(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】シリカ強化熱可塑性ポリウレタン
(51)【国際特許分類】
C08G 18/08 20060101AFI20240201BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20240201BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20240201BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C08G18/08 038
C08G18/10
C08L75/04
C08K3/36
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548295
(86)(22)【出願日】2022-02-03
(85)【翻訳文提出日】2023-10-10
(86)【国際出願番号】 US2022015029
(87)【国際公開番号】W WO2022173639
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391010758
【氏名又は名称】キャボット コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】ユージーン エヌ.ステップ
(72)【発明者】
【氏名】アンジェリカ エム.サンチェス ガルシア
(72)【発明者】
【氏名】マルク ベ.デルボー
(72)【発明者】
【氏名】バヒド センディジャレビク
(72)【発明者】
【氏名】アイサ センディジャレビク
(72)【発明者】
【氏名】イブラヒム センディジャレビク
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4J002CK021
4J002DJ016
4J002FB096
4J002FB246
4J002FD016
4J002GC00
4J002GN00
4J002GN01
4J002GQ01
4J002GT00
4J034BA08
4J034CA03
4J034CA04
4J034CB02
4J034CB03
4J034CC08
4J034CD04
4J034CD06
4J034DA01
4J034DB03
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4J034DC50
4J034DF01
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4J034DF16
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG05
4J034DG06
4J034HA01
4J034HA07
4J034HB11
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA42
4J034MA04
4J034RA03
4J034RA12
4J034RA14
4J034RA19
4J034SA02
(57)【要約】
優れた機械特性を有する熱可塑性ポリウレタンを製造するために、疎水性シリカがインサイチュプロセスにおいてポリエーテルに組み合わされる。得られた熱可塑性ポリウレタンは、履物のミッドソール及びアウトソール、並びにワイヤ絶縁、ホース、フィルム、ホイール及びタイヤ、並びに掘削/採掘スクリーンを含む種々の用途において使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
300~5000の数平均分子量を有する第一のポリオールと、ヒュームドシリカであって、C1~C8のアルキルシリル基又はアクリレート若しくはメタクリレートエステル基を表面に有し、少なくとも50m
2/gの表面積を有する15wt%以下のヒュームドシリカとを少なくとも含むポリオール組成物を提供する工程;
前記ポリオール組成物と、芳香族、環状脂肪族又は芳香脂肪族ジイソシアネートとを組み合わせて、プレポリマー組成物を形成する工程;並びに
前記プレポリマー組成物をポリマー化させて、0.8g/mL以上の密度を有する熱可塑性ポリウレタンを形成する工程
を含む、熱可塑性ポリウレタンを製造する方法。
【請求項2】
前記プレポリマー組成物をポリマー化させる工程が、前記プレポリマー組成物に触媒を添加することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プレポリマー組成物が、鎖延長剤をさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒュームドシリカが、50~400m
2/gの表面積を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒュームドシリカが、C1~C3のアルキルシリル基を表面に有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記熱可塑性ポリウレタンを成型することをさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記熱可塑性ポリウレタン組成物が、前記ヒュームドシリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの破断伸びよりも大きい破断伸びを有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記熱可塑性ポリウレタン組成物が、シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの反発弾性よりも4%以下だけ小さい反発弾性を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記熱可塑性ポリウレタンが、シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの圧縮永久ひずみ(Ct)よりも大きい圧縮永久ひずみ(Ct)を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記熱可塑性ポリウレタンが、以下の特性:
a)シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの破断伸びよりも少なくとも4%大きい、少なくとも5%大きい、少なくとも10%大きい、少なくとも15%大きい、少なくとも20%大きい、又は60%以下だけ大きい破断伸び;
b)シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの反発弾性よりも2%以下だけ小さい、0%以下だけ小さい、3%以下だけ大きい、6%以下だけ大きい、9%以下だけ大きい、12%以下だけ大きい、15%以下だけ大きい、又は18%以下だけ大きい反発弾性;あるいは
c)シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの圧縮永久ひずみよりも少なくとも10%大きい、少なくとも15%大きい、少なくとも20%大きい、少なくとも30%大きい、又は90%以下だけ大きい圧縮永久ひずみ
のうち1つ又は複数を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記プレポリマー組成物が、1つ又は複数の界面活性剤、充填剤、難燃剤、核形成剤、溶媒、抗酸化剤、潤滑剤、離型剤、染料、顔料、可塑剤又はUV安定剤をさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリオール組成物が、15wt%以下の前記ヒュームドシリカを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の方法によって製造された、熱可塑性ポリウレタン。
【請求項14】
10wt%以下の前記ヒュームドシリカを含む、請求項13に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項15】
前記ヒュームドシリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの破断伸びよりも大きい破断伸びを有する、請求項13又は14に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項16】
前記熱可塑性ポリウレタンが成型されている、請求項13~15のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項17】
シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの反発弾性よりも4%以下だけ小さい反発弾性を有する、請求項13~16のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項18】
シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの圧縮永久ひずみ(Ct)よりも大きい圧縮永久ひずみ(Ct)を有する、請求項13~17のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項19】
以下の特性:
a)シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの破断伸びよりも少なくとも4%大きい、少なくとも5%大きい、少なくとも10%大きい、少なくとも15%大きい、少なくとも20%大きい、又は60%以下だけ大きい破断伸び;
b)シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの反発弾性よりも2%以下だけ小さい、0%以下だけ小さい、3%以下だけ大きい、6%以下だけ大きい、9%以下だけ大きい、12%以下だけ大きい、15%以下だけ大きい、又は18%以下だけ大きい反発弾性;あるいは
c)シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの圧縮永久ひずみよりも少なくとも10%大きい、少なくとも15%大きい、少なくとも20%大きい、少なくとも30%大きい、又は90%以下だけ大きい圧縮永久ひずみ
のうち1つ又は複数を有する、請求項13~18のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項20】
熱可塑性ポリウレタン組成物であって、少なくとも0.8g/mLの密度を有していて、C1~C8アルキルシリル基又はアクリレート若しくはメタクリレートエステル基を表面に有する粒子状ヒュームドシリカを含んでいて、前記ヒュームドシリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの破断伸びよりも大きい破断伸びを有する、熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項21】
成型されている、請求項20に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項22】
シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの反発弾性よりも4%以下だけ小さい反発弾性を有する、請求項20又は21に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項23】
シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの圧縮永久ひずみ(Ct)よりも大きい圧縮永久ひずみ(Ct)を有する、請求項20~22のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項24】
以下の特性:
a)シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの破断伸びよりも少なくとも4%大きい、少なくとも5%大きい、少なくとも10%大きい、少なくとも15%大きい、少なくとも20%大きい、又は60%以下だけ大きい破断伸び;
b)シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの反発弾性よりも2%以下だけ小さい、0%以下だけ小さい、3%以下だけ大きい、6%以下だけ大きい、9%以下だけ大きい、12%以下だけ大きい、15%以下だけ大きい、又は18%以下だけ大きい反発弾性;あるいは
c)シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの圧縮永久ひずみよりも少なくとも10%大きい、少なくとも15%大きい、少なくとも20%大きい、少なくとも30%大きい、又は90%以下だけ大きい圧縮永久ひずみ
のうち1つ又は複数を有している、請求項20~23のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項25】
前記ヒュームドシリカが、0.1wt%~10wt%の量で存在する、請求項20~24のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項26】
前記ヒュームドシリカが、50m
2/g~400m
2/gの表面積を有する、請求項20~25のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項27】
1つ又は複数の界面活性剤、充填剤、難燃剤、核形成剤、溶媒、抗酸化剤、潤滑剤、離型剤、染料、顔料、可塑剤又はUV安定剤をさらに含む、請求項20~26のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項28】
前記ヒュームドシリカが、C1~C3のアルキルシリル基を表面に有する、請求項20~27のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性ヒュームドシリカによって強化された熱可塑性ポリウレタンに関する。
【背景技術】
【0002】
用語「ポリウレタン」は、広範囲のポリマー組成物をいう。これらのポリマー組成物のそれぞれは、ポリマーであって、その繰り返し単位が-N-CO-O-結合を含むポリマーを含有する。加えて、ポリウレタンは、尿素(-N-CO-N-)結合をさらに含む場合がある。しかしながら、これらのウレタン及び尿素結合の間の分子鎖の組成と、ポリマーを製造する方法とは、最終特性に影響を与える。このように、異なる組成を有するポリウレタン及び/又は異なる方法によって製造されたポリウレタンは、コーティングに対する接着剤から、異なる種類の発泡材料に対するエラストマーまでの範囲の種々の用途において使用される。一般に、ポリウレタンは、ポリイソシアネートとポリオールとの反応によって製造される。
【0003】
ポリウレタンは、接着剤、コーティング、発泡材料及び高密度の熱可塑性樹脂を含む種々の形態での使用のために、その化学的性質を変え得る多目的に使用できる材料である。典型的には、熱可塑性ポリウレタンを形成するために、2つの異なるポリオールを使用してブロックコポリマーを作り出す。例えば、低分子量のグリコール及びジイソシアネートは、水素結合を介して連結する短い鎖の形成をもたらし、結晶性である場合がある硬質の相を形成する。第二の「より軟質の」ブロックは、ポリエーテル又はポリエステルポリオールの使用によって形成することができ、それは非晶質ドメインをもたらす。熱可塑性ポリウレタン(TPU)の特性は、2つのドメインの形態によって決められる。硬質のドメイン又は相は、強化をもたらす充填剤として作用し、そうでなければエラストマー性であるTPUを、ゴム処理設備よりもむしろプラスチック処理設備を使用して処理されることを可能とし、一方で、TPU材料は、未だに、ひずみの下でエラストマーとして振る舞う。ポリマーの引張特性は、どのように引張力が硬質のドメインにおける水素結合に干渉するかによって決められる。
【0004】
一般に、ポリウレタンにおいて、それらの機械的特性、電気的特性及び他の特性を改質するために、種々の充填剤が用いられる。これらの充填剤は、例えば溶融混合によって、ポリマー化された材料と組み合わされるか、又はインサイチュプロセスにおいてポリ縮合の前にプレポリマー組成物に組み込まれる場合がある。インサイチュプロセスにおいて用いられる充填剤は、2つの機能を満たす必要がある。それらは最終製品に所望の特性をもたらす必要があるだけでなく、その製品を生成するポリマー化と干渉し得ない必要もある。
【0005】
国際公開第2012/069264号は、親水性ヒュームドシリカ及び疎水性ヒュームドシリカの両方を含むヒュームドシリカを熱可塑性ポリウレタンに組み込むための方法及び配合物を開示している。しかしながら、ポリウレタン材料のポリマー化及び最終特性に対する疎水性シリカの影響をより良く最適化することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
1つの実施態様において、熱可塑性ポリウレタンを製造する方法は、300~5000の数平均分子量を有する第一のポリオールと、ヒュームドシリカであって、C1~C8のアルキルシリル基又はアクリレート若しくはメタクリレートエステル基を表面に有していて、少なくとも50m2/gの表面積を有する15wt%以下のヒュームドシリカとを少なくとも含むポリオール組成物を提供する工程、ポリオール組成物と、芳香族、環状脂肪族又は芳香脂肪族ジイソシアネートとを組み合わせて、プレポリマー組成物を形成する工程、並びにプレポリマー組成物をポリマー化させて、0.8g/mL以上の密度を有する熱可塑性ポリウレタンを形成する工程を含む。熱可塑性ポリウレタンは成型されてよい。
【0007】
プレポリマー組成物をポリマー化させる工程は、触媒をプレポリマー組成物に添加することを含んでよい。プレポリマー組成物は、鎖延長剤をさらに含む。ヒュームドシリカは、50~400m2/gの表面積を有してよい。ヒュームドシリカは、表面にC1~C3のアルキルシリル基を有してよい
【0008】
熱可塑性ポリウレタン組成物は、ヒュームドシリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの破断伸びよりも高い破断伸びを有することができる。代わりに又は加えて、熱可塑性ポリウレタン組成物は、シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの反発弾性よりも4%以下だけ小さい反発弾性を有する。代わりに又は加えて、熱可塑性ポリウレタンは、ASTM D-395によって測定した場合に、シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの圧縮永久ひずみ(compression set) (Ct)よりも大きい圧縮永久ひずみを有することができる。
【0009】
プレポリマー組成物は、1つ又は複数の界面活性剤、充填剤、難燃剤、核形成剤、溶媒、抗酸化剤、潤滑剤、離型剤、染料、顔料、可塑剤又はUV安定剤をさらに含んでよい。ポリオール組成物は、15wt%以下のヒュームドシリカを含んでよい。
【0010】
1つの別の態様において、熱可塑性ポリウレタンは、上記の方法の任意の組み合わせ又はサブコンビネーションによって製造される。熱可塑性ポリウレタンは、10wt%以下のヒュームドシリカを含んでよい。熱可塑性ポリウレタンは成型されてよい。熱可塑性ポリウレタンは、ヒュームドシリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの破断伸びよりも大きい破断伸びを有することができる。代わりに又は加えて、熱可塑性ポリウレタンは、シリカを有しないことを除いては同じ対照熱可塑性ポリウレタンの反発弾性よりも4%以下だけ小さい反発弾性を有することができる。代わりに又は加えて、熱可塑性ポリウレタンは、ASTMD-395によって測定した場合に、シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの圧縮永久ひずみ(Ct)よりも大きい圧縮永久ひずみを有することができる。
【0011】
代わりに又は加えて、熱可塑性ポリウレタン組成物は、少なくとも0.8g/mLの密度を有していて、C1~C8アルキルシリル基又はアクリレート若しくはメタクリレートエステル基を表面に有する粒子状ヒュームドシリカを含む。熱可塑性ポリウレタンは、ヒュームドシリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの破断伸びよりも高い破断伸びを有する。熱可塑性ポリウレタンは成型されてよい。
【0012】
代わりに又は加えて、熱可塑性ポリウレタンは、シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの反発弾性よりも4%以下だけ小さい反発弾性を有することができる。代わりに又は加えて、熱可塑性ポリウレタンは、ASTM D-395によって測定した場合に、シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンよりも大きい圧縮永久ひずみ(Ct)を有することができる。
【0013】
ヒュームドシリカは、0.1wt%~10wt%の量で存在してよく、50m2/g~400m2/gの表面積を有してよく、C1~C3のアルキルシリル基を表面に有していてよい。熱可塑性ポリウレタンは、1つ又は複数の界面活性剤、充填剤、難燃剤、核形成剤、溶媒、抗酸化剤、潤滑剤、離型剤、染料、顔料、可塑剤又はUV安定剤をさらに含んでよい。
【0014】
上記の一般記載及び以下の詳細な説明の両方は、単に例示及び説明のためのものであり、特許請求の範囲に記載される本発明のさらなる説明を提供することを意図するものであると理解される。
【0015】
本発明は、幾つかの図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】種々の装填量(点模様=0wt%、横線=0.63wt%、チェッカー柄=3.17wt%、斜め線=6.44wt%)でシリカを有する本発明の実施態様によって製造されたTPU材料についてのショアA硬度を示すグラフである。
【
図2】種々の装填量(点模様=0wt%、横線=0.63wt%、チェッカー柄=3.17wt%、斜め線=6.44wt%)でシリカを有する本発明の実施態様によって製造されたTPU材料についての反発弾性を示すグラフである。
【
図3】種々の装填量(点模様=0wt%、横線=0.63wt%、チェッカー柄=3.17wt%、斜め線=6.44wt%)でシリカを有する本発明の実施態様によって製造されたTPU材料についての弾性率を示すグラフである。
【
図4】種々の装填量(点模様=0wt%、横線=0.63wt%、チェッカー柄=3.17wt%、斜め線=6.44wt%)でシリカを有する本発明の実施態様によって製造されたTPU材料についての破断伸びを示すグラフである。
【
図5】種々の装填量(点模様=0wt%、横線=0.63wt%、チェッカー柄=3.17wt%、斜め線=6.44wt%)でシリカを有する本発明の実施態様によって製造されたTPU材料についての靭性を示すグラフである。
【
図6】種々の装填量(点模様=0wt%、横線=0.63wt%、チェッカー柄=3.17wt%、斜め線=6.44wt%)でシリカを有する本発明の実施態様によって製造されたTPU材料についての耐摩耗性を示すグラフである。
【
図7】種々の装填量(点模様=0wt%、横線=0.63wt%、チェッカー柄=3.17wt%、斜め線=6.44wt%)でシリカを有する本発明の実施態様によって製造されたTPU材料についての引裂き強度を示すグラフである。
【
図8】種々の装填量(狭い間隔の横線=シリカなし、点模様=例1、広い間隔の横線=例2、斜め線=例3)でシリカを有する本発明の実施態様によって製造されたTPU材料についての圧縮永久ひずみ(Ct)を示すグラフである。
【
図9】種々の装填量(点模様=0wt%、横線=0.63wt%、チェッカー柄=3.17wt%、斜め線=6.44wt%)でシリカを有する本発明の実施態様によって製造されたTPU材料についての耐熱性を示すグラフである。
【
図10】種々の装填量(点模様:なし、横線:低装填量、チェッカー柄:中間の装填量、斜め線=最高の装填量)でシリカを有する溶融混合物を使用して製造されたTPU材料についてのショアA硬度を示すグラフである。
【
図11】種々の装填量(点模様:なし、横線:低装填量、チェッカー柄:中間の装填量、斜め線=最大の装填量)でシリカを有する溶融混合物を使用して製造されたTPU材料についての弾性率を示すグラフである。
【
図12】種々の装填量(点模様:なし、横線:低装填量、チェッカー柄:中間の装填量、斜め線=最大の装填量)でシリカを有する溶融混合物を使用して製造されたTPU材料についての破断伸びを示すグラフである。
【
図13】種々の装填量(点模様:なし、横線:低装填量、チェッカー柄:中間の装填量、斜め線=最大の装填量)でシリカを有する溶融混合物を使用して製造されたTPU材料についての反発弾性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
1つの実施態様において、熱可塑性ポリウレタンを製造する方法は、15wt%以下のヒュームドシリカを300~5000の数平均分子量を有する第一のポリオールと組み合わせて、シリカ-ポリオール分散体を形成する工程を含む。シリカ-ポリオール分散体は、芳香族、環状脂肪族又は芳香脂肪族ジイソシアネートと組み合わされて、ポリマー化される。ヒュームドシリカは、少なくとも50m2/gの表面積を有し、C1~C8アルキルシリル基又はアクリレート若しくはメタクリレートエステル基、好ましくはC1~C3アルキルシリル基を表面に残す表面処理を使用して疎水化される。得られる熱可塑性エラストマーは、非常に低濃度の気泡又はボイドを有し、0.8g/mL以上、例えば少なくとも1g/mL又は1~2g/mLの密度によって裏付けられる。
【0018】
本明細書において提供される配合物及びプロセスにおいて使用するための適したイソシアネートは、熱可塑性ポリウレタン中に結晶性ドメインを形成することができる有機ジイソシアネートを含む。結晶性ドメインの形成は、とりわけ芳香族イソシアネートによって促進されるが、環状脂肪族及び芳香脂肪族イソシアネートも同様に使用することができる。例示的なイソシアネートは、例えばm-フェニレンジイソシアネート、2,4-及び/又は2,6-トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、水素化MDI(H12 MDI)、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、メトキシフェニル-2,4-ジイソシアネート、4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルジイソシアネート、1,2-ジフェニルエタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチル-シクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1-メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1-メチル-2,6-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2’-ジシクロヘキシルメタン-ジイソシアネートの種々の異性体、並びにそれらの混合物である。
【0019】
本明細書において提供される配合物及びプロセスにおいて使用するための適したポリマーポリオールは、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールの両方、並びに当業者にとって公知である他のポリマーポリオールを含む。適したポリオールは、300~5000の、例えば500~4000又は1000~3000の、分子量、好ましくは数平均分子量を有し、典型的には2の官能基性を有する(すなわちジオールである)。ポリオールが300未満の分子量を有する場合、熱可塑性エラストマー組成物は、不十分な長さの軟質のポリエーテルセグメントの結果として弾性を失う場合がある。分子量が5000超の場合、軟質相と硬質相とを生成する相分離を達成することがより困難になる場合があるか、及び/又は弾性と塑性とのユニークなブレンド(例えば、プラスチック成型設備の使用が可能であること)を提供する硬質の特性と軟質の特性とのバランスを取ることがより困難になる場合がある。ポリエーテルポリオールは、アルキレンオキシド、例えば、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、1,3-プロピレンオキシド、1,2-若しくは2,3-ブチレンオキシド、テトラメチレンオキシド及び/又はテトラヒドロフラン等のC2~C4アルキレンオキシドのポリマー化によって得ることができる。
【0020】
ポリエステルポリオールは、小さい分子量のポリオールをポリエステルと反応させることによって得ることができる。例示的な小さい分子量のポリオールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、グリセロール、ジグリセロール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、スクロース及びビスフェノールAを含むが、それらに限定されない。例示的なポリエステルは、熱可塑性ポリウレタンにおける使用のために当業者にとって公知である任意のポリエステルを含み、有機ジカルボン酸、例えばカルボン酸基を末端とするC2~C12の非分岐の脂肪族鎖と、二官能基又は三官能基のアルコール、例えばC2~C12アルキレングリコール又はポリエーテルアルコールとから製造することができる。代わりに又は加えて、ポリエステルポリオールにおいて使用するためのポリエステルは、ラクトン又はヒドロキシカルボン酸のポリマー化によって製造することができる。
【0021】
典型的には、鎖延長剤も熱可塑性ポリウレタンに組み込まれる。適した鎖延長剤は、TPUにおける使用のために当業者にとって公知であるもの、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール及びネオペンチルグリコールを含む。
【0022】
典型的には、ヒュームドシリカは、燃料、例えばメタン又は水素と、酸素と、揮発性ケイ素化合物とを含むガス状供給原料がバーナーに供給される発熱プロセスによって製造される。酸素中の燃料の燃焼によって形成された水は、液体又は気体形態のいずれかの揮発性ケイ素化合物と反応して、二酸化ケイ素粒子を製造する。これらの粒子は、形成されたヒュームドシリカと合体及び凝集する。ヒュームドシリカの非限定的な例は、Cabot Corporationから入手可能であるCAB-O-SIL(登録商標)ヒュームドシリカ、Wacker Chemie AGから入手可能であるHDK(登録商標)ヒュームドシリカ、及びEvonik Industries(Essen、ドイツ)から入手可能であるAEROSIL(登録商標)ヒュームドシリカを含む。
【0023】
熱可塑性ポリウレタンの形成の間に、配合物の特性を調整して、シリカとポリマーとの間の水素結合の形成をポリマー自体の形成と調和させることが望ましい。シリカの表面積を増加させることは、ポリマーと相互作用するための利用可能な表面積を増加させる。したがって、好ましい実施態様において、本明細書において使用されるヒュームドシリカは、窒素吸着(ASTM D1993)によって測定した場合に、少なくとも50m2/g、例えば少なくとも90m2/g、少なくとも150m2/g、少なくとも175m2/g、少なくとも200m2/g、50~400m2/g又は175~300m2/g又は80~250m2/g又は150~200m2/gの表面積を有する。
【0024】
製造したとき、ヒュームドシリカは親水性であり、表面に複数のSi-OH基を有する。これらのシラノール基は、水素結合を介してアルコールと、酸基相互作用を介してポリエーテルのオキシアルキレン基と相互作用することができる。シリカの分岐構造によって提供されるチキソトロピーと合わせて、プレポリマー配合物の疎水性構成成分とのシラノールの相互作用は粘度を増加させることができる。シリカの疎水化は、シラノール基の一部をエンドキャップ(endcap)し、増粘効果を低下させる。さらに、好ましくは、疎水化処理は、ポリマー化反応と干渉しない。
【0025】
予期せず、短いアルキルシリル基を表面に残す作用剤によって疎水化されるヒュームドシリカが、ポリマーのミクロ構造、例えば硬質相及び軟質相の配置に影響を与え、一方でプレポリマー組成物の粘度に影響を与えることはなく、したがって機械特性を向上させることが見出された。特定の理論によって拘束されるものではないが、短いアルキルシリル基は、シリカ表面においてポリオール構成成分と未反応のまま残ったシラノールの水素結合を可能とする。対照的に、表面における、より長いアルキル又はシロキシル鎖による表面処理は、むしろプレポリマーの粘度を増加させる。適した表面処理は、C1~C3アルキルシリル基、例えばトリメチルシリル、ビニルシリル、ジメチルシリル、エチルシリル又はメチルエチルシリル基を表面に残す。シリル基は、1つ、2つ又は3つのシロキサン結合によってヒュームドシリカの表面に付着されているか、又はシロキサン結合を介して1つ又は2つの隣接するアルキルシラン基に連結されている場合がある。より長い鎖、例えC5若しくはC8、及び/又はビニル、アクリレートエステル若しくはメタクリレートエステル基を残す表面処理も用いることができる。アルキル鎖の適した長さ(それ自体によるものか、又はケイ素原子と、ビニル、アクリレート若しくはメタクリレート基との間のリンカーとしてのいずれか)は、長い鎖のポリオールと短い鎖のポリオールとの比に応じて変わり、シリカが降伏応力に達しないように、プレポリマー組成物又はシリカと混合される任意の構成成分の粘度を減少させるように制御されるべきである。シリカ粒子は、それらがポリオールにおいて別個の網目構造を形成するほど疎水性であるべきではなく、、それによって、ポリオール又はポリエーテル分子と主に相互作用するというよりは、粘度を増加させる。
【0026】
特定の実施態様において、ヒュームドシリカは、シラザン、例えばヘキサメチルジシラザン、又はアルキルシラン、例えばジメチルジクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、エチルメチルジクロロシラン並びに他のC1~C3直鎖及び分岐鎖アルキルシラン、によって疎水化されてよい。
【0027】
熱可塑性ポリウレタンの構成成分は、当業者にとって公知である任意の方法を使用して組み合わせること及びポリマー化することができる。好ましくは、シリカは、ポリマー化の前に熱可塑性ポリウレタンと組み合わせられる。より好ましくは、ヒュームドシリカは、当業者にとって公知である方法によってポリオール中に分散され、次いで、ポリイソシアネートと組み合わされること及びポリマー化することの前に、ポリウレタンの1つ又は複数の残りの非イソシアネート構成成分と組み合わせることができる。シリカはそれ自体で強化を提供するものではないので、0.1wt%程度の、例えば0.1wt%~10wt%、、例えば0.5wt%~7wt%又は1wt%~5wt%の少量が熱可塑性ポリウレタンにおいて使用されてよい。ポリオールは、15wt%以下、例えば0.2wt%~12wt%、0.5wt%~10wt%、1wt%~7wt%、2wt%~5wt%、3wt%~8wt%又は5wt%~13wt%のヒュームドシリカを含有してよい。
【0028】
ポリマー化の前にシリカがポリオールと組み合わせられるインサイチュポリマー化プロセスにおける短い疎水化基によって修飾されたヒュームドシリカ表面の使用は、成型部品、とりわけ圧縮成形部品に、熱可塑性ポリウレタンを用いて単純にマスターバッチされたヒュームドシリカが提供することができない利点を提供する。幾つかの実施態様において、熱可塑性ポリウレタン又は成形された熱可塑性ポリウレタンは、ASTM D412によって測定した場合に、シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する類似の材料の破断伸びよりも大きい破断伸び、例えば少なくとも4%大きい、少なくとも5%大きい、少なくとも10%大きい、少なくとも15%大きい、少なくとも20%大きい、又は60%以下だけ大きい破断伸びを有する。代わりに又は加えて、熱可塑性ポリウレタン又は成形された熱可塑性ポリウレタンは、ASTM D-2362(ベイショア(Bashore rebound)反発)によって測定した場合に、シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する類似の材料の反発弾性よりも4%以下だけ小さい、例えば2%以下だけ小さい、0%以下だけ小さい、3%以下だけ大きい、6%以下だけ大きい、9%以下だけ大きい、12%以下だけ大きい、又は18%以下だけ大きい反発弾性を有することができる。代わりに又は加えて、熱可塑性ポリウレタン又は成形された熱可塑性ポリウレタンは、ASTM D-395によって測定した場合に、シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する類似の材料の圧縮永久ひずみ(Ct)よりも大きい、例えば少なくとも10%大きい、少なくとも15%大きい、少なくとも20%大きい、少なくとも30%大きい、又は90%以下だけ大きい圧縮永久ひずみ(Ct)を有することができる。
【0029】
熱可塑性ポリウレタンにおける使用のために当業者にとって公知であるさらなる構成成分も用いることができる。例示的な添加剤は、界面活性剤、充填剤、難燃剤、核形成剤、溶媒、抗酸化剤、潤滑剤、離型剤、染料、顔料、可塑剤及びUV安定剤を含むが、これらに限定されない。同様に、熱可塑性ポリウレタンは、さらなるポリマーと組み合わせることができる。
【0030】
任意の熱可塑性ポリウレタンの組成物が、本明細書の教示から利益を得ることができる。例示的な熱可塑性ポリウレタンの組成物は、国際公開第2012/069264号、欧州特許第111122号明細書、欧州特許第922552号明細書、及び米国特許第8993690号明細書で与えられており、これらの内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0031】
本明細書において種々の実施態様によって提供される熱可塑性ポリウレタンは、履物のミッドソール及びアウトソールとして、並びにワイヤ絶縁、ホース、フィルム、ホイール及びタイヤ、掘削/採掘スクリーンにおいて使用することができる。
【0032】
本発明は、本質的に例示することのみをいとした以下の例によってさらに明確にされる。
【実施例】
【0033】
例1
約90m2/gの表面積を有するヒュームドシリカを、ヘキサメチルジシラザンを用いて表面処理して、表面にトリメチルシリル基を残した。表面処理したシリカを、FlackTek DAC600 Speedmixerによって、1000の分子量を有するポリテトラメチレングリコール(安定化剤として0.05~0.07のBHTを有するPTMG 1000)中に分散させて、10wt%の分散体を製造した。この分散体を、1Lの反応ケトル中で、撹拌及び2mm Hg未満の真空の下で、5時間脱水した。脱水した分散体を使用して、2200rpmでFlacktek DAC 400 FV SpeedMixerを使用して、300gのSpeedMixerカップ中で、PTMG 1000(安定化剤として0.05~0.07のBHTを有する、Aldrich Chemistry)による希釈によって、1及び5wt%の分散体のそれぞれを100g調製した。
【0034】
Dabco T-12ジラウリン酸ジブチルスズ触媒(Air Products)とともに、鎖延長剤としての1,4-ブタンジオール(Nexeo Solutions)及びイソシアネートとしてのジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート(4,4’-MDI、Mondur MB、Covestro)を、1/1/2のポリオール/鎖延長剤/イソシアネートの当量比及び1.02のイソシアネート指数で使用して、TPUを調製した。使用の前に、1,4-ブタンジオールを、2mm Hg未満の真空及び磁気撹拌の下で、70℃で、250mLの丸底フラスコ中で乾燥した。組成を以下の表1に示す。
【表1】
【0035】
以下の手順を使用してTPUを調製した。(脱気し予熱したポリオール及び鎖延長剤をSpeed Mixerカップ中で秤量して、Speed Mixer(Flacktek DAC 400)を使用して2200rpmで少なくとも20秒間混合し、続いて、空気循環オーブン中で100℃で10分間加熱する。)70℃でコンディショニングした液体イソシアネートを、シリンジを介して、ポリオールと鎖延長剤との混合物に添加する。Speed Mixerによって2200rpmで30秒間で全ての構成成分を混合して、120℃で予熱したテフロン(登録商標)シートで被覆されたアルミニウムの型中に移した。糸形成として測定されるゲル化時間を、Debco T-12触媒の添加によって約1~2分間に調節する(表4)。ゲル化時間において、型を閉じて、120℃で2時間、おおよそ20000psiの圧力でTPUを硬化した。次いで、サンプルを、空気循環オーブン中で、100℃で20時間、後硬化した。後硬化に次いで、試験の前に、サンプルを、室内条件で7日間エイジングした。Carverプレス中で圧縮した丸いサンプル及びシートを調製し、TPUの特性を試験した。
【0036】
例2
約250m
2/gの表面積を有するヒュームドシリカを、ヘキサメチルジシラザンを用いて表面処理して、表面にトリメチルシリル基を残した。型に移す前に2200rpmで40秒間で種々の構成成分を混合したこと以外は例1で説明したようにして得たシリカによって、TPUを調製した。組成を以下の表2に示す。
【表2】
【0037】
例3
約220m
2/gの表面積を有するヒュームドシリカを、ジメチルジクロロシランを用いて表面処理して、表面にジメチルシリル基を残した。型に移す前に2200rpmで40秒間で種々の構成成分を混合したこと以外は例1で説明したようにして得たシリカによって、TPUを調製した。組成を以下の表3に示す。
【表3】
【0038】
例4
例1、2及び3のTPUサンプルを、以下の表4に記載する機械特性について分析した。
【表4】
【0039】
図1及び2に示すように、ショアA硬度は、3つ全てのシリカについてシリカ装填量と共に増加し、反発弾性は、比較例に対して、変化しないままであるか、又は3つ全てのシリカの使用によって増加するかのいずれかであった。弾性率及び破断伸び(
図3及び4)も、非充填のTPUに対して増加し、3.17%の装填量で最大に達した。結果として、シリカは、比較例に対して靭性(応力/ひずみ曲線の下の面積)を改善し(
図5)、より大きい表面積のシリカについては3.17wt%の装填量で最大に達し、例1のより小さい表面積の使用によっては6.44%で最大に達した。充填したTPUシステムについての耐摩耗性(
図6)は、より軟質の非充填のTPUシステムよりも重量損失の値は大きかったが、許容可能なものであった。引裂き強度(ダイスC)(
図7)は、シリカの添加によって改善された。全てのTPUシステムについての圧縮永久ひずみ(Ct)(
図8)は小さく、疎水性ヒュームドシリカの添加によって大きくは影響を受けなかった。同様に、TPUシステムの耐熱性(
図9)は、疎水性ヒュームドシリカの添加によって大きくは影響を受けなかった。耐熱性は、50℃及び室温における50%のひずみでの引張応力の比(すなわちσ
hot/σ
cool)として報告している。
【0040】
例5
例1、2及び3のTPUを、10wt%で、テトラヒドロフラン(THF)と組み合わせた。比較サンプル及びシリカ充填サンプルの両方を溶解した。ヒュームドシリカは、TPUにおいて有意な共有結合性の架橋を示さなかった。加えて、例2及び3のTPUを、示唆走査熱量測定(TA InstrumentsのUniversal V4器具)によって分析した(
図5)。シリカ濃度の増加に伴って、ガラス転移温度(Tg)は減少し、溶融転移温度(Tm)は増加した。このことは、ヒュームドシリカが、ポリマーの軟質のセグメント(Tgを示す)及び硬質のセグメント(Tmを示す)の両方で存在していることを示唆している。結晶化ピークとDSCサームグラムのベースラインとの間に包含される面積を積分することによって計算される結晶化のエンタルピーも、シリカの装填に伴って増加する。Tm及び結晶化エンタルピーの変化は、シリカが、TPUの硬質のセグメントの形態に影響を与えることを示唆していて、TPUの硬質のセグメントへのMDIセグメントの割合を増加させ、TPUの軟質相及び混合相におけるMDIの量を減少させる。TPUの引張挙動が硬質の結晶性セグメントにおけるポリマー鎖の動きによって駆動されるとき、それは強化充填剤と類似の挙動をし、この形態の変化は、TPUの機械特性に影響を与えることが予想される。TPUにおけるMDI分布の変化は、固体状態
13C CPMAS NMRによって確認される。表5Aは、例1のシリカの濃度を変化させることに伴う、サンプルのシャープな
13C信号からブロードな信号への強度のシフトを示している。シャープな信号は短い緩和時間を示すものであり、軟質のセグメント中のMDIによってもたらされ、一方でブロードな信号は長い緩和時間を示すものであり、硬質のセグメント中のMDIによってもたらされる。したがって、ブロードな信号に対するモル寄与の増加は、硬質のセグメント中の増加したMDIの存在を示す。
【表5】
【表5A】
【0041】
例6
以下の表6で特定される装填レベルで、Irogan A85 P4394熱可塑性ポリウレタン(Huntsman)を例1、2及び3のシリカと混合した。実験室スケールのモジュールねじ形状設計(ねじ直径=27mm、長さ/直径の比(L/D)=48)を有するLeistritz iMaxx連結共回転二ねじ押出機を使用する溶融混合によってヒュームドシリカを商業的なTPU中に組み込んだ。商業的なTPUを、Coperion K-Tron S60重量測定供給器を使用してホッパー(主スロート)中に供給し、一方でシリカを、Coperion K-Tron KT20重量測定側部供給器を介してTPU溶融流中に導入した。
【0042】
供給領域からダイス出口までのシリカ混合のための温度プロファイルは以下:165-170-170-170-170-170-170-170-170-160-160-160℃であった。全ての化合物について、350min
-1のねじ速度及び15kg/hrの処理量を使用した。ペレット化する前に、押出したものを水浴中で冷却し、空気によって乾燥した。溶融処理の後、押出した材料を、脱湿乾燥器において70℃で一晩乾燥した。次いで、シリカ―TPU複合物を、Wittmann-Battenfeld Smart Power 60/210射出成型設備を使用して射出成型した。得られる熱可塑性物の機械特性を上記のとおり測定した。例1又は例2のシリカについては、低い装填レベル又は中間の装填レベルでは、反発弾性のデータを測定しなかった。ショアA硬度、弾性率、破断伸び及び反発弾性を
図10~13に示す(無希釈のポリマー対照を点模様によって示している)。これらの図は、溶融混合複合物におけるヒュームドシリカの効果が、ポリマー化の前にヒュームドシリカをTPU配合物を組み合わせた場合よりも有益でないことを示している。
【表6】
【0043】
本発明の好ましい実施態様の上記の説明は、例証及び例示の目的で提供されるものである。その形態そのものに本発明を限定すること、又はその形態そのものが本発明を網羅的に示していることを意図するものではない。上記の教示に照らして改造及び変更をすることができ、又は本発明の実践から改造及び変更をすることができる。実施態様は、本発明の原理及び実践的な適用を説明して、当業者が種々の実施態様で、及び期待される特定の使用に適した種々の改造をして本発明を利用することができるようにするために選択及び記載されたものである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物によって画定されることが意図される。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0043】
本発明の好ましい実施態様の上記の説明は、例証及び例示の目的で提供されるものである。その形態そのものに本発明を限定すること、又はその形態そのものが本発明を網羅的に示していることを意図するものではない。上記の教示に照らして改造及び変更をすることができ、又は本発明の実践から改造及び変更をすることができる。実施態様は、本発明の原理及び実践的な適用を説明して、当業者が種々の実施態様で、及び期待される特定の使用に適した種々の改造をして本発明を利用することができるようにするために選択及び記載されたものである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物によって画定されることが意図される。
本発明の実施形態としては、以下の実施形態を挙げることができる。
(付記1)
300~5000の数平均分子量を有する第一のポリオールと、ヒュームドシリカであって、C1~C8のアルキルシリル基又はアクリレート若しくはメタクリレートエステル基を表面に有し、少なくとも50m
2
/gの表面積を有する15wt%以下のヒュームドシリカとを少なくとも含むポリオール組成物を提供する工程;
前記ポリオール組成物と、芳香族、環状脂肪族又は芳香脂肪族ジイソシアネートとを組み合わせて、プレポリマー組成物を形成する工程;並びに
前記プレポリマー組成物をポリマー化させて、0.8g/mL以上の密度を有する熱可塑性ポリウレタンを形成する工程
を含む、熱可塑性ポリウレタンを製造する方法。
(付記2)
前記プレポリマー組成物をポリマー化させる工程が、前記プレポリマー組成物に触媒を添加することを含む、付記1に記載の方法。
(付記3)
前記プレポリマー組成物が、鎖延長剤をさらに含む、付記1又は2に記載の方法。
(付記4)
前記ヒュームドシリカが、50~400m
2
/gの表面積を有する、付記1~3のいずれか1項に記載の方法。
(付記5)
前記ヒュームドシリカが、C1~C3のアルキルシリル基を表面に有する、付記1~4のいずれか1項に記載の方法。
(付記6)
前記熱可塑性ポリウレタンを成型することをさらに含む、付記1~5のいずれか1項に記載の方法。
(付記7)
前記熱可塑性ポリウレタン組成物が、前記ヒュームドシリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの破断伸びよりも大きい破断伸びを有する、付記1~6のいずれか1項に記載の方法。
(付記8)
前記熱可塑性ポリウレタン組成物が、シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの反発弾性よりも4%以下だけ小さい反発弾性を有する、付記1~7のいずれか1項に記載の方法。
(付記9)
前記熱可塑性ポリウレタンが、シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの圧縮永久ひずみ(Ct)よりも大きい圧縮永久ひずみ(Ct)を有する、付記1~8のいずれか1項に記載の方法。
(付記10)
前記熱可塑性ポリウレタンが、以下の特性:
a)シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの破断伸びよりも少なくとも4%大きい、少なくとも5%大きい、少なくとも10%大きい、少なくとも15%大きい、少なくとも20%大きい、又は60%以下だけ大きい破断伸び;
b)シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの反発弾性よりも2%以下だけ小さい、0%以下だけ小さい、3%以下だけ大きい、6%以下だけ大きい、9%以下だけ大きい、12%以下だけ大きい、15%以下だけ大きい、又は18%以下だけ大きい反発弾性;あるいは
c)シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの圧縮永久ひずみよりも少なくとも10%大きい、少なくとも15%大きい、少なくとも20%大きい、少なくとも30%大きい、又は90%以下だけ大きい圧縮永久ひずみ
のうち1つ又は複数を有する、付記1~9のいずれか1項に記載の方法。
(付記11)
前記プレポリマー組成物が、1つ又は複数の界面活性剤、充填剤、難燃剤、核形成剤、溶媒、抗酸化剤、潤滑剤、離型剤、染料、顔料、可塑剤又はUV安定剤をさらに含む、付記1~10のいずれか1項に記載の方法。
(付記12)
前記ポリオール組成物が、15wt%以下の前記ヒュームドシリカを含む、付記1~11のいずれか1項に記載の方法。
(付記13)
付記1~12のいずれか1項に記載の方法によって製造された、熱可塑性ポリウレタン。
(付記14)
10wt%以下の前記ヒュームドシリカを含む、付記13に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(付記15)
前記ヒュームドシリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの破断伸びよりも大きい破断伸びを有する、付記13又は14に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(付記16)
前記熱可塑性ポリウレタンが成型されている、付記13~15のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(付記17)
シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの反発弾性よりも4%以下だけ小さい反発弾性を有する、付記13~16のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(付記18)
シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの圧縮永久ひずみ(Ct)よりも大きい圧縮永久ひずみ(Ct)を有する、付記13~17のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(付記19)
以下の特性:
a)シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの破断伸びよりも少なくとも4%大きい、少なくとも5%大きい、少なくとも10%大きい、少なくとも15%大きい、少なくとも20%大きい、又は60%以下だけ大きい破断伸び;
b)シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの反発弾性よりも2%以下だけ小さい、0%以下だけ小さい、3%以下だけ大きい、6%以下だけ大きい、9%以下だけ大きい、12%以下だけ大きい、15%以下だけ大きい、又は18%以下だけ大きい反発弾性;あるいは
c)シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの圧縮永久ひずみよりも少なくとも10%大きい、少なくとも15%大きい、少なくとも20%大きい、少なくとも30%大きい、又は90%以下だけ大きい圧縮永久ひずみ
のうち1つ又は複数を有する、付記13~18のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(付記20)
熱可塑性ポリウレタン組成物であって、少なくとも0.8g/mLの密度を有していて、C1~C8アルキルシリル基又はアクリレート若しくはメタクリレートエステル基を表面に有する粒子状ヒュームドシリカを含んでいて、前記ヒュームドシリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの破断伸びよりも大きい破断伸びを有する、熱可塑性ポリウレタン組成物。
(付記21)
成型されている、付記20に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(付記22)
シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの反発弾性よりも4%以下だけ小さい反発弾性を有する、付記20又は21に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(付記23)
シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの圧縮永久ひずみ(Ct)よりも大きい圧縮永久ひずみ(Ct)を有する、付記20~22のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(付記24)
以下の特性:
a)シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの破断伸びよりも少なくとも4%大きい、少なくとも5%大きい、少なくとも10%大きい、少なくとも15%大きい、少なくとも20%大きい、又は60%以下だけ大きい破断伸び;
b)シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの反発弾性よりも2%以下だけ小さい、0%以下だけ小さい、3%以下だけ大きい、6%以下だけ大きい、9%以下だけ大きい、12%以下だけ大きい、15%以下だけ大きい、又は18%以下だけ大きい反発弾性;あるいは
c)シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの圧縮永久ひずみよりも少なくとも10%大きい、少なくとも15%大きい、少なくとも20%大きい、少なくとも30%大きい、又は90%以下だけ大きい圧縮永久ひずみ
のうち1つ又は複数を有している、付記20~23のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(付記25)
前記ヒュームドシリカが、0.1wt%~10wt%の量で存在する、付記20~24のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(付記26)
前記ヒュームドシリカが、50m
2
/g~400m
2
/gの表面積を有する、付記20~25のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(付記27)
1つ又は複数の界面活性剤、充填剤、難燃剤、核形成剤、溶媒、抗酸化剤、潤滑剤、離型剤、染料、顔料、可塑剤又はUV安定剤をさらに含む、付記20~26のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(付記28)
前記ヒュームドシリカが、C1~C3のアルキルシリル基を表面に有する、付記20~27のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
300~5000の数平均分子量を有する第一のポリオールと、ヒュームドシリカであって、C1~C8のアルキルシリル基又はアクリレート若しくはメタクリレートエステル基を表面に有し、少なくとも50m
2/gの表面積を有する15wt%以下のヒュームドシリカとを少なくとも含むポリオール組成物を提供する工程;
前記ポリオール組成物と、芳香族、環状脂肪族又は芳香脂肪族ジイソシアネートとを組み合わせて、プレポリマー組成物を形成する工程;並びに
前記プレポリマー組成物をポリマー化させて、0.8g/mL以上の密度を有する熱可塑性ポリウレタンを形成する工程
を含む、熱可塑性ポリウレタンを製造する方法。
【請求項2】
前記プレポリマー組成物をポリマー化させる工程が、前記プレポリマー組成物に触媒を添加することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プレポリマー組成物が、鎖延長剤をさらに含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒュームドシリカが、C1~C3のアルキルシリル基を表面に有する、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記熱可塑性ポリウレタンを成型することをさらに含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記熱可塑性ポリウレタン組成物が、
a)前記ヒュームドシリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの破断伸びよりも大きい破断伸び
;
b)シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの反発弾性よりも4%以下だけ小さい反発弾性;
c)シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの圧縮永久ひずみ(Ct)よりも大きい圧縮永久ひずみ(Ct)
のうち1つ又は複数を有する、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記熱可塑性ポリウレタンが、以下の特性:
a)シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの破断伸びよりも少なくとも4%大きい、少なくとも5%大きい、少なくとも10%大きい、少なくとも15%大きい、少なくとも20%大きい、又は60%以下だけ大きい破断伸び;
b)シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの反発弾性よりも2%以下だけ小さい、0%以下だけ小さい、3%以下だけ大きい、6%以下だけ大きい、9%以下だけ大きい、12%以下だけ大きい、15%以下だけ大きい、又は18%以下だけ大きい反発弾性;あるいは
c)シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの圧縮永久ひずみよりも少なくとも10%大きい、少なくとも15%大きい、少なくとも20%大きい、少なくとも30%大きい、又は90%以下だけ大きい圧縮永久ひずみ
のうち1つ又は複数を有する、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の方法によって製造された、熱可塑性ポリウレタン。
【請求項9】
10wt%以下の前記ヒュームドシリカを含む、請求項
8に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項10】
熱可塑性ポリウレタン組成物であって、少なくとも0.8g/mLの密度を有していて、C1~C8アルキルシリル基又はアクリレート若しくはメタクリレートエステル基を表面に有する粒子状ヒュームドシリカを含んでいて、前記ヒュームドシリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの破断伸びよりも大きい破断伸びを有する、熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項11】
成型されている、請求項
10に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項12】
a)シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの反発弾性よりも4%以下だけ小さい反発弾性
;及び
b)シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの圧縮永久ひずみ(Ct)よりも大きい圧縮永久ひずみ(Ct)
のうち一方又は両方を有する、請求項
10に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項13】
以下の特性:
a)シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの破断伸びよりも少なくとも4%大きい、少なくとも5%大きい、少なくとも10%大きい、少なくとも15%大きい、少なくとも20%大きい、又は60%以下だけ大きい破断伸び;
b)シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの反発弾性よりも2%以下だけ小さい、0%以下だけ小さい、3%以下だけ大きい、6%以下だけ大きい、9%以下だけ大きい、12%以下だけ大きい、15%以下だけ大きい、又は18%以下だけ大きい反発弾性;あるいは
c)シリカを有しないことを除いては同じ組成を有する対照熱可塑性ポリウレタンの圧縮永久ひずみよりも少なくとも10%大きい、少なくとも15%大きい、少なくとも20%大きい、少なくとも30%大きい、又は90%以下だけ大きい圧縮永久ひずみ
のうち1つ又は複数を有している、請求項
10に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項14】
前記ヒュームドシリカが、0.1wt%~10wt%の量で存在する、請求項
10に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項15】
前記ヒュームドシリカが、C1~C3のアルキルシリル基を表面に有する、請求項
10~
14のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【国際調査報告】