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▶ ソーラーダック・ホールディング・ベー・フェーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-09
(54)【発明の名称】関節連結式浮遊構造体
(51)【国際特許分類】
   B63B 35/38 20060101AFI20240202BHJP
【FI】
B63B35/38 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538898
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2020087842
(87)【国際公開番号】W WO2022135730
(87)【国際公開日】2022-06-30
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523233307
【氏名又は名称】ソーラーダック・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エーヴァウト・ハウスカンプ
(72)【発明者】
【氏名】オラフ・デ・スワルト
(72)【発明者】
【氏名】コルネリス・フランス・ドナルド・ホーヘンドールン
(57)【要約】
本発明は、浮遊構造体であって、複数の相互連結されたフレームと、この構造体を支持する複数の浮力部材とを備え、フレームが平面図において実質的に三角形である、浮遊構造体に関する。隣接する三角形フレームは、可動的に連結され、特に枢動可能に連結される。三角形フレームは、直角三角形、二等辺三角形、または正三角形を含み得る。浮遊構造体は、例えばソーラーファームなどの設備を支持し得る。さらに、本発明は、このような浮遊構造体において使用するための三角形フレームに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮遊構造体であって、複数の相互連結されたフレームと、前記構造体を支持する複数の浮力部材とを備え、前記フレームのうちの少なくともいくつかが平面図において実質的に三角形である、浮遊構造体。
【請求項2】
すべてのフレームが、平面図において実質的に三角形である、請求項1に記載の浮遊構造体。
【請求項3】
隣接する三角形フレームは、可動的に連結される、請求項1または2に記載の浮遊構造体。
【請求項4】
隣接する三角形フレームは、枢動可能に連結される、請求項3に記載の浮遊構造体。
【請求項5】
前記三角形フレームは、実質的に同一の形状を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の浮遊構造体。
【請求項6】
前記三角形フレームは、実質的に同一の寸法を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の浮遊構造体。
【請求項7】
前記三角形フレームのうちの少なくとも1つは、三角形フレームのうちの別のフレームの寸法の数倍の寸法を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の浮遊構造体。
【請求項8】
各三角形フレームは、底辺と、頂点と、前記底辺の両端部を前記頂点と結ぶ2つの側辺とを有し、隣接する三角形フレームは、第1のフレームの前記底辺が第2のフレームの前記頂点に最も近く、前記第2のフレームの前記底辺が前記第1のフレームの前記頂点に最も近いように、それぞれの側辺に沿って連結される、請求項5から7のいずれか一項に記載の浮遊構造体。
【請求項9】
各三角形フレームは、底辺と、頂点と、前記底辺の両端部を前記頂点と結ぶ2つの側辺とを有し、隣接する三角形フレームは、それぞれの底辺に沿って連結される、請求項5から8のいずれか一項に記載の浮遊構造体。
【請求項10】
前記三角形フレームは、直角三角形を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の浮遊構造体。
【請求項11】
前記三角形フレームは、二等辺三角形を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の浮遊構造体。
【請求項12】
前記三角形フレームは、正三角形を含む、請求項10または11に記載の浮遊構造体。
【請求項13】
前記二等辺三角形は、約20°~120°の間の頂点角度を有し、特に60°の頂点角度を有する、請求項11または12に記載の浮遊構造体。
【請求項14】
前記三角形フレームのうちの少なくともいくつかは、角落としされたまたは丸みを付けられた少なくとも1つの角を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の浮遊構造体。
【請求項15】
前記三角形フレームのうちの少なくともいくつかは、実質的に開口した耐荷重構造部を有し、前記三角形の3つの側辺は、それらの端部に、またはその付近に連結されたビームを備える、請求項1から14のいずれか一項に記載の浮遊構造体。
【請求項16】
前記三角形の前記側辺を形成する前記ビームは、内部グリッドまたはプラットフォームを支持する、請求項15に記載の浮遊構造体。
【請求項17】
各三角形フレームは、少なくとも1つの浮力部材により支持される、請求項1から16のいずれか一項に記載の浮遊構造体。
【請求項18】
前記少なくとも1つの浮力部材は、少なくとも1つのポストにより前記それぞれの三角形フレームに連結される、請求項17に記載の浮遊構造体。
【請求項19】
各三角形フレームは、少なくとも3つの浮力部材により支持される、請求項17または18に記載の浮遊構造体。
【請求項20】
各浮力部材は、前記フレームの角の付近においてそれぞれの三角形フレームに連結される、請求項19に記載の浮遊構造体。
【請求項21】
各浮力部材は、前記第1の側辺または前記底辺が連結される隣接する三角形フレームの側辺または底辺に沿った浮力部材の位置に対してオフセットされた側辺または底辺に沿った位置で、それぞれの三角形フレームに連結される、請求項8または9に従属する場合の請求項19または20に記載の浮遊構造体。
【請求項22】
水域内の実質的な固定位置に前記浮遊構造体を維持するためのアンカリング手段をさらに備える、請求項1から21のいずれか一項に記載の浮遊構造体。
【請求項23】
前記浮遊構造体により支持された設備をさらに備える、請求項1から22のいずれか一項に記載の浮遊構造体。
【請求項24】
前記設備は、それぞれの三角形フレームの内部グリッドまたはプラットフォーム上に配置される、請求項15に従属する場合の請求項23に記載の浮遊構造体。
【請求項25】
前記設備は、複数のPVパネルを含む、請求項23または24に記載の浮遊構造体。
【請求項26】
前記浮力部材の個数および体積、ならびに前記少なくとも1つのポストの長さは、それぞれのフレームが、前記浮遊構造体が使用される水域の静水時水線の上方に離れて支持されるように、前記それぞれのフレームおよびその設備の重量に相関して選択される、請求項23から25のいずれか一項に記載の浮遊構造体。
【請求項27】
請求項1から26のいずれか一項に記載の浮遊構造体において使用することを明確に目的とした三角形フレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮遊構造体に関し、具体的には浮力部材により支持されたフレームから構成される浮遊構造体に関する。さらに詳細には、本発明は、例えばPVパネルアレイ、脱塩プラント、もしくはエネルギー貯蔵ユニットなどの設備向けの、または他のタイプの使用向けのプラットフォームを提供する浮遊構造体に関する。これらの浮遊構造体は、例えば河川または湖の上などのインショアおよびオフショアの両方において使用され得る。
【背景技術】
【0002】
世界中の多数の地域において、街の拡大および人口増加による農業用地の必要性のさらなる高まりにより、土地不足が進んでいる。したがって、例えばソーラーファームなどの広大な表面積を占有する設備は、大規模浮遊構造体または人工島の上に建設される傾向が増加している。これらの浮遊構造体は、ソーラーファームから獲得したエネルギーが使用されることとなる街の近くに位置決めされ得る。世界の最大級都市の多くは、海または湖などの水域の付近に位置している。
【0003】
以降において論じる文献に示されているように、従来の浮遊構造体は、比較的大型の剛性フレームを通常備え、この剛性フレームは、別個の浮力部材により支持されるかまたは固有の浮力を有する中空要素から構成されるかのいずれかである。いくつかの例外があるものの、従来の浮遊構造体のフレームは、通常は矩形である。従来の浮遊構造体は、比較的高い波抵抗を有し、そのフレームに対して比較的高い荷重がかかるため、高強度を有し比較的高重量であることが必要である。さらに、矩形フレームは、前方波の結果による移動に対応し得るが、ねじれ波動運動に対応するには不適である。複数の矩形フレームから構成された浮遊構造体は、ねじれ波動運動に対応するために比較的複雑な結合部と比較的幅広な間隔とを必要とする。
【0004】
先行技術文献WO2017/118998A1は、矩形浮遊ソーラープラットフォームを開示しており、このプラットフォームは、マトリックスパターンで相互に連結された1つまたは複数の水平方向支持部材の水平方向メッシュと、水平方向メッシュ上に固定的に取り付けられた1つまたは複数の鉛直方向支持部材とから形成された、一体型浮遊構造体を備える。水平方向平面状モジュラーデッキが、一体型浮遊構造体上に固定的に取り付けられ、ソーラーパネルの1つまたは複数のアレイを支持する。この浮遊構造体は、波に従うことができない剛性を有するため、結果として構造体に対する波荷重は高くなり、および/または波表面とソーラーパネルアレイとの間の空気間隙要件は高くなる。
【0005】
先行技術文献WO2017/023536A1は、エルボ、T字継手、およびポンツーンを形成する結合部を有する、可撓性高密度ポリエチレン管の閉ループから構成された浮遊ソーラーアレイを開示している。アンチリフトメンブレンが、水で充填され、風力を緩和する。アレイは、特に海上のオフショアで使用される場合には、アレイの境界部から下方に向かう安定化スカートを有し得る。この文献は、矩形ポンツーンのみならず、六角形および八角形のポンツーンもさらに提示している。
【0006】
先行技術文献KR101997077B1は、浮遊水上太陽光発電モジュールを開示しており、このモジュールは、構造体外部に設けられた閉円形支持フレームまたは閉楕円形支持フレームと、支持フレーム内部に格子形状に設けられたロープを有する支持ネットと、支持ネット上のソーラーパネルアレイと、支持フレームの一方の側部に対して結合された主要浮遊本体とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2017/118998A1
【特許文献2】WO2017/023536A1
【特許文献3】KR101997077B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記を鑑みて、改善された浮遊構造体の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、浮遊構造体であって、複数の相互連結されたフレームと、この構造体を支持する複数の浮力部材とを備え、フレームのうちの少なくともいくつかが平面図において実質的に三角形である、浮遊構造体が提供される。
【0010】
比較的大きな単一のフレームではなく比較的小さくてもよい複数のフレームを相互連結することにより、浮遊構造体は、これらのフレームを組み立てることによって比較的容易にかつ迅速に構築することができる。さらに、このような複数のより小さなフレームは、単一の大型フレームに比べて保管、輸送、およびハンドリングが容易である。例えば、フレームのエッジが、12m以内になるように設計される場合、これらのフレームは、標準の40フィートコンテナで輸送され得る。
【0011】
さらに、通常使用される矩形フレームではなく三角形フレームを使用することにより、この構造体に対する荷重は、より効率的に吸収および/または伝達され得る。三角形フレームは、三角形の面内でせん断荷重を吸収および/または伝達する適性において特に優れており、比較的高い強度対重量比を有する。
【0012】
そして最後に、フレームに浮力を持たせるのではなく、別個の浮力部材を用いることにより、明確な機能分割が確立され、これによりフレームの耐荷重性機能が最適化され得る。また、この構成により、フレームは水から離れた状態に維持されることが可能になり、したがって浮遊構造体の波抵抗が低下し、浮遊構造体の上方表面の乾いた状態と水荷重を受けない状態とが維持される。さらに、この構成により、部分浸漬したフレームまたはポンツーンに比べてフレームの移動がより少なくなり、これは、浮遊構造体が設備を支持するために使用される場合に有利となる。
【0013】
浮遊構造体は、例えば、構造体のエッジまたは中央にある矩形フレーム列などの異なる平面図を有するいくつかのフレームを含んでもよいが、一実施形態では、すべてのフレームが、平面図において実質的に三角形である。このようにすることで、浮遊構造体がその全体として、面内せん断荷重の許容適性が最適化される。
【0014】
さらなる一実施形態では、隣接する三角形フレームは、可動的に連結される。隣接するフレームの間に可動連結部を設けることにより、これらのフレームは、ねじれ波による動きに対してより効率的に対応することができ、そのため浮遊構造体に対する荷重が軽減される。「可動に連結される」とは、フレームが隣接するフレームに対して可能な6自由度のうちの1つまたは複数を有することを意味する。
【0015】
さらに他の実施形態では、隣接する三角形フレームは、枢動可能に連結される。枢動可能な連結により、これらのフレームは、この構造体が浮遊する水域の波に対して多少なりとも形状適合することが可能になり、したがって構造体に対する荷重がさらに軽減される。
【0016】
浮遊構造体の有効表面積を最大限に大きくするために、一実施形態では、三角形フレームが、実質的に同一形状を有してもよい。このようにすることで、これらのフレームは、共に比較的近くに取り付けられ得る。
【0017】
三角形フレームが実質的に同一の寸法を有する一実施形態では、均一な浮遊構造体が実現されてもよい。
【0018】
浮遊構造体の代替的な一実施形態では、三角形フレームのうちの少なくとも1つは、三角形フレームのうちの他の1つのフレームの寸法の数倍の寸法を有してもよい。このようにすることで、浮遊構造体は、より大きい三角形とより小さい三角形との組合せから構成され得る。
【0019】
一実施形態では、各三角形フレームは、底辺と、頂点と、底辺の両端部を頂点と結ぶ2つの側辺とを有してもよく、隣接する三角形フレームは、第1のフレームの底辺が第2のフレームの頂点に最も近く、第2のフレームの底辺が第1のフレームの頂点に最も近いように、それぞれの側辺に沿って連結され得る。このようにすることで、対向側にある一連の底辺が実質的に連続エッジを形成するような、交互に並ぶ三角形の列が形成され得る。
【0020】
追加的にはまたは代替的には、一実施形態では、各三角形フレームが、底辺と、頂点と、底辺の両端部を頂点と結ぶ2つの側辺とを有してもよく、隣接する三角形フレームは、それぞれの底辺に沿って連結され得る。このようにすることで、2つの相互連結された三角形フレームが、ダイヤモンド形状を形成し得る。
【0021】
一実施形態では、三角形フレームは、直角三角形を含んでもよい。かかる三角形フレームは、矩形浮遊構造体を形成するように容易に組み合わせることができる。
【0022】
他の実施形態では、三角形フレームは、二等辺三角形を含んでもよい。このようにすることで、均一な浮遊構造体が形成され得る。
【0023】
浮遊構造体の均一性は、三角形フレームが正三角形を含む一実施形態によりさらに高まり得る。
【0024】
各フレームの効率的な耐荷重性構造を実現するために、一実施形態では、二等辺三角形は、約20~120°の間の頂点角度を有し、特に60°の頂点角度を有し得る。
【0025】
浮遊構造体の一実施形態では、三角形フレームのうちの少なくともいくつかは、角落としされたまたは丸みを付けられた少なくとも1つの角を有し得る。例えば十分な強度を実現するまたは危険なほどの鋭角を回避するためになど、実用上の理由により、純三角形形状からの小さな逸脱は、この形状の基本的利点を損なわずに許容され得る。
【0026】
浮遊構造体の一実施形態では、三角形フレームのうちの少なくともいくつかは、実質的に開口した耐荷重構造部を有してもよく、三角形の3つの側辺は、それらの端部に、またはその付近に連結されたビームを備える。三角形のエッジを形成するビーム中においてフレームに対して作用する荷重を考慮することにより、明確で効率的な荷重分布が達成され得る。
【0027】
設備が浮遊構造体上に取り付けられることを可能にするために、一実施形態では、三角形の側辺を形成するビームは、内部グリッドまたはプラットフォームを支持し得る。
【0028】
一実施形態では、各三角形フレームは、少なくとも1つの浮力部材により支持される。このようにすることで、これらのフレームは、自己支持型であり、フレームの浮力のために他のフレームに連結されることに依存しない。
【0029】
一実施形態では、少なくとも1つの浮力部材は、少なくとも1つのポストによりそれぞれの三角形フレームに連結され得る。このようにすることで、浮力構造体と、浮力構造体が浮遊する水域の水面との間で距離が維持される。
【0030】
個々のフレームの安定性を確保するために、浮遊構造体の一実施形態では、各三角形フレームは、少なくとも3つの浮力部材により支持され得る。
【0031】
さらなる一実施形態では、各浮力部材は、フレームの角の付近においてそれぞれの三角形フレームに連結されてもよい。このようにすることで、浮遊構造体の安定性が、さらに向上する。
【0032】
一実施形態では、隣接する三角形フレームは、それぞれの側辺または底辺に沿って連結され、各浮力部材は、第1の側辺または底辺が連結される隣接する三角形フレームの側辺または底辺に沿った浮力部材の位置に対してオフセットされた側辺または底辺に沿った位置で、それぞれの三角形フレームに連結され得る。このようにすることで、構造体が浮遊する水域の波上においてフレームが動く最中に、隣接する三角形フレームの浮力部材が衝突するリスクがない。
【0033】
一実施形態では、浮遊構造体は、水域内の実質的な固定位置に浮遊構造体を維持するためのアンカリング手段をさらに備え得る。
【0034】
さらなる一実施形態では、浮遊構造体は、浮遊構造体により支持された設備をさらに備え得る。
【0035】
さらに他の実施形態では、三角形の側辺を形成するビームが内部グリッドまたは内部プラットフォームを支持する場合に、設備は、それぞれの三角形フレームの内部グリッドまたはプラットフォーム上に配置され得る。
【0036】
一実施形態では、設備は、複数のPVパネルを含んでもよい。代替的には、設備は、例えば脱塩プラントなど、または例えばバッテリアレイなどのエネルギー貯蔵ユニットを含み得る。浮遊構造体の他の可能な用途は、1つまたは複数のタービンを介した風力エネルギー発電、または波力エネルギー発電である。エネルギー発電専用の1つまたは複数の浮遊構造体に加えて、さらなる浮遊構造体は、例えば水素生成ユニット、水素-燃料転換プラント、またはデータセンタなどの、エネルギーを大量消費するアクティビティを支持し得る。また、浮遊構造体は、農業または養殖業の都会化すなわちハウジングおよび/またはレクリエーションを目的として使用されることも可能である。そして最後に、浮遊構造体は、オフショア係留設備またはサテライトポートとして使用することが可能であり、そこにおいて船舶は、貨物または供給品、とりわけパイプライン経由で陸上に送られ得る流体貨物を積み込むまたは降ろすことができる。
【0037】
さらに他の実施形態では、浮力部材の個数および体積、ならびに少なくとも1つのポストの長さは、それぞれのフレームが、浮遊構造体が使用される水域の静水時水線の上方に離れて支持されるように、それぞれのフレームおよびその設備の重量に相関して選択され得る。このようにすることで、フレームは、構造体が浮遊している水域の波から離れた状態に維持され得る。
【0038】
さらに、本発明は、上述したような浮遊構造体において使用することを明確に目的とした三角形フレームを提供する。
【0039】
以下、添付の図面が参照される複数の例示の実施形態により本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明による4つの相互連結された三角形フレームから構成された浮遊構造体の第1の実施形態の上方斜視図である。
図2】第1の実施形態のものとは異なる平面図を有する三角形フレームから構成された、本発明による浮遊構造体の第2の実施形態の上方斜視図である。
図3図1の図に対応するが、PVパネルアレイを支持する浮遊構造体の各三角形フレームを示す図である。
図4図3に示すようなPVパネルを支持する浮遊構造体の下方斜視図である。
図5図1の矢印Vによる浮遊構造体の第1の実施形態の背面図である。
図6】浮力部材の周囲の例示的な静水時水線を示す、図3の矢印VIによるPVパネルを支持する浮遊構造体の第1の実施形態の側面図である。
図7】浮遊構造体の第1の実施形態の上面図である。
図8】浮遊構造体の第1の実施形態の底面図である。
図9】浮遊構造体の第2の実施形態の上面図である。
図10】種々の浮力部材と種々の浮力部材の種々の位置との両方を示す、本発明の第3の実施形態による三角形フレームの上面図である。
図11】第3の実施形態による単一のフレームを示す、図3の図に対応する図である。
図12図11の図に対応するが、PVパネルアレイを有さない図である。
図13】隣接する三角形フレームのうちの一方のフレームのエッジが明瞭化のために除去されている、隣接する三角形フレームの間の枢動連結部の一例の斜視図である。
図14】様々な角度および寸法を示す、三角形の概略図である。
図15A】第3の実施形態の浮力部材の構成を有する1つのタイプの三角形フレームの概略平面図である。
図15B】第3の実施形態の浮力部材の構成を有する1つのタイプの三角形フレームの概略平面図である。
図15C】第3の実施形態の浮力部材の構成を有する1つのタイプの三角形フレームの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
浮遊構造体1(図1)は、複数の三角形フレーム2を、この実施形態では4つのフレーム2A~2Dを備える。これらの三角形フレーム2は、隣接するエッジに沿って相互に連結される。各フレーム2は、1つまたは複数の、本実施形態では3つの浮力部材3によって支持される。図示する実施形態では、各浮力部材3は単一のポスト6によって三角形フレーム2に連結される。各浮力部材3は、フレーム2のコーナー7付近で、すなわちフレーム2を形成する三角形の3つの角のうちの1つの付近で、それぞれのフレーム2に連結されるように示されている。
【0042】
隣接する三角形フレーム2は、相互に対して可動になるように連結され、それにより浮遊構造体1は、ある程度の可撓性を有する。図示する実施形態では、隣接する三角形フレーム2は、枢動可能に連結される。これを目的として、フレーム2は、枢動可能連結要素19を、この例では2つの連結要素19をコーナー7の付近に備え得る。これらの連結要素19は、三角形フレーム2のうちの1つの上の単一のラグ8と、他方のフレーム2の上の1対のラグ9とを備えてもよく、ラグ8、9は、ピン10(図12)を受けるための整列穴を有し得る。フレーム2間の枢動可能連結部により、関節連結式浮遊構造体1が形成され、三角形フレーム2は、この構造体1が水域上に浮遊している場合に波の運動に従うことが可能になる。
【0043】
図示する実施形態では、4つの三角形フレーム2A~2Dのすべてが、同一形状および同一寸法を有する。実際のところ、フレーム2は、底辺11を頂点13に結び付ける2つの側辺12のそれぞれと同じ長さを底辺11(図15A)が有する正三角形によって形成されることが示されている。このような正三角形では、3つの角は、各コーナーが頂点13であると見なし得るように同等である。
【0044】
他の実施形態(図2)では、フレーム2は、二等辺三角形により形成され、この二等辺三角形では、底辺11(図15B)が、側辺12とは異なる長さを有し、頂点13が、角度αを有し、この角度αは、2つの下方の頂点21の角度βとは異なる。この実施形態では、頂点13は、90°の角度を有し、したがって底辺11は、側辺12よりも40%ほど長く、したがって鈍角三角形を形成する。
【0045】
両実施形態において、3つの外方三角形フレーム2A、2C、および2Dは、相互に平行に配置され、それぞれの頂点をいずれも同一の側に有する一方で、中央の三角形フレーム2Bは、逆方向に配置される。左右の三角形フレーム2A、2Cは、中央の三角形フレーム2Cにそれぞれの側辺12に沿って連結され、最前の三角形フレーム2Dは、中央の三角形フレーム2Cにそれぞれの底辺11に沿って連結される。
【0046】
この構成において、4つの三角形フレーム2A~2Dは、浮遊構造体1を共に形成する。浮遊構造体1は、それ自体が三角形であり、構成要素となる三角形フレーム2と同じ三角形状を平面図において有する。三角形浮遊構造体1のエッジは、各三角形フレーム2のエッジの2倍の長さを有する。浮遊構造体1は、3つ以下または5つ以上の三角形フレーム2を備えることが可能である。浮遊構造体1は、異なる寸法または異なる形状を有する三角形フレームをさらに含み得る。例えば、構造体1は、図に示すような4つの三角形フレームの組合せと同一寸法を有する中央の三角形フレームを備えることが可能であり、この中央の三角形フレームは、図に示すタイプの4つのより小さい三角形フレームの組合せによって囲まれ得る。実施を目的として、三角形フレーム2のエッジの長さは、輸送の容易化という観点から選択することが可能であり、標準コンテナサイズである6m(20フィート)の倍数であることが可能である。
【0047】
代替的には、図1の構成は、例えば中央フレーム2Bと同一の配向を有する2つの三角形フレームを最前の三角形フレーム2Dの両側辺に接するように配置し、したがって「砂時計」形状を実現し、次いでこれらの両側辺に120°の頂点を有する2つ二等辺三角形を追加して矩形または正方形の浮遊構造体1を形成することによって、拡張させることが可能である。
【0048】
また、正方形浮遊構造体1が、図2の構成をミラーリングすることによって形成され得る。
【0049】
三角形フレーム2に加えて、浮遊構造体1は、異なる平面図を有するフレームをさらに備えることが可能である。例えば、1つまたは複数の正方形フレームが、三角形フレーム2Cと三角形フレーム2Dとの間に配置されて、矢印形状浮遊構造体を形成することが可能である。追加的にはまたは代替的には、比較的幅狭の矩形フレームが、浮力の増加または例えばメンテナンス人員のための通路などの支持のいずれかのために、浮遊構造体の外部に配置されることが可能である。
【0050】
図示する実施形態では、各三角形フレーム2が、3つのビーム14を含む開口耐荷重構造部を有し、これらのビーム14は、それらの端部で連結される。浮遊構造体1上への設備の取付けを可能にするために、内部グリッド15が、耐荷重ビーム14間に配置され得る。図示する実施形態では、内部グリッド15は、4つの長手方向ガーダー16および1つの横軸方向ガーダー17を含む。ここに示すように、ポスト6は、外方長手方向ガーダー16および横軸方向ガーダー17に連結されるように示されているので(図4)、内部グリッド15は、設備を支持する役割を果たすだけではなく、浮力部材3と耐荷重フレーム2との間の連結部をさらに形成する。
【0051】
ビーム14およびガーダー16、17は、ここでは閉矩形断面プロファイルを有するものとして示されるが、これらの部材は、異なる断面プロファイルを有すると考えられる。これらのビームおよび/またはガーダーは、円形もしくは楕円形の断面を有することが可能であり、または例えば三角形などの他の多角形断面を有することが可能である。代替的には、ビームおよび/またはガーダーは、開口断面を有することが可能であり、例えばC字形状、H字形状、I字形状、またはL字形状であることが可能である。また、これらのビームおよび/またはガーダーは、トラスまたはスペースフレームにより形成されることも考えられる。
【0052】
図示する実施形態では、浮遊構造体1は、太陽光発電設備を支持する。この設備は、PVパネルの複数のアレイを備える(図3)。この実施形態では、各三角形フレーム2が、実質的に三角形のPVパネルアレイ4を支える。これらのPVパネルは、列5内に配置されるように図示されており、列5の長さは、三角形の底辺11から頂点13に向かって漸減する。この実施形態では、隣接する列5は、屋根形状で配置され、通路18が、列5の各対の間に配置されることが示されている。
【0053】
図示する実施形態では、各三角形フレーム2の全表面がPVパネルアレイ4で覆われるが、例えば制御電子機器、変圧器、または貯蔵用バッテリなどの設備の他のパーツのために、この表面エリアの一部を確保することが考えられる。浮遊構造体1は、PVパネルを支える三角形フレーム2と、設備の他のパーツを支える1つまたは複数の三角形フレーム2とから構成することが可能である。
【0054】
浮遊構造体1は、太陽光発電設備の代わりに、例えば脱塩プラント、水素生成プラント、または、大きな空間量を必要とするが限定的な介入のみを必要とするもしくは人的介入を必要としない何らかの他の設備などの、異なるタイプの設備を支えることが可能である。このような例では、三角形フレーム2は、内部グリッドとは異なるプラットフォームを備えることが可能である。
【0055】
図示する実施形態では、浮力部材3は、扁平楕円体の形状を有し、すなわち水平方向に長軸をおよび鉛直方向に短軸を有する楕円をベースとした、鉛直方向軸を中心とする回転体を有する。かかる楕円体形状の浮力部材は、「Floating structure having ellipsoid buoyant members」と題する本出願人による同時係属出願において詳細に説明されているが、非常に低い造波抵抗を有することが判明しており、したがって各三角形フレーム2に対する荷重は、比較的低いものとなり、その構造体は、軽量となり得る。しかし、造波抵抗がさほど問題にはならない状況では、図10図12に示す矩形浮力部材23により示されるようなより基本的な形状の浮力部材を考慮に入れることができる。
【0056】
三角形フレーム2に対する荷重は、平常使用時にフレーム2に水が触れないようにすることによってさらに軽減される。さらに、このようにすることにより、浮遊構造体により支えられる設備、すなわちこの例ではPVパネルアレイ4もまた、波の衝撃に起因する悪影響から保護される。図6に示すように、浮力部材3は、静水時水線WLの下方にほぼ完全に浸漬され、フレーム2は、静水時水線の上方の高さhに支持される。これは、浮力部材3の個数およびそれらの体積と、各三角形フレーム2およびそのフレーム2により支持されるPVパネルアレイ4の重量に対するポスト6の長さとを慎重に選択することによって実現される。静水時水線WLの上方の高さhは、意図する用途にしたがって選択される。例えば湖またはさらには河川などの波高さが限定的である内陸水域の場合には、1~2mの自由高さが十分であり得るが、オフショア用途の場合には、場合によっては静水時水線WLの上方に最大で25mの位置にフレーム2があるように、はるかに高い構造体が必要となり得る。
【0057】
浮力部材3は、この実施形態では完全に浸漬されるように図示される。しかし、各浮力部材3にさらに大きい体積を与えることにより、浮力部材3が部分的にだけ浸漬される場合においても所要の浮力を実現させることもまた可能である。この場合には、浮力部材3がフレーム2を支えるのに必要な度合いを超えて浸漬される場合に発生し得る潜在的予備浮力は、浮遊構造体1の動的安定性を高めるために利用され得る。この予備浮力は、フレーム2の一方の側部が接近してくる波により持ち上げられる場合の三角形フレーム2の一部の下方運動を相殺する。
【0058】
したがって、これまでフレーム2は純三角形として図示してきたが、本発明のコンセプトから逸脱することなく、この形状から少々逸脱した形状を利用することが可能である。実施を目的として、各三角形フレーム2のコーナー7は、例えば十分な強度を実現するためにまたは危険をもたらす先鋭角を回避するためになど、角落としされてもまたは丸みを付けられてもよい。これは、図10の実施形態において示される。
【0059】
また、この実施形態は、代替的な配置の3つの浮力部材3を備え、これらの浮力部材3は、先述の実施形態の場合とは異なり、三角形フレーム2の正中線に対して対称的には配置されていない。図1図9の実施形態では、隣接する三角形フレーム2の浮力部材3は、連結されたエッジに対する横軸方向において真逆に位置する。したがって、これらの浮力部材は、波によりフレーム2が枢動する場合に理論上、衝突し得る。図10図12の実施形態では、各浮力部材3A~3Cが、隣接する三角形フレーム2のエッジに沿った浮力部材3A~3Cの位置に対してオフセットされたエッジに沿ったある位置において、横軸方向ガーダー17または対角線方向ガーダー20を介してフレーム2に連結される。三角形フレーム2が、その頂点が逆方向に向いた状態で、図10に示すフレーム2の右側に配置される場合、その第1の浮力部材3Aは、図示するフレーム2の第1の浮力部材3Aの真逆には位置せず、第3の浮力部材3Cの近傍ではあるが真逆ではない位置に位置する。同様に、他のフレーム2が、やはりその頂点が逆方向に向いた状態で、このフレーム2の左側に配置される場合、その第2の浮力部材3Bは、図示するフレーム2の第2の浮力部材3Bからオフセットされる。さらに他の三角形フレームが、やはりその頂点が逆方向に向いた状態で、図10のフレーム2の下方に配置される場合、これと同じことが当てはまる。
【0060】
図15に示すように、浮力部材3のこの代替的な位置決めは、三角形フレーム2の任意の実施形態において利用され得る。図15Aは、正三角形の形状であるフレーム2を示し、頂点13の角度αおよび他の2つの頂点21の角度βのいずれも同一であり、同様に2つの側辺12および底辺11の長さもまた、同一である。図15Bは、図2および図9に示すようなフレーム2の第2の実施形態を示し、ここでは浮力部材3は、二等辺三角形の頂点13および他の頂点21からオフセットされて配置される。そして最後に、図15Cは、フレーム2の可能な他の形状を示し、直角三角形が、3つの異なる側辺11、12A、および12Bと3つの異なる角度α、β、およびγをそれぞれ有する。図15Bおよび図15Cの実施形態は、矩形浮遊構造体1へと非常に容易に結合されることに適する。代替的に、菱形形状の浮遊構造体1は、直角である頂点21Aを縁取る側辺11および12Aに沿って図15Cに示すような三角形フレームを連結することによって形成することが可能である。
【0061】
図面には示さないが、浮遊構造体1は、水域の実質的な固定位置に浮遊構造体1を維持するためのアンカリング手段をさらに備える。このアンカリング手段は、例えばいわゆるスパッドポールを含んでもよく、これらのスパッドポールは、水域の底へと打ち込まれ、構造体1は、配向を変えることなくこのスパッドポールに沿って上下に浮沈することができる。代替的には、アンカリング手段は、底に固定された1つまたは複数のアンカーを含み得、浮遊構造体1はチェーンまたは他の可撓性要素によりこれらのアンカー要素に連結され得、それにより構造体は、例えば太陽に対する最適な位置にPVパネルを保持するためにその配向を変更することができる。この浮遊構造体は、比較的小さい内陸水域で使用される場合に、岸に対してアンカリングされることも可能である。
【0062】
複数の例示の実施形態により本発明を示したが、特許請求の範囲内において多数の変更を行うことが可能であることは明らかである。
【0063】
例えば、三角形フレームを支持する浮力部材の個数は、2つ以下または4つ以上であることが可能である。2つ以下の浮力部材を用いる場合、各浮力部材は、例えば漁で使用される浮きのように本質的に安定的なものであることが必要である。また、例えばフレーム2のうちの1つが、例えば電気変換器の重量またはアンカリング手段により印加される力などの非常に高い荷重を支えなければならない場合、三角形フレーム2の全表面エリアの下方に延在する浮力部材3をフレーム2に与えて、フレーム2をバージに多かれ少なかれ転換することも考えられる。
【0064】
さらに、浮遊構造体を共に構成する三角形フレーム2の個数は、5個以上または3個以下であることが可能である。原則的に、共に連結可能である三角形フレーム2の個数に上限はない。
【0065】
任意の適切な材料を、三角形フレーム2、浮力部材3、およびポスト6の構造に使用することが可能である。かかる材料としては、アルミニウム、鋼、コンクリート、または繊維強化プラスチックが含まれる。
【0066】
本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
【符号の説明】
【0067】
1 浮遊構造体
2 三角形フレーム
2A 三角形フレーム
2B 三角形フレーム、中央フレーム
2C 三角形フレーム
2D 三角形フレーム
3 浮力部材
3A 第1の浮力部材
3B 第2の浮力部材
3C 第3の浮力部材
4 PVパネルアレイ
5 列
6 ポスト
7 コーナー
8 単一のラグ
9 1対のラグ
10 ピン
11 底辺、側辺
12 側辺
13 頂点
14 ビーム、耐荷重ビーム
15 内部グリッド
16 長手方向ガーダー
17 横軸方向ガーダー
18 通路
19 枢動可能連結要素
20 対角線方向ガーダー
21 頂点
21A 頂点
23 矩形浮力部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
【国際調査報告】