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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】潤滑剤付き包装コンドーム
(51)【国際特許分類】
   A61F 6/04 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
A61F6/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548232
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(85)【翻訳文提出日】2023-10-06
(86)【国際出願番号】 GB2022050361
(87)【国際公開番号】W WO2022172010
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/076570
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】2104507.5
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518405809
【氏名又は名称】レキット ベンキサー ヘルス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】スー クン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジユアン
(72)【発明者】
【氏名】ウー シューフェン
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098AA06
4C098EE11
(57)【要約】
本発明は、密封包装を備える包装コンドームを提供し、密封包装内で、コンドームは、天然ゴムラテックス及び/又は合成ポリイソプレンを含み、コンドームは、その1又は2以上の表面上で、天然ゴムラテックス及び/又は合成ポリイソプレンと接触している水性潤滑剤を含む。水性潤滑剤は、増粘剤と、水性潤滑剤の重量に対して5から25%の総量で、多価アルコール及び糖から成る群から独立して選択される1又は2以上の有機化合物とを含み、上記1又は2以上の有機化合物の各々は、少なくとも4個のヒドロキシル基と、120から10000の分子量を有する。本発明は、さらに、包装コンドームを準備する方法と、この方法によって取得可能な又は取得される包装コンドームと、保管中に密封包装内でコンドームの透明性を維持しながら、天然ゴムラテックス及び/又は合成ポリイソプレンを含むコンドームの1又は2以上の表面を潤滑するための水性潤滑剤の使用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装コンドームであって、
密封包装と、
前記密封包装内の、天然ゴムラテックス及び/又は合成ポリイソプレンを含むコンドームと、
を備え、
前記コンドームは、1又は2以上の表面上で、前記天然ゴムラテックス及び/又は前記合成ポリイソプレンと接触している水性潤滑剤を含み、
前記水性潤滑剤は、
増粘剤と、
前記水性潤滑剤の重量に対して5から25%の総量で、多価アルコール及び糖から成る群から独立して選択された1又は2以上の有機化合物と、
を含み、
前記1又は2以上の有機化合物の各々は、少なくとも4個のヒドロキシル基と、120から10000の分子量とを有する、包装コンドーム。
【請求項2】
前記1又は2以上の有機化合物の各々は、150から1000、好ましくは、150から500の分子量を有する、請求項1に記載の包装コンドーム。
【請求項3】
前記水性潤滑剤は、前記1又は2以上の有機化合物の5から20wt%、好ましくは7から15wt%の総量を含む、請求項1又は2に記載の包装コンドーム。
【請求項4】
前記多価アルコールは、糖アルコールであり、及び/又は、前記1又は2以上の有機化合物は、独立して多価アルコールである、請求項1から3のいずれかに記載の包装コンドーム。
【請求項5】
前記1又は2以上の有機化合物は、独立して、単糖、二糖、単糖由来の糖アルコール、及び、二糖由来の糖アルコールから成る群から選択される、請求項1から4のいずれかに記載の包装コンドーム。
【請求項6】
前記1又は2以上の有機化合物は、二糖及び二糖由来の糖アルコールから成る群から独立して選択され、前記水性潤滑剤は、有機化合物の5から15wt%、より好ましくは、6から14wt%、さらにより好ましくは、8から13wt%、最も好ましくは、11から13wt%の総量を含む、請求項5に記載の包装コンドーム。
【請求項7】
前記1又は2以上の有機化合物は、単糖及び単糖由来の糖アルコールから成る群から独立して選択され、前記水性潤滑剤は、有機化合物の5から12wt%、より好ましくは、6から10wt%、最も好ましくは、6から8wt%の総量を含む、請求項5に記載の包装コンドーム。
【請求項8】
前記1又は2以上の有機化合物のうちの少なくとも1つは、ソルビトールであり、及び/又は、前記1又は2以上の有機化合物のうちの少なくとも1つは、マルチトールである、請求項5から7のいずれかに記載の包装コンドーム。
【請求項9】
前記水性潤滑剤は、少なくとも70wt%の水、好ましくは、少なくとも75wt%の水、より好ましくは、少なくとも80wt%の水を含む、請求項1から8のいずれかに記載の包装コンドーム。
【請求項10】
前記水性潤滑剤は、1200mOsm/kg未満の浸透圧を有する、請求項1から9のいずれかに記載の包装コンドーム。
【請求項11】
前記水性潤滑剤は、前記コンドームに適用される前に3.5から5.0のpHを有する、請求項1から10のいずれかに記載の包装コンドーム。
【請求項12】
前記コンドームは、1又は2以上の表面上に、仕上げ粉体をさらに含み、前記仕上げ粉体は、最大で100mg、好ましくは、最大で50mg、最も好ましくは、20から40mgの量で提供される、請求項1から11のいずれかに記載の包装コンドーム。
【請求項13】
前記コンドームは、透明である、請求項1から12のいずれかに記載の包装コンドーム。
【請求項14】
前記コンドームは、天然ゴムラテックスのコンドームである、請求項1から13のいずれかに記載の包装コンドーム。
【請求項15】
包装コンドームを準備する方法であって、
(i)水性潤滑剤を提供するステップであって、前記水性潤滑剤は、増粘剤と、前記水性潤滑剤の重量に対して5から25%の総量で、多価アルコール及び糖から成る群から独立して選択された1又は2以上の有機化合物とを含み、前記1又は2以上の有機化合物の各々は、少なくとも4個のヒドロキシル基及び120から10000の分子量を有する、ステップと、
(ii)天然ゴムラテックス及び/又は合成ポリイソプレンを含むコンドームを提供するステップと、
(iii)前記水性潤滑剤が前記天然ゴムラテックス及び/又は前記合成ポリイソプレンと接触するように、前記水性潤滑剤の1回分を前記コンドームの1又は2以上の表面に適用するステップと、
(iv)前記コンドームを包装内に密封するステップと、
を含む方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法によって取得可能な又は取得された包装コンドーム。
【請求項17】
保管中に密封包装内でコンドームの透明性を維持しながら、天然ゴムラテックス及び/又は合成ポリイソプレンを含む前記コンドームの1又は2以上の表面を潤滑するための水性潤滑剤の使用であって、
前記水性潤滑剤は、増粘剤と、前記水性潤滑剤の重量に対して5から25%の総量で、多価アルコール及び糖から成る群から独立して選択された1又は2以上の有機化合物とを含み、前記1又は2以上の有機化合物の各々は、少なくとも4個のヒドロキシル基と、120から10000の分子量とを有する、水性潤滑剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤付き包装コンドームに関する。詳細には、本発明は、水性潤滑剤で潤滑された包装コンドームに関し、このコンドームは、望ましくは、エンドユーザーに対して透明な外観を呈する。
【背景技術】
【0002】
個人用潤滑剤は、性行為中の身体組織との摩擦を低減する役割を果たす特殊な潤滑剤である。特に、個人用潤滑剤は、膣に直接適用することによって、性行為中に潤滑又は滑りをもたらすために使用することができる。例えば、個人用潤滑剤は、性交中の快感を増大させるか又は痛みを低減するために使用することができ、膣の乾燥を低減するのを助けることができる。医療において、個人用潤滑剤は、婦人科検診などに使用することができる。
【0003】
コンドームは、表面上に潤滑剤を予め備えることができる。このような潤滑剤の技術的な考慮点は、組成が長期の保存期間にわたってコンドームの材料(及びコンドームの包装材料)と共に安定である必要があるので、単独の個人用潤滑剤とは異なる点である。さらに、潤滑剤は、性行為中にコンドームから素早く擦り落とされるべきではなく、製造中に潤滑剤をコンドームに投与する方法は、例えば、粘度及び粘着性に関する要件に影響するが、依然として所望の潤滑の程度をもたらす。
【0004】
潤滑剤付きコンドームは、何年も前から販売されている。最も一般的な潤滑剤は、シリコーン系であり、その理由は、シリコーン系潤滑剤が、良好な潤滑性を提供しながら、一般的なコンドーム材料(天然ゴムラテックス(「NRL」)及び合成ポリイソプレン(「PI」)を含む)の長期的な完全性に非常に適合するからである。しかしながら、シリコーン潤滑剤は、疎水性を考慮すると、皮膚又は衣服に付着すると洗い流すのが難しい可能性がある。従って、消費者によって厄介なものと認識されることがある。
【0005】
この問題を解決するために、様々な水溶性潤滑剤が試みられてきた。しかしながら、これらの潤滑剤の多くは、特にNRL又はPIコンドームに投与されたとき、保管中にコンドームの外観を不透明にさせる。より詳細には、これらのコンドームは、潤滑剤及び仕上げ粉体を適用する前、通常、透明な外観を有する。透明な外観は、消費者にとって望ましく、1つには、消費者が透明な外観から薄さを連想させるからである。既存の水性潤滑剤の多くは、コンドームを白色化して不透明に見せる傾向があり、その結果、外観が損なわれ、消費者の目には好ましくないものになる。しかしながら、これが起こる正確なメカニズムは、本技術分野ではよく理解されていない。
【0006】
米国特許第6,196,227号では、コンドームに投与されたときに水溶性潤滑剤によって引き起こされる白色化の問題が認識されている。この文献において、白色化は、吸水によって引き起こされる場合があることが想定され、コンドームの表面が白色化するのを防ぐために、潤滑剤の含水量を制限すべきであることが教示されている。また、湿潤性及び潤滑性を助けるために、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどの、保湿剤を添加することができることが開示されている。
【0007】
NRLコンドーム及びPIコンドームなどのコンドームを白色化する傾向は別として、水性潤滑剤の浸透圧に関する問題もある。歴史的に、水性の単独の個人用潤滑剤は、200から300mOsm/kgという典型的な膣の浸透圧よりもはるかに高い浸透圧を持つ傾向があった。現在、膣壁を覆う上皮細胞は常に恒常性を維持しようとするため、潤滑剤の浸透圧が重要であることと認識されている。高浸透圧の潤滑剤は、膣の細胞に、流体を放出させて潤滑剤を希釈する。これによって、結果的に、上皮細胞損傷が生じ、これによって、次に、上皮バリアの機能障害に起因して感染リスクの増大が生じる。また、膣の乾燥を増大させる場合がある。これは、特に、高浸透圧潤滑剤の使用によって膣の乾燥が悪化するので、更年期の女性にとって問題である。2012年、世界保健機関(WHO)は、医療機関に対し、1200mOsm/kg未満の浸透圧を有する単独の個人用潤滑剤を調達するよう推奨した。しかしながら、所要の粘度、滑り特性、及び保管中の流体力学的安定度を含む、他の多くのパラメータを達成する必要性と釣り合いを取りながら、この範囲内で単独の個人用潤滑剤を処方することは容易ではない。このことは、10年近く前にWHOの推奨事項にもかかわらず、現在市販されている多くの水性潤滑油の浸透圧は、依然として2000から6000mOsm/kgであるという事実にも反映されている。これらのWHO推奨事項をコンドーム用潤滑剤に適用しようとするのはさらに困難であり、これにはさらに一連の技術的制約が適用される。さらに、コンドームに予め適用される潤滑剤の典型的な量は、消費者によって手で適用される単独の潤滑剤の量よりもはるかに少ないため、本技術分野では、潜在的に他の重要な特性を犠牲にして、潤滑剤付きコンドームに関してこの浸透圧基準を満たすことが不可欠なものとして理解されていなかった。
【0008】
Osm/kgでの溶液浸透圧は、溶媒1kg当たりの溶質のオスモル数として定義される。2001年に公開された米国特許第6,196,227号に開示されている水性潤滑油の浸透圧は、高濃度の低分子量溶質分子を考慮すると高くなる。従って、米国特許第6,196,227号には、単独の個人用潤滑剤の浸透圧に関するより新しいWHOの推奨事項告と相関すると思われる水性潤滑剤は開示されていない。米国特許第6,196,227号の潤滑剤の含水量を増大させて溶質濃度を減少させると、その浸透圧が減少することになるが、この文献で仮定された吸水作用に従う場合には、コンドームの白色化を生じさせることが予想される。また、この文献に開示されている溶質の各々が潤滑剤の特定の特性を維持するために含まれるので、潤滑剤の物理的特性を損なうことが予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,196,227号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
コンドーム、特にNRL又はPIを含むコンドーム上での使用に適した物理的特性を有し、保管中のコンドームの透明性に及ぼす悪影響が低減された低浸透圧の水性潤滑剤に対する必要性が依然として残っている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様によれば、本発明は、包装コンドームを提供し、包装コンドームは、
密封包装と、
密封包装内の、天然ゴムラテックス及び/又は合成ポリイソプレンを含むコンドームと、
を備え、
コンドームは、その1又は2以上の表面上で、天然ゴムラテックス及び/又は合成ポリイソプレンと接触している水性潤滑剤を含み、
水性潤滑剤は、
増粘剤と、
水性潤滑剤の重量に対して5から25%の総量で、多価アルコール及び糖から成る群から独立して選択された1又は2以上の有機化合物と、
を含み、1又は2以上の有機化合物の各々は、少なくとも4個のヒドロキシル基及び120から10000の分子量を有する。
【0012】
本発明者らは、水性潤滑剤中での特定量でのこのような多価アルコール及び/又は糖の含有は、低い浸透圧を維持しながら、保管中に透明性を維持して天然ゴムラテックスコンドームの白色化を防止するのを助けることを見出している。理論によって制限することを意図するものではないが、天然ゴムラテックスのコンドームは、天然ゴムラテックス中の不純物又は添加物との水の相互作用に起因して、水性潤滑剤の白色化の影響を特に受けやすいと考えられている。合成ポリイソプレンは、より少ない(タンパク質など)不純物を有するが、それでも、白色化の能力を有する。同じ原理は、NRL/PIが別の素材(好ましくは、最初は透明な素材)とともにコンドームに含まれているときに適用される必要があるが、潤滑剤は、その他の材料によってNRL/PIとの接触から遮蔽されないことを条件とする。多数の(少なくとも4個)のヒドロキシル基を有する多価アルコール又は糖の特定量での含有によって、潤滑剤の水とコンドーム材料中の不純物又は添加物との相互作用の程度を低減又は排除することができると考えられる。多価アルコール又は糖の分子量の結果として、多価アルコール又は糖は、許容できないほど高い潤滑剤の浸透圧を生じさせることなく、所望の白色化防止効果を有するのに十分な量で含有させることができる。好都合には、本発明の水性潤滑剤はまた、良好な潤滑性をもたらし、べたつかない。また、本発明の水性潤滑剤は、コンドームの材料と完全に適合し、破裂圧力、破裂容積、引張強度などの、コンドームの物理的特性に影響を与えない。
【0013】
第2の態様によれば、本発明は、包装コンドームを準備するための方法を提供し、この方法は、
(i)水性潤滑剤を提供するステップであって、水性潤滑剤は、増粘剤と、水性潤滑剤の重量に対して5から25wt%の総量で、多価アルコール及び糖から成る群から独立して選択された1又は2以上の有機化合物とを含み、1又は2以上の有機化合物の各々は、少なくとも4個のヒドロキシル基及び120から10000の分子量を有する、ステップと、
(ii)第1の態様で規定されたコンドームを提供するステップと、
(iii)水性潤滑剤が天然ゴムラテックス及び/又は合成ポリイソプレンと接触する潤滑剤付きコンドームを形成するために水性潤滑剤の1回分をコンドームの1又は2以上の表面に適用するステップと、
(iv)潤滑剤付きコンドームを包装内に密封するステップと、
を含む。
【0014】
第3の態様によれば、本発明は、第2の態様の方法によって取得可能な又は取得される包装コンドームを提供する。
【0015】
第4の態様によれば、本発明は、第1の態様で規定されたコンドームの1又は2以上の表面を潤滑するために第2の態様で規定された水性潤滑剤の使用を提供し、水性潤滑剤は、保管中に密封包装内でコンドームの透明性を維持しながら天然ゴムラテックス及び/又は合成ポリイソプレンと接触するようになっている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をさらに説明する。以下の節において、本発明の異なる態様/実施形態はより詳細に規定される。このように規定された各態様/実施形態は、それとは反対のことが明確に示されない限り、何らかの他の態様/実施形態(複数可)と組み合わせることができる。詳細には、好ましい又は好都合であると示された何らかの特徴は、好ましい又は好都合であると示された他の特徴(複数可)と組み合わせることができる。
【0017】
本発明は、密封包装と、その包装内の潤滑剤付きコンドームとを備える包装コンドームを提供する。密封包装は、好ましくは、包装内の分子が包装境界を容易に通過せず、酸素が包装内に容易に通過しない程度で(これらの分子及び酸素が通過することができる低いレベルは、コンドーム業界で受け入れられているレベル内である)、コンドームを外部環境から隔離する。コンドーム用の適切な密封包装は、本技術分野で知られており、例えば、コンドームの周りの縁に沿って密封された2つの積層材料を含むことができる。積層材料は、例えば、アルミニウム層を含むことができる。他の可能性のある密封包装は、フィルム蓋で密封されたプラスチックポット、いわゆる「バター皿」である。コンドームは、好ましくは、ロール状態で包装内に設けられる。コンドームは、好ましくは、男性用コンドーム、好ましくは、実質的に陰茎全体を覆うように意図されたものである。
【0018】
コンドームは、天然ゴムラテックス(「NRL」)及び/又は合成ポリイソプレン(「PI」)を含む。随意的に、NRL及び/又はPIは、エラストマー(例えば、ポリウレタン、「PU」)とすることができる1又は2以上の他のポリマーコンドーム材料とのブレンドで存在する。代替的に又は追加的に、NRL及び/又はPIは、潤滑剤と接触することを条件に、コンドームの1又は2以上の外層に設けることができる(陰茎に面する側か反対側かを問わず)。しかしながら、好ましくは、NRL及び/又はPIは、コンドームにおける唯一のエラストマー又は唯一のポリマーコンドーム材料である。好ましくは、コンドームは、天然ゴムラテックスのコンドームである。すなわち、コンドームは、天然ゴムラテックス又は1又は2以上の添加剤が配合された天然ゴムラテックス基から形成される。天然ゴムラテックスは、典型的には、タンパク質、脂肪酸、無機塩など、少量の不純物とともにシス-1,4-ポリイソプレンを含む。合成ポリイソプレンは、例えば、天然ゴムラテックスに見られるアレルゲン性タンパク質を含まない。天然ゴムラテックス及び合成ポリイソプレンの適切な配合は、本技術分野で公知である。
【0019】
コンドーム自体は、何らかの適切な方法で製造することができる。典型的には、これは、その後に乾燥されて硬化されるフィルムを形成するために、コンドーム形状型をラテックス又はラテックスブレンドに浸漬させることによって行われる。適切なゴムラテックスの製造及びそれからのコンドームのその後の形成は、当業者によく理解されている手順であることを理解されたい。上記で説明したように、本発明者らは、NRL及びPIコンドームは、水性潤滑剤の不透明化作用を特に受けやすいと考えている。
【0020】
NRL及びPIコンドームは、乾燥状態で提供される場合及び潤滑剤又は仕上げ粉体で被覆される前には、通常、透明であり、本質的に無色である(ただし、一部のコンドームは、当然のことながら、わずかに黄色味を帯びる場合がある)。これは、常に当てはまるものではないことを理解されたい。場合によっては、例えば、不透明な又は着色されたコンドームが所望される場合には、不透明剤又は着色剤を含むことができる。しかしながら、透明なコンドームに対する消費者の要望は高まっており、1つには、薄さの知覚を高めるからであり、これは、やはり、多くの市場においてコンドームに益々望まれる特徴である。
【0021】
好ましくは、本発明のコンドームは、透明な材料から形成される。すなわち、コンドームは、水性潤滑剤又は随意的な仕上げ粉体を適用する前は透明である。透明度の低減の問題は、潤滑前に透明であるコンドームにとって特に深刻であり、その理由は、一般的な水性潤滑剤によって引き起こされる作用は、コンドームが既に実質的に不透明である場合よりもはるかに目に見えるからである。従って、本発明で使用される水性潤滑剤の好都合な作用は、初めから透明であるコンドームには特に顕著である。
【0022】
コンドームは、透明かつ着色、又は、透明かつ無色、又は、本質的に無色とすることができる。本明細書において「白色化」に関する考察は、着色されたコンドームの不透明化に同様に適用されることが理解されたい。好ましくは、コンドームの配合物は、着色剤を含まない。消費者は、コンドームがすでに着色されるようにデザインされている場合には、不透明度アップには寛容である場合がある。
【0023】
「透明」とは、コンドームの向こう側にある物体がコンドームを通して見えるように、顕著な散乱なしに可視光を透過する性質を意味する。「透明」という用語は、本明細書で使用される場合、限られた量の光を散乱させる材料を含有するが、実質的に不透明であって感知可能な量の光を透過させない材料は含有しないことを理解されたい。多くの天然ゴムラテックスのコンドームは、光のある程度の限定的な散乱から生じる黄色がかった色合いを有するが、それでも大部分は透けて見える。このようなコンドームは、本発明の目的では「透明」とみなされる。コンドームがロール形態で包装される場合、ロールされたコンドームのロール部分は、コンドーム材料自体が透明であっても実質的に不透明に見える可能性があるので、透明特性は、非ロール状態のコンドームを指すことを理解されたい。
【0024】
本発明のコンドームは、好ましくは、最大で70%のヘイズ値を有する材料から形成される。すなわち、コンドームは、水性潤滑剤又は随意的な仕上げ粉体の適用前には、好ましくは、最大で70%のヘイズ値を有する。より好ましくは、ヘイズ値は、最大で60%、さらにより好ましくは、最大で50%、さらにより好ましくは、最大で40%であり、最も好ましくは、最大で30%である。一部の実施形態において、ヘイズ値は、少なくとも10%、又は、少なくとも15%である。仕上げ粉体を含む実施形態において、コンドームは、好ましくは、また、仕上げ粉体の適用後であるが潤滑剤の適用前に、これらの範囲内にあるヘイズ値を有する。試料のヘイズ値は、紫外可視分光光度計を用いて測定することができ、この値によって、試料を通過するときに散乱される入射光の割合が定量化される。材料は、ヘイズ値が低いほど透明である。本開示との関連において、ヘイズ値は、ASTM規格D1003-00に従って定義され、材料を通過する際に、法線から2.5度よりも大きい角度で入射光から逸脱する(広角散乱)光の割合を指す。好ましくは、ヘイズ値は、非ロール状態のコンドームの長さに沿って、開放端、閉鎖端、及び中間点で取得した3つの測定値の平均である。好ましくは、ヘイズ値は、「実施例」に開示する方法に従って決定される。
【0025】
本発明は、その1又は2以上の表面に適用されたパターン又は他の表面特徴、例えば、使用者又はそのパートナに物理的刺激を与えることが意図されたリブ又はドットを有するコンドームを包含する。しかしながら、実施形態において、コンドームには、人間の目に見える表面のくぼみ又は突起はない。透明性に対する好都合な効果は、それ自体が光を散乱させる場合がある隆起した表面特徴がないコンドームで顕著である可能性がより高い。
【0026】
本発明の実施形態において、コンドームは、60ミクロン以下、55ミクロン以下、50ミクロン以下、45ミクロン以下、40ミクロン以下、及び/又は、少なくとも20ミクロン、少なくとも25ミクロン、又は少なくとも30ミクロンの厚さを有する。コンドームが薄いほど、消費者からの透明性への期待は大きいが、コンドームは、バリアとしての主要な機能を果たすのに十分な構造的完全性を維持する必要もある。
【0027】
本発明のコンドームは、その1又は2以上の表面上に水性潤滑剤を含む。1又は2以上の表面は、コンドームの内側表面及び/又は外側表面とすることができる。男性用コンドームとの関連における「内側」は、陰茎に面する側を指し、一方、「外側」は、使用者のパートナに面する側を指す。好ましくは、水性潤滑剤は、コンドームの少なくとも外側表面に存在する。好ましくは、上記1又は2以上の表面は、実質的に潤滑剤で被覆される。好ましくは、上記1又は2以上の表面の面積単位で少なくとも25%は、潤滑剤で被覆され、より好ましくは、少なくとも40%、さらにより好ましくは少なくとも60%、最も好ましくは少なくとも70%である。コンドームは、非ロール状態で、コンドームの開放端から閉鎖端まで延びる長さを有することを理解されたい。上記1又は2以上の表面は、好ましくは、上記長さの少なくとも25%、より好ましくは、上記長さの少なくとも50%、より好ましくは、少なくとも60%、さらにより好ましくは、少なくとも70%、最も好ましくは、少なくとも80%に沿って被覆される。好ましくは、潤滑剤は、100mgから1.5g、より好ましくは、200mgから1g、さらにより好ましくは、300mgから800mg、最も好ましくは、400mgから700mgの量でコンドームの1又は2以上の表面上に含まれる。
【0028】
潤滑剤は、多価アルコール及び糖から成る群から独立して選択される1又は2以上の有機化合物を含み、これらの有機化合物の各々は、少なくとも4個のヒドロキシル基、及び、120から10000の分子量を有する必要がある。これらの有機化合物の総量は5から25wt%である。上記で説明したように、多数(少なくとも4個)のヒドロキシル基を有する多価アルコール及び/又は糖の特定量での含有によって、潤滑剤の水と天然ゴムラテックス及び/又はPIの表面の不純物/添加物との相互作用を低減又は排除することができ、その結果、コンドームの透明性が維持され、このようなコンドーム上の他の水性潤滑剤に関連する白色化が防止されると考えられる。多価アルコール及び/又は糖の分子量の結果として、これは、望ましくないほど高い潤滑剤の浸透圧を生じさせることなく、所望の白色化防止効果を有するのに十分な量で含有することができる。
【0029】
本発明の実施形態において、潤滑剤中のこれらの特定の有機化合物の総量は、24wt%以下、23wt%以下、22wt%以下、21wt%以下、20wt%以下、19wt%以下、18wt%以下、17wt%以下、16wt%以下、15wt%以下、14wt%以下、13wt%以下、12wt%以下、11wt%以下、又は、10wt%以下であり、及び/又は、6wt%以上、7wt%以上、8wt%以上、9wt%以上、10wt%以上、11wt%以上、又は、12wt%以上である。
【0030】
例えば、潤滑剤は、潤滑剤の重量に対して、5から24wt%、又は、5から23wt%、又は、5から22wt%、又は、5から21wt%、又は、5から20wt%、又は、5から19wt%、又は、5から18wt%、又は、7から15wt%のこれらの有機化合物(複数可)の総量を含むことができる。
【0031】
多価アルコールという用語は、少なくとも2個のヒドロキシル基を有するアルコールを指す。しかしながら、上述したように、本発明で使用される多価アルコールは、少なくとも4個のヒドロキシル基を有する。本発明において使用される多価アルコールは、遊離ヒドロキシル基の数が少なくとも4個であることを条件として、エーテル及びエステルなどの多価アルコール誘導体を含むことができる。しかしながら、一部の実施形態において、多価アルコールは、ヒドロキシル基以外の官能基を含有しない。他の実施形態において、多価アルコールは、炭素、水素、及び酸素原子で構成される。好ましくは、多価アルコールは水溶性である。好ましくは、多価アルコールは、25℃の温度、好ましくは、少なくとも10から35℃の範囲を通じて完全に溶解した状態で潤滑剤中に存在する。これによって、多価アルコールがそれ自体で光を散乱させて潤滑剤付きコンドームの不透明度の増加に寄与しないことが保証される。
【0032】
糖という用語は、本明細書で使用される場合、水溶性の単糖、二糖、オリゴ糖、又は多糖を指す。水溶性とは、糖が25℃の温度で水に溶解することを意味する。適切な単糖の例としては、グルコース、ガラクトース、リボース、デオキシリボース、L-アラビノース、フルクトース、ソルボース、キシロースが挙げられる。適切な二糖の例としては、スクロース、トレハロース、ラクトース、及びマルトースが挙げられる。適切な多糖の例としては、グリコーゲンが挙げられる。糖という用語は、本明細書で使用される場合、単糖、二糖、オリゴ糖、又は多糖のエーテル及びエステルなどの糖誘導体を含有する。しかしながら、好ましくは、糖は、糖の1又は2以上の環状の炭素原子上のヒドロキシル基、環内酸素原子及びアセタール結合以外の官能基を含有しない。この記載は、糖の環状形を指すことを理解されたい。糖の環状形は、水溶液中で鎖状形と平衡状態で存在することができる。鎖状形は、カルボニル基を含有する。糖が鎖状形と平衡状態で存在する場合、本明細書における化合物中のヒドロキシル基の数への言及は、環状形にあるときの化合物のヒドロキシル基の数を指す。
【0033】
好ましくは、有機化合物(複数可)の各々は天然成分であり、すなわち、植物由来の生成物などの天然生成物から直接的に又は間接的に取得される。
【0034】
有機化合物(複数可)は、好ましくは、独立して、少なくとも5個のヒドロキシル基、又は、少なくとも6個のヒドロキシル基、又は、少なくとも10個のヒドロキシル基、又は、少なくとも15個のヒドロキシル基、又は、少なくとも20個のヒドロキシル基を有する。一部の実施形態において、有機化合物(複数可)は、最大で12個のヒドロキシル基、又は、最大で10個のヒドロキシル基を有する。一部の実施形態において、有機化合物(複数可)の1又は2以上は、グリコーゲンなどの高分子ポリオールである。他の実施形態において、有機化合物(複数可)の1又は2以上は、最大で20個の炭素原子、又は、最大で15個の炭素原子、又は、最大で10個の炭素原子を含む小分子である。上述の化合物のいずれかの混合物が存在することができる。
【0035】
好ましくは、有機化合物のうちの少なくとも1つ又は各々の分子量は、少なくとも150、又は、少なくとも180である。一部の実施形態において、有機化合物(複数可)のうちの少なくとも1つ又は各々の分子量は、少なくとも300である。有機化合物(複数可)の各々の分子量は、最大で10000である。好ましくは、有機化合物のうちの少なくとも1つ又は各々の分子量は、最大で5000、又は、最大で2000、又は、最大で1000、又は、最大で500である。一部の実施形態において、有機化合物のうちの少なくとも1つ又は各々の分子量は、150から500、又は、150から200、又は、300から500である。一般に、低分子量化合物は、高分子量化合物よりも高い浸透圧を生じる可能性が高く、一方、高分子量化合物は、粘度に悪影響を及ぼす傾向がある場合がある。従って、多価アルコール及び/又は糖の量は、その分子量に応じて低浸透圧組成物をもたらすように調整することができる。有機化合物(複数可)の最大分子量が500である実施形態において、潤滑剤は、好ましくは、有機化合物(複数可)の重量に対して5から20wt%、好ましくは、5から18wt%、又は、5から15wt%の合計量を含有する。驚くべきことに、潤滑剤は、有機化合物(複数可)がこの量で含有されるときにでさえも、透明性に対して所望の効果を有することが分かっている。有機化合物(複数可)がより高い分子量を有することができる実施形態において、有機化合物(複数可)は、15から25wt%などのより高い総量で含めることができる。
【0036】
好ましくは、有機化合物の1又は2以上は、分子量100当たり少なくとも2.5個のヒドロキシル基、より好ましくは、少なくとも3個を有する。
【0037】
好ましくは、有機化合物(複数可)が1又は2以上の多価アルコールを含むか又はこれから成る場合、多価アルコール(複数可)は糖アルコールであるか又はこれを含む。「アルコール」という用語は、本技術分野で公知であり、糖の鎖状形のカルボニル基がヒドロキシル基に還元される糖に対応する多価アルコールを指す。糖アルコールは、典型的には、必須ではないが、糖由来である。糖アルコールは、例えば、対応する糖の鎖状形のカルボニル基を還元することによって製造することができる。しかしながら、一部の糖アルコールは、自然に存在する。本発明において使用することができる糖アルコール(複数可)は、好ましくは、自然に存在し、好ましくは、対応する糖の鎖状形のカルボニル基を還元することによって製造されない。本発明での使用に適した糖アルコールとしては、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、イソマルト及び水素化デンプン加水分解物(HSH)が挙げられる。糖アルコールが糖成分を含み、その糖成分が鎖状形と平衡状態で存在する場合、本明細書における化合物中のヒドロキシル基の数への言及は、その環状形にある場合の化合物のヒドロキシル基の数を指す。
【0038】
一部の実施形態において、有機化合物(複数可)は、二糖及び二糖由来の糖アルコールから成る群から独立して選択される。二糖は、例えば、スクロース、トレハロース、ラクトース、又は、マルトースとすることができる。二糖由来の糖アルコールは、例えば、マルチトールとすることができる。「由来の」とは、糖アルコールが二糖に対応することを意味し、二糖の鎖状形のカルボニル基が水酸基に還元される。しかしながら、糖アルコールは、必ずしも二糖から生成される必要はない(例えば、自然に存在することができる)。有機化合物(複数可)が、二糖及び二糖由来の糖アルコールから成る群から独立して選択される場合、潤滑剤は、好ましくは、潤滑剤の重量に対してこれらの有機化合物(複数可)の5から15wt%、より好ましくは6から14wt%、さらにより好ましくは8から14wt%、最も好ましくは11から13wt%の総量を含む。
【0039】
他の実施形態において、有機化合物(複数可)は、単糖及び単糖由来の糖アルコールから成る群から独立して選択される。単糖は、例えば、グルコース、ガラクトース、リボース、デオキシリボース、L-アラビノース、フルクトース、ソルボース、又はキシロースとすることができる。単糖由来の糖アルコールは、例えば、ソルビトールとすることができる。「由来の」は、上記の二糖との関連で与えられた意味と対応する意味を有する。有機化合物(複数可)が、単糖及び単糖由来の糖アルコールから成る群から独立して選択される場合、潤滑剤は、好ましくは、潤滑剤の重量に対してこれらの有機化合物(複数可)の5から12wt%、より好ましくは、6から10wt%、最も好ましくは、6から8wt%の総量を含む。
【0040】
有機化合物(複数可)は、1又は2以上の単糖由来の糖アルコール及び1又は2以上の二糖由来の糖アルコールの混合物から成るか又はそれを含む。
【0041】
最も好ましくは、有機化合物(複数可)は、ソルビトール及び/又はマルチトールであるか又はそれを含む。ソルビトールが存在する特定の有機化合物のうちの唯一のものである場合、潤滑剤は、好ましくは、潤滑剤の重量に対して5から12wt%、より好ましくは、6から10wt%、最も好ましくは、6から8wt%のソルビトールを含む。マルチトールが存在する特定の有機化合物のうちの唯一のものであるとき、潤滑剤は、好ましくは潤滑剤の重量に対して5から15wt%、より好ましくは、6から14wt%、さらにより好ましくは、8から14wt%、最も好ましくは、11から13wt%のマルチトールを含む。
【0042】
好ましくは、潤滑剤は、潤滑剤の重量に対して少なくとも70wt%、より好ましくは、少なくとも75wt%、最も好ましくは、少なくとも80wt%の水を含む。一部の実施形態において、潤滑剤は、最大で90wt%の水、又は、最大で85wt%の水を含む。本発明における多価アルコール及び/又は糖の含有の結果として、コンドームの白色化を生じさせることなく、高レベルの水を潤滑剤に含めることができる。
【0043】
好ましくは、潤滑剤は、1200mOsm/kg未満、1100mOsm/kg未満、1000mOsm/kg未満、又は800から1000mOsm/kgの浸透圧を有する。浸透圧は、好ましくは、氷点降下法によって測定される。上記で説明したように、WHOは、単独の個人用潤滑剤(すなわち、コンドームに予め提供されていないもの)は、1200mOsm/kg未満の浸透圧を有することを推奨してきた。本発明者らは、本発明における上述の量での多価アルコール及び/又は糖の含有することが、潤滑剤の浸透圧を望ましくないレベルまで上昇させることなく、コンドームに対する好都合な白色化防止効果を有することを見出している。
【0044】
好ましくは、潤滑剤は、少なくとも4個のヒドロキシル基を含み、少なくとも120の分子量を有する多価アルコール以外の多価アルコールを含まない。上述の多価アルコール以外の1又は2以上の多価アルコールが存在する実施形態において、この1又は2以上の多価アルコールは、好ましくは、最大で5wt%、より好ましくは、最大で3wt%、さらにより好ましくは、最大で2wt%、さらにより好ましくは、最大で1wt%、最も好ましくは、最大で0.5wt%の量で存在する。好ましくは、潤滑剤は、上記の多価アルコール以外の多価アルコールを含まないか又は実質的に含まない。他の多価アルコール(例えば、グリセロール及びプロピレングリコールを挙げることができる)は、一般に、本発明の潤滑剤において一般に望ましくなく、その理由は、保管中のコンドームの白色化防止にほとんど効果がなく、及び/又は、潤滑剤の浸透圧を好ましくない高い値まで増大させるからである。
【0045】
実施形態において、潤滑剤は、600以下の分子量を有するグリセロール、プロピレングリコール、又はPEGを5wt%未満、4wt%未満、3wt%未満、2wt%未満、1wt%未満で含有するか又は本質的に含有しない。1つの実施形態において、潤滑剤は、600以下の分子量を有するグリセロール、プロピレングリコール、又はPEGを含まない。
【0046】
好ましくは、潤滑剤は3.5から5.0のpHを有する。これは、膣のpHに適合することが意図される。潤滑剤のpHに言及する場合、密封包装内のコンドームの1又は2以上の表面上の潤滑剤のpHを指すことを理解されたい。これは、コンドームを包装から取り出し、コンドームの表面から潤滑剤の一定分量を抽出し、一定分量(又は、必要であれば、同じバッチからの複数のコンドームにわたってプールされた一定分量)のpHを測定することによって決定することができる。pHは、好ましくは25℃の温度にて測定される。好ましくは、pHは、コンドームが密封包装内に少なくとも3ヶ月、好ましくは少なくとも6ヶ月保存された後に測定される。
【0047】
このようにしてコンドームから取り出された潤滑剤のpHは、最初にコンドームに適用されたときの潤滑剤のpHと必ずしも同じとは限らない。これは、潤滑剤内に強力な緩衝剤がない場合、潤滑剤のpHは、典型的には、経時的にコンドームのpHと平衡化するからである。コンドームのpHは、典型的には、特にコンドームがアルカリ性仕上げ粉体で被覆される実施形態において、コンドームに適用されたときの潤滑剤のpHよりも一般的に高くなる。従って、コンドームに適用されたときの潤滑剤のpHは、典型的には、平衡値に達するまで経時的に上昇する。
【0048】
一部の実施形態において、潤滑剤は、pHを調整するために緩衝剤又は酸を含む。適切な緩衝剤は、多塩基酸及び多塩基酸の塩(例えばナトリウム塩)を含む。これらの実施形態において、緩衝剤は、潤滑剤の重量に対して0.1から10wt%、さらにより好ましくは、1から10wt%、さらにより好ましくは、2から8wt%、最も好ましくは、3から7wt%の量で存在する。好ましくは、緩衝剤は、塩に対する多塩基酸の重量比で1:5から10:1、より好ましくは、1:2から5:1、さらにより好ましくは、1:1から3:1の多塩基酸及び多塩基酸の塩を含む。好ましくは、緩衝剤は、より好ましくは上述の重量比でクエン酸及びクエン酸ナトリウムを含む。適切な酸は、弱酸、より好ましくは、弱有機酸を含む。本発明者らは、クエン酸が、潤滑剤が適用されるコンドームの構造的完全性に悪影響を及ぼさない効果的な酸性化剤であることを見出している。
【0049】
一部の実施形態において、潤滑剤は、防腐剤を含む。これらの実施形態において、防腐剤は、好ましくは、潤滑剤の重量に対して0.01から5wt%、より好ましくは、0.05から2wt%、さらにより好ましくは、0.1から1wt%の量で存在する。好ましくは、防腐剤は、安息香酸及び/又は安息香酸塩、好ましくは安息香酸ナトリウム又はクロルフェネシンであるか又はそれらを含む。本発明者らは、安息香酸/その塩が、特に所望の酸性pHにおいて、本発明の潤滑剤での使用に有効な防腐剤であることを見出している。好ましくは、潤滑剤は、パラベンを含まない。
【0050】
本発明の潤滑剤は、増粘剤をさらに含む。適切な増粘剤としては、カルボマー、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、アルギン酸塩、アクリル酸塩、メタクリル酸塩、シリコーン、セラミド及びポリビニルピロリドン、寒天、ローカストビーンガム、及びアラビアガムが挙げられる。
【0051】
好ましくは、増粘剤は、架橋ポリアクリル酸、ヒドロキシエチルセルロース、又はキサンタンガム、より好ましくは、キサンタンガムである。使用される場合、増粘剤は、好ましくは、0.01から2wt%、さらにより好ましくは、0.1から1wt%である。一実施形態において、潤滑剤は、ジメチコンを含まない又は何らかのシリコーンを含まない。
【0052】
一部の実施形態において、潤滑剤は、潤滑剤の重量に対して、好ましくは、0.01から2wt%、より好ましくは、0.02から1wt%、最も好ましくは、0.05から0.5wt%の量で保湿剤を含む。好ましくは、保湿剤は、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、及び/又はコラーゲンであるか又はそれらを含む。
【0053】
一部の実施形態において、潤滑剤は、界面活性剤を含む。界面活性剤は、潤滑剤が製造中にコンドーム表面の一部にのみ投与される場合、潤滑剤が保管中にコンドームの長さに沿って移動するのを助けることができる。一部の実施形態において、界面活性剤は、潤滑剤の重量に対して最大で2wt%、又は、最大で1wt%、又は、最大で0.5wt%の量で存在する。一部の実施形態において、界面活性剤は、潤滑剤の重量に対して少なくとも0.05wt%、又は、少なくとも0.1wt%の量で存在する。
【0054】
潤滑剤は、人工着色料及び/又は香料を含まないか又は実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、何らかの人工着色料及び/又は香料が、潤滑剤の重量に対して、1wt%未満、好ましくは0.5wt%未満、より好ましくは0.1wt%未満の総量で存在することを意味する。一部の実施形態において、潤滑剤は、NRLの悪臭を隠す組成物などの、臭気マスカーを含有することができる。
【0055】
もちろん、潤滑剤自体は、好ましくは透明である。コンドームに対する潤滑剤の白化防止効果は、潤滑剤自体が透明であるときに最も容易に観察することができる。
【0056】
好ましくは、水性潤滑剤は、特定の有機化合物(複数可)及び上述の本発明の随意的な成分のいずれかの水溶液を含む。従って、潤滑剤の成分の全ては、好ましくは、少なくとも使用される量において水に可溶である。潤滑剤は、好ましくは、油を含まない。潤滑剤は、好ましくは、乳濁液の形態ではない。
【0057】
好ましくは、潤滑剤は、100から10000mPa・s、より好ましくは、500から2000mPa・s、さらにより好ましくは、800から1000mPa・sの粘度を有する。粘度は、ブルックフィールド粘度計を使用し、20℃の温度及び50rpm剪断速度でスピンドルRV04を使用して測定することができる。
【0058】
一部の実施形態において、コンドームは、その1又は2以上の表面上に、仕上げ粉体を含む。1又は2以上の表面は、コンドームの内側表面及び/又は外側表面とすることができる。好ましくは、コンドームは、仕上げ粉体を内側表面及び/又は外側表面の両方上に含む。仕上げ粉体は、本技術分野で公知である。仕上げ粉体は、典型的にはアルカリ性であり、典型的には、シリカ、タルク、炭酸塩、コーンスターチなどの化合物を基本とする。仕上げ粉体は、コンドームの表面が互いにくっつくのを防ぎために及び装着を助けるために使用される。詳細には、仕上げ粉体を内側表面上に含むことは、コンドームがそれ自体にくっつくのを防ぐのに役立ち、一方、仕上げ粉体を外側表面上に含むことは、製造中にコンドームが他のコンドームにくっつくのを防ぐのにも役立つ。
【0059】
コンドームがその1又は2以上の表面上に仕上げ粉体を含む実施形態において、仕上げ粉体は、好ましくは、最大で100mg、好ましくは、最大で50mg、最も好ましくは、20から40mgの量で供給される。過度に多量の仕上げ粉体の使用は、被覆されたコンドームの不透明度を増大させる傾向があり、これは、本発明との関連で望ましくない。本明細書において説明する仕上げ粉体の量が少なければ、多くの既存の水性潤滑剤の白色化効果がより顕著になり、その理由は、少量の仕上げ粉体自体であれば、コンドームの不透明性にほとんど影響を与えないからである。従って、本発明の潤滑剤の好都合な白色化防止特性は、特に、仕上げ粉体が少量で使用されるときに顕著である。一部の実施形態において、コンドームは、仕上げ粉体を含まない。他の実施形態において、コンドームは、炭酸塩(炭酸マグネシウム及び/又は炭酸カルシウムなどの)及び/又は、トウモロコシデンプンを含む仕上げ粉体を含む。
【0060】
好ましくは、その1又は2以上の表面上に含まれる水性潤滑剤及び随意的な仕上げ粉体を含む本発明のコンドームは、透明である。これに関連する透明の特性は、ロール状コンドームのロール状部分が、コンドーム材料自体が透明であっても実質的に不透明に見える可能性があるので、包装から取り出された非ロール状態のコンドームを指すことを理解されたい。実際には、包装自体は、不透明とすることができる。好ましくは、その1又は2以上の表面上に含まれる水性潤滑剤及び随意的な仕上げ粉体を含むコンドームは、10から40℃の温度で、密封包装内の保管後に少なくとも6ヶ月間、又は少なくとも12ヶ月間、又は少なくとも18ヶ月間、又は少なくとも24ヶ月間、透明である。好ましくは、その1又は2以上の表面上に含まれる水性潤滑剤及び随意的な仕上げ粉体を含むコンドームの透明度は、密封包装内での保管後、水性潤滑剤又は随意的な仕上げ粉体が適用される前のコンドームの透明度と実質的に同じである。
【0061】
好ましくは、その1又は2以上の表面上に含まれる水性潤滑剤及び随意的な仕上げ粉体を含むコンドームは、直前の段落で明記された保管期間後、好ましくは、最大で70%のヘイズ値を有する。好ましくは、ヘイズ値は、最大で60%、さらにより好ましくは、最大で50%、さらにより好ましくは、最大で40%、最も好ましくは、最大で30%である。一部の実施形態において、ヘイズ値は、少なくとも10%又は少なくとも15%である。ヘイズ値は、本明細書の別の箇所で定義される。
【0062】
好ましくは、その1又は2以上の表面上に含まれる水性潤滑剤及び随意的な仕上げ粉体を含むコンドームは、好ましくは、上記で規定された保管期間後に、潤滑剤及び随意的な仕上げ粉体の適用前のコンドームのヘイズ値よりも相対的に最大で10%高いヘイズ値を有する。コンドームが仕上げ粉体を含む実施形態において、その1又は2以上の表面上に含まれる水性潤滑剤及び仕上げ粉体を含むコンドームは、仕上げ粉体が適用された後であるが潤滑剤が適用される前のコンドームのヘイズ値よりも相対的に少なくとも50%低い、少なくとも60%低い、又は、少なくとも70%低いヘイズ値を有する。これは、好ましくは、上記で明記された保管期間後の場合である。すなわち、潤滑剤の適用は、仕上げ粉体で被覆されたコンドームの透明性を増加させ、保管中にこの透明性の増加を維持することができる。
【0063】
特定の好ましい実施形態において、本発明は、密封包装と、包装内の天然ゴムラテックスのコンドームとを備える包装コンドームを提供し、
コンドームは、その1又は2以上の表面上に水性潤滑剤を含み、
水性潤滑剤は、増粘剤と、水性潤滑剤の重量に対して5から19wt%(好ましくは8から13wt%)の多価アルコールとを含み、多価アルコールは、少なくとも8個のヒドロキシル基(好ましくは、少なくとも9個のヒドロキシル基)及び300から500の分子量を有し、
水性潤滑剤は、少なくとも8個(又は、好ましくは、9個)のヒドロキシル基及び300から500の分子量を有する多価アルコール以外の0から2wt%の多価アルコールを含む。
【0064】
これらの実施形態において、潤滑剤は、好ましくは、マルチトールを含み、潤滑剤は、好ましくは、1200mOsm/kg未満の浸透圧及び/又は3.5から5.0のpHを有する。
【0065】
特定の好ましい実施形態において、本発明は、密封包装と、包装内の天然ゴムラテックスのコンドームとを備える包装コンドームを提供し、
コンドームは、その1又は2以上の表面上に水性潤滑剤を含み、
水性潤滑剤は、増粘剤と、潤滑剤の重量に対して5から19wt%(好ましくは6から10wt%)の多価アルコールとを含み、多価アルコールは、少なくとも5個のヒドロキシル基(好ましくは、少なくとも6個のヒドロキシル基)及び150から200の分子量を有し、
水性潤滑剤は、少なくとも5個(又は、少なくとも6個)のヒドロキシル基及び150から200の分子量を有する多価アルコール以外の0から2wt%の多価アルコールを含む。
【0066】
これらの実施形態において、潤滑剤は、好ましくは、ソルビトールを含み、潤滑剤は、好ましくは、1200mOsm/kg未満の浸透圧及び/又は3.5から5.0のpHを有する。
【0067】
第2の態様によれば、本発明は、包装コンドームを準備する方法を提供する。この方法は、
(i)水性潤滑剤を提供するステップであって、水性潤滑剤は、増粘剤と、水性潤滑剤の重量に対して5から25wt%の総量で、多価アルコール及び糖から成る群から独立して選択された1又は2以上の有機化合物とを含み、上記1又は2以上の有機化合物の各々は、少なくとも4個のヒドロキシル基及び少なくとも120の分子量を有する、ステップと、
(ii)第1の態様で規定されるコンドームを提供するステップと、
(iii)水性潤滑剤が天然ゴムラテックス及び/又は合成ポリイソプレンと接触する水性潤滑剤付きコンドームを形成するように水性潤滑剤の1回分をコンドームの1又は2以上の表面に適用するステップと、
(iv)水性潤滑剤付きコンドームを包装内に密封するステップと、
を含む。
これらのステップは、連続的に実施されることが意図されるが、本方法が連続的に実施される際にステップ間に何らかの重複が存在する場合があり、コンドームの穴の電気的検査などの、さらなるステップが存在する場合がある。
【0068】
水性潤滑剤を提供するステップにおいて、水性潤滑剤は、実質的に、第1の態様に関連して規定される潤滑剤と同じである。しかしながら、第1の態様の水性潤滑剤は、コンドームの1又は2以上の表面上に含まれる潤滑剤であり、一方、上記ステップ(i)における水性潤滑剤は、コンドームの1又は2以上の表面に適用される前の潤滑剤を指すことを認識されたい。上記ステップ(i)において、コンドームに適用される前の潤滑剤は、好ましくは、3.0から5.0、より好ましくは、3.0から4.5、3.0から4.0、又は、3.5から4.5のpHを有する。上記で説明したように、潤滑剤(随意的な仕上げ粉体を含む)のpHは、コンドームの表面と平衡化すると増大する場合があるが、これは、適切な緩衝システム又は酸を使用することによって少なくともある程度緩和することができる。
【0069】
ステップ(ii)において、コンドームはロール状態で提供することができる。この実施形態において、ステップ(iii)での潤滑剤の1回分は、ロール状コンドームの先端部に又は先端部近傍に適用することができる。潤滑剤は、その後、経時的に(コンドームが包装内に密封された後を含み)コンドームのロールに沿って移動することができる。この実施形態において、コンドームは、潤滑剤が適用された時点で、すでに包装内にあるか又は包装の一部を形成することになる材料(1つの箔片など)上にある。密封ステップだけは、必然的に潤滑剤が適用された後に行う必要がある。
【0070】
代替的な実施形態において、ステップ(ii)において、コンドームは非ロール状態で提供される。この実施形態において、ステップ(iii)での潤滑剤の1回分は、ロール状にする前にコンドームの1又は2以上の表面に適用される。潤滑剤は、様々な公知の方法で、例えば、噴霧によって、又は潤滑剤に浸されたスポンジの転動によって適用することができ、又は、潤滑剤の1回分は、転動前にコンドームの長さに沿って1又は2以上の地点に適用することができる。潤滑剤が所望の領域に移動する必要がないように、必要とされる領域の全て又は実質的に全てに潤滑剤がコンドームに予め適用される場合、潤滑剤の高粘度化を許容できることを理解されたい。
【0071】
一部の実施形態において、本方法は、コンドームの1又は2以上の表面を仕上げ粉体で被覆するステップをさらに含む。1又は2以上の表面は、内側表面及び/又は外側表面、好ましくは、内側表面及び外側表面とすることができる。これは、ロール状にする前かつ潤滑剤が適用される前に行われる。コンドームの1又は2以上の表面を仕上げ粉体で被覆するステップは、仕上げ粉体を粉体として又は液体スラリー(好ましくは水性スラリー)として1又は2以上の表面に適用するステップを含むことができる。後者の実施形態において、水は、コンドームの1又は2以上の表面上に仕上げ粉体の被覆を形成するために蒸発させることができる。
【0072】
好ましくは、第2の態様の方法で準備された包装コンドームは、第1の態様の包装コンドームである。
【0073】
第3の態様によれば、本発明は、第2の態様による方法によって取得可能な又は取得された包装コンドームを提供する。
【0074】
第4の態様によれば、本発明は、保管中に密封包装内でのコンドームの透明性を維持しながら、潤滑剤が天然ゴムラテックス及び/又は合成ポリイソプレンと接触するように、第1の態様で規定されるコンドームの1又は2以上の表面を潤滑するための第2の態様で規定される水性潤滑剤の使用を提供する。
【0075】
好ましくは、透明性は、10℃から40℃の温度で、少なくとも6ヶ月の保管、又は少なくとも12ヶ月の保管、又は少なくとも18ヶ月の保管、又は少なくとも24ヶ月の保管の間に維持される。コンドームは、その上の1又は2以上の表面上に、好ましくは、最大で100mg、より好ましくは、最大で50mg、最も好ましくは、20から40mgの量で仕上げ粉体を含むことができる。
【0076】
上記保管後、その1又は2以上の表面上に含まれる水性潤滑剤及び随意的な仕上げ粉体を含むコンドームは、好ましくは、潤滑剤及び随意的な仕上げ粉体を適用する前のコンドームのヘイズ値よりも相対的に10%未満高いヘイズ値を有する。仕上げ粉体が含まれる実施形態において、その1又は2以上の表面上に含まれる水性潤滑剤及び仕上げ粉体を含むコンドームは、仕上げ粉体が適用された後であるが潤滑剤が適用される前のコンドームのヘイズ値よりも相対的に少なくとも50%低い、少なくとも60%低い、又は少なくとも70%低いヘイズ値を有する。
【0077】
上述の態様は、本明細書において開示する上述の態様のいずれかと自由に組み合わせることができる。
【0078】
ここで、本発明を以下の非限定的な実施例に関連して説明する。
【実施例1】
【0079】
以下は本発明者による観察であり、水性潤滑剤で潤滑された市販の天然ゴムラテックスのコンドームは、密封包装においての7日間の保管後に白色を呈し、一方、シリコーンオイルで潤滑された同じコンドームは、透明な外観であり、本発明者は、水が白色化を引き起こすのか又は少なくとも白色化の一因であるのかを調査しようとした。これを行うために、天然ゴムラテックスのコンドームを脱イオン水に浸した。当初、コンドームは、透明であることが観察された。5時間後、コンドームは、白色を呈した。コンドームは、浸漬が長いほど、白色を呈した。従って、既存の水性潤滑剤中の水がコンドームの白色化を引き起こすか又は少なくともその一因であると結論づけた。
【実施例2】
【0080】
異なる濃度の多価アルコール(グリセロール、1,3-プロパンジオール、PEG400及びソルビトール)の溶液を、保管中の透明天然ゴムラテックスのコンドームの白色化に及ぼす影響に関して試験した。表1の各組成物について、600mgの溶液をロール状の透明天然ゴムラテックスコンドームの先端上に投与した。いずれの場合も、溶液は、コンドームへの適用前は透明であり、コンドームは、溶液適用直後は透明であることがわかった。その後、処理対象のコンドームを箔包装に密封した。表1に示す条件での保管後、コンドームを包装から取り出して検査した。コンドームの外観を表1に記録した(T=透明、L=半透明、O=不透明)。
(表1)
透明天然ゴムラテックスのコンドームの白色化に及ぼす影響に関する様々な多価アルコールの試験

#70℃で28日間保管後、試料のいずれについてもそれ以上の変化は観察されなかった。
【0081】
表1からわかるように、透明度は、適用された溶液の含水量だけでなく、溶質の選択によっても影響を受ける。純水と同様に、グリセロール及び1,3-プロパンジオール自体は、100%の濃度にて使用されたときに白色化を引き起こし、水とともに溶液中であるとき、グリセロール及び1,3-プロパンジオール自体は、非常に限定的な水の白色化防止効果を有することがわかった。詳細には、コンドームは、10wt%のグリセロール又は10wt%の1,3-プロパンジオールが含まれる場合、保管後は依然として不透明であることがわかった。より高いレベルのグリセロール又は1,3-プロパンジオール(より低いレベルの水)を含むことによって、コンドームは、完全に不透明になることが防げられたが、コンドームは、半透明の外観であり、透明ではなかった。PEG400は、コンドームの透明な外観を維持することができたが、非常に高い濃度(少なくとも80%)で含まれたときにのみであった。
【0082】
ソルビトールは、低濃度(5wt%又は10wt%)でコンドームを透明に維持することができた試験済みの唯一の多価アルコールであり、換言すると、これらの溶液中のソルビトールは、それ自体、白色化を起こさず、加えて高濃度の水を使用することを可能にする。
【実施例3】
【0083】
本発明による水性潤滑剤製剤を調製し、ロール状に巻いた2個の透明天然ゴムラテックスのコンドームの先端に投与した(コンドーム1個当たり潤滑剤600mg)。
(表2)
本発明による潤滑剤

【実施例4】
【0084】
一連の天然ゴムラテックスのコンドームのヘイズ値(%)をASTM規格D 1003に基づいて測定した。手順は、以下のステップを含んでいた。
・コンドームを包装(存在する場合)から取り出し、展開し、コンドームの開放端から閉鎖端までの長さに沿って切断し、
・切断したコンドームを平らな薄膜として表面上に置き、
・3つの地点を薄膜上にマーキングし(以前はコンドームの閉鎖端を形成していた膜の端部又は可能な限りその近くにある第1の地点、以前はコンドームの開放端を形成していた膜の端部又は可能な限りその近くにある第2の地点、及び、第1と第2の地点の中間点での第3の地点)、
・マーキングした薄膜を薄膜試料保持器に入れ、
・薄膜試料保持器を紫外可視分光光度計(BYK Haze-gard i)にセットし、
・ヘイズ値を3つの地点の各々で測定し(具体的には、3つの地点の各々を取り囲む直径18mmの円に関して)、
・コンドームのヘイズ値を、3つの測定値の平均値として計算した(開放端、閉鎖端、中間点)。
【0085】
結果を表3に示す。
(表3)
様々な潤滑剤付きコンドームのヘイズ値測定結果

#-浸漬後、##-包装から取り出した)
【0086】
ヘイズ値測定結果とコンドーム透明度の観察結果と間には直接的な関連性があることに留意されたい。最も透明度の高いコンドームのヘイズ値は最も小さく、その逆も同様であった。これによって、ヘイズ値は、潤滑剤付き(及び潤滑剤なし)コンドームの透明度を定量化するパラメータとして有効性が確認された。
【実施例5】
【0087】
本発明による複数の潤滑剤を調製した。それらの浸透圧を氷点降下法で測定した。詳細には、各試験試料100μLを試料チューブにピペットで取り、それをLOSER OM819氷点浸透圧計の凍結室に入れた。その後、氷点降下量を浸透圧計で測定し、浸透圧値に換算した。
【0088】
潤滑剤のpH値を室温でpHプローブを用いて測定した。
【0089】
潤滑剤の粘度を、ブルックフィールド粘度計スピンドルRV04を使用して20℃において剪断断速度50rpmで測定した。
(表4)
本発明による例示的な潤滑剤

【0090】
潤滑剤の全ては、1200 mOsm/kg未満のWHO推奨値を満たす低い浸透圧を有することが分かった。
【0091】
その後、潤滑剤の各々を、ロール状の透明な天然ゴムラテックスのコンドームの先端に600mg投与した。潤滑剤付きコンドームをホイル包装で密封した。室温又は70℃で1週間保管後、コンドームを包装から取り出して検査した。潤滑剤付きコンドームの全ては、保管及びホイル包装からの取り出し後に観察すると透明であった。
【実施例6】
【0092】
本発明に複数の潤滑剤を調製した、多価アルコールはマルチトールである。クエン酸を使用して潤滑剤のpHを調整し、クロルフェネシン及び1,2-ヘキサンジオールを防腐剤として使用した。コンドームの白色化に及ぼす影響を試験するためにこの潤滑剤を透明な天然ゴムラテックスのコンドームに適用した。
(表5)
本発明による例示的な潤滑剤

【0093】
その後、潤滑剤の各々を、ロール状の透明な天然ゴムラテックスのコンドームの先端に投与した(600mg)。潤滑剤付きコンドームをホイル包装内に密封した。70℃で1週間保管後、コンドームを包装から取り出して検査した。潤滑剤付きコンドームの全ては、保管及びホイル包装後に観察すると透明であった。さらに、コンドームの強度試験を行ったところ、ISO規格に適合しており、乳首破損(teat breakage)はゼロであった。
本明細書で示すwt%の値は、特に指定のない限り、潤滑剤の総重量に基づく。
【0094】
以上の詳細な説明は、説明及び解説のために提示されており、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書で示す現在のところ好ましい実施形態の多くの変形例は、当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内にとどまることになる。
【国際調査報告】