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特表2024-506048特異的な自己組織化ペプチドRADA16を含む、炎症性腸疾患などの下部消化管疾患を治療又は予防するための医薬組成物
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  • 特表-特異的な自己組織化ペプチドRADA16を含む、炎症性腸疾患などの下部消化管疾患を治療又は予防するための医薬組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】特異的な自己組織化ペプチドRADA16を含む、炎症性腸疾患などの下部消化管疾患を治療又は予防するための医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/10 20060101AFI20240201BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240201BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240201BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240201BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240201BHJP
   A61K 31/4704 20060101ALI20240201BHJP
   A61K 31/121 20060101ALI20240201BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20240201BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
A61K38/10
A61P1/00
A61P1/04
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/4704
A61K31/121
C07K7/08 ZNA
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547803
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-30
(86)【国際出願番号】 US2022015945
(87)【国際公開番号】W WO2022173926
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】63/147,945
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505043041
【氏名又は名称】株式会社スリー・ディー・マトリックス
(71)【出願人】
【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】小林 智
(72)【発明者】
【氏名】金光 慶高
(72)【発明者】
【氏名】浦岡 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】植原 大介
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA18
4C084BA23
4C084MA02
4C084MA34
4C084MA55
4C084MA60
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZA681
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC28
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA66
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB12
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZA66
4C206ZC75
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA17
4H045EA25
(57)【要約】
本発明は、炎症性腸疾患などの下部消化管疾患を治療又は予防するための医薬組成物を提供することを目的とする。本発明は、特異的な自己組織化ペプチドRADA16を含む、炎症性腸疾患などの下部消化管疾患を治療又は予防するための医薬組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1で示されるアミノ酸配列を含むペプチドを含み、注腸投与される、下部消化管疾患を治療又は予防するための医薬組成物。
【請求項2】
下部消化管疾患が、炎症性腸疾患である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
炎症性腸疾患が、潰瘍性大腸炎又はクローン病である、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項4】
坐剤形態の経肛門的又は内視鏡的投与による、請求項1~3のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項5】
下部消化管疾患の治療又は予防に有効な他の薬剤と併用される、請求項1~4のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項6】
下部消化管疾患の治療又は予防に有効な他の薬剤が、レバミピド又はテプレノンである、請求項5記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特異的な自己組織化ペプチドRADA16を含む、炎症性腸疾患などの下部消化管疾患を治療又は予防するための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症性腸疾患には、潰瘍性大腸炎とクローン病があり、いずれも腸管における慢性炎症の憎悪と寛解を繰り返す原因不明の疾患で、根治治療のない厚生労働省の指定難病である。治療薬として、副腎皮質ホルモン、サラゾスルファピリジン及びメサラジンなどの抗炎症剤、アザチオプリンなどの免疫抑制薬ならびに抗TNF-α抗体などの抗体製剤が単独又は併用して、病状に応じて投与されてきたが、いずれも炎症性腸疾患に特異的な治療薬ではない。また、副腎皮質ホルモンには副作用が多く、その長期投与は推奨されず、抗TNF-α抗体には日和見感染症などの重篤な副作用を合併するリスクがある。
【0003】
配列番号1:RADARADARADARADA(以下、RADA16と略)に示されるアミノ酸配列を有するペプチドは特異的であり、自己組織化特性が知られる。近年、その物理的、化学的、生物学的性質から、医療用途に用い得る材料として注目を浴びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2016-515113号公報
【特許文献2】国際公開第2020/071527号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、下部消化管における炎症性腸疾患を治療又は予防するための医薬組成物を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、炎症性腸疾患の有効な治療方法について鋭意探索を行ったところ、驚くべきことに、特異的なペプチド(RADA16)を含む組成物が有効であることを見出し、本発明を完成させるに到った。
【0007】
すなわち本発明は、一実施形態において、炎症性腸疾患などの下部消化管疾患を治療又は予防するための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、治療上有効量の特異的なペプチド(RADA16)を含むことを特徴とする、医薬組成物に関する。
【0008】
本発明の一実施形態においては、前記下部消化管疾患は、炎症性腸疾患であることを特徴とする。
【0009】
本発明の一実施形態においては、前記炎症性腸疾患が、潰瘍性大腸炎またはクローン病であることを特徴とする。
【0010】
本発明の一実施形態においては、前記医薬組成物は、内視鏡又は肛門鏡を用いて対象の患部に局所適用されることを特徴とする。
【0011】
本発明の一実施形態においては、前記医薬組成物は、坐剤の形態で投与される。
【0012】
本発明の一実施形態においては、前記医薬組成物は、0.1重量%~10.0重量%の濃度で、配列番号1:RADARADARADARADAで示されるアミノ酸配列を有する特異的なペプチドを含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の一実施形態においては、前記医薬組成物は、炎症性腸疾患などの下部消化管疾患の治療又は予防に有効な他の薬剤をさらに含む、又は、炎症性腸疾患などの下部消化管疾患の治療または予防に有効な他の薬剤と併用される、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の一実施形態においては、前記医薬組成物は、十二指腸瘍治療薬、止瀉薬、抗炎症剤、副腎皮質ステロイド、免疫調節薬又は免疫抑制薬、腸管粘膜保護剤、及び、血流促進剤からなる群から選択される1又は2以上の薬剤と併用されることを特徴とする。好ましくは、十二指腸潰瘍治療薬は、レバミピド又はテプレノンであり、それらはムコスタ(登録商標)又はセルベックス(登録商標)として市販されている。
【0015】
本発明の一実施形態においては、前記医薬組成物は、細胞シート、腸管幹細胞、造血幹細胞、脂肪幹細胞、又は間葉系幹細胞と併用されることを特徴とする。
【0016】
本発明の一実施形態においては、前記医薬組成物は、対象の炎症性腸疾患などの下部消化管疾患部位に適用された際に、自己集合することによりゲル化することを特徴とする。
【0017】
本発明の一実施形態においては、前記特異的なペプチドが、配列番号1:RADARADARADARADAを含むペプチドであることを特徴とする。
【0018】
本発明の他の実施態様は、炎症性腸疾患などの下部消化管疾患の治療方法であって、患者の疾患部位に、治療上有効量の特異的なペプチドを含む医薬組成物を適用するステップを含む、方法に関する。好ましくは、前記方法は、炎症性腸疾患などの下部消化管疾患の治療又は予防に有効な他の薬剤を、同時に又は連続して、適用するステップを含む。
【0019】
本発明の他の実施態様は、炎症性腸疾患などの下部消化管疾患の治療剤または予防剤の製造のための、特異的なペプチドの使用、に関する。
【0020】
さらに本発明の他の実施態様は、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含むペプチドとの併用における、十二指腸瘍治療薬を含む、炎症性腸疾患などの下部消化管疾患の治療又は予防のための医薬組成物に関する。
【0021】
上記の一または複数の特徴を任意に組み合わせた発明も本発明の範囲に含まれる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、炎症性腸疾患などの下部消化管疾患を寛解導入し、長期にわたり寛解を維持し、再燃予防する、かつ、副作用の極めて少ない安全な治療薬及び治療方法が提供される。また、本発明によれば、炎症性腸疾患などの下部消化管疾患を有する病態においても、体重減少の抑制、DAIスコアの上昇軽減及び大腸の長さの短縮の抑制傾向が得られ、病態進行を軽減する効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、実施例2における、Histological Scoreの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、下部消化管疾患の治療または予防のための医薬組成物に関する。本発明は、炎症性腸疾患、特には潰瘍性大腸炎、クローン病に起因する炎症性腸疾患の治療のために開発された。
【0025】
本発明の医薬組成物は、様々な病態の炎症性腸疾患の治療または予防に用いることができるが、難治性の炎症性腸疾患の治療または予防にも好適に用いることができる。ここで、本願明細書において、「難治性」の炎症性腸疾患とは、例えば、炎症性腸疾患に対する一般的な保存的治療(例えば、栄養療法、薬物療法等)に対して抵抗性を示す疾患を意味してよい。
【0026】
本発明の適用対象は、ヒトまたは非ヒトであってよい。前記非ヒト対象は、例えば非ヒト動物であってよく、例えば非ヒト哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、または魚類であってよい。前記非ヒト哺乳類の例としては、齧歯類(例えばマウス、ラット)、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、霊長類等が挙げられる。
【0027】
本発明でいう炎症性腸疾患が発生する下部消化管とは、小腸及び大腸を含み、結腸、直腸及び肛門を含む。
【0028】
本発明の医薬組成物の投与方法や投与経路は限定されないが、特に、病変部への局所投与が可能な投与方法や投与経路であることが望ましい。例えば、内視鏡または肛門鏡を用いた局所投与、経鼻腸管又は腸ろうチューブを用いた投与、腸管の外科的切開部位からの投与等を用いることができる。
【0029】
本発明の一実施形態においては、前記医薬組成物は、坐剤の形態で投与される。
【0030】
本発明の医薬組成物の投与量や投与頻度は、対象の病態に応じて当業者(例えば、医師)が適宜決定することができる。
【0031】
本発明の医薬組成物中の特異的なペプチドの濃度は、0.1重量%~10.0重量%であってよく、好ましくは0.3重量%~8.0重量%であってよく、さらに好ましくは0.5重量%~5.0重量%であってよく、最も好ましくは1.0重量%~3.0重量%であってよい。
【0032】
本発明の医薬組成物は、炎症性腸疾患などの下部消化管疾患の治療又は予防に有効な他の薬剤をさらに含んでよく、又は炎症性腸疾患下部消化管疾患の治療又は予防に有効な他の薬剤と併用されてよい。本発明の医薬組成物と他の薬剤との併用の態様は限定されず、例えば、それぞれ別々に準備された薬剤を同時に対象に投与する態様であってもよく、それぞれの薬剤を異時に対象に投与する態様であってもよい。
【0033】
本発明の医薬組成物とともに用いてよい他の薬剤は、驚くべきことに、十二指腸潰瘍治療であってもよく、例えばレバミピド又はテプレノンであり、それらはムコスタ(登録商標)又はセルベックス(登録商標)として市販されているが、これらに限定されない。
【0034】
本発明の医薬組成物とともに用いてよい他の薬剤は、例えば、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)などの下部消化管疾患の治療に一般的に用いられる薬剤であってもよい。炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)の治療に一般的に用いられる薬剤としては、例えば、止瀉薬、抗炎症剤、副腎皮質ステロイド、免疫調節薬または免疫抑制薬、腸管粘膜保護剤、血流促進剤を挙げることができる。
【0035】
本発明の医薬組成物とともに用いてよい止瀉薬としては、例えば、ジフェノキシレート、ロペラミド、脱臭アヘンチンキ、コデインを挙げることができる。本発明の医薬組成物とともに用いてよい抗炎症剤としては、例えば、サラゾスルファピリジンとその関連薬剤(メサラジン、オルサラジン、バルサラジド等)を挙げることができる。本発明の医薬組成物とともに用いてよい副腎皮質ステロイドとしては、例えば、プレドニゾロン、ブデソニド、ヒドロコルチゾンを挙げることができる。本発明の医薬組成物とともに用いてよい免疫調節薬または免疫抑制薬としては、例えば、タクロリムス、アザチオプリン、メルカプトプリン、シクロスポリン、インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブを挙げることができる。
【0036】
本発明の医薬組成物を他の薬剤とともに用いる場合は、本発明の医薬組成物:他の薬剤の比率が、任意であってよい。
【0037】
本発明の医薬組成物とともに用いてよい他の薬剤は、例えば、細胞シート、腸管幹細胞、造血幹細胞、脂肪幹細胞、または、間葉系幹細胞、を含む組成物であってよい。細胞シートや幹細胞等を利用した、炎症性腸疾患患者における粘膜再生治療法の開発が進められており、本分野の当業者であれば、本発明の医薬組成物による治療と、細胞シートや幹細胞等を利用した粘膜再生治療法を併用することができる。また、本発明の医薬組成物に細胞シートや幹細胞等を混合して対象に適用することにより、相乗効果を期待することもできる。
【0038】
本発明に用いられる特異的なペプチドRADA16は、本発明が意図するペプチドの主な性質を失わない限りにおいて、修飾(または標識)されていてもよく、そのような修飾(または標識)されたペプチドも本発明における「特異的なペプチド」に含まれる。本発明に用いられる特異的なペプチドの修飾(または標識)方法は、当業者が任意に選択することができるが、例えば、官能基等の付加、化学物質の付加、または、さらなるタンパク質またはペプチドの付加であってよい。前記官能基等の付加の例示としては、アシル化、アセチル化、アルキル化、アミド化、ビオチニル化、ホルミル化、カルボキシル化、グルタミル化、グリコシル化(糖鎖の付加)、グリシル化、ヒドロキシル化、イソプレニル化、リポイル化、ヌクレオチドまたはその誘導体の付加、ポリエチレングリコール(PEG)化、脂質鎖の付加を挙げることができる。また、化学物質の付加の例示としては、適当な標識剤、例えば、放射性同位元素(例:1251、131I、3H、14C等)、酵素(例: β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素等)、蛍光物質(例:フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート等)、発光物質(例:ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン等)、アフィニティタグ(例:ビオチン等)などの付加を挙げることができる。また、さらなるタンパク質またはペプチドの付加の例示としては、ISG化、SUMO化、ユビキチン化を挙げることができる。
【0039】
なお、本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態を説明するために用いられるのであり、発明を限定する意図ではない。
【0040】
また、本明細書において用いられる「含む」との用語は、文脈上明らかに異なる理解をすべき場合を除き、記述された事項(部材、ステップ、要素、数字など)が存在することを意図するものであり、それ以外の事項(部材、ステップ、要素、数字など)が存在することを排除しない。
【0041】
異なる定義が無い限り、ここに用いられるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む。)は、本発明が属する技術の当業者によって広く理解されるのと同じ意味を有する。ここに用いられる用語は、異なる定義が明示されていない限り、本明細書及び関連技術分野における意味と整合的な意味を有するものとして解釈されるべきであり、理想化され、又は、過度に形式的な意味において解釈されるべきではない。
【0042】
第一の、第二のなどの用語が種々の要素を表現するために用いられる場合があるが、これらの要素はそれらの用語によって限定されるべきではないことが理解される。これらの用語は一つの要素を他の要素と区別するためのみに用いられているのであり、例えば、第一の要素を第二の要素と記し、同様に、第二の要素は第一の要素と記すことは、本発明の範囲を逸脱することなく可能である。
【0043】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、しかしながら、本発明はいろいろな形態により具現化することができ、ここに記載される実施例に限定されるものとして解釈されてはならない。
【実施例
【0044】
(実施例1)
炎症性腸疾患誘発マウスへの経肛門的投与実験
マウスにデキストラン硫酸ナトリウム2.5 w/v%水溶液を飲水させ、誘発された潰瘍性大腸炎モデルに対する配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する特異的なペプチドの有効性をDisease Activity Indexにより検索した。同様に、十二指腸潰瘍治療剤であるムコスタ(登録商標)及びセルベックス(登録商標)の単独又は配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するペプチドとの併用投与、及び潰瘍性大腸炎治療剤であるペンタサ(登録商標)及びレクタブル(登録商標)を単独投与して、有効性を比較検討した。さらに、実験最終日に採取した血漿及び摘出大腸を試験委託者に送付した。
デキストラン硫酸ナトリウム水溶液飲水期間(デキストラン硫酸ナトリウム誘発潰瘍性大腸炎モデルの作製):
2019年11月16日~11月25日
投与期間: 2019年11月22日~11月24日
Disease Activity Index(DAI:体重、便性状及び便潜血の評価):
2019年11月16日、11月22日及び11月25日
採血: 2019年11月25日
大腸の摘出及び長さの測定:
2019年11月25日
実験終了日: 2019年11月25日
【0045】
1. 材料及び方法
1.1 被験物質
名称: 配列番号:1で示されるアミノ酸配列を有する特異的なペプチド(以下、RADAと略)
ペプチド+ムコスタ(以下、RADA/Muと略)
ペプチド+セルベックス(以下、RADA/Seと略)
提供元: 試験委託者
調剤済みの液を入手した。
性状: 液体
保存条件: 遮光、気密、冷蔵(許容範囲:1.0~8.0℃)
保存場所: 被験物質保管室の保冷庫
残余分の処置: 廃棄した。
【0046】
1.2. 対照物質
1.2.1 陰性対照物質
名称: 日本薬局方生理食塩液(以下、生理食塩液と略)
製造元: 株式会社大塚製薬工場
ロット番号: K9D85
保存条件: 室温(許容範囲:1.0~30.0℃)
保存場所: 被験物質保管室
【0047】
1.2.2 比較対照物質
名称: 1)ムコスタ(登録商標)点眼液UD2%(以下、ムコスタ又はMuと略)
2)セルベックス(登録商標)細粒10%(以下、セルベックス又はSeと略)
3)ペンタサ(登録商標)注腸1g(以下、ペンタサ又はPenと略)
4)レクタブル(登録商標)2g注腸フォーム14回(以下、レクタブル又はRecと略)
製造元: 1)大塚製薬株式会社
2)エーザイ株式会社
3)杏林製薬株式会社
4)キッセイ薬品工業株式会社
ロット番号: 1)、2)なし
3)R11655A
4)K037A
性状: 液体
保存条件: 1)、2)遮光,気密,冷蔵(許容範囲:1.0~8.0℃)
3)、4)遮光,気密,室温(許容範囲:1.0~30.0℃)
保存場所: 1)、2)被験物質保管室の保冷庫
3)、4)被験物質保管室
残余分の処置:廃棄した。
【0048】
1.3 潰瘍性大腸炎誘発物質
名称: デキストラン硫酸ナトリウム5000(以下、DSSと略)
製造元: 富士フイルム和光純薬株式会社
ロット番号: PTF0313
保存条件: 室温(許容範囲:1.0~30.0℃)
保存場所: 被験物質保管室
残余分の処置:試験から除外した。
【0049】
1.4 投与液
1.4.1被験物質、比較対照物質及び陰性対照物質投与液
調製方法: 調剤品をそのまま使用したため、調製は行わなかった。
投与後残液の処置: 焼却専用の産業廃棄物容器に廃棄した。
【0050】
1.4.2 DSS水溶液(飲水用)
調製方法:
1)DSSの125.00gを秤量し、ガラス製ビーカーに移した。
2)飼育室にて動物の飲水用として用いている給水用水を4000mL(最終調製液量の80%)加え、マグネチックスターラーで撹拌し、溶解させた。
3)溶解確認後、メスシリンダーに移し、給水用水を加えて、5000mLにメスアップした(DSS 2.5 w/v%水溶液)。
4)マグネチックスターラーで撹拌した。
保存条件:室温(許容範囲:1.0~30.0℃)
調製後7日間の使用期限に対し、調製後4日以内に使用した。
保存場所:被験物質調製室及び飼育室
投与後残液の処置:焼却専用の産業廃棄物容器に廃棄した。
【0051】
1.5 試験系
種: マウス(SPF)
系統: BALB/cAnNCrlCrlj
供給源: 日本チャールス・リバー株式会社(厚木飼育センター)
試験系選択の理由: 本系統マウスは、毒性試験や薬効試験に汎用されている。
性別及び発注(入手)匹数:雄:60匹
入手時齢: 9週
【0052】
検疫及び馴化:
動物入手日から6日間の検疫を行った。検疫期間中、一般状態を毎日観察し、体重を1日目(入手日)、3日目及び7日目(検疫終了日)に測定した。また、動物入手日からDSS水溶液飲水開始前日までを馴化期間とし、検疫期間後も一般状態を1日1回観察し、群分け日に体重を測定した。
被験物質投与開始時齢: 11週
【0053】
1.6 飼育条件
温度: 許容範囲:21.0~25.0℃
湿度: 許容範囲:40.0~70.0%
換気回数: 15~17回/時間
照明時間: 12時間/日(7時から19時までの人工照明)
給餌方法: 飼料をステンレス製給餌器に入れ、自由に摂取させた。
給水方法:
DSS水溶液飲水開始前:タッチドリンク式先管を装着したガラス製の給水器により自由に水を摂取させた。
DSS水溶液飲水開始後:
無処置群: タッチドリンク式先管を装着したガラス製又はポリカーボネート製の給水器により自由に水を摂取させた。
無処置群以外:タッチドリンク式先管を装着したガラス製又はポリカーボネート製の給水器により自由にDSS 2.5 w/v%水溶液を摂取させた。
ケージへの収容: ポリカーボネート製ケージ(17.5W×24.5D×12.5H cm、床敷使用)に個別に収容した。
ケージの交換頻度: 4日間に1回以上(床敷、給水器の交換も行った)
環境エンリッチメント: 飼育期間中、ケージ内に齧り木(木片)を与えた。
【0054】
1.7 飼育材料と分析
1.7.1 飼料
名称: CRF-1(固型)
供給源: オリエンタル酵母工業株式会社(千葉)
【0055】
1.7.2 飲料水
種類: 市営上水道水
【0056】
1.7.3 環境エンリッチメント用木片
名称: 木片(約5×2×2cm、高圧蒸気滅菌:121℃、20分)
供給源: 千葉アニマル資材株式会社
材質: モミ
交換頻度: 1週間に1回以上
【0057】
1.8 個体識別
動物: 動物入手日にイヤーパンチ法により識別番号(1~60)を付した。
ケージ: ケージカードを用い、動物入手日に試験番号、系統性別及び識別番号を表示し、群分け時に群名、動物番号及び群別の色a)を追加表示した。
a)無処置群: 白 RADA/Se群: 紫
対照群: 黒 Mu群: 桃
RADA群: 青 Se群: 緑
Pen群: 橙
RADA/Mu群: 赤 Rec群: 水色
【0058】
1.9 群分け
【表2】
非供試動物の取扱い:
群分け時の残余動物:10匹を1.11.3項「投与液量の検討」の検討用とした。
【0059】
1.10投与量
【表3】
【0060】
1.11 投与
1.11.1 投与経路
投与経路: 経肛門
1.11.2 選択理由: 臨床適用経路と同一経路を選択した。
投与方法:
投与方法: 日本薬局方イソフルラン(マイラン製薬株式会社。以下、イソフルランと略)吸入による麻酔下で行った。
直腸内に滞留した糞塊がある場合は、マッサージして可能なかぎり糞を取り除いた。
1mLポリプロピレン製注射筒(滅菌済みディスポーザブル製品)に投与液を吸引、マウス用ゾンデを用いて肛門部から挿入し(先端から約1cm)、ゆっくりと経肛門的に投与した。投与中及び投与後約10秒間は、肛門部から投与液が漏れ出ないように、マウス用ゾンデ及び肛門部を手で押さえた。その後、ゆっくりと引き抜き、肛門部から漏れ出た液をふき取った。なお、被験物質投与液及びレクタブル投与液は大きな気泡がなるべく入らないように、また、その他の比較対照物質投与液は泡立たないように手で軽く転倒混和した後に、注射筒に吸引した。
投与液量: 0.7mL
選択理由: マウスに対する投与方法として一般的であり、かつ、適切である。
【0061】
1.11.3 投与液量の検討
対象動物: 群分けから除外された動物10匹のうち、識別番号の低い順に7匹を検討に用いた。
検討方法: イソフルラン吸入麻酔下で、墨汁で色づけした生理食塩液の0.7mL(結腸の直径:約3mm、回腸末端部から投与部位(直腸)までの長さ:約10cmとして算出)を直腸内に投与し、約10秒間、肛門部から漏れ出ないように押さえた。その後、開腹して生理食塩液が結腸を満たしているのかを確認した。0.5mLについても同様に検討した。
0.7mLを投与した際に生理食塩液が適切に結腸を満たすことを確認したため、0.7mLを実験の投与液量とした。
動物の処置: 群分けから除外され、検討で使用しなかった生存動物3匹は、被験物質投与開始日に炭酸ガス吸入により安楽死処置した。検討に用いた7匹については、検討終了後にイソフルラン吸入麻酔下で後大静脈及び腹大動脈を切断して放血致死させた。
【0062】
1.12 実験
DSS水溶液飲水開始日をDay1、その翌日をDay2として、以降の日を表した。
【0063】
1.12.1 DSS誘発潰瘍性大腸炎モデルの作製
対象動物: 群分け後の供試動物全例(無処置群を除く)
モデル作製期間: Day 1~10
モデル作製方法: DSS水溶液飲水開始日(13~14時の間)に、ケージに設置していたガラス製又はポリカーボネート製の給水器内の水をDSS 2.5 w/v%水溶液に変えて、自由に摂取させた。
【0064】
1.12.2 被験物質の処置
対象動物: 群分け後の供試動物全例(無処置群を除く)
処置日: Day 7、8 及び 9
処置回数: 1日1回
処置時間: 13~16時の間
特記事項: 1.11.3項「投与液量の検討」にて規定した投与液量を投与した際に、肛門部から漏出しても全液量を投与したことと判断した。
【0065】
1.12.3 一般状態
【表4】
【0066】
1.12.4 体重
測定対象: 全例
測定時期及び測定頻度: Day1、4、5、7及び10(投与日は投与前)
使用機器: 電子天秤UX4200H(株式会社島津製作所)
【0067】
1.12.5 血漿サンプルの採取
採血対象: 死亡例を除く全例
採血時期: Day10
採血部位: 後大静脈
採血量: 0.4mL
血漿量: 100μL以上(50μL以上×2本)
採血方法: イソフルラン吸入による麻酔下で動物を開腹して、ヘパリンナトリウム(1万単位/10mL)約2.5“Lを入れた1μLポリプロピレン製の注射筒及び25ゲージの注射針(いずれも滅菌済ディスポーザブル製品)を用いて採血した。
血液の処理: 採取した血液は、ポリプロピレン製チューブに入れて直ちに氷冷し、採血後30分以内に遠心分離(1600×g、10分、4℃)して血漿を得た。血漿は、ポリプロピレン製チューブに50μL以上×2本に分注し、送付時まで凍結した。
血漿の保存条件: 凍結(許容範囲:-95.0℃~-65.0℃)
血漿の保存場所: フリーザー室の超低温フリーザー
【0068】
1.12.6 大腸の摘出及び長さの測定
摘出対象: 死亡例を除く全例
摘出時期: Day 10
摘出方法: イソフルラン吸入麻酔下で、採血終了後、後大静脈及び腹大動脈を切断して放血致死させ、大腸の摘出(回腸末端部から肛門部まで)を行った。
大腸の長さの測定: ノギスを用いて、摘出した大腸の長さ(mm)を測定し、大腸の写真撮影を行った。その後、摘出した大腸は、10vol%中性緩衝ホルマリン液で固定した。
大腸の長さ: 回腸末端部~直腸手前、回腸末端部~肛門部
【0069】
1.12.7 サンプルの送付
送付日: 2019年12月17日
送付方法: 血漿サンプルは、ラベルに試験番号、動物番号及び採血日を記載し、明細を記載したサンプル送付書とともに凍結状態(ドライアイス詰め)で、また10vol%中性緩衝ホルマリン液で固定した大腸は、室温下でそれぞれ試験委託者に送付した。
【0070】
1.12.8 死亡動物の取扱い
死亡動物: 動物番号KX03M1及びKX04M5
発見後速やかに体重を測定し、剖検を行った。また、大腸を摘出して耳介(個体識別)とともに10vol%中性緩衝ホルマリン液で固定し、試験委託者に送付した。
【0071】
1.13 統計解析
以下の項目について、各群の平均値及び標準偏差を算出した。
・体重(実測値及び変化率)
変化率(%、報告桁数:小数点以下1桁)
=(各時点における値-投与日の値)/投与日の値×100
・Disease Activity Index(DAI)
以下のスコア表に従い、Day1、7及び10における体重、便性状及び便潜血のスコアを加算して、DAIスコアを求めた。
【表5】
・摘出大腸の長さ
上記3項目について、対照群とその他の群の間でF検定による等分散性の検定を行い、分散が等しい場合はStudentのt検定を、分散が等しくない場合はAspin-Welchのt検定を行った。
検定はいずれも両側で、有意水準5%で差が認められた場合に有意な変動とし、表中には5%と1%に区別して示した。
【0072】
2.成績及び考察
2.1 死亡
(表1、付属書1、2及び3)
RADA群の1例(動物番号KX03M1)で、以下の通り、死亡が認められた。
<動物番号KX03M1>
生存時の一般状態観察において、Day6から不規則呼吸、Day8から排便少量及び立毛が散見され、Day10に死亡を発見した。死亡発見時は、腹臥位で肛門周囲の汚れ(黒色)が認められたが、排泄便に異常はみられなかった。体重測定では、Day1と比較してDay7で21.6%の減少がみられた。剖検では、肛門周囲被毛の汚れ(黒色)がみられた。
これらのことから、後述の生存例の結果を踏まえ、上述例の死亡原因は、DSS誘発潰瘍性大腸炎が進行したことによるものと考えられた。
以降の成績は、生存例について記載した。
【0073】
2.2 一般状態
無処置群では、観察期間中、異常は認められなかった。
DSS誘発潰瘍性大腸炎モデルの作製動物でみられた変化は以下の通りであった。
排便少量が対照群、RADA群、RADA/Se群、Se群、Pen群及びRec群の1~3例に、不規則呼吸がRADA群、RADA/Mu群、RADA/Se群、Mu群、Se群、Pen群及びRec群の1~3例に、立毛がRADA群及びRec群の各1例に、黒色便がRADA群及びSe群の各1例に、肛門周囲被毛の汚れ(淡赤色)及び肛門からの出血がRADA群の各1例にそれぞれ散見された。
また、DAIスコアにおける便の性状では、対照群の1例でDay10にスコア1「軟便(軽度)」、便潜血(目視)では、RADA群の1例でDay10にスコア1「+」であった。
これらの変化は、DSS誘発潰瘍性大腸炎が進行したことによるものと考えられた。
【0074】
2.3 体重
無処置群では、観察期間中、特記すべき変動は認められなかった。
対照群では、Day7以降に体重減少がみられ、無処置群と比較して、体重実測値及び体重変化率のいずれも、Day7及び10で有意な低値を示した。また、Day10の値は、Day7よりも低値を示したことから、この期間もDSS誘発潰瘍性大腸炎が進行していることを確認した。
被験物質投与群及び比較対照物質投与群では、Day5以降で体重減少がみられ、対照群と比較して、Mu群のDay5の体重実測値を除き、体重実測値及び体重変化率のいずれも、有意な差は認められなかった。ただし、RADA群及びMu群のDay10では、Day7と比較して、対照群とは異なり、さらなる体重減少はみられなかったことから、DSS誘発潰瘍性大腸炎の進行を抑制した可能性が考えられた。なお、Mu群のDay5の体重実測値における有意な低値は、Muの投与前であることから、DSS誘発潰瘍性大腸炎がより早期に進行したことによるものと考えられた。
【0075】
2.4 Disease Activity Index(DAI)
Day7及び10における各群のDAIスコアの平均値は、以下の通りであった。
【表6】
無処置群では、Day7及び10ともに、スコア0.0であった。
対照群のDay10のDAIスコアは、Day7と比較して、上昇を示し、DSS水溶液の飲水によって潰瘍性大腸炎がさらに進行したことによるものと考えられた。
RADA群、RADA/Se群及びMu群のDay10では、Day7と比較して、DAIスコアの上昇はみられなかったことから、対照群とは異なり、DSS水溶液の飲水による潰瘍性大腸炎の進行を抑制した可能性が考えられた。
一方、RADA/Mu群、Se群、Pen群及びRec群のDay10では、Day7と比較して、対照群と同様にDAIスコアの上昇がみられた。
【0076】
2.5 大腸の長さ
「回腸末端部~直腸手前」及び「回腸末端部~肛門部」における各群の大腸の長さの平均値(mm)は、以下の通りであった。
【表7】
対照群では、無処置群と比較して、「回腸末端部~直腸手前」及び「回腸末端部~肛門部」いずれの大腸の長さも統計学的に有意な低値を示した。
被験物質投与群及び比較対照物質投与群では、陰性対照群と比較して、Mu群及びPen群の「回腸末端部~直腸手前」及び「回腸末端部~肛門部」、Rec群の「回腸末端部~肛門部」の大腸の長さで、それぞれ有意な高値を示した。また、その他の群においても、大腸の長さは短縮の抑制傾向を示した。
比較対照物質であるムコスタ、セルベックス及びレクタブルは、大腸の長さの明らかな短縮の抑制が認められたことから、DSS誘発潰瘍性大腸炎の進行を軽減する効果を示した。
【0077】
3. 結論
本実験条件下において、陰性対照群では、無処置動物と比較して、DSS水溶液の飲水によって体重の減少、DAIスコアの上昇、大腸の長さの短縮がみられたことから、DSS誘発潰瘍性大腸炎モデルが適切に作製されたと判断した。
このモデル動物に対して、自己組織化ペプチド(RADA)は、3日間の経肛門的投与によって、体重減少の抑制、DAIスコアの上昇軽減及び大腸の長さの短縮の抑制傾向がみられたことから、DSS誘発潰瘍性大腸炎の進行を軽減する効果を有する可能性が考えられた。また、この軽減効果は、大腸の長さの比較から、他剤(ムコスタ(登録商標)、セルベックス(登録商標))との併用によって、より効果を示す可能性が考えられたが、ムコスタ(登録商標)、セルベックス(登録商標)及びレクタブル(登録商標)単剤の方が高かった。なお、自己組織化特性が知られる他のペプチドについても、並行して試験をしたところ、有効性は確認できなかった。
【0078】
(実施例2)
マウス潰瘍性大腸炎に対する結腸HE染色標本の病理組織学的評価
実施例1で作成された結腸HE染色標本の病理組織学的評価を行った。
1. 検体(スライド標本)
検体番号: 1~18
各スライドに上記番号を割り当て、別途スライドに表示されている番号との対応表を作成する。
2. 病理組織学的評価
各検体の大腸上部及び下部の2つの切片について、下記スコアに準じてブラインド下で病理スコア評価を行う(計36切片)。(1)、(2)、(3)の各スコアに(4)を乗じ、これらの合計を「Histological Colitis Score」とする1)。なお、大腸下部はフロスト側、その右隣が大腸上部である。
【表8】
Histological Scoreの結果を図1に示す。
結果から、RADA単体での投与でも陰性対照と比較して腸管組織炎症抑制効果があったが、ムコスタ、セルベックスの混合投与によってそれぞれの単剤投与よりも高い効果が得られることが分かった。
図1
【配列表】
2024506048000001.app
【国際調査報告】