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特表2024-506103層状複水酸化物、その合成プロセス、およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】層状複水酸化物、その合成プロセス、およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C01G 53/00 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
C01G53/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548608
(86)(22)【出願日】2022-02-14
(85)【翻訳文提出日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 EP2022053489
(87)【国際公開番号】W WO2022171855
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】21382113.5
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513283589
【氏名又は名称】ウニベルシタット デ バレンシア
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】アベリャン サエズ,ゴンザロ
(72)【発明者】
【氏名】オエストレイヒャー,ビクター
(72)【発明者】
【氏名】コロナド ミラレス,エウヘニオ
(72)【発明者】
【氏名】ロメロ パスクアル,ホルヘ
【テーマコード(参考)】
4G048
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AB02
4G048AC08
4G048AD03
4G048AE05
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの二価陽イオンAIIまたはLiと、VIII、CoIII、CrIII、MnIII、FeIII、GaIIIおよびランタニドからなる群から選択される少なくとも1つの三価陽イオンBIIIとを含む層状複水酸化物に関する。本発明はまた、前記層状複水酸化物の合成プロセスおよびその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの二価陽イオンAIIまたはLiと、VIII、CoIII、CrIII、MnIII、FeIII、GaIIIおよびランタニドからなる群から選択される少なくとも1つの三価陽イオンBIIIとを含む層状複水酸化物であって、前記層状複水酸化物は、次式を示すか、
【数1】

あるいは、前記少なくとも1つの二価陽イオンAIIの代わりにLiを使用する場合には、次式を示し、
【数2】

(式中、Xは陰イオンであり、yは0より大きく1より小さく、nは水分子の数である)
前記層状複水酸化物は、BIIIクラスタの存在と、硬X線吸収端近傍分光法(XANES)によって測定される3~4Åの範囲の単一のピークとを特徴とする、層状複水酸化物。
【請求項2】
前記二価陽イオンAIIは、MgII、CaII、FeII、CoII、NiII、CuII、ZnIIおよびCdIIから成る群から選択される、請求項1に記載の層状複水酸化物。
【請求項3】
前記層状複水酸化物が、四価の金属陽イオンを、好ましくはTiIVをさらに含む、請求項1または2に記載の層状複水酸化物。
【請求項4】
前記層状複水酸化物は、1つの二価陽イオンAIIおよび2つの三価陽イオンBIIIを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の層状複水酸化物。
【請求項5】
少なくとも1つの二価陽イオンAIIまたはLiと、VIII、CoIII、CrIII、MnIII、FeIII、GaIIIおよびランタニドから成る群から選択される少なくとも1つの三価陽イオンBIIIとを含む溶液におけるエポキシドと求核剤との間のワンポット反応を含み、前記反応が2.5未満のpHで行われる、請求項1に記載の層状複水酸化物の合成プロセス。
【請求項6】
溶液中の前記二価陽イオンAIIが、MgII、CaII、FeII、CoII、NiII、CuII、ZnIIおよびCdIIから成る群から選択される、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記溶液が、四価金属陽イオンを、好ましくはTiIVをさらに含む、請求項5または6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記エポキシドが、グリシドール、エチレン酸化物、プロピレン酸化物、およびトリメチレン酸化物から成る群から、好ましくはグリシドールから選択される、請求項5~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記求核剤が、オキソ陰イオン、ハロゲン化物、アジド、イソシアネート、チオシアネート、アミド、アルキルサルフェート、アルキルホスホネート、カルボン酸およびフェノキシドから成る群から、好ましくはCl、BrまたはIからなる群から選択される、請求項5~8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記溶液が、溶媒として水を含む溶液、少なくとも1つの有機溶媒を含む溶液、または水と少なくとも1つの有機溶媒との混合物を含む溶液である、請求項5~9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
電極触媒作用のための、請求項1~4のいずれか1項に記載の層状複水酸化物の使用。
【請求項12】
エネルギー貯蔵(スーパーキャパシタまたは電池)のための、請求項1~4のいずれか1項に記載の層状複水酸化物の使用。
【請求項13】
食品包装におけるポリマー膜のためのバリア添加剤としての、請求項1~4のいずれか1項に記載の層状複水酸化物の使用。
【請求項14】
吸収剤または陰イオン交換体としての、請求項1~4のいずれか1項に記載の層状複水酸化物の使用。
【請求項15】
複合材料を得るための前駆体化合物としての、請求項1~4のいずれか1項に記載の層状複水酸化物の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔本発明の分野〕
本発明は、層状複水酸化物(本明細書ではLDHとも呼ばれる)の分野に関する。特に、本発明は、新規な層状複水酸化物、その合成プロセスおよびその使用に関する。
【0002】
〔本発明の背景〕
エネルギー消費の絶え間ない増加とその見境のない使用とは、主に化石燃料によって供給されているが、エネルギー危機と環境危機との両方を引き起こし、現代社会にとって非常に優先される標的となっている。クリーンで再生可能なエネルギーシステムの探索において、電気化学的水分解は、持続可能なエネルギー源(幾つか例を挙げると、太陽、風)をクリーンな化学エネルギー、すなわち水素に変換するための最も有望な技術の1つとして現れている。
【0003】
水分解の半反応、酸素発生反応(OER)はプロセス全体のボトルネックとして残存し、反応速度が遅く、高い過電圧を必要とする。現在、RuOおよびIrOのような貴金属酸化物が、アルカリ媒体中のOERのための最新の電極触媒として使用されている。しかしながら、より高い陽極電位でのそれらの不安定性、および特に、それらの高コストおよび低存在量は、大規模な商業的適用を妨げる。したがって、低コストの地球に豊富な元素、非汚染物質、および非ジオロケートであるもの(non-geolocated)に基づく高活性で効率的な触媒の開発は、最も重要な問題である。
【0004】
層状複水酸化物(LDH)はその柔軟な化学的調整性のために、前出の要件を容易に満たすことができる。この種の化合物はブルーサイトに類似したヒドロタルサイト構造を有する層状無機固体として定義することができ、ここで、二価陽イオンに対する三価陽イオンの部分的置換は、中間層ギャラリーに位置する陰イオンによって補償される陽性のシートチャージをもたらす(https://www.sciencedirect.com/topics/materials-science/layered-double-hydroxides参照)。高いOER活性を示すNiFe‐LDHに関する最初の報告以来、OER性能の最適化に多大な努力が集中した。今日、FeベースのLDH触媒は、これまでに報告されたアルカリ性条件におけるOERにとって最良の性能を有しており、貴金属元素および非晶質Feベースのオキシ水酸化物に基づくものを上回っている。単一層剥離、サブナノメートルシートの取得、陰イオン交換による基底空間の増加、活性サイトを増加させる欠陥工学、またはヘテロ原子ドーピングによる導電性の向上を含む、多くの異なる合成アプローチが、それらの電気化学的性能を改善するために探求されてきた。しかしながら、それらの魅力的な性能にもかかわらず、水分解におけるLDHの実用的な適用は利用可能な合成プロトコルの低効率によって制限されており、その合成プロトコルは、広範な適用には依然として複雑すぎる。実際、炭酸陰イオンを含有するNiFe‐LDHの最も単純な場合でさえ、商業的に入手不可能なままであり、大きいスケールでのFeベースのLDHの実施におけるボトルネックについて警告している。
【0005】
確かに、このことは、FeIIIの加水分解化学に関連し、FeIIIは、他の二価陽イオンと比較して、高度に酸性の陽イオン
【数1】

であり、
低い溶解度
【数2】

および非常に低い水交換反応速度
【数3】

を示す。これらの特徴に加えて、FeIIIはAlIIIと同様に非両性陽イオンであり、再結晶プロセス中に起こる再溶解段階および再析出段階を妨げる。そのため、FeベースLDHの合成には、(i)特異的な自生状態で達成される高い再結晶温度、(ii)Feベースのスピネル不純物形成を避けるためのキレート剤の利用、および(iii)FeIIを採用するトポケミカル手法の利用が必要であり、FeIIは、より低い酸性
【数4】

であり、より高い溶解性
【数5】

であり、より高い交換反応速度
【数6】

を示す陽イオンである。これらのプロトコル、またはそれらのいくつかの組み合わせは、拡張可能にすることが出来ないけれども、結晶性の純粋なFeベースのLDHを得ることを保証する。
【0006】
したがって、本発明者らは温和な条件で作業し、室温で均一なアルカリ化を行い、再結晶処理およびその後の不溶性鉄系不純物の形成を回避することによって、この状況を活用するプロセスを開発した。これを達成するために、本発明のプロセスは、エポキシド経路としても知られる、OH陰イオンの漸進的送達に至るエポキシド環上での塩化物の周知の求核攻撃を使用する(Oestreicher,V.;Jobbagy,M. One Pot Synthesis of MgAl(OH)Cl・1.5HO Layered Double Hydroxides:The Epoxide Route. Langmuir 2013, 29 (39), 12104-12109. https://doi.org/10.1021/la402260m参照)。この方法は、ワンポット法における室温での、メソ多孔性材料、層状水酸化物(Oestreicher, V.;Jobbagy,M. On Demand One-Pot Mild Preparation of Layered Double Hydroxides and Their Hybrid Forms:Advances through the Epoxide Route.Chem. - Eur. J. 2019, 25 (54), 12611-12619. https://doi.org/10.1002/chem.201902627参照)または金属有機骨格の合成に非常に効率的であることが証明されているが、しかしながら、NiFe‐LDHの合成にも、そのハイブリッド誘導体にも、三元LDHにも使用されていない。LDHに関する以前の報告はアルミニウムの両性特性を活用しているが、しかしながら、FeベースのLDHにおいてこれは大きな欠点である。したがって、この制限を克服するためには、以下を極めて正確に制御することが必須である:(i)初期pH(これは、陽イオンの溶解度を決定し、アルミニウムを越えて遷移金属陽イオンを使用する場合に最も重要な事項である)、および(ii)求核剤およびエポキシドの濃度によって支配されるアルカリ化プロセス(すなわち、時間の関数としてのpH)。LDHの再結晶を妨げる結果、層全体に不均一な陽イオン分布が生じ、非常に効率的な水酸化電極触媒として挙動する、高度にクラスタ化した無秩序なLDHの新しいクラスがもたらされる。この方法は、pHのin‐situ制御を必要とせず、反応器のための特別な要件(形状およびサイズのいずれにおいても)無しに容易にスケールアップすることができるので、容易に工業に移行することができる。
【0007】
本発明は、純粋な無機相またはハイブリッド相の形態のいずれかで、新しい二元および三元LDHを合成するための、率直で、低コストで、時間要求が少ない戦略を表す。この新規な合成プロセスは、精緻な装置を用いずに大気圧で実施されるワンポットプロセスであり、室温および水性溶媒などの穏やかな条件下で実施することができるという更なる利点を有する。
【0008】
Wu xuら「Fabrication of NiFe layered double hydroxides using urea hydrolysis-Control of interlayer anion and investigation on their catalytic performance」、Catalysis Communications 50 (2014) 44-48は、110℃(自生状態)でアルカリ化試薬として尿素を採用した水熱条件下でのNiFe‐LDHの合成を報告している。ほとんどの実験において、NiFe‐LDH相は、炭酸または不純物のいずれかを含有して得られる。それにも関わらず、提示された状態の1つでは、試料はNiFe‐NOの形態であるように見える。著者らがこのことを裏付けるためにPXRDの特性評価のみを採用したことは、言及する価値がある。NiFe‐COとNiFe‐NOとの構造パラメータは非常に類似している。さらに、硝酸陰イオンは基底空間距離を変更する多様な方位を採用することができ、そういう理由で、試料中の硝酸の存在を確認するために他の技術(例えば、FTIR)が必要とされる。我々の結果と比較して、我々の方法は、エポキシドの加水分解によって誘発され、室温で実施され、要求に応じて陰イオン(無機または有機のいずれか)の組み込みを可能にする代替アルカリ化法について行われる。
【0009】
Sakita A.M.Pら「Novel NiFe/NiFe‐LDH composites as competitive catalysts for clean energy purposes」、Applied Surface Science 447 (2018) 107-116は、電気還元プロセスを通じた金属ナノ粒子およびオキシ/水酸化物から構成されたNiFeベースのナノ複合材料の電気化学製作を報告している。これらの材料は、定電圧法で専らガラス状炭素表面上に得られる。この技術は、堆積された(ナノ)複合材料の成長を可能にする。粉末材料は提示されていない。電気化学的プロセスが水溶液中で行われるため、水中で酸化還元電位を有する陽イオン(すなわち、E°<E°{H})は、この経路では得ることができない。さらに、著者らは金属部分、すなわち、Fe(0)およびNi(0)を検出するXPSによって、それらのすべての知見を支持している。NiFe‐LDHの場合、陽イオンの酸化はNi(II)およびFe(III)でなければならないことに留意されたい。構造特性化に関して、PXRD回折パターンが2θ>15°から示されている。この状態では、最も重要な結晶学的パラメータである003反射(基底空間距離に関連する)を観察することができない。さらに、006平面(約22°)に起因する信号は観測できない。したがって、LDH相の発生は確認できない。我々の結果と比較して、我々の方法は金属ナノ粒子の存在なしに、低い酸化還元電位を示す陽イオンに対してさえ、自立LDH粉末を得ることを可能にする。
【0010】
Cai Zhaoら「Introducing Fe2+ into Nickel-Iron Layered Double Hydroxide:Local Structure Modulated Water Oxidation Activity」、Angew. Chem. Int. Ed. 2018, 57, 9392-9396は、NaOHおよびNaSOを採用した60℃で12時間での共沈法による、Fe(II)リッチなNiFe‐LDHの合成を紹介している。著者らは、Fe(II):Fe(III)比率を変えながら、Ni:Fe比率を2:1に保った。興味深いことに、Fe(II):Fe(III)比率が1:1である場合、OER性能はかなり改善することを証明する。著者らは「参考になり興味深いことに、Ni/Fe比率が変化しない局所構造効果(Ni‐O‐Fe対Fe‐O‐Fe)を見るために、Fe‐O‐Fe OBMMを形成するためにFeの二重サイトをNiベースのLDHマトリックスに導入する」と主張し、著者らの研究を動機付けるであろう理由:「Ni/Fe比率を変えずにNiサイトFe原子をNiFe‐LDHに導入するために、Fe原子の半分を1格子だけ移動させて隣接するFeと結合させ、それら自身の位置をNiで占めるようにした。したがって、NiおよびFeの位置を切り替えることにより、Fe‐O‐Fe対を人工的に構築できる」と主張している。しかし、著者らは「合成中にLDH内部にFe3+‐O‐Fe3+モチーフを形成することは禁止されている」と述べ、「LDH構造では三価の金属サイトが二価の金属原子によって取り囲まれ、原子的に隔離されている」と述べている。この評価は、我々が我々の合成方法の場合に示してきたように、間違っている。さらに、アルミニウムの場合、27Al固相核磁気共鳴(SSNMR)によるAl3+‐O‐Al3+モチーフの出現が研究されている(Science, 356, 6341, (933-938), (2021)./doi/10.1126/science.aam6371)。専らFe(III)‐O‐Fe(III)から構成されている我々の特許で報告されたのと明確に対照的に、著者らの研究では、Fe(II)とFe(III)とから成るFe‐O‐Feモチーフが存在するので、著者らはFe(II)を採用した。また、業績で述べられ、文献にも記載されているように、LDHの化学式は、M2+ 1-x3+ (OH)(An-(x/n)・mHO(0.20≦x≦0.33)で表される。したがって、すべての試料についてNi:Fe比率を2:1に固定したままであっても、Fe(II):Fe(III)の変化はM(II):M(III)、すなわち、{Ni(II)+Fe(II)}:Fe(III)比率をもたらし、これはLDH構造に期待されるものではない。この事実は、高いFe(III)濃度での赤褐色から、Fe(II)が主たる陽イオンであるときの緑色に変化する固体の色によって観察することができる。これらの変化はアルファ層状水酸化物の場合のように、他の層状水酸化物の形成を伴い得ることに留意されたい。例えば、著者らが述べているように「一方、Fe2+‐NiFe‐LDHコロイドのゼータ電位[12]は、Fe2+/Fe比率の増加に伴って減少する(図2d)。これらの全結果は、Fe2+が我々の制御された合成によってNiFe‐LDHに定量的に導入されたことを示唆している。」。さらに、XANES測定は、XPSと一致して、+3よりも低い酸化状態を示す鉄(「電位(0V)を印加する前のFe2+‐NiFe‐LDH中のFe種は+2および+3の両方の混合原子価状態を示す」)を確認する(図2c)。全体として、この作業で得られた固体は、LDHと関連付けることができない。我々の結果と比較して、我々の方法はFe‐O‐Fe部分がFe(III)陽イオンによって専ら構成される室温で行う。
〔発明の概要〕
【0011】
第1の態様において、本発明は、請求項のセットで定義されるような層状複水酸化物に関する。
【0012】
第2の態様において、本発明は、第1の態様に係る層状複水酸化物の合成のためのプロセスに関する。
【0013】
第3の態様では、本発明は、第1の態様による層状複水酸化物の様々な使用に関する。
【0014】
〔図面の簡単な説明〕
図1。STEM‐EELS特性評価。図1Aは、室温で本発明に従って合成されたNiFe試料の高角度環状暗視野(HAADF)画像を示す。EELスペクトル定量化から得られたFeマップおよびNiマップを原子百分率で示す組成EELSマッピング。図1Bは、先行技術(G Abellan,E Coronado,C Marti-Gastaldo,A Ribera,JF Sanchez-Royo,Chemical Science, 2012, 3 (5), 1481-1485, https://doi.org/10.1039/C2SC01064J)に従って得られたNiFe‐LDHのHAADF画像を示す。EELスペクトル定量化から得られたFeマップおよびNiマップを原子百分率で示す組成EELSマッピング。
【0015】
図2図2Aは、NiCl、FeCl、NiCl+FeCl、並びに、専らNaClおよびGlyを含む対照試験の析出のpHプロファイルを示す。図2Bは、FeIIIの代わりにVIIIを有すること以外、図2Aと同じである。図2Cは、対照系、Ni系およびFe‐V系に加えて、1:1の比率のFeCl:VCl混合物のpHプロファイルを示す。図2Dは、本発明に係るワンポット室温合成アプローチの実施例を示す。アルカリ化反応速度論およびLDH成長機構も示す。
【0016】
図3図3Aは、水熱アプローチを用いて調製された従来品(NiFe‐HT)と比較して、室温で合成されたNiFe‐LDHの粉末X線回折(PXRD)を示す。図3Bは、NiFe(OH)Cl・mHOの3次元化学構造を示す。図3C~Fは、X線光電子分光法(XPS)に供したNiFe‐LDH試料を示す。図3G~Hは、低倍率(スケールバー:200nm)および高倍率(スケールバー:5nm)で、高角度環状暗視野(HAADF)画像および環状明視野(ABF)画像を同時に取得したものを示す。図3I~Jは、NiFeおよびNiFe‐HTの試料についてのEXAFS(吸収スペクトルからの拡張領域)振動のフーリエ変換(FT)を示す。
【0017】
図4。室温で合成された中間層陰イオンとして塩化物を含む、本発明に従って得られたNiFe‐LDHの磁気特性評価。(A)χ対Tプロット─挿入図は、温度の関数としての逆磁化率を表す─(B)磁場中冷却および零磁場冷却(FC/ZFC)プロット。(C)2Kでのヒステリシスループ。(D)1、10、110、332および997Hzでのχ’(同相)信号およびχ”(異相)信号の熱依存性。挿入図:4Kで記録したNiFe‐LDHのメスバウアースペクトル。実験点上に重ね合わせた線は、最寄りの隣り合うNiIIの数に違いがある複数のFeIII原子に対応する六重項(sextet)の和を表している。明確さのために、六重項は若干シフトして示されている。
【0018】
図5図5Aは、本発明に従って合成された塩化物を含有するNiVおよびNiFeV試料について得られたPXRDパターンを示す。NiFeV試料の場合、Ni‐K端(図5B)およびFe‐K端(図5C)で記録されたEXAFSは、それぞれ酸化状態2+および3+におけるNiおよびFeの存在を確認する。図5D~Fは、本発明に従って得られたNiVおよびNiFeV試料についてのXPS特性評価を示し、それぞれ、酸化状態2+、3+および4+におけるNi、FeおよびVの存在を確証する。
【0019】
図6。1MのKOH電解液中でのOER触媒としての本発明に従って得られたNiFe‐LDH試料の性能。(A)Ni発泡体集電体上で成長したNiFe‐LDHを用いたサイクルボルタンメトリーからのOER分極曲線。破線は、10および100mA・cm-2の電流密度を示す。挿入図は、異なる電流密度で測定された過電圧値を示す。明るい灰色の線/ドットは、対応するiR補正されたプロットを表す。(B)10mVずつ段階的に異なる過電圧で測定した30分クロノアンペロメトリーを用いて作成した線形ボルタンメトリー。挿入図は、図6Aに示されるCVから計算されたTafel勾配を示す。(C)ガラス状炭素回転円盤電極(GC‐RDE)を集電体として用いたCVからのOER分極曲線。挿入図は、GC‐RDEから計算されたTafel勾配を示す。明るい灰色の線/ドットは、対応するiR補正されたプロットを表す。(D)Ni発泡体およびガラス状炭素を集電体として使用するポテンシャルの関数としてのターンオーバー頻度の傾向。挿入図は、異なる走査速度で非ファラデー領域で実施されたCVから計算されたNiFe‐LDHの電気化学的表面積(ECSA)を示す。(E)300mVおよび10mA・cm-2でのそれぞれ6時間の定電位および定電流試験。
【0020】
図7。本発明のプロセスによって合成されたNiFe‐LDH×1、×25および×50の実験のpHプロファイル。挿入図:対数目盛での時間によるpHプロファイル。矢印は、析出の最終化を示す。
【0021】
図8。試料NiFe‐LDH×50にわたって記録されたSTEM‐EELS特性評価。O(上部パネル)、Ni(中央パネル)およびFe(下部パネル)についてのEELSマップ(多重線形最小二乗、MLLSによる)は、Ni/Fe種の強力なナノ偏析を示す。図をグレースケールに変換することにより、各写真にわたって示されるテキストは明確でなくなり、この理由により、このテキストは各図の上端で再定義されていることに留意されたい。
【0022】
図9。本発明の手順によるNiFe‐Seb‐LDHの合成段階の写真、1×~50×(左から右)。HSeb(A)、NiCl+FeCl+NaCl(B)、無機塩類の水溶液(C)、HSeb+NiCl+FeCl+NaCl混合のEtOH:HO(D)、室温で24h熟成した後の反応混合物(E)、各条件に付いて得られた洗浄および乾燥後のNiFe‐Seb‐LDH固体(F)。すべての事例において、25mLを破線で示す。
【0023】
図10。尿素(MgAl‐尿素)の加水分解によって水熱的に得られた試料と比べて、我々の合成法(MgAl‐エポキシド)によって得られたMgAl‐LDHの27Al‐SSNMRスペクトル(9.4T、MAS周波数20kHz)。
【0024】
図11。RT(本発明の手順)およびHTによって合成された試料NiFeについて記録された、Ni‐K端(A)およびFe‐K端(B)の正規化XANESスペクトル。垂直な破線は、Ni(II)およびFe(III)基準の吸収端位置を示す。
【0025】
図12。RT(本発明の手順)およびHTによって合成された試料NiFeについて記録されたNi‐K端(A)およびFe‐K端(B)におけるEXAFS振動(位相補正なし)のフーリエ変換。線はフィッティングに対応している。
【0026】
図13。4Kで採取したNiFe試料のメスバウアースペクトル。実験点上の線は異なる第2配位圏を有するFe原子に対応する六重項の合計である。
【0027】
図14。RT(本発明の手順)およびHTによって合成された試料NiFeVについて記録されたNi‐K端(A)およびFe‐K端(B)の正規化XANESスペクトル。垂直な破線は、Ni(II)およびFe(III)基準の吸収端位置を示す。
【0028】
図15。RT(本発明の手順)およびHTによって合成された試料NiFeVについて記録されたNi‐K端(A)およびFe‐K端(B)におけるEXAFS振動(位相補正なし)のフーリエ変換。線はフィッティングに対応している。
【0029】
図16。4Kで採取したNiFeV試料のメスバウアースペクトル。実験点上の線は異なる第2配位圏を有するFe原子に対応する六重項の合計である。
【0030】
図17。室温で我々の合成法により得たLiAl‐LDH。PXRDパターンは、予期された層状構造、003反射および006反射、dBS=8.6Åを示している。花のような構造の発生は、TEM検査(挿入図)によって観察される。
【0031】
図18。室温で我々の合成アプローチにより得られたMgAl‐LDH。PXRDパターンはdBS=8.2Åの層状構造を強調し、FTIRスペクトル(B)は炭酸の陰イオンが存在しないことを確認し、MgAl(Cl)‐LDH構造が得られることを確認した。TEM検査は、小板(platelet)形態の発生を示す(A‐挿入図)。
【0032】
図19。室温で我々の合成アプローチにより得られたCoAl‐LDHのサイズ制御。
【0033】
図20。室温でエポキシド経路を介して得られたCoAl‐LDH。PXRDパターンはCoAl(Cl)‐LDH構造の獲得を確認した。
【0034】
図21。室温で我々の合成アプローチにより得られたZnAl‐LDH。PXRDパターンは、FTIRスペクトル(B)および熱重量分析、TGA(C)と一致して、中間層陰イオンとして塩化物を含むLDH構造の発生を確認する。TEM検査は、小板の発生を強調する(A‐挿入図)。
【0035】
図22。室温で我々の合成アプローチにより得られたCoNiFe‐LDH。pH‐反応速度論プロフィール(A)とPXRDパターン(B)により、中間層陰イオンとして塩化物を含む三元構造が得られることを確認した。
【0036】
図23。CoAl(上部パネル)、NiAl(中央パネル)およびZnAl(下部パネル)について室温で我々の合成アプローチによって得られたハイブリッドMAl‐LDH。PXRDパターンおよびFTIRスペクトルは、オクタン酸(左)およびスベリン酸(右)の陰イオンを含有するMAl‐LDH構造の取得を確認する。
〔本発明の詳細な説明〕
【0037】
第1の態様において本発明は、少なくとも1つの二価陽イオンAIIまたはLiと、VIII、CoIII、CrIII、MnIII、FeIII、GaIIIおよびランタニドからなる群から選択される少なくとも1つの三価陽イオンBIIIとを含むかまたはそれらから成る層状複水酸化物に関し、前記層状複水酸化物は、次の一般式を示すか:
【数7】

あるいは、前記少なくとも1つの二価陽イオンAIIの代わりにLiを使用する場合には、次式を示し:
【数8】

(式中、Xは陰イオンであり、yは0より高いが1より低く、nは水分子の数であり、典型的には0~3である)、前記層状複水酸化物は、BIIIクラスタの存在、および拡張X線吸収微細構造分光法(EXAFS)によって測定される3~4Åの範囲の単一のピークの存在を特徴とする。先行技術に開示されたLDHにおいて、この第3のピークの欠如は物質の均一な分布(すなわち、B(III)クラスタの欠如)を表し、これは第2の隣接するBIII‐OおよびBIII‐OH‐BIIIペアの存在に関連し、顕著なBIIIクラスタ化をもたらす。本発明の層状複水酸化物は、STEM‐EELS(電子エネルギー損失分光法(EELS)と組み合わされた走査透過電子顕微鏡法(STEM))によって示されるように、その全体にわたって陽イオンの不均一な分布を有する。BIIIクラスタ(BIII‐O‐BIII)の存在は、室温でのエポキシドの加水分解によるアルカリ化法に基づく合成手順によることにも留意されたい。
【0038】
本明細書及び特許請求の範囲において、「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「含む(containing)」及び「有する(having)」という用語は、開放された用語であり、「含む(includes)」「含んでいる(including)」などを意味する。一方、「から成る(consisits of)」又は「から成る(consisting of)」という用語はこれらの用語の前(after)に言及される要素のみを提示し、これらの用語の前に言及されないその他は除外される。
【0039】
別段の説明がない限り、本書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。単数形の用語「a」、「an」、「one」および「the」は文脈上明らかにそうではないと示されない限り、複数の指示対象を含む。同様に、用語「または」は文脈が明らかにそうではないと示されない限り、「および」を含むことが意図される。
【0040】
式中のXは、好ましくは有機陰イオンまたは無機陰イオンである。好ましい実施形態において、前記Xは無機陰イオンである。別の実施形態では、前記陰イオンが負電荷を有する高分子である。別の実施形態において、式中の陰イオンは求核剤、例えば、セバシン酸ではない。
【0041】
Fe含有LDHの場合、以下も示される:
低温(4K)で透過モードで収集されたメスバウアー分光測定は、四重極分裂および対応する磁気超微細場の分析が従来のNiFe‐LDHと比較して、より高い割合(>60%)のFe‐OH‐Feペアを生じることを示す(G.AbellanらInorg. Chem. 2013, 52, 10147-10157, https://doi.org/10.1021/ic401576q)。
【0042】
さらに、磁性LDHの場合には、以下も示される:
低温(2~50K)および1~10000Hzで振動する周波数での動的AC磁化率測定は、同相および異相信号の両方において、0.03より高いMydoshパラメータによって決定できる明確な周波数依存性を示す。このスピンガラスのような挙動は、陽イオンクラスタ化の直接的な結果である。
【0043】
前記「その全体にわたって陽イオンの不均一な分布」はまた、STEM‐EELS(電子エネルギー損失分光法(EELS)と組み合わされた走査透過電子顕微鏡法(STEM))技術を用いることによって観察されるBIIIのクラスタ化(相分離)によって示される。図1Bは、従来技術(G.Abellan、E Coronado、C Marti-Gastaldo、A Ribera、JF Sanchez-Royo、Chemical Science, 2012, 3 (5), 1481-1485, https://doi.org/10.1039/C2SC01064J)に従って得られたNiベース、FeベースのLDHの相を示し、図1Aは、顕著なクラスタ化を示す、室温で本発明により合成されたNiFe試料を示す(左列)。図1は両方の試料についての高角度環状暗視野(HAADF)画像を示し(上部パネル)、本発明の処理によって得られたNiFe試料の場合(左パネル)、より小さく、より欠陥のある材料が観察される。組成EELSマッピング(多重線形最小二乗法、MLLSによる)は、EELスペクトル定量化から得られたFe(中央パネル)およびNi(下部パネル)マップを原子百分率で示す。本発明のプロセスによって得られた試料(左側パネル)の場合では、全ての材料に沿った上述の陽イオンの不均一な分布(クラスタ化)が表面(15×15nmより大きい)で観察される。室温で得られた試料のこの際立った特徴とは異なり、先行技術(J Romero,M Varela,M Assebban、V estreicher、A Guedeja-Marrоn,J L Jorda、G Abellan、E Coronado、Chemical Science, 2020, 11 (29), 7626-7633, https://doi.org/10.1039/D0SC00697A)に従って合成されたNiFe‐LDHは、より大きいスケール(20×20nmより大きい)での陽イオンの均一な分布を示す。
【0044】
好ましい実施形態において、前記二価陽イオンAIIは、MgII、CaII、FeII、CoII、NiII、CuII、ZnIIおよびCdIIから成る群から選択される。
【0045】
別の好ましい実施形態において、前記層状複水酸化物は、四価金属陽イオンを、好ましくはTiIVをさらに含む。チタンを例として用いて得られた式は以下のとおりである。
【数9】

さらなる実施形態では、前記少なくとも1つの二価陽イオンAIIが1つの二価陽イオンAIIである。さらに別の実施形態では、前記少なくとも1つの二価陽イオンAIIが2つの二価陽イオンAIIである。さらに別の実施形態では、前記少なくとも1つの二価陽イオンAIIが3つの二価陽イオンAIIである。
【0046】
さらなる実施形態において、前記少なくとも1つの三価陽イオンBIIIは、1つの三価陽イオンBIIIである。さらに別の実施形態では、前記少なくとも1つの三価陽イオンBIIIが2つの三価陽イオンBIIIである。さらに別の実施形態では、前記少なくとも1つの三価陽イオンBIIIが3つの三価陽イオンBIIIである。
【0047】
さらなる実施形態において、1つの二価陽イオンAIIまたは2つの二価陽イオンAIIまたは3つの二価陽イオンAIIは、1つの三価陽イオンBIIIまたは2つの三価陽イオンBIIIまたは3つの三価陽イオンBIIIと一般式において組み合わされる。例えば、2つの二価陽イオンAIIは、2つの三価陽イオンBIIIと組み合わされる。
【0048】
さらに好ましい実施形態において、前記層状複水酸化物は、1つの二価陽イオンAII および2つの三価陽イオンBIII(BおよびB’)を含む。結果として得られる式は以下のとおりである。
【数10】

第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様に係る層状複水酸化物の合成プロセスに関し、少なくとも1つの二価陽イオンAIIまたは代替的にLiと、VIII、CoIII、CrIII、MnIII、FeIII、GaIIIおよびランタニドからなる群から選択される少なくとも1つの三価陽イオンBIIIとを含む溶液中のエポキシドと求核剤との間のワンポット反応を含み、ここで前記反応は2.5未満の初期pHで行われ、反応の開始時に全ての陽イオンの溶解度を保証する。本発明者らは驚くべきことに、2.5未満のpH値が、最終生成物に影響する不溶性不純物の形成を回避するための重要な点であることを見出した。同時に、例えば室温でより穏やかな状態で作業することによって、提案されたアルカリ化プロセスは、純粋なLDHを専らに得ることを保証する。
【0049】
第2の態様に係る好ましい実施形態では、溶液中の二価陽イオンAIIは、MgII、CaII、FeII、CoII、NiII、CuII、ZnIIおよびCdIIから成る群から選択される。
【0050】
第2の態様に係る別の好ましい実施形態では、前記層状複水酸化物が四価金属陽イオンを、好ましくはTiIVをさらに含む。上記で得られた式を参照されたい。
【0051】
第2の態様に係るさらに好ましい実施形態において、前記層状複水酸化物は、1つの二価陽イオンAIIおよび2つの三価陽イオンBIII(BおよびB’)を含む。上記で得られた式を参照されたい。
【0052】
前記ワンポット反応で使用されるエポキシドは、グリシドール、エチレン酸化物、プロピレン酸化物、およびトリメチレン酸化物から成る群から選択される。好ましくは、前記エポキシドはグリシドールである。
【0053】
前記ワンポット反応で使用される求核剤は、オキソ陰イオン、ハロゲン化物、アジド、イソシアネート、チオシアネート、アミド、アルキルサルフェート、アルキルホスホネート、カルボン酸およびフェノキシドから成る群から選択される。好ましくは前記求核剤が求核性無機陰イオンであり、より好ましくはCl、BrまたはIである。最も好ましくは、前記求核性無機陰イオンはClである。通常、前記陰イオンのナトリウム塩およびカリウム塩が使用される。
【0054】
前記反応が起こる溶液は、溶媒として水を含む溶液、少なくとも1つの有機溶媒を含む溶液、または水と少なくとも1つの有機溶媒との混合物を含む溶液である。
【0055】
前記有機溶媒は、アルコール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、エチレングリコールおよびグリセリンから成る群から選択される。
【0056】
前記溶液が水溶液であるとき、5℃~95℃の温度で前記反応を行うことができる。
【0057】
前記溶液が例えば、水とエチレングリコールとの、または水とグリセリンとの混合物である場合、前記反応は、-45℃~5℃の温度で行われる。
【0058】
反応条件は、非常に融通が利き、そのため、前記反応を15秒~720時間で行わうことができ、全ての試薬(陽イオン、求核剤およびエポキシド)の使用濃度は、0.1~10mMの低めの値から5,000~7,500mMの高めの値までの範囲であってよい。
【0059】
第3の態様において、本発明はまた、本発明の第1の態様に係る層状複水酸化物の使用に関し、電極触媒作用のための、単独または組み合わせた全ての可能な実施形態を含む。例えば、LDHは、中性および塩基性媒体の両方における酸素発生反応(OER)および水素発生反応(HER)において重要でありうる。
【0060】
本発明はまた、本発明の第一の態様に係る層状複水酸化物の使用に関し、エネルギー貯蔵のための、例えば、スーパーキャパシタまたは電池としての、単独の、または組み合わせた全ての可能な実施形態を含む。この意味で、LDHはリチウムイオン電池またはナトリウムイオン電池と同様に、基本媒体の下で動作する超容量デバイスの開発において重要でありうる。
【0061】
本発明はまた、本発明の第一の態様に係る層状複水酸化物の使用に関し、食品包装におけるポリマー膜のためのバリア添加剤としての、単独または組み合わされた全ての可能な実施形態を含む。具体的には、本来のLDHおよびハイブリッドLDHが酸素および水の両方に対する保護バリアとして作用し得る。
【0062】
本発明はまた、本発明の第1の態様に係る層状複水酸化物の使用に関し、吸収剤または陰イオン交換体としての、単独の、または組み合わされた全ての可能な実施形態を含む。LDHは、汚染物質の除去(例えば、CrVIおよびAs)として使用することができる。
【0063】
本発明はまた、本発明の第1の態様に係る層状複水酸化物の使用に関し、複合材料を得るための前駆体化合物としての、単独の、または組み合わせた全ての可能な実施形態を含む。ハイブリッドLDHは、炭素マトリックスと、金属酸化物および金属ナノ粒子のいずれかとからなるナノ複合材料を熱的に得るための前駆体として使用することができる。
【0064】
製品またはプロセスについて本明細書に開示される実施形態のいずれも、文脈が別段の指定をしない限り、単独で、または本明細書に開示される他のいずれかの実施形態と組み合わせて、取ることができることに留意されたい。言い換えれば、例えば、定義された特徴の好ましい選択肢は、別の特徴のより好ましいまたはよりあまり好ましくない選択肢と組み合わせることができる。
【0065】
以下に記載されるのは、本発明の例示のためのいくつかの実施例であり、いずれにしても本発明を限定するものではない。
【0066】
[実施例]
<材料及び方法>
<化学物質。>塩化ニッケル六水和物(NiCl・6HO)、塩化鉄六水和物(FeCl・6HO)、塩化バナジウム(VCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、セバシン酸((CH(COOH))、グリシドール(Gly)、水酸化カリウム(KOH)、カーボンブラック(CB)、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をSigma‐Aldrichから購入した。エタノール(EtOH)を、Honeywellから購入した。全ての化学物質は、受け取ったまま使用した。Milli‐Q水をミリポアMilli‐Q装置から得た。
【0067】
<本発明に係る一般的合成。>典型的に、室温で24~48時間のエージングによって析出を行った。陽イオン、塩化物およびグリシドールの濃度を0.5~3000mMで評価した。固形物をろ過により得、HO:EtOHで3回および最後にEtOHで洗浄した。試料を室温で乾燥させ、さらなる特性評価のためにデシケーター中に保持した。
【0068】
NiFe‐LDH。塩化物を含むNiFe‐LDHの典型的合成は、[NiII]=10mM、[FeIII]=5mM、[Cl]=500mMおよび[Gly]=200mMを含む水溶液中において室温で48時間エージングする必要がある。
【0069】
NiV‐LDH。塩化物を含むNiV‐LDHの典型的合成は、[NiII]=10mM、[VIII]=5mM、[Cl]=500mMおよび[Gly]=200mMを含む水溶液中において室温で48時間エージングする必要がある。
【0070】
NiFeV‐LDH。塩化物を含むNiFeV‐LDHの典型的合成は、[NiII]=10mM、[FeIII]=2.5mM、[VIII]=2.5mM、[Cl]=500mMおよび[Gly]=200mMを含む水溶液中において室温で48時間エージングする必要がある。
【0071】
NiFe‐Seb‐LDH。セバシン酸を含むNiFe‐LDH(NiFe‐Seb)の典型的な合成は、[NiII]=10mM、[FeIII]=5mM、[HSeb]=10mM、[Cl]=200mMおよび[Gly]=500mMを含む、水:エタノール=1:1の溶液中において室温で48時間エージングする必要がある。
【0072】
<化学的、構造的、および物理的特性評価。>
【0073】
粉末X線回折(PX‐RD)パターンを、毛細管プラットフォームを有するPANalytical EmpyreanX線プラットフォームと、2θ範囲2~70°における銅放射(Cu Kα=1.54178Å)とを採用して得た。
【0074】
減衰全反射‐フーリエ変換赤外分光法(ATR‐FTIR)スペクトルを、KBrペレットの非存在下で4000-400cm-1範囲でBruker α II FTIR分光計で収集した。
【0075】
固体試料のUV/Vis吸収スペクトルを、Jasco V‐670分析計を用いて反射モードで記録した。
【0076】
電界放出走査電子顕微鏡(FESEM)およびエネルギー分散X線(EDS)分光研究を、20kVの加速電圧で日立S‐4800顕微鏡で行った。
【0077】
STEM‐EELS観察を、80および200kVで動作し、球面収差補正器、冷陰極電界放出型銃およびGatan Quantum EEL分析計を備えたJEOL ARM200cFで行った。対物レンズ磁極片間隙内の磁界の強度は1T程度である。EELS組成マップは、多重線形最小二乗(MLLS)フィッティングを介してEELスペクトル画像を基準スペクトルにフィッティングすることによって得られた。
【0078】
全試料の熱重量分析(TGA)は、Mettler Toledo TGA/DSC2装置で、30-800℃の温度範囲内で10°C・min-1走査速度および気流100mL・min-1で行った。
【0079】
炭素、窒素、水素、および硫黄含有量は、LECO CHNS‐932を使用する微量分析手順によって決定した。
【0080】
X線光電子分光法(X線光電子分光法)を、サーモVGサイエンティフィック製の超高真空装置ESCALAB210(基圧1.0×10-10ミリバール)で行った。光電子を、Al Kα線(1486.6eV)を用いて励起した。全てのスペクトルは、フェルミ準位を参照した。
【0081】
X線吸収分光法(XAS)測定を、ALBAシンクロトロン施設のCLAESSビームラインでのX線吸収を用いて行った。近領域(XANES)と拡張領域(EXAFS)とでのFeおよびNiのK端スペクトルを、透過モードおよび/または蛍光モードで、室温で測定した。イソプロピルアルコール中試料の懸濁液をPVDFミリポア膜(有効径32mm)を通して濾過し、試料の酸化を防止するためにKapton(登録商標)テープ(厚さ50μm)で密封した。Si(400)単結晶を用いて、Mo陽極ターゲットからフィラメント中60mAの電流と、管中14kVの高電圧とを用いて単色入射ビームを得た。入射および透過X線の強度を、それぞれアルゴン充填比例計数管およびシンチレーション計数管を用いて測定した。EXAFSスペクトルを、Fe‐K端については6980~7800eVで、Ni‐K端については8230~8950eVの間で収集した。入射光子エネルギーは、それぞれ金属FeおよびNiの参照箔からのFe‐K端(7112eV)およびNi‐K端(8333eV)の第1変曲点を用いて較正した。各試料の10個のスペクトルを、それぞれ6分から2時間の範囲の曝露時間で取得し、後に平均化した。XANESデータ処理を、前端バックグラウンドを減算し、続いて、ATHENA AUTOBKバックグラウンド除去アルゴリズムを使用してスペクトルの後端領域にフィッティングされた二次多項式の外挿によって正規化することによって行った。(B.Ravel、M.Newville、J.Synchrotron Radiat.2005,12、537e41,https://doi.org/10.1107/S0909049505012719)EXAFSの定量的解析を、日射EXAFS振動をモデル化し、フィッティングすることによって行った。EXAFS振動χ(k)を、Athenaプログラムを用いて標準的な手順で実験データから抽出した。k加重χ(k)は、より高いkでの振動を増強するためにフーリエ変換された。フーリエ変換をハニングフィルタリング機能を用いて計算した。EXAFSモデリングを、IFFEFITパッケージの一部であるARTEMISプログラムを用いて行った。(M.Newville、J.Synchrotron Radiat.2001,8,322e4https://doi.org/10.1107/S0909049500016964)受動低減係数S 値の0.80および0.87を、それぞれFeおよびNi標準試料へのフィッティングから得た。
【0082】
磁気特性評価。磁気データを、Quantum Design超伝導量子干渉デバイス(SQUID)MPMS‐XL‐5を用いてバルク材料上で収集した。試料の磁化率を、Pascal定数表と試料ホルダとから推定されるそれらの原子成分の反磁性寄与を考慮して補正した。dcデータを、2~300Kの温度範囲内で100または1000Oeの外部印加磁場下で記録した。acデータを、997、333、110、10、および1Hzで3.95Oeの印加磁場下で収集した。
【0083】
メスバウアーの特性評価。スペクトルを、従来の定加速度分析計とRhマトリクス中の25mCi57Co源とを用いて透過型で収集した。速度スケールをα‐Fe箔を用いて較正した。粉末試料を、吸収剤を調製するために、パースペックスホルダーに詰めた。異性体シフトは、室温で金属α‐Feに対して与えられる。4Kでのスペクトルを、液体He中に浸漬された試料を有するバス低温保持装置を用いて収集した。スペクトルを、非線形最小二乗法を用いてローレンツ線にフィッティングした。四重極分裂の分布をヒストグラム法に従ってフィッティングした。
【0084】
Bruker400分析計で20kHzの回転、10秒のリサイクリング遅延、および定量的な10°のフリップ角を用いて、9.4Tで27Al‐SSNMRスペクトルを得た。測定を、40mgの試料を用いて室温で行った。化学シフトは、27Alについて1MのAlCl3(0.0ppm)を基準とした。
【0085】
<電気化学的特性評価。>
【0086】
Ni発泡体集電体を用いた電気化学実験。電気化学実験を、Gamry Instruments Framework 7.8.2電気化学ソフトウェアを使用するパーソナルコンピュータに接続されたGamry 1010Eポテンショスタット/ガルバノスタットを使用して行った。粉末材料をアセチレンブラック(カーボンブラック)およびPTFEと、エタノール中80:10:10の質量比で混合し、Ni発泡体電極上に堆積させた。調製したままのNi発泡体電極を80℃で一晩乾燥し、1000kPaでプレスした。それぞれの作用電極は、約0.25mg・cm-2の電気活性物質を含み、約0.50cm(0.25+0.25cm)の幾何学的表面積を有した。LDHがNi発泡体表面上に直接成長した電極の場合、それらは同じ幾何学的面積を有する。対向電極として4cmの表面積を有するステンレス鋼板を備え、参照電極としてメトロームAg/AgCl(3MのKCl)を備えた典型的な3電極実験セルを、作用電極の電気化学的特性評価のために使用した。全ての測定は、1MのKOH水溶液を用いて、10分間の窒素バブリングの後に行った。異なる過電圧で30分間、クロノアンペロメトリー(CA)を用いてサイクリックボルタンメトリー(CV)と線形スイープボルタンメトリー(LSV)とを測定し、電気化学的性質を研究した。さらに、一定の過電圧でのクロノアンペロメトリー研究および一定の電流密度でのクロノポテンシオメトリー(CP)研究を行った。本稿で報告される全ての電圧は、E(OP)=E(NHE)-0.401V=E (Ag/AgCl)+0.197V-0.401Vを用いて、過電圧(OP)スケールに変換し、および可逆水素電極(RHE)に対する電圧は、E(RHE)=E(NHE)+0.059・pH=E (Ag/AgCl)+0.197V+0.059・14Vを用いた。
【0087】
ターンオーバー頻度(TOF)値は、次式から計算した:
【数11】

ここで、jは0.3Vの所与の過電位における電流密度であり、Aは作用電極の表面積であり、Fはファラデー定数であり、mは電極上に載せられた金属(すなわち、NiおよびFe)のモル数である。
【0088】
電気化学的表面積(ECSA)を、CVの走査速度依存性から二重層静電容量に関連する電流を測定することによって得た。CVに使用した電位範囲は、Ag/AgCl(3MのKCl)に対して0.2-0.3Vであった。走査速度は5,10,20,50,および100mVs-1であった。走査速度と対照して、Ag/AgCl(3MのKCl)に対して0.25Vでのj-j/2(陽極対陰極電流)をプロットすることによって、二重層静電容量を計算した。
【0089】
0.3Vの過電圧で0.01~1×10Hzの周波数範囲における10mVの振幅のの交流電流を印加し、定電位電気化学インピーダンススペクトロスコピー(PEIS)測定を行った。測定は、0.3Vの過電圧で10分の平衡化時間後に記録した。PEISデータはGamry Echem Analyst v.7.07ソフトウェアを用いて分析し、フィッティングした。
【0090】
<ガラス状炭素集電体を用いた電気化学的実験。>
【0091】
電気化学的実験は、NOVA2.1電気化学ソフトウェアを使用するパーソナルコンピュータに接続されたAutolabポテンショスタット(Autolab 128Nポテンショスタット/ガルバノスタット)を使用して行った。対向電極として4cmを有するステンレス鋼板、参照電極としてメトロームAg/AgCl(3MのKCl)、および作用電極としての1600rpmの回転円盤電極(a rotating disk electrode)(オートラボRDE‐2)に接続されたガラス状炭素電極を備えた典型的な3電極セル。5mgのLDH粉末および2.5mgのアセチレンブラック(カーボンブラック)を用いて電極を調製し、次いで、1.25mLの1:1(v/v)EtOH/HO中に25μLの5%ナフィオン溶液と共に分散させ、20分間超音波処理した。次いで、この分散液3μLを、予め研磨した(1.0、0.3、および0.05μmのアルミナ粉末を用いて連続的に)3mm径のRDE上に滴下し、室温で30分間乾燥させた。
【0092】
報告された全ての電位および測定値は、Ni発泡体集電体について前述したのと同じ方法で計算された。
【0093】
(アルカリ化析出試験)
<NiFe‐LDH>
図2Aは、NiCl、FeCl、NiCl+FeCl、および専らNaClとGlyとを含む対照試験の析出についてpHプロファイルを示している。Glyを、NaClを含む溶液に約2の初期pHで添加すると、塩化物求核剤はエポキシド開環を駆動し、pHを増加させる正味のヒドロキシル放出をもたらす。この室温均一アルカン化プロセスは式(1)に表されるように、塩化物およびGly濃度の両方を変化させることによって調節することができる:
【数12】

NiClおよび/またはFeClを含む水溶液を用いて同様の実験を実施すると、それぞれの陽イオンに固有の析出機構について警告する明確な差異がpHプロファイルに示される。
【0094】
NiClの析出は、pH=8.0付近のオーバーシュート、続いてpH=7.9を中心とする停滞状態の存在によって証明される。全てのNi陽イオンが析出するとすぐに、pHは10より高い値に上昇し、析出プロセスの完了を保証する。FeClの場合、Glyを加えると直ちに反応が開始するので、pHはpH=2.6付近のオーバーシュートまで上昇し、続いてpH=2.4付近を中心とする停滞状態が起こり、これはFe陽イオンの析出に関連する。NiClの場合と同様に、析出の完了後、pH増加は10より高いpH値に達し、陽イオンの定量的析出を保証する。両方の析出プロファイル間の差異は、関与する陽イオン、NiIIおよびFeIIIの酸性および溶解度定数の観点から理解することができる。
【数13】
【0095】
それにもかかわらず、両方の陽イオン(すなわち、NiCl+FeCl)を含む溶液の場合、pHプロファイルがかなり明確な2つの段階を示す。具体的には、最初の段階は裸のFeClと同じ経路に従い、Ni陽イオンが水酸化鉄の析出に影響を与えないことを示唆しているが、Ni陽イオンの析出に対応する2番目の停滞状態は裸のNiClよりも低いpH(ほぼ1単位低いpH)で起こる。この新しい状況はNiの析出がすでに析出したFe(OH)ナノ粒子(NP)上に起こり、成長中のLDH相のより大きな安定性を確認し、純粋なNiFe‐LDH相を得るための最初の洞察を提供することを示唆する。
【0096】
興味深いことに、LDH相の析出はその構成MIIよりも低いpHで起こり、さらに熱力学的安定性は、M(OH)とM(OH)相との両方の組合せとして推定することができる。一般的に:
【数14】

<NiV‐LDH。>
【0097】
Ni+V系の析出に関して、図2Bに示す同様の実験セットを実施した。VCl系については、3.7~5.1のpH区間で析出が起こり、pKsp値の34と一致することを観察することができる。両方の陽イオン(Ni+V)の場合、pHプロファイルは、V経路に従うことによって始まる。しかし、pH=7.5付近でのオーバーシュートと、続くpH=7.3での停滞状態が、裸NiIIより約0.5単位低いNiV‐LDH系の析出を確認する。この挙動はNiFe系について以前に観察された挙動と類似しており、両方の三価金属が2段階析出シナリオに従うことを示唆している。
【0098】
<三元NiFeV‐LDH。>
【0099】
図2Cは、FeCl:VClの1:1比率混合物のpHプロファイルを示す。裸のFe系とV系との両方と異なり、Fe+Vの析出は2つのオーバーシュート‐停滞状態シーケンスを示し、それぞれ、第1シーケンスは4.0および4.1で、第2シーケンスは6.0および5.9である。複数の三価陽イオンによって構成された二元系と裸の陽イオンそれぞれとの間の差異は、三価陽イオンの存在が他の陽イオンの析出に影響を及ぼす新しい析出経路について警告する(図2C)。
【0100】
したがって、NiClが存在する三元系の場合、析出プロファイルは、Fe+V系で既に観察されたのと同じ経路に従う(図2C)。さらに、約pH=7.3において、新しい停滞状態は、NiFeV‐LDH系の析出が裸のNiIIよりも低いpHで起こることを目立って示唆する。これらの結果は、2つの三価陽イオンを含有する三元LDHに関する、少なくとも3つの析出段階を有するが、依然として方法論的にワンポット手順の内である、完全に異なる成長機構を実証する。
【0101】
(構造解析)
<NiFe‐LDH。>
【0102】
水熱アプローチを用いて調製された従来品(NiFe‐HT)と比較して、室温で合成されたNiFe‐LDHの構造特性評価を以下に提供する:
室温で合成された我々のNiFe試料は、(103)および(110)反射に関連する2つの非常に広い信号の存在下で非常に低い結晶化度を示し(図3A参照)、pHプロファイルと一致するLDH相の形成を確認した。注目すべきことに、主中間層反射、(003)ピークは実質的に存在せず、これは単層/少数層状構造からなる極めて薄い結晶の特徴である。通常、単層/少数層のLDHを得るにはホルムアミドまたはアセトンのような有機溶媒の使用が必要であり、本明細書で我々は水溶液を専ら使用することに留意することが重要である。表1は、構造パラメータおよびScherrer方程式から得られた結晶子サイズをまとめたものである。全ての場合において、5nm未満の結晶ドメインが得られる。
【0103】
【表1】

化学種形成(酸化状態)および陽イオンの定量的取り込みに関するさらなる情報を得るために、X線光電子分光法(XPS)を実施した(図3C~F参照)。酸化状態2+であるNiの存在は、855.8eV(Ni‐2p3/2)と873.3eV(Ni‐2p1/2)とでの主ピークと、それぞれ861.5eVと879.4eVとの付随ピークによって支持されている。同時に、Fe‐2p3/2信号とFe‐2p1/2信号とにそれぞれ起因する711.8eVと723.6eVとの2つのピークにより、酸化状態3+であるFeを確認することができた。これらの広く、十分に定義されていない信号は、低い結晶化度を有するナノメートル試料について予想されるように、高度に欠陥のある環境におけるFe陽イオンと関連し得る。
【0104】
さらに、Clの存在は、Cl‐2p3/2およびCl‐2p1/2それぞれに起因する、約199.4eVに肩を有する、197.4eV付近の主ピークによって確認される。さらに、XPS測定はエネルギー分散X線分光法(EDS)によって確認されるように、固相への陽イオン(Ni:Fe比2:1)および塩化物(Cl:Fe比1:1)の定量的取り込みを確認する。
【0105】
図1Aは本発明のプロセスによって得られるNiFe‐LDHの典型的な形態を示し、原子分解能収差補正走査透過電子顕微鏡法(STEM)および80kVでの電子エネルギー損失分光法(EELS)によって測定されたものである。同時に、調製したままのNiFe‐LDH試料(図1Aおよび5A)の、取得した低倍率環状明視野(ABF)画像および高角度環状明視野(HAADF)画像は、不規則な形状のミクロンサイズのフレーク(flake)であり、無秩序な材料の凝集体に似ている。加えて、フレークは、ナノ結晶の凝集体から作製される。水熱的に得られた試料(図1B参照)とは全く対照的に、結晶秩序は、10nm未満のサイズのナノ結晶内で観察される。EELS測定から得た組成マップはナノメートルスケール(<10×10nm)での重大なNi/Fe偏析を明らかにし、陽イオン性クラスタ化を示した。言及する価値があることに、水熱プロセスで得られた試料は、25×25nmより大きい表面でも陽イオン(NiおよびFe)の均一な分布を示す。さらに、図3G~Hは低倍率(スケールバー:200nm)および高倍率(スケールバー:5nm)での高角度環状暗視野(HAADF)画像および環状明視野(ABF)画像の両方を示し、10nm未満のナノ結晶が観察される。
【0106】
この顕著な陽イオンクラスタ化および層を横切るそれらの化学的同一性のさらなる証拠を提供するために、X線吸収分光法(XAS)を実施した。硬X線吸収端近傍分光法(XANES)測定により、XPS結果とよく一致して(図3I~J参照)予想通りNi(II)とFe(III)との存在が確認され、予想される酸化状態(Ni2+、Fe3+およびCl)と、陽イオン(Ni:Fe比2:1)および陰イオン(Cl:Fe比1:1)の定量的取り込みとが確認された。さらに、要素特異的構造洞察を提供するために、吸収スペクトル(EXAFS)からの拡張領域を分析した。図3I~JはEXAFS振動のフーリエ変換(FT)を示しており、このFTは、吸収原子の原子間距離の擬似半径方向分布として解釈することができる。Ni‐K端の場合、曲線は約1.6Åおよび2.7Å(位相補正なし)に2つの顕著なピークを示し、それぞれ第1の隣接原子(O原子)と第2の隣接原子(Ni原子またはFe原子)からの寄与に対応する。両寄与の位置は全ての試料で実質的に同じであり、Ni(OH)格子中のFeの置換ドーピングによるNi環境における小さな影響を示唆した。しかしながら、Fe‐K端で実施されたEXAFS測定の場合、1.5Åおよび2.6Åを中心とする2つの予想される主な寄与に加えて、第3の信号が明確に観察され得る。約3.2Åのこの第三のピークは、Fe(OH)に特徴的であり、主にこの相のFe‐OペアとFe‐OH‐Feペアとに隣接する秒数と関連している。著しく対照的に、最先端のNiFe‐HTは、この第3のピークを示さない。表2は、配位数(N)、原子間距離(R)および構造的乱雑さ(Debye‐Waller(デバイワラー)因子、DW)などの得られた構造パラメータを纏めたものである。Ni原子の場合には有意な差はほとんど観察されないが、本発明の手順によって得られた試料は、水熱的に得られた試料と比較して、Fe‐OおよびFe‐OH‐Fe/Niのより短い距離を示し、Fe中心はDW因子の観点からより歪んでいる。したがって、これらの結果は、この高度のFeクラスタ化が本発明の手順の重要な態様である合成方法に専ら依存することを示唆し、高度に欠陥のあるクラスタ化されたFeベースLDHを得るための単純なアプローチを証明する。
【0107】
【表2】

これらの高度にクラスタ化されたFeベースLDHの化学的性質に関するより多くの情報を提供するために、徹底的な磁気特性評価を行った。典型的には、水熱合成されたFeベースLDHは、Feスピネルなどの外因性磁性不純物を含有することができ、これは磁気的および電極触媒的挙動の両方を改変し、高温で常磁性挙動をもたらす。本発明の手順によって得られた試料において、高温での常磁性挙動の欠如はスピネル不純物の欠如(χ・T対Tプロット)を示し、FeOの代わりにFeクラスタのヒドロキシル化された性質を確認することができる(図4A参照)。さらに、水熱処理によって得られた最先端のNiFe‐LDHの場合のように、約12Kの自発磁化温度はNiFe‐LDH相の発生を確認する。
【0108】
低温動的交流磁化率測定は、Fe‐OH‐Fe対を有する可能性を調べるのに有用である(図4D参照)。この前面に沿って、同相磁化率と逆相磁化率との両方が大きな周波数依存性を示し、これは部分的に、層を横切る反強磁性(AF)Fe‐OH‐Feペアの存在に関連する。実際、LDH相(Ni:Fe、2:1、この場合のよう)に到達可能な最高Fe濃度では、顕著なFeクラスタ化(AF Fe‐OH‐Feペア)が起こり、図4Dに見られるようにMydoshパラメータ(>0.03)によって特徴付けられる特徴的なスピンガラス様挙動を有するスピンフラストレーションの存在を可能にする。さらに、従来の合成と比較して、我々のNiFe試料は、より低いブロッキング温度および磁化温度、ならびにより低い抗磁場エネルギーおよび活性化エネルギーをもたらす。
【0109】
最後に特に、水熱的に得られた試料と比較して我々の試料における高度のFeクラスタ化を一義的に確認するために、メスバウアー分光法を測定した(図4D‐挿入図)。測定は、他の技術と完全に一致して、全ての試料中のFe(III)の存在を確認した。興味深いことに、4Kで記録された測定値は、本発明の手順によって得られた試料中のFe‐OH‐Feペアの存在がより高いこと、実に最先端のNiFe‐LDHと比較して35%を超えることを警告する(G.Abellanら。Inorg. Chem. 2013, 52, 10147-10157, https://doi.org/10.1021/ic401576q)。
【0110】
<NiV‐LDHとNiFeV‐LDH>
図5Aは、本発明の手順によって合成された塩化物を含有するNiV試料およびNiFeV試料について得られたPXRDパターンを示す。LDH相の発生が成功裏に確認され得ることを観察することが可能である。表3は、前述の試料の結晶学的パラメータを纏めたものである。全ての場合において、10nmより小さい結晶子サイズが得られる。試料NiFeVの場合、Ni‐K端(図5B)およびFe‐K端(図5C)で記録されたEXAFSはそれぞれ、酸化状態2+および3+であるNiおよびFeの存在を確認する。さらに、Fe‐K端は、NiFe試料について以前に観察されたような顕著なクラスタ化を示す特徴的な第3のピークを示す。さらに、メスバウアー分光法もこのクラスタ化を確認する(図5C参照)。
【0111】
XPS特性評価(図5D~F参照)は、酸化2+および酸化3+であるNiおよびFeの存在をそれぞれ裏付けている。バナジウムの場合、516.7eV524.3eVの信号は、酸化状態4+のVに適している。全ての場合においてXPS測定は、Ni:Fe:V=4:1:1の比での固相への陽イオンの定量的な取り込み、および陰イオンとしての塩化物(Fe+V:Cl=1:1)を確認する。
【0112】
【表3】

(電気化学的特性評価)
本発明のプロセスによって得られたNiFe‐LDHのOER活性を、異なる作用電極集電体(NiFe‐LDHが表面上に直接成長したNi発泡体電極、NiFe‐LDHが表面上に堆積したNi発泡体電極、およびガラス状炭素回転ディスク電極)を用いて、室温で1MのKOH電解液中の標準的な3電極セル構成で試験した。異なる値を比較するために、95%iR補正の有無で、サイクルボルタンメトリー(CV)によって試料を調査し、優れた電気化学的性能を示した。図6Aは、10mA・cm-2電流密度を達成するために必要とされる、iR補正有りで253±4(RHEに対して1.480±4V)の、およびiR補正無しで259±4mV(RHEに対して1.486±4V)の優れた過電圧をそれぞれ示すCV曲線を示す。これらの値は非常に強いニッケル酸化ピークからのいかなる可能な寄与も回避するために、CVの還元曲線から得られたことに留意されたい。工業的電気分解とのより近い比較では、100mA・cm-2を得るために必要な過電圧も抽出され、501±22(RHEに対して1.727±22V)、iR補正有りで446±22mV(RHEに対して1.672±22)であった。さらに、様々な過電圧(10mVずつ段階的、iR補正なし)を電極が安定するように30分間印加して一連の連続的なクロノアンペロメトリ(CA)を行い、10mA・cm-2で268mVの値を得た(図6B
【0113】
電極触媒挙動を適切に分析するために、Tafel勾配およびターンオーバー頻度(TOF)値を抽出した。図6Bの挿入図は、図6Aから計算されたTafel勾配を示し、それぞれ、iR補正有りで46±3およびiR補正無しで50±3mV・dec-1の優れた数値を示している。3mm径ガラス状炭素回転円盤電極(RDE)を用いてNiFe‐LDH触媒挙動も試験して、10mA・cm-2電流密度を達成するために必要なiR補正有りで362±16および360±16mV(それぞれRHEに対して1.588および1.586V)の過電圧を示した(図6C)。RDE曲線から計算したTafel勾配は、37±2mV・dec-1(iR補正有りで36±2mV・dec-1)の異常値を示した。TOFに関しては、NiFe‐LDH中のすべての金属イオンが活性であると仮定して、堆積したNi発泡体電極とGC‐RD電極との両方を用いて、すべての過電圧に対する値を計算した。図6DはNi発泡体を集電体として用いた0.011s-1のTOF値を示し、η=300mVの過電圧でGC‐RDEを用いた0.003s-1を示している。観察された電気化学的挙動をさらに理解するために、電気化学的表面積(ECSA)を、様々な走査速度で非ファラデー領域で実施されたCVから抽出した(図6D‐挿入図)。3mF・cm-2のECSAがNiFe‐LDHについて得られており、これは、最先端のバルクNiFe‐LDHについて典型的に観察されるもの(例えば、0.6mF・cm-2(NiFe‐Cl)~1.3mF・cm-2(NiFe‐オクタデシル硫酸)、Chemistry of Materials, 2019, vol. 31, p. 6798-6807)よりもはるかに高い。TOF値およびECSA値は、作用電極としてNi発泡体集電体上に堆積された本発明のプロセスによって得られたNiFe‐LDHを使用して得られたことに留意することが重要である。OER電極触媒の動作安定性は最も重要な問題であり、このため、LDH試料の安定性および耐久性は一定の電流密度j=10mA・cm-2で、ならびに一定の過電圧η=300mVで6時間試験されたが、電位または電流の顕著な増加は示さなかった(図6E)。
【0114】
表4は、本発明のプロセスによって合成されたNiFe‐LDHについて得られた全ての電気化学値を纏めたものである。
【0115】
【表4】

(ハイブリッドNiFe‐LDHのスケールアップ合成)
本発明の手順がスケールアップされ得ることを実証するために、2つの異なるアプローチが探求されている:(i)反応体積の増加に基づく体積スケーリング;および(ii)初期濃度の増加からなる質量スケールアップ。典型的には、1日当たりの反応混合物のm当たりの材料のkgとして定義される空時収率(STY)がスケールアップ生成度を定量化するために使用される(Czaja,A.U.;Trukhan,N.;Muller,U.Industrial Applications of Metal-Organic Frameworks. Chem. Soc. Rev. 2009, 38 (5), 1284-1293. https://doi.org/10.1039/B804680H)。そのため、純無機NiFe‐LDHとセバシン酸を含むハイブリッドNiFe‐LDHとの両方が行われている。ハイブリッドLDHをスケーリングすることは、それ自体が非常に大きな課題であることに留意する価値がある。
【0116】
最初の段階として、両方のパラメータがどのようにSTYを変更できるかを強調し、同時に、主電流合成との差異を比較することが重要である。体積スケールアップはSTYに影響を及ぼさないが(合成条件の変化が濃度および温度に関して必要ではない)、LDH合成に典型的に使用される水熱反応の場合に困難になり得る何らかのより大きな反応器を必要とする。一方、質量スケールアップは濃度を増加させる(より小さな体積で質量を大きくする)という二重の効果により、STYを劇的に増加させるが、合成条件(例えば、試薬の溶解度、温度、反応速度論)の最適化を必要とする。典型的には、均一な合成が25mM未満の総陽イオン濃度を用いて駆動され;濃度を100mMまで増加させるものは共沈により駆動される。
【0117】
本発明の手順の場合、体積スケールアップおよび質量スケールアップのいずれも分かりやすい。表5は、元の条件よりも50倍にさえ高い評価条件を纏める。
【0118】
【表5】

もとの場所でのpH実験により、スケールアッププロセスは、NiFe‐LDHの場合、2段階成長機構に影響を及ぼさないことが実証され得る(図7参照)。3より低いpHでは、Feの析出が起こり、次いで、7.5より低いpHでNiFe‐LDHの析出が起こり、LDH相が得られることが確認された。濃度が高いほど、反応は速くなる。pHプロファイルによれば、NiFe‐Cl×1,×25,および×50の合成にはそれぞれ11.7時間,6.1時間,および1時間が必要であると我々は結論できる。加えて、pH曲線は、時空時収率パラメータ(スケールアップ生産度を定量化するために使用される値)を計算するために有用である。実験NiFe‐Cl×50では、典型的な報告(表6)よりも200倍以上高い1885kg/day・mという前例がない値が得られる。
【0119】
試料NiFe‐Cl×50にわたって記録されたSTEM‐EELS特性評価は、より低いスケールで得られた試料について観察されたように、高度のクラスタ化を確認する。この結果はクラスタ化の発生が本発明の合成プロセスに固有であり、スケールアッププロセス中に影響を受けないことを実証している(図8参照)。
【0120】
【表6】

加えて、実際的なこととして我々は、中間層空間に有機分子(セバシン酸、Seb)を有するハイブリッドNiFe‐LDHの合成のための合成条件を最適化した。固形試薬(NiCl.6HO、FeCl.6HOおよびHSeb)をエタノール:水混合物中で混合した。これらのハイブリッド相の合成を最適化し、濃縮セバシン酸分子の溶解を促進するために、水/エタノール溶媒混合物を使用し、反応がアルカリ化処理を開始するとすぐに完全な溶解を行った。我々は、総陽イオン濃度を50倍まで(15から750mMまで)増加させることによって5つのシナリオを評価した。この高度に濃縮された状態は、典型的には均一な方法が50mM未満の濃度で作用するので、これまで評価されなかったことを強調することが重要である。LDH相の形成は、PXRD、ATR‐FTIR、およびXPS分光法によって確認されている。まとめると、我々の実験は、750mMの総陽イオン濃度であっても、ハイブリッドNiFe‐Seb‐LDHの合成成功を結論付けることを可能にする。図9は、本発明のプロセスによるNiFe‐Seb試料の場合における1×から50×へのスケールアップの写真を示す。三価遷移陽イオンの加水分解化学(酸および溶解度定数)のために、ハイブリッド(二元、三元またはそれ以上のいずれか)の合成はNiFeV‐LDH試料の場合に実証されたように、他の製法に容易に外挿することができる。
【0121】
(我々の合成手順により得られたAlベースLDHにおけるAlクラスタ化の決定)
本発明の重要な態様の1つは、得られたLDH材料の高度にクラスタ化された性質にある。M3+‐O‐M3+モチーフ(motif)の存在に関連するこの特徴は、AlベースLDHの場合にも観察されている。この場合、Alクラスタ化、すなわち、Al3+‐O‐Al3+部分(moiety)の存在は、27Al固相核磁気共鳴(SSNMR)によって容易に観察できる。反磁性試料の場合、Cadarsら(Chem. Mater. 2011, 23, 11, 2821-2831. https://doi.org/10.1021/cm200029q)およびNielsenら(Phys. Chem. C 2015, 119, 49, 27695-27707. https://doi.org/10.1021/acs.jpcc.5b09490)によって報告されているように、SSNMRはLDH相へのAl陽イオンの分布を評価するための十分に確立された技術である。完全な結晶ではすべてのAl中心は6個の二価陽イオンによって囲まれていなければならず、したがって、AlからAlへのより近い隣接は第2のシェルとして5.3Åに位置する。このシナリオでは、鋭く対称的な信号が10ppm付近に現れる。しかしながら、Al陽イオンによる二価陽イオンの置換、すなわち:Alクラスタ化は、約3.1Åの平均距離を有するAl3+‐O‐Al3+モチーフを生じる。この新たな分布は、0ppmに幅広いピークの相対強度の増加によって証明することができる。この広範な寄与は、対称性が低く無秩序なAl環境の結果であると言及する価値がある。
【0122】
図10は、特許で開発された合成法(MgAl‐エポキシド)によって得られたMgAl‐LDH試料について、100℃での尿素の従来の加水分解によって得られた類似の試料(MgAl‐尿素)と比べて、9.4T(および20kHzのマジック角度スピニング周波数)で行った27Al‐SSNMRを示す。観察され得るように、0ppmでの大きな寄与は、MgAl‐エポキシド試料において顕著であり、水熱的に得られた試料MgAl‐尿素と比較して、Alクラスタ化のより高い存在を強調する。
【0123】
したがって、これらの結果は、我々の合成アプローチが高度にクラスタ化されたAlベースのLDHの取得を誘発することを確認する。
【0124】
(我々の合成手順によって得られたFeベースLDHにおけるFeクラスタ化の決定)
上述のように、室温でのエポキシドの加水分解によるアルカリ化法に基づく合成手順により、得られたLDHは本質的に高度にクラスタ化される:すなわち、B(III)‐O‐B(III)モチーフにされる。pH反応速度論曲線は析出経路を実証し、これは、少なくとも2段階に分けることができる:第1に、6より低いpHでのB(OH)の形成;および第2に、LDH相の付随的出現を伴うA(II)の析出。穏やかな合成条件(pHの厳格な制御)および(再結晶に関連する)水熱処理の欠如は、これらの特徴的な構造の得られることを可能にする。
【0125】
FeベースのLDHの場合、Feクラスタ化は3つの技術、すなわち、X線吸収分光法(XAS)、メスバウアー分光法、ならびに原子分解能収差補正走査透過型電子顕微鏡法(STEM)および電子エネルギー損失分光法(EELS)によって実証することができる(図8参照)。
【0126】
我々の試料におけるFeクラスタ化の存在(RTとして示す)をさらに証明するために、尿素加水分解によって駆動される水熱法によって得られる従来のFeベースのLDHを合成した(Adv. Energy Mater. 2018, 8, 1703341. https://doi.org/10.1002/aenm.201703341)。
【0127】
まず、XAS技術を用いて、試料中のNiとFeの酸化状態を実証した。すべての場合において、XANES測定(図11)は、LDHの発生を確認するために必要な状態であるNi(II)およびFe(III)の存在を確認する。
【0128】
これらのLDHの構造的特徴を調べるために、拡張X線吸収微細構造(EXAFS)領域も解析した。観測された振動は、もっぱら吸収原子までの原子間距離の擬半径方向分布として解釈できる。これにより、各陽イオンの情報を独立に得ることができる。
【0129】
Ni‐K端の場合(図12A)、これらの曲線は約1.6および2.7Å(位相補正なし)に2つの顕著なピークを示し、それぞれ第1隣接原子(O原子)および第2隣接原子(金属陽イオン、Ni(II)またはFe(III)原子のいずれか)との寄与に対応する。両方の寄与の位置は全ての試料について実質的に同じであり、これは、FeによるNiの置換がNiベースの水酸化物の純粋な結晶構造を改変しないことを示唆する。
【0130】
しかし、Fe‐K端(図12B)の場合、我々のFe(III)クラスタ化試料(NiFe‐RT)を水熱試料(NiFe‐HT)と比較すると、著しい差異が生じる。第1隣接原子(O原子)と第2隣接原子(金属陽イオン、NiまたはFe原子)との寄与にそれぞれ対応する約1.5および2.6Å(位相補正なし)の2つの主要信号の他に、3.2Å付近を中心とする第3ピークが我々の試料でのみ観察された。EXAFSが遷移モードで記録されたことは言及する価値があり、したがってスペクトルは試料全体を表す。実際、この第3のピークはFe(III)‐OH‐Fe(III)モチーフの存在の明確な実証であり、すなわち、Fe(III)水酸化物の場合に実証されたように(Chemosphere, 2014, 111, 169-176. https://doi.org/10.1016/j.chemosphere.2014.03.059 およびMaterials Transactions, 1994, 35, 6, 394-398. https://doi.org/10.2320/matertrans1989.35.394)、第2隣接するFe(III)‐O対およびFe(III)‐Fe(III)の明確な実証である。
【0131】
Fe(III)‐OH‐Fe(III)モチーフ(Fe(III)‐クラスタ化)の存在は、我々の方法によって得られた試料でのみ観察されることに注意されたい。従来の水熱処理によって得られた典型的な試料は、Fe(III)クラスタ化を示さない。類似の結果が、文献(上記参照)と完全に一致する、SSNMR分光法などの他の技術を使用することによって、AlベースのLDHの場合に実証されたことを考慮することが重要である。
【0132】
同様に、メスバウアー分光法は、Feベースの物質の分布を研究するための強力な技術である(Inorg. Chem. 2013, 52, 10147-10157. https://doi.org/10.1021/ic401576q)。図13に示されているように、我々の試料を水熱法によって得られた試料と比較すると、明確な差異が生じる。四重極分裂および超微細磁場の分布の分析(J. Phys. E: Sci. Instrum. 1974, 7, 526. https://doi.org/10.1088/0022-3735/7/7/012およびChem. Mater. 2000, 12, 6, 1743-1749. https://doi.org/10.1021/cm990760c)は、我々の方法(NiFe‐RT)によって得られた試料中の高いFe(III)クラスタ化を確認した。実際に、4Kで記録された測定は、本発明者らの方法:エポキシド経路を通して得られた試料において、43%を超える、より高いFe(III)‐OH‐Fe(III)ペアの存在について警告する。
【0133】
最後に、全組成範囲でのFe(III)クラスタ化をさらに実証するために、我々は、NiFeV‐LDHを合成した。この場合、Ni(II):[Fe(III)+V(III)]からなるM(II):M(III)比率は2:1に保たれ、Fe(III):V(III)は1:1に固定された。50%のFe(III)の置換は、単に希釈係数を考慮して、Feクラスタ化の量を減少させるはずであることは注目に値する。
【0134】
ここでもまた、我々のNiFeV試料(RTと表示)を、尿素加水分解によって駆動される水熱法によって得られたNiFeV試料(HTと表示)(以下合成される:Adv. Energy Mater. 2018, 8, 1703341. https://doi.org/10.1002/aenm.201703341)と比較する。
【0135】
NiFeV‐LDHのXANES測定から、LDH構造で予想されるように、予期された酸化状態Ni(II)およびFe(III)が確認された(図14)。
【0136】
さらに、EXAFS分析を行った。Ni‐K端では、各方法間の差異は顕著ではない。しかしながら、Fe‐K端の場合、ここでもまた、室温で得られた我々の試料は、このFe希釈条件においてさえ、顕著なFe(III)クラスタ化を確認する第3のピークを示す(図15)。
【0137】
さらに、NiFeV試料上で記録されたメスバウアー分光法も、我々のNiFeV‐RT試料におけるFe(III)クラスタ化の存在を確認する(図16)。この場合、試料NiFeV‐RTは、35%を超えるFe(III)‐OH‐Fe(III)モチーフを示す。
【0138】
我々の方法で得られた全ての分析されたLDH試料は、B(III)クラスタ化を有すると結論される。
【0139】
(X線吸収分光法(XAS)の簡単な説明:)
XASは、広範な分野の研究に使用される化学状態分析技術である。この技術は、x線の透過(または蛍光)を、X線エネルギーを吸収端に近いエネルギーで少しずつ増分する関数として測定することを含む。吸収端エネルギーは対象元素(例えば、Fe)の電子殻から電子を放出するのに必要なエネルギーに相当する。X線が原子の吸収端付近でどのように吸収されるかについての小さな変化は、電子の状態についての洞察を提供する。
【0140】
XASは2つの領域から構成される:
X線吸収端構造(XANES/NEXAFS):この領域は吸収端に最も近いx線エネルギー(端付近で約100eV)を含み、鋭い共鳴ピークを示す。一般に、この領域は、酸化状態および対称性などの局所的な原子状態に敏感である。
【0141】
拡張微細構造(EXAFS):この領域はXANES領域の後に現れる特徴を含み、最大~1000eVまたは吸収端よりも大きい。EXAFSは、測定された信号の緩やかな振動として現れ、周囲の原子による放出電子の散乱によって引き起こされる。EXAFS測定は、結合長および化学配位環境を含む隣接原子情報を測定するために使用することができる。
【0142】
注:言及する価値があることに、この技術は原子特異的であり、試料中の各原子を独立して観察することを可能にする。
【0143】
(エポキシド経路を通して得られた追加の層状複水酸化物(LDH))
<LiベースのLDH>
LiAl‐LDHは、簡単なワンポット手順により室温で合成法により得ることができる。この場合、金属比Li:Alは1:2に調整されるべきであり、ここで、最終濃度は、1~500mMの範囲で調節され得る。Li(I)、Al(III)およびハロゲン化物(例えば、塩化物)を含有する水溶液または溶媒リッチ(とりわけ、エタノール、イソプロパノール、アセトン、エチレングリコール、グリセロール、ホルムアミド)溶液は、結晶性LiベースのLDH相の析出を駆動する。PXRDパターンは8.6Åの基底空間距離に対応する中間層反射003および006によって実証されるように、結晶性の予想される構造を確認する(図17)。TEM検査は、ナノメートル層によって構成される花様構造の存在を明らかにする(図17‐挿入図)。
【0144】
<AlベースのLDH>
AlベースのLDHの実施例として、Mg(II)、Co(II)および/またはZn(II)の場合と同様に、簡単なワンポット手順で室温での合成法により異なる相を得た。全ての場合において、水溶液または溶媒リッチ溶液を使用して、これらの層状材料の析出を促進することができる。使用濃度は、他の実施例と同様に広い濃度範囲で固定することができる。
【0145】
第1の試料として、中間層陰イオンとして塩化物を含有するMgAl‐LDHを示す。構造的および形態学的特性評価は、所望の相を得ることを確認する。(図18参照)
同様に、CoAl‐LDHの場合、エポキシドの量を単に変更することによって、粒径を<100nmから>1μmまで調節することができる。全ての場合において、小板の形態の取得は、TEM検査によって確認される(図19)。PXRDパターンは予想されるように、層間距離8.0Åによる、層間陰イオンとして塩化物を含有するCoAl‐LDH相の発生を確立する(図20)。
【0146】
さらに、ZnAl‐LDHは、類似の合成条件を用いることによっても得ることができる。構造的および形態学的特性評価を図21に示す。PXRDパターンはZnOのシグナルなしに、8.9Åの層間距離を示すLDH構造の発生を確認する。
【0147】
<三元LDH>
LDHの合成に関する我々の合成アプローチの利点をさらに実証するために、三元構造を得た。合成条件は、前述で用いたものと類似しており、2つの比:A(II):B(III)およびA(II):A’(II)を変更することができる、ここでAとA’とは、異なる二価の金属である。全ての場合において、二価および三価陽イオンと塩化物(または別の陰イオン)を含有する水溶液または溶媒リッチ溶液が使用される。
【0148】
簡単な例として、NiCoFe‐LDHをFe:Co:Ni=1:1:1の比率で調製した。pH反応速度論プロファイルは、室温で三元構造が得られることを実証した(図22)。観察することができるように、2つの二価陽イオン(CoおよびNi)が添加されるとき、析出シナリオは変化しない。まず、Fe(III)の析出が起こり、次に二価陽イオンが析出してLDH構造を形成する。LDH反応速度論の場合、二価陽イオンは、Fe(III)を含まない実験よりも低いpH値で起こることに言及する価値がある。これらの結果は、文献と一致して、純粋なLDH構造の発生を実証する。
【0149】
<ハイブリッドLDH>
エポキシド経路はまた、ハイブリッドLDHのワンポット合成を可能にする。この系統に関するさらなる情報を提供するために、2つの異なる有機分子、オクタン酸およびスベリン酸が、モノカルボン酸およびジカルボン酸の実施例として使用された。合成は、溶媒混合物の水溶液中でどちらも室温で実施した。実験は、CoAl、NiAlおよびZnAlベースのLDHを用いて行った(図23参照)。全ての場合において、構造的特性評価は、上述の構造が首尾よく得られたことを確認する。
【図面の簡単な説明】
【0150】
図1】STEM‐EELS特性評価。図1Aは、室温で本発明に従って合成されたNiFe試料の高角度環状暗視野(HAADF)画像を示す。EELスペクトル定量化から得られたFeマップおよびNiマップを原子百分率で示す組成EELSマッピング。図1Bは、先行技術(G Abellan,E Coronado,C Marti-Gastaldo,A Ribera,JF Sanchez-Royo,Chemical Science, 2012, 3 (5), 1481-1485, https://doi.org/10.1039/C2SC01064J)に従って得られたNiFe‐LDHのHAADF画像を示す。EELスペクトル定量化から得られたFeマップおよびNiマップを原子百分率で示す組成EELSマッピング。
図2図2Aは、NiCl、FeCl、NiCl+FeCl、および専らNaClおよびGlyを含む対照試験の析出のpHプロファイルを示す。図2Bは、FeIIIの代わりにVIIIを有する以外、図2Aと同じである。図2Cは、対照系、Ni系およびFe‐V系に加えて、1:1の比率のFeCl:VCl混合物のpHプロファイルを示す。図2Dは、本発明に係るワンポット室温合成アプローチの実施例を示す。アルカリ化反応速度論とLDH成長機構も示した。
図3-1】図3Aは、水熱アプローチを用いて調製された従来品(NiFe‐HT)と比較して、室温で合成されたNiFe‐LDHの粉末X線回折(PXRD)を示す。図3Bは、NiFe(OH)Cl・mHOの3次元化学構造を示す。図3C~Fは、X線光電子分光法(XPS)に供したNiFe‐LDH試料を示す。
図3-2】図3G~Hは、低倍率(スケールバー:200nm)および高倍率(スケールバー:5nm)で、高角度環状暗視野(HAADF)画像および環状明視野(ABF)画像を同時に取得したものを示す。図3I~Jは、NiFeおよびNiFe‐HTの試料についてのEXAFS(吸収スペクトルからの拡張領域)振動のフーリエ変換(FT)を示す。
図4】室温で合成された中間層陰イオンとして塩化物を含む、本発明に従って得られたNiFe‐LDHの磁気特性評価。(A)χ対Tプロット─挿入図は、温度の関数としての逆磁化率を表す─(B)磁場中冷却および零磁場冷却(FC/ZFC)プロット。(C)2Kでのヒステリシスループ。(D)1、10、110、332および997Hzでのχ’(同相)信号およびχ”(異相)信号の熱依存性。挿入図:4Kで記録したNiFe‐LDHのメスバウアースペクトル。実験点上に重ね合わせた線は、最寄りの隣り合うNiIIの数が異なったFeIII原子に対応する六重項(sextet)の和を表している。明確さのために、六重項は若干シフトして示されている。
図5図5Aは、本発明に従って合成された塩化物を含有するNiVおよびNiFeV試料について得られたPXRDパターンを示す。NiFeV試料の場合、Ni‐K端(図5B)およびFe‐K端(図5C)で記録されたEXAFSは、それぞれ酸化状態2+および3+におけるNiおよびFeの存在を確認する。図5D~Fは本発明に従って得られたNiVおよびNiFeV試料についてのXPS特性評価を示し、それぞれ、酸化状態2+、3+および4+におけるNi、FeおよびVの存在を確証する。
図6】1MのKOH電解液中でのOER触媒としての本発明に従って得られたNiFe‐LDH試料の性能。(A)Ni発泡体集電体上で成長したNiFe‐LDHを用いたサイクルボルタンメトリーからのOER分極曲線。破線は、10および100mA・cm-2の電流密度を示す。挿入図は、異なる電流密度で測定された過電圧値を示す。明るい灰色の線/ドットは、対応するiR補正されたプロットを表す。(B)10mVずつ段階的に異なる過電圧で測定した30分クロノアンペロメトリーを用いて作成した線形ボルタンメトリー。挿入図は、図6Aに示されるCVから計算されたTafel勾配を示す。(C)ガラス状炭素回転円盤電極(GC‐RDE)を集電体として用いたCVからのOER分極曲線。挿入図は、GC‐RDEから計算されたTafel勾配を示す。明るい灰色の線/ドットは、対応するiR補正されたプロットを表す。(D)Ni発泡体およびガラス状炭素を集電体として使用するポテンシャルの関数としてのターンオーバー頻度の傾向。挿入図は、異なる走査速度で非ファラデー領域で実施されたCVから計算されたNiFe‐LDHの電気化学的表面積(ECSA)を示す。(E)300mVおよび10mA・cm-2でのそれぞれ6時間の定電位および定電流試験。
図7】本発明のプロセスによって合成されたNiFe‐LDH×1、×25および×50の実験のpHプロファイル。挿入図:対数目盛での時間によるpHプロファイル。矢印は、析出の最終化を示す。
図8】試料NiFe‐LDH×50にわたって記録されたSTEM‐EELS特性評価。O(上部パネル)、Ni(中央パネル)およびFe(下部パネル)についてのEELSマップ(多重線形最小二乗、MLLSによる)は、Ni/Fe種の強力なナノ偏析を示す。図をグレースケールに変換することにより、各写真にわたって示されるテキストは明確でなくなり、この理由により、このテキストは各図の上端で再定義されていることに留意されたい。
図9】本発明の手順によるNiFe‐Seb‐LDHの合成段階の写真、1×~50×(左から右)。HSeb(A)、NiCl+FeCl+NaCl(B)、無機塩類の水溶液(C)、HSeb+NiCl+FeCl+NaCl混合のEtOH:HO(D)、室温で24h熟成した後の反応混合物(E)、各条件に付いて得られた洗浄および乾燥後のNiFe‐Seb‐LDH固体(F)。すべての事例において、25mLを破線で示す。
図10】尿素(MgAl‐尿素)の加水分解によって水熱的に得られた試料と比べて、我々の合成法(MgAl‐エポキシド)によって得られたMgAl‐LDHの27Al‐SSNMRスペクトル(9.4T、MAS周波数20kHz)。
図11A】RT(本発明の手順)およびHTによって合成された試料NiFeについて記録された、Ni‐K端(A)の正規化XANESスペクトル。垂直な破線は、Ni(II)基準の吸収端位置を示す。
図11B】RT(本発明の手順)およびHTによって合成された試料NiFeについて記録された、Fe‐K端(B)の正規化XANESスペクトル。垂直な破線は、Fe(III)基準の吸収端位置を示す。
図12A】。RT(本発明の手順)およびHTによって合成された試料NiFeについて記録されたNi‐K端(A)におけるEXAFS振動(位相補正なし)のフーリエ変換。線はフィッティングに対応している。
図12B】。RT(本発明の手順)およびHTによって合成された試料NiFeについて記録されたFe‐K端(B)におけるEXAFS振動(位相補正なし)のフーリエ変換。線はフィッティングに対応している。
図13】4Kで採取したNiFe試料のメスバウアースペクトル。実験点上の線は異なる第2配位圏を有するFe原子に対応する六重項の合計である。
図14A】RT(本発明の手順)およびHTによって合成された試料NiFeVについて記録されたNi‐K端(A)の正規化XANESスペクトル。垂直な破線は、Ni(II)基準の吸収端位置を示す。
図14B】RT(本発明の手順)およびHTによって合成された試料NiFeVについて記録されたFe‐K端(B)の正規化XANESスペクトル。垂直な破線は、Fe(III)基準の吸収端位置を示す。
図15A】RT(本発明の手順)およびHTによって合成された試料NiFeVについて記録されたNi‐K端(A)におけるEXAFS振動(位相補正なし)のフーリエ変換。線はフィッティングに対応している。
図15B】RT(本発明の手順)およびHTによって合成された試料NiFeVについて記録されたFe‐K端(B)におけるEXAFS振動(位相補正なし)のフーリエ変換。線はフィッティングに対応している。
図16】4Kで採取したNiFeV試料のメスバウアースペクトル。実験点上の線は異なる第2配位圏を有するFe原子に対応する六重項の合計である。
図17】室温で我々の合成法により得たLiAl‐LDH。PXRDパターンは、予期された層状構造、003反射および006反射、dBS=8.6Åを示している。花のような構造の発生は、TEM検査(挿入図)によって観察される。
図18A】室温で我々の合成アプローチにより得られたMgAl‐LDH。PXRDパターンはdBS=8.2Åの層状構造を強調し、FTIRスペクトル(B)は炭酸の陰イオンが存在しないことを確認し、MgAl(Cl)‐LDH構造が得られることを確認した。TEM検査は、小板(platelet)形態の発生を示す(A‐挿入図)。
図18B】室温で我々の合成アプローチにより得られたMgAl‐LDH。PXRDパターンはdBS=8.2Åの層状構造を強調し、FTIRスペクトル(B)は炭酸の陰イオンが存在しないことを確認し、MgAl(Cl)‐LDH構造が得られることを確認した。TEM検査は、小板(platelet)形態の発生を示す(A‐挿入図)。
図19】室温で我々の合成アプローチにより得られたCoAl‐LDHのサイズ制御。
図20】室温でエポキシド経路を介して得られたCoAl‐LDH。PXRDパターンはCoAl(Cl)‐LDH構造の獲得を確認した。
図21A】室温で我々の合成アプローチにより得られたZnAl‐LDH。PXRDパターンは、FTIRスペクトル(B)および熱重量分析、TGA(C)と一致して、中間層陰イオンとして塩化物を含むLDH構造の発生を確認する。TEM検査は、小板の発生を強調する(A‐挿入図)。
図21B】室温で我々の合成アプローチにより得られたZnAl‐LDH。PXRDパターンは、FTIRスペクトル(B)および熱重量分析、TGA(C)と一致して、中間層陰イオンとして塩化物を含むLDH構造の発生を確認する。TEM検査は、小板の発生を強調する(A‐挿入図)。
図21C】室温で我々の合成アプローチにより得られたZnAl‐LDH。PXRDパターンは、FTIRスペクトル(B)および熱重量分析、TGA(C)と一致して、中間層陰イオンとして塩化物を含むLDH構造の発生を確認する。TEM検査は、小板の発生を強調する(A‐挿入図)。
図22A】室温で我々の合成アプローチにより得られたCoNiFe‐LDH。pH‐反応速度論プロフィール(A)とPXRDパターン(B)により、中間層陰イオンとして塩化物を含む三元構造が得られることを確認した。
図22B】室温で我々の合成アプローチにより得られたCoNiFe‐LDH。pH‐反応速度論プロフィール(A)とPXRDパターン(B)により、中間層陰イオンとして塩化物を含む三元構造が得られることを確認した。
図23】CoAl(上部パネル)、NiAl(中央パネル)およびZnAl(下部パネル)について室温で我々の合成アプローチによって得られたハイブリッドMAl‐LDH。PXRDパターンおよびFTIRスペクトルは、オクタン酸(左)およびスベリン酸(右)の陰イオンを含有するMAl‐LDH構造の取得を確認する。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図16
図17
図18A
図18B
図19
図20
図21A
図21B
図21C
図22A
図22B
図23
【国際調査報告】