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特表2024-505978グリースニップル及び識別エンコーダ用ホルダが備え付けられた給脂連結装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】グリースニップル及び識別エンコーダ用ホルダが備え付けられた給脂連結装置
(51)【国際特許分類】
   F16N 21/04 20060101AFI20240201BHJP
   F16N 21/06 20060101ALI20240201BHJP
   F16N 37/02 20060101ALI20240201BHJP
   F16N 29/02 20060101ALI20240201BHJP
   F16N 31/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
F16N21/04
F16N21/06
F16N37/02
F16N29/02
F16N31/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547082
(86)(22)【出願日】2022-02-03
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 EP2022052635
(87)【国際公開番号】W WO2022167549
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】2101041
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508275098
【氏名又は名称】エヌティエヌ・ヨーロッパ
【氏名又は名称原語表記】NTN EUROPE
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【弁理士】
【氏名又は名称】古後 亜紀
(74)【代理人】
【識別番号】100230248
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 圭二
(72)【発明者】
【氏名】クロシェ・ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】セネパン・アントワーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンダム・エティエンヌ
(57)【要約】
本発明は、給脂連結装置(1)に関する。給脂連結装置(1)は、固定軸(A1)に沿って延びる固定部(11)、給脂軸(A2)に沿って延びる給脂口接触部(12)、および給脂口接触部(12)と固定部(11)との間に設けられた鍔部(13)を有するグリースニップル(10)を備える。鍔部(13)は、軸方向の固定部(11)側に面する下面(131)を有し、下面(131)は、固定軸(A1)に対して垂直なグリースニップル(10)の基準平面(P)上に延在しており、給脂口接触部(12)は、グリースを供給する外部給脂源、例えば、グリースガン等に連結されるように構成されている。給脂連結装置(1)は、さらに、読取要素によって読み取られるように構成された無線周波数エンコーダ(21)を保持するエンコーダホルダ(20)を備える。給脂連結装置(1)において、エンコーダホルダ(20)は、固定軸(A1)を基準として軸方向に延びる孔(22)が貫通しているとともに、グリースニップル(10)の鍔部(13)の下面(131)が圧接する支承面(23)を有しており、また、グリースニップル(10)の鍔部(13)が収容された刻設部(24)を有していることを特徴とする。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-固定軸(A1)に沿って延びる固定部(11)、給脂軸(A2)に沿って延びる給脂口接触部(12)、および前記給脂口接触部(12)と前記固定部(11)との間に設けられた鍔部(13)を有するグリースニップル(10)であって、前記鍔部(13)は、軸方向の前記固定部(11)側に面する下面(131)を有し、前記下面(131)は、前記固定軸(A1)に対して垂直な当該グリースニップル(10)の基準平面(P)上に延在しており、前記給脂口接触部(12)は、グリースを供給する外部給脂源、例えば、グリースガン等に連結されるように構成されている、グリースニップル(10)と、
-対応する外部の読取要素によって読み取られるように構成された無線周波数エンコーダ(21)を保持するエンコーダホルダ(20)と、
を備える、給脂連結装置(1)において、
前記エンコーダホルダ(20)は、前記固定軸(A1)を基準として軸方向に延びる孔(22)が貫通しているとともに、前記グリースニップル(10)の前記鍔部(13)の前記下面(131)が圧接する支承面(23)を有しており、
前記エンコーダホルダ(20)は、前記グリースニップル(10)の前記鍔部(13)が収容される刻設部(24)を有していることを特徴とする、給脂連結装置(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の給脂連結装置(1)において、前記グリースニップル(10)の前記鍔部(13)は、前記固定軸(A1)回りのトルク伝達が可能となるように前記エンコーダホルダ(20)の前記刻設部(24)と係合することによって当該刻設部(24)内に収容されていることを特徴とする、給脂連結装置(1)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の給脂連結装置(1)において、前記無線周波数エンコーダ(21)は、アンテナ(21’)、好ましくはチップに接続されたアンテナ(21’)からなり、前記アンテナ(21’)の少なくとも一部が、前記基準平面(P)の前記給脂口接触部(12)側に当該基準平面から離れて位置していることを特徴とする、給脂連結装置(1)。
【請求項4】
請求項3に記載の給脂連結装置(1)において、前記アンテナ(21’)は、前記給脂軸(A2)に対して垂直なアンテナ平面(P21)上で前記給脂軸(A2)周りに設けられており、好ましくは当該給脂軸(A2)を囲繞していることを特徴とする、給脂連結装置(1)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の給脂連結装置(1)において、前記グリースニップル(10)の前記鍔部(13)の外周が、非円形状、例えば多角形状、好ましくは六角形状であることを特徴とする、給脂連結装置(1)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の給脂連結装置(1)において、前記刻設部(24)は、2つ以上の面(241)、例えば6つの面(241)、からなる閉じた輪郭を有する側壁(240)によって径方向が画定されており、好ましくは、少なくとも一部の当該面(241)、好ましくはそれぞれの当該面(241)が、凸面からなることを特徴とする、給脂連結装置(1)。
【請求項7】
請求項6に記載の給脂連結装置(1)において、前記刻設部(24)の前記側壁(240)における全てまたは一部の前記面(241)、好ましくは全ての前記面(241)、の母線が、部分放物面、特には部分球を形成していること特徴とする、給脂連結装置(1)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の給脂連結装置(1)において、前記エンコーダホルダ(20)の前記刻設部(24)は、前記固定軸(A1)に沿って軸方向に延在しているとともに、断面が一定であるか又は前記基準平面(P)から離れるにつれて断面積が増加することを特徴とする、給脂連結装置(1)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の給脂連結装置(1)において、前記エンコーダホルダ(20)の前記支承面(23)は、前記基準平面(P)と当該基準平面(P)の前記刻設部(24)側とは反対側に位置して前記鍔部(13)の前記下面(131)と同じ軸方向に面する前記エンコーダホルダ(20)の内方面(201)との間の距離で定まる厚み(e)が、前記無線周波数エンコーダ(21)と前記基準平面(P)との間の平均距離の50%未満、好ましくは20%未満であることを特徴とする、給脂連結装置(1)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の給脂連結装置(1)において、前記給脂軸(A2)が、前記固定軸(A1)と同一線上にあることを特徴とする、給脂連結装置(1)。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載の給脂連結装置(1)において、前記グリースニップル(10)は、前記給脂軸(A2)が前記固定軸(A1)と角度を成すように曲げられていることを特徴とする、給脂連結装置(1)。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の給脂連結装置(1)において、前記エンコーダホルダ(20)は、前記固定軸(A1)回りにトルクを加えるのに適した工具と係合するように構成された接触部を有することを特徴とする、給脂連結装置(1)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の給脂連結装置(1)において、前記グリースニップル(10)が、単一物からなることを特徴とする、給脂連結装置(1)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の給脂連結装置(1)において、前記エンコーダホルダ(20)が、単一物からなることを特徴とする、給脂連結装置(1)。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の給脂連結装置(1)において、前記無線周波数エンコーダ(21)の少なくとも一部が、前記エンコーダホルダ(20)の構成材料と係合していることを特徴とする、給脂連結装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、給脂連結装置の技術分野に関する。
【0002】
本発明は、詳細には、グリースを供給する外部給脂源(例えば、グリースガン等)に連結されるように構成されたグリースニップル(グリースフィッティング、グリース注入用管継手)と、前記外部給脂源に設けられた又は設けられていない外部読取要素により読み取られるように構成された無線周波数エンコーダを支持するエンコーダホルダと、が設けられる種類の、給脂連結装置に関する。本発明は、さらに、このような装置が備え付けられた機械系統に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に、あらゆる種類の自動車機器、鉄道機器、航空機器または産業機械に、転がり軸受型、滑り軸受型またはボールジョイント型の機械系統が組み込まれている。既知のことであるが、このような機械系統は、稼働中に昇温し得る。臨界的な温度を上回ると、同系統の一部の構成要素が回復不能なまでの損傷を生じる可能性がある。その場合、同系統が組み込まれた機器の動作が妨げられたり、突然停止したりすることもある。このため、そのような動作不良が原因となって、深刻な事故が発生するような場合がある。機械系統の昇温を阻止したり遅らせたりするため、数多くの潤滑装置が知られている。
【0004】
特に、摩擦点を回避して部品を腐食性攻撃や錆から守る目的で機械系統を潤滑する際には、給脂装置を用いることが知られている。同給脂装置は、グリースガン系とされ得る。このような装置により、例えば、多数の機構にグリースを注入したりグリースを集中適用したりすることが可能となる。手動式から電気式や空気圧式までに至る、特定の用途に合わせた様々なモデルのシステムや機器が存在している。給脂作業時には、作業者がグリースポンプを取り扱い、給脂接触部を形成するグリースニップルに対して同グリースポンプの一端を接続する。グリースポンプの連結端は例えば給脂ロッドからなり、同給脂ロッドの先端部に油圧クリップが設けられていて、グリースニップルのスタッド部にクリップ留めすることが可能となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業者はこのような給脂作業を定期的に繰り返すことになるが、定期保全や機械系統の良好な潤滑監視を確実なものとするには、グリースニップルの識別を行う必要がある。しかし、既存の技術には幾つかの問題がある。
【0006】
識別システムの利用には、エンコーダと照会要素を、それぞれ、グリースポンプとグリースニップルに設置する必要がある。しかし、ニップルには多種多様なものがあり、小型のものも多く、実施が簡単で且つ実用的なソリューションが望まれる。
【0007】
また、上記のような識別システムを使用していると、該システムの構成次第では、例えば、グリースポンプの油圧クリップをグリースニップルのスタッド部にクリップ留めして連結を行った場合に、連結の性能が低下する可能性があることが実験で確かめられた。
【0008】
無線周波数ワイヤレス技術も普及しているが、短所もある。例えば、ボールジョイント型の場合には、一般的に、グリースポンプとグリースニップルとの連結後の自由度から、作業者が給脂作業中の操作を行い易くなっている。しかし、構成にもよるが、照会要素による無線周波数エンコーダの読取りがグリースニップルに対するグリースポンプの給脂ロッドの向きで変化する可能性があり、さらには、作業者の操作に融通性をもたらす上記自由度が制限されてしまう可能性さえある。
【0009】
最後に、識別システムの構成のなかには、最も過酷な環境(建設/公共事業、農業、採鉱/採石)に適していないものもある。特注の油圧ニップルも考えられるが、製造コストや製造し易さの問題から極めて望ましくない。
【0010】
本発明は、特に、グリースポンプなどの外部給脂源とグリースニップルとの確実な連結を可能にしつつ、給脂作業の十分な追跡を保証する高い信頼性の識別を可能にするほか、最も過酷な環境にも強く、実用的で実施が簡単であるソリューションを提案することにより、従来技術の短所の全て又は一部を改善することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様では、この目的のために、
-固定軸に沿って延びる固定部、給脂軸に沿って延びる給脂口接触部、および前記給脂口接触部と前記固定部との間に設けられた鍔部を有するグリースニップルであって、前記鍔部は、軸方向の前記固定部側に面する下面を有し、前記下面は、前記固定軸に対して垂直な当該グリースニップルの基準平面上に延在しており、前記給脂口接触部は、グリースを供給する外部給脂源、例えば、グリースガン等に連結されるように構成されている、グリースニップルと、
-対応する外部の読取要素によって読み取られるように構成された無線周波数エンコーダを保持するエンコーダホルダと、
を備える、給脂連結装置において、
前記エンコーダホルダは、前記固定軸を基準として軸方向に延びる孔が貫通しているとともに、前記グリースニップルの前記鍔部の前記下面が圧接する支承面を有しており、
前記エンコーダホルダは、前記グリースニップルの前記鍔部が収容される刻設部を有していることを特徴とする、給脂連結装置が提案される。
【0012】
上記のような構成同士の組合せは、高剛性のエンコーダホルダにより保持した無線周波数エンコーダを、市場でのグリースニップルの最も一般的な普及品の下側に設置することができるという点で極めて有利である。これにより、給脂作業のための例えば給脂スタッド部等の給脂口接触部へのアクセスし易さが維持されるとともに、外部給脂源とグリースニップルとが確実に正確に連結される。これにより、外部給脂源がグリースニップルの給脂軸と一致していなくても、エンコーダがグリースニップルによって動かず又は連結の邪魔になることなく保持される。前記無線周波数エンコーダは、例えば、アンテナで捕集したエネルギーを電源エネルギーに利用することによって無線周波数信号を発生させることが可能な回路である。前記エンコーダホルダは前記グリースニップルの前記鍔部が収容される刻設部を有していることから、前記給脂口接触部と前記エンコーダホルダとを集結させたり、前記外部給脂源と前記エンコーダホルダ(つまり、前記エンコーダ自体)とを連結位置まで集結させたりすることが可能となる。これにより、給脂作業時の、前記外部の読取要素による前記エンコーダの読取りが容易となる。
【0013】
一実施形態において、前記グリースニップルの前記鍔部は、前記固定軸回りのトルク伝達が可能となるように前記エンコーダホルダの刻設部と係合することによって当該刻設部内に収容されている。
【0014】
一実施形態において、前記無線周波数エンコーダは、アンテナ、好ましくはチップに接続されたアンテナからなり、前記アンテナの少なくとも一部が、前記基準平面の前記給脂口接触部側に当該基準平面から離れて位置している。このような構成により、前記無線周波数エンコーダ(特には、前記アンテナ)と前記エンコーダホルダのうちの前記刻設部が開口している外方面との間の距離である最小読取距離を短くすることができる。作業者が給脂作業を行う際に、前記外部給脂源に設けられた又は設けられていない前記外部の読取要素は、前記エンコーダホルダの外方面側で当該エンコーダホルダに面することになるので前記アンテナに対して近い距離に配されることができる。これにより、前記読取要素による前記無線周波数エンコーダの読取りが向上する。
【0015】
一実施形態において、前記アンテナは、前記給脂軸に対して垂直なアンテナ平面上で前記給脂軸周りに設けられており、好ましくは当該給脂軸を囲繞しており、例えば環状に囲繞している。このような構成では、前記外部給脂源が前記グリースニップルの前記給脂軸と一致していなくても、前記読取要素による前記エンコーダの読取りを常に高い信頼性で確保することが可能となる。その結果、連結角度が違っても、前記読取要素による前記エンコーダの読取りに何ら影響が生じ得ない。つまり、作業者の手作業が特に正確でなくても、実行する測定の実施やその信頼性が確実なものになる。これにより、作業者のグリースガンの操作が、識別測定の精度を犠牲にすることなく且つ操作時の良好な融通性を維持したまま大幅に容易化する。
【0016】
一実施形態において、前記エンコーダホルダの前記外方面は、前記アンテナ平面と平行な平面内に全体が収まっている。よって、これにより、前記給脂軸回りのどの点においても、例えば、前記外部給脂源に設けられた前記外部の読取要素による前記エンコーダの読取りを確実に行うことができる。
【0017】
一実施形態において、前記グリースニップルの前記鍔部の外周は、非円形状、例えば多角形状、好ましくは六角形状である。非円形状の外形輪郭を有する幾何形状であれば、前記グリースニップルを一方向または他方向に回転させたい場合(特に、当該グリースニップルがねじの切られた部分を有するものである場合であって、当該グリースニップルの固定部にて、特に、そのねじ止めやねじ緩めの目的で前記グリースニップルを一方向または他方向に回転させたい場合)に、グリップが可能となってトルクが加え易くなる。
【0018】
一実施形態において、前記刻設部は、前記グリースニップルの前記鍔部の外周と例えば六角形のような多角形等の相補的な形状によって係合するように構成された側壁により、径方向が画定されている。
【0019】
一実施形態において、閉じた輪郭を有する側壁によって径方向が画定された前記刻設部は、2つ以上の面、例えば6つの面、からなり、好ましくは、少なくとも一部の当該面、好ましくはそれぞれの当該面が、凸面からなる。このような凸形状により、特に、形状が鋭い縁部との接触を抑制して部品同士の早期摩耗を抑えることが可能となる。
【0020】
一実施形態において、前記刻設部の前記側壁における全てまたは一部の前記面、好ましくは全ての前記面、の母線は、平行であり、好ましくは部分円筒を形成しているか又は部分放物面を形成しており、特には、部分球を形成している。なお、部分円筒を形成するように母線同士が平行、特には、前記固定軸と平行であることにより、部品製造時の型抜き工程を容易化させることができる。
【0021】
一実施形態において、前記エンコーダホルダの前記刻設部は、前記固定軸に沿って軸方向に延在しているとともに、断面が一定であるか又は前記基準平面から離れるにつれて断面積が増加する。前記基準平面から離れるにつれて面積が増加する場合、エンコーダホルダを複数の鍔部寸法の様々なグリースニップルに合わせて組み付けることが可能となる。前記エンコーダホルダの前記刻設部の断面積のこのような変化は、当該刻設部の側壁が例えばテーパ状部を形成するような連続的な変化とされてもよいし、あるいは、例えば階段の段差や踊り場のように非連続的な変化とされてもよい。
【0022】
一実施形態において、前記エンコーダホルダの前記支承面は、前記基準平面と当該基準平面の前記刻設部側とは反対側に位置して前記鍔部の前記下面と同じ軸方向に面する前記エンコーダホルダの内方面との間の距離で定まる厚みが、前記エンコーダと前記基準平面との間の平均距離の50%未満、好ましくは20%未満である。これにより、前記エンコーダホルダのフォームファクタ(形状因子)が小さくなる。
【0023】
一実施形態において、前記給脂軸は、前記固定軸と同一線上にある。このような構成は、いわゆる「真直(ストレート)」なグリースニップルに相当する。代替的な一実施形態において、前記グリースニップルは、前記給脂軸が前記固定軸と角度を成すように曲げられている。この場合、確実な測定を保証するために、アンテナ平面が前記給脂軸に対して垂直であるのが好ましく、また、アンテナが前記給脂軸と同一直線上にあるのがより好ましい。
【0024】
一実施形態において、前記エンコーダホルダは、前記固定軸回りにトルクを加えるのに適した工具と係合するように構成された接触部を有する。好ましくは、このような接触部が、設置または保守に極めて好適かつ実用的な対応する工具を受けるように選ばれたものとされる。つまり、作業者は、前記エンコーダホルダを当該接触部にて適切な工具によって操作することができる。このような幾何形状は、工具類に応じて様々なものとされ得て、例えば、外周が、六角形状、四角形状、星形状、平坦部又は切欠部を有する部分円形状などの非円形状の外形輪郭である軸方向断面とされ得る。これに加えて又はこれに代えて、適切な工具と係合するように構成された前記接触部が、前記エンコーダホルダの前記外方面および/または内方面の一方または両方に設けられ得る。
【0025】
好ましくは、組立後の状態にて、前記刻設部の径方向を画定する当該刻設部の前記側壁に前記グリースニップルの前記鍔部の外周が係合している。これにより、実際の作業者は、適切な工具で前記エンコーダホルダの前記接触部に簡単にアクセスするとともに、それによって当該接触部にトルクを加えて同トルクを前記グリースニップルに伝えることで、当該グリースニップルのねじ止めやねじ緩めをすることが可能となる。
【0026】
一実施形態において、前記グリースニップルは単一物からなる。
【0027】
一実施形態において、前記エンコーダホルダは単一物からなる。
【0028】
一実施形態において、前記無線周波数エンコーダの少なくとも一部は、前記エンコーダホルダの構成材料と係合している。他の実施形態において、前記無線周波数エンコーダは、前記エンコーダホルダの溝に収容され得て、好ましくは、当該溝は、前記エンコーダホルダのうちの前記刻設部が開口している前記外方面から開口しており、好ましくは、その場合の前記エンコーダは、前記エンコーダホルダのその外方面と面一である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明のその他の特徴および利点は、添付の図面を参照しながら行う以下の説明を参酌することで明らかになる。
図1A】一実施形態に係る給脂連結装置の斜視図である。
図1B図1Aの実施形態に係る給脂連結装置のエンコーダホルダを示す図である。
図1C図1Bの破断斜視図である。
図2】他の実施形態に係るエンコーダホルダの斜視図である。
図3】他の実施形態に係るエンコーダホルダの斜視図である。
図4A】他の実施形態に係るエンコーダホルダの斜視図である。
図4B図4Aに示すエンコーダホルダの平面図である。
図5A】他の実施形態に係るエンコーダホルダの斜視図である。
図5B図5Aに示すエンコーダホルダの平面図である。
図6】他の実施形態に係るエンコーダホルダの斜視図である。
図7】他の実施形態に係るエンコーダホルダの斜視図である。
図8】他の実施形態に係るエンコーダホルダの斜視図である。
図9】他の実施形態に係るエンコーダホルダの斜視図である。
図10】他の実施形態に係るエンコーダホルダの斜視図である。
図11】他の実施形態に係るエンコーダホルダの斜視図である。
図12】他の実施形態に係るエンコーダホルダの斜視図である。
図13A】他の実施形態に係る給脂連結装置の上側斜視図である。
図13B図13Aの実施形態に係る給脂連結装置の下側斜視図である。
図13C図13Aの実施形態に係る給脂連結装置のエンコーダホルダを示す図である。
図13D図13Aの実施形態に係る給脂連結装置の簡略断面図である。
図14A】他の実施形態に係る給脂連結装置の上側斜視図である。
図14B図14Aの底面図である。
図14C図14Aの側面図である。
図14D図14Bの断面A-Aの簡略断面図である。
図15A】他の実施形態に係る給脂連結装置の上側斜視図である。
図15B図15Aの底面図である。
図15C図15Aの側面図である。
図15D図15Bの断面B-Bの簡略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
分かり易くするために、同一または同様の構成要素は、全ての図をとおして同一の参照符号で特定している。
【0031】
本明細書および特許請求の範囲の明瞭化を目的に、同明細書中および同範囲内では、図示の三方向X,Y,Zを基準として縦断、横断および上下という用語を採用している。
【0032】
図1に、機械系統(図示せず)の給脂などによる給脂ネットワークの接触部を形成するように意図された給脂連結装置1を示す。具体的に述べると、このような接触部は、作業者がグリースを供給する例えばグリースガン等の外部給脂源を定期的に一時連結させて特に保守作業や維持作業で前記グリースを注入する目的で使用される。
【0033】
給脂連結装置1は、グリースニップル10を備える。グリースニップル10の一方の側には、固定部11が設けられている。具体的に述べると、本例の固定部11は、ねじが切られた部分(概略図なので、ねじ部は図示せず)からなり、固定軸A1、すなわち、図中の上下軸Zと平行なねじ止め軸に沿って延びて前記給脂ネットワークのうちの対応するねじ穴へと連結することが可能な、ねじ込み締結部を確保している。グリースニップル10は、さらに、グリースを供給する例えばグリースガン等の外部給脂源(図示せず)に連結されるように構成された給脂口接触部12を有する。具体的に述べると、本例の給脂口接触部12は、給脂スタッド部12により形成されている。他の実施形態(図示せず)において、給脂口接触部12は、平坦なヘッド部またはボール型のヘッド部により形成され得る。グリースニップル10は、給脂軸A2に沿って延びているとともに、別の側、好ましくは、ねじが切られた固定部11とは反対側に位置している。本実施形態のグリースニップル10は、給脂軸A2が固定軸A1と同一線上にあるため「真直」であると言える。なお、変形例として、前記固定部をねじ止めではなく焼き嵌めすることにより、前記給脂ネットワークに対するグリースニップル10の連結を確実なものにすることも可能である。
【0034】
グリースニップル10は、給脂口接触部12とねじが切られた固定部11との間に設けられた鍔部13を有する。鍔部13は、固定軸A1を基準として軸方向に向いている。鍔部13は、当該鍔部13の厚みを定める下面131と反対側の外方面132とによって軸方向が画定されている。下面131は、軸方向の、ねじの切られた固定部11側に面しているとともに、固定軸A1に対して垂直なグリースニップル10の基準平面P上に延在している。
【0035】
本実施形態において、グリースニップル10は、金属製であるとともに単一物で形成されている。全金属製または部分金属製の組成、好ましくは、全金属製の組成とすることで、より良好に力に耐えることが可能となる。好ましくは、グリースニップル10、特には、給脂口接触部12に、逆止弁(例えば、給脂軸A2に沿って当該グリースニップル10全体を貫く孔内に収容されたボールとスプリングによる逆止弁等)が設けられ得る。
【0036】
給脂連結装置1は、さらに、グリースニップル10に取り付けられるように構成されたエンコーダホルダ20を備える。エンコーダホルダ20は、前記外部給脂源に設けられた又は設けられていない外部の読取要素によって読み取られるように構成された無線周波数エンコーダ21を保持している。例えば、無線周波数エンコーダ21は、スマートフォンなどの外部の要素によって読み取られ得る。エンコーダ21の「保持」とは、無線周波数エンコーダ21がエンコーダホルダ20により支持され得るか又はエンコーダホルダ20内に組み込まれ得るということと理解されたい。
【0037】
図1B及び図1Cは、図1Aのエンコーダホルダ20の詳細図である。エンコーダホルダ20には、固定軸A1を基準として軸方向に延びる貫通孔22が設けられている。貫通孔22は、グリースニップル10が挿通可能であるように、かつ、当該グリースニップル10のうちの鍔部13を形成している部分の少なくとも一部を収容するように構成されている。エンコーダホルダ20の孔22は、グリースニップル10の鍔部13の下面131が接する支承面23を有している。
【0038】
孔22のうちの鍔部13を受け入れる部分は、鍔部13が収容される刻設部24によって画定されている。具体的に述べると、本例の鍔部13は、固定軸A1回りのトルク伝達が可能となるように刻設部24と係合している。これにより、鍔部13が少なくとも部分的に刻設部24に挿入叉は係合させられると、これら鍔部13及び刻設部24のうちの一方を回転させることで、他方の部品を回転させることが可能となる。本実施形態では、鍔部13の外周が、非円形状、特には、六角形型の多角形状とされる。鍔部13の外形輪郭を画定するこのような径方向の外周は、相補的な形状の刻設部24に係合するように構成されている。実際、刻設部24は、複数の面241が設けられた閉じた輪郭を有する側壁240によって径方向が画定されており、具体的に述べると、6つの面241が設けられた閉じた輪郭を有する側壁240によって径方向が画定されていてねじ止め軸A1を基準とした刻設部24の軸方向断面が六角形状となっている。
【0039】
本実施形態において、エンコーダホルダ20の刻設部24は、固定軸A1に沿って軸方向に延在しているとともに、断面が一定である。側壁240の面241は、閉じた多角形状の準線、具体的に述べると、本例では六角形状の準線に沿って、固定軸A1と平行な直線状の母線によって生じている。
【0040】
グリースニップル10とのエンコーダホルダ20の固定方法には、様々なものがあり得る。例えば、エンコーダホルダ20は、前記給脂ネットワーク側にある外部の支承面(図示せず)、具体的に述べると、グリースニップル10におけるねじが切られた固定部11を受け入れる前記ねじ穴の一端部近傍に配された外部の支承面(図示せず)とグリースニップル10とによって共同で保持され得る。この場合、支承面23は、鍔部13のうち、当該支承面23の一方の側に圧接する下面131と、グリースニップル10がねじ止めされる(包括的に言えば、固定される)部品にある前記外部の支承面との間に把持されるか又は介在させられる。別の実施形態では、支承面23のうち、孔22を画定する環状の面230が、例えば、当該環状の面230のうちのねじが切られた部分とねじが切られた固定部11との協働による螺合や、当該支承面23のうちのその環状の面230への、グリースニップル10の環状の一部位、例えば、グリースニップル10のうちのねじが切られた部分11の軸方向延長にある部位等の焼き嵌めによって、グリースニップル10に直接固定されるように構成され得る。
【0041】
無線周波数エンコーダ21は、無線周波数信号を発して所定の周波数帯域で動作するように構成されたアンテナ21’からなる。一般的に、アンテナ21’は、データを記憶する電子チップ(図示せず)に接続されている。このような無線周波数エンコーダ21は、「RFIDタグ」と一般的に称される。アンテナ21’の少なくとも一部は、基準平面Pの給脂口接触部12側に当該基準平面から離れて位置している。エンコーダ21(本例では、アンテナ21’)は、グリースニップル10の全体を囲繞するように、好ましくは、環状に囲繞するように配置されており、かつ、給脂軸A2に対して垂直なアンテナ平面P21上で給脂軸A2周りに設けられている。
【0042】
本実施形態において、エンコーダホルダ20は、少なくとも1種の高分子材料および/または少なくとも1種の樹脂および/または少なくとも1種のセラミックス材料から形成されており、好ましくは、単一物で構成されている。エンコーダホルダ20は、複数種の材料からなる単一物であってもよい。上記のような組成により、無線周波数エンコーダ21の良好な支持が確実に行われるとともに、情報読取りとの相互作用が抑制される。このようなエンコーダホルダ20は、給脂作業時に給脂口接触部12よりも後方に位置するため、グリースガンからの機械応力を受けず、前記エンコーダを維持するための比較的高剛性な構造ではあるものの、グリースニップル10と同等の耐久性までは要求されない。
【0043】
図1Cに示すように、エンコーダ21は、エンコーダホルダ20の製造時に当該エンコーダホルダ20の構成材料中に埋設される。このような構成であれば、製造が容易でありながら、前記エンコーダが早期摩耗から最適に保護されるともに、エンコーダホルダ20の交換を介して前記エンコーダ自体も必要に応じて交換される。
【0044】
支承面23の厚みeは、基準平面Pと当該基準平面Pの刻設部24側とは反対側に位置して鍔部13の下面131と同じ軸方向に面するエンコーダホルダ20の内方面201との間の距離で定まる。エンコーダホルダ20のサイズを小さくするため、支承面23は、その厚みeが無線周波数エンコーダ21と基準平面Pとの間の平均距離の50%未満、好ましくは20%未満となるように選択される。
【0045】
本実施形態では、エンコーダホルダ20が、さらに、固定軸A1回りにトルクを加えるのに適した工具と係合するように構成された接触部を有する。図1A図1B及び図1Cに示す実施形態に関して、具体的に述べると、エンコーダホルダ20は、六角形状の断面の外形輪郭を有する。これにより、エンコーダホルダ20は、対応するレンチによって回転運動させられることができる。エンコーダホルダ20の外形輪郭にモーメントを加えると、当該エンコーダホルダ20の刻設部24が回転して鍔部13を回転させることから、グリースニップル10はその回転方向にねじ止めされるか又は緩められる。
【0046】
以上により、上述の給脂連結装置1は、従来技術で生じた問題に対処することができるとともに、新型の給脂装置と既存の装置のどちらにも備え付けられることができるという利点を奏する。後者の場合、エンコーダホルダ20を既存のグリースニップル10に備え付けるだけでよい。
【0047】
図2図12に、エンコーダホルダ20のその他の実施形態を示す。
【0048】
具体的には、図2及び図3に、エンコーダ21がエンコーダホルダ20の構成材料でオーバーモールド成形されずにエンコーダホルダ20の溝25に収容されるように構成されているという点で図1B及び図1Cに示すエンコーダホルダと実質異なるエンコーダホルダ20を示す。好ましくは、スロート25は、エンコーダホルダ20のうちの刻設部24が開口している外方面202に対して開口している。無線周波数エンコーダ21を可能な限りエンコーダホルダ20の正面側に配することで、前記外部給脂源に設けられた前記外部の読取要素と当該無線周波数エンコーダ21とを隔てる距離を短くし、当該外部の読取要素による当該無線周波数エンコーダ21のアンテナ21’の読取りが容易なものとなるように、当該無線周波数エンコーダ21を当該エンコーダホルダ20の前記外方面202と面一に配置するようにしてもよい。アンテナ21’を溝25に確実に固定保持して早期摩耗から守るために、無線周波数エンコーダ21は、当該溝25に充填された樹脂に埋設される。スロート25は、給脂軸A2周りの閉じた輪郭に沿ったものとされ得るが、別の形状とされてもよい。円形状(図2)であってもよいし、刻設部24の輪郭および/またはエンコーダホルダ20の外周の輪郭と同じ幾何形状、例えば、六角形状(図3)に沿ったものとされてもよい。
【0049】
図4A及び図4Bに、刻設部24の径方向を画定する閉じた輪郭を有する側壁240のそれぞれの面241が平坦面ではなく凸面からなるという点で図1B及び図1Cに示すエンコーダホルダと実質異なるエンコーダホルダ20を示す。具体的に述べると、刻設部24の側壁240における全ての面241の母線が部分球を形成するように、当該面241が構成されている。
【0050】
図5A及び図5Bに、12個の面241が設けられた閉じた輪郭を有する側壁240によって刻設部24の径方向が画定されているという点で図1A図1Cに示すエンコーダホルダと実質異なるエンコーダホルダ20を示す。本例での側壁240の12個の面241は、平坦ではなく同一の曲面状であり、それぞれの面241が凸面からなる。これらは、固定軸A1と平行な母線をそれぞれ凸曲線形状の12個の等辺沿いの閉じた準線に沿って周回させることで得られる。
【0051】
具体的に述べると、図6図7図8図9及び図10に、固定軸A1回りにトルクを加えるのに適した工具と係合するように構成された外側の各接触部が図1A図1Cに示すエンコーダホルダと実質異なる(また、他の実施形態とも異なる)エンコーダホルダ20を示す。図6に示す実施形態に関して、具体的に述べると、エンコーダホルダ20の外形輪郭の断面は四角形状である。図7のエンコーダホルダ20の外形輪郭の断面は、円形状の包絡線に沿って延びているとともに、2つの平坦部が設けられている。図8のエンコーダホルダ20の外形輪郭の断面は、12個の枝部を有する多角形状、すなわち、24個の辺を有する多角形状である。図9のエンコーダホルダ20の外形輪郭の断面は、円形状の包絡線に沿って延びているとともに、等間隔に分布した複数の切欠部、具体的には、6つの切欠部が外周に設けられており、ピンレンチによって回すことができるようになっている。図10のエンコーダホルダ20は、断面が円形状であるほか、適当な工具と係合するように構成された前記接触部が上面202に位置しているとともに、ピンレンチのピンを内部に収めることが可能な2つのオリフィスを有している。これら2つのオリフィスは、固定軸A1を基準として対称に配置されている。
【0052】
図11及び図12に、刻設部24と外形輪郭の両方が六角形状となることで多角形状のリング、具体的に述べると、六角形状のリングを本例で形成しているエンコーダホルダ20を示す。これら2種類の実施形態は、同リングの下側(図11を参照)と上側(図12を参照)の2つある軸方向端部の一方にエンコーダホルダ20の構成材料の幅広部を有しているという点で図1A図1Cに示すエンコーダホルダ20と実質異なる。これにより、エンコーダホルダ外形状を多角形状とするとともにアンテナ21’を例えばリング状にするといった六角形の冠状のような極めてシンプルな構成になる。よって、エンコーダホルダ20の嵩を抑えつつ、外周及び表面積の増大によってアンテナの組込みを容易化し且つ/或いは大型のアンテナを組み込んで当該アンテナのレンジを向上させることが可能になる。
【0053】
図13A図13B図13C及び図13Dに、エンコーダホルダ20外側の前記接触部が固定軸A1回りにトルクを加えるのに適した工具と係合するように構成されていないという点で図1A図1B及び図1Cの実施形態と実質異なる他の実施形態に係る給脂連結装置1を示す。むしろ、そのエンコーダホルダ20は、外形輪郭の断面が円形状となっている。また、上面202及び下面201のいずれにも、特定の工具によって動かされるように構成された接触部が設けられていない。本実施形態のエンコーダホルダ20では、上面202と下面201との間により、固定軸A1を基準とした軸方向の厚みが定まる。本例のエンコーダホルダ20の軸方向の厚みは、好ましくは鍔部13の軸方向の厚みよりも小さく、より好ましくはその50%未満である。これにより、鍔部13は、エンコーダホルダ20の刻設部24に全体が確実に収容されない。そのため、鍔部13の外側の幾何形状部分に対して適切な工具を直に係合させるという作業者による当該鍔部13へのアクセスが確保される。つまり、グリースニップル10に対する締め付けと緩めを直に行うことができる。変形例として、給脂連結装置1は、エンコーダホルダ20の軸方向の厚みが鍔部13の軸方向の厚みよりも大きくなるように、より好ましくはそれよりも50%超大きくなるように構成されてもよい。このような構成では、アンテナ21’が外部給脂源に近付くため、より優れた識別測定を行うことが可能となる。
【0054】
図14A図14B図14C及び図14Dに、給脂軸A2が固定軸A1に対して傾くようにグリースニップル10が曲げられていることに加えてこれら2つの軸A1,A2が交差しているという点で図1A図1B及び図1Cの実施形態と実質異なる他の実施形態に係る給脂連結装置1を示す。本実施形態では、軸A1,A2同士の傾きが45°とされる。
【0055】
グリースニップル10は、固定部11、鍔部13、および略球状の鋳造ヘッド14から構成された第1の部分を少なくとも含み、この部分は固定軸A1に沿って並んでいる。グリースニップル10の第2の部分は、特には給脂口接触部12、さらに、任意の構成として中間鍔部を有する。当該中間鍔部は、給脂口接触部12下側の直近に設けられる。本例では、これら第1及び第2の2種類の部分同士は、着脱可能とされる。前記中間鍔部は、係止部の螺合を可能にするものであり、ねじが切られた中間部位を鋳造ヘッド14のねじ穴にねじ止めする構成となっている。変形例として、前記第1及び第2の部分の螺合は、焼き嵌めに置き換えられてもよい。
【0056】
作業者が給脂作業を行う際に給脂軸A2の前記傾きにかかわらず前記エンコーダが確実に読み取られるように、エンコーダホルダ20は、無線周波数エンコーダ21(すなわち、本例では無線周波数エンコーダ21のアンテナ21’)が基準平面Pの給脂口接触部12側に当該基準平面から離れて位置するように構成されている。具体的に述べると、無線周波数エンコーダ21は、給脂軸A2に対して垂直なアンテナ平面P21上で当該給脂軸A2周りに設けられている。結果として、アンテナ平面P21は、基準平面Pに対して傾いている。前記エンコーダホルダの外方面202は、給脂軸A2の全周にわたって一様な最小読取距離が確保されるように、アンテナ平面P21に対して全体的に平行な平面上に位置している。
【0057】
エンコーダホルダ20の支承面23は、基準平面Pと当該基準平面Pの刻設部24側とは反対側に位置して鍔部13の下面131と同じ軸方向に面するエンコーダホルダ20の内方面201との間の距離で定まる厚みeが、無線周波数エンコーダ21と基準平面Pとの間の平均距離の50%未満、好ましくは20%未満である。これにより、エンコーダホルダ20の小型化が可能となる。アンテナ平面P21が基準平面Pに対して傾いていることにより、無線周波数エンコーダ21と基準平面Pとの間の距離にはばらつきが生じる。この距離の最小値と最大値とから、平均距離を算出する。
【0058】
図15A図15B図15C及び図15Dに、刻設部24がエンコーダホルダ20の外形輪郭に対して偏心しているという点で図14A図14B図14C及び図14Dの実施形態と実質異なる他の実施形態に係る給脂連結装置1を示す。具体的に述べると、これにより、例えばソケットレンチのような特定の工具のアクセスを容易なものにできる。この用途を可能にするために、刻設部24の偏心は、給脂口接触部12の位置が組立状態にて偏心するように、あるいは、基準平面P上での給脂口接触部12の固定軸A1を基準とした軸方向の突出がエンコーダホルダ20の外形輪郭の同様の軸方向の突出内に完全に収まる程度に設定される。
【0059】
当然ながら、本発明についてのこれまでの説明は、例示に過ぎない。当業者であれば、本発明の範囲を逸脱しない範疇で本発明の様々な変形例の実施形態を作り出すことができるという点を理解されたい。
【0060】
本開示内容、図面および添付の特許請求の範囲から当業者に対して教示される全構成は、その他の所定の構成との関連で具体的に説明したものであるが、単独の構成でも任意の構成群としても、明確に排除されるようなものや技術的条件として不可能又は理にかなわない組合せにならないかぎり本明細書で開示した別の構成や構成群と組み合わせられてもよいという点を強調したい。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図14C
図14D
図15A
図15B
図15C
図15D
【国際調査報告】