IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エクサジン リミテッドの特許一覧

特表2024-506185圧縮SMA材料を使用して作動するエンジン
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-09
(54)【発明の名称】圧縮SMA材料を使用して作動するエンジン
(51)【国際特許分類】
   F03G 7/06 20060101AFI20240202BHJP
【FI】
F03G7/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548643
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(85)【翻訳文提出日】2023-09-21
(86)【国際出願番号】 EP2022053449
(87)【国際公開番号】W WO2022171843
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】2101938.5
(32)【優先日】2021-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516357166
【氏名又は名称】エクサジン リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EXERGYN LIMITED
【住所又は居所原語表記】DCU Cleantech Innovation Campus,Old Finglas Road,Glasnevin,Dublin 11, IRELAND
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイク ランガン
(72)【発明者】
【氏名】キース ウォーレン
(72)【発明者】
【氏名】ケビン オトゥール
(57)【要約】
【要約】コアとして構成されてドライブ機構に接続される複数の長尺形状記憶合金(SMA)要素または負熱膨張(NTE)要素を備えるエンジンと、エンジンを収容するのに適応するとともにSMA要素またはNTE要素の加熱サイクルおよび冷却サイクルによりSMA要素またはNTE要素を膨張および収縮させるように流体が逐次充填されるのに適応した浸漬室と、SMA要素のうち少なくとも一つまたはNTE要素のうち少なくとも一つに圧縮機械力を印加するように構成されている圧縮装置とを備えるエネルギー回収装置およびエネルギー回収方法。印加される圧縮機械力は、冷却サイクル中に少なくとも一つのSMA要素または少なくとも一つのNTE要素をさらに圧縮する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー回収装置であって、
コアを画定するように構成されてドライブ機構に接続される複数の形状記憶合金(SMA)要素または負熱膨張(NTE)要素を備えるエンジンと、
前記エンジンを収容するのに適応するとともに、SMA要素の加熱サイクルおよび冷却サイクルにより前記SMA要素を膨張および収縮させるように流体が逐次充填されるのに適応している浸漬室と、
前記加熱サイクルおよび/または冷却サイクル中に前記SMA要素の少なくとも一つに圧縮機械力を印加するように構成されている圧縮装置と、
を備えるエネルギー回収装置。
【請求項2】
印加される前記圧縮機械力が前記冷却サイクル中に前記少なくとも一つのSMA要素をさらに圧縮する、請求項1に記載のエネルギー回収装置。
【請求項3】
前記SMA要素が複数のプレートによる少なくとも一つの載置体を備え、少なくとも二つのプレートが形状記憶合金により形成されて上下に組み立てられる、請求項1または2に記載のエネルギー回収装置。
【請求項4】
前記複数の形状記憶合金プレートが、前記載置体での流体の通過を許容するのに適応している複数の流体ポートを備える、請求項3に記載のエネルギー回収装置。
【請求項5】
前記圧縮装置が電気機械アクチュエータを備える、いずれかの先行請求項に記載のエネルギー回収装置。
【請求項6】
前記圧縮装置が、加圧油圧流体を使用してピストンに圧力を印加するように構成されている油圧圧縮モジュールを備える、請求項1から4のいずれかに記載のエネルギー回収装置。
【請求項7】
付加製造または3Dプリントプロセスを使用してSMA要素またはSMAプレートが形成される、いずれかの先行請求項に記載のエネルギー回収装置。
【請求項8】
前記ハウジング内に配置される複数のSMAコアを備えて、サイクル中に単独で圧縮されるように各コアが構成されている、いずれかの先行請求項に記載のエネルギー回収装置。
【請求項9】
一つのSMAコアに載置されている前記複数のプレートを形成する前記SMAの組成が、他のSMAコアに載置されている前記複数のプレートを形成する前記SMAの組成と異なっている、請求項8に記載のエネルギー回収装置。
【請求項10】
エネルギー回収の方法であって、
コアを画定して第2端部でドライブ機構に接続されるように複数の長尺形状記憶合金(SMA)要素または負熱膨張(NTE)要素を配設するステップと、
前記SMA要素の加熱サイクルおよび冷却サイクルにより前記SMA要素を膨張および収縮させるように前記要素を室に収容して流体を逐次充填するステップと、
前記冷却および/または加熱サイクル中に機械的圧縮を前記SMA要素の少なくとも一つに印加するステップと、
を包含する方法。
【請求項11】
前記冷却サイクル中に圧縮機械力を前記少なくとも一つのSMA要素にさらに印加するステップを包含する、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、エネルギー回収、特に形状記憶合金(SMA)または負熱膨張(NTE)材料を利用するエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に摂氏100度未満と考えられる低品位熱は、工業プロセス、動力発生、そして輸送の用途において重大な排出エネルギー流に当たる。このような排出流の回収および再利用が望ましい。この目的で提案されている技術の一例は、熱電発電機(TEG)である。残念なことに、TEGは比較的高価である。このようなエネルギーを回収するために提案されている非常に実験的な別のアプローチは、形状記憶合金の採用である。
【0003】
形状記憶合金(SMA)は、冷間鍛造による最初の形状を「覚えている」合金であって、いったん変形すると加熱時に前の変形形状に戻る。この材料は、油圧、空気、そしてモータに基づくシステムなど、従来のアクチュエータの代用となる軽量の固体である。
【0004】
主要な三タイプの形状記憶合金は、銅・亜鉛・アルミニウム・ニッケル、銅・アルミニウム・ニッケル、そしてニッケル・チタン(NiTi)の合金であるが、例えば、亜鉛、銅、金、鉄を合金にすることによってもSMAが製作され得る。このリストは、非網羅的である。
【0005】
このような材料の記憶は、熱回収プロセスでの使用のため、特に熱からエネルギーを運動として回収するSMAエンジンを構成することにより、1970年代初頭から採用および提案されている。エネルギー回収装置に関連する最近の刊行物は、本発明の譲受人に譲渡された特許文献1(国際公開第2013/087490号)を含む。エネルギー回収装置は、束状構成で配設されるかともに密着包装される複数の長尺ワイヤを有するエンジンコアから成る。SMAまたは負熱膨張(NTE)ワイヤ材料の収縮を効率的なやり方で機械力に変換することが望ましい。SMA材料には、複雑な応力・ひずみ・温度関係が見られる。一般的に、「脱双晶」マルテンサイト相からオーステナイト相へのSMA材料の変形には応力と温度との組み合わせが関わる。
【0006】
特許文献2(英国特許第2,533,357号 エクサジン(Exergyn))が扱っているのは、延伸マルテンサイト状態の材料を復元する力を提供するコアと、スムーズな動作で偏差を減衰するばねとを拮抗的な配置構成で利用することである。特許文献3(米国特許出願公開第2014/007572号 GMグローバル(GM Global))には、マルテンサイト状態で適正な量の復元力を付与することにより様々な高環境温度で材料の性能を向上させる手法が記載されている。特許文献4(米国特許第5,442,914号 オオツカ(Otsuka))には、穿孔チューブに取り付けられた円錐ディスクばねによる少なくとも一つの載置体を含む形状記憶合金(SMA)ヒートエンジンが開示されている。このエンジンはSMAヒートエンジンに張力を加えることにより機能し、効率的な出力は得られない。そして引張応力ゆえにSMA材料の損壊を招く。
【0007】
上述の先行技術で起こるようにSMA材料は損壊する傾向を持つので、疲労寿命はSMA材料への張力または応力付与に関わる大きな問題である。SMAワイヤが使用される事例では、ワイヤが折れる。完全マルテンサイト(又は完全オーステナイト)相でワイヤに負荷が加えられると、ヤング率に従ってひずみが起きる。外部応力が印加されない場合でも、ワイヤにはオーステナイトおよび双晶マルテンサイト状態が自然に生じる。負荷を受けていない形状記憶合金の欠点は、ワイヤが特定の撓曲を受けず、温度差のみに基づいて転移が起こるという事実である。ワイヤサイクル動作から有用な出力を得るには、これに応力を印加しなければならない。応力の規模は所望する変形に依存する。幾つかの形状記憶合金またはNTE材料と関連して制限されるSMAワイヤ伸長について問題が起こることが分かっている。加えて、冷却/弛緩サイクル中に充分に低いワイヤ温度に達していないがゆえに伸長の制限が生じる。動力行程中の回収に利用可能なワイヤひずみ量についてのこの制限は、動力出力に制限が加えられることを意味している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2013/087490号
【特許文献2】英国特許第2,533,357号 エクサジン(Exergyn)
【特許文献3】米国特許出願公開第2014/007572号 GMグローバル(GM Global)
【特許文献4】米国特許第5,442,914号 オオツカ(Otsuka)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それゆえ、エネルギー回収装置での使用のためのSMAまたはNTEエンジンコアから大きな動力出力を発生させる改良システムおよび方法を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、添付の請求項に提示されているように、コアを画定するように構成されて任意でドライブ機構に接続される複数の形状記憶合金(SMA)要素または負熱膨張(NTE)要素を備えるエンジンと、エンジンを収容するのに適応するとともに、SMA要素の加熱サイクルおよび冷却サイクルによりSMA要素を膨張および収縮させるように流体が逐次充填されるのに適応した浸漬室と、加熱サイクルおよび/または冷却サイクル中にSMA要素の少なくとも一つに圧縮力を印加するように構成されている圧縮装置と、を備えるエネルギー回収装置が提供される。
【0011】
本発明は、コアを画定するSMA要素を使用中に圧縮するのに機械的圧縮装置および方法を使用する。エンジンの圧縮は材料の疲労寿命を増加させ、コア全体の保守を軽減する。保守を目的とするSMA構成要素へのアクセスが必要とされないので、これは全寿命コストを全体的に削減してシステム設計を単純化する。加えて、圧縮状態のコア設計を使用すると、低コストである低グレードSMA材料の使用が許容され、サイクル速度を上昇させることでSMA材料の使用量を減少できる。
【0012】
SMA要素の機械的圧縮は保守コストを削減し、低効率で動力を発生させる技術を可能にすることで、多くの動力発生用途について市場を開放するだろう。
【0013】
一実施形態では、被制御圧縮を適用するステップが設けられる。
【0014】
別の実施形態では、第1端部で固定されて第2端部でドライブ機構に接続される複数の長尺形状記憶合金(SMA)要素または負熱膨張(NTE)要素を備えるエンジンと、 エンジンを収容するのに適応するとともに、SMA要素の加熱サイクルおよび冷却サイクルによりSMA要素を膨張および収縮させるように流体が逐次充填されるのに適応した浸漬室と、を備えて、冷却サイクル中にSMA要素の少なくとも一つに被制御機械的圧縮が適用される、エネルギー回収装置が提供される。
【0015】
一実施形態において、SMA要素は複数のプレートによる少なくとも一つの載置体を備え、形状記憶合金により形成される少なくとも二つのプレートが上下に組み立てられる。
【0016】
一実施形態において、プレートは上下に組み立てられ、各プレートには、載置体における特定温度の流体の通過を可能にする複数の流体ポートが機械加工される。流体は吸入ポートから載置体へ導入され、載置体を通過した後に、排出ポートから外部へ吐出される。
【0017】
本発明の好適な実施形態において、吸入ポートと排出ポートとは独立した構造ユニットであり、プレートを製作するのに使用されるのと同じSMAを使用して形成される。さらに、複数のSMAプレートによる少なくとも一つの載置体はSMAコアを備える。
【0018】
一実施形態では、付加的な製造または3Dプリントプロセスを使用してSMA要素またはSMAプレートが形成される。
【0019】
本発明の好適な実施形態について、負荷が印加されている間に少なくとも一つのSMAコアによる載置プレートの完全性を保つのに適応した複数の座屈支持体を有するハウジングの内側に、SMAコアが配置される。
【0020】
一実施形態において、複数の載置プレートの各々を形成するSMAの組成は同じである。本発明の別の実施形態では、少なくとも一つのプレートを形成するSMAの組成は、載置体の他のプレートのものと異なっている。
【0021】
本発明の別の実施形態では、多数のSMAコアがハウジング内に配置され、一つのSMAコアに載置された複数のプレートを形成するSMAの組成は、他のSMAコアに載置された複数のプレートを形成するSMAの組成と異なっている。
【0022】
本発明は、SMA材料と流体との間の表面積を増大させる。さらに、流体は、SMAプレート載置体を通過する際にSMA材料のみと接触して、全体的な熱損失を低下させる。
【0023】
SMA材料を使用する吸入ポートおよび排出ポートの構成は、熱損失をさらに低下させる。本発明に記載される載置体の形態は、座屈に抵抗して外部支持体の必要性を低下させる。
【0024】
一実施形態において、圧縮装置は電気機械アクチュエータを備える。
【0025】
一実施形態において、圧縮装置は、加圧油圧流体を使用してピストンに圧力を印加するように構成されている油圧圧縮モジュールを備える。
【0026】
ハウジングと座屈支持体とにより、SMAプレートが熱絶縁されて印加された油圧負荷に耐えることができる一方で、圧縮状態にある時に個々の載置体の移動が許容されることが保証される。本発明はまた、一つのSMA載置体と別のものとの交換の容易さゆえにエンジンコアの容易な改善を可能にする。
【0027】
これは、より良いSMA組成物が利用可能となった場合には、旧型SMA組成物から形成されたプレートによる載置体を新規および改良SMA組成物により形成されたプレートによる載置体と交換するのが容易であることを意味する。
【0028】
一実施形態では、複数のプレートによる少なくとも一つの載置体であって、少なくとも二つのプレートが形状記憶合金により形成されて上下に組み立てられ、複数の形状記憶合金プレートが、載置体における流体の通過を許容するのに適応した複数の流体ポート、例えば蛇行形状のポートを有する、少なくとも一つの載置体と、載置体へ流体を導入するのに適応した吸入ポートと、吸入ポートから導入された流体を外部へ吐出するのに適応した排出ポートであって、吸入ポートと排出ポートとが形状記憶合金により形成される、排出ポートと、を備える、エネルギー回収に使用するためのエンジンコアが提供される。
【0029】
別の実施形態では、複数のプレートによる少なくとも一つの載置体であって、少なくとも二つのプレートが形状記憶合金で形成されて上下に組み立てられ、複数の形状記憶合金プレートが、載置体における流体の通過を許容するのに適応した少なくとも一つの流体ポートを有する、少なくとも一つの載置体と、加熱サイクルおよび/または冷却サイクル中にSMAプレートの少なくとも一つに圧縮機械力を印加するように構成されている圧縮装置と、載置体に流体を導入するのに適応した吸入ポートと、吸入ポートから導入された流体を外部へ吐出するのに適応した排出ポートであって、吸入ポートと排出ポートとが形状記憶合金により形成される、排出ポートと、を備える、エネルギー回収に使用するためのエンジンが提供される。
【0030】
一実施形態において、圧縮装置は、冷却サイクル中にSMAプレートの少なくとも一つに機械力を印加する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
添付図面を参照すると、単なる例として挙げられた本発明の実施形態についての以下の記載から、本発明がより明確に理解されるだろう。
図1】加熱および冷却サイクルの間でのSMA材料作用サイクルを図示している。
図2a】本発明の好適な実施形態の斜視図である。
図2b】本発明の実施形態による、流体入口ポートおよび出口ポートを有してエンジンを収容するハウジングを図示している。
図3a】本発明の好適な実施形態を図示し、互いの上に載置された複数のSMA材料の側面図および上面図を示す。
図3b】本発明の好適な実施形態を図示し、互いの上に載置された複数のSMA材料の側面図および上面図を示す。
図4】本発明の好適な実施形態の前面図である。
図5a】エネルギー回収装置で使用される異なるエンジンコアによる幾つかの段階的配置構成を図示している。
図5b】エネルギー回収装置で使用される異なるエンジンコアによる幾つかの段階的配置構成を図示している。
図5c】エネルギー回収装置で使用される異なるエンジンコアによる幾つかの段階的配置構成を図示している。
図5d】エネルギー回収装置で使用される異なるエンジンコアによる幾つかの段階的配置構成を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、圧縮を使用して加熱流体からより大きい動力出力を発生させるように形状記憶合金(SMA)と他の負熱膨張材料(NTE)(ともに弾性熱量材料と称される)のいずれかを使用できる熱回収システム、例えばエンジンに関する。本発明には、SMAが圧縮されるエンジンサイクルが設けられる。圧縮モードでは、疲労寿命が長くなり、もはや制限はない。圧縮負荷は引張負荷よりかなり高く、こうして高い効率が得られる。
【0033】
周知のエネルギー回収装置は、本発明の譲受人に譲渡された国際公開第2013/087490号に記載されており、これは参照により本明細書に完全に援用される。
【0034】
このような用途では、熱源に露出された際のこのような材料の収縮が取り込まれ、使用可能な機械的作用に変換される。このようなエンジンの作用要素として有用な材料はニッケル・チタン合金(NiTi)であることが証明されている。この合金は周知の形状記憶合金であって、多様な産業にわたって多数の用途を有する。本発明の状況では適当なSMAまたはNTE材料が使用され得ることが認識されるだろう。このようなエンジンでは長尺体またはワイヤが提案されてきたが、しかしながら、印加される応力ゆえにワイヤが破損する傾向にあることが判明している。
【0035】
ピストン・トランスミッション機構を介した作用コア内の高温サイクルおよび低温サイクルの間にSMA材料の収縮および膨張を通して、力が発生される。このシステムの重要な態様は、信頼できるアセンブリが製作されて、最大数の作用サイクルについて力が大きく変位の少ない作用が実施され得ることである。
【0036】
図1は、加熱および冷却サイクルの間でのSMA材料作用サイクルを図示している。本明細書に記載される発明は、高温および低温サイクル中に形状記憶合金の作用出力を増大させるシステムおよび方法の概要を示すものである。本発明の重要な態様は、サイクル中にSMA材料を圧縮することである。
【0037】
圧縮モードで、SMA材料またはコアの疲労寿命は長くなり、もはや制限はない。圧縮負荷は引張負荷よりかなり高く、ゆえにSMA材料を圧縮すると出力増加と効率上昇とが得られる。
【0038】
熱力学エンジンサイクルは、スターリング、ブレイトン又はエリクソンサイクルなど旧来の気体サイクル、あるいは図1に図示されているようにこれらのサイクルのいずれかの組み合わせから構成され得る。
【0039】
図1に示されているように、サイクルは、SMA材料が高温源から熱を吸収する[プロセス1‐2]際に、材料が変形材料状態から復元しようとする[マルテンサイト‐オーステナイト]ように構成され得る。こうして材料は膨張し、それゆえ油圧シリンダまたは他の装置を使用して作用が抽出され得る。
【0040】
このプロセスが完了すると、材料温度が低温源温度に近づくまで熱回収回路を使用して材料温度が冷却される[プロセス2‐3]。この点で、駆動温度を高めることで材料を圧縮するように、低圧縮負荷が材料に印加される。これを行なうと、材料が収縮して低温源に熱を排出する[プロセス3‐4]。完了すると、熱回収回路に保存された熱を使用して材料の温度を高めるのに熱回収回路が再び使用される。この時点で、サイクルが完了する。
【0041】
低温サイクルでのSMA要素または材料の圧縮は、動力モジュールなど適当な機械的または引張機構を使用して採用され得る。動力制御モジュールは単独で制御され得る。
【0042】
SMA要素を機械的に圧縮することにより、必要なひずみが達成される。圧縮を印加するための動力制御モジュールは幾つかの手法で実装され得る。電気機械的および油圧圧縮を含む広範囲の圧縮技術を使用して、SMA要素の圧縮が達成され得る。適当な電気機械アクチュエータは、電気モータからの回転運動を線形運動に変換する。大抵の設計はナット・ボルトに類似しており、ねじ付きボルトはモータに装着されて回転可能であり、ナットは、圧縮されている構成要素に固定されてボルトのシャフトを上下に移動できる。油圧圧縮では、加圧油圧流体によりピストンに圧力が印加される。圧力が解除されると、SMA材料が膨張可能となる。
【0043】
図2aは、本発明の好適な実施形態の斜視図を示している。開示されるエンジンは、SMAにより形成されて上下に組み立てられた複数のプレート101による少なくとも一つの載置体を備える。複数のプレート101の各々には、複数の流体ポート102が機械加工されている。流体ポート102は、プレート101の載置体における特定温度の流体の通過を許容するように設計されている。プレート101の載置体は、流体が通過する時に熱を吸収してエネルギーを保存するのに適応しており、さらに複数のプレート補強スロット103を備える。プレート補強スロット103により、圧縮時の座屈に抵抗するように頑丈なロッドが挿入され得る。スロット103は直径が数mm程度で載置体の長さがあり、所望の設計に基づいてサイズが選択され得る。
【0044】
図2bは、プレート載置体/コアが設置されるハウジング例である。所定温度の流体、例えば水が、一つの入口104と105の流体出口とを介して、載置体/コアを収容する室へ導入または送入される。載置体および出口105へ流体を導入するのに適応した入口104は、吸入ポートから導入される流体を外部へ吐出するのに適応している。本発明の好適な実施形態で、吸入ポートおよび排出ポートは独立した構造ユニットであり、熱損失を最小化するように、複数のプレートによる載置体と同じSMA材料を使用して製作される。各プレートに機械加工される流体ポート102により、プレートと流体との間の表面積が著しく増加し、また流体がSMA材料のみと接触して全体的な熱損失を減少させることが保証される。流体ポートは、格子、円形、または多角形パターンなど、いかなる幾何学的パターンでも構成され得る。示されている実施形態のSMAプレート101は実質的に矩形の形状である。SMAプレートは、一定規模のコアおよびエンジンシステムを構成するための基本的構成単位と考えられ得る。プレートの設計は熱伝達最適化と相関しており、示されている実施形態は単に示唆的なものである。同じ原理を使用して縮小するために、小型のプレートおよび載置体が使用されてもよい。エンジンが高応力状態と低応力状態との間で作動することが認識されるだろう。理想的には低応力=低温(開始点)、高応力=高温で、サイクルを通じてSMAプレートは圧縮状態に保たれる。印加される圧縮機械力は、冷却サイクル中に少なくとも一つのSMA要素に追加圧縮をさらに提供する。
【0045】
図3aおよび3bは、コアまたはSMA材料が複数のSMA構成要素101を備えて、エンジンコアを画定するように複数のSMAプレート101による載置体として配設される、本発明の好適な実施形態を図示している。互いに上下に載置される複数のSMAプレート101は、必要に応じてサイクル中に圧縮され得る。座屈支持体202は、SMAプレート101が熱絶縁されることと、構造全体が支持されて油圧負荷に耐え得ることとを保証する。
【0046】
サイクルは単一段階であるか、熱回収のための温度範囲を増大させるので多数の段階を含んでもよい。
【0047】
一実施形態において、サイクルは多数のコアとコア間の内部熱回収とを包含するか、サイクル間に単一コアからの熱が保存され得る。この配置構成はシステムの効率を上昇させる。
【0048】
システムは作用回収を含み得て、そこでは第2SMA構成要素(エンジンコア)を圧縮するのに圧縮材料に保存されたエネルギーが直接使用されるか、エネルギーが保存されて、後の段階で追加SMA構成要素を圧縮するのに間接的に使用され得る。
【0049】
この保存エネルギーは加圧流体の形で保存されるか、電気に変換されてシステムの他所で保存または使用され得る。
【0050】
図4は、本発明の別の好適な実施形態の前面図を示している。示されている図では、SMAコアを形成するSMAプレート101による載置体がハウジング201に配置されている。ハウジング201は、負荷が印加された時にSMAコアの完全性を保つための複数の座屈支持体202を有する。エンジンのSMAコアに圧縮力が印加された時には、構造を圧潰せずに加えられ得る力の量を推定するのに座屈支持体の箇所、サイズ、および数の最適化が重要である。そしてこれはSMAの発熱特性の最適な抽出を保証する。ハウジング201と座屈支持体202とは、SMAプレート101が熱絶縁されていることと、構造全体が支持されて油圧負荷に耐え得るとともに、被圧縮状態で個々の載置体の動きを許容することとを保証する。
【0051】
本発明の状況において、図5に示されているように幾つかの異なる構成でエンジン/コアが組み立てられ得ることが認識されるだろう。一実施形態では、SMAプレートによる載置体の少なくとも一つのプレートの組成が載置体の他のプレートのものと異なっている。異なるSMA材料混合体が単一の載置体内の異なるSMAプレートに使用され得る。
【0052】
本発明の別の実施形態では、複数のSMA載置体を備えるSMAコアが使用される。この複数載置体配置構成で、各載置体は異なるSMA組成を持つプレートから成り、これは同じ載置体内のプレートが同じSMA組成を有することを意味する。
【0053】
本発明の別の実施形態では、各載置体が複数のSMAプレートを有する多数の載置体が使用される。各載置体は、同じ載置体の他のプレートのものと異なる合金組成を持つ少なくとも一つのSMAプレートを有する。
【0054】
図5aから5dは、本発明の別の実施形態によるエンジンの幾つかの段階的配置構成を図示している。デルタTを増加するのに使用され得るSMAプレートの段階的構成は、幾つかのアプローチを使用して達成され得る。例えば、図5aは、最適化SMAプレートによる異なる混合体が単一の載置体内で使用され得る載置体内配置構成を示す。例えば、混合体1、混合体2、混合体3のプレートが単一の載置体内に配設される。図5bは、図faの複数載置体バージョンを図示している。各々が同じSMA混合体を含むプレートの載置体が、異なるSMA混合体を含む他のプレート載置体と相互作用を行なう。例えば、混合体1載置体は、複数載置体配置構成内で直列の混合体2載置体と相互作用を行なう(等々)。図5cは図5bの複数載置体バージョンである。各々が多数のSMA混合体を含むプレートによる載置体が、複数載置体配置構成内の類似か異なるSMA混合体を含むプレートの他の載置体と相互作用を行なう。例えば、複数載置体配置構成内において、載置体内の段階的配置構成が異なるか類似の載置体内の段階的配置構成と直列に相互作用を行なう。図5dは複数コア配置構成を示し、複数載置体バージョン1または複数載置体バージョン2あるいは両方の組み合わせから成るプレートのコアがともに直列で相互作用を行なって一つの段階を形成する。
【0055】
本明細書において、“comprise(備える),comprises(備える),comprised(備えた),comprising(備える)”の語またはその何らかの変形と、“include(含む),includes(含む),included(含んだ),including(含む)”の語とその何らかの変形とは全体として互換性を持つと考えられ、可能な限り最も広い解釈とその反対も全て与えられるべきである。
【0056】
本発明は上に記載された実施形態に限定されず、構成と詳細の両方において変化しうる。
【符号の説明】
【0057】
101 SMAプレート
102 流体ポート
103 プレート補強スロット
104 入口
105 出口
201 ハウジング
202 座屈支持体
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
【国際調査報告】