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特表2024-506165化学的およびトポグラフィー的にパターン化された基板を用いた整列度の高いカーボンナノチューブ膜の選択領域堆積
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-09
(54)【発明の名称】化学的およびトポグラフィー的にパターン化された基板を用いた整列度の高いカーボンナノチューブ膜の選択領域堆積
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20240202BHJP
   C01B 32/174 20170101ALI20240202BHJP
【FI】
H01L21/205
C01B32/174
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547607
(86)(22)【出願日】2022-02-03
(85)【翻訳文提出日】2023-09-20
(86)【国際出願番号】 US2022015018
(87)【国際公開番号】W WO2022169924
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】63/147,043
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506097988
【氏名又は名称】ウィスコンシン アルムニ リサーチ ファンデイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】パドマ ゴパラン
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン エイチ.ダウヤー
(72)【発明者】
【氏名】キャサリン ジンキンス
(72)【発明者】
【氏名】マイケル スコット アーノルド
【テーマコード(参考)】
4G146
5F045
【Fターム(参考)】
4G146AA12
4G146AB06
4G146AC01A
4G146AC01B
4G146AD30
4G146CB10
4G146CB19
4G146CB35
5F045AA03
5F045AB07
5F045AC07
5F045AF02
5F045AF03
5F045AF07
5F045AF11
5F045CA05
5F045DA61
5F045DA70
5F045HA01
(57)【要約】
整列したカーボンナノチューブの膜を形成するための方法が提供されている。同様に提供されているのは、該方法により形成された膜、および活性層として該膜を組み込んだ電子デバイスである。膜は、化学的かつトポグラフィー的にパターン化された基板表面全体にわたりカーボンナノチューブの懸濁液を流動させることによって形成される。該方法は、大きい表面積全体にわたって、高密度に充填され整列させられたカーボンナノチューブの膜を形成させる、高速かつスケーラブルな手段を提供する。
【選択図】図4C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレンチ内に整列したカーボンナノチューブの膜を形成する方法であって、前記トレンチが、
トレンチ床、第1のトレンチ側壁を提供する第1の側壁メサ、前記第1のトレンチ側壁の反対側に配置された第2のトレンチ側壁を提供する第2の側壁メサ、および前記第1の側壁メサの少なくとも一部分および前記第2の側壁メサの少なくとも一部分を機能化する有機化学基、
によって画定されており、
前記方法が、
前記トレンチを通ってカーボンナノチューブの懸濁液を流動させるステップであって、前記流動する懸濁液中のカーボンナノチューブが前記トレンチ床上に堆積して、整列したカーボンナノチューブの膜を形成するステップ、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の側壁メサの頂部表面および前記第2の側壁メサの頂部表面のみが、前記有機化学基によって機能化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記トレンチ床に隣接する前記第1のトレンチ側壁の少なくとも一部分が、前記有機化学基により機能化されず、前記トレンチ床に隣接する前記第2のトレンチ側壁の少なくとも一部分が、前記有機化学基により機能化されていない、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記有機化学基により機能化されていない前記第1および第2のトレンチ側壁の前記部分が、第1の材料を含み、前記有機化学基により機能化されている前記第1および第2のトレンチ側壁の前記部分が、第2の材料を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の材料および前記第2の材料が、2種の異なる金属である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の材料がクロムまたは銅であり、前記第2の材料が金である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記有機化学基がアルキル基を含み、前記第1および第2の側壁メサ上で自己組織化単分子層を形成する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記トレンチ床が親水性であり、前記有機化学基が疎水性である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記疎水性トレンチ床が二酸化シリコンを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記カーボンナノチューブが、有機材料でコーティングされた単一壁カーボンナノチューブである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記有機化学基がアルキル基を含み、前記第1および第2の側壁メサ上で自己組織化単分子層を形成する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の側壁メサおよび前記第2の側壁メサが、金属メサである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の側壁メサおよび前記第2の側壁メサが両方共、前記トレンチ床に隣接する第1の金属の層と、前記第1の金属の前記層全体にわたって配置された第2の金属の層と、を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の金属がクロムまたは銅であり、前記第2の金属が金である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記トレンチ床が二酸化シリコンを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記カーボンナノチューブが、有機材料でコーティングされた単一壁カーボンナノチューブである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記トレンチが、前記懸濁液中の前記カーボンナノチューブの平均長より小さい幅を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記カーボンナノチューブが、100nm~1000nmの範囲内の平均長を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記カーボンナノチューブが1nm~2nmの範囲内の平均直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記第1および第2の側壁メサを除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、全内容が参照により本明細書に組込まれている2021年2月8日出願の米国仮特許出願第63/147,043号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
政府の権利に対する言及
本発明は、米国科学財団により付与された1727523号の政府支援を得てなされたものである。政府は、本特許に対して一定の権利を留保する。
【背景技術】
【0003】
半導体単一壁カーボンナノチューブ(s-CNT)は、弾道輸送、優れた電荷移動度および高い熱伝導率などのそれらの傑出した特性に起因して、次世代電界効果トランジスタ(FET)のための優れた候補である。しかしながら、今日まで、s-CNT系FETの大部分は、2つの主要な要因に起因して、従来のSiおよびGaAs系FETと比較して見劣りするものであった。これらの要因のうちの1つは、電子的に不均一なCNT混合物から99.99%超の半導体CNTを達成する必要性にある。この材料加工上の課題は、水性および有機の両方の溶媒中で多くの選別剤を通して、大幅に克服されてきた。第2の問題は、単一のs-CNTデバイスをs-CNTアレイデバイスへとスケーリングすることの難しさに関係する。理想的なs-CNTアレイには、s-CNTを密に整列させ、それらの重複を防止し互いに平行な整列を達成しながら、小さいピッチおよび高い密度で堆積を空間的に制御することが求められる。
【0004】
整列したs-CNTアレイを得るためには、典型的には2つの主要な経路が利用される:すなわち、(1)化学蒸着(CVD)を通したs-CNTアレイの直接的成長;および(2)溶液からのs-CNTの堆積である。CVD成長は、整列したs-CNTアレイを製造するために触媒基板上のCNT成長前駆体を使用する。CVD法の利点には、アレイ状の高度のs-CNT整列度、ならびに、局所的s-CNT成長のために触媒材料をパターン化するのが容易であること、が含まれる。高密度は達成されている。しかしながら、CVD成長方法の主要な欠点は、s-CNTおよび金属CNT(m-CNT)の両方の同時成長、ひいては、電流オン/オフ比の低下にある。CVDを用いてs-CNTを選択的に合成し、m-CNTを合成後に除去する上で進歩が見られてきたものの、純度レベルは、高性能s-CNT系デバイスに求められるものに近づいていない。さらに、大部分のCVD CNT成長メカニズムには、サファイアおよび石英などの特定の基板が求められる。したがって、Siウェハーのような従来の金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)基板上にCVD成長s-CNTを堆積させるために、追加のCNTアレイ移転ステップが必要である。
【0005】
CVD成長メカニズムとは対照的に、高いs-CNT純度は、溶液中にs-CNTを分散させて「インク」を創出することによって達成可能である。s-CNTを個別化し脱凝集する目的でCNT間π-π相互作用を克服するためには、分散剤が典型的に必要である。CNTと非共有的に相互作用する芳香族共役ポリマーなどの分散剤は同様に、CNT煤煙を高純度のエレクトロニクスグレードのs-CNTインクへと選別することができる。これらのインクから、Langmuir-Blodgett/Schaefer、真空濾過、電場、せん断、蒸発、3次元(3D)印刷、および液体/液体界面を含めたさまざまな方法を通して、基板上のs-CNTの整列が達成されてきた。これらの研究は、ウェハースケールでの連続的に整列したs-CNTの製造において進歩を見たものの、選択領域堆積ならびにスケーラブルな形でのそれらのピッチの制御は、なおも未解決のままである。
【0006】
現在の選択領域CNT堆積方法には、基板との共有結合、ポリマー包囲体と基板との間の調整された静電気相互作用、およびDNA系ナノトレンチガイドの使用が含まれる。しかしながら、電子的特性を損なうことなく、ウェハースケールで基板の選択領域内の完璧に整列した高密度のCNTを同時に達成することは、未解決課題である。
【0007】
本発明の例示的実施形態について、以下で、添付図面を参照して説明するが、図面中、類似の番号は類似の要素を示している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A図1A~1Cは、(図1A)メチル基がオクタデシルトリクロロシラン(OTS)グラフト化自己組織化単分子層(SAM)を表わしている化学パターン、(図1B)メチル基が1-オクタデカンチオール(OTh)グラフト化SAM)を表わしている、メサおよびトレンチ側壁の両方の上のSAM機能化を伴うトポグラフィー的パターン、および(図1C)OThグラフト化SAMによるメサの機能化を伴う、トポグラフィー的パターンを使用したs-CNTアレイ製造についての概略図を示す。「w」のラベル付きの白線は、(図1A)SiOストライプの幅および(図1B、1C)トレンチの幅を表わしている。
図1B図1A~1Cは、(図1A)メチル基がオクタデシルトリクロロシラン(OTS)グラフト化自己組織化単分子層(SAM)を表わしている化学パターン、(図1B)メチル基が1-オクタデカンチオール(OTh)グラフト化SAM)を表わしている、メサおよびトレンチ側壁の両方の上のSAM機能化を伴うトポグラフィー的パターン、および(図1C)OThグラフト化SAMによるメサの機能化を伴う、トポグラフィー的パターンを使用したs-CNTアレイ製造についての概略図を示す。「w」のラベル付きの白線は、(図1A)SiOストライプの幅および(図1B、1C)トレンチの幅を表わしている。
図1C図1A~1Cは、(図1A)メチル基がオクタデシルトリクロロシラン(OTS)グラフト化自己組織化単分子層(SAM)を表わしている化学パターン、(図1B)メチル基が1-オクタデカンチオール(OTh)グラフト化SAM)を表わしている、メサおよびトレンチ側壁の両方の上のSAM機能化を伴うトポグラフィー的パターン、および(図1C)OThグラフト化SAMによるメサの機能化を伴う、トポグラフィー的パターンを使用したs-CNTアレイ製造についての概略図を示す。「w」のラベル付きの白線は、(図1A)SiOストライプの幅および(図1B、1C)トレンチの幅を表わしている。
図2A図2Aは、交互のOTS(明)およびSiO(暗)ストライプを横断してせん断堆積させられた、ポリ[(9.9-ジオクチルフルオレニル-2,7ジイル)-alt-co-(6,6’[2,2’-[ビピリジン])](PFO-BPy)包囲s-CNTの走査電子顕微鏡法(SEM)の画像を示す。左から右へ、SiOストライプは、幅1000、500および250nmである。スケールバーは、全ての画像について1ミクロンである。
図2B】500nm(図2B)および250nm(図2C)の高解像度のSEM画像が、SiOストライプから横断してOTSストライプまでピン止めされたs-CNTを示す。カートゥーン(右側)は、これらのピン止めされたs-CNTの場所を描いている。
図2C】500nm(図2B)および250nm(図2C)の高解像度のSEM画像が、SiOストライプから横断してOTSストライプまでピン止めされたs-CNTを示す。カートゥーン(右側)は、これらのピン止めされたs-CNTの場所を描いている。
図3A図3Aは、高さ25nmのOThグラフト化されたAu/Crトレンチ内でs-CNTが4,600s-1のせん断率で堆積された、幅250nmのトレンチ内のs-CNTアレイのSEM画像を示す。
図3B図3Bは、トレンチ幅およびせん断率の両方の一関数として、2次元高速フーリエ変換(2DFFT)解析からの標準偏差(σ)によって特徴づけされたCNT整列度のプロットを示す。
図3C図3Cは、トレンチ幅が減少するにつれてのs-CNTの整列改善を実証する、バルクで幅250nmおよび100nmのトレンチについての4,600s-1の恒常な堆積せん断率における代表的SEM画像のサイドバイサイド比較を示す。幅250および100nm幅のトレンチについての画像には、共に縫合された(チェックマークが縫合位置を示している)互いに隣接する多数の個別のトレンチが含まれている。スケールバーは250nmであり、全ての画像について同じである。
図4A図4A、4Bは、(図4A)Cu-Auトレンチ除去前および(図4B)除去後の幅250nmのOTh-SiOを横断して4,600s-1でせん断されたポリマー包囲s-CNTのSEM画像を示す。
図4B図4A、4Bは、(図4A)Cu-Auトレンチ除去前および(図4B)除去後の幅250nmのOTh-SiOを横断して4,600s-1でせん断されたポリマー包囲s-CNTのSEM画像を示す。
図4C図4Cは、トレンチ除去についてのプロセス概略図を示す。
図4D図4Dは、Siピークに正規化されたトレンチ除去前後のCNTの34μmのエリア全体にわたる平均化されたラマンスペクトルを示すプロットを示している。「除去後(After)」スペクトルは、可読性を改善するために、0.01だけオフセットされている。
図5A図5A~5Cは、アレイ内のs-CNT整列を定量化するために使用される2DFFT方法を示す。図5Aは、表面パターン(明ストライプ)から500nm離隔した幅500nmのs-CNTアレイ(暗ストライプ)のSEM画像を示す。
図5B図5A~5Cは、アレイ内のs-CNT整列を定量化するために使用される2DFFT方法を示す。図5Bは、共に縫合された図5A中に示された画像からのs-CNTアレイのSEM画像を示す。
図5C図5A~5Cは、アレイ内のs-CNT整列を定量化するために使用される2DFFT方法を示す。図5Cは、-90度~90度の間の全ての角度について半径方向にfminからfmaxまでのFFT強度を積分することにより得られる2DFFT(ポイント)からの配向分布を示す。ラインは、s-CNT整列度として使用される標準偏差(σ)を出力する、データのガウス曲線データフィッティングである。
図6図6は、SiO上と比較したOTh-グラフト化金表面上に堆積させられたCNTのSEM画像を示す。CNTは、46,000s-1のせん断率でクロロホルム中の240μg/mL溶液375μLを用いて堆積させられた。
図7A図7A、7Bは、スタック組成が、(図7A)2.5nmのCrとその上に37.5nmのAu、および(図7B)37.5nmのCrとその上の2.5nmのAuである場合の、高さ40nmのOTh機能化Au/Crスタックの間のストライプ上のCNTアレイを示すSEM画像を示している。
図7B図7A、7Bは、スタック組成が、(図7A)2.5nmのCrとその上に37.5nmのAu、および(図7B)37.5nmのCrとその上の2.5nmのAuである場合の、高さ40nmのOTh機能化Au/Crスタックの間のストライプ上のCNTアレイを示すSEM画像を示している。
図7C図7Cは、パターンから離隔したバルクSiO上のCNT堆積のSEM画像を示す。
図8A図8A、8Bは、CNT密度(CNTsμm-1)と、(図8A)恒常な4,600s-1のせん断率での幅wのトレンチ、および(図8B)250nmの恒常なwでのせん断率との関係を示すプロットを示している。両方のプロットにおける嵌込みは、対応するデータ点の代表的SEM画像である。CNT密度は、CNT直径軸に沿ってCNTを計数して、報告された線密度を生成することによって得られた。各データ点およびエラーバーをプロット上に生成するために、3つの試料にわたり、5回の測定が行なわれた。
図8B図8A、8Bは、CNT密度(CNTsμm-1)と、(図8A)恒常な4,600s-1のせん断率での幅wのトレンチ、および(図8B)250nmの恒常なwでのせん断率との関係を示すプロットを示している。両方のプロットにおける嵌込みは、対応するデータ点の代表的SEM画像である。CNT密度は、CNT直径軸に沿ってCNTを計数して、報告された線密度を生成することによって得られた。各データ点およびエラーバーをプロット上に生成するために、3つの試料にわたり、5回の測定が行なわれた。
図9A図9A、9Bは、240μg/mLの濃度で375μLのsCNTクロロホルムインクを使用した、46s-1のせん断率におけるs-CNT堆積のSEM画像を示す。画像は、(図9A)平面SiO(バルク)上および(図9B)100nmのトレンチ内のものである。図9Bは、2DFFT解析のために使用された共に縫合された多数の100nmトレンチである。スケールバーは、両方の画像について500nmである。
図9B図9A、9Bは、240μg/mLの濃度で375μLのsCNTクロロホルムインクを使用した、46s-1のせん断率におけるs-CNT堆積のSEM画像を示す。画像は、(図9A)平面SiO(バルク)上および(図9B)100nmのトレンチ内のものである。図9Bは、2DFFT解析のために使用された共に縫合された多数の100nmトレンチである。スケールバーは、両方の画像について500nmである。
図10A図10Aは、トレンチ除去の前後のs-CNT整列度を示すプロットを示す。
図10B図10B、10Cは、(図10B)除去前、および(図10C)除去後の幅250nmのトレンチ(図10B)のSEM画像からの、共に縫合されたs-CNTアレイを示す。
図10C図10B、10Cは、(図10B)除去前、および(図10C)除去後の幅250nmのトレンチ(図10B)のSEM画像からの、共に縫合されたs-CNTアレイを示す。
図11A図11A、11Bは、OThグラフト化金表面上に堆積させられた交叉CNTが、反応性イオンエッチング手順を介して除去される(図11A)前、および(図11B)後の幅1μmのs-CNTアレイを示すSEM画像を示す。1μmのスケールバーは、両方の画像について同じである。
図11B図11A、11Bは、OThグラフト化金表面上に堆積させられた交叉CNTが、反応性イオンエッチング手順を介して除去される(図11A)前、および(図11B)後の幅1μmのs-CNTアレイを示すSEM画像を示す。1μmのスケールバーは、両方の画像について同じである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
整列したカーボンナノチューブの膜を形成するための方法が提供されている。同様に提供されているのは、該方法により形成された膜、および活性層として該膜を組み込んだ電子デバイスである。膜は、化学的かつトポグラフィー的にパターン化された基板表面全体にわたりカーボンナノチューブの懸濁液を流動させることによって形成される。該方法は、大きい表面積全体にわたって、高密度に充填整列させられたカーボンナノチューブの膜を形成させる高速かつスケーラブルな手段を提供する。
【0010】
化学的機能性およびトポグラフィー的特徴で基板表面をパターン化すること、および任意には液体流内でせん断力を介してCNTを予備整列させることによって、整列したCNTの膜の選択領域堆積を、制御された位置で形成することができる。膜を形成するために使用されるCNTは、高圧一酸化炭素(HiPco)産生粉末から加工される単一壁CNTおよびアーク放電方法を介して作製される単一壁CNTを含めた、単一壁CNTであってよい。CNTは、非常に小さい直径、例えば5nm未満、およびより典型的には2nm未満の非常に小さい直径によって特徴づけられる。該方法を用いて、さまざまな長さのCNTを整列させることができる。これには、750nm以下または500nm以下の長さを有するCNTを含めた1μm以下の長さを有する。非常に短いCNTが含まれる。一例として、CNTは、1nm~2nmの範囲内の直径、および/または100nm~600nmの範囲内の長さを有していてよい。このことは、短いナノチューブが、より長いその同等物に比べ実質的により整列困難であることから、有意である。個別のCNTの寸法が変動するCNTの試料(例えば粉末)中、上述の寸法は、試料中のCNTについての平均寸法を意味する。しかしながら、試料は、CNTの全てまたは実質的に全て(例えば98%超)が、列挙された長さおよび直径範囲内に入るような形で選択され得る。
【0011】
いくつかのデバイス利用分野については、CNTが半導体単一壁CNT(s-CNT)であることが望ましい。したがって、該方法において使用されるカーボンナノチューブは、金属CNT(m-CNT)の全て、または実質的に全て(例えば90%超)を除去するように予め選別され得る。しかしながら、金属CNTの整列も同様に、本明細書中で開示されている方法を用いても整列可能である。
【0012】
個別のCNTは、その整列および堆積基板上への堆積を容易にするために、および/または懸濁液中または懸濁液から作られた膜内での凝集を回避するために、有機材料でコーティングされ得る。明確化のため、これらのコーティングされたCNTは各々、その表面上に有機材料の部分的または完全な膜を有し;それらは全て連続的有機(例えばポリマー)マトリクス内に分散しているわけではない。コーティングは、CNTの表面に共有結合され得るが、それが必要なわけではない。コーティングを形成し得る有機材料としては、モノマ、オリゴマ、ポリマーおよびそれらの組合せが含まれる。コーティングは、s-CNTおよびm-CNTの混合物からs-CNTを単離するための予備選別ステップにおいて使用されたコーティングであってよい。本明細書において半導体選択的コーティングと呼ばれているタイプのコーティングには、なかでも、ポリチオフェンおよびポリカルバゾールが含まれる。半導体選択的ポリマコーティングを含めた数多くの半導体選択的コーティングが公知である。このようなポリマーについての記述は、例えば、Nishら、Nat.Nanotechnol.2007,2,640~6中、およびBradyら、Science Advances,2016,2,e1601240中に見出すことができる。半導体選択的ポリマーは、典型的に、高度のπ-共役を有する有機ポリマーであり、ポリフルオレン誘導体およびポリ(フェニルビニレン)誘導体を含む。ポリフルオレン誘導体には、ジアルキル-フルオレンおよびビピリジン単位を含有するコポリマーを含む。これらには、ビピリジン単位を有するポリ(9,9-ジアルキル-フルオレン)コポリマー(例えばポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-co-(6,6’-[2,2’-{ビピリジン])が含まれる。半導体選択的コーティングは、導体または半導体材料であり得るものの、これらは同様に電気的絶縁性を有していてもよい。任意には、コーティングは、CNT膜が堆積させられた後で、CNTから除去され得る。例えば、コーティングを選択的に溶解させるか、またはエッチングにより除去することができる。代替的には、ビピリジン反復単位を有するポリマーについては、米国特許第9,327,979号に記載の通り、遷移金属(例えばレニウム)カルボニル塩などの遷移金属に対する曝露を介して、コーティングを除去することができる。
【0013】
CNTは、CNTの懸濁液を提供するために、液体中に分散させられる。様々な有機溶媒および有機溶媒混合物を使用して、懸濁液を形成することができる。有機溶媒は、ゆっくりと蒸発するように、膜堆積温度および圧力、典型的には周囲温度および圧力で比較的高い沸点を有することが望ましい。比較的高い沸点を有する溶媒の例としては、トルエンおよび1,2-ジクロロベンゼンが含まれる。しかしながら、クロロホルムなどのより沸点の低い有機溶媒も同様に使用可能である。流体懸濁液中のCNTの濃度は、堆積膜内のCNTの密度に影響を及ぼし得る。広範囲のCNT濃度を利用することができる。単なる例示として、方法のいくつかの実施形態において、懸濁液は、20μg/mL~500μg/mLの範囲内の濃度を含め、0.01μg/mL~1000μg/mLの範囲内のCNT濃度を有する。
【0014】
懸濁液が全体に流動し、CNT膜が上に堆積される、堆積基板と呼ばれる基板は、基板上に1つ以上のトレンチを形成することにより、トポグラフィー的にパターン化可能である。トレンチは、間隙によって離隔された2つの相対する側壁、および側壁の間の間隙に跨越するトレンチ床によって画定され、ここでトレンチ床は、上にCNT膜が堆積される堆積基板である。
【0015】
トレンチは、堆積基板の表面上のメサと呼ばれる隆起した構造により形成され得る。本明細書中で使用される「メサ」という用語は、基板の表面内にパターン化された隆起構造に限定されず、より一般的に、トレンチ側壁を形成するために、堆積基板の表面の上方に立ち上った構造を意味する。したがって、メサは、堆積基板の表面上に材料を堆積することにより作製され得る。メサは、間隙により互いに分離され、したがって堆積基板表面の各部分はメサ間の間隙内で露出されることになる。メサの側面は、トレンチの側壁を提供し、したがって、メサは側壁メサと呼ばれる。堆積基板およびトレンチ側壁の表面のために使用される材料は、流動する懸濁液中のCNTが、トレンチ側壁とは対照的に、堆積基板に優先的に接着するように選択される。メサは、直線的で、その長さに沿って均一の寸法を有していてよく、露出した堆積基板の複数の均一な平行ストライプを提供するために、平行な配設で整列させられてよい。しかしながら、メサは必ずしも直線的で、その長さに沿って均一の寸法を有し、かつ/または平行に整列させられる必要はなく;メサは、ストライプ状ラインパターン以外のパターンでCNT膜を形成するように設計されてよい。
【0016】
トレンチ側壁間の間隙は、トレンチの幅を画定し、堆積したCNT膜の幅を決定する。整列したCNTの膜を堆積させるための方法のいくつかの実施形態において、1つ以上のトレンチは、50nm~5000nmの範囲内の幅を有する。これには、1つ以上のトレンチが10nm~2000nmの範囲内の幅を有する実施形態が含まれる。これには同様に、500nm未満の幅を有するトレンチ、例えば25nm~500nmの範囲内および50nm~250nmの範囲内の幅を有するトレンチも含まれる。堆積した膜内のCNTの整列度を最大化するために、トレンチは、懸濁液中のCNTの長さよりも小さい幅を有していてよい。いくつかの実施形態において、トレンチ幅は、懸濁液中のCNTの平均長の半分未満である。これには、トレンチ幅が懸濁液中のCNTの平均長の4分の1未満である実施形態が含まれる。トレンチ幅をCNTの幅未満まで削減した場合、閉じ込め効果が優勢になり、より密に整列したCNTの選択領域堆積が可能となる。しかしながら、懸濁液中のCNTの平均長よりも大きい幅を有するトレンチを使用することもできる。トレンチ側壁の高さは、CNTが堆積基板の2つ以上の露出領域上に堆積するのを防止するのに充分なものでなければならない。概して、CNTの直径の少なくとも10倍であるトレンチ高さで充分である。例えば、25nm以上のトレンチ高さを使用することができる。整列したCNTの膜が堆積基板上に形成された後、メサ表面上に吸着したあらゆるCNTと共にメサを除去することができる。
【0017】
トレンチによって提供されるトポグラフィー的パターン化に加えて、化学的パターン化が、トレンチ床上のCNT膜の堆積を増強させるために使用される。これは、化学基で機能化されていないメサの領域と比較して、メサの機能化された領域上のCNTの堆積を不利なものにする有機化学基でメサの頂部および/または側面を機能化することによって達成される。本明細書中で使用される「機能化」という用語は、基板の表面に対して化学基を化学結合させる(例えばグラフト化させる)ことを意味する。したがって、表面を機能化する化学基は、基板の表面を構成する基板材料の固有部分である化学基とは異なるものである。
【0018】
トポグラフィー的特徴が不在である場合、化学基は、化学的にパターン化されたストライプの間に堆積基板の交互ストライプが露出する形で、一連の平行ストライプとして堆積基板上にパターン化され得る。CNTの懸濁液が、化学的にパターン化された基板上をストライプ方向に沿って流動する場合(すなわち、懸濁液がストライプと平行に流動する場合)、CNTは優先的に、堆積基板の露出した領域に接着する。
【0019】
化学的にパターン化されたストリップの間の間隙は、堆積したCNT膜の幅を決定する。整列したCNTの膜を堆積させるための方法のいくつかの実施形態において、間隙は、50nm~5000nmの範囲内の幅を有する。これには、間隙が100nm~2000nmの範囲内の幅を有する実施形態が含まれる。これには同様に、500nm未満の幅を有する間隙、例えば100nm~500nmの範囲内および100nm~250nmの範囲内の幅を有する間隙も含まれる。
【0020】
堆積基板の表面上で1つ以上のメサを形成し、トレンチ床上でのCNTの堆積に比べて、メサの頂部表面および/または側面上のCNTの堆積を不利なものにする化学基でメサの頂部表面および/または側面をパターン化することによって、トポグラフィー的および化学的パターン化の組合せを達成することが可能である。とりわけ、トレンチ側壁全体(側壁がトレンチ床と交わる所からメサの頂部まで側壁はトレンチ床と接触する)を機能化することは可能であるものの、トレンチ床に隣接するトレンチ側壁の部分が未機能化のままにとどまっている場合には、トレンチ床上に、より高いCNT密度を有するCNT膜を形成させることができる。例えば、メサの頂部表面および/またはメサ側面の最上部分に化学的機能化を限定すると、完全に機能化されている側面を有するメサに比べて、堆積した膜内のCNTの密度を少なくとも5倍(例えば5~10倍以上)増加させることができる。発明のいずれかの特定の理論に束縛されることを意図するわけではなく、この効果は、CNT懸濁液がトレンチを通過するにつれて、トレンチ側壁に沿って溶媒構造が破断するのを回避したことに起因すると考えることができる。したがって、トポグラフィー的および化学的にパターン化されたトレンチのいくつかの実施形態においては、頂部表面のみ、側壁の頂部端部のみまたはその両方が、化学基で機能化される。
【0021】
CNT膜形成方法は、トレンチを通してCNTを含む懸濁液の流れを創出することによって実施される。CNTの懸濁液がトレンチを通って流動するにつれて、CNTは流れの方向に沿ってその長軸(長さ)が整列した状態になる。整列は、CNTを整列させるせん断力を発生させる流速勾配(せん断率)に起因し得る。したがって、流動する懸濁液中のカーボンナノチューブが堆積基板と接触した場合、CNTは、その長軸が流れの方向に配向された状態で、堆積基板の表面上に堆積させられる。CNTの整列は、40s-1~50,000s-1の範囲内のせん断率を含めた、広いせん断率範囲を使用して達成され得る。CNTの堆積は、懸濁液が流動している間に発生させることができ、帯電した堆積基板、電極または不動(非流動)懸濁液からの蒸発を使用することを必要としない。
【0022】
以上で論述した通り、堆積基板は、有機材料でコーティングされたCNTを含めたCNTが容易に接着する材料で構成されている。異なるCNTコーティング材料について、異なる堆積基板材料が好ましい可能性がある。方法のいくつかの実施形態において、酸化シリコン(例えばSiO)などの親水性基板が使用可能である。他の実施形態においては、非親水性または疎水性基板も使用可能である。使用可能な他の堆積基板材料には、金属酸化物(非限定的に酸化アルミニウム、酸化ハフニウムおよび酸化ランタン)、高誘電率の誘電材料、例えばSiN、および一般的半導体材料、例えばシリコンおよびゲルマニウムが含まれる。堆積基板は同様に、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルスルフォン、ポリ(エチレンテレフタレート)などを非限定的に含めた、可撓性ある電子機器の利用分野のためのポリマー基板でもあり得る。ここで列挙された材料は、堆積基板全体を構成する材料であってよく、または下層のバルク基板ベース全体にわたりコーティングとして塗布されてもよい。本開示の目的では、表面は、その静止水接触角が90°超である場合に、疎水性とみなされ、その静止水接触角が90°未満である場合に親水性とみなされる。
【0023】
トレンチの側壁を画定するメサの材料およびメサを機能化するために使用される化学基は、CNTが、CNT堆積プロセス中に堆積基板に対して程には容易に側壁に接着しないように選択されなければならない。また、メサは、堆積基板を化学的に修正することなく、CNT吸着を削減する化学基で選択的に機能化され得る材料で作製されなければならない。したがって、有機材料でコーティングされるCNTについては、異なるCNTコーティング材料のために、異なるメサ材料および化学的機能性が好まれる可能性がある。単なる例示として、疎水性堆積基板に対し充分接着する、有機材料でコーティングされたCNTについては、トレンチ側壁は、堆積基板を構成する材料より疎水性の低い材料で構成されていてよい。同様にして、親水性堆積基板に充分接着する、有機材料でコーティングされたCNTについては、トレンチ側壁は、堆積基板を構成する材料より親水性の低い材料で構成されていてよい。メサに好適な材料の例としては、非限定的に、金属、フルオロポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレンおよびビトン、および疎水性ポリマーでコーティングされたガラスまたは石英が含まれる。コーティングされていないガラスおよび石英も同様に使用可能である。メサ材料としての金属の使用は、金属が、蒸発などの簡単な方法を用いて薄層として堆積することができ、さまざまな化学基で機能化することができ、かつCNT膜の堆積後に選択的に除去することができるため、有利である。
【0024】
~C20アルキル鎖などのアルキル基が、親水性コーティングでコーティングされたCNTの不必要な接着を削減するために、メサの少なくともいくつかの部分に付着し得る疎水性化学基の例である。メサは、例えば、メサの頂部および/または側面にSAMを形成する有機分子を用いて機能化可能である。このような有機分子は、機能化された表面を、堆積基板に分子を付着させるチオール基などの親水性頭部基にする疎水性尾部基(例えばアルキル尾部基)によって特徴づけされる。
【0025】
金は、二酸化シリコン表面などの親水性表面を未機能化状態に維持する条件下で、SAMにより選択的に機能化され得る材料の一例である。チオール頭部基と機能化されたアルキル尾部基を有するSAM形成有機分子としては、オクチル、ドデシルおよび高級(例えばオクタデシル)アルキル基を有するチオールが含まれる。以上で指摘したように、メサの頂部表面を機能化するものの側面は機能化しないことが有利であり得る。したがって、トポグラフィー的および化学的にパターン化された基板のいくつかの実施形態において、メサは、CNTの堆積を不利なものにする化学基で容易に機能化される第1の材料から形成された頂部層と、化学基で機能化されていない異なる材料の下層とを含む。下位層は同様に、頂部層を堆積基板に接着させる接着層としても作用し得る。例示として、メサは、トレンチの側壁を画定する下位クロムまたは銅層と、メサの頂部表面を画定するクロムまたは銅層の頂部にある金膜とを含むことができる。メサに接着したすべてのCNTは、メサが堆積基板から除去されるときに除去されることから、メサの上部および側面におけるCNTの堆積を完全に排除する必要はない。メサを構成する第1および第2の材料の相対的厚みは、広い範囲にわたって変動し得る。単なる例示として、メサのいくつかの実施形態においてにおいて、頂部層は、メサの高さの50%以下を構成する。これには、頂部層がメサの高さの20%以下、10%以下、5%以下または1%以下を構成する実施形態が含まれる。
【0026】
該方法は、堆積したCNTの全てが整列していることを求めておらず、膜内のCNTの平均整列度が、ランダムに配向されたCNTのアレイのものよりもある程度まで大きいことしか求めていない。膜内のCNT内の整列度は、膜内部のその長手方向軸に沿ったそれらの整列度を意味し、実施例中に記載の通り、2次元高速フーリエ変換(2D-FFT)を用いて定量化され得る。本明細書中に記載の方法は、2D-FFTによって測定した場合にCNTが18°以上の整列度を有する膜を生産することができる。これには、CNTが15°以上の整列度を有する膜、さらにはCNTが10°以上の整列度を有する膜が含まれる。単なる例示として、膜のいくつかの実施形態は、5°~10°(例えば6°~9°)の範囲内のCNT整列度を有する。
【0027】
アレイ内のCNTの密度とは、実施例中で記載の通り、1μmあたりのカーボンナノチューブ数単位で定量化され、走査電子顕微鏡法(SEM)画像解析を用いて測定され得るCNTの充填線密度を意味する。本明細書中に記載の方法は、CNTが少なくとも10CNTs/μmの密度を有する膜を生産することができる。これには、CNTが少なくとも20CNTs/μmおよび少なくとも30CNTs/μmの密度を有する膜が含まれる。単なる例示として、膜のいくつかの実施形態は、30CNTs/μm~40CNTs/μmの範囲内のCNT密度を有する。
【0028】
膜は、大きな表面積全体にわたり極めて均一なストライプとして堆積することができ、ここで、均一の膜とは、カーボンナノチューブがランダムに配向されたドメイン無く、カーボンナノチューブが実質的に直線の経路に沿って整列させられている、連続した膜である。より大きい面積にわたり膜を形成するためには、並設で多数のより狭い膜を一緒に設置することができる。したがって、CNT膜を上に形成できる面積は、特に制限されず、半導体ウェハー全体をカバーするのに充分大きなものであり得る。例示として、CNT膜は、少なくとも1mm、少なくとも10mm、または少なくとも100mm、または少なくとも1mの表面積全体にわたって形成され得る。
【0029】
CNTの意図される用途に応じて、膜をその初期堆積の後にさらにパターン化することが望ましい場合がある。当初の膜堆積パターンおよび/または堆積後に膜内に形成されるパターンの内容は、膜の意図された用途によって左右されるものである。例えば、整列したs-CNTのアレイを電界効果トランジスタ(FET)内のチャネル材料として使用する予定である場合には、一連の平行ストライプを含むパターンを使用することができる。チャネル材料としての整列したs-CNTの膜を含むFETは、概して、チャネル材料と電気的接触状態にあるソース電極およびチャネル材料と電気的接触状態にあるドレン電極;ゲート誘電体によってチャネルから分離されたゲート電極;および任意には、下部の支持基板を含む。FETのコンポーネントには、さまざまな材料を使用することができる。例えばFETは、整列したs-CNTを含む膜を含むチャネルSiOゲート誘電体、ゲート電極としてのドープSi層およびソースおよびドレン電極としての金属(Pd)膜を含み得る。しかしながら、これらのコンポーネントの各々について、他の材料を選択することもできる。
【0030】
任意には、CNTが有機材料でコーティングされている場合、有機材料は、膜の形成後に除去されてよい。
【実施例
【0031】
この実施例は、有機溶媒からのs-CNTの整列したアレイの選択的せん断堆積を誘導するための化学的およびトポグラフィー的パターンの使用を例示する。化学的およびトポグラフィー的にコントラストされたパターン上の高せん断率の堆積が、個別のナノチューブの長さ(>500nm)よりも幅広のパターンでも、準整列したCNT(14度)アレイの選択領域堆積を導く。しかしながら、パターンの幅が個別のナノチューブの長さ未満に削減されるにつれて、堆積プロセスにおいて閉じ込め効果が優勢になり、より密に整列したCNT(7度)の選択領域堆積を導く。これらのアレイは、SEM画像解析を介してs-CNT密度について、および2DFFT方法を介してCNT整列度について特徴づけされた。同様に、これらの表面パターンは、CNT堆積後に除去することができ、結果として、デバイス用の整列した空間選択的なs-CNTアレイをもたらす、ということも実証された。
【0032】
実験
ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-co-(6,6’-[2,2’-ビピリジン])包囲s-CNT溶液調製物(s-CNTインク)
以前に立証済みの手順(G.J.Bradyら、Science Advances、2016、2、e1601240)を用いて、CNT煤煙からs-CNTを単離することで、クロロホルムs-CNTインクを調製した。簡単に言うと、重量比で1:1のアーク放電CNT煤煙(698695、Sigma-Aldrich)とポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-co-(6,6’-[2,2’-{ビピリジン])](PFO-BPy)(American Dye Source,Inc,QueBec,Canada;#ADS153-UV)を、各々、ACSグレードのトルエン中で2mgmL-1の濃度で分散させる。この溶液を、ホーンチップソニケータ(Fisher Scientific,Waltham,MA;Sonic Dismembrator 500)で超音波処理し、その後、スイングバケットローター内で遠心分離して、未分散材料を除去した。遠心分離の後、ポリマー包囲s-CNTを含有する上清を収集し、さらに18~24時間遠心分離して、s-CNTを沈積させペレット化した。収集したs-CNTペレットを、ホーンチップ超音波処理を用いてトルエン中で再分散させ、再度遠心分離した。遠心分離および超音波処理プロセスを合計3回反復した。最終溶液を、(エタノールで安定化させた)クロロホルム中のs-CNTペレットのホーンチップ超音波処理によって調製した。このアプローチを介して調製したs-CNTを、G.J.Bradyら、ACSNano、2014、8、11614~11621中に記載の方法を用いて、1.3~1.8nmで直径が変動し、580nmの平均長で、対数正規長さ分布によって特徴付けした。CNTS22遷移からの光学的断面を用いて、s-CNTインクの濃度を決定した。この溶液を、s-CNTと呼ぶ。
【0033】
酸化シリコン基板上の表面パターン製造
従来の電子ビームリソグラフィ技術を用いて、表面パターンを製造した。90nmの湿潤熱酸化シリコンを伴うシリコン[100]ウェハー基板(Addison Engineering,Inc.)を、85℃で1時間、体積比3:1のHSO:Hピラニア溶液中に浸漬させた。ピラニア処理の後、基板を脱イオン(DI)水で洗い流し、Nで乾燥させた。化学的パターンについては、ma-N2401レジスト(Micro Resist Technologies)をウェハー上にスピンコーティングし、電子ビームリソグラフィ技術を用いてパターン化した。レジストデスカム用のRIE酸素プラズマが、酸化シリコンを露出させた。パターン化された基板を、トルエン中5mMの濃度でオクタデシルトリクロロシラン(OTS)(Sigma Aldrich、104817)中に12時間沈めた。基板をトルエン中で30分間浴超音波処理し、トルエン中で洗い流し、Nで乾燥させた。基板を無水1-メチル-2-ピロリジノン(NMP)(Sigma Aldrich、328634)中に24時間沈め、Nで乾燥させることによって、レジストをはく離させた。トポグラフィー的パターンについては、ピラニア清浄したシリコン基板上にPMMAレジスト(Micro Chem Corp)をスピンコーティングし、電子ビームリソグラフィシステム(Elionix ELS-G100)が、所望のパターンのPMMAレジストを露出させた。PMMAの現像および酸素プラズマデスカムの後、露出された酸化シリコン上に金属を蒸発させた。アセトン中のPMMAリフトオフの結果として、シリコン基板上に金属特徴を得た。
【0034】
先の手順から開発されたチオールベースの化学を用いて、追加のAu化学的機能化を行なった。(H.Yeonら、Langmuir,2017,33,4628~4637)。Au特徴を伴う基板を、エタノール中1mMの濃度で1-オクタデカンチオール(OTh)(O1858、Sigma-Aldrich)中に24時間沈め、追加のエタノールで洗い流し、Nで乾燥させた。OTSおよびOThの両方の試料について、対照の水接触角の測定により、基板に対するSAMグラフト化の有効性が決定された。7μLのDI水の液滴を、SAM表面上のDataphysics OCA15光学接触角測定システムを用いて送出した。水液滴がひとたび完全に形成された時点で、直ちに、液滴の静止水接触角(WCA)を測定した。WCAが110°超であった場合、試料は完全に機能化されたものとみなされた。機能化した酸化シリコン基板を、s-CNT堆積までN下に保管した。
【0035】
s-CNTアレイの作製および特徴付け
s-CNTを堆積するために使用したせん断システムおよびせん断率制御の詳細は、他の場所で記載されている(K.R.Jinkinsら、Advanced Electronic Materials,2019,5,1800593)。表面パターン化したシリコン基板を横断してクロロホルムs-CNTインクを設定されたせん断率でせん断した。直ちに同じ基板を横断して追加のクロロホルム溶媒をせん断して、残留s-CNTを除去した。基板をトルエン中において110℃で一時間煮沸し、Nで乾燥させて、余剰のポリマー包囲体を除去した。特徴付けまで、N下で基板を保管した。Zeiss LEO 1550VP SEMを用いて、SEM画像を撮像した。これらのSEM画像を、2DFFTアルゴリズムを用いて処理して、s-CNTの整列を決定した。
【0036】
トポグラフィー的パターン除去
トポグラフィー的パターントレンチを、s-CNTアレイ間の金属をエッチングすることによって除去した。金属除去に先立ち、s-CNT上にPMMAの薄層をスピンコーティングして、s-CNTを金属エッチャントから保護した。最初に、金メサを越えるs-CNTを全て、酸素プラズマ反応性イオンエッチング手順を用いて除去した。標準的金エッチャント(651818、Sigma-Aldrich)中に5分間基板を沈め、DI水中に10分間試料を液浸することによって、金属トレンチ(Au/Cu)を除去した。ヨウ素系金エッチャントは、Cuを、水溶液中で不溶である銅ヨウ素錯体に変換した。このプロセスを一度反復して、全てのCuを完全に変換した。アセトンを110℃で15分間沸騰させることによって、PMMA保護層および銅ヨウ素錯体を除去した。
【0037】
Thermo Scientific DXRxiラマンイメージング顕微鏡上で、マッピング機能を用いて、s-CNTのラマン分光法測定値を読みとった。1画素が1μmの面積を表わすものとして、1156画素からなる34×34μmの面積にわたるs-CNT特徴バンドのラマンマップを撮像した。
【0038】
s-CNTアレイのための化学的パターン
まず第1に、有機インクからのせん断によるs-CNTアレイの選択的堆積のための化学的パターンコントラストの有効性を研究した。ポリマー包囲s-CNTは、溶媒構造効果に起因して、OTSグラフト化酸化シリコンに比べ、SiO上への吸着を選好する。選択領域堆積を推進する目的でs-CNTの吸着選好性を利用するために、図1Aに例示された電子ビームリソグラフィ(EBL)プロセスを用いて、SiOとOTS交互ストライプをパターン化した。ネガ型レジストを選択した。ネガ型レジスト内の架橋により、選択的機能化中にOTSがレジスト中に進入することが防止された。OTS機能化の後、ネガ型レジストを除去し、結果として、図1Aに描かれているSiOとOTSの交互ストライプを有する化学的にパターン化されたシリコン基板を得た。個別のストライプの幅は、250~2000nmの間で変動し、ここで化学的パターン内のSiOストライプの幅は、wとして定義されている(図1Aに例示)。化学的パターン内のOTSストライプ幅は、所与のSiOストライプ幅に対して同様にwに等しい。
【0039】
これらの化学的にパターン化された基板上には、46,000s-1の高いせん断率で先に立証済みのせん断堆積を用いて、240μg/mLの濃度で375μLのs-CNTインクを堆積させた。(K.R.Jinkinsら、2019)。図2Aは、EBLを用いて製造されたSiOとOTSの交互ストライプ上に堆積したs-CNTのSEM画像を示す。これらのSEM画像によると、不利な吸着表面であるOTSに比べて、有利なs-CNT吸着表面であるSiO上では、s-CNT密度が著しく高いものであった。
【0040】
図2A~2Cは、化学的にパターン化した基板上のs-CNT堆積を示す。これらのアレイ内のs-CNTの整列を、堆積したs-CNTアレイについてのSEM画像の2DFFT解析によって特徴付けした。CNTアレイを含むさまざまな繊維性材料の整列を特徴付けするために、2DFFT解析が使用されてきた(E.Brandleyら、Carbon,2018,137,78~87)。2DFFT方法から誘導された配向分布を、ガウス分布でフィッティングし、この曲線の標準偏差(σ)を計算することによって、s-CNT整列度を定量化した。SiOストライプの幅wが2000nmから250nmまで減少するにつれて、s-CNTの整列は、18°前後のσにおいて恒常であり続けた。画像を目視すると、図2B、2Cに示されているように、SiOストライプの縁部でピン止めされOTS領域上に延在する数多くのCNTが示されている。これらのCNTは、SiO領域に有利に吸着された部分もあれば、OTSに不利な形で吸着された部分もある。化学的コントラスト単独では、多くの場合整列度が低かったこれらのCNTの堆積を防止するのに、充分強いものではなかった。SiOストライプ間の離隔距離を5000nmまで増大させることによって、パターンの縁部におけるCNTのピン止めが著しく削減されるか、または結果として得られるσが改善されることはなく、この事実は、これらのCNTの堆積が、1つのSiO領域から次の領域まで架橋することによって推進されなかったことを証明している。さらに、SiOストライプ間の離隔距離を増加させることは、単一の基板上で高密度のデバイスセットを製造する場合、ストライプを横断したこのCNTのピン止めを削減することにさらなる努力を集中させることが求められることから、実際的ではなかった。
【0041】
s-CNTアレイのためのトポグラフィー的パターン
シリコン基板上の化学的パターンに対する物理的障壁の追加を用いて、SiOストライプ上のCNT整列を著しく改善し、かつOTSストライプを横断したピン止めを制限した。化学的パターンが統合されたトポグラフィー的表面パターンの設計および製造は、図1Bおよび1Cに例示されている。トレンチ床は、有利なCNT堆積表面として作用する無修飾SiOであり、一方、メサは不利な堆積表面として作用した。トレンチ床上のSiOを修飾することなく選択的に機能化され得る材料からメサを作製する必要があった。作製を単純にするため、チオール終端SAMであるOThで選択的に機能化され得ることから、メサのためには金を選定した。SiO基板に対する金の接着を改善するため、接着層としてクロムまたは銅を使用した。Au/Crスタックの高さは25nmであり、これはs-CNTの直径よりも10~20倍大きい値である。OThによるAuの機能化は、s-CNTがAu表面上に堆積するのを防いだ(図6)。2.5nmのCr上の22.5nmのAuのトレンチが、メサおよび側壁の両方の上でのOThによるAuの機能化を導いた(図1B)。しかしながら、これらのパターンで堆積されたs-CNTの全体的密度は、おそらくは、Au側壁に沿った溶媒構造の破断に起因して、バルクSiO基板上よりも一ケタ低いものであった(図7A~7C)。Auの厚みを削減するために、25nmのAu/Cr金属ストライプスタック内に薄い2.5mmのAu頂部層および22.5nmのCrを伴う、図1Cに概略的に示された手順を実装して、トレンチ側壁のOTh機能化を防止した。
【0042】
これらの修飾されたパターンは、メサ上へのその堆積を最小限に抑えながらトレンチ内に堆積されるs-CNTの密度をおよそ10~15から30CNTμm-1まで増大させる上で有効であった(図3A)。5つのトレンチ内のs-CNTの数を平均化することによって、wおよび堆積せん断率の関数としてのそれらの密度を定量化した(図8A、8B)。4,600s-1という恒常な堆積せん断率で、s-CNT密度は、wが100~1000nmで変動した場合でさえ、32~36CNTμm-1と比較的恒常であった。CNTの数が少ないことに起因して、より狭いトレンチについて、本質的により大きなエラーバーが見られた。46~46,000s-1の範囲内のせん断率については、wを250nmに固定した場合、s-CNT密度は、再び、32~35CNTμm-1前後で恒常であり続けていた。
【0043】
先に論述したように、これらのトポグラフィー的パターン内のs-CNT整列を定量化するために、2DFFT計測方法を適用した。図3Bは、せん断率およびトレンチ幅の両方の関数としての、整列したs-CNTアレイからのσを示している。バルクデータ点は、パターン化されていない平面的SiO上のs-CNT堆積として定義される。FFT解析のためには、非優先的に配向されたs-CNT膜に対応する30°超の標準偏差を最大限度として定義した。幅2000nmのトレンチ内の低いせん断率(46s-1)ならびにバルク試料の両方のSEM画像の目視によって、σ>30°でのランダム分布が確認される。恒常なwにおいて、CNT整列は、せん断率の増大に伴って改善した。恒常なせん断率では、s-CNT整列は同様に、100nmまでのwの減少に伴って改善した。100nmのトレンチ内で4,600s-1のせん断率で、7.6±0.3°のσで最高の整列が見られた。図3Cは、所与のせん断率についてバルク堆積に比べてより狭いトレンチ内で劇的に改善されたCNT整列を強調する、(画像の底部に沿ってマークで表示された)共に縫合された多数のトレンチ内のCNTアレイのSEM画像を示している。
【0044】
ここで提示されている研究は、基板の所望の領域内に選択的に堆積させながら、並外れて整列したs-CNTアレイを達成するための重要な指針を明らかにしている。これらの研究は、s-CNT堆積中にせん断率を増大させることで、トレンチ内のそれらの整列が無制限に増大することはない、ということを示している。パターンがs-CNTの長さ(>500nm)よりも幅広であった場合、せん断率の増加は、約14°のσで、準整列したCNTを導いた。例えば、せん断率を46s-1から4600s-1まで増大させることで、幅1ミクロンのトレンチ内で28.5±6.3°から16.2±1.3°まで整列は劇的に改善したものの、さらに46000s-1まで増大させても結果として13.3±1.0°のσまでのわずかな改善しかもたらされなかった。パターン幅を個別のCNT(<500nm)未満まで削減した場合、閉じ込め効果がせん断率より優勢となり、整列度の劇的な増強が導かれた。例えば、幅100nmのトレンチで46s-1の低いせん断率を使用することで、7.6±1.3°の整列度が達成された。この整列度は、平面的SiO上の高いせん断率(46,000s-1)での19.3±3.5°という整列度に比べて卓越したものである(図9A、9B)。
【0045】
OTSおよびSiOの交互ストライプの化学的パターンは、結果として、ストライプ幅の如何に関わらず約18°の恒常なs-CNT整列度をもたらし、一方、25nmの丈の高い金属ストライプからなるトポグラフィー的パターンの追加は、バルクSiO上の46,000s-1の堆積せん断率での19.3±3.5°から幅100nmのトレンチ内での8.5±2.8°まで、s-CNTの整列を改善した。したがって、s-CNTが多数のSiOストライプ上に堆積するのを防止するために、トレンチ幅が充分に狭く(500nm未満)かつトレンチ高さが充分に高いことを条件として、トレンチ幅を減少させることによって、整列を改善することが可能である。実験結果に基づくと、25mmを超えるトレンチ高さは、s-CNTの整列度をさらに改善しなかった。これらのパターン化された基板上のs-CNTの整列は、2×3cmのSiO/Si基板全体にわたり均一であり、このプロセスの固有のスケーラビリティを実証した。せん断堆積システムをスケールアップすることによって、より大きな面積の堆積を達成することが可能である。
【0046】
このパターン設計がデバイス製造と両立可能となるための別の所望される基準は、CNT堆積後のあらゆる残留金属を完全に除去することである。これらの実験のためには、Cuエッチャントとは異なり、標準的CrエッチャントはCNT上のPMMA保護層を攻撃することから、Auのための接着層であるCrを、図1C内で示された製造スキーム内のCuで置換した。トレンチ除去の前(図4A)および後(図4B)のs-CNTアレイのSEM画像は、s-CNTの整列が保たれ(図10C、10Cおよび図11A、11B)、この除去プロセスをFETデバイス製造と両立するものにしている、ということを確認している。トレンチ除去プロセスの別の帰結は、SiOストライプの間を架橋し得るあらゆる交差チューブを同様に除去される、という点にある。
【0047】
s-CNTの電子的特性が保存されることを保証するために、Au/Cuトレンチ除去処理に対する曝露の前後に、s-CNTのラマンスペクトルを調べた。CNT内の電子欠陥を調べるためには、一般に、D対Gのバンド強度の比(I/I)の解析が使用される。(M.J.Sheaら、APL Materials,2018,6,056104)。これらの試験用として、G、D、2DおよびSiラマンピークの信号を増大させるために、90nmのSiO/Si基板上のスピンコーティングしたs-CNTを使用した。これらの試料を、図4A~4D内で使用したものと同じトレンチ除去プロセスに付した。34μmの面積にわたり、s-CNTのラマンスペクトルを取り、単一のスペクトルに平均化した。図4Dは、トレンチ除去前後のs-CNTの平均化したラマンスペクトルを示す。処理前のs-CNTのI/Iは、0.20±0.02であった。トレンチ除去プロセス後、s-CNTは、0.15±0.02のI/Iを有していた。これらのデータは、トレンチ除去プロセスがCNTの電子的特性に不利な影響を及ぼさなかったことを示している。I/Iのわずかな改善は、金エッチャントによる残留ポリマー包囲体の除去の増加に起因する可能性が高かった。CNT上の吸着物も同様に、Gバンド強度を抑制し、したがってI/Iを低下させることになる。これらの結果から、出発s-CNTの電子的品質は、処理ステップ全体を通して保たれ、この除去プロセスはFETデバイス製造と両立するものであることが確認される。
【0048】
せん断を介したs-CNTの予備整列は、トレンチ幅が500nm超であるかまたはCNTの長さよりも大きい場合に、主要な役割を果たした。しかしながら、トレンチ幅が500nm未満に減少した場合、閉じ込め効果がせん断より優勢になる。100nmのトレンチ幅では、30CNTμm-1超の密度を維持しながら、卓越した整列度(4,600s-1のせん断率で7.6±0.3°のσ)が達成された。回転拡散係数は、s-CNT長が増大して、せん断整列を助長するにつれて、急速に減少した。したがって、せん断力による予備整列およびトレンチ内の閉じ込め効果は両方共、平均s-CNT長を増大させることにより増強され得る。
【0049】
2DFFT法を用いたCNT整列の特徴付け
s-CNT整列は、堆積されたs-CNTアレイについてのSEM画像の2DFFT解析を行うことによって、特徴付けされた。
【0050】
カーボンナノチューブアレイの整列は、CNTアレイを含めた堆積されたアレイのSEM画像の2DFFT解析を行うことによって特徴付けされた。解析手順は、Brandleyらにより記述されトポグラフィー的トレンチの存在に対応するように適応させられた手順に類似していた。(Brandley,E.ら、Carbon.2018,137,78~87)。2DFFT解析のために、以下のステップにしたがった:第1に、解析用に、CNTアレイのSEM画像を作成した(図5A)。トレンチ間のメサを画像から除去し、トレンチの画像を、単一の画像へと共に「縫合した」(図5B)。メサを除去することによって、ノイズが削減され、CNTアレイ由来の所望の信号を圧倒する可能性のあるFFT画像内の低周波数での大きく明るいピークの振幅が削減された。
【0051】
第2に、作成された画像の2DFFTを、Matlab(商標)内のfft2関数を用いて計算した。より適切な表現のため、Matlab(商標)内のfftshift関数を用いて画像の中心までFFTをシフトさせた。FFTは、CNTアレイの主要な配向方向に直交して配向された明るいローブのパターンを示した。
【0052】
最後に、-90°から90°まで変動する角度で、画像の中心からの距離fminから距離fmaxまでシフトされたFFTの強度を積分することによって、配向分布を得た。実際には、各々の問題の角度においてMatlab(商標)内のimrotate関数を用いて、最近傍補間法スキームにより画像を回転させた。強度を、fminからfmaxまで、水平軸全体にわたり平均化した。Nが画素数を表わし、tminが最小画素閾値であるものとしてfmin=N/(2tmin)未満の空間周波数における明ピークが、例えば多数のトレンチ画像の不均等な照明または縫合に付随する大きなスケール変動に対応している。tmaxが最大画素閾値であるものとして、fmax=N/(2tmax)を超える空間周波数が、スペックルノイズに対応する。fminおよびfmaxの値に対する小さな変更が、繊維分布の測定されたσに1°未満の影響を及ぼすことが確認された。概して、tmin=10画素およびtmin=2画素が大部分の画像について両行に機能することが発見された。最後に、配向分布をガウス分布でフィッティングしてσを得た(図5C)。
【0053】
2DFFT法は、-90°~90°の範囲内に完全に含まれる配向分布に限定されている。正規分布にとっては、これは、結果がおよそ30°超の標準偏差を伴うアレイについて正確でなくなることを意味している。より大きな標準偏差については、配向分布のわずかな部分しか知られていない。ベースライン値(所与の角度におけるゼロ確率のために2DFFTアルゴリズムによって戻されると考えられるオフセット値;この値は実際にはゼロとなることは決してなく、画像内のノイズにより影響される)が未知であることから、正確に配向分布の曲線フィッティングを得ることは不可能である。これらの測定においては、2つのデータ点(バルクおよび幅2000nmのトレンチについて46s-1の低いせん断率で)のみが、30°超の標準偏差を伴う配向分布を有していた。これら2つの事例についてのSEM画像の目視により、CNTアレイは事実上いかなる優先的整列方向も示していないということが確認される。
【0054】
2DFFT法は、その結果を、画像の選択のために個別のナノチューブの手作業計数によって得た配向分布と比較することによって認証された。試験された画像全てにおいて、2DFFT法は、5°以下の誤差で配向分布の標準偏差を過大評価する傾向にあった。
【0055】
本明細書中で「例示的(illustrative)」なる用語は、例、事例または例証として役立つことを意味するために使用されている。本明細書中で「例示的」として記述されているいずれの態様または設計も、必ずしも他の態様または設計と比べて好ましいまたは有利なものであるものとみなされるべきではない。さらに、本開示の目的のためには、別段の規定の無いかぎり、「a」または「an」は、1つのみを意味することができ、あるいは「1つ以上」を意味することもできる。いずれかの構造と一貫性を有する発明の実施形態が網羅される。
【0056】
本発明の例示的実施形態についての以上の記述は、例示および説明を目的として提示されてきた。それは、網羅的であるように、または本発明を開示された精確な形態に限定するように意図されておらず、以上の教示に照らして修正または変形形態が可能であり、あるいは本発明の実践から獲得され得る。実施形態は、本発明の原理を説明するために、かつ当業者が、企図された特定の用途に好適であるさまざまな修正を伴って、さまざまな実施形態の中で本発明を利用できるようにするための本発明の実際的応用として、選択され記述された。本発明の範囲は、本明細書中に添付の特許請求の範囲およびその等価物によって定義されることが意図されている。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
【国際調査報告】