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▶ エルブイエムエイチ レシェルシェの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-09
(54)【発明の名称】安定な脂肪酸石けん型化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/36 20060101AFI20240202BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240202BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20240202BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20240202BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240202BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20240202BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20240202BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
A61K8/36
A61K8/81
A61K8/44
A61K8/46
A61K8/37
A61Q19/10
A61Q1/14
A61K8/73
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536357
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 IB2020001129
(87)【国際公開番号】W WO2022136898
(87)【国際公開日】2022-06-30
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502189579
【氏名又は名称】エルブイエムエイチ レシェルシェ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】キム, ボラ
(72)【発明者】
【氏名】小澤 舞
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC231
4C083AC232
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC401
4C083AC402
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC711
4C083AC712
4C083AC791
4C083AC792
4C083AD042
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD131
4C083AD132
4C083AD281
4C083AD282
4C083BB04
4C083BB05
4C083BB07
4C083CC23
4C083DD23
4C083DD31
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
(a)炭素原子12~24個の1種若しくは複数の高級脂肪酸、又はそのアルカリ金属塩、(b)ポリクオタニウム-7及びポリクオタニウム-22からなる群から選択される少なくとも1種のカチオン性ポリマー、(c)アニオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤、並びに(d)疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び(メタ)アクリロイルアルキルタウリン又はその塩を構造単位として含む(メタ)アクリル系ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種の増粘剤を含む、化粧品組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)炭素原子12~24個の1種若しくは複数の高級脂肪酸、又はそのアルカリ金属塩、
(b)ポリクオタニウム-7及びポリクオタニウム-22からなる群から選択される少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(c)アニオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤、並びに
(d)疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び(メタ)アクリロイルアルキルタウリン又はその塩を構造単位として含む(メタ)アクリルポリマーからなる群から選択される少なくとも1種の増粘剤
を含む、化粧品組成物。
【請求項2】
炭素原子12~24個の1種若しくは複数の高級脂肪酸、又はそのアルカリ金属塩が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びそのアルカリ金属塩からなる群から選択される2種以上である、請求項1に記載の化粧品組成物。
【請求項3】
成分(a)の総含有量が、組成物の総質量を基準にして、15~50質量%、好ましくは20~40質量%の範囲である、請求項1又は2に記載の化粧品組成物。
【請求項4】
カチオン性ポリマーがポリクオタニウム-22である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項5】
成分(b)の総含有量が、組成物の総質量を基準にして、0.2~3.5質量%、好ましくは0.5~2.5質量%の範囲である、請求項1~4のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項6】
アニオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤が、アルキルエーテルカルボン酸塩、N-アシルグルタミン酸塩、N-メチル-N-アシルタウリン塩及びアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤からなる群から選択される1種又は複数である、請求項1~5のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項7】
アニオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤が、ラウリルグリコールカルボン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ココイルメチルタウリンナトリウム及びコカミドプロピルベタインからなる群から選択される1種又は複数である、請求項1~6のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項8】
成分(c)の総含有量が、組成物の総質量を基準にして、5~20質量%、好ましくは8~15質量%の範囲である、請求項1~7のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項9】
疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテルであり、(メタ)アクリル系ポリマーが、(ヒドロキシエチルアクリレート/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)コポリマーである、請求項1~8のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項10】
成分(d)の総含有量が、組成物の総質量を基準にして、0.5~5質量%、好ましくは1~4質量%の範囲である、請求項1~9のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項11】
(e)非イオン性界面活性剤をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項12】
非イオン性界面活性剤が、グリセリン脂肪酸エステル及び脂肪酸ポリエチレングリコール、好ましくはグリセリルステアレート及びポリエチレングリコールステアレートの組合せ、並びにそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項11に記載の化粧品組成物。
【請求項13】
(f)水性媒体、特に水と1種又は複数のポリオール、好ましくはグリセリン、1,3-プロパンジオール及びそれらの混合物とをさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項14】
洗浄料である、請求項1~13のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項15】
ケラチン物質を洗浄するための美容方法であって、請求項1~14のいずれか一項に記載の化粧品組成物をケラチン物質、特に皮膚に塗布するステップを含む、美容方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪酸クリーム石けんは、使用時に形成される泡によって、汚れ、埃、及び余分な皮脂を皮膚から除去するために使用される化粧品である。したがって、脂肪酸クリーム石けんは、満足な起泡性をもたらすために、通常、界面活性剤を含有する。マイルドで泡立ちの良い皮膚洗浄料組成物は、日本国特許出願である特開2014-125434号公報及び特開2014-125435号公報により知られている。これらの組成物は、(A)N-アシルアミノ酸、(B)パラフィン、ペトロラタムなどを含む30℃で固体又は半固体の炭化水素油、及び(C)特定の質量比B/Cとなるヒドロキシプロピルデンプンリン酸を含む。これらの組成物において、30℃で固体又は半固体の炭化水素油は、タオルドライ後のしっとり感、なめらかさ、経時安定性を向上させることができるが、パラフィンを含む30℃で固体又は半固体の炭化水素油を添加しなくても、高い起泡性を維持しながら使用後も皮膚が乾燥しない新規脂肪酸石けん型化粧品組成物を提供することが依然として必要である。
【技術的課題】
【0003】
さらに、界面活性剤は、皮膚からの水分の蒸発を防ぐ皮膚バリアを破壊する性質も有するため、界面活性剤を含有する脂肪酸クリーム石けんを使用すると、使用後の皮膚の乾燥が大きくなるという問題が生じる。脂肪酸クリーム石けん使用後の皮膚の乾燥を防ぐ1つの方法は、脂肪酸クリーム石けんにポリオールなどの保湿剤を添加することである。しかし、保湿剤は起泡性を妨げることがあるため、高い起泡性も維持しつつ保湿剤を配合することは困難であった。このような脂肪酸クリーム石けんには、高温で分離しやすいという安定性の問題もある。
【0004】
本発明の目的は、高い起泡性を維持しつつ、使用後も皮膚が乾燥せず、安定な脂肪酸石けん型化粧品組成物を提供することである。本発明者らは、特定の高級脂肪酸、カチオン性ポリマー、界面活性剤、及び増粘剤を組み合わせることにより、このような組成物を開発した。
【発明の概要】
【0005】
そこで本発明は、(a)炭素原子12~24個の1種若しくは複数の高級脂肪酸、又はそのアルカリ金属塩、(b)ポリクオタニウム-7及びポリクオタニウム-22からなる群から選択される少なくとも1種のカチオン性ポリマー、(c)アニオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤、並びに(d)疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び(メタ)アクリロイルアルキルタウリン又はその塩を構造単位として含む(メタ)アクリルポリマーからなる群から選択される少なくとも1種の増粘剤を含む、化粧品組成物を提供する。「(a)炭素原子12~24個の1種若しくは複数の高級脂肪酸、又はそのアルカリ金属塩」という用語を単に「成分(a)」ともいい、他の成分も同様に略記することとする。また、本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリル」という用語は、アクリル又はメタクリルを指し、これは類似の骨格についても当てはまる。
【0006】
本発明の化粧品組成物において、炭素原子12~24個の1種若しくは複数の高級脂肪酸、又はそのアルカリ金属塩は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びそのアルカリ金属塩からなる群から選択される2種以上であってもよい。これにより、さらに高い起泡性を得ることができる。
【0007】
本発明の化粧品組成物におけるアニオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤は、アルキルエーテルカルボン酸塩、N-アシルグルタミン酸塩、N-メチル-N-アシルタウリン塩及びアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤からなる群から選択される1種又は複数であってもよい。該界面活性剤は、使用後の皮膚の乾燥を抑制するのに役立つ。
【0008】
本発明の化粧品組成物における疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテルであってもよく、(メタ)アクリル系ポリマーは、(ヒドロキシエチルアクリレート/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)コポリマーであってもよい。これにより、化粧品組成物の安定性がより一層優れたものとなる。
【0009】
本発明の化粧品組成物は、非イオン性界面活性剤(e)をさらに含んでもよい。成分(e)を含むことにより、化粧品組成物の安定性がより一層優れたものとなる。
【0010】
本発明の化粧品組成物における非イオン性界面活性剤は、グリセリン脂肪酸エステル及び脂肪酸ポリエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。これにより、化粧品組成物においてより一層優れた安定性が得られる。
【0011】
本発明はまた、ケラチン物質を洗浄するための美容方法であって、本発明の化粧品組成物をケラチン物質、特に皮膚に塗布するステップを含む、美容方法に関する。特に、組成物は、さらにケラチン物質から洗い流される。
【発明の詳細な説明】
【0012】
ここで、本発明の好ましい実施形態について説明するが、これらの実施形態は決して本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【0013】
高級脂肪酸
本発明の化粧品組成物は、(a)炭素原子12~24個の1種若しくは複数の高級脂肪酸、又はそのアルカリ金属塩を含有する。
【0014】
炭素原子12~24個の高級脂肪酸の例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸が挙げられる。
【0015】
炭素原子12~24個の高級脂肪酸のアルカリ金属塩の例としては、それらのナトリウム塩及びカリウム塩が挙げられる。
【0016】
特定の好ましい実施形態において、さらに高い起泡性を得ることができるように、成分(a)は、好ましくは炭素原子12~24個の高級脂肪酸、又はそのアルカリ金属塩の2種以上の組合せであり、より好ましくは、12~24個の炭素原子12~18個の高級脂肪酸、又はそのアルカリ金属塩の2種以上の組合せであり、さらに好ましくは、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びそのアルカリ金属塩からなる群から選択される2種の組合せであり、最も好ましくは、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、及びそのアルカリ金属塩の組合せである。
【0017】
特定の実施形態において、成分(a)の総含有量は、組成物の総質量を基準にして、好ましくは15~50質量%、より好ましくは20~40質量%の範囲である。成分(a)の含有量がこの範囲内である場合、さらに高い起泡性を付与することが可能になる。本明細書で使用される場合、「総質量を基準にする」とは、化粧品組成物の総質量を基準にすることを意味する。
【0018】
カチオン性ポリマー
本発明の化粧品組成物は、(b)ポリクオタニウム-7及びポリクオタニウム-22からなる群から選択される、少なくとも1種のカチオン性ポリマーを含む。
【0019】
ポリクオタニウム-7は、カチオン性ポリマーであり、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド-アクリルアミドコポリマーとしても知られている。ポリクオタニウム-22もカチオン性ポリマーであり、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド-アクリル酸コポリマーとしても知られている。
【0020】
特定の好ましい実施形態において、成分(b)は、使用後の皮膚の乾燥をさらに抑制することを可能にするポリクオタニウム-22である。
【0021】
成分(b)の総含有量は、組成物の総質量を基準にして、好ましくは0.2~3.5質量%、より好ましくは0.5~2.5質量%の範囲である。成分(b)の総含有量がこの範囲内である場合、使用後の皮膚の乾燥をさらに抑制することが可能となる。
【0022】
アニオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤
本発明の化粧品組成物は、(c)アニオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤も含む。成分(c)は、単一の化合物を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
本発明によるアニオン性界面活性剤の例としては、アルキルエーテルカルボン酸塩(ラウリルグリコールカルボン酸ナトリウムなど)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩(ポリオキシエチレンラウリルエーテルアセテートなど)、N-アシルサルコシン塩(ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウムなど)、N-アシルグルタミン酸塩(ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸ナトリウムなど)を含む、成分(a)以外のカルボン酸型アニオン性界面活性剤;ジアルキルスルホコハク酸塩(ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウムなど)、アルカンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、及びN-メチル-N-アシルタウリン塩(ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウム、ココイルメチルタウリンナトリウムなど)を含むスルホン酸型アニオン性界面活性剤;アルキル硫酸塩(ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウムなど)、及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウムなど)を含む硫酸エステル型アニオン性界面活性剤;並びに、アルキルリン酸塩(ラウリルリン酸ナトリウム、セチルリン酸カリウムなど)、及びポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩(ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウムなど)を含むリン酸塩型アニオン性界面活性剤、並びにそれらの混合物が挙げられる。特定の好ましい実施形態において、使用後の皮膚の乾燥をさらに抑制するために、ラウリルグリコールカルボン酸ナトリウムなどのアルキルエーテルカルボン酸塩、ラウロイルグルタミン酸ナトリウムなどのN-アシルグルタミン酸塩、及びココイルメチルタウリンナトリウムなどのN-メチル-N-アシルタウリン塩が使用される。
【0024】
本発明による両性界面活性剤の例としては、ココアンホ酢酸ナトリウム、ラウロアンホ酢酸などのグリシン型両性界面活性剤;コカミドプロピルベタイン、ラウロアミドプロピルベタイン、ココベタイン、及びラウリルベタインなどのアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤;ラウリルヒドロキシスルタイン、及びラウラミドプロピルヒドロキシスルタインなどのスルホベタイン型両性界面活性剤;並びにレシチン及び水素化レシチンなどのレシチン、並びにそれらの混合物が挙げられる。特定の好ましい実施形態において、使用後の皮膚の乾燥をさらに抑制するために、コカミドプロピルベタインなどのアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤が使用される。
【0025】
成分(c)の総含有量は、組成物の総質量を基準にして、好ましくは5~20質量%、より好ましくは8~15質量%の範囲である。成分(c)の総含有量がこの範囲内である場合、使用後の皮膚の乾燥をさらに抑制することが可能となる。
【0026】
増粘剤
本発明の化粧品組成物はまた、(d)疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び(メタ)アクリロイルアルキルタウリン又はその塩を構造単位として含む(メタ)アクリル系ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種の増粘剤も含む。成分(d)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
特定の実施形態において、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのヒドロキシプロピル基に疎水基(アルキルなど)が導入されたヒドロキシプロピルメチルセルロースである。本発明による疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースの例は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのヒドロキシプロピル基にステアリル基を導入したヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテルである。本発明で使用するヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテルは、SANGELOSE 60L、又はSANGELOSE 90L(いずれも大同化成工業株式会社の製品)などの市販品であってもよい。
【0028】
本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリル系ポリマー」という用語は、(メタ)アクリロイルアルキルタウリン又はその塩を構造単位として含むポリマーを意味する。本発明による(メタ)アクリル系ポリマーの具体例としては、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ベヘネス-25メタクリレート)クロスポリマー、(ヒドロキシエチルアクリレート/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/カルボキシエチルアンモニウムアクリレート)クロスポリマー、(アクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)コポリマー、(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)クロスポリマー、(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリン/ジメチルアクリルアミド)クロスポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンナトリウム/VP)クロスポリマー、ポリアクリロイルジメチルタウリンアンモニウム、(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)コポリマー、ポリアクリロイルジメチルタウリンナトリウム、及びそれらの混合物が挙げられる。特定の好ましい組成物では、化粧品組成物の安定性をさらに高めるために、(ヒドロキシエチルアクリレート/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)コポリマーが使用される。ここで、「VP」はビニルピロリドンを意味する。
【0029】
成分(d)の総含有量は、組成物の総質量を基準にして、好ましくは0.5~5質量%、より好ましくは1~4質量%の範囲である。成分(d)の総含有量がこの範囲内である場合、化粧品組成物の安定性がより一層優れたものとなる。
【0030】
非イオン性界面活性剤(任意)
特定の実施形態において、本発明の化粧品組成物は、非イオン性界面活性剤(e)も含んでもよい。化粧品組成物が成分(e)を含む場合、化粧品組成物の安定性がより一層優れたものとなる。成分(e)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
本発明による非イオン性界面活性剤の例としては、グリセリン脂肪酸エステル(例えば、グリセリルミリステート、グリセリルステアレート及びグリセリルオレエート)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリステアレート及びソルビタントリオレエート)、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル及びポリオキシエチレンオレイルエーテル)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルグルコシド(例えば、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド及びココグリコシド)、ポリエチレングリコール脂肪酸(例えば、ポリエチレングリコールモノラウレート及びポリエチレングリコールモノステアレート)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート及びポリオキシエチレンソルビタントリオレエート)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(例えば、ポリグリセリル-10ミリステート、ポリグリセリル-10ステアレート及びポリグリセリル-10オレエート)、並びにこれらの混合物が挙げられる。特定の好ましい実施形態において、化粧品組成物のより優れた安定性のために、成分(e)は、グリセリン脂肪酸エステル及びポリエチレングリコール脂肪酸、より好ましくは、グリセリルステアレート及びポリエチレングリコールステアレートの組合せ、並びにそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0032】
成分(e)の総含有量は、組成物の総質量を基準にして、好ましくは0.5~5質量%、より好ましくは1~4質量%の範囲である。成分(e)の総含有量がこの範囲内である場合、化粧品組成物の安定性がより一層優れたものとなる。
【0033】
水性媒体
本発明の化粧品組成物は、水性媒体(f)を含有する。成分(f)は、水のみからなってもよく、水に可溶な溶媒を含んでもよい。
【0034】
本発明に使用される水は、蒸留水、精製水、温泉水、深層水、又はラベンダー水、ローズ水若しくはオレンジフラワー水などの植物由来の水蒸気蒸留水であってもよい。
【0035】
本発明による水に可溶な溶媒の例としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、フェノキシエタノールなどのモノアルコール;エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、キシリトール、マンニトールなどのポリオール、及びそれらの混合物が挙げられる。特定の実施形態において、組成物は、水とポリオール、好ましくは水と、グリセリン、1,3-プロパンジオール及びそれらの混合物などの1種又は複数のポリオールとを含む。水に可溶な溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
成分(f)の総含有量は、組成物の総質量を基準にして、好ましくは5~50質量%、より好ましくは10~40質量%の範囲である。
【0037】
本発明の化粧品組成物は、これらの成分に加えて、油剤、pH調整剤、キレート剤、酸化防止剤、防腐剤、水性混合物を得るのに関与する活性成分を含有してもよい。特定の実施形態において、本発明の化粧品組成物は、パラフィン、ペトロラタムなどを含む30℃で固体又は半固体である炭化水素油を追加で含有しない。特に、化粧品組成物は、パラフィン、ペトロラタムなどを含む30℃で固体又は半固体である炭化水素油を、組成物の総重量の5重量%未満、特に1%未満含有し、好ましくは、パラフィン、ペトロラタムなどを含む30℃で固体又は半固体である炭化水素油を全く含有しない。
【0038】
特定の実施形態において、化粧品組成物は、一例として、以下のステップによって調製することができる。
1)成分(c)、成分(f)及び必要に応じて他の水性成分を組み合わせ、70~80℃(好ましくは75℃)で加熱し、(好ましくは100~300rpmの回転速度で、特にVMI社製のRayneri turbotestミキサーで)撹拌し、次いで成分(d)を添加し、混合物を70~80℃(好ましくは75℃)で加熱し、(好ましくは100~300rpmの回転速度で、特にVMI社製のRayneri turbotestミキサーで)撹拌して、水性混合物を得る。
2)成分(a)、任意成分(e)及び必要に応じて他の油成分を混合し、70~80℃(好ましくは75℃)で加熱し、(好ましくは100~300rpmの回転速度で)撹拌して、油性混合物を得る。
3)2)で得られた油性混合物を1)で得られた水性混合物に添加し、得られた混合物を70~80℃(好ましくは75℃)で加熱し、(好ましくは300~600rpmの回転速度で、特にVMI社製のRayneri turbotestミキサーで)撹拌する。4)3)で得られた混合物に、成分(b)及び必要に応じて他の成分(アルカリ金属水酸化物など)を添加し、得られた混合物を(好ましくは200~600rpmの回転速度で、特にVMI社製のRayneri turbotestミキサーで)撹拌し、室温まで冷却する。
【0039】
本発明の化粧品組成物は、脂肪酸石けん型化粧品組成物であるため、洗浄料として好適に使用することができる。
【0040】
本発明はまた、メークアップされたケラチン物質を洗浄するための美容方法であって、上記で定義した化粧品組成物をケラチン物質、特に皮膚に塗布するステップを含む、美容方法に関する。本発明の化粧品組成物は、好適には頭皮以外の皮膚に塗布することができ、より好ましくは顔、体及び手又は足に塗布することができる。
【実施例
【0041】
ここで、本発明を以下の実施例を通じて詳細に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではないことを理解されたい。特段の記載がない限り、百分率%は、組成物の総質量(重量)あたりの化合物の質量(重量)で表される。
【0042】
(1)洗浄料の調製
表1に記載の組成物に基づいて、以下の方法により、洗浄料を調製した。成分(c)及び成分(f)の各成分を75℃で混合し、次いで成分(d)を添加し、混合物を75℃で撹拌して、水性混合物を得た。次いで、成分(a)の各成分と成分(e)とを75℃で混合して、油性混合物を得た。油性混合物を水性混合物に添加し、55℃まで冷却した後、水酸化カリウムを添加し、混合物を55℃で撹拌し、成分(b)をさらに添加し、45℃で撹拌を継続した。各混合物を室温まで冷却して、洗浄料を得た。
【0043】
(2)起泡性の評価
美容専門家8人の評価パネルにより、各洗浄料が「泡を作るスピード」及び「泡の量」の観点から評価された。各洗浄料を、以下のA~Cにより等級付けした。
A:6人以上の専門家が起泡性に満足(「起泡性良」=良)
B:4~5人の専門家が起泡性に満足(「起泡性中」=中)
C:4人未満の専門家が起泡性に満足(「起泡性低」=悪)
【0044】
(3)非乾燥性の評価
同じ美容専門家8人の同じパネルにより、各洗浄料が「洗い流した後の乾燥感のなさ」の観点からも評価された。各洗浄料を、以下のA~Cにより等級付けした。
A:6人以上の専門家が洗い流した後の乾燥を感じられなかった(「乾燥感なし」=良)。
B:4~5人の専門家が洗い流した後の乾燥を感じられなかった(「乾燥感が少ない」=中)。
C:4人未満の専門家が洗い流した後の乾燥を感じられなかった(「乾燥感あり」=悪)。
【0045】
(4)安定性評価
各洗浄料を透明容器に収容し、蓋で密封した後、45℃で1カ月間保存し、油相と水相の分離が認められなかった場合を評価「Y」(Yes=安定)とし、油相と水相の分離が認められた場合を評価「N」(No=不安定)とした。
【0046】
【表1】
【0047】
表1に示す結果から、(a)炭素原子12~24個の1種若しくは複数の高級脂肪酸、又はそのアルカリ金属塩、(b)ポリクオタニウム-7及びポリクオタニウム-22からなる群から選択される少なくとも1種のカチオン性ポリマー、(c)アニオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤、並びに(d)疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び(メタ)アクリロイルアルキルタウリン又はその塩を構造単位として含む(メタ)アクリルポリマーからなる群から選択される少なくとも1種の増粘剤を組み合わせることにより、他の比較例と比べて、優れた起泡性を有し、安定性と塗布後の「非乾燥」感とを備える洗浄組成物がもたらされることがわかる。
【国際調査報告】