(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】手術用器具、そのような手術用器具のためのツール装置、およびそのようなツール装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/29 20060101AFI20240201BHJP
A61B 17/295 20060101ALN20240201BHJP
【FI】
A61B17/29
A61B17/295
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548341
(86)(22)【出願日】2022-02-09
(85)【翻訳文提出日】2023-10-02
(86)【国際出願番号】 EP2022053124
(87)【国際公開番号】W WO2022171668
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】102021201311.2
(32)【優先日】2021-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エウゲン ヘルナー
(72)【発明者】
【氏名】ハンネス カイゼンバーガー
(72)【発明者】
【氏名】ニコラウス ハフナー
(72)【発明者】
【氏名】エリック ウォルバーグ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160MM32
4C160NN03
4C160NN09
4C160NN11
(57)【要約】
本願は、手術用器具、そのような手術用器具のためのツール装置、およびそのようなツール装置の製造方法に関する。シャフトと、第1のジョー部、第2のジョー部、および制御アセンブリを有するツール装置と、ハンドル装置と、を備える手術用器具は公知である。本願によれば、第2のジョー部は、制御アセンブリの制御突起とともに受容凹部を備える。手術用器具に使用する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術用器具(1)であって、
シャフト長手方向軸(L)に沿って延びているシャフト(2)と、
前記シャフト(2)の遠位側に配置され、第1のジョー部(5)および第2のジョー部(6)を有するツール装置(3)であって、前記第1のジョー部および前記第2のジョー部(5、6)は、開閉可能なツール口(M)を形成するように、前記シャフト長手方向軸(L)に対して横方向に配向されたピボット軸(S)を中心として、互いに対して枢動可能となされている、前記ツール装置(3)と、
前記シャフト(2)の近位側に配置され、プッシュプル要素(10)を介して前記ツール装置(3)に操作可能に接続される操作要素(9)を有するグリップ装置(4)であって、前記操作要素(9)の操作によって前記プッシュプル要素(10)が長手方向移動軸(L’)に沿って並進移動可能である、前記グリップ装置(4)と、
を備え、
前記ツール装置(3)は、制御ピン(14)と少なくとも1つの制御溝(51)を持つ制御構造(11)を有し、前記少なくとも1つの制御溝(51)は、前記第1のジョー部(5)の制御部(53)に形成され、前記制御ピン(14)は、前記ピボット軸(S)に平行に延びるとともに、前記少なくとも1つの制御溝(51)を通って軸方向に係合しており、前記制御ピン(14)は、前記プッシュプル要素(10)の長手方向移動によって、前記制御溝(51)に沿って前記制御ピン(14)の近位端位置と前記制御ピン(14)の遠位端位置との間で摺動可能であり、このようにして前記ツール口(M)を開閉するために前記ピボット軸(S)を中心に作用するトルクを前記第1のジョー部(5)に加えており、
前記第2のジョー部(6)は、前記第1のジョー部(5)の前記制御部(3)を少なくとも部分的に受容する受容凹部(72)を有しており、少なくとも1つの制御突起(71)は、前記制御ピン(14)の前記軸方向(A)において前記受容凹部(72)の内壁(73)から内方に突出するとともに、前記制御構造(11)の制御面(74)を形成しており、前記制御ピン(14)は、前記制御ピン(14)の前記近位端位置と前記遠位端位置との間の移動において、前記制御突起(71)に沿って摺動し、その上で径方向に支持されていることを特徴とする、手術用器具(1)。
【請求項2】
前記第2のジョー部(6)は、前記制御ピン(14)の前記軸方向(A)において前記受容凹部(72)を規定する固定面(76、76’)であって、前記制御ピン(14)の前記近位端位置と前記遠位端位置との間の移動において前記制御ピン(14)を軸方向変位に対して積極的に固定する前記固定面(76、76’)を有することを特徴とする、請求項1に記載の手術用器具(1)。
【請求項3】
前記第2のジョー部(6)は、前記ピボット軸(S)を形成するとともに前記第1のジョー部(5)の相補的なピボット軸受面(52)と摺動して相互作用するピボット軸受面(77)を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の手術用器具(1)。
【請求項4】
前記第2のジョー部(6)の前記ピボット軸受面(77)は、前記受容凹部(72)の上で前記制御ピン(14)の前記軸方向(A)に延びる横ウェブ部(78)の外周によって形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の手術用器具(1)。
【請求項5】
前記第2のジョー部(6)は、前記ピボット軸(S)に対して同心円状に湾曲するピボット案内面(79)であって、前記第1のジョー部の相補的なピボット案内面(54)と摺動して相互作用する前記ピボット案内面(79)を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の手術用器具(1)。
【請求項6】
前記第2のジョー部(6)は、前記プッシュプル要素(10)の前記長手方向移動軸(L’)に平行に延びる長手方向案内面(80)であって、前記プッシュプル要素(10)の相補的な長手方向案内面(101)をその長手方向移動中に少なくとも一時的に摺動可能に案内する前記長手方向案内面(80)を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の手術用器具(1)。
【請求項7】
前記第2のジョー部(6)に配置および/または形成された止め部(151)が、前記ツール口(M)の開放位置において、前記ピボット軸(S)を中心として前記第1のジョー部(5)の相補的な止め部(56)に積極的に相互作用することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の手術用器具(1)。
【請求項8】
前記第2のジョー部(6)は前記ピボット軸(S)に対して固定されており、前記第1のジョー部(5)は、前記ツール口(M)の開閉中に、前記第2のジョー部(6)に対して前記ピボット軸(S)を中心として回転することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の手術用器具(1)。
【請求項9】
前記第2のジョー部(6)は、1つの部品からなるハウジング部(7)と、前記ハウジング部(7)の遠位側に取り付けられる能動部(8)とを有し、前記ハウジング部(7)は、前記少なくとも1つの制御突起(71)および/または前記ピボット軸受面(77)とともに少なくとも前記受容凹部(72)を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の手術用器具(1)。
【請求項10】
前記制御溝(51)は、近位溝端(511)と遠位溝端(512)との間に連続して直線状に延びていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の手術用器具(1)。
【請求項11】
前記制御面(74)は、近位面部(741)と遠位面部(742、742a)とを有しており、前記近位面部および前記遠位面部は、前記制御ピン(14)の前記近位端位置と前記遠位端位置との間での前記制御ピン(14)の移動において、前記プッシュプル要素(10)の前記長手方向移動と前記ツール口(M)の枢動との間で異なる伝達比が実現されるように、前記長手方向移動軸(L’)に対して異なって傾斜していることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の手術用器具(1)。
【請求項12】
前記近位面部(741)は、前記長手方向移動軸(L’)に平行におよび/または少なくとも実質的に平行に延びていることを特徴とする、請求項11に記載の手術用器具(1)。
【請求項13】
前記遠位面部(742a)は、前記ピボット軸(S)に対して同心円状に湾曲していることを特徴とする請求項11又は12に記載の手術用器具(1)。
【請求項14】
前記遠位面部(742)は、直線状であるとともに、前記ピボット軸(S)に対して同心円状に配置された円弧に接していることを特徴とする請求項11又は12に記載の手術用器具(1)。
【請求項15】
前記制御ピン(14)は、前記制御ピン(14)の前記遠位端位置の方向への移動において、前記制御溝(51)の前記遠位溝端(512)に少なくとも一時的に保持され、前記ピボット軸(S)を中心に前記第1のジョー部(5)と共に回転することを特徴とする、請求項10から14のいずれか一項に記載の手術用器具(1)。
【請求項16】
開閉可能なツール口(M)を形成するようにピボット軸(S)を中心として互いに対して枢動可能となされている第1のジョー部(5)および第2のジョー部(6)を有する、請求項1から15のいずれか一項に記載の手術用器具(1)のためのツール装置(3)であって、前記ツール装置(3)は、制御ピン(14)と少なくとも1つの制御溝(51)を持つ制御構造(11)を有し、前記少なくとも1つの制御溝(51)は、前記第1のジョー部(5)の制御部(53)に形成され、前記制御ピン(14)は、前記ピボット軸(S)に平行に延びるとともに、前記少なくとも1つの制御溝(51)を通って軸方向に係合しており、前記制御ピン(14)は、前記制御溝(51)に沿って前記制御ピン(14)の近位端位置と前記制御ピン(14)の遠位端位置との間で摺動可能であり、このようにして前記ツール口(M)を開閉するために前記ピボット軸(S)を中心に作用するトルクを前記第1のジョー部(5)に加えており、前記第2のジョー部(6)は、前記第1のジョー部(5)の前記制御部(53)を少なくとも部分的に受容する受容凹部(72)を有しており、少なくとも1つの制御突起(71)は、前記制御ピン(14)の前記軸方向(A)において前記受容凹部(72)の内壁(73)から内方に突出するとともに、前記制御構造(11)の制御面(74)を形成しており、前記制御ピン(14)は、前記制御ピン(14)の前記近位端位置と前記遠位端位置との間の移動において、前記制御突起(71)に沿って摺動し、その上で径方向に支持されていることを特徴とする、ツール装置(3)。
【請求項17】
前記第2のジョー部(6)を一次成形するステップを含み、前記少なくとも1つの制御突起(71)を担持する前記第2のジョー部(6)の少なくとも1つのハウジング部(7)は、一次成形によって設けられる、請求項16に記載のツール装置(3)の製造方法。
【請求項18】
前記第1のジョー部(5)と前記一次成形されたハウジング部(7)をともに積極的に接合するステップを含み、前記ハウジング部(7)に形成された前記第2のジョー部(6)のピボット軸受面(77)と、前記第1のジョー部(5)の相補的なピボット軸受面(52)とは、前記ピボット軸(S)を形成するとともに、前記ピボット軸(S)を中心として摺動可能であり、前記ピボット軸(S)に対して径方向に互いに型嵌め式に固定されている、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、手術用器具であって、シャフト長手方向軸に沿って延びているシャフトと、シャフトの遠位側に配置され、第1のジョー部および第2のジョー部を有するツール装置であって、第1のジョー部および第2のジョー部は、開閉可能なツール口を形成するように、シャフト長手方向軸に対して横方向に配向されたピボット軸を中心として、互いに対して枢動可能となされている、ツール装置と、シャフトの近位側に配置され、プッシュプル要素を介してツール装置に操作可能に接続される操作要素を有するグリップ装置であって、操作要素の操作によってプッシュプル要素が長手方向移動軸に沿って並進移動可能である、グリップ装置と、を備えており、ツール装置は、制御ピンと少なくとも1つの制御溝を持つ制御構造を有し、少なくとも1つの制御溝は、第1のジョー部の制御部に形成され、制御ピンは、ピボット軸に平行に延びるとともに、少なくとも1つの制御溝を通って軸方向に係合しており、制御ピンは、プッシュプル要素の長手方向移動によって、制御溝に沿って制御ピンの近位端位置と制御ピンの遠位端位置との間で摺動可能であり、このようにしてツール口を開閉するためにピボット軸を中心に作用するトルクを第1のジョー部に加える、手術用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の手術用器具は、米国特許出願第2020/0179038号から公知であり、体組織を密封および/または切断するための内視鏡鉗子器具の形態で提供されている。この公知の手術用器具は、細長い器具シャフトと、操作要素を持つグリップ装置と、開閉可能なツール口を持つツール装置とを有する。ツール装置は、器具シャフトの遠位端に配置されている。グリップ装置は、器具シャフトの近位端に配置されている。操作要素は、プッシュプル要素を介してツール装置に操作可能に接続されており、このプッシュプル要素は、器具シャフト内で長手方向に延び、ツール口を開放および/または閉鎖するために、並進するように移動可能となされている。この目的のために、プッシュプル要素は、ツール装置の制御構造の制御ピンに係合している。かかる公知な手術用器具の制御構造は、第1のジョー部に形成された第1の制御溝と、第2のジョー部に形成された第2の制御溝とを有する。制御ピンは、両方の制御溝を通って係合し、プッシュプル要素の長手方向移動によって、制御ピンの近位端位置と遠位端位置との間で制御溝に沿って摺動可能である。このようにして、プッシュプル要素の長手方向移動は、ツール口の開放および/または閉鎖のためにピボット軸を中心とした2つのジョー部の枢動に変換される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願の目的は、冒頭に述べたタイプの手術用器具、そのような器具のためのツール装置、およびそのようなツール装置のための方法を利用可能にすることであり、これらの各々は、従来技術に対して利点をもたらすものである。特に、本目的は、手術用器具および/またはツール装置の簡素化された設計を可能にし、これに関連して、簡単な製造を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
手術用器具に関して、この目的は、第2のジョー部が、第1のジョー部の制御部を少なくとも部分的に受容する受容凹部を有しており、少なくとも1つの制御突起が制御ピンの軸方向において受容凹部の内壁から内方に突出するとともに、制御構造の制御面を形成しており、制御ピンがピンの近位端位置と遠位端位置との間の移動において制御突起に沿って摺動し、その上で径方向に支持されているという事実によって実現される。本願に係る解決策により、第2のジョー部に配置および/または形成される制御溝を省くことが可能になる。このような制御溝は、通常、フライス加工によって長円形の穴として製造される。これはかなり複雑である。従来の制御溝の代わりに、第2のジョー部は、少なくとも1つの制御突起を有し、この制御突起は、制御ピンの軸方向において受容凹部の内壁から内方に突出し、制御構造の制御面を形成する。このようにして、ツール装置、その結果として手術用器具の比較的簡単な設計および簡単な製造が実現可能となる。手術用器具は、好ましくは、低侵襲手術、特に腹腔鏡手術において、体組織を把持し、保持し、クランプし、密閉し、および/または切断するために提供される。従って、ツール装置は、好ましくは、鉗子、クランプおよび/または鋏の様式をとり、第1のジョー部および第2のジョー部が鉗子、クランプおよび/または鋏の口を形成するように設計される。ジョー部は、器具枝管または組織枝として指定することもできる。第1のジョー部と第2のジョー部との間に位置する体組織に対して意図した通りに圧力を及ぼすことができるように、第1のジョー部および第2のジョー部は、ピボット軸を中心として互いに対して枢動可能である。この目的のために、両方のジョー部はピボット軸に対して枢動可能とすることができる。あるいは、第1のジョー部を枢動可能にし、第2のジョー部を固定することもでき、その逆も同様に可能である。制御構造は、長手方向移動軸に沿って向けられたプッシュプル要素の並進移動を、ピボット軸を中心とする第1のジョー部および/または第2のジョー部の枢動に変換する役割を果たす。長手方向移動軸は、好ましくは、シャフト長手方向軸に平行に配向される。ピボット軸は、好ましくは、長手方向移動軸および/またはシャフト長手方向軸に対して直交して配向される。第1のジョー部の制御溝は、好ましくは、長手方向移動軸に対して傾斜している。第1のジョー部がピボット軸を中心にして枢動可能である場合、制御溝の対応する傾斜角度は、長手方向移動軸に対する第1のジョー部の枢動位置に応じて変化し得る。第2のジョー部の少なくとも1つの制御突起によって形成される制御面は、長手方向移動軸に対して平行および/または少なくとも部分的に傾斜し得る。第2のジョー部は、好ましくは、制御ピンの軸方向において受容凹部の両側に配置された制御突起を有する。第2のジョー部は、1つの部品として設計するか、あるいはいくつかの部品に分けて設計することもできる。その場合、第2のジョー部は、好ましくは、体組織に作用するように設けられた能動部と、少なくとも1つの制御突起とともに受容凹部を担持するハウジング部とを有し、能動部とハウジング部とは、それぞれ別個に製造され、その後、好ましくは、型嵌め式に互いに接続される。
【0005】
本願の一実施形態では、第2のジョー部は、制御ピンの軸方向において受容凹部を規定する固定面であって、制御ピンの近位端位置と遠位端位置との間の移動において制御ピンを軸方向変位に対して積極的に固定する固定面を有する。このようにして、軸方向の固定のための、制御ピンのプッシュプル要素に対する別個の力嵌め接続および/または粘着性結合接続を省くことが可能である。これにより、設計がより簡素化され、製造もさらに簡素化される。固定面は、受容凹部の内壁に形成されている。本願のこの実施形態では、受容凹部は、制御ピンの軸方向の両側で閉鎖されている。ピンの近位端位置と遠位端位置との間の移動では、制御ピンは、受容凹部内を、制御突起に沿って、かつその軸方向に対して対向する固定面間を移動する。
【0006】
本願のさらなる実施形態では、第2のジョー部は、ピボット軸を形成するとともに第1のジョー部の相補的なピボット軸受面と摺動して相互作用するピボット軸受面を有する。このようにして、第1のジョー部と第2のジョー部との間で、ピボット軸を中心として枢動可能なピン又はボルト接続を形成するための別個の構成部品を省くことが可能になる。このような構成部品の数を減らすことによって、簡素化された設計、ならびにこれに関連してツール装置および/または手術用器具の有利な製造が可能となる。第2のジョー部のピボット軸受面と第1のジョー部の相補的なピボット軸受面とは、ピボット軸を中心として摺動して、かつ少なくとも一方側、好ましくは径方向内方にピボット軸に対して径方向に、積極的に相互作用する。第2のジョー部のピボット軸受面は、好ましくは、凸部であり、第1のジョー部の相補的なピボット軸受面は、好ましくは、適合するように凹部であるか、あるいはその逆も同様である。
【0007】
本願のさらなる実施形態では、第2のジョー部のピボット軸受面は、受容凹部の上で制御ピンの軸方向に延びる横ウェブ部の外周によって形成されている。横ウェブ部は、制御ピンの軸方向において対向する向きに置かれた受容凹部の内壁間において、粘着性結合接続および/または一体的接続を作り出す。横ウェブ部は、ブリッジとして指定することもできる。横ウェブ部は、ピボット軸に平行に延びている。第2のジョー部のピボット軸受面は、好ましくは、横ウェブ部の下面によって、あるいは、その上面によって形成される。
【0008】
本願のさらなる実施形態では、第2のジョー部は、ピボット軸に対して同心円状に湾曲するピボット案内面であって、第1のジョー部の相補的なピボット案内面と摺動して相互作用するピボット案内面を有する。第1のジョー部のピボット案内面と第2のジョー部の相補的なピボット案内面とは、ピボット軸を中心として径方向に摺動可能となるように、型嵌め式に相互作用する。ピボット案内面と相補的なピボット案内面は、ピボット軸を中心とするツール口の枢動性のある案内を改善するのに役立つ。ピボット軸が垂直方向に対して第2のジョー部の上部領域に配置される場合、ピボット軸案内面は、好ましくは、第2のジョー部の下部領域に配置され、またはその逆も同様である。ピボット案内面と相補的なピボット案内面との間に形成されたピボット案内部により、別個の関連部品を省くことが可能であり、さらに簡略化された設計を実現することができる。言い換えれば、ピボット案内部は、第1のジョー部と第2のジョー部との間に直接形成される。
【0009】
本願のさらなる実施形態では、第2のジョー部は、プッシュプル要素の長手方向移動軸に平行に延びる長手方向案内面であって、プッシュプル要素の相補的な長手方向案内面をその長手方向移動中に少なくとも一時的に摺動可能に案内する長手方向案内面を有する。第2のジョー部とプッシュプル要素との間の長手方向の案内部は、長手方向移動軸に対して横方向に向けられたプッシュプル要素の不要な移動を打ち消す。同時に、これによりプッシュプル要素に作用する制御ピンの不要な移動も回避される。これによって、少なくとも1つの制御突起に沿った制御ピンの意図された移動が補助される。特に、制御突起によって形成された制御面からの制御ピンの不要な浮き上がりを打ち消すことができる。長手方向案内面は、好ましくは、第2のジョー部の近位領域に配置される。相補的な長手方向案内面は、好ましくは、プッシュプル要素の上側または下側によって形成される。第2のジョー部とプッシュプル要素との間の摺動可能な案内は、好ましくは、例えば、制御ピンがその近位端位置の領域で移動するときに、一時的にのみ作用する。
【0010】
本願のさらなる実施形態では、第2のジョー部に配置および/または形成された止め部が、ツール口の開放位置において、ピボット軸を中心として第1のジョー部の相補的な止め部に積極的に相互作用する。これによって、ツール口が開放位置を越えて開くことが妨げられる。第1のジョー部の相補的な止め部は、好ましくは、その制御部に近接して配置される。第2のジョー部に割り当てられた止め部は、好ましくは、受容凹部の領域に配置および/または形成される。この止め部は、特に好ましくは、第2のジョー部の近位端に押し付けることができる接続スリーブの壁部である。
【0011】
本願のさらなる実施形態では、第2のジョー部はピボット軸に対して固定されており、第1のジョー部は、ツール口の開閉中に、第2のジョー部に対してピボット軸を中心として回転する。この文脈では、このことはまたツール口の片側枢動性とも称される。これは、ツール口を開閉するために両方のジョー部がピボット軸を中心として回転する両側枢動性とは対照的である。片側枢動性を有する実施形態では、ツール装置の更なる簡素化された設計を可能とする。
【0012】
本願のさらなる実施形態では、第2のジョー部は、1つの部品からなるハウジング部と、ハウジング部の遠位側に取り付けられる能動部とを有し、ハウジング部は、少なくとも1つの制御突起および/またはピボット軸受面とともに少なくとも受容凹部を有する。能動部は、好ましくは、ハウジング部に型嵌め式に取り付けられる。能動部は、ハウジング部に堅固に、または好ましくはピボット軸と平行に延びる傾動軸を中心に傾動可能に据え付けることができる。このように設けられる場合、ピボット軸受面、ピボット案内面、長手方向案内面および/または止め部も、好ましくはハウジング部に形成される。この種の一体型設計は、製造および組立の観点で多くの利点をもたらす。
【0013】
本願のさらなる実施形態では、制御溝は、近位溝端と遠位溝端との間に連続して直線状に延びている。長手方向に角度のついた、部分的に直線状となっている制御溝と比べて、結果的にさらに簡素化された製造が実現され得る。
【0014】
本願のさらなる実施形態では、制御面は、近位面部と遠位面部とを有しており、近位面部および遠位面部は、制御ピンの近位端位置と遠位端位置との間での制御ピンの移動において、プッシュプル要素の長手方向移動とツール口の枢動との間で異なる伝達比が実現されるように、長手方向移動軸に対して異なって傾斜している。これに対応して、長手方向移動に関連する長手方向の力と、ツール口の枢動に関連するクランプ力とは、必然的に異なる伝達比となり、ジョー部の間に位置する体組織にこのクランプ力を及ぼすことができる。制御面の異なる傾斜面部によって、ツール口の開放位置を始点として、最初は比較的急速にツール口を閉じ、その後は比較的ゆっくりとツール口を閉じることが可能となっている。このようにして、ツール口の最初の開放は、プッシュプル要素の比較的小さな長手方向移動で、またこれにより操作要素の小さな手動操作経路で実現することができる。言い換えれば、操作要素に必要なストロークを低減することができ、これは特に手の小さい人にとって有利である。同時に、操作要素に比較的小さな手動操作力を用いて、ツール口に比較的大きなクランプ力を発生させることができる。この実施形態の意味での可変伝達は、非直線状の長円形の穴、すなわち長さ方向に異なる傾斜を持つ長円形の穴によっても実現することができる。
【0015】
本願のさらなる実施形態では、近位面部は、長手方向移動軸に平行におよび/または少なくとも実質的に平行に延びている。これにより、制御ピンが近位面部に沿って移動する場合、本願のこの実施形態では結果的に伝達比が比較的小さくなる。従って、操作要素に対する比較的小さい手動操作力が、ツール口における比較的大きいクランプ力を引き起こす。制御ピンは、その近位端位置にて、好ましくは、近位面部の領域に位置付けられる。
【0016】
本願のさらなる実施形態では、遠位面部は、ピボット軸に対して同心円状に湾曲している。制御ピンの移動方向によって、結果として異なる利点が実現される。ピンの近位端位置の方向への移動において、制御ピンは、遠位面部に沿って移動するときに、ピボット軸に対して常に一定のレバーアームを有する。これにより、遠位面部の領域において一定の伝達比が保証される。このことは、適用のしやすさ、およびユーザーフレンドリーの点で利点をもたらし得る。ピンの遠位端位置の方向への移動の間、遠位面部の湾曲した同心円状の長手方向の外縁は、好ましくは、枢動中の制御ピンと遠位面部との間に一定の径方向の遊びを保証する。このことは、操作者により開始された移動の反転時に、操作者は常に一定の遊び、すなわち操作要素上の一定のアイドルストロークを見込むことができるので、更なる利点をもたらす。これにより、適用のしやすさとユーザーフレンドリーがさらに改善される。
【0017】
本願のさらなる実施形態では、遠位面部は、直線状であるとともに、ピボット軸に対して同心円状に配置された円弧に接している。本願の従来の実施形態と比較すると、遠位面部の簡素化された製造が実現されると同時に、同様の適用しやすさとユーザーフレンドリーを実現することができる。
【0018】
本願のさらなる実施形態では、制御ピンは、制御ピンの遠位端位置の方向への移動において、制御溝の遠位溝端に少なくとも一時的に保持され、ピボット軸を中心に第1のジョー部と共に回転する。このようにして、制御ピンと、制御突起の制御面、特に制御面の遠位面部との間における過度な径方向の遊びを打ち消すことが可能である。
【0019】
本願はさらに、開閉可能なツール口を形成するようにピボット軸を中心として互いに対して枢動可能となされている第1のジョー部および第2のジョー部を有する、上記の説明による手術用器具のためのツール装置であって、ツール装置は、制御ピンと少なくとも1つの制御溝を持つ制御構造を有し、少なくとも1つの制御溝は、第1のジョー部の制御部に形成され、制御ピンは、ピボット軸に平行に延びるとともに、少なくとも1つの制御溝を通って軸方向に係合しており、制御ピンは、制御溝に沿って制御ピンの近位端位置と制御ピンの遠位端位置との間で摺動可能であり、このようにしてツール口を開閉するためにピボット軸を中心に作用するトルクを第1のジョー部に加える、ツール装置にも関する。
【0020】
ツール装置に関して、冒頭に述べた目的は、第2のジョー部が、第1のジョー部の制御部を少なくとも部分的に受容する受容凹部を有しており、少なくとも1つの制御突起が、制御ピンの軸方向において受容凹部の内壁から内方に突出するとともに、制御構造の制御面を形成しており、制御ピンが、ピンの近位端位置と遠位端位置との間の移動において、制御突起に沿って摺動し、その上で径方向に支持されるという事実によって実現される。本願に係るツール装置に関連する利点に関しては、繰り返しを避けるために、上記の説明を明示的に参照する。本願に係る手術用器具のツール装置に関して述べたことは、本願に係るツール装置に関しても同じように適用される。本願に係るツール装置の有利な実施形態は、本願に係る手術用器具の実施形態のツール装置の特徴から明白に明らかであろう。
【0021】
本願はさらに、上記の説明によるツール装置の製造方法にも関する。本願の方法は、第2のジョー部を一次成形するステップを含み、少なくとも1つの制御突起を担持する第2のジョー部の少なくとも1つのハウジング部は、一次成形によって設けられる。一次成形は、好ましくは、粉末射出成形(金属射出成形)によって行われる。本願に係る第2のジョー部の設計により、比較的簡素化して設計された一次成形ツールを使用することができる。特に、一次成形ツールにおいてスライドやスタンプなどを省くことができる。
【0022】
本願のさらなる実施形態では、方法は、第1のジョー部と一次成形されたハウジング部をともに積極的に接合するステップを含み、ハウジング部に形成された第2のジョー部のピボット軸受面と、第1のジョー部の相補的なピボット軸受面とは、ピボット軸を形成するとともに、ピボット軸を中心として摺動可能であり、ピボット軸に対して径方向に互いに型嵌め式に固定されている。従って、ツール口の枢動性を形成するために、第1のジョー部と第2のジョー部とは、例えば別個のピン、軸またはボルト要素で互いに接続されない。むしろ、第1のジョー部と第2のジョー部は、ピボット軸を中心としてその径方向に直接に摺動可能となるように、型嵌め式に接合される。この接合接続は、第2のジョー部のピボット軸受面と第1のジョー部の相補的なピボット軸受面との間に形成される。
【0023】
本願の更なる利点および特徴は、特許請求の範囲および図面に示す本願の好ましい例示的実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】グリップ装置および細長いシャフトを有する本願に係る手術用器具の実施形態、ならびに本願に係るツール装置の実施形態を示す概略側面図である。
【
図2】第1のジョー部および複数の部品からなる第2のジョー部を有するツール装置、ならびに手術用器具の更なる構成部品を示す分解斜視図である。
【
図3】
図4による断面III-IIIに沿って、第2のジョー部に割り当てられたハウジング部を示す図である。
【
図5】
図3および
図4によるハウジング部の変形例を示す図である。
【
図8】
図9から
図13に関連する段階的断面IX-IXを含む、ツール装置の概略平面図である。
【
図9】第1のジョー部および第2のジョー部によって形成されるツール口が開放位置をとっている、ツール装置の断面図である。
【
図10】ツール口が開放位置を始点として閉鎖位置の方向に移動されている、ツール装置の更なる断面図である。
【
図11】ツール口が閉鎖位置をとっている、ツール装置の更なる断面図である。
【
図12】ツール口が閉鎖しており、かつ開放位置の方向に移動している間の、ツール装置の更なる断面図である。
【
図13】開放位置の方向にさらに進んだ機能位置での更なる断面図である。
【
図14】ツール口の開き角度をグリップ装置の操作要素の操作経路にわたってプロットした概略図である。
【
図15】ツール装置を製造するための方法ステップを示す概略図である。
【
図16】更なる方法ステップを示す更なる概略図である。
【
図17】更なる方法ステップを示す更なる概略図である。
【
図18】更なる方法ステップを示す更なる概略図である。
【
図19】シャフト上に固定角度でツール装置を取り付けることに関する、更なる方法ステップを示す更なる概略図である。
【
図20】シャフト上のツール装置の多関節取り付けに関する、更なる方法ステップを示す更なる概略図である。
【
図21】シャフト上のツール装置の多関節取り付けに関する、更なる方法ステップを示す更なる概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1によれば、手術用器具1は、シャフト長手方向軸Lに沿って長手方向に延びるシャフト2と、シャフト2の遠位側に配置されたツール装置3と、シャフト2の近位側に配置されたグリップ装置4とを有する。
【0026】
ツール装置3は、第1のジョー部5と第2のジョー部6とを有する。2つのジョー部5、6は、開閉可能なツール口Mを形成すべく、シャフト長手方向軸Lに対して横方向に配向されて、ピボット軸S(
図2)を中心に互いに対して枢動可能となされている。
【0027】
図示した実施形態では、第2のジョー部6は、いくつかの部品で設計され、近位ハウジング部7と、以下により詳細に説明される様式でハウジング部7の遠位端に積極的に固定されている遠位能動部8とを有する。第2のジョー部6のこのような複数の部品による設計は有利であるが、本願に係る教示の観点からは必須であるとはみなされない。従って、図示しない実施形態では、第2のジョー部は1つの部品からなる設計とする。
【0028】
グリップ装置4は、プッシュプル要素10を介してツール装置3に操作可能に接続された手動可能な操作要素9を有する。その結果、ジョー部5、6間に位置する体組織を把持してクランプするために、ツール口Mは、操作要素9の操作により、開放および/または閉鎖することができる。
【0029】
図1に示すグリップ装置4の設計は、純粋に一例として考慮されるべきである。本例では、グリップ装置4は、複数のハウジング部(これ以上詳細には指定しない)から形成され、グリップ装置の更なる構成部品、特に操作要素9がその上におよび/またはその中に取り付けられるハウジングを有する。
図1には、前述のハウジングの1つのハウジング半体(これ以上詳細には指定しない)のみが示されている。ハウジング上への操作要素9の移動可能な取付けのために、グリップ装置4は操作機構41を有し、その設計は原理的に公知であり、例えばドイツ特許出願第10 2017 109 891号に記載されている。さらに、連結機構42が設けられており、この連結機構42も同様に前述の特許出願に記載されており、操作要素9をプッシュプル要素10に力および移動を伝達する様式で結合する役割を果たす。操作要素9は、図中ではより詳細に示されていないが、グリップ装置4のハウジングに対して、遠位端位置(
図1)と近位端位置との間で往復移動するように手動で移動させることができる。操作要素9は、近位端位置において、それ自体公知の様式で、回転ロックとも称されるロック機構43によってロックすることができる。操作機構41は、操作要素9の遠位端位置の方向への移動を補助するために、より詳細には指定されていない、ばね要素を有することができる。
【0030】
プッシュプル要素10は、操作要素9の前述の往復移動によって、長手方向移動軸L’に沿って並進移動可能である。図示した実施形態では、プッシュプル要素10の長手方向移動軸L’は、シャフト長手方向軸Lと一致している。プッシュプル要素10は、その遠位端において、以下に詳細に説明する様式で、ツール装置3の制御構造11に操作可能に接続されている。制御構造11は、プッシュプル要素10の並進移動を、ピボット軸Sを中心とする第1のジョー部5および/または第2のジョー部6の枢動に変換するように構成されている。
【0031】
図示した実施形態では、第2のジョー部6はピボット軸Sに対して固定されており、第1のジョー部5はピボット軸Sに対して枢動可能である。この意味で、第1のジョー部5のみが、ツール口Mを開閉するために枢動されている。この文脈では、片側枢動性とも言える。これは、両方のジョー部がピボット軸Sに対して枢動可能である両側枢動性とは対照的である。図面に示されていない実施形態では、このような両側枢動性を提供することができる。
【0032】
図1に示す実施形態では、ツール装置3全体が、シャフト長手方向軸Lに対して曲げ可能なようにシャフト2に固定されている。グリップ側に操作ユニット12を、シャフト側に旋回ユニット13を備えた曲げ機構12、13が、ツール装置3を曲げるために設けられている。曲げ機構12、13の構造および機能は原理的に公知であり、例えば欧州特許第 2 688 501号に記載されている。あるいは、ツール装置3は、シャフト2に堅固に、および/またはシャフト長手方向軸Lを中心としてのみ回転可能に固定することもできる。
【0033】
本実施形態では、プッシュプル要素10は帯状であり、シャフト2内で長手方向に延びている(
図2)。特にシャフト2内でのプッシュプル要素10の長手方向の案内を改善するために、本例ではシャフト内に案内要素21が配置されている。
【0034】
プッシュプル要素10は、その近位端で、連結機構42の構成部品421と相互作用する。プッシュプル要素10は、その遠位端で、制御構造11の制御ピン14と相互作用する。
【0035】
制御構造11は、少なくとも1つの制御溝51(
図6)と少なくとも1つの制御突起71を有する。少なくとも1つの制御溝51は、第1のジョー部5に割り当てられている。少なくとも1つの制御突起71は、第2のジョー部6に割り当てられ、本例では、そのハウジング部7に形成されている。プッシュプル要素10の並進移動において、制御ピン14は、制御溝51および制御突起71と摺動式に相互作用する。ツール口12を開閉する際の制御構造11の更なる機能について考察する前に、第1のジョー部5および第2のジョー部6の更なる特徴を、
図3から
図7を参照して説明する。
【0036】
特に
図3及び
図4に示されているように、第2のジョー部6は、本例では、そのハウジング部7に、受容凹部72を有している。少なくとも1つの制御突起71は、制御ピン14の軸方向A(
図2)に、受容凹部72の内壁73から内方に突出している。少なくとも1つの制御突起71は、制御構造11の制御面74を形成し、この制御面74は、以下により詳細に説明する様式で制御ピン14と相互作用する。図示した実施形態では、制御面74は、シャフト長手方向軸Lおよび/または長手方向移動軸L’に対して、以下により詳細に説明する様式で、部分的に異なる傾斜角度で延びている。図示していない実施形態では、制御面は、代わりに、前述の長手方向軸に対して連続的に平行または傾斜して延びることができる。
【0037】
第2のジョー部6、特にそのハウジング部7は、本例では鏡面対称の設計を有する(
図4)。従って、制御ピン14の軸方向Aには、凹部72の内壁73’から内方に突出する、更なる制御突起71’が設けられている。この更なる制御突起71’は、更なる制御面74’を形成する。その移動中、制御ピン14は、両方の制御突起71、71’およびこれらに形成された制御面74、74’と摺動式に相互作用する。制御突起71およびその制御面74の詳細については、繰り返しを避けるために第1の実施例にて言及する。その関連で開示された内容は、それに応じて適宜、その制御突起71’および制御面74’にも適用される。他の方法についても同様である。
【0038】
ハウジング部7は、その長手方向軸L1に沿って、近位端と遠位端との間を延びている。図示した実施形態では、受容凹部72は、ハウジング部7の近位端と遠位端との間のほぼ中央に配置され、長手方向軸L1に対して遠位方向に、かつ
図3の図平面に対して上部に開放されている。操作準備が整った状態では、ハウジング部7の近位端は、シャフト2の遠位端に型嵌め式に固定されている(
図2)。能動部8は、ハウジング部7の近位端に配置され、傾動軸K(
図2)を中心に、長手方向軸L1に沿って傾動可能となるように、ハウジング部7の受容部75に型嵌め式に取り付けられている。能動部8は、体組織に作用するように設けられており、図示されていない実施形態では、ハウジング部7に堅固に取り付けられている。更なる実施形態では、能動部8は、ハウジング部7とともに1つの部品として形成することができる。
【0039】
操作準備の整った組立状態では、制御ピン14は受容凹部72内に配置されている。制御ピン14は、内壁73、73’間で軸方向Aに型嵌め式で保持される。内壁73、73’は、ここでは、制御ピン14を軸方向に固定するための固定面76、76’を形成している。2つの内壁73、73’、またこのため2つの固定面76、76’は、軸方向Aにおいて、制御ピン14の軸方向長さよりもわずかに長い距離だけ、互いに対して離間している。
【0040】
本例では、第2のジョー部6、より正確にはそのハウジング部7は、ピボット軸Sを形成しつつ、第1のジョー部5の相補的なピボット軸受面52(
図6)と相互作用するピボット軸受面77を有する。本例では、ピボット軸受面77は、受容凹部72の上で制御ピン14の軸方向Aに延びる横ウェブ部78の外周によって形成されている。横ウェブ部78は、ブリッジとも称することができる。ピボット軸受面77は、
図3の図平面に関して、横ウェブ部78の下面によって形成されている。ピボット軸Sは、制御面74の上方に配置されている。操作準備の整った組立状態において、制御溝51を担持する第1のジョー部(
図6)の制御部53は、横ウェブ部78の下に係合し、相補的なピボット軸受面52は、ピボット軸Sを中心として枢動可能となっており、径方向内方にピボット軸受面77に型嵌め式に支持される。
【0041】
さらに、本例では、第2のジョー部6、より正確にはそのハウジング部7は、ピボット案内面79を有する。ピボット案内面79は、本例では、受容凹部72の遠位端に位置している。この場合、ピボット案内面79は、ピボット軸Sに対して同心円状に湾曲して延びている。操作準備が整った組立状態では、ピボット案内面79は、ピボット軸Sを中心に摺動可能に、かつ、ピボット軸Sに対して径方向外向きに、第1のジョー部の相補的なピボット案内面54(
図6)と型嵌め式に相互作用する。ここでは、さらにピボット案内面79’が設けられている。ハウジング部7の2つのピボット案内面79、79’は、その長手方向軸L1に対して鏡面対称に配置および/または設計されている。更なるピボット案内面79’は、詳細には示していないが、第1のジョー部5の更なる相補的なピボット案内面と対応する様式で相互作用する。図面に示されていない実施形態では、1つのピボット案内面と1つの相補的なピボット案内面のみが設けられている。
【0042】
本例では、第2のジョー部6は、そのハウジング部7に長手方向案内面80を有する。長手方向案内面80は、プッシュプル要素10の長手方向移動軸L’に平行に延びており、プッシュプル要素10を一方の側で垂直に支持する役割を果たす。この目的のために、長手方向案内面80は、長手方向移動軸L’に沿って、かつ長手方向移動軸L’に直交する垂直方向に摺動するプッシュプル要素10の相補的な長手方向案内面101と、一端において型嵌め式に相互作用する。本例では、相補的な長手方向案内面101は、プッシュプル要素の上部平坦側面によって形成される。本例では、プッシュプル要素10の摺動可能な支持は、一時的にのみ、かつ制御面74に沿った制御ピン14のそれぞれの変位状態によって有効化される。これについては、以下でさらに詳細に考察する。長手方向案内面80は、ハウジング部7の近位端に配置されている。
【0043】
図示した実施形態では、制御面74は、近位面部741および遠位面部742を有する。2つの面部741、742は、長手方向軸L1に対して、またこのためシャフト長手方向軸Lおよび/またはこれと平行に整列された長手方向移動軸L’に対して、異なる傾斜で延びている。近位面部741は、長手方向移動軸L’に平行に延びる。一方、遠位面部742は、傾斜して延びている。遠位面部742の傾斜は、上から下に向かって遠位方向である(
図3)。遠位面部742は直線状であり、ピボット軸Sに対して同心円状に配置された円弧の接するように配向されている。
【0044】
異なる構成の遠位面部742aを有する変形例が
図5に示されており、それは対称的に対向する面部741’および742’aのみを描いている。
図3および
図4による変形例の遠位面部742とは対照的に、遠位面部742aは湾曲しており、ピボット軸Sに対して同心円状に延びている。
図5に示す変形例は、遠位面部742aの設計については別として、
図3および
図4に示される実施形態と同一である。本例では、遠位面部742aは、ピボット軸Sから半径Rだけ離間している。
【0045】
湾曲した遠位面部742aと比較して、直線状の遠位面部742は、製造が比較的容易である。対照的に、遠位面部742aの湾曲した設計は、特に制御ピン14をできるだけ遊びなく案内することに関して、後により詳細に説明する利点を提供する。
【0046】
第1のジョー部5は、遠位端と近位端との間を長手方向軸L2に沿って延びている。制御溝51を担持する制御部53は、近位側に配置されている。第2のジョー部6と同様に、第1のジョー部5は、遠位側に配置された能動部55を有する。第2のジョー部6の能動部8とは対照的に、能動部55は、第1のジョー部5の他の部分と一体化されている。言い換えれば、第1のジョー部5は全体として1つの部品で構成されているが、これは絶対に必要というわけではない。第1のジョー部5には、例えば、電極や、体組織を密封するための絶縁構成部品を配置することもできる。図示した実施形態では、制御部53は、制御溝51に加えて、相補的なピボット軸受面52および相補的なピボット案内面54をも有する。相補的なピボット軸受面52は、制御部53の上側(
図6の図平面に対して)に配置されている。相補的なピボット案内面54は、下面54上に配置される。制御溝51は、近位溝端511と遠位溝端512との間に延びている。本例では、溝端511、512間の制御溝51は、連続的に直線状であり、例えば角度が付いていたり湾曲していたりすることはない。それは、図面に示されていない実施形態には設けられてもよい。制御溝51は、第1のジョー部5の長手方向軸L2に対して傾斜して延びている。ここでの長手方向の傾斜は、底部から遠位方向上方に向かっている。いずれの場合も、ツール口Mの閉鎖位置(
図11)において、第1のジョー部5の長手方向軸L2は、第2のジョー部6の長手方向軸L1と平行に、またこのためシャフト長手方向軸Lおよび/または長手方向移動軸L’とも平行に配向されている。閉鎖位置において、制御溝51は、前述の長手方向軸L、L’、L1、L2に対して角度α(
図6)で傾斜している。傾斜角度αは、長手方向軸L2に対して、ピボット軸Sを中心とする第1のジョー部5の枢動位置によってももちろん不変である。また対照的に、傾斜角度αは、枢動位置によって長手方向軸L、L’、L1に対して変化する。
【0047】
本例では、第1のジョー部5はまた、開放位置を制限するために、第2のジョー部6に割り当てられた相補的な止め部151(
図17)と相互作用する止め部56を有する。相補的な止め部151は、図示した実施形態ではスリーブ15上に配置されている。図面に示されていない実施形態では、相補的な留め部分は、代わりにハウジング部に直接形成することができる。図示した実施形態では、止め部56は、制御部53からのピンの形態で近位方向に突出している。
【0048】
図7に示すように、図示した実施形態における第1のジョー部5は、その長手方向軸L2に関して鏡面対称の設計を有する。制御部53は、長手方向軸L2に平行に延び、かつプッシュプル要素10の遠位端を受容するために設けられた受容スロット57を有する。受容スロット57は、制御部53と、その上に配置された機能面および/または機能部とを、鏡面対称に配置および設計されたサブ面および/またはサブ部に細分化する。この意味で、例えば、制御溝51と、受容スロット57によって分離された更なる制御溝とを参照することができる。しかしながら、簡単のため、以下では制御溝51のみを参照する。
【0049】
プッシュプル要素10上のボア102(
図2)内に径方向に固定された制御ピン14は、操作準備が整った組立状態において、制御溝51を通って軸方向Aに突出する。制御溝51から軸方向に突出したその端部において、制御ピン14は、制御面74、74’(
図4)と径方向に相互作用する。
図8から
図13を参照した以下の機能説明の文脈では、簡潔にするために、制御面74または制御突起71のみを考察する。
【0050】
図9は、ツール口Mの開放位置を示している。この位置では、第1のジョー部5は、第2のジョー部6に対してピボット軸Sを中心にある角度(特定せず)だけ枢動し、これにより2つのジョー部5、6の間に、より正確には能動部8、55の間に、体組織を把持できるようになっている。ツール口Mの開放位置では、制御ピン14は遠位ピン端位置にある。操作要素9は
図1に示す位置にある。プッシュプル要素10は、長手方向移動軸L’に沿って遠位端位置まで移動される。
【0051】
ツール口Mを閉鎖位置(
図11)の方向に移動させるために、操作要素9は、枢動および/またはストローク移動で近位方向に手動で移動される。操作機構41と連結機構12は、基本的に公知の様式で、操作要素9の近位ストローク移動をプッシュプル要素10の近位長手方向移動に変換する。このようにして、制御ピン14は、ピンの遠位端位置を始点として、制御溝51および制御面74に対してシフトする(
図9)。本例では、遠位端位置において、制御ピン14は、遠位面部742aの遠位端の領域に、同時に遠位溝端512の領域に配置される。そこから、制御ピン14は、遠位面部742aに沿って近位方向に移動し、第1のジョー部5にピボット軸Sを中心とするトルクを与える。制御ピン14は、遠位面部742aの既存の長手方向の傾斜のために、
図9から
図13の図平面に対して、近位側に変位し、同時に垂直上方に変位する。プッシュプル要素10は、並進移動に加えて、ここでは、連結機構42の領域において、ピボット軸(詳細には指定されておらず、ピボット軸Sと平行に配向されている)を中心にわずかな回転を行う。遠位面部742aはピボット軸Sを中心として半径Rで同心円状に湾曲しているため、制御ピン14は、ここではピボット軸Sを中心とする半径Rの円形経路上で案内される。
【0052】
図3および
図4による直線状の角度のついた案内経路の場合、制御ピン14は前述の円形経路に従わず、代わりに遠位面部742に沿って直線状に案内される。
【0053】
図10に示す機能位置では、制御ピン14は遠位面部742aを越えて近位面部741にシフトしている。ツール口Mはまだ完全に閉鎖しておらず、その代わり、開放幅aだけ開放されている。この機能位置では、好ましくは、ジョー部5、6間に位置する体組織には、クランプ力が及ばないか、少なくとも有意なクランプ力が及ばない。むしろ、クランプ力は、
図10に示す機能位置を始点として増強される。ツール口Mの完全な閉鎖とそれに関連するクランプ力の増強のために、制御ピン14は、
図10に示す位置を始点として、さらに近位方向に移動する。ここで、制御ピン14は、長手方向移動軸L’に平行に配向された近位面部741に沿って摺動する。同時に、プッシュプル要素10の更なる垂直方向の移動は、長手方向案内面80によって阻止される。
【0054】
ツール口Mの閉鎖位置を
図11に示す。この位置では、制御ピン14の更なる近位移動によって、クランプ力の追加的な増強を達成することができる。近位面部741の平行配向およびピボット軸Sに対するその位置決めによって、結果として力および/またはトルクを第1のジョー部5に伝達するためのレバー比が特に有利になる。一般のレバー比は、
図11に示す機能位置におけるレバーアームb、cによって説明することができる。
【0055】
操作要素9は、閉鎖位置(
図11)を始点としてツール口Mを開放するために、必要であれば、回転ロック43が予め解除された後に、ストローク移動または枢動で遠位側に移動される。従って、プッシュプル要素10は、長手方向移動軸L’に沿って遠位側に移動する。制御ピンは、近位面部741(
図12)に沿って遠位側に移動する。
【0056】
ツール口Mを開放する際の更なる機能的位置を
図13に示す。この位置では、制御ピン14は、遠位方向にさらに移動し、近位面部741と遠位面部742aとの間の移行部に配置される。同時に、この機能位置においては、制御ピン14は、制御溝51の遠位溝端512に保持される。その結果、制御ピン14の更なる移動時に、遠位面部742aに対して過度な径方向の遊びが抑制される。
【0057】
図14は、ツール口Mの開き角度とプッシュプル要素10の並進移動との関係を示す図である。それはストロークとも称することができ、横軸に示されている。ツール口Mの不特定な開き角度は、縦軸に示されている。曲線K1は、特に
図9から
図13を参照して説明した設計のストロークにわたる開き角度の経緯を示している。曲線K1は、2つの線状に延びる曲線部K11、K12にほぼ分割することができる。本例では、座標の起点は、ピンの遠位端位置に対応し、従ってツール口Mの開放位置(
図9)に対応する。曲線の経緯は、2つの領域B1、B2に細分することができる。
【0058】
ピンの遠位端位置を始点とすると、開き角度は、当初、ストロークにわたって比較的急な傾斜を有する(曲線部K11)。ここで、制御ピン14は、遠位面部742aに沿って移動する。本例では、遠位面部742aと近位面部741との間の移行部は、約2mmのストロークにある。ストロークがさらに増加すると、制御ピン14は近位面部741に入る。その後、開き角度の外形は、顕著に平坦になる(曲線部K12)。
【0059】
これは、比較的大きな開き角度の減少が、比較的小さなストローク(領域B1)で最初に実現されることを意味する。この領域は、印加による力が小さい(クランプ力が増強されない)領域であるため、ストロークの減少は、操作要素9に要求される操作力に悪影響を及ぼさない。領域B2への移行部では、ストロークの変化は同じであるが、開き角度の変化は減少する。ジョー部5、6間のクランプ力の実際の増強は、領域B3で起こる。
【0060】
その結果、制御面74の本設計によって、操作要素9のストロークが全体的に短縮され、ツール特徴Mの開き角度が大きくなり、操作要素9の操作力が低減する。このようにして、ユーザーフレンドリーの改善が実現される。
【0061】
これに対して、一例として描かれた曲線K2は、純粋に水平な制御面の場合のストロークにわたる開き角の外形を示している。純粋に水平な制御面を使用した場合、同じストロークでは約半分の開き角しか実現されない。これはデメリットといえる。
【0062】
上述したツール装置3を製造するための本願に係る方法のステップを、
図15から
図18に概略的に示す。
【0063】
図15に示すステップでは、第1のジョー部5が、制御部53を先にして、ハウジング部7の受容凹部72に挿入される。この場合、制御部53は、上方から下方に向かって斜めに、かつ横ウェブ部78の下で近位方向に案内され、同時に時計回りに回転させられる(
図15)。ここで、ピボット軸受面77と相補的なピボット軸受面52とが互いに接触し、これによりピボット軸Sを形成する。さらに、ピボット案内面79と相補的なピボット案内面54とが互いに接触する。第1のジョー部5とハウジング部7との間にこのようにして形成された接続部は、一方ではピボット軸Sを中心として枢動可能であり、他方ではピボット軸Sに対して径方向に型嵌めされているため、特に、ピボット軸を形成するための別個のピン、軸またはボルト接続部を省くことが可能になる。
【0064】
更なるステップでは、プッシュプル要素10は、制御部53の長手方向スロット57に挿入され、制御ピン14は、その軸方向に沿って、制御溝51および受容ボア102を通って挿入される。これは、第1のジョー部がハウジング部7に対して最大に開放されたときに生じ、組立位置(
図16)とも称することができる。制御ピン14は、受容凹部72の外側で、かつ制御突起71の遠位端に形成された挿入開口部Eの領域に依然として位置している。
【0065】
組立位置を始点とすると、第1のジョー部5は、制御ピン14が適宜位置決めされた場合に挿入開口部Eを通って受容凹部72内および制御面74の領域内を通過するように、ピボット軸を中心として時計回り方向に手動で枢動される。ここで、制御ピン14は、その軸方向に沿って、対向する固定面76、76’間に案内される。
【0066】
更なるステップ(
図17、
図18)において、スリーブ15が、プッシュプル要素10およびハウジング部7の近位端部を越えて軸方向に押し込まれる。その結果、プッシュプル要素10は、スリーブ15の内側面(詳細には指定されていない)とハウジング部7の長手方向案内面80との間で、垂直方向に移動可能に固定されている。このようにして、プッシュプル要素10は、スリーブ15の内側面と長手方向案内面80との間で、限られた垂直方向に意図されたように移動することができる。第1のジョー部5の枢動性は、止め部56およびスリーブ15の相補的な止め部151によって、一方の側で積極的に制限される。これにより、第1のジョー部5が開放位置(
図17)を越えて組立位置(
図16)に達することが阻止されるとともに、制御ピン14が受容凹部72から意図せずに出ることが阻止される。換言すれば、制御構造11はスリーブ15によって本質的に固定されている。
【0067】
次のステップ(
図19)では、シャフト2がプッシュプル要素10にわたって軸方向に案内され、ハウジング部7に据え付けられる。このようにして、ハウジング部7とシャフト2との間に圧着接続が形成される。この目的のために、ハウジング部7は、より詳細には指定されておらず、シャフト2の遠位端に配置されたタブ(参照符号なし)と相互作用するくぼみ(例えば、
図4)を有する。圧着接続の結果、スリーブ15は、簡単に言えば、シャフト2とハウジング部7との間に「クランプ」される。
【0068】
さらに次のステップでは、第2のジョー部6の能動部8は、傾動軸Kの領域においてさらに型嵌め接続によってハウジング部7に固定される。
図19が明らかにしているように、本実施形態の能動部8は、傾動軸Kを中心として数角度だけハウジング部7に対して傾動させることができる。
【0069】
図19に示すステップは、シャフト2に対して曲げることができないツール装置を備えた変形例に関する。曲げられる変形例を
図20および
図21に示す。この変形例では、関節張力バンドZが設けられている。関節張力バンドZは、覆われた領域において破線で示されており、基本的に公知の様式で、曲げ機構12、13の操作ユニット12および旋回ユニット13と相互作用する。関節張力バンドZは、ハウジング部7内の溝(詳細には図示せず)に沿って、シャフト2に沿ったループとして走行する。旋回装置13の個々の旋回体131、132、133は、ツール装置3を曲げることを可能にする。
図20および
図21に示される配置は、好ましくは、配置を固定するのに更なる積極的な接続が必要とならないように、関節張力バンドZの引張力のみによってこれとともに保持される。ハウジング部7の溝Nの領域において、スリーブ15は、関節張力バンドZを、全ての方向において滑り落ちないように固定する。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0069
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0069】
図19に示すステップは、シャフト2に対して曲げることができないツール装置を備えた変形例に関する。曲げられる変形例を
図20および
図21に示す。この変形例では、関節張力バンドZが設けられている。関節張力バンドZは、覆われた領域において破線で示されており、基本的に公知の様式で、曲げ機構12、13の操作ユニット12および旋回ユニット13と相互作用する。関節張力バンドZは、ハウジング部7内の溝(詳細には図示せず)に沿って、シャフト2に沿ったループとして走行する。旋回装置13の個々の旋回体131、132、133は、ツール装置3を曲げることを可能にする。
図20および
図21に示される配置は、好ましくは、配置を固定するのに更なる積極的な接続が必要とならないように、関節張力バンドZの引張力のみによってこれとともに保持される。ハウジング部7の溝Nの領域において、スリーブ15は、関節張力バンドZを、全ての方向において滑り落ちないように固定する。
下記する項目は、出願当初の特許請求の範囲に記載されていた項目である。
(項目1)
手術用器具(1)であって、
シャフト長手方向軸(L)に沿って延びているシャフト(2)と、
前記シャフト(2)の遠位側に配置され、第1のジョー部(5)および第2のジョー部(6)を有するツール装置(3)であって、前記第1のジョー部および前記第2のジョー部(5、6)は、開閉可能なツール口(M)を形成するように、前記シャフト長手方向軸(L)に対して横方向に配向されたピボット軸(S)を中心として、互いに対して枢動可能となされている、前記ツール装置(3)と、
前記シャフト(2)の近位側に配置され、プッシュプル要素(10)を介して前記ツール装置(3)に操作可能に接続される操作要素(9)を有するグリップ装置(4)であって、前記操作要素(9)の操作によって前記プッシュプル要素(10)が長手方向移動軸(L’)に沿って並進移動可能である、前記グリップ装置(4)と、
を備え、
前記ツール装置(3)は、制御ピン(14)と少なくとも1つの制御溝(51)を持つ制御構造(11)を有し、前記少なくとも1つの制御溝(51)は、前記第1のジョー部(5)の制御部(53)に形成され、前記制御ピン(14)は、前記ピボット軸(S)に平行に延びるとともに、前記少なくとも1つの制御溝(51)を通って軸方向に係合しており、前記制御ピン(14)は、前記プッシュプル要素(10)の長手方向移動によって、前記制御溝(51)に沿って前記制御ピン(14)の近位端位置と前記制御ピン(14)の遠位端位置との間で摺動可能であり、このようにして前記ツール口(M)を開閉するために前記ピボット軸(S)を中心に作用するトルクを前記第1のジョー部(5)に加えており、
前記第2のジョー部(6)は、前記第1のジョー部(5)の前記制御部(3)を少なくとも部分的に受容する受容凹部(72)を有しており、少なくとも1つの制御突起(71)は、前記制御ピン(14)の前記軸方向(A)において前記受容凹部(72)の内壁(73)から内方に突出するとともに、前記制御構造(11)の制御面(74)を形成しており、前記制御ピン(14)は、前記制御ピン(14)の前記近位端位置と前記遠位端位置との間の移動において、前記制御突起(71)に沿って摺動し、その上で径方向に支持されていることを特徴とする、手術用器具(1)。
(項目2)
前記第2のジョー部(6)は、前記制御ピン(14)の前記軸方向(A)において前記受容凹部(72)を規定する固定面(76、76’)であって、前記制御ピン(14)の前記近位端位置と前記遠位端位置との間の移動において前記制御ピン(14)を軸方向変位に対して積極的に固定する前記固定面(76、76’)を有することを特徴とする、項目1に記載の手術用器具(1)。
(項目3)
前記第2のジョー部(6)は、前記ピボット軸(S)を形成するとともに前記第1のジョー部(5)の相補的なピボット軸受面(52)と摺動して相互作用するピボット軸受面(77)を有することを特徴とする、項目1または2に記載の手術用器具(1)。
(項目4)
前記第2のジョー部(6)の前記ピボット軸受面(77)は、前記受容凹部(72)の上で前記制御ピン(14)の前記軸方向(A)に延びる横ウェブ部(78)の外周によって形成されていることを特徴とする、項目3に記載の手術用器具(1)。
(項目5)
前記第2のジョー部(6)は、前記ピボット軸(S)に対して同心円状に湾曲するピボット案内面(79)であって、前記第1のジョー部の相補的なピボット案内面(54)と摺動して相互作用する前記ピボット案内面(79)を有することを特徴とする、項目1から4のいずれか一項に記載の手術用器具(1)。
(項目6)
前記第2のジョー部(6)は、前記プッシュプル要素(10)の前記長手方向移動軸(L’)に平行に延びる長手方向案内面(80)であって、前記プッシュプル要素(10)の相補的な長手方向案内面(101)をその長手方向移動中に少なくとも一時的に摺動可能に案内する前記長手方向案内面(80)を有することを特徴とする、項目1から5のいずれか一項に記載の手術用器具(1)。
(項目7)
前記第2のジョー部(6)に配置および/または形成された止め部(151)が、前記ツール口(M)の開放位置において、前記ピボット軸(S)を中心として前記第1のジョー部(5)の相補的な止め部(56)に積極的に相互作用することを特徴とする、項目1から6のいずれか一項に記載の手術用器具(1)。
(項目8)
前記第2のジョー部(6)は前記ピボット軸(S)に対して固定されており、前記第1のジョー部(5)は、前記ツール口(M)の開閉中に、前記第2のジョー部(6)に対して前記ピボット軸(S)を中心として回転することを特徴とする、項目1から7のいずれか一項に記載の手術用器具(1)。
(項目9)
前記第2のジョー部(6)は、1つの部品からなるハウジング部(7)と、前記ハウジング部(7)の遠位側に取り付けられる能動部(8)とを有し、前記ハウジング部(7)は、前記少なくとも1つの制御突起(71)および/または前記ピボット軸受面(77)とともに少なくとも前記受容凹部(72)を有することを特徴とする、項目1から8のいずれか一項に記載の手術用器具(1)。
(項目10)
前記制御溝(51)は、近位溝端(511)と遠位溝端(512)との間に連続して直線状に延びていることを特徴とする、項目1から9のいずれか一項に記載の手術用器具(1)。
(項目11)
前記制御面(74)は、近位面部(741)と遠位面部(742、742a)とを有しており、前記近位面部および前記遠位面部は、前記制御ピン(14)の前記近位端位置と前記遠位端位置との間での前記制御ピン(14)の移動において、前記プッシュプル要素(10)の前記長手方向移動と前記ツール口(M)の枢動との間で異なる伝達比が実現されるように、前記長手方向移動軸(L’)に対して異なって傾斜していることを特徴とする、項目1から10のいずれか一項に記載の手術用器具(1)。
(項目12)
前記近位面部(741)は、前記長手方向移動軸(L’)に平行におよび/または少なくとも実質的に平行に延びていることを特徴とする、項目11に記載の手術用器具(1)。
(項目13)
前記遠位面部(742a)は、前記ピボット軸(S)に対して同心円状に湾曲していることを特徴とする項目11又は12に記載の手術用器具(1)。
(項目14)
前記遠位面部(742)は、直線状であるとともに、前記ピボット軸(S)に対して同心円状に配置された円弧に接していることを特徴とする項目11又は12に記載の手術用器具(1)。
(項目15)
前記制御ピン(14)は、前記制御ピン(14)の前記遠位端位置の方向への移動において、前記制御溝(51)の前記遠位溝端(512)に少なくとも一時的に保持され、前記ピボット軸(S)を中心に前記第1のジョー部(5)と共に回転することを特徴とする、項目10から14のいずれか一項に記載の手術用器具(1)。
(項目16)
開閉可能なツール口(M)を形成するようにピボット軸(S)を中心として互いに対して枢動可能となされている第1のジョー部(5)および第2のジョー部(6)を有する、項目1から15のいずれか一項に記載の手術用器具(1)のためのツール装置(3)であって、前記ツール装置(3)は、制御ピン(14)と少なくとも1つの制御溝(51)を持つ制御構造(11)を有し、前記少なくとも1つの制御溝(51)は、前記第1のジョー部(5)の制御部(53)に形成され、前記制御ピン(14)は、前記ピボット軸(S)に平行に延びるとともに、前記少なくとも1つの制御溝(51)を通って軸方向に係合しており、前記制御ピン(14)は、前記制御溝(51)に沿って前記制御ピン(14)の近位端位置と前記制御ピン(14)の遠位端位置との間で摺動可能であり、このようにして前記ツール口(M)を開閉するために前記ピボット軸(S)を中心に作用するトルクを前記第1のジョー部(5)に加えており、前記第2のジョー部(6)は、前記第1のジョー部(5)の前記制御部(53)を少なくとも部分的に受容する受容凹部(72)を有しており、少なくとも1つの制御突起(71)は、前記制御ピン(14)の前記軸方向(A)において前記受容凹部(72)の内壁(73)から内方に突出するとともに、前記制御構造(11)の制御面(74)を形成しており、前記制御ピン(14)は、前記制御ピン(14)の前記近位端位置と前記遠位端位置との間の移動において、前記制御突起(71)に沿って摺動し、その上で径方向に支持されていることを特徴とする、ツール装置(3)。
(項目17)
前記第2のジョー部(6)を一次成形するステップを含み、前記少なくとも1つの制御突起(71)を担持する前記第2のジョー部(6)の少なくとも1つのハウジング部(7)は、一次成形によって設けられる、項目16に記載のツール装置(3)の製造方法。
(項目18)
前記第1のジョー部(5)と前記一次成形されたハウジング部(7)をともに積極的に接合するステップを含み、前記ハウジング部(7)に形成された前記第2のジョー部(6)のピボット軸受面(77)と、前記第1のジョー部(5)の相補的なピボット軸受面(52)とは、前記ピボット軸(S)を形成するとともに、前記ピボット軸(S)を中心として摺動可能であり、前記ピボット軸(S)に対して径方向に互いに型嵌め式に固定されている、項目17に記載の方法。
【国際調査報告】