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特表2024-506215荷電粒子ビームに影響を及ぼす方法、多重極デバイス、および荷電粒子ビーム装置
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  • 特表-荷電粒子ビームに影響を及ぼす方法、多重極デバイス、および荷電粒子ビーム装置 図1
  • 特表-荷電粒子ビームに影響を及ぼす方法、多重極デバイス、および荷電粒子ビーム装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-09
(54)【発明の名称】荷電粒子ビームに影響を及ぼす方法、多重極デバイス、および荷電粒子ビーム装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/147 20060101AFI20240202BHJP
   H01J 37/153 20060101ALI20240202BHJP
   H01J 37/248 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
H01J37/147 B
H01J37/153 B
H01J37/248 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552116
(86)(22)【出願日】2022-02-08
(85)【翻訳文提出日】2023-08-25
(86)【国際出願番号】 EP2022052996
(87)【国際公開番号】W WO2022184387
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】17/189,013
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501493587
【氏名又は名称】アイシーティー インテグレーテッド サーキット テスティング ゲゼルシャフト フィーア ハルプライタープリーフテヒニック エム ベー ハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176418
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】クック ベンジャミン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーラート ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ウィンクラー ディーター
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101EE08
5C101EE12
5C101EE14
5C101EE22
5C101EE23
5C101EE48
5C101EE67
5C101EE68
5C101EE78
5C101FF02
(57)【要約】
光軸(A)に沿って伝搬する荷電粒子ビーム(11)に影響を及ぼす方法が記載される。この方法は、同じ断面平面に配列された4つ以上の第1の電極(111、211)をもつ第1の多重極(110、210)および4つ以上の第2の電極(121、221)をもつ第2の多重極(120、220)を含む多重極デバイス(100、200)の少なくとも1つの開口(102)を通して荷電粒子ビーム(11)を導くことであって、第1および第2の電極が少なくとも1つの開口(102)の周りに交互に配列される、導くことと、第1のやり方で荷電粒子ビームに影響を及ぼすための第1の場分布を提供するように第1の多重極を励起すること、および第2のやり方で荷電粒子ビームに影響を及ぼすための第2の場分布を提供するように第2の多重極を励起することの少なくとも一方とを含む。同じ基板上に設けられた第1および第2の多重極をもつ多重極デバイス等が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸に沿って伝搬する荷電粒子ビームに影響を及ぼす方法であって、
同じ断面平面に配列された4つ以上の第1の電極をもつ第1の多重極および4つ以上の第2の電極をもつ第2の多重極を含む多重極デバイスの少なくとも1つの開口を通して前記荷電粒子を導くことであって、前記4つ以上の第1の電極および前記4つ以上の第2の電極が前記少なくとも1つの開口の周りに交互に配列される、導くことと、
第1のやり方で前記荷電粒子ビームに影響を及ぼすための第1の場分布を提供するように前記第1の多重極を励起すること、および
第2のやり方で前記荷電粒子ビームに影響を及ぼすための第2の場分布を提供するように前記第2の多重極を励起すること
の少なくとも一方と
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の多重極が、8つの第1の電極を含む第1の八重極であり、前記第2の多重極が、8つの第2の電極を含む第2の八重極である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のやり方で前記荷電粒子ビームに前記影響を及ぼすことおよび前記第2のやり方で前記荷電粒子ビームに前記影響を及ぼすことが、ビーム偏向、ビーム走査、収差補正、非点補正、コリメーション、集束、ビームアライメント、およびブランキングからなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の場分布および前記第2の場分布が、選択可能な方位角を有する双極場、選択可能な方位角を有する四重極場、および八重極場からなる群から選択される、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第1の多重極および前記第2の多重極が、前記第1および第2のやり方で前記荷電粒子ビームに、同期して影響を及ぼすために、前記第2の場分布に重ね合わされた前記第1の場分布を提供するように同時に励起される、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第1の場分布および前記第2の場分布の少なくとも一方または両方が、双極場である、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記第1の場分布が第1の双極場であり、前記第2の場分布が第2の双極場であり、前記第1の双極場が前記第2の双極場よりも強く、特に、前記第1の双極場の最大場強度と前記第2の双極場の最大場強度との間の比が、少なくとも一時的に、5:1以上である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
V1*sin(θ1)の電圧が、前記第1の多重極の前記第1の電極に印加され、θ1は、円周方向における前記それぞれの第1の電極の角度位置であり、V1は、調節可能な偏向電圧であり、
V2*sin(θ2)の電圧が、前記第2の多重極の前記第2の電極に印加され、θ2は、前記円周方向における前記それぞれの第2の電極の角度位置であり、V2は、20V以下の変化する走査電圧である、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の場分布が、前記荷電粒子ビームを偏向させる双極場であり、前記第2の場分布が、試料にわたって前記荷電粒子ビームを走査する双極場である、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記第1の場分布が、前記試料の所定の第1の関心領域に前記荷電粒子ビームを偏向させるために所定の時間維持され、一方、前記第2の場分布が前記所定の第1の関心領域にわたって前記荷電粒子ビームを走査するために変更される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記試料の第2の関心領域に前記荷電粒子ビームを偏向させるために前記第1の場分布を変え、続いて、前記第2の場分布が前記第2の関心領域にわたって前記荷電粒子ビームを走査するために変更させながら、前記第1の場分布を所定の時間維持することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の多重極の前記第1の電極が、第1の電圧源、特に、少なくとも、0Vと100V以上との間の電圧向けに構成された高電圧電源に接続され、前記第2の多重極の前記第2の電極が、前記第1の電圧源と異なる第2の電圧源、特に、1GHzを超える変化速度向けに構成された高速電源に接続される、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
光軸に沿って伝搬する荷電粒子ビームに影響を及ぼすための多重極デバイスであって、
前記荷電粒子ビームのための少なくとも1つの開口をもつ基板であって、前記少なくとも1つの開口が前記光軸に沿って前記基板を通って延びる、基板と、
前記基板上に設けられた4つ以上の第1の電極を含む第1の多重極と、
前記基板上に設けられた4つ以上の第2の電極を含む第2の多重極であって、前記4つ以上の第1の電極および前記4つ以上の第2の電極が前記少なくとも1つの開口の周りに交互に配列される、第2の多重極と、
前記第1の電極を第1の電圧源に接続するための第1の電源配列部と、
前記第2の電極を第2の電圧源に接続するための第2の電源配列部と
を含む、多重極デバイス。
【請求項14】
前記第1の多重極が、8つの第1の電極を含む第1の八重極であり、前記第2の多重極が、8つの第2の電極を含む第2の八重極である、請求項13に記載の多重極デバイス。
【請求項15】
前記第1の多重極および前記第2の多重極が、静電多重極であり、前記第1の電極および前記第2の電極が、前記基板に設けられ所定の電位に設定されるように構成された導電性部分である、請求項13または14に記載の多重極デバイス。
【請求項16】
前記第1の電圧源が、100V以上の最大電圧および1GHz未満の変化速度向けに特に構成された低速高電圧電源であり、前記第2の電圧源が、50V以下の最大電圧および1GHzを超える変化速度向けに特に構成された高速低電圧電源である、請求項13~15のいずれかに記載の多重極デバイス。
【請求項17】
前記第1の多重極が、ビーム偏向のための第1の双極場を提供するように構成され、前記第2の多重極が、前記第1の双極場に重ね合わされる、試料にわたって前記荷電粒子ビームを走査するための第2の双極場を提供するように構成される、請求項13~16のいずれかに記載の多重極デバイス。
【請求項18】
前記第1の多重極および前記第2の多重極が、独立して制御可能な多重極である、請求項13~17のいずれかに記載の多重極デバイス。
【請求項19】
荷電粒子ビームを用いて試料を検査またはイメージングするための荷電粒子ビーム装置であって、
前記荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子ビーム源と、
前記荷電粒子ビームを前記試料に集束させるための対物レンズと、
請求項13~18のいずれかに記載の前記荷電粒子ビームに影響を及ぼすための前記多重極デバイスと
を含む、荷電粒子ビーム装置。
【請求項20】
前記多重極デバイスが、前記対物レンズに隣接する、または前記対物レンズ内に配列される、請求項19に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項21】
前記多重極デバイスが、前記試料の関心領域に前記荷電粒子ビームを偏向させるとともに、前記関心領域にわたって前記荷電粒子ビームを走査するように構成される、請求項19または20に記載の荷電粒子ビーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の実施形態は、例えば、検査システム用途、試験システム用途、リソグラフィシステム用途、欠陥レビュー、または限界寸法設定用途のための荷電粒子ビーム装置に関し、詳細には、電子ビーム検査装置に関し、より詳細には、走査電子顕微鏡に関する。本明細書に記載の実施形態は、さらに、荷電粒子ビーム装置において荷電粒子ビームに影響を及ぼすための多重極デバイス、ならびに多重極デバイスを用いて荷電粒子ビームに影響を及ぼす方法に関する。具体的には、本明細書に記載の実施形態は、特に、電子検査およびイメージングシステムにおいて、例えば、電子ビームを偏向させ、走査し、および/または補正することによって、特定のやり方で電子ビームに影響を及ぼすための多重極デバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最新の半導体技術は、ナノメートルまたはさらにサブナノメートルスケールでの試料の構造化およびプロービングへの高い需要を創り出している。マイクロメートルおよびナノメートルスケールのプロセス制御、検査、または構造化は、多くの場合、電子顕微鏡または電子ビームパターン発生器などの荷電粒子ビーム装置において生成、形成、偏向、および集束される荷電粒子ビーム、例えば電子ビームを用いて行われる。検査目的のために、荷電粒子ビームは、例えば光子ビームと比較して、優れた空間分解能を提供する。
【0003】
走査電子顕微鏡(SEM)などの荷電粒子ビームを使用する検査装置は、複数の産業分野において、限定はしないが、製造中の電子回路の検査、リソグラフィのための露光システム、検出システム、欠陥検査ツール、および集積回路用試験システムを含む多くの機能を有する。そのような粒子ビームシステムでは、高電流密度の微細ビームプローブを使用することができる。例えば、SEMの場合には、一次電子ビームは、試料をイメージングおよび分析するために使用することができる二次電子(SE)および/または後方散乱電子(BSE)のような信号粒子を生成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、小型荷電粒子ビーム装置で試料を迅速に検査および/またはイメージングすることは困難である。具体的には、様々な走査偏向器、アライメント偏向器、レンズ、ビーム補正器、および/または他のビーム光学構成要素が、荷電粒子ビーム装置の真空ハウジング内で光軸に沿って設けられる場合があり、空間のかなりの量を消費する場合がある。しかしながら、空間は、一般に、荷電粒子ビーム装置、特に対物レンズの近くの区域では限られる。
【0005】
いくつかの荷電粒子ビーム装置は、ビーム偏向および/またはビーム補正のために、多重極デバイス、例えば静電多重極を使用する。16極または32極などの高次多重極は、様々な目的のために、例えば、四重極としてまたは八重極として使用することができる。しかしながら、一般的な高次多重極は、複雑なデバイスであり、多数の電極の各々を適切な時間に適切な電圧に確実に励起することが困難である。それゆえに、高次多重極は、一般に、特定のやり方で荷電粒子ビームに影響を及ぼすように、例えば、高次収差を補正するように適合される。
【0006】
上述に鑑みて、荷電粒子ビームに柔軟に確実に影響を及ぼすように適合された小型多重極デバイスを提供することは有利であろう。さらに、制限された空間しか利用できない場合でさえ、荷電粒子ビーム装置内で荷電粒子ビームに柔軟に確実に影響を及ぼす方法を提供することは有利であろう。最後に、限られた空間内で所望のやり方で荷電粒子ビームに影響を及ぼすのに適する荷電粒子ビーム装置を提供することは有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述に鑑みて、光軸に沿って伝搬する荷電粒子ビームに影響を及ぼす方法、光軸に沿って伝搬する荷電粒子ビームに影響を及ぼすための多重極デバイス、および試料を検査またはイメージングするための荷電粒子ビーム装置が、独立請求項によって提供される。
【0008】
第1の態様によれば、光軸に沿って伝搬する荷電粒子ビームに影響を及ぼす方法が提供される。この方法は、同じ断面平面に配列された4つ以上の第1の電極をもつ第1の多重極および4つ以上の第2の電極をもつ第2の多重極を含む多重極デバイスの少なくとも1つの開口を通して荷電粒子を導くことであって、4つ以上の第1の電極および4つ以上の第2の電極が少なくとも1つの開口の周りに交互に配列される、導くことと、第1のやり方で荷電粒子ビームに影響を及ぼすための第1の場分布を提供するように第1の多重極を励起すること、および第2のやり方で荷電粒子ビームに影響を及ぼすための第2の場分布を提供するように第2の多重極を励起することの少なくとも一方とを含む。
【0009】
別の態様によれば、光軸に沿って伝搬する荷電粒子ビームに影響を及ぼすための多重極デバイスが提供される。多重極デバイスは、荷電粒子ビームのための少なくとも1つの開口をもつ基板であって、少なくとも1つの開口が光軸に沿って基板を通って延びる、基板と、基板上に設けられた4つ以上の第1の電極を含む第1の多重極と、基板上に設けられた4つ以上の第2の電極を含む第2の多重極であって、4つ以上の第1の電極および4つ以上の第2の電極が少なくとも1つの開口の周りに交互に配列される、第2の多重極と、第1の電極を第1の電圧源に接続するための第1の電源配列部と、第2の電極を第2の電圧源に接続するための第2の電源配列部とを含む。
【0010】
第1の電源配列部は、例えば荷電粒子ビームを偏向(「ビームシフト」)させるために、第1のやり方で荷電粒子ビームに影響を及ぼすための第1の場分布を提供するように第1の多重極を励起するように構成することができる。第2の電源配列部は、例えば荷電粒子ビームを走査(「ビーム走査」)するために、第2のやり方で荷電粒子ビームに影響を及ぼすための第2の場分布を提供するように第2の多重極を励起するように構成することができ、第1および第2の場分布は、互いに重ね合わされ得る。
【0011】
別の態様によれば、荷電粒子ビーム、特に電子ビームを用いて試料をイメージングおよび/または検査するための荷電粒子ビーム装置が提供される。荷電粒子ビーム装置は、荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子ビーム源と、荷電粒子ビームを試料に集束させるための対物レンズと、荷電粒子ビームに影響を及ぼすための多重極デバイスであって、多重極デバイスが本明細書に記載の実施形態のうちのいずれかに従って構成される、多重極デバイスとを含むことができる。
【0012】
荷電粒子ビーム装置は、多重極デバイスが対物レンズの近傍または内部に配列される場合、大きい視野を提供することができ、大きいビームシフトを可能にする。
【0013】
多重極デバイスは、第1のやり方で荷電粒子ビームに影響を及ぼすための、例えば、ビーム偏向(「ビームシフト」)に適合された第1の多重極と、第2のやり方で荷電粒子ビームに影響を及ぼすための、例えば、特にビームシフトと同時にビーム走査するように(「ビーム走査」に)適合された第2の多重極とを含むことができる。
【0014】
実施形態は、さらに、開示される方法を行うための装置に関し、個々の方法アクションを実行するための装置部分を含む。この方法は、ハードウェア部分によって、適切なソフトウェアでプログラムされたコンピュータによって、これらの2つの任意の組合せによって、または任意の他のやり方で実行することができる。さらに、実施形態は、記載の装置を動作させる方法にも関する。
【0015】
本明細書に記載の実施形態と組み合わせることができるさらなる利点、特徴、態様、および詳細は、従属請求項、説明、および図面から明らかである。
【0016】
本開示の上述で説明された特徴を詳細に理解することができるように、上述で簡潔に要約されたもののより詳細な説明が、実施形態を参照することよって得られ得る。添付の図面は、1つまたは複数の実施形態に関連し、以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本明細書に記載の方法のいずれかに従って動作するように適合された本明細書に記載の実施形態による多重極デバイスの概略図である。
図2】本明細書に記載の方法のいずれかに従って動作するように適合された本明細書に記載の実施形態による多重極デバイスの概略図である。
図3a】第1の多重極が双極場を生成する第1の動作モードにおける図2の多重極デバイスを示す図である。
図3b】第1の多重極が双極場を生成する第1の動作モードにおける図2の多重極デバイスを示す図である。
図3c】第1の多重極が双極場を生成する第1の動作モードにおける図2の多重極デバイスを示す図である。
図3d】従来の八重極によって生成される双極場を示す図である。
図4】第1の多重極が四重極場を生成する第2の動作モードにおける図2の多重極デバイスを示す図である。
図5】本明細書に記載の実施形態による荷電粒子ビーム装置の概略図である。
図6】本明細書に記載の実施形態による荷電粒子ビームに影響を及ぼす方法を示す流れ図である。
図7】本明細書に記載の実施形態による荷電粒子ビームに影響を及ぼす方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、様々な実施形態が詳細に参照されることになり、それらのうちの1つまたは複数の例が図に示される。図面に関しての以下の説明の中で、同じ参照番号は同じ構成要素を指す。全体的に、個々の実施形態に関する差のみが説明される。各例は、説明のために提供され、限定を意味するものではない。さらに、ある実施形態の一部として図示または説明される特徴は、他の実施形態で、または他の実施形態と併せて使用して、さらなる実施形態をさらにもたらすことができる。説明はそのような変更および変形を含むことが意図される。
【0019】
図1は、本明細書に記載の実施形態による光軸Aに沿って伝搬する荷電粒子ビームに影響を及ぼすための多重極デバイス100の概略図である。多重極デバイス100は、荷電粒子ビームのための少なくとも1つの開口102をもつ基板103を含む。少なくとも1つの開口102は、光軸Aに沿って基板103を通って延びる。
【0020】
多重極デバイス100は、基板103上に設けられた4つ以上の第1の電極111をもつ第1の多重極110と、基板103上に設けられた4つ以上の第2の電極121をもつ第2の多重極120とを含む。第1の電極111および第2の電極121は、基板103の同じ主面に、特に、光軸Aと垂直に交差する同じ断面平面に配列することができる。それに応じて、少なくとも1つの開口102を通って伝搬する荷電粒子ビームは、少なくとも1つの開口102の中心またはその近くのビーム相互作用空間において、第1の多重極110によっておよび第2の多重極120によって影響を受けることができる。
【0021】
第1の多重極110は、静電多重極または磁気多重極とすることができる。第2の多重極120は、静電多重極または磁気多重極とすることができる。いくつかの実施形態では、第1の多重極110および第2の多重極120は両方とも静電多重極である。静電多重極は、電場により荷電粒子ビームに影響を及ぼすように構成され、静電多重極の電極は、一般に、所定の電位に設定することができる導体(例えば、導電物体またはトレース)である。磁気多重極は、磁場により荷電粒子ビームに影響を及ぼすように構成され、磁気多重極の電極は、一般に、所定の磁場を提供することができる磁石(例えば、コイル)である。
【0022】
図1に概略的に示されるように、第1の多重極110の第1の電極111は、少なくとも1つの開口102の周りの等距離の角度位置に配列することができ、第2の多重極120の第2の電極121は、少なくとも1つの開口102の周りの等距離の角度位置に配列することができる。例えば、第1の多重極110および第2の多重極120が四重極である(図1のように)場合、4つの第1の電極111は、2つの隣接する第1の電極が光軸Aに対してそれぞれ90°の角度を囲む(例えば、第1の電極が位置Θ1=0°、90°、180°、270°に配列される)ように配列することができ、4つの第2の電極121は、2つの隣接する第2の電極が光軸Aに対してそれぞれ90°の角度を囲む(例えば、第2の電極が位置Θ2=45°、135°、225°、315°に配列される)ように配列することができる。
【0023】
4つ以上の第1の電極111および4つ以上の第2の電極121は、少なくとも1つの開口102の周りに交互に配列される。図において、第1の電極111は第1のハッチングで示されており、第2の電極121は第2のハッチングで示されており、その結果、少なくとも1つの開口の周りの第1の電極111および第2の電極121の交互配列が明確に見える。
【0024】
したがって、多重極デバイス100は、同じ基板上に交互に挟むやり方で配列された2つの別個の多重極を含み、基板は、電極のための支持体を形成する。2つの別個の多重極は、同じ基板上で同じ断面平面に配列され、同じビーム相互作用区域で荷電粒子ビームと相互作用するので、空間を節約することができ、小型の多重極デバイスが提供される。例えば、少なくとも2つの別個の多重極をもつ多重極デバイスは、一般に空間が限られている対物レンズ内にまたはその近くに配置することができる。
【0025】
「多重極」は、特定のやり方で荷電粒子ビームに影響を及ぼすように構成された電極(例えば、電場および/または磁場を提供するための電極)の配列として理解することができる。本明細書に記載の多重極デバイスの多重極は、それぞれ、少なくとも4つの電極を有する。例えば、多重極は、4つの電極をもつ四重極、8つの電極をもつ八重極、または12極もしくは16極などのより高次の多重極とすることができる。
【0026】
4つの電極をもつ四重極は、当然、例えば、収差補正(例えば非点収差補正)のために四重極場を生成するために使用することができるが、四重極はまた、選択可能な方向に印加することができる双極場を生成するために使用することができる。したがって、四重極は、選択可能な偏向方向にビームを偏向させるためのビーム偏向器として使用することができる。同様に、八重極は、当然、八重極場を生成するために使用することができるが、八重極はまた、選択可能な方向に作用する四重極場を生成するために(例えば、非点収差補正のために)使用することができ、八重極はまた、選択可能な方向に作用する双極場を生成するために(例えば、選択可能な偏向方向に荷電粒子ビームを偏向させるために)使用することができる。
【0027】
本明細書に記載の実施形態によれば、2つの多重極(少なくとも四重極またはより高次の多重極である)が、同じ基板上の同じ断面平面に設けられ、その結果、荷電粒子ビームは、小さいビーム相互作用空間内で1つの小型多重極デバイスを用いて少なくとも2つの異なるやり方で影響を受けることができる。例えば、第1の多重極は、ビーム補正のために構成することができ、第2の多重極は、ビームアライメントのために構成することができ、または第1の多重極は、試料の特定の関心領域にビームを偏向(「ビームシフト」)させるように構成することができ、第2の多重極は、特定の関心領域内の試料にわたってビームを走査(「ビーム走査」)するように構成することができる。それゆえに、フレキシブルで小型の多重極デバイスが、本明細書に記載の実施形態によって提供される。
【0028】
多重極デバイス100は、第1の多重極110の第1の電極111を第1の電圧源115に接続するための第1の電源配列部116と、第2の多重極120の第2の電極121を第2の電圧源125に接続するための第2の電源配列部126とをさらに含むことができる。第1および第2の多重極の各々をそれぞれ分離した電圧源に接続することにより、それぞれの多重極の制御が容易になり、実際に、2つの別個の多重極を設けることが保証される。例えば、第1の多重極の第1の電極111は、第1および第2の多重極が異なる電圧源に接続される場合、第2の多重極の第2の電極の電圧源に悪影響を及ぼすことなく、および第2の多重極の第2の電極の電圧源によって悪影響を受けることなく、それぞれの所定の電圧で同時に励起および制御され得ることが保証され得る。さらに、第1の電圧源115は、特に、第1の多重極のタスク(例えば、本明細書では「ビームシフト」とも呼ぶ、低速高電圧電源によって有利に実施される強くゆっくり変化するまたは周期的に一定のビーム偏向であり得る)に適合させることができ、第2の電圧源125は、特に、第2の多重極のタスク(例えば、本明細書では「ビーム走査」とも呼ぶ、高速低電圧電源によって有利に実施される荷電粒子ビームの迅速な走査であり得る)に適合させることができる。
【0029】
したがって、図1の多重極デバイス100が、少なくとも1つの開口102の周りに配列された合計で8つの電極を含む場合でさえ、図1の多重極デバイス100は、8つの電極をもつ従来の八重極と実質的に異なり、従来の八重極は、1つの単一の電圧源によって電力供給され、それゆえに、例えば、偏向またはビーム補正のいずれかのために一度に1つのやり方でしか励起することができない。さらに、従来の八重極は、8つの出力端子をもつ1つの電圧源によって電力供給されるので、出力端子の一部の電圧変化は、他の出力端子にも影響を与えることになり、その結果、従来の八重極は、八重極のすべての電極によって一度に提供される1つの共通場分布しか適用することができない。従来の八重極とは対照的に、図1の多重極デバイス100は、それぞれの電源配列部を介してそれぞれの電圧源に接続されることによって完全に独立して制御し動作させることができる2つの別個の四重極を含む。したがって、各四重極は、特定のタスクに合うようにすることができ、第1の電圧源の出力端子の出力電圧の変化は、第2の電圧源の出力端子に影響を及ぼさず、その結果、第1の多重極および第2の多重極は、独立して制御することができ、それにより、より正確でより信頼性の高いビーム制御が可能になる。
【0030】
具体的には、第1の多重極110は、第1のやり方で荷電粒子ビームに影響を及ぼすための第1の場分布を提供するように励起され得、第2の多重極120は、第2のやり方で荷電粒子ビームに影響を及ぼすための第2の場分布を提供するように励起され得る(必要に応じて、同時にまたは続いて)。
【0031】
本明細書に記載の多重極デバイス100は、以下のように、光軸Aに沿って伝搬する荷電粒子ビーム、特に電子ビームに影響を及ぼすために使用することができる。荷電粒子ビームは、多重極デバイス100の少なくとも1つの開口102を通して導くことができ、多重極デバイス100は、断面平面に配列された4つ以上の第1の電極111をもつ第1の多重極110および4つ以上の第2の電極121をもつ第2の多重極120を含み、4つ以上の第1の電極111および4つ以上の第2の電極121は、少なくとも1つの開口102の周りに交互に配列される。
【0032】
第1の多重極110は、第1のやり方で荷電粒子ビームに影響を及ぼすための第1の場分布を提供するように励起することができる。同時にまたは続いて、第2の多重極120は、第2のやり方で荷電粒子ビームに影響を及ぼすための第2の場分布を提供するように励起することができる。
【0033】
第1のやり方で荷電粒子ビームに影響を及ぼすことは、ビーム偏向、ビーム走査、収差補正、非点補正(stigmation)、コリメーション、集束、ビームアライメント、およびブランキングからなる群から選択することができる。第2のやり方で荷電粒子ビームに影響を及ぼすことは、ビーム偏向、ビーム走査、収差補正、非点補正、コリメーション、集束、ビームアライメント、およびブランキングからなる群から選択することができる。第2のやり方は、一般に、第1のやり方とは異なる。例えば、第1の場分布は、xy平面(試料の平面である)内の試料の特定の関心区域への荷電粒子ビームのシフトをもたらすことができ、第2の場分布は、前記関心区域において試料にわたるビームの速い走査をもたらすことができる。別の例では、第1の場分布は、荷電粒子ビームの収差補正、例えば非点収差補正をもたらすことができ、第2の場分布は、試料にわたる速いビーム走査、または所定のビーム経路に沿って伝搬させるための荷電粒子ビームのビームアライメントをもたらすことができる。2つの多重極によって2つの異なるやり方で荷電粒子ビームに影響を及ぼす他の例が可能である。
【0034】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態では、第1の場分布および/または第2の場分布は、選択可能な方位角を有する双極場、選択可能な方位角を有する四重極場、および八重極場からなる群から選択することができる。例えば、第1の場分布は、選択可能な方位角を有する双極場とすることができ、その結果、荷電粒子ビームは、選択可能な方位角によって規定された特定の方向に偏向される。例えば、第2の場分布は、試料にわたるビーム走査、例えば、試料によって画定されたxy平面内のラスタ走査を提供するための迅速に変化する双極場とすることができる。
【0035】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態では、第1の多重極110および第2の多重極120は、第2の場分布に重ね合わされた第1の場分布を提供するように同時に励起される。それゆえに、荷電粒子ビームは、第1および第2の多重極によって印加される2つの重ね合わされた場分布によって、2つの異なるやり方で同時に影響を受けることができる。例えば、第1の場分布は、非点収差補正を行う四重極場とすることができ、第2の場分布は、ビーム走査をさせる双極場とすることができ、その結果、荷電粒子ビームは、同時に、多重極デバイスによって修正および走査される。
【0036】
いくつかの実施形態では、第1の場分布および/または第2の場分布は、双極場である。言い換えれば、第1の多重極(少なくとも4つの電極を含む)は、第1の双極場を荷電粒子ビームに印加するように構成され、および/または第2の多重極(少なくとも4つの電極を含む)は、特に、同時に、第2の双極場を荷電粒子ビームに印加するように構成される。2つの双極場は、異なる強さ、方向を有することができ、および/または異なる速度で変化することができる。2つの双極場は、異なる目的のために、例えば、試料の所定の関心領域にビームを偏向させ導く(「ビームシフト」)ために、および試料にわたって荷電粒子ビームを迅速に走査するために印加することができる。それゆえに、2つの双極場は、以下でさらに詳細に説明するように、強さおよび変化速度が実質的に異なってもよい。
【0037】
特に、第1の場分布は、第1の双極場とすることができ、第2の場分布は、第2の双極場とすることができ、第1の双極場は、第2の双極場よりも強い。例えば、少なくとも一時的に、第1の双極場の最大場強度と第2の双極場の最大場強度との間の比は、5:1以上、特に10:1、またはさらに20:1以上である。双極場の最大場強度は、一般に、光軸Aの位置に、一般に少なくとも1つの開口102のほぼ中心に位置づけられる。
【0038】
いくつかの実施態様では、第1の電圧源115および第2の電圧源125は、異なるタイプの電圧源とすることができる。例えば、第1および第2の電圧源は、異なる最大出力電圧および/または異なる最大出力電圧変化速度を供給するように構成することができる。特に、第2の電圧源125は、第1の電圧源115よりも迅速な出力電圧の変化に適合させることができる。代替としてまたは追加として、第1の電圧源115は、第2の電圧源125よりも高い最大出力電圧に適合させることができる。例えば、第1の電圧源115は、100V以上の最大出力電圧および/または1GHz未満、例えばMHz範囲の最大電圧変化速度向けに構成することができる。代替としてまたは追加として、第2の電圧源125は、50V以下、特に20V以下、またはさらに10V以下の最大出力電圧、および/または1GHzを超える最大電圧変化速度向けに構成することができる。特に、第1の電圧源115は、低速高電圧電源とすることができ、および/または第2の電圧源125は、高速低電圧電源とすることができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、第1の電源配列部116は、第2の電源配列部126よりも高い電圧向けに構成される。特に、第1の電源配列部116は、第1の電極111の各々と第1の電圧源115との間の高電圧接続部を含むことができる。例えば、高電圧接続部は、100V以上の電圧に適合させることができる。第2の電源配列部126は、第2の電極121の各々と第2の電圧源125との間の低電圧接続部を含むことができる。例えば、低電圧接続部は、50V以下の電圧に適合させることができる。いくつかの実施態様では、高電圧接続部の断面積は、低電圧接続部の断面積よりも大きい。代替としてまたは追加として、第2の電源配列部126は、第2の電極121の各々と第2の電圧源125との間の高速接続部として構成することができる。例えば、第2の電源配列部126の高速接続部は、シールドされてもよく、および/またはインピーダンス整合を有してもよく、それにより、GHz範囲の電圧変化速度が、第2の多重極の第2の電極に確実に伝送されることが可能になる。
【0040】
図1は、1つの断面平面に交互に挟むやり方で配列された2つの独立した四重極を含む多重極デバイス100の一実施形態を示す。空間を節約することができ、荷電粒子ビームは、同じビーム相互作用空間内で、異なるやり方で、同期してまたは続いて、影響を受けることができる。
【0041】
図2は、本明細書に記載の実施形態による、荷電粒子ビーム、特に電子ビームに影響を及ぼすための多重極デバイス200の別の実施形態を示す。第1の多重極および第2の多重極の電極の数を除いては、多重極デバイス200は、図1の多重極デバイス100と同様であり、そのため、上述の説明を参照することができ、ここでは繰り返さない。
【0042】
多重極デバイス200は、光軸Aに沿って伝搬する荷電粒子ビームのための少なくとも1つの開口102をもつ基板103を含む。第1の多重極210の8つの第1の電極211が、基板103上に設けられ、第2の多重極220の8つの第2の電極221が、基板103上に、特に、基板の同じ主面上に少なくとも1つの開口102を等角度で囲むように設けられる。8つの第1の電極211および8つの第2の電極221は、少なくとも1つの開口102の周りに交互に配列される。
【0043】
したがって、図2の多重極デバイス200は、1つの断面平面に交互に挟むやり方で配列された2つの独立した八重極を含む。空間を節約することができ、荷電粒子ビームは、同じビーム相互作用空間内で、異なるやり方で、同期してまたは続いて、影響を受けることができる。
【0044】
本明細書に記載の実施形態によれば、第1の多重極210は、第1のやり方で荷電粒子ビームに影響を及ぼすための第1の場分布を提供するように励起することができ、第2の多重極220は、特に第1のやり方と異なる第2のやり方で荷電粒子ビームに影響を及ぼすための第2の場分布を提供するように励起することができる。例えば、第1の多重極210は、例えば検査されるべき試料の関心領域に荷電粒子ビームを偏向させるために第1の双極場を荷電粒子ビームに印加することができる。第2の多重極220は、試料にわたって、特に関心領域にわたって荷電粒子ビームを、例えばラスタ走査パターンで走査するために第2の双極場を荷電粒子に印加することができる。荷電粒子ビームは、図1を参照して上述で説明したように、他のやり方で影響を受けてもよい。第1および第2の多重極を同時に励起することによって、第1の場分布を第2の場分布に重ね合わせることができる。
【0045】
本明細書に記載のいくつかの実施形態によれば、第1の多重極210は、8つの第1の電極211をもつ第1の八重極であり、第2の多重極220は、8つの第2の電極221をもつ第2の八重極であり、第1の八重極および第2の八重極は、独立して制御可能および動作可能である独立した八重極である。それに応じて、多重極デバイス200は、少なくとも1つの開口102の周りに配列された合計で16個の極を含み、8つの第1の極は第1の八重極に属し、8つの第2の極は第2の八重極に属し、第1の八重極の8つの極および第2の八重極の8つの極は、少なくとも1つの開口102の周りに交互に配列される。
【0046】
いくつかの実施形態では、第1の多重極210および第2の多重極220は静電多重極であり、第1の電極211および第2の電極221は、それぞれ、導電性部分であり、導電性部分は、基板に設けられており、所定の電位に設定されるように構成される。「基板」は、第1および第2の多重極の電極を支持するための支持体、例えば、薄板として理解することができる。基板は必ずしも円形(図に示されるような)ではなくて、異なる形状を有することもできる。基板は、電極が配列される絶縁体表面を含むことができる。
【0047】
第1の多重極210は、荷電粒子ビームを偏向させるために、特に、所定の期間にわたって試料の所定の関心領域にビームを導く(「ビームシフト」)ために第1の双極場を提供するように構成することができ、第2の多重極220は、試料にわたって荷電粒子ビームを走査するために第1の双極場に重ね合わされる第2の双極場を提供するように構成することができる。
【0048】
本明細書に記載の多重極デバイス200は、第1の多重極による所定の選択可能な偏向方向への大きいビーム偏向と、所定の走査パターンでの荷電粒子ビームの速い走査とを重ね合わせることを可能にし、特に、荷電粒子ビームの遅い偏向と速い走査を同時に可能にする。一般に、偏向は比較的遅いが、試料の所定の関心領域に荷電粒子ビームを偏向させるために比較的高い偏向電圧を使用する。一般に、走査電圧は、比較的速く変化するが、比較的低い最大偏向電圧であり、例えば、ステップ状にまたは連続的に-10Vと+10Vとの間で迅速に変化する。その結果、2つの別々に制御可能な八重極を使用することは有利であり、各八重極は、それぞれの電源配列部およびそれぞれの電圧源によって電力供給され、その結果、各八重極は、実行されるべきタスクに合うようにされる。同じ断面平面に設けられた電極をもつ2つの独立して動作し制御可能な八重極が、本明細書に記載の実施形態によって提供される。
【0049】
第1の電源配列部116は、第1の電極211を第1の電圧源115に接続するために設けることができ、第2の電源配列部126は、第2の電極221を第2の電圧源125に接続するために設けることができる。それゆえに、2つの独立して制御可能な八重極は、1つの断面平面に交互に挟むやり方で設けられる。
【0050】
第1の多重極および第2の多重極は、第1および第2のやり方で同期して荷電粒子ビームに影響を及ぼすための第1の場分布および第2の場分布を提供するように同時に励起することができる。
【0051】
具体的には、第1の場分布および第2の場分布の少なくとも一方または両方は、双極場とすることができる。第1の場分布は、ゆっくり変化するかまたは周期的に一定の双極場とすることができ、第2の場分布は、走査のための迅速に変化する双極場とすることができる。
【0052】
いくつかの実施態様では、第1の場分布は、第1の双極場であり、第2の場分布は、第2の双極場であり、第1の双極場は、少なくとも一時的に、例えば、5倍以上または10倍以上、第2の双極場よりも強い。第1の場分布は、検査されるべき試料の所定の関心領域に荷電粒子ビームを偏向させる双極場とすることができ、第2の場分布は、試料にわたって、特に関心領域において、荷電粒子ビームを走査する双極場とすることができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、第1の場分布は、試料の所定の関心領域に荷電粒子ビームを偏向させるために所定の時間(例えば、1秒以上)維持され、一方、第2の場分布は、前記所定の関心領域にわたって荷電粒子ビームを走査するために変更される。
【0054】
関心領域が、第2の場分布を変化させることによって、例えばラスタ走査のやり方で走査された後、第1の場分布は、検査されるべき試料の所定の第2の関心領域に荷電粒子ビームを偏向させるために変えられ得る。変えられた第1の場分布は、所定の時間(例えば、1秒以上)維持され得、一方、第2の場分布は、前記所定の第2の関心領域にわたって荷電粒子ビームを走査するために変更される。
【0055】
したがって、試料検査プロセスは、第1の多重極によって提供される第1の場分布を変化させることによって異なる関心領域に荷電粒子ビームを引き続き導くことにより進むことができる。第1の場分布は、所定の時間各関心領域に維持することができ、その結果、それぞれの関心領域は、それぞれの関心領域内の試料にわたって荷電粒子ビームを走査するために第2の場分布を迅速に変化させることによって検査することができる。これにより、大きい試料表面を、それに応じて第1および第2の多重極によって提供される双極場を変化させることによって検査することが可能になる。
【0056】
迅速なビーム走査によって重ね合わされた信頼性が高いビーム偏向は、比較的遅いが大きいビーム偏向に適合された第1の電圧源に第1の多重極を接続することによって、および比較的低い最大電圧でビーム走査するための迅速な電圧変化に適合された第2の電圧源に第2の多重極を接続することによって提供され得る。
【0057】
図3a~図3cは、第1の動作モードにおける図2の多重極デバイス200を示し、第1の場分布、すなわち、第1の双極場は、第1の多重極210の第1の電極によって提供され、一方、小さいまたはゼロの電圧V2≒0が、第2の多重極220の第2の電極に印加される。双極場は、第1の多重極の第1の電極にV1*sin(θ1)の電圧を印加することによって提供することができ、θ1は、それぞれの第1の電極の角度位置を指し(θ1=0の位置は、選択可能な方向に双極場を印加するために任意に選ぶことができる)、V1は、特定の時間に第1の電圧源115によって供給される最大電圧である。図3aに概略的に示されるように、以下の電圧Vが、双極場を提供するために第1の多重極210の8つの第1の電極に印加される。
V1*sin0°=0
V1*sin45°=+0.707*V1
V1*sin90°=+V1
V1*sin135°=+0.707*V1
V1*sin180°=0
V1*sin225°=-0.707*V1
V1*sin270°=-V1
V1*sin315°=-0.707*V1。
同時に、電圧V1と比較して小さい電圧(例えば、図3aに示されるように、ゼロ電圧、V2=0)が、第2の多重極220の8つの第2の電極に印加され、結果として得られる場分布が、電場線を介して図3aに示される。図3aに示されるように、電気双極場が、多重極デバイス200の中央領域に作り出され、光軸Aは、多重極デバイスを通って延び、その結果、双極場は、光軸Aに沿って伝搬する荷電粒子ビームに加えられ、それにより、ビームシフトがxy平面で引き起こされる。図3aに示されるようなV2=0の代わりに、ビーム走査を引き起こすために特にV2<V1の小さい可変電圧V2*sin(θ2)を第2の電極に印加することが可能である。
【0058】
第1の電圧源によって供給される最大電圧V1を調節することによって、第1の多重極210によって引き起こされる偏向強度は、必要に応じて、設定することができる。さらに、偏向方向は、εを位相項として、θ2がθ2+εに置き換えられる場合、xy平面内で、必要に応じて、設定することができる。図3aに例示的に示された場分布は、x方向にビーム偏向を引き起こす。
【0059】
特に、多重極デバイス200の第1の多重極210によって作り出される双極場は、比較的小さいまたはゼロの電位(図3aではV2≒0V)で提供される第2の多重極220の第2の電極が第1の多重極210の2つの隣接する第1の電極の間にそれぞれ配列されるので、従来の八重極によって作り出される双極場(図3dに概略的に示される)とは異なる。それゆえに、光軸Aの周りに延びる半径r(r=電極半径)のリングライン上の電位は、図3bに実線で概略的に示されるように、第1および第2の電極の位置においてV=V1*sin(θ1)とゼロとの間で繰り返して変化する。特に、計算を簡単にするために、電極は、ここでは、無限に小さい(すなわち、点電極である)ようにモデル化され、直線的な電圧変化が、2つの隣接点電極間でそれぞれ仮定される。
【0060】
それとは対照的に、従来の八重極は、図3bに破線で概略的に示されるように、光軸Aの周りに半径rを有するリングライン上の角度θに依存して本質的に正弦形状の電位を作り出す。
【0061】
半径r(r=電極半径)のリングライン上の電圧が分かると、光軸Aの位置における結果として得られる全体的な場分布の多重極成分を、フーリエ解析を用いて計算することができる。図3cは、図3aの場分布の高調波の強度を示す。図3cで分かるように、基本双極子の係数は約0.5であり、次数7未満のすべての高調波はゼロであるが、約-0.3の係数をもつ明確に見える第7高調波および0.2よりも小さい係数をもつ明確に見える第9高調波が生成される。第7高調波の場は、R-6(Rは光軸Aからの電子の距離である)に比例するので、第7高調波の影響は極めて小さく、実質的に無視できる。同様に、第9高調波の影響は非常に小さい。したがって、比較的小さいまたはゼロの電圧が第2の多重極220の第2の電極に同時に印加される場合でさえ、概ね良好な双極場が、本明細書に記載の実施形態に従って多重極デバイス200の第1の多重極210を用いて作り出され得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、第2の双極場は第2の多重極220によって生成され、一方、第1の双極場は第1の多重極によって生成される。具体的には、V2*sin(θ2)の電圧が、第2の多重極の第2の電極に印加され、θ2は、それぞれの第2の電極の角度位置を指し(θ2=0の位置は、選択可能な方向に双極場を印加するために任意に選ぶか、または変更することができる)、V2は、特定の時間に第2の電圧源によって供給される最大電圧である。値V2は、試料にわたってラインに沿って荷電粒子ビームを走査するために迅速に変化することができる(例えば、-V2~+V2)。加えて、V2*sin(θ2)の値は、検査されるべき関心領域にわたってxy平面内で荷電粒子ビームをラスタ走査するために迅速に変化することができる。
【0063】
典型的な実施形態では、第1の電圧源によって供給される最大電圧V1(ゆっくり変化するかまたは周期的に一定のビームシフトを引き起こす)は、第2の電圧源によって供給される最大電圧V2(迅速なビーム走査を引き起こす)よりも例えば5倍以上または10倍以上実質的に大きい。例えば、第1の電圧源は、100V以上の最大電圧を供給し、それにより、大きい角度のビームシフトを可能にするように構成され、一方、第2の電圧源は、例えば、関心領域内の欠陥を見つけるために試料の関心領域を検査して、20V以下または10V以下の最大電圧V2を供給し、それにより、試料の所定の(小さい)関心領域にわたるビーム走査を可能にするように構成することができる。
【0064】
図4は、第2の動作モードにおける図2の多重極デバイス200を示し、第1の場分布、すなわち四重極場は、第1の多重極の第1の電極によって提供され、一方、小さいまたはゼロの電圧V2≒0が、第2の多重極の第2の電極に印加される。四重極場は、+V1、0、+V1、0、-V1、0、-V1、0の電圧を第1の電極にこの順序で円周方向に印加することによって提供され得る。四重極場は、例えば、非点収差補正のために使用することができる。
【0065】
シミュレーションは、小さい(V2<V1)電圧または本質的にゼロの電圧(V2≒0)が、例えば、荷電粒子ビームを走査するために、または高次補正を行うために、第2の多重極の第2の電極に同時に印加される場合でさえ、光軸Aの位置で第1の多重極によって作り出される四重極場がかなり良好であることを示した。
【0066】
したがって、今まで考慮または実証されていなかった交互に挟むやり方で1つの断面平面に設けられた2つの多重極(例えば、四重極または八重極)によって2つのやり方で荷電粒子ビームに同時に影響を及ぼすことが可能であることが示された。空間を節約することができ、小型で柔軟に使用可能な多重極デバイスが、本明細書に記載の実施形態によって提供される。
【0067】
本明細書に記載の多重極デバイスは、同じ基板に3つ以上の多重極、例えば、同じ断面平面に3つの独立して動作可能な四重極、6極、または八重極を含むことができることを理解されたい。本明細書で使用される第1および第2の電極の「交互の」配列は、光軸の周りで円周方向に第1の電極、第2の電極、および第3の(またはさらなる)電極の交互配列を包含することを意味する。さらに、多重極は、四重極または高次の多重極、特に八重極であってもよいが、さらに、12極または16極であってもよい。多重極デバイスがマルチビームレット装置向けに構成されることがさらに可能である。後者の場合、基板は、2つ以上の開口を含み、2つの独立して動作可能な多重極の第1および第2の電極は、2つ以上の開口の各々の周りに交互に配列される。
【0068】
本明細書に記載のさらなる態様によれば、試料10を検査および/またはイメージングするための荷電粒子ビーム装置500が提供される。図5は、例えば電子ビームを用いて試料10を検査するための荷電粒子ビーム装置500の概略図を示す。
【0069】
荷電粒子ビーム装置500は、試料ステージ560に配置された試料10を検査および/またはイメージングするように構成された電子検査装置、例えば、走査電子顕微鏡(SEM)とすることができる。
【0070】
荷電粒子ビーム装置500は、光軸Aに沿って伝搬する荷電粒子ビーム11を生成するための荷電粒子ビーム源505を含む。荷電粒子ビーム源505は、電子源、例えば、冷電界エミッタ(CFE)、熱電界エミッタ(TFE)、または別のタイプの電子源とすることができる。
【0071】
荷電粒子ビーム装置500は、荷電粒子ビーム11を試料10に集束するように構成された対物レンズ520を含む。対物レンズ520は、磁気対物レンズ、静電対物レンズ、または組み合わされた磁気-静電対物レンズとすることができる。
【0072】
試料10、例えば、ウェハ、電子回路、または検査されるべき別の基板は、試料ステージ560に配置することができる。試料ステージ560は、試料の平面内で、すなわち、xy平面内で、および/または光軸Aの方向zに移動可能とすることができる。
【0073】
荷電粒子ビーム装置500は、荷電粒子ビーム装置500のビーム光学構成要素が配列される真空ハウジング501を含むことができる。真空ハウジング501は、1mbar未満、例えば、10-5mbar以下の準大気圧に排気することができる。
【0074】
荷電粒子ビーム装置500は、さらなるビーム光学構成要素、例えば、荷電粒子ビーム11をコリメートするためのコンデンサレンズ510、ビーム収差を補正するための収差補正器、荷電粒子ビーム11を試料10に衝突させたときに生成される信号粒子(例えば、二次電子SEおよび/または後方散乱電子BSE)を荷電粒子ビーム11から分離するためのビーム分離器540、および/または信号粒子を検出するための検出器550などを含むことができる。
【0075】
荷電粒子ビーム装置500は、本明細書に記載の実施形態のいずれかによる多重極デバイス100(または200)をさらに含む。多重極デバイス100は、光軸Aが多重極デバイスの少なくとも1つの開口102を通って延びるように配列することができる。
【0076】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態では、多重極デバイス100は、対物レンズ520に隣接して、または対物レンズ520内に配列される。多重極デバイス100を対物レンズ520の近くにまたは対物レンズ520内に配列することは、多重極デバイス100が試料10の近くに配列される場合に、より大きい偏向角が可能であるので有利である。視野(FOV)の大きい荷電粒子ビーム装置を提供することができる。図5は、対物レンズの上流の位置で、対物レンズから2cm以下の距離にある多重極デバイス100を示している。さらに、対物レンズ520内の多重極デバイス100の代替位置が、図5において破線で示されている。一般に、多重極デバイス100と対物レンズ520の間の光軸Aに沿った距離は、5cm以下とすることができ、その結果、FOVの大きい電子ビーム検査装置を提供することができる。
【0077】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態では、多重極デバイス100は、第1の双極場を第1の多重極110の第1の電極に適用することによって、試料の関心領域に荷電粒子ビームを偏向させるように構成される。さらに、多重極デバイス100は、第1および第2の双極場が互いに重ね合わされるように第2の双極場を第2の多重極120の第2の電極に適用することによって、関心領域内の試料にわたって荷電粒子ビームを走査するように構成される。
【0078】
第1の双極場は、一般に、第2の双極場よりも大きく(例えば、5倍以上または10倍以上)、第2の双極場は、一般に、第1の双極場よりも迅速に変化し、試料にわたる荷電粒子ビーム11の速い走査移動(例えば、1GHz以上の変化速度をもつ)を提供する。
【0079】
第1の多重極110は、試料の異なる関心領域に荷電粒子ビームを偏向させ、検査されるべき各関心領域に対して所定の期間それぞれの第1の双極場を維持することができる。第2の多重極120は、各関心領域にわたって荷電粒子ビームを、例えば、ラスタ走査パターンで迅速に走査することができ、その結果、各関心領域を詳細に検査することができる。
【0080】
図6は、本明細書に記載の実施形態による荷電粒子ビームに影響を及ぼす方法を示す流れ図である。
【0081】
ボックス610において、荷電粒子ビームが、同じ断面平面に配列された4つ以上の第1の電極をもつ第1の多重極および4つ以上の第2の電極をもつ第2の多重極を含む多重極デバイスの少なくとも1つの開口を通して導かれ、4つ以上の第1の電極および4つ以上の第2の電極は、少なくとも1つの開口の周りに交互に配列される。
【0082】
ボックス620において、第1の多重極が、第1のやり方で荷電粒子ビームに影響を及ぼすための第1の場分布を提供するように励起される。例えば、第1の場分布は、第1の双極場とすることができ、第1のやり方は、試料の所定の関心領域への荷電粒子ビームのビーム偏向とすることができる。代替として、第1の場分布は、四重極場とすることができ、第1のやり方は、非点収差補正または別の収差補正とすることができる。
【0083】
ボックス630において、第2の多重極が、第2のやり方で荷電粒子ビームに影響を及ぼすための第2の場分布を提供するように励起される。例えば、第2の場分布は、関心領域内の試料にわたって荷電粒子ビームを走査するために迅速に変化することができる第2の双極場とすることができる。
【0084】
ボックス620および630における第1および第2の多重極の励起は、同時に生じることができ、その結果、荷電粒子ビームは、1つの多重極デバイスによって2つの異なるやり方で同時に影響を受ける。具体的には、「遅い」ビーム偏向は、同じ基板の同じ断面平面に配列された2つの独立して制御される多重極によって、「迅速な」ビーム走査に重ね合わされ得る。
【0085】
図7は、本明細書に記載の実施形態による荷電粒子ビームに影響を及ぼす方法を示す流れ図である。
【0086】
ボックス710において、荷電粒子ビームが、同じ断面平面に配列された4つ以上の第1の電極をもつ第1の多重極および4つ以上の第2の電極をもつ第2の多重極を含む多重極デバイスの少なくとも1つの開口を通して導かれ、4つ以上の第1の電極および4つ以上の第2の電極は、少なくとも1つの開口の周りに交互に配列される。
【0087】
ボックス720において、荷電粒子ビームは、第1の双極場を第1の多重極に適用することによって、試料の第1の関心領域(ROI)に偏向される。第1の双極場は、ボックス730の間、例えば、1秒以上の期間にわたって維持される。
【0088】
ボックス730において、荷電粒子ビームは、迅速に変化する走査場を第2の多重極に適用することによって、例えばラスタ走査パターンで第1の関心領域にわたって走査される。第1の関心領域が検査され、例えば、第1の関心領域内の試料の欠陥を見つけることができる。
【0089】
ボックス740において、荷電粒子ビームは、別の双極場を第1の多重極に適用することによって、試料の第2の関心領域(ROI)に偏向される。他の双極場は、ボックス750の間、例えば、1秒以上の期間にわたって維持される。
【0090】
ボックス750において、荷電粒子ビームは、迅速に変化する走査場を第2の多重極に適用することによって、例えばラスタ走査パターンで第2の関心領域にわたって走査される。第2の関心領域が検査され、例えば、第2の関心領域内の試料の欠陥を見つけることができる。
【0091】
したがって、この方法は、試料のさらなる関心領域を検査することによって続けることができる。
【0092】
具体的には、以下の実施形態が本明細書に記載される。
実施形態1
光軸に沿って伝搬する荷電粒子ビームに影響を及ぼす方法であって、同じ断面平面に配列された4つ以上の第1の電極をもつ第1の多重極および4つ以上の第2の電極をもつ第2の多重極を含む多重極デバイスの少なくとも1つの開口を通して荷電粒子を導くことであって、4つ以上の第1の電極および4つ以上の第2の電極が少なくとも1つの開口の周りに交互に配列される、導くことと、第1のやり方で荷電粒子ビームに影響を及ぼすための第1の場分布を提供するように第1の多重極を励起すること、および第2のやり方で荷電粒子ビームに影響を及ぼすための第2の場分布を提供するように第2の多重極を励起することの少なくとも一方または両方とを含む、方法。
実施形態2
第1の多重極が、8つの第1の電極を含む第1の八重極であり、および/または第2の多重極が、8つの第2の電極を含む第2の八重極である、実施形態1に記載の方法。特に、第1および第2の多重極は八重極である。代替として、第1および第2の多重極は四重極とすることができる。代替として、第1および第2の多重極は、16極とすることができる。
実施形態3
第1のやり方で荷電粒子ビームに影響を及ぼすことおよび第2のやり方で荷電粒子ビームに影響を及ぼすことが、ビーム偏向、ビーム走査、収差補正、非点補正、コリメーション、集束、ビームアライメント、およびブランキングからなる群から選択される、実施形態1または2に記載の方法。特に、第1のやり方で荷電粒子ビームに影響を及ぼすことは、ビーム偏向を含むことができ、第2のやり方で荷電粒子ビームに影響を及ぼすことは、ビーム走査を含むことができる。代替として、ビーム偏向は、収差補正、例えば非点補正と組み合わされてもよい。
実施形態4
第1の場分布および第2の場分布が、選択可能な方位角を有する双極場、選択可能な方位角を有する四重極場、および八重極場からなる群から選択される、実施形態1~3のいずれかに記載の方法。
実施形態5
第1の多重極および第2の多重極が、第2の場分布に重ね合わされた第1の場分布を提供するように同時に励起される、実施形態1~4のいずれかに記載の方法。
実施形態6
第1の場分布および第2の場分布の少なくとも一方または両方が、双極場である、実施形態1~5のいずれかに記載の方法。特に、第1の場分布および第2の場分布の両方は双極場とすることができる。
実施形態7
第1の場分布が第1の双極場であり、第2の場分布が第2の双極場であり、第1の双極場が第2の双極場よりも強い、実施形態1~6のいずれかに記載の方法。特に、第1の双極場の最大場強度と第2の双極場の最大場強度との間の比は、5:1以上、特に10:1である。
実施形態8
V1*sin(θ1)の電圧が、第1の多重極の第1の電極に印加され、θ1は、円周方向におけるそれぞれの第1の電極の角度位置を指し、V1は、調節可能な偏向電圧である、実施形態1~7のいずれかに記載の方法。代替としてまたは追加として、V2*sin(θ2)の電圧が、第2の多重極の第2の電極に印加され、θ2は、円周方向におけるそれぞれの第2の電極の角度位置を指し、V2は、20V以下の変化する走査電圧である。
実施形態9
第1の場分布が、荷電粒子ビームを偏向させる双極場であり、第2の場分布が、試料にわたって荷電粒子ビームを走査する双極場である、実施形態1~8のいずれかに記載の方法。ビーム偏向および走査は、第1および第2の多重極の両方を励起することによって同時に実施することができる。
実施形態10
第1の場分布が、試料の第1の関心領域に荷電粒子ビームを偏向させるために所定の時間維持され、一方、第2の場分布が、第1の関心領域にわたって荷電粒子ビームを走査するために変更される、実施形態9に記載の方法。
実施形態11
試料の第2の関心領域に荷電粒子ビームを偏向させるために第1の場分布を変え、続いて、第2の場分布が第2の関心領域にわたって荷電粒子ビームを走査するために変更させながら、第1の場分布を所定の時間維持することをさらに含む、実施形態10に記載の方法。
実施形態12
第1の多重極の第1の電極が、第1の電圧源、特に低速高電圧源に接続され、第2の多重極の第2の電極が、第2の電圧源、特に高速低電圧電源に接続される、実施形態1~11のいずれかに記載の方法。
上述の実施形態による方法は、本明細書に記載の多重極デバイスおよび/または荷電粒子ビーム装置のいずれかによって実施することができる。
実施形態13
光軸に沿って伝搬する荷電粒子ビームに影響を及ぼすための多重極デバイスであって、荷電粒子ビームのための少なくとも1つの開口をもつ基板であって、少なくとも1つの開口が光軸に沿って基板を通って延びる、基板と、基板上に設けられた4つ以上の第1の電極を含む第1の多重極と、基板上に設けられた4つ以上の第2の電極を含む第2の多重極であって、4つ以上の第1の電極および4つ以上の第2の電極が少なくとも1つの開口の周りに交互に配列される、第2の多重極と、第1の電極を第1の電圧源に接続するための第1の電源配列部と、第2の電極を第2の電圧源に接続するための第2の電源配列部とを含む、多重極デバイス。
多重極デバイスは、本明細書に記載の方法のいずれかに従って動作するように構成することができる。
実施形態14
第1の多重極が、8つの第1の電極を含む第1の八重極であり、および/または第2の多重極が、8つの第2の電極を含む第2の八重極である、実施形態13に記載の多重極デバイス。
実施形態15
第1の多重極および第2の多重極が、静電多重極であり、第1の電極および第2の電極が、基板に設けられ所定の電位に設定されるように構成された導電性部分である、実施形態13または14に記載の多重極デバイス。
実施形態16
第1の電圧源が、100V以上の最大電圧および1GHz未満の変化速度向けに特に構成された低速高電圧源であり、第2の電圧源が、50V以下の最大電圧および1GHzを超える変化速度向けに特に構成された高速低電圧電源である、実施形態13~15のいずれかに記載の多重極デバイス。
実施形態17
第1の電源配列部が、第1の電極の各々と第1の電圧源との間の高電圧接続部を含み、第2の電源配列部が、第2の電極の各々と第2の電圧源との間の高速接続部を含む、実施形態13~16のいずれかに記載の多重極デバイス。
実施形態18
第1の多重極が、ビーム偏向のための第1の双極場を提供するように構成され、第2の多重極が、第1の双極場に重ね合わされる、試料にわたって荷電粒子ビームを走査するための第2の双極場を提供するように構成される、実施形態13~16のいずれかに記載の多重極デバイス。
実施形態19
第1の多重極および第2の多重極が、独立して制御可能な多重極である、実施形態13~18のいずれかに記載の多重極デバイス。
実施形態20
荷電粒子ビームを用いて試料を検査またはイメージングするための荷電粒子ビーム装置であって、荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子ビーム源と、荷電粒子ビームを試料に集束させるための対物レンズと、本明細書に記載の実施形態のいずれかに従って荷電粒子ビームに影響を及ぼすための多重極デバイスとを含む、荷電粒子ビーム装置。
実施形態21
多重極デバイスが、対物レンズに隣接する、または対物レンズ内に配列される、実施形態20に記載の荷電粒子ビーム装置。
実施形態22
多重極デバイスが、試料の関心領域に荷電粒子ビームを偏向させるとともに、関心領域にわたって荷電粒子ビームを走査するように構成される、実施形態20または21に記載の荷電粒子ビーム装置。
【0093】
前述は実施形態に関するが、その基本範囲から逸脱することなく、他のおよびさらなる実施形態を考案することができ、その範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-08-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸に沿って伝搬する荷電粒子ビームに影響を及ぼす方法であって、
同じ断面平面に配列された4つ以上の第1の電極をもつ第1の多重極および4つ以上の第2の電極をもつ第2の多重極を含む多重極デバイスの少なくとも1つの開口を通して前記荷電粒子ビームを導くことであって、前記4つ以上の第1の電極および前記4つ以上の第2の電極が前記少なくとも1つの開口の周りに交互に配列される、導くことと、
第1のやり方で前記荷電粒子ビームに影響を及ぼすための第1の場分布を提供するように前記第1の多重極を励起すること、および
第2のやり方で前記荷電粒子ビームに影響を及ぼすための第2の場分布を提供するように前記第2の多重極を励起すること
の少なくとも一方と
を含み、
前記第1の多重極の前記第1の電極が、第1の電圧源に接続され、前記第2の多重極の前記第2の電極が、第2の電圧源に接続され、前記第1の電圧源および前記第2の電圧源が、異なる最大出力電圧および異なる最大電圧変化速度の少なくとも一方を供給するように構成される、方法。
【請求項2】
前記第1の多重極が、8つの第1の電極を含む第1の八重極であり、前記第2の多重極が、8つの第2の電極を含む第2の八重極である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のやり方で前記荷電粒子ビームに前記影響を及ぼすことおよび前記第2のやり方で前記荷電粒子ビームに前記影響を及ぼすことが、ビーム偏向、ビーム走査、収差補正、非点補正、コリメーション、集束、ビームアライメント、およびブランキングからなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の場分布および前記第2の場分布が、選択可能な方位角を有する双極場、選択可能な方位角を有する四重極場、および八重極場からなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の多重極および前記第2の多重極が、前記第1および第2のやり方で前記荷電粒子ビームに、同期して影響を及ぼすために、前記第2の場分布に重ね合わされた前記第1の場分布を提供するように同時に励起される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の場分布および前記第2の場分布の少なくとも一方または両方が、双極場である、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の場分布が第1の双極場であり、前記第2の場分布が第2の双極場であり、前記第1の双極場が前記第2の双極場よりも強く、特に、前記第1の双極場の最大場強度と前記第2の双極場の最大場強度との間の比が、少なくとも一時的に、5:1以上である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
V1*sin(θ1)の電圧が、前記第1の多重極の前記第1の電極に印加され、θ1は、円周方向における前記それぞれの第1の電極の角度位置であり、V1は、調節可能な偏向電圧であり、
V2*sin(θ2)の電圧が、前記第2の多重極の前記第2の電極に印加され、θ2は、前記円周方向における前記それぞれの第2の電極の角度位置であり、V2は、20V以下の変化する走査電圧である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の場分布が、前記荷電粒子ビームを偏向させる双極場であり、前記第2の場分布が、試料にわたって前記荷電粒子ビームを走査する双極場である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の場分布が、前記試料の所定の第1の関心領域に前記荷電粒子ビームを偏向させるために所定の時間維持され、一方、前記第2の場分布が前記所定の第1の関心領域にわたって前記荷電粒子ビームを走査するために変更される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記試料の第2の関心領域に前記荷電粒子ビームを偏向させるために前記第1の場分布を変え、続いて、前記第2の場分布が前記第2の関心領域にわたって前記荷電粒子ビームを走査するために変更させながら、前記第1の場分布を所定の時間維持することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
記第1の電圧源が、少なくとも、0Vと100V以上との間の電圧向けに構成された高電圧電源であり、前記第2の電圧源が、1GHzを超える変化速度向けに構成された高速電源である、請求項に記載の方法。
【請求項13】
光軸に沿って伝搬する荷電粒子ビームに影響を及ぼすための多重極デバイスであって、
前記荷電粒子ビームのための少なくとも1つの開口をもつ基板であって、前記少なくとも1つの開口が前記光軸に沿って前記基板を通って延びる、基板と、
前記基板上に設けられた4つ以上の第1の電極を含む第1の多重極と、
前記基板上に設けられた4つ以上の第2の電極を含む第2の多重極であって、前記4つ以上の第1の電極および前記4つ以上の第2の電極が前記少なくとも1つの開口の周りに交互に配列される、第2の多重極と、
前記第1の電極を第1の電圧源に接続するための第1の電源配列部と、
前記第2の電極を第2の電圧源に接続するための第2の電源配列部と
を含み、
前記第1の電圧源および前記第2の電圧源が、異なる最大出力電圧および異なる最大電圧変化速度の少なくとも一方を供給するように構成される、多重極デバイス。
【請求項14】
前記第1の多重極が、8つの第1の電極を含む第1の八重極であり、前記第2の多重極が、8つの第2の電極を含む第2の八重極である、請求項13に記載の多重極デバイス。
【請求項15】
前記第1の多重極および前記第2の多重極が、静電多重極であり、前記第1の電極および前記第2の電極が、前記基板に設けられ所定の電位に設定されるように構成された導電性部分である、請求項13に記載の多重極デバイス。
【請求項16】
前記第1の電圧源が、100V以上の最大電圧および1GHz未満の変化速度向けに特に構成された低速高電圧電源であり、前記第2の電圧源が、50V以下の最大電圧および1GHzを超える変化速度向けに特に構成された高速低電圧電源である、請求項13に記載の多重極デバイス。
【請求項17】
前記第1の多重極が、ビーム偏向のための第1の双極場を提供するように構成され、前記第2の多重極が、前記第1の双極場に重ね合わされる、試料にわたって前記荷電粒子ビームを走査するための第2の双極場を提供するように構成される、請求項13に記載の多重極デバイス。
【請求項18】
前記第1の多重極および前記第2の多重極が、独立して制御可能な多重極である、請求項13に記載の多重極デバイス。
【請求項19】
荷電粒子ビームを用いて試料を検査またはイメージングするための荷電粒子ビーム装置であって、
前記荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子ビーム源と、
前記荷電粒子ビームを前記試料に集束させるための対物レンズと、
請求項13に記載の前記荷電粒子ビームに影響を及ぼすための前記多重極デバイスと
を含む、荷電粒子ビーム装置。
【請求項20】
前記多重極デバイスが、前記対物レンズに隣接する、または前記対物レンズ内に配列される、請求項19に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項21】
前記多重極デバイスが、前記試料の関心領域に前記荷電粒子ビームを偏向させるとともに、前記関心領域にわたって前記荷電粒子ビームを走査するように構成される、請求項19に記載の荷電粒子ビーム装置。
【国際調査報告】