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特表2024-506111超伝導電流キャリアを用いて電気エネルギーを伝送するための装置
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  • 特表-超伝導電流キャリアを用いて電気エネルギーを伝送するための装置 図1
  • 特表-超伝導電流キャリアを用いて電気エネルギーを伝送するための装置 図2
  • 特表-超伝導電流キャリアを用いて電気エネルギーを伝送するための装置 図3
  • 特表-超伝導電流キャリアを用いて電気エネルギーを伝送するための装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(54)【発明の名称】超伝導電流キャリアを用いて電気エネルギーを伝送するための装置
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/00 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
H01B13/00 561C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552094
(86)(22)【出願日】2021-10-18
(85)【翻訳文提出日】2023-08-24
(86)【国際出願番号】 EP2021078850
(87)【国際公開番号】W WO2022106131
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】102020007043.4
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511282715
【氏名又は名称】メッサー エスアー ウント コー.カーゲーアーアー
(71)【出願人】
【識別番号】523323206
【氏名又は名称】ビジョン エレクトリック スーパー コンダクターズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘルゾグ,フリードヘルム
(72)【発明者】
【氏名】カッツ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ライザー,ウルフギャング
(72)【発明者】
【氏名】フウェール,ステファン
【テーマコード(参考)】
5G321
【Fターム(参考)】
5G321BA01
5G321CB02
5G321CB08
5G321CB99
(57)【要約】
超伝導電流キャリアを用いて電気エネルギーを伝送するための装置 超伝導電流キャリアを用いて電気エネルギーを伝送するための装置では、冷却対象の超伝導電流キャリアが第1の冷却路内に収容されており、第1の冷却路は、冷媒供給管を介して第1の冷媒用の供給装置に接続されており、第2の冷媒を通過させるための少なくとも1つの第2の冷却路によって包囲されており、第2の冷却路は、暖められた第2の冷媒用の冷媒排出管と流体接続されており、その際第1の冷媒として、過冷却液化ガスが使用され、本発明によれば、この装置は、第2の冷媒として液化ガスが使用され、第2の冷却路に、第2の冷媒の蒸発によって生じる気相を排出するための手段が備えられていることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導電流キャリアを用いて電気エネルギーを伝送するための装置であって、冷却対象の電流キャリア(2、102)が第1の冷却路(7、107)内に収容されており、前記第1の冷却路(7、107)が冷媒供給管(17)を介して第1の冷媒用の供給装置(20、18)に接続されており、前記第1の冷却路(7、107)には、前記第1の冷却路(7、107)を包囲する遮熱材であって、第2の冷媒が流通する少なくとも1つの第2の冷却路(8、108)と熱的に接続された、遮熱材が備えられており、第1の冷媒として過冷却液化ガスが使用される、装置において、
第2の冷媒として液化ガスが使用され、前記少なくとも1つの第2の冷却路(8、108)に少なくとも1つの気相分離器(15、115)が備えられていることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記気相分離器(15、115)が、前記第2の冷却路と流体接続された容器を含み、前記容器の測地学的に上方の部分が気相を排出するための排気管(16)と流体接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記気相分離器内の前記気相が、フロート弁、計器、または(15、115)液密でありながらガス透過性を有する膜を介して導出されることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
第1の冷媒として過冷却された第2の冷媒が使用されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
第1の冷却路(7、107)および少なくとも1つの第2の冷却路(8、108)間に、前記第1の冷却路から少なくとも1つの第2の冷却路内に冷媒を導入するための少なくとも1つの流体接続部(11a、11b;12a、12b;116a、116b、116c)が設けられていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
第1の冷却路(7、107)および少なくとも1つの第2の冷却路(8、108)間の少なくとも1つの流体接続部(11a、11b;12a、12b)が、前記第1の冷却路(7、107)の前記冷媒供給管(17)から離間した装置(1)の端部(5、6)の領域に配置されていることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
第1の冷却路(7、107)および少なくとも1つの第2の冷却路(8、108)間に、前記冷却路(7、107;8、108)の長さ方向において互いに離間して配置されている複数の流体接続部(116a、116b、116c)が設けられていることを特徴とする、請求項5または6に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の冷却路(7、107)および少なくとも1つの第2の冷却路(8、108)間の前記流体接続部には、冷媒の流通を制御するための計器が備えられていることを特徴とする、請求項5から7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
超伝導電流キャリアを用いて電気エネルギーを伝送するための構造であって、複数の請求項1から8のいずれか1項に記載の装置(1)が互いに接続されている、構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1の前文に記載の超伝導ケーブルを用いて電気エネルギーを伝送するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導電流キャリア、特に超伝導ケーブルまたは超伝導バスバーは、十分に低い温度(転移温度、T)で超伝導状態に移行する少なくとも1つの導電要素を含む。超伝導体の転移温度は広範囲でさまざまであり、典型的な金属超伝導体の場合のT<10Kからセラミック高温超伝導体の場合のT>100Kの値にまで達する。近い将来、さらにより高い転移温度を有する超伝導体が発見され工業的に使用されることは、あり得ないことではない。
【0003】
超伝導状態を維持するには、超伝導ケーブルを適切な冷媒によって冷却しなければならない。効果的な冷却を行うために、超伝導電流キャリアは、例えば円筒形または長方形の冷却路(低温保持装置)に収容されており、この冷却路を通って作動中に冷媒が導かれる。この種の超伝導電流キャリアは多数知られており、例えば、EP2328156A1、EP2608223A1、またはEP2793240B1に記載されている。
【0004】
超伝導電流キャリアを冷却するための冷媒として、例えば、液体窒素、液体酸素、液体水素、液化天然ガス、または液化希ガス、特に液体ヘリウムといった過冷却液化ガスが用いられる。「過冷却液化ガス」としては、ここでは、その時々の支配的な圧力において沸点未満の温度で存在するガスと理解される。この場合、過冷却されていない、すなわち対応する沸点で存在する液化ガスの使用とは対照的に、熱の吸収によって、まずは液化ガスの温度上昇のみが凝集状態の変化を伴わずにもたらされる。このような冷却システムの例が、文献米国特許第6,732,536(B1)号、WO2007/005091A1、EP1850354A1、米国特許出願公開第2006/0,150,639(A1)号、またはEP3017238A1に記載されている。これら全てのシステムでは、液化ガスが過冷却され、ポンプによって超伝導電流キャリアに供給される。冷却が行われた後、その間に吸収された熱を排出するために冷媒が過冷却器に戻される。この場合、超伝導電流キャリアの冷却時に入熱は、かなり大部分が供給ポンプによっておよび/または周囲からの入熱によって行われる。このため、超伝導電流キャリアには通例、良好な断熱材、例えば真空断熱材が装備されている。
【0005】
既知のシステムには、特に冷却距離が長い場合に露呈する短所がある。入熱の相殺を可能にするには、電流キャリアの長さが増加するに従ってより多くの冷媒を管路を通って導かなければならない。しかし、体積流量の増加は、より大きい流路断面積および/またはより高い流速によってのみ達成可能である。前者の場合、構造のコストが経済的に妥当でなくなる程に急増する。後者の場合、流速が高ければ配管内壁での冷媒の摩擦に起因する散逸的な入熱も増加し、それによって冷却効率が低下する。
【0006】
これらの理由のため、超伝導電流キャリアを用いて電気エネルギーを伝送するための構造は通常、流体技術的に相互に分離された冷却区間に分割されており、これらの冷却区間はそれぞれ長さが例えば1キロメートルであり、これらの冷却区間に対してそれぞれ個別の循環冷却システムが使用される。もっとも、このようにより長い電気エネルギー伝送システムを構築するための装置コストは相当なものである。
【0007】
WO2014026873A1より、物体、特に超伝導ケーブルの冷却方法が知られている。この方法では、過冷却された極低温冷媒が超伝導ケーブルの周囲に設置された環状路を通って導かれる。冷却はケーブルの両端にある2つの貯蔵容器を用いて行われ、これらの貯蔵容器から冷媒が環状路を通って往復移動するように導かれる。この往復移動によって、追加的な熱がそこを通ってシステムに入力される独立した戻し管が不要となるものの、2つの貯蔵容器が必要であるため装置コストが高くなる。
【0008】
米国特許第7,453,041(B1)号には、超伝導ケーブルを冷却するための構造が記載されている。この構造では、超伝導ケーブルが円筒状の第1の(内側の)流路内に同軸上に収容されており、この第1の流路が冷媒用の供給部に接続されている。第1の流路は円筒状の第2の(外側の)流路内に同軸上に収容されており、この第2の流路は、構造の少なくとも1つの端面側の端部において内側の流路と流体接続されており、冷媒用の排出管を備えている。構造の作動中に、超伝導ケーブル材料の転移温度より低い温度の冷媒、例えば過冷却液体窒素が内側の流路を通って導かれ、この超伝導ケーブルを冷却する。続いて外側の流路を介して戻された冷媒は、内側の流路を周囲からの入熱から保護する遮熱材として作用する。このように、ケーブルの全長にわたって入熱を低減することができ、それによって構造をより長く設計することが可能になる。
【0009】
しかし、この主題の問題は、循環機能および冷却効率を維持するために、両方の流路内の窒素を常に液体状態に保持しなければならないことである。このため、相当な装置コストがかかるとともに、冷却システムを備えたケーブル区間の有効長さが短縮される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の基礎となる課題は、比較的低い装置コストでより長い管路区間をも効率的に冷却することを可能にする、超伝導電流キャリアを用いて電気エネルギーを伝送するための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、特許請求項1の特徴を備えた装置によって解決される。本発明の有利な形態は下位請求項に示されている。
【0012】
超伝導電流キャリア、すなわち特にケーブルまたはバスバーを用いて電気エネルギーを伝送するための装置は、冷却対象の電流キャリアが第1の冷却路内に収容されており、第1の冷却路が、冷媒供給管を介して第1の冷媒用の供給装置に接続されており、第1の冷却路には、第1の冷却路を包囲する遮熱材であって、第2の冷媒を通過させるための少なくとも1つの第2の冷却路と熱的に接続された、遮熱材が備えられており、第1の冷媒として、過冷却液化ガスが使用され、すなわち本発明によれば、第2の冷媒として液化ガスが使用され、少なくとも1つの第2の冷却路に少なくとも1つの気相分離器が備えられていることを特徴とする。
【0013】
このように、本発明による装置は、冷却対象の超伝導電流キャリアが配置されている第1の(内側の)冷却路と、第1の冷却路を包囲する遮熱材であって、第2の冷媒が流通する第2の冷却路と熱的に接続されている、遮熱材とを含む。この遮熱材は、例えば第1の冷却路の周囲に同軸上に、またはその他の態様で配置された第2の冷却路そのものであるか、または、例えば第1の冷却路を包囲し、第2の冷媒が流通する1つまたは複数の流路と熱的に接続されている熱伝導性が良好な材料からなる円筒状の構造物である。超伝導電流キャリアを冷却するために、過冷却液化窒素、過冷却液化酸素、過冷却液化水素、過冷却液化天然ガスまたは希ガス等の過冷却液化ガスが用いられ、このガスは、内側の冷却路において常に液体状態にとどまるとともに超伝導ケーブル材料の転移温度未満の温度にとどまるように温度調節されている。
【0014】
第1の冷媒は、例えば本発明による装置の端部または本発明による装置の両端部の間の中央の領域に位置している投入箇所において第1の冷却路に導入される。この場合、第1の冷媒がまた循環され、第1の冷却路に流入する際にその都度過冷却されてもよい。
【0015】
1つまたは複数の第2の冷却路において使用される冷媒にも同様に液化ガスが使用され、この液化ガスは、第1の冷却路内で使用されるガスと同じものかまたは別のものであってもよい。ただし、このガスは、第1の冷却路内の冷媒よりも高い温度で存在しており、周囲からの入熱によって少なくとも部分的に蒸発し得、したがって、従来技術による装置とは異なり、第2の冷却路内の冷媒を、例えば対応する温度まで冷却するかまたは対応する圧力を加えることによって、絶えず液体状態に保持しておく必要がなく、そのため、少なからぬ量の冷媒を節約することが可能になる。むしろ、第2の冷却路内の冷媒の蒸発によって生じる気相は、1つまたは複数の気相分離器において未だ液体状の第2の冷媒から分離され、排気管を介して第2の冷却路から除去される。その後、気相は排気管を介して周囲の大気中に放出されるか、または別の用途のために供給される。排気管はまた少なくとも部分的に、第2の冷却路の周囲に同軸上に延在する、この場合は追加的な遮熱材を構成する第3の冷却路を通って延在していてもよい。
【0016】
分離された液相は第2の冷却路内にとどまるか、または再び第2の冷媒の流れ内に戻される。第2の冷却路を通り抜けた後、液相は、排出された気相の部分が置換され、新たに過冷却された状態で、第1の冷却路において超伝導ケーブルの冷却に新たに使用されるか、またはその他の用途、例えば超伝導ケーブルに接続された電力供給装置を冷却するために供給される。
【0017】
第1の冷却路と遮熱材との間、および/または第1の冷却路と第2の冷却路との間には、熱貫流係数が低い層が設けられており、この層によって、第2の冷却路から第1の冷却路へ可能な限り少ない熱しか伝達されないようになっている。断熱材、例えば真空断熱材が、この遮熱材および1つもしくは複数の第2の冷却路を、または、第2の冷却路が第1の冷却路に対して同軸上に配置されて遮熱材として機能する場合は、この第2の冷却路を包囲している。
【0018】
気相分離器は好ましくは容器を含み、この容器では、重力に基づく液相と気相との分離が行われる。つまり、容器の測地学的に上方の部分に気相が集まり、そこから排気管を介して排出される。ただし、1つまたは複数の気相分離器において、また相分離のためのその他の機構、例えば、温度もしくは圧力制御の計器、または液密でありながらガス透過性を有する膜も有利に使用することができる。また、第2の冷却路の長さ方向において互いに離間して配置された複数の気相分離器も本発明によれば考えられる。
【0019】
気相分離器は本発明による装置の、第2の冷却路と場合によっては第3の冷却路とを包囲する外側の断熱材の内側に配置されているのが望ましく、および/または、気相分離器には、真空室内部の配置等、きわめて効果的な独自の断熱が施されている。
【0020】
本発明の有利な一形態は、第1の冷媒として過冷却された第2の冷媒が使用されることを特徴とする。
【0021】
この形態では、第1および第2の冷媒が同一の物質、例えば液体窒素によって構成されており、また同一の貯蔵容器から取り出すことも可能である。ただし、冷媒は第1の冷却路内への導入前に過冷却されるか、または絶えず循環されて第1の冷却路内に新たに導入される前にその都度過冷却され、また第1の冷却路内部でも常に過冷却された液体状態にある。第1の冷却路から第2の冷却路内に導入された冷媒は、周囲からの入熱によって例えば2K~10Kの温度差分だけ暖まる。その際、また冷媒がその沸点に達して部分的に蒸発することもあり得る。第2の冷却路では、この冷媒が第1の冷却路内の冷媒のための遮熱材として用いられ、その点ではより少ない熱量を吸収する。
【0022】
この場合、第2の冷却路からの未だ液体状の冷媒を、特に別の冷却タスク、例えば電力供給装置の冷却のために供給することができる。ただし、本発明の特に好ましい一形態では、第1および第2の冷却路間に、第1の冷却路から第2の冷却路内に冷媒を導入するための少なくとも1つの流体接続部を設けるようになっている。したがって、この場合、第1の冷却路を通って導かれる冷媒は第2の冷却路を通って導かれる冷媒と同一である。つまり、冷媒は過冷却状態で第1の冷却路に供給され、そこで超伝導電流キャリアの冷却を担い、この流体接続部を介して、または複数の流体接続部を介して第2の冷却路内に到達し、そこで第1の冷却路用の遮熱材として機能するか、または、1つもしくは複数の第2の冷却路と熱的に接続された遮熱材を冷却する。第2の冷却路では、周囲からの入熱によって冷媒の少なくとも一部が蒸発し得る。蒸発した冷媒は液相から分離されて排出される。液体状態にとどまっている冷媒は第2の冷却路を通り抜け、続いて新たに使用することが可能である。例えばこの冷媒は、排出された気相を補う新たな冷媒とともに過冷却器において超伝導電流キャリアの冷却に要求される動作温度にされ、第1の冷却路内に新たに投入される。
【0023】
本発明による装置は、超伝導電流キャリア用の冷却装置の境界をなす2つの端部を有している。この場合、本発明の好ましい一形態では、少なくとも一方の端部の領域に第1および第2の冷却路間の流体接続部が設けられており、これを介して装置の作動中に冷媒が第1の冷却路から第2の冷却路内へ進入する。このように流体接続部を端部側に配置することによって、第1の冷媒が超伝導電流キャリアに沿ってその端部まで導かれ、それによって電流キャリア全体の十分な冷却が行われることが保証される。その際、第1の冷媒を導入するための冷媒供給管は、反対側の端部、または両端部間の中央等の別の位置に配置することができる。本発明の枠内で、特にまた、冷媒供給管が例えば両端部間の中央で第1の冷却路内に流入し、両端部にそれぞれ1つの流体接続部が冷却路間に存在している配置も考えられる。もっとも、この流体接続部または少なくとも1つの流体接続部をまた装置の端部間の任意の別の場所に設けることも可能である。
【0024】
上述の形態の代替として、またはこれを補完するものとして、第1および第2の冷却路間に、冷却路の長さ方向において互いに離間して配置されている複数の流体接続部が設けられている。
【0025】
つまり、この場合、装置の全長にわたって複数の流体接続部が装置の延在方向に互いに離間して設けられており、これらの流体接続部を通って、それぞれ第1の冷却路を流通する冷媒の少量の部分流が第2の冷却路内に流入する。その際、第1の冷媒は、冷媒供給管からの新たな過冷却液化ガスによって持続的に置換される。それによって、内側の冷却路では、超伝導を維持するために必要な低温が保持され続ける。同時に、新たな冷媒の投入箇所から遠ざかるにつれて、第1の流路内に流入する冷媒の流速が低下する。これによって、管路壁での冷媒の摩擦に起因する入熱が低減される。その際第1および第2の冷却路間に流体接続部として設けられる貫流開口部または管路の数量および直径は、特に装置の長さによって決まり、また投入箇所から最も離れた位置においても超伝導電流キャリアの十分な冷却が保証されるように選定される。
【0026】
本発明のこれもまた有利な一形態では、第1の冷却路および少なくとも1つの第2の冷却路間の流体接続部には、冷媒の流通を制御するための計器が備えられている。このように、冷媒の供給を、例えば周囲からの入熱および周囲温度等のその時々の要件に正確に合わせることができる。
【0027】
装置の端部の外側では、超伝導電流キャリアが、電気素子、例えば通常の伝導性を有する電力供給装置または消費装置、例えば磁石もしくは機械のいずれかに接続されている。あるいは、そこに本発明による装置がもう1つ位置しており、これを用いて超伝導電流キャリアの別の部分の冷却が行われる。
【0028】
本発明のこれもまた有利な一形態では、米国特許第7,453,041(B2)号に記載された構造と同様に、複数の本発明による装置が集められて電気エネルギーを伝送するためのより大きい構造を形成する。それに加えて、これらの装置が前後に一列に配置され、対応するように長い超伝導電流キャリアの冷却に使用される。このように、長さが10km~100kmまたはそれを超える非常に長い超伝導電流キャリアの運用も可能である。
【0029】
図面を用いて本発明の実施例をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】第1の実施形態における本発明による装置の一部を縦断面で示す概略図である。
図2】別の一実施形態における本発明による装置の一部を縦断面で示す概略図である。
図3図2からの装置を図1における切断線III-IIIに沿った横断面で示す概略図である。
図4】さらなる一実施形態における本発明による装置を横断面で示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1に示された装置1は、超伝導電流キャリアを含む。ここに示された実施例では、超伝導電流キャリアは、超伝導ケーブル2、または超伝導電流キャリア2の少なくとも一部分であり、超伝導体2を冷却するための冷却構造3内に収容されている。冷却構造3は、円筒状または箱状のハウジング4を有しており、このハウジング4は、例えば長さが数百メートルから数キロメートルであり、両側が端部5、6で終端している。
【0032】
超伝導ケーブル2は、基本的にハウジング3の軸に沿って配置されている。例えば超伝導ケーブル2に対して同軸上に取り囲むように円筒状または箱状の第1の冷却路7が、例えばこの第1の冷却路7に対して同軸上に取り囲むように円筒状または箱状の第2の冷却路8が延在しており、これらの第2の冷却路8が、断熱性が良好な材料からなる外殻9によって互いから隔てられている。端部5、6の領域では、冷却路7、8が貫通部11a、11b;12a、12bにおいて流体力学的に互いに接続されており、その他の箇所では、図1による実施例では、冷却路7、8間には流体接続が存在していない。
【0033】
第2の冷却路8の径方向外側には排気路13が配置されており、この排気路13もまた断熱材、例えば真空断熱材14によって包囲されている。後ほどより詳細に説明する気相分離器15の領域内の流体接続部を除いて、第2の冷却路8と排気路13との間には流体接続が存在していない。排気路13は、本実施例では端部、ここでは端部5の領域内に設けられている排気管16と流体接続されている。
【0034】
装置1は、冷却装置18と第1の冷却路7との間の流体接続を確立する冷媒供給管17をさらに含む。冷却装置17は、例えば、液体窒素等の液化極低温媒体を過冷却するための過冷却器である。それに加えて、冷却装置18は、戻し管19を介して第2の冷却路8と流体接続されている。さらに、冷却装置18は、貯蔵容器20に接続されており、この貯蔵容器20から、装置1の作動中に必要に応じて新たな冷媒を供給することができる。
【0035】
気相分離器15は、測地学的に見てハウジング3の上方の部分に配置されており、供給管22および戻し管23を介して第2の冷却路8と流体接続されている容器21を含む。さらに、容器21の上方の部分から気体管23が延出し、これが排気路13内に合流する。
【0036】
装置1は、電気エネルギーを伝送するための全体構造の一部である。端部6には、ここで示されている実施例ではここでは示唆されているだけの同一の装置25が接続されており、超伝導ケーブル2が、両方の装置1、25の正面側の端壁26、27を貫通して導かれている。その一方で、ここでは例示的に端部5の領域内に示されているように、装置25の代わりにまた他の電気素子が端部5、6に接続されてもよい。端部5では、超伝導ケーブル2が正面側の端壁28を貫通して導かれて電気素子29と接続されている。電気素子29は、例えば、電気消費装置または電力供給装置または同様に本発明による装置であってもよい。
【0037】
装置1の作動中に、超伝導ケーブル2が過冷却液化ガス、例えば過冷却窒素、過冷却LNG、過冷却液化酸素、または過冷却液化希ガスによって冷却される。このために、貯蔵容器20から冷媒が取り出され、冷却装置18においてその沸点未満の温度にされ、すなわち過冷却され、冷媒供給管17を介して、ここでは不図示の例えばポンプ等の搬送装置によって第1の冷却路7内に投入される。冷媒は、超伝導ケーブル2の超伝導体要素が超伝導状態にある温度で、冷却路7を両方の方向に端部5、6まで通り抜ける。端部5、6の領域では、冷媒が第2の冷却路8内に流れ込み、両方の端部5、6からこの第2の冷却路8を通り抜け、戻し管19内に流入する。冷媒は戻し管19を通って、ここで示されている実施例では冷却装置18に供給され、そこで冷却されて第1の冷却路7内に新たに投入される。冷媒供給管17が一方の端部5、6の領域内に位置している場合、冷媒は第1の冷却路7を他方の端部6、5の方向にのみ流通する。
【0038】
第2の冷却路8内の冷媒は、周囲からの熱の侵入に対する遮熱材として用いられる。入熱によって冷却路8内の冷媒の温度がその沸点まで上昇し、最終的に一部が蒸発する。したがって、冷媒は第2の冷却路8において、液体状および気体状の構成要素から構成される相混合物として存在している。冷媒に含まれている気相は、気相分離器15において液相から分離される。液相が冷却装置18に戻される一方、分離された気相は排気路13を通り抜けて最終的に排気管16を介して漏出する。代替的な一形態では、排気路13が設けられておらず、気相は気相分離器15から直接周囲の外気中に導かれる。排気路13を通って気体状の冷媒が導かれることによって、外部からの入熱に対する保護がさらに向上する。気体状の冷媒は最終的に周囲の外気中に放出されるか、またはさらなる用途のために供給される。その結果、冷却路7、8および冷却装置18を介して循環される冷媒の一部が失われるので、貯蔵タンク20からの新たな冷媒で補わなければならない。
【0039】
ここで示されている第1の冷却路7および第2の冷却路8の同軸上の配置の代わりに、その他の点では、また熱伝導性が良好な材料からなる構造物が遮熱材として設けられてもよい。この構造物は、第1の冷却路7の周囲に、例えば第1の冷却路7の周囲に配置されるスリーブの形態で配置されている。この場合、第2の冷却路は、真空断熱材14の内部で第1の冷却路に対して平行に延在する管路として構成され、前述の構造物と熱的に接続されている。その際、またこの構造物と熱的に接続された複数の第2の冷却路が真空断熱材14の内部で使用されてもよい。
【0040】
図2および3に示された装置101は、同様にハウジング103を備えている。ハウジング103は、例えば超伝導ケーブル102等の超伝導電流キャリアを同軸上に包囲する第1の冷却路107と、内側の冷却路107の周囲に同軸上に配置された第2の冷却路108とを備えており、これらの冷却路が、断熱性が良好な材料からなる外殻109によって互いから隔てられ、真空断熱材104によって包囲されている。流体力学的に冷却路108と排気路116との間には、図2による実施例では、冷却路108に沿って互いに離間して配置された複数の気相分離器が設けられており、一方ここではそれらのうちの1つの気相分離器115のみが示されている。気相分離器115には、気相分離器115において分離された気相を排出するための排気管が備えられている。
【0041】
ただし、装置1とは異なり、冷却路7、8間の流体接続部はハウジング103の端部の領域内に存在しているのではなく、ハウジング103の長さ方向に互いに離間して、例えば100m~1000mの距離をおいて配置された外殻109内の貫通部116a、116b、116cを介して存在し、その他の点では、装置101は装置1と同様に構成されている。
【0042】
装置101の作動中に、ここでは不図示の冷媒供給部から冷媒が矢印の方向に冷却路107を流通し、超伝導ケーブル102を冷却する。その際、貫通部116a、116b、116cを通ってそれぞれ冷媒の少量の部分流が冷却路108内に流出する。それによって、冷却路107を流通する冷媒の質量流量が、冷媒供給部から離れるにしたがって減少し、流速および外殻9の内壁での摩擦によって生じる入熱が減少する。
【0043】
冷媒は第2の冷却路108をここでは不図示の冷媒排出管の方向に流通する。その際、冷媒は周囲からの熱を吸収し、部分的に蒸発し、したがって第2の冷却路108内部でつまり液体状および気体状の構成要素からなる相混合物として存在している。冷媒に含まれている気相は、冷却路108に等間隔で配置されている複数の気相分離器115において、前述のように、未だ液体状の冷媒から分離され、液相から分離されて排気管113を介して周囲の外気中に導かれる。未だ液体状の冷媒は、例えば前述のように冷却装置において冷却され、冷却路107に新たに供給される。ただし、冷媒はまたその他の態様で、例えば超伝導ケーブル102に接続された(ここでは不図示の)非超伝導性の電力供給装置の冷却のために、使用することもできる。
【0044】
図4による実施例が図3に示された実施例と唯一異なっている点は、冷却路107、108間の流体接続部が単に貫通部116a、116b、116cを介して実現されるのではなく、貫通部116a、116b、116cの代わりに管路117が設けられていることである。この管路117は、計器118を用いて、所定のプログラムに従って、または、例えば周囲温度もしくは冷却路117、118の一方内の冷媒の温度等の測定されたパラメータに応じて、制御することができる。
符号の説明
【0045】
1 装置
2 超伝導ケーブル
3 冷却構造
4 ハウジング
5 端部
6 端部
7 第1の冷却路
8 第2の冷却路
9 外殻
10 -
11a、11b 貫通部
12a、12b 貫通部
13 排気路
14 真空断熱材
15 気相分離器
16 排気管
17 冷媒供給管
18 冷却装置
19 戻し管
20 貯蔵容器
21 容器
22 供給管
23 戻し管
24 気体管
25 装置
26 端壁
27 端壁
28 端壁
29 電気素子
101 装置
102 超伝導ケーブル
103 ハウジング
104 -
105 -
106 -
107 第1の冷却路
108 第2の冷却路
109 外殻
110 -
111 -
112 -
113 排気管
114 真空断熱材
115 気相分離器
116a、116b、116c 貫通部
117 管路
118 計器
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】