(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-09
(54)【発明の名称】水系乳化物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20240202BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20240202BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240202BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240202BHJP
A61K 8/04 20060101ALI20240202BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/39
A61K8/37
A61K8/34
A61K8/04
A61Q19/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536961
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 IB2020001132
(87)【国際公開番号】W WO2022136900
(87)【国際公開日】2022-06-30
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502189579
【氏名又は名称】エルブイエムエイチ レシェルシェ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】菊池 真弘
(72)【発明者】
【氏名】小澤 舞
(72)【発明者】
【氏名】迫田 剛嘉
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB032
4C083AC022
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC171
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC542
4C083AC812
4C083AC842
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD252
4C083AD261
4C083AD281
4C083AD282
4C083AD352
4C083AD642
4C083CC05
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD31
4C083DD44
4C083EE01
4C083EE06
(57)【要約】
本発明は、(A)炭素数16~22の脂肪酸とポリグリセリンとのエステル、炭素数16~22の脂肪酸とグリセリンとのエステル、及び炭素数16~22の一価アルコール、(B)少なくとも2個のアルコール性水酸基、及び炭素数16~22のアルキル基を有する、リン原子非含有化合物又はその塩であって、(A)成分とは異なる化合物、及び(C)セルロース系増粘剤、及び/又はグルコース、グルクロン酸及びラムノースを主鎖構成単糖として含有する多糖増粘剤を含む、水系乳化物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭素数16~22の脂肪酸とポリグリセリンとのエステル、炭素数16~22の脂肪酸とグリセリンとのエステル、及び炭素数16~22の一価アルコール、
(B)少なくとも2個のアルコール性水酸基、及び炭素数16~22のアルキル基を有する、リン原子非含有化合物又はその塩であって、(A)成分とは異なる化合物、及び
(C)セルロース系増粘剤、及び/又はグルコース、グルクロン酸及びラムノースを主鎖構成単糖として含有する多糖増粘剤を含む、水系乳化物。
【請求項2】
(B)成分が、アルキルグリセリルエーテル、有機酸モノグリセリド及び/又はその塩である、請求項1に記載の水系乳化物。
【請求項3】
(B)成分が、バチルアルコール、クエン酸ステアリン酸グリセリル及び/又はその塩である、請求項1に記載の水系乳化物。
【請求項4】
前記セルロース系増粘剤が炭素数10~30のアルキル基を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の水系乳化物。
【請求項5】
セルロース系増粘剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテルを含む、請求項4に記載の水系乳化物。
【請求項6】
前記多糖増粘剤が、側鎖構成単糖としてラムノース又はフコースを更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の水系乳化物。
【請求項7】
皮膚外用である、請求項1~6のいずれか一項に記載の水系乳化物。
【請求項8】
液体乳化物のクリームの形態である、請求項1~7のいずれか一項に記載の水系乳化物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の水系乳化物をケラチン物質、特に肌に適用することを含む、ケラチン物質をケア及び/又は化粧するための美容方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系乳化物、特に水中油型乳化物に関する。
【背景技術】
【0002】
ラメラ構造を有する化粧品は、皮膚バリアが強化された感覚を消費者にもたらす。例えば米国特許10449126号明細書には、親水性ゲル化剤、親油性界面活性剤(HLB2~5)、親水性界面活性剤(HLB8~12)及びリン酸モノセチルの金属塩によって低pH(3~4.8)で安定化されたラメラ液晶構造を備える水中油型エマルション形態の化粧品が開示されている。しかし、この組成物は、良好な展延性をもたらさず、及び/又は粘着性をもたらし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
さらに、このようなラメラ構造を有するエマルション処方は、50℃などの高温で安定性を失いやすい。
【0004】
本発明は、高温での安定性に優れる水系乳化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(A)炭素数16~22の脂肪酸とポリグリセリンとのエステル、炭素数16~22の脂肪酸とグリセリンとのエステル、及び炭素数16~22の一価アルコール、(B)少なくとも2個のアルコール性水酸基、及び炭素数16~22のアルキル基を有する、リン原子非含有化合物又はその塩であって、(A)成分とは異なる化合物、及び(C)セルロース系増粘剤、及び/又はグルコース、グルクロン酸及びラムノースを主鎖構成単糖として含有する多糖増粘剤を含む、水系乳化物に関する。
【0006】
上記水系乳化物において、(B)成分が、アルキルグリセリルエーテル、有機酸モノグリセリド及び/又はその塩であることが好ましい。
【0007】
上記水系乳化物において、(B)成分が、バチルアルコール、クエン酸ステアリン酸グリセリル及び/又はその塩であることが好ましい。
【0008】
上記水系乳化物において、セルロース系増粘剤が炭素数10~30のアルキル基を有することが好ましい。
【0009】
上記水系乳化物において、セルロース系増粘剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテルを含むことが好ましい。
【0010】
上記水系乳化物において、上記多糖増粘剤が、側鎖構成単糖としてラムノース又はフコースを更に含んでいてもよい。
【0011】
上記水系乳化物は皮膚外用であってよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、高温、特に50℃で1ヶ月間又は45℃で3ヶ月間での安定性に優れる水系乳化物が提供される。本発明はまた、本発明の水系乳化物をケラチン物質、特に肌に適用することを含む、ケラチン物質をケア及び/又は化粧するための美容方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
本発明の水系乳化物は、(A)炭素数16~22の脂肪酸とポリグリセリンとのエステル、炭素数16~22の脂肪酸とグリセリンとのエステル、及び炭素数16~22の一価アルコール、(B)少なくとも2個のアルコール性水酸基、及び炭素数16~22のアルキル基を有する、リン原子非含有化合物又はその塩であって、(A)成分とは異なる化合物、及び(C)セルロース系増粘剤、及び/又はグルコース、グルクロン酸及びラムノースを主鎖構成単糖として含有する多糖増粘剤を含む。
【0015】
本実施形態に係る水系乳化物は、高温での安定性に優れるだけでなく、肌での伸び(spread-ability)に優れ、かつべたつき(stickiness)が抑えられているという利点も有する。
【0016】
本実施形態に係る水系乳化物は、ラメラ構造を含んでいてもよい。ラメラ構造とは、界面活性剤等の両親媒性物質が油/水界面に配向し、油相と水相とが交互に層状に重なり合った構造を意味する。ラメラ構造は、例えば、上述の(A)、(B)、(C)成分及び後述のその他の成分に由来するものであってよい。ラメラ構造には、皮膚のバリア機能を改善することが期待される。本実施形態に係る水系乳化物は、(A)、(B)及び(C)成分を含むため、ラメラ構造を例えば45~50℃の高温でも長期にわたり安定して含むことができる。
【0017】
(A)成分
本実施形態に係る水系乳化物は、(A)成分として、炭素数16~22の脂肪酸とポリグリセリンとのエステル、炭素数16~22の脂肪酸とグリセリンとのエステル、及び、炭素数16~22の一価アルコールの組合せを含む。本実施形態に係る水系乳化物において、(A)成分は乳化剤としての役割を有する。
【0018】
特定の実施形態において、炭素数16~22の脂肪酸とポリグリセリンとのエステル(以下、「(A1)成分」ともいう。)において、脂肪酸の炭素数は16~20であることが好ましく、18であることがより好ましい。(A1)成分を構成する脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、イソステアリン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、ベヘン酸等が挙げられる。脂肪酸は飽和又は不飽和であってよく、飽和であることが好ましい。
【0019】
(A1)成分において、グリセリンの重合度は、例えば2~10であってよく、2~4であることが好ましく、2であることがより好ましい。特定の実施形態において、(A1)成分は、例えば、ステアリン酸ポリグリセリル-2、イソステアリン酸ポリグリセリル-2、オレイン酸ポリグリセリル-2、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0020】
特定の実施形態において、(A)成分全量中、(A1)成分の含有量は例えば、30~60質量%、特に35~50質量%、又は40~50質量%である。
【0021】
特定の実施形態において、炭素数16~22の脂肪酸とグリセリンとのエステル(以下、「(A2)成分」ともいう)において、脂肪酸の炭素数は16~20であることが好ましく、18であることがより好ましい。(A2)成分を構成する脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、ベヘン酸等が挙げられる。脂肪酸は飽和又は不飽和であってよく、飽和であることが好ましい。特定の実施形態では、(A2)成分は、例えば、ステアリン酸グリセリル、オレイン酸グリセリル、ミリスチン酸グリセリル、ヤシ脂肪酸グリセリル、ウンデシレン酸グリセリル、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0022】
特定の実施形態において、(A)成分全量中、(A2)成分の含有量は例えば、10~50質量%であり、特に20~40質量%、又は25~35質量%である。
【0023】
特定の実施形態において、炭素数16~22の一価アルコール(以下、「(A3)成分」ともいう。)において、炭素数は16~20であることが好ましく、18であることがより好ましい。(A3)成分は、例えば、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。一価アルコールは飽和又は不飽和であってよく、飽和であることが好ましい。特定の実施形態において、(A3)成分は、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、セタノール、ベヘニルアルコール、又はこれらの混合物である。
【0024】
特定の実施形態において、(A)成分全量中、(A3)成分の含有量は例えば、10~40質量%、15~35質量%、又は20~30質量%であってよい。
【0025】
特定の実施形態において、(A)成分の合計含有量は、水系乳化物全量に対して、例えば0.5質量%以上、1質量%以上、1.2質量%以上、1.5質量%以上、1.8質量%以上、2.0質量%以上、2.5質量%以上、3.0質量%以上、3.5質量%以上、3.8質量%以上であってよく、10質量%以下、8質量%以下、6質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2.5質量%以下、2.2質量%以下、又は2質量%以下であってよい。特に、(A)成分の総含有量は、水系乳化物全量に対して0.5質量%~10質量%、特に2質量%~8質量%、好ましくは2.5質量%~6質量%の範囲である。
【0026】
(A)成分はいずれも常温(例えば25℃)で固形であることが好ましい。特定の好ましい実施形態において、(A)成分は、例えば、ステアリン酸ポリグリセリル-2、ステアリン酸グリセリル及びステアリルアルコールの組合せである。ステアリン酸ポリグリセリル-2、ステアリン酸グリセリル及びステアリルアルコールの組合せを含む市販品としては、例えば、PolyAquol 2w (Innovacos Corp.)が好適である。
【0027】
(B)成分
本発明の水系乳化物は、(B)成分として、少なくとも2個のアルコール性水酸基、及び炭素数16~22のアルキル基を有する、リン原子非含有化合物又はその塩を含む。(B)成分は、(A)成分のいずれの化合物とも異なる。
【0028】
(B)成分は、化合物の分子中に、親水性の部位及び親油性の部位を有する、両親媒性の物質である。本実施形態に係る水系乳化物は、(A)成分及び(C)成分と組み合わせて、特定の構造を有する(B)成分を含むことによって、ラメラ構造の強化に由来する、室温での高粘度が得られやすい傾向があり、時間が経っても乳化物の相分離を抑制することができる。
【0029】
特定の実施形態において、(B)成分の化合物が有するアルキル基は、炭素数16~20、又は炭素数16~18である。(B)成分は1分子中にアルコール性水酸基を例えば2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つ有していてよい。
【0030】
(B)成分はリン原子を有しない化合物である。本発明者らは両親媒性ワックスのなかでもリン酸モノアルキルを用いると得られる乳化物において急速な相分離が生じることを見出した。(B)成分は炭素原子、水素原子及び酸素原子からなる化合物又はその塩であることが好ましい。
【0031】
特定の実施形態において、(B)成分は、例えば、アルキルグリセリルエーテル、有機酸モノグリセリド及び/又はその塩であってよい。アルキルグリセリルエーテルは例えばアルコール性水酸基を2つ有するものであってよい。少なくとも2個のアルコール性水酸基、及び炭素数16~22のアルキル基を有し、リン原子を有しないアルキルグリセリルエーテルとしては、例えば、バチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコールが挙げられる。
【0032】
有機酸モノグリセリドは、例えば、有機酸、及び、炭素数16~22の脂肪酸とグリセリンとのエステルのモノエステルであってよい。有機酸モノグリセリドにおける有機酸は、例えば、クエン酸等の脂肪族ヒドロキシ酸であってよい。特定の実施形態において、少なくとも2個のアルコール性水酸基、及び炭素数16~22のアルキル基を有し、リン原子を有しない有機酸モノグリセリド又はその塩としては、例えば、クエン酸ステアリン酸グリセリル、コハク酸脂肪酸グリセリル又はその塩が挙げられる。(B)成分は、1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本実施形態に係る水系乳化物において、(B)成分の含有量は、水系乳化物全量に対して、例えば0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.5質量%以上、0.8質量%以上、1.0質量%以上、又は1.2質量%以上であってよく、3.0質量%以下、2.5質量%以下、2.2質量%以下、2.0質量%以下、1.8質量%以下、1.7質量%以下、1.6質量%以下、1.4質量%以下、1.2質量%以下、1.0質量%以下であってよい。特に、(B)成分の総含有量は、水系乳化物全量に対して0.1質量%~3質量%、特に0.2質量%~2質量%の範囲である。
【0034】
(C)成分
本発明の水系乳化物は、(C)成分として、セルロース系増粘剤、及び/又はグルコース、グルクロン酸及びラムノースを主鎖構成単糖として含有する多糖増粘剤を含む。水系乳化物がこれらの増粘剤を含むことにより、好適な粘度を維持しながら、高温での高い安定性を有することができる。
【0035】
セルロース系増粘剤は、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル、セルロースガム、カルボキシメチルセルロース、及びこれらの混合物が挙げられる。特定の実施形態において、セルロース系増粘剤は、水系乳化物の高温安定性をより高め、べたつきをより抑制する観点から、炭素数10~30のアルキル基を有することが好ましい。特定の好ましい実施形態において、炭素数10~30のアルキル基を有するセルロース系増粘剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル等が挙げられる。
【0036】
多糖増粘剤は、例えば、グルコース、グルクロン酸、グルコース、及びラムノースからなる構成単位がこの順に直鎖状に結合した主鎖を有していてよい。多糖増粘剤は、多糖構造の一部として更に側鎖を有していてもよく、側鎖を有していなくてもよい。側鎖は、例えば、フコース、グルコース、ラムノース、マンノースからなる群から選ばれる少なくとも1つを構成単糖として有していてよい。多糖増粘剤は、細菌等の微生物由来であってよい。特定の実施形態において、多糖増粘剤は、例えば、ウェランガム、ジェランガム、デュータンガム、又はこれらの混合物である。多糖増粘剤は、グルコース、グルクロン酸、グルコース、及びラムノースからなる構成単位が直鎖状に結合した主鎖を有し、かつ側鎖としてフコースを有するものであってよい。
【0037】
(C)成分は、1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。(C)成分の含有量は、水系乳化物全量に対して、例えば、0.01質量%以上、0.02質量%以上、0.03質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.2質量%以上、又は0.3質量%以上であってよく、1.0質量%以下、0.8質量%以下、0.6質量%以下、0.5質量%以下、0.4質量%以下、0.3質量%以下、0.2質量%以下、0.15質量%以下、又は0.1質量%以下であってよい。特に、(C)成分の総含有量は、水系乳化物全量に対して0.01質量%~1.0質量%、特に0.05質量%~0.5質量%の範囲である。本実施形態に係る水系乳化物は、増粘剤の使用量が少なくても高温安定性に優れる。
【0038】
特定の実施形態において、水系乳化物は、(C)成分以外の増粘剤を含む。(C)成分以外の増粘剤としては、例えば、キサンタンガム等の多糖増粘剤、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー等のアルキル変性カルボキシビニルポリマー、カルボマー、(メタ)アクリロイルアルキルタウリン又はその塩を繰り返し単位として含むポリマー等が挙げられる。
【0039】
(C)成分以外の増粘剤の含有量は、水系乳化物全量に対して、例えば0.01質量%以上、0.1質量%以上、0.15質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、又は0.5質量%以上であってよく、1.0質量%以下、0.8質量%以下、0.5質量%以下、0.3質量%以下、又は0.2質量%以下であってよい。特に、(C)成分以外の増粘剤の含有量は、水系乳化物全量に対して、0.01~1質量%である。
【0040】
(C)成分及び(C)成分以外の増粘剤の合計量は、水系乳化物全量に対して、例えば、0.01質量%以上、0.02質量%以上、0.03質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.2質量%以上、又は0.3質量%以上であってよく、1.5質量%以下、1.0質量%以下、0.8質量%以下、0.6質量%以下、0.5質量%以下、0.4質量%以下、0.3質量%以下、0.2質量%以下、0.15質量%以下、又は0.1質量%以下であってよい。特に、(C)成分と、(C)成分以外の増粘剤との合計含有量は、水系乳化物全量に対して0.01~1.5質量%である。
【0041】
油剤
特定の実施形態において、本発明の水系乳化物は、(A)、(B)、(C)成分以外に油剤を含む。油剤は例えば液状油、又はペースト油であってよい。液状油は非極性液状油又は極性液状油であってよい。液状油としては、例えば(カプリル/カプリン酸)ヤシアルキル、スクワラン、ヒマワリ油、ジメチコン、メドウフォームオイル、アーモンド油、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸エチルヘキシル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、エチルヘキサン酸セチル、水添ポリデセン、水添ポリイソブテン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0042】
水系乳化物全量に対する油剤の含有量は、例えば、5質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、10質量%以上、12質量%以上、14質量%以上、又は16質量%以上であってよく、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、18質量%以下、17質量%以下、15質量%以下、13質量%以下、又は10質量%以下であってよい。特に、油剤の含有量は、水系乳化物全量に対して5質量%~40質量%、特に10質量%~30質量%の範囲である。
【0043】
水系乳化物全量に対する液状油の含有量は、例えば、3質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、10質量%以上、12質量%以上、又は14質量%以上であってよく、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、18質量%以下、17質量%以下、15質量%以下、13質量%以下、10質量%以下、又は8質量%以下であってよい。特に、液体油の含有量は、水系乳化物全量に対して3質量%~40質量%、特に10質量%~30質量%の範囲である。
【0044】
特定の実施形態において、水系乳化物は、保湿剤、pH調整剤、香料、防腐剤、活性成分、抗酸化剤、UV遮蔽剤、美白剤、顔料、着色剤、抗炎症剤、抗アクネ剤、皮膚コンディショニング剤等の、化粧料に通常用いられる添加剤を含んでもよい。特定の実施形態では、水系乳化物は、活性成分、特に美白剤を含む。
【0045】
保湿剤としては例えば、炭素数3~5の多価アルコールが挙げられる。多価アルコールは例えばアルコール性水酸基を2つ又は3つ有するものであってよい。炭素数3~5の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ペンチレングリコール、プロパンジオール等が挙げられる。
【0046】
炭素数3~5の多価アルコールの含有量は、水系乳化物全量に対して、例えば、2質量%以上、5質量%以上、8質量%以上、10質量%以上、12質量%以上、15質量%以上、18質量%以上、又は20質量%以上であってよく、30質量%以下、28質量%以下、25質量%以下、23質量%以下、20質量%以下、18質量%以下、又は15質量%以下であってよい。特に、炭素数3~5の多価アルコールの含有量は、水系乳化物全量に対して2質量%~30質量%、特に10質量%~30質量%の範囲である。
【0047】
本実施形態に係る水系乳化物のpHは、例えば3~9、4~8であってよい。
【0048】
特定の実施形態において、本発明の水系乳化物は、25℃で測定される粘度が、例えば1,000~100,000mPa・s、又は3,000~50,000mPa・sであってよい。粘度は、回転粘度計(例えば、Rheolab QC;Anton Paar社製;スピンドル:ST-24-2D/2V/2V-30;回転速度:50rpm)を用いた剪断粘度測定により測定できる。
【0049】
特定の実施形態において、本発明の水系乳化物は、水中油型である。本発明に係る水系乳化物は水を含有する。水系乳化物全量に対して水の含有量は、例えば、40質量%以上、43質量%以上、45質量%以上、47質量%以上、49質量%以上、51質量%以上、53質量%以上、55質量%以上、58質量%以上、60質量%以上、又は61質量%以上であってよく、70質量%以下、65質量%以下、63質量%以下、61質量%以下、59質量%以下、又は57質量%以下であってよい。特に、水の総含有量は、水系乳化物全量に対して40質量%~70質量%、特に49質量%~65質量%の範囲である。
【0050】
特定の実施形態において、本発明の水系乳化物は、例えば、(A)成分、(B)成分、(C)成分、その他の増粘剤、油剤、乳化剤等を80~85℃に加温しながら撹拌して混合し、その後室温に冷却してその他の成分を混合することにより製造することができる。
【0051】
特定の実施形態において、本発明の水系乳化物は、例えば、クリーム、乳液等の形態である。本実施形態に係る水系乳化物は、ラメラ構造を安定して含むことにより、例えばクリーム形態の場合には室温で高い粘度を達成することができる。水系乳化物は、好ましくはスキンケア化粧料である。
【実施例】
【0052】
表1、2に示す配合比で、水系乳化物を調製した。表1、2に示す数値は%である。いずれも合計量は100%である。まず、ジメチコン以外の液状油、ペースト油、乳化剤及び補助乳化剤を85℃で溶解した。別途、活性成分及びpH調整剤は室温で溶解しておいた。保湿剤、防腐剤及びクエン酸をタンクに投入して80~85℃で混合した。増粘剤を上記タンクに加えて混合した。溶解しておいたジメチコン以外の液状油、ペースト油、乳化剤及び補助乳化剤を上記タンクに加えて混合した。ジメチコンを更に加えて10分間乳化した。その後、混合物を30℃まで冷却し、40℃未満に冷えた時点でその他の材料を混合し、水系乳化物を得た。
【0053】
【0054】
【0055】
表に示した材料の詳細は以下のとおりである。
ステアリン酸ポリグリセリル-2、ステアリン酸グリセリル、ステアリルアルコール:POLYAQUOL 2W,Innovacos Corp.
バチルアルコール:Nikkol Batyl Alcohol 100,日光ケミカルズ株式会社
クエン酸ステアリン酸グリセリル:SUNSOFT GSC-C,太陽化学株式会社
ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル、シクロデキストリン:CELGELA TS9,大同化学株式会社
ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル:SANGELOSE 90L,大同化学株式会社
多糖1:グルコース、グルクロン酸、グルコース、及びラムノースからなる構成単位がこの順に直鎖状に結合した主鎖を有し、かつ側鎖としてフコースを有する、微生物由来多糖増粘剤
(アクリレーツ/C10-30)アルキルアクリレートクロスポリマー:CARBOPOL ETD 2020,Lubrizol
キサンタンガム1:RHODICARE XC,Solvey
キサンタンガム2:RHODICARE T,Solvey
【0056】
[評価]
得られた乳化物の安定性を次の方法で評価した。乳化物30gを透明容器(50mL)へ収容した。ガラス瓶の蓋をして密閉した。ガラス瓶を50℃又は45℃恒温下に保管した。50℃の場合は1ヶ月静置後に、45℃の場合は3ヶ月静置後に、相の分離が生じたかを肉眼で観察した。結果を表3、4に示す。表中の「良」は、相の分離が見られなかったことを示し、「分離」は油相及び水相の分離が観察されたことを示し、「非乳化」は調製時に乳化しなかったことを示す。
【0057】
【0058】
【0059】
実施例で得られた水系乳化物はいずれも、50℃1ヶ月及び45℃3ヶ月の経過後に相が分離せず優れた安定性を示した。一方、比較例1では混合物が乳化することができなかった。その他の比較例で得られた水系乳化物は、50℃1ヶ月又は45℃3ヶ月の少なくとも一方で相の分離が観察された。
【0060】
調製した水系乳化物のテクスチャーを確認したところ、実施例の水系乳化物はいずれもべたつきが抑えられ、かつ伸びに優れたものであった。なかでも実施例1の水系乳化物は特にべたつきが抑えられ、かつ伸びも特に優れていた。一方、比較例6の水系乳化物はのびが悪かった。また、比較例2、3、6の水系乳化物は、指に取るとべたつきが感じられた。これらの結果は、本発明の成分(A)~(C)を組み合わせることにより、高温下(45℃~50℃で数ヶ月)においても安定性が良好で、べたつきが少なく、のびが特に優れた水系乳化物が得られることを示す。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭素数16~22の脂肪酸とポリグリセリンとのエステル、炭素数16~22の脂肪酸とグリセリンとのエステル、及び炭素数16~22の一価アルコール、
(B)少なくとも2個のアルコール性水酸基、及び炭素数16~22のアルキル基を有する、リン原子非含有化合物又はその塩であって、(A)成分とは異なる化合物、及び
(C)セルロース系増粘剤、及び/又はグルコース、グルクロン酸及びラムノースを主鎖構成単糖として含有する多糖増粘剤を含む、水系乳化物。
【請求項2】
(B)成分が、アルキルグリセリルエーテル、有機酸モノグリセリド及び/又はその塩である、請求項1に記載の水系乳化物。
【請求項3】
(B)成分が、バチルアルコール、クエン酸ステアリン酸グリセリル及び/又はその塩である、請求項1に記載の水系乳化物。
【請求項4】
前記セルロース系増粘剤が炭素数10~30のアルキル基を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の水系乳化物。
【請求項5】
セルロース系増粘剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテルを含む、請求項4に記載の水系乳化物。
【請求項6】
前記多糖増粘剤が、側鎖構成単糖としてラムノース又はフコースを更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の水系乳化物。
【請求項7】
皮膚外用である、請求項1~6のいずれか一項に記載の水系乳化物。
【請求項8】
液体乳化物
又はクリームの形態である、請求項1~7のいずれか一項に記載の水系乳化物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の水系乳化物をケラチン物質、特に肌に適用することを含む、ケラチン物質をケア及び/又は化粧するための美容方法。
【国際調査報告】