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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-09
(54)【発明の名称】セパレータコーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/443 20210101AFI20240202BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20240202BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20240202BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20240202BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20240202BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20240202BHJP
   H01M 50/457 20210101ALI20240202BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20240202BHJP
   H01M 50/42 20210101ALN20240202BHJP
【FI】
H01M50/443 B
H01M50/403 D
H01M50/443 E
H01M50/449
H01M50/446
H01M50/451
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/457
H01M50/489
H01M50/42
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547588
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 KR2022003187
(87)【国際公開番号】W WO2022250256
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0068390
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519103067
【氏名又は名称】ダブル・スコープコリア カンパニー,リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】522268535
【氏名又は名称】ダブル-スコープ チュンジュ プラント カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100189474
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 修
(72)【発明者】
【氏名】キム ビョン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク テ ボグ
(72)【発明者】
【氏名】コン ソク ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ クヮン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョン レ
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB12
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE06
5H021EE15
5H021EE21
5H021EE22
5H021EE23
5H021EE24
5H021EE31
5H021EE32
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH04
(57)【要約】
本発明の一態様は、水溶性高分子および非水溶性高分子を含むセパレータコーティング組成物であって、前記非水溶性高分子が中実粒子および環状中空粒子を含むセパレータコーティング組成物およびこれを含んでなる接着層を含む電極接着性セパレータを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性高分子および非水溶性高分子を含むセパレータコーティング組成物であって、
前記非水溶性高分子は、中実粒子および環状中空粒子を含む、セパレータコーティング組成物。
【請求項2】
前記中実粒子は、コアと、前記コアの表面のうち少なくとも一部を覆うシェルと、を含むコア-シェル構造を有する、請求項1に記載のセパレータコーティング組成物。
【請求項3】
前記中実粒子は、平均粒度が0.3μm以下の第1中実粒子と、平均粒度が0.3μm超の第2中実粒子と、を含む、請求項2に記載のセパレータコーティング組成物。
【請求項4】
前記環状中空粒子は、中央部に貫通孔が形成された環状シェルを含み、
前記環状シェルの内部は、充填材および中空を含む、請求項1に記載のセパレータコーティング組成物。
【請求項5】
前記貫通孔の平均直径は、前記第1中実粒子の平均粒度より大きい、請求項4に記載のセパレータコーティング組成物。
【請求項6】
前記環状シェルの内部における前記充填材の割合は、1~99体積%である、請求項5に記載のセパレータコーティング組成物。
【請求項7】
前記非水溶性高分子中の前記環状中空粒子の含有量は、10~50重量%である、請求項1に記載のセパレータコーティング組成物。
【請求項8】
多孔性ベース膜と、
前記多孔性ベース膜の少なくとも一面に位置し、請求項1から7のいずれか一項に記載のセパレータコーティング組成物からなる接着層と、を含む、セパレータ。
【請求項9】
前記多孔性ベース膜は、多孔性基材と、前記多孔性基材の少なくとも一面に位置し、バインダーにより結合した複数の無機粒子を含む耐熱層と、を含む、請求項8に記載のセパレータ。
【請求項10】
下記(i)~(v)の条件のうち1つ以上を満たす、請求項8に記載のセパレータ。
(i)Fs≦190sec/100ml以下(Fsは前記セパレータの通気度である)、
(ii)Rs≦100mΩ(Rsは前記セパレータの抵抗である)、
(iii)150℃で縦方向熱収縮率2.5%以下、
(iv)0sec/100ml<Fs-Fb≦20sec/100ml(Fbは前記ベース膜の通気度である)、
(v)0mΩ<Rs-Rb≦10mΩ(Rbは前記ベース膜の抵抗である)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータコーティング組成物に関し、より詳細には、セパレータの表面に電極接着性を付与し、かつ通気性が低下するのを効果的に防止できるセパレータコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、スマートフォン、ノートパソコン、タブレットパソコンなど小型化、軽量化が要求される各種電気製品の電源に広く用いられており、スマートグリッド、電気自動車用中大型バッテリーまでその適用分野が拡大するにつれて、容量が大きく、寿命が長く、安定性が高いリチウム二次電池の開発が要求されている。
【0003】
上記目的を達成するための手段として、正極と負極を分離して内部短絡(Internal Short)を防止し、充放電過程でリチウムイオンの移動を円滑にする微細気孔が形成されたセパレータ(Separator)、その中でも熱誘起相分離(Thermally Induced Phase Separation)による気孔の形成に有利であり、経済的であり、セパレータに必要な物性を満足しやすいポリエチレンなどのポリオレフィンを用いた微細多孔性セパレータに関する研究開発が活発である。
【0004】
しかしながら、溶融点が135℃程度と低いポリエチレンを用いたセパレータは、電池の発熱によって溶融点以上の高温で収縮変形が起こることがある。このような変形によって短絡が発生すると、電池の熱暴走現象を起こして、発火などの安全上の問題が発生することがある。
【0005】
なお、従来に広く使用されているポリオレフィン(polyolefin)系のセパレータは、耐熱性と機械的強度が脆く、150℃の温度に1時間程度曝露される際に熱収縮率が50~90%発生し、セパレータの機能を損失し、外部衝撃の際に内部短絡が起こる可能性が高いという問題がある。このような問題を補完するために、セパレータの表面にセラミック粒子を含む耐熱層をコートする技術が提案された。
【0006】
しかしながら、このような耐熱層は、セパレータの性能に大変重要な影響を及ぼす要素である通気性および伝導性(抵抗)と関連して相当な技術的課題を残している。すなわち、多孔性基材の表面にセラミック粒子を含む耐熱層を形成すると、セパレータの耐熱性が向上するが、前記耐熱層に含まれたセラミック粒子が多孔性基材に形成された気孔を閉鎖し、セパレータの通気性が低下し、それによって、正極と負極間のイオン移動通路が大きく減少し、結果として、二次電池の充電性能および放電性能が大きく劣化する問題がある。また、電池の内部で前記耐熱層が電解液に継続的に曝露されるにつれて、セラミック粒子が多孔性基材から部分的、継続的に脱離し、この場合、セパレータの耐熱性も徐々に低下することがある。
【0007】
なお、従来のポリオレフィン系のセパレータまたは耐熱層に電極との接着力の発現のために、PVDF-HFP共重合体などを含む接着層をさらに形成し、電極との接着力およびそれによる二次電池の寿命特性を改善しようとする試みが行われたことがある(特許文献1など)。しかしながら、このようなPVDF系バインダーも、親油性物質であり、一般的に揮発性有機物質を溶媒として使用するので、コーティングおよび乾燥工程中に作業者の健康に悪影響を及ぼす問題がある。
【0008】
これに対して、PVDF系高分子粒子が水中に分散した水系コーティング液を開発、適用したこともあるが、PVDF系高分子粒子は、コーティング液が乾燥した後にも粒子状に存在するので、前記耐熱層のように、前記接着層に含まれたPVDF系高分子粒子が多孔性基材および/または耐熱層に形成された気孔を閉鎖し、セパレータの通気性が低下し、これによって、正極と負極間のイオン移動通路が大きく減少し、その結果として、二次電池の充電および放電性能が大きく低下する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国特許出願第10-2012-0117249号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前述したような従来技術の問題点を解決するためのものであって、本発明の目的は、耐熱性、接着性、通気性、伝導性を均衡的に実現することができる電極接着性セパレータコーティング組成物およびこれを含むセパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、水溶性高分子および非水溶性高分子を含むセパレータコーティング組成物であって、前記非水溶性高分子は、中実粒子および環状中空粒子を含むセパレータコーティング組成物を提供する。
【0012】
一実施形態において、前記中実粒子は、コアと、前記コアの表面のうち少なくとも一部を覆うシェルと、を含むコア-シェル構造を有していてもよい。
【0013】
一実施形態において、前記中実粒子は、平均粒度が0.3μm以下の第1中実粒子と、平均粒度が0.3μm超の第2中実粒子と、を含んでもよい。
【0014】
一実施形態において、前記環状中空粒子は、中央部に貫通孔が形成された環状シェルを含み、前記環状シェルの内部は、充填材および中空を含んでもよい。
【0015】
一実施形態において、前記貫通孔の平均直径は、前記第1中実粒子の平均粒度より大きくてもよい。
【0016】
一実施形態において、前記環状シェルの内部における前記充填材の割合は、1~99体積%であってもよい。
【0017】
一実施形態において、前記非水溶性高分子中の前記環状中空粒子の含有量は、10~50重量%であってもよい。
【0018】
本発明の他の一態様は、多孔性ベース膜と、前記多孔性ベース膜の少なくとも一面に位置し、前記セパレータコーティング組成物からなる接着層と、を含むセパレータを提供する。
【0019】
一実施形態において、前記多孔性ベース膜は、多孔性基材と、前記多孔性基材の少なくとも一面に位置し、バインダーにより結合した複数の無機粒子を含む耐熱層と、を含んでもよい。
【0020】
一実施形態において、前記セパレータは、下記(i)~(v)の条件のうち1つ以上を満たすことができる。
(i)Fs≦190sec/100ml以下(Fsは前記セパレータの通気度である);(ii)Rs≦100mΩ(Rsは前記セパレータの抵抗である);(iii)150℃で縦方向熱収縮率2.5%以下;(iv)0sec/100ml<Fs-Fb≦20sec/100ml(Fbは前記ベース膜の通気度である);(v)0mΩ<Rs-Rb≦10mΩ(Rbは前記ベース膜の抵抗である)。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によるセパレータコーティング組成物は、水溶性高分子および非水溶性高分子を含み、前記非水溶性高分子中の一部を中央部に貫通孔が形成された環状中空粒子で構成することによって、耐熱性、接着性、通気性、伝導性を均衡的に実現することができる。
【0022】
本発明の効果は、上記した効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明または請求範囲に記載された発明の構成から推論可能なすべての効果を含むものと理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の一実施形態によるセパレータコーティング組成物のSEM像である。
図2図2は、本発明の一実施形態による中実粒子の断面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態による環状中空粒子の平面図(図3(a))および断面図(図3(b))である。
図4図4は、本発明の実施例および比較例によるコーティング組成物のSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、添付の図面を参照して本発明を説明することとする。しかしながら、本発明は、様々な異なる形態で実現されることができ、したがって、ここで説明する実施形態に限定されるものではない。そして、図面において、本発明を明確に説明するために、説明と関係ない部分は省略し、明細書全体を通じて類似の部分に対しては類似の参照符号を付けた。
【0025】
明細書全体において、任意の部分が他の部分と「連結」されているというとき、これは、「直接的に連結」されている場合だけでなく、その中間に他の部材を間に置いて「間接的に連結」されている場合も含む。また、任意の部分が或る構成要素を「含む」というとき、これは、特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに具備できることを意味する。
【0026】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明することとする。
【0027】
本発明の一態様は、水溶性高分子および非水溶性高分子を含むセパレータコーティング組成物において、前記非水溶性高分子は、中実粒子および環状中空粒子を含むセパレータコーティング組成物を提供する。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態によるセパレータコーティング組成物のSEM像である。図1を参照すると、前記セパレータコーティング組成物は、水溶性高分子および非水溶性高分子を含み、前記非水溶性高分子は、中実粒子10および環状中空粒子20を含んでもよい。
【0029】
本明細書において使用される「非水溶性高分子」という用語は、水に溶解せず、水中で微細粒子の形態で分散、浮遊する性質を有する高分子を意味し、ラテックス、エマルジョンなどと称される。前記非水溶性高分子は、後述するセパレータの接着層において微細粒子の形態を有していてもよい。
【0030】
一方、本明細書において使用される「水溶性高分子」という用語は、水に溶解し、粒子などで観察されない性質を有する高分子を意味する。前記水溶性高分子は、後述するセパレータの接着層において溶融、融着し、前記非水溶性高分子粒子を相互結合するだけでなく、多孔性ベース膜に前記非水溶性高分子粒子を結合することができる。
【0031】
また、本明細書において使用される「中実粒子(solid particle)」という用語は、粒子の内部が空隙なしに既定の物質で満たされた粒子を意味し、「中空粒子(hollow particle)」は、粒子の内部に既定の体積の空隙が設けられた粒子を意味する。
【0032】
図2は、本発明の一実施形態による中実粒子の断面図である。図2を参照すると、前記中実粒子10は、コア11と、前記コアの表面のうち少なくとも一部、好ましくは、全部を覆うシェル12と、を含むコア-シェル構造を有していてもよい。
【0033】
前記中実粒子のうち前記コア11の高分子を構成する単量体は、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどの塩化ビニル系単量体;酢酸ビニルなどの酢酸ビニル系単量体;スチレン、α-メチルスチレン、スチレンスルホン酸、ブトキシスチレン、ビニルナフタレンなどの芳香族ビニル単量体;ビニルアミンなどのビニルアミン系単量体;N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミドなどのビニルアミド系単量体;カルボン酸基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、リン酸基を有する単量体、水酸基を有する単量体などの酸基含有単量体;メタクリル酸2-ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、2-エチルヘキシルアクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル単量体;アクリルアミド、メタクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの(メタ)アクリロニトリル単量体;2-(ペルフルオロヘキシル)エチルメタクリレート、2-(ペルフルオロブチル)エチルアクリレートなどのフッ素含有(メタ)アクリレート単量体;マレイミド;フェニルマレイミドなどのマレイミド誘導体;1,3-ブタジエン、イソプレンなどのジエン系単量体;およびこれらのうち2以上の組み合わせから成る群から選ばれた1つであってもよく、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル単量体、(メタ)アクリロニトリル単量体であってもよく、さらに好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル単量体であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0034】
また、前記コア11の高分子は、酸基含有単量体を含んでもよい。前記酸基含有単量体は、例えば、カルボン酸基含有単量体、スルホン酸基含有単量体、リン酸基含有単量体、水酸基含有単量体およびこれらのうち2以上の組み合わせから成る群から選ばれた1つであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0035】
前記カルボン酸基含有単量体は、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸などであってもよく、前記モノカルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などであってもよく、前記ジカルボン酸は、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などであってもよい。
【0036】
前記スルホン酸基含有単量体は、例えば、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸-2-スルホン酸エチル、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、3-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸などであってもよい。
【0037】
前記リン酸基含有単量体は、例えば、リン酸-2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸メチル-2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸エチル-(メタ)アクリロイルオキシエチルなどであってもよい。
【0038】
前記水酸基含有単量体は、例えば、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピルなどであってもよい。
【0039】
また、前記コア11の高分子は、架橋性単量体をさらに含んでもよい。前記架橋性単量体は、熱、光などのエネルギーにより重合中または重合後に架橋構造を形成できる単量体である。
【0040】
前記架橋性単量体は、2個以上の重合反応性基を有する多官能単量体であってもよい。前記多官能単量体は、例えば、ジビニルベンゼンなどのジビニル化合物;ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレートなどのジ(メタ)アクリル酸エステル化合物;トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートなどのトリ(メタ)アクリル酸エステル化合物;アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基を含有するエチレン性不飽和単量体;およびこれらのうち2以上の組み合わせから成る群から選ばれた1つであってもよい。
【0041】
前記中実粒子において前記シェル12の高分子を構成する単量体は、前記コア11の高分子を構成する単量体と同じか異なるものであってもよい。使用可能な単量体の種類については、前述した通りであり、好ましくは、芳香族ビニル単量体、さらに好ましくは、スチレンおよびスチレンスルホン酸などのスチレン誘導体であってもよいが、これらに限定されるものではない。必要に応じて、前記シェル12の高分子も、前述した酸基含有単量体、架橋性単量体などをさらに含んでもよい。
【0042】
前記中実粒子は、平均粒度が0.3μm以下、好ましくは、0.1~0.3μmの第1中実粒子、および平均粒度が0.3μm超、好ましくは、0.3μm超0.7μm以下の第2中実粒子を含んでもよい。前記中実粒子は、後述するセパレータの接着層において相互面接したり前記水溶性高分子により結合することができ、前記中実粒子間の間隙により多数の気孔を形成することができる。
【0043】
これらのうち相対的に平均粒度の大きい前記第2中実粒子間の間隙は、大きい気孔を形成し、相対的に平均粒度の小さい前記第1中実粒子間の間隙は、小さい気孔を形成することができる。前記第2中実粒子間の間隙により形成された大きい気孔は、セパレータの通気性、イオン伝導性、抵抗特性に寄与することができるが、接着層の表面積を減少させて、セパレータの接着性を低下させることができ、この際、前記第1中実粒子は、このような接着層の表面積を増加させることによって、前記第2中実粒子により低下した接着性を補完、向上させることができる。
【0044】
前記非水溶性高分子中の前記第1中実粒子の含有量は、20~80重量%、好ましくは、35~70重量%であってもよい。前記第1中実粒子の含有量が20重量%未満であると、接着性が低下することがあり、80重量%を超えると、通気性、イオン伝導性、抵抗特性が低下することがある。
【0045】
前記非水溶性高分子中の前記第2中実粒子の含有量は、10~30重量%、好ましくは、15~25重量%であってもよい。前記第2中実粒子の含有量が10重量%未満であると、通気性、イオン伝導性、抵抗特性が低下することがあり、30重量%を超えると、接着性が低下することがある。
【0046】
コア-シェル構造を有する前記中実粒子は、前記コア11の高分子を構成する単量体と、前記シェル12の高分子を構成する単量体との割合を変化させて、段階的に重合して製造することができる。
【0047】
具体的には、コアの高分子を構成する単量体と乳化剤を混合し、乳化重合することによって、コアを構成する粒子状高分子を得、このような粒子状高分子の存在下でシェルの高分子を構成する単量体を分割して投入したり連続的に投入して重合することによって、コア-シェル構造を有する中実粒子を得ることができる。
【0048】
図3(a)は、本発明の一実施形態による環状中空粒子の平面図であり、図3(b)は、図3(a)のA-A’線に沿う断面図である。図3(a)および図3(b)を参照すると、前記環状中空粒子20は、中央部に貫通孔22が形成された環状シェル21を含み、前記環状シェル21の内部は、充填材23および中空24を含んでもよい。
【0049】
前記環状中空粒子20は、コア-シェル構造を有する前記中実粒子10を製造した後、反応系を減温し、既定の時間で熟成して、前記中実粒子の前記コアを肥大化する過程で生成されたものと分析される。具体的には、前記シェルを重合するための反応系の温度に比べて10℃以上減温された条件下で前記中実粒子を3時間以上、好ましくは、5~30時間、さらに好ましくは、10~24時間熟成する場合、肥大化した前記コアの膨張臨界を超えて、前記コアおよび/または前記シェルが破裂することができ、このような破裂によって中央部に貫通孔22が形成された前記環状中空粒子20を生成することができる。
【0050】
このように、前記環状中空粒子20は、コア-シェル構造を有する前記中実粒子10に由来するものであるから、前記環状シェル21およびその内部に含まれた前記充填材23を構成する高分子は、それぞれ、前記中実粒子10の前記シェル12および前記コア11を構成する高分子と同じであってもよく、それぞれの高分子を構成する単量体の種類などについては前述した通りである。
【0051】
前記貫通孔22は、前記非水溶性高分子粒子間の間隙により形成された多数の気孔と共にイオンおよび/または流体が後述するセパレータの接着層を通過できる経路を提供するので、従来多孔性ベース膜の一面に1つ以上の機能層(耐熱層、接着層など)が追加されることによって、前記セパレータの通気性、イオン伝導性、抵抗特性が低下する問題を緩和することができる。
【0052】
前記環状中空粒子20の中央部に形成された前記貫通孔22の平均直径は、前記第1中実粒子の平均粒度より大きくてもよい。前記貫通孔22の平均直径が前記第1中実粒子の平均粒度と同じか小さい場合、前記第1中実粒子が前記貫通孔22を任意に閉鎖し、セパレータの通気性、イオン伝導性、抵抗特性が低下することがある。
【0053】
前記環状シェル21の内部における前記充填材23の割合は、1~99体積%であってもよい。前記充填材23の割合が1体積%未満であると、前記環状中空粒子20が容易に変形または破壊することができ、99体積%を超えると、電解液への曝露時に前記充填材23のさらなる膨張によって前記環状中空粒子の形態を安定的に維持することができない。
【0054】
前記非水溶性高分子中の前記環状中空粒子の含有量は、10~50重量%、好ましくは、20~50重量%、さらに好ましくは、35~50重量%であってもよい。前記非水溶性高分子中の前記環状中空粒子の含有量が10重量%未満であると、接着層を含むセパレータの通気性、イオン伝導性、抵抗特性が低下することがあり、50重量%を超えると、耐熱性が低下することがある。
【0055】
本発明の他の一態様は、多孔性ベース膜と、前記多孔性ベース膜の少なくとも一面に位置し、前記セパレータコーティング組成物からなる接着層と、を含むセパレータを提供する。
【0056】
前記多孔性ベース膜は、熱可塑性樹脂を成形、加工してなる多孔性フィルムであってもよい。前記多孔性フィルムは、平均サイズが実質的に均一な多数の気孔を含んでもよいし、このような気孔は、セパレータの抵抗特性およびイオン伝導性の改善に寄与することができる。また、気孔度が高いながらも、機械的強度が高いため、必要な厚さで前記セパレータを薄膜化することができる。
【0057】
前記多孔性フィルムの気孔率は、30~90体積%、好ましくは、40~80体積%、さらに好ましくは、40~70体積%であってもよい。本明細書において使用される「気孔率」という用語は、任意の多孔性物品において全体積に対して気孔が占める体積の割合を意味する。前記多孔性フィルムの気孔率が30体積%未満であると、通気性、イオン伝導性が低下することがあり、90体積%を超えると、引張強度、穿孔強度のような機械的物性が低下することがある。
【0058】
前記多孔性フィルムに含まれた気孔の平均サイズは、10~100nm、好ましくは、20~80nm、さらに好ましくは、30~60nmであってもよい。前記気孔の平均サイズが10nm未満であると、通気性、イオン伝導性が低下することがあり、100nmを超えると、引張強度、穿孔強度のような機械的物性が低下することがある。
【0059】
前記多孔性フィルムの厚さは、電気化学素子の薄膜化および高エネルギー密度化の観点から、5~20μm、好ましくは、5~15μm、さらに好ましくは、5~12μmであってもよい。前記多孔性フィルムの厚さが5μm未満であると、機械的物性が低下することがあり、20μmを超えると、通気性、イオン伝導性が低下することがある。
【0060】
前記多孔性フィルムは、電気絶縁性を有する高分子樹脂を含んでもよいし、前記高分子樹脂は、シャットダウン特性を考慮して熱可塑性樹脂を含んでもよい。本明細書において使用される「シャットダウン特性」という用語は、電池が過熱し、温度が高くなった場合、高分子樹脂が溶けて多孔性フィルムの気孔を閉鎖することによって、イオンの移動を遮断することを意味する。このような観点から、前記高分子樹脂または前記熱可塑性樹脂の融点は、200℃以下であってもよい。
【0061】
前記熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、エチレンビニルアセテート、エチレンブチルアクリレート、エチレンエチルアクリレートおよびこれらのうち2以上の組み合わせまたは共重合体から成る群から選ばれた1つを含んでもよいし、好ましくは、ポリエチレンおよびポリプロピレンのうち少なくとも1つを含んでもよいし、さらに好ましくは、ポリエチレンを含んでもよい。
【0062】
前記ポリエチレンは、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE,Mw:1,000,000~7,000,000g/mol)、高分子量ポリエチレン(HMWPE,Mw:100,000~1,000,000g/mol)、高密度ポリエチレン(HDPE,Mw:100,000~1,000,000g/mol)、低密度ポリエチレン(LDPE,Mw:10,000~100,000g/mol)、均質直鎖状および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)およびこれらのうち2以上の組み合わせから成る群から選ばれた1つであってもよい。
【0063】
例えば、前記ポリエチレンは、重量平均分子量Mが250,000~450,000の高密度ポリエチレンであってもよい。前記ポリエチレンの重量平均分子量が450,000を超えると、粘度が高くなり、加工性が低下することがあり、250,000未満であると、粘度が過度に低くなり、多孔性フィルムを製造するときに使用される気孔形成剤、酸化防止剤などとの分散性が極度に低下し、場合によって、相分離または層分離が発生することがある。
【0064】
また、前記多孔性ベース膜は、前記多孔性フィルムを基材とし、かつ、前記基材の少なくとも一面に位置し、バインダーにより結合した複数の無機粒子を含む耐熱層をさらに含んでもよい。前記耐熱層は、隣接する前記無機粒子間の間隙により形成された多数の気孔を含んでもよいし、このような気孔の平均サイズは、実質的に均一であってもよい。
【0065】
前記耐熱層中の前記無機粒子の含有量は、60~99重量%であってもよい。前記無機粒子の含有量が60重量%未満であると、必要なレベルの耐熱性を付与することができず、99重量%を超えると、セパレータの通気性、イオン伝導性、抵抗特性が低下することがあり、無機粒子の分散性が低下したり、スラリーコーティング時に作業性や加工性が低下することがある。
【0066】
前記無機粒子の平均粒度は、前記多孔性フィルムに含まれた気孔の平均サイズより大きくてもよい。前記無機粒子の平均粒度は、前記多孔性フィルムに含まれた気孔の平均サイズ以下なら、前記無機粒子が前記多孔性フィルムの気孔の内部に浸透して前記気孔を閉鎖することによって、セパレータの通気性およびイオン伝導性を顕著に低下させることができる。前記無機粒子の平均粒度は、100~1,000nm、好ましくは、200~800nm、さらに好ましくは、400~800nmであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0067】
前記耐熱層の厚さは、0.1~5μmであってもよい。前記耐熱層の厚さが0.1μm未満であると、必要なレベルの耐熱性を付与することができず、5μmを超えると、セパレータが厚膜化し、電気化学素子の小型化や集積化を阻害することができる。
【0068】
前記無機粒子は、例えば、SiO、AlO(OH)、Mg(OH)、Al(OH)、TiO、BaTiO、LiO、LiF、LiOH、LiN、BaO、NaO、LiCO、CaCO、LiAlO、Al、SiO、SnO、SnO、PbO、ZnO、P、CuO、MoO、V、B、Si、CeO、Mn、Sn、Sn、SnBPOおよびこれらのうち2以上の組み合わせから成る群から選ばれた1つであってもよく、好ましくは、AlO(OH)であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0069】
前記バインダーは、前記耐熱層において溶融、融着し、前記無機粒子を相互結合するだけでなく、前記多孔性基材に前記無機粒子を結合することができる。前記バインダーは、水溶性高分子であってもよい。前記水溶性高分子は、例えば、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、ポリイミド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコールおよびこれらのうち2以上の組み合わせから成る群から選ばれた1つであってもよく、好ましくは、ポリビニルアルコールであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0070】
前記多孔性ベース膜の少なくとも一面は、前記セパレータコーティング組成物からなる接着層を具備してもよい。前記接着層は、前記セパレータと電極間の結合力を向上させて、電池の電気化学的特性および寿命特性を改善するのに寄与することができる。
【0071】
前記接着層は、前記水溶性高分子および前記非水溶性高分子を含むセパレータコーティング組成物からなってもよく、具体的には、粒子形態を有する前記非水溶性高分子が前記水溶性高分子により結合した構造を有していてもよい。前記接着層において前記水溶性高分子および前記非水溶性高分子は、互いに均一に分散していてもよい。
【0072】
前記接着層は、隣接する前記非水溶性高分子粒子、すなわち、有機粒子間の間隙により形成された多数の気孔を含んでもよいし、このような気孔の平均サイズは、実質的に均一であってもよい。また、前記非水溶性高分子中の一部は、中央部に貫通孔が形成された環状中空粒子で構成され、前記貫通孔は、前記有機粒子間の間隙により形成された多数の気孔と共にイオンおよび/または流体が前記接着層を通過できる経路を提供するので、従来前記多孔性ベース膜の一面に1つ以上の機能層(耐熱層、接着層など)が追加されることによって、前記セパレータの通気性、イオン伝導性、抵抗特性が低下する問題を緩和することができる。
【0073】
前記接着層中の前記有機粒子の含有量は、50~99重量%であってもよい。前記有機粒子の含有量が50重量%未満であると、必要なレベルの接着性を付与することができず、99重量%を超えると、セパレータの通気性およびイオン伝導性が低下することがあり、有機粒子の分散性が低下したり、コーティング時に作業性や加工性が低下することがある。
【0074】
前記接着層が前記耐熱層の表面に位置する場合、前記有機粒子の平均粒度は、前記耐熱層に含まれた前記無機粒子の平均粒度より小さくてもよい。前記有機粒子の平均粒度が前記無機粒子の平均粒度以上であると、前記接着層の平均気孔サイズが前記無機粒子の平均粒度より大きくなり得、この場合、電池の内部で前記耐熱層が電解液に継続的に曝露されるにつれて、前記無機粒子が前記多孔性基材から部分的、継続的に脱離し、セパレータの耐熱性が徐々に低下することがある。
【0075】
前記接着層の厚さは、0.5~1.5μmであってもよい。前記接着層の厚さが0.5μm未満であると、接着性が低下することがあり、前記耐熱層に含まれた前記無機粒子が電解液に曝露されるのを効果的に防止することができない。反対に、前記接着層の厚さが1.5μmを超えると、通気性、イオン伝導性、抵抗特性が低下することがあり、セパレータが厚膜化し、電気化学素子の小型化や集積化を阻害することができる。
【0076】
必要に応じて、前記セパレータの耐熱性を強化するために、前記接着層は、前記耐熱層のような無機粒子をさらに含んでもよい。前記接着層において前記有機粒子および前記無機粒子の重量比は、それぞれ、1:50~80であってもよい。前記無機粒子の含有量が低すぎる場合、必要なレベルの耐熱性を付与することができず、高すぎる場合、無機粒子の分散性が低下したり、コーティング時に作業性や加工性が低下することがある。
【0077】
前記水溶性高分子は、前記接着層において溶融、融着し、前記有機粒子を相互結合したり、前記接着層が一定量の無機粒子を含む場合、前記無機粒子を相互結合したり、前記有機および無機粒子を相互結合するだけでなく、前記耐熱層に前記有機粒子および/または前記無機粒子を結合することができる。使用可能な前記水溶性高分子の種類は、前記耐熱層の前記バインダーについて前述した通りである。
【0078】
前記耐熱層の厚さに対する前記接着層の厚さの比は、0.15~0.5であってもよい。前記耐熱層の厚さに対する前記接着層の厚さの比が前記範囲から外れる場合、セパレータの耐熱性、接着性、通気性、イオン伝導性、抵抗特性を均衡的に実現しにくい。具体的には、前記耐熱層の厚さに対する前記接着層の厚さの比が0.15未満であると、通気性および抵抗特性が改善され、耐熱性および接着性が低下することがある。一方、前記厚さの比が0.5を超えると、通気性および抵抗特性が低下し、耐熱性および接着性が改善される得る。
【0079】
一般的に、前記多孔性フィルムの表面にコーティングされた耐熱層および/または接着層の厚さおよび/または面密度(重量/単位面積)が増加する場合、耐熱性および接着性が改善されるのに対し、通気性および抵抗特性が悪化する傾向にある。すなわち、「耐熱性および接着性」と「通気性および抵抗特性」とは、相互両立しにくい、いわゆる、トレードオフ(trade-off)関係にある。
【0080】
これに対して、本発明によるセパレータは、前記接着層に含まれた前記有機粒子、すなわち、前記非水溶性高分子中の一部を中央部に貫通孔が形成された環状中空粒子で構成することによって、耐熱性、接着性、通気性、イオン伝導性を均衡的に実現することができる。具体的には、前記貫通孔は、前記有機粒子間の間隙により形成された多数の気孔と共にイオンおよび/または流体が前記接着層を通過できる経路を提供するので、従来前記多孔性ベース膜の一面に1つ以上の機能層(耐熱層、接着層など)が追加されることによって、前記セパレータの通気性、イオン伝導度、抵抗特性が低下する問題を緩和することができる。
【0081】
なお、前記多孔性フィルムは、親水化処理し、前記耐熱層および/または前記接着層を形成するための水系スラリーのコーティング時にスラリーの濡れ性を十分に確保することができ、これによって、前記多孔性フィルムと前記耐熱層および/または前記接着層の結合力を向上させることができる。親水化した前記多孔性フィルムの水分(HO)に対する接触角は、15゜以下であってもよく、前記多孔性フィルムの表面で負の値(-)で測定されたゼータ電位の絶対値は、10mV以上、好ましくは、15mV以上、さらに好ましくは、20mV以上であってもよい。
【0082】
親水化した前記多孔性フィルムは、当該表面と内部気孔の表面に生成された親水性官能基、例えば、-SO基が親水性を有するので、本質的に親水性の前記スラリーとの高い親和度(affinity)によって前記耐熱層および/または前記接着層と容易に結合することができ、結合力をも強化することができるので、前記セパレータの耐久性が顕著に向上することができ、前記多孔性フィルムに含まれた親水性基および/または前記耐熱層の無機粒子、前記接着層の有機粒子が損失するのを防止することができるので、通気性、イオン伝導性、耐熱性、接着性を改善することができる。
【0083】
前記セパレータは、下記(i)~(v)の条件のうち1つ以上、好ましくは、(i)~(v)の条件を全部満たすことができる。(i)Fs≦190sec/100ml(Fsは前記セパレータの通気度である)、(ii)Rs≦100mΩ(Rsは前記セパレータの抵抗である)、(iii)150℃で縦方向熱収縮率2.5%以下、(iv)0sec/100ml<Fs-Fb≦20sec/100ml(Fbは前記ベース膜の通気度である)、(v)0mΩ<Rs-Rb≦10mΩ(Rbは前記ベース膜の抵抗である)。
【0084】
前記セパレータの通気度Fsは、190sec/100ml以下、好ましくは、150~185sec/100ml、さらに好ましくは、160~180sec/100mlであってもよい。前記セパレータの抵抗Rsは、100mΩ以下、好ましくは、95mΩ以下、さらに好ましくは、80~92mΩであってもよい。前記セパレータの150℃で縦方向(MD)熱収縮率は、2.5%以下、好ましくは、2.2%以下であってもよい。前記セパレータの通気度Fsと前記ベース膜の通気度Fbとの差Fs-Fbは、0~20sec/100ml、好ましくは、0~15sec/100ml、さらに好ましくは、1~10sec/100mlであってもよい。前記セパレータの抵抗Rsと前記ベース膜の抵抗Rbとの差Rs-Rbは、0~10mΩ、好ましくは、0~7mΩ、さらに好ましくは、0~4mΩであってもよい。
【0085】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
【0086】
製造例1
撹拌機装着5MPa耐圧容器に、中実粒子のコアを形成するための(メタ)アクリル酸エステル単量体としてメタクリル酸メチル75重量部、(メタ)アクリル酸単量体としてメタクリル酸4重量部、架橋性単量体としてエチレングリコールジメタクリレート(EDMA)1重量部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1重量部、イオン交換水150重量部、および重合開始剤として過硫酸カリウム0.5重量部を添加し、十分に撹拌した後、60℃に昇温して、重合を開始した。
【0087】
重合転化率が96%である時点に、中実粒子のシェルを形成するための芳香族ビニル単量体としてスチレン19重量部、酸基含有単量体としてメタクリル酸1重量部を連続添加し、70℃に昇温し、重合を継続した。
【0088】
添加した全単量体の重合転化率が96%である時点に、60℃に冷却し、24時間熟成することによって、合成された中実粒子の平均粒度を増加させ、かつ、前記中実粒子の一部が環状中空粒子に変換された水分散液を得た。前記水分散液にポリビニルアルコールを加え、固形分含有量が5重量%となるように、水で希釈し、コーティング組成物を製造した。前記固形分中のポリビニルアルコールの含有量は、5重量%である。
【0089】
製造例2
添加した全単量体の重合転化率が96%である時点に、60℃に冷却し、20時間熟成することによって、合成された中実粒子の平均粒度を増加させ、かつ、前記中実粒子の一部が環状中空粒子に変換された水分散液を得たことを除いて、前記製造例1と同じ方法でコーティング組成物を製造した。
【0090】
製造例3
添加した全単量体の重合転化率が96%である時点に、60℃に冷却し、16時間熟成することによって、合成された中実粒子の平均粒度を増加させ、かつ、前記中実粒子の一部が環状中空粒子に変換された水分散液を得たことを除いて、前記製造例1と同じ方法でコーティング組成物を製造した。
【0091】
製造例4
添加した全単量体の重合転化率が96%である時点に、60℃に冷却し、14時間熟成することによって、合成された中実粒子の平均粒度を増加させ、かつ、前記中実粒子の一部が環状中空粒子に変換された水分散液を得たことを除いて、前記製造例1と同じ方法でコーティング組成物を製造した。
【0092】
製造例5
添加した全単量体の重合転化率が96%である時点に、60℃に冷却し、8時間熟成することによって、合成された中実粒子の平均粒度を増加させ、かつ、前記中実粒子の一部が環状中空粒子に変換された水分散液を得たことを除いて、前記製造例1と同じ方法でコーティング組成物を製造した。
【0093】
比較製造例1
撹拌機装着5MPa耐圧容器に、中実粒子のコアを形成するための(メタ)アクリル酸エステル単量体としてメタクリル酸メチル75重量部、(メタ)アクリル酸単量体としてメタクリル酸4重量部、架橋性単量体としてエチレングリコールジメタクリレート(EDMA)1重量部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1重量部、イオン交換水150重量部、および重合開始剤として過硫酸カリウム0.5重量部を添加し、十分に撹拌した後、60℃に昇温し、重合を開始した。
【0094】
重合転化率が96%である時点に、中実粒子のシェルを形成するための芳香族ビニル単量体としてスチレン19重量部、酸基含有単量体としてメタクリル酸1重量部を連続添加し、70℃に昇温し、重合を継続した。添加した全単量体の重合転化率が96%である時点に、反応を停止し、中実粒子を含む水分散液を得、前記水分散液の固形分含有量が5重量%となるように、水で希釈し、かつ、微量の界面活性剤を加えて、コーティング組成物を製造した。
【0095】
比較製造例2
添加した全単量体の重合転化率が96%である時点に、60℃に冷却し、5時間熟成することによって、合成された中実粒子の平均粒度を増加させ、かつ、前記中実粒子の一部が環状中空粒子に変換された水分散液を得たことを除いて、前記製造例1と同じ方法でコーティング組成物を製造した。
【0096】
比較製造例3
添加した全単量体の重合転化率が96%である時点に、60℃に冷却し、30時間熟成することによって、合成された中実粒子の平均粒度を増加させ、かつ、前記中実粒子の一部が環状中空粒子に変換された水分散液を得たことを除いて、前記製造例1と同じ方法でコーティング組成物を製造した。
【0097】
実験例1
前記製造例および比較製造例において得たそれぞれの水分散液において中実粒子および環状中空粒子の組成を分析し、下記の表1に示した。前記中実粒子の場合、平均粒度が0.3μm以下のものを第1中実粒子、0.3μm超のものを第2中実粒子に分類し、それぞれの組成を分析した。
【0098】
【表1】
【0099】
図4は、製造例および比較製造例による水分散液のSEM像である。図4を参照すると、製造例3および製造例5による水分散液において中実粒子および環状中空粒子が全部観察されたのに対し、比較製造例1による水分散液では、製造例3および製造例5で観察された環状中空粒子が観察されなかった。
【0100】
実施例1
平均粒度が500nmのベーマイト(AlOOH)95重量%、アクリロニトリル共重合体3重量%、ポリビニルアルコール2重量%を含む固形分および蒸留水をそれぞれ20:80の重量比で混合し、均一に分散して、セラミックスラリーを製造した。
【0101】
前記セラミックスラリーを厚さ9μmのポリエチレン多孔性基材(通気度:110sec/100ml)の一面に厚さ3μmでバーコーティングした後、乾燥して、耐熱層を含むベース膜を得た。
【0102】
前記製造例1において得たコーティング組成物を前記耐熱層に厚さ0.5μmでバーコーティングした後、乾燥して、多孔性基材/耐熱層/接着層を順次に含むセパレータを得た。
【0103】
実施例2
前記製造例2において得たコーティング組成物を前記耐熱層に厚さ0.5μmでバーコーティングした後、乾燥したことを除いて、前記実施例1と同じ方法で多孔性基材/耐熱層/接着層を順次に含むセパレータを得た。
【0104】
実施例3
前記製造例3において得たコーティング組成物を前記耐熱層に厚さ0.5μmでバーコーティングした後、乾燥したことを除いて、前記実施例1と同じ方法で多孔性基材/耐熱層/接着層を順次に含むセパレータを得た。
【0105】
実施例4
前記製造例4において得たコーティング組成物を前記耐熱層に厚さ0.5μmでバーコーティングした後、乾燥したことを除いて、前記実施例1と同じ方法で多孔性基材/耐熱層/接着層を順次に含むセパレータを得た。
【0106】
実施例5
前記製造例5において得たコーティング組成物を前記耐熱層に厚さ0.5μmでバーコーティングした後、乾燥したことを除いて、前記実施例1と同じ方法で多孔性基材/耐熱層/接着層を順次に含むセパレータを得た。
【0107】
比較例1
前記比較製造例1において得たコーティング組成物を前記耐熱層に厚さ0.5μmでバーコーティングした後、乾燥したことを除いて、前記実施例1と同じ方法で多孔性基材/耐熱層/接着層を順次に含むセパレータを得た。
【0108】
比較例2
前記比較製造例2において得たコーティング組成物を前記耐熱層に厚さ0.5μmでバーコーティングした後、乾燥したことを除いて、前記実施例1と同じ方法で多孔性基材/耐熱層/接着層を順次に含むセパレータを得た。
【0109】
比較例3
前記比較製造例3において得たコーティング組成物を前記耐熱層に厚さ0.5μmでバーコーティングした後、乾燥したことを除いて、前記実施例1と同じ方法で多孔性基材/耐熱層/接着層を順次に含むセパレータを得た。
【0110】
実験例2
本発明において測定した物性それぞれに対する試験方法は、下記の通りである。温度に関する別途の言及がない場合、常温(25℃)で測定した。
【0111】
前記実施例および比較例によって製造されたベース膜およびセパレータ試験片の物性を測定し、その結果を下記表2および表3に示した。
-通気度(Gurley、sec/100ml):旭精工社のガーレー式デンソメーター(Densometer)EGO2-5モデルを用いて測定圧力0.025MPaで100mlの空気が直径29.8mmのベース膜およびセパレータ試験片を通過する時間を測定した。
-抵抗(mΩ):エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートおよびプロピルプロピオネートが25:10:65の割合(体積比)で混合した溶媒にLiPFを1モル濃度で溶解して、電解液を準備した。各セパレータを前記電解液に含浸した後、コインセルを製作し、EIS(Electrochemical impedance spectroscopy)装備を用いて抵抗を測定した。
-熱収縮率(%):150℃のオーブンで1時間サイズが200×200mmのセパレータ試験片をA4用紙の間に入れて放置した後、常温冷却して、試験片の縦方向(MD)の収縮した長さを測定し、下記式によって熱収縮率を計算した。
熱収縮率(%)=(l-l)/l×100
(上記式中、lは、収縮前の試験片の縦方向長さであり、lは、収縮後の試験片の縦方向長さである。)
【0112】
【表2】
【0113】
【表3】
【0114】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で容易に変形が可能であることが理解できる。したがって、以上で記述した実施形態および実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解すべきである。例えば、単一型と説明されている各構成要素は、分散して実施されることもでき、同様に、分散したものと説明されている構成要素も、結合した形態で実施されることができる。
【0115】
本発明の範囲は、後述する請求範囲によって示され、請求範囲の意味および範囲そしてその均等概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれると解釈すべきである。
【符号の説明】
【0116】
10 中実粒子
11 コア
12 シェル
20 環状中空粒子
21 環状シェル
22 貫通孔
23 充填材
24 中空
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】