(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-09
(54)【発明の名称】コーティングされた物品
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20240202BHJP
C08F 10/06 20060101ALI20240202BHJP
C09D 123/10 20060101ALI20240202BHJP
C09D 123/12 20060101ALI20240202BHJP
C09D 123/16 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
B32B27/32 E
C08F10/06
C09D123/10
C09D123/12
C09D123/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548825
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(85)【翻訳文提出日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 EP2022053375
(87)【国際公開番号】W WO2022171800
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513276905
【氏名又は名称】ボレアリス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BOREALIS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジンボォ
(72)【発明者】
【氏名】ガーライトナー,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ベルンライトナー,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】レスキネン,パウリ
(72)【発明者】
【氏名】ニーダーズュース,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ヌンミラ-パカリネン,アウリ
(72)【発明者】
【氏名】オルトナー,シュテファン
【テーマコード(参考)】
4F100
4J038
4J100
【Fターム(参考)】
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK07C
4F100AK64A
4F100AK64B
4F100AK64C
4F100AK66A
4F100AK66B
4F100AL03C
4F100AL05C
4F100AT00A
4F100BA03
4F100EH17
4F100EH46
4F100GB15
4F100JA04C
4F100JA06C
4F100JA07C
4F100JJ03
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4J038CB091
4J038CB101
4J038CB102
4J038KA08
4J038MA13
4J038MA14
4J038NA27
4J038PB04
4J038PC08
4J038PC10
4J100AA02Q
4J100AA03P
4J100CA01
4J100CA04
4J100DA04
4J100DA24
4J100DA43
4J100FA10
4J100FA22
4J100FA28
4J100FA29
4J100FA34
4J100FA43
4J100FA47
4J100JA01
4J100JA58
(57)【要約】
本発明は、少なくとも基材層(SL)、第1のコーティング層(CL1)、および第2のコーティング層(CL2)を含む、コーティングされた物品に関し、CL2は、10~40g/10分の範囲の、ISO 1133に従って測定されるメルトフローレートMFR2(230℃/2.16kg);149~162℃の範囲の、ISO 11357に従うDSCにより測定される融解温度Tm;および、2.4~4.5の範囲の、GPCによって決定される分子量分布MWDを有する(A)ポリプロピレンホモポリマー;および/または4~40g/10分の範囲の、ISO 1133に従って測定されるメルトフローレートMFR2(230℃/2.16kg);115~145℃の範囲の、ISO 11357に従ってDSCにより測定される溶融温度Tm;および0.01~1.2mol%の範囲の、13C NMRによって測定される2,1および3,1部位欠陥(regio defects)の数を有する(B)エチレンプロピレンランダムコポリマーを含む、ポリプロピレン組成物を含み、SLおよびCL1は、ポリプロピレン系の層である。さらに、本発明は、コーティングされた物品の製造方法およびその使用に関する。本発明の別の態様は、再生ポリプロピレンを得るための前記コーティングされた物品をリサイクルするための方法、および前記再生ポリプロピレンの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材層(SL)、第1のコーティング層(CL1)、および第2のコーティング層(CL2)を含む、コーティングされた物品であって、
CL2は、
(A)以下のポリプロピレンホモポリマー
・ISO 1133に従って測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃/2.16kg)が10~40g/10分の範囲;
・ISO 11357に従うDSCにより決定される融解温度T
mが149~162℃の範囲;および
・GPCによって決定される分子量分布MWDが2.4~4.5の範囲;および/または
(B)以下のエチレンプロピレンランダムコポリマー
・ISO 1133に従って測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃/2.16kg)が4~40g/10分の範囲;
・ISO 11357に従ってDSCにより決定される溶融温度T
mが115~145℃の範囲;および
・
13C NMRによって測定される2,1および3,1部位欠陥(regio defects)の数が0.01~1.2mol%の範囲;
を含むポリプロピレン組成物を含み、
SLおよびCL1は、ポリプロピレン系の層である、物品。
【請求項2】
CL2は、以下の特性:
・
13C NMRで測定される2,1および3,1部位欠陥の数が、0.01~1.2mol%、好ましくは0.4~0.85mol%、より好ましくは0.45~0.8mol%の範囲;
・シングルサイト触媒の存在下、好ましくはメタロセン触媒の存在下で製造される;
・ISO 1133に従って測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃/2.16kg)が15~37g/10分、好ましくは20~35g/10分の範囲であり、ISO 11357に従ってDSCにより決定される溶融温度T
mが150~158℃、好ましくは153~157℃の範囲である;
・GPCによって決定されるMWDが2.5~4.5の範囲;
・ISO 16152に従って測定される冷キシレン可溶(XCS)画分が0.05~5重量%未満、好ましくは0.1~4重量%の範囲である;
のうちの1つまたは複数を有するポリプロピレンホモポリマー(A)を含み、好ましくはそれからなることを特徴とする、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項3】
CL2は、ポリプロピレンホモポリマー(A)を含み、好ましくはそれからなり、前記ポリプロピレンは、2つのポリマー画分(PPH-1)および(PPH-2)を含み、画分(PPH-1)と(PPH-2)の間の分割(split)は、30:70~70:30、好ましくは45:55~65:35、より好ましくは55:45~60:40の範囲であることを特徴とする、請求項1または2に記載のコーティングされた物品。
【請求項4】
CL2は、以下の特性:
・シングルサイト触媒の存在下で製造される;
・GPCによって決定される分子量分布MWDが2.4~5.5、好ましくは2.5~4.5の範囲である;
・FDA試験に従って測定されるヘキサン抽出物含有量が2.0重量%未満、好ましくは1.5重量%未満、より好ましくは0.1~1.5重量%である;
・ISO 1133に従って測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃/2.16kg)が17~35g/10分、または4~7g/10分の範囲であり、ISO 11357に従いDSCにより決定される溶融温度T
mが120~140℃である;
・
13C NMRで測定される2,1および3,1部位欠陥の数が、0.1~1.0モル%の範囲である;
のうちの1つまたは複数を有するエチレンプロピレンランダムコポリマー(B)を含み、好ましくはそれからなることを特徴とする、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項5】
前記エチレンプロピレンランダムコポリマー(B)は、エチレンプロピレンランダムコポリマーの重量に基づいて、2.0~5.5重量%の範囲、または2.2~4.5重量%の範囲のエチレン含量を有するエチレンプロピレンランダムコポリマーである;および/または
前記プロピレンランダムコポリマー(B)は、ISO 11357に従ってDSCにより決定される結晶化温度T
cが、75~110℃、好ましくは80~105℃の範囲である;および/または
前記エチレンプロピレンランダムコポリマー(B)は、ISO 16152に従って決定される冷キシレン可溶(XCS)画分が、エチレンプロピレンランダムコポリマー(B)の重量に基づいて、0.1~15重量%未満、好ましくは0.5~5重量%であることを特徴とする、請求項4に記載のコーティングされた物品。
【請求項6】
前記エチレンプロピレンランダムコポリマー(B)は、2つのポリマー画分(RACO-1)および(RACO-2)を含むか、またはそれらからなり、画分(RACO-1)および(RACO-2)間の分割は、好ましくは30:70~70:30であることを特徴とする、請求項4または5に記載のコーティングされた物品。
【請求項7】
押出コートされた物品である、請求項1~6のいずれかに記載のコーティングされた物品。
【請求項8】
ポリプロピレン系層SLおよびCL1は、それぞれ層の総重量に基づいて、90重量%超のポリプロピレン、好ましくは95~100重量%のポリプロピレン、より好ましくは99~100重量%のポリプロピレンを含み、最も好ましくはポリプロピレンからなる;および/または
好ましくは、層SL中のポリプロピレンは二軸延伸ポリプロピレンである;および/または
層CL1のポリプロピレンは、ポリプロピレンのコポリマーおよびホモポリマーおよびそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはホモポリマー(A)またはランダムコポリマー(B)、より好ましくは異相コポリマーである、
ことを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載のコーティングされた物品。
【請求項9】
前記コートされた物品は、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは1重量%未満の、ポリプロピレンとは異なる材料を含み、さらにより好ましくは、前記コーティングされた物品はポリプロピレンからなる;および/または
前記コーティングされた物品はポリプロピレン系ではない層を含まない、好ましくは前記コーティングされた物品は層SL、CL1およびCL2からなる、
ことを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載のコーティングされた物品。
【請求項10】
CL2は、ポリプロピレンホモポリマー(A)を含み、好ましくはポリプロピレンホモポリマー(A)からなり、物品のシール開始温度は105~118℃、好ましくは110~116℃、より好ましくは113~115℃の範囲である;または
CL2は、エチレンプロピレンランダムコポリマー(B)を含み、好ましくはエチレンプロピレンランダムコポリマー(B)からなり、物品のシール開始温度は60~100℃、好ましくは78~87℃、より好ましくは80~86℃、さらにより好ましくは81~85℃の範囲である、
ことを特徴とする、請求項1~9のいずれかに記載のコーティングされた物品。
【請求項11】
前記コーティングされた物品の総厚さは10~200μmの範囲、好ましくは12~170μmの範囲、より好ましくは15~100μmの範囲である;および/または
層SLの厚さは5~40μmの範囲、好ましくは10~30μmの範囲、より好ましくは15~25μmの範囲である;および/または
層CL1のコーティング重量は、1~20g/m
2、好ましくは3~18g/m
2、より好ましくは5~15g/m
2、さらにより好ましくは7~12g/m
2の範囲である;および/または
層CL2のコーティング重量は、1~20g/m
2、好ましくは3~18g/m
2、より好ましくは5~15g/m
2、さらにより好ましくは7~12g/m
2の範囲である、
ことを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載のコーティングされた物品。
【請求項12】
押出コーティング工程を含む、請求項1~11のいずれかに記載のコーティングされた物品の製造方法。
【請求項13】
包装材料としての、好ましくは食品および/または医療製品のための耐熱性包装材料としての、請求項1~11のいずれかに記載のコーティングされた物品の使用。
【請求項14】
再生ポリプロピレンを得るための、請求項1~11のいずれかに記載のコーティングされた物品をリサイクルするための方法。
【請求項15】
前記再生ポリプロピレンは、成形品およびフィルムの製造のために使用されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系のコーティングされた物品、前記コーティングされた物品の製造方法およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なコーティング方法の1つは押出コーティングである。一般に、紙、ペーパーボード、布地、および金属箔などの基材をプラスチックの薄層で押出コーティングすることは、大規模に実施されている。コーティング組成物は、第1の工程で押し出され、それにより溶融ポリマー材料のフラックスがフラットダイを通過して、数ミクロンの厚さを有するフィルムが得られる。第2の工程、つまりコーティング工程では、フィルムを支持体上に置き、冷却シリンダー上を通過させる。冷却すると、ポリマーはその支持体に付着する。高速押出コーティングには、10g/10分以上の比較的高いメルトフローレートMFR2が必要である。
【0003】
コーティング、特に押出コーティングに適したポリプロピレン組成物は当該技術分野で既に知られている。
【0004】
EP2492293 A1は、高い溶融強度および延伸性、優れた加工性、低ゲル含量を有し、高温に耐えることができる幅広い種類の基材の押出コーティングまたは押出発泡(extrusion foaming)に適したポリプロピレン組成物、そのようなポリプロピレン組成物および押出コートしたまたは押出発泡した物品の製造方法について言及している。
【0005】
EP3018154 A1は、エチレン、C4-C20-アルファオレフィンから選択されるコモノマーをコポリマー中に有するプロピレンホモポリマーまたはコポリマーに関し、前記プロピレンホモポリマーまたはコポリマーはフタル酸化合物を含まない。それは、さらに、エチレン、C4-C20-アルファオレフィンから選択されるコモノマーをコポリマー中に有する長鎖分岐プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(b-PP)に関し、前記長鎖分岐プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(b-PP)は、フタル酸化合物を含まない。
【0006】
WO2012/109449 A1は、照射された第1のプロピレンポリマーと非照射の第2のプロピレンポリマーとのブレンドを押出するプロセスに関し、第1のプロピレンポリマーは非フェノール系安定剤を含む。第1のプロピレンポリマー押出物の照射は、酸素の少ない環境で行われ、照射された第1のプロピレンポリマーと未照射の第2のプロピレンポリマーは、それぞれの融点より低い温度でブレンドされる。ブレンドの粘度保持率は20~35%である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2492293号
【特許文献2】欧州特許出願公開第3018154号
【特許文献3】国際公開第2012/109449号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ポリプロピレンでコーティングされた物品は包装に広く使用されており、主な要件は滅菌性とシール特性である。しかしながら、非常に良好なシール挙動を有するコーティングされた物品が依然として必要とされている。
【0009】
したがって、本発明の1つの目的は、より高いホットタック力(=HTF)およびより低いホットタック温度のような改良されたシール特性を有する新しいタイプのポリプロピレンを提供することであった。別の課題は、第1の使用後のコーティングされた物品のリサイクルである。紙とプラスチックなどの異なる材料で作られたコーティングされた物品をリサイクルすることは、単一材料の溶液をリサイクルすることよりもはるかに困難である。一方、シール特性および機械的特性などの許容可能な特性を得るには、異なる材料を使用する必要がある。したがって、本発明の別の目的は、良好なシール挙動を示すポリプロピレン系単一材料溶液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの目的は、少なくとも基材層(SL)、第1のコーティング層(CL1)、および第2のコーティング層(CL2)を含み、CL2が
(A)以下のポリプロピレンホモポリマー
・ISO 1133に従って測定されるメルトフローレートMFR2(230℃/2.16kg)が10~40g/10分の範囲;
・ISO 11357に従うDSCにより決定される融解温度Tmが149~162℃の範囲;および
・GPCによって決定される分子量分布MWDが2.4~4.5の範囲;および/または
(B)以下のエチレンプロピレンランダムコポリマー
・ISO 1133に従って測定されるメルトフローレートMFR2(230℃/2.16kg)が4~40g/10分の範囲;
・ISO 11357に従うDSCにより決定される溶融温度Tmが115~145℃の範囲;および
・13C NMRによって測定される2,1および3,1部位欠陥(regio defects)の数が0.01~1.2mol%の範囲;
を含むポリプロピレン組成物を含み、
SLおよびCL1は、ポリプロピレン系の層である、
請求項1に記載のコーティングされた物品によって解決される。
【0011】
本発明によるコーティングされた物品の有利な実施形態は、従属請求項2~11に特定されている。本発明の請求項12は、コーティングされた物品の製造方法に関し、請求項13は、包装材料としてのコーティングされた物品の使用に関する。本発明による請求項14は、コーティングされた物品をリサイクルして再生ポリプロピレンを得る方法に言及し、請求項15は、前記再生ポリプロピレンの使用に言及する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
部位欠陥
プロピレンポリマーの部位欠陥には、3つの異なるタイプ、すなわち2,1-エリトロ(2,le)、2,1-トレオ(2,It)、および3,1欠陥がある。ポリプロピレンにおける部位欠陥の構造および形成機構の詳細な説明は、Chemical Reviews 2000、100(4)、1316~1327ページに記載されている。これらの欠陥は、以下でより詳細に説明するように、13C NMRを使用して測定される。
【0013】
本発明で使用される「2,1部位欠陥」という用語は、2,1-エリトロ部位欠陥と2,1-トレオ部位欠陥の合計と定義する。本発明のプロピレン組成物に必要な多数の部位欠陥を有するプロピレンランダムコポリマーまたはポリプロピレンホモポリマーは、通常、好ましくはシングルサイト触媒の存在下で調製される。
【0014】
触媒は、特にポリマーの微細構造に影響を与える。したがって、メタロセン触媒を使用して調製されたポリプロピレンは、チーグラー・ナッタ(ZN)触媒を使用して調製されたポリプロピレンと比較して異なる微細構造を供する。最も重要な違いは、メタロセンで作られたポリプロピレンでの部位欠陥の存在であるが、これはチーグラー・ナッタ(ZN)触媒で作られたポリプロピレンには当てはまらない。
【0015】
「含む(comprising)」という用語が本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、それは主要または軽微な機能的重要性を有する他の特定されていない要素を排除するものではない。本発明の目的上、「からなる(consisting of)」という用語は、「を含む(comprising of)」という用語の好ましい実施形態であるとみなされる。以下、群が少なくとも一定数の実施形態を含むと定義される場合、これは、好ましくはこれらの実施形態のみからなる群を開示するとも理解されるべきである。
【0016】
「含む(including)」または「有する(having)」という用語が使用される場合、これらの用語は上で定義した「含む(comprising)」と同等であることを意味する。
【0017】
単数名詞、たとえば「a」、「an」、または「the」を指すときに不定冠詞または定冠詞が使用される場合、これには特に記載がない限り、その名詞の複数形も含まれる。
【0018】
ポリプロピレンホモポリマー(A)
本発明によるコーティングされた物品の第2のコーティング層(CL2)は、ISO 1133に従って測定されるメルトフローレートMFR2(230℃/2.16kg)が10~40g/10分の範囲;ISO 11357に従うDSCによって決定される溶融温度Tmが149~162℃の範囲;およびGPCによって決定される分子量分布MWDが2.4~4.5の範囲;であるポリプロピレンホモポリマー(A)を含むポリプロピレン組成物を含んでよい。
【0019】
ポリプロピレンホモポリマー(A)の好ましい実施形態を以下に説明する。
【0020】
本発明による好ましい一実施形態によれば、ポリプロピレンホモポリマー(A)は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を有する:
・13C NMRによって測定される、0.01~1.2mol%、好ましくは0.4~0.85mol%、より好ましくは0.45~0.8mol%の範囲の2,1および3,1部位欠陥の数;
・シングルサイト触媒の存在下、好ましくはメタロセン触媒の存在下で製造されている;
・ISO 1133に従って測定される、15~37g/10分、好ましくは20~35g/10分の範囲のメルトフローレートMFR2(230℃/2.16kg)、およびISO 11357に従うDSCによって決定される、150~158℃、好ましくは153~157℃の範囲の溶融温度Tm;
・GPCにより決定される、2.5~4.5の範囲のMWD;
・ISO 16152に従って決定される、0.05~5重量%未満、好ましくは0.1~4重量%の範囲の冷キシレン可溶(XCS)画分。
【0021】
本発明によるさらに好ましい実施形態では、ポリプロピレンホモポリマー(A)は、2つのポリマー画分(PPH-1)および(PPH-2)を含み、画分(PPH-1)と画分(PPH-2)の間の分割が、30:70~70:30、好ましくは45:55~65:35、より好ましくは55:45~60:40の範囲である。さらに、(PPH-1)は、ISO 1133に従って測定したメルトフローレートMFR2(230℃/2.16kg)が、10~50g/10分の範囲であることが好ましく、より好ましくは15~40g/10分、最も好ましくは20~35g/10分の範囲である、および/またはその(PPH-2)は、ISO 1133に従って測定したメルトフローレートMFR2(230℃/2.16kg)が、10~50g/10分の範囲であることが好ましく、より好ましくは15~40g/10分、最も好ましくは20~35g/10分の範囲である。
【0022】
本発明による別の好ましい実施形態は、ポリプロピレンホモポリマー(A)がヘキサン抽出物を少量しか含まないという利点を有することを規定する。したがって、ポリプロピレンホモポリマー(A)は、FDA試験に従って測定して、2.0重量%未満、より好ましくは1.5重量%未満のヘキサン抽出物含量を有することが好ましい。
【0023】
本発明のさらに好ましい実施形態では、ポリプロピレンホモポリマー(A)は、ISO 11357に従うDSCによって測定される結晶化温度Tcが、100~130℃の範囲、より好ましくは105℃~125℃の範囲、例えば110℃~120℃の範囲である。
【0024】
本発明の別の好ましい実施形態は、ポリプロピレンホモポリマー(A)がメタロセン触媒の存在下で製造されることを規定しており、メタロセン触媒は、WO2013/007650 A1、WO2015/158790 A2およびWO2018/122134 A1に記載の実施形態のいずれか1つの錯体を含むメタロセン触媒であることが好ましい。本発明の別の好ましい実施形態では、ホウ素含有助触媒、例えばホウ酸塩助触媒およびアルミノキサン助触媒を含む助触媒系が使用される。
【0025】
2つの画分(PPH-1)および(PPH-2)を含むその実施形態のいずれにおけるポリプロピレンホモポリマー(A)は、好ましくは以下の工程を含む方法で製造される:
a)第1の反応器(R1)内でプロピレンを重合させてポリマー画分(PPH-1)を得る工程、
b)第1の反応器の前記ポリマー画分(PPH-1)および未反応モノマーを第2の反応器(R2)に移送する工程、
c)前記第2の反応器(R2)にプロピレンを供給する工程、
d)前記第2の反応器(R2)内で、前記ポリマー画分(PPH-1)の存在下でプロピレンを重合させて、(PPH-1)との均質な混合物中のポリマー画分(PPH-2)を得、ゆえに最終ポリプロピレンを得る工程、ここで、好ましくは、重合は本明細書に記載の実施形態のいずれか1つにおける、メタロセン触媒系の存在下で行われる。
【0026】
ポリプロピレンホモポリマー(A)のさらなる態様および前記ホモポリマーの製造方法は、とりわけ、本出願の出願時点における未公開の、本出願と同一出願人である欧州特許出願(出願番号:20176798.5、2020年5月27日出願)に記載されている。
【0027】
エチレンプロピレンランダムコポリマー(B)
本発明によるコーティングされた物品の第2のコーティング層(CL2)は、ISO 1133に従って測定したメルトフローレートMFR2(230℃/2.16kg)が、4~40g/10分の範囲;ISO 11357に従うDSCによって決定される溶融温度Tmが、115~145℃の範囲;および、13C NMRによって測定される2,1および3,1部位欠陥の数が、0.01~1.2mol%の範囲であるエチレンプロピレンランダムコポリマー(B)を含むポリプロピレン組成物を含んでよい。
【0028】
以下に、該エチレンプロピレンランダムコポリマー(B)の好ましい態様について説明する。
【0029】
本発明の好ましい一実施形態は、エチレンプロピレンランダムコポリマー(B)が以下の特性のうちの1つまたは複数を有することを規定する:
・シングルサイト触媒の存在下で製造されている;
・GPCにより決定した分子量分布MWDは、2.4~5.5、好ましくは2.5~4.5の範囲である;
・FDA試験に従って測定されるヘキサン抽出物含有量が、2.0重量%未満、好ましくは1.5重量%未満、より好ましくは0.1~1.5重量%である;
・ISO 1133に従って測定されるメルトフローレートMFR2(230℃/2.16kg)が、17~35g/10分、または4~7g/10分の範囲であり、ISO 11357の従いDSCにより決定される溶融温度Tmが、120~140℃である;
・13C NMRによって測定される2,1および3,1部位欠陥の数が、0.1~1.0mol%の範囲である。
【0030】
本発明に従う別の好ましい実施形態によれば、前記エチレンプロピレンランダムコポリマー(B)は、エチレンプロピレンランダムコポリマーの重量に基づいて、2.0~5.5重量%の範囲、または2.2~4.5重量%の範囲のエチレン含量を有するエチレンプロピレンランダムコポリマーである。
【0031】
本発明のさらに好ましい実施形態では、エチレンプロピレンランダムコポリマー(B)は、ISO 11357に従うDSCにより決定される結晶化温度Tcが、75~110℃、好ましくは80~105℃の範囲である。
【0032】
本発明の別の好ましい実施形態は、エチレン・プロピレンランダムコポリマー(B)が、ISO 16152に従い決定した冷キシレン可溶(XCS)画分が、プロピレンランダムコポリマー(B)の重量に基づいて、0.1~15重量%未満、好ましくは0.5~5重量%であることを規定する。
【0033】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、前記エチレンプロピレンランダムコポリマー(B)は、2つのポリマー画分(RACO-1)および(RACO-2)を含むか、またはそれらからなり、画分(RACO-1)と(RACO-2)の間の分割(split)は、好ましくは30:70~70:30である。場合により、通常5重量%未満の少量のプレポリマー画分がランダムプロピレンコポリマー(B)中に存在していてもよい。
【0034】
本発明によるさらに別の好ましい実施形態は、(RACO-1)が好ましくは、1.5~5.5重量%、より好ましくは2.0~5.0重量%、最も好ましくは2.5~4.0重量%の範囲のエチレン含量を有することを規定する、および/または(RACO-2)が好ましくは、2.0~6.0重量%、より好ましくは2.5~5.5重量%、最も好ましくは3.0~5.0重量%の範囲のエチレン含量を有することを規定する。画分(RACO-1)のエチレン含量は、画分(RACO-2)のエチレン含量よりも低いことが好ましい。さらに、(RACO-1)は、ISO 1133に従って測定されるメルトフローレートMFR2(230℃/2.16kg)が、好ましくは3.0~20.0g/10分、より好ましくは5.0~17.0g/10分、または3.0~7.0g/10分、最も好ましくは7.0~15.0g/10分または4.0~6.0g/10分の範囲であることが好ましく、および/または(RACO-2)は、ISO 1133に従って測定されるメルトフローレートMFR2(230℃/2.16kg)が、好ましくは5.0~50.0g/10分、より好ましくは10~40g/10分、最も好ましくは15~30g/10分の範囲であることが好ましい。
【0035】
本発明の別の好ましい実施形態は、エチレンプロピレンランダムコポリマー(B)がメタロセン触媒の存在下で製造されることを規定しており、これは好ましくはWO2013/007650 A1、WO2015/158790 A2およびWO2018/122134 A1に記載の実施形態のいずれか1つの錯体を含むメタロセン触媒である。本発明の別の好ましい実施形態では、ホウ素含有助触媒、例えばホウ酸塩助触媒およびアルミノキサン助触媒を含む助触媒系が使用される。
【0036】
2つの画分(RACO-1)および(RACO-2)を含むその実施形態のいずれかにおけるエチレンプロピレンランダムコポリマー(B)は、好ましくは、以下の工程を含む方法で製造される:
a)第1反応器(R1)内でプロピレンとエチレンのコモノマーを重合させてポリマー画分(RACO-1)を得る工程、
b)第1反応器の前記ポリマー画分(RACO-1)および未反応コモノマーを第2反応器内(R2)に移送する工程、
c)前記第2反応器(R2)にプロピレンおよびエチレンコモノマーを供給する工程、
d)前記第2反応器(R2)内で、前記ポリマー画分(RACO-1)の存在下でプロプレンとコモノマーを重合して、(RACO-1)と均質な混合物であるポリマー画分(RACO-2)を得、最終的なエチレンプロピレンランダムコポリマーを得る工程、ここで好ましくは、重合は本明細書に記載される実施形態のいずれか1つのメタロセン触媒系の存在下で行われる。
【0037】
エチレンプロピレンランダムコポリマー(B)のさらなる態様、前記コポリマーの製造方法は、特に、本出願の出願時点における未公開の、本出願と同じ出願人である欧州特許出願(出願番号:20176795.5、2020年5月27日出願)に記載されている。
【0038】
ポリプロピレン組成物
本発明によるコーティング物品の第2のコーティング層(CL2)は、ポリプロピレンホモポリマー(A)またはエチレンプロピレンランダムコポリマー(B)を含むポリプロピレン組成物を含む。
【0039】
前記ポリプロピレン組成物は、ポリプロピレン組成物の総重量に基づいて、総量で好ましくは0.01~5.0重量%まで、より好ましくは0.05~3.0重量%の、スリップ剤、アンチブロッキング剤、UV安定剤、帯電防止剤、アルファ核生成剤、酸化防止剤およびそれらの混合物からなる群から選択される1つまたは複数の通常の添加剤を含んでよい。好ましくは、少なくとも1つの酸化防止剤が本発明の組成物に添加される。
【0040】
コーティング物品
本発明によるコーティングされた物品は、少なくとも基材層(SL)、第1コーティング層(CL1)、および第2コーティング層(CL2)を含む。
【0041】
本発明による好ましい実施形態によれば、ポリプロピレン系層SLおよびCL1は、それぞれ層の総重量に基づいて、90重量%超のポリプロピレン、好ましくは95~100重量%のポリプロピレン、より好ましくは99~100重量%のポリプロピレンを含み、最も好ましくはポリプロピレンからなる。
【0042】
本発明によるさらに別の好ましい実施形態は、層SL中のポリプロピレンが二軸延伸ポリプロピレンである、および/または
層CL1中のポリプロピレンは、ポリプロピレンのコポリマーおよびホモポリマー、ならびにそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはホモポリマー(A)またはランダムコポリマー(B)、より好ましくは特定の種類のランダムコポリマーである異相コポリマーであることを規定する。
【0043】
層CL1中のポリプロピレンが異相コポリマーである場合、前記化合物は、好ましくは、以下の特性のうちの1つ以上を有する:
・890~900kg/m3の範囲の密度;
・10~16g/10分の範囲のMFR2(230℃、2.16kg);
・160~164℃の範囲の溶融温度;
・120~128℃の範囲の結晶化温度;
・140~155℃の範囲のビカット軟化温度A(10N、ISO 306に従って決定)。
【0044】
本発明によるさらに好ましい実施形態によれば、コーティングされた物品は、ポリプロピレンとは異なる材料を10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは1重量%未満で含み、さらに好ましくはコーティングされた物品はポリプロピレンからなる。
【0045】
ポリプロピレンとは異なる他の材料を決定するには、例えばNMR、IRなどの既知の方法が適している。好ましい方法の1つは共焦点ラマン顕微鏡法であり、マイクロメートルスケールまでより高い空間分解能が得られる。ラマン分光法は化学的特性と物理的特性の両方に高感度であり、材料の識別に適した分子フィンガープリントを生成する(例えば、Paulette Guillory et al., Materials Today,2009, 12, 38~39を参照)。
【0046】
本発明のさらに好ましい実施形態では、前記コーティングされた物品はポリプロピレン系ではない層を含まず、好ましくは前記コーティングされた物品は層SL、CL1およびCL2からなり、これは、前記コーティングされた物品がポリプロピレンからなる完全な単一材料溶液であることを意味する。
【0047】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、CL2はポリプロピレンホモポリマー(A)を含み、好ましくはポリプロピレンホモポリマー(A)からなり、物品のシール開始温度は105~118℃、好ましくは110~116℃、より好ましくは113~115℃の範囲である。
【0048】
本発明の別の好ましい実施形態では、CL2は、エチレンプロピレンランダムコポリマー(B)を含み、好ましくはエチレンプロピレンランダムコポリマー(B)からなり、物品のシール開始温度は60~100℃、好ましくは78~87℃、より好ましくは80~86℃、さらに好ましくは81~85℃の範囲である。
【0049】
本発明のさらに別の好ましい実施形態は、コーティングされた物品の総厚みが、10~200μm、好ましくは12~170μm、より好ましくは15~100μmの範囲であることを規定する。
【0050】
本発明の別の好ましい実施形態では、層SLの厚みは、5~40μmの範囲、好ましくは10~30μm、より好ましくは15~25μmの範囲である。
【0051】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、層CL1のコーティング重量は、1~20g/m2、好ましくは3~18g/m2、より好ましくは5~15g/m2、さらに好ましくは7~12g/m2の範囲である。
【0052】
本発明のさらに別の好ましい実施形態は、層CL2のコーティング重量が、1~20g/m2、好ましくは3~18g/m2、より好ましくは5~15g/m2、さらに好ましくは7~12g/m2の範囲であることを規定する。
【0053】
本発明による別の好ましい実施形態によれば、コーティング物品は押出コーティング物品である。
【0054】
方法
本発明は、本発明によるコーティングされた物品を製造する方法にも関し、前記方法は押出コーティング工程を含む。
【0055】
押出コーティング方法は、従来の押出コーティング技術を使用して実行してよい。したがって、本発明による組成物を、典型的にはペレットの形態で押出装置に供給してよい。押出機からポリマー溶融物は、好ましくはフラットダイを通ってコーティングされる基材に送られる。コーティングされた基材はチルロール上で冷却され、その後エッジトリマーに通されて巻き取られる。
【0056】
ダイの幅は通常、使用する押出機のサイズに依存する。したがって、90mm押出機の場合、幅は600~1,200mmの範囲内、115mm押出機の場合は900~2,500mm、150mm押出機の場合は1,000~4,000mm、200mm押出機の場合は3,000~5,000mmの範囲内が適切であり得る。ラインスピード(引き落とし速度)は、好ましくは75m/分以上、より好ましくは少なくとも100m/分である。商業的に稼動しているほとんどの機械では、ライン速度は、好ましくは300m/分超、または500m/分超である。最新の機械は、最大1,000m/分、例えば300~800m/分のライン速度で動作するように設計されている。
【0057】
ポリマー溶融温度は通常240~330℃の間である。本発明のポリプロピレン組成物は、単層コーティングとして、または共押出プロセスにおける外層として基材上に押出すことができる。多層押出コーティングでは、上記で定義したポリマー層構造と、場合により他のポリマー層とを共押出してよい。所望する場合または必要に応じて、公知の方法でオゾンおよび/またはコロナ処理をさらに実行することが可能である。
【0058】
使用
本発明は、包装材料として、好ましくは食品および/または医療製品用の耐熱性包装材料としてのコーティングされた物品の使用にも言及する。
【0059】
好ましい包装用途は、牛乳、ジュース、ワイン、または他の液体のための液体包装である。コーティングされた物品は、好ましくはスナック、菓子、肉、チーズのための軟包装用途、または硬質包装用途、または滅菌可能な食品包装に使用してよい。
【0060】
リサイクル
本発明の別の態様は、コーティングされた物品をリサイクルして再生ポリプロピレンを得る方法、ならびに成形品およびフィルムを製造するための前記再生ポリプロピレンの使用に関する。
【0061】
次に、以下の非限定的な実施例を参照して本発明を説明する。
【実施例】
【0062】
実験パート
A.測定方法
以下の用語の定義および測定方法は、別段の定義がない限り、本発明の上記の一般的な説明および以下の実施例に適用される。
【0063】
メルトフローレート
メルトフローレート(MFR)は、ISO 1133-Determination of the melt mass-flow rate (MFR) and melt volume-flow rate (MVR) of thermoplastics -Part 1: Standard methodに従って決定され、g/10分で示される。MFRはポリマーの流動性、つまり加工性の指標である。メルトフローレートが高くなるほど、ポリマーの粘度は低くなる。ポリプロピレンのMFR2は、温度230℃、荷重2.16kgで測定される。
【0064】
第2ポリマー画分(RACO-2)のコモノマー含量
第2ポリマー画分(RACO-2)のコモノマー含量は、式(I)に従って計算される。
【数1】
式中、
w(A-1)は、第1のポリマー画分(RACO-1)の重量分率[重量%]であり、
w(A-2)は、第2のポリマー画分(RACO-2)の重量分率[重量%]であり、
C(A-1)は、第1のポリマー画分(RACO-1)のコモノマー含量[重量%]であり、
C(A)はC
2C
3ランダムコポリマー(RACO)のコモノマー含量[重量%]であり、
C(A-2)は、第2のポリマー画分(RACO-2)の計算されたコモノマー含量[重量%]である。
【0065】
ポリマー画分(RACO-2)のメルトフローレートMFR
2の計算
第2のポリマー画分(RACO-2)のMFRは、式(II)に従って計算される。
【数2】
式中、
w(A1)は、ポリマー画分RACO-1の重量分率[重量%]であり、
w(A2)は、ポリマー画分RACO-2の重量分率[重量%]であり、
MFR(A1)は、ポリマー画分RACO-1のメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]であり、
MFR(A)は、ランダムプロピレンコポリマー(RACO)全体のメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]であり、
MFR(A2)は、ポリマー画分RACO-2の計算したメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]である。
【0066】
NMR分光法による微細構造の定量化(コモノマー含量と部位欠陥)
定量的核磁気共鳴(NMR)分光法をさらに使用して、ポリマーのコモノマー含量とコモノマー配列分布を定量した。定量的13C{1H}NMRスペクトルは、1Hおよび13Cについてそれぞれ400.15MHzおよび100.62MHzで動作するBruker Advance III 400 NMR分光計を使用して、溶液状態で記録した。すべてのスペクトルは、13Cに最適化された10mm拡張温度プローブヘッドを使用して、すべての気体に窒素ガスを使用し、125℃で記録した。約200mgの材料を、クロム-(III)-アセチルアセトネート(Cr(acac)3)とともに、3mlの1,2-テトラクロロエタン-d2(TCE-d2)に溶解し、溶媒中の緩和剤65mM溶液とした(Singh, G., Kothari, A., Gupta, V., Polymer Testing 28 5 (2009), 475)。均質な溶液とするために、ヒートブロックで最初のサンプルを調製した後、NMRチューブを回転式オーブンで少なくとも1時間さらに加熱した。磁石に挿入した後、チューブを10Hzで回転させた。この設定は、主にエチレン含量を正確に定量するために必要な高分解能および定量性のために選択された。最適化されたチップ角度、1秒間のリサイクル遅延、およびバイレベルのWALTZ16デカップリングスキームを使用して、NOEなしで標準のシングルパルス励起が採用された(Zhou, Z., Kuemmerle, R., Qiu, X., Redwine, D., Cong, R., Taha, A., Baugh, D. Winniford, B., J. Mag. Reson. 187 (2007) 225; Busico, V., Carbonniere, P., Cipullo, R., Pellecchia, R., Severn, J., Talarico, G., Macromol. Rapid Commun. 2007, 28, 1128)。1スペクトルあたり合計6144(6k)のトラジエントが取得された。定量的13C{1H}NMRスペクトルは、独自のコンピュータプログラムを使用して処理、積分し、積分値から関連する定量的特性を決定した。すべての化学シフトは、溶媒の化学シフトを使用して、エチレンブロックの中心メチレン基(EEE)の30.00ppmを間接的に参照した。このアプローチにより、この構造単位が存在しない場合でも比較参照が可能であった。エチレンの取り込みに対応する特徴的なシグナルが観察された(Cheng, HN, Macromolecules 17 (1984), 1950)。
【0067】
2,1エリトロ部位欠陥に対応する特徴的なシグナルが観察されたため(L. Resconi, L. Cavallo, A. Fait, F. Piemontesi, Chem. Rev. 2000、100 (4), 1253、Cheng、H. N., Macromolecules 1984, 17, 1950、ならびにW-J. WangおよびS. Zhu, Macromolecules 2000, 33 1157に記載されている)、測定された特性に対する部位欠陥の影響を補正する必要があった。他のタイプの部位欠陥に対応する特徴的なシグナルは観察されなかった。
【0068】
コモノマー分率は、
13C{
1H}スペクトルのスペクトル領域全体にわたる複数のシグナルの積分を通じて、Wangらの方法(Wang, W-J., Zhu, S., Macromolecules 33 (2000), 1157)を使用して定量した。この方法は、その堅牢性と必要に応じて部位欠陥の存在を考慮できるために選択された。積分領域は、遭遇したコモノマー含量の全範囲にわたる適用性を高めるためにわずかに調整された。PPEPP配列内の孤立したエチレンのみが観察される系については、存在しないことが知られている部位の非ゼロ積分の影響を軽減するためにWangらの方法を修正した。このアプローチは、そのような系のエチレン含量の過大評価を減らし、絶対的なエチレン含量を決定するために使用される部位の数を以下のように減らすことによって達成された。
【数3】
【0069】
この一連の部位を使用すると、対応する積分方程式は以下になる:
【数4】
ここでは、Wangらの論文で使用されたものと同じ表記を使用している(Wang, W-J., Zhu, S., Macromolecules 33 (2000), 1157)。絶対的なプロピレン含量に使用した方程式は修正しなかった。
【0070】
コモノマー組み込みのモルパーセントは、モル分率から計算された。
E[mol%]=100*fE
【0071】
コモノマー組み込みの重量パーセントは、モル分率から計算された。
E[重量%]=100*(fE*28.06)/((fE*28.06)+((1-fE)*42.08))
【0072】
トリアドレベルでのコモノマー配列分布は、Kakugoらの解析方法(Kakugo, M., Naito, Y., Mizunuma, K., Miyatake, T. Macromolecules 15 (1982) 1150)を使用して決定した。この方法は、その堅牢性と、より広範囲のコモノマー含量への適用性を高めるために積分領域がわずかに調整されていることから選択された。
【0073】
キシレン可溶分(XCS、重量%)
本発明で定義および記載されるキシレン可溶(XCS)画分は、ISO 16152に従って次のように測定した:2.0gのポリマーを135℃で撹拌しながら250mlのp-キシレンに溶解した。30分後、溶液を周囲温度で15分間放冷し、次いで25±0.5℃で30分間静置した。溶液をろ紙でろ過し、2つの100mlフラスコに入れた。第1の100ml容器からの溶液を窒素流中で蒸発させ、残留物を真空下90℃で一定重量に達するまで乾燥させた。次いで、キシレン可溶画分(パーセント)は以下のように決定できる。
XCS%=(100*m*V0)/(m0*v)
m0=初期ポリマー量(g);
m=残留物の重量(g);
V0 =初期体積(ml);
v=分析サンプルの体積(ml)
【0074】
DSC分析、溶融温度(Tm)および結晶化温度(Tc)
データは、TA Instrument Q2000示差走査熱量測定(DSC)を使用して、5~7mgのサンプルで測定した。DSCはISO 11357 /part 3/method C2に従って、-30~+225℃の温度範囲で、10℃/分のスキャン速度で加熱/冷却/加熱サイクルで実行された。
結晶化温度(Tc)と結晶化エンタルピー(Hc)は冷却ステップから決定され、溶融温度(Tm)と溶融エンタルピー(Hm)は第2の加熱ステップから決定される。
【0075】
曲げ弾性率
曲げ弾性率は、EN ISO 1873-2に従って射出成形された80×10×4mm3の試験バーに対してISO 178に従って決定された。
【0076】
ヘキサン抽出物
ヘキサン抽出可能画分は、FDA法(federal registration, title 21, Chapter 1, part 177, section 1520, s. Annex B)に従って、溶融温度220℃およびチルロール温度40℃の単層キャストフィルムラインで製造された厚さ100μmのキャストフィルムについて測定される。抽出は温度50℃、抽出時間30分で行った。
【0077】
分子量特性
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および多分散度(Mw/Mn)は、以下の方法に従ってゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した。
重量平均分子量Mwおよび多分散度(Mw/Mn)(ここで、Mnは数平均分子量であり、Mwは重量平均分子量である)は、ISO 16014-1:2003およびISO 16014-4:2003に基づく方法により測定した。屈折率検出器およびオンライン粘度計を備えたWaters Alliance GPCV 2000装置を、TosoHaasの3×TSK-ゲルカラム(GMHXL-HT)および145℃、1mL/分の一定流量の溶媒としての1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB、200mg/Lの2,6-ジtertブチル-4-メチル-フェノールで安定化)と共に使用した。分析ごとに216.5μlのサンプル溶液を注入した。カラムセットは、0.5kg/mol~11,500kg/molの範囲の19種類の狭いMWDポリスチレン(PS)標準と、十分に特徴付けられた広範なポリプロピレン標準のセットとの相対校正を使用して校正した。すべてのサンプルは、5~10mgのポリマーを10mL(160℃)の安定化TCB(移動相と同じ)に溶解し、GPC装置にサンプリングする前に連続的に振とうしながら3時間保持することによって調製した。
【0078】
シール挙動
コーティングのシール挙動は、ホットタック力を測定することによって以下の様に決定した。最大ホットタック力、すなわち力/温度図の最大値が決定され報告された。ホットタック測定は、ASTM F 1921の方法に従って、J&Bホットタックテスターを使用して行った。この規格では、サンプルを幅15mmのスライスに切断する必要がある。サンプルをホットタック試験機に垂直方向に置き、両端をメカニカルロックに取り付ける。その後、テスターをシールし、そのホットシールを引き抜き、抵抗力を測定した。
シールパラメータは次の通りであった。
【0079】
B.使用材料
クラフト紙は、Billerud-Korsnasから市販されているUGクラフト紙(コーティング重量:70g/m2)である。
【0080】
BOPPは、厚さ20mmの共押出二軸延伸ポリプロピレンフィルムであり、RINCEL(登録商標)MXMの商品名でCASFIL(登録商標)から市販されている。
【0081】
WG341Cは、Borealis AG(オーストリア)から市販されているポリプロピレンコポリマー(ISO 1183に従って決定された密度=910kg/m3、ISO 1133に従って決定されたメルトフローレート(230℃/2.16kg)=25g/10分)である。
【0082】
Daploy(商標)WF420HMSは、Borealis AG(オーストリア)から市販されている構造異性体の変性プロピレンホモポリマー(ISO 1183に従って決定された密度=900kg/m3、ISO 1133に従って決定されたメルトフローレート(230℃/2.16kg)=26g/10分)である。
【0083】
Daploy(商標)SF313HMSは、Borealis AG(オーストリア)から市販されている構造異性体の変性プロピレンホモポリマー(ISO 1183に従って決定された密度=900kg/m3、ISO 1133に従って決定されたメルトフローレート(230℃/2.16kg)=15g/10分)である。
【0084】
ポリプロピレン(PPH、ホモポリプロピレン)は次のように調製された。
【0085】
触媒系
メタロセン(MC1)(rac-アンチ-ジメチルシランジイル(2-メチル-4-フェニル-5-メトキシ-6-tert-ブチル-インデニル)(2-メチル-4-(4-tert-ブチルフェニル)インデニル)ジルコニウム ジクロリド):
【化1】
は、WO2013/007650,E2に記載の手順に従って合成した。MAO-シリカ担体を次のように調製した。
【0086】
メカニカルスターラーおよびフィルターネットを備えたスチール製反応器に窒素を流し、反応器温度を20℃に設定した。次に、600℃で予備焼成したAGC Si-Tech CoからのシリカグレードDM-L-303(7.4kg)を供給ドラムから加え、続いて手動バルブを使用して窒素で注意深く加圧および減圧した。次いで、トルエン(32kg)を加えた。混合物を15分間撹拌した。次に、Lanxessからのトルエン中のMAOの30重量%溶液(17.5kg)を、反応器の上部の供給ラインを介して70分以内に添加した。次いで、反応混合物を90℃まで加熱し、90℃でさらに2時間撹拌した。スラリーを沈降させ、母液をろ過した。MAO処理した担体を90℃でトルエン(32kg)で2回洗浄し、続いて沈降させ、ろ過した。反応器を60℃まで冷却し、固体をヘプタン(32.2kg)で洗浄した。最後に、MAO処理したSiO2を60℃、窒素流下で2時間乾燥させ、次に真空下(-0.5barg)で撹拌しながら5時間乾燥させた。MAO処理した担体は、自由流動性の白色粉末として収集され、12.6重量%のAlを含有することが判明した。
【0087】
最終触媒系は以下のように調製した。トルエン中の30重量%MAO(2.2kg)を、20℃でビュレットを介してスチール製窒素ブランク反応器に加えた。次いで、トルエン(7kg)を撹拌しながら加えた。メタロセンMC1(286g)を金属シリンダーから添加し、続いて1kgのトルエンを流した。混合物を20℃で60分間撹拌した。次いで、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(336g)を金属シリンダーから加え、続いて1kgのトルエンを流した。混合物を室温で1時間撹拌した。得られた溶液を、上記のように調製したMAO-シリカ担体の撹拌ケーキに1時間かけて加えた。ケーキを12時間放置し、その後、N2流下、60℃で2時間乾燥させ、さらに撹拌しながら真空下(-0.5barg)で5時間乾燥させた。乾燥触媒は、13.9重量%のAlおよび0.26重量%のZrを含有するピンク色の自由流動性粉末の形態でサンプリングした。
【0088】
PPHの本発明ポリマーを調製するための重合は、上述の触媒系を使用して、2つの反応器セットアップ(ループ-気相反応器(GPR1))および予備重合器を備えたBorstarパイロットプラントで実施された。
【0089】
表1に、PPHの重合条件と樹脂の最終特性を示す。
【表1】
【0090】
ポリプロピレン(PP1、プロピレンランダムコポリマー)を以下のように調製した。
【0091】
PP1用触媒系
メタロセン(MC1)(rac-アンチ-ジメチルシランジイル(2-メチル-4-フェニル-5-メトキシ-6-tert-ブチル-インデニル)(2-メチル-4-(4-tert-ブチルフェニル)インデニル)ジルコニウム ジクロリド)
【化2】
は、WO2013/007650,E2に記載の手順に従って合成した。MAO-シリカ担体を次のように調製した。メカニカルスターラーおよびフィルターネットを備えたスチール製反応器に窒素を流し、反応器温度を20℃に設定した。次に、600℃で予備焼成したAGC Si-Tech CoからのシリカグレードDM-L-303(7.4kg)を供給ドラムから加え、続いて手動バルブを使用して窒素で注意深く加圧および減圧した。次いで、トルエン(32kg)を加えた。混合物を15分間撹拌した。次に、Lanxessからのトルエン中のMAOの30重量%溶液(17.5kg)を、反応器の上部の供給ラインを介して70分以内に添加した。次いで、反応混合物を90℃まで加熱し、90℃でさらに2時間撹拌した。スラリーを沈降させ、母液をろ過した。MAO処理した担体を90℃でトルエン(32kg)で2回洗浄し、続いて沈降させ、ろ過した。反応器を60℃まで冷却し、固体をヘプタン(32.2kg)で洗浄した。最後に、MAO処理したSiO
2を60℃、窒素流下で2時間乾燥させ、次に真空下(-0.5barg)で撹拌しながら5時間乾燥させた。MAO処理した担体は、自由流動性の白色粉末として収集され、12.6重量%のAlを含有することが判明した。
【0092】
最終的な触媒系は以下のように調製した:トルエン中の30重量%MAO(2.2kg)を、20℃でビュレットを通してスチール製窒素ブランク反応器に加えた。次いで、トルエン(7kg)を撹拌しながら加えた。メタロセンMC1(286g)を金属シリンダーから添加し、続いて1kgのトルエンを流した。混合物を20℃で60分間撹拌した。次いで、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(336g)を金属シリンダーから加え、続いて1kgのトルエンを流した。混合物を室温で1時間撹拌した。得られた溶液を、上記のように調製したMAO-シリカ担体の撹拌ケーキに1時間かけて加えた。ケーキを12時間放置し、その後、N2流下、60℃で2時間乾燥させ、さらに撹拌しながら真空下(-0.5barg)で5時間乾燥させた。乾燥触媒は、13.9重量%のAlおよび0.26重量%のZrを含有するピンク色の自由流動性粉末の形態でサンプリングした。
【0093】
PP2用触媒系
使用した触媒は、ICS3としてWO2020/239602 A1に開示されている、アンチジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ジ(3,5-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリドであった。
【0094】
MAO-シリカ担体の調製
メカニカルスターラーおよびフィルターネットを備えたスチール製反応器に窒素を流し、反応器温度を20℃に設定した。次に、600℃で予備焼成したAGC Si-Tech CoからのシリカグレードDM-L-303(5.0kg)を供給ドラムから加え、続いて手動バルブを使用して窒素で注意深く加圧および減圧した。次いで、トルエン(22kg)を加えた。混合物を15分間撹拌した。次に、Lanxessからのトルエン中のMAOの30重量%溶液(9.0kg)を、反応器の上部の供給ラインを介して70分以内に添加した。次いで、反応混合物を90℃まで加熱し、90℃でさらに2時間撹拌した。スラリーを沈降させ、母液をろ過した。触媒を90℃でトルエン(22kg)で2回洗浄し、次いで沈降させ、ろ過した。反応器を60℃まで冷却し、固体をヘプタン(22.2kg)で洗浄した。最後に、MAO処理したSiO2を、60℃、窒素気流下で2時間乾燥させ、次いで真空下(-0.5barg)で撹拌しながら5時間乾燥させた。MAO処理した担体は、流動性のある白色粉末として収集され、12.2重量%のAlを含有することが判明した。
【0095】
触媒の調製
トルエン中の30重量%のMAO(0.7kg)を、20℃でビュレットを通してスチール製窒素ブランク反応器に加えた。次いで、トルエン(5.4kg)を撹拌しながら加えた。上記の触媒(93g)を金属シリンダーから添加し、続いて1kgのトルエンを流した。混合物を20℃で60分間撹拌した。次いで、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(91g)を金属シリンダーから添加し、続いて1kgのトルエンを流した。混合物を室温で1時間撹拌した。得られた溶液を、上記のように調製したMAO-シリカ担体の撹拌ケーキに1時間かけて加えた。このケーキを12時間放置した後、N2気流下、60℃で2時間乾燥させ、さらに撹拌しながら真空下(-0.5barg)で5時間乾燥させた。乾燥触媒を、13.9重量%のAlおよび0.11重量%のZrを含有するピンク色の自由流動性粉末の形態でサンプリングした。
【0096】
PP1およびPP2のランダムコポリマーを調製するための重合は、上述の触媒系を用いて、2つの反応器セットアップ(ループ-気相反応器(GPR1))と予備重合器を備えたBorstarパイロットプラントで実施された。
【0097】
表2に、PP1およびPP2の重合条件と樹脂の最終特性を示す。
【表2】
【0098】
ポリマーパウダー(PPH、PP1およびPP2)は、共回転二軸押出機Coperion ZSK 70を用いて、220℃で、0.2重量%のアンチブロック剤(合成シリカ;CAS番号7631-86-9);0.1重量%の酸化防止剤(Irgafos 168FF);0.1重量%の立体障害フェノール(Irganox 1010FF);0.02重量%のCa-ステアレート;および0.02重量%(それぞれポリマーの総重量に基づく)の非潤滑ステアレート(合成ハイドロタルサイト;CAS番号11097-59-9)とコンパウンドした。
【0099】
C.コーティングされた物品
上記のコンパウンド樹脂PPH、PP1およびPP2を用いて、表3に要約されるようなコートされた物品を、以下のように樹脂の押出コーティングによって調製した。
【0100】
押出コーティングはBeloit共押出コーティングラインで行われた。このラインはPeter CloerenのEBRダイと5層のフィードブロックを備えていた。ライン幅は850~1,000mmで、可能な最大ライン速度は1,000m/分であった。ライン速度は150m/分に維持された。
【0101】
上記のようなコーティングラインにおいて、クラフト紙(比較例1および2)またはBOPP(実施例1~3)が、2つのコーティング層(コーティング層1および2)の両方が9g/m2のコーティング重量(コーティング総重量=18g/m2)を有する共押出構造でコーティングされた。
【0102】
ポリマーメルトの温度は290℃に設定され、押出機の温度プロファイルは200-240-290-290℃であった。チルロールはマットでその表面温度は15℃であった。使用したダイ開口部は0.65mm、ニップ距離は180mmであった。溶融フィルムは、ニップから基材側へ+10mmの位置で初めて基材に接触した。加圧ロールの圧力は3.0kp/cm2であった。ライン速度は150m/分であった。
【0103】
【0104】
シール開始温度(SIT)の値は、ホットタック測定から得られる。本発明では、ホットタック強度が1Nに達する温度(℃)を最低シール開始温度(SIT)と定義し、ホットタック強度が1Nのままの温度(℃)を最高シール開始温度(SET)と定義する。
【0105】
D.結果の考察
上記の表3から集めることができるように、本発明例1~3による完全なポリプロピレン系物品は、比較例1および2によるクラフト紙から構成される基材層を含むコーティングされた物品よりも有意に低いSIT値を示す。さらに、本発明によるコーティングされた物品は、ポリプロピレンの他に他の材料が含まれていないため、リサイクルが容易であるという利点を有する。さらに、表2のデータから分かるように、IE2のコーティングされた物品に使用されるようなPP1は、FDA試験によるヘキサン抽出物の量が非常に少なく(1.1重量%)、したがって、あらゆる種類の食品用途に非常に適している。
【国際調査報告】