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特表2024-506184マイクロレンズアレイ投影装置、照明装置、および車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-09
(54)【発明の名称】マイクロレンズアレイ投影装置、照明装置、および車両
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/50 20060101AFI20240202BHJP
   F21V 5/00 20180101ALI20240202BHJP
   F21V 5/04 20060101ALI20240202BHJP
   F21V 14/06 20060101ALI20240202BHJP
   B60Q 1/24 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
B60Q1/50 Z
F21V5/00 320
F21V5/04 350
F21V14/06
B60Q1/24 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548638
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(85)【翻訳文提出日】2023-09-04
(86)【国際出願番号】 EP2021084352
(87)【国際公開番号】W WO2022171328
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】102021000724.7
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】ヤルゲルディ,シナン
(72)【発明者】
【氏名】ムラー,アクセル
(72)【発明者】
【氏名】ボロウスキー,マーティン
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339AA43
3K339BA01
3K339BA18
3K339BA21
3K339BA22
3K339BA25
3K339BA28
3K339CA01
3K339CA27
3K339CA30
3K339DA01
3K339DA02
3K339DA03
3K339DA05
3K339DA06
3K339FA05
3K339FA08
3K339GB01
3K339HA01
3K339JA21
3K339KA37
3K339LA01
3K339MA01
3K339MC26
(57)【要約】
【課題】能動的三角測量に基づく周辺認識システムの精度を改善する光パターンを生成するための改善されたマイクロレンズアレイ投影装置を提供する。
【解決手段】本発明は、それぞれ少なくとも1つの光源(2)、フィールドレンズアレイ(3)、投影レンズアレイ(4)、及び光源(2)から出ている光路(5)内でフィールドレンズアレイ(3)と投影レンズアレイ(4)との間に配置されているパターンテンプレートを備える、光源(2)から放射された光から光パターン(6)を生成するためのマイクロレンズアレイ投影装置(1)に関する。本発明に基づくマイクロレンズアレイ投影装置は、パターンテンプレートが少なくとも2つのマイクロスライド(8)を備えるマイクロスライドアレイ(7)から形成されており、少なくとも1つのマイクロスライド(8)は、フィールドレンズアレイ(3)と投影レンズアレイ(4)との間の光軸(OA)に対して垂直な面(E)において、少なくとも1つのアクチュエータ(9)によって移動可能であることを特徴とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ少なくとも1つの光源(2)、フィールドレンズアレイ(3)、投影レンズアレイ(4)、及び前記光源(2)から出ている光路(5)内でフィールドレンズアレイ(3)と投影レンズアレイ(4)との間に配置されているパターンテンプレートを備える、前記光源(2)から放射された光から光パターン(6)を生成するためのマイクロレンズアレイ投影装置(1)であって、
前記パターンテンプレートが少なくとも2つのマイクロスライド(8)を備えるマイクロスライドアレイ(7)から形成されており、
少なくとも1つのマイクロスライド(8)は、前記フィールドレンズアレイ(3)と前記投影レンズアレイ(4)との間の光軸(OA)に対して垂直な面(E)において、少なくとも1つのアクチュエータ(9)によって移動可能である
ことを特徴とするマイクロレンズアレイ投影装置(1)。
【請求項2】
少なくとも2つのマイクロスライド(8)が、特に互いに垂直に交差する行(Z)と列(S)内で移動可能である
ことを特徴とする、請求項1に記載のマイクロレンズアレイ投影装置(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのアクチュエータ(9)は、少なくとも2つの行(Z)および/または列(S)を同時に移動させる、特に並進移動させるために設けられている
ことを特徴とする、請求項2に記載のマイクロレンズアレイ投影装置(1)。
【請求項4】
少なくとも1つのアクチュエータ(9)は、圧電アクチュエータによって形成されている
ことを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のマイクロレンズアレイ投影装置(1)。
【請求項5】
前記光源(2)は、赤外線スペクトルに割り当てられている少なくとも1つの波長で光を放射するために設けられている発光体を備える
ことを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のマイクロレンズアレイ投影装置(1)。
【請求項6】
前記マイクロスライド(8)はそれぞれ、前記光源(2)から放射された光に対する透過部分(11.1)と不透過部分(11.2)からなるパターン(10)を備え、少なくとも2つのマイクロスライド(8)は互いに異なるパターン(10)を有する、
ことを特徴とする、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のマイクロレンズアレイ投影装置(1)。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の少なくとも1つのマイクロレンズアレイ投影装置(1)を備える
ことを特徴とする照明装置(12)。
【請求項8】
請求項7に記載の少なくとも1つの照明装置(12)を備える
ことを特徴とする車両(13)。
【請求項9】
車両(13)が走行可能な道路(15)、特に、走行方向(F)において前記車両(13)の前方にある道路(15)の道路状態を特定するための、前記車両(13)の周辺認識システム(14)における請求項7に記載の照明装置(12)の使用。
【請求項10】
前記道路状態は、能動的三角測量に基づいて特定される
ことを特徴とする、請求項9に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に詳述されている種類のマイクロレンズアレイ投影装置、照明装置、車両、ならびに道路状態を特定するための、車両の周辺認識システムにおけるそのような照明装置の使用に関する。
【0002】
デジタル化の進展に伴って、車両の自動化の度合いも増加している。例えば、今日の車両は広範囲にわたる運転者支援システムを備え、車両を運転する人(運転手)が車両操作においてそれらのシステムから支援されることにより、道路交通における快適性および/または安全性を向上させている。例えば車間距離制御装置または駐車支援システムのような運転者支援システムの中には、車両周辺の静的および/または動的周辺物体の存在、ならびにそれらの車両までの相対距離などの周辺情報を必要とするものがいくつかある。さらに、例えばアダプティブサスペンションコントロールなど、いくつかの運転者支援システムは、車両が間もなく走行する道路の状態に関する情報を必要とする。
【0003】
一般的な先行技術から、周辺を監視するためのさまざまなセンサシステムが周知である。特に超音波センサ、レーダーセンサ、単眼カメラまたはステレオカメラを備えるカメラシステム、またライダーのようなレーザースキャナも、すでに自動車分野では実績がある。しかし、ステレオカメラを使用した立体情報の計算の質は、使用している2台のカメラ間の画像情報をマッピングするマッピングアルゴリズムの質に比較的大きく依存している。さらに、そのようなシステムを確実に使用できるのは昼間だけであり、また、精度は距離に依存している。道路状況を認識するためのデジタル化された「地上型ライダー」の使用は、費用が高く、垂直方向の角分解能に限界があることから、大量生産での使用には向いていない。
【0004】
周辺監視または立体情報取得のためのもう1つの方法は、能動的三角測量を使用するもので、特に車両が走行する地面をスキャンすることにより、その状態を分析することができる。これにより、道路表面の穴、スピード防止帯などの接地面の凹凸、あるいは縁石や郊外の道路と平行に走る溝などの路面境界も、特に迅速かつ効果的に検出することが可能である。ここでは、プロジェクタが、構造化された光パターンを周辺、特に走行方向において車両の前方にある道路に投射し、周辺から反射してくる光パターンの特徴点を、車両に配置されているカメラが記録する。このとき、距離特定または立体情報取得は、いわゆるエピポーラ幾何を考慮することで可能である。車載カメラおよびプロジェクタの取付け箇所を位置的にオフセットすることにより、カメラによって生成されたカメラ画像において、凹凸や周辺物体によって光パターンが歪められると、光パターンの特徴点のずれを検知することが可能である。次に、光パターンがどれくらい強く歪められるかの度合いに応じて、立体情報を計算することができる。立体情報取得のための能動的三角測量に基づくシステムの使用は、場面が能動的に照明で照らされるという理由から、暗がりでの使用も可能にする。
【0005】
例えば、下記特許文献1には、能動的三角測量に基づいて車両周辺を認識するための対応する装置および対向する方法が開示されている。この場合、プロジェクタとして、車両のピクセルヘッドライトが使用される。ピクセルヘッドライトは、車両の正面前照灯または独立した前照灯であってよい。このとき、ピクセルヘッドライトは、非常に短い時間枠で周辺に光パターンを投影するので、人間にはその光パターンを感知することはできない。このとき、周辺を認識するカメラおよびピクセルヘッドライトは互いに同期しており、従って、ピクセルヘッドライトが光パターンを周辺に投射するとすぐに、周辺のカメラ画像が撮影されるようになっている。光パターンは短時間だけ周辺に投射され、運転手には光パターンを感知することができないため、特許文献1で開示されている方法は、特に快適に使用できるようになっている。特に、運転手は、これによって注意を逸らされない。このとき、ピクセルヘッドライトは、基本照明に追加して光パターンを周辺に投射したり、光パターンの放射中に基本照明を短時間作動解除したり、少なくとも減光したりすることもできる。光パターンは、例えば線パターン、縞パターン、ドットパターン、格子パターン、市松模様、および/または疑似ランダムパターンなどを含むことができる。このとき、ピクセルヘッドライトの明/暗制御は、光パターンの放射時に、基本照明の基本輝度が時間平均で一定しているように行われる。特許文献1の中で開示されている装置および方法により、路面の凹凸、路面境界、周辺物体を検出し、車両に対するそれらの相対位置を特定することができる。特許文献1の中で開示されている装置は、光パターンを生成するためにピクセルヘッドライトを使用するが、これは複雑な構造を有しているため、高価である。
【0006】
さらに、一般的な先行技術から、いわゆるマイクロレンズアレイプロジェクタ(マルチ開口投影型ディスプレイとも呼ぶ)が周知であり、これにより、構造化された光パターンの放射が可能である。このために、光源と、光パターンを投射する投影面との間にある光路内に物体構造を配置して、光を構造化する。さらに、光路内の物体構造の前または後ろにフィールドレンズアレイおよび投影レンズアレイを配置することにより、光源から放射される光線を適切に集束またはビーム化することが可能である。このとき、フィールドレンズアレイおよび投影レンズアレイの各レンズは、物体構造のサブ構造に割り当てられている。例えば、そのようなマイクロレンズアレイプロジェクタは、美的な車両周辺照明を作るために使用される。小型化されたレンズアレイにより、他の投射システムと比べて比較的深い被写界深度を生成することが可能である。
【0007】
そのようなマイクロレンズアレイプロジェクタを備える自動車の照明装置は、例えば下記特許文献2から周知である。この文献では、駐車支援システム、距離制御支援システム、および/または狭路通り抜け支援システムとして、照明器具により車両周辺に投射される光パターンの使用が説明されている。特許文献2の中で開示されている照明器具によって周辺に投射される光パターンは、車両までの規定距離上に集束されていることから、車両と、光パターンが投射される物体との間の所定距離においては、光パターンに含まれる表示内容が鮮明に現われる。車両が物体に近づき、規定距離に到達すると、表示内容が鮮明に現われることにより、運転手には、規定距離の到達時に、車両と物体との間の規定距離に到達したという情報が伝達されることになる。また、照明器具を使って、車両までの距離が相互に異なる個別の集束面上にそれぞれ集束する複数の光パターンを、同時に周辺に投射することも可能である。これにより、運転手に車両と周辺物体との間の距離に関する情報を伝達するための装置が特に簡単かつ安価に実現される。従って、車両と周辺物体との間の距離を視覚化するためのその他の表示は不要である。このとき、マルチ開口投影型ディスプレイは、車両の少なくとも1つの正面前照灯および/または尾灯にも組み込まれていてよい。
【0008】
さらに、下記特許文献3には、能動的三角測量を使用して、車両の道路にある障害物を検出するための方法および装置が開示されている。この文献では、光パターンを生成するためのプロジェクタとして、光源、回折格子、レンズからなる構成が使用される。このとき、光源は、特にレーザーダイオードによって形成され、赤外線を放射するために設けられている。回折格子は、さまざまな光パターンを生成するために多数のさまざまな線パターンを有するフィルタホイールから形成することができる。フィルタホイールの回転により、光源とレンズとの間の光路に、異なる回折格子を提供することができる。さらに、光源、回折格子、レンズからなる構成は、望ましい目標領域に光パターンを投射できるようにするため、水平軸および垂直軸を中心に旋回可能であってもよい。しかしながら、フィルタホイールは、さらなる回折格子を収容するためのスペースに制限のあることが欠点である。これにより、さまざまな光パターンを生成するためにさらなる回折格子を設けることが大きく制限される。さらに、特許文献3で開示されている装置によって周辺に投射される光パターンは、比較的低い被写界深度しか有していないことから、車両のはるか前方にある周辺領域の立体情報を取得する際に、比較的低い精度しか得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2015 008 774 A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2014 219 371 A1号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10 2015 206 936 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、能動的三角測量に基づく周辺認識システムの精度を改善し、その精度が現在の走行状況から影響を受けることがない光パターンを生成するための改善されたマイクロレンズアレイ投影装置を提供することである。。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に基づき、この課題は、請求項1の特徴を有するマイクロレンズアレイ投影装置、請求項7の特徴を有する照明装置、請求項8の特徴を有する車両、請求項9の特徴を有する、車両の周辺認識システムにおける照明装置の使用によって解決される。有利な実施形態および発展形態は、従属請求項から明らかである。
【0012】
冒頭に述べた種類のマイクロレンズアレイ投影装置では、本発明に基づき、パターンテンプレートが、少なくとも2つのマイクロスライドを備えるマイクロスライドアレイから形成されており、少なくとも1つのマイクロスライドは、フィールドレンズアレイと投影レンズアレイとの間の光軸に対して垂直な面において、少なくとも1つのアクチュエータによって移動可能である。
【0013】
マイクロレンズアレイ投影装置により、比較的深い被写界深度を持つ光パターンが生成される。マイクロスライドアレイにより、比較的多くのさまざまなマイクロスライドを設けることが可能となり、これらのマイクロスライドで個別の光パターンを生成することができる。さらに、マイクロスライドは面内で移動できることから、望ましい光パターンを望ましい周辺領域に投射することができる。これにより、光パターンを現在の周辺状況に個別に適合させることが可能となる。従って、1つまたは複数のマイクロスライドを移動させることにより、特定の周辺領域において望ましい光パターンを形成できるようになる。このとき、先行技術と同様に、光パターンは、線パターン、縞パターン、ドットパターン、格子パターン、市松模様、疑似ランダムパターンなどを含むことができる。例えば、特定の周辺領域において、線密度またはドット密度を適切に上げたり下げたりすることが可能である。また、例えば線の方向についても、マイクロスライドを移動させることによって相応に適合させることができる。例えば、マイクロスライドは、回転および/または並進によって面内で移動することができる。
【0014】
マイクロレンズアレイ投影装置は、少なくとも1つのLED、OLED、レーザーなどの一般的な発光体、および/または、ハロゲンランプや電球、またはガス放電灯などのランプを光源として有していてよい。
【0015】
マイクロスライドアレイによる光パターンを生成するために、フィールドレンズアレイと投影レンズアレイが、光路内にマイクロスライドアレイと同じ断面積を有している必要はない。例えば、マイクロスライドアレイは、両方のレンズアレイよりも小さな断面積を有していれば十分である。言い換えると、マイクロスライドアレイが備えているマイクロスライドよりも多くのフィールドレンズおよび投影レンズが設けられていてよい。これにより、マイクロスライドがフィールドレンズと投影レンズとの間になくても、フィールドレンズと投影レンズのペアによる光伝播が妨げられることはない。マイクロスライドが言及したレンズの間に移動すると、マイクロスライドによって生成された光パターンは、対応するフィールドレンズと投影レンズのペアに割り当てられている周辺領域に投射される。しかし、基本的に、フィールドレンズと投影レンズの数はマイクロスライドの数と同一でもよい。次に、マイクロスライドが移動すると、個々のマイクロスライドはレンズペアから外へ移動できる。例えば、レンズペアの中に凹部を入れることで、レンズペアを通って妨害なく行われる光伝播が可能になる。レンズペアよりも多くのマイクロスライドが設けられていてもよい。これにより、レンズペアと特殊なマイクロスライドによって生成される光パターンを、別のマイクロスライドの移動によって変更することができる。
【0016】
マイクロレンズアレイ投影装置の有利な発展形態では、少なくとも2つのマイクロスライドが、特に互いに垂直に交差する行と列内で移動可能であるように設けられている。マイクロスライドを行と列に配置することにより、マイクロスライドの特に柔軟かつ簡単な移動が可能になる。
【0017】
マイクロレンズアレイ投影装置のもう1つの有利な実施形態によれば、少なくとも1つのアクチュエータが、少なくとも2つの行および/または列を同時に移動させる、特に並進移動させるために設けられている。これにより、本発明に基づくマイクロレンズアレイ投影装置の構造を簡略化できる。従って、多数のさまざまな行および/または列の移動に必要なアクチュエータの数が少なくなることから、費用を節約することができる。このために、例えば、1つのアクチュエータが同時に複数の行および/または列に接続されていてよい。例えば、マイクロスライドは、アクチュエータによってマイクロスライドアレイの範囲内を並進移動できるセグメント化されたストリップまたはセグメント化されていないストリップに配置されていてよい。このとき、個々のストリップは、その調整動作に応じて、マイクロスライドアレイおよび/またはフィールドレンズアレイと投影レンズアレイに割り当てられている面の断面積領域から外へ少なくとも部分的に移動することも可能である。このとき、アクチュエータは、間接的または直接的に、少なくとも1つのマイクロスライドまたは対応するストリップに接続されていてよい。マイクロスライドを面内で移動させることにより、フィールドレンズアレイと投影レンズアレイのそれぞれのフィールドレンズと投影レンズに対応するマイクロスライドの割り当てが変化する。従って、例えばフィールドレンズと投影レンズの特定の組み合わせにより、特定の周辺領域に集束させることができる。対応するフィールドレンズと対応する投影レンズとの間に望ましいマイクロスライドを移動させることにより、すでに言及したように、対応するマイクロスライドによって生成可能な光パターンを望ましい周辺領域に投射することができる。基本的に、フィールドレンズと投影レンズのさまざまなペアは同じ周辺領域に向けられているが、ここでは異なる集束を有しており、マイクロスライドによって生成された光パターンをさまざまな大きさで歪めること、および/または、例えば光パターンの光出力をさまざまな度合いに弱めたり、偏光させたりするなど、その他の仕方で操作することも考えられる。
【0018】
さらに、マイクロレンズアレイ投影装置のもう1つの有利な実施形態では、少なくとも1つのアクチュエータが圧電アクチュエータによって形成されているように設けられている。これにより、マイクロレンズアレイ投影装置の構造を簡略化し、費用を削減することができる。これに加え、圧電アクチュエータは、特に振動に対して耐性があるので、振動負荷のかかる環境におけるマイクロレンズアレイ投影装置の堅牢な動作が可能になる。これにより、本発明に基づくマイクロレンズアレイ投影装置の信頼性を改善することができる。
【0019】
マイクロレンズアレイ投影装置のさらなる有利な実施形態によれば、光源は、赤外線スペクトルに割り当てられている少なくとも1つの波長で光を放射するために設けられている発光体を備えている。このとき、発光体は、固定波長を持つ単色光と、複数の波長の両方を同時に放射することができる。ここでは、1つの波長が赤外線スペクトルに割り当てられており、少なくとも1つの別の波長が、例えば可視光に割り当てられていてよい。しかしまた、発光体から発生し得る全波長が赤外線スペクトルに由来するものであってもよい。これにより、人間には見えない光パターンを生成できることから、人が妨害および/または眩惑されるおそれはない。さらに、周辺光の強い光によって光パターンが見えなくなるリスクも低下する。従って、カメラシステムにより、光パターンをより簡単に認識することが可能となる。能動的三角測量に基づいて立体情報を特定するための周辺認識システムにおいて、本発明に基づくマイクロレンズアレイ投影装置を用いて生成される光パターンを使用する場合は、さらに、システム全体を簡略化することができる。というのも、この光パターンは、永続的に、すなわち連続で周辺に投影することが可能であり、従って、カメラによって生成されたカメラ画像内の光パターンを可視化するために、カメラと光源とを同期する必要はないからである。そのような同期は、冒頭で述べた先行技術と同様に、例えば可視光を放射する光源を使用する場合に必要である。
【0020】
好ましくは、マイクロスライドがそれぞれ、光源から放射された光に対する透過部分と不透過部分からなるパターンを備えており、少なくとも2つのマイクロスライドは互いに異なるパターンを有している。周辺を適切に照らし出すため、1つには、規定のマイクロスライドがフィールドレンズと投影レンズからなる特定の組み合わせの間で移動可能であり、さまざまなフィールドレンズと投影レンズのペアは、例えばマイクロスライドによって生成された光パターンをさまざまな周辺領域に投射する、および/または、その際にさまざまな度合いで歪める、および/または、集束させる。これに加え、マイクロスライドアレイの個々のマイクロスライドがさまざまなパターンを備えている場合、周辺を現在の走行状況に応じて適切に照らし出すことができる。例えば、特定の周辺領域において、線密度またはドット密度を適切に上げたり下げたりすることが可能である。これにより、パターンの個々の構成要素の向きを変更する、および/または、周辺に投射された光パターンの全体または個々の部分を交換することもできる。
【0021】
本発明に基づき、照明装置は、少なくとも1つの前述したマイクロレンズアレイ投影装置を備えている。この照明装置は、リフレクタ、ミラー、調整要素、フィルタなど、その他のコンポーネントを有してよい。
【0022】
本発明に基づき、車両はそのような照明装置を有している。この車両は、乗用車、トラック、トランスポータ、バスなど、任意の車両であってよい。このとき、この照明装置は、例えば、車両の少なくとも1つの前面前照灯および/または少なくとも1つの尾灯に組み込まれているか、それらを形成することができる。これにより、本発明に基づくマイクロレンズアレイ投影装置によって周辺に投射された光パターンを、車両前方領域にも、車両後方領域にも放射させることができる。車両は、少なくとも部分的に自動で制御することも可能である。このとき、本発明に基づくマイクロレンズアレイ投影装置で周辺に投射された光パターンを用いて得られた立体情報は、例えばアクティブサスペンションのような運転者支援システムの入力変数として、および/または、車両前後方向および/または横方向ガイドへの調整介入を実行するためのシステムの入力変数として用いることができる。
【0023】
本発明に基づき、前述の照明装置は、車両が走行可能な道路、特に、走行方向において車両の前方にある道路の道路状態を特定するために車両の周辺認識システムにおいて使用される。
【0024】
このとき、好ましくは、道路状態が、能動的三角測量に基づいて特定される。そのような周辺認識システムは、通常、車両が走行可能な道路に投射される光パターンを生成するための少なくとも1つの照明装置と、車両の照明装置に対して垂直方向および/または水平方向に間隔を空けて配置されている、光パターンのカメラ画像を生成するための少なくとも1つのカメラと、カメラ画像を評価するための、および/または、照明装置が現在の走行状況に光パターンを適合させることができるように照明装置を制御する調整信号を出力するための演算ユニットとを備える。例えば、車両がカーブに近づくと、カーブしている道路に光パターンが一致しなくなるため、光パターンの放射を調整する必要がある。このとき、例えばカーブの変化は、カメラによって生成されたカメラ画像の分析から得ることができる。これに基づいて、演算ユニットは、アクチュエータを制御するための調整信号を出力することができ、これを受けて、アクチュエータは、少なくとも1つのマイクロスライドをフィールドレンズアレイと投影レンズアレイとの間の面内で移動させる。これにより、カーブを通って延在する道路に光パターンを投射することができるので、カーブに存在する凹凸にアクティブサスペンションなどを合わせることができ、運転手の快適な走行体験を可能にする。従って、周辺を能動的に照明で照らすことにより、暗がりでも道路の状態を認識することが可能である。マイクロレンズアレイプロジェクタと関連して生成可能な比較的深い被写界深度により、さらに、車両からの距離が増えるに従って生じる認識精度の低下もより少なくなる。
【0025】
本発明に基づくマイクロレンズアレイ投影装置、照明装置、車両、ならびに道路状態を特定するための車両の周辺認識システムでの照明装置の使用のさらなる有利な実施形態は、以下に図を用いて詳しく説明する実施例からも明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】能動的三角測量に基づく周辺認識システムの原理図である。
図2】これから車両が走行する道路に投射される光パターンの例を示す図である。
図3】本発明に基づくマイクロレンズアレイ投影装置の概略図である。
図4図3に示される、フィールドレンズアレイ、マイクロレンズアレイ、投影レンズアレイからなる構成の詳細図である。
図5】光軸の方向から見たマイクロスライドアレイの平面図である。
図6】光軸の方向から見た代替のマイクロスライドアレイの平面図である。
図7】変化する走行状況に応じて、道路に投射される光パターンを調整することを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、車両13(ここでは乗用車)の能動的三角測量に基づく周辺認識システム14の使用を示している。周辺認識システム14は、少なくとも1つの本発明に基づく照明装置12、演算ユニット16、カメラ17を備えている。照明装置12は、少なくとも1つの本発明に基づくマイクロレンズアレイ投影装置1を有しているか、またはこの投影装置1によって形成される。照明装置12は、特に車両前照灯の中に組み込まれているか、または前照灯自体を形成するものであってよい。照明装置12により、図2に詳しく示されている光パターン6は、走行方向Fにおいて車両13の前方にある道路15に投射される。光パターン6は、カメラ17によって記録される。光パターン6は、道路15にある穴または起伏などの構造物18によって歪められる。カメラ17は、照明装置12に対してできる限り大きな垂直方向および/または水平方向のオフセットを有し、道路15に投射されている歪んだ光パターン6をできる限り遮られずに記録できるようになっている。カメラ17によって生成されたカメラ画像は演算ユニット16で評価される。このとき、構造物18によって光パターン6がどの程度歪められたかが調べられる。光パターン6の歪み度合いの分析によって立体情報が得られることで、道路15の道路状態について判断することができる。
【0028】
基本的には、車両13が進行方向Fとは逆の後方に向けられた照明装置12を、例えば尾灯19内に有していることも考えられる。同様に、車両13は、後方に投射された光パターン6を記録するために、後方に向けられたバックアップカメラ20を有している。
【0029】
演算ユニット16によって計算された立体情報または道路状態は、次に、例えばアダプティブサスペンションといった運転者支援システムの入力変数として使用可能である。
【0030】
図2は、例としての光パターン6の平面図である。図2には、光パターン6が線パターンによって形成される。しかし基本的には、光パターン6は考え得るあらゆる形を有してよい。例えば、縞パターン、ドットパターン、格子パターン、市松模様、および/または疑似ランダムパターンであってもよい。示されている仕様では、光パターン6が水平方向および垂直方向の線を有しており、垂直方向の線は、特に、車両13のホイールがこれから走行する車線と一致している。図2の左側には、歪められていない光パターン6が示されている。図2の右側では、光パターン6が起伏(ここではスピード防止帯)によって歪められる。光パターンは、特に、車両13の車線の軌道と一致する光パターン6が投射される特定の周辺領域に対して、パターン内容(ここでは垂直方向の縞)のより高い内容密度が実現されるように実施されている。
【0031】
図3は、本発明に基づくマイクロレンズアレイ投影装置1の概略図を示している。この装置は、例えば少なくとも1つのLED、OLED、レーザー、電球などの形の発光体を持つ光源2を備える。光源2の下流の光路5内には光学レンズ21が配置されている。レンズ21は、任意に設計されていてよい。例えば、このレンズ21は、少なくとも1つの平坦面、凸面、または凹面を有していてよい。
【0032】
光は、レンズ21の後に、多数のフィールドレンズを備えるフィールドレンズアレイ3に当たる。特に、フィールドレンズは、図5のマイクロスライドアレイ7の例に詳しく示されている行Zおよび列Sから形成されている二次元マトリックスに直交して配置されている。
【0033】
フィールドレンズアレイ3には、マイクロスライドアレイ7が接続されている。このマイクロスライドアレイ7は多数のマイクロスライド8を備えており、これらのマイクロスライド8は、光源2から放射された光に対する透過部分11.1と不透過部分11.2からなるパターン10を有する。部分11.1および11.2は、図5に詳しく図示されている。マイクロスライド8またはマイクロスライド8を備えるパターン10により、光源2によって放射された光から光パターン6を生成することができる。
【0034】
マイクロスライドアレイ7には、投影レンズアレイ4が接続されている。マイクロスライド8は、光軸OAに対して直交する面E内で移動可能である。マイクロスライド8の移動により、光パターン6を変更することができる。
【0035】
光パターン6は、次に、例えば道路15上の図示されていない反射面上における集束面FEに入射する。集束面FEは、図3に示されているように、面Eに対して平行に方向づけられている必要はない。特に、本発明に基づくマイクロレンズアレイ投影装置1は、図1のように道路15上に投射された光パターン6が、道路15上への完全な投影に沿って鮮明に焦点が合って現われるように実施されている。このために、フィールドレンズアレイ3と投影レンズアレイ4の個々のフィールドレンズと投影レンズは、互いに異なる焦点を有していてよい。特に、所定のマイクロスライド8は、フィールドレンズと投影レンズの規定されたペアに割り当てられている。マイクロスライド8が面E内で移動することにより、この割り当てを変更することができる。
【0036】
特に、光源2は、赤外線を放射するように設けられている。赤外線には、人間が感知できないという利点があり、従って、光パターン6によって人が妨害されることはない、および/または、注意を逸らされることはない。さらに、これにより、光パターン6は、周辺から反射した周辺光による影響もまったく受けない。
【0037】
これに加え、本発明に基づくマイクロレンズアレイ投影装置1は、追加のレンズ、フィルタ、リフレクタ、ミラー、ヒートシンク、調整装置など、その他の図示されていない構成部品を有していてよい。
【0038】
さらに、図3には、図4に詳しく示されている詳細Aが含まれている。マイクロスライドアレイ7は、例えば図5に示されているように、完全に閉じられているか、または少なくとも1つの側面が開いている枠22を有していてよい。枠22には、フィールドレンズと投影レンズが配置されている基体23上に配置される。枠22が基体23を形成するか、またはフィールドレンズおよび/または投影レンズが、任意の方法で間接的または直接的にマイクロスライドアレイ7の上に載っていることも考えられる。
【0039】
図5は、光軸OAの方向から見たマイクロスライドアレイ7の平面図を示している。図5の実施形態では、マイクロスライド8が、ここでは互いに直交する行Zと列Sに配置されている。しかし、基本的に行Zと列Sは、任意の角度、例えば60°の角度で互いに交差していてもよい。マイクロレンズアレイ投影装置1またはマイクロスライドアレイ7は、マイクロスライド8を移動するための少なくとも1つのアクチュエータ9を備えることができる。アクチュエータ9は、枠22に接続されているか、または例えば枠22の側面の開口部から中に突き出し、少なくとも1つのマイクロスライド8および/またはマイクロスライド8の支持に適した上位構造、例えば図6に示されているストリップ24に接続されていてよい。アクチュエータ9は、特に圧電アクチュエータであってよい。アクチュエータ9は、マイクロスライド8をx方向またはy方向に移動させるために、例えば並進ストローク(並進移動)を行うことができる。このとき、アクチュエータ9が、マイクロスライド8の少なくとも2つの行Zおよび/または列Sの中で同時に移動できる場合は特に有利である。これにより、必要なアクチュエータ9の数を軽減できることで、本発明に基づくマイクロレンズアレイ投影装置1の構造が簡略化され、その結果、費用を節約することが可能になる。このとき、基本的には、マイクロスライドアレイ7のそれぞれ少なくとも1つの行Zおよび/または列Sが、動かないように実施されていることも考えられる。
【0040】
マイクロスライドアレイ7の行Zおよび/または列Sの中には、多数の個々のマイクロスライド8がある。これらのマイクロスライド8は、光源2から放射された光に対する少なくとも1つの透過部分11.1と不透過部分11.2からなるパターン10を有することができる。図5の例では、2つのマイクロスライド8に対する2種類のパターン10の例だけが示されている。より多くのマイクロスライド8が同じパターン10を有していてもよい。
【0041】
図6に示されているように、列Sの移動、または図示されているような行Zの移動は、方向xまたはyのいずれかにのみ行うことができる。図6には、個々のマイクロスライド8がストリップ24の形で配置されており、ストリップ24はx方向に従って移動可能である。y方向の個々またはすべてのマイクロスライド8の並進移動は、図6の例では不可能である。これにより、マイクロスライドアレイ7の構造がさらに簡略化される。このとき、個々のアクチュエータ9は、マイクロスライドアレイ7の任意の水平方向の位置に配置されているマイクロスライド8がそれぞれ任意の別の水平方向の位置に移動できるまで、ストリップ24を動かすことができる。そのために、アクチュエータ9は、間接的または直接的に、ストリップ24またはマイクロスライド8に接続されていてよい。
【0042】
ストリップ24はセグメント化(図示されていない)されていてもよく、これにより、マイクロスライド8はx方向へもy方向へも並進運動が可能となる。さらに、少なくとも1つのストリップ24は、代替の光パターン6を生成できるように、および/または、妨害なく行われる光伝播を可能にするため、さらなるストリップ8および/または凹部25を有してもよい。このとき、ストリップ24自体は「スロットル」としても機能し、これにより、ストリップ24は、レンズペアを通って妨害なく行われる光伝搬を妨げることができる。
【0043】
図7は、車両13の一般的な走行状況を上から見た図である。先行技術から知られているマイクロレンズアレイ投影画面を用いる場合、実線で示されている走行中の道路15.1上には、投射可能な光パターン6のみしか生成できない。しかし、点線で示されているように、カーブに沿って道路15.2を走行する場合、関連する道路範囲は十分に照らし出されないであろう。しかし、本発明に基づくマイクロレンズアレイ投影装置1および対応する照明装置12によれば、光パターン6を変更することができるので、光パターン6はカーブしている道路15.2に一致する。このことにより、車両13が実際に走行している道路15を最適に照らし出すことができる。従って、光パターン6を現在の走行状況に適合させることが可能である。これにより、光パターン6を動的な道路状況および/または走行状況に柔軟に適合すること以外にも、本発明に基づくマイクロレンズアレイ投影装置1は、暗がりにおいても、光パターン6から車両13までの任意の距離においても、マイクロレンズアレイプロジェクタの使用に伴う生成可能な光パターン6の深い被写界深度により、特に信頼性の高い道路15の認識を可能にする。従って、車両13までの距離の増加に伴う認識精度の低下が少なくなる。さらに、赤外線光源の使用により、対応する周辺認識システム14は、周辺光に対して堅牢であり、複雑性が少ない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】