(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】ブーストコンバータを用いてエアロゾル発生デバイスのサセプタの加熱を制御するための方法
(51)【国際特許分類】
A24F 40/465 20200101AFI20240201BHJP
【FI】
A24F40/465
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546521
(86)(22)【出願日】2022-02-04
(85)【翻訳文提出日】2023-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2022052755
(87)【国際公開番号】W WO2022167603
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516004949
【氏名又は名称】ジェイティー インターナショナル エスエイ
【住所又は居所原語表記】8,rue Kazem Radjavi,1202 Geneva,SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジグムンド, ブラニスラヴ
(72)【発明者】
【氏名】ロジェーク, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンコ, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】コンヴィクニー, ペトル
(72)【発明者】
【氏名】スリヴァ, スタニスラフ
【テーマコード(参考)】
4B162
【Fターム(参考)】
4B162AA02
4B162AA22
4B162AB11
4B162AB21
4B162AC34
4B162AD06
4B162AD08
4B162AD23
(57)【要約】
エアロゾル発生デバイスのサセプタの加熱を制御するための方法が説明される。サセプタは、インバータ(5)によって駆動される発振回路(6)によって誘導加熱され、電源ユニット(4)と上記インバータ(5)との間に随意的なブーストコンバータ(8)が接続され、当該ブーストコンバータ(8)は、電源ユニットから供給される入力電圧からインバータ(5)へ伝達される出力電圧へ電圧を昇圧するように構成される。本方法は、エアロゾル発生デバイスの電力伝達モードと、インバータに供給される電力量が電力伝達モード中に供給される電力量よりも少ないエアロゾル発生デバイスの温度識別モードとを含む。本方法は、例えば、発振回路(6)の判定された共振周波数又は共振コンデンサ電圧に基づいて、サセプタの温度を判定するステップを含む。電力伝達モードは、サセプタの判定された温度に依存して、ブーストコンバータ(8)からインバータ(5)へ伝達される出力電圧を設定するステップを含み得る。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生デバイス(1)のサセプタ(7)の加熱を制御するための方法であって、前記サセプタ(7)は、インバータ(5)によって駆動される発振回路(6)によって誘導加熱され、前記方法は、前記エアロゾル発生デバイス(1)の電力伝達モード(S
p)と、前記インバータ(5)に供給される電力量が前記電力伝達モード(S
p)中に供給される電力量よりも少ない前記エアロゾル発生デバイス(1)の温度識別モード(S
Ti)とを含み、前記方法は、さらに、前記温度識別モード(S
Ti)中に行われる測定に基づいて前記サセプタ(7)の温度を判定すること、を含む、方法。
【請求項2】
前記サセプタ(7)の前記温度の前記判定は、前記発振回路(6)の判定された共振周波数(f
r)に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インバータ(5)は、2つのトランジスタ(T0、T1)を備え、前記サセプタ(7)の前記温度を判定する前記ステップは、
前記インバータ(5)の前記2つのトランジスタ(T0、T1)のうちの1つのみを動作させるサブステップと、
前記温度識別モード(S
Ti)中に前記発振回路(6)の共振周波数(f
r)を判定するサブステップと、
判定された前記共振周波数(f
r)に基づいて、前記サセプタ(7)の前記温度(T)を判定するサブステップと、
を含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記サセプタ(7)の前記温度の前記判定は、前記発振回路(6)における指示電気値の判定された最大値に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記指示電気値は、前記発振回路(6)のコンデンサをまたいだ電圧である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記サセプタ(7)の前記温度を判定する前記ステップは、
前記温度識別モード(S
Ti)中に、ある周波数の範囲について前記発振回路(6)における指示電気値の最大値を判定するサブステップと、
判定された前記最大値から大域的最大値を判定するサブステップと、
前記大域的最大値に基づいて、前記サセプタ(7)の前記温度を判定するサブステップと、
を含む、請求項4又は請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記インバータ(5)は、2つのトランジスタ(T0、T1)を備え、前記サセプタ(7)の前記温度を判定する前記ステップは、さらに、低減されたデューティサイクルで前記温度識別モード中に両方のトランジスタ(T0、T1)を動作させるサブステップを含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記電力伝達モード(S
p)及び前記温度識別モード(S
Ti)は、前記エアロゾル発生デバイス(1)の動作中に交互に行われる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記温度識別モード(S
Ti)は、一定の時間間隔で実行される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記エアロゾル発生デバイス(1)は、さらに、電源ユニット(4)と前記インバータ(5)との間に接続されているブーストコンバータ(8)を備え、前記ブーストコンバータ(8)は、前記電源ユニット(4)から供給される入力電圧(V
in)から前記インバータ(5)へ伝達される出力電圧(V
out)まで電圧を昇圧するように構成され、前記方法は、前記サセプタ(7)の判定された前記温度(T
d)に応じて、前記電力伝達モード(S
p)中に前記ブーストコンバータ(8)から前記インバータ(5)へ伝達される前記出力電圧(V
out)を設定するステップ、を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
さらに、前記設定するステップの前に実行される比較ステップであって、前記サセプタ(7)の判定された前記温度(T
d)が目標温度(T
t)と比較される当該比較ステップ、を含み、前記出力電圧(V
out)は、判定された前記温度(T
d)及び前記目標温度(T
t)に依存する値に設定される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記エアロゾル発生デバイスは、前記サセプタ(7)の前記温度を前記目標温度(T
t)にするために前記ブーストコンバータ(8)の前記出力電圧(V
out)を制御するように構成されるコントローラ(9)を備え、前記コントローラ(9)は、オーバーダンピングされるようにチューニングされ、前記出力電圧は、前記サセプタの判定された前記温度が閾値以下である場合には、予め定義される最大電圧(V
m)に設定される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記閾値は、前記目標温度(T
t)の60%~85%の範囲の値をとる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記エアロゾル発生デバイスは、前記サセプタ(7)の前記温度を前記目標温度(T
t)にするために前記ブーストコンバータ(8)の前記出力電圧(V
out)を制御するように構成されるコントローラ(9)を備え、前記コントローラ(9)は、アンダーダンピングされるようにチューニングされ、前記出力電圧(V
out)は、前記サセプタ(7)の前記加熱の開始時に前記サセプタ(7)の前記温度が前記目標温度(T
t)をオーバーシュートするように設定される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記コントローラ(9)は、PIDコントローラ、モデルベースコントローラ、及び/又はモデル予測コントローラである、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記サセプタ(7)の判定された前記温度(T
d)が前記目標温度(T
t)に等しい場合に、前記出力電圧(V
out)は、例えば約8Vである所定の電圧以下に実質的に設定される、請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ブーストコンバータ(8)は、非同期ブーストコンバータである、請求項10~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ブーストコンバータは、同期ブーストコンバータである、請求項10~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ブーストコンバータ(8)は、能動スイッチ(T2)を備え、前記能動スイッチ(T2)は、MOSFETトランジスタである、請求項10~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ブーストコンバータ(8)は、受動スイッチ(T3)を備え、前記受動スイッチ(T3)は、MOSFETトランジスタである、請求項18及び請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ブーストコンバータ(8)は、3~4.2Vの範囲の入力電圧(V
in)から例えば少なくとも8Vに等しい所望の出力電圧(V
out)へ電圧を昇圧するように構成される、請求項10~20に記載の方法。
【請求項22】
エアロゾル発生デバイス(1)のサセプタ(7)の加熱を制御するための方法であって、前記サセプタ(7)は、インバータ(5)によって駆動される発振回路(6)によって誘導加熱され、電源ユニット(4)と前記インバータ(5)との間にブーストコンバータ(8)が接続され、前記ブーストコンバータ(8)は、前記電源ユニット(4)から供給される入力電圧(V
in)から前記インバータ(5)へ伝達される出力電圧(V
out)へ電圧を昇圧するように構成され、前記方法は、前記エアロゾル発生デバイス(1)の電力伝達モード(S
p)と、前記インバータ(5)に供給される電力量が前記電力伝達モード(S
p)中に供給される電力量よりも少ない前記エアロゾル発生デバイス(1)の温度識別モード(S
Ti)とを含み、前記方法は、さらに、前記サセプタ(7)の温度を判定するステップと、前記サセプタ(7)の判定された前記温度(T
d)に依存して、前記電力伝達モード(S
p)中に前記ブーストコンバータ(8)から前記インバータ(5)へ伝達される前記出力電圧(V
out)を設定するステップと、を含む、方法。
【請求項23】
前記サセプタ(7)の前記温度の前記判定は、前記発振回路(6)の判定された共振周波数(f
r)に基づく、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記インバータ(5)は、2つのトランジスタ(T0、T1)を備え、前記サセプタ(7)の前記温度を判定する前記ステップは、
前記インバータ(5)の前記2つのトランジスタ(T0、T1)のうちの1つのみを動作させるサブステップと、
前記温度識別モード(S
Ti)中に前記発振回路(6)の共振周波数(f
r)を判定するサブステップと、
判定された前記共振周波数(f
r)に基づいて、前記サセプタ(7)の前記温度(T)を判定するサブステップと、
を含む、請求項22又は請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記サセプタ(7)の前記温度の前記判定は、前記発振回路(6)における指示電気値の判定された最大値に基づく、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記指示電気値は、前記発振回路(6)の前記コンデンサをまたいだ電圧である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記サセプタ(7)の前記温度を判定する前記ステップは、
前記温度識別モード(S
Ti)中に、ある周波数の範囲について前記発振回路(6)における指示電気値の最大値を判定するサブステップと、
判定された前記最大値から大域的最大値を判定するサブステップと、
前記大域的最大値に基づいて、前記サセプタ(7)の前記温度を判定するサブステップと、
を含む、請求項25又は請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記インバータ(5)は、2つのトランジスタ(T0、T1)を備え、前記サセプタ(7)の前記温度を判定する前記ステップは、さらに、低減されたデューティサイクルで前記温度識別モード中に両方のトランジスタ(T0、T1)を動作させるサブステップ、を含む、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記電力伝達モード(S
p)及び前記温度識別モード(S
Ti)は、前記エアロゾル発生デバイス(1)の動作中に交互に行われる、請求項22~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記温度識別モード(S
Ti)は、一定の時間間隔で実行される、請求項22~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
さらに、前記設定するステップの前に実行される比較ステップであって、前記サセプタ(7)の判定された前記温度(T
d)が目標温度(T
t)と比較される当該比較ステップ、を含み、前記出力電圧(V
out)は、判定された前記温度(T
d)及び前記目標温度(T
t)に依存する値に設定される、請求項22~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記エアロゾル発生デバイスは、前記サセプタ(7)の前記温度を前記目標温度(T
t)にするために前記ブーストコンバータ(8)の前記出力電圧(V
out)を制御するように構成されるコントローラ(9)を備え、前記コントローラ(9)は、オーバーダンピングされるようにチューニングされ、前記出力電圧は、前記サセプタの判定された前記温度が閾値以下である場合に、予め定義される最大電圧(V
m)に設定される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記閾値は、前記目標温度(T
t)の60%~85%の範囲の値をとる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記エアロゾル発生デバイスは、前記サセプタ(7)の前記温度を前記目標温度(T
t)にするために前記ブーストコンバータ(8)の前記出力電圧(V
out)を制御するように構成されるコントローラ(9)を備え、前記コントローラ(9)は、アンダーダンピングされるようにチューニングされ、前記出力電圧(V
out)は、前記サセプタ(7)の前記加熱の開始時に前記サセプタ(7)の前記温度が前記目標温度(T
t)をオーバーシュートするように設定される、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記コントローラ(9)は、PIDコントローラ、モデルベースコントローラ、及び/又はモデル予測コントローラである、請求項32~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記サセプタ(7)の判定された前記温度(T
d)が前記目標温度(T
t)に等しい場合に、前記出力電圧(V
out)は、例えば約8Vである所定の電圧以下に実質的に設定される、請求項22~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記ブーストコンバータ(8)は、非同期ブーストコンバータである、請求項22~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記ブーストコンバータは、同期ブーストコンバータである、請求項22~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記ブーストコンバータ(8)は、能動スイッチ(T2)を備え、前記能動スイッチ(T2)は、MOSFETトランジスタである、請求項22~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記ブーストコンバータ(8)は、受動スイッチ(T3)を備え、前記受動スイッチ(T3)は、MOSFETトランジスタである、請求項38及び請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記ブーストコンバータ(8)は、3~4.2Vの範囲の入力電圧(V
in)から例えば少なくとも8Vに等しい所望の出力電圧(V
out)へ電圧を昇圧するように構成される、請求項22~40に記載の方法。
【請求項42】
エアロゾル発生デバイス(1)であって、
電源ユニット(4)と、
誘導加熱可能サセプタ(7)と、
前記サセプタ(7)を誘導加熱するための時間変化する電磁界を発生させるよう配置される発振回路(6)と、
前記発振回路(6)を駆動するように構成されるインバータ(5)と、
一方の側で前記電源ユニット(4)に、他方の側で前記インバータ(5)に接続される随意的なブーストコンバータ(8)と、
請求項1~41のいずれか一項に記載の前記サセプタ(7)の前記加熱を制御するための方法を実装するよう適合されるコントローラ(9)と、
を備える、エアロゾル発生デバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、エアロゾル発生デバイスのサセプタの加熱を制御するための方法、及び当該方法を実装するよう適合されるコントローラを備えるエアロゾル発生デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
エアロゾル発生デバイスは、一般に、エアロゾル発生製品を貯蔵するよう配置される少なくとも1つのリザーバを備える。エアロゾル発生製品は、吸入のためのエアロゾルを発生させるために、燃焼なしで加熱される。
【0003】
エアロゾル発生製品は、様々な方法を用いて加熱されることができる。1つの方法は、誘導加熱を用いることにある。かかるエアロゾル発生デバイスは、したがって、通常、誘導コイル、誘導加熱可能なサセプタ、及び電源ユニットを備える誘導加熱システムを備える。
【0004】
電源ユニット又はバッテリにより、電気エネルギーがインバータによって誘導コイルへ供給される。誘導コイルは、そのようにして、交流の電磁界を発生させる。サセプタは、電磁界と結合し及び熱を発生させ、熱は例えば伝導によってエアロゾル発生製品へ伝えられる。最後に、加熱されたエアロゾル発生製品がエアロゾルを発生させる。
【0005】
エアロゾル発生デバイスの最適化された動作のために、誘導加熱中にでき得る限り高いエネルギー効率を追求するニーズが存在する。
【0006】
この文脈において、例えば、エアロゾル発生デバイスのためのブーストコンバータを用いることが公知である。ブーストコンバータは、電源ユニットによって供給される電圧を昇圧するように、即ち、DC電圧をより高い値のDC電圧に変換するように構成される。中国実用新案登録第209732613U号明細書は、そうしたエアロゾル発生デバイスを開示している。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、エアロゾル発生デバイスのサセプタの誘導加熱を制御するため、より正確には、ブーストコンバータを用いてエネルギー効率を改善するための、改善された方法を提供することを目的とする。
【0008】
したがって、本開示は、エアロゾル発生デバイスのサセプタの加熱を制御するための方法であって、サセプタがインバータによって駆動される発振回路によって誘導加熱される方法に関連する。
【0009】
本開示の第1の態様によれば、本方法は、エアロゾル発生デバイスの電力伝達モードと、インバータに供給される電力量が電力伝達モード中に供給される電力量よりも少ないエアロゾル発生デバイスの温度識別モードとを含み、本方法は、さらに、温度識別モード中に行われる測定に基づいてサセプタの温度を判定すること、を含む。
【0010】
電源ユニットと上記インバータとの間にブーストコンバータが接続されてよく、ブーストコンバータは、電源ユニットから供給される入力電圧からインバータへ伝達される出力電圧へ電圧を昇圧するように構成される。電力伝達モードは、サセプタの判定された温度に依存して、ブーストコンバータからインバータへ伝達される出力電圧を設定するステップ、を含んでもよい。
【0011】
そのようにして、サセプタの、つまりエアロゾル発生製品の温度に依存して、発振回路へ伝達される電圧を規制するおかげで、効率的な電力制御が可能である。エアロゾル発生製品の温度の判定及び伝達される電圧の制御は、したがって高いエネルギー効率で適切な物質を有する正しい量のエアロゾルの生成を可能にする。
【0012】
出力電圧は、そのようにして、それ自体がエアロゾル発生製品の性質又は種類といった他のパラメータに依存する所望の加熱プロファイルに依存して変化し得る。
【0013】
また、ブーストコンバータは、制御するのが容易ではない誘導加熱において滑らかな電力制御を提供する。
【0014】
本方法は、設定ステップの前に実行される比較ステップであって、サセプタの判定された温度が目標温度と比較される当該比較ステップを含んでもよく、出力電圧は、判定された温度及び目標温度に依存する値に設定される。
【0015】
出力電圧は、そのようにして、目標温度に依存して変化し得る。例えば、目標温度に達するが目標温度を超えないように出力電圧を制御することが可能である。あるいは逆に、目標温度をオーバーシュートするように出力電圧を制御することも可能である。
【0016】
エアロゾル発生デバイスは、サセプタの温度を目標温度にするためにブーストコンバータの出力電圧を制御するように構成されるコントローラを備え、当該コントローラは、オーバーダンピングされるようにチューニングされ、出力電圧は、サセプタの判定された温度が閾値以下である場合に、予め定義される最大電圧に設定される。
【0017】
閾値は、目標温度の60%~85%の間の範囲であってもよい。
【0018】
エアロゾル発生デバイスは、サセプタの温度を目標温度にするためにブーストコンバータの出力電圧を制御するように構成されるコントローラを備え、当該コントローラは、アンダーダンピングされるようにチューニングされ、出力電圧は、サセプタの加熱の開始時にサセプタの温度が目標温度をオーバーシュートするように設定される。
【0019】
コントローラは、PIDコントローラ、モデルベースコントローラ、及び/又はモデル予測コントローラであってもよい。
【0020】
出力電圧は、サセプタの判定された温度が目標温度に等しい場合に、例えば約8Vである所定の電圧以下に実質的に設定されてもよい。
【0021】
ブーストコンバータは、非同期ブーストコンバータであってもよい。
【0022】
ブーストコンバータは、同期ブーストコンバータであってもよい。
【0023】
ブーストコンバータは、能動スイッチを備えてもよく、当該能動スイッチは、MOSFETトランジスタである。
【0024】
ブーストコンバータは、受動スイッチを備えてもよく、当該受動スイッチは、MOSFETトランジスタである。
【0025】
ブーストコンバータは、3~4.2Vの範囲の入力電圧から所望の出力電圧まで電圧を昇圧するように構成されてもよい。所望の出力電圧は、必要な加熱のためにサセプタ内に適切な損失を生成するのに十分であり、いくつかの態様において、所望の出力電圧は、少なくとも8Vに等しくてもよい。所望の出力電圧は、抵抗、形状、及び大きさ等のサセプタ特性に依存してもよい。
【0026】
ブーストコンバータが必要とされない場合には、インバータは、電力伝達モード中に誘導加熱を調整するようにコントローラによって制御されてもよい。例えば、インバータは、サセプタの加熱を制御するよう変化させることができるデューティサイクルで、周期的に有効(enabled)及び無効(disabled)に(又はオン状態及びオフ状態になるよう周期的に制御)されてもよい。こうした動作を"大域的(global)"パルス幅変調(PWM)制御方式ということができ、その方式では、インバータが有効にされる時間(又は「パルス幅」)が可変である。インバータは、2つのトランジスタを備えてもよい。インバータが有効にされている(又はオン状態にある)期間中、トランジスタは、所定のデューティサイクルで動作することができる。インバータが無効にされている(又はオフ状態にある)期間中には、両方のトランジスタがオフにされる。
【0027】
インバータは、2つのトランジスタを備えてもよい。両方のトランジスタは、電力伝達モード中に動作することが好ましい。
【0028】
発振回路は、コイル回路及びサセプタ回路を備えてもよい。コイル回路は、例えば、LLC回路又はLC回路であってもよく、通常、少なくとも1つのインダクタ又はコイルと、少なくとも1つのコンデンサとを含む。本開示のいくつかの態様では、LC回路が好ましいかもしれず、なぜならそれに含まれる電力を散逸させるコンポーネントがより少ないからである。LLC回路では、追加的なフィルタインダクタが抵抗電力損失を増加させ、所要のバッテリ電圧が増加するかもしれない。また、それによって、インバータにおけるより高いスイッチング損失がもたらされ得る。
【0029】
サセプタの温度の判定は、発振回路の判定された共振周波数に基づいてもよい。
【0030】
上記温度判定ステップは、
-温度識別モードの期間中にインバータの2つのトランジスタのうちの1つのみを動作させるサブステップと、
-温度識別モードの期間中に発振回路の共振周波数を判定するサブステップと、
-判定された上記共振周波数に基づいて、サセプタの温度を判定するサブステップと、
を含んでもよい。
【0031】
サセプタの温度の判定は、発振回路における指示電気値、例えばコイル回路のコンデンサをまたいだ電圧の判定された最大値に基づいてもよい。
【0032】
上記温度判定ステップは、
-温度識別モードの期間中に、例えば、最小周波数fminと最大周波数fmaxとの間の範囲内で周波数を掃引する間、周波数の範囲に対して、発振回路における指示電気値の最大値を判定するサブステップと、
-判定された最大値から大域的最大値を判定するサブステップと、
-大域的最大値に基づいて、サセプタの温度を判定するサブステップと、
を含んでもよい。
【0033】
温度判定の上記ステップは、さらに、例えば約10%~15%の低減されたデューティサイクルで温度識別モードの期間中にインバータの2つのトランジスタの両方を動作させるサブステップを含んでもよい。より詳細には、温度識別モード中のインバータのデューティサイクルは、電力伝達モード中のインバータのデューティサイクルよりも低いことが好ましい。温度識別モード中のデューティサイクルは、サセプタへ伝達される電力を可能な限り少なくするよう、最小値まで低減されることが好ましい。例えば、1回の周波数掃引中のサセプタの温度上昇分は、1℃未満に維持されてもよく、これは、高性能を保証するのに十分である。
【0034】
大域的な最大値及び/又は当該大域的な最大値に基づくサセプタの温度を判定する上記サブステップは、温度識別モード中に実行されなくてもよい。換言すると、温度識別モードの間にサセプタ温度を判定するために必要な測定が行われる一方で、サセプタの温度の実際の判定のための処理は、温度識別モードが終了した後に行われてもよい。
【0035】
電力伝達モード及び温度識別モードは、エアロゾル発生デバイスの動作中に交互に行われてもよい。
【0036】
温度識別モードは、一定の時間間隔で実行されてもよい。
【0037】
本開示の第2の態様によれば、エアロゾル発生デバイスのサセプタの加熱を制御するための方法が提供され、サセプタは、インバータによって駆動される発振回路によって誘導加熱され、電源ユニットと上記インバータとの間にブーストコンバータが接続され、ブーストコンバータは、電源ユニットから供給される入力電圧からインバータへ伝達される出力電圧へ電圧を昇圧するように構成され、上記方法は、エアロゾル発生デバイスの電力伝達モードと、インバータに供給される電力量が電力伝達モード中に供給される電力量よりも少ないエアロゾル発生デバイスの温度識別モードとを含み、さらに、サセプタの温度を判定するステップと、サセプタの判定された温度に依存して、電力伝達モード中にブーストコンバータからインバータへ伝達される出力電圧を設定するステップと、を含む。
【0038】
エアロゾル発生デバイス及び方法の他の特徴は、上で説明した通りである。
【0039】
本開示の第3の態様によれば、エアロゾル発生デバイスであって、
-電源ユニットと、
-誘導加熱可能サセプタと、
-サセプタを誘導加熱するための時間変化する電磁界を発生させるよう配置される発振回路と、
-発振回路を駆動するように構成されるインバータと、
-一方の側で電源ユニットに、他方の側でインバータに接続される随意的なブーストコンバータと、
-先に説明したようなサセプタの加熱を制御するための方法を実装するよう適合されるコントローラと、を備えるエアロゾル発生デバイスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
以下の説明からも、本発明の他の特殊性及び利点が明らかになるであろう。
【0041】
非限定的な実施例によって与えられる添付の図面は、以下の通りである。
【0042】
【
図1a】本開示の2つの実施形態のうちの1つによるエアロゾル発生デバイス1の一部を略図で表す。
【
図1b】本開示の2つの実施形態のうちの1つによるエアロゾル発生デバイス1の一部を略図で表す。
【
図2】エアロゾル発生デバイスの電子回路を略図で表す。
【
図3】本開示の一実施形態による制御ループシステムを略図で表す。
【
図4b】本開示の別の実施形態による発振回路及びインバータを表す。
【
図5a】
図2のブーストコンバータ回路を別個に表す。
【
図5b】本開示の別の実施形態によるブーストコンバータ回路を表す。
【
図6】発振回路の共振周波数とエアロゾル発生デバイスのサセプタの温度との間の線形依存関係を表す。
【
図7】エアロゾル発生デバイスのサセプタの誘導による加熱を制御するための方法を略図で表す。
【
図8】エアロゾル発生デバイスにおいて実装することができる温度制御の一例を表す。
【
図9】発振回路の電圧とエアロゾル発生デバイスのサセプタの温度との間の依存関係を表す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
ここで、本開示の実施形態について、単なる例として添付の図面を参照して説明する。
【0044】
図1a及び
図1bは、本開示の2つの異なる実施形態によるエアロゾル発生デバイス1の一部を略図で表している。
図1a、
図1bの両方は、エアロゾル発生デバイス1の機械的構成を略図で示しているのに対して、
図2は、エアロゾル発生デバイス1の電子回路の一例を表している。
【0045】
エアロゾル発生デバイス1は、本体2とカートリッジ3とを備える。
【0046】
カートリッジ3は、本体2と係合するように構成される第1の端部30と、蒸気出口を有するマウスピース部分(図示せず)として配置される第2の端部31とを備える。
【0047】
カートリッジ3は、さらに、エアロゾル発生製品33を貯蔵するよう配置される少なくとも1つのリザーバ32を備える。カートリッジ3は、使い捨てであってもよい。
【0048】
リザーバ32は、対応する形状のエアロゾル発生製品33を受け入れるよう配置される。エアロゾル発生製品33及び/又はリザーバは、使い捨ての物品又はスティックであってもよい。
【0049】
エアロゾル発生製品という用語は、エアロゾルを形成するよう空気中で気化可能な任意の材料を指定するために用いられる。気化は、一般に、400℃まで、好ましくは350℃までの温度等において気化材料の沸点までの温度上昇によって得られる。気化可能材料は、例えば、液体形態、固体形態、又は半液体形態であってもよく、したがって、液体、たばこ、ゲル、若しくはワックス等、又はこれらの任意の組み合わせを備えるか、又はそれらからなってもよい。
【0050】
マウスピースは、エアロゾル発生製品33を挿入し又は取り出す目的のためにリザーバへのアクセスを可能にするよう脱着自在に取り付けられる。
【0051】
エアロゾル発生デバイス1は、エアロゾル発生製品33の加熱を可能にするように構成される誘導加熱システムを備える。
【0052】
誘導加熱システムは、一般に本体2内に配設される、電源ユニット又はバッテリ4、並びにインバータ5及びコントローラ9(
図3において可視)を備える。
【0053】
コントローラ9は、インバータ5を含む他の電子部品を動作させるように構成される。
【0054】
インバータ5は、バッテリ4からの直流を交流高周波電流に変換するように配置される。インバータ5は、ここでは2つのスイッチ又はトランジスタT0、T1を備える。トランジスタT0、T1は、同じ周波数及び所定のデューティサイクルで動作する。特に、インバータ5の2つのトランジスタT0、T1のデューティサイクルは、50%に等しい。トランジスタT0、T1が対称的な負荷を有するように、電力伝達モード中の50%のデューティサイクルが一般に好ましいが、他のデューティサイクルも可能であることは言うまでもない。トランジスタT0、T1を可変デューティサイクル、例えば約20%~80%のデューティサイクルで動作させることも可能である。これは、インバータに供給される電圧を調整するブーストコンバータが存在せず、電力伝達を制御する他の方法が存在しない場合に適切であるかもしれない。
【0055】
誘導加熱システムは、さらに、発振回路6を備える。発振回路は、コイル60によって提供されるインダクタンスを備える。
【0056】
コイル60は、ここでは、リザーバ32を中心として延在する螺旋状の誘導コイルである。誘導コイル60は、バッテリ4及びコントローラ9によって通電される。コントローラ9は、発振回路6が駆動される動作周波数fopを制御するように構成される。
【0057】
また、誘導加熱システムは、1つ以上の誘導加熱可能サセプタ7を備える。サセプタは、導電性材料で作られ、非導電性材料又は製品を加熱するために用いられる要素である。
【0058】
誘導加熱可能サセプタ7は、サセプタ7が誘導コイル60によって誘導加熱されると、熱がサセプタ7からエアロゾル発生製品に伝わってエアロゾル発生製品を加熱し、それによってエアロゾルが生成されるように、エアロゾル発生製品33と直接的に又は間接的に接触していてもよい。
【0059】
図1aに示す代表的な実施例において、サセプタ7はエアロゾル発生製品33と共にリザーバ32内部に延在する。サセプタ7は、エアロゾル発生製品33の内側に配置されることが好ましい。
【0060】
図1bに示す別の実施形態において、サセプタ7はエアロゾル発生製品33の外側に延在する。サセプタ7は、リザーバ32の側壁320に沿って延在することが好ましい。
【0061】
図2は、バッテリ回路40と、インバータ回路50と、コイル回路61及びサセプタ回路62を備える発振回路6とを表している。発振回路6は、
図4aに別個に表されている。
図4bは、同様に適切な発振回路の別の実施例を表している。
【0062】
図4aの実施形態において、コイル回路61は、追加のインダクタを有するLCC回路である。電圧センサ63は、コイル回路61のコンデンサCの両端の電圧を測定するよう適合される。
【0063】
図4bの実施形態において、コイル回路61はLC回路である。電圧センサ64は、コイル回路61のコンデンサC2のうちの1つの両端の電圧を測定するよう適合される。
【0064】
また、エアロゾル発生デバイス1は、ブーストコンバータ8をも備え、その回路80の一例を
図2に表す。とりわけ、
図2は、エアロゾル発生デバイスにおいて使用可能であって、
図5aに別個に表しているブーストコンバータ8の一例を含んでいる。
図5bは、同様に適切なブーストコンバータ8の別の一例を表している。
【0065】
ブーストコンバータ8は、一方の部分でバッテリ4へ接続され、他方の部分でインバータ5へ接続される。本開示のいくつかの態様において、ブーストコンバータ8を省略することができ、インバータ5は、バッテリ4又は他の電源に直接接続される。ブーストコンバータが存在しない場合に、以下に説明する電力伝達モードの間、サセプタ7の誘導加熱は、「大域的な」PWM制御方式を用いてコントローラによって制御されてもよい。インバータ5は、オン状態で動作してもよく、その間にトランジスタT0、T1は所定のデューティサイクルでオン/オフに切り替えられる。とりわけ、インバータ5の2つのトランジスタT0、T1のデューティサイクルは、50%に等しい。インバータ5がオフ状態で動作する場合には、2つのトランジスタT0、T1はオフに切り替えられる。「大域的な」PWM制御方式の全体的なデューティサイクルは、電力伝達モード中にサセプタ7の加熱を変化させるように制御されることができる。
【0066】
ブーストコンバータ8は、電圧を昇圧するよう、即ち、DC電圧をより高い値のDC電圧に変換するように構成される。より正確には、ブーストコンバータ8は、電源ユニット4から供給される入力電圧Vinから、インバータ5へ伝達されるより高い出力電圧Voutへ、電圧を昇圧するように構成される。
【0067】
ブーストコンバータ8は、最小限の空間で電圧を増加させるための有利な解決策である。
【0068】
ブーストコンバータは、スイッチモード電源の一種である。とりわけ、それは、メインスイッチ、例えばトランジスタを用いて、回路の一部をある速度でオン及びオフにする。
【0069】
ブーストコンバータ8は、能動スイッチT2及び受動スイッチT3を備える。
【0070】
能動スイッチT2あるいはメインスイッチは、表現されている例の両方において、MOSFETトランジスタ(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)である。
【0071】
図5aの実施形態において、受動スイッチT3あるいは補助スイッチは、ダイオードである。ブーストコンバータは、したがって、非同期ブーストコンバータである。
【0072】
図5bの実施形態において、受動スイッチT3は、MOSFETトランジスタである。ブーストコンバータ8は、したがって、同期ブーストコンバータである。
【0073】
ブーストコンバータ8は、さらに、インダクタ81及びコンデンサ82を備える。
【0074】
ブーストコンバータ回路80は、さらに、ここでは2つのセンサ、電流センサ83及び電圧センサ84を備える。電流センサ83は、ブーストコンバータ8によって伝達される出力電流を測定するように適合される。電圧センサ84は、ブーストコンバータ8によって伝達される出力電圧Voutを測定するように適合される。
【0075】
ブーストコンバータの原理は、2つの異なる状態、即ち、オン状態及びオフ状態からなる。オン状態において、メインスイッチT2はオンであり、インダクタ81は充電される。オフ状態において、メインスイッチT2はオフであり、インダクタ81のエネルギーは消散し始める。
【0076】
また、ブーストコンバータ8は、デューティサイクルDによっても特徴付けられる。デューティサイクルDは、メインスイッチT2がオンである間の整流期間Tの割合を表す。したがって、Dは、0~1の範囲の値をとる。
【0077】
平均出力電圧V
outは、以下の関係によって示すように、入力電圧V
in及びデューティサイクルDに直接関係する。
【数1】
【0078】
ブーストコンバータは、ここでは、3~4.2Vの範囲の入力電圧Vinから、より高い出力電圧Voutへ電圧を昇圧するように構成される。出力電圧Voutは、少なくとも8Vに等しいことが好ましい。
【0079】
コントローラ9は、ここでは、ブーストコンバータ8を制御するよう、特に、インバータ5へ伝達される出力電圧を制御するように構成される。
【0080】
図3は、本開示において用いることができる制御ループシステムの一例を示している。コントローラ9は、一方の側でインバータ5へ、他方の側でブーストコンバータ8へ接続される。
【0081】
コントローラ9は、例えば、比例-積分-微分コントローラ(PIDコントローラ)である。
【0082】
より高度な制御及びより良好な性能のため、他のトポロジ又はコントローラタイプを用いることができる。コントローラ9は、例えば、モデルベースのコントローラとすることができる。かかるコントローラは、動作条件と共に変化するシステムの動的応答を考慮に入れるという利点を有する。モデルベースのコントローラは、通常のPIDコントローラと比較して、大幅に良好な性能をもたらし、システム特性の違いに対してはるかに低い感度を示す。それは、例えば、必要な場合に温度の急速な引き上げ又は引き下げを可能にする。
【0083】
さらに別の具体的な実施形態において、コントローラ9は、モデル予測コントローラ又はモデルベース予測コントローラとすることができる。かかるコントローラはまた、動的システムの挙動を表すこともでき、さらに、システムのモデルを用いて、システムの将来の挙動に関する予測を行う。
【0084】
ハイブリッド型の又は混合型の制御もまた用いられてよい。例えば、エアロゾル発生デバイスがブーストコンバータ8を含む場合に、ブーストコンバータはエアロゾル発生デバイスのいくつかの動作の間(例えば、予熱中)、コントローラ9によって制御されてもよい一方で、他の動作の間(例えば、ベイピング段階中)、ブーストコンバータはバイパスされ又は無効にされてもよく、サセプタ7の誘導加熱は、例えば、上述の「大域的な」PWM制御方式を用いて、インダクタによって制御される。予熱中、より多くの電力が必要とされ、ブーストコンバータ8は、インバータ5のためにより高い出力電圧を提供するのに有益である。より高い電圧とは、同じ電力を達成するために必要とされる電流がより少ないことを意味し、これにより損失を低減することができる。その後、ベイピング段階の間、必要とされる電力はより少なく、ブーストコンバータ8は必要とされない。このようにして、ブーストコンバータ8をバイパスすることによって、伝導損失を低減することができる。
【0085】
エアロゾル発生デバイス1のサセプタ7の加熱を制御するための方法は、まず、サセプタ7の温度を判定するステップを含む。
【0086】
サセプタ7の温度は、任意の適切な方法を用いて判定されてよい。例えば、サセプタ7の温度を、まず、発振回路6の共振周波数を判定することによって判定することができる。
【0087】
実際に、発振回路の共振周波数f
rは、インダクタンスL、抵抗R、及び静電容量Cの値によって影響され、
図4aに示すLLC回路に対して、次のように与えられる:
【数2】
【0088】
さらに、発振回路6の共振周波数frは、次のことに依存する:
-発振回路6のインダクタンスコイル60に対する、サセプタ7の正確な位置、及び、
-サセプタの温度と共に変化するサセプタ7の抵抗
【0089】
また、抵抗の変動は、製造公差によっても影響され得る。
【0090】
したがって、総抵抗における変化、よってサセプタ7の温度の変化を追跡するために、共振周波数frが使用され得る。
【0091】
より具体的には、共振周波数f
rは、
図6に示すように、温度と共に直線的に変化する。周波数特性Fの関数としてサセプタ7の温度Tを記述する関数形式を、F(T)=aT+bと書くことができ、ここで"a"及び"b"は、関数形式の定数パラメータである。パラメータ"a"は、周波数のカーブの勾配値に対応する。パラメータ"b"は、y切片に対応する。
【0092】
図6の様々なカーブは、サセプタ7の温度及び位置に応じた発振回路の周波数の変動を表す。実際に、上で説明したように、共振周波数は、発振回路に対するサセプタ7の位置に依存する。これにより、したがって、周波数のカーブのy切片に修正が加わる。これが
図6に明瞭に現れており、傾き"a"は全てのカーブについて同じであって、y切片がカーブごとに異なる。
【0093】
図示した実施形態において、y切片又はbパラメータは、共振回路の初期共振周波数fiに対応する。初期共振周波数fiは、サセプタ7の加熱前の発振回路の共振周波数を指すものとする。言い換えれば、それは、サセプタ7が環境温度、即ち約20℃である場合の共振周波数に対応する。
【0094】
図示したカーブは、このように、エアロゾル発生デバイスへのサセプタ7の不適切な挿入を考慮に入れることが可能であることを示している。
【0095】
まず発振回路6の共振コンデンサ電圧を判定することによって、サセプタ7の温度を判定することができる。実際に、共振周波数における発振回路の共振コンデンサ電圧V
cは、インダクタンスL、抵抗R、及び供給電圧V
sの値によって影響され、
図4bに示すLC回路について、次のように与えられる:
【数3】
【0096】
したがって、共振コンデンサ電圧は、サセプタの温度と共に変化するサセプタ7の抵抗に依存する。
【0097】
好ましくは、上記判定ステップは、低電力供給で、即ち低い出力電圧Voutでブーストコンバータ8により実行される。低い出力電圧Voutとは、8V以下を意味するものとする。好ましくは、低い出力電源における出力電圧は、8Vに略等しい。低い電力供給において上記判定ステップを実行することにより、サセプタの温度のより正確な判定が可能になる。そのうえ、それは最小のエネルギー消費を可能にし、加熱のためのエネルギー変換がこのステップの目的ではないため有利である。
【0098】
サセプタ7の加熱を制御するための方法は、さらに、比較ステップを実行することを含み、サセプタ7の判定された温度Tdが所定の又は目標温度Ttと比較される。目標温度とは、エアロゾル発生製品の正確なエアロゾル化を目的とし、そのために維持されるべきである所定の、予め設定された温度を意味するものとする。
【0099】
コントローラ又はエアロゾル発生デバイス1が、サセプタ7の所定の又は目標温度Ttを記憶するように構成され得ることは言うまでもない。また、コントローラ又はエアロゾル発生デバイスは、判定された温度Tdを格納された目標温度Ttと比較する比較器をも含み備え得る。
【0100】
次いで、本方法は、サセプタ7の判定された温度Tdに依存して、ブーストコンバータ8からインバータ5へ伝達される出力電圧Voutを設定するステップを含む。
【0101】
ブーストコンバータ8の出力電圧Voutは、サセプタ7の温度が目標温度Ttに到達し、次いで維持されるように、調整され得る。
【0102】
コントローラは、閉ループで動作し、サセプタ7の判定された温度Tdに依存して出力電圧Voutを調整する。
【0103】
例えば、判定された温度Tdが目標温度Tt未満である限り、インバータ5への高電力供給が維持される。高電力供給とは、高出力電圧Voutを意味するものとする。高出力電圧Voutは、8Vよりも高い。目標温度Ttに近づくと、電力供給を低減することができる。目標温度Ttに達すると、電力供給は極めて低く設定される。言い換えれば、出力電圧Voutは低い値、好ましくは8V以下に設定される。
【0104】
加熱プロセス及びそれに応じた出力電圧の制御は、設計選択に依存し、エアロゾル発生製品の性質又は種類、所望の加熱プロファイル等のパラメータに依存して変化する。
【0105】
したがって、エアロゾル発生デバイスの動作中に判定ステップ及び設定ステップを繰り返すことによって、発振回路6へ伝達される電圧を頻繁に調整することができる。これにより、良好な電力制御及びエネルギー効率が可能になる。
【0106】
例えば、判定及び設定のステップは、エアロゾル発生デバイスの動作中にある間隔で繰り返される。判定及び設定のステップは、一定の間隔で繰り返される。
【0107】
別の実施形態において、判定及び設定のステップを、エアロゾル発生デバイスの動作中に連続的に繰り返すことができる。
【0108】
サセプタ7の加熱を制御するためのこうした方法の一例が
図7に表現されている。
【0109】
この図において、Tはサセプタ7の温度を指し、Vcは発振回路のコンデンサをまたいだ電圧を指し、T0、T1はインバータ5の2つのトランジスタであり、周波数Fは発振回路6のものであり、Voutはブーストコンバータ8によって伝達される出力電圧である。これらのパラメータは全て、時間の関数として表されている。
【0110】
まず、発振回路の初期共振周波数f
iが判定される。この最初のステップは、
図7においてS
inとして参照されており、初期化ステップとも称する。初期化ステップS
inは、サセプタ7が環境温度にある場合に、即ちそれの加熱の前に実行される。
【0111】
初期共振周波数fiを判定するために、低電力エネルギーが発振回路6に供給される。とりわけ、インバータ5のトランジスタT0のみが動作し、トランジスタT1はオフである。ブーストコンバータの出力電圧Voutは、低い値、好ましくは8V以下に設定される。より好ましくは、出力電圧Voutは8Vに等しい。
【0112】
インバータ5の動作周波数fopは、次いで、判定された初期共振周波数fiに設定される。サセプタ7の加熱を制御するための方法は、さらに、電力伝達モードSp及び温度識別モードSTiを含む。
【0113】
電力伝達モードSpは、サセプタ7の加熱中に実行される。このモードの間、インバータ5の両方のトランジスタT0、T1が動作する。出力電圧Voutは、通常、高い値に設定される。即ち、出力電圧Voutは8Vよりも大きい値に設定される。
【0114】
サセプタ7を加熱している間、共振周波数frは連続的に追跡される。実際に、共振周波数はエアロゾル発生デバイスの機能中に変化する。さらに、共振周波数frでの動作は、可能な限り高いエネルギー効率を保証する。
【0115】
したがって、コントローラは、共振周波数frを追跡し、電力伝達モードSpにおいてそれに応じて加熱中の実際の動作周波数fopを調整する。言い換えれば、動作周波数fopは、発振回路の共振周波数に対応するために連続的に更新される。
【0116】
共振周波数は連続的に追跡されるため、
図6のカーブを用いて温度を連続的に判定することができる。
【0117】
加熱を制御するためのこの方法を用いて、サセプタ7の温度を、電力伝達モードSpの期間中に連続的に監視することができる。
【0118】
但し、サセプタ7の温度のより良好でより正確な判定が必要とされる。これは、ある時間間隔で実行される温度識別モードSTiによって可能となる。
【0119】
そうするために、電力供給を中断した後、低い電力エネルギーが発振回路に供給される。とりわけ、トランジスタT0のみが動作し、トランジスタT1は遮断される。そのうえ、出力電圧Voutが引き下げられる。出力電圧Voutは、8V以下の値まで引き下げられる。
【0120】
次いで、共振周波数が判定される。このとき、
図6に表すカーブを用いてサセプタ7の温度を判定することができる。実践的には、初期共振周波数の同じ対応するカーブが、サセプタの温度を判定するために用いられる。本開示において、上で説明したように、共振周波数f
rは、
図6に示すように温度と共に直線的に変化する。周波数特性Fの関数としてサセプタ7の温度Tを記述する関数形式は、F(T)=aT+bと書くことができ、ここで"a"及び"b"は、関数形式の定数パラメータである。パラメータ"a"は、周波数のカーブの勾配値に対応する。パラメータ"b"は、y切片に対応する。周波数範囲は、約300kHz~約700kHzであるが、約100kHz~約700kHzであってもよい。
【0121】
図6に表した通りの複数のカーブが、初期共振周波数の判定後に適合される。それらカーブは、次いで、コントローラに実装される式に依存して、シフトされてもよく、又はシフトされなくてもよい。
【0122】
別の実施形態において、ルックアップテーブルとして、それらカーブを実装することができる。ルックアップテーブルを、エアロゾル発生デバイスのメモリに登録することができる。
【0123】
したがって、ある間隔で、温度識別モードSTiにより、サセプタの温度が、それを目標温度Ttに維持する目的で正確に識別される。
【0124】
温度識別モードSTiの期間中に、発振回路6に供給される電力を低減することは、サセプタ7への電力伝達を回避することを可能にする。このようにして、サセプタ7の温度への影響が低減され、エアロゾル発生製品33の温度のより良好な推定が可能となる。
【0125】
電力伝達モードSpと温度識別モードSTiとは、交互に行われる。
【0126】
温度識別モードSTiを、正確な温度判定のために一定間隔で繰り返すことができる。
【0127】
表現されている例において、電力伝達モードSp及び温度識別モードSTiは、規則的に繰り返され、交互に行われる。しかし、電力伝達モードSp及び温度識別モードSTiの持続時間は、エアロゾル発生デバイスが機能している最中に変化してもよい。動作上の要因に依存して、温度識別モードSTiが遂行される頻度を低減することが有益であろう。例えば、温度上昇の初期段階の最中には電力伝達モードSpの長さを延長することが有益であるかもしれず、これにより温度識別モードSTiが遂行される頻度は低減されるはずである。
【0128】
各電力伝達モードSpの持続時間は、例えば、約30~200msの範囲内であってもよい。
【0129】
各温度識別モードSTiの持続時間は、サセプタの安定した温度判定を得るために、極めて短く、例えば約2~20msの範囲とすることができる。各温度識別モードSTiの持続時間は、掃引が必要な周波数範囲及び要求される分解能等の他の動作上の要因に依存してもよい。いくつかのケースでは、特定の温度識別モードの持続時間が、約20msより長く、例えば、以下で説明する高分解能でのより広い周波数範囲にわたる周波数掃引について、約120msにまで長くすることができる。第1の温度識別モードは、より広い周波数範囲(例えば、100kHz~700kHz)を可能にするよう、後続の温度識別モードよりも長くてもよく、後続の温度識別モードは、より狭い周波数範囲(例えば、350kHz~450kHz)を用いる。最初の周波数掃引は、おおよその共振周波数を識別するよう低分解能で広い周波数範囲にわたって実行されてもよく、後続の周波数掃引は、より正確な温度推定のために高分解能でより狭い周波数範囲にわたって実行される。より狭い周波数範囲は、初期の周波数掃引において識別される概算の共振周波数を目標とすることができる。
【0130】
各温度識別モードの期間中のサセプタの温度の変動は、約1℃未満であってもよい。
【0131】
図7は、誘導加熱によって時間と共に上昇するサセプタ7の温度を示している。サセプタ7の温度は、所定の又は目標温度T
tに達するまで上昇する。
【0132】
サセプタ7の温度は、ここでは滑らかな(遅い又はオーバーダンピング)制御を用いて制御される。言い換えれば、コントローラ9は、オーバーダンピングされるようにチューニングされる。オーバーダンピングとは、減衰比が厳密に1よりも大きいことを意味するものとする。サセプタ7の温度は、したがって、目標温度Ttまで緩やかに上昇する。オーバーダンピングされるようにコントローラ9を調整することにより、温度のオーバーシュートが防止されるか又は少なくとも低減される。
【0133】
コントローラは、したがって、サセプタの温度を所望の温度にするよう適切な出力電圧Voutを印加する。
【0134】
例えば、判定された温度が目標温度未満である限り、インバータ5への電力供給は高い出力電圧Voutに維持される。目標温度Ttに近づくと、電力供給を低減することができる。例えば、閾値が予め設定され、当該閾値を超過した場合には温度が目標温度Ttに近づいていると見なされる。目標温度に達すると、電力供給は極めて低く設定される。即ち、出力電圧Voutは低い値に設定される。
【0135】
図7のようなオーバーダンピング温度制御を用いる場合に、判定された温度が目標温度の所定の割合よりも低い限り、インバータ5に供給される出力電圧を、予め定義される最大電圧V
mまで昇圧させることができる。好ましくは、閾値又は所定の割合は、目標温度T
tの60%~85%の間である。当該閾値は、他のパラメータに依存し、とりわけサセプタの加熱速度に依存する。例えば、予熱又は第1のパフ時間が極めて速く、例えば2秒に設定される場合には、下限、即ち目標温度の約60%が好ましい。実際に、これは、温度判定の熱的時間差に起因するオーバーシュートが生じることを回避する。予熱又は第1のパフは、エアロゾル発生デバイスの各使用における第1の期間、即ちユーザが最初のパフを行った場合を意味するものとする。
【0136】
図7で表現されている最初の電力伝達モードS
pにおいて、温度が上昇するが目標温度T
tよりも低いままである間に、電圧は、予め定義される最大電圧V
mに対応する電圧値に到達するまで昇圧される。
【0137】
目標温度T
tに近づくと、出力電圧が低減される。特に、出力電圧は、サセプタの判定された温度が目標温度の閾値又は所定の割合よりも高い場合に、予め定義される最大電圧V
mよりも低い電圧に設定される。したがって、
図7における2番目の電力伝達モードS
pにおいて、昇圧電圧又は出力電圧は、サセプタ7の温度が目標温度T
tに近づくにつれて低減される。
【0138】
目標温度に達すると、電力供給は極めて低く設定される。したがって、
図7の3番目の電力伝達モードS
pにおいて、出力電圧値は再び低減される。好ましくは、出力電圧は8V以下に低減される。
【0139】
当然ながら、この電力制御は、一例としてのみ提供されている。別の実施形態において、出力電圧Voutは、目標温度に達しても、予め定義される最大電圧Vmに維持されることができ、したがって、サセプタの温度のオーバーシュートを引き起こす。反対に、安全モードにおいて、出力電圧Voutを常に予め定義される最大電圧Vmよりも低く維持することができる。
【0140】
さらに、温度を制御する他の方法、即ちオーバーダンピング制御とは異なる方法を用いることもできる。例えば、サセプタ7の温度を、
図8に表すように、高速アンダーダンピング制御を用いて制御することができる。言い換えれば、コントローラ9は、アンダーダンピングされるようにチューニングされる。アンダーダンピングとは、減衰比が厳密に1よりも小さいことを意味するものとする。コントローラ9は、したがって、より迅速に目標温度T
tに到達するよう僅かにオーバーシュートする。
【0141】
図8の実施例において、コントローラ9は、エアロゾル発生デバイスの使用開始時に、即ち予熱時に、サセプタ7の温度を短時間オーバーシュートするように構成される。表現されている例では、約0.6秒でオーバーシュートに到達する。
【0142】
アンダーダンピングされるようコントローラ9をチューニングすることで、最初のパフが改善される。こうした高速制御において、いくつかの物理的制限が破られないことを確実にしながら、最初のパフが改善されることになる。物理的制限とは、例えば、たばこの燃焼がないこと、又はエアロゾル発生デバイス若しくはそれらのアセンブリの材料の劣化がないこととすることができる。
【0143】
サセプタ7の温度の判定は、コイル回路61のコンデンサをまたいだ電圧の判定された最大値に基づいてもよい。
図4aに示すLLC回路について、例えば、コンデンサC両端の電圧が、各温度識別モードS
Tiの期間中に電圧センサ63によって測定されてもよい。同様に、
図4bに示すLC回路について、例えば、コンデンサC2両端の電圧が、各温度識別モードS
Tiの期間中に電圧センサ64によって測定されてもよい。
【0144】
各温度識別モードSTiの間、共振ピークコンデンサ電圧検出が実行される。インバータ5は、コンデンサをまたいだ電圧が測定されている間、最小周波数fminと最大周波数fmaxとの間の範囲内で周波数を掃引するよう制御される。例えば、最小周波数fminは約350kHzであってもよく、最大周波数fmaxは約450kHzであってもよい。周波数掃引は、特定の分解能で実行されてもよく、より高い分解能は、電圧測定が固有の周波数範囲内のより多くの検出周波数に対して行われることを意味し、その逆もまた然りである。各周波数についてピーク電圧が検出される前に、電圧センサ63又は64からの電圧測定値が処理され又は調整されてもよく、例えば、電圧測定値にゲインが乗算されてもよく、及び/又は、AC信号のみが考慮されるように何らかのDCオフセットを除去する処理が行われてもよい。各周波数についてのピークコンデンサ電圧が、次いで、高速ピーク検出器を用いて検出される。例えば、Vc1は、周波数f1において検出された最大の正のコンデンサ電圧であり、Vc2は、周波数f2において検出された最大の正のコンデンサ電圧であり、Vc3は、周波数f3において検出された最大の正のコンデンサ電圧であり、fminとfmaxとの間の全ての検出周波数について同様である。このピーク検出処理は、電圧エンベロープの抽出と考えることができる。そして、公知のピック検出機能を用いて、判定されたピークコンデンサ電圧Vc1、Vc2、Vc3、・・・、Vcnから、大域的なピークコンデンサ電圧が、共振コンデンサ電圧として選択され又は摘出される。大域的ピークコンデンサ電圧は、特定の温度識別モードSTi中に掃引される周波数の全てにわたって検出されるピークコンデンサ電圧のうちの最も高いものである。
【0145】
次いで、大域的なコンデンサピーク電圧(又は共振コンデンサ電圧)を、サセプタ7の温度を判定するために用いることができる。より具体的には、共振コンデンサ電圧は、
図9に示すように温度と共に変化する。コンデンサ電圧特性の関数としてサセプタ7の温度を説明する関数形式が決定され得る。また、共振コンデンサ電圧が得られる周波数、即ち周波数掃引の最中に最も高いピークコンデンサ電圧が測定された具体的な周波数の関数としてサセプタ7の温度を説明する関数形式を決定することもできる。
【0146】
各温度識別モードSTiの間、トランジスタT0、T1は、サセプタ7の加熱を最小限にするように、低減されたデューティサイクル、例えば約10%~15%で動作する。
【0147】
サセプタ7の判定された温度を、後続の電力伝達モードSp中に誘導加熱を調整するために用いることができる。
【0148】
ここで説明した現在のところ好ましい実施形態に対する種々の変形及び修正が、当業者にとって明らかであることは言うまでもない。かかる変形及び修正は、本開示の精神及び適用範囲から逸脱することなく、且つその付随する利点を減少させることなく、行われることができる。したがって、添付の特許請求の範囲によって、かかる変更及び修正がカバーされることが意図される。
【0149】
例えば、共振周波数とサセプタの温度との間の依存関係に対して、他の関数形式が用いられてもよいことが正しく認識されるであろう。例えば、適切にパラメータ化された多項式関数といった非線形的な関数形式を用いることができる。
【0150】
本開示は、このように、エネルギー効率を最適化することを可能にする、エアロゾル発生デバイスにおける誘導加熱を制御するための方法を提供する。さらに、発振回路へ伝達される出力電圧を、エアロゾル発生製品の所望の温度プロファイルを得るために規制することができる。
【0151】
本明細書において別途記載のない限り又は文脈に明らかに矛盾しない限り、上述した特徴のどういった組み合わせも、全てのあり得るバリエーションにおいて、本開示によって包含される。
【0152】
文脈上、明らかに他の意味に解すべき場合を除き、本明細書及び特許請求の範囲の全体を通して、「含む/備える(comprise)」、「含んでいる/備えている(comprising)」等の語は、排他的意味又は網羅的意味とは反対に、包括的に、即ち「含んでいるが、それに限られない」という意味で解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0153】
1 エアロゾル発生デバイス
2 本体
3 カートリッジ
30 カートリッジの第1の端部
31 カートリッジの第2の端部
32 リザーバ
33 エアロゾル発生製品
4 バッテリ
40 バッテリ回路
5 インバータ
50 インバータ回路
T0、T1 インバータのトランジスタ
6 発振回路
60 コイル
61 コイル回路
62 サセプタ回路
63、64 電圧センサ
C1、C2 発振回路のコンデンサ
fop 動作周波数
fi 初期共振周波数
fr 共振周波数
7 サセプタ
Td サセプタの判定された温度
Tt サセプタの目標温度
8 ブーストコンバータ
80 ブーストコンバータ回路
81 ブーストコンバータのインダクタ
82 ブーストコンバータのコンデンサ
83 電流センサ
84 電圧センサ
9 コントローラ
T2 ブーストコンバータの能動スイッチ
T3 ブーストコンバータの受動スイッチ
Vin ブーストコンバータの入力電圧
Vout ブーストコンバータの出力電圧
Sin 初期化ステップ
Sp 電力伝達モード
STi 温度識別モード
【手続補正書】
【提出日】2023-10-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生デバイス(1)のサセプタ(7)の加熱を制御するための方法であって、前記サセプタ(7)は、インバータ(5)によって駆動される発振回路(6)によって誘導加熱され、前記方法は、前記エアロゾル発生デバイス(1)の電力伝達モード(S
p)と、前記インバータ(5)に供給される電力量が前記電力伝達モード(S
p)中に供給される電力量よりも少ない前記エアロゾル発生デバイス(1)の温度識別モード(S
Ti)とを含み、前記方法は、さらに、前記温度識別モード(S
Ti)中に行われる測定に基づいて前記サセプタ(7)の温度を判定する
ステップ、を含む、方法。
【請求項2】
前記サセプタ(7)の前記温度の前記判定は、前記発振回路(6)の判定された共振周波数(f
r)に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インバータ(5)は、2つのトランジスタ(T0、T1)を備え、前記サセプタ(7)の前記温度を判定する前記ステップは、
前記インバータ(5)の前記2つのトランジスタ(T0、T1)のうちの1つのみを動作させるサブステップと、
前記温度識別モード(S
Ti)中に前記発振回路(6)の共振周波数(f
r)を判定するサブステップと、
判定された前記共振周波数(f
r)に基づいて、前記サセプタ(7)の前記温度(T)を判定するサブステップと、
を含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記サセプタ(7)の前記温度の前記判定は、前記発振回路(6)における指示電気値の判定された最大値に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記指示電気値は、前記発振回路(6)のコンデンサをまたいだ電圧である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記サセプタ(7)の前記温度を判定する前記ステップは、
前記温度識別モード(S
Ti)中に、ある周波数の範囲について前記発振回路(6)における指示電気値の最大値を判定するサブステップと、
判定された前記最大値から大域的最大値を判定するサブステップと、
前記大域的最大値に基づいて、前記サセプタ(7)の前記温度を判定するサブステップと、
を含む、請求項4又は請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記インバータ(5)は、2つのトランジスタ(T0、T1)を備え、前記サセプタ(7)の前記温度を判定する前記ステップは、さらに、低減されたデューティサイクルで前記温度識別モード中に両方のトランジスタ(T0、T1)を動作させるサブステップを含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記電力伝達モード(S
p)及び前記温度識別モード(S
Ti)は、前記エアロゾル発生デバイス(1)の動作中に交互に行われる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記温度識別モード(S
Ti)は、一定の時間間隔で実行される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記エアロゾル発生デバイス(1)は、さらに、電源ユニット(4)と前記インバータ(5)との間に接続されているブーストコンバータ(8)を備え、前記ブーストコンバータ(8)は、前記電源ユニット(4)から供給される入力電圧(V
in)から前記インバータ(5)へ伝達される出力電圧(V
out)まで電圧を昇圧するように構成され、前記方法は、前記サセプタ(7)の判定された前記温度(T
d)に応じて、前記電力伝達モード(S
p)中に前記ブーストコンバータ(8)から前記インバータ(5)へ伝達される前記出力電圧(V
out)を設定するステップ、を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
さらに、前記設定するステップの前に実行される比較ステップであって、前記サセプタ(7)の判定された前記温度(T
d)が目標温度(T
t)と比較される当該比較ステップ、を含み、前記出力電圧(V
out)は、判定された前記温度(T
d)及び前記目標温度(T
t)に依存する値に設定される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記エアロゾル発生デバイスは、前記サセプタ(7)の前記温度を前記目標温度(T
t)にするために前記ブーストコンバータ(8)の前記出力電圧(V
out)を制御するように構成されるコントローラ(9)を備え、前記コントローラ(9)は、オーバーダンピングされるようにチューニングされ、前記出力電圧は、前記サセプタの判定された前記温度が閾値以下である場合には、予め定義される最大電圧(V
m)に設定される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記閾値は、前記目標温度(T
t)の60%~85%の範囲の値をとる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記エアロゾル発生デバイスは、前記サセプタ(7)の前記温度を前記目標温度(T
t)にするために前記ブーストコンバータ(8)の前記出力電圧(V
out)を制御するように構成されるコントローラ(9)を備え、前記コントローラ(9)は、アンダーダンピングされるようにチューニングされ、前記出力電圧(V
out)は、前記サセプタ(7)の前記加熱の開始時に前記サセプタ(7)の前記温度が前記目標温度(T
t)をオーバーシュートするように設定される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記コントローラ(9)は、PIDコントローラ、モデルベースコントローラ、及び/又はモデル予測コントローラである、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記サセプタ(7)の判定された前記温度(T
d)が前記目標温度(T
t)に等しい場合に、前記出力電圧(V
out)は
、所定の電圧以下に実質的に設定される、請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ブーストコンバータ(8)は、非同期ブーストコンバータである、請求項10~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ブーストコンバータは、同期ブーストコンバータである、請求項10~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ブーストコンバータ(8)は、能動スイッチ(T2)を備え、前記能動スイッチ(T2)は、MOSFETトランジスタである、請求項10~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ブーストコンバータ(8)は、受動スイッチ(T3)を備え、前記受動スイッチ(T3)は、MOSFETトランジスタである、請求項18
又は請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ブーストコンバータ(8)は、3~4.2Vの範囲の入力電圧(V
in)か
ら所望の出力電圧(V
out)へ電圧を昇圧するように構成される、請求項10~20
のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
エアロゾル発生デバイス(1)のサセプタ(7)の加熱を制御するための方法であって、前記サセプタ(7)は、インバータ(5)によって駆動される発振回路(6)によって誘導加熱され、電源ユニット(4)と前記インバータ(5)との間にブーストコンバータ(8)が接続され、前記ブーストコンバータ(8)は、前記電源ユニット(4)から供給される入力電圧(V
in)から前記インバータ(5)へ伝達される出力電圧(V
out)へ電圧を昇圧するように構成され、前記方法は、前記エアロゾル発生デバイス(1)の電力伝達モード(S
p)と、前記インバータ(5)に供給される電力量が前記電力伝達モード(S
p)中に供給される電力量よりも少ない前記エアロゾル発生デバイス(1)の温度識別モード(S
Ti)とを含み、前記方法は、さらに、前記サセプタ(7)の温度を判定するステップと、前記サセプタ(7)の判定された前記温度(T
d)に依存して、前記電力伝達モード(S
p)中に前記ブーストコンバータ(8)から前記インバータ(5)へ伝達される前記出力電圧(V
out)を設定するステップと、を含む、方法。
【請求項23】
前記サセプタ(7)の前記温度の前記判定は、前記発振回路(6)の判定された共振周波数(f
r)に基づく、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記インバータ(5)は、2つのトランジスタ(T0、T1)を備え、前記サセプタ(7)の前記温度を判定する前記ステップは、
前記インバータ(5)の前記2つのトランジスタ(T0、T1)のうちの1つのみを動作させるサブステップと、
前記温度識別モード(S
Ti)中に前記発振回路(6)の共振周波数(f
r)を判定するサブステップと、
判定された前記共振周波数(f
r)に基づいて、前記サセプタ(7)の前記温度(T)を判定するサブステップと、
を含む、請求項22又は請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記サセプタ(7)の前記温度の前記判定は、前記発振回路(6)における指示電気値の判定された最大値に基づく、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記指示電気値は、前記発振回路(6)
のコンデンサをまたいだ電圧である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記サセプタ(7)の前記温度を判定する前記ステップは、
前記温度識別モード(S
Ti)中に、ある周波数の範囲について前記発振回路(6)における指示電気値の最大値を判定するサブステップと、
判定された前記最大値から大域的最大値を判定するサブステップと、
前記大域的最大値に基づいて、前記サセプタ(7)の前記温度を判定するサブステップと、
を含む、請求項25又は請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記インバータ(5)は、2つのトランジスタ(T0、T1)を備え、前記サセプタ(7)の前記温度を判定する前記ステップは、さらに、低減されたデューティサイクルで前記温度識別モード中に両方のトランジスタ(T0、T1)を動作させるサブステップ、を含む、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記電力伝達モード(S
p)及び前記温度識別モード(S
Ti)は、前記エアロゾル発生デバイス(1)の動作中に交互に行われる、請求項22~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記温度識別モード(S
Ti)は、一定の時間間隔で実行される、請求項22~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
さらに、前記設定するステップの前に実行される比較ステップであって、前記サセプタ(7)の判定された前記温度(T
d)が目標温度(T
t)と比較される当該比較ステップ、を含み、前記出力電圧(V
out)は、判定された前記温度(T
d)及び前記目標温度(T
t)に依存する値に設定される、請求項22~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記エアロゾル発生デバイスは、前記サセプタ(7)の前記温度を前記目標温度(T
t)にするために前記ブーストコンバータ(8)の前記出力電圧(V
out)を制御するように構成されるコントローラ(9)を備え、前記コントローラ(9)は、オーバーダンピングされるようにチューニングされ、前記出力電圧は、前記サセプタの判定された前記温度が閾値以下である場合に、予め定義される最大電圧(V
m)に設定される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記閾値は、前記目標温度(T
t)の60%~85%の範囲の値をとる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記エアロゾル発生デバイスは、前記サセプタ(7)の前記温度を前記目標温度(T
t)にするために前記ブーストコンバータ(8)の前記出力電圧(V
out)を制御するように構成されるコントローラ(9)を備え、前記コントローラ(9)は、アンダーダンピングされるようにチューニングされ、前記出力電圧(V
out)は、前記サセプタ(7)の前記加熱の開始時に前記サセプタ(7)の前記温度が前記目標温度(T
t)をオーバーシュートするように設定される、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記コントローラ(9)は、PIDコントローラ、モデルベースコントローラ、及び/又はモデル予測コントローラである、請求項32~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記サセプタ(7)の判定された前記温度(T
d)が前記目標温度(T
t)に等しい場合に、前記出力電圧(V
out)は
、所定の電圧以下に実質的に設定される、請求項
31~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記ブーストコンバータ(8)は、非同期ブーストコンバータである、請求項22~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記ブーストコンバータは、同期ブーストコンバータである、請求項22~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記ブーストコンバータ(8)は、能動スイッチ(T2)を備え、前記能動スイッチ(T2)は、MOSFETトランジスタである、請求項22~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記ブーストコンバータ(8)は、受動スイッチ(T3)を備え、前記受動スイッチ(T3)は、MOSFETトランジスタである、請求項38
又は請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記ブーストコンバータ(8)は、3~4.2Vの範囲の入力電圧(V
in)か
ら所望の出力電圧(V
out)へ電圧を昇圧するように構成される、請求項22~40
のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
エアロゾル発生デバイス(1)であって、
電源ユニット(4)と、
誘導加熱可能サセプタ(7)と、
前記サセプタ(7)を誘導加熱するための時間変化する電磁界を発生させるよう配置される発振回路(6)と、
前記発振回路(6)を駆動するように構成されるインバータ(5)と、
一方の側で前記電源ユニット(4)に、他方の側で前記インバータ(5)に接続され
るブーストコンバータ(8)と、
請求項1~41のいずれか一項に記載の前記サセプタ(7)の前記加熱を制御するための方法を実装するよう適合されるコントローラ(9)と、
を備える、エアロゾル発生デバイス(1)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0144
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0144】
各温度識別モードSTiの間、共振ピークコンデンサ電圧検出が実行される。インバータ5は、コンデンサをまたいだ電圧が測定されている間、最小周波数fminと最大周波数fmaxとの間の範囲内で周波数を掃引するよう制御される。例えば、最小周波数fminは約350kHzであってもよく、最大周波数fmaxは約450kHzであってもよい。周波数掃引は、特定の分解能で実行されてもよく、より高い分解能は、電圧測定が固有の周波数範囲内のより多くの検出周波数に対して行われることを意味し、その逆もまた然りである。各周波数についてピーク電圧が検出される前に、電圧センサ63又は64からの電圧測定値が処理され又は調整されてもよく、例えば、電圧測定値にゲインが乗算されてもよく、及び/又は、AC信号のみが考慮されるように何らかのDCオフセットを除去する処理が行われてもよい。各周波数についてのピークコンデンサ電圧が、次いで、高速ピーク検出器を用いて検出される。例えば、Vc1は、周波数f1において検出された最大の正のコンデンサ電圧であり、Vc2は、周波数f2において検出された最大の正のコンデンサ電圧であり、Vc3は、周波数f3において検出された最大の正のコンデンサ電圧であり、fminとfmaxとの間の全ての検出周波数について同様である。このピーク検出処理は、電圧エンベロープの抽出と考えることができる。そして、公知のピーク検出機能を用いて、判定されたピークコンデンサ電圧Vc1、Vc2、Vc3、・・・、Vcnから、大域的なピークコンデンサ電圧が、共振コンデンサ電圧として選択され又は摘出される。大域的ピークコンデンサ電圧は、特定の温度識別モードSTi中に掃引される周波数の全てにわたって検出されるピークコンデンサ電圧のうちの最も高いものである。
【国際調査報告】