクレオチド、好ましくはコビトリモド、(ii)1以上のパラベン類w含む少なくとも1つの保存剤、及び(iii)クエン酸及びリン酸塩を含む緩衝液を含有する、直腸投与に適した製剤
を含む。
【0084】
例えば、該予め充填された浣腸は:
(a)ぺしゃんこになる形状のビンと製剤の投薬に適したアプリケーターを含み、該アプリケーターは直腸への挿入に適したチップを含み、該ビンと該アプリケーターはポリエチレンから形成され、好ましくは、該アプリケーターは逆止弁を含む、容器;並びに、該容器内に
(b)(i)0.1から25mg/mL、好ましくは0.5から15mg/mLの量の、コビトリモドであるオリゴヌクレオチド、(ii)製剤の0.001から1重量%の量の、1以上のパラベン類を含む少なくとも1つの保存剤、及び(iii)クエン酸及びリン酸塩を含む緩衝液を含有する、直腸投与に適した製剤であって、6.0から8.0のpH、好ましくは6,5から8.0の範囲のpHを有する製剤
を含む。
【0085】
該予め充填された浣腸は:
(a)ぺしゃんこになる形状のビンと製剤の投薬に適したアプリケーターを含み、該アプリケーターは直腸への挿入に適したチップを含み、該ビンと該アプリケーターはどちらもポリエチレン、好ましくは低密度のポリエチレンから形成され、好ましくは、該アプリケーターは逆止弁を含む、容器;並びに、該容器内に
(b)(i)0.1から25mg/mL、好ましくは0.5から15mg/mLの量の、コビトリモドであるオリゴヌクレオチド、(ii)メチルパラベンナトリウム及び/又はプロピルパラベンナトリウムを含む少なくとも1つの保存剤(ここで、該少なくとも1つの保存剤は、製剤の0.001から1重量%の量で存在する)、及び(iii)クエン酸及びリン酸水素二ナトリウム(NaHPO)を含む緩衝液を含有する、直腸投与に適した製剤であって、6.0から8.0のpH、好ましくは6,5から8.0の範囲のpHを有する製剤
を含む。
【0086】
該予め充填された浣腸は:
(a)ぺしゃんこになる形状のビンと製剤の投薬に適したアプリケーターを含み、該アプリケーターは直腸への挿入に適したチップを含み、該ビンと該アプリケーターはどちらもポリエチレン、好ましくは低密度のポリエチレンから形成され、好ましくは、該アプリケーターは逆止弁を含む、容器;並びに、該容器内に
(b)(i)0.1から25mg/mL、好ましくは0.5から15mg/mLの量の、コビトリモドであるオリゴヌクレオチド、(ii)製剤の0.001から1重量%の量の、メチルパラベンナトリウム及びプロピルパラベンナトリウムの組み合わせを含む少なくとも1つの保存剤、及び(iii)クエン酸及びリン酸水素二ナトリウム(NaHPO)を含む緩衝液を含有する、直腸投与に適した製剤であって、6.0から8.0のpH、好ましくは6,5から8.0の範囲のpHを有する製剤
を含む。
【0087】
パック
本発明はまた、1以上の、本明細書に記載される予め充填された浣腸を含むパックを提供する。
【0088】
通常、該パックは包装ガスを含む。該包装ガスは、製剤の分解を防止するのを助ける任意のガスであり得る。好ましくは、該包装ガスは窒素である。
【0089】
パックは通常、1以上の予め充填された浣腸が密封された1以上のポケットを含む、ブリスターパックである。通常、各々の予め充填された浣腸は、単一のポケット内に密封される、即ち、各々の予め充填された浣腸は個別に包装される。当業者であれば、外部環境中のガスに対するバリアとして作用するブリスター包装に適した材料を熟知していよう。ブリスター包装は通常、蓋箔で密封されたブリスターを含む。典型的なブリスター用の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、エチレンビニルアルコール(EVOH)等のプラスチックが挙げられる。蓋箔は通常、金属製のバリア層、例えばアルミニウムバリア層を含み、プラスチック及び/又は紙層等の包装を強靭にするための更なる層を含んでもよい。例えば、ブリスター包装は、PET/PEの層、EVOH(エチレンビニルアルコール)の層、及びPEの層のような3層でできたブリスターを含み得る。蓋箔は、紙、アルミニウム及びPEの層を含んでもよい。
【0090】
1以上のポケットは通常、包装ガス、好ましくは窒素を含む。
【0091】
医療用途
本発明はまた、炎症性腸疾患の治療における使用のための、本明細書に記載される製剤を提供する。好ましくは、該炎症性腸疾患は、潰瘍性大腸炎又はクローン病である。
【0092】
製剤は通常、粘膜に局所投与される。好ましくは、該製剤は直腸投与される。該製剤は、本明細書に記載の予め充填された浣腸を用いて直腸に投与され得る。通常、該製剤は、本明細書に記載の予め充填された浣腸を用いて自己投与される。
【0093】
本発明はまた、対照における炎症性腸疾患の治療方法を提供し、該方法は、本明細書に記載の製剤を該対象に直腸投与することを含む。好ましくは、炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎又はクローン病である。
【0094】
本明細書で用いられる用語「対象」とは、ヒト対象/患者のことをいう。本明細書において、用語「対象」及び「患者」は互換的に用いられる。
【0095】
通常、製剤は本明細書に記載の予め充填された浣腸を用いて投与される。好ましくは、該製剤は、本明細書に記載の予め充填された浣腸を用いて、対象により自己投与される。
【0096】
通常、対象は投与に先立って結腸洗浄を受けていない。即ち、本明細書に記載のいかなる対象についても、また、本明細書に記載のいかなる製剤又は予め充填された浣腸についても、通常、対象は投与に先立って結腸洗浄を受けていない。従って、本発明の予め充填された浣腸の1つの利点は、製剤の有効な投与のために複雑な準備工程を必要としないことである。
【0097】
本明細書において「結腸洗浄を受けていない」対象という場合、製剤の投与前のある期間において、オリゴヌクレオチドで治療される結腸内の糞便物の量を低減するための結腸洗浄を受けていない対象と定義づけることを意図する。従って、通常、対象は、製剤による治療前の1時間、典型的には、製剤による治療前の4時間、好ましくは、製剤による治療前の8時間、より好ましくは、製剤による治療前の12時間、さらに好ましくは、製剤による治療前の24時間、最も好ましくは、製剤による治療前の48時間、結腸洗浄を受けていない。
【0098】
通常、結腸洗浄は、当該技術分野で公知の任意の方法、例えば、下剤の投与により行うことができる。
【0099】
通常、対象は内腔の糞便物を有する。通常、該対象は、オリゴヌクレオチドを含む製剤で治療される結腸上皮細胞を覆う、又はその近位にある糞便物を有する。該対象は、オリゴヌクレオチドを含む製剤で治療される結腸上皮細胞に直接接していない内腔内に糞便物を有し得る。該対象は、オリゴヌクレオチドを含む製剤で治療される結腸上皮細胞を覆う、又はその近位にある内腔内の糞便物、並びに、オリゴヌクレオチドで治療される結腸上皮細胞に直接接していない内腔内の糞便物を有し得る。より好ましくは、該糞便物の量は、結腸洗浄を全く受けていない患者で予測される正常量である。
【0100】
本発明はまた、炎症性腸疾患の治療薬の製造のための、本明細書に記載の製剤の使用を提供する。好ましくは、炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎又はクローン病である。
【0101】
本明細書で用いられる用語「炎症性腸疾患(IBD)」とは、一群の結腸及び消化管の炎症性状態をいう。IBDの主要なタイプは、潰瘍性大腸炎(UC)及びクローン病である。UCとクローン病との間の主たる相違は、炎症性変化の位置及び性質である。クローン病は、口から肛門まで、消化管の任意の部分を侵し得るのに対し、UCは結腸及び直腸に限局される。いくつかの症例において、所見における特異性のために、クローン病かUCのいずれかの確定診断を行うことができない。これらの症例では、不確定大腸炎の診断がなされ得る。IBDの他の型としては、コラーゲン蓄積大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性大腸炎、便流変更性大腸炎、ベーチェット病及び不確定大腸炎が挙げられるが、それらに限定されない。
【0102】
典型的には、炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎(UC)である。
【0103】
潰瘍性大腸炎(UC)という疾患は当業者に周知である。本発明により治療される潰瘍性大腸炎は、潰瘍性直腸炎、遠位又は左側大腸炎、広範囲大腸炎、全大腸炎及び回腸嚢炎の治療を含む。典型的には、患者は左側大腸炎に罹患している。
【0104】
UC患者は通常、寛解から重度に活動性までの範囲の疾患重篤度のスペクトルを示す。臨床的評価を用いて、UC患者を、D’Haens, Gastroenterology 2007; 132: 763-786(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に定義される4つの疾患活動性サブグループ:(1)寛解(≦2又は3回排便/日、糞便中に血及び/又は膿なし、全身症状なし);(2)軽度活動性疾患(3又は4回排便/日並びに/或いは毎日より少ない頻度で糞便中に血及び/又は膿あり、発熱又は体重減少の全身症状なし);(3)中等度活動性疾患(>4回排便/日並びに/或いは毎日出血及び/又は膿あり)最小限の全身症状あり;(4)重度活動性疾患(>6回排便/日、並びに、発熱、頻脈、貧血又は赤血球沈降速度ESRによって実証される毒性のエビデンス)に分類することができる。臨床的評価を他のスコア、例えば、Mayoスコアもしくはその変形又は他の指標を用いて分類することができる。
【0105】
通常、患者は中等度から重度のUCに罹患している。好ましくは、患者は上で定義された中等度から重度のUCに罹患している。例えば、患者は中等度から重度の左側UCに罹患していてよい。
【0106】
本明細書で用いられる用語「治療」及び「治療する」は、治療及び/又は改善及び/又は疾患もしくは状態の症状の激化/悪化の予防もしくは軽減、並びに疾患もしくは状態の原因の治療を包含するものとして理解すべきであり、対象の状態を改善又は安定化するように、症状、臨床的兆候及び状態の基礎病理を、反転、軽減させ、又は進行を阻止することを含み得る。
【0107】
特に、潰瘍性大腸炎の文脈において、「治療する」とは、通常、活動性の潰瘍性大腸炎を有する患者において応答又は寛解を誘導することをいう。従って、通常、オリゴヌクレオチドは、患者における活動性の潰瘍性大腸炎の応答又は寛解を誘導するためのものである。応答を誘導するとは、例えば、活動性の疾患の症状及び臨床的兆候を軽減及び/又は進行阻止することによって、患者の状態を改善することを意味する。寛解を誘導するとは、疾患の活動期にあると考えられる状態から、寛解にあると考えられる状態に、患者を移行させることを意味する。「治療する」とは、患者を寛解状態に維持することを意味し得る。
【0108】
UC患者における応答又は寛解の誘導は、通常、内視鏡検査、組織学、患者の記録された転帰及び生活の質の結果のうちの1以上によって評価される。従って、応答又は寛解の誘導という場合、内視鏡的寛解、内視鏡的応答、組織学的寛解、組織学的応答、医師又は患者の記録された転帰によって決定される応答又は寛解、並びに生活の質によって決定される応答又は寛解が含まれる。これは通常、1以上の標準的指標を参照して評価され得る。
【0109】
通常、潰瘍性大腸炎は慢性的な活動性の潰瘍性大腸炎である、即ち、患者は活動期にある慢性潰瘍性大腸炎に罹患している。
【0110】
本明細書で用いられる用語「慢性的な活動性の潰瘍性大腸炎」とは、活動性かつ慢性の両方である潰瘍性大腸炎患者をいう。活動性の潰瘍性大腸炎は通常、本明細書において定義されるとおりである、即ち、患者は寛解状態にない。潰瘍性大腸炎は通常、活動期と非活動期との間を循環する慢性(長期間)の状態である。当業者であれば理解するように、慢性潰瘍性大腸炎に罹患した患者は、該患者がより軽度な症状を経験するか寛解状態にある時期を間に散りばめつつ、より激しい症状を有する活動期(「再発(flare ups)」又は再燃)を経験する。従って、用語「慢性活動性UC」とは通常、活動性の疾患状態にある慢性UC患者のことをいう。
【0111】
患者は慢性的な中等度から重度のUCに罹患し得る。患者は慢性的な中等度から重度の左側UCに罹患し得る。
【0112】
好ましくは、本明細書において「治療する」という場合、慢性的な活動性の潰瘍性大腸炎を有する患者における応答又は寛解を誘導することをいう。従って、通常、オリゴヌクレオチドは、患者における慢性的な活動性の潰瘍性大腸炎の応答又は寛解を誘導するためのものである。
【0113】
UC患者における応答又は寛解の誘導は、1以上の標準的な疾患指標に従って決定することができる。典型的な疾患指標としては、以下に述べるものが挙げられるが、それらに限定されない;(i)臨床的及び生化学的疾患活動性により決定される疾患活動性、(ii)内視鏡的疾患活動性により決定される疾患活動性、(iii)混成の臨床的及び内視鏡的疾患活動性指標により決定される疾患活動性、(iv)生活の質、(v)組織学的疾患活動性。これらの指標は、D’Haens(前記)において考察されている。
【0114】
臨床的及び生化学的疾患活動性により決定される疾患活動性に基づく指標としては、Truelove and Witts Severity Index; Powell-Tuck (St. Mark’s) Index; Clinical Activity (Rachmilewitz) Index; Activity (Seo) Index; Physician Global Assessment; Lichtiger (Modified Truelove and Witts Severity) Index; Investigators Global Evaluation; Simple Clinical Colitis Activity Index; Improvement Based on Individual Symptom Scores; Ulcerative Colitis Clinical Score; 並びにPatient-defined remissionが挙げられる。これらの指標は、D’Haens(前記)において考察されている。
【0115】
内視鏡的疾患活動性により決定される疾患活動性に基づく指標としては、Truelove and Witts Sigmoidoscopic Assessment; Baron score; Powell-Tuck Sigmoidoscopic Assessment; Endoscopic (Rachmilewitz Endoscopic) Index; Sigmoidoscopic Index; Sigmoidoscopic Inflammation Grade Score; Mayo Score Flexible Proctosigmoidoscopy Assessment; Sutherland Mucosal Appearance Assessment; 並びにModified Baron Scoreが挙げられる。これらの指標は、D’Haens(前記)において考察されている。
【0116】
混成の臨床的及び内視鏡的疾患活動性指標により決定される疾患活動性に基づく指標としては、Mayo Score (Mayo Clinic Score/Disease Activity Index); Modified Mayo Score及びSutherland Index (Disease Activity Index/UC Disease Activity Index) が挙げられる。Mayo Score及びSutherland Indexは、D’Haens(前記)において考察されている。
【0117】
生活の質に基づく指標としては、Rating Form of IBD Patient Concerns; 及びInflammatory Bowel Disease Questionnaire (IBDQ) が挙げられる。これらの指標は、D’Haens(前記)において考察されている。
【0118】
組織学的疾患活動性に基づく指標としては、D’Haens(前記)において考察されたGeboes Index及びRiley Index、並びにNancy Histological Index及びRobarts Histopathology Index等のさらなる指標が挙げられる。
【0119】
臨床薬開発においてUC患者を評価するための好適な指標は、規制機関である欧州医薬品庁(EMA)や食品医薬品局(FDA)からのガイドライン(Guidance Document: Ulcerative Colitis: Clinical Trial Endpoints Guidance for Industry, Aug 2016, docket no. FDA-2016-D-2319; EMA, Guideline on the development of new medicinal products for the treatment of Ulcerative Colitis 21 July 2016)に記載されるMayoスコアや改変Mayoスコアである。
【0120】
Clinical Activity (Rachmilewitz) Indexは、排便の回数、糞便中の血、症状の状態に関する調査員の総合評価、腹痛又は差し込み、大腸炎による体温、腸管外の兆候、及び研究室所見という7つの変数を考慮に入れた指標である。これは、D’Haens(前記)及びRachmilewitz D., BMJ 1989; 298: 82-86(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)において考察されている。Clinical Activity (Rachmilewitz) Indexの決定は、0から29ポイントの範囲で患者のスコアを生成する(スコアが高いほど重篤な疾患であることを意味する)。
【0121】
≦4ポイントのClinical Activity (Rachmilewitz) Indexスコアを臨床的寛解とみなすことができる。Clinical Activity (Rachmilewitz) Indexによって決定される応答は、患者が治療前よりも治療後のスコアが低いことを意味する。
【0122】
Mayoスコアは、4項目:排便頻度、直腸出血、内視鏡検査の所見、及び臨床医の総合評価(PGA)を考慮に入れた指標である。これは、D’Haens(前記)及びSchroeder KW et al, N Engl J Med 1987; 317: 1625-1629(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)において考察されている。Mayoスコアの決定は、0から12ポイントの範囲のスコアを生成する(スコアが高いほど重篤な疾患であることを意味する)。4つの特定の項目に加えて、患者の機能的評価も測定され、これは12ポイントの指標計算に含まれるという意味ではないが、PGAスコアを決定する際に一般的な満足できる生活状態の指標として用いられるべきである。
【0123】
4項目のそれぞれについてのMayoスコアリングは下表に示すようにして決定される。
【0124】
【0125】
各患者は排便頻度の異常の程度を確立するための彼又は彼女自身の対照として働く。
毎日の出血スコアはその日の最も重度の出血を表す。
臨床医の総合評価は、3つの他の判断基準、腹部の不快や一般的な幸福感に関する患者の毎日の記録、及び医師の所見や患者の行動状態等の他の観察を承認する。
【0126】
Mayoスコアによる寛解は、(1)排便頻度(正常な排便頻度)、(2)直腸出血(直腸出血なし)、(3)患者の機能的評価スコア(全般的に良好)、(4)内視鏡的所見(正常)、及びPGAスコア0の完全な解決として定義することができる。Mayoスコアにより決定される応答は、通常、PGAスコアにおける改善(ベースラインから最低1ポイントの減少)、少なくとも1つの他の臨床的評価(排便頻度、直腸出血、患者の機能的評価、内視鏡的所見)における改善、並びに他のいずれの臨床的評価においても悪化がないことを必要とする。
【0127】
あるいは、臨床的寛解はMayoスコア0として、また、臨床的改善(応答)はMayoスコア3ポイント以上のベースラインからの減少として、定義することができる。
【0128】
あるいは、臨床的寛解はMayoスコア0として、また、臨床的改善(応答)はMayoスコア3ポイント以上のベースラインからの減少(又はベースラインのMayoスコアが3ポイント以下の場合は、2ポイント以上の減少)として、定義することができる。
【0129】
あるいは、Mayoスコアにより決定される寛解は、S状結腸鏡検査と直候出血の両方について0のサブスコアと、排便頻度及びPGAサブスコアについて0もしくは1のスコアを必要とすると定義することができる。応答は、Mayoスコア3ポイント以上のベースラインからの減少として定義することができ、臨床的応答は、Mayoスコア(内視鏡検査のサブスコアなし、部分的Mayoスコアとしても知られる)2ポイント以上のベースラインからの減少として定義することができ、内視鏡的応答は、内視鏡検査のサブスコア1ポイント以上のベースラインからの減少として定義することができる。
【0130】
あるいは、臨床的寛解は、2ポイント以上の個別のサブスコアのない2ポイント以下の総Mayoスコアとして定義することができ、臨床的応答は、総Mayoスコア3ポイント以上及び30%以上のベースラインからの減少並びに直腸出血サブスコア1ポイント以上の減少又は0もしくは1の絶対的直腸出血サブスコアとして定義することができ、粘膜治癒は、0もしくは1の絶対的内視鏡検査サブスコアとして定義することができる。
【0131】
一実施態様において、活動性の潰瘍性大腸炎を有する患者は、3以上のMayoスコアを有する。潰瘍性大腸炎の寛解期にある患者は、通常2以下のMayoスコアを有する。
【0132】
改変Mayoスコアは上で定義されたMayoスコアに関連する。改変MayoスコアはMayoスコアに対する任意の改変である。内視鏡検査アセスメントの評価のための中央値が、現在、創薬における標準である。改変Mayoスコアに関するFDAからの推奨は、結腸内視鏡検査/S状結腸鏡検査スコアリングがグレード1における脆弱をあまり考慮しないことである。さらに、FDAは、PGAはある程度の主観的評価を含むので、それを該スコアから除くことを推奨している。それらの2つの改変は通常、改変Mayoスコアと呼ばれるものである。
【0133】
改変Mayoスコアに関する寛解及び応答の数値は、臨床開発において定義され、異なる薬物の中でわずかに変動し得る。さらなる情報はhttp://www.fda.gov/downloads/Drugs/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/Guidances/UCM515143.pdfにある「潰瘍性大腸炎:産業のための臨床試験エンドポイントガイダンス」に見出され得る。
【0134】
UCの寛解の誘導は、S. P. L. Travis, Aliment Pharmacol Ther 2011; 34: 113-124(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に示された判断基準に従うことができる、即ち、それは直腸出血、排便頻度の切迫及び増加の完全な中止であり、好ましくは内視鏡検査による粘膜治癒により確認される。
【0135】
あるいは、応答又は寛解の誘導は、E.F. Stange, Journal of Crohn's and Colitis (2008) 2, 1-23; S.P.L. Travis, Journal of Crohn's and Colitis (2008) 2, 24-62; K Geboes, Gut 2000; 47: 404-409(参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)に示された判断基準に従うことができる。
【0136】
クローン病患者における応答又は寛解の誘導は、1以上の標準的な指標に従って決定することができる。典型的な指標としては、Crohn’s Disease Activity Index (CDAI) が挙げられる。CDAIは、Love, “Pharmacotherapy for Moderate to Severe Inflammatory Bowel Disease: Evolving Strategies”, Am J Manag Care. 2016;22:S39-S50; Peyrin-Biroulet et al “Defining disease severity in inflammatory bowel diseases: current and future directions” Clin Gastroenterol Hepatol. 2015; pii: S1542-3565(15)00787-00789. doi: 10.1016/j.cgh.2015.06.001; 及びUngar et al “Advances in the development of new biologics in inflammatory bowel disease”, Annals of Gastroenterology (2016) 29, 243-248において考察されている。クローン病患者を評価するための代替的指標としては、Harvey-Bradshaw index及びInflammatory Bowel Disease Questionnaireが挙げられる。
【0137】
CDAIは、液状便又は軟便;腹痛;全体的な生活状態;合併症の存在(関節痛(arthralgia)又は明らかな関節炎の存在;虹彩の炎症又はぶどう膜炎;結節性紅斑、壊疽性膿皮症又はアフター性潰瘍;裂肛、瘻又は膿瘍;他の瘻;前週の発熱);下痢のためのロモチル又はアヘン剤の使用;腹部腫瘤;ヘマトクリット値;及び標準体重からのパーセント偏差を含む、クローン病に関連する多数の症状を考慮に入れた混成スコアである。CDAIによる臨床的寛解は通常、150未満のスコアによって示される。
【0138】
本発明により治療される対象は、通常、難治性又は応答が不十分であり、あるいは、抗炎症療法に不寛容である、及び/又は不十分な応答、応答の消失又は少なくとも1つの免疫調節剤、TNF-α阻害剤、抗インテグリン、JAK阻害剤もしくはIL-12/IL-23阻害剤(先端治療としても知られる)に対する不寛容を示すか、以前に示したことがある。本発明により治療される対象は、通常、難治性又は応答が不十分であり、あるいは、抗炎症療法に不寛容である。本発明により治療される対象は、通常、難治性又は応答が不十分であり、あるいは、少なくとも1つの免疫調節剤に不寛容である。本発明により治療される対象は、通常、難治性又は応答が不十分であり、あるいは、少なくとも1つのTNF-α阻害剤に不寛容である。
【0139】
従って、通常、対象は、抗炎症療法、好ましくはUCに対する抗炎症療法、及び/又は免疫調節、TNF-α阻害剤もしくは抗インテグリン療法、好ましくはUCに対するそのような治療を、以前に受けたことがあるか、現在受けている。
【0140】
UCに対する抗炎症療法は本明細書で考察され、通常、経口コルチコステロイド及びグルココルチコステロイド(GCS)、スルファサラジン及び5-ASAを含む。従って、本発明により治療される対象は、通常、難治性又は応答が不十分であり、あるいは、GCS、スルファサラジン及び/又は5-ASAに不寛容である。通常、本発明により治療される対象は、難治性又は応答が不十分であり、あるいは、経口コルチコステロイドに不寛容である。
【0141】
免疫調節剤、TNF-α阻害剤及び抗インテグリンは本明細書で考察され、通常、アザチオプリン、6-メルカプトプリン並びにTNF-α阻害剤のインフリキシマブ及びそのバイオシミラー及び誘導体、ゴリムマブ及びそのバイオシミラー及び誘導体、アダリムマブ及びそのバイオシミラー及び誘導体を含む生物製剤、並びに抗インテグリンのベドリズマブ及びそのバイオシミラー及び誘導体を含む。従って、本発明により治療される対象は、通常、難治性又は応答が不十分であり、あるいは、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、インフリキシマブ及びそのバイオシミラー及び誘導体、ゴリムマブ及びそのバイオシミラー及び誘導体、アダリムマブ及びそのバイオシミラー及び誘導体、並びに抗インテグリンのベドリズマブ及びそのバイオシミラー及び誘導体に不寛容である。通常、本発明により治療される対象は、難治性又は応答が不十分であり、あるいは、アザチオプリン及び/又は6-メルカプトプリンに不寛容である。通常、本発明により治療される対象は、難治性又は応答が不十分であり、あるいは、アザチオプリン及び/又は6-メルカプトプリンに不寛容である。通常、本発明により治療される対象は、難治性又は応答が不十分であり、あるいは、インフリキシマブ及び/又はアダリムマブに不寛容である。本発明により治療される対象は、難治性又は応答が不十分であり、あるいは、JAK阻害剤(例えば、トファシチニブ)に不寛容である。本発明により治療される対象は、難治性又は応答が不十分であり、あるいは、IL-12/IL-23阻害剤(例えば、ウステキヌマブ)に不寛容である。
【0142】
本発明の文脈において、難治性疾患又は治療に対する応答が不十分な疾患は、通常、活動性の疾患の兆候及び症状が、少なくとも1回の治療歴、例えば、抗炎症療法や免疫調節療法の治療歴にもかかわらず持続する疾患である。通常、UC治療の文脈において、活動性の疾患の兆候及び症状は、2回以上の抗炎症療法又は免疫調節療法の履歴にもかかわらず持続する。UCに対する抗炎症又は免疫調節療法による典型的な治療は、当業者にはよく理解されており、通常、典型的な患者において寛解を誘導するのに十分な投与量で、十分な回数の投与を含むであろう。
【0143】
本発明の文脈において、治療、例えば、いわゆる先端治療を含む抗炎症療法又は免疫調節療法に対する不寛容とは、該治療が寛容でない対象において副作用を引き起こしたこと、例えば、典型的には治療の中止を引き起こすことを意味する。
【0144】
通常、対象は、アミノサリチル酸(5-ASA)、好ましくはUCに対する5-ASA治療を過去に受けたことがある、又は現在受けている。
【0145】
通常、対象は、経口グルココルチコステロイド(GCS)、好ましくはUCに対する経口GCS治療を過去に受けたことがある、又は現在受けている。
【0146】
通常、難治性又は応答が不十分であり、あるいは、抗炎症療法に不寛容な対象は、直腸、経口及び/又は非経口のGCS治療に不十分な応答、応答の消失(即ち、難治性である)又は不寛容を示すか、以前に示したことがある(より早期の副作用のせいでGCS治療しないことを含む)。
【0147】
通常、難治性又は応答が不十分であり、あるいは、抗炎症療法に不寛容な対象は、GCS治療に不十分な応答(例、ステロイド難治性)、又はステロイド依存性、又は応答の消失、又は不寛容の履歴又は現状を有する。ステロイド/GCSは通常、潰瘍性大腸炎の治療の過程で対象が受容することになろう。
【0148】
ステロイド難治性は通常、少なくとも1回のステロイド治療、例えば、プレドニゾン40-60mg/日と等価な用量を30日の期間にわたり経口投与するか、7から10日の期間にわたり静脈内(IV)投与する誘導レジメンの履歴にもかかわらず、意味のある臨床的応答を欠く、即ち、持続的に活動性の潰瘍性大腸炎の兆候及び症状を示す対象のことをいう。
【0149】
ステロイド依存性は通常、ステロイドを開始して3ヶ月以内に、プレドニゾロン10mg/日当量未満にステロイドを減らせないか、ステロイドを止めて3ヶ月以内に再発するかのいずれかである患者のことをいう。
【0150】
GCS治療の不寛容は通常、対象がGCS治療後に、限定されないが、クッシング症候群、骨減少/骨粗鬆症、高血糖、不眠症又は感染等の、該対象が忍容できない副作用を経験することを意味する。
【0151】
通常、難治性又は応答が不十分であり、あるいは、免疫調節剤に不寛容な対象は、免疫調節剤に不十分な応答、又は応答の消失(即ち、難治性である)又は不寛容を示すか、以前に示したことがある。例えば、難治性又は応答が不十分であり、あるいは、TNF-α阻害剤に不寛容な対象は、TNF-α阻害剤に不十分な応答、又は応答の消失(即ち、難治性である)又は不寛容を示すか、以前に示したことがある。
【0152】
免疫調節剤に対する不十分な応答又は応答の消失とは、通常、少なくとも1つの免疫調節剤による過去の治療、例えば、経口アザチオプリン(1.5mg/kg以上)又は6-メルカプトプリン(0.75mg/kg以上)の8週レジメンにもかかわらず、活動性の潰瘍性大腸炎の兆候及び症状が持続することを意味する。
【0153】
免疫調節剤に対する不寛容とは、通常、対象が、吐き気/嘔吐、腹痛、膵炎、肝機能試験(LFT)異常、リンパ球減少、チオプリンメチルトランスフェラーゼ(TPMT)遺伝子変異、又は感染又は他の副作用を、免疫調節剤を受容した後に経験したことを意味する。
【0154】
TNF-α阻害剤に対する不十分な応答又は応答の消失とは、少なくとも1つのTNF-α阻害剤による過去の治療、例えば、インフリキシマブ(5mg/kg(IV)、少なくとも2週間空けて2回投与)又はそのバイオシミラー又は誘導体;ゴリムマブ(200/100mg(sc)、少なくとも2週間空けて2回投与)又はそのバイオシミラー又は誘導体;又はアダリムマブ(160/80mg(sc)、少なくとも2週間空けて2回投与)又はそのバイオシミラー又は誘導体の4週の誘導レジメン(又は現在のラベルにより推奨される用法用量)にもかかわらず、活動性の潰瘍性大腸炎の兆候及び症状が持続すること、あるいは先の臨床的恩恵の後の維持投与の間に症状が再発することを意味する。
【0155】
TNF-α阻害剤に対する不寛容とは、TNF-α阻害剤の受容後の点滴関連反応、脱髄、鬱血性心不全、感染又は他の副作用を意味する。
【0156】
抗インテグリンに対する不十分な応答又は応答の消失とは、抗インテグリンによる過去の治療、例えば、ベドリズマブ300mg(IV)又はそのバイオシミラー又は誘導体の少なくとも10週のレジメン、あるいは現在のラベルにおいて推奨されるレジメンにもかかわらず、活動性の潰瘍性大腸炎の兆候及び症状が持続すること、あるいは先の臨床的恩恵の後の維持投与の間に症状が再発することを意味する。
【0157】
通常、対象は、直腸S状結腸炎を含む左側潰瘍性大腸炎、即ち、遠位の大腸炎を有すると診断されている。例えば、該対象は、中等症から重症の左側潰瘍性大腸炎を有すると診断されていてもよい。
【0158】
通常、対象は結腸切除をするかしないか選択できる。
【0159】
本明細書で用いられる用語「結腸切除」とは、大腸(結腸)の任意の程度を外科的に切除することをいう。本明細書において、結腸切除としては、右半結腸切除、左半結腸切除、拡大半結腸切除、横行結腸切除、S状結腸切除、直腸S状結腸切除、ハートマン手術、「双口式」又はミクリッツ結腸人工肛門造設術、全結腸切除(レーンの手術としても知られる)、全直腸結腸切除及び結腸亜全摘が挙げられるが、それらに限定されない。本明細書で用いられる成句「結腸切除をするかしないか選択できる」とは、臨床医及び外科医の評価に基づいて、緊急でない結腸切除の手術を受けるかを選択できる対象のことをいう。結腸切除をするかしないか選択できる対象は、利用可能な(潰瘍性大腸炎の)治療に対して難治性であるか、、利用可能な(潰瘍性大腸炎の)治療に不寛容である対象であり得るが、それらに限定されない。これは、直ちに医療的配慮を必要とする急な病気又はけがを有する対象への急な介入である、緊急の結腸切除とは異なる。該成句はまた、結腸切除を選択する対象を包含する。
【0160】
本発明はまた、患者における活動性の潰瘍性大腸炎の再発の予防における使用のための、本明細書に記載の製剤又は本明細書に記載の予め充填された浣腸を提供する。
【0161】
従って、該製剤は維持治療としての使用のためのものであってもよい。本発明のこの側面の文脈において、活動性の潰瘍性大腸炎の再発の予防という場合、該疾患の活動期の再発を予防すること、即ち、患者を寛解状態に維持し、維持治療を提供することを指すことを意図している。従って、本発明は、潰瘍性大腸炎の活動期の再発又は逆戻りを予防するための、本明細書に記載の製剤の使用に関する。本明細書において上記された製剤は、活動性の潰瘍性大腸炎に関連する症状の再発又は逆戻りを予防するための、及び/又は患者の状態を改善するための維持治療として使用することができる。
【0162】
患者は、本明細書に記載の任意の患者又は対象であり得る。例えば、該患者は、本明細書に記載のいかなるタイプの潰瘍性大腸炎に罹患していてもよい。通常、対象は、直腸S状結腸炎を含む、左側大腸炎、即ち、遠位の大腸炎を有すると診断されている。
【0163】
通常、患者は、以前に活動性の潰瘍性大腸炎に対する治療を受けており、例えば、該患者は、1以上の活動性の潰瘍性大腸炎の治療剤を、以前に受容していてもよい。該1以上の治療剤は、本明細書に記載の配列番号2のオリゴヌクレオチドを含んでいてもよい。該1以上の治療剤は、本明細書に記載さるような、潰瘍性大腸炎を治療するのに用いられる任意の他の治療剤を含んでいてもよい。
【0164】
維持治療としてのコビトリモドの使用は、WO 2020/099585に記載されており、参照によりその内容は本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0165】
実施例1-分解研究
【0166】
コビトリモドの場合において、原薬(および医薬品)で観察される主な不純物は、主要な製品関連不純物N-3' PO/N-5' POであり、相対保持時間(RRT)は0.95~0.96(IP-RP HPLCを使用)である。この不純物は、1つのホスホチオエートが、対応するPOへの酸化、即ち、1つの硫黄原子の酸素原子への置換により形成される。結果として生じる不純物は、構造において、コビトリモドと比較して通常の内因性DNAに近い。
【0167】
最初の強制的な分解研究では、化合物を5日間にわたる凍結乾燥サイクル(5回の繰り返し)に供したが、分解は検出されなかった。
【0168】
50℃および80℃でのコビトリモドの熱安定性も4日間にわたり試験した。サンプルを50℃で保存しても、化合物の分解は起こらなかった。80℃では、4日後に約4面積%の重大な分解が記録された。LC/MSデータは、高温ではPO不純物のレベルが増加し、低レベルではあるものの、脱プリン生成物やピリミド化生成物も増加することを示している。これらの分解産物は、通常このタイプのオリゴヌクレオチドで発生すると予想されるものである。
【0169】
同じロットのサンプルに対して、pH(酸、塩基)、酸化および露光によるさらなる強制的な分解研究を実施した。
【0170】
酸、過酸化物への曝露、および写真露出により、様々な程度の分解が生じた。
【0171】
塩基に暴露されたサンプルでは分解は観察されなかった。
【0172】
酸および過酸化物に暴露されると、PO-およびN-1不純物が増加し、初期溶出ピークが増加した。また、光露光により、POおよびN-1不純物がわずかに増加した。コビトリモドは、PO/PSヌクレオチド間骨格を有するため、過酸化水素の存在下ではPSがPOに変換され、コビトリモドのPO不純物が形成される。
【0173】
解析手順
【0174】
IP-RP-HPLCによる、純度、不純物およびアッセイ
【0175】
コビトリモドの純度、不純物およびアッセイは、IP-RP HPLCによって測定する。公称0.5 mg/mLのサンプル溶液を精製水で調製する。解析対象物は、温度制御下に保たれたC18分析カラムで、グラジエント溶媒システムを使用して溶出する。検出は260 nmのUVによって実行する。
【0176】
IEX HPLCによる純度および不純物
【0177】
コビトリモドの純度および不純物は、IEX HPLCによっても測定できる。公称1 mg/mLのサンプル溶液を精製水で調製する。解析対象物は、温度制御下に保たれたDNAPac-100分析カラム上で、グラジエントバッファーシステムを使用して溶出する。検出は260 nmのUVによって実行する。
【0178】
結論
【0179】
コビトリモドは、特定の保管条件下で分解しやすいことが示される。特に、温度の上昇、酸や酸化剤への曝露はいずれもコビトリモドの分解に繋がる。光露光により、軽度の分解が検出され得る。
【0180】
実施例2-浣腸製剤および安定性試験
【0181】
31 mg/50 mL(V2263)のバッチ、ならびに250 mg/50 mL (V3009、V3080)のバッチおよび500 mg/50 mL(V3045、V3081、V3112)のバッチを含む、コビトリモド直腸液のいくつかのバッチを製造した。以下の表2は、異なるバッチ間の主要な差異を要約したものである。
【0182】
【表1】
【0183】
【表2】
【0184】
V3080バッチは、V3009と同じ組成を有する。V3081およびV3112バッチは、V3045と同じ組成を有する。
【0185】
コビトリモド直腸液は、表1における6つの成分を水に溶解することにより製造する。すべての成分は、水に可溶である。パラベンのナトリウム塩およびリン酸二ナトリウム二水和物は、中性から塩基性のpHでより溶解する。無水クエン酸は、酸性成分である。リン酸二ナトリウム二水和物および無水クエン酸は、溶液の緩衝系である。APIは、溶液が確実に保存および緩衝されるようにするために、最後のステップとして追加される。
【0186】
安定性データ
【0187】
安定性の要約および結論
【0188】
250 mg/50 mLおよび500 mg/50 mLでのコビトリモド直腸液の安定性データは、これまでのところ、24か月まで利用可能である。少なくとも250 mg/50 mLの濃度でのコビトリモド直腸液は、2-8℃(周囲の相対湿度、RH)および25℃(40%RH)で保存すると24か月まで、40℃(25%RH)で保存すると6か月まで安定である。
【0189】
安定性プロトコール
31 mg/50 mLでの示された安定性バッチの安定性プロトコールを、表3に示す。このバッチを、軟PVCアプリケーター(V2263)を使用して、製造者により示された最初の浣腸ボトルを用いて手動で製造し、安定(水平位置)に置いた。浣腸ボトルはブリスターではなかった。
【0190】
【表3】
【0191】
250 mg/50 mLでのV3009バッチの安定性プログラム(最終ブリスター容器閉鎖系:PEボトルおよび軟PEアプリケーターにおいて)を、表4に示す。
【0192】
【表4】
【0193】
500 mg/50 mLでのV3045バッチの安定性プログラム(最終ブリスター容器閉鎖系:PEボトルおよび軟PEアプリケーターにおいて)を、表5に示す。
【0194】
【表5】
【0195】
V3080およびV3081バッチの治験薬の安定性プログラムを、表6に示す。
【0196】
【表6】
【0197】
実施例3 - 安定性試験
上記の安定性プログラムで詳述したように、異なるバッチについて広範な安定性試験を実施した。データを以下に示す。
【0198】
安定性データ
250 mg/50 mLでのV3009バッチの安定性プログラムの結果を、表7(5℃)、表8(25℃)、および表9(40℃)に示す。
【0199】
500 mg/50 mLでのV3045バッチの安定性プログラムの結果を、表10(5℃)、表11(25℃)、および表12(40℃)に示す。
【0200】
250 mg/50 mLでのV3080バッチの安定性プログラムの結果を、表13(5℃)、表14(25℃)、および表15(40℃)に示す。
【0201】
500 mg/50 mLでのV3081バッチの安定性プログラムの結果を、表16(5℃)、表17(25℃)、および表18(40℃)に示す。
【0202】
【表7】
【0203】
【表8】
【0204】
【表9】
【0205】
【表10】
【0206】
【表11】
【0207】
【表12】
【0208】
【表13】
【0209】
【表14】
【0210】
【表15】
【0211】
【表16】
【0212】
【表17】
【0213】
【表18】
【0214】
結論
【0215】
250 mg/50 mlおよび500 mg/50 mLでのコビトリモド直腸液について、安定性データを取得した。結果は、本発明によるコビトリモド直腸液が、250 mg/50 mLおよび500 mg/50 mLの両濃度において、常温条件でも、高温および/または湿度に曝された場合でも、安定であることを示す。両濃度は、試験された条件の範囲にわたって、同様の安定性を示す。
【0216】
実施例4-プレフィルド浣腸の安定性の比較研究
【0217】
水中(例えば、国際公開第2021/037764号に記載)および本浣腸製剤中のコビトリモドの安定性を比較した。また、保存水(水+パラベン)中での安定性も評価した。各処方の組成を表19に示す。
【0218】
各製剤を浣腸ボトルに充填し、40℃+/-2℃(75%RH+/-5%RH)で12か月まで、安定性研究を行った。
【0219】
【表19】
【0220】
結果を表20に示す。
【0221】
【表20】
【0222】
結論
【0223】
主な分解不純物(RRT 0.96-0.98 (N-3' PO/N-5' PO))および総不純物からのデータは、コビトリモドがコビトリモドと水の製剤中よりも本発明の製剤中でより安定であることを示している。
【0224】
さらに、データは、分解がボトル内の潜在的な微生物汚染だけから生じるのではなく、酸化によっても生じることを示している。特に、pHデータは、保存水を使用した製剤(微生物汚染の可能性に関するあらゆる問題が排除されている)でも依然として許容できないレベルまで分解していることを示している。対照的に、本発明の製剤は同様には分解しなかった。
【0225】
本発明のさらなる側面を以下の番号づけた項に示す:
1.(i)配列5'-GGAACAGTTCGTCCATGGC-3'(配列番号2)を含むオリゴヌクレオチド、(ii)少なくとも1つの保存剤、及び(iii)クエン酸及びリン酸塩を含む緩衝液を含有する、直腸投与に適した水性製剤。
2.少なくとも1つの保存剤が1以上のパラベン類を含み、好ましくは、該少なくとも1つの保存剤が、メチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム及びそれらの混合物から選択される、項1に記載の製剤。
3.製剤が6.0から8.0の範囲のpHを有し、好ましくは、製剤が6.5から8.0の範囲のpHを有する、先行する項のいずれかに記載の製剤。
4.リン酸塩がリン酸水素二ナトリウムである、先行する項のいずれかに記載の製剤。
5.オリゴヌクレオチド中の少なくとも1つのCGジヌクレオチドがメチル化されていない、先行する項のいずれかに記載の製剤。
6.オリゴヌクレオチド中の少なくとも1つのヌクレオチドが骨格修飾を有する、先行する項のいずれかに記載の製剤。
7.骨格修飾が、ホスホロチオエート又はホスホロジチオエート修飾で表されるリン酸骨格修飾である、項6に記載の製剤。
8.骨格修飾が、オリゴヌクレオチドの5’-及び/又は3’-末端に位置する、項6又は項7に記載の製剤。
9.オリゴヌクレオチドが配列5'-GGAACAGTTCGTCCATGGC-3'(配列番号2)を有し、CGジヌクレオチドがメチル化されていない、先行する項のいずれかに記載の製剤。
10.オリゴヌクレオチドが配列5'- G*G*A*ACAGTTCGTCCAT*G*G*C-3'(配列番号1)を有し、CGジヌクレオチドがメチル化されていない、先行する項のいずれかに記載の製剤。
11.オリゴヌクレオチドがコビトリモドである、先行する項のいずれかに記載の製剤。
12.オリゴヌクレオチドが0.5から15mg/mLの濃度で製剤中に存在する、好ましくは、該オリゴヌクレオチドが2.5から12.5mg/mLの濃度で製剤中に存在する、先行する項のいずれかに記載の製剤。
13.オリゴヌクレオチドが約2.5mg/mLの濃度で製剤中に存在する、先行する項のいずれかに記載の製剤。
14.オリゴヌクレオチドが約5mg/mLの濃度で製剤中に存在する、項1から12のいずれか一項に記載の製剤。
15.オリゴヌクレオチドが約10mg/mLの濃度で製剤中に存在する、項1から12のいずれか一項に記載の製剤。
16.自己投与に適した、予め充填された浣腸であって、
(a)容器;及び該容器内に(b)項1から15のいずれか一項で定義された製剤
を含む、予め充填された浣腸。
17.容器が絞れるビンを含み、好ましくは、該絞れるビンがぺしゃんこになる形状のビンである、項16に記載の予め充填された浣腸。
18.ビンがポリエチレンから形成される、好ましくは、ビンが低密度のポリエチレンから形成される、項17に記載の予め充填された浣腸。
19.容器が製剤を投薬するのに適したアプリケーターをさらに含む、項16から18のいずれか一項に記載の予め充填された浣腸。
20.アプリケーターが直腸への挿入に適したチップを含む、項19に記載の予め充填された浣腸。
21.アプリケーターがポリエチレンから形成される、好ましくは、アプリケーターが低密度のポリエチレンから形成される、項19又は20に記載の予め充填された浣腸。
22.容器がぺしゃんこになる形状のビン及び製剤を投薬するのに適したアプリケーターを含み、該アプリケーターが直腸への挿入に適したチップを含み、該ビンと該アプリケーターはどちらもポリエチレンから形成される、好ましくは、該ビンと該アプリケーターはどちらも低密度のポリエチレンから形成される、項16から21のいずれか一項に記載の予め充填された浣腸。
23.容器内の製剤量が20から60mLである、好ましくは、容器内の製剤量が約50mLである、項16から22のいずれか一項に記載の予め充填された浣腸。
24.1以上の、項16から23のいずれか一項で定義された予め充填された浣腸を含むパック。
25.パックが包装ガスをさらに含み、好ましくは該包装ガスが窒素である、項24に記載のパック。
26.パックがブリスターパックであり、該ブリスターパックが1以上の予め充填された浣腸が密封された1以上のポケットを含む、項25又は項26に記載のパック。
27.1以上のポケットが包装ガスを含み、好ましくは該包装ガスが窒素である、項26に記載のパック。
28.炎症性腸疾患の治療における使用のための、項1から15のいずれか一項に記載の製剤であって、好ましくは、炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎又はクローン病である、製剤。
29.製剤が、項16から23のいずれか一項で定義された予め充填された浣腸を用いて直腸投与される、好ましくは、該製剤が、項16から23のいずれか一項で定義された予め充填された浣腸を用いて自己投与される、項28に記載の使用のための製剤。
30.対象における炎症性腸疾患の治療方法であって、該方法は、項1から15のいずれか一項に記載の製剤を該対象に直腸投与することを含み、好ましくは炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎又はクローン病である、方法。
31.製剤が、項16から23のいずれか一項で定義された予め充填された浣腸を用いて投与される、好ましくは、該製剤が、項16から23のいずれか一項で定義された予め充填された浣腸を用いて、対象により自己投与される、項30に記載の方法。
32.炎症性腸疾患の治療薬の製造のための、項1から15のいずれか一項で定義された製剤の使用であって、好ましくは炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎又はクローン病である、使用。
【0226】
配列表
配列番号1
5’-G*G*A*ACAGTTCGTCCAT*G*G*C-3'(アスタリスク(*)はホスホロチオエート結合を示す)
配列番号2
5'-GGAACAGTTCGTCCATGGC-3'
【配列表】
2024505957000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)配列5'-GGAACAGTTCGTCCATGGC-3'(配列番号2)を含むオリゴヌクレオチド、(
ii)少なくとも1つの保存剤、及び(iii)クエン酸及びリン酸塩を含む緩衝液を含有する、直腸投与に適した水性製剤。
【請求項2】
少なくとも1つの保存剤が1以上のパラベン類を含み、好ましくは、該少なくとも1つの保存剤が、メチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
製剤が6.0から8.0の範囲のpHを有し、好ましくは、製剤が6.5から8.0の範囲のpHを有する請求項に記載の製剤。
【請求項4】
リン酸塩がリン酸水素二ナトリウムである請求項に記載の製剤。
【請求項5】
オリゴヌクレオチドが配列5'-GGAACAGTTCGTCCATGGC-3'(配列番号2)を有し、CGジ
ヌクレオチドがメチル化されていない、好ましくは、該オリゴヌクレオチドが配列5'- G*G*A*ACAGTTCGTCCAT*G*G*C-3'(配列番号1)を有し、CGジヌクレオチドがメチル化されていない、より好ましくは、該オリゴヌクレオチドがコビトリモドである請求項に記載の製剤。
【請求項6】
オリゴヌクレオチドが0.5から15mg/mLの濃度で製剤中に存在する、好ましくは、該オリゴヌクレオチドが2.5から12.5mg/mLの濃度で製剤中に存在する請求項に記載の製剤。
【請求項7】
自己投与に適した、予め充填された浣腸であって、
(a)容器;及び該容器内に
(b)請求項1から6のいずれか一項で定義された製剤
を含む、予め充填された浣腸。
【請求項8】
容器が絞れるビンを含み、好ましくは、該絞れるビンがぺしゃんこになる形状のビンである、請求項7に記載の予め充填された浣腸。
【請求項9】
ビンがポリエチレンから形成される、好ましくは、ビンが低密度のポリエチレンから形成される、請求項8に記載の予め充填された浣腸。
【請求項10】
容器が製剤を投薬するのに適したアプリケーターをさらに含み、好ましくは、該アプリケーターが直腸への挿入に適したチップを含む、請求項に記載の予め充填された浣腸。
【請求項11】
アプリケーターがポリエチレンから形成される、好ましくは、アプリケーターが低密度のポリエチレンから形成される、請求項10に記載の予め充填された浣腸。
【請求項12】
容器内の製剤量が20から60mLである、好ましくは、容器内の製剤量が約50mLである、請求項に記載の予め充填された浣腸。
【請求項13】
1以上の、請求項で定義された予め充填された浣腸を含むパック。
【請求項14】
炎症性腸疾患の治療における使用のための、請求項1から6のいずれか一項に記載の製剤であって、好ましくは、炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎又はクローン病である、製剤。
【請求項15】
製剤が、請求項で定義された予め充填された浣腸を用いて直腸投与される、好ましくは、該製剤が、請求項で定義された予め充填された浣腸を用いて自己投与される、請求項14に記載の使用のための製剤。
【国際調査報告】