(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】混合ポリオール-カルボン酸エステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 67/08 20060101AFI20240201BHJP
C07C 69/33 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C07C67/08
C07C69/33
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546416
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2023-09-21
(86)【国際出願番号】 EP2022051905
(87)【国際公開番号】W WO2022167318
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】102021102508.7
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507254975
【氏名又は名称】オーキュー・ケミカルズ・ゲゼルシャフト・ミト・べシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】バルツァレク・クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ライス・エドゥアルト
(72)【発明者】
【氏名】クービチュケ・イェンス
(72)【発明者】
【氏名】シュタイン・ロスヴィタ
(72)【発明者】
【氏名】ツィンメラー・ユーリア
(72)【発明者】
【氏名】ヒンツマン・アレサ
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC48
4H006KA06
(57)【要約】
本発明は、200g/mol以上かつ1000g/mol以下の分子量を有する混合ポリオール-カルボン酸エステルを製造するための方法であって、ポリオールを少なくとも2段階の反応で、モノカルボン酸またはモノカルボン酸無水物の形態の種々のモノカルボン酸と反応させ、ここで、前記の種々のモノカルボン酸は、エステル化反応においてそれらの反応性の順に最も低い反応性から出発して、ポリオールと反応させ、その際、比較的低い反応性を有するモノカルボン酸を、少なくとも一部はモノカルボン酸無水物として、引き続き、最も高い反応性を有するモノカルボン酸をモノカルボン酸として、ポリオールと反応させる、前記方法に関する。さらに、本発明は、混合ポリオールエステルの製造方法の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
200g/mol以上かつ1000g/mol以下の分子量を有する混合ポリオール-カルボン酸エステルを製造するための方法であって、ポリオールを少なくとも2段階の反応で、モノカルボン酸またはモノカルボン酸無水物の形態の種々のモノカルボン酸と反応させ、ここで、前記の種々のモノカルボン酸は、エステル化反応においてそれらの反応性の順に最も低い反応性から出発して、ポリオールと反応させ、その際、比較的低い反応性を有するモノカルボン酸は、少なくとも一部はモノカルボン酸無水物として、引き続き、最も高い反応性を有するモノカルボン酸はモノカルボン酸として、ポリオールと反応させることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
2種の異なるモノカルボン酸をポリオールと反応させ、ただし、第1のステップでは、比較的反応不活性なモノカルボン酸を、70%以上をモノカルボン酸無水物としてポリオールと反応させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1ステップにおいては、比較的反応不活性なモノカルボン酸をカルボン酸無水物として、および第2ステップにおいては、比較的反応性の高いモノカルボン酸をモノカルボン酸として、ポリオールと反応させる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリオールが、2個以上かつ8個以下のOH基を有する、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記ポリオールが、50g/mol以上かつ400g/mol以下の分子量を有する脂肪族ポリオールである、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
異なる反応段階を、後処理なしに、ただ1つの反応溶液中で実施する、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
エステル化が、エステル化触媒の添加なしで行われる、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
比較的反応不活性なモノカルボン酸を無水物の形態で導入し、最初はポリオールの一部とのみ反応させ、ポリオールの残部を、引き続き、比較的高い反応性を有する1種または複数のモノカルボン酸と一緒に添加する、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
比較的反応不活性なモノカルボン酸が、カルボン酸基に対してα位にアルキル基を有する分岐モノカルボン酸であり、比較的反応性の高いモノカルボン酸が、カルボン酸基に対してα位にアルキル基を有さない分岐または非分岐のC4~C18モノカルボン酸である、請求項2~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
比較的反応不活性なモノカルボン酸がイソ酪酸であり、比較的反応性の高いモノカルボン酸がイソノナン酸である、請求項1~9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
比較的反応不活性なモノカルボン酸に対するポリオールのモル比、および最も反応性の高いモノカルボン酸のモノカルボン酸に対するポリオールのモル比がそれぞれ、各成分のモル/ポリオールのモルとして表して、1以上かつ3.5以下である、請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
異なる反応段階における温度が異なっており、比較的低い反応性を有するモノカルボン酸の第1のエステル化ステップにおける温度は、モノカルボン酸の最後のエステル化ステップにおける温度よりも50℃以上かつ100℃以下だけ低い、請求項1~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
少なくとも2種の異なるエステル基と、0以上かつ10以下のヒドロキシル価とを有する混合ポリオールエステルの製造のための、請求項1~12のいずれか1つに記載の方法の使用。
【請求項14】
前記混合ポリオールエステルが、ペンタエリスリトールのイソ酪酸/イソノナン酸エステルである、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記ポリオールエステルは、20モル%以上かつ50モル%以下がイソ酪酸基および50モル%以上かつ80モル%以下がイソノナン酸エステル基を有する、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、200g/mol以上かつ1000g/mol以下の分子量を有する混合ポリオール-カルボン酸エステルを製造するための方法であって、ポリオールを、少なくとも2段階の反応で、モノカルボン酸またはモノカルボン酸無水物の形態の種々のモノカルボン酸と反応させ、ここで、前記の種々のモノカルボン酸は、エステル化反応においてそれらの反応性の順に最も低い反応性から出発して、ポリオールと反応させ、その際、比較的低い反応性を有するモノカルボン酸を、少なくとも一部はモノカルボン酸無水物として、引き続き最も高い反応性を有するモノカルボン酸をモノカルボン酸として、ポリオールと反応させる、前記方法に関する。さらに、本発明は、混合ポリオールエステルの製造方法の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオールエステル(POE)としても知られる多価アルコールのカルボン酸エステルは、産業において大規模におよび様々な方法で使用されている。例えば、この物質クラスは、軟化剤または潤滑剤として使用することができる。ポリオールエステルの使用に関して有利である重要な特徴は、得られるエステルの材料特性が、ポリオールの選択によっても、カルボン酸の選択によっても、制御され得るという事実から生じる。従って、物理的特性、例えば沸点、粘度、曇り点、および化学的特性、例えば、加水分解に対する耐性または酸化的分解に対する安定性が、用途において存在する要件に合わせて調整され得る物質を提供することが可能である。
【0003】
材料特性の「テーラーメイド(Massschneidern)」が可能であることは、冷凍設備の運転にとって特に重要である。例えば、冷媒としてフッ素化および塩素化炭化水素(CFC)を用いる冷凍設備における圧縮機は、種々の潤滑剤、例えば、鉱油、アルキルベンゼンおよび合成炭化水素を用いて運転される。しかしながら、これらの潤滑剤は、冷媒との混和性が低いか又は混和性がないために、純粋にフッ素化された炭化水素の場合に使用することができない。この理由から、フッ素化冷媒にはポリオールエステルまたはポリアルキレングリコール(ポリエーテル)が適しており、その結果、圧縮機の長期的な作動性が広い温度範囲にわたって保証される。混和性に加えて、適切な潤滑物質はさらに、適切な粘度、冷凍装置で使用される物質との目下の圧力-および温度条件下での高い適合性を有していなければならない。ポリオールエステルはそれらの多様性のために、原則として、それらを具体的に存在する使用条件に適合させることによって、これらの要件を満たすことができる。
【0004】
潤滑剤特性の柔軟な調整可能性は、冷媒に対する規制要件は環境上の理由から変化を受けるので、冷凍設備にとって特に有意義である。オゾン分解-および温室効果の可能性の高いCFC冷媒(例えば、R11、R12、R22)の禁止により、純粋にフッ素化された炭化水素(例えば、R32、R410A)がこの分野でますます使用されている:
【0005】
【化1】
冷媒の化学組成の変化は、当然、物理的特性にも影響を及ぼし、従って、それらと共に使用される潤滑剤の特性の調整が望ましい。
【0006】
特許文献においても、ポリオールエステルを製造するための種々の方法が見出される。
【0007】
例えば、DE2317276A1(引用文献1)は、ポリオールの部分エステルから完全にエステル化されたポリオールを製造するための方法であって、ポリオールの部分エステルを、触媒量のパーフルオロアルキルスルホン酸またはパーフルオロアルキルスルホン酸無水物の存在下で、酸無水物でエステル化する方法を開示している。
【0008】
さらに、DE2721260A1(引用文献2)は、イソフタル酸およびテレフタル酸の群からの芳香族ポリカルボン酸を、第1段階で、ポリオールと反応させて半エステル混合物を形成し、それを次いで、第2段階で飽和または不飽和脂肪族ポリカルボン酸と反応させてポリエステルを形成する、ポリエステルの製造のための2段階プロセスであって、(a)ポリオールの第1の部分を、第1段階において、芳香族ポリカルボン酸で撹拌可能な混合物を形成するのに少なくとも十分な量の芳香族ポリカルボン酸と接触させ、(b)撹拌可能な混合物を、少なくとも190℃の温度に加熱し、および(c)残存するポリオール部分を、加熱された撹拌可能な混合物に、この混合物の温度が少なくとも190℃に維持されて半エステル混合物を形成するように添加する、前記2段階プロセスを開示している。
【0009】
最後に、DE102012018207A1(引用文献3)は、ポリオールを、3~20個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状脂肪族モノカルボン酸と反応させることによってポリオールエステルを製造する方法であって、出発化合物の混合物を、触媒としての、元素の周期表の第4~14族の少なくとも1種の元素を含有するルイス酸の存在下で、および吸着剤の存在下で、形成した水を除去しながら反応させ、次いで得られた粗エステルを、さらに別の吸着剤を添加することによって後処理する、前記製造方法を開示している。
【0010】
従来技術から公知のこのような解決策はなおも、特に得られるエステルの組成物のフレキシビリティーおよび制御可能性に関して、さらなる改善の可能性を呈し得るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】DE2317276A1
【特許文献2】DE2721260A1
【特許文献3】DE102012018207A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の課題は、従来技術から知られている欠点を少なくとも部分的に克服することである。特に、本発明の課題は、様々な組成物で、かつ高い転化率で、混合エステルの再現可能な製造を可能にする、改良された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題は、本発明による方法および本発明による使用に向けられた、独立請求項の特徴によって解決される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項、明細書または図面において示され、ここで、従属請求項または明細書もしくは図において記載されるもしくは示されるさらなる特徴は、文脈が明らかに反対を示さない場合、個々に、または任意の組み合わせで、本発明の対象を表すことができる。
【0014】
前記の課題は、本発明に従って、200g/mol以上かつ1000g/mol以下の分子量を有する混合ポリオール-カルボン酸エステルを製造するための方法であって、ポリオールを、少なくとも2段階の反応で、モノカルボン酸またはモノカルボン酸無水物の形態の種々のモノカルボン酸と反応させ、ここで、前記の種々のモノカルボン酸は、エステル化反応においてそれらの反応性の順に最も低い反応性から出発して、ポリオールと反応させ、その際、比較的低い反応性を有するモノカルボン酸を、少なくとも一部はモノカルボン酸無水物として、引き続き最も高い反応性を有するモノカルボン酸をモノカルボン酸として、ポリオールと反応させる、前記方法によって解決される。
【0015】
驚くべきことに、上記の方法によって多数の混合ポリオールエステルを製造することができ、開示された方法手順によって、種々のモノカルボン酸割合を有するエステルの組成物を広い範囲内で決定できることが見出された。これは特に驚くべきことであり、なぜなら、異なる反応性のモノカルボン酸とのエステル化反応は、通常、限られた数の可能な組成物しか得られず、さらなる処置なしで得られるポリオールエステルの組成物は、個々のモノカルボン酸のポリオールの反応性との違いによって予め定まるからである。エステル生成物の組成物におけるこの制限は、特に、著しく異なる誘導効果および/または立体的条件を有するモノカルボン酸が、1つの同一のポリオール上へエステル化される場合に生じ得る。比較的反応不活性なカルボン酸と比較して比較的反応性の高いカルボン酸が、より頻繁に、ポリオールに付加されることが常である。分子量の範囲によって示されるように比較的小さなポリオールの場合、比較的反応性の高いカルボン酸の迅速な反応はさらに、存在するさらに別のカルボン酸の、ポリオールのまだ残っているアルコール基へのアクセスを困難にし、その結果、反応が全体としておよび比較的低い反応性を有するカルボン酸に関して特に、顕著に妨げられる。当該反応はまた、既に一度連結されたエステル結合がエステル残基の交換によって解かれるエステル交換反応が起こり得るので、複雑である。特にこの場合、比較的反応力のある酸残基が、エステル中の比較的低い反応性を有する酸残基と再び置き換わり得る。ポリオールの全てのアルコール基が転化されるべきか、または転化されなければならない場合に特に、複雑さが生じる。このことは、組成物中の制御可能性の低さに加えて、通常、非効率的な著しく長い反応時間、およびエステル組成物の不十分な制御可能性をもたらす。本発明による方法手順により、エステル自体における異なるモノカルボン酸の割合を制御することができ、さらに、本発明による方法手順により、ポリオールの完全な転化に必要な反応時間を著しく減少させることができる。この点に関して、制御された、可変割合の、異なって反応性であるモノカルボン酸を有するポリエステルが得られ、これは、従来技術からの方法手順では知られていない反応条件、ここでは特に反応時間で、実現可能である。
【0016】
上記方法は、200g/mol以上かつ1000g/mol以下の分子量を有する混合ポリオールカルボン酸エステルを製造するための方法である。当該方法は、ポリオールエステルの製造であって、使用されるポリオールがどちらかというと低分子ポリオールである製造に関する。これは、上記の分子量のオーダーに従う。この点に関して、前記方法は、高分子ポリオールのエステル化を含まない。ポリオールは、1超、例えば2個、3個またはそれを超えるヒドロキシル基を有する物質である。ここで、分子の個々のヒドロキシル基は、カルボン酸とのエステル化によって対応するエステルに転化される。好ましくは、前記方法において、ポリオールの存在するヒドロキシル基の全量を、対応するエステル基に転化することができる。従って特に、ポリオールの完全エステルを得ることができる。エステル化に使用されるカルボン酸は、モノカルボン酸である。少なくとも2種の異なるモノカルボン酸を使用することができる。しかしながら、3種またはそれを超えるモノカルボン酸を使用することも可能である。これらの場合、「最も反応性の」モノカルボン酸および「最も反応不活性な」モノカルボン酸が存在し、前者はモノカルボン酸として、後者は、少なくとも一部は無水物として、エステル化反応に添加される。3つの異なるモノカルボン酸の反応の場合、「中間の」カルボン酸をその場合にはカルボン酸もしくは無水物として、またはそれらの混合物として、反応溶液に添加することができる。モノカルボン酸は、脂肪族または芳香族残基を有することができ、モノカルボン酸は、例えば、30g/mol以上かつ250g/mol以下の分子量を有することができる。カルボン酸基に加えて、脂肪族または芳香族残基はさらに、さらに別の官能基または置換基を有することもできる。
【0017】
本発明によって可能な反応は、例えば、ペンタエリスリトール分子のエステル化に関することができる。このポリオールは、例えば、短鎖モノカルボン酸(イソ-C4)および長鎖モノカルボン酸(イソ-C9)でエステル化することができる。個々のカルボン酸の化学量論および反応性に応じて、原理的に5種の異なるテトラエステルが生じ得る(化学量論的ではない式):
【0018】
【化2】
5種の異なるテトラエステルは、本発明の反応の枠内において形成されるポリオールエステルの例である。エステル化されるカルボン酸の組成物および具体的な数は、原則として、個々のモノカルボン酸の反応性によって、およびさらに、本発明に従って前記方法手順により、決定される。エステル化される異なるカルボン酸の割合は、本発明による方法で生じる混合ポリオールエステルの合計を基準とする。
【0019】
上記の方法において、ポリオールは、少なくとも2段階の反応で、モノカルボン酸またはモノカルボン酸無水物の形態の種々のモノカルボン酸と反応させる。従って、ポリオールのエステル化は、ただ1つのカルボン酸もしくは-混合物とヒドロキシル基が反応する単純な反応内では起こらない。反応は少なくとも、2つの異なるモノカルボン酸の使用を含み、ここで、個々のモノカルボン酸のそれぞれは、カルボン酸の形態またはモノカルボン酸無水物の形態のいずれかで使用される:
【0020】
【化3】
カルボン酸無水物は、2つの同一のモノカルボン酸の脱水反応から生じる。この点に関して、前記反応は、反応の過程で少なくとも一度、反応環境の組成物が外部介入により能動的に変えられることによって、2段階で行われる。すなわち、反応の過程で、すでに進行中の反応に1種または複数の物質が添加される。ここで、出発物質の生成物への転化による反応の「通常の」進行は、反応環境における能動的な変化としてはみなされない。さらに、反応溶液がモノカルボン酸/-無水物のうちの1つのみを含む時間が存在する。可能なモノカルボン酸は、例えば、直鎖状または分岐状C3~C25モノカルボン酸からなる群から選択することができる。
【0021】
種々のモノカルボン酸は、エステル化反応において、それらの反応性の順に、最も低い反応性から出発して、ポリオールと反応させる。種々のモノカルボン酸とのポリオールの接触および反応は、ランダムに起こるのではなく、個々のモノカルボン酸とポリオールとの反応性の関数として起こる。これに関して、反応性は、関連するモノカルボン酸とポリオールとのエステル化の反応速度を表す。そのためには、例えば、モノカルボン酸とポリオールとの単純な反応の反応速度を決定することができる。エステル化反応の反応速度を決定するための方法は、当業者に公知である。例えば、反応速度は、エステル基の発生を定量的に追跡することができる分光法を用いて決定することができる。ここで、エステル化反応は、分離して、一方のカルボン酸とも、他方のカルボン酸とも行われる。反応条件、例えば温度および使用されるモル量は、反応速度の2つの異なる決定において一定に保たれなければならない。エステル化の選択される反応条件にかかわらず、常に、存在するエステル化反応に関するモノカルボン酸の2つの反応性間の比を決定することができる。速度比較から、モノカルボン酸の一方が比較的反応性が高く、他方のモノカルボン酸の反応性は比較的低い、という関係が得られる。反応条件の関数として、例えば極端な温度-または圧力条件下のために、異なる反応性が生じる場合には、同じ組成物を用いて、20℃~30℃の温度区間において常圧下で測定された反応速度が、反応性の決定のために重要である。比較的低い反応性を有するモノカルボン酸は、エステル化反応において、比較的高い反応性を有する1または複数のモノカルボン酸より時間的に前に、存在するポリオールと接触させられる。これは、例えば、比較的高い反応性を有するモノカルボン酸をポリオールとの反応溶液に、より遅くにのみ添加することによって達成することができる。この点に関して、本発明によれば、ポリオールと、最も低い反応性を有するモノカルボン酸の一部または全体とのエステル化反応が、当該エステル化反応において常に最初に実施され、ここで、前記エステル反応は、さらに別のカルボン酸が添加される前に、最も低い反応性を有するモノカルボン酸の完全な転化をもたらす必要はない。前記カルボン酸または前記のさらに別のカルボン酸が、最も低い反応性を有するカルボン酸の完全な転化の前に既に反応溶液に添加されても、十分である。
【0022】
ここで、比較的低い反応性を有するモノカルボン酸を、少なくとも一部はモノカルボン酸無水物として、および最も高い反応性を有するモノカルボン酸をその後、モノカルボン酸として、ポリオールと反応させる。ポリオールエステルの組成物を制御するために、エステル化反応において比較的低い反応速度を有するモノカルボン酸の少なくとも一部を、モノカルボン酸無水物として反応溶液に添加する。ここで、最も低い反応性を有するモノカルボン酸の無水物の割合は、好ましくは25モル%以上、好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上であり得る。好ましくは、このモノカルボン酸は100モル%無水物として添加することもできる。無水物の形態でのこの添加はまず第一に珍しいものであり、なぜならば、それがこの状態でまず第一に、ポリオールと最も低い反応性を有するカルボン酸だけからの「単純な」系だからである。しかしながら、無水物としての使用によって、エステル化の化学量論を大幅にさえ制御できることが示された。この点に関して、より速いだけでなく、ポリオールのエステルの別の組成物も得られる。本明細書において提案される方法では、最も反応性であるモノカルボン酸は、次いでその後の時点で、無水物としてではなく添加される。この方法手順が好ましいことが判明した。最も反応性のモノカルボン酸の添加も無水物の形態で行われるべきであるというところから出発し得たにもかかわらずである。しかしながら、これは、本発明の方法手順の枠内において不利であることが見出された。前記方法の範囲内において、混合エステルが3種を超える異なるモノカルボン酸から製造される場合、「中間の」反応性を有するカルボン酸は、カルボン酸自体の形態でまたは無水物としてのいずれかで添加することができる。本質的には、最も反応性が低いモノカルボン酸は、少なくとも一部は無水物として添加され、最も反応性のモノカルボン酸は、酸の形態で添加される。
【0023】
前記方法の好ましい実施形態では、2種の異なるモノカルボン酸をポリオールと反応させることができ、第1のステップで、比較的反応不活性なモノカルボン酸を、70%以上をモノカルボン酸無水物としてポリオールと反応させる。本明細書で示される方法手順は、2種の異なるモノカルボン酸からの混合ポリオールエステルの製造に特に適していることが見出された。この点に関して、2種の異なるエステル基を有する混合ポリオールエステルが得られる。ここで、可能な限り迅速な反応を得るため、および比較的低い反応性を有するカルボン酸のエステルの割合を制御するためには、無水物の上記の最小割合が特に適していることが見出された。
【0024】
前記方法のさらに好ましい実施態様では、第1ステップにおいて、比較的反応不活性なモノカルボン酸をカルボン酸無水物として、および第2ステップにおいて、比較的反応性の高いモノカルボン酸をモノカルボン酸として、ポリオールと反応させることができる。可能な限り速い全転化、および種々のカルボン酸の個々の割合の正確な制御のためには、比較的反応不活性なモノカルボン酸を無水物としてのみ反応に添加することが特に有利であることが実証された。比較的反応性の高いモノカルボン酸を無水物割合なしのモノカルボン酸としてのみ使用することと併せて、この処置により、相まってまた、特に、モノカルボン酸単独での使用によっても、比較的反応性の高い高いカルボン酸のための第2の反応ステップにおける無水物の使用によっても得られないエステル組成物を得ることができる。
【0025】
前記方法の好ましい特性内で、ポリオールは、2個以上かつ8個以下のOH基を有することができる。本明細書に示される方法は、特に、少数から中程度の数のヒドロキシル基を有するポリオールに適し得る。これらのむしろ小さなポリオール上での種々のカルボン酸の組成物については特に困難であり、なぜならば、反応における空間的なひずみが、非常に大きな役割を果たすからである。特にこれらの場合には、分子上に比較的少数のヒドロキシル基しか存在せず、これらのヒドロキシル基はさらに互いに遠く離れておらず、モノカルボン酸の転化において、特にそれらが異なる反応性を有する場合に、特に困難が生じ得る。これらの相違は、モノカルボン酸、例えば、α-分岐または非α-分岐カルボン酸の構造に基づいて、または誘起効果、例えば、アルキル鎖の+i効果の大きさに基づいて生じ得る。理論に束縛されるものではないが、これは、特に、ポリオールのヒドロキシル基へのさらなるモノカルボン酸のアクセスが、既に存在するエステル化された基によって明らかに妨げられるためであり得る。これらの状況において、提案の方法により、当該提案の方法手順なしでは、全く得ることができないかまたは非常に過酷で、副生成物が形成し易い反応条件下のみで得ることができる組成物を得ることができる。上記のOH基数を有するポリオールは、好ましくは、80g/mol以上かつ700g/mol以下、さらに好ましくは90g/mol以上かつ600g/mol以下の分子量を有し得る。上記の分子量範囲のポリオールは、好ましくは、3、4、5または6個のOH基を有することができる。
【0026】
前記方法の好ましい実施態様によれば、ポリオールは、50g/mol以上かつ400g/mol以下の分子量を有する脂肪族ポリオールであり得る。脂肪族ポリオール(これは相応して芳香族基を有さない)については、本発明による方法によって、大きく変動するエステル組成物を有する特にフレキシブルなエステルを得ることができる。これは、従来技術方法に従うと、上記分子量範囲の脂肪族ポリオールでは困難であり、なぜならば、これらのポリオールは、いくつかのモノカルボン酸とのエステル化が、ポリオールの周りに著しく変動した空間的なひずみをもたらす比較的小さなポリオールだからである。特に、このポリオールクラスに関しては完全なエステル化は困難であり、なぜなら、さらに別のヒドロキシル基のエステル化の過程で、ポリオールの周りの空間供給が明らかに減少し、エステル反応へのさらに別のカルボン酸のアクセスが明らかに妨げられるためである。前記ポリオールは、好ましくは、100g/mol以上かつ300g/mol以下の分子量、さらに好ましくは、120g/mol以上かつ250g/mol以下の分子量を有することができる。これらのポリオールについて、上述の方法は、特に加速された反応、および特に、より高い割合の比較的反応不活性なカルボン酸とのエステルをもたらし得る。
【0027】
前記方法の好ましい態様では、異なる反応ステップを、後処理なしに、ただ1つの反応溶液中で実施することができる。迅速かつ効率的な反応操作のために、前記方法がただ1つの反応溶液中で「ワンポット」反応として実施されることが、特に適切であることが見出された。上記の方法手順によって、ポリオール上のエステル基の所望の組成を、わずかな逸脱のみで決定することができる。さらに、このようにして、反応溶液の時間および費用のかかる後処理を回避することができる。この場合、ただ1つの反応溶液中でとは、所定の出発物質は、後の時点になって初めて、この1つの反応溶液に添加されてもよいことを意味する。全ての反応関与物が同時に、反応の開始時に反応溶液中に存在する必要はない。
【0028】
前記方法のさらなる好ましい実施形態によれば、エステル化を、エステル化触媒の添加なしに行うことができる。驚くべきことに、第2のカルボン酸をカルボン酸形態で遅れて添加し、比較的反応不活性なカルボン酸を無水物として使用する本発明による方法手順により、エステル化触媒の添加を完全に省くことができることが見出された。エステル化触媒によって可能な反応の促進は、触媒を用いない方法手順と比べてもそれより明らかに速くはなく、触媒を反応の最後に費用・手間をかけて所望の生成物から分離しなければならないという欠点のほうが大きい。
【0029】
前記方法の好ましい態様では、比較的反応不活性なモノカルボン酸を無水物の形態で導入し、最初はポリオールの一部とのみ反応させることができ、ポリオールの残部を、引き続き、比較的高い反応性を有する1種または複数のモノカルボン酸と一緒に添加する。迅速かつ再現可能な方法手順のためには、反応の初期には、ポリオールの一部のみを導入し、無水物の形態の比較的反応不活性な出発物質と反応させることが特に適していることが見出された。ある特定の反応時間後、第2段階において初めて、ポリオールの残部がそこで、第1段階の部分溶液に、無水物としての比較的反応不活性なモノカルボン酸および酸形態の比較的反応性の高いカルボン酸と一緒に、添加される。理論に束縛されるものではないが、それによってより均一なエステル化が起こると考えられ、反応溶液の粘度を、特に始めに特に低く保持できることによる可能性が高い。溶液のレオロジーに影響を及ぼすことによって、溶液の改善された十分な混合がもたらされ得る。
【0030】
前記方法の好ましい実施形態によれば、比較的反応不活性なモノカルボン酸は、カルボン酸基に対してα位にアルキル基を有する分岐モノカルボン酸であり得、比較的反応性の高いモノカルボン酸は、カルボン酸基に対してα位にアルキル基を有さない分岐または非分岐のC4~C18モノカルボン酸であり得る。特に、比較的小さなポリオールと、構造に上記の相違を有するモノカルボン酸とのエステル化は、従来技術の方法では特に困難であり得る。α位における置換は、モノカルボン酸が、極めて弱くかつゆっくりとポリオールとエステル結合することをもたらし得る。これは、モノカルボン酸が、そうでなければ非常に小さい脂肪族骨格のみを有する場合にも当てはまる。α位のブロッキングは、12個までの炭素原子を有する比較的大きな脂肪族モノカルボン酸に対しても、反応性の明確な違いをもたらす。前記反応手順に依拠せず、従来技術によると、これらの前提条件を有する個々のカルボン酸の割合は、非常にゆっくりと、そして種々のカルボン酸の個々の割合の制御なしでのみ、実現することができる。特に、アルファ位がブロッキングされたカルボン酸の割合も、本発明による方法によって明らかに増加させることができる。さらに、前記反応は、所与の目標組成物に関して、本発明の方法により、モノカルボン酸のみを使用して無水物成分がない場合と比較して、明らかにより迅速に進行する。
【0031】
前記方法のさらなる好ましい態様内において、比較的反応不活性なモノカルボン酸はイソ酪酸であることができ、比較的反応性の高いモノカルボン酸はイソノナン酸であることができる。特に、イソ酪酸およびイソノナン酸のエステル化は、従来技術の反応条件下では、極めて限られた数の異なるポリオールエステルに関してのみ使用することができる。ポリオール、特に約200~300g/molのオーダーに分子量を有する比較的「小さい」ポリオールでのイソ酪酸とイソノナン酸の反応速度の違いは、不十分な結果をもたらすだけであり、なぜなら大部分はイソノナン酸がポリオールに付加され、イソ酪酸は付加されないからである。異なる温度および異なる割合の個々のカルボン酸を用いる異なる方法手順は、この結果を明確に改善することはできない。転化は、特にポリオールの完全な転化を達成する場合には、非常に長い時間を要する。さらに、イソ酪酸の割合、および従って間接的にイソノナン酸の割合も、変化させることはできない。これは、本発明の方法には当てはまらない。明らかにより高い反応速度が得られ、そして特に、ポリオールにおけるイソ酪酸エステルの割合を明らかに増加させることもできる。
【0032】
前記方法の好ましい実施態様内において、比較的反応不活性なモノカルボン酸に対するポリオールのモル比、および最も反応性の高いモノカルボン酸のモノカルボン酸に対するポリオールのモル比は、それぞれ、各成分のモル/ポリオールのモルとして表され、1以上かつ3.5以下である。反応を再現可能に制御し、全体として可能な限り短い反応時間を得るためには、種々のカルボン酸を合計で、反応溶液中のポリオールに対してほぼ同じモル濃度範囲で使用することが特に有利であることが見出された。これらの場合、種々の組成物は、特に有利には、添加時点および反応の枠内での温度コントロールによって制御することができる。前記比は、種々のカルボン酸の全量が反応溶液に添加された後に適用される。ほぼ同じ量の種々のカルボン酸を用いて広範囲の種々のポリオールエステルが実現できることは、驚くべきことである。異なる反応速度にもかかわらず、個々のモノカルボン酸の濃度はエステル形成の反応速度に正比例するため、このことは予期されなかった。本発明に従ってモノカルボン酸が無水物として使用される場合、1モルの無水物は2モルのモノカルボン酸に相当する。
【0033】
前記方法の好ましい態様において、異なる反応段階における温度は異なっていてよく、ここで、無水物の形態の比較的低い反応性を有するモノカルボン酸の第1のエステル化ステップにおける温度は、モノカルボン酸の最後のエステル化ステップにおける温度よりも50℃以上かつ100℃以下だけ低い。できる限り効率的な方法手順を得るためには、第1の方法ステップにおける温度、すなわち、無水物の形態の比較的反応不活性なモノカルボン酸を添加する場合の温度は、第2の方法ステップにおける温度よりも低いことが特に適していることが見出された。温度の低下にもかかわらず、反応全体については顕著な反応速度が生じ、その結果、この方法手順は、例えば、先行技術に記載されている方法と比較して、ポリオールのより速い全転化をもたらす。上記の温度範囲はさらに、「望ましくない」エステル、例えば別の意図しないエステル組成物を含むポリオールエステルの割合を明らかに減少させるのにも適している。良好に制御可能で高度に効率的なエステル化反応が得られる。
【0034】
さらに、本発明によれば、少なくとも2種の異なるエステル基と、0以上かつ10以下のヒドロキシル価とを有する混合ポリオールエステルの製造のための、本発明による方法の使用が提供される。本発明による方法は、極めて低い割合のまだフリーのヒドロキシル基を有するポリオールエステルを得るのに特に適切であり得る。前記混合ポリオールエステルは、種々のモノカルボン酸のエステル基を相応に有し、ここで、モノカルボン酸のうちの1つは比較的反応不活性であり、別のモノカルボン酸は比較的反応性の高い成分である。2種の異なるエステル基を有する混合ポリエステルの製造は、従来技術によると困難であり得、なぜなら、より高い空間的なひずみのためにポリオールの反応の過程におけるエステル化が減少し、エステル交換の可能性が増加するためである。妥当な反応時間内でのポリオールエステルの製造は、従来技術によるこの実施態様では達成できない。これは、特に、80g/mol以上の分子量かつ400g/mol以下の分子量を有する比較的小さいポリオールに当てはまる。これらの比較的小さなポリオールは、例えば、3~5個のヒドロキシル基を有し得る。この群のポリオールについては、特に、対応して低いヒドロキシル価を有する完全なエステル化を達成することは極めて難しい。エステルのヒドロキシル価は、当業者に公知の方法によって、例えばDIN 53240-2に従って決定することができる。
【0035】
使用の好ましい実施形態において、混合ポリオールエステルは、ペンタエリスリトールのイソ酪酸/イソノナン酸エステルであり得る。特に、ペンタエリスリトールエステルまたはペンタエリスリトールテトラエステルの場合、従来技術によるイソ酪酸およびイソノナン酸とのエステル化反応は、狭く限定された範囲内かつ長い反応時間でのみ実施することができる。ポリオールにおける異なるエステル基の量を予め定めることは不可能であり、明らかなイソノナン酸過剰を有するエステルが主に生じる。これは所定の用途にとって望ましくないおそれがあり、なぜならば、前記エステルの物理的特性、例えば粘度が、要求される需要に適合性でないためである。本発明による方法手順により、特に、ポリオールエステル中のイソ酪酸の割合を増加させることができ、それによって、入手可能なエステルの物理的および化学的特性、およびもちろん完全エステルも、広い範囲内で制御することができ、短い反応時間内で得ることができる。
【0036】
前記使用のさらに好ましい特徴において、前記ポリオールエステルは、20モル%以上かつ50モル%以下がイソ酪酸基および50モル%以上かつ80モル%以下がイソノナン酸エステル基を有することができる。上記のカルボン酸の反応性の違いにより、通常は、ポリオールの混合エステルは比較的高いイソノナン酸エステル基を有する。本発明による方法および本発明による使用によって、混合ポリオールエステル中のイソ酪酸エステル基の割合を、明らかに増加させることができる。さらに、イソ酪酸エステル基の割合の増加は、非常に短い反応時間内で達成することができる。さらなる利点は、特に完全エステルに関して、イソ酪酸エステル基の量を上記の範囲内に特に正確に制御することができる、という点にある。第1のステップにおける比較的反応不活性なモノカルボン酸の無水物の添加によって、酸形態の比較的反応不活性なモノカルボン酸の使用と比較して、得ることが可能な混合ポリオールエステルの異なる分布がもたらされる。無水物の使用により、所望の、比較的高い割合の比較的反応不活性なエステル化モノカルボン酸を有する混合ポリオールエステルが形成される。この点に関して、異なる化学的および物理的特性を有する混合ポリオールエステルを得ることができ、無水物の形態の比較的反応不活性なカルボン酸の本発明による使用により、明らかに短い反応時間を達成することができる。特に、ポリオール完全エステルは、ペンタエリスリトールテトラエステルであり得る。
【0037】
本発明の対象のさらなる詳細、特徴および利点は、従属請求項、ならびに以下の図面の説明、および関連の実施例から明らかとなる。
【実施例】
【0038】
例
エステル化は通常、反応中に生じた反応水を少なくとも部分的に反応溶液から除去するために、高温で、還流下、水分離器を使用して行われる。
【0039】
本発明に従う例は、比較的反応不活性な酸としての、カルボキシル基に対してα位に分岐を有するイソ酪酸(i-C4)、ならびに、比較的反応性の高いカルボン酸としての、カルボキシル基に対してα位に分岐を有しないイソノナン酸(i-C9)の反応に基づいて示される。従来技術による特にi-C4のエステル化は、エステル製造における課題を示すものであり、なぜならこれは、高い水溶解度(20℃で約210~265g/L)および比較的低い沸点(154℃、1013mbar)を有するからである。i-C4は26℃超で水と完全に混和性であり、水と約99℃の沸点を有する共沸混合物(約72~79%の水)を形成する。従って、反応混合物の還流が早期に既に生じ、i-C4は、水分離器からの水と一緒に反応部位に戻り、その結果、平衡が再び部分的に出発物質側の方向にシフトする。構造的に、i-C4はα位にメチル基を有し、これはエステル化を立体的に妨げ、その結果、完全なポリオール転化のためには著しくより多くの時間が必要とされるか、またはそれは完全に阻止されてしまう。
【0040】
例では、ポリオール成分として、4個のOH基を有する低分子脂肪族ポリオールであるペンタエリスリトール(PE)が使用される。
【0041】
I. 従来技術によるエステル化
I.a 従来技術による2つのカルボン酸の同時使用下でのワンポットエステル化
図1および2は、酸出発物質量の関数としての、i-C4-/i-C9カルボン酸混合物の同時使用において得られるエステルの組成の変化を示す(条件:20モル%の酸過剰、最大250℃、30時間エステル化)。調べた範囲において、テトラエステルにおいてi-C4は、酸混合物における出発物質使用量から予期されるよりも少ない程度(約3.4モル%低い)で見出された。これに関して考えられる理由は、反応水との前記カルボン酸の喪失、およびi-C9と比較した場合のi-C4のより低い全体の反応性である。さらに、ポリオールの全てのOH基の完全な転化のための反応時間は30時間で、非常に長い。
【0042】
反応水とのi-C4の喪失は、これらの反応における問題であり、なぜなら、排水流をコスト・手間をかけて有機成分から除去しなければならないからである。さらに、すでに上述したように、平衡からの出発物質の除去は、反応速度および最終生成物の組成にとって不利である。
【0043】
I.b 従来技術による2つのカルボン酸および有機添加溶剤の同時使用下でのワンポットエステル化
エステル化は、水除去のためのディーン・スターク装置に接続した多口丸底フラスコ中で実施した。反応後の水性相の量は、理論値よりも12重量%高かった。86重量%の含水量が見出され、これは水性相中の反応水の96%の割合に相当するに過ぎない。残りの水は、ガス流によって失われているか、まだ有機相中に溶解して存在しているかのいずれかである。水性相の残りの14重量%は、主にイソ酪酸であり、少ない割合のイソノナン酸である。
【0044】
反応水における高い出発物質割合を回避するため、および反応の促進のためには、水添加溶剤の使用が考えられる。上記の試験を、種々の水添加溶剤(デュレン、ナフタレンおよびテトラヒドロナフタレン)を用いて繰り返した。添加溶剤の使用にもかかわらず、水性相における85重量%の含水量はそれ以上増加させることができなかった。従って、水添加溶剤の使用は、反応の促進および単純化のための代替手段ではない。
【0045】
I.c 先行技術による完全エステルのエステル交換でのワンポットエステル化
水の発生およびそれに伴う酸の喪失を回避するために、同様にエステル交換も試験した。イソ酪酸メチルとペンタエリスリトールとの反応は、92℃で4時間後には観察できなかった:
【0046】
【化4】
ペンタエリスリトールをベースとするイソ-C9-エステルおよびi-C4を用いた約130℃の温度および6時間の反応時間でのエステル交換試験からは、ポリオールエステルの組成はほんのわずかだけ変化することがわかる。
【0047】
【化5】
ペンタエリスリトールをベースとするイソ-C9-エステルおよびi-C4を用いたエステル交換試験からは、酸交換が起こることが示される。ただし、添加されるi-C4の量はポリオールのOH基に対して50モル%であるにもかかわらず、i-C4でのエステル交換は、168℃および20時間の反応時間で組成のわずかな変化のみを示す。様々なルイス酸触媒または酢酸ナトリウムの使用も、触媒を含まない参照反応に対して本質的な相違を示さない。
【0048】
【化6】
エステル交換使用下でのエステルの組成の顕著な変化は、合理的な反応時間および反応条件内では不可能である。
【0049】
I.d 従来技術による逐次エステル化(Sequentielle Veresterung)
ペンタエリスリトールとのi-C4およびi-C9の同時エステル化における比較的長い反応時間に基づいて、およびエステル交換への低い傾向に基づいて、逐次エステル化のための試験を実施する。これらにおいて、比較的反応性の低いi-C4を最初にペンタエリスリトールと反応させ、そして引き続いて第2のステップにおいてのみ、ポリオールの残ったヒドロキシ基を比較的反応性の高いi-C9で、比較的高い温度を用いてエステル化する:
【0050】
【化7】
前記試験により、ポリオール上に30モル%を超えるi-C4を有するエステル組成物を生じさせるべきである。
【0051】
前記試験では、ポリオール(ペンタエリスリトール)をi-C4酸と最初の5時間で反応させる。反応水中の酸喪失を回避するために(ディーン・スターク装置)、i-C4の沸点未満の反応温度が選択される。5時間後、i-C9酸を添加し、250℃までさらに20時間加熱する。最初の5時間内で形成される水の量は、理論量のわずか29%であり、これは、i-C4のただ非常に遅いだけの転化を物語っている。i-C9の添加後、追加的に、理論水量のさらなる69%が形成される。理論水量の2%が欠けていることが、ディーン・スターク装置における有機相中で見出された。主ストリップ(Mainstrip)の後、エステルの分析は、0.5mg KOH/gのOH価を示し、33モル%のイソブチレートおよび67モル%のイソノナノエートの割合を示した。
【0052】
比較的長い反応時間によって混合完全エステルを得ることができ、ここで、所望の量比は、対応する出発物質量の使用によっては、上記の反応時間内および上記温度では得られない。比較的反応不活性な成分i-C4は、ポリオールのOH基と化学量論未満でしかエステル化されない。
【0053】
I.e 比較的反応不活性な成分の無水物を用いた同時1段階エステル化
イソ酪酸無水物およびi-C9を用いてワンポット試験を実施する。30分後、150℃の反応温度で、GC分析により、反応溶液中に種々の無水物の混合物が形成されることが示される:
【0054】
【0055】
従って、イソ酪酸無水物とイソノナン酸との同時使用は、イソノナン酸の比較的高い反応性が混合無水物の形成を引き起こすので不利である。
【0056】
II. 第一段階で酸無水物を使用する本発明による2段階エステル化
イソ酪酸無水物およびペンタエリスリトールを用いた予備試験において、高い反応性がもたらされ、従って、反応温度を慎重に上昇させさえすればよいことを確認できた。イソ酪酸無水物の沸点は183℃であり、エステル化において遊離するイソ酪酸の沸点は156℃である。カルボン酸無水物とペンタエリスリトールとの反応は、急激に、多量のイソ酪酸が生じ得る。この時点で反応温度がすでに156℃を超えると、沸騰の遅延が生じ得る。この急速な反応により、156℃未満の温度も、エネルギー放出により、短時間内で短鎖酸の沸点を超えて上昇し得る。
【0057】
本発明によると、ペンタエリスリトールを最初はイソ酪酸無水物と反応させるエステル化が実施される。酸無水物およびペンタエリスリトールの量は、エステルにおける30モル%超のイソ-C4の割合を目標とする、すなわち酸過剰の仮想エステル合成におけるようなモル比で使用される。反応は、150℃で4時間行う。次いで、イソノナン酸を添加し、エステル化を最大250℃でさらに16時間実施する。得られたエステルは、それぞれ3.5および3.8mg KOH/gのヒドロキシル価を有し、従って、ポリオールのほぼ完全なエステル化が達成される。IR分光法により、反応の間に記録されたスペクトルが、150℃までの温度での第1段階において、試験開始30分を超えた後に、差をほとんど示さないことをさらに実証することができる。これは、この時点で、無水物としてのi-C4成分のエステル化において、すでに高度に反応が進行していることの間接証拠である。4時間後、イソ酪酸無水物は、もはやガスクロマトグラフィーによって混合物中に見出すことができなかった。
【0058】
第1段階において無水物を用いる本発明の2段階の運転手順と、本発明によらない無水物なしの運転手順との比較は、酸と比較して無水物が、ペンタエリスリトールの逐次転化において、速度の利点をもたらすことを示す。異なるOH価に加えて、前記エステルはまた、イソ-C4の割合が異なる。無水物の比較的高い反応性に基づいて、エステル化後に、純粋な酸混合物の使用と比較して、エステル中により高いイソ-C4割合(約5モル%)を有する生成物が生じる。
【0059】
【0060】
表から、同一の反応時間内および同一の反応温度範囲内で、より低いOH価によって認識可能なより完全な転化だけでなく、より顕著に高いエステルにおけるイソ-C4割合も得られることが明確にわかる。驚くべきことに、これらの利点は、i-C9エステルの温度および転化時間が比較的高く/長く、それにより激しいエステル交換反応が優先的に進行し、これは第1の反応段階の影響を明らかに減少させるか、または完全に陳腐化させるはずであるにもかかわらず、保持される。
【0061】
III. 第一段階で酸無水物を使用する本発明による2段階エステル化 -速度論的考察
本発明による方法では、高いi-C4割合を有する混合i-C4/i-C9エステルが製造されることが意図される。第1の反応段階を、i-C4無水物を用いて170℃の反応温度で行った。それぞれ5回試験を行った。C4の割合の平均値および試験系列にわたる標準偏差を示す:
【0062】
【0063】
iC4の割合から、第1段階で無水物を使用することによって、特に高いi-C4割合を実現できる、と結論付けることができる。また、第2段階においてより長い反応時間を用いると、i-C9酸との競争反応により、得られるエステルにおけるi-C4割合が再び低下することも明らかである。それにもかかわらず、無水物によるエステル化は、短い反応時間および穏やかな反応条件下で比較的高いi-C4割合を有する混合エステルを提供するために、全体として適していると考えられる。これらの割合は、i-C9酸との8時間の反応時間後、すなわち9時間の全反応時間後でさえ、30モル%を超えるi-C4割合の範囲にある。この割合は、本発明によらない方法手順のものよりも明らかに高く、i-C9酸の明らかにより長い作用時間がまた、これらの長い反応時間でも激しいエステル交換反応を引き起こすことなく、より完全な転化の達成を可能にする。
【0064】
エステル化の速度論的効果を決定するために、i-C4無水物を用いる本発明による方法と、i-C4酸を用いる本発明によらない方法との比較を、PEでのエステル化において実施した。第1段階におけるi-C4成分の1時間の反応後、第2段階において両方の場合に、i-C9酸を3時間添加し、エステル化した。混合PEエステルのパーセント割合(表示については反応式1を参照)およびポリオールエステルの全混合物におけるi-C4の割合を示す。
【0065】
【0066】
当該比較により、i-C4無水物が第1段階で使用される場合、i-C4酸の使用と比較してより高い割合のi-C4を有する混合ポリオールエステルが形成されることが示される。第1段階でi-C4無水物を使用する場合のエステル化度は、4時間の反応後、i-C4酸の使用と比較してより高く、反応はより完全に進行する。第1段階におけるi-C4無水物の使用が、第2段階におけるより長い反応時間にもかかわらず、PE4444およびPE4449などのエステルのより高い割合をもたらすことが観察されることは興味深い。これは、混合ポリオールエステル全体における上述のi-C4割合に有利に作用する。
【0067】
エステル化の速度論的効果のさらなる決定において、無水物の形態のi-C4酸および後続のi-C9酸-エステル化ステップを用いる本発明による方法の比較を再度実施した。第1段階の反応時間は、無水物の場合、1時間に保った。第1ステップで酸を用いた本発明によらない方法では、反応時間を2時間に倍増した。第2段階における反応時間を変化させた(2~8時間)。混合PEエステルのパーセント割合(反応式1を参照)およびポリオールエステルの全混合物におけるi-C4の割合を示す。
【0068】
【0069】
【0070】
第1のプロセスステップにおいて、明らかにより短いプロセス時間で、比較的反応不活性な酸の無水物を使用することにより(1時間 i-C4無水物 対 2時間 i-C4酸)、比較的反応不活性な酸の割合が匹敵してより高い混合ポリオールエステルが得られることがわかる。比較的反応性の高い酸を用いる第2の方法ステップにおける長い反応時間および高い温度を考慮すると、このことは格別である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1および2は、酸出発物質量の関数としての、i-C4-/i-C9カルボン酸混合物の同時使用において得られるエステルの組成の変化を示す(条件:20モル%の酸過剰、最大250℃、30時間エステル化)。
【国際調査報告】