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特表2024-506118CGRP阻害剤の送達の改善のための組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-09
(54)【発明の名称】CGRP阻害剤の送達の改善のための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/496 20060101AFI20240202BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20240202BHJP
   A61K 31/55 20060101ALI20240202BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20240202BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240202BHJP
   A61P 1/08 20060101ALI20240202BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240202BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240202BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240202BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240202BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240202BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240202BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20240202BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240202BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240202BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240202BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240202BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20240202BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240202BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20240202BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240202BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240202BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240202BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240202BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
A61K31/496
A61K31/4545
A61K31/55
A61K31/517
A61P1/04
A61P1/08
A61P3/04
A61P29/00
A61P19/02
A61P17/02
A61P37/08
A61P17/00
A61P25/08
A61P25/28
A61P15/00
A61P1/16
A61P13/12
A61P21/04
A61P29/00 101
A61P11/00
A61P17/04
A61K9/06
A61K47/14
A61K47/10
A61K9/48
A61K47/26
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023535987
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 US2021063648
(87)【国際公開番号】W WO2022132989
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/126,550
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】308033504
【氏名又は名称】ファイザー アイルランド ファーマシューティカルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100133927
【弁理士】
【氏名又は名称】四本 能尚
(74)【代理人】
【識別番号】100147186
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 眞紀
(74)【代理人】
【識別番号】100174447
【弁理士】
【氏名又は名称】龍田 美幸
(74)【代理人】
【識別番号】100185960
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 理愛
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ エム. コンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジーン エム. デュボウチック
(72)【発明者】
【氏名】ラジェシ クマール
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA56
4C076BB02
4C076CC01
4C076CC15
4C076CC17
4C076CC18
4C076DD08F
4C076DD09F
4C076DD29
4C076DD38
4C076DD43
4C076DD46
4C076DD51
4C076EE23F
4C076EE30
4C076EE42
4C076FF16
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC50
4C086CB05
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA34
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA11
4C086ZA02
4C086ZA06
4C086ZA08
4C086ZA21
4C086ZA22
4C086ZA24
4C086ZA34
4C086ZA36
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA70
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB15
4C086ZC35
(57)【要約】
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)阻害剤と、親油相と、少なくとも1つの親油性界面活性剤と含む、軟質ゲル剤形の形態の医薬製剤が提供される。対象においてカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)阻害剤のバイオアベイラビリティを増大させるための方法であって、対象においてCGRP阻害剤のバイオアベイラビリティを増大させる医薬製剤を経口的に投与するステップを含む方法も提供される。
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製剤の総重量の0.01~20重量%の量の、合成または天然難透過性カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)阻害剤またはその塩もしくは溶媒和物と、
製剤の総重量の50~80重量%の量の、脂肪酸のトリグリセリドを含む親油相と、
製剤の総重量の10~50重量%の量の、ポリオールおよび脂肪酸の部分エステルを含む少なくとも1つの親油性界面活性剤と
を含む、軟質ゲル剤形の形態の医薬製剤。
【請求項2】
合成または天然難透過性CGRP阻害剤が、CGRP抗体、CGRP受容体抗体、CGRP抗体もしくはCGRP受容体抗体由来の抗原結合断片、CGRP注入阻害タンパク質、CGRP生物中和剤、低分子CGRP受容体アンタゴニスト、低分子CGRP阻害剤、またはポリペプチドCGRP阻害剤である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
合成または天然難透過性CGRP阻害剤が、低分子CGRP受容体アンタゴニストである、請求項1または2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
低分子CGRP受容体アンタゴニストが、ザベゲパント、リメゲパント、ウブロゲパント、アトゲパント、テルカゲパントもしくはオルセゲパント、その溶媒和物、または薬学的に許容できるその塩である、請求項2または3に記載の医薬製剤。
【請求項5】
製剤の総重量の1~30重量%の量の、10を超える親水性親油性バランス(「HLB」)を持つ少なくとも1つの親水性界面活性剤をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項6】
少なくとも1つの親水性界面活性剤が、ポリオキシエチレン(20)モノオレエート、PEG8カプリル/カプリン酸グリセリド、PEG6カプリル/カプリン酸グリセリド、ポリ(オキシエチレン)(4)ラウリルエーテルおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項7】
脂肪酸のトリグリセリドが、中鎖脂肪酸である、請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項8】
親油性界面活性剤が、中鎖脂肪酸のモノおよびジグリセリドの混合物を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項9】
水を含まない、請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項10】
それを必要とする対象における、異常なレベルのCGRPに関連する状態の処置または予防のための方法であって、対象に、
製剤の総重量の0.01~20重量%の量の、合成または天然難透過性CGRP阻害剤またはその塩もしくは溶媒和物と、
製剤の総重量の50~80重量%の量の、脂肪酸のトリグリセリドを含む親油相と、
製剤の総重量の10~50重量%の量の、ポリオールおよび脂肪酸の部分エステルを含む少なくとも1つの親油性界面活性剤と
を含み、遅延放出剤形が、その放出がpH依存性であるコーティングされた剤形である、軟質ゲル剤形の形態の医薬製剤を投与するステップを含む、方法。
【請求項11】
合成または天然難透過性CGRP阻害剤が、CGRP抗体、CGRP受容体抗体、CGRP抗体もしくはCGRP受容体抗体由来の抗原結合断片、CGRP注入阻害タンパク質、CGRP生物中和剤、低分子CGRP受容体アンタゴニスト、低分子CGRP阻害剤、またはポリペプチドCGRP阻害剤である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
合成または天然難透過性CGRP阻害剤が、低分子CGRP受容体アンタゴニストである、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
低分子CGRP受容体アンタゴニストが、ザベゲパント、リメゲパント、ウブロゲパント、アトゲパント、テルカゲパントもしくはオルセゲパント、その溶媒和物、または薬学的に許容できるその塩である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
製剤の総重量の1~30重量%の量の、10を超える親水性親油性バランス(「HLB」)を持つ少なくとも1つの親水性界面活性剤をさらに含む、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの親水性界面活性剤が、ポリオキシエチレン(20)モノオレエート、PEG8カプリル/カプリン酸グリセリド、PEG6カプリル/カプリン酸グリセリド、ポリ(オキシエチレン)(4)ラウリルエーテルおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
脂肪酸のトリグリセリドが、中鎖脂肪酸である、請求項10から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
親油性界面活性剤が、中鎖脂肪酸のモノおよびジグリセリドの混合物を含む、請求項10から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
製剤が水を含まない、請求項10から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
状態が、急性片頭痛、慢性片頭痛、群発頭痛、慢性緊張型頭痛、薬物乱用頭痛、外傷後頭痛、脳震盪後症候群、脳外傷および眩暈から選択される障害である、請求項10から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
状態が、慢性疼痛、神経性血管拡張、神経性炎症、炎症性疼痛、神経障害性疼痛、糖尿病性末梢神経障害性疼痛、小径線維神経障害性疼痛、モートン神経腫、慢性膝関節痛、慢性背部痛、慢性股関節痛、慢性手指痛、運動誘発性の筋肉痛、がん疼痛、慢性炎症性皮膚痛、熱傷による疼痛、瘢痕による疼痛、複合性局所疼痛症候群、口腔灼熱症候群、アルコール性多発神経炎、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)または後天性免疫不全症候群(AIDS)関連神経障害、薬物誘発性神経障害、労働性神経障害、リンパ腫性神経障害、骨髄腫性神経障害、多巣性運動神経障害、慢性特発性感覚神経障害、癌性神経障害、急性疼痛、自律神経障害、圧迫性神経障害、血管炎性/虚血性神経障害、側頭骨顎関節痛、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、慢性局所疼痛症候群、眼痛および歯痛から選択される障害である、請求項10から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
状態が、非インスリン依存性真性糖尿病、血管障害、炎症、関節炎、熱性損傷、循環ショック、敗血症、アルコール離脱症候群、オピオイド離脱症候群、モルヒネ耐性、男性および女性におけるホットフラッシュ、閉経に関連する顔面紅潮、アレルギー性皮膚炎、乾癬、脳炎、虚血、脳卒中、てんかん、神経炎症性障害、神経変性疾患、皮膚疾患、神経因性皮膚発赤、皮膚の酒さ、紅斑、耳鳴り、肥満、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、外陰痛、多嚢胞性卵巣症候群、子宮筋腫、神経線維腫症、肝線維症、腎線維症、巣状分節性糸球体硬化症、糸球体腎炎、IgA腎症、多発性骨髄腫、重症筋無力症、シェーグレン症候群、骨関節炎、骨関節炎性椎間板変性疾患、顎関節障害、頸椎捻挫、関節リウマチならびに間質性膀胱炎から選択される障害である、請求項10から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
皮膚疾患が、再発性ヘルペス、接触過敏症、結節性痒疹、慢性掻痒症および尿毒症性掻痒症から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
状態が、慢性閉塞性肺疾患、肺線維症、気管支過敏性、喘息、嚢胞性線維症、慢性特発性咳嗽および毒性傷害から選択される障害である、請求項10から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
毒性傷害が、塩素ガス傷害、マスタードガス傷害、アクロレイン傷害、煙害、オゾン傷害、戦争化学物質曝露および工業用化学物質曝露から選択される、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条の下、2020年12月17日に出願された米国仮特許出願第63/126,550号およびそこから生じるすべての利益に対する優先権を主張するものであり、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、活性な治療用原料のバイオアベイラビリティの増強を提供する、非刺激性、非毒性の組成物に関する。具体的には、本発明は、対象へのカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)阻害剤の送達のための炭水化物界面活性剤を含有する組成物およびそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
CGRP阻害剤は、多くの場合、医薬組成物中で種々の界面活性剤と組み合わせられる。しかしながら、一部の組成物は、その低い経口バイオアベイラビリティにより、CGRP阻害剤の最適な送達を提供しない。加えて、一部の界面活性剤は、粘膜に対して刺激性がある場合がある。理想的なバイオアベイラビリティ増強界面活性剤は、皮膚または粘膜表面に対して非毒性かつ非刺激的であり、膜の構造的完全性および生物学的機能を損傷することなく膜障壁を通るCGRP阻害剤の通過または吸収を増強し、活性な治療用原料のバイオアベイラビリティを増大させるものとなる。
【0004】
急速に崩壊するまたはいわゆる「高速分散性」剤形を生成するためのいくつかのアプローチについて記述されてきた。口腔における崩壊時、薬物物質が嚥下され、胃前吸収および最終的に胃吸収をもたらす。先に記述した高速分散剤形は、活性原料の胃前または胃吸収を促進するために、口内に入ると崩壊するまたは溶解する剤形を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、薬物作用の発現を加速するおよび初回通過効果薬物代謝を低減させる等の改善された特徴を提供する新たな高速分散性剤形の必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)阻害剤のバイオアベイラビリティを増大させるための医薬組成物および方法を対象とする。
【0007】
ある実施形態は、CGRP阻害剤と、吸収増大量の炭水化物界面活性剤とを含む、医薬組成物を提供する。
【0008】
別の実施形態は、CGRP阻害剤と、吸収増大量の炭水化物界面活性剤とを含む医薬組成物を提供し、医薬組成物は、経口固体成形高速分散性剤形の形態である。
【0009】
別の実施形態は、薬学的に許容できる担体と、治療有効量のザベゲパント、その溶媒和物または薬学的に許容できるその塩とを含む、医薬組成物を提供し、医薬組成物は、経口固体成形高速分散性剤形の形態である。
【0010】
別の実施形態は、対象においてCGRP阻害剤のバイオアベイラビリティを増大させるための方法であって、上記の医薬組成物のいずれかを経口的に投与するステップを含む方法を提供する。
【0011】
別の実施形態は、それを必要とする対象において片頭痛を処置するための方法であって、対象に、上記の医薬組成物のいずれかを経口的に投与するステップを含む方法を提供する。
【0012】
別の実施形態は、それを必要とする対象において片頭痛疼痛緩和の急速な発現を提供するための方法であって、対象に、上記の医薬組成物のいずれかを経口的に投与するステップを含む方法を提供する。
【0013】
別の実施形態は、それを必要とする対象において片頭痛疼痛再発の発生率低減を提供するための方法であって、対象に、上記の医薬組成物のいずれかを経口的に投与するステップを含む方法を提供する。
【0014】
別の実施形態は、それを必要とする対象における異常なレベルのCGRPに関連する状態の処置または予防のための方法であって、対象に、上記の医薬組成物のいずれかを投与するステップを含む方法を提供する。
【0015】
別の実施形態は、それを必要とする対象における異常なレベルのCGRPに関連する状態の処置または予防のための方法であって、対象に、製剤の総重量の0.01~20重量%の量の、合成または天然難透過性カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)阻害剤またはその塩もしくは溶媒和物と;製剤の総重量の50~80重量%の量の、脂肪酸のトリグリセリドを含む親油相と;製剤の総重量の10~50重量%の量の、ポリオールおよび脂肪酸の部分エステルを含む少なくとも1つの親油性界面活性剤とを含む、医薬製剤を投与するステップを含む方法を提供する。
【0016】
別の実施形態は、それを必要とする対象における異常なレベルのCGRPに関連する状態の処置または予防のための方法であって、対象に、製剤の総重量の0.01~20重量%の量の、合成または天然難透過性CGRP阻害剤またはその塩もしくは溶媒和物と;製剤の総重量の50~80重量%の量の、脂肪酸のトリグリセリドを含む親油相と;製剤の総重量の10~50重量%の量の、ポリオールおよび脂肪酸の部分エステルを含む少なくとも1つの親油性界面活性剤とを含み、遅延放出剤形が、その放出がph依存性であるコーティングされた剤形である、医薬製剤を含む剤形を投与するステップを含む方法を提供する。
【0017】
これらおよび/または他の態様は、添付の図面と併せた以下の実施形態の記述から明らかとなり、より容易に分かるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】単回50ミリグラム(mg)舌下錠剤投与後のイヌ血漿中における平均BHV-3500濃度(ng/ml)を示す血漿濃度(1ミリリットル当たりのナノグラム、ng/ml)対時間(時、hr)のグラフである。
図2】BHV-3500 QD軟質ゲル50mg PK研究のプロファイルを示す血漿濃度(1ミリリットル当たりのナノグラム、ng/ml)対公称時間(時、hr)のグラフである。
図3】BHV-3500 QD軟質ゲル50mg PK研究のプロファイルを示す血漿濃度(1ミリリットル当たりのナノグラム、ng/ml)対公称時間(時、hr)のグラフである。
図4】BHV-3500 QD軟質ゲル50mg PK食物効果研究のプロファイルを示す血漿濃度(1ミリリットル当たりのナノグラム、ng/ml)対公称時間(日)のグラフである。
図5】BHV-3500 QD軟質ゲル50mg PK食物効果研究のプロファイルを示す血漿濃度(1ミリリットル当たりのナノグラム、ng/ml)対公称時間(日)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の詳細な記述は、当業者が本発明を実践するのを支援するために提供される。例示的な実施形態について以後詳細に記述する。しかしながら、これらの実施形態は例示的なものに過ぎず、本開示は、添付の請求項の範囲に限定されず、むしろそれによって定義される。当業者ならば、本開示の趣旨または範囲から逸脱することなく、本明細書において記述されている実施形態における修正および変形を行うことができる。
【0020】
したがって、実施形態は、本明細書の態様を説明するために、構造およびスキームを参照することによって単に後述される。本明細書において使用される場合、用語「および/または」は、関連するリスト項目の1つまたは複数のありとあらゆる組合せを含む。用語「または」は、「および/または」を意味する。「の少なくとも1つ」等の表現は、要素のリストに先行する場合、要素のリスト全体を修飾し、リストの個々の要素を修飾しない。
【0021】
ある要素が別の要素「上に」あると称される場合、それは他の要素と直接接触していてもよいし、または介在要素がその間に存在してもよいことが理解されよう。対照的に、ある要素が別の要素「上に直接」あると称される場合、存在する介在要素はない。
【0022】
種々の要素、成分、領域、層および/またはセクションを記述するために、第1の、第2の、第3の等の用語が本明細書において使用され得るが、これらの要素、成分、領域、層および/またはセクションは、これらの用語によって限定されるべきではないことが理解されよう。これらの用語は、1つの要素、成分、領域、層またはセクションを別の要素、成分、領域、層またはセクションから識別するために使用されるに過ぎない。故に、以下で論じる第1の要素、成分、領域、層またはセクションは、本発明の実施形態の教示から逸脱することなく、第2の要素、成分、領域、層またはセクションと称され得る。
【0023】
用語「を含む(comprises)」および/もしくは「を含む(comprising)」、または「を含む(includes)」および/もしくは「を含む(including)」は、本明細書において使用される場合、記載されている特色、領域、整数、ステップ、操作、要素および/または成分の存在を特定するが、1つまたは複数の他の特色、領域、整数、ステップ、操作、要素、成分および/またはそれらの群の存在も追加も除外しないことが理解される。
【0024】
別段の定義がない限り、本明細書において使用されるすべての技術的および科学的用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書において使用される術語は、特定の実施形態を記述することのみのためであり、限定的であることを意図したものではない。一般的に使用される辞書において定義されているもの等の用語は、関連技術分野および本開示の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有するとして解釈されるべきであり、本明細書において明示的にそのように定義されていない限り、理想化されたまたは過度に正式な意味では解釈されないであろうことがさらに理解されよう。
【0025】
本出願において使用される場合、本明細書において別段明示的に提供されているものを除き、以下の用語のそれぞれは、以下に明記する意味を有するものとする。本出願全体を通して、追加の定義が明記される。ある用語が本明細書において具体的に定義されていない事例において、該用語は、本発明について記述する際のその使用の文脈において該用語を適用する当業者によって、当該技術分野において認識されている意味が与えられる。
【0026】
冠詞「a」および「an」は、文脈上明確に別のことを指示するのでない限り、冠詞の文法的対象物の1つまたは1つ超(すなわち、少なくとも1つ)を指す。例として、「要素」は、1つの要素または1つを超える要素を意味する。
【0027】
本明細書において使用される場合、具体的な定義が別段提供されていない場合、用語「置換されている」は、置換基または化合物の少なくとも1個の水素の代わりに、重水素、ハロゲン(-F、-Cl、-Br、-I)、ヒドロキシ基(-OH)、アミノ基(-NH)、カルボキシル基(-COH)、置換もしくは非置換C1~C10アミン基、ニトロ基(-NO)、C1~C10アルキル基、C3~C10シクロアルキル基、C6~C12アリール基、C1~C10アルコキシ基、トリフルオロメチル基(-CF)等のC1からC10トリフルオロアルキル基、またはシアノ基(-CN)で置換されている基を指す。
【0028】
本発明の医薬組成物を作製するために有用な出発材料は、市販のものを容易に入手可能であるか、または当業者によって調製され得る。
【0029】
追加の態様は、ある程度この後の記述に明記され、ある程度記述から明らかとなるであろう。
【0030】
本発明の実施形態は、対象へのCGRP阻害剤の送達の改善のための組成物およびそれらの使用方法を対象とする。ある実施形態は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体アンタゴニストと、吸収増大量の炭水化物界面活性剤とを含む、医薬組成物を提供する。
【0031】
CGRP阻害剤
本発明の実施形態に従う組成物は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)阻害剤を含む。本明細書において使用される場合、用語「CGRP阻害剤」は、CGRPリガンドまたはCGRP受容体の阻害剤であってよい化学実体を指す。故に、用語「CGRP阻害剤」は、CGRP受容体阻害剤を包含する。CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)は、37アミノ酸神経ペプチドであり、これは、カルシトニン、アドレノメデュリンおよびアミリンを含むペプチドのファミリーに属する。CGRPが片頭痛の病態生理学に関与することを示す実質的なエビデンスが収集されてきた。CGRP阻害剤が片頭痛を処置する際に有効であることを証明するために臨床試験が行われた。臨床試験後、いくつかのCGRP阻害剤が規制当局によって承認され、急性片頭痛の処置および片頭痛予防のために販売されている。
【0032】
CGRP阻害剤は、CGRP抗体、CGRP受容体抗体、CGRP抗体もしくはCGRP受容体抗体由来の抗原結合断片、CGRP注入阻害タンパク質、CGRP生物中和剤(bio-neutralizing agent)、低分子CGRP受容体アンタゴニスト、低分子CGRP阻害剤、またはポリペプチドCGRP阻害剤であってよい。
【0033】
CGRP阻害剤は、CGRP受容体アンタゴニストであってよい。本発明に従うCGRP受容体アンタゴニストは、好ましくは非生物学的CGRPアンタゴニストである。つまり、本発明の非生物学的CGRP受容体アンタゴニストは、好ましくは、抗体、抗体断片またはペプチドのいずれも含有しない。CGRP受容体アンタゴニストは、低分子受容体アンタゴニストであってよい。好ましくは、本発明に従う低分子CGRP受容体アンタゴニストは、約900ダルトン未満、例えば、約800ダルトン未満、約700ダルトン未満、約600ダルトン未満、約500ダルトン未満、約400ダルトン未満、または約300ダルトン未満の質量を持つ分子を含有する。そのような非生物学的CGRPアンタゴニストの例は、リメゲパント、ザベゲパント、ウブロゲパント、アトゲパント、テルカゲパントおよびオルセゲパントを含む。ある実施形態では、低分子CGRP受容体アンタゴニストは、(R)-N-(3-(7-メチル-1H-インダゾール-5-イル)-1-(4-(1-メチルピペリジン-4-イル)ピペラジン-1-イル)-1-オキソプロパン-2-イル)-4-(2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-3-イル)ピペリジン-1-カルボキサミド(ザベゲパント)であってよい。
【0034】
リメゲパントは、化学式C2828およびIUPAC名[(5S,6S,9R)-5-アミノ-6-(2,3-ジフルオロフェニル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-シクロヘプタ[b]ピリジン-9-イル]4-(2-オキソ-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボキシレートを有する。リメゲパントは、BHV-3000としても公知であり、本明細書ではそのように称される。
【0035】
リメゲパントの構造は、
【0036】
【化1】
である。
【0037】
リメゲパントは、例えば、2011年4月21日に公開されたWO2011/046997において記述されている。本発明の好ましい態様では、リメゲパントは、ヘミ硫酸セスキ水和物塩の形態で存在する。この好ましい塩形態は、2013年9月6日に公開されたWO2013/130402において記述されている。
【0038】
塩形態の化学式はC2828・0.5HSO・1.5HOであり、構造は次の通り:
【0039】
【化2】
である。
【0040】
別のCGRPアンタゴニストはザベゲパント(BHV-3500としても公知)であり、これは、2011年10月6日に公開されたWO2011/123232において記述されており、以下の構造:
【0041】
【化3】
を有する。
【0042】
別のCGRPアンタゴニストはウブロゲパントであり、これは、以下の構造:
【0043】
【化4】
を有する。
【0044】
別のCGRPアンタゴニストはアトゲパントであり、これは、以下の構造:
【0045】
【化5】
を有する。
【0046】
別のCGRPアンタゴニストはテルカゲパントであり、これは、以下の構造:
【0047】
【化6】
を有する。
【0048】
別のCGRPアンタゴニストはオルセゲパントであり、これは、以下の構造:
【0049】
【化7】
を有する。
【0050】
CGRP阻害剤は、低い経口バイオアベイラビリティを有し得る。低い経口バイオアベイラビリティは、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、または5%以下であってよい。
【0051】
本明細書において記述されている組成物は、1~1000mgのCGRP阻害剤を含み得る。例えば、組成物は、約1、5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、200、250、300、400、500、600、700、800、または900mgのCGRP阻害剤を含み得る。CGRP阻害剤の量は、上記値のいずれかの間の範囲に及んでよい。
【0052】
CGRP阻害剤は、1日当たり約1~1000mgの用量で投与され得る。別の態様では、CGRP阻害剤は、1日当たり約1、5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、200、250、300、400、500、600、700、800、または900mgの用量で投与される。CGRP阻害剤の1日用量は、上記値のいずれかの間の範囲に及んでよい。CGRP阻害剤の1日用量は、上記値のいずれかの間の範囲に及んでよい。CGRP阻害剤を含む組成物は、単回用量として投与され得る。
【0053】
CGRP阻害剤は、少なくとも1週間にわたってかつ必要な限り長期間にわたって投与され得る。例えば、CGRP阻害剤は、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、または12週間にわたって投与され得る。
【0054】
炭水化物界面活性剤
組成物は、吸収増大量の炭水化物界面活性剤をさらに含む。本明細書において使用される場合、「炭水化物」は、炭水化物鎖を形成するための、直鎖もしくは環形態の単炭水化物、オリゴ炭水化物もしくはポリ炭水化物またはそれらの組合せも含めたものである。オリゴ炭水化物は、2つ以上であるが100未満の一水和物残基を有する炭水化物である。ポリ炭水化物は、100以上の一水和物残基を含む。炭水化物は、例えば、任意の現在市販されている単炭水化物種から選択されてもよいし、または合成されてもよい。使用可能な多くの炭水化物の一部の例は、グルコース、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、スクロースおよびトレハロースを含む。好ましい炭水化物は、マルトース、スクロースおよびグルコースを含む。
【0055】
ある実施形態では、炭水化物界面活性剤はアルキルグリコシドであってよい。本明細書において使用される場合、用語「アルキルグリコシド」は、当技術分野において公知であるような、任意の疎水性アルキルとの結合によって接合された任意の炭水化物を指す。アルキルグリコシドは、好ましくは非毒性かつ非イオン性であり、経口、眼内、鼻腔内、鼻涙、鼻から脳、吸入もしくは経肺、口腔(舌下または頬側細胞)、または脳脊髄液(CSF)送達ルートを介して化合物とともに投与される場合に、CGRP阻害剤の吸収を増大させる。好適な化合物は、本明細書において明記されている方法を使用して決定することができる。
【0056】
本明細書において開示されるアルキルグリコシドは、公知の手順によって、すなわち、例えば、Rosevearら、Biochemistry 19:4108~4115(1980)もしくはKoeltzowおよびUrfer、J.Am.Oil Chem.Soc.、61:1651~1655(1984)、米国特許第3,219,656号ならびに米国特許第3,839,318号において記述されている通りに化学的に、または、例えば、Liら、J.Biol.Chem.、266:10723~10726(1991)もしくはGopalanら、J.Biol.Chem.267:9629~9638(1992)において記述されている通りに酵素的に、合成され得る。
【0057】
本発明のアルキルグリコシドは、オクチル-、ノニル-、デシル-、ウンデシル-、ドデシル-、トリデシル-、テトラデシル-、ペンタデシル-、ヘキサデシル-、ヘプタデシル-およびオクタデシル-α-もしくはβ-D-マルトシド、-グルコシドまたは-スクロシド(KoeltzowおよびUrfer;Anatrace Inc.、Maumee、Ohio;Calbiochem、San Diego、Calif.;Fluka Chemie、Switzerlandに従って合成したもの)等のアルキルグリコシド;ヘプチル、オクチル、ドデシル-、トリデシル-およびテトラデシル-β-D-チオマルトシド(Defaye,J.およびPederson,C.、「Hydrogen Fluoride,Solvent and Reagent for Carbohydrate Conversion Technology」、Carbohydrates as Organic Raw Materials、247~265(F.W.Lichtenthaler編)VCH Publishers、New York(1991);Ferenci,T.、J.Bacteriol、144:7~11(1980)に従って合成したもの)等のアルキルチオマルトシド;ヘプチル-またはオクチル1-チオα-もしくはβ-D-グルコピラノシド(Anatrace,Inc.、Maumee、Ohio;Saito,SおよびTsuchiya,T.Chem.Pharm.Bull.33:503~508(1985)を参照)等のアルキルチオグルコシド;アルキルチオスクロース(例えば、Binder,T.P.およびRobyt,J.F.、Carbohydr.Res.140:9~20(1985)に従って合成したもの);アルキルマルトトリオシド(KoeltzowおよびUrferに従って合成したもの);スクロースβ-アミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸アミド(豪特許第第382,381号(1987);Chem.Abstr.、108:114719(1988)ならびにGruberおよびGreber 95~116ページに従って合成したもの);アルキル鎖とのアミド結合によって連結されたパラチノースおよびイソマルタミンの誘導体(Kunz,M.、「Sucrose-based Hydrophilic Building Blocks as Intermediates for the Synthesis of Surfactants and Polymers」、Carbohydrates as Organic Raw Materials、127~153に従って合成したもの);尿素によってアルキル鎖と連結されたイソマルタミンの誘導体(Kunzに従って合成したもの);スクロースβ-アミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸ウレイド(GruberおよびGreber、95~116ページに従って合成したもの);ならびにスクロースβ-アミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸アミド(豪特許第382,381号(1987)、Chem.Abstr.、108:114719(1988)ならびにGruberおよびGreber、95~116ページに従って合成したもの)を含み得るがこれらに限定されない。
【0058】
別の実施形態では、炭水化物界面活性剤は炭水化物エステルであってよい。本明細書において使用される場合、用語「炭水化物エステル」は、任意の脂肪酸の炭水化物エステルを指す。炭水化物エステルは、炭水化物中のいくつかのヒドロキシル基を理由として多くの形態をとることができ、反応、およびアセテートから炭水化物と反応し得るより大きくより嵩張る脂肪酸までの多くの脂肪酸基に利用可能である。この柔軟性は、使用される脂肪酸部分に基づいて多くの生成物および官能基が調整され得ることを意味する。炭水化物エステルは、とりわけ界面活性剤および乳化剤として食品および非食品への使用を有し、医薬品、化粧品、洗剤および食品添加物における用途が成長している。それらは、生分解性、非毒性であり皮膚に優しい。ある実施形態では、炭水化物エステルはスクロースエステルであってよい。
【0059】
本明細書において開示される炭水化物界面活性剤は、親水性炭水化物と連結された疎水性アルキル基を有し得る。疎水性アルキル基と親水性炭水化物との間の結合は、数ある可能性の中でも、グリコシド、チオグリコシド(Horton)、アミド(Carbohydrates as Organic Raw Materials、F.W.Lichtenthaler編、VCH Publishers、New York、1991)、ウレイド(豪特許第386,414号(1988);Chem.Abstr.110:137536ページ(1989);Gruber,H.およびGreber,G.、「Reactive Sucrose Derivatives」、Carbohydrates as Organic Raw Materials、95~116ページを参照)またはエステル結合(Sugar Esters:Preparation and Application、J.C.Colbert編(Noyes Data Corp.、New Jersey)、(1974))を含み得る。さらに、好ましいグリコシドは、約9~16個の炭素原子のアルキル鎖とグリコシド結合によって連結されたマルトース、スクロースおよびグルコース、例えば、ノニル-、デシル-、ドデシル-およびテトラデシルスクロシド、グルコシドおよびマルトシドを含み得るがこれらに限定されない。これらの組成物は、両親媒性であり、アルコールおよびオリゴ炭水化物に分解することから非毒性である。
【0060】
別の実施形態では、炭水化物界面活性剤は、実験的に計算または決定され得る特徴的な親水性親油性バランス(HLB)数を有するアルキルグリコシドおよび/または炭水化物エステルを含み得る(Schick,M.J.Nonionic Surfactants、607ページ(New York:Marcel Dekker,Inc.(1967))。HLB数は、界面活性剤の親水性の特徴の直接的反映である、すなわち、HLB数が大きいほど、化合物はより親水性である。HLB数は、式:(20×MW親水性成分)/(MW疎水性成分+MW親水性成分)によって計算することができ、式中、MW=分子量である(Rosen,M.J.、Surfactants and Interfacial Phenomena、242~245ページ、John Wiley、New York(1978))。HLB数は、界面活性剤の親水性の特徴の直接的表現である、すなわち、HLB数が大きいほど、化合物はより親水性である。炭水化物界面活性剤は、約10から20まで、例えば約11から15までのHLB数を有し得る。
【0061】
上述した通り、疎水性アルキルは、所望されている疎水性および炭水化物部分の親水性に応じて、任意の所望のサイズのものが選択され得る。ある実施形態では、アルキル鎖の範囲は、約9から約24個までの炭素原子、例えば、約9から約16または約14個までの炭素原子であってよい。一部のグリコシドは、9、10、12、13、14、16、18、20、22または24個の炭素原子のアルキル鎖とのグリコシド結合によって連結されたマルトース、スクロースおよびグルコース、例えば、ノニル-、デシル-、ドデシル-およびテトラデシルスクロシド、グルコシドおよびマルトシドを含み得るがこれらに限定されない。これらの組成物は、アルコールおよびオリゴ炭水化物に分解することから非毒性であり、両親媒性である。
【0062】
上記の例は、本明細書において特許請求される発明において使用されるグリコシドの種類を例証しているが、リストは網羅的ではない。グリコシドを選択する際には、請求項の基準に適合する上記の化合物の誘導体も考慮すべきである。化合物はいずれも、本明細書においておよび実施例において教示される方法に準拠して、効能についてスクリーニングされ得る。
【0063】
製剤および投与方法
本発明の実施形態に従う組成物は、錠剤、カプセル剤、坐剤、点滴剤、スプレー剤またはエアゾール剤として投与されてよい。組成物は、口腔内速崩壊錠として投与されてよい。組成物は、持続放出または遅延破裂フォーマットで投与されてもよい。スプレーおよびエアゾール投与は、適切なディスペンサーの使用により実現され得る。持続放出フォーマットは、眼内挿入物、侵食性微小粒子、膨潤性粘膜付着性粒子、pH感受性微小粒子、ナノ粒子/ラテックスシステム、イオン交換樹脂ならびに他のポリマー性ゲルおよび移植片であってもよい(オキュサート、Alza Corp.、California;Joshi,A.、S.PingおよびK.J.Himmelstein、特許出願WO第91/19481号)。これらのシステムは、洗い出しおよび非生産的な薬物損失を防止する吸収面との長期にわたる薬物接触を維持する。長期にわたる薬物接触は、皮膚および粘膜表面に対して非毒性である。
【0064】
本明細書において開示される組成物は安定である。例えば、Baudysらは、米国特許第5,726,154号において、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム、界面活性剤)および有機酸を含む水性液体組成物中のカルシトニンが少なくとも6か月間にわたって安定であることを示す。同様に、本発明の界面活性剤組成物は、CGRP阻害剤と混和された場合に改善された安定化特徴を有する。これらの製剤において有機酸は要求されない。例えば、組成物は、約4℃から25℃で維持された場合、約6か月間以上にわたってCGRP阻害剤の安定性を維持し得る。
【0065】
本明細書において開示される組成物の安定性は、一つには、それらの高い無毒性量(NOAEL)による。環境保護庁(EPA)は、無毒性量(NOAEL)を、曝露集団とその適切な対照との間で有害作用の頻度または重症度において統計的にまたは生物学的に有意な増大がない曝露レベルとして定義している。故に、用語「無毒性量」(またはNOAEL)は、定義された条件下、標的生物の形態学、機能的能力、成長、発育または寿命の検出可能な有害な変化を引き起こさない、実験または観察によって判明する物質の最高濃度または量である。
【0066】
国際連合の世界保健機関(WHO)の食糧農業機関(FAO)は、一部のアルキルグリコシドが非常に高いNOAELを有し、いかなる有害作用もなしにこれらのアルキルグリコシドの消費の増大を可能にすることを示している。この報告はワールド・ワイド・ウェブでinchem.org/documents/jecfa/jecmono/v10je11.htmにおいて見ることができる。例えば、食料品において使用されるスクロースエステルであるドデカン酸スクロースについてのNOAELは、約20~30グラム/キログラム/日であり、例えば、70キログラムの人物(約154ポンド)は、いかなる観察可能な有害作用もなしに、1日当たり約1400~2100グラム(または約3から4.6ポンド)のドデカン酸スクロースを消費することができる。典型的には、ヒトの許容できる1日摂取量はNOAELの約1%であり、これは、1日当たり約14~21グラム、または1400万マイクログラムから2100万マイクログラムに無制限に変換できる。NOAELの定義および他の関連の定義は、ワールド・ワイド・ウェブでepa.gov/OCEPAtermsにおいて見ることができる。故に、いくつかの作用は本発明において予期されるアルキルグリコシドレベルで生成され得るが、該レベルは有害とも有害作用の前兆ともみなされない。
【0067】
したがって、約0.125重量%の濃度の、少なくとも1つのアルキルグリコシド、例えばテトラデシルマルトシド(TDM;またはイントラベイル(Intravail)A)を有する本発明の実施形態に従う組成物で、1日当たり2回もしくは1日当たり3回またはそれ以上処置された対象は、処置レジメンに応じて、1日当たり合計約200から300マイクログラムのTDMを消費する。そのため、TDMの有効用量は、NOAELの100分の1以下(すなわち、1/1000)であり、許容できる1日摂取量であるNOAELの1%よりはるかに低下するか、またはこの場合には、許容できる1日摂取量の約1/50,000である。別の言い方をすれば、本明細書において開示されるアルキルグリコシドは、使用されるアルキルグリコシドの量または濃度が有害作用を引き起こさず、いかなる有害作用もなしに安全に消費され得るような、高いNOAELを有する。
【0068】
本発明の実施形態に従う組成物は、生理学的に非毒性かつ非刺激性であるために安定でもある。本明細書において使用される場合、用語「非毒性」は、アルキルグリコシド分子が、ヒト投与および消費に好適である十分に低い毒性を有することを意味する。好ましいアルキルグリコシドは、それらが適用される組織に対して非刺激性である。使用されるいかなるアルキルグリコシドも、細胞に損傷を引き起こさないよう、細胞に対して毒性が最小限または全くないものであるべきである。しかし、任意の所与のアルキルグリコシドについての毒性は、使用されるアルキルグリコシドの濃度に応じて変動し得る。選択されたアルキルグリコシドが体によって代謝されるまたは消失する場合、およびこの代謝または消失が害をもたらすほど毒性にならない様式で行われる場合も有益である。本明細書において使用される場合、用語「非刺激性」は、作用物質が、皮膚の表面または粘膜との即時の、長期にわたるまたは繰り返される接触後に、炎症を引き起こさないことを意味する。
【0069】
本明細書において開示される組成物は、典型的には、組成重量の100%に基づき、約0.01重量%から20重量%までの量で存在する。例えば、組成物は、組成重量の100%に基づき、約0.01重量%から5重量%まで、約0.01重量%から2重量%まで、約0.01重量%から1重量%まで、または約0.01重量%から0.125重量%までの量で存在し得る。炭水化物界面活性剤は、組成物中に存在する他の成分に適合するように製剤化され得る。液体またはゲルまたはカプセルまたは注射用またはスプレー組成物において、炭水化物界面活性剤は、CGRP阻害剤の安定性を促進するまたは少なくとも分解しないように製剤化され得る。さらに、組成物は、吸収エンハンサーの濃度を可能な限り低く保つことにより、所望の効果を依然として維持しながら、濃度を最適化する。
【0070】
本明細書において開示される組成物は、対象に投与されると、対象への同等濃度の化合物の筋肉内注射後の組織(例えば、中枢神経系またはCNS)または体液または血漿における化合物のピーク濃度(またはCmax)と比較して、約1.15%、1.25%、1.50%、1.75%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%または50%以上である、対象の組織もしくは体液におけるまたは血漿におけるCmaxで、CGRP阻害剤の粘膜送達の増強を産出する。
【0071】
CGRP阻害剤のうちのどのくらいが、設定された期間、例えば24時間以内に血流に到達するかの測定は、24時間以上の期間の間の種々の時間における薬物血中濃度をプロットし、次いで、0から24時間の間の曲線下面積(AUC)を測定することによって計算することもできる。同様に、薬物効能の測定は、約0.1から1.0時間の間の対象の組織(例えば、CNS)もしくは体液におけるまたは血漿における生物学的活性化合物の最高濃度到達時間(Tmax)から決定することもできる。本明細書において開示される治療用組成物は、約1.5倍以上、例えば、約1.5から約5倍、約1.5から約4倍、約1.5から約3倍、または約1.5から約2倍だけ、薬物作用の発現速度を増大させる(すなわち、Tmaxを低減させる)。
【0072】
また、本発明の実施形態に従う治療用組成物または製剤は、必要とする対象に、全身にまたは局部的に投与または送達され得る。好適なルートは、例えば、経口、眼内、経鼻、鼻から脳、鼻涙、吸入または経肺、口腔(舌下または頬側細胞)、経粘膜投与、膣内、経直腸、筋肉内、皮下、静脈内、腹腔内またはCSF送達を含む非経口送達を含み得る。その上、送達モード、例えば、液体、ゲル、錠剤、スプレー等も、対象への送達方法によって決まることになる。
【0073】
加えて、本発明の実施形態に従う治療用組成物は、薬学的に許容できる担体を含み得る。本明細書において使用される場合、用語「薬学的に許容できる担体」は、水性または非水性、例えばアルコール性もしくは脂肪性の作用物質、またはそれらの混合物を指し、これは、界面活性剤、皮膚軟化剤、滑沢剤、安定剤、染料、香料、保存剤、pHの調整のための酸もしくは塩基、溶媒、乳化剤、ゲル化剤、モイスチャライザー、安定剤、湿潤剤、徐放剤、保湿剤、または特定の形態の医薬組成物に一般的に含まれる他の成分を含有し得る。薬学的に許容できる担体は、当技術分野において周知であり、例えば、水もしくは生理緩衝溶液もしくは他の溶媒等の水溶液またはグリコール、グリセロール等のビヒクル、およびオリーブ油または注射用有機エステル等の油を含む。薬学的に許容できる担体は、例えば、特異的阻害剤の吸収を安定させるまたは増大させるように作用する生理学的に許容できる化合物、例えば、グルコース、スクロースもしくはデキストラン等の炭水化物、アスコルビン酸もしくはグルタチオン等の酸化防止剤、キレート化剤、低分子量タンパク質または他の安定剤もしくは添加剤を含有し得る。薬学的に許容できる担体は、蒸留水、ベンジルアルコール、ラクトース、デンプン、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、アルギン酸、コロイド状シリカ、二酸化チタンおよび香味剤等の物質から選択されてもよい。
【0074】
加えて、CGRP阻害剤の加水分解開裂に対するアルキル炭水化物または炭水化物アルキルエステルの感受性を減少させるために、アルキル炭水化物または炭水化物アルキルエステル内の種々の酸素原子は、硫黄によって置換されていてよい(Defaye,J.およびGelas,J.、Studies in Natural Product Chemistry(Atta-ur-Rahman編)第8巻、315~357ページ、Elsevier、Amsterdam、1991)。例えば、炭水化物環のヘテロ原子は、酸素もしくは硫黄のいずれであってもよく、またはオリゴ炭水化物中の単炭水化物残基間の結合は、酸素であっても硫黄であってもよい(Horton,D.およびWander,J.D.、「Thio Sugars and Derivatives」、The Carbohydrates:Chemistry and Biochemistry、第2版、第IB巻(W.ReymanおよびD.Horton編)、799~842ページ(Academic Press、New York)、(1972))。オリゴ炭水化物は、α(アルファ)またはβ(ベータ)アノマー配置のいずれかを有し得る(Pacsu,E.ら、Methods in Carbohydrate Chemistry(R.L.Whistlerら編)第2巻、376~385ページ、Academic Press、New York 1963を参照)。
【0075】
本発明の実施形態に従う組成物は、CGRP阻害剤ならびに1つのアルキルグリコシドおよび/もしくは炭水化物アルキルエステルならびに適切な医薬担体または添加剤、例えばマンニトール、コーンスターチ、ポリビニルピロリドン等を混合し、混合物を顆粒化し、最後にそれをコーンスターチ、ステアリン酸マグネシウム等の医薬担体の存在下で圧縮することによって、錠剤形態で調製され得る。所望ならば、このようにして調製された製剤は、糖衣もしくは腸溶コーティングを含んでもよいし、または有効成分が徐々に、例えば適切なpH培地中で放出されるような手法で覆われていてもよい。
【0076】
用語「腸溶コーティング」は、治療用組成物またはコアの周囲を包む、囲む、またはそこに層もしくは膜を形成する、ポリマーである。また、腸溶コーティングは、コーティングに適合するまたは不適合なCGRP阻害剤を含有していてよい。一例では、錠剤組成物は、腸溶コーティングポリマーを、より高いpHレベル(例えば、4.0を超える、4.5を超える、5.0を超えるまたはそれよりも高いpH)で阻害剤を溶解もしくは放出し、低いpHレベル(例えば、pH4以下)ではしない、またはその逆の、適合するCGRP阻害剤とともに含み得る。
【0077】
ある実施形態では、本発明の依存性放出形態は、
(a)
(i)CGRP阻害剤、ならびに
(ii)少なくとも1つのアルキルグリコシドおよび/または炭水化物アルキルエステルを含む界面活性剤
を含むコアと、
(b)コアを囲む少なくとも1つの膜コーティングと
を含み、
コーティングが、不透過性、透過性、半透過性または多孔質コーティングであり、定義されたpHの水性環境との接触時に、より透過性または多孔質になる、錠剤であってよい。
【0078】
本明細書において使用される場合、用語「膜」は、「コーティング」またはその同等物と同義である。該用語は、水溶液もしくは体液に対しておよび/またはその中に封入されている治療剤もしくは薬物に対して不透過性、透過性、半透過性または多孔質である、医薬、例えば錠剤の領域を特定するために使用される。膜がCGRP阻害剤に対して透過性、半透過性または多孔質である場合、阻害剤は、溶液中またはインビボで膜の開口部もしくは細孔を通して放出され得る。多孔質膜は、機械的に(例えば、レーザーを使用して膜層に微細な穴または細孔を穿設して)製造されてもよいし、またはコーティングポリマーの物理化学的特性により付与されてもよい。本発明の膜またはコーティングポリマーは、当技術分野において周知であり、セルロースエステル、セルロースジエステル、セルローストリエステル、セルロースエーテル、セルロースエステル-エーテル、セルロースアシレート、セルロースジアシレート、セルローストリアシレート、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロースおよび酢酸酪酸セルロースを含む。他の好適なポリマーは、米国特許第3,845,770号、同第3,916,899号、同第4,008,719号および同第4,036,228号において記述されている。
【0079】
さらに、本明細書において記述されている腸溶コーティングは、可塑剤、および溶液中またはインビボで懸濁液のpHを達成するまたは調整するために十分な量の水酸化ナトリウム(NaOH)を含んでいてよい。可塑剤の例は、クエン酸トリエチル、トリアセチン、セベシン酸トリブチルまたはポリエチレングリコールを含む。水酸化カリウム、炭酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムを含む他のアルカリ化剤を使用して、溶液中またはインビボで懸濁液のpHを達成するまたは調整することもできる。
【0080】
したがって、ある実施形態では、腸溶コーティングは、ある特定のpHまたはpH範囲を持つある特定の培地中である特定のパーセンテージのCGRP阻害剤を放出するように設計され得る。例えば、本発明の実施形態に従う組成物は、酸性環境(例えば、胃)において化学的に不安定である少なくとも1つのCGRP阻害剤を包むまたは保護する少なくとも1つの腸溶コーティングを含み得る。腸溶コーティングは、CGRP阻害剤を酸性環境(例えば、pH<3)から保護しながら、酸性度が低い場所、例えば、pHが3または4または5以上である小腸および大腸の領域において阻害剤を放出する。この性質の医薬は、胃腸管の1つの領域から他の領域へ移動することになり、例えば、CGRP阻害剤が胃から小腸(十二指腸、空腸および回腸)へ動くのに約2から約4時間を要する。この通過または移行の間に、pHは約3(例えば、胃)から、4もしくは5に、または約6もしくは7以上のpHに変化する。故に、腸溶コーティングは、CGRP阻害剤を含有するコアが実質的に無傷なままであることを可能にし、阻害剤または酸の早期放出がCGRP阻害剤に浸透するおよび不安定化することを予防する。
【0081】
好適な腸溶性ポリマーの例は、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、メタクリル酸コポリマー、シェラック、トリメリト酸酢酸セルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、酢酸リンゴ酸セルロース、安息香酸フタル酸セルロース、プロピオン酸フタル酸セルロース、フタル酸メチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、フタル酸エチルヒドロキシエチルセルロース、シェラック、スチレン-アクリル酸コポリマー、アクリル酸メチル-アクリル酸コポリマー、アクリル酸メチル-メタクリル酸コポリマー、アクリル酸ブチル-スチレン-アクリル酸コポリマー、メタクリル酸-メタクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸-アクリル酸エチルコポリマー、アクリル酸メチル-メタクリル酸-アクリル酸オクチルコポリマー、酢酸ビニル-無水マレイン酸コポリマー、スチレン-無水マレイン酸コポリマー、スチレン-マレイン酸モノエステルコポリマー、ビニルメチルエーテル-無水マレイン酸コポリマー、エチレン-無水マレイン酸コポリマー、ビニルブチルエーテル-無水マレイン酸コポリマー、アクリロニトリル-アクリル酸メチル-無水マレイン酸コポリマー、アクリル酸ブチル-スチレン-無水マレイン酸コポリマー、ポリビニルアルコールフタレート、ポリビニルアセタールフタレート、ポリビニルブチレートフタレートおよびポリビニルアセトアセタールフタレート、またはそれらの組合せを含むがこれらに限定されない。当業者ならば、他の親水性、疎水性および腸溶コーティングポリマーが、単独でまたは任意の組合せでのいずれかで、本発明の実施形態に従うコーティングの全部または一部として容易に用いられてよいことが分かるであろう。
【0082】
錠剤の形態の本発明の治療用組成物は、複数のコーティング、例えば、親水性コーティング(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)および/または疎水性コーティング(例えば、アルキルセルロース)および/または腸溶コーティングを有し得る。例えば、錠剤コアは、親水性、疎水性または腸溶コーティングから選択される、複数の同じ種類のコーティングまたは複数の異なる種類のコーティングによって包まれていてよい。故に、錠剤は、CGRP阻害剤の標的組織または目的次第で同じまたは異なるコーティングからなる少なくとも1つの層を有するが1つを超える層を有することもできるように設計され得ることが予期される。例えば、錠剤コア層は、第1のコーティング層(例えば、親水性、疎水性または腸溶コーティング)によって包囲された第1の組成物を有してよく、同じまたは異なる投薬量を有する第2の同じまたは異なる組成物またはCGRP阻害剤は、第2のコーティング層等に包囲されていてよい。種々のコーティングのこの階層化は、同じまたは異なるCGRP阻害剤含有組成物の、第1、第2、第3またはそれ以上の段階的または用量依存性放出を提供する。
【0083】
ある実施形態では、本発明の第1の組成物の第1の投薬量は、腸溶コーティングがその中に含有される組成物を保護し、壊れることまたは胃に放出されることを防止するように、錠剤コア内に腸溶コーティングを伴って含有される。別の例では、治療用組成物の第1の負荷用量は第1の層に含まれ、製剤または錠剤に含まれる全組成の総量の約10%から約40%までを含む。第2の負荷用量では、組成物の総用量の別のパーセンテージが放出される。本発明は、処置レジメンにおいて所望される通りの多数回放出用量として企図している。故に、ある特定の態様では、単一コーティングまたは複数のコーティング層は、コーティングされた単位剤形の約2重量%から6重量%まで、例えば、約2重量%から約5重量%まで、例えば、約2重量%から約3重量%までの範囲の量であってよい。
【0084】
したがって、本発明の実施形態に従う製剤は、特異的な領域に好適なpH可溶性ポリマーを選択することにより、硬質カプセル剤または錠剤の内容物が、胃腸管のより遠位部(例えば、小腸および大腸)である所望の部位において選択的に放出されることを可能にする。組成調製物の機械的排出は、硬質半透過性カプセル内への吸水時に膨張する吸水性ポリマーの包接によって実現されてもよく、故に、硬質カプセル剤における開口部を通して組成物を吐出する。
【0085】
さらに、処置を必要とする任意の特定の対象のための具体的な用量レベルおよび投薬頻度は、変動してよく、用いられる具体的なCGRP阻害剤の活性、その化合物の代謝安定性および作用長さ、年齢、体重、全般的健康、性別、食習慣、投与のモードおよび時間、排泄率、薬物組合せ、特定の状態の重症度、ならびに療法を経験している宿主を含む様々な要因によって決まるであろうことが、当業者によって理解されよう。
【0086】
アルキルグリコシド、例えばアルキルマルトシド、例えばドデシルマルトシド(dodecyhnaltoside)(DDM)およびテトラデシルマルトシド(TDM)は、溶液中でCGRP阻害剤を安定させ、その凝集を防止することができる。したがって、本発明のある態様は、少なくとも1つのCGRP阻害剤および1つの炭水化物界面活性剤を有する治療用組成物を提供することであり、界面活性剤は、少なくとも1つのアルキルグリコシドおよび/または炭水化物アルキルエステル製剤をさらに含み、これは、CGRP阻害剤のバイオアベイラビリティを増強する。薬物製剤のバイオアベイラビリティを決定することは本明細書において記述されている。本明細書において使用される場合、「バイオアベイラビリティ」は、活性物質または部分が無傷の薬物として全身循環に到達する比率および程度である。任意の薬物のバイオアベイラビリティは、それがどのくらいよく吸収されるかおよびそのうちのどれくらいが肝臓による除去を免れるかによって決まることになる。
【0087】
絶対的バイオアベイラビリティを決定するために、被験薬および投与モードを静脈内参照用量に対して測定する。静脈内用量のバイオアベイラビリティは定義により100%である。例えば、動物または志願するヒトに、静脈内注射および対応する経口用量の薬物を与える。尿または血漿試料をある期間にわたって採取し、その期間にわたる薬物のレベルを決定する。
【0088】
血漿薬物濃度対時間曲線の曲線下面積(AUC)を、静脈内および経口用量の両方についてプロットし、両方の製剤のバイオアベイラビリティの計算は単比例によるものである。例えば、同じ静脈内および経口用量が与えられ、経口AUCが静脈内AUCの50%である場合、経口製剤のバイオアベイラビリティは50%である。実際に、任意の薬物のバイオアベイラビリティは、不完全な吸収、初回通過クリアランスまたはこれらの組合せを含む多くの要因による(以下でさらに論じる)。さらに、血漿薬物濃度のピーク濃度(またはCmax)を、同等濃度の薬物の筋肉内(IM)注射後に血漿薬物濃度のピーク濃度(Cmax)に対しても測定する。その上、血漿薬物の最高濃度到達時間(またはTmax)は、約0.1から1.0時間である。
【0089】
薬物の1つを超える製剤(例えば、アルキルグリコシドまたは炭水化物アルキルエステル薬物製剤)の相対的バイオアベイラビリティを決定するために、一方または両方の薬物を初回通過クリアランスに供することができ(以下でさらに論じる)、故に検出されない可能性があることから、製剤のバイオアベイラビリティを互いに対して評価する。例えば、第1の経口製剤は第2の経口製剤に対して評価される。第2の製剤は、第1のバイオアベイラビリティを評価するための参照基準として使用される。この種の研究は、薬物を吸収させる際における2つの製剤の相対的性能の尺度を提供する。
【0090】
本発明の実施形態に従うアルキルグリコシドまたは炭水化物は、現在公知であるまたは後に発見される任意の化合物を含む。アルキルグリコシドおよび/または炭水化物アルキルエステルとの混和に特によく適しているCGRP阻害剤は、他の方法によって投与することが困難なもの、例えば、胃腸(GI)管内で分解される化合物もしくはGI管からはうまく吸収されないもの、または、注射等の伝統的な方法の代わりに、経口、眼内、経鼻、鼻涙、吸入、舌下もしくはCSF送達ルートを介して自己投与され得る化合物である。
【0091】
代替として、CGRP阻害剤のバイオアベイラビリティは、肝臓による薬物の初回通過クリアランスのレベルを測定することによって決定され得る。鼻腔内にまたは口腔(舌下または頬側細胞)を介して投与される本発明のアルキルグリコシドおよび/または炭水化物アルキルエステル組成物は、肝臓門脈血液系に入らず、それにより、肝臓による初回通過クリアランスを回避する。肝臓によるこれらの製剤の初回通過(past)クリアランスを回避することは、本明細書において記述されている。本明細書において使用される場合、用語「初回通過肝臓クリアランス」は、薬物が、肝臓を通って全身循環までの門脈血におけるその初回通過中に、肝臓によって除去される程度である。これは、初回通過代謝または初回通過抽出とも呼ばれる。
【0092】
体からの薬物消失の2つの主要なルートは、薬物が不変である腎臓からの排泄、および薬物が代謝される肝臓による消失である。これら2つのルートの間のバランスは、2つのプロセスの相対的効率によって決まる。本発明は、肝臓による消失または肝臓クリアランスについて本明細書において記述している。初回通過肝臓クリアランスは、Birkettら(1990および1991)によって記述されており、これは参照によりその全体が組み込まれる。Birkettら、Aust Prescr、13(1990):88~9;およびBirkettら、Austra Prescr、14:14~16(1991)。
【0093】
全身循環から薬物を運ぶ血液は、門脈を介して肝臓に入り、肝臓が今度はその薬物のある特定のパーセンテージまたは比(すなわち、0.5または50%)を抽出する。残された残余(すなわち、0.2または20%)は、肝静脈を介して全身循環に再び入る。この薬物のクリアランス率は、肝抽出比と呼ばれる。これは、肝臓を通る血液の初回通過の間に不可逆的に除去(または抽出)される薬物の、血液中における割合である。薬物が抽出されない場合、肝抽出比はゼロである。逆に、薬物が肝臓を通る初回通過において高度に抽出される場合、肝抽出比は100%または1.0もの高さになり得る。概して、肝臓による薬物のクリアランスは、その薬物の肝臓への送達率(または肝血流量)およびその薬物の除去の効率(または抽出比)によって決まる。
【0094】
したがって、肝クリアランスを決定するために使用される正味方程式は:
(肝クリアランス-血流量)=(非結合画分×固有クリアランス)/血流量+(非結合画分×固有クリアランス) (1)
である。
【0095】
薬物の「非結合画分」は、薬物が血液中のタンパク質および細胞とどのくらい密接に結合しているかに依存する。概して、血液から肝臓細胞への拡散に利用可能であるのは、この非結合(または遊離)薬物のみである。肝血流量およびタンパク質結合の非存在下で、「固有クリアランス」は、該薬物を除去する(または代謝する)肝臓の能力である。生化学用語では、これは特定の薬物基質についての肝臓酵素活性の尺度である。ここでも、固有クリアランスは高い場合があるが、薬物は肝臓に提示されるよりも急速に取り除かれることはできない。簡単な用語では、肝臓酵素活性が非常に高いまたは非常に低い(すなわち、高抽出比または低抽出比)という2つの状況がある。
【0096】
肝臓酵素活性が低い場合、方程式は
肝クリアランス=非結合画分×固有クリアランス (2)
に簡略化する。
【0097】
そのため、クリアランスは血流量とは無関係であるが、代わりに、血液中におけるタンパク質結合の程度およびその薬物に対する薬物代謝酵素の活性によって直接的に決まる。
【0098】
対照的に、肝臓酵素活性が高い場合、方程式は
肝クリアランス=肝臓血流量 (3)
である。
【0099】
このシナリオでは、酵素が非常に活性であるため、肝臓はそれに提示された薬物のほとんどを除去し、抽出比は高い。故に、実際の肝クリアランスを決定する唯一の要因は、肝臓への薬物の供給率(または肝血流量)である。
【0100】
薬物の抽出における小さな変化でさえバイオアベイラビリティにおける大きな変化を引き起こし得ることから、初回通過肝臓クリアランスは重要である。例えば、経口投与による薬物Aのバイオアベイラビリティがその時までに20%である場合、それが全身循環に到達し、静脈内投与による同じ薬物Aは100%であり、したがって、他に複雑な要因が存在しない場合、経口用量は、同様の血漿濃度を実現するためには静脈内用量の5倍でなくてはならないことになる。
【0101】
第二に、肝臓酵素活性が非常に高い事例において、薬物製剤は、薬物を全身循環まで直接通過させ、初回通過肝臓クリアランスをまとめて回避するように設計されるべきである。例えば、鼻腔内に、舌下、頬側、経直腸、膣等に投与された薬物は、全身循環に直接入り、肝臓によって部分的または完全に抽出される肝臓門脈血液循環には入らない。代替として、薬物を上記の手段によって投与できない場合、胃(すなわち、強酸性環境)における薬物の放出を防止するための少なくとも1つの腸溶コーティング層を持つ錠剤が提供される。故に、本発明の目的は、これらの代替ルートを使用して薬物を投与することである。
【0102】
加えて、多くの患者が1つを超える投薬レジメンを行っており、これが、肝臓酵素活性を増大させるまたは減少させる薬物相互作用を引き起こす場合があり、それにより、目的の薬物の代謝を増大させるまたは減少させる(肝抽出比を増大させるまたは減少させる)ことから、初回通過肝臓クリアランスは重要な要因である。
【0103】
故に、本発明の治療用組成物は、全身循環系に直接投与され、初回通過肝臓クリアランスを回避することができる。初回通過クリアランスを回避することは、より多くの薬物が系に利用可能となることを保証する。別の言い方をすれば、初回通過肝臓クリアランスを回避することにより、薬物のバイオアベイラビリティは増大する。
【0104】
本発明の実施形態は、対象の循環系への低分子量CGRP阻害剤の吸収を増大させる方法であって、経口、眼内、経鼻、鼻涙、吸入またはCSF送達ルートを介して、化合物と、親水性炭水化物との結合によって接合された疎水性アルキルを有する吸収増大量の好適な非毒性、非イオン性アルキルグリコシドとを投与するステップを含む方法にも関する。
【0105】
組成物製剤は、経口投与(経口調製物)、外部投与(例えば、軟膏剤)、注射(注射用調製物)、および粘膜投与(例えば、頬側および坐剤)等の投与ルートに従って適切に選択される。例えば、添加剤(例えば、デンプン、ラクトース、結晶性セルロース、乳酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムおよび無水ケイ酸塩)、崩壊剤(例えば、カルボキシメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースカルシウム)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムおよびタルク)、コーティング剤(例えば、ヒドロキシエチルセルロース)および香味剤を経口および粘膜製剤に使用することができるのに対し、水性注射剤を形成することができる可溶化剤および可溶化補助剤(例えば、注射用蒸留水、生理食塩水およびプロピレングリコール)、懸濁化剤(例えば、ポリソルベート80等の界面活性剤)、pH調節剤(例えば、有機酸およびその金属塩)ならびに安定剤が注射に使用され、水性または油性可溶化剤および可溶化補助剤(例えば、アルコールおよび脂肪酸エステル)、粘着剤(例えば、カルボキシビニルポリマーおよびポリ炭水化物)および乳化剤(例えば、界面活性剤)が外用剤に使用される。CGRP阻害剤およびアルキルグリコシドを、投与前に、上記の添加剤、崩壊剤、コーティングポリマー、可溶化剤、懸濁化剤等とともに混和、混合もしくはブレンドすることができるか、またはいずれかの順序で順次に投与することができる。それらが投与前に混合されることが好ましい。
【0106】
本明細書において使用される場合、用語「粘膜送達増強剤」は、化合物(例えば、生物学的活性化合物)の放出または溶解度(例えば、製剤送達ビヒクルからの)、拡散率、浸透能力およびタイミング、取り込み、滞留時間、安定性、有効半減期、ピークまたは持続濃度レベル、クリアランスならびに他の所望の粘膜送達特徴(例えば、送達部位において、または血流もしくは中枢神経系等の選択された標的活性部位において測定されたもの)を増強する作用物質を含む。粘膜送達の増強は、例えば、化合物の拡散、輸送、持続性または安定性を増大させること、膜流動性を増大させること、細胞内または傍細胞透過を調節するカルシウムおよび他のイオンの利用可能性または作用を調節すること、粘膜成分(例えば、脂質)を可溶化すること、粘膜組織における非タンパク質およびタンパク質スルフヒドリルレベルを変化させること、粘膜表面全体にわたる水流束を増大させること、上皮接合部生理学を調節すること、粘膜上皮を覆っている粘液の粘度を低減させること、粘膜毛様体クリアランス率を低減させること、ならびに他の機序によるものを含む、様々な機序のいずれかによって起こり得る。
【0107】
例示的な粘膜送達増強剤は、以下の作用物質およびそれらの任意の組合せを含む:
〇 (a)凝集阻害剤、
〇 (b)電荷修飾剤、
〇 (c)ph制御剤、
〇 (d)分解酵素阻害剤、
〇 (e)粘液溶解剤または粘液除去剤、
〇 (f)繊毛抑制剤(ciliostatic agent)、
〇 (g)
・ (i)界面活性剤、(ii)胆汁酸塩、(ii)リン脂質添加物、混合ミセル、リポソームまたは担体、(iii)アルコール、(iv)エナミン、(v)NOドナー化合物、(vi)長鎖両親媒性分子、(vii)小疎水性浸透エンハンサー、(viii)ナトリウムまたはサリチル酸誘導体、(ix)アセト酢酸のグリセロールエステル、(x)シクロデキストリンまたはベータ-シクロデキストリン誘導体、(xi)中鎖脂肪酸、(xii)キレート化剤、(xiii)アミノ酸またはその塩、(xiv)N-アセチルアミノ酸またはその塩、(xv)選択された膜成分に対して分解性の酵素、(ix)脂肪酸合成の阻害剤、(x)コレステロール合成の阻害剤、および(xi)(i)~(x)に記載されている膜浸透増強剤の任意の組合せ
から選択される膜浸透増強剤、
〇 (h)上皮接合部生理学の調節剤、
〇 (i)血管拡張剤、
〇 (j)選択的輸送増強剤、ならびに
〇 (k)化合物が有効に組み合わされて、会合されて、含有されて、カプセル化されてまたは結合されて、経鼻粘膜送達の増強のための化合物の安定化をもたらし、鼻腔内送達増強剤を加えた化合物の製剤は、対象の血漿における化合物のバイオアベイラビリティの増大を提供する、安定化送達ビヒクル、担体、粘膜付着性物質、支持体または錯体形成種。
【0108】
追加の粘膜送達増強剤は、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、プロピレングリコール、グリセリン、アスコルビン酸(例えば、L-アスコルビン酸)、メタ重亜硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、水酸化ナトリウム、およびそれらの混合物を含む。例えば、EDTAまたはその塩(例えば、ナトリウムまたはカリウム)は、アルキル炭水化物保存剤を含有する組成物の約0.01重量%から2重量%までの範囲の量で用いられる。
【0109】
本明細書において記述されている方法によって吸収が増大し得る化合物は、現在公知であるまたは後に発見される任意のCGRP阻害剤、特に、他の方法によって投与することが困難な化合物、例えば、胃腸(GI)管内で分解されるもしくはGI管からはうまく吸収されない化合物、または、対象が、注射等の伝統的な自己投与によってよりも、経口、眼内、経鼻、鼻から脳、鼻涙、吸入もしくは経肺、口腔(舌下または頬側細胞)またはCSF送達ルートを介してより容易に自身に投与し得る化合物を含む。
【0110】
本明細書において論じられる通り、消化管の頬側、舌下、口腔咽頭および食道胃前部をCGRP阻害剤が通過する際に、可変量のCGRP阻害剤が吸収され得る。しかしながら、CGRP阻害剤の大部分が胃内へ入り、錠剤、カプセル剤または液剤等の腸溶性剤形が吸収される通常モードで吸収される。化合物が腸から吸収されると、化合物は肝臓に直接持ち込まれ、ここで、その特異的化学構造に応じて、肝臓細胞における通常の解毒プロセスを実施する酵素によって代謝され消失し得る。この消失は、これまでに論じた通り、肝臓における「初回通過」代謝または「初回通過」効果と称される。得られた代謝産物は、ほとんどの場合、元の分子と比較して実質的にまたは完全に不活性であり、多くの場合、血流中を循環しているのが見られ、その後、尿および/または糞便中で消失する。
【0111】
本発明の態様は、高速分散性剤形に含まれる場合、ある特定のアルキル炭水化物の添加が、初回通過効果に供されるCGRP阻害剤の割合を調節し、故に、固定量のCGRP阻害剤がより大きい臨床的利益を発揮することを可能にする、またはより少量のCGRP阻害剤がそうでなければより大きい用量と比較して同様の臨床的利益を実現することを可能にするという所見に基づく。
【0112】
故に、本発明のある態様では、医薬組成物は、2015年11月24日に発行された米国特許第9,192,580号において記述されているもの等の経口固体成形高速分散性剤形で調製される。
【0113】
本明細書において使用される場合、語句「高速分散性剤形」は、体液と接触して置かれた後、1から60秒、例えば、1から50秒、1から40秒、1から30秒、1から20秒、1から10秒、または2から8秒以内に崩壊または分散する組成物を指す。体液は、好ましくは、経口投与と同じく口腔内で見られるもの、すなわち唾液である。
【0114】
ある実施形態では、本明細書において記述されている組成物は、活性原料の固体ネットワークを含む固体高速分散性剤形、例えば、ザベゲパント、および魚ゼラチンを含有する水溶性または水分散性担体である。したがって、担体は活性原料に対して不活性である。ネットワークは、固体状態の組成物から溶媒を昇華させることによって取得され、組成物は、活性原料と、溶媒中の担体の溶液とを含む。本発明に従う剤形は、魚ゼラチンを担体として使用し、Gregoryら、英国特許第1,548,022号において開示されているプロセスに従って調製され得る。したがって、活性原料と、溶媒中の魚ゼラチン担体の溶液とを含む初期組成物(または混和物)が調製され、続いて、昇華が行われる。昇華は、好ましくは、組成物をフリーズドライすることによって行われる。組成物は、フリーズドライプロセスの間、鋳型に含有され、固体形態を任意の所望の形状で生成することができる。鋳型を、その中の組成物の沈着前に、予備ステップにおいて液体窒素または固体二酸化炭素を使用して冷却することができる。鋳型および組成物を凍結させた後、それらを次に減圧、および所望ならば、溶媒の昇華を支援するための熱印加の制御に供する。プロセスにおいて印加される減圧は、約4mmHg未満、好ましくは約0.3mmHg未満であってよい。次いで、フリーズドライされた組成物を所望ならば鋳型から除去するか、または後に使用するまでその中に保管することができる。
【0115】
活性原料および担体としての魚ゼラチンを用いてプロセスが使用される場合、固体高速分散性剤形は、本明細書において記述されている魚ゼラチンの使用に関連する利点を有して生成される。概して、魚ゼラチンは、冷水および温水の魚類供給源由来としてならびにゲル化または非ゲル化品種のものとしてカテゴリー分けされる。非ゲル化品種の魚ゼラチンは、ゲル化魚ゼラチンおよびウシゼラチンと比較して低いプロリンおよびヒドロキシプロリンアミノ酸含有量を含有し、これらは架橋特性およびゲル化能力に関連することが公知である。非ゲル化魚ゼラチンは、最大約40%の溶液濃度および20℃もの低さの温度に留まることができる。本発明のある態様では、本発明に従って使用される魚ゼラチンは、好ましくは冷水の魚類供給源から入手され、非ゲル化型の魚ゼラチンである。より好ましくは、本発明のある態様では、非ゲル化魚ゼラチンの非加水分解形態が使用される。代替的な実施形態では、噴霧乾燥した非加水分解非ゲル化魚ゼラチンが使用され得る。本明細書において記述されている組成物における使用に好適な魚ゼラチンは、市販されている。
【0116】
本発明の実施形態に従う組成物は、活性原料および(arid)魚ゼラチン担体に加えて、他のマトリックス形成剤および二次成分も含有することができる。使用に好適なマトリックス形成剤は、他のゼラチン、デキストリンおよび大豆、小麦およびオオバコ種子タンパク質等の動物性または植物性タンパク質;アカシア、グアー、寒天および10キサンタン等のガム;ポリ炭水化物;アルギン酸塩;カルボキシメチルセルロース;カラギーナン;デキストラン;ペクチン;ポリビニルピロリドン等の合成ポリマー;ならびに、ゼラチン-アカシア複合体等のポリペプチド/タンパク質またはポリ炭水化物複合体に由来する材料を含む。
【0117】
本発明の実施形態に従う高速溶解性組成物に組み込まれてもよい他の材料は、マンニトール、デキストロース、ラクトース、ガラクトースおよびトレハロース等の糖;シクロデキストリン等の環状糖;リン酸ナトリウム、塩化ナトリウムおよびケイ酸アルミニウム等の無機塩;ならびに、グリシン、L-アラニン、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、L-ヒドロキシプロリン、L-イソロイシン、L-ロイシンおよびL-フェニルアラニン等の2から12個までの炭素原子を有するアミノ酸を含む。1つまたは複数のマトリックス形成剤が、凝固(凍結)の前に溶液または懸濁液に組み込まれてよい。界面活性剤にまたは界面活性剤の除外に加えて、マトリックス形成剤が存在してよい。マトリックス形成剤は、マトリックスを形成することに加えて、溶液または懸濁液内での任意の活性原料の分散を維持することを支援し得る。これは、十分に水溶性ではなく、したがって溶解されるのではなく懸濁されなくてはならない活性剤の場合には、とりわけ役立つ。保存剤、酸化防止剤、界面活性剤、粘度エンハンサー、着色剤、香味剤、ph調節剤、甘味料または矯味剤等の二次成分が、高速溶解性組成物に組み込まれてもよい。好適な着色剤は、赤、黒および黄色酸化鉄、ならびにEllis&Everardから入手可能なFD&C青色2号およびFD&C赤色40号等のFD&C染料を含む。好適な香味剤は、ミント、ラズベリー、甘草、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、キャラメル、バニラ、サクランボおよびブドウ香味ならびにこれらの組合せを含む。好適なph調節剤は、クエン酸、酒石酸、リン酸、塩酸、マレイン酸および水酸化ナトリウム等の食用の酸および塩基を含む。好適な甘味料は、例えば、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムKおよびソーマチンを含む。好適な矯味剤は、例えば、重炭酸ナトリウム、イオン交換樹脂、シクロデキストリン包接化合物、吸着質またはマイクロカプセル化された活性物質を含む。
【0118】
高速分散性剤形に含まれる特異的なアルキル炭水化物の量を増大させることおよび減少させることにより、消化管の他の部分と比較して頬側組織を通して吸収されるCGRP阻害剤の割合をそれぞれ増大させてまたは減少させて、CGRP阻害剤の吸収部位を変化させるまたは調節することができる。薬物作用の発現を加速するが標準的な経口錠剤に関連する通常はより長いTmaxを保つことが望ましい場合には、薬物の一部は急速な発現のために頬側に直ちに吸収されるが残りはより遅い胃からの吸収プロセスを通して吸収されるように、アルキルグリコシド含有量を低減させて頬側吸収を減衰させることができる。理論によって拘束されることは望まないが、最大または最大に近い頬側吸収を生成することが実験によって判明しているアルキル炭水化物濃度の未満、例えば20%未満のアルキルグリコシド濃度を選択することにより、「全身薬物レベル」対時間グラフにおけるより広い吸収ピークが、全体として、臨床的に望ましいと判断される場合に実現され得ることが理解される。
【0119】
さらに、本発明の他の態様では、特異的なアルキル鎖長を有するある特定のアルキルグリコシドの高速分散性錠剤への添加は、胃前薬物吸収の薬物動態を有益な手法で変化させることができる。例えば、約0.2%~0.3%、0.3%~0.4%、0.4%~0.5%、0.5%~1.0%、1.0%~2.0%、2.0%~3.0%、3.0%~4.0%、4.0%~5.0%、5.0%~6.0%、6.0%~7.0%、7.0%~8.0%、9.0%~10.0%の間および10%を超えるアルキルグリコシドの組み込みは、胃前薬物吸収の薬物動態を有益な手法で変化させることができる。例示的な実施形態では、アルキルグリコシドは、ドデシルマルトシド、テトラデシルマルトシドおよび/またはドデカン酸スクロースであり、これらは、高速分散性錠剤フォーマットに組み込まれると、全身循環に入る薬物を増大させ、肝臓における「初回通過」効果によって消失する薬物を減少させる。加えて、薬物レベルが最大になるまでの時間は、劇的に、例えば、1~6時間からおよそ15~45分まで低減され得る。急性片頭痛エピソードを経験している患者を処置する際に使用するために、CGRP阻害剤のこのより急速な吸収はより急速な作用の発現をもたらし、大きな利益となり得る。
【0120】
さらに、本発明の他の態様では、ある特定の種類の高速溶解または高速分散性錠剤を頬と歯茎との間にまたは口の中の頬側組織と密接に連合させて置いた場合、さらに大きな割合のCGRP阻害剤が全身循環に直接吸収され、より少量がその後肝臓における初回通過消失を受ける。また、この効果のための口内における特に好都合な位置は、上唇の中央部分の内側、唇の内側と歯茎との間、鼻の真下であると考えられている。例示的な態様では、この種の高速溶解投薬量製剤は、凍結乾燥または真空乾燥によって調製される。例示的な態様では、投薬量製剤は、実質的に多孔質である投薬量製剤をもたらす様式で調製される。
【0121】
本明細書において使用される場合、用語「高速分散性剤形」は、口内で完全にまたはある程度溶解することができるすべての種類の剤形を包含することが意図されている。しかしながら、例示的な態様では、高速分散性剤形は、活性原料および水溶性または水分散性担体マトリックスの固体高速分散性ネットワークであり、これは、活性原料および添加剤に対して不活性である。上記で注記した通り、ネットワークは、固体状態の組成物から溶媒を凍結乾燥するまたは昇華させることによって取得され得、組成物は、活性原料と、アルキルグリコシドと、溶媒中の担体の溶液とを含む。様々な溶媒がこの使用に好適であるとして当技術分野において公知であるが、本発明による使用に特によく適している1つの溶媒は、水である。混合溶媒へのCGRP阻害剤の溶解度が増強されている場合には、水-アルコール混合物を用いてもよい。難水溶性薬物では、小さい薬物粒子の分散剤を、凍結乾燥または昇華プロセスの間、実質的に不溶性の薬物の均一な分布を維持する水性ゲルに懸濁することができる。
【0122】
ある実施形態では、剤形は、剤形の総重量に基づき、約10~80重量%まで、例えば、約20~80重量%、約30~80重量%、約40~80重量%、または約50~80重量%の量のCGRPアンタゴニストを含み得る。剤形は、剤形の総重量に基づき、約0.01~50重量%、例えば、約0.1~50重量%、約1~50重量%、約5~50重量%、または約10~50重量%の量のアルキルグリコシドをさらに含み得る。剤形は、剤形の総重量に基づき、約10~30重量%、例えば、約15~30重量%または約20~30重量%の量の魚ゼラチンをさらに含み得る。剤形は、約10~25重量%の充填剤をさらに含み得る。
【0123】
ある実施形態では、水性ゲルは、モノおよびジステアリン酸スクロースならびに/またはテトラデシルマルトシド等の選択されたアルキルグリコシドを使用して形成される、米国特許出願第60/957,960号において記述されている自己組織化ハイドロゲルであってよい。
【0124】
本発明の高速溶解製剤における使用に好適なマトリックス形成剤は、本出願全体を通して記述されている。そのような作用物質は、ゼラチン、コラーゲン、デキストリンならびに大豆、小麦およびオオバコ種子タンパク質等の動物性または植物性タンパク質;アカシア、グアー、寒天およびキサンタン等のガム;ポリ炭水化物;アルギン酸塩;カラギーナン;デキストラン;カルボキシメチルセルロース;ペクチン;ポリビニルピロリドン等の合成ポリマー;ならびに、ゼラチン-アカシア複合体等のポリペプチド/タンパク質またはポリ炭水化物複合体に由来する材料を含む。例示的な態様では、ゼラチン、特に魚ゼラチンまたはブタゼラチンが使用される。
【0125】
事実上あらゆるCGRPアンタゴニストが本明細書において記述されている通りの高速溶解投薬量製剤に組み込まれ得ることが想定されるが、BHV-3500等の特によく適しているCGRPアンタゴニストは、低い経口バイオアベイラビリティ(例えば、80%未満)を有する。
【0126】
ザベゲパントのODT製剤
ある実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容できる担体および治療有効量のザベゲパント、その溶媒和物または薬学的に許容できるその塩を含んでよく、医薬組成物は、経口固体成形高速分散性剤形の形態である。そのような医薬組成物は、例えば、口腔内崩壊錠(ODT)として製剤化され得る。CGRP阻害剤の経口固体成形高速分散性剤形は、例えば、2019年3月25日に出願され、2019年10月3日にWO2019/191008A1として公開された国際出願第PCT/US2019/023940号において記述されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0127】
CGRP阻害剤の軟質ゲル製剤
ある実施形態では、軟質ゲル医薬製剤は、
製剤の総重量の0.01~20重量%の量の、合成または天然難透過性カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)阻害剤またはその塩もしくは溶媒和物と、
製剤の総重量の50~80重量%の量の、脂肪酸のトリグリセリドを含む親油相と、
製剤の総重量の10~50重量%の量の、ポリオールおよび脂肪酸の部分エステルを含む少なくとも1つの親油性界面活性剤と
を含み得る。
【0128】
上記の製剤は、例えば、2020年4月10日に出願され、2020年10月15日にWO2020/210722A1として公開された、国際出願第PCT/US2020/027800号において記述されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0129】
処置方法
ある実施形態は、それを必要とする対象における、異常なレベルのCGRPに関連する状態の処置または予防のための方法であって、対象に、上記の医薬組成物および製剤のいずれかを投与するステップを含む方法を提供する。
【0130】
CGRP阻害剤は、CGRP抗体、CGRP受容体抗体、CGRP抗体もしくはCGRP受容体抗体由来の抗原結合断片、CGRP注入阻害タンパク質、CGRP生物中和剤、低分子CGRP受容体アンタゴニスト、低分子CGRP阻害剤、またはポリペプチドCGRP阻害剤であってよい。低分子CGRP受容体アンタゴニストは、ザベゲパント、リメゲパント、ウブロゲパント、アトゲパント、テルカゲパントもしくはオルセゲパント、その溶媒和物、または薬学的に許容できるその塩である。
【0131】
ある実施形態では、状態は、急性片頭痛、慢性片頭痛、群発頭痛、慢性緊張型頭痛、薬物乱用頭痛、外傷後頭痛、脳震盪後症候群、脳外傷および眩暈から選択される障害であってよい。
【0132】
別の実施形態では、状態は、慢性疼痛、神経性血管拡張、神経性炎症、炎症性疼痛、神経障害性疼痛、糖尿病性末梢神経障害性疼痛、小径線維神経障害性疼痛、モートン神経腫、慢性膝関節痛、慢性背部痛、慢性股関節痛、慢性手指痛、運動誘発性の筋肉痛、がん疼痛、慢性炎症性皮膚痛、熱傷による疼痛、瘢痕による疼痛、複合性局所疼痛症候群、口腔灼熱症候群、アルコール性多発神経炎、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)または後天性免疫不全症候群(AIDS)関連神経障害、薬物誘発性神経障害、労働性神経障害、リンパ腫性神経障害、骨髄腫性神経障害、多巣性運動神経障害、慢性特発性感覚神経障害、癌性神経障害、急性疼痛、自律神経障害、圧迫性神経障害、血管炎性/虚血性神経障害、側頭骨顎関節痛、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、慢性局所疼痛症候群、眼痛および歯痛から選択される障害であってよい。
【0133】
一例では、状態は薬物乱用頭痛(MOH)であってよく、該状態を有する対象は、疼痛の処置を受けていてよく、疼痛の処置は、急性疼痛薬および慢性疼痛薬から選択される医薬を含み得る。例えば、疼痛の処置は、トリプタン、麦角アルカロイド、鎮痛薬およびオピオイドから選択される医薬を含む。トリプタンは、リザトリプタン、スマトリプタン、ナラトリプタン、エレトリプタン、ドニトリプタン、アルモトリプタン、フロバトリプタン、アビトリプタンおよびゾルミトリプタンから選択され得る。麦角アルカロイドは、クラビン、リゼルグ酸アミドおよびエルゴペプチンから選択され得る。麦角アルカロイドは、エルゴノビン、メチルエルゴノビン、メチセルジド、エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、ブロモクリプチン、メシル酸エルゴロイドおよびリゼルグ酸ジエチルアミド、またはそれらの組合せから選択されてもよい。
【0134】
MOHは、1つまたは複数の疼痛薬の慢性使用によって生じ得る。対象は、片頭痛、群発型頭痛または緊張型頭痛から選択される原発性頭痛障害を有し得る。対象は、原発性頭痛障害のための処置を現在経験していてもよいし、または処置を受けたことがあってもよい。
【0135】
疼痛の処置は、アスピリン、ジクロフェナク;ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、メクロフェナメート、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、サルサレート、スリンダク、トルメチン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、エトリコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、メロキシカム、ルミラコキシブ、またはそれらの組合せから選択される医薬を含み得る。
【0136】
MOHは、ケタミン、エスケタミン、アルフェンタニル、アリメマジン、アルプラゾラム、アンフェタミン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロナゼパム、コデイン、シクロベンザプリン、ジアゼパム、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルヒネ、ドロナビノール、エスタゾラム、エスゾピクロン(ezopiclone)、フェンタニル、フルラゼパム、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、ロラゼパム、メホバルビタール(methobarbital)、メチルフェニデート、メタドン、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルフォン、フェノバルビタール、セコバルビタール、テマゼパム、トラマドール、トリアゾラム、ザレプロン、ゾピクロンおよびゾルピデムから選択される医薬による処置によって生じ得る。
【0137】
MOHは、アリメマジン、アルプラゾラム、アンフェタミン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロナゼパム、コデイン、シクロベンザプリン、ジアゼパム、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルヒネ、ドロナビノール、エスタゾラム、エスゾピクロン、フェンタニル、フルラゼパム、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、ロラゼパム、メホバルビタール、メチルフェニデート、メタドン、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルフォン、フェノバルビタール、セコバルビタール、テマゼパム、トラマドール、トリアゾラム、ザレプロン、ゾピクロンおよびゾルピデムから選択される医薬の慢性使用によって生じ得る。
【0138】
MOHは、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、アセトアミノフェン、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、メクロフェナメート、イソメテプテン、インドメタシン;コデイン、モルヒネ、ヒドロコドン、アセチルジヒドロコデイン、オキシコドン、オキシモルフォン、パパベリン、フェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル(remifentanyl)、トラマドール、プロクロルペラジン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、メロキシカム、ピロキシカム、JTE-522、L-745,337、NS388、デラコキシブ、バルデコキシブ、ルミラコキシブ(iumiracoxib)、エトリコキシブ、パレコキシブ、4-(4-シクロヘキシル-2-メチルオキサゾール-5-イル)-2フルオロベンゼンスルホンアミド、(2-(3,5-ジフルオロフェニル)-3-(4-(メチルスルホニル)フェニル)-2シクロペンテン-1-オン、N-[2-(シクロヘキシルオキシ)-4-ニトロフェニル]メタンスルホンアミド、2-(3,4ジフルオロフェニル)-4-(3-ヒドロキシ-3-メチルブトキシ)-5-[4-(メチルスルホニル)フェニル]-3(2H)ピリダジノン、2-[(2,4-ジクロロ-6-メチルフェニル)アミノ]-5-エチル-ベンゼン酢酸、(3Z)3-[(4-クロロフェニル)[4-(メチルスルホニル)フェニル]メチレン]ジヒドロ-2(3H)-フラノン、(S)-6,8-ジクロロ-2-(トリフルオロメチル)-2H-1-ベンゾピラン-3-カルボン酸、アモバルビタール、ブタルビタール、シクロバルビタール、ペントバルビタール、アロバルビタール、メチルフェノバルビタール、フェノバルビタール、セコバルビタール、ビニルビタール、ベラパミル、ジルチアゼム(ciltiazem)、ニフェジピン、リドカイン、テトラカイン、プリロカイン、ブピバカイン(bupivicaine)、メピバカイン、エチドカイン、プロカイン、ベンゾカイン、フェネルジン(phehelzine)、イソカルボキサジド、ジクロラールフェナゾン、ニモジピン(nimopidine)、メトクロプラミド、カプサイシン受容体アゴニスト、カプトプリル、チオスピロン、ステロイド、カフェイン、メトクロプラミド、ドンペリドン、スコポラミン、ジメンヒドリナート、ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン、ジアゼパム、ロラゼパム、クロルプロマジン、メトトリメプラジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、プロメタジン、トリフルオペラジン、トリフルプロマジン、ベンズキナミド、次サリチル酸ビスマス、ブクリジン、シンナリジン、シクリジン、ジフェニドール、ドラセトロン、ドンペリドン、ドロナビノール、ドロペリドール、ハロペリドール、メトクロプラミド、ナビロン、チエチルペラジン、トリメトベンズアミド(trimethobenzemide)およびエジオピタント(eziopitant)、メクリジン、ドンペリドン、オンダンセトロン、トロピセトロン、グラニセトロン、ドラセトロン、ヒドロドラセトロン、パロノセトロン、アロセトロン、シランセトロン、シサプリド、レンザプリド、メトクロプラミド、ガラノラクトン、フェンシクリジン、ケタミン、デキストロメトルファン、ならびにそれらの異性体、薬学的に許容できる塩、エステル、コンジュゲートまたはプロドラッグから選択される医薬の慢性使用によって生じ得る。
【0139】
別の例では、状態は外傷後頭痛(PTH)であってよく、該状態を有する対象は、外傷性事故後に1、2、3、4、5、6または7日間、PTHを経験し得る。外傷性事故は、脳震とうまたは意識喪失をもたらし得る。対象は、めまい、不眠症、集中力不足、記憶障害、羞明、音声恐怖症もしくは倦怠感、またはそれらの組合せを患う場合がある。
【0140】
別の実施形態では、状態は、非インスリン依存性真性糖尿病、血管障害、炎症、関節炎、熱性損傷、循環ショック、敗血症、アルコール離脱症候群、オピオイド離脱症候群、モルヒネ耐性、男性および女性におけるホットフラッシュ、閉経に関連する顔面紅潮、アレルギー性皮膚炎、乾癬、脳炎、虚血、脳卒中、てんかん、神経炎症性障害、神経変性疾患、皮膚疾患、神経因性皮膚発赤、皮膚の酒さ(rosaceousness)、紅斑、耳鳴り、肥満、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、外陰痛、多嚢胞性卵巣症候群、子宮筋腫、神経線維腫症、肝線維症、腎線維症、巣状分節性糸球体硬化症、糸球体腎炎、IgA腎症、多発性骨髄腫、重症筋無力症、シェーグレン症候群、骨関節炎、骨関節炎性椎間板変性疾患、顎関節障害、頸椎捻挫、関節リウマチならびに間質性膀胱炎から選択される障害であってよい。皮膚疾患が、再発性ヘルペス、接触過敏症、結節性痒疹、慢性掻痒症および尿毒症性掻痒症から選択される、請求項61に記載の方法。
【0141】
別の実施形態では、状態は、慢性閉塞性肺疾患、肺線維症、気管支過敏性、喘息、嚢胞性線維症、慢性特発性咳嗽および毒性傷害から選択される障害であってよい。毒性傷害は、塩素ガス傷害、マスタードガス傷害、アクロレイン傷害、煙害、オゾン傷害、戦争化学物質曝露および工業用化学物質曝露から選択される。
【0142】
その中の多数の修正および変形が当業者には明らかとなるため、例証としてのみ意図されている以下の実施例において、本発明をより具体的に記述する。以下の実施例は、本発明を例証することを意図しており、限定するものではない。
【実施例
【0143】
(実施例1)
本発明の実施例では、イヌにおけるBHV-3500の単回舌下(錠剤)投薬後のBHV-3500の薬物動態(PK)を調査し、PKパラメーターを決定した。
【0144】
BHV-3500(ザベゲパント)は、以下の式I:
【0145】
【化8】
を有する、高親和性(ヒトCGRP K=0.023nm)、選択的かつ構造的に独自の低分子CGRP受容体アンタゴニストである。
【0146】
BHV-3500の化学名は、(R)-N-(3-(7-メチル-1H-インダゾール-5-イル)-1-(4-(1-メチルピペリジン-4-イル)ピペラジン-1-イル)-1-オキソプロパン-2-イル)-4-(2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-3-イル)ピペリジン-1-カルボキサミドである。BHV-3500は、例えば、2003年12月18日に公開されたWO03/104236および2013年7月9日に発行されたUS8,481,546において記述されており、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。BHV-3500は難透過性を有し、本研究の対象物として選択された。BHV-3500-d8は、BHV-3500の八重水素化類似体であり、以下の式II:
【0147】
【化9】
を有する。
【0148】
研究プロトコールの記述
研究タイトル:イヌにおけるBHV-3500の単回用量舌下PK研究。
【0149】
研究目的:イヌにおける単回舌下投薬後のBHV-3500錠剤製剤の薬物動態を決定すること。
【0150】
研究期間:3週間。
【0151】
試験物品製剤:
特定。試験物品はBHV-3500として特定される。試験物品は錠剤として供給されることになる。
【0152】
人員に対する危険性。危険なまたは潜在的に危険な化学物質の取り扱いに使用される日常的な安全手順に準拠し、試験物品を取り扱う人員の健康および安全性を確実にする。
【0153】
試験物品特徴付け。試験物品の属性または純度を検証する分析の証明書(または他の適切な文書)が提供される。
【0154】
用量の調製および分析。投薬製剤に対して分析は実施しない。
【0155】
保管。BHV-3500錠剤は室温で保管する。
【0156】
試料の処分および保持。分注される試験物品のすべての分量を文書化する。この期間の研究には保持試料は要求されない。
【0157】
試験物品の用量選択の基礎。試験物品用量レベルは、試験物品を用いた先のPK研究に基づいて選択した。
【0158】
投与ルート。試験物品は舌下に投与される。
【0159】
試験物品の処分。研究の完了時に、残っているいかなる試験物品も返却および廃棄する。
【0160】
実験設計:
以下の表1を参照されたい。
【0161】
試験システム:
試験動物。この研究において使用するために、三(3)または3匹の雌のビーグル犬を、Ridglan Farms、Mount Horeb、WIから入手する。すべての動物は、供給業者によって、ジステンパー、2型アデノウイルス、パラインフルエンザ、ボルデテラ、狂犬病、パピローマウイルスおよびパルボウイルスに対して免疫化される。投薬開始時に、イヌはおよそ1歳であり、およそ8から12kgの重量である。同じ3匹の動物をすべての試験物品投与に使用する。
【0162】
正当性。イヌは、非臨床毒性研究に使用される標準種であり、医薬作用物質の薬物動態の安全性評価のための大型動物(非げっ歯類)モデルシステムとして米国食品医薬品局によって認可されている。
【0163】
動物の数についての正当性。使用される動物の数は、意味のあるデータを取得するために必要な最低限である。出資者および研究責任者の知る限り、この研究の遂行は、種、試験物品、投与の用量、ルートおよび期間に関して、既存データとの不必要な重複をもたらすことはない。
【0164】
収容。イヌは、自動給水システムを備えた檻内に個々に収容される。檻は毎日清掃される。イヌは、米国農務省の福祉基準(タイトル9、連邦規則集、第3部、1991年改訂版)および実験動物の管理と使用に関する指針(米国学術研究会議、2011)に明記されている基準に従って収容される。
【0165】
食物。Certified Canine Diet #2021C(Harlan Teklad、Madison、WI)。各イヌに、およそ400gの食物を毎日最低2時間にわたって利用可能にする。食餌の各ロットを汚染物質について分析して、この研究の遂行または目的を妨げると予期される濃度で存在しないことを確実にする。研究において使用される食餌のロットからの分析データを試験施設のファイルに保持する。イヌには投薬の前に絶食させる。食物は投薬のおよそ1時間後に提供される。
【0166】
水。粗濾過したシカゴ市の水が自動給水システムを介してすべてのイヌに自由に提供される。水は、細菌汚染および化学組成(例えば、電解質、金属等)について周期的に分析される。水質分析記録を試験施設のファイルに保持する。研究を妨げると予期される汚染物質は水中に存在しないことが公知である。
【0167】
動物の特定。各イヌは、右または左耳のUSDA入れ墨番号によって特定される。各イヌには、研究内での独自の番号も割り当てられる。すべての檻は、プロジェクト番号、動物番号および性別によって特定される。ケージカードは、群ごとに色分けされる。
【0168】
環境制御。動物飼育室内の温度および相対湿度は毎日手動で記録される。12時間の明/暗サイクル(自動タイマーで維持する)を使用する。動物飼育室は、それぞれおよそ20℃から25℃および30%~70%の温度および相対湿度範囲内に保たれる。
【0169】
方法:
隔離。この研究のために購入した動物は、試験物品の投与前少なくとも2週間にわたって隔離される。隔離期間全体を通して、動物を、致死または瀕死のエビデンスについて少なくとも1日に1回観察する。
【0170】
無作為化。動物が隔離所から解放された後、動物を群に無作為に割り当てる。無作為化の前に、各イヌは詳細な臨床観察を受けて、試験動物としてのその適性を確実にする。
【0171】
投与。群1から2の動物に、BHV-3500の単回経口カプセル剤投与を20mg/イヌで受けさせる。群4から6の動物に、BHV-3500の単回経口(カプセル剤)投与を50mg/イヌの用量で受けさせる。各群はその後、次の群が投薬される前に少なくとも48時間の洗い出し期間となる。
【0172】
瀕死/致死観察。投薬開始前に、動物を、致死または瀕死のエビデンスについて少なくとも1日に1回観察する。投薬開始時および次いで残りの観察期間全体を通して、すべての生存する研究動物を、致死または瀕死のエビデンスについておよびその全般的健康を評価するために少なくとも1日に2回観察する。あらゆる異常な臨床兆候を記録する。瀕死/致死確認には最低4時間の間隔を空ける。
【0173】
瀕死の動物。瀕死/致死観察中に、次に予定されている観察期間まで生存する可能性が低いと判断されたあらゆる動物は、担当獣医師および研究責任者の同意に基づき、研究から除去し、秤量し、安楽死させ、解剖する。これらの動物は、極限状態で安楽死させられるとして研究ノートに記録される。死亡した動物は解剖のために直ちに除去し、研究ノートに死亡を記録する。
【0174】
負傷または疾患のある動物。試験中の動物は、いかなる疾患または傷害も標準的な獣医師の診療に準拠して処置される。研究ノートに、状況およびあらゆる罹患した動物の処分の完全な記録が行われる。他の研究に潜在的な感染の脅威をもたらすあらゆる動物を隔てる。
【0175】
臨床観察。各用量投与のおよそ1時間後に臨床観察を行う。
【0176】
体重管理。各投薬の前に動物を秤量する。
【0177】
食物消費量測定。個々の動物の食物消費量は、この研究では測定しない。
【0178】
血漿薬物レベル。BHV-3500の血漿レベルの決定のための血液試料(頸静脈から収集されたおよそ3ml)を、各イヌから、各投薬後6つの時点(投薬前;15、30および60分、2および4時間)において取得する。EDTAを抗凝固剤として使用する。試験センターでBHV-3500の濃度について分析するまで、血漿試料をおよそ-70℃で凍結させる。薬物動態モデリングは、AUC、t1/2、TmaxおよびCmaxを含む。
【0179】
死後。これは非終末研究である。イヌは、最後の採血後に隔離所に返却される。
【0180】
データノート。試験センターによって生成されたすべての原本書類データは、ルーズリーフノートに維持される。ルーズリーフノートに維持されるべき書類データは、以下:
・ 署名された原本のプロトコールならびにあらゆる修正および/または逸脱、
・ 動物の受け取り記録、
・ 動物の飼育記録、
・ 試験物品データ、
・ 採血データ、
・ TKデータ
を含むが必ずしもこれらに限定されるとは限らない。
【0181】
ToxData(登録商標)を使用して電子的に捕捉されたデータ(例えば、用量投与、毎日の瀕死/致死および環境データ、臨床観察、体重等)は、コンピュータシステムのデータベース内に維持され、ToxData(登録商標).htmファイルの電子コピーがCD-ROMにもバックアップされ、ディスクは生データとともに維持される。
【0182】
設計の変更。プロトコールにおける変更は、研究が進むのに伴ったプロトコール修正の形態のものであってよい。出資者の特定の書面による同意なしにプロトコールの変化は行われない。
【0183】
規制基準および順守。この研究のパイロット的性質により、研究は、米国FDAによって明記されている優良試験所規範(GLP)規則(連邦規則集のタイトル21、第38部)を順守して行われない。研究は、試験センターの標準作業手順に従って行われる。
【0184】
報告。報告の草案が準備され、再検討のために出資者に提出される。報告における情報は、以下:
・ あらゆる修正および/または逸脱を含む承認されたプロトコールのコピー
・ 使用した動物の種および系統
・ 臨床観察データ
・ 体重データ
・ 血漿薬物レベルデータ
・ 薬物動態データ
を含むが必ずしもこれらに限定されるとは限らない。
【0185】
草案報告書の出資者による再検討後、最終報告書が出資者に提出される。
【0186】
データ保持。この研究の結果として生成されたすべての生データおよび研究からの最終報告書のコピーは、試験センターにて、研究完了日から1年間にわたってアーカイブに保存される。出資者は、試験センターアーカイブにおける保存資料の継続的な保管に関連するまたはこれらの資料の別の保管施設への発送のためのすべての費用を負担する。試験センターQAUは、すべての保存資料の処分の完全な記録を維持する。
【0187】
人員。研究の実行に関与するすべての試験センター人員についての履歴書は、試験センターのファイルにある。
【0188】
プロトコール承認。このプロトコールは、出資者の特定の文書を順守する。
【0189】
方法
1. 実験設計および用量投与
各群について、3匹の雌のビーグル犬に、表1において詳述されている通り、BHV-3500またはFC-10475を1回投薬した。
【0190】
【表1】
【0191】
2. 採血
各投薬後、BHV-3500の血漿レベルの決定のための血液試料(頸静脈からおよそ3ml)を、各イヌから6つの時点(投薬前;投薬後15、30および60分ならびに2および4時間)において取得した。EDTAを抗凝固剤として使用した。分析するまで、血漿試料をおよそ-70℃で凍結させた。
【0192】
3. 参照基準および内部標準ならびに血漿試料調製:
BHV-3500およびBHV-3500-d8の参照標準は出資者によって提供され、室温で保管された。この研究中に収集された血漿試料におけるBHV-3500濃度の決定用の校正標準および品質管理(QC)試料の調製のために、標準をさらに精製することなく使用した。
【0193】
血漿中におけるBHV-3500の決定のために、各試料から50μLのアリコートを96ウェルプレートの適切なウェルに移し、これに、10μLの水中50%アセトニトリル(ACN)、続いて、250μLの内部標準溶液(ACN中10ng/mlのBHV-3500-d8)を添加した。プレートを密閉し、およそ5分間にわたってボルテックスした後、プレートを4000rpmにて、4±4℃で10分間にわたって遠心分離した。得られた上清の一部(100μL)を別の96ウェルプレートの適切なウェル(300μLの水中0.15%ギ酸を含有する)に移した。このプレートを密閉し、機器分析の前にその内容物を混合した。
【0194】
新しく調製したBHV-3500標準曲線およびQC試料を研究試料とともに分析した。機器キャリブレーターは、10μLのストックBHV-3500/FC-10475溶液を、50μLのブランクイヌ血漿に添加することによって調製した。ブランクイヌ血漿はBioIVT(Hicksville、NY)を供給源とし、20℃で凍結させて保管した。公称キャリブレーター濃度は、2.00から200ng/mlまでの範囲であった。QC試料は、6.00、50.0および150ng/mlの濃度で調製した。キャリブレーターおよびQC試料を、上述した抽出手順後の分析のために加工した。
【0195】
4. 分析装置および条件
キャリブレーター、QCおよび研究試料を、表2において詳述されているLC-MS/MS機器条件下で分析した。被分析物濃度に対する被分析物対内部標準ピーク面積比の線形回帰(1/xの重み付け係数)からキャリブレーション曲線を計算した。試料中における被分析物の濃度は、キャリブレーション曲線のピーク面積比および回帰パラメーターを使用して決定した。
【0196】
【表2】
【0197】
5. 薬物動態
予定された(公称)試料採取時間における個々の動物の血漿BHV-3500濃度データを、Phoenixウィンノンリンソフトウェア(バージョン8.1;Certara、Princeton、NJ)を用いる血管外投与のための非コンパートメントモデルを使用して分析した。
【0198】
消失速度定数(λ)は、データによって許される場合、終末相のデータ点における対数線形回帰(PhoenixウィンノンリンのベストフィットラムダZ計算法オプションを使用する)によって計算し、血漿消失半減期(t1/2)はln(2)/λとして計算された。時間ゼロから4時間時点における濃度までの血漿濃度-時間曲線下面積の値(AUC0-4hr)は、リニアアップ/ログダウン台形公式によって計算した。
【0199】
公称用量レベルをPK分析に使用した。以下に列挙するPKパラメーターを評定した(適用可能な場合およびデータによって許される場合)。
・ 消失半減期(t1/2
・ 最大血漿濃度の発生時間(Tmax
・ 最大血漿濃度(Cmax
・ 血漿濃度-時間曲線下面積[0から4時間時点;AUC0-4hr
【0200】
PK略語および測定の単位を表3に提示する。
【0201】
【表3】
【0202】
結果
BHV-3500濃度決定を表4に提示し、図1にグラフで示す。PKパラメーターを表5に示す(BHV-3500)。
【0203】
【表4】
【0204】
【表5】
【0205】
DDMを加えてBHV-3500を投与した場合の群1はCmax37.0ng/mlを有したのに対し、DDMを加えずにBHV-3500を投与した場合は31.7ng/mlであった(Cmaxにおける16%の増大)。
【0206】
DDMを加えてBHV-3500を投与した場合の群1はAUC55.1時×ng/mlを有したのに対し、DDMを加えずにBHV-3500を投与した場合は44.4時×ng/mlであった(AUCにおける24%の増大)。
【0207】
(実施例2)
この実施例において記述されている研究の目的は、BHV-3500をZydis(登録商標)剤形に製剤化することの技術的な実現可能性を評定することであった。実現可能性は、52.85mgの塩酸塩(食塩当量係数:1.057)に対応する最大用量強度が50mgの遊離塩基であると決定した。
【0208】
製剤化実現可能性活動は、満足な完成品の外観および分散時間等の許容できる重大な品質特性を持つ、BHV-3500およびドデシルマルトシドを含有する堅牢な製剤を開発するための試みにおいて、5つの製造研究からなっていた。
【0209】
研究1
研究1は、5つのバッチからなっていた。すべてのバッチは、固定濃度のゼラチン、マンニトールおよびドデシルマルトシドを含有していた。研究1は、以下を調査した。
・ Zydis(登録商標)ユニットに製剤化され得るBHV-3500の最大達成可能用量の決定。
・ 4つの湿式充填重量-250mg/500mgおよび300mg/600mg(用量比例製剤)ならびに5つの濃度のBHV-3500(%w/w)を評価する。
・ API吸収を支援するための透過エンハンサーとしてのドデシルマルトシド(0.50%w/w)の評価。
・ phがph5.0±0.2に変更された。
【0210】
バッチの大部分について全体的な完成品の外観は許容できるものであり、予期されたよりも高用量のBHV-3500(17.62%w/w)を凍結させ、首尾よくフリーズドライした。すべてのバッチにおいて広範囲に及ぶフェザリングが存在し、湿式充填重量(500mg/600mg)を持つバッチはより高レベルのフェザリングを有していた。
【0211】
飛び出しも、特に高濃度のBHV-3500およびより大きい湿式充填重量を有するユニット(バッチZ4840/94/5a、5b-それぞれ300mg/600mg湿式充填重量において16.67%w/wのAPI)において問題として特定された。
【0212】
すべてのバッチは、10秒以下の許容できる基準内の分散時間を有していた。
【0213】
完成品の外観、ユニットの堅牢性を改善するため、ならびにフェザリング/脆弱性および飛び出しを低減させるために要求される、ゼラチンおよびマンニトール等のマトリックスフォーマーの濃度の最適化が推奨された。透過エンハンサーであるドデシルマルトシドの範囲決定も、ユニットの全体的な完成品の外観に対するその効果を特定するために行われるべきである。
【0214】
研究2
研究2の目的は、物理的外観および剛性を改善するために、16.67%w/wのBHV-3500を含有する製剤を最適化することであった。研究2は、以下を調査した。
・ 異なるレベルの透過エンハンサーであるドデシルマルトシド(0.2~0.5%w/w)の組み込みを評価する。
・ 2つの異なる充填重量300mg/600mg(用量比例製剤)を評価する。
・ HMW魚ゼラチンの濃度(5.50~6.00%w/w)およびマンニトール(4.40~4.80%w/w)を評価する。
・ phがph5.0±0.2に変更された。
【0215】
製造されたすべてのバッチは、この分散試験が行われなかったことにより、ひび割れおよび飛び出しの非常に高い発生率を有していた。製造されたすべてのバッチの低品質に基づき、製品の外観および品質を改善するためにさらなる製剤最適化が要求された。ゼラチンおよびマンニトールのレベルの増大は外観を改善しなかった。したがって、潜在的な構造エンハンサーとしてグリシンを使用することになった。潜在的な透過エンハンサーとして使用したDDMの濃度は、次の研究において最適化されることも必要であった。完成品の外観に対するクエン酸の効果を決定するために、将来の研究においてpHを変更しないことも推奨された。
【0216】
研究3
研究3の目的は、物理的外観および剛性を改善するために、16.67%w/wのBHV-3500および0.50%w/wのDDMを含有する製剤を最適化することであった。研究3は、以下を調査した。
・ 構造エンハンサーとしてのグリシン(1.50%w/w)の組み込みの評価。
・ 1つの湿式充填重量-600mgを評価する。
・ pH調整なし。
【0217】
研究3において製造されたすべてのバッチは全体として可変レベルのひび割れを示し、グリシンの存在がひび割れの低減を支援しなかったことは明確である。DDMを加えたまたは加えないバッチいずれにおいても、改善は見られなかった。
【0218】
この研究において製造したすべてのユニットは、トレイを裏返すとポケットから飛び出した。さらに、DDMおよびグリシンの両方を含有するユニット(バッチZ4840/104/1)の分散時間は、10秒以下の許容できる基準外であり、このバッチの外観はすべてのバッチの中で最低であり、これは、DDMおよびグリシンの組合せが将来の研究に進められるべきではないことを示唆していた。
【0219】
オーブン研究は、0日目と14日目との間で、アッセイにおいても関連物質においてもその期間にわたって変化がなかったことを示した。14日目と21日目との間では急激な変化があり、これは、オーブンの温度が105℃まで上昇するという不注意による温度逸脱を理由とするものであった。オーブンが50℃まで低下した後、アッセイにおいても関連物質においても変化はなかった。
【0220】
次の実現可能性研究は、ひび割れを支援するためにDDMおよびゼラチンの%w/wを範囲決定すること、ならびにBHV-3500の投薬量を低減させて、完成品の外観に対する影響を評価することも狙いとすべきであることが推奨された。これは実験設計の一部として実施されることが推奨された。
【0221】
研究4
研究4の目的は、マンニトールの比を維持し、DDMの濃度の範囲を定めながら、HMW魚ゼラチンを範囲決定すること、ならびに、充填重量の効果および完成品の外観の溶液保持時間を実験設計研究の一部として評価することもであった。より大きいポケットサイズを使用して、BHV-3500の濃度も低下させた。研究4は、以下を調査した。
・ %w/w HWM魚ゼラチン
・ %w/w HWM DDM
・ pH調整なし
・ 600mg/1200mgポケット中50mg/100mg用量
【0222】
この研究は、用量およびユニットサイズにおける50mg用量/600mgポケットサイズから100mg用量/1200mgポケットサイズまでの増大が、同じAPI濃度のユニットの全体的な外観および分散に対して有意な効果を有することを示した。100mg用量/1200mgポケットサイズユニットは、飛び出しおよびひび割れの増大も見せた。DDMは、0.5%w/wのより高い濃度でユニットの分散時間の負の効果を有すると思われた。したがって、0.25%DDM(w/w)の濃度低減および600mgの充填重量はさらなる製剤最適化研究に進められた。
【0223】
研究5
研究5の目的は、0.25%w/wのDDMおよび5.00%w/wのHMW魚ゼラチンを含有する研究4からの成功したバッチを製造して、非公式な安定性研究のための試料を提供することであった。完成品の外観に対するDDMの影響を比較するために、DDMを含有しないユニットを製造することもであった。研究5は、以下を調査した。
・ ドデシルマルトシド0.25%w/wの影響の評価。
【0224】
すべてのバッチをZydis(登録商標)マトリックスに首尾よく組み込み、良好な外観および分散を持つ白色円形ユニットを生成した。バッチZ4840/120/1-2の両方の混合物は、24時間にわたって撹拌したままにした場合、濁ることが報告されたが、画像を再検討すると、溶液の外観は24時間の保持期間にわたって変化せず、そのため安定であったことが決定された。これは、24溶液保持におけるユニットが同じアッセイ結果を有し、進行中の非公式な安定性の両方の時点において見られる関連物質にも分量にも差異がなかったことを実証する、アッセイおよび関連物質試験によっても確認された。
【0225】
0.25%w/wのDDMを含有するバッチZ4840/120/1は、DDMを含有しないバッチZ4840/120/2と比較した場合、いかなる有意な欠陥も有さなかった。したがって、これは、DDMがこの濃度では全体的な完成品の外観に有意に影響を及ぼさないことを示唆していた。
【0226】
しかしながら、バッチZ4840/120/1はユニット中に存在する気泡を有していたのに対しバッチZ4840/120/2は有しておらず、これは、DDMの存在が投薬中に気泡を引き起こすことを示唆し得、これは、DDMがミックス中に存在する場合における粘度の増大によるものであり得る。しかしながら、これは、小さいバッチサイズの性質および手動投薬による有意な欠陥であるとはみなされず、これは、将来におけるより大きい規模のバッチのために最適化されるであろう。
【0227】
製剤および設計空間
これらの研究中に評定された製剤の詳細を表6で提供する。API濃度、ゼラチンおよびマンニトールレベル、用量重量ならびに透過エンハンサー(ドデシルマルトピラノシド)について、範囲決定を実施した。製剤最適化中に製剤およびプロセスパラメーターのさらなる評定が推奨される。
【0228】
【表6】
【0229】
容器施栓系
表7は、すべての研究において使用した包装材料を列挙する。
【0230】
【表7】
【0231】
技術的(TECHINICAL)リスク評価
技術的リスク評価は、これらの研究中に得られた知識により更新された。表8は所見をまとめる。
【0232】
【表8】
【0233】
残留溶媒
開発の実現可能性段階におけるZydis(登録商標)BHV-3500についての残留溶媒評価を表9に示す。
【0234】
【表9】
【0235】
まとめ
研究5からの完成品試験結果に基づき、顧客フィードバックを考慮して、製剤の製造可能性を確実にするために、ベンチ規模の臨床製造の前に、0.25%w/wのDDMを含有するより大きい規模(およそ5kg)の製造バッチZ4840/120/1が推奨される。
【0236】
この製剤は、技術バッチ/臨床GMP製造に好適であり得るが、初のヒト試験後、さらなる最適化/製品特徴付けが強く推奨される。
【0237】
(実施例3)
この研究の目的は、臨床試験用のBHV-3500のバイオアベイラビリティを改善するために好適な軟質ゲル製剤を開発することであった。BHV-3500は、水溶性であるがその高い極性に関係する低い透過性を持つ分子である。したがって、この化合物の経口バイオアベイラビリティは、極めて低い。オプティフォームソリューションスイート(OFSS)バイオプログラムの実行後、リード製剤を選択した。2週間の安定性研究しか実施されなかったため、この製剤は最適化されていない製剤である。その上、リード製剤は懸濁液であるため、カプセル化中の含量均一性を確実にするために増粘剤が必要であった。
【0238】
増粘剤の選択後、異なる添加剤中におけるBHV-3500の安定性を評価するための適合性研究を実施した。次いで、非公式な安定性研究を実施して、添加剤選択を確認し、製剤を調整した。この製剤を動物PK研究においても試験して、製剤のPKパラメーターを評定した。PKおよび予備安定性に基づき、1つの製剤を選択し、異なる薬物負荷を持つ4つの異なるバッチのカプセル剤を製造し、加速安定性を重視した。
【0239】
オプティフォームソリューションスイート結果
このプログラムは、OFFSバイオプロジェクトの継続であり、ここでは、カプリン酸ナトリウムを使用する透過性の増大の評価を行った。この評価は陽性であり、腸におけるそれらの消化中にカプリン酸ナトリウムを放出することができるであろう4つの異なる可能な製剤のインビボ試験を我々が継続することを許した。このインビボ評定に基づき、1つの製剤が選択され、何故なら、該製剤は、経口投与におけるBHV-3500の血漿濃度を改善することができ、短期安定性研究(2週間/40℃)の間、薬物物質のいかなる有意な分解も示さなかったからである。
【0240】
選択された製剤組成について、以下の表10において詳述する。この製剤は、BHV-3500の腸透過性を潜在的に増大させることができる腸内酵素による消化中にカプリン酸ナトリウムを放出することができる、高レベルの中鎖モノ、ジおよびトリグリセリドを含有する。ポリソルベートは、製剤を乳化し、消化の動力学を最適化するのに役立つ。APIを製剤に懸濁する。
【0241】
【表10】
【0242】
懸濁液中の薬物物質を維持するために、増粘剤を使用して粘度を増大させる必要があった。
【0243】
この製剤については、薬物負荷が確立されなかったため、適合性研究も長期安定性研究も行わなかった。
【0244】
製剤最適化
増粘剤選択
異なる増粘剤を異なる量で試して、表10に提示するミックスの粘度を増大させた。この研究の目的はまさに良好な候補および適切な量を特定することであったため、関与する異なる添加剤の比較のために懸濁液の目視観察を行った。表11は結果をまとめる。粘度を増大させるそのより良好な能力を理由として、エーロシル200がおよそ5%レベルで選択された。
【0245】
【表11】
【0246】
適合性研究
添加剤の存在下、あらゆる主要なAPI分解を特定するための適合性研究を実施した。添加剤のリストは、製剤選択および一般的なシェル成分に基づいて特定された。典型的には添加剤の親水性に依存するシェルから充填までの考えられる水の移動の効果を評定するために5%水スパイクを組み込む親水性添加剤を用いて追加の試料を調製した。APLの添加前に水を添加剤に添加し、二(2)から五(5)mgのAPIをおよそ1gの各添加剤または水+添加剤の混合物と混合した。すべての試料を、プラスチック製のネジキャップで閉じたガラスバイアル中で調製し、ボルテックスを介して少なくとも5分間にわたって混合し、40℃に設定されたオーブン内、2つの時点(以下に示す通り2、3、4または5週間)にわたって静置させた。HPLCにより、試料をアッセイおよび関連物質について分析した。2つの主な不純物を特定し、この評定に含めた(RRT=0.43およびRRT=1.06)。この研究の結果を表12において詳述する。この最初の実験を実施した後、より良好な適合性を持つ添加剤を特定するために、代替的な添加剤を試験した。この研究の結果を表13において詳述する。
【0247】
【表12】
【0248】
一部の添加剤は、APIの若干の分解を誘発すると思われたため、代替的な添加剤を評定した。ツイーン80を別のグレード(ツイーン80HP)によって置きかえ、本発明者らのシステムでは一般名ポリソルベート80を使用してラベル付けした。このグレードは、ツイーン80の低水分、低過酸化物バージョンである。ラブラソルALFをクロダモルGMCC-SSの考えられる置きかえとして調査した。レシチン、シンペロニックPE(エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー)およびコリフォールELも、ツイーン80の代替として試験した。水中5%のゼラチンの溶液を加えた試料を添加して、カプセル剤のシェルとのさらなる適合性を評価した。分解は、酸化を誘発しやすい傾向がある添加剤中で主に起こることから、添加剤中1%w/wの比でビタミンEの補給剤を加えた一部の試料も試験した。
【0249】
【表13】
【0250】
新たなグレードのポリソルベート80は、分解を限定することができ、ビタミンEの存在により、APIの安定性のさらなる改善が観察された。ラブラソルは、4週間でAPIの完全分解を誘発しないため、クロダモルGMCC-SSを置きかえるために有用ではなかったが、ここでも同じく、1%のビタミンEの添加がAPLの分解を防止した。他の添加剤も、APLの分解率を減少させることはできなかった。したがって、製剤BHV-002、増粘剤としてのエーロシル200、およびポリソルベート80の使用とともに前進することを決定した。この製剤は後にBHV-007と呼ばれ、詳細については表14を参照されたい。
【0251】
ジカプリル酸プロピレングリコール(ラブラファク-PG)は現在、局所使用のためのFDAの不活性原料リスト(IIG)に列挙されている(10%w/w、CAS7384987、UNII581437HWX2)。ラブラファク-PGは現在、経口送達のためのFDAのIIGデータベースには列挙されていないが、IIGに列挙されているモノステアリン酸グリセリルであるクロダモルGMCC-SSと同様であり、ここでは、中鎖モノおよびジグリセリドの代わりに、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールである(クロダモルGMCC-SSのグリセロールの骨格がラブラファク-PGではプロピレングリコールによって置換されている)。Biohavenによって実施されたPK研究に基づき、50mg/gの薬物負荷が決定された。
【0252】
【表14】
【0253】
安定性研究
製剤を確認するために、40℃における安定性研究を、製剤BHV-007、BHV-008、BHV-009およびBHV-010を用いて実施した。結果を表15において詳述する。
【0254】
【表15】
【0255】
製剤BHV-008は、40℃で12週間後に0.05%の不純物しか有していなかったことから、プロジェクトを継続するように選択された。この製剤をイヌのPK研究において、2つの薬物負荷:900mgのビヒクル中それぞれ25mgおよび50mgのBHV-3500で使用した。製剤を硬質ゼラチンカプセル剤に充填し、これらのカプセル剤を腸溶コーティング分散に浸漬した。50mgの負荷は動物モデルにおいて予期されたPKプロファイルを提供したが、その動物研究においては25および50mgのいずれも用量に比例していたことに留意すべきである。
【0256】
最終製剤リード選択およびプロトタイプ製造
リード製剤からの動物PK研究結果
片頭痛の処置において臨床的に活性であることが公知であるBHV-3500のヒトPKプロファイルは、5、10および20mgの鼻腔内単位用量を試験する第2/3相の大規模な用量範囲決定臨床試験において特定され、ここで、10mgは最低完全有効用量として特定された。若干数の経口PK研究をイヌにおいて行って、異なる添加剤がBHV-3500の経口PKにどのように影響を与えるかを評定した。BHV-008の製剤選択は、イヌ経口PKの相対成長率に基づくものであり、これは、経口送達について予測されるヒト曝露が10mgの鼻腔内BHV-3500からの臨床曝露以上であったことを示した。
【0257】
選択された製剤
最終PK研究は、最適薬物負荷が900mgの製剤当たり50mgであることを決定した。それでもなお、それは非常に大きいカプセル剤が製造されることを暗示していた。これらのカプセル剤は、腸溶コーティングされているため、腸上部に到達する前には破裂せず、したがって、それらのサイズを理由として、胃において長時間にわたって保持され得る。この効果を限定するために、異なるサイズのカプセル剤を製造することを決定した。エーロシル200の分量は、ミックスの最終粘度におけるAPIの寄与を考慮に入れてわずかに減少させた。この分量の先の評価は、より大量の製剤を調製することが要求されたため、プラセボに対して行われた。エーロシル200の漸進的な減少を用いて追加の研究が行われ、4.4%前後のエーロシルの使用は、充填製剤の良好な粘度を依然として維持することを示す。
【0258】
2つの異なる戦略に準拠し、一方は用量を2個のカプセル剤に分割することからなり、他方は50mgのAPLを送達するための製剤の分量を減少させることであった。表16はこれらの異なる製剤を詳述する。
【0259】
【表16】
【0260】
混合
すべての製剤に同じ混合プロセスを使用した。大まかな概要として、ベコミックス2.5Lを利用して、添加剤に、ポリソルベート80から出発し、秤量前に40℃で融解したクロダモルGMCC-SS、およびミグリオール812Nの一部を添加した。最初の混合後、ビタミンEを添加し、次いで、エーロシル200を3つの異なる部で添加して、均質性を確実にした(エーロシルを単一ステップで添加すれば、それを分散させることは困難であろう)。APIをアイソレーター内で秤量し、後半分のミグリオールを添加してスラリーを調製した。このスラリーをベコミックスの内容物に添加して、製剤を仕上げた。
【0261】
プラセボには、添加剤、ポリソルベート80、クロダモルGMCC-SSおよびミグリオールを連続的に添加し、混合した。数分間にわたって混合した後、ビタミンE、次いで、エーロシル200を、ここでも同じく3つの異なる部で添加した。
【0262】
カプセル化
実験室規模のカプセル化機を使用して、充填材料をカプセル化した。白色不透明サイズ18長楕円形(打錠機:G18BE、単一ポケット)またはサイズ14長楕円形(打錠機:G14BF、単一ポケット)またはサイズ9.5長楕円形(打錠機:G9.5BC、単一ポケット)カプセルを最小限の問題で生成した。カプセル化全体を通しておよそ3から10分ごとに加工中充填重量を量った。カプセルを秤量し、次いで、空に(エーテルおよびメタノールを使用して清掃)した後、空のシェルを秤量した。得られた充填重量を表17に示す。各重量は、カプセル化中に異なる間隔で(少なくとも5分ごとに)量った1個のカプセルの重量を表す。バッチサイズが異なるため、測定回数は可変である。
【0263】
【表17】
【0264】
乾燥
乾燥相の間、カプセルをそれらの硬度について試験し(1時点当たり5個のカプセル)、4から6日後に仕様(8-1ON)内となることが判明した(表18)。充填水分もプラセボにおいて評価し、値は2回の測定の平均であり、各測定は、少なくとも3個のカプセルの充填の混合後に行う(表19)。
【0265】
【表18】
【0266】
【表19】
【0267】
コーティング
異なるバッチを、パンコーター内、pH感受性コーティングでコーティングして、カプセル剤の胃における保護および腸における放出を可能にした。コーティングの懸濁処方を表20において記述する。懸濁剤は、室温で、ポリマー(アクアポリッシュPクリア792.03E)を水に分散させ、次いで、第2のステップにおいて可塑剤(プロピレングリコール)を添加することにより調製した。
【0268】
【表20】
【0269】
プロセス全体の間、コーティング懸濁剤の撹拌を維持した。コーティングをパンコーター内のカプセル剤に少なくとも6%の標的重量増加でスプレーした(重量増加の実際の値については表21を参照)。
【0270】
【表21】
【0271】
プロトタイプ安定性
プロトタイプバッチの非公式な安定性結果は、この開発報告の範囲外であり、別個に報告することとする。開発プロセスの一部として、非公式な安定性結果は、この製品に適切な仕様限界をさらに定義するために使用され得る。草案T=0の結果は、この報告の際に利用可能であり、表22に示した。これらのデータは、先に実施した製剤充填安定性研究において見られたものに匹敵する。(OET-10291062、ロット20SC-06)についてのT=1か月の結果を表23に示し、T=0の結果もこの表にコピーして、これら2つの時点の比較を可能にする。報告されたすべての不純物は仕様内である。
【0272】
【表22】
【0273】
カプセル剤をアルミニウムバッグに保管し、次いで、分析研究開発への送達のためにプラスチックバッグに試料採取した。密閉しなかったため、カプセル剤は大気から水分を吸収して試験所の湿度に順応した。将来のバッチのために、カプセル剤放出のための硬度範囲をさらに評定すべきである。
【0274】
【表23】
【0275】
結論
BHV-3500は首尾よく製剤化され、軟質ゼラチンカプセル剤にカプセル化された。利用可能なデータは、プロトタイプ製剤が十分に安定であり、方法開発のためにICH条件においてそれらの安定性について評価されるプロトタイプカプセル剤の製造を本発明者らが開始することを可能にすると示唆している。製剤A9.5長楕円形(OET-10291062)をその後の動物経口安全性研究のために選択して、これらのカプセル剤で送達されたAPIのバイオアベイラビリティを確認し反復投薬の安全性を評定し、第0相臨床試験のためのGMP製造に前進した。プロトタイプ製剤の安定性をさらに理解するために、非公式な安定性研究が進行中である。
【0276】
(実施例4)
この研究の目的は、Biohaven製BHV-3500プラセボ9.5長楕円形およびBHV-3500 25mgの9.5長楕円形軟質ゲルのcGMP第0相非商業的臨床バッチを製造することである。各強度について1つのバッチの充填材料を、2.5Lのベコミックスベッセルを使用して1900.0gの理論上のバッチサイズで製造する。各充填ミックスを使用して、対応する強度のBHV-3500活性およびプラセボ軟質ゲルの1つのバッチを、各製品について4000ユニットの理論上のバッチサイズでカプセル化する(表24)。次いで、パンコーターを使用してカプセル剤をコーティングする。
【0277】
【表24】
【0278】
範囲
このプロトコールの範囲は、各強度のBHV-3500軟質ゲル(プラセボおよび25mg)の1つのバッチの製造に限定される。このcGMPバッチを製造する目的は、ヒトにおける第0相研究のための臨床試験材料(CTM)を提供することおよび公式な安定性研究を行うことである。
【0279】
背景
この製品は、片頭痛を処置することが意図されており、米国において顧客によって実施される第0相臨床試験において使用されることになる。活性およびプラセボ製品の非GMPバッチの製造を、非公式な安定性研究において使用するために実施した(詳細についてはPD-20-049Rを参照)。
【0280】
責任
製品開発技術指導者は、プロトコールを書くこと、バッチの製造に関与するすべての人員を訓練すること、および必要とされるバッチ番号の実行を監視することの責任を負う。
【0281】
製品開発管理、運用管理者、分析R&D/品質管理、検証、品質保証およびBiohaven(顧客)または被指名人は、プロトコールを承認することの責任を負う。
【0282】
生産オペレーター(材料調製、カプセル化および仕上げオペレーター)および/または製品開発技術者/専門家は、プロトコールに列挙されているバッチの実行の責任を負う。
【0283】
検証は、清掃検証プロトコールを公表することおよびバッチ記録に注釈をつけることの責任を負う。品質保証は、プロトコールの最終承認の責任を負う。
【0284】
指示書
軟質ゲル製造プロセスは、以下の項で説明される7つの別個のモジュールに分けられる。
1)充填材料調製
2)ゲル塊調製
3)カプセル化
4)軟質ゲル乾燥
5)軟質ゲル加工中仕上げ/包装
6)軟質ゲルコーティング
7)軟質ゲルバルク包装
【0285】
これらのモジュールのそれぞれについての製造指示書は、BHV-3500 25mg 9.5長楕円形軟質ゲルOET-10275670およびBHV-3500プラセボ9.5長楕円形軟質ゲルOET-10275671マスターバッチ記録において見ることができる。
【0286】
充填材料調製
BHV-3500 25mg 9.5長楕円形軟質ゲルは、ミグリオール812N、クロダモルGMCC-SS、ポリソルベート80、コロイド状二酸化ケイ素およびD,Lアルファトコフェロールに懸濁された活性医薬原料(API)、BHV-3500を、5.263%w/wのBHV-3500の濃度(25mgに対応する)で含有し、軟質ゲル当たり475mgの理論上の充填重量でカプセル化される。BHV-3500プラセボ9.5長楕円形軟質ゲルは、活性軟質ゲルのマッチングプラセボである。両方の標準書については表25および表26を参照されたい。
【0287】
BHV-3500の標的重量は、アッセイ純度(供給業者COA)に基づき、計量中に効力が100%になるように調整される。ミグリオール812Nは、公表されたバッチ記録のように効力調整に対して補償される。
【0288】
【表25】
【0289】
【表26】
【0290】
活性充填溶液は、2.5Lのベコミックス密閉混合タンクMV27内、材料調製順序の項における混合指示書に準拠して調製される。
【0291】
BHV-3500は、公表されたバッチ記録のようにアイソレーター内で分注される。
【0292】
バッチ製造に備えて、モノカプリル酸/カプリン酸グリセロール(クロダモルGMCC-SS-(MV))を、ホットボックス内、およそ40℃(104°F)で少なくとも24時間にわたって液化し、計量前に均質化しなくてはならない。
【0293】
ゲル塊調製
各個々のバッチについて、ゲルオペレーターは一つ(1)の004007ゲル塊を製造し、次いでこれを、カプセル化のために005007@91IP(不透明な白色)に色変換する。
【0294】
カプセル化
BHV-3500 25mg 9.5長楕円形の一つ(1)のバッチおよびBHV-3500プラセボ9.5長楕円形軟質ゲルの一つ(1)のバッチを、不透明な白色ゲル塊処方005007@911Pをそれぞれ使用して、4,000軟質ゲルの理論上のバッチサイズでカプセル化する。すべてのカプセル化ツーリング情報は、OET-10275670およびOET-10275671マスターバッチ記録に列挙されている。加工中充填重量/シェル重量およびシール厚チェックは、マスターバッチ記録における指示書のように実施される。カプセル化後、腸溶コーティングがプロセスの後半まで適用されるため、製品はBHV-3500 25mg 9.5長楕円形軟質ゲル(コア)およびBHV-3500プラセボ9.5長楕円形軟質ゲル(コア)と称される。
【0295】
これらのバッチは商業的ロットと比べて比較的小さい(4000軟質ゲル)ことから、棄却率はより高くなり得、したがって、SOPのような3%の廃棄限界は適用されない。この製品が開発に突き進むため、プロセス挙動に基づき適切な廃棄限界が確立される。棄却を最小化するためにあらゆる努力が為される。
【0296】
軟質ゲル乾燥
BHV-3500 25mg 9.5長楕円形軟質ゲル(コア)およびBHV-3500プラセボ9.5長楕円形軟質ゲル(コア)を含有する浅いトレイスタックを、乾燥トンネルに入れる。軟質ゲルを、個々の軟質ゲルの硬度値が8.0~11.0Nの仕様範囲内になるまで、標準的な浅いトレイ上のトンネル内で乾燥させる。毎日のカプセル化の最終スタックが完了した時間から1日の間隔(12±2時間)で、バッチ当たりの毎日の生産の最終スタックを試料採取し、SOP(「Bareissデュロメーターを使用する加工中硬度決定」)で試験する。各バッチについての毎日のカプセル化からの最終スタックについての硬度は、その日の生産について完了したすべてのスタックの検査のための深いトレイへの放出を決定する。硬度結果をバッチ記録に記録する。
【0297】
各バッチについて浅いトレイスタックからの軟質ゲルが硬度乾燥(d1ying)要件を満たした後、軟質ゲルを浅いトレイから深いトレイへ移す。
【0298】
軟質ゲル加工中仕上げおよび包装
軟質ゲル加工中仕上げは、公表されたバッチ記録のような手動カプセル洗浄からなる。
【0299】
洗浄プロセス後に検査を100%完了する。欠陥のある軟質ゲルを選別し、バッチ記録の廃品/試料棄却の項に記録する。
【0300】
コーティングされていない軟質ゲル(コア)の一つ(1)の化学保持試料を、公表されたバッチ記録のように製造プロセスのこの相の間に採取する。包装された軟質ゲルをコーティングステップの前に深いトレイに入れる。
【0301】
軟質ゲルコーティング
機能的コーティング懸濁剤製造および軟質ゲルコーティングは、西棟B0702、B0707号室において公表されたバッチ記録のように実施する。すべての要求される試料についてのラベルはバッチ記録において提供されている。
【0302】
軟質ゲルバルク包装
バルクコーティングされた軟質ゲルは、公表されたバッチ記録のように最終配置でバルク包装される。例外を除いてすべてのバルクコーティングされた軟質ゲルまたは公表されたバッチ記録において列挙されている試料のバルク包装配置は、単一の密閉したアルミニウムバッグ包装中に100の軟質ゲルである。密閉したアルミニウムバッグをカートンに入れ、各カートンは最大または5つのバッグを含有する。次いで、これらのアルミニウムバッグのうちの十六(16)は製品開発に提供されて、動物研究を実施する(perfon11)ために顧客CROへ発送される。この試料はGMPまたは非GMP材料としても使用され得ることから、リリース前に発送され得る。
【0303】
一つ(1)のカートンは、五十(50)のコーティングされた軟質ゲルを別個に包装することによって準備される。これらの五十の軟質ゲル(50)を、五(5)つの別個のアルミニウムバッグに十(10)ずつの軟質ゲル(合計50の軟質ゲル)で包装する。
【0304】
バルク完成品リリース試験
バルク完成品リリース試験は、BHV-3500 25mg 9.5長楕円形のためおよびBHV-3500プラセボ9.5長楕円形のためのバルク完成品仕様に従って実施される。製品開発または被指名人は、要求されるすべての試験についてRFA(分析依頼)を記入し、適切な試料を提出する。公表されたバッチ記録において列挙されている別個の微生物限度試験(MLT)方法検証(MV)試料もMicroグループに提出される。この試料を使用して、完成品仕様によって要求されるMLT試験を実施する前に、マイクロ方法検証を実施する。三つ(3)の複合試料が各バッチについて次の通りに収集される。
・ 一つ(1)のJ¥R&D化学試料
〇 アルミニウムバッグに包装された1つの滅菌バッグ内の50の軟質ゲル
・ 一つ(1)の製造業者保有の試料
〇 アルミニウムバッグに包装された1つの滅菌バッグ内の75の軟質ゲル
・ 一つ(1)の微生物学的限界リリース試験試料
〇 アルミニウムバッグに包装された1つの滅菌バッグ内の160の軟質ゲル
【0305】
検査およびAQL試験
コーティングされた軟質ゲルの代表的な試料は、仕上げオペレーターまたは被指名人によって取得され、バルク包装中のSOP「許容できる品質限界(J¥QL)検査」で検査される。AQLレベルII検査結果は、「許容できる品質限界(J¥QL)検査フォーム」に記録される。これには、公表されたバッチ記録の仕上げの項において、バルクコーティングされた軟質ゲルについての注釈が付けられる。コーティングの欠陥は、コーティングされていない軟質ゲルのシェルにおいて起こり得る欠陥と同様であるため、同じ基準が適用される(この検査にはAQL検査書籍を使用する)。抜き取られる試料サイズは、バッチサイズに基づきSOPで決定され、表27を参照されたい。
【0306】
【表27】
【0307】
原材料リリース試験
Biohavenによって生成されたAPIを使用してバッチを製造する。現在のリリース仕様のように、ロットを試験し、リリースする。万一APIが予期された製造時間に完全にリリースされないならば、APIリリースと並行して製造するための潜在的なプロセスとして一次的変更管理(TCC)を評定する。
【0308】
添加剤および包装は、各品目についての原材料仕様ごとに品質管理試験所による製造業者の標準的な手順を通じて完全にリリースされる。万一添加剤が予期された製造時間に完全にリリースされないならば、添加剤リリースと並行して製造するための潜在的なプロセスとして一次的変更管理(TCC)を評定する。
【0309】
(実施例5)
ザベゲパント(BHV-3500)、研究BHV3500-107、コホート1 50mg軟質ゲルQD(絶食/摂食)、予備PKまとめ
【0310】
ザベゲパント(BHV-3500)PK分析/まとめのためのデータ収集のまとめ
・ 研究BHV3500-107
・ コホート1(ザベゲパント(BHV-3500)50mg(2×25mg)軟質ゲルを経口的にQD投与、絶食1~10日目、摂食(適度な脂肪食11~14日目)
・ 集中的PK-1日目(絶食、単回用量)、10日目(絶食、複数回用量)、および14日目(摂食、複数回用量)
・ スパースPK(投薬前およびC8時間)3、6、9および12日目
・ PK比較データ
・ 単回用量:研究BHV3500-103、50mg×1(2×25mg)の軟質ゲルを経口的に投与した(処置B)後のPKデータ
【0311】
研究BHV3500-107、コホート1(ザベゲパント50mg QD絶食/摂食)、PKのまとめ
・ 絶食条件下、50mgの単回軟質ゲル投薬後の1日目ザベゲパントPKは、研究BHV3500-103における同じ用量/製剤後に観察されたものと同様であった
・ 研究107、コホート1、1日目:Tmax=2.25時間、Cmax=5.3ng/ml(1.4から13.8)、およびAUC0-inf=20.0ng×時/ml(9.5から47.8)
・ 研究103、処置B:Tmax=1.75時間、Cmax=7.6ng/ml(1.9から26.8)およびAUC0-inf=21.5ng×時/ml(9.2から60.1)
・ 10日目(定常状態、絶食)対1日目PK曝露は、同様のTmaxで最小限の蓄積を示した
・ 蓄積比(AR)Cmax=1.13およびAUC=1.35
・ Tmax=2.0時間、Cmax=5.7ng/ml(2.3から46.1)、およびAUC0-24=20.4ng×時/ml(6.7から75.4)
・ 50mg QDからの定常状態曝露は、10mg INからのもの未満のままである(Cmax 13.0ng/ml、AUC 33.0ng×時/ml)
・ 14日目(食物あり)対10日目(絶食)のPKは、実質的な負の食物効果を示した
・ ザベゲパント吸収の比率(Cmaxが約72%)および程度(AUCが約65%)における減少
・ 遅延したTmax(絶食対摂食においてそれぞれ2対4時間)
・ Tmax=3.6時間、Cmax=1.6ng/ml(1.0から3.0)、およびAUC0-24=7.3ng×時/ml(3.7から16.6)
・ 高いPK変動性およびCmaxおよびAUC(%CV>50%)が、1、10、14日目の集中的PKのそれぞれにおいて観察された
・ 1、3、6および10日目における投薬8時間後の濃度は、ザベゲパントの定常状態が絶食状態でのザベゲパントの複数回投薬後3日目に実現されることを示唆する
【0312】
軟質ゲル50mg平均(SD)PKプロファイル、1、10、14日目および研究103を、表28ならびに図2および3に示す。
【0313】
【表28】
【0314】
複数回50mgザベゲパントQD軟質ゲル投薬絶食10日目の結果を表29に示す。
【0315】
【表29】
【0316】
観察されたもの:
・ 高いPK変動性(>50%)
・ 複数回投薬後の最小限の蓄積:
幾何平均蓄積比(AR)は、Cmaxについては1.13およびAUC0-tについては1.35である
【0317】
複数回50mgザベゲパントQD軟質ゲル投薬摂食14日目の結果を表30に示す。
【0318】
【表30】
【0319】
適度な脂肪食で、吸収の比率および程度における実質的な減少、遅延したTmaxが観察された。
【0320】
食物効果(14/10日目):幾何平均の比および90%CIを表31に示す。
【0321】
【表31】
【0322】
コホート1 50mg QDザベゲパント平均(±SD)C8hour 1、3、6、9、10、12および14日目を図4および5に示す。50mg QD絶食1~10日目、適度な脂肪食11~14日目。
【0323】
コホート1 ザベゲパント50mg QD投薬前およびC8hour 1~14日目を表32に示す。
【0324】
【表32】
【0325】
・ 8時間における平均濃度は、定常状態が、絶食状態におけるザベゲパントの複数回投薬後3日目までに実現されることを示唆している
・ 絶食1~10日目および適度な脂肪食11~14日目で50mg QDの間に収集された試料
・ 投薬前(C0)濃度はLLOQを大きく下回っていた
【0326】
本出願全体を通して、種々の刊行物が、著者名および日付によってまたは特許番号もしくは特許公開番号によって参照される。これらの刊行物の開示は、本明細書に記述され特許請求されている発明の日付現在、当業者に公知の技術水準をより完全に記述するために、参照によりその全体が本出願に組み込まれる。しかしながら、本明細書における参考文献の引用は、そのような参考文献が本発明の先行技術であることの了承として解釈されるべきではない。
【0327】
当業者ならば、日常実験以上のものを使用することなく、本明細書において記述されている具体的な手順の多数の均等物を認識する、または解明することができるであろう。そのような均等物は、本発明の範囲内であるとみなされ、以下の特許請求の範囲によって網羅される。例えば、本明細書における記述および実施例において具体的に開示されているもの以外の薬学的に許容できる塩を用いることができる。さらに、品目のリスト内の具体的な品目、または品目のより大きい群内の品目のサブセット群は、本明細書においてそのような組合せを特定する具体的な開示があるか否かにかかわらず、他の具体的な品目、品目のサブセット群、または品目のより大きい群と組み合わせることができることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-11-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製剤の総重量の0.01~20重量%の量の、低分子CGRP受容体アンタゴニストまたはその塩もしくは溶媒和物と、
製剤の総重量の50~80重量%の量の、脂肪酸のトリグリセリドを含む親油相と、
製剤の総重量の10~50重量%の量の、ポリオールおよび脂肪酸の部分エステルを含む少なくとも1つの親油性界面活性剤と
を含む、
前記低分子CGRP受容体アンタゴニストが、ザベゲパント、リメゲパント、ウブロゲパント、アトゲパント、テルカゲパントもしくはオルセゲパント、その溶媒和物、または薬学的に許容できるその塩である、
軟質ゲル剤形の形態の医薬製剤。
【請求項2】
低分子CGRP受容体アンタゴニストが、ザベゲパント、その溶媒和物、または薬学的に許容できるその塩である、請求項に記載の医薬製剤。
【請求項3】
低分子CGRP受容体アンタゴニストが、ウブロゲパントもしくはアトゲパント、その溶媒和物、または薬学的に許容できるその塩である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項4】
製剤の総重量の1~30重量%の量の、10を超える親水性親油性バランス(「HLB」)を持つ少なくとも1つの親水性界面活性剤をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項5】
脂肪酸のトリグリセリドが、中鎖脂肪酸である、請求項1からのいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項6】
親油性界面活性剤が、中鎖脂肪酸のモノおよびジグリセリドの混合物を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項7】
水を含まない、請求項1からのいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項8】
それを必要とする対象における、異常なレベルのCGRPに関連する状態の処置または予防のための、対象に投与される、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬製剤
【請求項9】
状態が、急性片頭痛、慢性片頭痛、群発頭痛、慢性緊張型頭痛、薬物乱用頭痛、外傷後頭痛、脳震盪後症候群、脳外傷および眩暈から選択される障害である、請求項に記載の医薬製剤
【請求項10】
状態が、慢性疼痛、神経性血管拡張、神経性炎症、炎症性疼痛、神経障害性疼痛、糖尿病性末梢神経障害性疼痛、小径線維神経障害性疼痛、モートン神経腫、慢性膝関節痛、慢性背部痛、慢性股関節痛、慢性手指痛、運動誘発性の筋肉痛、がん疼痛、慢性炎症性皮膚痛、熱傷による疼痛、瘢痕による疼痛、複合性局所疼痛症候群、口腔灼熱症候群、アルコール性多発神経炎、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)または後天性免疫不全症候群(AIDS)関連神経障害、薬物誘発性神経障害、労働性神経障害、リンパ腫性神経障害、骨髄腫性神経障害、多巣性運動神経障害、慢性特発性感覚神経障害、癌性神経障害、急性疼痛、自律神経障害、圧迫性神経障害、血管炎性/虚血性神経障害、側頭骨顎関節痛、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、慢性局所疼痛症候群、眼痛および歯痛から選択される障害である、請求項に記載の医薬製剤
【請求項11】
状態が、非インスリン依存性真性糖尿病、血管障害、炎症、関節炎、熱性損傷、循環ショック、敗血症、アルコール離脱症候群、オピオイド離脱症候群、モルヒネ耐性、男性および女性におけるホットフラッシュ、閉経に関連する顔面紅潮、アレルギー性皮膚炎、乾癬、脳炎、虚血、脳卒中、てんかん、神経炎症性障害、神経変性疾患、皮膚疾患、神経因性皮膚発赤、皮膚の酒さ、紅斑、耳鳴り、肥満、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、外陰痛、多嚢胞性卵巣症候群、子宮筋腫、神経線維腫症、肝線維症、腎線維症、巣状分節性糸球体硬化症、糸球体腎炎、IgA腎症、多発性骨髄腫、重症筋無力症、シェーグレン症候群、骨関節炎、骨関節炎性椎間板変性疾患、顎関節障害、頸椎捻挫、関節リウマチならびに間質性膀胱炎から選択される障害である、請求項に記載の医薬製剤
【請求項12】
状態が、慢性閉塞性肺疾患、肺線維症、気管支過敏性、喘息、嚢胞性線維症、慢性特発性咳嗽および毒性傷害から選択される障害である、請求項に記載の医薬製剤
【国際調査報告】