(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-09
(54)【発明の名称】オリゴヌクレオチドを脱トリチル化するための方法
(51)【国際特許分類】
C07H 21/00 20060101AFI20240202BHJP
C07H 1/00 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
C07H21/00
C07H1/00 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542513
(86)(22)【出願日】2022-02-15
(85)【翻訳文提出日】2023-07-12
(86)【国際出願番号】 EP2022053556
(87)【国際公開番号】W WO2022175211
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】コミサルスキ マレク スタニスロー
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー パスカル
(72)【発明者】
【氏名】オルブリッチ マーティン
【テーマコード(参考)】
4C057
【Fターム(参考)】
4C057AA03
4C057AA21
4C057BB02
4C057BB05
4C057DD03
4C057MM01
4C057MM02
4C057MM04
(57)【要約】
本発明は、アセトニトリルを含む脱トリチル化溶液を用いて、5’-Oオリゴヌクレオチドにおける酸不安定な5’ヒドロキシ保護基を除去することを含む、直鎖P結合オリゴヌクレオチドの製造のための新規な方法に関する。この方法は、低含有量の脱プリンおよびN-1不純物を伴うオリゴヌクレオチドを製造することを可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルエンとアセトニトリルとの溶媒混合物中のプロトン酸を含む脱トリチル化溶液を用いて、5’-Oオリゴヌクレオチドにおける酸不安定な5’ヒドロキシ保護基を除去することを含む、直鎖P結合オリゴヌクレオチドの製造のための方法。
【請求項2】
前記プロトン酸が、酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、またはトリクロロ酢酸から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プロトン酸がジクロロ酢酸である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸不安定な5’ヒドロキシ保護基が、4,4’-ジメトキシトリチル、4-メトキシトリチル、トリチル、9-フェニル-キサンテン-9-イル、9-(p-トリル)-キサンテン-9-イルから、またはtert-ブチルジメチルシリルから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記酸不安定な5’ヒドロキシ保護基が、4,4’-ジメトキシトリチル、4-メトキシトリチル、またはトリチルから選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
トルエンとの前記溶媒混合物中のアセトニトリル濃度が、0.1%(v)~70%(v)、好ましくは10%(v)~25%(v)の範囲である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
トルエン中のプロトン酸濃度が、3%(v)~20%(v)、好ましくは7%(v)~17%(v)の範囲である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記酸不安定な5’ヒドロキシ保護基の除去が、0.1CV/分~2.0CV/分の流量を適用する前記脱トリチル化溶液を用いて行われる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
5’-Oオリゴヌクレオチド中間体が、前記5’-Oオリゴヌクレオチドにおける前記酸不安定な5’ヒドロキシ保護基の除去の前または後に、アセトニトリルとトルエンとの混合物で洗浄される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
「脱プリン関連不純物の合計」として表される脱プリンのレベルが8.0%未満である条件下で行われる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
「N-1不純物の合計」として表されるN-1不純物のレベルが3.0%未満である条件下で行われる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記脱プリンのレベルおよび前記N-1不純物のレベルが、切断および脱保護の後かつ任意の下流処理が適用される前に得られた粗オリゴヌクレオチドについて測定される、請求項10または11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルエンとアセトニトリルとの溶媒混合物中のプロトン酸を含む脱トリチル化溶液を用いて、5’-Oオリゴヌクレオチドにおける酸不安定な5’ヒドロキシ保護基を除去することを含む、直鎖P結合オリゴヌクレオチドの製造のための新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オリゴヌクレオチド合成は、原則として、所望の配列が組み立てられるまで、伸長中の鎖の5’末端にヌクレオシド残基を段階的に付加することである。
【0003】
一般的に、各付加は合成サイクルと呼ばれ、原則として以下の化学反応、
a1)固体支持体上の保護された5’ヒドロキシル基を脱ブロックすること、
a2)第1のヌクレオシドを活性化ホスホラミダイトとして固体支持体上の遊離ヒドロキシル基とカップリングさせること、
a3)P結合した各々のヌクレオシドを酸化または硫化して、各々のホスホジエステル(P=O)または各々のホスホロチオエート(P=S)を形成させること、
a4)任意に、固体支持体上のいずれかの未反応ヒドロキシル基をキャッピングすること、
a5)固体支持体に結合した第1のヌクレオシドの5’ヒドロキシル基を脱ブロックすること、
a6)第2のヌクレオシドを活性化ホスホラミダイトとしてカップリングさせて、各々のP-O結合したダイマーを形成させること、
a7)P-O結合した各々のジヌクレオシドを酸化または硫化して、各々のホスホジエステル(P=O)または各々のホスホロチオエート(P=S)を形成させること、
a8)任意に、いずれかの未反応5’ヒドロキシル基をキャッピングすること、
a9)所望の配列が組み立てられるまで、前述の工程a5~a8を繰り返すこと、からなる。
【0004】
あるいは、反応シーケンスは、固体支持体にプレロードされたヌクレオシドの保護された5’ヒドロキシル基の脱ブロックから開始してもよい。その後の工程は、上記で概説したようにシーケンスに従う。
【0005】
最後に、組み立てられたオリゴヌクレオチドを固体支持体から切断し、その後の下流処理および精製方法により、所望の純粋なオリゴヌクレオチドを得る。
【0006】
保護された5’ヒドロキシル基の脱ブロック、すなわち、5’-Oオリゴヌクレオチドにおける酸不安定な5’ヒドロキシ保護基の除去は、各サイクルにおいて、次のヌクレオシドとのカップリングのためにこれまでに組み立てられたオリゴヌクレオチドを調製するように、オリゴヌクレオチド合成における重要な繰返しプロセス工程である。
【0007】
脱ブロック方法は原則として標準的であり、当技術分野で周知である。
【0008】
米国特許第6,538,128号(特許文献1)明細書は、標準的な手順を例示しており、アレーン溶媒、通常はトルエンの存在下での、ジクロロ酢酸またはトリクロロ酢酸などのプロトン酸を用いた典型的な5’ヒドロキシ保護基であるトリチル基の除去を開示している。
【0009】
米国特許第6,538,128号(特許文献1)明細書は、塩化メチレンおよびアセトニトリルなどの溶媒をさらに論じている。アセトニトリルは、脱トリチル化速度を遅くすることが記載された(実施例2、18行および表1)。
【0010】
減速効果の理由は、C.H.Paulら、3048~3052、Nucleic Acids Research、1996年、第24巻、第15号(非特許文献1)で論じられている。アセトニトリルがプロトン酸と複合体を形成し、オリゴヌクレオチドと競合すると、脱トリチル化が劇的に遅くなると仮定された。
【0011】
PCT国際公開第2012/059510号(特許文献2)パンフレットは、例えばオリゴヌクレオチド合成の一部としての脱トリチル化方法で使用される様々な溶媒中での固体支持体の膨潤によって引き起こされる固体支持体カラム内の圧力を低下させる方法を開示している。固体支持体を、脱トリチル化反応の前または後に、塩化メチレンまたはトルエンのようなアレーンを含む洗浄液で洗浄することが示唆されており、これにより、オリゴヌクレオチド合成の過程で蓄積する圧力が低下する。洗浄溶液はアセトニトリルを含み得る。脱トリチル化は、標準的な方法、すなわちトルエン中にDCAを含有する酸性溶液を適用することに従う。望ましくない副反応の低減は、本PCT開示の目的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,538,128号
【特許文献2】PCT国際公開第2012/059510号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】C.H.Paulら、3048~3052、Nucleic Acids Research、1996年、第24巻、第15号
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、保護された5’ヒドロキシル基を脱ブロックするための方法、特にN-1不純物の形成および脱プリンの減少などの望ましくない副反応の低減をさらに改善することであった。
【0015】
この目的は、トルエンとアセトニトリルとの溶媒混合物中のプロトン酸を用いて行われる、5’-Oオリゴヌクレオチドにおける酸不安定な5’ヒドロキシ保護基の除去のための方法によって達成され得ることが見出された。
【0016】
本発明の方法は、驚くべきことに、アセトニトリルの存在下でのプリン塩基のグリコシド結合の加水分解の減少に起因して、有意に少ない脱トリチル化関連副生成物を送達するが、同時に、脱トリチル化の速度論は悪影響を受けない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の定義は、本明細書において本発明を説明するために使用される種々の用語の意味および範囲を例示し、定義するために記載されている。
【0018】
酸不安定な5’ヒドロキシ保護基という用語は、適切な酸の助けを借りて切断可能であり、かつ疎水性の特性を有する、保護基と定義される。
【0019】
典型的な酸不安定な5’ヒドロキシ保護基は、4,4’-ジメトキシトリチル、4-メトキシトリチル、トリチル、9-フェニル-キサンテン-9-イル、9-(p-トリル)-キサンテン-9-イルから、もしくはtert-ブチルジメチルシリルから、好ましくは、4,4’-ジメトキシトリチル、4-メトキシトリチル、もしくはトリチルから、またはさらにより好ましくは4,4’-ジメトキシトリチルから選択される。
【0020】
本明細書において使用される「オリゴヌクレオチド」という用語は、2つ以上の共有結合したヌクレオチドを含む分子として当業者によって一般的に理解されるように定義される。治療的に価値のあるオリゴヌクレオチドとして使用するために、オリゴヌクレオチドは、典型的には、10~40ヌクレオチド、好ましくは10~25ヌクレオチドの長さとして合成される。
【0021】
オリゴヌクレオチドは、任意に修飾されていてもよいDNA、RNAまたはLNAヌクレオシドモノマーまたはそれらの組合せからなり得る。
【0022】
LNAヌクレオシドモノマーは、ヌクレオチドのリボース糖環のC2’とC4’の間にリンカー基または架橋を含む修飾ヌクレオシドである。これらのヌクレオシドはまた、文献において、架橋核酸または二環式核酸(BNA)とも称されている。
【0023】
本明細書において使用される「任意に修飾されていてもよい」とは、糖部分または核酸塩基部分に対する1つまたは複数の修飾の導入によって、対応するDNA、RNA、またはLNAヌクレオシドと比べて修飾されたヌクレオシドを意味する。好ましい実施形態において、修飾ヌクレオシドは修飾糖部分を含み、例えば、1つ以上の2’置換ヌクレオシドおよび/または1つ以上のLNAヌクレオシドを含み得る。修飾ヌクレオシドという用語はまた、「ヌクレオシド類似体」または修飾「ユニット」または修飾「モノマー」という用語と互換的に使用されてもよい。
【0024】
DNA、RNAまたはLNAヌクレオシドは、原則として、2つのヌクレオシドを互いに共有結合するホスホジエステル(P=O)またはホスホロチオエート(P=S)ヌクレオシド間結合によって連結される。
【0025】
したがって、いくつかのオリゴヌクレオチドにおいて、全てのヌクレオシド間結合がホスホジエステル(P=O)からなっていてもよく、他のオリゴヌクレオチドにおいては、全てのヌクレオシド間結合がホスホロチオエート(P=S)からなっていてもよく、またはさらに他のオリゴヌクレオチドにおいては、ヌクレオシド間結合の配列が異なっており、ホスホジエステル(P=O)とホスホロチオエート(P=S)の両方のヌクレオシド間結合を含む。
【0026】
核酸塩基部分は、対応する各核酸塩基についての文字コード、例えば、A、T、G、CまたはUにより示されてもよく、各文字は、任意に等価機能の修飾核酸塩基を含んでもよい。例えば、例示されるオリゴヌクレオチドにおいて、核酸塩基部分は、LNAヌクレオシドについては大文字のA、T、GおよびMeC(5-メチルシトシン)を用いて、DNAヌクレオシドについては小文字のa、t、g、cおよびMecを用いて記載される。修飾核酸塩基としては、保護基を有する核酸塩基、例えば、tert-ブチルフェノキシアセチル、フェノキシアセチル、ベンゾイル、アセチル、イソブチリルまたはジメチルホルムアミジノが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
オリゴヌクレオチド合成の記載された原理は、当技術分野で周知である(Wikipedia contributors.「Oligonucleotide synthesis」Wikipedia、The Free Encyclopedia.、2021年1月19日.Web.2021年2月16日を参照のこと)。
【0028】
現在、大規模なオリゴヌクレオチド合成は、コンピュータ制御合成装置を使用して自動的に行われている。
【0029】
原則として、オリゴヌクレオチド合成は固相合成であり、ここで、組み立てられるオリゴヌクレオチドは、その3’末端ヒドロキシ基を介して固体支持体材料に共有結合し、鎖組立ての全過程にわたってそこに結合したままである。好適な支持体は、GE HealthcareからのPrimer支持体5GもしくはKinovateからのNittoPhase(登録商標)HL支持体のような市販のマクロ多孔質ポリスチレン支持体、またはLGCからの核酸塩基プレロード支持体のような制御された細孔ガラス支持体である。
【0030】
上記で概説したように、オリゴヌクレオチド合成は、原則として、上記で概説したように所望の配列が組み立てられるまで、伸長中の鎖の5’末端にヌクレオシド残基を段階的に付加することである。
【0031】
その後の樹脂からの切断は、濃アンモニア水を用いて行われ得る。リン酸および核酸塩基上の保護基もこの切断手順内で除去される。
【0032】
上記で概説したように、本発明の方法は、トルエンとアセトニトリルとの溶媒混合物中のプロトン酸を用いて、5’-Oオリゴヌクレオチドにおける酸不安定な5’ヒドロキシ保護基を除去することを含む、直鎖P結合オリゴヌクレオチドの製造のための方法に関する。
【0033】
プロトン酸は、原則として、酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、またはトリクロロ酢酸から選択される。好ましいプロトン酸はジクロロ酢酸である。
【0034】
典型的な酸不安定な5’ヒドロキシ保護基は、4,4’-ジメトキシトリチル、4-メトキシトリチル、トリチル、9-フェニル-キサンテン-9-イル、9-(p-トリル)-キサンテン-9-イルから、もしくはtert-ブチルジメチルシリルから、好ましくは、4,4’-ジメトキシトリチル、4-メトキシトリチル、もしくはトリチルから、またはより好ましくは4,4’-ジメトキシトリチルから選択され得る。
【0035】
トルエン中のプロトン酸との溶媒混合物中のアセトニトリル濃度は、通常、0.1%(v)~70%(v)、好ましくは10%(v)~25%(v)の範囲である。
【0036】
トルエン中のプロトン酸濃度は、通常、3%(v)~20%(v)、好ましくは7%(v)~17%(v)の範囲で選択される。
【0037】
したがって、好ましい実施形態において、トルエン中のジクロロ酢酸の濃度は、3%(v)~20%(v)、好ましくは7%(v)~17%(v)の範囲で選択される。
【0038】
アセトニトリルをトルエン中のプロトン酸と混合した後の最終的な脱トリチル化溶液の流量は、通常、0.1CV/分~2.0CV/分、好ましくは0.3CV/分~1.7CV/分の範囲である。
【0039】
典型的な例として、トルエン中のプロトン酸溶液は、標準的なオリゴヌクレオチド合成機器を使用して、最終流量、例えば、トルエン中のプロトン酸溶液85%とアセトニトリル15%の比での1.0CV/分の総流量に対するトルエン中のプロトン酸溶液0.85CV/分とアセトニトリル0.15CV/分のそれぞれの比に応じてポンプ速度を設定することによって、アセトニトリルとインラインで混合される。
【0040】
本発明の方法の条件では、8%未満、7.0%未満、6.0%未満、より好ましくは5.0%未満の「脱プリン関連不純物の合計」として表される脱プリンのレベルが達成され得る。
【0041】
さらに、本発明の方法の条件では、3.0%未満、2.5%未満、2.0%未満、より好ましくは1.5%未満の「N-1不純物の合計」として表されるN-1不純物のレベルが達成され得る。
【0042】
このレベルは、粗オリゴヌクレオチド段階で、すなわち、切断および脱保護の後かつ精製または限外濾過などのいずれかの下流処理が適用される前に得られたオリゴヌクレオチドについて達成および測定され得る。
【0043】
いくつかの実施形態において、樹脂結合オリゴヌクレオチド中間体は、脱トリチル化工程の前にアセトニトリルとトルエンとの混合物で洗浄される。
【0044】
他の実施形態において、樹脂結合オリゴヌクレオチド中間体は、脱トリチル化工程の後にアセトニトリルとトルエンとの混合物で洗浄される。
【0045】
好ましい実施形態において、樹脂結合オリゴヌクレオチド中間体は、脱トリチル化工程の前後にアセトニトリルとトルエンとの混合物で洗浄される。
【0046】
洗浄のためのトルエンとの溶媒混合物中のアセトニトリル濃度は、通常、0.1%(v)~70%(v)、好ましくは10%(v)~25%(v)の範囲である。
【0047】
例示として、オリゴヌクレオチドは、以下から選択され得る。
T*T*A*c*A*c*t*t*a*a*t*t*a*t*a*c*t*T*MeC*MeC
式中、*はホスホロチオエート架橋を表し、A、TおよびMeC(5-メチルシトシン)はLNAヌクレオシドモノマーであり、a、t、cはDNAヌクレオシドモノマーである。
【0048】
本明細書に開示される化合物は、以下の核酸塩基配列を有する。
配列番号1:ttacacttaattatacttcc
【実施例】
【0049】
略語:
Ac2O=酢酸無水物
BTT=5-ベンジルチオテトラゾール
Bz=ベンジル
DCA=ジクロロ酢酸
DEA=ジエチルアミン
DNA=2’-デオキシリボヌクレオチド
DMT=4,4’-ジメトキシトリチル
CV=カラム容積
LNA=2’-O-CH2-4’架橋リボヌクレオチド
MeCN=アセトニトリル
NA=該当なし
NMI=N-メチルイミダゾール
PhMe=トルエン
【0050】
実施例1.
T*T*A*c*A*c*t*t*a*a*t*t*a*t*a*c*t*T*MeC*MeCの合成
式中、*はホスホロチオエート架橋を表し、A、TおよびMeC(5-メチルシトシン)はLNAヌクレオシドモノマーであり、a、t、cはDNAヌクレオシドモノマーである。
【0051】
標記化合物を、AKTA Oligopilot 100およびPrimer Support Unylinker(NittoPhase LH Unylinker 330)を使用して、固相上で標準的なホスホラミダイト化学によって2.65mmolのスケールで製造した。
【0052】
【0053】
一般的に、1.5当量のホスホラミダイトを使用した。全ての試薬を市販の供給源から受け取ったまま使用し、適切な濃度の試薬溶液を調製した(以下の詳細を参照)。水酸化アンモニウムを用いて切断および脱保護を行い、粗オリゴヌクレオチドを得た。
標準試薬溶液
【0054】
切断および脱保護工程からの粗溶液を真空中で濃縮して過剰のアンモニアを除去した。濃縮溶液を凍結乾燥させて、粗オリゴヌクレオチドを固体として得た。淡黄色固体をサンプリングし、LC-UV-MS分析に供した。不純物を、割り当てられた構造に従ってグループ分けした。全てのN-1不純物の合計および全ての脱プリン関連不純物の合計をプロセスパラメータの分析に使用した。
【0055】
実施例2
脱トリチル化の例
以下の表に概説されるように、トルエン中のジクロロ酢酸およびアセトニトリルの様々な溶液を使用して、脱トリチル化を行った。トルエン中のジクロロ酢酸とアセトニトリルとを表に示す比でインライン混合することによって、混合物をカラムに送達した。
【0056】
実施例2b)、2c)、2d)、2h)、2i)、2j)および2k)が好ましいとみなされる。実施例2b)および2k)が最も好ましい。
【0057】
実施例2m)~2o)は、比較例である。
【配列表】
【国際調査報告】