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特表2024-505984車両の駆動モータを動作させる方法およびモータ制御装置
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  • 特表-車両の駆動モータを動作させる方法およびモータ制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】車両の駆動モータを動作させる方法およびモータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/20 20060101AFI20240201BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B60W30/20
B60L15/20 J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547240
(86)(22)【出願日】2021-11-25
(85)【翻訳文提出日】2023-08-03
(86)【国際出願番号】 EP2021082915
(87)【国際公開番号】W WO2022174949
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】102021201534.4
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】コシュリッヒ,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】キュール,ユリアン
(72)【発明者】
【氏名】エルデン,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ガイガー,ティナ
(72)【発明者】
【氏名】リーガー,リー
(72)【発明者】
【氏名】ライベリング,フランク
【テーマコード(参考)】
3D241
5H125
【Fターム(参考)】
3D241AA48
3D241AC01
3D241AD02
3D241AE03
3D241CA01
3D241CA08
5H125AA01
5H125BA00
5H125CA01
5H125EE08
5H125EE09
(57)【要約】
【課題】
本発明は、パワートレイン(106)を介して車両(100)の少なくとも1つの車輪(108)と結合された駆動モータ(104)を動作させる方法に関する。
【解決手段】
駆動モータ(104)がパワートレイン(106)の動的モデル(130)を使用して制御され、モデル(130)は、パワートレイン(106)を介して伝達される駆動トルク(114)とパワートレイン(106)の変形(116)との間の関係を表す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワートレイン(106)を介して車両(100)の少なくとも1つの車輪(108)と結合された駆動モータ(104)を動作させる方法であって、前記駆動モータ(104)が前記パワートレイン(106)の動的モデル(130)を使用して制御され、前記モデル(130)が前記パワートレイン(106)を介して伝達される駆動トルク(114)と前記パワートレイン(106)の変形(116)との間の関係を表す、方法。
【請求項2】
前記モデル(130)は、前記変形(116)として、前記パワートレイン(106)の前記駆動トルク(114)に依存したねじり(118)を表し、前記駆動モータ(104)は、前記ねじり(118)を考慮して制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記駆動モータ(104)の駆動回転数(110)が、回転数設定値(132)および前記ねじり(118)を使用して制御される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記モデル(130)は、前記変形(116)として、前記駆動トルク(114)に依存した前記パワートレイン(106)のギアバックラッシュ(120)を表し、前記駆動モータ(104)は、前記駆動トルク(114)のゼロ点交差で前記ギアバックラッシュ(120)を考慮して制御される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記駆動モータ(104)の駆動回転数(110)は、前記ゼロ点交差で、回転数設定値(132)および前記ギアバックラッシュ(120)を使用して制御される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記モデル(130)は、前記駆動トルク(114)に依存した前記駆動モータ(104)のための少なくとも1つの制御条件(138)をさらに表し、前記駆動モータ(104)は、前記駆動トルク(114)が変化した場合に、前記モデル(130)から読み取られる制御条件(138)を使用して制御される、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記モデル(130)から、前記駆動トルク(114)の変化に依存した待ち時間(140)が制御条件(138)として読み取られ、前記駆動モータ(104)が、前記待ち時間(140)の分だけ遅延して制御される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
駆動モータ(104)のためのモータ制御装置(102)であって、前記駆動モータ(104)と結合されたパワートレイン(106)の動的モデル(130)が前記モータ制御装置(102)に保存され、前記モータ制御装置(102)は、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法を対応する装置で実行する、実現する、および/または制御するように形成されている、モータ制御装置。
【請求項9】
コンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラム製品を実行する場合に、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法を実行する、実現する、および/または制御するようプロセッサに指示するように設定されている、コンピュータプログラム製品。
【請求項10】
機械可読記憶媒体であって、請求項9に記載のコンピュータプログラム製品が記憶される、機械可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワートレインを介して車両の少なくとも1つの車輪と結合された駆動モータを動作させる方法、および対応するモータ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両は、駆動スリップ制御(Antriebsschlupfregelung)を有することができる。車両の少なくとも1つの車輪の駆動スリップが多すぎる場合、駆動スリップ制御が車輪の駆動トルクを低減または制限することができる。スリップは、車輪と結合された回転数センサによって検出され、回転数センサの回転数信号に認識できる。この認識に応答して、車輪と結合された車両の駆動モータを制御してそのトルクを減少することができる。代替的または補足的に、車輪のブレーキを制御して、駆動トルクとは反対に作用するブレーキトルクによって車輪を制動することができる。応答時間をより短くして制御を向上させるため、駆動モータの駆動運動にもとづくコントローラをモータ制御装置に設置することができる。これを分散型トラクション制御(verteilte Traktionsregelung)と呼ぶことができる。
【発明の概要】
【0003】
このことを背景として、本明細書中で提示される手法を用いて、パワートレインを介して車両の少なくとも1つの車輪と結合された駆動モータを動作させる方法、および対応するモータ制御装置、さらには対応するコンピュータプログラム製品および機械可読記憶媒体が独立請求項により提示される。本明細書中に提示される手法の有利な発展形態および改良形態は以下の記載から明らかになり、従属請求項に記載される。
【0004】
本発明の実施形態は、有利にも、駆動モータと車輪との間に配置されたパワートレインによる車輪の回転運動の影響を、駆動モータの制御を変化させることによって補償することを可能にできる。特に、そのような駆動スリップ制御を短い信号伝搬時間で実現することができる。駆動モータの駆動運動を検出することができる。車輪の回転運動へのパワートレインの影響は、予め記憶されたモデルから読み取ることができる。駆動運動に影響を及ぼすために、駆動モータの駆動トルクをパワートレインの影響の分だけ直接補償して制御することができる。
【0005】
パワートレインを介して車両の少なくとも1つの車輪と結合された駆動モータを動作させる方法が提示され、駆動モータは、駆動モータのモータ制御装置に保存されたパワートレインの動的モデルを使用して制御され、モデルは、パワートレインを介して伝達される駆動トルクとパワートレインの変形との間の関係を表す。
【0006】
本発明の実施形態に関する思想は、とりわけ、以下に記載される着想と認識にもとづくものとみなされ得る。
【0007】
駆動モータは、内燃機関または電気モータであり得る。駆動モータは、特に、駆動モータのロータ位置が実質的に常に既知であり得る電気モータであり得る。このロータ位置を駆動モータの駆動トルクを制御するために使用することができる。ロータ位置は、例えばロータ位置センサを使用して検出することができる。制御において、駆動モータが所望の駆動回転数で回転するように駆動モータの駆動トルクを制御することができる。
【0008】
車両のパワートレインは、1つまたは複数のシャフトとトランスミッションを備えることができる。パワートレインは、車両の少なくとも1つの車輪に駆動モータの回転運動を伝達するように形成されている。パワートレインは、車両の少なくとも2つの車輪に回転運動を伝達するために少なくとも1つのデファレンシャルギアも備えることができる。パワートレインの要素は、わずかにフレキシブルであり、パワートレインを介して駆動トルクが伝達されることにより少しだけ変形し得る。要素間には、例えばわずかな遊びも存在することがあり、それによって要素の相対運動が可能になる。
【0009】
パワートレインのモデルは、駆動トルクに依存したパワートレインの変形もしくは遊びを表すことができる。モデルは、コントロールされた条件下で検出された支持点にもとづくことができ、駆動モータの動作領域にわたる変形を表すことができる。支持点間を補間することができる。代替的または補足的に、変形を式としてモデルに保存することもできる。試験および/またはシミュレーションにもとづいてモデルを算出することができる。さらに、解析的および/または数値的計算を使用してモデルを算出することができる。その場合、モデルは、駆動トルクが上昇する場合と駆動トルクが低下する場合の変形を表すことができる。
【0010】
モデルは、駆動トルクに依存したパワートレインのねじり(Torsion)を変形として表すことができる。変形もしくはねじりは、駆動トルクに依存して線形的または非線形的に変化し得る。ねじりを考慮して駆動モータを制御することができる。ねじりは、駆動モータにおけるパワートレインの入力角位置と車輪におけるパワートレインの出力角位置との間の差を表すことができる。ねじりをねじれ(Verdrehung)と呼ぶこともできる。ねじりによって、加速駆動トルク(beschleunigendes Antriebsmoment)では、駆動モータは車輪にほんの少し先行し得る。制動駆動トルク(bremsendes Antriebsmoment)では、駆動モータは車輪にほんの少し後行し得る。制動駆動トルクをドラッグトルク(Schleppmoment)と呼ぶことができる。加速駆動トルクと制動駆動トルクは逆の符号を有することができる。
【0011】
駆動モータの駆動回転数を回転数設定値とねじりを使用して制御することができる。回転数設定値は、車両のESP(電子安定化プログラム)の制御装置によって提供され得る。ねじりによって、加速時に駆動回転数が回転数設定値よりわずかに高くなる可能性がある。制動時には駆動回転数が回転数設定値よりわずかに低くなる可能性がある。
【0012】
モデルは、駆動トルクに依存してパワートレインのギアバックラッシュを変形として表すことができる。駆動モータを、駆動トルクのゼロ点交差時にギアバックラッシュを考慮して制御することができる。ギアバックラッシュは、はめあいと製造公差とによって生じ得る。ギアバックラッシュは、実質的に駆動トルクを伝達することができない回転運動の角度量であり得る。ギアバックラッシュがないと伝動装置が損傷される可能性がある。ゼロ点交差は、駆動トルクの符号入れ替わりであり得る。駆動トルクは、ゼロ点交差時に、加速駆動トルクから制動駆動トルクに変わることができ、またその逆もまたしかりである。ギアバックラッシュによって、駆動モータは、角度量があることで抵抗に逆らわないか、またはわずかな抵抗のみに逆らって作動できる。
【0013】
ゼロ点交差時に、回転数設定値およびギアバックラッシュを使用して駆動回転数を制御することができる。ゼロ点交差時、駆動回転数をギアバックラッシュの分だけ回転数設定値からずらして制御することができる。ギアバックラッシュを駆動回転数に算入することができる。
【0014】
モデルは、さらに、駆動トルクに依存した駆動モータのための少なくとも1つの制御条件(Anregelbedingung)を表すことができる。駆動トルクが変化した場合、モデルから読み取られる制御条件を使用して駆動モータを制御することができる。制御条件は、例えば駆動トルクの最大上昇率であり得る。回転数設定値が駆動トルクの大きい上昇を必要とする場合、パワートレインおよび/または駆動モータを保護するために駆動トルクの上昇率を制御条件に制限することができる。
【0015】
誤制御を回避するために、制御条件として、駆動トルクの変化に依存した待ち時間をモデルから読み取ることができる。駆動モータを待ち時間の分だけ遅延させて制御することができる。例えば、駆動トルクのゼロ点交差時に待ち時間を待つことができる。待ち時間の後、パワートレインにねじりおよび/またはギアバックラッシュが生じている可能性がある。待ち時間の後、駆動トルクを少なくとも1つの車輪に直接伝達することができる。
【0016】
方法は、例えばソフトウェアまたはハードウェア、あるいはソフトウェアとハードウェアの混合形態で、例えばモータ制御装置に実装され得る。
【0017】
本明細書中に提示される手法は、さらに、本明細書中に提示される方法の変形形態のステップを対応する装置で実行する、制御する、もしくは実現するように形成されたモータ制御装置を提供する。
【0018】
モータ制御装置は、信号またはデータを処理するための少なくとも1つの計算ユニットと、信号またはデータを記憶するための少なくとも1つの記憶ユニットと、通信プロトコルに埋め込まれたデータを読み取るまたは出力するための少なくとも1つのインタフェースおよび/または通信インタフェースとを備える電気機器であり得る。計算ユニットは、例えば信号プロセッサ、いわゆるシステムASIC、またはセンサ信号を処理する、およびセンサ信号に依存してデータ信号を出力するためのマイクロコントローラであり得る。記憶ユニットは、例えばフラッシュメモリ、EPROMまたは磁気記憶ユニットであり得る。記憶ユニットには、パワートレインの動的モデルを保存することができる。インタフェースは、センサからのセンサ信号を読み取るためのセンサインタフェースとして、および/またはアクチュエータにデータ信号および/または制御信号を出力するためのアクチュエータインタフェースとして形成され得る。通信インタフェースは、データをワイヤレスで、および/または有線で読み取る、または出力するように形成され得る。インタフェースは、例えば他のソフトウェアモジュールの他にマイクロコントローラに存在するソフトモジュールであってもよい。
【0019】
プログラムコードを有するコンピュータプログラム製品またはコンピュータプログラムも有利であり、プログラムコードは半導体メモリ、ハードディスクメモリ、または光学メモリなどの機械可読担体または記憶媒体に記憶させることができ、かつ特にプログラム製品またはプログラムがコンピュータまたは装置で実行される場合に、上記の実施形態の1つによる方法のステップを実行する、実現する、および/または制御するために使用される。
【0020】
本発明の可能な特徴および利点のいくつかは、本明細書中で異なった実施形態との関連で説明されることに言及しておく。当業者は、本発明のさらなる実施形態に到達するために、モータ制御装置と方法の特徴を適切に組み合わせる、適合させる、または交換することができることを認識する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施例によるモータ制御装置を備える車両の図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照しながら本発明の実施形態が説明されるが、図面も説明も本発明を限定するものと解釈されるべきでない。
【0023】
図は、単に模式的であり、縮尺通りではない。同じ参照符号は同じまたは機能的に同じ特徴を示す。
【0024】
図1は、一実施例によるモータ制御装置102を備える車両100の図を示す。車両100は駆動モータ104を有する。駆動モータ104は、パワートレイン106を介して車両100の少なくとも1つの車輪108と結合されている。パワートレイン106は、パワートレイン106の出力回転数112への駆動モータ104の駆動回転数110の固定伝達比を有することができる。パワートレイン106は、可変伝達比を有することもできる。パワートレイン106は、駆動モータ104の駆動トルク114によって少なくとも部分的に弾性変形される。パワートレイン106の変形116によって、駆動回転数110は出力回転数112にわずかに先行する。変形116は、例えばパワートレイン106のねじり118であり得る。変形116は、パワートレイン106のギアバックラッシュ120でもあり得る。
【0025】
駆動モータ104がパワートレイン106を介して個々の車輪108と直接結合される場合、出力回転数112は、車輪108の車輪回転数122に固定的に対応する。パワートレイン106が、デファレンシャル126を有する車両100のアクスル124を備える場合、出力回転数112は、アクスル124の軸回転数128に固定的に対応する。軸回転数128は、アクスル124の車輪108の車輪回転数122の平均値に固定的に対応する。
【0026】
モータ制御装置102は、パワートレイン106の動的モデル130を使用して駆動モータ104を制御する。モデル130は、駆動モータ104の駆動トルク114とパワートレイン106の変形116との間の関係を表す。
【0027】
モータ制御装置102は、車両100のESP制御装置134から回転数設定値132を読み取る。モータ制御装置102において、駆動トルク114は、駆動回転数110が回転数設定値132に従うように制御される。しかし駆動トルク114が大きくなることによってねじり118も大きくなる。一実施例では、回転数設定値132に対応する出力回転数112を達成するために、駆動回転数110の目標値136がねじり118の分だけ引き上げられる。その際、パワートレイン106の伝達比が考慮される。
【0028】
駆動トルク114がゼロ点交差を有し、すなわち、例えば正の駆動トルク114から負の駆動トルク114に変わる場合、ねじり118は小さくなる。しかしゼロ点交差でギアバックラッシュ120が生じている。一実施例では、駆動回転数110の目標値136は、ゼロ点交差でギアバックラッシュ120の分だけ補正される。
【0029】
一実施例では、モデル130は、駆動トルク114に依存した駆動モータ104のための制御条件138を含む。制御条件138は、例えば駆動トルク114のゼロ点交差での待ち時間140である。駆動回転数110は、ゼロ点交差後に待ち時間140によって時間遅延されて引き上げられる。待ち時間140は、変更された条件に適合するための時間をパワートレイン106に与える。待ち時間140の経過後、駆動モータ104をロバストに制御することができ、駆動回転数110を回転数設定値132に直接追従させることができる。
【0030】
換言すると、分散型トラクション制御でのロバストな制御が提示される。
【0031】
分散型制御を用いる駆動スリップ制御では、異なった制御装置間での通信時間にもとづく経過時間損失なしに制御できるようにするために、電気駆動装置または内燃機関のモータ制御器に設置された高速のコントローラが使用される。その場合、状況に応じて最適化されたコントローラの目標値の設定がESPから行われる。
【0032】
従来の駆動スリップ制御では、駆動スリップを決定するために車輪回転数が使用される。これに対して、分散型トラクション制御では、車輪回転数の代わりにモータの実回転数が使用され、モータ制御装置において目標モータ回転数と比較される。目標回転数を超えると、コントローラによって駆動トルクが低減され、このことは、異なった制御装置間の通信時間がなくなることによって、制御の質をより高くしてより速い制御を可能にする。
【0033】
モータは、通常、デファレンシャルとシャフトを介して車輪と接続される。これに代えて、車輪ごとに1つのモータを、シャフトを介して車輪と接続することもできる。その場合、接続要素がギアバックラッシュまたはねじりなどの不都合な特性を有し、それにより比例係数を用いてモータ回転数を車輪速度に簡単に換算できない。駆動車輪が過度に高い駆動スリップを有しないとしても、接続要素の特性によって、妨害的な、または過度に敏感な駆動トルク低減が起こるほどモータ回転数が増加する可能性がある。
【0034】
本明細書中で提示される手法によって、敏感に反応する(empfindlich)駆動トルクの低減と、その結果生じる(resultierendem)トラクション損失が回避される。そのために、モータと車輪との間の機械的接続の特性が考慮される。
【0035】
例えば、シャフトのねじり剛性は、駆動トルクが増加した場合にねじれ角度を増大させ、その結果、一定の駆動トルクと比較してモータ回転数がより高くなる。さらに、特に駆動トルクのゼロ点交差でギアバックラッシュが生じている。これは、車輪速度が車輪スリップの同様の上昇を有することなしに、モータ回転数を短時間上昇させる。モータと車輪との間の機械的接続のこれらの特性は、通信のレイテンシ時間(Latenzzeit)の影響を受けないようにするためにモータ制御装置に実装された状況依存モデルによって表される。
【0036】
例えば目標モータ回転数を引き上げることによって、ねじりを補償することができる。代替的または補足的に、ギアバックラッシュをロバストな制御条件によって補償することができる。
【0037】
ギアバックラッシュとねじりによって引き起こされる、従来の分散型トラクション制御装置の過度に敏感に反応する制御を回避することができる。分散型制御の利点は引き続き保たれ、それによってより高い質の制御が達成される。
【0038】
本明細書中で提示される手法では、モータトルクの動的上昇、またはモータトルクのゼロ点交差で、一定のモータトルクと比較してより遅い制御が行われる。
【0039】
最後に、「有する」、「含む」等々の用語は、他の要素またはステップを排除せず、単数形の用語は、複数を排除するものではないということに言及しておく。請求項の参照符号は、限定するとみなされてはならない。
【符号の説明】
【0040】
100 車両
102 モータ制御装置
104 駆動モータ
106 パワートレイン
108 車輪
110 駆動回転数
114 駆動トルク
116 変形
118 ねじり
120 ギアバックラッシュ
130 モデル
132 回転数設定値
138 制御条件
140 待ち時間
図1
【国際調査報告】