(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】能動源を利用した地盤センシング
(51)【国際特許分類】
G01V 1/02 20060101AFI20240201BHJP
G01D 5/353 20060101ALI20240201BHJP
G01H 9/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
G01V1/02 Z
G01D5/353 B
G01H9/00 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547154
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 EP2022052133
(87)【国際公開番号】W WO2022167348
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519263660
【氏名又は名称】フォーカス センサーズ リミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】オースティン, エドワード
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー, トビー
(72)【発明者】
【氏名】デスブルスライス, スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】チェンバース, キット
【テーマコード(参考)】
2F103
2G064
2G105
【Fターム(参考)】
2F103CA07
2F103EC09
2G064AB01
2G064AB02
2G064BC02
2G064BC12
2G064BC22
2G064BC33
2G105AA03
2G105BB01
(57)【要約】
能動源を利用する地盤安定性測定を決定するための装置及び方法。一例において、分布型光センサは、鉄道路線の長さに沿ったひずみを検出する。1つ又は複数の列車が、能動源を用意する。能動源の通過の前後の静的ひずみが、地盤安定性を決定するのに使用される。測定値は、能動源の特性に基づいて正規化してもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分布型光センサを利用して地盤安定性を決定する方法であって、
前記分布型光センサの長さに沿った少なくとも1つの場所の第1の静的ひずみを決定するステップと、
能動源に起因する前記少なくとも1つの場所のひずみの変動を検出するステップと、
前記能動源に起因する前記ひずみの変動が終わった後に、前記少なくとも1つの場所の第2の静的ひずみを決定するステップと、
前記第1の静的ひずみと前記第2の静的ひずみの差を決定するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記ひずみの変動の検出が、前記場所におけるひずみの高周波変動を検出することによって実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記能動源の前記相対強度が、ひずみの高周波変動に基づいて決定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記能動源の強度に基づき、第1の静的ひずみと第2の静的ひずみの差を正規化するステップをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第1のひずみと第2のひずみの差に基づいて、前記場所における地盤安定性の指標を決定するステップをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
地盤安定性の前記指標も、第1のひずみと第2のひずみの複数の差に基づいている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記能動源が、列車であり、前記分布型光センサが、前記列車が走る線路と関連付けられている、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記分布型光センサの長さに沿った複数の場所において前記方法を実行するステップをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の場所からの測定値を平均化するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
地盤安定性を決定するための光センシングシステムであって、
光ファイバと、
前記光ファイバに光学的に接続されて、前記光ファイバ中に光信号を送信して、前記光ファイバから出力される戻り光信号を検出するように構成されているインタロゲータであり、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されている、インタロゲータと、
を備える、光センシングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[01]本開示は、光センサ、特に光ファイバベースのセンサを利用する分布型音響センシングに関する。以下の開示は、そのようなセンサを用いて検出される能動源を利用して地盤安定性を決定することに特に焦点を当てている。
【背景技術】
【0002】
[02]ファイバ内のひずみの変化を介して、音響信号を含む、さまざまなパラメータを検出するための、光ファイバベースのセンサが知られている。分布型光センサには事前定義されたセンサ位置はないが、戻り信号の分析を使用して、ファイバの長さに沿った位相変化を推測し、よってそれらの戻り信号に影響を与えるファイバの特性を検出する。例えば、レイリー後方散乱を戻り信号として使用してもよい。
【0003】
[03]
図1は、一般に分布型音響センサ(DAS:Distributed Acoustic Sensor)として知られている従来の分布型光センサの概略図を示す。インタロゲータ(interrogator)が、プローブ光パルス11を測定ファイバ12の第1の端部中に発射する。測定ファイバ12は、センシングが必要とされる領域に敷設される。光センサの利点は、光ファイバの損失が少ないため、インタロゲータをセンシング場所から転置させることができることである。したがって、インタロゲータから測定領域への引き込み(lead-in)を提供するかなりの長さの測定ファイバ12があってもよい。
【0004】
[04]パルス11が光ファイバ内を伝搬すると、光ファイバ内の散乱部位によって光の一部が散乱される。その散乱光の一部は、光ファイバの開口数(numerical aperture)によって取り込まれ、インタロゲータ10に向かって伝搬して戻る。関心のある主要な散乱メカニズムはレイリー散乱であり、これにより散乱部位(「散乱体」)との弾性衝突により、伝播光と同じ周波数で後方散乱が生じる。
【0005】
[05]インタロゲータで後方散乱パルス14が受信される。インタロゲータにおける到着時間は、インタロゲータからファイバに沿った点までの往復距離に比例する。パルスは、距離が長くなるにつれて損失が増加するため、時間とともに減衰する。特定の時間において戻りパルス14をサンプリングすることによって、ファイバに沿った特定の位置からの後方散乱を決定することができる。光ファイバの妨害は、その物理的構造に(微視的レベルで)影響を与え、したがって後方散乱パルス14に影響を与える。このような変化は、ファイバを妨害する信号を推測するために使用できる。
【0006】
[06]
図2は、典型的なインタロゲータ10の概略図を示す。送信機20はプローブパルスを放出し、受信機21は、後方散乱パルスを検出するための光センサ及びサンプリングシステムを備える。光サーキュレータ22は、送信機20からのプローブパルスを測定ファイバ12に結合し、戻り後方散乱パルスを受信機21に結合する。
【0007】
[07]例示的な光センサは、国際公開第WO2018/134137号として公開された、PCT出願番号PCT/EP2018/050793に記載されている。
【0008】
[08]従来、光センサは、信号源についての知識無しで信号を検出する、受動的な方法で利用されていた。しかしながら、検出可能な信号の発生が予測できる場合には、信号源に関する情報を検出された信号と相関させて、センサからの付加的な情報を確認してもよい。
【発明の概要】
【0009】
[09]この概要は、以下の「詳細な説明」でさらに説明される概念の選択を簡略化された形式で紹介するために提供される。この「概要」は、特許請求された主題の主要な特徴又は本質的な特徴を識別することを意図したものではなく、また特許請求された主題の範囲を決定する際の補助として使用することを意図したものでもない。
【0010】
[10]分布型光センサを利用して地盤安定性を決定する方法であって、分布型光センサの長さに沿った少なくとも1つの場所の第1の静的ひずみを決定するステップと、能動源に起因する、少なくとも1つの場所のひずみの変動を検出するステップと、能動源に起因する、ひずみの変動が終わった後に、少なくとも1つの場所の第2の静的ひずみを決定するステップと、第1の静的ひずみと第2の静的ひずみの差を決定するステップとを含む、方法が提供される。
【0011】
[11]ひずみの変動の検出は、その場所におけるひずみの高周波変動を検出することによって実行してもよい。
【0012】
[12]能動源の相対強度は、ひずみの高周波変動に基づいて決定してもよい。
【0013】
[13]本方法には、能動源の強度に基づいて、第1の静的ひずみと第2の静的ひずみの差を正規化するステップをさらに含めてもよい。
【0014】
[14]本方法には、第1のひずみと第2のひずみの差に基づいて、その場所における地盤安定性の指標を決定するステップをさらに含めてもよい。
【0015】
[15]地盤安定性の指標は、第1のひずみと第2のひずみの複数の差に基づいてもよい。
【0016】
[16]能動源は列車であってもよく、分布型光センサは列車が走る線路に関連付けられている。
【0017】
[17]本方法には、分布型光センサの長さに沿った複数の場所でこの方法を実行するステップをさらに含めてもよい。
【0018】
[18]本方法には、複数の場所からの測定値を平均化するステップをさらに含めてもよい。
【0019】
[19]地盤安定性を決定するための光センシングシステムであって、光ファイバと、光ファイバに光学的に接続されて、光ファイバ中に光信号を送信して、光ファイバから出力される戻り光信号を検出するように構成されている、インタロゲータであり、本明細書に記載された方法を実行するように構成されている、インタロゲータとを備える、光センシングシステムも提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
[20]本発明の実施形態を、例として、以下の図面を参照して説明する。
【
図3】地盤監視システムに対する、ひずみ対時間のチャートである。
【
図4】能動源に対する、ひずみ対時間のチャートである。
【
図5】時間の経過に対する、ひずみのチャートである。
【
図7】地盤安定性を決定する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[21]本発明のさらなる詳細、態様及び実施形態を、次に、図面を参照して、例としてのみ説明する。図の要素は、簡潔でわかりやすくするために図示されており、必ずしも原文に比例して描かれていない。同様の参照符号が、理解を容易にするために、それぞれの図面に含まれている。
【0022】
[22]光センサは、光ファイバの特性に対する変化を決定することを可能にする。上記のように、分布型センサは、所定の離散的センサ位置を必要とせずに、ファイバに沿って連続的に(システムの分解能に従って)そのような決定を行うことを可能にする。通常、光センサが、光ファイバのひずみを推測するために使用される。ファイバ上のひずみは、ファイバのまわりの機械的環境の指標であり、それゆえ、ファイバの移動、又はファイバに加えられる力を推測するのに使用できる。光センシングシステムの周波数応答が、DCまで下がって与えられる場合には、ひずみの変化に加えて、静的ひずみを決定できる。
【0023】
[23]ひずみ変化の検出は、センシングファイバの移動を検出するために使用してもよく、例えば、地すべりを検出するために、センシングファイバを土地の区域の上又は中に敷設してもよい。
図3は、時間の経過に伴う(選択した場所での)ファイバのひずみを示している。領域30及び31では、ひずみの比較的小さな変化のみが見られ、これは時間の経過とともに自然に発生する地盤内の小さな移動に関連している可能性がある。これらの領域では、ひずみは本質的に静的である。しかしながら、領域32では、センシングファイバの移動、したがってひずみの変化を生じさせる、地すべりを示す、比較的短期間にわたる大きな変化がある。実際の移動は、移動速度を示す勾配を用いて、領域32の変化の間に検出することができる。領域30と31の間のオフセットは、ファイバ、したがってファイバのまわりの地盤の位置の変化を示唆する、移動の前後の静的ひずみの変化を指示している。静的変化は、動的変化から推測するか、或いは、センシングシステムが非常に低い周波数まで検出できるか、又は(絶対的、又は基準に対して相対的な)静的ひずみ(DC)を検出できる場合は、直接検出することもできる。
【0024】
[24]本開示において、「地盤」という用語は、センシングファイバを取り囲む環境を指して使用される。これは実際の地盤である場合もあるが、センシングファイバがその上/その中に取り付けられているか、又は機械的に関係づけられている、材料又は構造も含む場合もある。例えば、線路に沿ったセンシングファイバの文脈では、地盤はバラスト、レール、枕木(sleepers)、及び線路クリップ(track clips)を含み得、これらはすべて移動し、関連する安定性値を有する。道路の文脈では、地盤は周囲の地盤、基礎、及び/又は舗装路(tarmac)若しくは路面であり得る。したがって、一般に、「地盤」には、センシングファイバが能動源に応答して移動を検出できる、あらゆる態様が含まれる。
【0025】
[25]光センシングシステムの例は、DCまでの帯域幅及び適切な分解能を有するレイリー後方散乱ベースのシステムを詳述する、特許出願公開第WO2018/134137号に記載されている。
【0026】
[26]光センサの設置例では、センシングファイバを線路に沿って敷設してもよい。例えば、センシングファイバは、線路を支えるバラストの中、又はその上、或いは関連するケーブル導管又はチャネル内に配置してもよい。このような位置に取り付けられるとき、このセンシングシステムは、センサの機械的環境に関係するさまざまなパラメータの範囲を検出するのに、使用できる。定常状態の間、センサは、ひずみの変化を検出することにより、センサの全体的な環境移動を検出するのに使用できるが、ひずみの変化は小さく、比較的長い期間にわたりがちである。列車が線路に沿って通過するとき、センサは、列車による線路と周囲の材料の振動によって引き起こされる、ファイバのひずみの高周波変化を検出するのに使用することができる。これらの高周波変化は、列車と一緒に線路に沿って移動するため、線路に沿った列車の移動を監視し、ある時点での列車の位置を決定するのに使用することができる。
【0027】
[27]現在、高周波変化は、列車の通過前後の静的ひずみの変化に関連付けられることも明らかにされている。つまり、列車に起因する地盤の移動を示唆する、列車が通過する前後の静的ひずみのオフセットがあり得る。この静的ひずみの変化は、注意が必要な地盤の不安定性を示している可能性がある、列車に起因する地盤の移動を識別するために使用してもよい。
【0028】
[28]
図4は、センサに関連付けられた線路に沿って列車が通過中の時間に対するセンサファイバに沿った場所でのひずみのプロットの例を示す。この例では、列車は能動源を形成し、能動源は、領域40のセンサによって、ひずみの高周波変動、及びひずみの全体的変化として検出される。41の前と42の後の静的ひずみは、列車の通過による静的ひずみの変化を与える、静的ひずみに対する前後の値である。その静的ひずみの変化は、列車の通過によって引き起こされる環境(すなわち、線路床又はセンサが取り付けられている環境)の移動を示している可能性がある。
【0029】
[29]
図4は、列車が通過する際のひずみの高周波変動を示す。これらの変動の大きさと形態は、動的な地盤の移動に関する情報を提供するとともに、能動源に関する情報も提供することができる。例えば、列車がいくつの車輪セットを有するかを示すことができ、したがって列車の種類を決定できる。より大きい、高周波変化は、列車が通過した後の静的変化が少ない場合でも、地盤の安定性が低いことを示している可能性がある。一連のセンシングイベント(例えば、一連の列車)での高周波移動の大きさの増加は、時間の経過に伴う地盤の変化、又は劣化を示している可能性がある。列車が通過している間の静的値間のひずみ変化の勾配も、地盤の安定性に関する情報を提供する場合がある。
【0030】
[30]上記の例では、能動源に関する情報との相関が、決定できる情報を増加させ得る。例えば、列車の重量又は相対重量がわかっているか、又は決定できる場合には、列車が重いほどより多くの移動を生じさせると予想されるため、ひずみの変化の大きさを重量に正規化できる。
【0031】
[31]
図5は、列車の通過前、通過中、通過後の線路に関連付けられた、分布型センサによって行われた測定の例を示す。カラースケールは、時間=0での列車と比較した、ひずみの変化を示す。縦軸は時間を示し、横軸は距離を示す。列車はt=0で約1250mから出発して、時間が長くなるにつれてより高い距離値に移動する。
【0032】
[32]線路に沿った特定の場所でのひずみの変化は、チャートの上端から下端へ下る垂直線に沿った色の変化によって示される。各センサ場所(センサに沿った距離)からのひずみは、時間t=0でゼロ(
図6の白)に正規化される。線路に沿った各ポイントでの列車の到着は、(楕円形50で示される)カラーバーの頂部で示される。列車の通過後に静的ひずみに変化がなかった場合、列車が通過している間は暗い色になり、その下では白に戻ることが予想される。したがって、
図5の可視カラム(visible column)の頂部に追従する対角線が存在する。しかし、このように、列車通過後もひずみの変化が持続することがあり、列車の通過による地盤の長期的な妨害を示している。これらの長期的な変化は、
図4を参照して説明したオフセット/ランプ(ramp)の高さに相当する。
【0033】
[33]暗い領域は、地盤の移動が大きいことを示す。したがって、2000m付近の領域では、4000m付近の領域よりも各列車によって引き起こされる静的な移動が大きいと判定でき、これは、2000mの領域の地盤が不安定であることを示している可能性がある。さらに、例えば、2500m付近の赤い線は、ファイバの静的収縮を示している。したがって、列車は、ある領域でファイバの静的伸長を引き起こし、他の領域で静的収縮を引き起こすと結論付けることができる。
図6に示すように、一連の列車についてこのデータを(おそらく数か月や数年などの長期間にわたって)監視することを、地盤の安定性の長期的な傾向を示すのに使用することができる。同様に、少数の能動型センシングイベント(列車の通過)での大幅な変化は、地盤状態の急速な変化を指示している可能性があり、これも注目に値する。
【0034】
[34]
図6は、列車が各点を通過するときの静的ひずみの変化のプロット(
図5のランプの高さ)を示している。青は小さな変化を示し、赤は大きな変化を示す。データは、プロットされた2本の線の間を走る線路に関連付けられた分布型センサに関するものである。これらの線は、線路の位置と相関するように線路の長さに沿って整列されているが、見やすくするために線路に対して横方向にオフセットされている。円で囲んだ領域では、2018では移動量が比較的少なく、2020では移動量が多く(つまり、2018から2020の間でランプの高さが増加しており)、地盤安定性が低下したことを示している。この減少は、線路支持骨材(track support aggregate)の修理の必要性を明らかにした現場訪問によって確認された。したがって、開示されたシステムは、静的ひずみの変化を能動源イベント(この場合は、その場所を通過する列車)に関連付けることによって、地盤安定性の指標を提供することが確認される。
【0035】
[35]したがって、このデータは、列車が周囲の地盤をプロービングするための能動源として機能し、そのプロービング(probing)による変化がセンサによって検出され、地盤安定性の指標を与えるようにされることを示している。センサシステムは、光ファイバに存在する縦方向のひずみを測定するが、これは通常、光ファイバのまわりの環境の横方向のたわみ(deflection)によって誘発される。ただし、各たわみが異なる方向になる可能性があり、ひずみ測定値からどの方向かを決定できないため、時間の経過に伴うひずみの変化を合計して全体的な移動を得ることはできない。したがって、ひずみは地盤の安定性の指標であり、絶対的な地盤移動の尺度ではない。
【0036】
[36]地盤の受動的な測定では、他のパラメータに対する交差感度(cross-sensitivity)のために、地盤安定性の指標を提供することができない場合がある。例えば、温度の変化がひずみ測定に影響を与える可能性がある。さらに、地盤安定性の低下は、地盤の移動に直接つながらない可能性があるため、受動型センサによって感知されない可能性がある。列車などの能動源によって地盤がプロービングされた場合にのみ、安定性の低下が実際の地盤の移動につながる可能性がある。能動源の周期が短いということは、静的ひずみ測定に影響を与える可能性のある他のパラメータの変化が無視できると予想されることを意味する。開示されたシステムは、したがって、受動型センサによって検出することができないパラメータの測定を可能にする。
【0037】
[37]地盤安定性に加えて、ランプ高さは、他のパラメータ、特に能動源のパラメータによっても影響を受ける可能性がある。例えば、列車が重くなったり大きくなったりすると、地盤の移動が大きくなり、それゆえにひずみの変化が大きくなることが予想される。列車のサイズ又は重量に基づいてランプ高さを正規化すると、そのような依存関係がなくなり、それゆえにさまざまな能動源イベントを比較して地盤安定性を決定する機能が向上する。
【0038】
[38]列車が通過するときに発生するひずみの高周波変動は、ランプ高さを正規化するために使用される列車の重量又はサイズに関する情報を推測するために使用してもよい。例えば、列車の車輪セットの数は、一定の場所におけるひずみの振動数から決定され得る。一般的な指標として、静的変化は、<0.2Hzの周波数における静的変化であり、動的変化又は高周波変化は、>0.2Hzの周波数の変化である。車輪セット信号の数、間隔、相対的強度は、列車の構成とタイプ、したがって推定重量と相関させることができる。高周波変化の振幅は、列車の重量を示す場合もある。列車間の相対的な重量を決定する方が簡単な場合があるため、絶対重量の決定は必要でない場合がある。相対重量により、変動がより大きなプローブ(列車の重量)ではなく地盤の安定性の変化に帰するように、連続するランプの高さを正規化することが可能になる。
【0039】
[39]
図7は、地盤安定性を決定する方法の例を示す。本方法は、線路の長さに沿った地盤の移動によるひずみの変化を検出するために配置された分布型センサを利用する応用のためのものである。ステップ70では、注目領域の長さに沿った注目点における静的ひずみが決定される。ステップ71では、検出されたひずみにおける高周波変動の存在によって、注目点を通過する列車の通過が検出される。ステップ72では、注目点を通過する列車の通過が完了し、注目点における静的ひずみが決定される。ステップ73では、列車の通過によって生じるステップ70と72の間の静的ひずみの変化が決定される。ステップ74では、静的ひずみの変化が、列車の相対重量に基づいて正規化され、これは、ステップ71における高周波変動から決定されてもよい。ステップ75では、注目点における静的ひずみの複数の正規化された変化を比較して、時間の経過に伴う地盤安定性の変化が決定される。このように、
図7の方法は、時間の経過に伴う地盤安定性の変化を決定することを可能にする。
【0040】
[40]複数の距離(センサ/チャネル)からのデータを蓄積し、集合として処理して、さらなる情報を提供してもよい。例えば、静的ひずみの集合の平均をとって、領域の全体的な移動を決定してもよい。交互する正のひずみと負のひずみを合計又は平均化してほぼゼロにすると、個々の測定値が高い場合でも、その領域の地盤安定性に全体的な問題がないことを示すことができる。さらに、新しく敷設されたセンシングファイバは、最初は、時間の経過による正味の収縮によって示される、物理的環境中に弛緩していることがある。地盤安定性の変化に起因しないこの変化を補償するために、データ処理を使用してもよい。
【0041】
[41]
図7の方法では、列車の通過は、ステップ71で述べた高周波ひずみ変化を利用しなくてもよい、任意の適切な方法によって決定されてもよい。同様に、列車の相対重量は、任意の適切な手段によって決定されてもよく、又は静的変化は相対重量によって正規化されなくてもよい。本明細書では、静的ひずみの変化を正規化するためのパラメータ例として重量を使用するが、能動源の性質に応じて、能動源の強度を示す任意のパラメータを利用してもよい。他の例としては、(速度の2乗に比例する)運動エネルギー又は列車が加速又は減速している場合には、力積(impulse)(質量×一定の時間間隔における速度の変化)であってもよい。
【0042】
[42]明らかなように、
図7の方法は、センサの長さに沿った複数の点に適用して、
図6に示すデータのような、その長さに沿った地盤安定性の尺度を形成することができる。データの分解能は、静的ひずみを検出するときにセンサシステムによって提供される分解能によって決まる。
【0043】
[43]上記の開示は、主に線路に関連する地盤の移動と、能動源としての列車の利用に関してなされている。ただし、分布型センサを備えた能動源を使用して地盤安定性の変化を検出するという原理は、他の広い範囲の環境において利用できる。例えば、センサを、道路又は滑走路に沿って設置して、車両が、能動源を提供してもよい。列車の例と同様に、車両の通過前後の静的ひずみの変化を使用して、時間の経過に伴う地盤安定性を監視できる。本開示は、地盤を妨害して静的ひずみの変化を生じさせる、任意の能動源の使用を企図している。他の例としては、気候変化(temperate changes)又は潮汐運動が挙げられる。
【0044】
[44]上記の説明は、主として純粋に分布型のセンサを参照して行われている。しかしながら、これらの技術及び装置は、ファイバに沿って定義された場所において特定の戻り信号を生成するための反射器を有する、システムにも適用され得る。このことは、測定ファイバに沿った定義された場所での測定ファイバの感度を高めるために望ましい場合がある。
【0045】
[45]理解されるように、本明細書に記載の方法は、本明細書に上述されたように、インタロゲータユニットによって実行され得る。インタロゲータユニットは、ハードウェア、又は適宜にハードウェアとソフトウェアとで実装され得る。
【0046】
[46]本発明をいくつかの実施形態に関係して説明したが、本明細書に記載される特定の形態に限定されることを意図するものではない。むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。さらに、特徴は特定の実施形態に関係して説明されるように見えるかもしれないが、当業者は、記載された実施形態のさまざまな特徴が本発明に従って組み合わされ得ることを認識するであろう。特許請求の範囲において、「備える(comprising)」という用語は、他の要素又はステップの存在を排除するものではない。
【0047】
[47]さらに、請求項における特徴の順序は、特徴が実行されなければならない特定の順序を意味するものではなく、特に、方法の請求項における個々のステップの順序は、ステップがこの順序で実行されなければならないことを意味しない。むしろ、ステップは、任意の適切な順序で実行され得る。さらに、単数形の参照は複数を除外しない。したがって、「a」、「an」、「first」、「second」などへの言及は、複数を排除するものではない。特許請求の範囲において、「備える(comprising)」又は「含む(including)」という用語は、他の要素の存在を排除するものではない。
【国際調査報告】