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特表2024-506085インバータまたはコンバータと電気機械との間の相端子および電気接続を形成する方法および電気駆動装置
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  • 特表-インバータまたはコンバータと電気機械との間の相端子および電気接続を形成する方法および電気駆動装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】インバータまたはコンバータと電気機械との間の相端子および電気接続を形成する方法および電気駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/38 20060101AFI20240201BHJP
   H01R 4/58 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H01R4/38 C
H01R4/58 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548323
(86)(22)【出願日】2022-02-08
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2022052937
(87)【国際公開番号】W WO2022171589
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】102021201264.7
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519453607
【氏名又は名称】ヴィテスコ テクノロジーズ ジャーマニー ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Vitesco Technologies Germany GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 12,93055 Regensburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ブレシュ
【テーマコード(参考)】
5E012
【Fターム(参考)】
5E012BA12
(57)【要約】
本発明は、インバータと、電気機械のバスバー(SS)とを導電接続するための相端子(PA)に関して、この相端子(PA)は、ケーシング壁(GW)を有するケーシング部分(GT)を有する相端子(PA)に関し、ケーシング壁(GW)は、第1面(ES)および第1面(ES)とは異なる第2面(ZS)を有し、ケーシング壁(GW)には、第1面(ES)と第2面(ZS)との間に延在する開口部(OEF)が構成されており、相端子(PA)はさらに、開口部(OEF)を通して案内される負荷バスバー(LSS)を有し、負荷バスバー(LSS)は、第1面(ES)を越えて引き出される第1接続部分(EVA)を有し、第1接続部分(EVA)は、少なくとも部分的に軟化焼鈍し銅から構成されており、かつ/または軟化焼鈍し銅を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータまたはコンバータと、電気機械のバスバー(SS)とを導電接続するための相端子(PA)であって、前記相端子(PA)は、
ケーシング壁(GW)を有するケーシング部分(GT)を有し、前記前記ケーシング壁(GW)は、第1面(ES)および前記第1面(ES)とは異なる第2面(ZS)を有し、前記ケーシング壁(GW)には、前記第1面(ES)と前記第2面(ZS)との間に延在する開口部(OEF)が構成されており、
前記相端子(PA)はさらに、
前記開口部(OEF)を通して案内される負荷バスバー(LSS)を有し、前記負荷バスバー(LSS)は、前記第1面(ES)を越えて引き出される第1接続部分(EVA)を有し、前記第1接続部分(EVA)は、少なくとも部分的に軟化焼鈍し銅から構成されており、かつ/または軟化焼鈍し銅を有する、相端子(PA)。
【請求項2】
前記第1接続部分(EVA)は、前記ケーシング壁(GW)とは反対側に、固定開口部(BO)を備えた遠位端部(DEA)を有する、ことを特徴とする、請求項1記載の相端子。
【請求項3】
前記固定開口部(BO)は長穴として構成されている、ことを特徴とする、請求項2記載の相端子。
【請求項4】
前記遠位端部(DEA)と前記第1面(ES)との間の、前記第1接続部分(EVA)の少なくとも1つの部分領域は、軟化焼鈍し銅から構成されており、前記遠位端部(DEA)は、前記第1接続部分(EVA)の前記部分領域よりも高い強度を有する、ことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の相端子。
【請求項5】
前記負荷バスバー(LSS)は、その全長にわたって軟化焼鈍し銅から構成されている、ことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の相端子。
【請求項6】
前記遠位端部(DEA)には、導電性材料から成るキャップ(KA)が配置されており、前記キャップ(KA)は、軟化焼鈍し銅から構成された前記負荷バスバー(LSS)よりも高い強度を有する、ことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の相端子。
【請求項7】
前記負荷バスバー(LSS)は、前記開口部において、媒体を通さないように前記ケーシング壁(GW)に結合されている、ことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の相端子。
【請求項8】
前記負荷バスバー(LSS)は、第1の幅(b)と、前記第1の幅(b)に対して直角に配置された第2の幅(b)とを有する矩形の輪郭を有し、前記第1の幅(b)は、前記第2の幅(b)よりも小さい、ことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の相端子。
【請求項9】
前記遠位端部の端面は、少なくとも部分的に斜めに切られかつ/または傾斜して構成されている、ことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の相端子。
【請求項10】
前記キャップの端面は、少なくとも部分的に斜めに切られ、かつ/または傾斜して構成されている、ことを特徴とする、請求項6に関連した請求項1から9までのいずれか1項記載の相端子。
【請求項11】
前記第1接続部分(EVA)は、前記遠位端部(DEA)と、前記ケーシング壁(GW)の前記第1面(ES)との間に少なくとも1つの断面縮小部(QR)を有する、ことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の相端子。
【請求項12】
前記第1接続部分(EVA)は、前記遠位端部(DEA)と、前記ケーシング壁(GW)の前記第1面(ES)との間に延長部分(DA)を有し、前記延長部分(DA)は、前記第1接続部分(EVA)の長手方向に対して垂直方向に、U字形の、かつ/またはV字形の形状を有する、ことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の相端子。
【請求項13】
少なくとも部分的に電気的に駆動される自動車用の電気駆動装置であって、インバータ、バスバーを備えた電気機械、および前記インバータと前記バスバー(SS)とを互いに導電接続する、請求項1から12までのいずれか1項記載の相端子(PA)を有する、電気駆動装置。
【請求項14】
請求項1から12までのいずれか1項記載の相端子(PA)を備えた、インバータと電気機械のバスバー(SS)との間で電気接続を形成する方法であって、第2面を越えて引き出される第2接続部分は、インバータに導電接続されており、電気機械のケーシングに前記インバータを載置し、固定手段(BM)を介して前記第1接続部分(EVA)と、前記電気機械のバスバー(SS)とを導電接続する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータと、電気機械のバスバーとを導電接続するための相端子に関し、相端子は、少なくとも1つの負荷バスバーを有し、負荷バスバーは少なくとも部分的に軟化焼鈍し銅から構成されている。軟化焼鈍し銅から負荷バスバーを構成することにより、インバータおよび電気機械を組み立てる際の電気端子の領域における許容差を簡単に補償することができる。さらに本発明は、本発明による相端子を介して互いに導電接続されるインバータおよび電気機械を有する電気駆動装置に関する。さらに本発明は、本発明による相端子を介してインバータと電気機械との間で導電接続を形成する方法に関する。
【0002】
インバータと電気機械との間の相端子は基本的に公知である。公知の相端子は、電気機械のバスバーとインバータとの間の導電接続を形成するために利用される。公知の問題は、電気機械にインバータを載置する際に、2つの面において電気端子が必ずしも互いに正確に配向されないことである。換言すると、相端子の導体と、電気機械のバスバーとを電気接続する際にはある程度の許容差を補償しなければならないことは排除できない。許容差補償を可能にするために、相端子の電気導体は少なくとも部分的に薄板状に構成される。換言すると、一方において導体のある程度の可撓性を可能にするために、また他方において電気導体のある程度の最小断面積を提供するために、導体の長手方向に薄い多数の導電板が並んで配置される。このような公知の相端子は、その製造コストが高くなってしまう。
【0003】
本発明の課題は、インバータと電気機械との間の、安価に作製可能な相端子を提供することにある。
【0004】
この課題は、独立請求項の対象によって解決される。本発明の好ましい発展形態は、従属請求項、以下の説明および図面の対象であり、それぞれの特徴的構成は、何らかの逆のことが明細書から明示的に判明しない限り、単独でも組み合わせでも本発明の様相になり得る。
【0005】
本発明によると、相端子は、インバータまたはコンバータと、電気機械のバスバーとを導電接続するために構成されており、相端子は、ケーシング壁を有するケーシング部分を有し、ケーシング壁は、第1面および第1面とは異なる第2面を有し、ケーシング壁には、第1面と第2面との間に延在する開口部が構成されており、相端子はさらに、開口部を通して案内される負荷バスバーを有し、負荷バスバーは、第1面を越えて引き出される第1接続部分を有し、第1接続部分は、少なくとも部分的に軟化焼鈍し銅から構成されており、かつ/または軟化焼鈍し銅を有する。
【0006】
換言すると、インバータまたはコンバータと、電気機械のバスバーとを導電接続するための相端子を示すことが本発明の1つの態様である。このインバータは、直流交流変換器と称することも可能である。電気機械は好適には、少なくとも部分的に電気的に駆動される自動車の電気機械であり、この電気機械は、自動車のパワートレインに使用される。通常、電気機械は、ステータ巻線を備えたステータを有する。ステータ巻線の相は、これを導電接続するためにバスバーに案内される。
【0007】
相端子は、ケーシング部分を有する。ケーシング部分は好適には、インバータを少なくとも部分的に取り囲むインバータケーシングの構成部分であってよい。通例、ケーシング部分は、電気絶縁性材料、例えばプラスチックから構成される。さらに、ケーシング部分が壁を有するように構成される。ケーシング壁は、第1面および第2面を形成する。2つの面は互いに異なる。第1面は好適には、電気機械の方を向いていてよく、第2面は好適には、インバータの方向を向いている。好適には第1面および第2面は互いに平行に配向されている。
【0008】
第1面と第2面との間では、ケーシング壁を通って開口部が延在している。開口部は好適には、縁が閉じた貫通開口部である。第1面を越えて引き出される第1接続部分を有する負荷バスバーは、開口部を通して案内される。負荷バスバーは、導電性に構成されている。第1接続部分は、少なくとも部分的に軟化焼鈍し銅から構成されており、かつ/または軟化焼鈍し銅を有するように構成されている。軟化焼鈍し銅は特に、冷えた状態で良好なもしくは高い変形性および/または低い剛性を有し、これにより、第1接続部分と、電気機械のバスバーとを固定する際には、第1接続部分により、電気接続部の領域において、作製に起因する許容差を補償することができる。接続部分の高い可撓性により、ケーシング壁の開口部の領域における接続部分の応力を低減することができる。このような薄板帯のない負荷バスバーは、安価に作製可能であるため、相端子のコストを低減することができる。
【0009】
軟化焼鈍し銅とは好適には、200MPa~240MPaの強度を有する銅材料のことであり、ここでは境界値も含まれる。軟化焼鈍し銅の破壊延伸は38%より大であり、軟化焼鈍し銅の硬さは45HB~55HB(ブリネル硬さ)である。
【0010】
考えられるのは、接続部分が、素材結合による結合を介して、特に溶接結合および/またはろう付け結合を介して、電気機械のバスバーに結合できることである。
【0011】
本発明の有利な発展形態では、第1接続部分は、ケーシング壁とは反対側に、固定開口部を備えた遠位端部を有する。これにより、負荷バスバーもしくは第1接続部分は好適には、固定開口部を通して案内される固定手段を介して簡単に力結合でバスバーに結合可能である。固定手段は好適には、ねじ結合、リベット結合および/またはボルトであってよい。これにより、好適には修理時に対し、破壊することなく結合を解くことができる。
【0012】
この文脈において、本発明の有利な発展形態では、固定開口部が、長穴として構成される。ここで長穴の長手方向は好適には、第1接続部分の長手方向に延在している。固定手段を用いて第1接続部分とバスバーとを固定する場合、第1接続部分が許容差に起因して変位した際の、開口部の領域における応力を,長穴を介して低減することができる。同様に、一般にステータ巻線端の相に接続されるバスバーの領域における応力を低減することができる。巻線端は、もろく、部分的にガラス状の被覆および/または簡単に壊れやすいコーティングを有することがある。したがって、これにより、遠位端部において、バスバーに相端子を固定する際に、ステータの巻線端に与える機械的な影響も長穴を介して最小化することができる。
【0013】
本発明の好ましい発展形態では、遠位端部と第1面との間の、第1接続部分の少なくとも1つの部分領域は、軟化焼鈍し銅から構成されており、かつ/または軟化焼鈍し銅を有し、遠位端部は、第1接続部分の部分領域よりも高い強度を有するように構成されている。したがって、遠位端部を除いた負荷バスバー全体が、軟化焼鈍し銅から構成されており、かつ/または軟化焼鈍し銅を有することも考えられる。遠位端部は、第1面と、軟化焼鈍し銅から構成されている遠位端部との間で、第1接続部分の部分領域よりも高い構造的強度および/または剛性を有する。遠位端部は好適には金属、特に銅から構成されている。好適には、遠位端部は、第1接続部分の部分領域に素材結合で結合されている。遠位端部が、高い構造的剛性を有することにより、バスバーに負荷バスバーを力結合する際に持続的なプリロード力を可能にすることができる。
【0014】
これとは択一的に、本発明の有利な発展形態では、負荷バスバーが、その全長にわたって、軟化焼鈍し銅から構成されるようにされる。換言すると、負荷バスバー全体は、遠位端部と共々同じ材料から、かつ好適には一体で構成される。これにより、負荷バスバーのコストを低減することができる。バスバーに負荷バスバーを力結合で固定する際には、軟化焼鈍し銅の剛性が低いことにより、所定の期間にわたって、材料が弛緩することに起因して、固定手段の緊締力が弱まってしまうことがあるため、固定手段のヘッドと遠位端部との間に、かつ/または遠位端部とバスバーとの間に、ばね要素が配置されているかもしくはばね要素を配置するように構成することができる。
【0015】
本発明の好ましい発展形態では、遠位端部には、導電性材料から成るキャップが配置されており、このキャップは、軟化焼鈍し銅から構成された負荷バスバーよりも高い強度を有する。キャップは好適には、固定開口部を有し、この固定開口部は、遠位端部の固定開口部に揃えられているため、キャップおよび遠位端部を通して固定手段を案内することができ、これによってバスバーまたは対応支承部に結合される。キャップは、高い強度を有するため、バスバーに負荷バスバーを固定するために、キャップに固定手段のプリロード力を持続的に加えることができる。キャップは好適には、銅から構成されており、かつ/または少なくとも部分的に銅を有する。キャップが、素材結合でかつ/または形状結合で遠位端部に配置されかつ/または固定されることが考えられる。
【0016】
本発明の有利な発展形態では、負荷バスバーは、開口部において、媒体を通さないようにケーシング壁に結合されているように構成される。媒体を通さない結合は好適には、流体を通さない結合である。これにより、流体、例えば油が、電気機械から相端子を介してインバータに到達してしまうこと阻止することができる。
【0017】
本発明の好ましい発展形態によると、負荷バスバーは、第1の幅bと、第1の幅bに対して直角に配置された第2の幅bとを有する矩形の輪郭を有し、第1の幅bは、第2の幅bよりも小さくなるように構成される。好適には幅bに対し、2b≦b≦10b、特に3b≦b≦8bが成り立つ。これにより、例えば、負荷バスバーが、3mmの幅bを有し、かつ幅bが17mmを有するように構成可能である。インバータと電気機械とを組み立てる際の電気端子の領域における許容差を補償するために、負荷バスバーもしくは第1接続部分は、負荷バスバーの短い方の軸線の周りに少なくとも部分的に曲げられ、かつ/また変位させられる。
【0018】
本発明の好ましい実施形態によると、遠位端部の端面は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に斜めに切られかつ/または傾斜させられて構成されるようにされる。これにより、遠位端部の端面は、その長手方向もしくは長手延在方向における負荷バスバーの端部である。端面を斜めに切って、もしくは傾斜させて構成することにより、インバータが電気機械に配置される際に、第1接続部分が結合対象の対応部材に正面から当接する場合にこれを変位させることができる。
【0019】
導電性材料から成るキャップが遠位端部に配置される場合、好適には、キャップの端面が、少なくとも部分的に、好適には完全に斜めに切られ、かつ/または傾斜させられて構成されるようにすることができる。キャップの端面は、固定開口部とは反対側の面に構成されている。端面を斜めに切って、もしくは傾斜させて構成することにより、インバータが電気機械に配置される際に、第1接続部分が結合対象の対応部材に正面から当接する場合にこれを変位させることができる。
【0020】
遠位端部の傾斜した端面もしくはキャップの傾斜した端面の長手方向は、負荷バスバーの長手方向に対して直角に延びている。特に、遠位端部の傾斜した端面の長手方向および/またはキャップの端面は、第2の幅bの長手方向に延びている。少なくとも部分的に、かつ/または局所的に傾斜している、もしくは斜めに切られている、が意味するのは、第1の幅bに対して、0.1×b以上かつ0.8×b以下であり、好ましくは0.2×b以上かつ0.7×b以下であり、特に好ましくは0.3×b以上かつ0.6×b以下である部分が傾けられて構成されることである。
【0021】
有利には、第1接続部分が、遠位端部と、ケーシング壁の第1面との間に少なくとも1つの断面縮小部を有するように構成されている。好適には第1接続部分の長手方向に互いに離隔されて配置されている2つ以上の断面縮小部を設けることも考えられる。複数の断面縮小部は、負荷バスバーの一方の面に、かつ/または好適には反対側の2つの面に構成可能である。断面縮小部は、撓み点として使用され、これにより、接続部分を所期のように変位させることができる。これにより、特に、ケーシング壁を通る開口部において、遠位端部の領域において、第1接合部分が変位する際に応力を低減することができる。この断面縮小部は、例えば、第1の幅bおよび/または第2の幅bにわたって延在する材料切り欠き部および/または切り込みであってよい。断面縮小部の形態の撓み点は、スペースを節約しかつ簡単に作製可能である。
【0022】
択一的および/または補足的に、本発明の有利な発展形態では、第1接続部分が、遠位端部と、ケーシング壁の第1面との間に、接続部分の長手方向に対して垂直方向にU字形の、かつ/またはV字形の形状を有する延長部分を有するように構成することができる。延長部分は、一方では長手方向の許容差を補償し、さらに撓み点として使用され、これにより、ケーシング壁の開口部の領域において、かつ/または遠位端部において、もしくはバスバーにおいて、負荷バスバーとバスバーとを固定する際の応力が低減される。
【0023】
本発明はさらに、少なくとも部分的に電気的に駆動される自動車用の電気駆動装置であって、インバータ、バスバーを備えた電気機械、およびインバータとバスバーとを互いに導電接続する本発明による相端子と有する、電気駆動装置に関する。
【0024】
さらに本発明は、本発明による相端子により、インバータと電気機械のバスバーとの間で電気接続を形成する方法に関し、ここでは第2面を越えて引き出される第2接続部分は、インバータに導電接続されており、電気機械のケーシングにインバータを載置し、固定手段を介して第1接続部分と、電気機械のバスバーとを導電接続する。
【0025】
本発明の別の特徴的構成および利点は、従属請求項および下記の実施例から明らかになろう。これらの実施例は、制限的なものではなく、むしろ例と理解すべきである。これらの実施例は、当業者が本発明を実施できるようにするものである。出願人は、実施例において開示した個々の、かつ/または複数の特徴的構成を特許請求の範囲の対象とすること、またはこれらのような特徴的構成を、既存の特許請求の範囲に取り入れることを留保する。図面に基づき、これらの実施例を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施例による相端子の図である。
図2】本発明の好ましい実施例による、許容差補償のための相端子の断面図である。
図3】種々異なって構成された負荷バスバーを有する相端子の図である。
図4】ねじ結合およびばね要素による許容差補償のための相端子の断面図である。
【0027】
図1には、インバータと電気機械のバスバーSSとを導電接続するための相端子PAの3次元図が示されている。このインバータは、直流交流変換器と称することも可能である。電気機械は好適には、少なくとも部分的に電気的に駆動される自動車の電気機械であり、この電気機械は、自動車のパワートレインに使用される。通常、電気機械は、ステータ巻線を備えたステータを有する。ステータ巻線の相(U,V,W)は、これを導電接続するためにバスバーSSに案内される。
【0028】
相端子PAは、電気絶縁性材料、例えばプラスチックから成るケーシング部分GTを有する。ケーシング部分GTは好適には、インバータを少なくとも部分的に取り囲むインバータケーシングの構成部分であってよい。ここではケーシング部分GTがケーシング壁GWを有するように構成される。ケーシング壁GWは、第1面ESおよび第2面ZSを構成する。2つの面ES,ZSは互いに異なる。第1面ESは好適には、電気機械の方を向いており、第2面ZSは好適には、インバータの方向を向いている。
【0029】
第1面ESと第2面ZSとの間には、ケーシング壁GWを通って開口部OEFが延在している。この図では、これは、互いに離隔されて配置された3つの開口部OEFである。開口部OEFは、縁が閉じた貫通開口部である。それぞれの開口部OEFを通って負荷バスバーLSSが案内される。それぞれの負荷バスバーLSSは、第1面ESを越えて引き出される第1接続部分EVAを有する。負荷バスバーLSSは、導電性に構成されている。ここでは、第1接続部分EVAが、少なくとも部分的に軟化焼鈍し銅から構成されており、かつ/または軟化焼鈍し銅を有するように構成されている。軟化焼鈍し銅は、高い変形性を有し、これにより、第1接続部分EVAと、電気機械のバスバーSSとを固定する際には、第1接続部分EVAにより、作製に起因する許容差Tを補償することができる。第1接続部分EVAの高い可撓性により、ケーシング壁GWの開口部OEFの領域における第1接続部分EVAの応力を低減することができる。さらに、このような相端子PAは安価に作製可能である。
【0030】
負荷バスバーLSSは、第1の幅bと、第1の幅bに対して直角に配置された第2の幅bとを有する矩形の輪郭もしくは断面を有し、第1の幅bは、第2の幅bよりも小さい。この実施例では、4b≦b≦7bが成り立つ。これにより、例えば、負荷バスバーLSSが、3mmの第1の幅bを有し、かつ第2の幅bが17mmを有するように構成可能である。第1接続部分EVAとバスバーSSとの間の許容差Tを補償するために、負荷バスバーLSSもしくは第1接続部分EVAは、負荷バスバーLSSの短い方の軸線の周りに曲げられ、かつ/また変位させられる。
【0031】
図2には、図1から既知であるような、許容差補償のための相端子PAの断面図が示されている。第1接続部分EVAは、ケーシング壁GWとは反対側に、固定開口部BOを備えた遠位端部DEAを有する。固定手段BM、好適にはねじが、固定開口部BOおよびバスバーSSを通って案内され、対応支承部GLに力結合で結合されている。力結合の結合は、例えば、ねじ結合である。バスバーSSに遠位端部DEAを固定することにより、可撓性に構成された第1接続部分EVAを介し、第1面ESと遠位端部DEAとの間で、第1接続部分EVAとバスバーSSとの間の許容差Tを簡単に補償することができる。
【0032】
固定開口部BOは、長穴として構成されている。長穴の長手方向は、第1接続部分EVAの長手方向に延在している。固定手段BMを用いて第1接続部分EVAとバスバーSSとを固定する場合、第1接続部分EVAが許容差に起因して変位した際の、開口部OEFの領域における応力を、長穴を介して低減することができる。同様に、一般にステータ巻線端の相に接続されるバスバーSSの領域における応力を低減することができる。
【0033】
図3には、異なって構成された3つの負荷バスバーLSSを有する相端子PAの図が示されている。異なる負荷バスバーLSSを有する相端子PAを設けることができることが考えられる。しかしながら通例、相端子PAは、同じように構成された負荷バスバーLSSを有する。しかしながら負荷バスバーLSSは、長さが異なっていてよい。
【0034】
左側の負荷バスバーLSSでは、第1接続部分EVAが、遠位端部DEAと、ケーシング壁GWの第1面ESとの間に、接続部分の長手方向に対して垂直方向にU字形の、かつ/またはV字形の形状を有する延長部分DAを有するように構成されている。延長部分DAは、一方では長手方向の許容差を補償し、さらに撓み点として使用され、これにより、ケーシング壁GWの開口部OEFの領域において、かつ/または遠位端部DEAにおいて、もしくはバスバーSSにおいて、負荷バスバーLSSとバスバーSSとを固定する際の応力が低減される。
【0035】
中央に配置されている負荷バスバーLSSでは、第1接続部分EVAが、遠位端部DEAと、ケーシング壁GWの第1面ESとの間に少なくとも1つの断面縮小部QRを有するように構成されている。断面縮小部QRは好適には、図示のように、負荷バスバーLSSの第2の幅bに沿って延在する切り込みであってよい。この図では、負荷バスバーLSSの長手方向に互いに離隔された2つの断面縮小部QRが配置されているかもしくは構成されている。断面縮小部QRは、第1接続部分EVAの一方の面に配置されていてよい。しかしながら、第1接続部分EVAの反対側の面に断面縮小部QRを配置することも考えられる。断面縮小部QRは、撓み点として使用され、これにより、第1接続部分EVAを所期のように変位させることができる。これにより、特に、ケーシング壁GWを通る開口部OEFの領域において、かつ/または遠位端部DEAの領域において、第1接続部分EVAが変位する際に応力を低減することができる。断面縮小部QRの形態の撓み点は、スペースを節約しかつ簡単に作製可能である。
【0036】
右側の負荷バスバーLSSでは、負荷バスバーLSSが、その全長にわたって、軟化焼鈍し銅から構成されるようにされている。換言すると、負荷バスバーLSS全体は、遠位端部DEAと共々同じ材料から、かつ一体で構成されている。これにより、負荷バスバーLSSのコストを低減することができる。遠位端部DEAには、導電性材料から成るキャップKAが配置されており、このキャップKAは、軟化焼鈍し銅から構成される負荷バスバーLSSよりも高い強度を有する。キャップKAは好適には、固定開口部BOを有し、この固定開口部BOは、遠位端部DEAの固定開口部BOに揃えられているため、キャップKAおよび遠位端部DEAを通して固定手段BMを案内することができ、これによってバスバーSSに結合される。キャップKAは、高い強度を有するため、バスバーSSに負荷バスバーLSSを固定するために、持続的にキャップKAに固定手段BMのプリロード力を加えることができる。キャップKAは好適には、銅から構成されており、かつ/または少なくとも部分的に銅を有する。キャップKAが、素材結合でかつ/または形状結合で遠位端部DEAに配置されかつ/または固定されることが考えられる。
【0037】
図4には、相端子PAの断面図が示されており、ここでは、負荷バスバーLSS全体は、軟化焼鈍し銅から構成されており、かつ/または少なくとも軟化焼鈍し銅を有する。このことは、遠位端部DEAの領域にも当てはまる。バスバーSSに負荷バスバーLSSを力結合で固定する際、軟化焼鈍し銅の剛性が低いことにより、固定手段BMの緊締力が弱まってしまうことがある。したがって、固定手段BMのヘッドKOと遠位端部DEAとの間にばね要素FEが配置されるように構成される。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】