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特表2024-505965コヒーレントビーム・アレイのビームをアライメントするためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】コヒーレントビーム・アレイのビームをアライメントするためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/10 20060101AFI20240201BHJP
   H01S 3/23 20060101ALI20240201BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20240201BHJP
   H01S 3/00 20060101ALN20240201BHJP
   H01S 3/067 20060101ALN20240201BHJP
【FI】
H01S3/10 Z
H01S3/23
G01S7/481 A
H01S3/00 F
H01S3/067
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546437
(86)(22)【出願日】2022-02-01
(85)【翻訳文提出日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 IB2022050858
(87)【国際公開番号】W WO2022167930
(87)【国際公開日】2022-08-11
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520188857
【氏名又は名称】ラファエル アドバンスド ディフェンス システムズ エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴルブチック,ダニエル
【テーマコード(参考)】
5F172
5J084
【Fターム(参考)】
5F172AM08
5F172DD03
5F172DD06
5F172NN05
5F172NR03
5F172ZZ04
5J084AA10
5J084BA03
5J084BA11
5J084BA23
5J084CA09
(57)【要約】
CBCシステムは、標的に向けられるコヒーレントビームを生成するビーム源のアレイを含む。ビーム源は、調整可能な位相変調器およびビームステアリング装置と関連付けられる。ビームのサブセット内のビームそれぞれについて、対応するビームステアリング装置は、ビームをステアリングするように作動され、対応する位相変調器は、ビームの現在位相を少なくとも3つの位相状態の間で変調するように作動される。検出器は、標的に入射する放射の強度に応じて変動する強度パラメータを監視する。制御装置は、サブセット内のビームそれぞれについて、少なくとも3つの位相状態のそれぞれにおいて監視された強度パラメータに少なくとも部分的に基づいてビームの相対強度を表わす現在値を計算する。計算された値は、標的に対するビームの現在位置を示す。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的に向けて方向付けられたコヒーレントビーム結合(CBC)デバイスのビームをアライメントする方法であって、前記ビームは関連付けられた調整可能な位相変調器とビームステアリング装置とを有し、前記方法は、
(a)前記ビームのサブセット内の前記ビームのそれぞれについて、対応する前記ビームステアリング装置を作動させて前記ビームをステアリングする工程と、
(b)前記サブセット内の前記ビームのそれぞれについて、対応する前記位相変調器を作動させて、前記ビームの現在位相を少なくとも3つの位相状態の間で変調させる工程と、
(c)前記標的に入射する放射の強度の関数として変動する強度パラメータを監視する工程と、
(d)前記サブセット内の前記ビームのそれぞれについて、前記少なくとも3つの位相状態のそれぞれにおいて監視された前記強度パラメータに少なくとも部分的に基づいて、前記ビームの相対強度を表わす現在値を計算する工程であって、計算された値が前記標的に対する前記ビームの現在位置を示す、工程を含む、方法。
【請求項2】
(e)前記サブセット内の前記ビームのそれぞれについて、計算された前記現在値に従って前記ビームのビームポインティング方向を調整する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(e)前記サブセット内の前記ビームのそれぞれについて、計算された前記現在値と、前記ビームに関連付けられる前記相対強度を表わす少なくとも1つの先行する値とに基づいて、比較メトリックを形成する工程と、
(f)前記比較メトリックが閾値基準を満たす場合、
(i)計算された前記現在値を記憶し、
(ii)前記ビームを前記現在位置にステアリングされたままにする
工程とをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(g)前記比較メトリックが前記閾値基準を満たさない場合、前記ビームの前記ビームステアリング装置を作動させて、前記ビームを前のステアリング位置までステアリングする工程をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
(g)前記ビームの次のサブセットを選択する工程と、
(h)(a)~(g)を繰り返す工程とをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記現在値を計算する工程は、前記少なくとも3つの位相状態のそれぞれにおいて監視された前記強度パラメータに基づく入力を持つ目的関数を評価することによって実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
各ビームについて、前記目的関数は、前記ビームが前記標的に中心合わせされるように位置決めされるときに達成される単一の最大値を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記強度パラメータは、前記標的に設置されたビーム感知センサから得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記強度パラメータは、前記標的から反射される放射を感知するように配置されたセンサから得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記サブセット内の前記ビームのそれぞれについて、前記現在値は、前記サブセット内の前記ビームのすべての和に対する前記ビームの前記相対強度を表わす、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ビームは、少なくとも10本のビームを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ビームのそれぞれの現在位相は、前記少なくとも3つの位相状態の間でステップ式に変調される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ビームのそれぞれの現在位相は、前記少なくとも3つの位相状態を包含する変調周波数の範囲にわたって実質的に連続的に変調される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ビームのそれぞれの現在位相は、前記少なくとも3つの位相状態を包含する変調周波数の範囲にわたって正弦波状に変調される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
複数のビームの前記現在位相が逐次的に変動される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記サブセットが大多数のサブセットである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記サブセットは前記ビームのすべてを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記サブセットは少数のサブセットである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記サブセット内の前記ビームは、ランダムまたは偽似ランダム式にステアリングされる、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
(a)標的に向けて方向付けるための複数のコヒーレントビームを生成するように構成されたビーム源のアレイと、
(b)前記ビームの相対位相オフセットの調整を可能にするように前記ビーム源に関連付けられた複数の調整可能な位相変調器と、
(c)前記コヒーレントビームをステアリングするように構成された、前記ビーム源のアレイに関連付けられた複数のビームステアリング装置と、
(d)前記標的に入射する放射の強度の関数として変動する強度パラメータを監視するために配置された検出器と、
(e)前記強度パラメータを受け取るように前記検出器に関連付けられた制御サブシステムであって、前記制御サブシステムは、前記位相変調器および前記ビームステアリング装置にさらに関連付けられ、
(i)前記ビーム源のサブセットに関連付けられた前記ビームステアリング装置を作動させて、前記サブセット内の前記ビーム源によって生成された前記ビームをステアリングし、
(ii)前記サブセット内の前記ビームのそれぞれについて、対応する前記位相変調器を作動させて、前記ビームの現在位相を少なくとも3つの位相状態の間で変調させ、
(iii)前記サブセット内の前記ビームのそれぞれについて、前記少なくとも3つの位相状態のそれぞれにおいて監視された前記強度パラメータに少なくとも部分的に基づいて、前記ビームの相対強度を表わす現在値を計算し、計算された値が前記標的に対する前記ビームの現在位置の示すように、構成される、
制御サブシステムとを含む、システム。
【請求項21】
前記制御サブシステムは、
(iv)前記サブセット内の前記ビームのそれぞれについて、対応する前記ビームステアリング装置を作動させて、計算された前記現在値に従って前記ビームのビームポインティング方向を調整するように、さらに構成される、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記制御サブシステムは、
(iv)前記サブセット内の前記ビームのそれぞれについて、前記ビームの前記相対強度を表わす計算された前記現在値と、前記ビームに関連付けられる相対強度値を表わす少なくとも1つの先行する値とに基づいて、比較メトリックを形成するように、および
(v)前記比較メトリックが閾値基準を満たす場合、
(1)計算された前記現在値を記憶し、および
(2)前記ビームがその位置にステアリングされたままにするように、
さらに構成される、請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
前記制御サブシステムは、
(vi)前記比較メトリックが前記閾値基準を満たさない場合、前記ビームの前記ビームステアリング装置を作動させて、前記ビームを以前のステアリング位置までステアリングする、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記制御サブシステムは、
(vi)前記ビームの次のサブセット選択し、
(vii)(i)~(vi)を繰り返す、請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
前記制御サブシステムは、前記少なくとも3つの位相状態のそれぞれにおいて監視された前記強度パラメータに基づく入力を持つ目的関数を評価することによって前記現在値を計算するように構成される、請求項20に記載のシステム。
【請求項26】
各ビームについて、前記目的関数は、前記ビームが前記標的に中心合わせされるように位置決めされるときに達成される単一の最大値を有する、請求項24に記載のシステム。
【請求項27】
前記検出器は前記標的に配置される、請求項20に記載のシステム。
【請求項28】
前記検出器は前記標的から反射される放射を感知するように配置される、請求項20に記載のシステム。
【請求項29】
前記サブセット内のビームのそれぞれについて、前記現在値は、前記サブセット内の前記ビームすべての和に対する前記ビームの前記相対強度を表わす、請求項20に記載のシステム。
【請求項30】
前記ビーム源のアレイが少なくとも10のビーム源を含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項31】
前記ビームのそれぞれの前記現在位相は、前記少なくとも3つの位相状態の間でステップ式に変調される、請求項20に記載のシステム。
【請求項32】
前記ビームのそれぞれの前記現在位相は、前記少なくとも3つの位相状態を包含する変調周波数の範囲にわたって実質的に連続的に変調される、請求項20に記載のシステム。
【請求項33】
前記ビームのそれぞれの前記現在位相は、前記少なくとも3つの位相状態を包含する変調周波数の範囲にわたって正弦波状に変調される、請求項20に記載のシステム。
【請求項34】
複数のビームの前記現在位相が逐次的に変動される、請求項20に記載のシステム。
【請求項35】
前記サブセットが大多数のサブセットである、請求項20に記載のシステム。
【請求項36】
前記サブセットが前記ビーム源のすべてを含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項37】
前記サブセットが少数のサブセットである、請求項20に記載のシステム。
【請求項38】
前記制御サブシステムは、前記ビームステアリング装置を作動させて、前記サブセット内の前記ビームをランダムまたは擬似ランダム式にステアリングするように構成される、請求項20に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコヒーレントビーム結合(CBC)システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ源のパワースケーリングを達成するために、複数のコヒーレントなレーザビームが結合されるCBCシステムを利用することが知られている。典型的な実装形態は、ファイバーレーザの各々が共通の「シーダー」発振器によってシードされるファイバーレーザのアレイを採用し、標的において又は標的に到達する前に結合するように方向付けられるビームを生成する。
【0003】
効果的なコヒーレント結合および標的上の小さなサイズの結合ビームスポットを達成するために、標的に到達する異なるビームの位相は、ビーム間の位相差を最小にするように非常に正確に同期されなければならない。さらに、CBCシステムの有効性は、ビーム間の重なりを最大にするために、同じ標的スポット上で異なるビームを正確にアライメントすること(例えば、数マイクロラジアンのスケール)を必要とする。精密なビームアライメントを達成するためのいくつかの従来の技法は、個々のビームにおけるスイッチング、および検出器と撮像システムとの組み合わせを使用してそのビームをアライメントすることに依拠してきた。しかしながら、そのような技法は、ビームの連続的なオン/オフの切り替えを必要とし、それによって、CBCシステムの動作有効性を低下させる。さらに、アライメントはビームをスイッチングでオフにすることを必要とするため、標的に対する係合時間中に生じるアライメント誤差は、そのような技法を使用して補正することができない。他の従来の技法は、確率的平行勾配降下など、多数の自由度にわたる反復最適化に依存してきた。しかしながら、これらの技法は、非常に長い収束時間を有し、動的に変化する動作条件において使用するには非実用的である。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、コヒーレントビーム・アレイのビームをアライメントするためのシステムおよび方法である。
【0005】
本発明の実施形態の教示によれば、標的に向けて方向付けられたコヒーレントビーム結合(CBC)デバイスのビームをアライメントするための方法が提供され、ビームには、調整可能な位相変調器およびビームステアリング装置が関連付けられており、該方法は、(a)ビームのサブセット内のビームのそれぞれについて、対応するビームステアリング装置を作動させてビームをステアリングする工程と、(b)サブセット内のビームのそれぞれについて、対応する位相変調器を作動させて、ビームの現在位相を少なくとも3つの位相状態の間で変調する工程と、(c)標的に入射する放射の強度の関数として変動する強度パラメータを監視する工程と、(d)サブセット内のビームのそれぞれについて、少なくとも3つの位相状態のそれぞれにおいて監視された強度パラメータに少なくとも部分的に基づいて、ビームの相対強度を表わす現在値を計算し、計算された値が標的に対するビームの現在位置を示す、工程とを含む。
【0006】
任意選択で、方法は、(e)サブセット内のビームのそれぞれについて、計算された現在値に従ってビームのビームポインティング方向を調整する工程をさらに含む。
【0007】
任意選択で、方法は、(e)サブセット内のビームのそれぞれについて、ビームに関連する相対強度を表わす計算された現在値と少なくとも1つの先行値とに基づいて、比較メトリックを形成する工程と、(f)比較メトリックが閾値基準を満たす場合、(i)計算された現在値を記憶し、および(ii)ビームを現在位置にステアリングされたままにする工程とをさらに含む。
【0008】
任意選択で、方法は、(g)比較メトリックが閾値基準を満たさない場合、ビームのビームステアリング装置を作動させて、ビームを先行のステアリング位置にステアリングする工程をさらに含む。
【0009】
任意選択で、方法は、(g)ビームの次のサブセットを選択する工程と、(h)(a)~(g)を繰り返す工程とをさらに含む。
【0010】
任意選択で、現在値を計算する工程は、少なくとも3つの位相状態のそれぞれにおいて監視された強度パラメータに基づく入力を持つ目的関数を評価することによって実行される。
【0011】
任意選択で、各ビームについて、目的関数は、ビームが標的に中心合わせされるように位置決めされるときに達成される単一の最大値を有する。
【0012】
任意選択で、強度パラメータは、標的に設置されたビーム感知センサから得られる。
【0013】
任意選択で、強度パラメータは、標的から反射される放射を感知するように配置されたセンサから得られる。
【0014】
任意選択で、サブセット内のビームのそれぞれについて、現在値は、サブセット内のビームのすべての和に対する当該ビームの相対強度を表わす。
【0015】
任意選択で、ビームは、少なくとも10本のビームを含む。
【0016】
任意選択で、各ビームの現在位相は、少なくとも3つの位相状態の間でステップ式に変調される。
【0017】
任意選択で、ビームそれぞれの現在位相は、少なくとも3つの位相状態を包含する変調周波数の範囲にわたって実質的に連続的に変調される。
【0018】
任意選択で、ビームそれぞれの現在位相は、少なくとも3つの位相状態を包含する変調周波数の範囲にわたって正弦波状に変調される。
【0019】
任意選択で、複数のビームの現在位相が逐次的に変動される。
【0020】
任意選択で、サブセットが大多数のサブセットである。
【0021】
任意選択で、サブセットはビームのすべてを含む。
【0022】
任意選択で、サブセットが少数のサブセットである。
【0023】
任意選択で、サブセット内のビームは、ランダムまたは偽似ランダム式にステアリングされる。
【0024】
本発明の実施形態の教示によると、また、システムが提供され、該システムは、(a)標的に向けて方向付けるための複数のコヒーレントビームを生成するように構成されたビーム源のアレイと、(b)ビームの相対位相オフセットの調整を可能にするようにビーム源に関連付けられた複数の調整可能な位相変調器と、(c)コヒーレントビームをステアリングするように構成されたビーム源のアレイに関連付けられた複数のビームステアリング装置と、(d)標的に入射する放射の強度の関数として変化する強度パラメータを監視するために配置された検出器と、(e)強度パラメータを受け取るように検出器に関連付けられ、位相変調器およびビームステアリング装置にさらに関連付けられる、制御サブシステムであって、(i)ビーム源によって生成されたサブセット内のビームをステアリングするようにビーム源のサブセットに関連付けられるビームステアリング装置を作動させ、(ii)サブセット内のビームそれぞれについて、対応する位相変調器を作動させて、ビームの現在位相を少なくとも3つの位相状態の間で変調させ、(iii)サブセット内のビームのそれぞれについて、少なくとも3つの位相状態のそれぞれにおいて監視された強度パラメータに少なくとも部分的に基づいて、ビームの相対強度を表す現在値を計算し、計算された値は標的に対するビームの現在位置を示すように、構成される、制御サブシステムとを含む。
【0025】
任意選択で、制御サブシステムは、(iv)サブセット内のビームのそれぞれについて、対応するビームステアリング装置を作動させて、計算された現在値に従ってビームのビームポインティング方向を調整するように、さらに構成される。
【0026】
任意選択で、制御サブシステムは、(iv)サブセット内のビームのそれぞれについて、ビームの相対強度を表わす計算された現在値と、ビームに関連付けられる相対強度値を表わす少なくとも1つの先行値とに基づいて、比較メトリックを形成し、および(v)比較メトリックが閾値基準を満たす場合、(1)計算された現在値を記憶し、および(2)ビームがその位置にステアリングされたままにするように、さらに構成される。
【0027】
任意選択で、制御サブシステムは、(vi)比較メトリックが閾値基準を満たさない場合、そのビームのビームステアリング装置を作動させて、ビームを前のステアリング位置までステアリングするように、さらに構成される。
【0028】
任意選択で、制御サブシステムは、(vi)ビームの次のサブセットを選択し、(vii)(i)~(vi)を繰り返すように、さらに構成される。
【0029】
任意選択で、制御サブシステムは、少なくとも3つの位相状態のそれぞれにおいて監視された強度パラメータに基づく入力を持つ目的関数を評価することによって現在値を計算するように構成される。
【0030】
任意選択で、各ビームについて、目的関数は、ビームが標的に中心合わせされるように位置決めされるときに達成される単一の最大値を有する。
【0031】
任意選択で、検出器は標的に配置される。
【0032】
任意選択で、検出器は標的から反射される放射を感知するように配置される。
【0033】
任意選択で、サブセット内のビームのそれぞれについて、現在値は、サブセット内のビームのすべての和に対するビームの相対強度を表わす。
【0034】
任意選択で、ビーム源のアレイは少なくとも10のビーム源を含む。
【0035】
任意選択で、各ビームの現在位相は、少なくとも3つの位相状態の間でステップ式に変調される。
【0036】
任意選択で、ビームのそれぞれの現在位相は、少なくとも3つの位相状態を包含する範囲の変調周波数にわたって実質的に連続的に変調される。
【0037】
任意選択で、ビームのそれぞれの現在位相は、少なくとも3つの位相状態を包含する範囲の変調周波数にわたって正弦波状に変調される。
【0038】
任意選択で、複数のビームの現在位相が逐次的に変動される。
【0039】
任意選択で、サブセットは大多数のサブセットである。
【0040】
任意選択で、サブセットはビーム源のすべてを含む。
【0041】
任意選択で、サブセットは少数のサブセットである。
【0042】
任意選択で、制御サブシステムは、ビームステアリング装置を作動させて、サブセット内のビームをランダムまたは擬似ランダム式にステアリングするように構成される。
【0043】
本明細書に別段の定義がない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料が実施され得、あるいは本発明の実施例の試験に用いることができるが、例示的な方法および/または材料が下記に記載されている。矛盾する場合、定義を含む本特許明細書が統制する。さらに、材料、方法、および実施例は単なる例示であり、必ずしも限定するように意図されたものではない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
本発明のいくつかの実施形態は、添付の図面を参照して、例としてのみ本明細書に記載されている。特定の図面を詳細に参照して、詳細が一例として、本発明の実施形態の例示的説明の目的のために示されるということが強調される。この点では、図面について行われる記載により、本発明の実施形態を実施する方法は当業者に明らかとなる。
【0045】
ここで図面に注意を向けるが、同様の参照番号または参照文字は、対応する構成要素または同様の構成要素を指し示す。
【0046】
図1図1は、ビームディレクタを使用して、および標的にて感知された放射に基づいて、標的上でコヒーレントビームをアライメントするための、本発明の実施形態の教示に従って構築され、動作可能である、コヒーレントビーム結合システムの図式表現である。
図2図2は、ビームディレクタを使用して、および標的から反射された放射に基づいて、標的上でコヒーレントビームをアライメントするための、本発明の変形の実装の教示に従って構築され、動作可能である、コヒーレントビーム結合システムの図式表現である。
図3図1のシステムに類似するが、各コヒーレントビームに関連付けられたビームディレクタがある、コヒーレントビーム結合システムの図式表現である。
図4図2のシステムに類似するが、各コヒーレントビームが、関連付けられたビームディレクタを有する、コヒーレントビーム結合システムの図式表現である。
図5】本発明の実装の教示による図1~4のビームディレクタのビームステアリング装置の図式表現である。
図6】本発明の変形の実装の教示による、図1~4のビームディレクタのビームステアリング装置の図式表現である。
図7】本発明の別の変形の実装の教示による、図1~4のビームディレクタのビームステアリング構成の図式表現である。
図8】本発明の実装の教示による、標的上にコヒーレントビームをアライメントするプロセスを例示するフロー図である。
図9】本発明の実装の教示による、標的にて放射を検出するための、および撮像システムとともに動作する、光検出器の図式表現である。
図10】本発明の変形の実装の教示による、標的から反射する放射を検出するための、および撮像システムとともに動作する、光検出器の図式表現である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、コヒーレントビーム・アレイのビームをアライメントするためのシステムおよび方法である。
【0048】
本発明に係るシステムと方法の原理および操作は、本明細書に添付の図面を参照することでよりよく理解され得る。
【0049】
本発明によるシステムおよび方法は、高エネルギーレーザーまたは指向性エネルギー兵器システムのコンテキストの中に適用されたとき、特に価値が高い。
【0050】
本発明の少なくとも1つ実施形態について詳細に説明する前に、本発明は、その適用時に、以下の記載で明らかにされた、および/または図面および/または実施例において例示された構成要素および/または方法の構成および配置の詳細に必ずしも限定されないことは理解されたい。本発明は、他の実施形態で、あるいは様々な方法で実施または実行され得る。
【0051】
ここで図面を参照すると、図1~4は、本開示の一定の非限定的な実施形態によって構築されて動作可能である、コヒーレントビーム結合(CBC)システム/デバイス(全体的に(10)とされ、以下、「システム」と呼ぶ)の様々な実装を例示する。概容では、システム(10)は、標的(34)に向かって方向付けるための複数のコヒーレントビーム(14a、14b、および14c)(「サブビーム」とも呼ばれる)を生成するように構成されたビーム源(12a、12b、および12c)のアレイを含む。複数の調整可能な位相変調器(16a、16b、および16c)が、ビームの相対的位相オフセットの調整を可能にするように、それぞれのビーム源(12a、12b、および12c)に関連付けられる。説明の簡潔さために3つのビーム源と位相変調器のみがここで例示されるが、本開示の実施形態は、最も好ましくは、2から数百の間の任意の数のビームを含むアレイを備えて実装され、および最も典型的には、20~100の範囲のビーム源、いくつかのとりわけ好ましい場合には、少なくとも10のビーム源を備えて、実装される。位相変調器は、典型的にはビーム源につき1つを供給されるが、ビーム源のうちの1つが調整のない一定基準位相として実装され、および残りのビームおよび位相オフセットがその基準位相に対して測定され、および/または調整される場合があることは、理解されよう。「ブラックボックス」として図1に概略的に表される複数のビームステアリング装置(20a、20bおよび20c)は、ビームのポインティングベクトルに関連付けられる少なくとも1つのビームポインティングパラメータを調整することによるビームステアリングが可能となるように、それぞれのビーム源(12a、12bおよび12c)に関連付けられる。検出器(28)(例えば、光検出器)は、標的(34)の領域に入射する放射の強度の関数として変化する強度パラメータを監視するために配置される。任意選択で、検出器(28)は、システム(10)の照準を合わせるために使用される撮像システムと統合されてもよく、またはそれと協働してもよい。撮像システムはここでは図示されていないが、図9および図10を参照して、撮像システムを有する検出器構成の非限定的な例が説明されることになる。
【0052】
論理回路を含む制御サブシステム(「コントローラ」とも呼ばれる)(30)は、監視された(測定された)強度パラメータを受け取るように検出器(28)に関連付けられ、さらに、ビームの位相調整およびビームのビームポインティングパラメータを制御するために、調整可能な位相変調器(16a、16b、および16c)ならびにビームステアリング装置(20a、20b、および20c)それぞれに関連付けられる。制御サブシステム(30)から位相変調器(16c)およびビームステアリング装置(20c)への矢印指示線は、調整可能な位相変調器(16a、16b、および16c)のすべてと制御サブシステム(30)との機能的な連係、ならびにビームステアリング装置(20a、20b、および20c)のすべてと制御サブシステム(30)との機能的な連係を表わす。
【0053】
特定の好ましい実施形態では、制御サブシステム(30)と検出器(28)との間の連係は、低レイテンシリンク(すなわち、好ましくは1ミリ秒以下の待ち時間を提供できるリンク)によって提供される。低レイテンシリンクは、例えば、低レイテンシデータリンクとして、または、例えば、有線ネットワーク、光ファイバ接続、もしくは自由空間光通信ネットワークを含む通信ネットワークの低レイテンシ通信リンクとして具現化され得る。
【0054】
実装の様々な詳細は、デバイスの意図される用途に従って、大幅に変化することが理解されるであろう。様々な用途は、乱流媒体の光学特性の高速変動を測定するための低エネルギー研究ツールから、様々な通信用途(中エネルギー)、さらに高エネルギー指向性エネルギー兵器システムにまで広がり得る。それぞれの場合において、ビーム源(12a、12b、および12c)のアレイは、最も好ましくは、共通のシーダー発振器(32)によってシーディングされたファイバーレーザのアレイである。高エネルギー用途では、各ファイバーレーザは、好ましくは、少なくとも100W、ある場合には、少なくとも1kWの電力出力のために定格化される。本開示の原理は、様々な異なる波長で動作するデバイスに使用され得るが、典型的には近赤外(NIR)範囲で実装される。これらの範囲で動作させるのに適したシーダー発振器およびファイバーレーザは、当技術分野で周知であり、容易に、商業的に入手可能である。
【0055】
位相変調器(16a、16b、および16c)は、適切な応答時間および低い減衰を有するどんなタイプの位相変調器であってもよい。位相変調器は、比較的低出力の信号で動作するために、シーダ(32)を分割した後に、しかし好ましくはファイバーレーザ増幅器の前に配置される。適切な位相変調器は商業的に入手可能である。1つの好適な非限定的な例は、Thorlabs,NJ(USA)から市販されているモデル番号LN53S-FCによって識別される10GHzチタン拡散Z-Cut LiNbO3位相変調器である。
【0056】
ビーム方向付け装置(交換可能に「ビームディレクタ」と呼ばれる)(18)は、ビーム(14a、14b、および14c)が標的(34)に到達したときまたは到達する前にコヒーレントに結合する(構築的に干渉する)ように、ビーム(14a、14b、および14c)を標的(34)に向かって、または大きな標的については標的の特定の領域に向かって方向付ける。本明細書のコンテキストの中では、標的に到達したときまたは到達する前にコヒーレントに結合されるコヒーレントビームとは、標的でコヒーレント結合されるビーム、または標的の前にコヒーレント結合され、そして標的までの残りの距離にわたってコヒーレント結合を維持するビームのどちらかである。
【0057】
「標的」という用語は、本明細書では、ビームがそれに対して入射する物体を指すために広く使用され、これは、通信用途のための受信機(検出器(28)など)または軍事的意味での兵器用途のための標的であり得る。検出器(28)の構造および配置は、用途の詳細に依存する。標的がシステム設計(例えば、通信用途、研究用途などの用途のための)の一部を形成する場合、検出器(28)が、ビーム源(12a、12b、および12c)によって放出される放射(コヒーレントビーム(14a、14b、および14c)を受信および感知するために配置され、および検出器(28)に入射する放射の強度を示す信号(強度パラメータ)を生成するように構成される。図1は、標的(34)が「協力的標的」である、すなわち「標的」がシステム(10)の一部であり、標的載置の光検出器(28)を備える、非限定的な構成例を示す。そのような協働構成では、検出器(28)自体を「標的」と見なすことができる。
【0058】
標的がシステム設計の一部を形成しない遠隔物体である場合、検出器(28)は、標的(34)から反射される放射を感知するように配置される。図2は、標的(34)が「非協力的」標的である、すなわち、「標的」がシステム(10)の一部ではなく、何らかのセンサを担持することも、システムの動作において何らかの能動的役割も果たすことも要求されない、非限定的な構成例を図示する。ここで、標的(34)に入射する放射の一部は、光学装置(42)に向かって反射され(反射放射(15)として示される)、標的(34)の一領域に入射する放射の強度を示す信号(強度パラメータ)を生成する検出器(28)に送達される。検出器(28)と光学装置(42)は共に、標的反射放射(15)を受け取る「レシーバ」を形成する。光検出器(28)が正しい放射を測定することを確実にするために、典型的にはレシーバ望遠鏡の形態にある光学装置(42)は、反射された放射がそこから届くことになる領域に対応する視野を画定するように配置される。光学装置は、図2ではレンズ(42)によって概略的に表されているが、典型的には、当技術分野で知られているように、適切な望遠鏡を形成するために屈折性もしくは反射性の、またはそれらの任意の組合せであり得る、レンズのアセンブリである。周囲背景放射を排除しながら反射されたレーザ照明を選択的に検出器(28)に通過させ、それにより検出器における信号対雑音比を向上させるために、狭通過帯域フィルタ(図示せず)が光路内に有利に配備されてもよい。
【0059】
あるシナリオでは、特に、標的(協力的または非協力的のいずれか)までの距離が長い場合、ビーム(14a、14b、および14c)は、標的に向かって、大気などの光学的に不均一な、および/または過渡的に変化する媒体を通過する光路に沿って伝送され得ることが留意される。このような場合が図2に示されており、媒体(一般的に(36)とする)は、雲状の物体によって図式的に表されている。例えば、標的までの距離がより短い、他のシナリオでは、そのような媒体(36)が存在しないことが、留意される。さらに、図1に示す構成におけるビーム(14a、14b、および14c)は、光学的に不均一な、および/または過渡的に変化する媒体がない場合に伝送されるものとして示されているが、図2に示すものと同様の伝送条件が、図1に示す構成にも適用可能であり得ることに留意されたい。
【0060】
ビームディレクタ(18)は、ビームステアリング装置(20a、20b、および20c)を含むとともに、ビーム(14a、14b、および14c)をコリメートおよび集束させるための光学装置(26)(図1および図2において、レンズによって概略的に表される)を含む。光学装置(26)は、ここでは概略的にのみ示されているが、典型的には、各ビームのための別個のコリメータと、ビームを集合的に標的に向けて方向付けるための共通の大口径集束光学系とを含む。あるいは、別個の集束光学系を各ビームのために設けることができる。図3および図4は、それぞれ図1および図2のシステムに概ね類似しているが、別個のコリメート光学系および集束光学系(26a、26b、および26cとする)が各ビームに対して設けられているシステムを示す。ここで、各ビーム源は、事実上、それ自体のビームディレクタ(18a、18b、および18cとして指定される)を有し、ビーム源-ビームディレクタの組み合わせのモジュール設計を提供し、システムの柔軟性および適応性の増加につながっている。しかし、他のビーム源-ビームディレクタの実装の組み合わせ、例えば、ビーム源のサブセットが共通のビーム方向付け光学系を共有する実装、または光路の一部が共有され、一部が分離される実装が可能であることに留意されたい。
【0061】
好ましい実施形態では、ある例示的な実装において光学-機械式装置として実装されるビームステアリング装置(20a、20b、および20c)のそれぞれが、少なくとも1つの光学要素を有するビームステアリング光学系と、サブビーム(14a、14b、および14c)のポインティングベクトルに関連するビームポインティングパラメータ(方位角および仰角)を調整して方位角および/あるいは仰角においてビームをステアリングするように協働する少なくとも1つのアクチュエータとを含む。
【0062】
図5図7は、様々な非限定的な実装による、ビームステアリング装置(20a、20b、および20c)の各々を表すビームステアリング装置(20)の詳細を概略的に示す。上述のように、ビームステアリング装置(20)は、制御サブシステム(30)に連結された少なくとも1つのアクチュエータ(24)に連結された、少なくとも1つの光学要素を有する、ビームステアリング光学系(22)を含む。一般的に、ビームステアリング光学系(22)およびアクチュエータ(24)は、MEMS作動ミラー、磁気作動ミラーなどを含むがこれらに限定されない任意の適切な光学ビームステアリング技術を用いて実装することができる。図5は、アクチュエータ(24)が機械式アクチュエータであり、ビームステアリング光学系(22)が、機械式アクチュエータに連結された調整可能なステアリング・ミラーとして実装された光学要素(23)を含む、非限定的な1つの実装例を示す。機械式アクチュエータは、選択的に、ある場合には独立して、入射ビーム(14I)による照射に応じて出射ビーム(14O)の仰角と方位角(ビームポインティング・パラメータ)を調節するために、制御サブシステム(30)から受け取られた制御入力に応答して、選択的にステアリング・ミラーの配向および/または位置を(例えば、1つ以上の回転軸の周りの回転運動および/または直線移動を介して)調節するように、構成される。(ここで、入射ビーム(14I)は、対応するビーム源(例えば、ファイバレーザ12a)の出力からのビームであり、出射ビーム(14O)は、標的(34)に向けて方向付けるために光学装置(26)に向けられる偏向ビーム(例えば、ビーム(14a))である)。例えば、第1の回転軸(ここでは恣意的に「x軸」に対応するように示される)の周りのステアリング・ミラーの回転は、出射ビームの仰角を調整するために使用されてもよく、一方、第1の軸に直交する第2の回転軸(ここでは恣意的に「z軸」に対応するように示される)の周りのステアリング・ミラーの回転は、出射ビームの方位角を調整するために使用されてもよい。ステアリング・ミラーは、好ましくは、ビームのスペクトル(例えば、NIR範囲)の光に対して完全に反射性である。
【0063】
図6は、ビームステアリング光学系(22)がそれぞれのアクチュエータ(24)に結合された一対の光学要素(23、25)を含む、別の非限定的な実装を示す。ここで、光学要素(23、25)は、一対の、独立して制御可能でありかつ調整可能なステアリング・ミラー(別個の機械式アクチュエータに連結される)として実装され、アクチュエータ(24)の1つは(制御サブシステム(30)から受け取った制御入力に応答して)、例えば第1の回転軸(例えば、恣意的に「x軸」または「z軸」と標識される)の周りの回転を介して、ステアリングミラー(23)の配向および/または位置を調整し、それにより、偏向ビーム(14D)として、入射ビーム(14I)を他のステアリング・ミラー(25)に向かって偏向するように、ビームの仰角または方位角を制御する。アクチュエータ(24)の別の1つは(制御サブシステム(30)から受け取った制御入力に応答して)、例えば第2の回転軸(例えば、恣意的に「z軸」または「x軸」と標識される)の周りの回転を介して、ステアリングミラー(25)の配向および/または位置を調整し、それにより、偏向ビーム(14D)による照射に応答して出射ビーム(14O)の方位角または仰角を制御する。図7は、さらに別の非限定的な実装を示し、図6のものに類似するが、光学要素(23)のうちの1つが、入射放射を他の光学要素(25)に偏向させる固定ミラーとして実装され、光学要素(25)が、アクチュエータ(24)に連結された調整可能なステアリング・ミラーとして実装される。ここで、調整可能なステアリングミラー(25)は、ビームポインティングベクトルの仰角および方位角の独立した調整を可能にするように、2つの直交する回転軸(ここでは恣意的に「x軸」および「z軸」に対応するように示す)の周りに独立して回転可能である。
【0064】
図5図7は、1つ以上のステアリング・ミラーとして実装されたビームステアリング光学系(22)を概略的に示すが、例えば、ステアリング・ミラーの代わりにステアリングプリズムが使用される実装を含む他の実装も本明細書で企図される。ステアリングプリズムは、1つまたは複数の回転軸の周りのプリズムの回転を介して出射ビームの仰角および方位角を制御することができる。そのような実装では、出射ビーム角度を制御するプリズムの反射面は、好ましくは、ビームのスペクトル内の光に対して完全に反射性である。直方体プリズム、または反射面が展開される外面を有する任意の他のタイプのプリズムとして実装される場合、外面は、好ましくは、ビームのスペクトル内の光に対して透過性である光透過性材料から形成される。ニュージャージー州ニュートンのThorlabsから入手可能なものなどのウェッジプリズムは、ビームステアリング用途に特に有用である。方位角および仰角を独立して制御するために独立して直交した軸に沿ったファイバ・モーションを採用する実装を含む、他のビームステアリングの実装も本明細書で企図される。非機械的ビームステアリングの実装、例えば、英国Ilminster Somersetから入手可能なものなどの音響光学偏向器も使用され得る。しかしながら、音響光学偏向器は、高速ビームステアリング能力を提供するという利点を有するが、しばしば、標的までの光路において著しい光学損失をもたらし、そのような偏向器は高エネルギー用途にあまり適さないものになっている。
【0065】
実装にかかわらず、アクチュエータ(24)(複数可)は、制御サブシステム(30)に(例えば、電子リンクを介して)結合され、制御サブシステム(30)から制御入力(制御信号)を受信するように構成される。制御サブシステム(30)は、ビームステアリング光学系(22)の光学要素(または複数の光学要素)の配向および/または位置を調整してコヒーレントビームの方位角および/または仰角を調整するように、アクチュエータを制御するように、アクチュエータ(複数可)に制御入力(制御信号)を提供し、それにより各ビームのビームポインティングベクトルを調整する。
【0066】
制御サブシステム(30)の論理回路は、1つ以上の特定用途向けIC(ASIC)、1つ以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含むがこれらに限定されない、デジタルおよび/またはアナログ処理を使用する適切に構成されたハードウェアとして、実装されてよく、適切なオペレーティングシステムの下で動作するソフトウェアによって構成された汎用の計算機システムとして、実装されてよく、あるいは適切な速度で本明細書に説明された機能を実行するように構成された任意のハードウェア/ソフトウェア/ファームウェアの組み合わせによって、実装されてよい。制御サブシステム(30)は、位相変調器を制御し、検出器(複数可)から入力を受け入れるために、典型的には、データストレージ・デバイスと適切な入出力インターフェースも含み、これらすべて、当該技術分野における通常の技術を有するものには自明であろう。システムのデータ処理要件は、高速測定にとってさえも、異常ではなく、標準的な処理機器によって対処することができる。並列に迅速に調整されなければならない比較的多数の出力(各ビームに対する位相変調器)のために、ほとんどの既製のハードウェアのインターフェース能力を超える特殊なハードウェアの適応が必要とされ得るが、そのような適応は、標準的な構成要素を使用して当業者によって容易に行われる。
【0067】
ビームのミスアライメントを減らす(ポインティングベクトル調整)ために、盲目的最適化アプローチ(例えば、確率的並列勾配降下法、またはSPGDなどの)を伴う強度パラメータ測定を使用することは、そのようなアプローチを様々な作動条件において非実用的なものとする著しい欠点をしばしば有することが、見出されてきた。例えば、拡散性の物体からの反射に起因する位相ノイズ、乱気流、およびシンチレーションによって引き起こされる強度変動は、一般にステアリング構成要素(24)と同程度かそれ以上の時間的尺度上にあり、そのことがポインティングベクトル調整に使用するには小さすぎる信号対雑音比(例えば、SNR<1dB)をもたらし得る。さらに、盲目的最適化法(SPGD)は、多数の反復するステップを必要とし、そのためしばしば収束するのがあまりに遅くて効果的ではない。代わりに、本開示の実施形態によるシステム(10)は、強度パラメータの決定論的(すなわち定量的)測定を実行し、および、位相情報に埋め込まれた、位相変調器(16a、16b、および16c)による現在位相の変調に起因するビームポインティング誤差/ミスアライメントの情報を抽出するためにそれらの測定を使用する。ある特に好ましい実装において、決定論的測定は、ビームモデルに基づく分析との組み合わせで、各ビームについてビームの相対強度を表わす値を計算するために使用され、それにより、当該計算された値は、標的に対するビームの中心位置を示す。ある好ましい実装では、計算された値は、ビームすべての合計に対するビームの相対強度を表わす。モデルに基づく分析は、目的関数を識別または生成することを含み、該目的関数は、相対強度を表わし、かつビームの中心が標的に中心合わせされたとき(あるいは標的が協力的標的である場合は、検出器に中心合わせされたとき)に達成される単一の最大値を有する。目的関数は、ビームモデルの解析に基づいて導出され、解析の詳細は、特定のビームモデルと伝送されるビームに導入される位相変調の形態とに依存する。結果として、目的関数は、位相変調器(16a、16b、および16c)による現在位相の変調に起因する決定論的測定値を入力として取り、およびシステム(10)の標的に対する従事の始めから終わりまで、あるいは、例えば、ビームポインティング誤差が容認できる許容範囲内になるまで、または(目的関数の評価を介して)計算された代表的な相対強度が十分な強度レベルになるまでなどの、停止条件に到達するまで、ビームポインティングベクトルを反復的に調整しながら、(制御サブシステム(30)によって)繰り返し評価される。
【0068】
ある限定しない例示的な実装では、制御サブシステム(30)は、ビームモデルとしてガウシアンビームを採用してよい。ここで、標的(34)(または図1および図3の場合のように検出器(28))の上でコヒーレントに結合されたビームの強度、I(r)は、以下の等式で数式化され:
【0069】
【数1】
式中、Nはビームの総数(図1ではN=3)であり、Eはi番目のビームの電界強度であり、rは、i番目のビームの中心の位置であり(三次元空間中に、または三次元ベクトルとして、与えられる)、σは、電場の振幅がビーム伝搬方向に沿って1/eの値のまで低下するビームの半径であり、rは、標的(34)の位置であり(三次元空間中に、または三次元ベクトルとして与えられる)、φはi番目のビームの位相であり、およびjは複素定数√(-1)である。
【0070】
簡潔さのために、標的(34)(または図1および図3の例のような検出器(28))が十分に小さくおよび原点に位置すると仮定される場合、すなわちr=0の場合、式1におけるrに対する依存性は排除される。これらの仮定を使用すると、式1における数式は以下のように縮めることができる:
【0071】
【数2】
【0072】
強度Iは、ビーム間の位相差が最小化され(好ましくは0)、かつ、ビーム(例えば、サブビーム(14a、14b、および14c))の各々が標的(34)に中心合わせされるとき、すなわち、i=1・・・Nのすべてについてr=0のとき、最大値を達成する。位相変調器(16a、16b、および16c)による現在の位相の変調から生じる変調は、CBCシステム(10)の複数のビーム間の位相オフセットを補正するために使用され得ることが示されている。ある特に関連性がある例では、標的(34)に入射する放射強度の関数として変化する前述の強度パラメータは、検出器(28)によって監視(測定)され、その間、各位相変調器は、対応する伝送ビームの現在位相を少なくとも3つの位相状態、典型的には初期「未変更」位相状態と2つの変更位相状態との間で変調するように作動される。強度パラメータの監視は、典型的には、検出器(28)によって、標的(34)に入射する放射の強度を示す強度信号を生成することを含む。制御サブシステム(30)は、検出器(28)から監視された強度パラメータ(すなわち、強度信号)を受け取り、他のすべてのビームの合計に対する、各伝送ビームの現在位相の変調に起因する監視された強度パラメータの変動を識別する。その後、制御サブシステム(30)は、各ビームについて、他のすべてのビームの合計を表わす位相に対する現在位相の位相オフセットを(識別された変動に基づいて)計算する。
【0073】
サブビームの位相を変調し、測定された強度パラメータにおける対応する変動を識別し、サブビームの位相オフセットを計算し、およびその位相オフセットを補正する、このプロセスは、好ましくは、速いサイクルで繰り返され、それにより、ビームを生成するハードウェアでの揺らぎまたは乱気流によって生じる大気状態の揺らぎに起因する場合がある動作状態における動的な変動について、リアルタイムで修正を行う。位相補正のこのプロセスのさらなる詳細は、WO2020/016824 A1において十分に説明され、それは参照によってその全体が本明細書に組み入れられる。
【0074】
本開示のある態様によると、強度パラメータ測定に埋め込まれるビームポインティング誤差および/またはビーム中心位置の情報は、位相変調器(16a、16b、および16c)による現在位相の変調の結果もたらされる強度パラメータ測定値(およびある場合では位相オフセット情報)を使用して、各ビームについてビームの相対強度を表わす値を計算することによって、確認される。
【0075】
ある実装では、各送信ビームの現在位相は、変調周波数で変調される。ある特に好ましい実装では、各伝送ビームの現在位相は、基礎位相値(未変更の位相状態)と少なくとも2つの離散的な変調値(変更された位相状態)との間でステップ式に変調される。他の実装では、各伝送ビームの現在位相は、前述の少なくとも3つの位相状態を包含しながら、ある範囲の変調周波数にわたって実質的に連続的に変調される。
【0076】
1つの好ましいが非限定的な例によると、制御サブシステム(30)は、各ビーム(14a、14b、および14c)の位相をステップ式に変化させ、ここで、例えば、方形波ディザリング法において一般に使用されるような、長方形波または矩形波位相変調を採用することによって、位相状態のステップ関数変動と同等な離散的ステップが使用されてもよい。ここで、異なるビームの変調は、各変調の結果として生じる強度測定上の効果を分離するように、好ましくは逐次的に行なわれる。
【0077】
ある特に好ましい例では、各ビームの位相は、離散的な3ステップの変調に従って逐次的に変動され、ここで、各ビームに関連付けられた位相変調器がビームの位相をその現在のベース値(初期の未変更の位相状態)と2つの離散的な変調値(第1の変更された位相状態(すなわち第1の離散的な変調値)と第2の変更された位相状態(すなわち第2の離散的な変調値))との間で変調するように構成される。位相値は、他のすべてのビームの合計を表わす位相に対する各ビームの現在位相の位相オフセットを表わす。初期の未変更の位相状態において、位相オフセットは、事実上0である(すなわち、他のすべてのビームの合計を表わす位相に対するビームの現在位相の位相オフセットがない)。第1の変更された位相状態では、すなわち、位相が第1の離散的な変調値をとるとき、他のすべてのビームの合計を表わす位相に対して、ビームの現在位相には正の位相オフセットまたはシフト(いわば+δ)がある。第2の変更された位相状態では、すなわち、位相が第2の離散的な変調値をとるとき、他のすべてのビームの合計を表わす位相に対して、ビームの現在位相には負の位相オフセットまたはシフト(いわば-δ)がある。ある場合では、位相オフセット値+/-δは、実際の離散的な変調値である。しかしながら、他の場合では、例えば、WO2020/016824 A1に記載の技法を使用して+/-δが計算され得る。
【0078】
制御サブシステム(30)がi番目のビームの位相変調器を作動させて、3つの位相状態の間で変動するように位相φを変調する時、制御サブシステム(30)は、未変更の(すなわちシフトされていない)位相状態にある他のすべてのビーム(すなわちk≠iであるk=1・・・Nについて、φ_k)の位相を維持するように残りの位相変調器を作動させる。検出器(28)は、3つの強度信号を生成するように3つの位相状態で強度パラメータを測定し、および好ましい実装では、変調に起因する強度パラメータにおける変差を識別する。i番目のビームの位相が未変更の位相状態をとるとき(つまり、ビームのすべての位相が未変更/未シフトであるとき)、検出器(28)は、Iとされる第1の強度パラメータ測定を得るように、強度を測定する。i番目のビームの位相が第1の変更された位相状態をとるとき(すなわち、現在の位相φが他のすべてのビームの合計を表わす位相に対して+δだけシフトされたとき)、検出器(28)は、I(φ+δ)とされる第2の強度パラメータ測定を得るように、強度を測定する。i番目のビームの位相が第2の変更された位相状態をとるとき(すなわち、現在の位相φが他のすべてのビームの合計を表わす位相に対して-δだけシフトされたとき)、検出器(28)は、I(φ-δ)とされる第3の強度パラメータ測定を得るように、強度を測定する。検出器(28)は、好ましくは、変調間隔と一致する時間間隔で検出器(28)が(少なくとも)3つの強度測定を実行するように、(制御サブシステム(30)を介して)位相変調器と同期される。好ましくは、3つの強度測定の間の時間は、3つの強度パラメータ測定を行なうために必要な総強度測定期間が数マイクロセカンドのオーダーとなるように、数マイクロセカンドのオーダーである。
【0079】
変調の結果生じる強度変動(Iと表記される)は、強度測定値I(φ+δ)(+δだけシフトされた、位相φを除くすべてのビームの位相が未変更の強度)と強度測定値I(すべてのビームの位相が未変更のときの強度)との間の比として得られる(例えば、制御サブシステム(30)によって計算される)。変調の結果生じる別の強度変動(Iと表記される)は、強度測定値I(φ-δ)(-δだけシフトされた、位相φを除くすべてのビームの位相が未変更の強度)と強度測定値I(すべてのビームの位相が未変更のときの強度)との間の比として得られる(例えば、制御サブシステム(30)によって計算される)。
【0080】
ガウシアンビームモデルを使用すると、i番目のビームの、すべてのビーム(未変更の位相を伴う)の合計に対する相対強度は、以下のように数式化できる。
【0081】
【数3】
【0082】
(3)における数式は、等式(2)(多くの相互変調積項を伴う)を展開すること、およびiだけに従属する項を分離すること(すなわち、すべての相互変調項とすべてのk≠iの項を無視すること)により、導出することができる。目的関数F(φ,δ)は、数式(3)におけるビームの相対強度と、および位相オフセット量(すなわち変調レベル)δと変調に起因する強度変動の相対強度(IおよびI)とをまとめて相互に関係させるものだが、等式(2)を展開することにより導出することができ、以下のように与えられる。
【0083】
【数4】
【0084】
相互変調積のすべてにおける位相項は、様々なビームの位相間の位相差まで解かれることに留意されたい。項I(φ+δ)については、位相φ+δは、+δだけシフトされたi番目のビームの現在位相を表わす(言いかえれば、φ+δは、他のすべてのビームの合計を表わす位相に対して現在位相のオフセット+δによってシフトされた現在位相である)。同様に、項I(φ-δ)については、位相φ-δは、δだけシフトされたi番目のビームの現在位相を表わす(言いかえれば、φ-δは、他のすべてのビームの合計を表わす位相に対して現在位相のオフセット-δによってシフトされた現在位相である)。
【0085】
制御サブシステム(30)は、変調に起因する強度変動(IおよびI)を得た後、δ,IおよびIを入力として使用して、目的関数F(φ,δ)を評価するように計算を実行する。目的関数F(φ,δ)は、ビームが標的(34)に中心合わせされたとき(すなわちr=0のとき)に達成される単一の最大値を有する。従って、目的関数Fは、数式(3)においてビームの相対強度を表わし、および、ビームの中心の標的(34)に対する位置を示し、さらにビームポインティング誤差(すなわちビームの不良アライメント)を示す。目的関数F(φ,δ)を評価することに生成される非最大の出力値は、ビームの中心の位置が標的(34)の中心と一致せず、従って、ある方向にある量のビームポインティング誤差がある、ということを知らせる。目的関数F(φ,δ)は、最大ビーム強度を達成するようビームポインティング誤差を修正するためにビームが動かされる必要がある方向を提供しない場合があるが、ポインティング誤差性能の閾値またはビーム強度閾値などの停止基準までビームポインティングベクトルを調整しながら、繰り返し計算/評価され得る最適化関数またはメリット関数として使用することができる。
【0086】
例えば、制御サブシステム(30)によるビームの部分集合の目的関数の評価において低い出力値が生成される場合、制御サブシステム(30)は、ビームのビームポインティングベクトルを調整する(すなわち、ビームの方位角および/または仰角を調整する)ために、当該部分集合(すなわちいくつか又はすべて)に関連付けられるビームステアリング装置を並列で作動させてよい。その後、検出器(28)は、ビームポインティングベクトルが調整された後、3つの位相状態で強度パラメータの新しい測定を実行してもよく、次に制御サブシステム(30)は、検出器(28)によって実行された新しい測定に基づいて、変調(IおよびI)に起因する強度変動を取得し、新しいIとIを使用して、各サブビームについて目的関数F(φ,δ)を再評価してもよい。ビームポインティングベクトルを調整し、3つの位相状態で強度パラメータを測定し、および目的関数を評価するこのプロセスは、急速なサイクルで反復的に繰り返すことができ、それにより、ビームポインティング誤差を高い収斂速度においてリアルタイムで補正する。様々な実際的用途において、これらのサイクルの急速な反復は、毎秒少なくとも100回繰り返して実行される。本開示の教示によるビームアライメントのプロセスは、各ビームについて別々に実行される最適化に依存する。このように、様々なビームの最適化の自由度は無相関であるため、自由度が相関して膨大な最適化空間となる従来のブラインド最適化アプローチ(例えば、SPGD)と比較して、最適化空間における全体的な自由度の削減をもたらす。
【0087】
理解されるに違いないように、上記の離散的な3ステップの変調の例は、任意の整数M>2についてM-ステップまで外挿され得る。
【0088】
このように、ここまで記載した実施形態は、現在のベース値と(少なくとも)2つの離散的な変調値との間の変調がステップ式に実行される特に好ましい非限定的な実装に関したが、制御サブシステム(30)がビームの現在位相を、少なくとも前述の3つの位相状態を包含しながら、ある範囲の変調周波数にわたって実質的に連続的に、同時に変化させる他の実施形態が可能である。従って、例えば、ビームの現在位相は正弦波の変調に従って変えられてもよい。他の連続関数(鋸歯などのバリエーション)が使用されてもよい。ある好ましい非限定的な例では、制御サブシステム(30)は、各ビームの位相を、変調周波数ωにおいて位相変化変調振幅Aだけ中心位相状態の周りで正弦波状に変化させる。最初の2つの高調波(周波数ωおよび2ω)に対応する周波数で標的に生じる強度変動の振幅をIωおよびI2ωと表すと、平均位相に対する周波数ωで変調されたビームの中心位相状態の位相オフセットΦωは、以下の式で与えられ、
【0089】
【数5】
式中、JおよびJは、第1種ベッセル関数である。
この場合、目的関数は、以下の形態を有する。
【0090】
【数6】
【0091】
ここで、開示される主題の実施形態によるプロセス(方法)(800)を詳述するフロー図を示す図8に注目する。このプロセスは、サブビームの目的関数の値に従って各サブビームのビーム指向方向を補正/調整することによって、システム(10)のビームを標的上にアラインメントするステップを含む。図1図7に示される要素も参照される。図8のプロセス(800)およびステップ(サブプロセス)は、例えば、位相変調器(16a、16b、および16c)、ビームステアリング装置(20a、20b、および20c)、検出器(28)、ならびに制御サブシステム(30)を含む、システム(10)およびその関連構成要素によって実行される。プロセス(800)のサブプロセスは、好ましくは自動的に実行され、および好ましくはリアルタイムで実行される。プロセス(800)は、反復プロセスであり、それによって、プロセス(800)のステップは、例えば、システム(10)がその標的に従事している間、または設定された反復回数にわたって、または停止基準が満たされるまで、周期的または連続的に繰り返され得る。
【0092】
プロセス(800)は、ステップ(802)で始まり、ビームの選択された現在のサブセット(すなわち、グループ)Sのビームポインティングベクトルが調整される。サブセットSのビームは、(制御サブシステム(30)によって)ランダムに選択することができ、またはビームを制御サブシステム(30)のメモリに事前にプログラムすることによって事前に選択することができる。調整は、制御サブシステム(30)がサブセットSのビームに関連付けられたビームステアリング装置を作動させて、ビームのビームポインティングパラメータを調整することによってビームをステアリングすることによって実施される。上述のように、(ビームポインティングベクトルを定義する)ビームポインティングパラメータを調整するための作動は、ビームの方位角および/または仰角を変更するようにビームステアリング光学系の位置および/または配向を(1つまたは複数の回転軸の周りの回転を介して)調整するようにビームステアリング装置のアクチュエータに制御入力を送ることによって達成され得る。ビームのビームポインティングパラメータ(すなわち、定義されたビームポインティングベクトル)は、好ましくは、ランダム式、擬似ランダム式、または事前決定式に調整される。例えば、各ビームについて、関連付けられたビームステアリング装置は、好ましく事前定義された方位角および仰角の範囲から選択されるランダムまたは擬似ランダムの量だけ方位角および/または仰角を調整してもよい。好ましくは、ステアリングされたビームの方位角/仰角の調整は、結合されたビームの中心が多かれ少なかれ同じ位置に留まることを保証するために、ビームのサブセット内で変更される。
【0093】
プロセス(800)は、制御サブシステム(30)がビームの選択されたサブセットSを選択する第1の反復(すなわち、ステップ(802)の第1の実行)の前に、初期化ステップ(図示せず)を含み得ることが留意される。いくつかの非限定的な実装では、サブセットはビームのセット全体(すなわち、サブセットがビームのすべてを含む)である。しかしながら、ビームのセット全体をサブセットとして利用することは、結合されたビームが標的から逸脱するようにビームのすべてがステアリングされる状況をもたらし得ることに留意されたい。したがって、より好ましい非限定的な実装では、サブセットは大多数のサブセット(すなわち、ビームの少なくとも半分を含むが、ビームのすべては含まない)であり、これは、ある場合ではビームの少なくとも70%を含み、他の場合ではビームの少なくとも80%を含み、さらに他の場合ではビームの少なくとも90%を含む。他の非限定的な実装では、サブセットは、少数のサブセット(すなわち、ビームの総数の半分未満を含む)である。そのような少数のサブセットの実装では、ビームは、好ましくは、各サブセットが同じ数のビームを含むように等しいグループに分割される。たとえば、100のビームがある場合、ビームは、各々20のビームの5つのサブセット(グループ)に分割され得る。
【0094】
プロセス(800)は、次いで、ステップ(804)に移り、S内のビームのそれぞれについて、制御サブシステム(30)が、ビームに対応する位相変調器を作動させて、少なくとも3つの位相状態の間でビームの現在位相を変調する。いくつかの好ましいが非限定的な実装では、異なるビームの変調は、離散的ステップ変調(+δおよび-δの位相シフトをもたらす変調レベルを包含する)であり、この離散ステップ変調は、各変調からの強度測定値に対する影響を分離するように逐次的に実行される。したがって、離散ステップ変調を使用するとき、ステップ(804)はm個のサブステップに分割され、ここでmはサブセットS内のビームの数である(すなわち、mはSのサイズである)。連続の(例えば、正弦波の)変調を使用する場合、S内のビームのすべてを同時に変調することができ、および各変調から得られる強度測定値に対する影響を分離するために周波数分析(例えば、フーリエ分析)が使用され得る。
【0095】
ステップ(806)において、検出器(28)は、ビームの現在位相が(少なくとも)3つの位相状態の間で変調されるとき、S内のビームの強度パラメータ測定値を得るように、(ビームによる照射に応答して)強度を測定する。逐次的な離散ステップの変調を使用する場合、強度測定は、各離散ステップについて(各ビームについて)行われる。そのような場合、検出器(28)は、好ましくは、検出器(28)が強度パラメータ測定値I、I(φ+δ)およびI(φ-δ)を得るためにビームの変調間隔と一致する時間間隔でSの各ビームに対して(少なくとも)3つの強度測定を実行するように、(制御サブシステム(30)を介して)位相変調器と同期される。具体的には、Sの所与のビームについて、検出器(28)は、I(φ+δ)を測定するように、所与のビームの現在位相が、第1の変更された位相状態、例えば、+δの位相オフセットをとるように変調される変調区間の間、強度パラメータを測定し、検出器(28)は、I(φ-δ)を測定するように、所与のビームの現在位相が、第2の変更された位相状態、例えば、-δの位相オフセットをとるように変調される変調区間の間、強度パラメータを測定し、検出器(28)は、Iを測定するように、所与のビームの現在位相が、変更されていない位相状態、例えば、位相オフセットがない変調区間の間、強度パラメータを測定する。連続の(例えば、正弦波の)変調を使用する場合、強度測定は、各変調周波数に対して行われる。
【0096】
ステップ(808)では、変調から生じる強度変動が得られる。逐次的な離散ステップ変調を使用する実装では、変調からもたらされる強度変動(IおよびI)は、強度パラメータ測定値I、I(φ+δ)、およびI(φ-δ)に基づく(制御サブシステム(30)による)計算を介して取得される。現在位相が変調周波数で連続的に変調される連続の(例えば、正弦波の)変調を使用する実装では、変調からもたらされる強度変動は、変調周波数の複数の高調波周波数において生じる変調から生じる測定強度の変動を識別する制御サブシステム(30)によって取得される。これは、変調周波数自体および二次高調波(変調周波数の2倍)であり得る。上述のように、周波数分析(例えば、フーリエ分析)を使用して、各変調から生じる強度変動を分離することができる。
【0097】
ステップ(810)において、制御サブシステム(30)は、Sの各ビームについて、少なくとも3つの位相状態の各々において監視された強度パラメータに少なくとも部分的に基づいて、ビームの相対強度を表す現在値を計算(決定)する。特に、制御サブシステム(30)は、(ステップ(808)で得られる)変調から生じる強度変動を使用してそのビームの目的関数を評価することによって、Sにおけるビームの現在値を決定(計算)する。計算された現在値はまた、相対強度を表わすことによって、(現在位置がビームのビームステアリング・ベクトルによって定義される)標的に対するビームの中心の現在位置を示す。前述のように、ある好ましい実施形態では、計算された値は、Sにおけるすべてのビームの合計に対するビームの相対強度を表す。
【0098】
逐次的な離散ステップ変調を使用し、ガウシアンビームモデルを仮定する非限定的実装例では、目的関数Fは、式(4)を参照して上記で説明されるように、入力としてδ、I、およびIをとることができる。連続の(例えば、正弦波の)変調を使用し、ガウスビームモデルを仮定する、非限定的実装例では、目的関数Fは、式(5)を参照して上記で説明されるように、入力としてA、Iω、およびI2ωを取り得る。
【0099】
サブセット内にm本のビームがある場合、ステップ(810)においてm個の目的関数が評価されてm個の値が生成される。m個の目的関数は、例えば、並列に、逐次的に、またはグループで評価することができる。典型的には、制御サブシステム(30)は、サブセット内のすべてのビームについての目的関数の評価を数100マイクロ秒以内で(またはサブセットが小さなサブセットサブセットである場合はそれ未満で)完了することができる。
【0100】
ここでステップ(812)~(816)を参照して、まず、これらのステップ(812)~(816)がサブセットS内の各ビームに対して実行されることに留意されたい。しかしながら、明確かつ簡潔にするために、ステップ(812)~(816)の詳細は、サブセットS内の特定のビームについてのみ説明される。ステップ(812)~(816)の実施は、S内のすべてのビームについて、例えば、並列に、逐次的に、またはグループで実施することができる。
【0101】
ステップ(812)において、制御サブシステム(30)は、ビームについてのビームステアリング調整(ステップ(802)において実行される)を受け入れるべきか、ビームについてのビームステアリング調整(ステップ(802)において実行される)を却下するべきかを決定するために、計算された現在値(ステップ(810)において生成される)と直前の値(および任意選択で1つまたは複数の追加の先行値)とに基づいて比較を実行する。直前の値は、そのビームについての目的関数の直前の評価(プロセス(800)の直前の反復からの)によって計算された値である。直前の値は、制御サブシステム(30)の記憶されたメモリまたは制御システム(30)に電子的にリンクされた記憶されたメモリから取り出された値であり得る。全般的に言えば、ステップ(812)において、制御サブシステム(30)は、比較メトリックを形成するために、計算された現在値と直前の値(および任意選択で1つまたは複数の追加の先行値)とに基づいて比較を実行し、次いで、比較メトリックが閾値基準を満たすかどうか判定する。
【0102】
1つの非限定的な実装例では、制御サブシステム(30)は、ステップ(812)において、計算された現在値(ステップ(810)で生成される)を直前の値と比較することによって、比例制御を適用する。このいくらか単純化された実装例では、比較メトリックは、現在値と直前の値との間の変化として定義される。現在値が直前の値よりも大きい場合(すなわち、正の比較メトリック)、これは、ビームに対するビームステアリング調整(ステップ(802)で実行される)がそのビームのアライメント誤差を減少させた(すなわち、ステップ(802)で実行されるビームステアリング調整は、ビームの中心を標的の中心により近づけた)ことを示す。
【0103】
別の非限定的な例では、制御サブシステム(30)は、ステップ(812)において、計算された相対強度の変化率を比較することによる導関数ベースの制御を適用する。そのような実装では、比較メトリックは、計算された相対強度の変化率であり、複数の先行値に基づいて形成される。例えば、所与の反復iにおいて、制御サブシステム(30)は、反復iとi-1とにおいて計算された相対強度の間の変化を計算し、計算された相対強度の変化率を決定するために、その変化を反復i-1とi-2とにおいて計算された相対強度の間の変化と比較する。変化率が閾値基準を満たす場合、例えば、変化率が一定の値(これは、固定値であってもよく、または反復毎に変動する値であってもよい)より大きい場合、それは、そのビームためのビームステアリング調整(ステップ(802)で実行される)が、そのビームのアライメント誤差を減少させたことを示す。
【0104】
特定のビームの直前の値が利用可能でない場合(例えば、ステップ(802)において実行されるステアリング調整が、いずれかのサブセットにおけるビームの第1のステアリング調整であった場合)、現在値をデフォルト初期値、例えば、0または目的関数の最大達成可能値と最小達成可能値との間の値と比較することができることが留意される。
【0105】
ステップ(812)において、比較メトリックが閾値基準を満たす場合、すなわち、ステップ(802)におけるビームステアリング調整がアライメント誤差を減少させる場合、プロセス(800)は、ステップ(812)からステップ(814)に移り、そこで、制御サブシステム(30)は、(ステップ(802)において実行された)ビームのためのビームステアリング調整を受け入れる。例えば、単純化された比例制御例を使用する場合、現在値が直前の値よりも大きい場合(すなわち、比較メトリックが正である場合)、プロセス(800)はステップ(812)からステップ(814)に移る。ビームステアリング調整を受け入れることによって、ビームは現在のビームポインティング/ステアリング位置にステアリングされ続ける。加えて、ビームについての現在値が記憶される(例えば、制御サブシステム(30)のメモリ内、または制御サブシステム(30)にリンクされたメモリ内に)。現在値は、同じビームがステアリングされる次の反復において、記憶された現在値がステップ(812)における比較のための「直前の値」として役立つように、記憶される。
【0106】
ステップ(812)において実行された比較が閾値基準を満たさない(すなわち、満たすことに失敗する)場合、すなわち、ステップ(802)におけるビームステアリング調整がアライメント誤差を減少させない場合、プロセス(800)は、ステップ(812)からステップ(816)に移り、制御サブシステム(30)は、そのビームに対するビームステアリング調整(ステップ(802)において実行される)を却下する。例えば、単純な比例的対照例を使用する場合、現在値が直前の値よりも大きくなければ(すなわち、比較メトリックが負である場合)、プロセス(800)はステップ(812)からステップ(816)に移る。ある実施形態では、ステップ(816)における却下は、制御サブシステム(30)がビームのビームステアリング装置を作動させて、前のビームポインティング位置(すなわち、ビームがステップ(802)の直前にあったビームポインティング(すなわち、ステアリング)位置)に戻るように、ビームをステアリングすることをさらに含む。例えば、所与の反復の開始時に点Pを指すビームポインティングベクトルを有する特定のビームを考える。単純な比例制御例を使用すると、ステップ(802)において、ビームのビームポインティングベクトルが点Qを指すようにビームがステアリングされ、ステップ(812)において、現在値が直前の値未満であると判定される場合、制御サブシステム(30)は(ステップ(816)の一部として)、特定のビームのビームステアリング装置を作動させて、点Pを指すようにビームを戻すようにステアリングし得る。
【0107】
ステップ(812)~(816)がサブセットS内のすべてのビームに対して実行された後、プロセス(800)はステップ(818)に進み、そこで次のビーム・サブセットSがビームステアリング調整のために(例えば、制御サブシステム(30)によって)選択される。次のサブセットは、先行のサブセット(すなわち、直前のサブセット)と同一である場合も、先行のサブセットと異なる場合もある。2つのサブセットは、共通のビームを含む場合も、(サブセットが少数サブセットである場合)互いに素なサブセットである場合もある。サブセットが大多数のサブセットである場合、次のサブセットと前のサブセットは必然的に交差する(すなわち、ビームのうちの少なくとも1つは、先行のサブセットおよび次のサブセットに含まれる)。
【0108】
次いで、プロセス(800)は、ステップ(802)に戻り、ビームのビームポインティングベクトルを調整するために、次のサブセットのビームのためのビームステアリング装置が、制御サブシステム(30)によって(ランダム式、擬似ランダム式、または事前決定式に)作動される。次にステップ(804)~(816)が、以前と同様であるが、次の部分集合におけるビームのために実行される。
【0109】
一般に、プロセス(800)は各部分集合について複数回繰り返される。例えば、ビームが3つのサブセットに分割される場合、プロセス(800)は、ステップ(802)~(816)が、第1のサブセットのために実行され、そしてステップ(818)で、第2のサブセットが選択され、ステップ(802)~(816)が、第2のサブセットのために実行され、そしてステップ(818)で、第3のサブセットが選択され、ステップ(802)~(816)が第1のサブセットのために実行され、そしてステップ(818)で第2のサブセットが選択されるなど、プロセス(800)が終了するまで実行される。
【0110】
プロセス(800)の各反復では、制御サブシステム(30)は比較メトリックを形成し、および比較メトリックを閾値基準に対して評価する。例えば、比較メトリックは、選択されたサブセット内のビームの現在値を、そのビームの直前の値と比較して、現在値が増大したか(ビームが以前よりもアライメント状態に近いことを示す)、減少したか(ビームが以前よりもアライメント状態から外れていることを示す)をチェックすることによって、形成することができる。説明したように、特定のビーム(すなわち、強度測定および目的関数評価を実行するためにビームが以前に操縦されなかった場合である)について以前の値が利用可能でない場合、デフォルトの初期(すなわち、ダミー)値が使用され得る。
【0111】
制御サブシステム(30)は、単一のサブセット内のすべてのビームに対する目的関数の評価を数100マイクロ秒以内に完了することができるため、すべてのビームに対する目的関数の評価は、典型的には、1ミリ秒未満で完了することができる。
【0112】
各ビームがステアリングされ、その目的関数が複数回(すなわち、複数の反復ステップで)、例えば、システム(10)が標的に従事する間、数万回のオーダーで、評価されるようにサブセットが選択されることは、留意される。サブセットに対するビームの割付けは、制御サブシステム(30)によって実行され、静的であること、つまり、制御サブシステム(30)がプロセス(800)の最初の実行に先立ってそれぞれのサブセットにビームを割り付けることが、好適である。しかし、一定の非限定的な実装において、それぞれのサブセットに対するビームの割付けは、動的であり得る。
【0113】
いくつかの非限定的な実装では、ビームのそれぞれについて、対応するビームステアリング装置は、(ステップ(802)で)ビームのビームポインティングベクトルを比較的少量ずつ調整し、その量は、いくつかの場合には直前の値(すなわち、ビームについての以前の反復におけるステップ(810)で計算された値)の分数値に比例し得る。2つの例示的な制御技術が上に記載されたが、制御サブシステム(30)は、制御システムの技術分野において周知のように、ステップ(812)~(816)の実行の一部として、例えば、比例積分微分(PID)制御を含む、様々な制御アルゴリズムを適用し得ることも留意される。
【0114】
プロセス(800)は、システム(10)が標的に従事する持続期間にわたって、あるいは、例えば、ビームそれぞれのビームポインティング誤差が受け入れ可能な許容範囲内になる、またはビームのすべてについて相対強度を表わす(目的関数の評価を介して)計算された値が十分な強度レベルであるなどの、停止基準に到達するまで、反復を続けてもよい。例えば、図面には示されていないが、制御サブシステム(30)は、いくつかの反復の後、ビームのすべてについてステップ(814)まで成功裏に到達すると、ビーム調整プロセスを終了してもよい。
【0115】
前述のように、一定の非限定的な実装では、プロセス(800)は、制御サブシステム(30)がビームの選択されたサブセットSを選択する、初期化ステップを含み得る。初期化ステップは、ステップ(804)~(810)と同様のステップを実行することを含む場合があり、サブセット内のビームの位相変調器が、ビームの現在の位相を変調するように作動され、強度測定が実行され、強度変動が(強度測定に基づいて)取得され、および選択されたサブセット内のすべてのビームの目的関数が評価されて(強度変動に基づいて)サブセット内の各ビームについて計算された現在値が生成される。ステップ(802)の第1の実行において、サブセット内のビームのビームステアリング装置は、計算された現在値に比例して、またはそれに従ってビームをステアリングするように作動され得る。
【0116】
一定の非限定的な実装では、ステップ(802)におけるビームステアリングは、非ランダム式に実行され得る。例えば、直前の値がステップ(814)の実行の結果である場合、サブセット内の各ビームは、そのビームに関連付けられる直前の値に従ってステアリングされ得る。
【0117】
概して、ビームアライメント補正プロセス(すなわち、プロセス(800))は、WO2020/016824 A1に記載される位相補正のためのプロセスのサブプロセスとして組み込まれ得ることが留意される。位相補正プロセスとアライメント補正プロセスの両方が、強度測定、特にビームの現在位相の変調から生じる強度の変動を利用するため、位相補正プロセスとアライメント補正プロセスは、ネスト・ループ型のプロセスで実装することができる。例えば、ビームの現在位相が少なくとも3つの位相状態の間で変調されるステップ(802)は、標的に対する従事時間にわたって絶えず展開するビーム間の位相差のために補正することを要求されるため、一般的に、標的に対するシステム(10)の従事の持続期間の始めから終わりまで継続し得る。プロセス(800)の残りのステップは、各ビームについてアライメント補正を実行するように、各ビームについて反復(ループ)され得る。例えば、大気の乱流によって引き起こされる大気条件の変動、熱応力、集束誤差などによるビームのミスアライメントが動的である作業条件において、アライメント補正プロセスは、好ましくは高い再訪率で、標的に対する従事時間の持続期間全体にわたって継続し得る。例えば、機器類によるなど、ビームのミスアラインメントが静的である作業条件では、アライメント補正プロセスは周期的または断続的に継続し得る。
【0118】
前述のように、検出器(28)は、システム(10)の照準を合わせるために使用される撮像システムと統合されてもよく、またはそれと協働してもよい。図9は、図1および図3に例示されたシステムのコンテキスト内で、撮像システムを伴う検出器(28)の配置例を概略的に示す。画像センサ(カメラ44)は、ビーム源(12a、12b、および12c)によって放出される放射(コヒーレントビーム(14a、14b、および14c))を受け取るように配置される。ビームディレクタ(18)(または複数のディレクタ(18a、18b、および18c))は、好ましくは、ビームを検出器(28)とカメラ(44)に同時に方向付け、収束させるように構成される。制御サブシステム(30)は、カメラ(44)によって生成された画像を(データ接続を介して)受け取り、検出器(28)の位置と大まかに対応する画像ピクセルを識別する。
【0119】
図10は、図2および図4に示すシステムのコンテキスト内の、撮像システムを有する検出器(28)の例示的な配置を概略的に示し、ここで放射(示さないが、ビーム(14a、14b、および14c)はビーム源によって送信される)は標的(34)から反射される。ビームスプリッタ(46)は、標的(34)から反射され、望遠鏡装置(42)によって収集された入射放射(光)を受け取るように配置される。ビームスプリッタ(46)は、受光した放射線の一部を検出器(28)に導き、検出器(28)は、制御サブシステム(30)による処理のために「標的」上のレーザスポットの強度を感知し、受光した放射の一部はカメラ(46)に導き、カメラ(46)は、反射した放射が発する標的上に画像スポットを形成する。制御サブシステム(30)は、カメラ(46)によって生成された画像を(データ接続を介して)受信し、標的上のスポットの位置に大まかに対応する画像ピクセルを識別する。
【0120】
本明細書に記載されるビームアライメント法を実行するために使用される例示的な目的関数は、一般的なガウシアンビームモデルの仮定に基づいて導出されるが、このビームモデルの仮定は、一定のコヒーレントビーム結合システムのコンテキスト内で特に有用であるビームモデル仮定の1つの非限定的な例にすぎないことに留意されたい。限定されないが、ベッセルビームモデルおよび高次(または横断)ガウシアンビームモードを含む他のビームモデルも使用され得る。離散ステップ式変調または連続/正弦波変調によるビーム位相変調に基づく目的関数もまた、当業者に明白となるはずであるように、式(4)および(5)の目的関数を導出する際に使用される同じまたは類似の原理を使用して導出することができる。
【0121】
本開示の様々な実施形態の記載は、例示目的のために提示されてきたが、徹底的なものであり且つ開示される実施形態に限定されることを意図してはいない。多くの修正及び変形が、記載される実施形態の範囲及び精神から逸脱することなく、当業者に明白になる。本明細書で使用される用語は、実施形態の原理、市場において見出される技術にわたる実用化又は技術的な改善を最良に説明するために、或いは、本明細書に開示された実施形態を当業者が理解するのを可能にするために、選択された。
【0122】
本明細書に使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に指定していない限り、複数の参照を含む。
【0123】
単語「例示的」は、「実施例、例、又は実例として役立つ」ことを意味するように本明細書で使用される。「例示的」として記載される任意の実施形態は、必ずしも他の実施形態にわたり好ましいもの又は利点として解釈されず、及び/又は、必ずしも他の実施形態からの特徴の組み込みを除外しない。
【0124】
別個の実施形態の文脈において明瞭性のために記載される、本発明の特定の特徴も、単一の実施形態と組み合わせて提供されてもよいことが、認識される。反対に、単一の実施形態の文脈において明瞭性のために記載される、本発明の様々な特徴も、別個に、又は任意の適切なサブコンビネーションに置いて、或いは本発明の他の任意の記載された実施形態において適切なものとして、提供されてもよい。様々な実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、実施形態がそれらの要素無しでは実施できない限り、実施形態の不可欠な特徴であるとは考慮されない。
【0125】
添付された請求項が複数の従属関係なしに起草された点について、これは、単にそのような複数の従属関係を許容しない法的管轄区域において方式要件に対応するために行われた。請求項を複合的に従属させることによって示唆されることになる特徴のすべての可能な組み合わせは、明瞭に想定され、そして本発明の一部であると考慮するべきであることを留意するべきである。
【0126】
本発明はその特異的な実施形態と共に記載されてきたが、多くの代案、修正、及び変形が当業者に明白であることは、明らかである。従って、添付の特許請求の範囲の精神と広い範囲にある、すべてのそのような代案、修正、及び変形を包含することが意図される。
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【国際調査報告】