(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】容器用生分解性複合材料
(51)【国際特許分類】
B65D 65/46 20060101AFI20240201BHJP
B65D 1/00 20060101ALI20240201BHJP
B65D 81/24 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B65D65/46
B65D1/00 120
B65D1/00 ZBP
B65D81/24 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547706
(86)(22)【出願日】2022-02-08
(85)【翻訳文提出日】2023-09-01
(86)【国際出願番号】 FI2022050077
(87)【国際公開番号】W WO2022167730
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519318096
【氏名又は名称】スラパック オイ
【氏名又は名称原語表記】SULAPAC OY
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173473
【氏名又は名称】高井良 克己
(72)【発明者】
【氏名】ハイジ ペルトラ
(72)【発明者】
【氏名】アンティ パルシネン
(72)【発明者】
【氏名】カティ メリライネン
【テーマコード(参考)】
3E033
3E067
3E086
【Fターム(参考)】
3E033AA08
3E033BA13
3E033BB07
3E033BB10
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3E067AA11
3E067AB01
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3E086AD04
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3E086BB71
3E086BB85
3E086BB90
3E086CA01
3E086CA11
3E086CA40
(57)【要約】
本発明は、二層生分解性複合材料を備える容器およびクロージャに関する。さらに、本発明は、そのような容器およびクロージャを形成する方法、ならびにそれらの使用に関する。特に、本発明は、液体化粧品、特に高温多湿の環境条件にさらされる化粧品に使用するのに適した容器に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器であって、キャビティを画定する内側と反対側の外側とを有する壁を備え、前記キャビティは、閉めることが可能な開口を有し、
前記内側は、ポリヒドロキシアルカノエートから選択され、第1の厚さを有する、第1の生体ポリマーの第1の層によって形成され、前記外側は、第2の厚さを有し、前記第1の生体ポリマーとは異なる、第2の生体ポリマーの第2の重なり合う層によって形成され、前記第2の厚さは、前記第1の厚さより大きく、前記第1の層と前記第2の層とは互いに分子的に接着しており、
前記第1の層は、前記第2の層を越えて延在し、前記キャビティの前記閉めることが可能な開口を画定するカラーを形成している、
容器。
【請求項2】
前記第1の厚さと前記第2の厚さとの比は、1:1.25~1:25、例えば1:2~1:10、特に1:2.5~1:5である、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記第1の生体ポリマーは、板状顔料、特にタルク、を有する充填材等の、無機充填材を含有し、前記充填材の含有量は、前記第1の層の総重量の最大50%である、請求項1または2に記載の容器。
【請求項4】
前記第2の生体ポリマーは、2.5mm未満、特に2mm未満、例えば1mm未満、例えば0.5mm未満の分級されたサイズを有する、最大50重量%の木材粒子、特に、木粉、木の顆粒、木の削りくず、またはそれらの組合せの形態の木材粒子を含有し、請求項1~3のいずれか一項に記載の容器。
【請求項5】
前記第2の生体ポリマーは、カプロラクトンもしくはグリコール酸またはそれらの組合せ等のコモノマーを必要に応じて含有するラクチドまたは乳酸ポリマーであり、例えば、前記ポリマーは、少なくとも80体積%の乳酸モノマーまたはラクチドモノマー、特に少なくとも90体積%、特に約95~100体積%の乳酸モノマーまたはラクチドモノマーを含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の容器。
【請求項6】
前記第2の生体ポリマーは、ラクチドホモポリマーの群、5~99wt%、特に40~99wt%のラクチドホモポリマーと1~95wt%、特に1~60wt%の生分解性熱可塑性ポリマーとを有する、ラクチドホモポリマーとPBAT、PBSまたはそれらの組合せ等の他の生分解性熱可塑性ホモポリマーとのブレンド、および5~99wt%、特に40~99wt%のラクチド由来の繰り返し単位と1~95wt%、特に1~60wt%の他の重合性材料由来の繰り返し単位とを有するラクチドホモポリマーと任意の熱可塑性生分解性ポリマーとのコポリマーまたはブロックコポリマーから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の容器。
【請求項7】
前記第1の生体ポリマーは、ポリヒドロキシブタノエート、特にポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-3-ヒドロキシ吉草酸)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の容器。
【請求項8】
前記第1の生体ポリマーおよび前記第2の生体ポリマーは、150~200℃、特に175~190℃の温度で重複する範囲の融点を示す、請求項1~7のいずれか一項に記載の容器。
【請求項9】
前記第1の層は、前記第1の層の総重量の60~90%のポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-3-ヒドロキシ吉草酸)および10~40%のタルクからなる、請求項1~8のいずれか一項に記載の容器。
【請求項10】
前記第2の層は、前記第2の層の総重量の60~90%のポリ乳酸および10~40%の木材粒子からなる、請求項1~9のいずれか一項に記載の容器。
【請求項11】
前記第1の層は、周囲温度で水に対して実質的に不透過性の連続層を形成する、請求項1~10のいずれか一項に記載の容器。
【請求項12】
前記第1の層は、45℃の温度で84日間の試験期間内に10wt%未満の水分蒸発を有する連続層を形成する、請求項1~11のいずれか一項に記載の容器。
【請求項13】
前記第2の生体ポリマー層上に射出成形された、特に2k射出成形されたポリヒドロキシアルカノエートの層を備える、請求項1~12のいずれか一項に記載の容器。
【請求項14】
0.5~2mmの厚さを有する第1の層と2.5~10mmの厚さを有する第2の層とを備える、請求項1~13のいずれか一項に記載の容器。
【請求項15】
前記第1の層によって形成された前記カラーは、前記第1の層に形成された外側ねじ山を備える、請求項1~14のいずれか一項に記載の容器。
【請求項16】
キャビティを画定する内側とその反対側の外側とを有するキャップを備え、
前記内側は、ポリヒドロキシアルカノエートから選択される、第1の厚さを有する第1の生体ポリマーの第1の層によって形成され、前記外側は、第2の厚さを有し、前記第1の生体ポリマーとは異なる第2の生体ポリマーの第2の重なり合う層によって形成され、前記第2の厚さは、前記第1の厚さより大きく、前記第1の層と第2の層とは、互いに分子的に接着し、
前記内側は、前記容器の前記カラーの周りをしっかりと閉じることが可能である表面を有する、
請求項1~15のいずれか一項に記載の容器用のクロージャ。
【請求項17】
前記内面は、前記容器の前記カラーに対して気体をしっかりと閉じることが可能である、請求項16に記載のクロージャ。
【請求項18】
前記内面は、前記容器の前記カラーに対して密封を可能にするねじ山もしくはシーリング、またはその両方を示す、請求項16または17に記載のクロージャ。
【請求項19】
前記内面は、前記容器の前記カラーの突出端に対して気体をしっかりと閉じることが可能である、請求項16から18のいずれか一項に記載のクロージャ。
【請求項20】
前記内側層は、0.5~2.5mmの厚さを有する、請求項16から19のいずれか一項に記載のクロージャ。
【請求項21】
前記第2の生体ポリマーは、2.5mm未満、特に2mm未満、例えば1mm未満、例えば0.5mm未満の分級されたサイズを有する、最大50重量%の木材粒子、特に、木粉、木の顆粒、木の削りくず、またはそれらの組合せの形態の木材粒子を含有する、請求項16から20のいずれか一項に記載のクロージャ。
【請求項22】
溶融加工によって先行請求項のいずれか一項に記載の容器を形成する方法であって、
必要に応じて無機充填材と混合されたポリヒドロキシアルカノエートから選択される第1の生体ポリマーを準備するステップと、
必要に応じて最大50重量%の木材粒子を含有する第2の生体ポリマー混合物を準備するステップと、
前記第2の生体ポリマーを溶融加工することによって、内面および開口を有する容器またはクロージャの形状に成形するステップと、
前記第1の生体ポリマーを、前記容器またはクロージャの前記内面上に、前記内面がまだ柔らかいうちに、2K射出成形して、前記容器またはクロージャの前記内面を覆う連続層を提供するステップと、
射出成形によって前記第1の生体ポリマーからカラーの開口を形成するステップと、
成形された容器またはクロージャが硬化することを可能にするステップと、
を含む、方法。
【請求項23】
前記第1の生体ポリマーは、第1の温度で溶融加工され、前記第2の生体ポリマーは、第2の温度で溶融加工され、前記第1の温度および前記第2の温度は、150~200℃、特に175~190℃の範囲の温度から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の生体ポリマー混合物は、20重量%未満の前記第1の生体ポリマーを含有する、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
化粧品、食品または飲料用の閉めることが可能なジャーまたはボトルとしての、請求項16から21のいずれか一項に記載のクロージャを伴う、請求項1~15のいずれか一項に記載の容器の使用。
【請求項26】
前記容器の材料は、食品接触材料(FCM)である、請求項25に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性複合材料、特に二層生分解性複合材料に関する。特に、本発明は、そのような複合材料を含む容器および容器のクロージャに関する。さらに、本発明は、そのような容器およびクロージャを形成する方法、ならびにそれらの使用に関する。本発明の容器およびクロージャは、化粧品での使用に適している。
【背景技術】
【0002】
世界中での加工食品の大量生産によって、包装に使用されるプラスチックの量が大幅に増加している。プラスチックおよびポリマーは、低コストで衛生的であるため、食品の保存によく使用される。国内の埋め立て地が急速に拡大し、太平洋に浮かぶプラスチック廃棄物地帯が壊滅的に拡大しているため、あらゆる種類の包装について、より持続可能なソリューションを使用することが極めて重要である。
【0003】
各種大量生産産業として、例えば、食品および化粧品の包装、食品サービスの使い捨て製品は、経済的かつ環境的に持続可能な発展のために石油ベースの燃料や製品への依存を軽減しようと試みており、主な焦点は合成材料や非分解性材料の代替品としての生体ポリマーに移ってきている。今まででは、これらの使い捨て製品は使用後環境に廃棄され、ゆっくりと数十年にわたって劣化していく。その結果、膨大な量の廃棄された包装が自然リサイクルから除外される。
【0004】
関連する環境問題を考慮すると、プラスチック廃棄物の管理は重要な環境問題である。年間約3億2,000万トンのプラスチックが生産され、その約40%が包装分野で使用されている。プラスチック廃棄物の50%超が埋立地に送られており、その量は年間6,000~1億トンに達する。
【0005】
比較的短期間で環境に優しい方法で分解され得る生分解性材料の開発が急務となっている。この枠組みでは、生体ベースのポリマーは、従来のプラスチックとは異なり、有毒ガスや温室効果ガス(二酸化炭素等)の排出削減に役立つため、重要な役割を果たし得る。
【0006】
すべての堆肥化可能な材料溶液に共通するのは、乾燥状態では比較的長い保存期間を示すことである。そのため、乾燥した化粧品および油性の化粧品の長期保存に適している。しかし、湿った状態では数週間以内に、魅力的な外観を含めた使いやすさが失われる。さらに、堆肥化可能な材料は防湿特性が低いため、容器から水分が蒸発し、梱包された製品の保存寿命が大幅に短くなる。
【0007】
ほとんどの化粧品には水およびその他の湿った成分が含まれているため、堆肥化可能または生分解性の生体材料を化粧品容器に利用することは困難である。通常、最長2年の保存寿命が必要であるが、十分な機械的耐久性を備えた従来の生体ポリマーを使用することでこの目標に達する。
【0008】
第2の問題は、化粧品のジャーおよび同様の容器が伝統的に硬いことであり、ユーザーフレンドリーな触感を提供する。入手可能な生分解性材料のうち、ポリ乳酸(PLA)は、このような容器の壁の材料として使用することが可能である。
【0009】
PLAは比較的低価格で射出成形による加工が容易である等の利点があるが、水の存在下では40℃を超える温度の持続には耐えられない。その結果、そのような条件では撥水特性が崩壊し、材料の早期破壊につながり得る。最終製品の輸送および保存中には、高温に対する耐性が不可欠である。
【0010】
特に高温下での耐湿性が改善され、良好な機械的特性および環境に優しい分解方法を併せ持つ生分解性包装材料、特に化粧品、すなわち化粧品容器が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、従来技術の欠点の少なくとも一部を除去し、特に湿った状態での高温に耐え、優れた機械的耐久性を示し、コスト効率よく製造できる新規な容器およびクロージャを提供することである。
【0012】
特に、本発明は、生分解性複合材料、特に二層生分解性複合材料を備える容器およびクロージャに関する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明は、機械的に耐久性がある耐水性である容器およびクロージャを共に形成する2つの生体ポリマー層を組み合わせるという考えに基づいている。第1の生体ポリマー層の第1の生体ポリマーは、撥水性生体ポリマーであり、第2の生体ポリマー層の第2の生体ポリマーは、好ましくは、第1の生体ポリマーとは異なる。好ましい実施形態によれば、第2の生体ポリマー層は、より厚い層であり、第1の生体ポリマー層は、その表面上により薄いコーティング層を形成する。
【0014】
本発明の第1の生体ポリマーは、耐水性を示すポリヒドロキシアルカノエートから選択される。第1の生体ポリマーは、好ましくは最大40重量%の無機充填材、好ましくはタルクと混合される。第2の生体ポリマーは、好ましくは第1の生体ポリマーとは異なり、好ましくは最大50重量%の木材粒子と混合され、こうして木材プラスチック複合材(WPC)を形成するが、(木材粒子なしで)そのまま使用することもできる。
【0015】
したがって、一実施形態によれば、本発明は、第1の生体ポリマー層でコーティングされた第2の生体ポリマー層を備える二重層複合材料で形成された容器またはクロージャに関する。特に、第2の生体高分子層の内面は、第1の生体高分子層でコーティングされる。
【0016】
本発明は、そのような容器およびクロージャを形成する方法、ならびにそれらの異なる使用に関する。
【0017】
本発明の容器およびクロージャは、化粧品容器として共に使用するのに特に適している。
【0018】
より具体的には、本発明は、独立請求項の特徴部分に記載された内容を主な特徴とするものである。
【0019】
本発明によって、かなりの利点が達成される。本発明は、水の存在下でも高温環境条件に耐えるが、工業的な堆肥化条件では分解する厚壁ジャー等の容器を提供することを可能にする。
【0020】
さらに、本発明の材料、特に内層の材料は、海洋条件においても優れた分解特性を示す。
【0021】
したがって、本発明は、耐水性が向上した、環境に優しく、機械的に耐久性のある容器を提供する。さらに、本発明の複合材料は、特に化粧品において長期の保存期間を提供する。
【0022】
さらに、複合材料の撥水性および機械的特性は、一実施形態では、撥水性疎水性生体ポリマー、すなわちポリヒドロキシアルカノエートに充填材を組み込むことによって改善され得る。これらの充填材は吸水性を低下させるが、不連続な表面を形成することで生体ポリマーの分解を促進し得る。
【0023】
本発明はまた、特に2K射出成形が利用されるとき、コーティングとして機能する撥水性生体ポリマーが良好な接着を提供するため、本発明の複合材料を含む容器およびクロージャの簡略化されたコスト効率の高い製造方法を可能にし、この場合、複合材料の2つの生体ポリマー層の間に追加の接着層が存在する必要はない。
【0024】
次に、詳細な説明および添付図面を参照して、本発明をさらに詳しく検討する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】一実施形態によるジャーの概略側面断面図である。
【
図2】一実施形態によるキャップの概略側面断面図である。
【
図3】参照容器と比較して、本発明の一実施形態による容器の高温多湿条件に対する耐性を評価する試験の結果を示す図である。
【
図4】水にさらした後の本発明の一実施形態による容器および参照容器の外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(定義)
本文脈において、「容器」という用語は、キャビティを画定する内部とその反対側の外部とを有する壁を備える物体を指す。
【0027】
通常、「容器」は、ある量または体積の材料、特に所定の量または体積の材料を収容可能である、概して耐流体性、特に耐液体性の容器である。したがって、「容器」には、例えば、ジャー、フラスコ、ボトル、ポット、ピッチャー、ジャグ、ドラム缶、およびキャニスターが含まれる。
【0028】
一般に、容器は、材料を保持することが可能であり1つ以上の開口を有する閉めることが可能な部分(すなわちキャビティ)と、少なくとも1つのクロージャ、特に各開口に対して1つのクロージャと、を含む。好ましい実施形態では、クロージャは、容器の開口に対して流密または液密、さらに必要に応じて気密封止さえするように適合されている。特に、クロージャは、容器の内部から外部への材料の漏洩を防止するために、周囲から開口を密封するように適合されている。 好ましくは、クロージャは、周囲から容器への気体等、周囲から容器への流体の通過を防止するために、周囲から開口を密封するように適合されている。
【0029】
「クロージャ」には、カバー、キャップ、蓋、ストッパー、トップ、プラグが含まれる。簡潔にするために、「キャップ」という用語は「クロージャ」の同義語として使用される。
【0030】
「厚肉」容器という用語は、概して1.0mmを超える、特に1.5mmを超える、例えば2mm~50mm、通常2.5~25mm、例えば3mm~10mmの壁厚を有する容器を表す。
【0031】
ポリマーの文脈で使用される「硬い」とは、熱可塑性ポリマーまたは熱硬化性ポリマーのいずれかのポリマーが、ISO527に従って10%以下の破断点伸びを有することを意味する。
【0032】
「分級」サイズという用語は、分級された粒子のサイズに対応するメッシュサイズを有するスクリーンを使用して、分級または分離される、または特定のサイズに分級または分離され得る粒子を指すために使用される。
【0033】
規制(EU)No.10/2011に準拠して実行される移行試験は、例えば、全体的な移行試験の試験手順を説明するEN1186-3:2002規格、または分析測定を含む特定の移行試験の一般的な試験手順について説明するEN13130規格に従って実行される。
【0034】
別段の記載がない限り、「分子量」または「平均分子量」という用語は、重量平均分子量(「MW」とも略される)を指す。
【0035】
本明細書に別段の記載がない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書で言及されるパーセントは、それぞれの組成物の総重量に基づく重量パーセントとして表される。
【0036】
別段の記載がない限り、本明細書において実験的に測定または決定された特性は、室温で測定または決定されたものである。特に記載のない限り、室温は25℃である。
【0037】
2K成形または2K射出成形は、2ショット、多成分射出成形またはコインジェクションを表す。
【0038】
本発明の文脈において、用語「第1の生体ポリマー層」、「第1の層」、「コーティング層」および「内層」は、第1の生体ポリマーを備える生体ポリマー層を指す同義語として使用される。同様に、「第2の生体ポリマー層」、「第2の層」、および「外層」という用語は、好ましくは第1の生体ポリマーとは異なる、第2の生体ポリマーを備える生体ポリマー層を互いに指す同義語として使用される。
【0039】
第1の層、第2の層、またはその両方の材料は、規制(EC)No1935/2004に規定されているように、食品接触材料(FCM)として好適であることが好ましい。
【0040】
(容器)
本発明は、容器用生分解性複合材料に関する。
【0041】
上記のように、本発明の容器は、キャビティを画定する内側と反対側の外側とを有する壁を有する物体である。好ましい実施形態によれば、容器のキャビティは閉めることが可能な開口を有する。
【0042】
容器の形状は特に限定されず、円形、角形等の任意の形状を有し得る。しかし、好ましい実施形態によれば、容器は球形断面を表す丸い形状を有し、これはほとんどの用途に実用的であり、それによって容易に製造される。
【0043】
通常、本発明の容器は、1~10,000ml、通常、5~1000ml、例えば10~250ml、例えば15~200mlまたは20~100mlの材料を保持することが可能である。本発明の容器は、1~10,000gの材料、通常、5~1000g、例えば10~250g、例えば15~200gまたは20~100gの材料を収容することが可能である。
【0044】
図1から明らかなように、本技術の一実施形態によれば、容器1は生分解性複合材料の二重層2、3から形成される。好ましい実施形態によれば、容器の壁の内側は第1の生体ポリマーの第1の層2で形成され、外壁3は第2の生体ポリマーの第2の層で形成される。好ましくは、第2の層は、第1の層と重なり、それを部分的に囲む。
図1に示すように、第1の層は、容器の開口で第2の層を越えて延在してカラー4を形成し、これが容器のキャビティ5への開口を画定する。
【0045】
一実施形態によれば、二重層複合材料は、互いに付着して複合材料を形成する2つの異なる生体ポリマー層を有する材料である。好ましい実施形態によれば、層は、別個の接着材料を使用せずに互いに取り付けられる。
【0046】
したがって、一実施形態によれば、複合材料は、その内面が第1の生体ポリマー層、すなわちコーティング層でコーティングされた生体ポリマー層(すなわち、第2のポリマーの層)を備える。
【0047】
図1に示すように、第1の層は、容器の開口で第2の層を越えて延在し、容器1のキャビティ5への開口を画定する突出カラー4を形成する。
【0048】
一実施形態によれば、
図1にさらに示されるように、第1の層2によって形成されるカラーは、第1の層に形成されるねじ山6を備える。特に、ねじ山は、カラー4の外面に形成される。ねじ山は、容器1のクロージャの内側の対応する表面に適合するように適合される。
【0049】
図2は、好ましくは容器の第1の層2と同じ材料である第1のポリマーの第1の層8を備えた同様の構造を有するクロージャまたはキャップを示す。外側には第2の層9があり、これは、好ましくは、容器の第2の層3と同じ材料である。第1の層8の内面には、容器の外面の突出カラー4に合致するように適合されたねじ山10が存在する。
【0050】
第1の生体ポリマーの第1の層は、第1の厚さを有し、第2の生体ポリマーの第2の層は、第2の厚さを有する。好ましくは、第2の厚さは第1の厚さよりも大きい。一実施形態によれば、第1の厚さと第2の厚さとの比は、1:1.25~1:25、例えば1:2~1:10、特に1:2.5~1:5である。
【0051】
一実施形態によれば、第1の層は、0.1~5mm、好ましくは0.5~2mm、例えば0.5~1mmの厚さを有する。
【0052】
一実施形態によれば、第2の層は、2~12mm、好ましくは2.5~10mm、例えば3~8mmの厚さを有する。
【0053】
好ましい実施形態によれば、第1の層の第1の生体ポリマーは、熱可塑性生体ポリマー、好ましくはポリヒドロキシアルカノエート、特にポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシ吉草酸)(PHBV)から選択される撥水性生体ポリマーである。PHBVは、細菌によって自然に生成される生分解性、非毒性、生体適合性プラスチックである。これは、3-ヒドロキシブタン酸と3-ヒドロキシペンタン酸との共重合によって得られ得る熱可塑性の直鎖脂肪族ポリエステルである。概して、ポリヒドロキシアルカノエートは透水性が低く、湿潤条件下での熱安定性が良好である。さらに、ポリヒドロキシアルカノエートは、工業用堆肥化および海洋条件そのものにおいて分解可能であるが、ポリヒドロキシアルカノエートは、PLA等の他の機械的に耐久性のある生体ポリマーをベースとした厚肉生分解性材料と組み合わせても分解を軽減しない。
【0054】
一実施形態によれば、本発明で使用されるポリヒドロキシアルカノエート、特にポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-3-ヒドロキシ吉草酸)は、1.0~1.5kg/m3、例えば1.25kg/m3の比重を有する。ポリヒドロキシアルカノエートのメルトフローインデックスは、好ましくは、8~15g/10min(190℃、2.16kg)であり、引張強度は35~40MPaである。
【0055】
一実施形態によれば、ポリヒドロキシアルカノエートの融点は150℃より高く、特に155℃より高く、好ましくは150~200℃、例えば165~180℃である。
【0056】
好ましい実施形態によれば、ポリヒドロキシアルカノエートは、固化後、半結晶形または結晶形である。一実施形態によれば、ポリヒドロキシアルコネートは、少なくとも60℃、例えば80℃の温度を使用して射出成形において結晶化される。結晶化ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-3-ヒドロキシ吉草酸)は、23℃、相対湿度85%で0.5g*mm/m2*24時間未満の透水率を有し、全体の移行量が1.0mg/dm2未満であることが好ましい(3日間、40℃、95%EtOH)。
【0057】
一実施形態によれば、ポリヒドロキシアルコアナートは、23℃で1g*mm/m2*24時間未満、好ましくは23℃で0.5g*mm/m2*24時間未満の透水率を有する。
【0058】
一実施形態によれば、第1の生体ポリマーは、第1の生体ポリマー層のマトリックス、すなわちコーティング層を形成する。第1の生体ポリマー層は、生体ポリマーマトリックス中に他の成分をさらに含み得る。
【0059】
一実施形態によれば、第1の生体ポリマー層は、充填材、好ましくは無機充填材、より好ましくは撥水性無機充填材をさらに含有する。特に、第1の生体ポリマー層は、好ましくはタルクまたはカオリン等の層状粒子によって形成される無機充填材を含む。第1の生体ポリマー層に1つ以上の充填材を組み込むことによって、層の撥水性および機械的特性をさらに改善し得る。これらの充填材は通常、吸水性を低下させるが、不連続な表面を形成することで生体ポリマーの分解を促進し得る。さらに、充填材、特に無機充填材を含有する第1の生体ポリマー層は、特に2K射出成形が使用される場合、第2の生体ポリマー層への接着性がさらに向上する。
【0060】
好ましくはタルクが充填材として使用され、特に平均粒径が1~2μm、例えば1.8μm、嵩密度が0.5~1g/cm3、例えば0.7g/cm3を有し、好ましくは層状構造が使用される。
【0061】
一実施形態によれば、充填材の含有量は、第1の層の総重量の最大50%、好ましくは1~40%、より好ましくは10~35%、例えば20~30%である。
【0062】
一実施形態によれば、使用される充填材の平均粒径は10μm未満、好ましくは5μm未満、より好ましくは3μm未満である。
【0063】
一実施形態によれば、第1の層は、第1の層の総重量の60~90wt%のポリヒドロキシアルカノエート、好ましくはポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-3-ヒドロキシ吉草酸)、および10~40wt%の充填材、好ましくはタルクからなる。
【0064】
一実施形態によれば、他の充填材、特に鉱物充填材および/または顔料も第1の生体ポリマー層中に存在し得る。このような充填材および顔料は、例えば、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、三カルシウム、セピオライト硫酸バリウム、硫酸亜鉛、二酸化チタン、酸化アルミニウム、アルミノケイ酸塩、ベントナイトおよびシリカベースの充填材、およびそれらの混合物の群から選択され得る。一実施形態では、第1の生体ポリマー層は、材料に色の特性を与えることが可能である細かく分割された材料の粒子をさらに含む。染色材料は、例えば、溶融加工中に使用される加工温度で安定な色を有する天然材料から選択され得る。一実施形態では、染色材料は、最大200℃の温度で安定である。
【0065】
一実施形態によれば、第1の生体ポリマー層は、他の生分解性生体ポリマーをさらに含み得る。第1の層は、例えば、10~30wt%、好ましくは15~20wt%の他の生分解性生体ポリマー、例えばPBAT等の生体ポリマーを含み得る。このようなさらなる生体ポリマーを使用して、第1の生体ポリマー層の耐衝撃性をさらに改善し得る。
【0066】
さらに、鎖延長剤、安定剤、分散剤、酸化防止剤、架橋剤、滑剤もしくは可塑剤、またはそれらの任意の混合物等の添加剤も第1の生体ポリマー層に添加され得る。添加剤は、例えば、無水マレイン酸グラフト化PLA等の反応性グラフト化ポリマー、カルナウバワックス等の植物性ワックス、脂肪酸エステルまたは脂肪エステルのブレンド、グリセロール、トリエチル、アセチルトリブチルまたはクエン酸トリブチル、クエン酸、キシリトールおよびソルビトール等のポリオール、キャノーラ油または亜麻仁油等の植物油、ステアリン酸カルシウムまたはステアリン酸亜鉛、ソルビタンエステル、またはポリビニルアルコール等であり得る。一実施形態によれば、添加剤の量は、第1の生体ポリマー層の総重量の1~10wt%、好ましくは1~5wt%、特に1~3wt%である。
【0067】
一実施形態によれば、第1の生体ポリマー層の材料は、ポリヒドロキシアルカノエートを充填材、顔料、添加剤および/または他の生分解性生体ポリマーと溶融混合することによって形成され得る。次いで、得られたブレンドまたは混合物を使用して、好ましくは第2の生体ポリマー層の表面、特に内面上に2K射出成形によって本発明の複合材料を形成され得る。
【0068】
好ましい実施形態によれば、第1の層は、周囲温度で実質的に水に対して不透過性の連続層を形成する。
【0069】
一実施形態によれば、第1の層は、2K射出成形容器の内層として使用するとき、45℃の温度で56日の試験期間内に4重量%未満の水分蒸発を有する連続層を形成する。
【0070】
一実施形態によれば、第1の層は、コーティング層として、温度38℃および湿度90%で1.1g*mm/m2/24時間未満の透水性を有する。
【0071】
第2の層の生体ポリマー、すなわち第2の生体ポリマーも、好ましくは熱可塑性生体ポリマーである。しかしながら、好ましい実施形態によれば、第2の生体ポリマーは、第1の生体ポリマーとは異なる。したがって、好ましくは、第2の生体ポリマーは、第1の生体ポリマーの最大20wt%、より好ましくは最大10wt%、適切には最大5wt%を含む。一実施形態では、第2の生体ポリマーは、第1の生体ポリマーを含まないか、または実質的に含まない。
【0072】
一実施形態によれば、第2の生体ポリマーは、カプロラクトンもしくはグリコール酸またはそれらの組合せ等のコモノマーを必要に応じて含有するラクチドまたは乳酸ポリマーであり、例えばポリマーは、少なくとも80体積%の乳酸モノマーまたはラクチドモノマー、特に少なくとも90体積%、特に約95~100体積%の乳酸モノマーを含有する。
【0073】
一実施形態によれば、第2の生体ポリマーは、ラクチドホモポリマーの群、ラクチドホモポリマーとPBAT、PBSまたはそれらの組合せ等の他の生分解性熱可塑性ホモポリマーとのブレンドから選択される。
【0074】
一実施形態によれば、第2の生体ポリマーは、ラクチドホモポリマーの群、5~99wt%、特に40~99wt%のラクチドホモポリマーと1~95wt%、特に1~60wt%の生分解性熱可塑性ポリマーとを有する、ラクチドホモポリマーとPBAT、PBSまたはそれらの組合せ等の他の生分解性熱可塑性ホモポリマーとのブレンド、およびラクチドホモポリマーと任意の熱可塑性生分解性ポリマーとのコポリマーまたはブロックコポリマーから選択される。
【0075】
一実施形態によれば、5~99wt%、特に40~99wt%のラクチド由来の繰り返し単位および1~95wt%、特に1~60wt%、他の重合性材料に由来する繰り返し単位である。
【0076】
一実施形態では、ポリ乳酸またはポリラクチド(両方とも略語「PLA」と呼ばれる)が使用される。特に好ましい一実施形態は、約10,000g/mol~約600,000g/mol、好ましくは約500,000g/mol未満または約400,000g/mol未満、より好ましくは約50,000g/mol~約300,000g/mol、または約30,000g/mol~約400,000g/mol、最も好ましくは約100,000g/mol~約250,000g/mol、または約50,000g/mol~約200,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有するPLAポリマーまたはコポリマーを使用することを含む。
【0077】
PLAは、結晶質、半結晶質、または非晶質であり得る。
【0078】
一実施形態では、PLAは、半結晶質形態または部分結晶質形態である。半結晶質PLAを形成するには、ポリラクチド中の繰り返し単位の少なくとも約90モルパーセントがL-ラクチドまたはD-ラクチドのいずれかであることが好ましく、少なくとも約95モルパーセントがさらに好ましい。
【0079】
ポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタレート)(PBAT)およびポリ(ブチレンサクシネート)(PBS)は、化石ベースまたは部分的に再生可能ベースの資源に由来する合成熱可塑性ポリマーである。PBATとPBSとは生分解性ポリマーであるが、どちらも比較的柔らかく柔軟な材料である。したがって、ねじ山を備えた容器の内層は材料による一定の剛性を必要とするが、むしろPLA等の他の生体ポリマーとの混合物であるため、耐久性のあるコーティング自体にはあまり適していない。
【0080】
一実施形態によれば、第2の生体ポリマーはポリ乳酸(PLA)である。PLAは、再生可能資源に由来する合成熱可塑性ポリエステルで、現在使用されている最も一般的な生体プラスチックの1つである。PLAは生分解性であると考えられているが、ほとんどの用途において非常に耐久性がある。
【0081】
一実施形態によれば、第2の生体ポリマーを含む第2の層は、好ましくは第1の生体ポリマーとは異なり、さらに必要に応じて最大50重量%の木材粒子を含むが、第2の生体ポリマーはそのまま使用され得る。
【0082】
好ましい実施形態によれば、第2の生体ポリマー層は、それ自体がすでに複合材料、特に木材プラスチック複合材料(WPC)である。このような第2の生体ポリマー層では、生体ポリマーは、木材粒子が分散されたマトリックスを形成する。
【0083】
木材粒子は、例えば、木粉、木材顆粒、もしくは木材削りくず、またはそれらの任意の組合せの形態であり得る。木材粒子は、他の任意の適切な形態であり得る。好ましい実施形態によれば、木材粒子は、2.5mm未満、特に2mm未満、例えば1mm未満、例えば0未満のふるいにかけられたサイズを有する。
【0084】
木材粒子は、任意の木材材料、すなわち、例えば、マツ、トウヒ、カラマツ、ジュニパー、カバノキ、ハンノキ、アスペン、ポプラ、ユーカリおよび熱帯混合木材、ならびにそれらの組合せを含む、針葉樹または広葉樹、に由来し得る。好ましい実施形態では、木材材料は、広葉樹、特にポプラおよびアスペン等のポプルス種の広葉樹から選択される。
【0085】
木材粒子は、生体ポリマーが、木材粒子が分布する、好ましくは均一に分布する連続マトリックスを形成するように、生体ポリマーと木材粒子とを組み合わせることによって、第2の生体ポリマー層の溶融加工性の特性を可能にする。生体ポリマー組成物に木材粒子を使用すると、材料コストが削減され、材料が真に堆肥化可能になる。特に、非針葉樹材を使用することによって、溶融加工中に針葉樹種に典型的なテルペンおよびその他の揮発性成分のガス放出を回避し得る。
【0086】
一実施形態によれば、第2のコーティング層は、第2の層の総重量から計算して5~50wt%、好ましくは10~40wt%、例えば20~35wt%の木材粒子を含む。
【0087】
一実施形態によれば、第2の層は、第2の層の総重量の60~90%のポリラクチドと10~40%の木材粒子とからなる。
【0088】
一実施形態によれば、第1の生体ポリマーはポリヒドロキシアルカノエート、特にPHBVから選択され、第2の生体ポリマーはPLAであり、PLA材料自体の機械的耐久性を残したまま、PLAベースの容器を介した水の蒸発を大幅に低減し得る。驚くべきことに、本発明では、これら2つの材料の結晶化特性および収縮特性が異なるにもかかわらず、それらが互いに適合することが判明した。したがって、PHBVとPLAとは化学構造が似ているため、両者の間に優れた接着性が見られる。このため、コーティング層、すなわち第1の生体ポリマー層の剥離効果の低下が観察され得る。
【0089】
一実施形態によれば、第1および第2の生体ポリマー層は互いに接着されており、好ましくは分子的に接着されている。したがって、好ましい実施形態によれば、別個の接着材料は必要ない。
【0090】
したがって、一実施形態によれば、本発明は、容器であって、キャビティを画定する内側と反対側の外側とを有する壁を備え、キャビティは、閉めることが可能な開口を有し、
内側は、ポリヒドロキシアルカノエートから選択される、第1の厚さを有する第1の生体ポリマーの第1の層によって形成され、外側は、第1の生体ポリマーとは異なり最大50重量%の木材粒子を有し第2の厚さを有する、第2の生体ポリマーの第2の重なり合う層によって形成され、第2の厚さは、第1の厚さより大きく、第1の層と第2の層が互いに分子的に接着しており、
第1の層は、第2の層を越えて延在し、キャビティの閉めることが可能な開口を画定するカラーを形成している、容器に関する。
【0091】
一実施形態によれば、第1および第2の生体ポリマーは、150~200℃、特に175~190℃の温度で重複する範囲の融点を示す。
【0092】
(クロージャ)
本発明はまた、本発明の容器用のクロージャにも関する。クロージャは、キャビティを画定する内側と反対側の外側とを有するキャップを備える。
【0093】
好ましい実施形態によれば、クロージャは、本発明の容器と同じ生分解性複合材料で形成される。
【0094】
したがって、一実施形態では、容器およびクロージャの第1のポリマーは、容器の説明に関連して上記に列挙したものから選択される。
【0095】
したがって、一実施形態では、容器およびクロージャの第2のポリマーは、容器の説明に関連して上記に列挙したものから選択される。
【0096】
一実施形態によれば、クロージャのキャップの内側は第1の生体ポリマーの第1の層によって形成され、外側は第1の生体ポリマーとは異なる第2の生体ポリマーの第2の重なり合う層によって形成される。
【0097】
一実施形態によれば、キャップの内側は、容器のカラーの周囲でしっかりと閉じることが可能である表面を有する。好ましい実施形態によれば、内面は、容器の掌側に対して気体をしっかりと閉じることが可能である。
【0098】
さらなる実施形態によれば、内面は、容器のカラーに対するシーリングを可能にするねじ山またはシーリング、またはその両方を示す。
【0099】
図2は、好ましくは容器の第1の層2と同じ材料であるポリマーの第1の層8を備えた同様の構造を有するクロージャまたはキャップを示す。外側にはさらなる層9があり、これは容器の第2の層3と同じ材料であることが好ましい。第1の層8の内面には、容器の外面の突出カラー4に適合するように適合されたねじ山10がある。
【0100】
クロージャにおいて、クロージャの第1の層は、第1の厚さを有する第1の生体ポリマーによって形成され、クロージャの第2の層は、第2の厚さを有する第2の生体ポリマーである。好ましくは、クロージャの第2の厚さは、クロージャの第1の厚さよりも大きい。一実施形態によれば、第1の厚さと第2の厚さとの比は、1:1.1~1:25、例えば1:1.25~1:10、特に1:2.5~1:5である。
【0101】
一実施形態によれば、クロージャの第1の層は、0.1~5mm、好ましくは0.5~2mm、例えば0.5~1mmの厚さを有する。
【0102】
一実施形態によれば、第2の層は、2~12mm、好ましくは2.5~10mm、例えば3~8mmの厚さを有する。
【0103】
一実施形態によれば、本発明は、キャビティを画定する内側とその反対側の外側とを有するキャップを備え、キャップの内側は、ポリヒドロキシアルカノエートから選択される、第1の厚さを有する第1の生体ポリマーの第1の層によって形成され、外側は、第1の生体ポリマーとは異なり最大50重量%の木材粒子を有し第2の厚さを有する、第2の生体ポリマーの第2の重なり合う層によって形成され、第2の厚さは、第1の厚さより大きく、クロージャの第1の層と第2の層が互いに分子的に接着しており、キャップの内側は、容器のカラーに対してまたはその周りにしっかりと閉じることが可能である表面を有する、本発明の容器用のクロージャに関する。
【0104】
通常、湿潤条件では、好ましくは第2の生体ポリマー層に存在する、木材粒子の吸湿と高温とが組み合わさって生体ポリマーマトリックスの動きを誘発し、木材プラスチック複合材(WPC)の変形を引き起こす。湿気に関連した体積変化は、木材粒子のサイズとともに増加する。これによって、より大きなフレークまたは繊維を有するWPCの変形が増大し、内部張力が増大する。WPCの張力が大きくなると、微細な亀裂が生じ、木材充填材が酸素や湿気にさらされ、全体の表面積が増加する。これによって、真菌の攻撃が発生し、引張強度が低下する。木材粒子は、長期間水にさらされると引張強度が低下する。したがって、引張強度の低下は、亀裂の結果だけでなく、さらされた木材粒子の増加およびさらされた木材粒子の引張強度の低下によっても生じる。木材粒子のチップまたは繊維のサイズおよび形状もまた、配合中に変化する。しかし、本技術では、膨潤に関する問題は、撥水性生体ポリマー層、すなわち第1の生体ポリマー層がそのような第2の生体ポリマー層を湿気、特に容器内の製品の湿気から覆うことによって解決される。
【0105】
上記の実施形態では、容器のカラーに対してクロージャを閉じるためのねじ山付き結合が示されている。ねじ山付き表面に加えて、またはその代替として、カップリングはまた、クロージャによる容器のしっかりと閉じることを達成するために、様々なシーリングをも備え得る。
【0106】
(製造)
さらに、本技術は、本発明の容器またはクロージャを形成する方法にも関する。
【0107】
好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、好ましくは射出成形、特に2K射出成形と組み合わせた溶融加工に基づく。2K射出成形は2つの射出ステップを含む射出成形方法であり、特性の異なる2つの材料を1つの射出成形プロセスで1つの最終製品に加工できるため、コスト面で大きなメリットがある。
【0108】
2K射出成形のさらなる利点は、プロセスが一定であることと、手動で挿入する必要がないため、他の構成要素を損傷するリスクを回避できることである。また、スプレー等の他のコーティングプロセスと比較した場合、サイクルタイムにおいても利点がある。スプレーは、別の処理ステップを必要とするため時間がかかり、多くの場合材料間の接着が効果的ではないだけでなく、必要な食品との接触の承認や容器システム全体の生分解に到達する際の課題も生じる。2K射出成形によって製造される本発明の材料は、コーティングとコア材料との間の接着を改善するために伝統的に使用される追加の接着層を必要としない。
【0109】
2K射出成形は、コーティングのための滑らかな表面が必要な場合にも優れた技術である。容器製品の表面平滑度は複合材料の吸水率および劣化速度に大きく影響する。また、2K射出成形を利用して第1の生体ポリマーを第2の生体ポリマー層の表面に塗布することによって、剥離を防止するのに十分な機械的特性を有するコーティングを作製することが可能である。それでも、オーバーモールディングと比較した2K射出成形の主な利点の1つは、射出される生体ポリマーがまだ熱く、まだ収縮していないことである。これによって、第2の構成要素にバリが形成されるリスクが事実上排除される。さらに、表面は「ほぼ」清浄で、良好な分子接着が可能になる。
【0110】
下記の説明は、しかるべき変更を加えた上で、クロージャの製造にも同様に適用可能であることに留意されたい。上記のように、容器の第1および第2のポリマーおよびポリマー材料は、クロージャの対応する第1および第2のポリマーおよびポリマー材料として使用され得る。
【0111】
容器を形成するための本発明の方法の一実施形態によれば、まず、第1の生体ポリマーおよび第2の生体ポリマーが提供される。好ましい実施形態によれば、両方の生体ポリマーはブレンドまたは混合物として提供される。両方のブレンドまたは混合物は、適切な温度で所望の成分を溶融加工することによって個別に製造される。
【0112】
一実施形態によれば、第1の生体ポリマーブレンドまたは混合物は、第1の生体ポリマーと、必要に応じて、充填材、添加剤または他の生体ポリマー等の上記の追加成分とを含む。
【0113】
したがって、一実施形態によれば、第1の生体ポリマーブレンドまたは混合物は、共回転二軸押出機を使用して第1の生体ポリマーと任意の追加成分、特に充填材を共に溶融混合することによって形成される。例えば、PHBVおよび30wt%のタルクは、120-160-170-160-150-150℃の温度プロファイルを有する配合機内で溶融混合される。
【0114】
一実施形態によれば、ポリマーの劣化を避けるために、配合中の材料の溶融温度は180℃を超えず、好ましくは175℃を超えない。最終化合物、すなわち第1の生体ポリマーブレンドまたは混合物のメルトフローインデックスは十分に制御されるべきであり、その結果、メルトフローインデックスの測定に温度190℃、重量2.16kgを使用したとき、好ましくは6~15g/10min、好ましくは6~12g/10minのメルトフローインデックス値が得られる。
【0115】
また、好ましくは最大50重量%の木材粒子と必要に応じて他の適切な成分とを含む、第2の生体ポリマーのブレンドまたは混合物も提供される。好ましい実施形態によれば、ブレンドまたは混合物は、溶融混合によって形成される。
【0116】
一実施形態によれば、次に2K射出成形が実行される。2K射出成形は、第1の生体ポリマー層が内層を形成し、第2の生体ポリマー層が外層を形成するように行われる。一実施形態によれば、第1の生体ポリマー層がまず成形され、次いで、第1の生体ポリマー層が完全に冷却される前に、第2の生体ポリマー層がそれを覆うように成形される。別の実施形態では、第2の生体ポリマー層がまず成形され、その後、第2の生体ポリマー上に第1の生体ポリマー層が成形される。
【0117】
一実施形態によれば、第1の生体ポリマー層、すなわち内層は、まず、好ましくは30~80℃、より好ましくは40~70℃、例えば60℃の温度を有する熱型に射出成形される。一実施形態によれば、内側コーティング層は、PHBVおよびタルクを含有する。次に、第2の生体ポリマー層、つまり外層が射出成形されて、第1の生体ポリマー層が覆われる。好ましい実施形態によれば、第2の層は、第2の層の金型が冷やされ、内側金型(第1の生体ポリマー層を成形する)が例えば60℃の温度で熱される方法で射出成形される。
【0118】
別の実施形態によれば、第2の生体ポリマー層、すなわち外層は、まず射出成形され、好ましくは冷間成形される。次に、第1の生体ポリマー層、つまり内層が射出成形される。好ましい実施形態によれば、第1の層は、好ましくは30~80℃、より好ましくは40~70℃、例えば60℃の温度を有する熱型に射出成形される。一実施形態によれば、内側コーティング層はPHBVおよびタルクを含有する。
【0119】
一実施形態によれば、第2の生体ポリマーブレンドまたは混合物は、まず、内面を有する容器またはクロージャの形状に溶融加工され、容器は開口をも有する。次いで、第1の生体ポリマーは、容器またはクロージャの表面上に、当該表面が柔軟であるうちに、2K射出成形され、容器またはクロージャの内面を覆う連続層を提供する。
【0120】
一実施形態によれば、容器の内面および外面が成形されると、開口において射出成形によって第1の生体ポリマーからカラーが形成される。最後に、成形された容器またはクロージャを硬化させる。
【0121】
したがって、一実施形態によれば、本発明は、
必要に応じて無機充填材と混合されたポリヒドロキシアルカノエートから選択される第1の生体ポリマーを準備するステップと、
第1の生体ポリマーを最大20wt%含有する第2の生体ポリマー混合物を提供するステップと、
第2の生体ポリマーを溶融加工することによって、内面および開口を有する容器またはクロージャの形状に成形するステップと、
第1の生体ポリマーを容器またはクロージャの内面上に、当該表面がまだ柔らかいうちに、2K射出成形して、容器またはクロージャの内面を覆う連続層を提供するステップと、
射出成形によって第1の生体ポリマーからカラーの開口を形成するステップと、
成形された容器またはクロージャが硬化することを可能にするステップと、
を含む、溶融加工によって容器を形成する方法に関する。
【0122】
表1は、第1の生体ポリマー層と第2の生体ポリマー層との両方の射出に対する、本発明の一実施形態による2K射出成形パラメータを示す。
【0123】
【0124】
一実施形態によれば、2K射出の冷却時間は少なくとも10秒、好ましくは少なくとも30秒、より好ましくは約60秒である。
【0125】
一実施形態によれば、第1の生体ポリマーは第1の温度で溶融加工され、第2の生体ポリマーは第2の温度で溶融加工される。好ましくは、第1および第2の温度は、150~200℃、特に175~190℃の範囲の温度から選択される。
【0126】
最後に、本発明は、本発明の容器およびクロージャの使用に関し、特に共に使用することにも関する。一実施形態によれば、容器は、化粧品、食料品、または飲料用の閉めることが可能な容器またはボトルとしてクロージャと共に使用され得る。
【実施例】
【0127】
(実施例1:第1の生体ポリマーの調製)
PBHV(ENMAT Y1000P)を80℃で4時間乾燥する。メジアン粒径1.7μmのPHBVおよびタルクは、別々の重量式フィーダから二軸押出機に供給される。PHBVは押出機のゾーン1から供給され、タルクは押出機中央のサイドフィーダから供給される。材料を、120-160-170-160-150-150℃の処理温度、毎分300回転のスクリュー速度および総処理量40kg/hを使用して、70wt%のPHBVおよび30wt%のタルクの組成で溶融混合する。得られた化合物は、174℃の溶融温度、75%のトルク、57~61barの溶融圧力を有する。生成したストランドを水浴で冷却し、粒状化する。得られた化合物のメルトフローインデックスは5.8~6.2g/10min(190℃、2.16kg)である。
【0128】
(実施例2:コンテナおよびクロージャの形成)
容器外径60±0.15mm、内径50.5mmの製品径の容器金型を用いて2K射出成形を行った。容器の容量は50mlであった。使用した金型の温度は、内側のコーティング層、すなわち、実施例1によるPHBVおよびタルクを含む第1の生体ポリマー層については60℃であり、外側のPLA-木材ベースの第2の層については低温(20~40℃)であった。塗装層の厚さは0.8mm、カラー部分におけるねじ山の厚さは0.9~1.7mm、木材含有外層の厚さは4.1mmであった。
【0129】
容器の場合、まず内側のコーティング層を射出成形して熱間成形した。次に、PLAベースの材料の金型が低温、内部の金型が60℃である方法で、木材ベースの外層を射出成形した。クロージャは、まず冷間金型を使用して外層を射出し、その後、60℃の温度を有する金型を使用して内層を射出した。射出成形のサイクルタイムは冷却を含めて80秒であった。
【0130】
(実施例3:試験結果)
(水分の蒸発)
30wt%のタルクを含むPHBVを備える第1の生体ポリマー層と、木材粒子を含むPLAを備える第2の生体ポリマー層とを有する、本発明の2K射出成形容器の水蒸発特性を、2つの参照容器と比較した。すべての容器は、同じ第2の層、つまり外層を有していたが、内層は異なっていた。内層の組成を表2に示す。サンプル2K~Cは本発明によるサンプルである。他の参照容器では、内層はPLAを備え、別の参照容器では、市販のPLAベースの複合材料であるビオドロマーIを備えた(国際公開第2013/169174号に記載)。すべての容器の内層の厚さは、0.8mmであり、外層の厚さは4.1mmであった。容器のクロージャも、容器と同じ形状の2K技術によって製造された。
【0131】
【0132】
ライナーをすべてのサンプルに配置して、容器が適切に締め付けられるようにした。容器は水で満たされていた。各タイプの容器(A、B、C)を3つずつ、室温と45℃のオーブン内との両方において室内湿度で保存した。さらに、2K-Cの内層を有する容器を50℃で4週間試験した。各種類の容器を2つずつ未開封のままにし、1週間ごとに容器の重量変化を測定した。亀裂、壁の崩壊、変色、およびその他の不適合の兆候を検査するため、各タイプのコンテナの1つを毎週開封して視覚的に評価した。試験を12週間継続した。試験が完了した後、最後にすべての容器の重量を測定した。水を容器から除去し、空の容器の重さを量り、目視検査した。
【0133】
室温および45℃で4、8、12週間後の異なる内層での水の蒸発、および50℃での2K-C容器の4週間後の蒸発を表3に示す。2K-C(PHBV+タルク)コーティング、すなわち本発明のコーティングが使用される場合、高温での水の蒸発は著しく低い。他のコーティング(2K-Aおよび2K-B)による水の蒸発は、本発明のコーティングによるものよりも3.7~5.1倍高く、水ベースの製品の長期保存には失敗することを示している。
図2に見られるように、45℃で12週間後の2K射出成形容器のコーティング層の耐水性は、1年以上の保存寿命に相当する。したがって、
図2は、45℃で12週間水にさらした後の容器の外観を示す(左2K-A、中2K-B、右2K-C)。2K-Cコーティングは、12週間水にさらした後もその機械的特性と視覚的特性とを維持していることがわかり得る。しかし、2K-A(PLA)コーティングは結晶化して亀裂が発生し、容器の破損につながり、2K-B(PLAベースの複合材料)は層間に気泡を生成し始め、ポリマー層間の接着力の低下を示す。表3からわかるように、50℃での2K-C容器の水の蒸発は、45℃での参照容器よりも2倍低く、容器に視覚的な変化はなかった。
【0134】
【0135】
(高温多湿な条件に対する耐性)
本発明の容器の高温および湿潤条件に対する耐性を調査し、2つの参照の2K射出成形容器と比較した。すべての容器は同じ外層、つまりPLAと木材とで構成される第2の生体ポリマー層を持っていた。内層の組成を表3に示す。サンプル2K~Cは本発明によるサンプルである。このような容器は高湿度および高温(24時間、45℃、相対湿度95%)にさらされている。その結果、PLAコーティングを施した容器のコーティングが結晶化してクラックが発生し、コーティング性能が不十分となった。本発明のコーティングは、高温多湿の条件にさらした後も変化がなかった。曝露後の容器およびクロージャを
図1に示す。本発明のコーティングを施した容器を左側に示し、PLAコーティングを施した容器を右側に示す。
【0136】
(周期大気試験)
表3の容器には、-10℃、rH=35%、24時間;室温(23℃)、rH=50%、24時間;45℃、rH=75%、24時間;室温(23℃)、rH=50%、24時間、の変化条件によって周期大気試験をも実施した。このサイクルを3回繰り返した。繰り返し試験後、視覚的な変化コーティングの剥離は観察されず、重量変化は+0.6%であった。
【0137】
(蒸発と水性エマルジョンとの相溶性)
さらに、容器(表2に示す、2K-Cは本発明による)と水ベースのエマルジョンとの蒸発および適合性を40℃で試験した。エマルジョンの水分含量は73%であり、他の成分はイソヘキサデカン、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、グリセリン、ジカプリリルエーテル、オレイン酸デシル、シアバターノキ(シア)バター、ジメチコン、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸PEG-100、乳酸C12~13アルキル、アラキジルアルコール、異性化糖、アラキジルグルコシド、ベヘニルアルコール、アラントイン、アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンナトリウムコポリマー、フェノキシエタノール、メチルパラベン、トリエタノールアミン、エチルパラベン、クエン酸、クエン酸ナトリウムである。ライナーを含む各タイプの3つの容器(2K-A、2K-B、2K-C)にエマルジョンを充填し、トルクメーターで密閉した。4、8、12週間後に、水の蒸発、亀裂に対する耐性、視覚的変化を評価した。使用した方法は、水の蒸発実験で説明したものと同じであった。表4に示すように、12週間後の40℃における2K-C容器の水蒸発率は2.7%であったが、2K-Aおよび2K-Bの水蒸発率はそれぞれ10.7%、11.5%であった。2K-Aおよび2K-Bコンテナではいくつかのねじ山のねじれが検出されたが、2K-Cコンテナおよびそのねじ山には変化はなかった。2K-Aおよび2K-C容器では、水の蒸発速度と相関して、エマルジョンは明らかに増粘した。2K-C容器に保存されたエマルジョンでは、視覚的に観察できる変化は検出できなかった。
【0138】
【0139】
(移行)
充填法によって異なる模擬物質と接触した様々な材料組成の不活性性を研究するために、様々な第1の生体ポリマー層の移行レベルを移行試験によって調査した。移行試験を、EN1186-9およびEN1186-14の分析方法に従って実施した。酢酸がpH<4.5である条件を模擬し、10%エタノールが部分的に親油性で水-油エマルジョン等の条件を模擬する、水性模擬剤(10%エタノールおよび3%酢酸(ac))を使用した。植物油を置換するために、95%エタノールを使用して脂肪の多い食品を模擬した。選択した試験条件は、40℃で3日間および10日間で、これは、最大70℃で最大2時間の加熱、または最大100℃で最大15分間の加熱を含む、室温以下での長期保存に相当する。食品との接触を目的としたプラスチック材料に関する規制(EC)10/2011によると、全体的な移行量は10mg/dm2を超えてはならない。第1の層の組成および95%のEtOH中での3日間の移行試験の結果を表5に示す。
【0140】
【0141】
(生分解)
さまざまな第1の生体ポリマー層の特性をも、海洋好気性生分解試験によって調査した。海洋条件での試験は、ASTMD6691規格を使用して評価した。表6に示される結果によれば、56日後、測定された正味二酸化炭素生成量(正味CO2)によれば、材料はすでに63.4%分解していた。参照サンプル(純粋なセルロース)と比較した場合、相対生分解性は91.9%であり、この材料は規格で定義された海洋条件で完全に生分解性であることを示す。表6には、生分解の3つの異なる速度、平均(AVG)、標準偏差(SD)、および相対生分解(REL)が示される。TOCは全有機体炭素の略である。
【0142】
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明は、生分解性で機械的に耐久性のある容器およびそのような容器用のクロージャを製造するために使用され得る。本発明の容器は、概して、従来の包装材料の代替として使用され得る。
【0144】
特に、本発明の二重層容器は、化粧品および食品の包装に適している。特に容器は、湿気および高温への対処を必要とする化粧品包装に使用され得る。容器の材料は、特に、規制(EC)No1935/2004に規定されているように、食品接触材料(FCM)としても適している。
【国際調査報告】