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特表2024-505970エチルセルロースを含有する水性ゲル組成物
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  • 特表-エチルセルロースを含有する水性ゲル組成物 図1-1
  • 特表-エチルセルロースを含有する水性ゲル組成物 図1-2
  • 特表-エチルセルロースを含有する水性ゲル組成物 図2
  • 特表-エチルセルロースを含有する水性ゲル組成物 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】エチルセルロースを含有する水性ゲル組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/36 20060101AFI20240201BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240201BHJP
   A61K 31/196 20060101ALI20240201BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240201BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
A61K47/36
A61K47/38
A61K31/196
A61K45/00
A61K9/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546472
(86)(22)【出願日】2022-01-31
(85)【翻訳文提出日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 EP2022052182
(87)【国際公開番号】W WO2022167359
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】202111004454
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519454822
【氏名又は名称】デュポン・ニュートリション・ユーエスエイ,インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】523289887
【氏名又は名称】ダニスコ・ニュートリション・アンド・バイオサイエンシーズ・インディア・プライベート,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】サンガメシュ・トルネ
(72)【発明者】
【氏名】アジト・バガト
(72)【発明者】
【氏名】テジャス・ガンジカー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA94
4C076BB01
4C076CC01
4C076CC05
4C076CC07
4C076CC18
4C076CC19
4C076CC20
4C076CC21
4C076CC27
4C076CC31
4C076CC32
4C076CC35
4C076EE30
4C076EE32
4C076FF31
4C076FF39
4C076FF43
4C076FF61
4C076GG46
4C084AA17
4C084MA05
4C084MA27
4C084MA52
4C084NA05
4C084NA12
4C084ZA022
4C084ZA042
4C084ZA122
4C084ZA892
4C084ZA912
4C084ZA922
4C084ZB072
4C084ZB082
4C084ZB112
4C084ZB132
4C084ZB262
4C084ZB332
4C084ZB352
4C084ZC212
4C084ZC352
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA31
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA47
4C206MA72
4C206NA05
4C206NA12
4C206ZB11
(57)【要約】
局所適用のための水性ゲル組成物は、生理学的に有効な成分と、エチルセルロースの水分散液と、カラギーナンとを含有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)生理学的に有効な成分、
(b)エチルセルロースの水分散液、及び
(c)カラギーナン、
を含有する局所適用のための水性ゲル組成物。
【請求項2】
前記エチルセルロースの濃度が前記組成物の5重量%~50重量%の範囲内である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記カラギーナンの濃度が前記組成物の0.1重量%~5重量%の範囲内である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記カラギーナンが、イオタ-カラギーナン、カッパ-カラギーナン、カッパ-2-カラギーナン、及びラムダ-カラギーナンからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記カラギーナンがイオタ-カラギーナンである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記生理学的に有効な成分が、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、非ステロイド性抗炎症剤、局所麻酔薬、コルチコステロイド、レチノイド、抗アレルギー薬、抗がん剤、育毛剤、免疫抑制剤、抗糖尿病薬、抗うつ薬、ビタミン、日焼け止め剤、脱毛症治療薬、抗ニキビ薬、抗乾癬薬、及び創傷治癒剤からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ゲルが、レオメーター(モデルDiscovery HR-3、TA Instrumentsから入手可能)を使用して測定したときに、0.01s-1のせん断速度で100~6000mPa.sの粘度を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ゲルが、レオメーター(モデルDiscovery HR-3、TA Instrumentsから入手可能)を使用して貯蔵弾性率として測定される10~200Paの降伏応力を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
3~8の範囲のpHを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
pH調節剤、防腐剤、界面活性剤、皮膚軟化剤、浸透促進剤、任意選択的な香料からなる群から選択される補助成分を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
局所適用時に前記生理学的に有効な成分を制御放出する、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物を調製する方法であって、
(v)エチルセルロースの水性分散液を50~80℃の温度に加熱すること、
(vi)ゲルが形成されるまで連続的に混合しながら、工程(i)の分散液にカラギーナンを添加すること、
(vii)工程(ii)の前記混合物を25~50℃の温度に冷却し、混合しながら生理学的に有効な成分を添加すること、及び
(viii)工程(iii)の前記混合物を20~25℃の温度に冷却し、任意選択的に1種以上の補助成分を前記ゲルに添加すること、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性ゲル化剤を含むエチルセルロースの水性分散液中に生理学的に有効な成分を含む新規な水性ゲル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エチルセルロースの水性分散液は、腸内で剤形から有効成分を徐放する固体剤形のコーティング用に開発され、長年使用されてきた。
【0003】
1993年にOshlack,Benjamin et al.(米国特許第5472712号明細書)は、経口剤形からヒドロモルホンを制御放出するためのAquacoat(登録商標)ECD30の使用を開示した。2004年、Beyerink R A(米国特許第10383941号明細書)は、噴霧乾燥技術を使用したカプセル化による経口剤形からの有効成分の制御放出のためのエチルセルロースの使用を報告した。
【0004】
Duprat A.(米国特許第9375477号明細書)は、制御放出作用のためにエチルセルロースのような疎水性ポリマーを含まずにゲル化剤としてカラギーナンを使用する局所用ゲル製剤を開示している。
【0005】
Arnaud(米国特許第590863号明細書)は、有機溶媒の存在下でのゲル化剤としてのエチルセルロースの使用を開示しており、エチルセルロースが水への溶解性が限定的な疎水性ポリマーであることにも言及している。Goyal Sandhya et al.(米国特許第8158139号明細書)は、有機溶媒を含む局所用ゲル製剤におけるエチルセルロースを開示している。Chellampillai et al.,Ther.Deliv.2014 Jul;5(7):781-94;は、有機溶媒を使用する抗真菌療法におけるエベルコナゾール硝酸塩(EB)の制御放出及び皮膚への薬物沈着のための局所担体用マイクロスポンジの開発におけるエチルセルロースの使用を研究した。Lilia Bruno et al.,Int.J.Biol.Macromol.50(2),1 March 2012,pp.385-392;は、局所適用のための非水性エチルセルロースゲルの構造に対する水和の影響を研究した。Sanjukta Duarah et al.,2017 Oct;7(5):750-760,Drug Deliv.Transl.Res.は、有機溶媒を使用するゲル送達系におけるナノ粒子の開発のためにエチルセルロースを使用した。
【0006】
その結果、エチルセルロースは水性媒体に不溶性であることが知られており、基剤として有機溶媒を用いる局所用ゲル製剤に使用される。有機溶媒中のエチルセルロース溶液は粘度を高くするものの、エチルセルロースは水への溶解性が非常に低く、局所適用のための水性ゲル製剤中の有効成分の放出速度を制御するゲル化ポリマーとして単独では機能することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、局所適用時に有効成分が制御された速度で放出される水性ゲル製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くべきことに、エチルセルロースの水性分散液に親水性ゲル化剤を添加すると、有効成分を取り込むことができ、そこから制御された速度で有効成分を放出する水性ゲルを得ることが可能であることが見出された。
【0009】
したがって、本発明は、
(a)生理学的に有効な成分、
(b)エチルセルロースの水分散液、及び
(c)カラギーナン、
を含有する局所適用のための水性ゲル組成物に関する。
【0010】
別の態様では、本発明は、上記組成物を調製する方法であって、
(i)エチルセルロースの水性分散液を70~90℃の温度に加熱すること、
(ii)ゲルが形成されるまで連続的に混合しながら、工程(i)の分散液にカラギーナンを添加すること、
(iii)工程(ii)の混合物を25~50℃の温度に冷却し、混合しながら生理学的に有効な成分を添加すること、及び
(iv)工程(iii)の混合物を20~25℃の温度に冷却し、任意選択的に1種以上の補助成分をゲルに添加すること、
を含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1-1】図1A-Eは、実施例1で調製されたゲル製剤の展延性を示す写真である。
図1-2】図1-1の続き。
図2】実施例1で調製したゲル製剤の貯蔵弾性率(Pa)を示すグラフであり、結果は実施例3に記載されている。
図3】pH7.4のリン酸緩衝液、温度32℃における、実施例1に記載の方法に従って調製した局所ゲルからのジクロフェナクナトリウムの累積放出を示しており、結果は実施例4の表4にも記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
本文脈において、「局所適用」という用語は、皮膚、粘膜上皮、又は爪などの体表面上にゲル組成物を広げることを意味することが意図されている。
【0013】
「ゲル」という用語は、固体粒子の溶液又は分散液の粘度を増加させる1種以上のゲル化剤を含む半固体剤形を指すことが意図されている。
【0014】
「分散液」という用語は、分散された粒子、例えばエチルセルロースの粒子や、水などの連続液体媒体全体に均一に分布した不溶性有効成分の組成物を指すことが意図されている。
【0015】
「制御放出」という用語は、限られた量の有効成分が長期間にわたってゲル組成物から特定の速度で放出されることを意味することが意図されている。この用語は「徐放」という用語と同義である。
【0016】
実施形態
エチルセルロースは、1-4結合で連結した無水グルコース単位から構成されるセルロース系ポリマー/多糖である。各アンヒドログルコース単位は、2位、3位及び6位においてヒドロキシル基を含有する。これらのヒドロキシル基をエトキシル基で部分的に又は完全に置換すると、エチルセルロースが得られる。USPモノグラフによれば、エチルセルロースは、典型的には44~51%のエトキシル基を含む。エチルセルロースの水性分散液は、ポリマーエマルジョンプロセスによって調製される。粉末形態のエチルセルロースは、界面活性剤及び1種以上の加工助剤の存在下で水で乳化された有機溶媒に溶解され、その後、有機溶媒が除去され、その結果、米国特許第4,177,177号明細書に開示されているように、水中に懸濁したエチルセルロース粒子が形成される。本組成物中のエチルセルロースの濃度は、組成物の5重量%~50重量%の範囲が適切である。
【0017】
適切なエチルセルロースの例は、ETHOCEL(商標)という商品名でDuPontから市販されている。市販のエチルセルロース水性分散液は、DuPontから商品名AQUACOAT(登録商標)ECD30として、Colorconから商品名Surelease(登録商標)として入手可能である。AQUACOAT(登録商標)ECDは、24.5重量%~29.5重量%のエチルセルロース、0.9重量%~1.7重量%のラウリル硫酸ナトリウム、及び1.7重量%~3.3重量%のセチルアルコールを含有する水性分散液である。セチルアルコールは、水中でのエチルセルロースの分散を安定させるように機能する乳化剤である。
【0018】
カラギーナンは、紅藻類でみられる親水性の多糖である。カラギーナンは、交互のα1→3とβ1→4のグリコシド結合によって連結したガラクトース繰り返し単位を含む。本発明の対象のカラギーナンは、カッパ-、カッパ-2-、イオタ-、及びラムダ-カラギーナンである。イオタ-カラギーナンは海藻ユーケウマ・デンティカラタム(Eucheuma denticulatum)に含まれている一方で、カッパ-カラギーナンは海藻ユーケウマ・コットニー(Eucheuma cotonii)から抽出することができ、コポリマー主鎖内で共有結合したカッパ-カラギーナンとイオタ-カラギーナンの繰り返し単位のコポリマーであるカッパ-2-カラギーナンは、ギガルティナセアエ(Gigartinaceae)種から得ることができる。カラギーナンは、らせん二量体の凝集のメカニズムにより、ゲル組成物中で補助的なゲル化剤として機能する。これは水を吸収して膨潤し、ポリマーネットワークを形成し、分散したエチルセルロースはネットワーク全体に広がる。本目的のためには、イオタ-カラギーナン(DuPontから入手可能なGelcarin(登録商標)PH379など)が、ゲル組成物に良好な展延性を与えるため、特に有用であることが判明した(添付の図1A~Dを参照)。ゲル組成物中のカラギーナンの濃度は、好ましくは組成物の0.1重量%~5重量%の範囲である。
【0019】
本発明の水性ゲル組成物の粘度は、レオメーター(モデルDiscovery HR-3、TA Instrumentsから入手可能)を用いて、40mmの平板を使用して、0.01s-1~100s-1の速度で連続せん断掃引を適用して測定したときに、0.01s-1のせん断速度において典型的には100~6000mPa.sの範囲である。粘度は、0.01s-1のせん断速度で測定した。
【0020】
本発明のゲルは、通常、レオメーター(モデルDiscovery HR-3、TA Instrumentsから入手可能)を使用して測定したときに、10~2000Paの範囲の降伏応力を有する。降伏応力は、それを超えると試験材料が流体のように挙動する最も低いせん断応力である。或いは、静止状態のゲルの構造を破壊し、その結果ゲルを流動させて皮膚に塗布しやすくするために必要な最小の力である。降伏応力は、サンプルが貯蔵弾性率を大幅に失う振動応力として測定され、Pa単位で報告される。
【0021】
生理学的に有効な成分は、皮膚などの体表面への適用に適しており且つ制御された形で適用部位に有益に放出され得る任意の、薬理学的に又は薬用化粧品として有効な成分であってよい。本発明のゲル組成物に含まれ得る有効成分は、抗生物質(例えばクリンダマイシン、エリスロマイシン)、抗真菌剤(例えばケトコナゾール、フルコナゾール、クロトリマゾール)、抗ウイルス剤(例えばアシクロビル、ファムシクロビル)、非ステロイド性抗炎症剤(例えばジクロフェナクナトリウム、イブプロフェン、ケトプロフェン)、局所麻酔薬(例えばリドカイン、ブピバカイン)、コルチコステロイド(例えばヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、クロベタゾール)、抗アレルギー薬、抗がん剤、発毛促進剤、免疫抑制剤(例えばタクロリムス、シクロスポリン)、抗糖尿病薬、抗うつ薬、ビタミン(例えばビタミンA、ビタミンD、ビタミンE)、日焼け止め剤、脱毛症治療薬、抗ニキビ薬(例えばクリンダマイシン、過酸化ベンゾイル、レチノイド)、抗乾癬薬、及び創傷治癒剤からなる群から選択することができる。
【0022】
本発明のゲル組成物は、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、皮膚軟化剤、浸透促進剤、及び任意選択的な香料からなる群から選択される1種以上の補助成分を更に含んでいてもよい。
【0023】
pH調節剤の例としては、水酸化物、炭酸塩、クエン酸塩、及びリン酸塩などの塩基、並びにクエン酸ナトリウムなどのそれらの塩が挙げられる。pH調整剤の量は、ゲル組成物の望まれるpHに応じて変動し得る。ゲル組成物のpHは3.0~8.0の範囲であってよいが、好ましくは中性に近いpH、好ましくは5.5~7.0の範囲である。
【0024】
防腐剤の例としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、BHA、又はBHTが挙げられる。
【0025】
界面活性剤の例としては、ラウリル硫酸ナトリウム又はドデシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩を含むアニオン性界面活性剤、ポリソルベートなどの非イオン性界面活性剤、プロピレングリコールの脂肪酸エステル、グリセロールの脂肪酸エステル、又はポリエチレングリコールの脂肪酸エステルが挙げられる。界面活性剤は、ゲル組成物の0.2重量%~2重量%、好ましくはゲル組成物の0.5重量%~1.7重量%の濃度で含まれ得る。本発明のゲル組成物中に含ませるために好ましい界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウムである。エチルセルロースの水性分散液は、脂肪アルコール、例えばセチルアルコールなどの乳化安定剤を更に含んでいてもよい。
【0026】
皮膚軟化剤の例としては、セチルアルコール、セテアリルアルコール、ステアリルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ラノリン、流動パラフィン、ポリエチレングリコール、シリコーン油、又はステアリン酸が挙げられる。
【0027】
浸透促進剤の例としては、プロピレングリコール、Myrj 52、Cineol、ジメチルスルホキシド、ジメチルイソソルビド、ミリスチン酸イソプロピル、メントール、ペパーミント油が挙げられる。
【0028】
驚くべきことに、本発明の水性ゲル組成物は、その中にカラギーナンが存在することに起因して有利なゲル化特性及び展延特性を示すのみならず、ゲル中に存在するエチルセルロースによって有効成分の制御放出も提供することが見出された。エチルセルロースは疎水性ポリマーであるため、ゲルから皮膚への有効成分の移行を遅らせる。本発明者らは、有効成分が少なくとも4時間、好ましくは少なくとも5時間などの長時間にわたってゲルから連続的に放出されることを観察した。有効成分の放出は、ゲル中のエチルセルロースの濃度に依存することが見出されている。以下の実施例4を参照のこと。
【0029】
本発明は、以下の実施例で更に例示される。
【実施例
【0030】
実施例1
1重量%のジクロフェナクナトリウムを含有する水性ゲル組成物
表1から明らかな組成で水性ゲル組成物を調製した。
【0031】
【表1】
【0032】
エチルセルロースと任意選択的に追加した水との水性分散液を70℃に加熱し、ゲルが形成されるまで150~200rpmで連続混合しながらカラギーナンを添加した。ゲルを40℃まで冷却し、150~200rpmで連続的に混合しながらジクロフェナクナトリウムを1%w/wの濃度まで添加した。ゲルを20℃まで放冷した。得られたゲルは不透明で白色であった。
【0033】
完成したゲルのpHは、T1、pH6.33;T2、pH6.04;T3、pH6.38;T4、pH6.30;T5、pH6.24であると測定された。すなわち中性のpHに近い。
【0034】
実施例2
実施例1のゲル組成物の展延性
実施例1のゲル組成物の展延性は、プレート法の目視観察により決定した。人差し指を使用して調製したゲルを黒いタイルに塗布し、皮膚に塗布するのとほぼ同じように表面全体に広げた。形成された膜を目視で観察し、ゲルの均一性を判断した。
【0035】
結果は図1A~Eに示されており、これらから、イオタ-カラギーナンを含むゲル組成物T1及びT3~T5は、カッパ-カラギーナンを含むゲル組成物T2よりも優れた展延性を有するようである。
【0036】
実施例3
実施例1のゲル組成物のレオロジー
実施例1の組成物からのサンプルを使用して、TA instrumentsから入手可能なレオメーターモデルDiscoveryHR-3を使用して0.001~1000%の振動ひずみを加え、各ひずみに対する貯蔵弾性率を測定した。貯蔵弾性率は、試験開始から40~80秒後の0%ひずみで測定した。貯蔵弾性率は、ゲル構造の弾力性の尺度である。
【0037】
結果を表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
表2から、ゲル組成物T4は、実施例1で調製したゲル組成物の中でせん断減粘性が最も低く、そのため皮膚表面への塗布が容易であるようである。
【0040】
オーバーレイ曲線-ひずみ試験の結果を図2に示す。この結果から、ゲルは典型的には100~1000Paの貯蔵弾性率を達成しているようである。貯蔵弾性率の直線はゲルの初期の弾力性を示し、貯蔵弾性率の低下を示す曲線はゲル構造の崩壊を裏付けた。貯蔵弾性率の低下及び同等の適用されたひずみにより、各製剤が皮膚に塗布されたときに起こるゲル構造の破壊に必要な最小ひずみが確認された。製剤(T4)は、ゲルとしての完全性を維持すると同時にゲルを塗布しやすくする、より低い貯蔵弾性率を有すると決定された。
【0041】
実施例4
放出試験用の1%w/wジクロフェナクナトリウム含有水性ゲル組成物
表3から明らかな組成で水性ゲル組成物を調製した。
【0042】
【表3】
【0043】
ゲル組成物は、実施例1に記載の方法に従って調製した。
【0044】
利用可能な拡散面積が700cmでありレセプター容積が10~12mlの範囲である静的ジャケット付きフランツ型拡散セルを、T.J.Franz,“The finite dose technique as a valid in vitro model for the study of percutaneous absorption in man”in Current Problems in Dermatology,1978,J.W.H.Mall(Ed.),Karger,Basel,pp.58-68に実質的に記載されている方法で使用した。楕円形の磁気撹拌子(長さ10mm、幅6mm)を各セルのレセプターコンパートメントに配置した。膜を取り付けた後、レセプター媒体(0.04M等張リン酸緩衝液、pH7.4)をレセプターチャンバーに満たした。レセプターチャンバー内の溶解媒体の温度は、温水を継続的に循環させることによって32℃に維持した。レセプターチャンバーの底部に配置された楕円形の磁気撹拌子を、500rpmで撹拌するように設定した。
【0045】
試験組成物T6~T9のそれぞれを、ジクロフェナクナトリウム3mg/700cmに相当する300mgの意図した用量で、0時間でスパチュラを用いて膜上に塗布した。
【0046】
レセプター液のサンプル(1ml)を0、30、60、90、120、180、240、及び300分の時点で採取し、270nmにおける紫外分光法によりジクロフェナクナトリウムの含有量を分析した。指定された波長における各サンプルの吸光度を使用して、吸光度の標準曲線に対する薬物放出を計算した。異なる時間間隔での各サンプルからの薬物放出パーセントが表4にまとめられている。
【0047】
【表4】
【0048】
表4から、ジクロフェナクナトリウムがゲル組成物から制御された形式で放出され、エチルセルロースの濃度が放出速度に大きな影響を与えることが分かる。
図1-1】
図1-2】
図2
図3
【国際調査報告】