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特表2024-506027亜鉛含有コーティング上にクロム含有不動態化層を堆積させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】亜鉛含有コーティング上にクロム含有不動態化層を堆積させる方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 22/30 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
C23C22/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547482
(86)(22)【出願日】2022-02-04
(85)【翻訳文提出日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 EP2022052791
(87)【国際公開番号】W WO2022167624
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】21155558.6
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511188635
【氏名又は名称】アトテック ドイチェランド ゲーエムベーハー ウント コ カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン・ハーン
(72)【発明者】
【氏名】カトリン・クリューガー
【テーマコード(参考)】
4K026
【Fターム(参考)】
4K026AA02
4K026AA07
4K026AA11
4K026AA22
4K026BA08
4K026BB08
4K026CA13
4K026CA18
4K026CA19
4K026CA37
4K026CA38
4K026DA01
(57)【要約】
本発明は、亜鉛含有コーティング上にクロム含有不動態化層を堆積させる方法に関しており、亜鉛含有コーティングは、Fe、Sn、Mn、又はそれらの混合物を追加的に含む。この方法は、不動態化組成物の全体積に対して0.001mg/L~200mg/Lの、非置換アゾール化合物、置換アゾール化合物、少なくとも1つのメルカプト基を有する非置換脂肪族有機酸、少なくとも1つのメルカプト基を有する置換脂肪族有機酸、それらの塩及び混合物からなる群から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤を含む、不動態化組成物を利用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛含有コーティング上にクロム含有不動態化層を堆積させる方法であって、
(a)亜鉛含有コーティングを含む基材を用意する工程、
(b)クロム含有不動態化層を堆積させるための不動態化組成物を用意する工程であって、組成物が、
(i)三価クロムイオン;
(ii)少なくとも1種の腐食抑制剤とは異なる、三価クロムイオンのための少なくとも1種の錯化剤;並びに
(iii)不動態化組成物の全体積に対して0.001mg/L~200mg/Lの、非置換アゾール化合物、置換アゾール化合物、少なくとも1つのメルカプト基を有する非置換脂肪族有機酸、少なくとも1つのメルカプト基を有する置換脂肪族有機酸、それらの塩及び混合物からなる群から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤
を含む、工程;並びに
(c)クロム含有不動態化層が亜鉛含有コーティング上に堆積するように、前記基材を前記不動態化組成物と接触させる工程
を含み、前記亜鉛含有コーティングは、Fe、Sn、Mn又はそれらの混合物を追加的に含む、方法。
【請求項2】
前記亜鉛含有コーティングが実質的にニッケルのない、好ましくは含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記亜鉛含有コーティングが、Fe、Sn、又はそれらの混合物、好ましくはFeを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記不動態化組成物中に、(iii)が、不動態化組成物の全体積に対して、0.005mg/L~180mg/Lの範囲、好ましくは0.01mg/L~160mg/Lの範囲、より好ましくは0.1mg/L~150mg/Lの範囲、更により好ましくは1mg/L~135mg/Lの範囲、まだ更により好ましくは2mg/L~120mg/Lの範囲、最も好ましくは3mg/L~110mg/Lの範囲の全濃度を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記不動態化組成物中に、(iii)が、不動態化組成物の全体積に対して、0.01mg/L~150mg/Lの範囲、好ましくは0.05mg/L~120mg/Lの範囲、より好ましくは0.1mg/L~100mg/Lの範囲、更により好ましくは0.5mg/L~80mg/Lの範囲、まだ更により好ましくは1mg/L~50mg/Lの範囲、最も好ましくは2mg/L~25mg/Lの範囲の全濃度を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記不動態化組成物中に、(iii)が、不動態化組成物の全体積に対して、0.001mg/L~9.9999mg/Lの範囲、好ましくは0.01mg/L~9.9mg/Lの範囲、より好ましくは0.1mg/L~9.8mg/Lの範囲、更により好ましくは0.5mg/L~9.7mg/Lの範囲、まだ更により好ましくは0.8mg/L~9.6mg/Lの範囲、最も好ましくは1mg/L~9.5mg/Lの範囲、更に最も好ましくは2mg/L~9.4mg/Lの範囲の全濃度を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記不動態化組成物において、前記置換アゾール化合物、それらの塩及び混合物が、アミノ、ニトロ、カルボキシ、ヒドロキシ、スルホネート、及びチオールからなる群から選択される1種又は複数の置換基を独立して含み、好ましくは置換基がチオール基である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記不動態化組成物において、前記非置換及び置換アゾール化合物、それらの塩及び混合物が、モノアゾール、ジアゾール、トリアゾール、及びテトラゾール、好ましくはジアゾール及びトリアゾール、最も好ましくはトリアゾールからなる群から独立して選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記不動態化組成物において、前記非置換及び置換アゾール化合物、それらの塩及び混合物が、1,2,4-トリアゾールからなる群から独立して選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記不動態化組成物において、前記置換アゾール化合物、それらの塩及び混合物が、少なくともメルカプトトリアゾール、好ましくは少なくとも3-メルカプト-1,2,4-トリアゾールを独立して含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記不動態化組成物において、前記少なくとも1つのメルカプト基を有する非置換脂肪族有機酸、それらの塩及び混合物が、少なくとも3-メルカプトプロピオン酸及び/又はそれらの塩を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記不動態化組成物において、前記三価クロムイオンのための少なくとも1種の錯化剤が、モノカルボン酸、ジカルボン酸、それらの塩、ハロゲンイオン、及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、少なくとも1種のジカルボン酸及び/又はそれらの塩を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記不動態化組成物において、前記三価クロムイオンのための少なくとも1種の錯化剤が、非置換モノカルボン酸、ヒドロキシル置換モノカルボン酸、アミノ置換モノカルボン酸、非置換ジカルボン酸、ヒドロキシル置換ジカルボン酸、アミノ置換ジカルボン酸、それらの塩、ハロゲンイオン、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記不動態化組成物中に、前記三価クロムイオンのための少なくとも1種の錯化剤が、不動態化組成物の全質量に対して、0.05wt%~15wt%、好ましくは0.1wt%~10wt%、より好ましくは0.2wt%~9wt%、更により好ましくは0.5wt%~8wt%、最も好ましくは0.8wt%~7wt%の範囲の全濃度を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記不動態化組成物が、
(v)鉄イオンを、不動態化組成物の全体積に対して、0mg/L~2000mg/Lの範囲、好ましくは0mg/L~500mg/Lの範囲、より好ましくは0mg/L~300mg/Lの範囲、最も好ましくは0mg/L~250mg/Lの範囲、更に最も好ましくは0mg/L~200mg/Lの範囲の全濃度で、
更に含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛含有コーティング上にクロム含有不動態化層を堆積させる方法に関しており、亜鉛含有コーティングは、Fe、Sn、Mn、又はそれらの混合物を追加的に含む。この方法は、不動態化組成物の全体積に対して0.001mg/L~200mg/Lの、非置換アゾール化合物、置換アゾール化合物、少なくとも1つのメルカプト基を有する非置換脂肪族有機酸、少なくとも1つのメルカプト基を有する置換脂肪族有機酸、それらの塩及び混合物からなる群から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤を含む、不動態化組成物を利用する。
【背景技術】
【0002】
腐食性環境の影響から金属基材を保護するための様々な方法が、従来技術で知られている。例えば、金属又は金属合金の保護コーティングが金属基材に施され、これは広く使用され、十分に確立された方法である。
【0003】
こうした保護コーティングの中で、金属基材(特に鉄基材)上に、亜鉛コーティング又は追加的にニッケルを含む亜鉛含有コーティング(すなわち、それぞれ亜鉛及び亜鉛-ニッケル亜鉛めっき層)を堆積させることが、最も優れたアプローチであると思われる。
【0004】
追加的にニッケルを含む亜鉛含有コーティングでは、化学元素ニッケルは必須である。しかしそれぞれの亜鉛めっき組成物で利用されるニッケル及びニッケルイオンは、環境及び健康に有害である。従って、ニッケルがない代替保護コーティングを提供するという継続的要求が存在している。有望な代替保護コーティングは、例えば鉄を更に含む亜鉛含有コーティングである。
【0005】
通常、こうしたコーティングは、いわゆる化成皮膜(conversion coating)(しばしば不動態化層とも呼ばれる)によって追加的に保護(後処理)される。こうした化成皮膜は、通常は、保護コーティングを化成処理(conversion treatment)溶液(すなわち、不動態化組成物)と反応させた結果としての不溶性化合物を含む。
【0006】
多くの場合、不動態化組成物は、酸性溶液中に三価のクロムイオンを含む。不動態化プロセス中に、保護コーティングはわずかに溶解し、金属イオン、例えば、亜鉛イオンが放出される。次には、これらの金属イオンは不動態化組成物中の化合物と反応する。例えば、亜鉛コーティング又はニッケルを有する亜鉛含有コーティングがこうした組成物と接触すると、いくらかの亜鉛及び/又はニッケルは溶解して、それぞれそれらのイオンを形成する。電流を流すことなく、水酸化クロム(III)不動態化層又はμ-オキソ若しくはμ-ヒドロキソ架橋クロム(III)不動態化層が、保護コーティングの表面上に堆積する。その結果、それぞれの不動態化層が保護コーティング上に得られる。
【0007】
実際のところ、鉄を有する亜鉛含有コーティング等の代替保護コーティングも、それらの耐食性を更に増加させるために、通常は化成皮膜によって(すなわち、不動態化組成物を用いて)後処理される。
【0008】
しかし、通常は亜鉛コーティング又は追加的にニッケルを含む亜鉛含有コーティングに施される化成皮膜は、保護コーティングの異なる化学組成及び保護コーティング自身の腐食特性のために、こうした代替保護コーティングに自動的に適用することはできない。
【0009】
加えて、代替保護コーティング用の化成皮膜も公知である。
【0010】
米国特許出願公開第2006/237098号は、様々な金属基材上に保護コーティングを調製するための、組成物及び前記組成物を使用するプロセスに関している。米国特許出願公開第2006/237098号は、スズ-亜鉛に対する後処理を開示している。
【0011】
CN108914106Aは、金属表面処理液の分野に関し、特に無毒で自己充填性長期保護を実現することができる亜鉛めっき鋼板表面不動態化自己充填性処理液に関する。
【0012】
欧州特許出願公開第2189551号は、六価クロムが実質的に放出されない三価クロム化学化成皮膜(chemical conversion coating)に関する。それは、亜鉛-鉄及びスズ-亜鉛を含む亜鉛合金コーティングを開示している。
【0013】
特開2007-239002号公報は、亜鉛めっき基材を処理するための三価クロメート液に関し、この液は0.001%~10%の量の腐食抑制剤を含む。
【0014】
欧州特許出願公開第3045564号は、黒色三価クロム化成皮膜用処理液に関する。
【0015】
使用される保護コーティングに関係なく、それは鉄及び/又はスチール基材を保護するために通常は使用され、さもなければ劇的な腐食を受けるであろう。
【0016】
しかし、時には(代替)保護コーティングはわずかに破損され、そのため金属基材は少なくとも部分的に露出し、もはやコーティングによって完全には覆われない。その結果、不動態化組成物と接している間に金属基材もこれらの領域で溶解し、鉄イオン濃度は経時的に増加する。不動態化組成物中の比較的高い鉄イオン濃度は、しばしば不動態化された基材にマイナスの着色をもたらし、又は耐食性を損なう恐れさえあることが判明した。そのうえ、鉄イオン濃度が比較的高い不動態化組成物は、より頻繁に交換しなければならず、より高いコストをもたらす。このため、特に代替保護コーティングに適用可能な場合、耐食性を損なうことなくこうした代替不動態化組成物の寿命を増加させるために、既存の不動態化組成物を改善する絶え間ない要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/237098号
【特許文献2】CN108914106A
【特許文献3】欧州特許出願公開第2189551号
【特許文献4】特開2007-239002号公報
【特許文献5】欧州特許出願公開第3045564号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
そのため、特に亜鉛及び追加的にFe、Sn、Mn、又はそれらの混合物を含む、こうした代替保護コーティング上に、クロム含有不動態化層を堆積させる方法を提供することが本発明の目的であり、この方法は、一方では優れた防食、他方では不動態化組成物の寿命増加を示し、従って鉄イオン等の汚染金属イオンの存在下でさえ、より持続可能な不動態化方法である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上で言及した目的は、亜鉛含有コーティング上にクロム含有不動態化層を堆積させる方法であって、
(a)亜鉛含有コーティングを含む基材を用意する工程、
(b)クロム含有不動態化層を堆積させるための不動態化組成物を用意する工程であって、組成物が、
(i)三価クロムイオン;
(ii)少なくとも1種の腐食抑制剤とは異なる、三価クロムイオンのための少なくとも1種の錯化剤;並びに
(iii)不動態化組成物の全体積に対して0.001mg/L~200mg/Lの、非置換アゾール化合物、置換アゾール化合物、少なくとも1つのメルカプト基を有する非置換脂肪族有機酸、少なくとも1つのメルカプト基を有する置換脂肪族有機酸、それらの塩及び混合物からなる群から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤
を含む工程;並びに
(c)クロム含有不動態化層が亜鉛含有コーティング上に堆積するように、前記基材を前記不動態化組成物と接触させる工程
を含み、亜鉛含有コーティングはFe、Sn、Mn又はそれらの混合物を追加的に含む、方法によって解決される。
【0020】
本明細書全体を通して定義される少なくとも1種の腐食抑制剤を不動態化組成物で利用することによって、前記亜鉛含有コーティングの優れた防食が得られる。
【0021】
そのうえ、前記少なくとも1種の腐食抑制剤を利用することによって、基材から不動態化組成物中への鉄イオンの放出は著しく抑えられ、又は完全に防止されさえする。その結果、本発明の方法で利用される不動態化組成物は、前記少なくとも1種の腐食抑制剤を含まないが他の点では同一の不動態化組成物と比較して、著しく長い寿命を有する。
【0022】
三価クロムイオンのための少なくとも1種の錯化剤は、少なくとも1種の腐食抑制剤とは異なる。従って、(ii)と(iii)は同じ化合物ではなく、むしろ異なる化合物であり、互いとは区別される。
【0023】
好ましいのは、亜鉛含有コーティングが、それぞれ亜鉛めっき層又はガルバニック層(galvanic layer)である、本発明の方法である。これは、好ましくは亜鉛含有コーティングが、それぞれのコーティング組成物から基材上に電解により堆積することであることを意味する。
【0024】
好ましいのは、亜鉛含有コーティングが好ましくは亜鉛合金コーティングであり、従って基材が好ましくは亜鉛合金被覆基材である、本発明の方法である。本発明の文脈では、亜鉛含有コーティングは、純粋な亜鉛含有コーティング又は亜鉛のみを含有するコーティングではない。それは、常に前記追加的金属の少なくとも1種を含む。更に、前記追加的金属は、亜鉛含有コーティング中に意図的に添加される/含まれる、すなわち意図的に組み込まれる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の文脈では、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」という用語は、「1つ、2つ、3つ又は3つ以上」を意味する(それと交換可能である)。更に、「三価クロム」は、酸化数+3を有するクロムを指す。「三価クロムイオン」という用語は、遊離又は錯体形態のCr3+イオンを指す。
【0026】
本発明の文脈では、「クロム含有不動態化層」という用語は、好ましくは三価クロム化合物を含む層を記述している。クロム含有不動態化層は、好ましくは三価クロム水酸化物を含む。一部の場合では、不動態化層は追加の金属、好ましくはコバルト(すなわち、最も好ましくはコバルト化合物)を含むことが好ましい。三価クロム化合物は、好ましくは水に不溶性である。
【0027】
亜鉛含有コーティングを含む基材:
本発明の方法の工程(a)において、亜鉛含有コーティング、好ましくは本明細書全体を通して定義される、より好ましくは好ましいと定義される亜鉛含有コーティングを含む基材が用意される。
【0028】
好ましいのは、工程(a)において、基材が金属を含み、好ましくは基材が金属基材である、本発明の方法である。最も好ましくは、基材はプラスチック製基材ではなく、好ましくは有機基材ではない。
【0029】
より好ましいのは、好ましくは亜鉛含有コーティングを堆積させるベース材料として、基材が鉄を含む(好ましくは基材が鉄基材である)本発明の方法である。このため、好ましくは、鉄イオンは基材及びベース材料からそれぞれ放出され、これは特に亜鉛含有コーティングが損傷された場合に起こる。
【0030】
好ましいのは、工程(a)において、基材が、少なくともファスナー、好ましくはねじ、釘、ナット、クランプ及び/又はばねを含む、本発明の方法である。前述のように、それらは好ましくは金属を含む又は金属からなる。
【0031】
本発明の方法では、亜鉛含有コーティングは、Fe、Sn、Mn又はそれらの混合物を追加的に含む。これは、亜鉛とともに(すなわち、亜鉛に加えて)、Fe、Sn、Mnの少なくとも1種が一緒に存在することを意味する。一部の場合では、それらの更に2種(又はそれ以上)が亜鉛と一緒に存在することが好ましい。従って、Fe、Sn及びMnは、亜鉛めっき層、それぞれガルバニック層を形成する合金元素である。
【0032】
好ましいのは、亜鉛含有コーティング中に、亜鉛含有コーティングの全質量に対して、亜鉛がFe、Sn、及びMnとともに、亜鉛含有コーティング中の全金属(好ましくは全ての元素)の95wt%以上、好ましくは96wt%以上、より好ましくは97wt%以上、更により好ましくは98wt%以上、まだ更により好ましくは99wt%以上、最も好ましくは99.5wt%以上、まだ更に最も好ましくは99.9wt%以上を示す、本発明の方法である。
【0033】
従って、亜鉛、Fe、Sn及びMnを除いて、重要な更なる金属が亜鉛含有コーティングの形成に関与しないことが好ましい。
【0034】
好ましいのは、亜鉛含有コーティング中に、亜鉛含有コーティングの全質量に対して、亜鉛が、全量で1wt%~99.5wt%の範囲、好ましくは2wt%~99wt%、より好ましくは3wt%~95wt%、更により好ましくは4wt%~93wt%、まだ更により好ましくは5wt%~91wt%、最も好ましくは9wt%~85wt%の範囲で存在する、本発明の方法である。
【0035】
好ましいのは、亜鉛含有コーティングがFeを含み、亜鉛含有コーティングの全質量に対して、Feが好ましくは全量で0.1wt%~35wt%、好ましくは0.3wt%~30wt%、より好ましくは0.5wt%~28wt%、更により好ましくは0.9wt%~26wt%、まだ更により好ましくは1.3wt%~25wt%、最も好ましくは2wt%~24wt%の範囲で存在する、本発明の方法である。
【0036】
より好ましいのは、亜鉛含有コーティングがFeを含み、亜鉛含有コーティングの全質量に対して、Feが好ましくは全量で4wt%~35wt%、好ましくは5wt%~30wt%、より好ましくは6wt%~28wt%、更により好ましくは7wt%~26wt%、まだ更により好ましくは8wt%~25wt%、最も好ましくは10wt%~24wt%の範囲で存在する本発明の方法である。
【0037】
非常に好ましいのは、亜鉛含有コーティングがFeを含み、亜鉛含有コーティングの全質量に対して、Feが好ましくは全量で8wt%~23wt%、好ましくは9wt%~22wt%、より好ましくは10wt%~21wt%、更により好ましくは11wt%~20wt%、まだ更により好ましくは12wt%~19wt%、最も好ましくは13wt%~18wt%の範囲で存在する本発明の方法である。これは、亜鉛含有コーティングが実質的にSn及び/又は(好ましくは及び)Mnのない、好ましくは含まない場合に、最も好ましく適用される。
【0038】
他の場合では、好ましいのは、亜鉛含有コーティングがFeを含み、亜鉛含有コーティングの全質量に対して、Feが好ましくは全量で0.1wt%~10wt%、好ましくは0.2wt%~9wt%、より好ましくは0.3wt%~8wt%、更により好ましくは0.5wt%~7wt%、まだ更により好ましくは0.7wt%~6wt%、最も好ましくは0.9wt%~5wt%の範囲で存在する本発明の方法である。
【0039】
好ましいのは、亜鉛含有コーティングがSnを含み、亜鉛含有コーティングの全質量に対して、Snが好ましくは全量で40wt%~95wt%、好ましくは50wt%~92wt%、より好ましくは57wt%~90wt%、更により好ましくは58wt%~88wt%、まだ更により好ましくは60wt%~86wt%、最も好ましくは62wt%~85wt%の範囲で存在する、本発明の方法である。これは、亜鉛含有コーティングが実質的にFe及び/又は(好ましくは及び)Mnのない、好ましくは含まない場合に、最も好ましく適用される。
【0040】
好ましいのは、亜鉛含有コーティングがMnを含み、亜鉛含有コーティングの全質量に対して、Mnが好ましくは全量で1wt%~60wt%、好ましくは2wt%~50wt%、より好ましくは5wt%~48wt%、更により好ましくは10wt%~47wt%、まだ更により好ましくは15wt%~45wt%、最も好ましくは20wt%~41wt%の範囲で存在する、本発明の方法である。これは、亜鉛含有コーティングが実質的にFe及び/又は(好ましくは及び)Snのない、好ましくは含まない場合に、最も好ましく適用される。
【0041】
好ましいのは、亜鉛含有コーティングが実質的にニッケルのない、好ましくは含まない、本発明の方法である。これは特に、亜鉛含有コーティングが意図的に添加されたニッケルを含まないことを意味する。対照的に、例えば不純物及び/又は汚染としての避けられないニッケルは、好ましくはそれが亜鉛含有コーティングに著しい影響を示さない限り許容できる。
【0042】
好ましいのは、亜鉛含有コーティングが、Fe、Sn又はそれらの混合物、好ましくはFeを含む、本発明の方法である。これは、こうした好ましい場合では、亜鉛含有コーティングはマンガンを含まず(しかし、Fe及び/又はSnは含む)、好ましくはマンガン及びスズをそれぞれ含まない(しかし、好ましくは追加的にFeのみを含む)ことを意味する。従って、本発明の方法は、亜鉛-鉄コーティング(すなわち、追加的にFeを含む亜鉛含有コーティング)にとって、最も好ましい。しかし他の場合では、本発明の方法は、亜鉛-スズコーティング(しばしばスズ-亜鉛コーティング;すなわち、追加的にスズを含む亜鉛含有コーティングとも同様に呼ばれる)に非常に好ましい。
【0043】
不動態化組成物:
本発明の方法の工程(b)において、本明細書全体を通して定義される、好ましくは好ましいとして定義される不動態化組成物が用意される。
【0044】
好ましいのは、不動態化組成物は水性不動態化組成物であり、好ましくは水の濃度は、不動態化組成物の全体積に対して50vol%超、より好ましくは65vol%以上、更により好ましくは80vol%以上、最も好ましくは90vol%以上である、本発明の方法である。
【0045】
本発明の方法では、不動態化組成物は、(i)三価クロムイオンを含む。
【0046】
好ましいのは、不動態化組成物が、不動態化組成物の全体積に対して、全濃度で0.1g/L~25g/L、好ましくは0.2g/L~20g/L、より好ましくは0.3g/L~15g/L、更により好ましくは0.4g/L~10g/L、最も好ましくは0.5g/L~9g/Lの三価クロムイオンを含む、本発明の方法である。全濃度が0.1g/Lより著しく少ない場合、通常は不十分な不動態化しか得られない。他方で、全濃度が25g/Lを著しく超える場合、全体の方法はあまり生態学的ではない。
【0047】
一部の場合では、非常に好ましいのは、不動態化組成物が、不動態化組成物の全体積に対して、全濃度で0.5g/L~3g/L、好ましくは1g/L~2.5g/Lの三価クロムイオンを含む本発明の方法である。こうした濃度により、非常に優れた結果が得られた。
【0048】
本発明の方法では、不動態化組成物は、(ii)三価クロムイオンのための少なくとも1種の錯化剤を含む。
【0049】
好ましいのは、三価クロムイオンのための少なくとも1種の錯化剤が、有機錯化剤及び無機錯化剤からなる群から選択される、本発明の方法である。有機錯化剤が、本明細書全体を通して定義される少なくとも1種の腐食抑制剤とは異なるという条件は、依然として適用される。
【0050】
好ましくは、前記少なくとも1種の錯化剤は、三価クロムイオンのためだけではなく、更に鉄イオンのため、最も好ましくは放出された鉄イオンのための錯化剤でもあることである。それらも錯化されると、望ましくないスラッジの形成が強力に低減され、更に防止されさえする。
【0051】
好ましいのは、不動態化組成物において、三価クロムイオンのための少なくとも1種の錯化剤が、モノカルボン酸、ジカルボン酸、それらの(モノカルボン酸及びジカルボン酸の両方の)塩、ハロゲンイオン、並びにそれらの混合物からなる群から選択される、本発明の方法である。
【0052】
最も好ましくは、少なくとも1種の錯化剤は、少なくとも1種のジカルボン酸及び/又はそれらの塩を含む。
【0053】
好ましいのは、不動態化組成物において、三価クロムイオンのための少なくとも1種の錯化剤が、非置換モノカルボン酸、ヒドロキシル置換モノカルボン酸、アミノ置換モノカルボン酸、非置換ジカルボン酸、ヒドロキシル置換ジカルボン酸、アミノ置換ジカルボン酸、それらの(全ての前述の酸の)塩、ハロゲンイオン、及びそれらの混合物からなる群から選択される、本発明の方法である。
【0054】
好ましいのは、三価クロムイオンのための少なくとも1種の錯化剤が、シュウ酸塩/シュウ酸、酢酸塩/酢酸、酒石酸塩/酒石酸、リンゴ酸塩/リンゴ酸、コハク酸塩/コハク酸、グルコン酸塩/グルコン酸、グルタミン酸塩/グルタミン酸、グリコール酸塩/グリコール酸、ジグリコール酸塩/ジグリコール酸、アスコルビン酸塩/アスコルビン酸、及び酪酸塩/酪酸からなる群から選択される、本発明の方法である。
【0055】
好ましいのは、ハロゲンイオンが、フッ化物イオンを含む、好ましくはフッ化物イオンである、最も好ましくはハロゲンイオンの中のフッ化物イオンだけである、本発明の方法である。
【0056】
好ましいのは、三価クロムイオンのための少なくとも1種の錯化剤が、メルカプト基を含まない、本発明の方法である。
【0057】
好ましいのは、三価クロムイオンのための少なくとも1種の錯化剤が、トリアゾールを含まない、好ましくはアゾールを含まない、より好ましくは芳香族有機化合物を含まない、本発明の方法である。
【0058】
一部の場合では、好ましいのは、三価クロムイオンのための少なくとも1種の錯化剤が、不動態化組成物中の1モル/Lの三価クロムイオンに対して、0.01モル/L~2モル/L、好ましくは0.03モル/L~1モル/L、より好ましくは0.05モル/L~0.8モル/L、更により好ましくは0.1モル/L~0.5モル/Lの範囲の全濃度を有する、本発明の方法である。
【0059】
同じく好ましいのは、不動態化組成物において、三価クロムイオンのための少なくとも1種の錯化剤が、不動態化組成物の全質量に対して、0.05wt%~15wt%、好ましくは0.1wt%~10wt%、より好ましくは0.2wt%~9wt%、更により好ましくは0.5wt%~8wt%、最も好ましくは0.8wt%~7wt%の範囲の全濃度を有する、本発明の方法である。
【0060】
通常は、上記で定義される(好ましい)濃度範囲では、三価クロムイオンは、錯化剤(好ましくは、好ましいと定義される錯化剤)によって、不動態化組成物中で効率的に安定化される。
【0061】
本発明の方法では、不動態化組成物は、(iii)不動態化組成物の全体積に対して、0.001mg/L~200mg/Lの、本明細書全体を通して定義される、好ましくは好ましいと定義される、少なくとも1種の腐食抑制剤を含む。この濃度範囲は全濃度を指し、「(iii)[...]に対して、全体で0.001mg/L~200mg/L」として(好ましくは交換可能であると)理解すべきである。これは、好ましくは、本明細書全体を通して好ましいと定義される、全ての好ましい濃度範囲にも適用される。
【0062】
(iii)が200mg/Lを著しく超えて存在すると、ほとんどの場合不十分な耐食性が得られ、これは、(優れた抑制効果が達成される可能性はあるが;以下の例を参照)、例えばNSS試験で望ましくない結果が得られることを意味する。そもそも抑制効果を達成するためには、比較的低濃度(以下の例を参照)、少なくとも0.001mg/L、好ましくは少なくとも0.01mg/L、より好ましくは少なくとも0.1mg/Lですでに十分であり、これらは、前記200mg/L又は他の上限と個別に組み合わせることが好ましい。
【0063】
好ましいのは、不動態化組成物中に、(iii)が不動態化組成物の全体積に対して0.005mg/L~180mg/Lの範囲、好ましくは0.01mg/L~160mg/Lの範囲、より好ましくは0.1mg/L~150mg/Lの範囲、更に好ましくは1mg/L~135mg/Lの範囲、まだ更により好ましくは2mg/L~120mg/Lの範囲、最も好ましくは3mg/L~110mg/Lの範囲の全濃度を有する、(好ましくは、本明細書全体を通して好ましいと記述された)本発明の方法である。
【0064】
好ましいのは、不動態化組成物中に、(iii)が不動態化組成物の全体積に対して0.01mg/L~150mg/Lの範囲、好ましくは0.05mg/L~120mg/Lの範囲、より好ましくは0.1mg/L~100mg/Lの範囲、更により好ましくは0.5mg/L~80mg/Lの範囲、まだ更により好ましくは1mg/L~50mg/Lの範囲、最も好ましくは2mg/L~25mg/Lの範囲の全濃度を有する、(好ましくは、本明細書全体を通して好ましいと記述された)本発明の方法である。一部の場合では、これらの好ましい濃度範囲は、特に、少なくとも1つのメルカプト基を有する非置換脂肪族有機酸、少なくとも1つのメルカプト基を有する置換脂肪族有機酸、それらの塩及び混合物からなる群から選択される;特に、本明細書全体を通して好ましいと更に定義される、腐食抑制剤に適用されることが非常に好ましい。
【0065】
好ましいのは、不動態化組成物中に、(iii)が不動態化組成物の全体積に対して0.001mg/L~9.9999mg/Lの範囲、好ましくは0.01mg/L~9.9mg/Lの範囲、より好ましくは0.1mg/L~9.8mg/Lの範囲、更により好ましくは0.5mg/L~9.7mg/Lの範囲、まだ更により好ましくは0.8mg/L~9.6mg/Lの範囲、最も好ましくは1mg/L~9.5mg/Lの範囲、更に最も好ましくは2mg/L~9.4mg/Lの範囲の全濃度を有する、(好ましくは、本明細書全体を通して好ましいと記述された)本発明の方法である。一部の場合では、これらの好ましい濃度範囲は、特に非置換アゾール化合物、置換アゾール化合物、それらの塩及び混合物からなる群から選択される;特に、本明細書全体を通して好ましいと更に定義される、腐食抑制剤に適用されることが非常に好ましい。
【0066】
最も好ましいのは、不動態化組成物中に、(iii)が不動態化組成物の全体積に対して0.001mg/L~9mg/Lの範囲、好ましくは0.01mg/L~8.8mg/Lの範囲、より好ましくは0.1mg/L~8.5mg/Lの範囲、更により好ましくは0.5mg/L~8.3mg/Lの範囲、まだ更により好ましくは0.8mg/L~8mg/Lの範囲、最も好ましくは1mg/L~7.5mg/Lの範囲、更に最も好ましくは2mg/L~7mg/Lの範囲の全濃度を有する本発明の方法である。独自の実験は、通常はこうした低濃度が優れた結果をもたらし、すでに十分である(以下の例を参照)が、より高い濃度も使用できることを示した。比較的低い全濃度で非常に著しい効果がすでに得られたことは、驚くべきことであった。
【0067】
不動態化組成物において、少なくとも1種の腐食抑制剤は、非置換アゾール化合物、置換アゾール化合物(これは好ましいアゾール化合物である)、少なくとも1つのメルカプト基を有する非置換脂肪族有機酸(これは好ましい脂肪族有機酸である)、少なくとも1つのメルカプト基を有する置換脂肪族有機酸、それらの塩及び混合物からなる群から選択される。
【0068】
好ましいのは、不動態化組成物において、置換アゾール化合物、それらの塩及び混合物が、アミノ、ニトロ、カルボキシ、ヒドロキシ、スルホネート、及びチオールからなる群から選択される1つ又は複数の置換基を独立して含み、好ましくは置換基がチオール基である、本発明の方法である。
【0069】
好ましいのは、不動態化組成物において、非置換及び置換アゾール化合物、それらの塩及び混合物が、モノアゾール、ジアゾール、トリアゾール、及びテトラゾール、好ましくはジアゾール及びトリアゾール、最も好ましくはトリアゾールからなる群から独立して選択される、本発明の方法である。
【0070】
好ましいのは、不動態化組成物において、非置換及び置換(好ましくは置換)アゾール化合物、それらの塩及び混合物が、1,2,4-トリアゾールから成る群から独立して選択される、本発明の方法である。これは、最も好ましくは1,2,4-H-トリアゾールを意味する。
【0071】
好ましいのは、不動態化組成物において、置換アゾール化合物、それらの塩及び混合物が、少なくともメルカプトトリアゾール、好ましくは少なくとも3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール(最も好ましくは3-メルカプト-1,2,4-H-トリアゾールを意味する)を独立して含む、本発明の方法である。
【0072】
本発明の方法では、少なくとも1種の腐食抑制剤は、少なくとも1つのメルカプト基を有する置換脂肪族有機酸、それらの塩及び混合物でもあり得る。この場合、有機酸は1つ又は複数の置換基によって置換される。好ましくは、酸は、カルボン酸、スルホン酸、塩、又はそれらの混合物である。それぞれの酸部分、すなわち、好ましくはカルボキシ基及びスルホン酸基は、化合物を酸であると特徴づけるので、置換基ではない。対照的に、好ましいのは、不動態化組成物において、少なくとも1つのメルカプト基を有する脂肪族有機酸、それらの塩及び混合物が、アミノ、ニトロ、及びヒドロキシからなる群から選択される、1つ又は複数の置換基を独立して(すなわち、酸部分に加えて)含む本発明の方法である。
【0073】
好ましいのは、不動態化組成物において、少なくとも1つのメルカプト基を有する非置換及び置換脂肪族有機酸及びそれらの塩が、それぞれカルボン酸及び/又はそれらの塩を含む本発明の方法である。
【0074】
より好ましいのは、不動態化組成物において、少なくとも1つのメルカプト基を有する非置換及び置換脂肪族有機酸並びにそれらの塩が、それぞれ、モノカルボン酸及び/又はそれらの塩を含む本発明の方法である。
【0075】
好ましいのは、不動態化組成物において、少なくとも1つのメルカプト基を有する非置換及び置換脂肪族有機酸並びにそれらの塩が、それぞれ、1~12個の炭素原子、好ましくは2~10個の炭素原子、より好ましくは3~8個の炭素原子、最も好ましくは3~6個の炭素原子を含む、本発明の方法である。
【0076】
一部の場合では、非常に好ましいのは、(iii)が、少なくとも1つのメルカプト基を有する少なくとも1種の非置換脂肪族有機酸及び/又はそれらの塩を含む、本発明の方法である。
【0077】
好ましいのは、不動態化組成物において、少なくとも1つのメルカプト基を有する非置換脂肪族有機酸、それらの塩及び混合物が、少なくとも3-メルカプトプロピオン酸及び/又はそれらの塩、最も好ましくは3-メルカプトプロピオン酸を含む、本発明の方法である。
【0078】
一般に好ましいのは、(iii)が、前記アゾール化合物の少なくとも1種(好ましいと定義される化合物を含む)又は前記脂肪族有機酸の少なくとも1種(好ましいと定義される化合物を含む)を含む、本発明の方法である。しかし一部の場合では、好ましいのは、前記アゾール化合物の少なくとも1種と前記脂肪族有機酸の少なくとも1種との混合物が、不動態化組成物中に存在する本発明の方法である。
【0079】
一部の場合では、好ましいのは、不動態化組成物が、
(iv)二価コバルトイオンを、不動態化組成物の全体積に対して、好ましくは0.01g/L~5g/L、好ましくは0.1g/L~4g/L、より好ましくは0.3g/L~3.5g/L、更により好ましくは0.5g/L~3g/L、最も好ましくは0.7g/L~2.5g/Lの全濃度で、
更に含む、本発明の方法である。
【0080】
多くの場合、コバルトイオンは任意選択の熱処理にプラスに影響する。本発明の文脈では、後処理としての熱処理は、任意選択の工程である(熱処理に関しては、以下の明細書を参照)。
【0081】
しかし一部の場合では、不動態化組成物が、本質的に二価コバルトイオンのない、好ましくは含まない;好ましくは、本質的にあらゆるコバルトイオンのない、好ましくは含まない;最も好ましくは、本質的に全てのコバルトのない、好ましくは含まない、本発明の方法が好ましい。代わりにコバルト又はコバルトイオンをそれぞれ不動態化組成物から除外することによって、高価なコバルト化合物の使用が回避され、排水処理が単純化されて、それによって不動態化組成物の持続性が改善されるので、通常はコスト低減が達成される。更に多くの場合、コバルト及びコバルトイオンはそれぞれいかなる利益ももたらさず、従って除くことができる。
【0082】
好ましいのは、不動態化組成物が、本質的に意図的に添加された六価クロム化合物のない、好ましくは含まない本発明の方法である。換言すれば、六価クロム化合物が存在する場合、それらは通常は三価クロムイオンの望ましくない反応の結果である。従って、六価クロムイオンが存在する場合、それらは前記三価クロムイオンに由来するという条件で、本発明の方法は好ましい。
【0083】
好ましいのは、不動態化組成物が0.5~6.5、好ましくは0.7~6、より好ましくは0.9~5、更により好ましくは1.1~4、まだ更により好ましくは1.4~3、最も好ましくは1.6~2.7、まだ更に最も好ましくは1.8~2.3の範囲のpHを有する本発明の方法である。pHが6.5を著しく超える場合、一部の場合では望ましくない沈澱が観察される。pHが0.5を著しく下回る場合、一部の場合では基材の望ましくない大幅な溶解が、特に鉄の基材が使用される場合に観察される。クロム含有不動態化層を効率的に堆積させ、不動態化組成物の比較的長い寿命を維持するためには、上に定義する好ましいpH領域が特に有益である。
【0084】
好ましいのは、不動態化組成物が、
(v)鉄イオンを、不動態化組成物の全体積に対して、0mg/L~2000mg/Lの範囲、好ましくは0mg/L~500mg/Lの範囲、より好ましくは0mg/L~300mg/Lの範囲、最も好ましくは0mg/L~250mg/Lの範囲、更に最も好ましくは0mg/L~200mg/Lの範囲の全濃度で、
更に含む、本発明の方法である。
【0085】
好ましいのは、鉄イオンが存在する場合、基材からのものである本発明の方法である。
【0086】
一部の場合では、鉄イオンは(ほぼ)永久に、好ましくは非常に低い濃度で、最も好ましくは、上で定義した上限の濃度にさえ達しないで存在する。本発明を考慮すると、多くの場合、特に全濃度が500mg/Lを超えない場合には、上で定義した上限の濃度は、重要ではない。鉄イオンの典型的な非常に低い濃度は、不動態化組成物の全体積に対して、好ましくは0.001mg/L以上、より好ましくは0.01mg/L、更に好ましくは0.1mg/L、最も好ましくは1mg/Lである。好ましくは、こうした低濃度は、上で定義した上限の濃度と自由に組み合わせられる。理論に拘束されることを望むものではないが、少なくとも1種の腐食抑制剤は主として鉄イオンの放出を最小化するが、それぞれの不動態化組成物が寿命を延長するように、腐食抑制剤が放出された鉄イオンと積極的に相互作用することも完全には除外することはできないように見える。
【0087】
基材を不動態化組成物と接触させる:
本発明の方法の工程(c)において、クロム含有不動態化層が堆積するように、基材を不動態化組成物と接触させる。
【0088】
最も好ましいのは、電流を流すことなく、すなわち電流のない状態で、工程(c)が行われる本発明の方法である。
【0089】
好ましいのは、工程(c)が、10℃~90℃、好ましくは13℃~70℃、より好ましくは15℃~60℃、更により好ましくは20℃~50℃、まだ更により好ましくは23℃~45℃、最も好ましくは26℃~40℃の範囲の温度で行われる、本発明の方法である。こうした温度によって、本発明の方法の効率的及び/又は持続可能な運転が可能になる。
【0090】
温度が90℃を著しく超える場合、一部の場合では、エネルギーの望ましくない消費とともに、水の望ましくない蒸発が観察される。温度が10℃を著しく下回る場合、多くの場合に、クロム含有不動態化層の析出が不十分となり、それによって防食の質が損なわれる。
【0091】
好ましいのは、工程(c)が、5秒~600秒、好ましくは10秒~400秒、より好ましくは15秒~300秒、更により好ましくは20秒~200秒、最も好ましくは25秒~150秒の時間行われる本発明の方法である。時間が5秒を著しく下回る場合、多くの場合に、クロム含有不動態化層の析出が不十分となり、それによって防食の質が損なわれる。
【0092】
好ましい温度範囲及び好ましい時間で工程(c)を行うことによって、特に有利な堆積動力学が得られる。多くの場合、規定された最長時間及び規定された最高温度を超えても、通常はそれ以上の利益は得られない。
【0093】
好ましいのは、工程(c)の後に(好ましくは1つの工程(c)の後に)、不動態化組成物が、不動態化組成物の全体積に対して、200mg/L以下、好ましくは100mg/L以下、最も好ましくは各工程(c)の後に200mg/L以下、更に最も好ましくは各工程(c)の後に100mg/L以下の濃度で鉄イオンを含む、本発明の方法である。
【0094】
より好ましいのは、それぞれ不動態化組成物は15g/L以下の濃度で亜鉛イオンを含むという条件で、工程(c)の後に(好ましくは1つの工程(c)の後に)不動態化組成物が、不動態化組成物の全体積に対して、500mg/L以下、好ましくは400mg/L以下、より好ましくは300mg/L以下、最も好ましくは250mg/L以下、更に最も好ましくは200mg/L以下の濃度で鉄イオンを含む、本発明の方法である。
【0095】
更により好ましいのは、それぞれ不動態化組成物は10g/L以下の濃度で亜鉛イオンを含むという条件で、工程(c)の後に(好ましくは1つの工程(c)の後に)不動態化組成物が、不動態化組成物の全体積に対して、500mg/L以下、好ましくは400mg/L以下、より好ましくは300mg/L以下、最も好ましくは250mg/L以下、更に最も好ましくは200mg/L以下の濃度で鉄イオンを含む、本発明の方法である。
【0096】
好ましいのは、方法が、工程(c)の後に、
(d)クロム含有不動態化層を有する基材を熱処理する工程、
を更に含む、本発明の方法である。
【0097】
通常、熱処理は水素脆化を最小化する。
【0098】
好ましいのは、工程(d)において、150℃~230℃、好ましくは180℃~210℃の範囲の温度で熱処理が行われる本発明の方法である。
【0099】
好ましいのは、工程(d)において、1時間~10時間、好ましくは2時間~8時間、最も好ましくは2.5時間~5時間の時間、熱処理が行われる本発明の方法である。
【0100】
最も好ましいのは、工程(c)又は(d)、好ましくは(c)の後に、クロム含有不動態化層を有する基材が、DIN9227により試験すると1%以下の白錆形成を有する本発明の方法である。DIN9227による1%以下の白錆形成は、本発明の方法により得られる優れた防食を証明するのに、特に良好な判定条件として役に立つ。
【0101】
一部の場合では、好ましいのは、方法が、工程(c)又は(d)の後に、
(e)クロム含有不動態化層を有する基材を封止層で封止して、封止された基材が得られるようにする工程、
を更に含む本発明の方法である。
【0102】
好ましいのは、封止層が、(好ましくは粒子としての)無機ケイ酸塩、シラン、有機ポリマー及びそれらの混合物からなる群から選択される化合物(又はそれらの反応生成物)を含む、本発明の方法である。
【0103】
前述の(好ましくは粒子としての)無機ケイ酸塩に関しては、代わりに又は加えて、更に耐食性を増加させるために、こうした粒子は、本発明の方法で利用される不動態化組成物に好ましくは含まれる。
【0104】
クロム含有不動態化層:
本発明の方法の工程(c)において、クロム含有不動態化層が堆積する。
【0105】
好ましいのは、クロム含有不動態化層が、1nm~1200nm、好ましくは10nm~1000nm、より好ましくは15nm~800nm、最も好ましくは20nm~500nmの範囲の層の厚さを有する本発明の方法である。
【0106】
好ましいのは、クロム含有不動態化層が、青みを帯びた、好ましくは青色の、クロム含有不動態化層である本発明の方法である。
【0107】
更により好ましいのは、クロム含有不動態化層が、青みを帯びた、好ましくは青色の、クロム含有不動態化層であり、30nm~150nm、好ましくは40nm~140nm、より好ましくは45nm~130nm、最も好ましくは50nm~120nm、更に最も好ましくは55nm~90nmの範囲の層の厚さを有する、本発明の方法である。
【0108】
いくつかの場合、クロム含有不動態化層が虹色であり、155nm~1200nm、好ましくは170nm~1000nm、より好ましくは190nm~800nm、最も好ましくは200nm~600nmの範囲の層の厚さを有する、本発明の方法が好ましい。
【0109】
いくつかの場合、クロム含有不動態化層が透明又は黄色であり、1nm~25nm、好ましくは3nm~22nm、より好ましくは5nm~20nm、最も好ましくは8nm~18nmの範囲の層の厚さを有する、本発明の方法が好ましい。
【0110】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってより詳細に記述される。
【実施例
【0111】
1.第1の実験セット(抑制剤試験)
第1の実験セットでは、3-メルカプトトリアゾール(3-MTA)及び3-メルカプトプロピオン酸(3-MPA)が、鉄基材からの鉄の溶解を防ぐのに適しているかどうかを調査した。そのために、約2g/Lの三価のクロムイオン、任意選択のコバルトイオン、錯化剤としてのジカルボン酸、及びそれぞれ腐食抑制剤としての(3-MTA)又は(3-MPA)のいずれかを含む、水性試験不動態化組成物を調製した。対照実験では、腐食抑制剤は使用しなかった。それぞれの場合、pHは約2.2~2.5であった。
【0112】
各実験では、鉄基材(3.5cm×5.0cmの鉄板)をビーカー中で2時間試験して、試験不動態化組成物が鉄基材を溶解させるようにした。
【0113】
試験手順は以下のとおりであった。各試験不動態化組成物を設定した後、pHを前述のように調節した。各試験中、pHを監視した。2時間後に、最終pHを測定した。腐食抑制剤が鉄の溶解をうまく最小化すると、pHは安定し続けることが観察された。しかし、腐食抑制剤の全量が少なすぎる又は経時的に消費されると、典型的にはpHは3.0を超え、更に3.5までpHは増加した。安定なpHは試験に「合格した」とみなされ、3.0又は更にそれ以上に増加したpHは、「不合格した」とみなされる。結果を、以下の表1に要約する。
【0114】
【表1】
【0115】
抑制剤試験は、3-MTA及び3-MPAのいずれもが、鉄の溶解を効率的に最小化していることを明確に示している。両方が存在しないと、著しいpHの増加が観察された(実験Aを参照)。従って、腐食抑制剤が存在しないと、鉄イオンの望ましくない放出が起こった。
【0116】
対照的に、腐食抑制剤が存在すると、pHは前記2時間を超えて安定し続けた。従って、著しい鉄の溶解は起こらなかった。更に、腐食抑制剤の比較的低濃度(例えば、7mg/L)と比較的高濃度(例えば、それぞれ100mg/L及び1000mg/L)の間で、有意差は観察されなかった。それぞれの場合、安定なpHが観察され、十分に最小化された鉄の溶解を示した。
【0117】
更に、コバルトの有無は、鉄の溶解に大きな影響を与えないと思われる。また、コバルトを腐食抑制剤と組み合わせることに、大きな利点も不利点もないように思われる。
【0118】
5-メルカプト-1-メチルテトラゾール及びベンゾトリアゾール(データは示されていない)により類似した結果及び結論が得られたが、ベンゾトリアゾールではわずかに良好でない結果が得られた。
【0119】
2.第2の実験セット(Feを追加的に含む、Zn含有コーティング;耐食性試験)
この第2の試験(及び以下の第3の試験)では、不動態化組成物中の腐食抑制剤による不動態化後の耐食性への影響を調査した。
【0120】
この実験セットに関しては、表2に導入した番号付けを有する水性試験不動態化組成物を調製し、これは、第1の実験セットに使用した試験不動態化組成物と同一である。鉄イオンは積極的/意図的に添加されず、不動態化組成物の利用が短いので、基材からの溶解も予想されなかった。
【0121】
本発明の方法は、以下のように実行した。基材として、複数のZnFe被覆鉄ねじ(M8×60;ZnFe中の約12wt%のFe)を前処理し、その後、それぞれの水性試験不動態化組成物(各体積:2L)中、室温(約20℃)で30秒間不動態化した。その後、不動態化されたねじを光学的に検査し、NSS試験に供した。光学検査は、全ての事例で合格した。
【0122】
不動態化組成物に関する更なる詳細、及びねじを不動態化した後に得られた結果を、以下の表2に要約する。
【0123】
【表2】
【0124】
表2では、「NSST[24/96/168]」は、DIN9227による24、96、及び168時間の継続時間での中性塩水噴霧試験を意味し、「+」は、白錆形成がない又は(ほんの少数の事例に)許容できる程度で、試験に合格したことを意味し;「0」は、ほぼ全ての試験したねじで望ましくない程度の白錆形成だが、まだ許容できる(赤錆形成は基本的にない)ことを意味し;「-」は、全てのねじで許容できない程度の白錆形成であり、一部の場合では著しい赤錆形成さえ含んでいることを意味する。
【0125】
実験1~4は本発明による実験であり、実験C1~C5は比較実験である。
【0126】
前述のように、水性試験不動態化組成物中に意図的に添加された鉄イオンは存在しない。鉄イオンが不動態化後の耐食性に悪影響を与えることが、例えば、NSS試験で通常観察されるので、不動態化組成物中の鉄イオンを回避することが一般に望まれる。加えて、鉄イオンの量が増加すると、それぞれの不動態化組成物の寿命は著しく短縮される。
【0127】
実験1~4及びC1~C5は、それぞれ変動する濃度の3-MTA及び3-MPAの存在下で、不動態化後の耐食性がどう影響されるかを明確に示している。3-MTA及び3-MPAの濃度がそれぞれ増加すると、一般に耐食性が低下することが観察された。示されているように、(1000mg/Lと同様に)耐食性に対する劇的な悪影響が観察されたので、3-MTA及び3-MPAの全濃度は、それぞれ決して300mg/Lに達してはならず、更にはこれを超えてはならない。対照的に7mg/Lの比較的低い全濃度は、耐食性に悪影響を全く及ぼすことがなく、容易に許容することができ、耐食性品質を損なうことなくプラスの抑制効果を達成することができる。全濃度が100mg/Lである場合、多くの場合、初期及び24時間後のNSS試験でまだ許容できる耐食性が得られる。しかし、96時間及び168時間のNSS試験では、それぞれ耐食性が低減される(表2、実験2及び4を参照)。
【0128】
鉄イオンが意図的に添加されなかったので、それぞれ3-MTA及び3-MPAが存在しなくとも、比較例C1は優れた結果を示した。この例は、鉄イオンの汚染が存在しない理想的な状況を示しており、従って、腐食抑制剤を利用する必要はない。しかし、こうした理想的な状況は実際の日々の状況を示しておらず、主として不完全な亜鉛含有コーティングのために、増加した鉄イオン汚染が通常は観察される。
【0129】
3-MTA及び3-MPAは、1000mg/Lまでの濃度でさえ、鉄イオンの放出を良好に最小化するが(表1、実験D及びGを参照)、表2は、こうした比較的高い濃度(すなわち、それぞれ、300mg/L及び1000mg/L)がそれぞれの不動態化された基材の耐食性に悪影響を及ぼす(表2、実験C2~C5を参照)ことを明確に示している。
【0130】
その結果、一方で鉄溶解の十分な最小化を達成し、他方で不動態化された基材の耐食性低下を回避するために、本発明の方法で利用される腐食抑制剤の全濃度は、良好にバランスがとれていなければならない。
【0131】
3.第3の実験セット(追加的にSnを含む、Zn含有コーティング;耐食性試験)
この第3の試験では、不動態化後の耐食性に対する、不動態化組成物中の腐食抑制剤の影響を再度調査した。
【0132】
この実験セットに関しては、第1の実験セット及び第2の実験セットで定義した水性試験不動態化組成物を使用した。再度、鉄イオンは意図的に添加されず、不動態化組成物の利用が短いので、基材からの溶解も予想されなかった。
【0133】
追加的にFeではなくSn(ZnSn中に約60wt%のSn)を含む亜鉛含有コーティングでねじを亜鉛めっきする点は異なるが、第2の実験セットで定義されたように、本発明の方法を実行した。不動態化組成物に関する更なる詳細及びねじを不動態化した後に得られた結果を、以下の表3に要約する。
【0134】
【表3】
【0135】
表2において、「NSST」は、DIN9227による24時間の継続時間での中性塩水噴霧試験を意味し、「+」は、まだ許容できる白錆形成を含んで試験に合格したことを意味し;「0」は、ほぼ全ての試験ねじで、「+」と比較して白錆形成の程度が著しく増加しているが、まだ許容できる(基本的に、赤錆形成は起こらなかった)ことを意味し;「-」は、一部の場合では著しい赤錆形成さえ含んで、全てのねじで許容できない程度の白錆形成を意味する。
【0136】
実験5~8は本発明による実験であり、実験C6~C10は比較実験である。
【0137】
いくつかの場合、ZnFe被覆基材の不動態化品質は、ZnSn被覆基材のそれよりも良好/高かった。しかしZnFe被覆基材に関する同じ結論が、同様にZnSn被覆基材に適用される。理想的な状況下では、腐食抑制剤は必要ない。しかし、実際の日々の状況では、鉄イオン増加は通常は経時的に観察され、腐食抑制剤は大きな利点である。こうした腐食抑制剤が利用される場合、その全濃度のバランスを注意深くとらねばならず;高過ぎる濃度(すなわち、再度、それぞれ300mg/L及び1000mg/L)は、不動態化後の全体的な耐食性にマイナスの影響を示す。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛含有コーティング上にクロム含有不動態化層を堆積させる方法であって、
(a)亜鉛含有コーティングを含む基材を用意する工程、
(b)クロム含有不動態化層を堆積させるための不動態化組成物を用意する工程であって、組成物が、
(i)三価クロムイオン;
(ii)少なくとも1種の腐食抑制剤とは異なる、三価クロムイオンのための少なくとも1種の錯化剤;並びに
(iii)不動態化組成物の全体積に対して0.001mg/L~200mg/Lの、非置換アゾール化合物、置換アゾール化合物、少なくとも1つのメルカプト基を有する非置換脂肪族有機酸、少なくとも1つのメルカプト基を有する置換脂肪族有機酸、それらの塩及び混合物からなる群から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤
を含む、工程;並びに
(c)クロム含有不動態化層が亜鉛含有コーティング上に堆積するように、前記基材を前記不動態化組成物と接触させる工程
を含み、前記亜鉛含有コーティングは、Fe、Sn、Mn又はそれらの混合物を追加的に含む、方法。
【請求項2】
前記亜鉛含有コーティングが実質的にニッケルのない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記亜鉛含有コーティングが、Fe、Sn、又はそれらの混合物を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記不動態化組成物中に、(iii)が、不動態化組成物の全体積に対して、0.005mg/L~180mg/Lの範囲の全濃度を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記不動態化組成物中に、(iii)が、不動態化組成物の全体積に対して、0.01mg/L~150mg/Lの範囲の全濃度を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記不動態化組成物中に、(iii)が、不動態化組成物の全体積に対して、0.001mg/L~9.9999mg/Lの範囲の全濃度を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記不動態化組成物において、前記置換アゾール化合物、それらの塩及び混合物が、アミノ、ニトロ、カルボキシ、ヒドロキシ、スルホネート、及びチオールからなる群から選択される1種又は複数の置換基を独立して含、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記不動態化組成物において、前記非置換及び置換アゾール化合物、それらの塩及び混合物が、モノアゾール、ジアゾール、トリアゾール、及びテトラゾールからなる群から独立して選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記不動態化組成物において、前記非置換及び置換アゾール化合物、それらの塩及び混合物が、1,2,4-トリアゾールからなる群から独立して選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記不動態化組成物において、前記置換アゾール化合物、それらの塩及び混合物が、少なくともメルカプトトリアゾールを独立して含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記不動態化組成物において、前記少なくとも1つのメルカプト基を有する非置換脂肪族有機酸、それらの塩及び混合物が、少なくとも3-メルカプトプロピオン酸及び/又はそれらの塩を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記不動態化組成物において、前記三価クロムイオンのための少なくとも1種の錯化剤が、モノカルボン酸、ジカルボン酸、それらの塩、ハロゲンイオン、及びそれらの混合物からなる群から選択され、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記不動態化組成物において、前記三価クロムイオンのための少なくとも1種の錯化剤が、非置換モノカルボン酸、ヒドロキシル置換モノカルボン酸、アミノ置換モノカルボン酸、非置換ジカルボン酸、ヒドロキシル置換ジカルボン酸、アミノ置換ジカルボン酸、それらの塩、ハロゲンイオン、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記不動態化組成物中に、前記三価クロムイオンのための少なくとも1種の錯化剤が、不動態化組成物の全質量に対して、0.05wt%~15wt%の範囲の全濃度を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記不動態化組成物が、
(v)鉄イオンを、不動態化組成物の全体積に対して、0mg/L~2000mg/Lの範囲の全濃度で、
更に含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】