IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 南京郵電大学の特許一覧

特表2024-506175摂動の影響下での分散型衛星編隊に基づくアレイスペクトル感知のモデリング分析方法
<>
  • 特表-摂動の影響下での分散型衛星編隊に基づくアレイスペクトル感知のモデリング分析方法 図1
  • 特表-摂動の影響下での分散型衛星編隊に基づくアレイスペクトル感知のモデリング分析方法 図2
  • 特表-摂動の影響下での分散型衛星編隊に基づくアレイスペクトル感知のモデリング分析方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-09
(54)【発明の名称】摂動の影響下での分散型衛星編隊に基づくアレイスペクトル感知のモデリング分析方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/391 20150101AFI20240202BHJP
   B64G 1/10 20060101ALI20240202BHJP
   B64G 3/00 20060101ALI20240202BHJP
   B64G 1/66 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
H04B17/391
B64G1/10 100
B64G1/10 600
B64G3/00
B64G1/66 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547757
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-01
(85)【翻訳文提出日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 CN2022106617
(87)【国際公開番号】W WO2023065741
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】202210536471.9
(32)【優先日】2022-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518371489
【氏名又は名称】南京郵電大学
【氏名又は名称原語表記】NANJING UNIVERSITY OF POSTS AND TELECOMMUNICATIONS
【住所又は居所原語表記】No.66 Xin Mofan Road, Gulou Nanjing, Jiangsu 210003 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】丁暁進
(72)【発明者】
【氏名】王運峰
(72)【発明者】
【氏名】張更新
(57)【要約】
本発明は、主衛星がゲートウェイ局から関連のコマンドを受信した後、各付随衛星と共にローカル感知を行い、ランダムアンテナアレイ理論を利用して摂動下での衛星の平均ステアリングベクトルを取得するステップ1と、各付随衛星が、融合のために衛星間リンクを介して感知信号を主衛星に直接送信し、信号対干渉雑音比を最大化して最適化問題を確立することにより、アレイ衛星の重みベクトルを解き、到来波方向が正確に推定される場合と不一致の場合、最大信号対雑音比の正確な式と近似式をそれぞれ与えるステップ2と、分散型衛星編隊のシャドーライスチャネル下での正確な検出確率の理論式を用いて性能評価を行うステップ3とを含む、摂動の影響下での分散型衛星編隊に基づくアレイスペクトル感知のモデリング分析方法を開示する。本発明では、ビーム成形技術を利用してターゲット放射源の空間フィルタリングを実現し、最終的に強い信号と弱い信号が共存する中で、弱い信号に対する感知能力を効果的に向上させる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型アレイモデリング、信号対干渉雑音比の求解、及び感知性能評価の3つの部分を含む、摂動の影響下での分散型衛星編隊に基づくアレイスペクトル感知のモデリング分析方法であって、
具体的なステップとして、
分散型アレイモデリングであるステップ(1)では、ゲートウェイ局は感知タスクの開始または終了のコマンドを発行し、感知用の主衛星は、関連のコマンドを受信した後、各付随衛星と共にローカル感知を行い、ランダムアンテナアレイ理論を利用して摂動下での衛星の平均ステアリングベクトルを取得し、
信号対干渉雑音比の求解であるステップ(2)では、各付随衛星によって検出された信号を主衛星で融合し、信号対干渉雑音比を最大化して最適化問題を確立することにより、最適化されたビーム形成重みベクトルを取得し、到来波方向が正確に推定される場合と不一致の場合、最大信号対雑音比の正確な式と近似式をそれぞれ与え、
感知性能評価であるステップ(3)では、得られた最大信号対干渉雑音比に基づいて、シャドーライスフェージングモデルの下での分散型編隊衛星の正確な検出確率の閉形式表現を導出し、外乱と強い干渉信号による感知性能への影響を分析し、摂動の影響下での分散型衛星編隊のスペクトル感知性能の理論的分析を完了することを特徴とする、摂動の影響下での分散型衛星編隊に基づくアレイスペクトル感知のモデリング分析方法。
【請求項2】
前記ステップ(2)では、主衛星は、付随衛星と地上感知ターゲットの位置情報に基づいて、放射源の到来波方向が正確に推定される場合に信号対干渉雑音比を最大化する最適化問題を解くことにより、最適化された重みベクトルを取得し、前記重みベクトルを用いて信号対雑音比を算出することを特徴とする、請求項1に記載の摂動の影響下での分散型衛星編隊に基づくアレイスペクトル感知のモデリング分析方法。
【請求項3】
前記ステップ(2)では、確立された信号対干渉雑音比を最大化する最適化問題は、次のように表され、
【請求項4】
【請求項5】
【請求項6】
前記ステップ(3)では、独立した同一分布のシャドーライスフェージング下での分散型衛星編隊の正確な検出確率の閉形式表現は、次のようになり、
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信技術の分野に関し、特に、摂動の影響下での分散型衛星編隊に基づくアレイスペクトル感知のモデリング分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
低軌道衛星はシームレスなグローバルカバレッジの特徴があり、衛星の本来の広いカバレッジの特徴により、そのビームカバレッジ範囲が広いため、一つのビームのメインローブの範囲内に多くのノードが存在する一方で、低軌道衛星はサイズと重量に制限があり、大口径の高利得アンテナを搭載することができず、単一の衛星は地上周波数機器に対する感知能力が比較的弱い。マルチ衛星協調に基づくスペクトル感知は、空間ダイバーシティを有効に利用し、感知性能を向上させることができる。衛星システムにおいては、分散型衛星編隊は協調方式の一つであり、複数の同軌道または隣接軌道の衛星を編隊飛行させることで、分散した衛星資源を統合し、衛星間高速相互接続、分散型自律協調、資源仮想化などの重要な技術により、サービス拡張機能を実現する。従来の衛星コンスタレーションと比較して、コストが安く、信頼性が高く、システムの再構築が可能であるなどの利点がある。現在、分散型編隊衛星は、三次元イメージング、気象学、ナビゲーションなどの分野で広く使用されており、公開されたプロジェクトまたは計画には、米国のTechsat-21、大学のナノ衛星工学、欧州宇宙機関のClusterII、フランスのCartwheelなどの項目が含まれ、star-linkなどの現在注目されている大規模なコンステレーションも、軌道変更によりマルチ衛星編隊を実現できる。
【0003】
しかし、同じビーム内に強い信号と弱い信号が共存することを考慮すると、ハード融合におけるエネルギー感知に基づく「and」、「or」基準融合方式、ソフト融合における固有値比検定(ERD)、一般化尤度比検定(GLRT)及びRoy's最大根検定(RLRT)などの従来のマルチ衛星協調感知だけでは、強い信号と弱い信号が共存する中で、弱い信号に対する感知は十分に完了することができず、特定の領域にある特定のターゲットに対する衛星の感知効果が低下する。
【0004】
分散型衛星編隊における衛星位置情報は、決定性とランダム性が共存する特徴があり、決定性とは、軌道上の衛星の軌道パラメータが既知であり、理想的には分散した衛星間の相対位置関係が明確であることを意味し、ランダム性とは、実稼働中に衛星が様々な摂動要因、例えば、地球の非球形、大気、光圧、太陽と月の引力などの影響を受けることを意味し、その中で、地球の非球形による摂動が衛星編隊飛行に与える影響は最も重要であり、衛星の瞬間的な実際の位置がずれることで、分散した衛星間の相対位置関係にランダムな乱れが生じ、衛星の瞬間的な実際の位置が時間とともに変化する。
【0005】
従来技術における授権公告番号CN110034813Bの中国特許では、分散衛星クラスタに基づくパターンを形成するための包括的な方法を開示し、目的関数として異なる電磁信号の送受信タスクの所望のアレイパターン関数を使用し、再構成可能な編隊衛星の隊形を実行可能領域とし、アレイ衛星の送受信信号の重み値を求め、編隊衛星クラスタがアレイを形成することで、衛星リンクの電磁波信号に対する送受信能力を向上させ、アレイ衛星間の相対位置関係が摂動によりランダムに変化するという欠点を克服する。このことから弱い信号に対する感知性能をいかに改善するかが特に重要であることが分かる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、摂動の影響下での分散型衛星編隊に基づくアレイスペクトル感知のモデリング分析方法を提供する。分散型衛星編隊アレイシステムモデルを確立することにより、感知ターゲットTでの平均ステアリングベクトルを取得することができる。瞬時値を平均ビームパターンで近似し、平均信号対干渉雑音比を取得して感知性能を評価する。信号対干渉雑音比の最大化を最適化目的関数として確立することにより、マルチ衛星アレイスペクトル感知システムの性能が得られる。シャドーライスチャネルモデルの下での正確な検出確率により、弱い信号に対する性能向上を効果的に判断することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、以下の技術的手段によって達成される。
【0008】
本発明は、分散型アレイモデリング、信号対干渉雑音比の求解、及び感知性能評価の3つの部分を含む、摂動の影響下での分散型衛星編隊に基づくアレイスペクトル感知のモデリング分析方法であって、
具体的なステップとして、
分散型アレイモデリングであるステップ1では、ゲートウェイ局が感知タスクの開始または終了のコマンドを発行し、感知用の主衛星が、関連のコマンドを受信した後、各付随衛星と共にローカル感知を行い、ランダムアンテナアレイ理論を利用して摂動下での衛星の平均ステアリングベクトルを取得し、
信号対干渉雑音比の求解であるステップ2では、各付随衛星によって検出された信号を主衛星で融合し、干渉雑音比を最大化して制約付き最適化問題を確立することにより、ビーム形成重みベクトルを取得し、到来波方向が正確に推定される場合と不一致の場合、最大信号対雑音比の正確な式と近似式をそれぞれ与え、
感知性能評価であるステップ3では、得られた最大信号対干渉雑音比に基づいて、シャドーライスフェージングモデルの下での分散型編隊衛星の正確な検出確率の閉形式表現を導出し、外乱と強い干渉信号による感知性能への影響を分析し、摂動の影響下での分散型衛星編隊のスペクトル感知性能の理論的分析を完了する、
摂動の影響下での分散型衛星編隊に基づくアレイスペクトル感知のモデリング分析方法である。
【0009】
本発明のさらなる改良としては、ステップ(2)では、主衛星は、付随衛星と地上感知ターゲットの位置情報に基づいて、重みベクトルを決定し、到来波方向が正確に推定される場合、最大信号対雑音比の正確な式を用いて、信号対干渉雑音比を算出するための係数を決定し、それ以外の場合、主衛星は最大信号対雑音比の近似式を用いて、前記係数を決定する。
【0010】
本発明のさらなる改良としては、ステップ2で確立された制約付き最適化問題は、次のように表され、
【0011】
【0012】
【0013】
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以下の有益な効果を有する。本発明では、ビーム成形技術を利用して、ターゲット放射源の空間フィルタリングを実現し、弱い信号に対する感知能力を向上させる。摂動の影響下での分散型衛星編隊の性能解析を行い、摂動による感知性能への影響を重点的に分析し、それぞれ感知ターゲットの到来波方向に誤差がない場合と不一致の場合の信号対雑音比の式について、シャドーライスチャネルモデルの下での正確な検出確率の式を導出し、弱い信号に対する感知能力を効果的に向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の方法の実施フローチャートである。
図2】本発明の方法における分散型衛星編隊ビーム形成に基づく5種類の感知方法の比較図である。
図3】本発明の方法における5種類の異なる感知方法と摂動半径との間の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態における技術的手段について明確かつ完全に説明する。明らかに、記載された実施形態は、本発明の一部の実施形態に過ぎず、全ての実施形態ではなく、本発明の実施形態に基づいて、当業者が創造的な労働を行うことなく得られるその他の実施形態は、いずれも本発明の保護の範囲に属する。
【0017】
本発明は、摂動の影響下での分散型衛星編隊に基づくアレイスペクトル感知のモデリング分析方法であり、具体的なステップは、次のとおりである。
【0018】
分散型アレイモデリングでは、ゲートウェイ局は感知タスクの開始または終了のコマンドを発行し、感知用の主衛星は、関連のコマンドを受信した後、各付随衛星と共にローカル感知を行い、ランダムアンテナアレイ理論を利用して摂動下での衛星の平均ステアリングベクトルを取得する。
【0019】
ステップ1では、分散型衛星編隊は、ゲートウェイ局が発行した感知コマンドに従って、単一衛星のスペクトル感知を行い、各付随衛星は、衛星間リンクを介して感知信号を主衛星に直接送信し、主衛星で信号レベル融合を実行し、ステップ2に進む。
【0020】
ステップ2では、主衛星は、付随衛星と地上感知ターゲットの位置情報に基づいて、重みベクトルを決定し、地上感知ターゲットが正確に既知である場合、最大信号対雑音比の正確な式を用いて、信号対干渉雑音比を算出するための係数を決定し、それ以外の場合、ステップ3に進む。
【0021】
ステップ3では、主衛星は、最大信号対雑音比の近似式を用いて、信号対干渉雑音比を算出するための係数を決定する。
【0022】
信号対干渉雑音比の求解では、各低軌道編隊衛星は、重み付け融合のために感知信号s(t)を主衛星に送信し、信号対干渉雑音比の最大化を目指して最適化関数を確立する。
【0023】
【0024】
【0025】
到来波方向が不一致の場合、最適化問題は近似され、一般的ではなく、信号対干渉雑音比は信号対雑音比として近似でき、コーシーの不等式及び算術平均と二乗平均との関係を用いることにより、次のような信号対干渉雑音比の近似式が得られ、
【0026】
【0027】
【0028】
本発明は、分散型編隊衛星における衛星の相対位置の特性について、摂動による分散型衛星編隊に基づく感知性能への影響を調査し、感知ターゲットの到来波方向に誤差がない場合と不一致の場合について、シャドーライスフェージング下でのスペクトル感知の正確な検出確率をそれぞれ評価し、図2に示すように、到来波方向が正確に推定される場合、従来の方法と比較して、本発明で提案された方法は、誤警報確率が与えられた場合に最も高い正確な検出確率を得ることができ、正確な検出確率が与えられた場合に最も低い誤警報確率を得ることができ、その結果は図2に示される。また、図3に示すように、さらに摂動半径による正確な検出確率への影響を評価し、与えられた誤警報確率が0.01、摂動半径が50m、到来波方向に不一致がある(推定誤差が5%以下)場合、本発明の提案方法は95%の正常な検出確率を得ることができ、これは正確に推定される場合の正確な検出確率に近いものである。その結果、本発明の提案方法が、ターゲット放射源に対して空間フィルタリングを行うことにより、最終的に強い信号と弱い信号が共存する中で、弱い信号に対する感知能力を効果的に向上させることを証明している。
【0029】
上記は、本発明の好ましい実施形態に過ぎず、当業者にとって、本発明の原理から逸脱することなく、いくつかの改良及び修正を行うことができ、これらの改良及び修正も本発明の保護の範囲と見なされるべきである。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-08-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型アレイモデリング、信号対干渉雑音比の求解、及び感知性能評価の3つの部分を含む、摂動の影響下での分散型衛星編隊に基づくアレイスペクトル感知のモデリング分析方法であって、
具体的なステップとして、
分散型アレイモデリングであるステップ(1)では、ゲートウェイ局は感知タスクの開始または終了のコマンドを発行し、感知用の主衛星は、関連のコマンドを受信した後、各付随衛星と共にローカル感知を行い、ランダムアンテナアレイ理論を利用して摂動下での衛星の平均ステアリングベクトルを取得し、
信号対干渉雑音比の求解であるステップ(2)では、各付随衛星によって検出された信号を主衛星で融合し、信号対干渉雑音比を最大化して最適化問題を確立することにより、最適化されたビーム形成重みベクトルを取得し、到来波方向が正確に推定される場合と不一致の場合、最大信号対雑音比の正確な式と近似式をそれぞれ与え、
感知性能評価であるステップ(3)では、得られた最大信号対干渉雑音比に基づいて、シャドーライスフェージングモデルの下での分散型編隊衛星の正確な検出確率の閉形式表現を導出し、外乱と強い干渉信号による感知性能への影響を分析し、摂動の影響下での分散型衛星編隊のスペクトル感知性能の理論的分析を完了し、
前記ステップ(2)では、確立された信号対干渉雑音比を最大化する最適化問題は、次のように表され、
【請求項2】
前記ステップ(2)では、主衛星は、付随衛星と地上感知ターゲットの位置情報に基づいて、放射源の到来波方向が正確に推定される場合に信号対干渉雑音比を最大化する最適化問題を解くことにより、最適化された重みベクトルを取得し、前記重みベクトルを用いて信号対雑音比を算出することを特徴とする、請求項1に記載の摂動の影響下での分散型衛星編隊に基づくアレイスペクトル感知のモデリング分析方法。
【請求項3】
【請求項4】
【請求項5】
前記ステップ(3)では、独立した同一分布のシャドーライスフェージング下での分散型衛星編隊の正確な検出確率の閉形式表現は、次のようになり、
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信技術の分野に関し、特に、摂動の影響下での分散型衛星編隊に基づくアレイスペクトル感知のモデリング分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
低軌道衛星はシームレスなグローバルカバレッジの特徴があり、衛星の本来の広いカバレッジの特徴により、そのビームカバレッジ範囲が広いため、一つのビームのメインローブの範囲内に多くのノードが存在する一方で、低軌道衛星はサイズと重量に制限があり、大口径の高利得アンテナを搭載することができず、単一の衛星は地上周波数機器に対する感知能力が比較的弱い。マルチ衛星協調に基づくスペクトル感知は、空間ダイバーシティを有効に利用し、感知性能を向上させることができる。衛星システムにおいては、分散型衛星編隊は協調方式の一つであり、複数の同軌道または隣接軌道の衛星を編隊飛行させることで、分散した衛星資源を統合し、衛星間高速相互接続、分散型自律協調、資源仮想化などの重要な技術により、サービス拡張機能を実現する。従来の衛星コンスタレーションと比較して、コストが安く、信頼性が高く、システムの再構築が可能であるなどの利点がある。現在、分散型編隊衛星は、三次元イメージング、気象学、ナビゲーションなどの分野で広く使用されており、公開されたプロジェクトまたは計画には、米国のTechsat-21、大学のナノ衛星工学、欧州宇宙機関のClusterII、フランスのCartwheelなどの項目が含まれ、star-linkなどの現在注目されている大規模なコンステレーションも、軌道変更によりマルチ衛星編隊を実現できる。
【0003】
しかし、同じビーム内に強い信号と弱い信号が共存することを考慮すると、ハード融合におけるエネルギー感知に基づく「and」、「or」基準融合方式、ソフト融合における固有値比検定(ERD)、一般化尤度比検定(GLRT)及びRoy's最大根検定(RLRT)などの従来のマルチ衛星協調感知だけでは、強い信号と弱い信号が共存する中で、弱い信号に対する感知は十分に完了することができず、特定の領域にある特定のターゲットに対する衛星の感知効果が低下する。
【0004】
分散型衛星編隊における衛星位置情報は、決定性とランダム性が共存する特徴があり、決定性とは、軌道上の衛星の軌道パラメータが既知であり、理想的には分散した衛星間の相対位置関係が明確であることを意味し、ランダム性とは、実稼働中に衛星が様々な摂動要因、例えば、地球の非球形、大気、光圧、太陽と月の引力などの影響を受けることを意味し、その中で、地球の非球形による摂動が衛星編隊飛行に与える影響は最も重要であり、衛星の瞬間的な実際の位置がずれることで、分散した衛星間の相対位置関係にランダムな乱れが生じ、衛星の瞬間的な実際の位置が時間とともに変化する。
【0005】
従来技術における授権公告番号CN110034813Bの中国特許では、分散衛星クラスタに基づくパターンを形成するための包括的な方法を開示し、目的関数として異なる電磁信号の送受信タスクの所望のアレイパターン関数を使用し、再構成可能な編隊衛星の隊形を実行可能領域とし、アレイ衛星の送受信信号の重み値を求め、編隊衛星クラスタがアレイを形成することで、衛星リンクの電磁波信号に対する送受信能力を向上させ、アレイ衛星間の相対位置関係が摂動によりランダムに変化するという欠点を克服する。このことから弱い信号に対する感知性能をいかに改善するかが特に重要であることが分かる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、摂動の影響下での分散型衛星編隊に基づくアレイスペクトル感知のモデリング分析方法を提供する。分散型衛星編隊アレイシステムモデルを確立することにより、感知ターゲットTでの平均ステアリングベクトルを取得することができる。瞬時値を平均ビームパターンで近似し、平均信号対干渉雑音比を取得して感知性能を評価する。信号対干渉雑音比の最大化を最適化目的関数として確立することにより、マルチ衛星アレイスペクトル感知システムの性能が得られる。シャドーライスチャネルモデルの下での正確な検出確率により、弱い信号に対する性能向上を効果的に判断することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、以下の技術的手段によって達成される。
【0008】
本発明は、分散型アレイモデリング、信号対干渉雑音比の求解、及び感知性能評価の3つの部分を含む、摂動の影響下での分散型衛星編隊に基づくアレイスペクトル感知のモデリング分析方法であって、
具体的なステップとして、
分散型アレイモデリングであるステップ1では、ゲートウェイ局が感知タスクの開始または終了のコマンドを発行し、感知用の主衛星が、関連のコマンドを受信した後、各付随衛星と共にローカル感知を行い、ランダムアンテナアレイ理論を利用して摂動下での衛星の平均ステアリングベクトルを取得し、
信号対干渉雑音比の求解であるステップ2では、各付随衛星によって検出された信号を主衛星で融合し、信号対干渉雑音比を最大化して最適化問題を確立することにより、最適化されたビーム形成重みベクトルを取得し、到来波方向が正確に推定される場合と不一致の場合、最大信号対雑音比の正確な式と近似式をそれぞれ与え、
感知性能評価であるステップ3では、得られた最大信号対干渉雑音比に基づいて、シャドーライスフェージングモデルの下での分散型編隊衛星の正確な検出確率の閉形式表現を導出し、外乱と強い干渉信号による感知性能への影響を分析し、摂動の影響下での分散型衛星編隊のスペクトル感知性能の理論的分析を完了する、
摂動の影響下での分散型衛星編隊に基づくアレイスペクトル感知のモデリング分析方法である。
【0009】
本発明のさらなる改良としては、ステップ(2)では、主衛星は、付随衛星と地上感知ターゲットの位置情報に基づいて、重みベクトルを決定し、到来波方向が正確に推定される場合、最大信号対雑音比の正確な式を用いて、信号対干渉雑音比を算出するための係数を決定し、それ以外の場合、主衛星は最大信号対雑音比の近似式を用いて、前記係数を決定する。
【0010】
本発明のさらなる改良としては、ステップ2で確立された制約付き最適化問題は、次のように表され、
【0011】
【0012】
【0013】
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以下の有益な効果を有する。本発明では、ビーム成形技術を利用して、ターゲット放射源の空間フィルタリングを実現し、弱い信号に対する感知能力を向上させる。摂動の影響下での分散型衛星編隊の性能解析を行い、摂動による感知性能への影響を重点的に分析し、それぞれ感知ターゲットの到来波方向に誤差がない場合と不一致の場合の信号対雑音比の式について、シャドーライスチャネルモデルの下での正確な検出確率の式を導出し、弱い信号に対する感知能力を効果的に向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の方法の実施フローチャートである。
図2】本発明の方法における分散型衛星編隊ビーム形成に基づく5種類の感知方法の比較図である。
図3】本発明の方法における5種類の異なる感知方法と摂動半径との間の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態における技術的手段について明確かつ完全に説明する。明らかに、記載された実施形態は、本発明の一部の実施形態に過ぎず、全ての実施形態ではなく、本発明の実施形態に基づいて、当業者が創造的な労働を行うことなく得られるその他の実施形態は、いずれも本発明の保護の範囲に属する。
【0017】
本発明は、摂動の影響下での分散型衛星編隊に基づくアレイスペクトル感知のモデリング分析方法であり、具体的なステップは、次のとおりである。
【0018】
分散型アレイモデリングでは、ゲートウェイ局は感知タスクの開始または終了のコマンドを発行し、感知用の主衛星は、関連のコマンドを受信した後、各付随衛星と共にローカル感知を行い、ランダムアンテナアレイ理論を利用して摂動下での衛星の平均ステアリングベクトルを取得する。
【0019】
ステップ1では、分散型衛星編隊は、ゲートウェイ局が発行した感知コマンドに従って、単一衛星のスペクトル感知を行い、各付随衛星は、衛星間リンクを介して感知信号を主衛星に直接送信し、主衛星で信号レベル融合を実行し、ステップ2に進む。
【0020】
ステップ2では、主衛星は、付随衛星と地上感知ターゲットの位置情報に基づいて、重みベクトルを決定し、地上感知ターゲットが正確に既知である場合、最大信号対雑音比の正確な式を用いて、信号対干渉雑音比を算出するための係数を決定し、それ以外の場合、ステップ3に進む。
【0021】
ステップ3では、主衛星は、最大信号対雑音比の近似式を用いて、信号対干渉雑音比を算出するための係数を決定する。
【0022】
信号対干渉雑音比の求解では、各低軌道編隊衛星は、重み付け融合のために感知信号s(t)を主衛星に送信し、信号対干渉雑音比の最大化を目指して最適化関数を確立する。
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
本発明は、分散型編隊衛星における衛星の相対位置の特性について、摂動による分散型衛星編隊に基づく感知性能への影響を調査し、感知ターゲットの到来波方向に誤差がない場合と不一致の場合について、シャドーライスフェージング下でのスペクトル感知の正確な検出確率をそれぞれ評価し、図2に示すように、到来波方向が正確に推定される場合、従来の方法と比較して、本発明で提案された方法は、誤警報確率が与えられた場合に最も高い正確な検出確率を得ることができ、正確な検出確率が与えられた場合に最も低い誤警報確率を得ることができ、その結果は図2に示される。また、図3に示すように、さらに摂動半径による正確な検出確率への影響を評価し、与えられた誤警報確率が0.01、摂動半径が50m、到来波方向に不一致がある(推定誤差が5%以下)場合、本発明の提案方法は95%の正常な検出確率を得ることができ、これは正確に推定される場合の正確な検出確率に近いものである。その結果、本発明の提案方法が、ターゲット放射源に対して空間フィルタリングを行うことにより、最終的に強い信号と弱い信号が共存する中で、弱い信号に対する感知能力を効果的に向上させることを証明している。
【0029】
上記は、本発明の好ましい実施形態に過ぎず、当業者にとって、本発明の原理から逸脱することなく、いくつかの改良及び修正を行うことができ、これらの改良及び修正も本発明の保護の範囲と見なされるべきである。
【国際調査報告】