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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-09
(54)【発明の名称】空気形成建築システム
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/35 20060101AFI20240202BHJP
   E04B 1/32 20060101ALI20240202BHJP
   E04C 1/00 20060101ALI20240202BHJP
   F16S 1/12 20060101ALI20240202BHJP
   F16S 1/10 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
E04B1/35 K
E04B1/32 102H
E04C1/00 Z
F16S1/12
F16S1/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573017
(86)(22)【出願日】2022-02-09
(85)【翻訳文提出日】2023-09-25
(86)【国際出願番号】 US2022015878
(87)【国際公開番号】W WO2022173873
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】17/173,206
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523303840
【氏名又は名称】マルティーレ,ジャンニ
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】マルティーレ,ジャンニ
(57)【要約】
複合材料構造物は、膨張させた支持型を流体構造材料で充填するステップと流体構造材料を支持型内部で硬化させるステップとを含む空気形成プロセスを用いて建築することができる。追加的なステップは、第1の流体で支持型を膨張させるステップ、流体排出口を支持型内に形成するステップ、及び流体構造材料を硬化させた後に支持型を取り除くステップを含むことができる。第1の流体は空気であってよく、支持型はファイバグラス樹脂であってよく、さらに/あるいは流体構造材料はコンクリート複合材料であってよい。流体は充填ステップ中に流体排出口を通って出ていくことができる。完成した構造物は、均質なコンクリート複合材料から形成され、湾曲非平面形状を有する複数の構造物のコンポーネントを含むことができる。コンクリート複合材料はアルミニウム合金繊維を含むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造形成システムであって、
第1の厚みを有し、且つ第1のインジェクタを備えた内側支持型であって、前記第1のインジェクタを介して、流体の支持材料又は構造材料で充填されるように構成された内側支持型と、
前記内側支持型の周囲に配置されて、第2の厚みを有し、且つ第2のインジェクタを備えた外側支持型であって、前記第2のインジェクタを介して流体構造材料が前記外側支持型と前記内側支持型との間の体積を充填するように前記流体構造材料で充填されるように構成された外側支持型と、
前記内側支持型と前記外側支持型とに沿った1以上の箇所において、前記内側支持型を前記外側支持型から設定距離を保って離隔している、前記内側支持型及び前記外側支持型と接続された1以上のセパレータシステムコンポーネントと、
を備え、
当該構造形成システムは、前記流体構造材料が当該構造形成システム内部で硬化する際に、前記流体構造材料から中空構造物が形成されるように構成されている、構造形成システム。
【請求項2】
前記流体構造材料は、コンクリートを含む、請求項1に記載の構造物の形成システム。
【請求項3】
前記1以上のセパレータシステムコンポーネントの各々は、前記内側支持型及び前記外側支持型の表面において、硬いセパレータパイプと接触板とを含む、請求項1に記載の構造物の形成システム。
【請求項4】
前記中空構造物は、部屋であり、硬化した前記流体構造材料は、前記部屋の1以上の壁を形成する、請求項1に記載の構造物の形成システム。
【請求項5】
前記外側支持型は、前記外側支持型が前記流体構造材料で充填される際に圧力を解放するように構成された1以上の圧力弁を含む、請求項1に記載の構造物の形成システム。
【請求項6】
コンクリート構造物であって、
第1の湾曲非平面形状を有する少なくとも第1の部分を有し、コンクリートと約2mm未満の厚みと約30mm未満の長さを有する埋め込まれた繊維とを含んだ均質な材料から形成された第1の構造物のコンポーネントと、
前記第1の湾曲非平面形状とは実質的に異なる第2の湾曲非平面形状を有する少なくとも第2の部分を有し、前記均質な材料から形成された第2の構造物のコンポーネントと、
を備え、
前記第1の構造物のコンポーネントと前記第2の構造物のコンポーネントとは一体的に形成されている、コンクリート構造物。
【請求項7】
前記埋め込まれた繊維は、アルミニウム合金成分を有する繊維を含む、請求項6に記載のコンクリート構造物。
【請求項8】
前記コンクリート構造物は、1以上の膨張可能な支持型を用いて形成される、請求項6に記載のコンクリート構造物。
【請求項9】
構造物を形成する方法であって、
1以上の流体排出口を第1の支持型内に形成するステップと、
前記第1の支持型を流体構造材料で充填するステップであって、流体は、前記充填するステップ中に前記1以上の流体排出口を通って出ていく、ステップと、
前記流体構造材料を前記充填された第1の支持型内で硬化させるステップであって、前記硬化させた構造材料は、前記構造物の少なくとも一部分を形成している、ステップと、
を含む、方法。
【請求項10】
前記第1の支持型を、充填ステップの前に湿らせるステップと、
膨張させた前記第1の支持型を、前記流体構造材料を硬化させるステップの後に取り除くステップとをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の支持型を、充填するステップの前に第1の流体で膨張させるステップであって、前記第1の流体は、前記充填するステップ中に前記1以上の流体排出口から出ていく、ステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の流体は、空気を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の支持型は、ファイバグラス樹脂バルーンを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記流体構造材料は、流体コンクリート複合材料を含み、前記硬化した構造材料は、硬化したコンクリート複合材料を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記流体コンクリート複合材料は、内部に混合された繊維を含み、前記繊維は、アルミニウム合金成分を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アルミニウム合金繊維は、約2mm未満の厚みと約30mm未満の長さとを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
第2の支持型を前記第1の流体で膨張させるステップと、
前記第2の支持型内に1以上の流体排出口を形成するステップと、
前記膨張させた第2の支持型を前記流体構造材料で充填するステップであって、前記第1の流体は、前記充填するステップ中に1以上の流体排出口を通って出ていく、ステップと、
前記流体構造材料を前記膨張させた第2の支持型内部で硬化させるステップであって、前記硬化させた構造材料は、前記構造物の少なくとも一部分を形成している、ステップと、
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の支持型を設計するステップと、
前記第1の支持型を作製するステップとをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
前記構造物は、第1の湾曲非平面形状を有する第1の構造物のコンポーネントと、前記第1の湾曲非平面形状とは実質的に異なる第2の湾曲非平面形状を有する第2の構造物のコンポーネントとを少なくとも含む、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の支持型を既存の建築物の基礎に連結させるステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年2月10日に提出された米国特許出願第17/173,206号の利益を主張し、その内容は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示は、概して構造物の形成に関し、特に建築物、像、及びコンクリートのような硬化した流体構造材料で作られたその他の構造物の形成に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
コンクリートは、長きにわたって構造物、建築物、橋、高速道路及びこれに類するものなどの形成において、一般的な成分であり続けている。というのも、コンクリートは、とりわけ圧縮力と構造物にもたらす支持力の点において強靭な材料だからである。コンクリート構造要素の一般的な利用法は、柱、梁、ジョイスト、パネル、及びスラブ、その他の平坦で、真っ直ぐで、さらに/あるいは直線型の構造物を含んでいる。コンクリートは、マンホール、排水溝、パイプ、その他の湾曲したセグメントなどの、湾曲したより複雑な構造物を形成するためにも用いられうる。
【0004】
しかし残念ながら、従来のコンクリートの型枠技術を用いて風変わりな形状をした構造物を作るのは、通常は困難であり、さらに/あるいは高額な費用を要する。複雑であるか又は湾曲した表面を持つコンクリート構造物の形成には、さらなる材料、労力、又は時間を要する可能性がある。そのような構造物は、通常、より堅固な建築材料に用いられる鉄筋やその他の内部補強材を使用することを含んでおり、上述したような数多くの構造要素を要して段階的に成形され、又は組み立てられ、そして種々異なった手段と技術とによってつなぎ合わされる。
【0005】
過去においては、構造物の従来の形成方法は首尾よく機能したが、進歩はいつも役立つものである。特に、求められているのは、多大な労力と時間とを要する構造物形成、とりわけコンクリート構造物について、従来の限界を打破する複雑な構造物と複雑な構造物の形成方法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
概要
本開示の利点は、構造物形成についての従来の限界を打破する、改良された構造物と構造物の形成方法を提供することにある。開示された特徴、装置、システム、及び方法は、改良された複合材料の使用、及びとりわけコンクリートに関する改良された構造物形成方法を含んだ、改良された構造物形成ソリューションを提供する。これらの利点は、少なくとも部分的には、アルミニウム合金繊維強化コンクリートの使用及び/又は例えばコンクリート複合材料構造物などの構造物の形成中における膨張可能な支持型の使用によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の種々の実施形態において、構造形成システムは、内側支持型、外側支持型、及び1以上のセパレータシステムコンポーネントを含むことができる。内側支持型は、第1の厚みと第1のインジェクタを備えることができ、内側支持型は、第1のインジェクタを介して流体の支持材料又は構造材料で充填されるように構成されていてよい。外側支持型は内側支持型の周囲に配置することができ、第2の厚みと第2のインジェクタを備えることができる。外側支持型は、第2のインジェクタを介して、流体構造材料が外側支持型と内側支持型との間の体積を充填するように、流体構造材料によって充填されるように構成されていてよい。セパレータシステムコンポーネントは、内側支持型と外側支持型とに沿った1以上の箇所において、内側支持型を外側支持型から設定距離を保って離隔するように、内側支持型及び外側支持型と接続されうる。構造形成システムは、流体構造材料が構造形成システム内部で硬化したときに、流体構造材料から中空構造物を形成するように構成することができる。
【0008】
種々の詳細な実施形態においては、構造形成システムはコンクリートを含んでいてよい。各セパレータシステムコンポーネントは、内側支持型及び外側支持型のそれぞれの表面において、硬いセパレータパイプと接触板とを含んでいてよい。ある構成においては、中空構造物は部屋であってよく、硬化した流体構造材料は、その部屋の1以上の壁を形成することができる。また、外側支持型は、外側支持型が流体構造材料で充填されると圧力を解放するように構成された1以上の圧力弁を含んでいてよい。
【0009】
本開示における種々のさらなる実施形態においては、コンクリート構造物は、均質な材料から形成される第1の構造物コンポーネントと、均質な材料から形成される第2の構造物コンポーネントとを含んでいてよい。この均質な材料は、コンクリートと、約2mm未満の厚み及び約30mm未満の長さを有する埋め込まれた繊維とを含んでいてよい。第1の構造物コンポーネントは、第1の湾曲非平面形状を有する少なくとも第1の部分を備えていてよく、第2の構造物コンポーネントは、第1の湾曲非平面形状とは実質的に異なった第2の湾曲非平面形状を有する少なくとも第2の部分を備えていてよい。ある構成においては、第1の構造物コンポーネントと第2の構造物コンポーネントとは一体的に形成されていてよい。種々の詳細な実施形態においては、埋め込まれた繊維はアルミニウム合金成分を有する繊維を含んでいてよい。また、コンクリート構造物は、1以上の膨張可能な支持型を用いて形成することができる。
【0010】
本開示のさらなる実施形態においては、構造物の種々の形成方法が提供される。関連する加工ステップは、第1の支持型内に1以上の流体排出口を形成するステップと、第1の支持型に流体構造材料を充填するステップであって、流体は充填中に1以上の流体排出口を通って出ていくことができるステップと、及び充填された第1の支持型内において流体構造材料を硬化させるステップであって、硬化した構造材料は構造物の少なくとも一部分を形成するステップを含んでいてよい。
【0011】
種々の詳細な実施形態においては、さらなる加工ステップは、第1の支持型を充填する前に湿らせるステップと、流体構造材料を硬化させた後に膨張させた第1の支持型を取り除くステップとを含みうる。膨張させたある構成においては、第1の支持型は、充填の前に第1の流体を用いて膨張させることができ、この場合、第1の流体は、充填中に1以上の流体排出口から出ていく。第1の流体は空気を含んでいてよく、さらに/あるいは第1の支持型はファイバグラス樹脂バルーンを含んでいてよい。流体構造材料は、流体コンクリート複合材料を含んでいてよく、硬化した構造材料は、硬化したコンクリート複合材料を含んでいてよい。コンクリート複合材料は、内部に繊維を混合させて含んでいてよく、繊維はアルミニウム合金成分を有していてよい。アルミニウム合金繊維は、約2mm未満の厚みと約30mm未満の長さとを有していてよいが、他のサイズであってもよい。
【0012】
種々の詳細な実施形態において、さらなる加工ステップは、第1の流体で第2の支持型を膨張させるステップと、1以上の流体排出口を第2の支持型内に形成するステップと、流体構造材料で膨張させた第2の支持型を充填するステップであって、第1の流体は、充填中に1以上の流体排出口を通って出ていくステップと、及び膨張させた第2の支持型内部で流体構造材料を硬化させるステップであって、硬化した構造材料が構造物の少なくとも一部分を形成するステップを含んでよい。ある構成においては、いくつかの支持型は、空気又は別の第1の流体のみで充填され、流体構造材料によっては充填されない。加工ステップは、第1の支持型を設計するステップと第1の支持型を作製するステップとをさらに含んでいてよい。いくつかの実施形態においては、形成された構造物は、少なくとも、第1の湾曲非平面形状を有する第1の構造物のコンポーネントと、第1の湾曲非平面形状とは実質的に異なる第2の湾曲非平面形状を有する第2の構造物のコンポーネントとを含んでいてよい。追加的な加工ステップは、第1の支持型を既存の建築物の基礎に連結させるステップを含むことができる。完成した構造物は、建築物、像、又はその他の構造物のコンポーネントを含んでいてよい。
【0013】
本開示のその他の装置、方法、特長、及び利点は、この後に続く図面及び詳細な説明を精査すれば当業者にとって明らかであるか、明らかになるであろう。そのような追加的な装置、方法、特長、及び利点は、本明細書に含まれること、開示の範囲内であること、及び添付の請求の範囲によって保護されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図面の簡単な説明
含まれている図面は説明用であり、これらの図面は、空気形成構造物用の開示された装置、システム、及び方法の考えられる構造物と構成の例を提供することのみを目的としている。これらの図面は、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者によって本開示に対してなされうる形態及び詳細の変更を決して制限するものではない。
【0015】
図1は、本開示の一実施形態による空気形成プロセスによって作られた土台と支持アーム構造物の一例を側面斜視図で示したものである。
【0016】
図2は、本開示の一実施形態による空気形成プロセスによる構造物の作製方法の一例のフローチャートを示したものである。
【0017】
図3は、本開示の一実施形態による空気形成プロセスによる構造物の作製中に膨張させた型の一例を側面断面図で示したものである。
【0018】
図4は、本開示の一実施形態による空気形成プロセスによって作られたアーチ連続ドーム構造物の一例を側面斜視図で示したものである。
【0019】
図5は、本開示の一実施形態による空気形成プロセスによって作られた亀の甲羅構造物の一例を側面斜視図で示したものである。
【0020】
図6は、本開示の一実施形態による空気形成プロセスによって作られた柱とリンテル(lintel)の構造物の一例を側面斜視図で示したものである。
【0021】
図7は、本開示の一実施形態による空気形成プロセスによって作られた外側及び内側のミツバチの巣の構造物の一例を側面斜視図で示したものである。
【0022】
図8は、本開示の一実施形態による空気形成プロセスによって作られた中空構造物の一例を側面斜視図で示したものである。
【0023】
図9Aは、本開示の一実施形態による、図8の中空の部屋構造物の一例の作製中に膨張させた二重の支持型の一例を側面断面図で示したものである。
【0024】
図9Bは、本開示の一実施形態による、図9Aの膨張させた二重の支持型と共に使用するためのセパレータシステムコンポーネントの一例を側面断面図で示したものである。
【0025】
図10Aは、本開示の一実施形態による空気形成プロセスによって作られた像構造の一例を側面斜視図で示したものである。
【0026】
図10Bは、本開示の一実施形態による、図10Aの像の一例を側面断面図で示したものである。
【0027】
図11Aは、本開示の一実施形態による、補強用棒鋼を用いた支持型の基礎との連結の一例を側面断面図で示したものである。
【0028】
図11Bは、本開示の一実施形態による、支持型の基礎ソケットとの連結の一例を正面断面図で示したものである。
【0029】
図12は、本開示の一実施形態による、別の形成プロセスを用いて構造物を形成する別の方法の一例のフローチャートを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明
本開示による装置、システム、及び方法の例示的な使用方法がこのセクションで説明される。これらの例は、背景情報を付け加えたり本開示の理解を助けたりするためだけに提供されている。したがって、本開示がここに記されたそれらの具体的詳細のいくつか又はすべてがなくとも実行しうるものであることは、当業者には明白であろう。いくつかの例においては、本開示を不必要に曖昧なものとするのを避けるため、よく知られた加工ステップは詳細には説明していない。以下で述べる例示は限定されたものとして捉えられるべきではなく、他の応用例も実現可能である。以下の詳細な説明においては、明細書の一部をなし、明細書中で本開示の具体的な実施形態の例として示されている添付の図面に言及される。これらの実施形態は、当業者が本開示を実施することができるように十分詳細に説明されているが、これらの例示は限定されたものでなく、他の実施形態が用いられてもよいし、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく変更が加えられうることが理解される。
【0031】
本開示は、種々の実施形態において、建築物、像、及びその他の構造物の物を含むことのできる空気形成構造物に用いられる特長、装置、システム、及び方法に関する。開示された実施形態は、「空気形成プロセス」を用いた3次元構造要素の形成のための種々の方法や技法、及び3次元構造要素そのものを含むことができる。特に開示された実施形態は、構造材料によって充填される型枠としての役割を果たすあらゆるサイズや形状の膨張させたバルーン又は支持型を利用して、構造要素に最終的な形状を与えるための人の介在や労働力を最小限にすることができる。空気形成構造物支持装置又は型枠は、バルーン、型、又は他の類似の装置であってよいが、そのようなすべての型枠は、本開示の目的のために「支持型」と総称される。
【0032】
開示された実施形態は、労働コストの一部を型の製造に転換することによって、とりわけコンクリートやその他の類似の材料を含んだ複雑かつ単一の構造物及び構造要素の建築について、より経済的な選択肢を提供する。全くの現場での構造物の形成加工にはおよそ72時間又はそれ未満しか要しないので、時間の節約は、コストと負荷とを低減することのできる、開示された建築プロセスのもう一つの魅力的な特長である。
【0033】
種々の実施形態において、支持型は、最初は空気が充填されてよいが、その他の適切な流体が用いられてもよい。したがって、「空気形成」の語とその種々の派生語が本開示を通じて使用されているが、空気とは別のあらゆる適切な流体が支持型の充填プロセスと形成プロセスとに用いられてよいことが結果として理解されるであろう。そして、種々の実施形態において、膨張させたバルーン又は支持型は構造材料流体で充填されてよく、その間に空気やその他の膨張させる流体も排出される。そのような構造材料は、例えばアルミニウム合金繊維強化ハイブリッド材料のような、本明細書に開示されたコンクリート様ハイブリッド材料であってよいが、種々の他の構造材料、例えば他の利用可能な材料のうち、プラスチック材料、その他の溶融材料、又はその他の材料であって凝固するもの、例えば氷へと凝固する水のような材料が代替的に使用されてよいことは理解されるであろう。したがって、型に充填される構造材料流体は硬化してもよく、その後、最終的に形成された構造物又は構造物の要素を提供するために、型は除去されてよい。
【0034】
単に理解を助けるものであってまったく限定するものでない種々の代替的な実施形態において、構造材料そのもので支持型を直接充填するステップを選ぶ際には、空気又は最初の流体で支持型を充填するステップは省略することができる。追加的なステップは、支持型を設計するステップと支持型を作製するステップとを含んでよい。複数の支持型も、異なる支持型ごとに適切なステップが繰り返されることにより使用することができる。そして、各支持型から形成された構造要素は、他の考えられる構造物のうち、建築物、像、又は自立式のデザインなどの全体の構造物を形成するように結合することができる。
【0035】
まず図1は、空気形成プロセスによって作られた土台と支持アーム構造物の一例を側面斜視図で示したものである。土台と支持アーム構造物100は、1つのバルーン又は1つの支持型を用いた空気形成プロセスによって作られた単一の構造物であってよい。構造物100は、例えば、別の構造物のコンポーネントをその場所又はその上に形成するために用いることのできる、基礎をなす支持構造物であってよい。それゆえ、構造物100は、土台110と、そこから延びる複数の支持アーム120とを含むことができる。土台110は、地面の上か、又は離れた基礎の上に形成されてよく、1以上の支持アーム120は、1以上の他のコンポーネントを支持するために用いることができ、それらのいくつか又はすべてもまた空気形成プロセスによって形成することができる。
【0036】
構造物100を形成するために種々の材料を用いることができ、そして特に、流体の(例えば、水分を含んだ)建築材料は、完成した構造物を形成するためにキュア又は硬化できる建築材料のようなものと共に使用することができると考えられる。とりわけ、コンクリートやコンクリート複合材料は、開示された空気形成プロセス用として考えられる。従来の建築方法やコンクリートを使用する技術は限定的であるといえるが、開示された空気形成プロセスは、コンクリートやコンクリート複合材料を用いて形成することのできる複雑な形状の種類を大いに広げるために用いることができる。構造物100は、従来の方法によっては形成することができないが本明細書に開示されるような空気形成プロセスによっては形成することのできる、単一のコンクリート又はコンクリート複合構造物の一例である。
【0037】
続く図2は、空気形成プロセスを用いて構造物を作製する方法200の例のフローチャートを示したものである。方法200は大まかに概観を示しており、種々のステップと詳細については、この時点では簡略化の目的で示されていないということは容易に理解できるであろう。構造物は、建築物であるか又は建築物の一部であることができ、像、自立する巨大建築、又は他の種類の様々な構造物であってよい。開始ステップ202の後、第1の加工ステップ204は、支持型を膨張させるステップを含んでよい。支持型は、例えばカスタマイズした形状へとアレンジされたファイバグラス樹脂材料であってよく、支持型を膨らませるために空気が用いられてもよいが、他の支持型材料や流体の膨張媒体が使用されてもよい。
【0038】
続く加工ステップ206においては、膨張させた支持型を流体構造材料で充填することができる。そのような流体構造材料は、例えば流体コンクリート複合材料であってよい。特に、アルミニウム合金繊維が内部に埋め込まれたコンクリート複合材料を使用することができる。ある構成においては、支持型を膨張させるために使用された空気や他の流体は、支持型が流体構造材料によって充填されている間に、1以上の流体排出口を通じて出ていくことができる。適切なアルミニウム合金繊維は、例えば以下に記したように、アルミニウム飲料缶の一部を細いひも形状へと切断することによって作り出すことができる。
【0039】
次の加工ステップ208において、流体構造材料を硬化させることができ、これは流体構造材料が支持型を充填して支持型の形状になる間に行われる。コンクリート又はコンクリート複合材料を用いる場合には、例えば、流体構造材料は、約48時間から72時間をかけて硬化することができる。他の期間も考えられる。
【0040】
続く加工ステップ210において、その後、支持型は硬化した構造材料から除去することができ、その結果、ただ最終的な構造物が残される。ある構成においては、支持型は使い捨ての支持型であってよく、除去加工中に破壊されてよい。他の構成においては、支持型は再利用可能な支持型であってよく、将来の使用のために保存すべく、支持型は注意深く取り除かれてよい。ある構成においては、支持型は、除去される必要がない(すなわち、ステップ210はない)ように、完成した構造物の一部を形成していてもよい。そして方法は終了ステップ212で終了する。
【0041】
続く図3は、構造物の作製中に空気形成プロセスによって膨張させた支持型の例を側面断面図で示したものである。支持型300は、例えば空気やその他の適切な流体によって膨張させたバルーンであってよく、図1に示した土台と支持アーム構造物とを形成するために使用されてよい。それゆえ、支持型300は土台領域310と複数の支持アーム領域320とを含んでいてよい。支持型300は、膨張させた時、空気又は他の流体で充填された薄い層302と内部の中空領域304とを含んでいてよい。このことは、複合コンクリート材料のような流体構造材料で支持型300を充填するためにも用いられうる1以上の注入口330によって達成されうる。1以上の流体排出口340は、建築プロセス中に空気や他の流体を排出させることができる。
【0042】
ある構成においては、完成した構造物の表面の質感は、完成した構造物を形成するために使用した型の表面の質感を調整することによって達成されるか、又は変更されうる。例えば、支持型300は、カスタマイズされた質感を、流体構造材料が型を充填した後に硬化したその内側の表面に備えることができる。支持型の内側表面がとても滑らかな場合、複合材料コンクリートやその他の流体構造材料によって形成された、仕上げられた構造物の外側表面も、滑らかな仕上がりが達成される。逆に言えば、支持型の内側の表面が粗ければ、完成した構造物の表面の質感も粗いものとなる。
【0043】
続く図4図10Bには、開示された空気形成プロセスを用いて形成することのできる多種多様な構造物のために種々の考えられうる使用事例が提供される。空気形成を手段として作製することのできる種々の構造物は、事実上どんな形状やサイズであってもよいが、本明細書に開示された種々の使用事例は、形成されうる無数の構造物のほんの小さな一例に過ぎないことが理解されるだろう。構造物は多様な材料をベースにすることができ、種々の室内、屋外、水中、真空空間、宇宙空間やその他の環境を含むがこれらに限られない様々な環境において形成されうる。構造材料は経時的に硬化するあらゆるもの、例えば、コンクリート、樹脂、溶融金属や合金、その他の考えられる材料のうち水や水性の流体などを含んでよい。化学反応によって硬化することのできる種々の液体もまた使用することができる。
【0044】
図4は、空気形成プロセスによって作られたアーチ連続ドーム構造物の一例を側面斜視図で示したものである。アーチ連続ドーム構造物400は、1つのバルーン又は1つの支持型を用いて空気形成プロセスによって作られた単一の構造物であってよい。アーチ連続ドーム構造物400は、例えば多数のアーチ410の連続でできたドームであってよい。
【0045】
図5は、空気形成プロセスによって作られた亀の甲羅の構造物の一例を側面斜視図で示したものである。亀の甲羅の構造物500は、1つのバルーン又は1つの支持型を用いて空気形成プロセスによって作られた単一の構造物であってよい。亀の甲羅の構造物500は、例えば、独立型の、又は、他の構造物のコンポーネント上に形成するか、もしくは他の構造物のコンポーネントに付加するように用いることのできる「骨組み」の構造物であってよい。それゆえ、亀の甲羅の構造物500は、その相対的に低くて周囲を囲んでいる土台510と、骨組みの亀の甲羅形状を形成するために相互に連結される、土台510から延びる複数の腕520を含んでいてよい。
【0046】
図6は、空気形成プロセスによって作られた柱とリンテルの構造物の一例を側面斜視図で示したものである。柱とリンテルの構造物600は、複数のバルーン又は複数の支持型を用いて空気形成プロセスによって作られた、結合された構造物であってよい。柱とリンテルの構造物600は、例えば種々のその他のコンポーネント又はその他の物をその上に支持するために用いられる、一本の柱と連結したリンテル又は台の構造物であってよい。それゆえ、柱とリンテルの構造物600は、土台610、土台610から上方へと延びる複数のリンテル620、及び複数のリンテル620の内側に含まれた台630を含んでいてよい。土台610は、地面の上か、又は離れた基礎の上に形成されてよく、そして1つのバルーン又は1つの支持型から形成されていてよい。1つ又は2つの追加的なバルーンか又は支持型が、複数のリンテル620と台630を形成するために用いられてよい。ある構成においては、構造物全体への追加的な支持材を提供するために、鉄筋梁フレームなどの形で鉄筋支持材を挿入することもできる。
【0047】
図7は、空気形成プロセスによって作られた外側と内側のミツバチの巣の構造物の一例を側面斜視図で示したものである。ミツバチの巣の構造物700は、1つのバルーン又は1つの支持型を用いて、又は2つの別個のバルーン又は支持型を用いて形成された、空気形成プロセスによって作られた単一の構造物であってよい。ミツバチの巣の構造物700は、例えば、そこに含まれる別のコンポーネント及び/又は別の物を収容するために用いることのできる外側全体の構造物であってよい。それゆえ、ミツバチの巣の構造物700は、外側のハチの巣又はミツバチの巣の構造物710と、その内部に含まれる内側の構造物720とを含むことができる。ある構成においては、鋼のロープ730か又は他の吊り下げコンポーネントをミツバチの巣の構造物700を吊り下げるために使用することができる。
【0048】
図8は、空気形成プロセスによって作られた中空構造物の一例を側面斜視図で示したものである。中空構造物800は、例えば本明細書に開示された種々の空気形成プロセスのうちの1以上の空気形成プロセスによって、コンクリート又はコンクリート複合材料から形成されていてよい。ある構成においては、中空構造物800は、中空構造物の内部の部屋へと導く階段を下に備えつけて形成された、高さをもって作られた部屋であってよい。中空構造物800は、立方体、球体、ボール、洋なし、リンゴ、又は同様の物のような、いかなるサイズや形状のものであってもよい。その他の構成においては、中空構造物800は、立方体形状のガラス構造物のような比較的大きな建築物又は構造物内の室内に囲まれていてよい。
【0049】
種々の実施形態においては、中空構造物800は、カンファレンスルーム、レセプションエリア、さらには映画館などの広い屋内の部屋であってよい。例えば、中空構造物800は、写真及び/又は動画を中空構造物800の内壁の一部または全体に投影する1以上の映写装置を備える映画館であってよい。霧、レーザ光線及びその他の効果が、中空構造物800の内壁上へのより力強い屋内プレゼンテーションのために使用されうる。この場合もやはり、内壁の質感は、中空構造物800の形成中に内壁に使用される型の質感の、好ましい滑らかさ及び/又は種類に設定することができる。例えば、素晴らしく滑らかな内壁の質感は、内壁表面に非常に滑らかな感触の型を有することによって設定することができるし、ざらざらであるか又はカスタマイズした触覚の質感は、中空構造物800の内壁における望ましい質感とは逆の形状を有する型を用いることによって設定することができる。
【0050】
図9Aは、図8における中空構造物の例の作製中に用いた、膨張させた二重の支持型の一例を側面断面図で示したものである。容易に分かるとおり、図8における中空構造物800は形成するのが比較的複雑な構造物でありうる。それゆえ、この構造物を形成するためには複数の支持型が使用されうる。例えば、内側支持型952は、中空の内部を有する構造物、例えば中空の部屋構造物900を形成するための外側支持型954の内側に含まれうる。
【0051】
第1のインジェクタ960は、内側支持型952を空気、別の流体支持材又はその他の構造材料を充填するために使用することができ、第2のインジェクタ962は、外側支持型954を空気又は他の流体で充填するために使用することができる。その他の構造材料は、建築中に内側支持型の形状を保つために設計された軽量な材料、例えば発泡材料などであってよい。容易に分かるとおり、第2のインジェクタ962に求められる充填体積は、単に外側支持型954と内側支持型952との間の体積であってよい。そして第3のインジェクタ964は、2つの支持型の間の充填体積と同じだけの体積を、例えば流体コンクリートやコンクリート複合材料などの流体構造材料で充填するために使用することができる。
【0052】
1以上の圧力弁970は、外側支持型954の膨張させている間か、さらに/又は流体構造材料で外側支持型954を充填させている間に、必要に応じて圧力を逆止めし、及び解放するために、外側支持型954の内部に入って形成されていて且つ外側支持型954に沿って配置されていてよい。必要に応じて同様の圧力弁を内側支持型952用に使用してもよい。さらに、1以上のセパレータシステムコンポーネント970が、建築プロセス中に内側支持型952と外側支持型954とを共に設定距離だけ離隔して保持するために用いられてよい。
【0053】
図9Bは、図9Aにおける膨張させた二重の支持型と共に使用するためのセパレータシステムコンポーネントの一例を側面断面図で示したものである。セパレータシステムコンポーネント980は、空気形成の膨張プロセス及び充填プロセス中に内側支持型952と外側支持型954とを設定距離だけ保つために使用されうる。種々の構成においては、支持型同士の間隔を実質的に均一にする、したがって類似の二重の支持型加工によって形成された、完成した中空の部屋構造物又はその他の構造物のコンポーネントにおいて厚みを実質的に均一なものとするのを容易にするために、同一又は類似の複数のセパレータシステムコンポーネント980が内側及び外側支持型の表面に沿って間隔を空けていてよい。各セパレータシステムコンポーネント980は、完成した中空構造物の壁の所望の厚みに対応した長さを備えた硬いセパレータパイプ982を含んでいてよい。接触板984は、内側支持型952と外側支持型954との両方の外側表面に沿って配置されていてよく、また、セパレータパイプ982はこれらの接触板984を通り抜けていてよく、また、両方の支持型の外側の表面上に締付けナット986が取り付けられてよい。二重の支持型などの構成において支持型同士の均一な間隔を容易に実現するために、代替的な構造物が用いられてもよい。
【0054】
多くの使用事例は建築構造物又は建築構造物のコンポーネントの形成を含んでいてよいが、開示された空気形成プロセスは、別のタイプの構造物を作製するためにも用いることができる。例えば、空気形成は像又はその他の自立する装飾的な構造物を作製するために用いられうる。鋼鉄、青銅、又はその他の金属の典型的な使用よりも、開示されたプロセスを用いたコンクリート又はコンクリート複合材料から作られた像は、はるかに迅速にかつ大幅に安価に作ることができる。像のような構造物には、コンクリート又はコンクリート複合材料が用いられてよく、又は代替的な構造材料が上述のとおり用いられうる。
【0055】
図10A及び10Bに示したように、自立する恐竜像1000は開示された空気形成プロセスを用いて形成されていてよい。多種多様な像の構造物の形状及びサイズは、像の重心をコントロールして1以上の支持型を設計することにより形成することができる。例えば、像の構造設計の多くが像の一方の足又は土台1002に向いている場合、土台1002の一方にある像1000の中実部分1004の重量は、中実部分の反対側にある土台1002から遠く離れて延びる像1000の中空部分1006の重量を補うことができる。
【0056】
種々の実施形態において、開示された空気形成プロセスによって形成された像又は装飾的な構造物は、形成中に、流体構造材料へ顔料を添加するプロセスを含んでいてよい。例えば、恐竜の像1000の形成中に、コンクリート構造物は水分を含んだコンクリートに添加した褐色の色素材を有していてよい。必要に応じて、さらなる塗料原料や装飾材料が、硬化して完成した構造物に付加されてもよい。上述のとおり、恐竜の像1000の仕上がった質感は、像を形成するために用いられた型の質感を調整することによって設定することもできる。例えば、ざらざらした質感の型は、恐竜の肌を模して像1000の表面にざらざらの質感をもたらすことができる。表面の様々な質感は、型上の異なる箇所における質感を変化させることによっても実現することができる。例えば、必要に応じて、ざらざらした質感はざらざらした恐竜の肌に用いることができる一方で、滑らかな質感は驚いた科学者のような滑らかに仕上げた表面に用いることができる。
【0057】
容易に分かるとおり、図4図10Bまでの種々の構造物及び構造物のコンポーネントは、本明細書に開示された種々の空気形成方法を使用して形成されうる多種多様なコンクリートやその他の構造物のいくつかのみを示している。種々の実施形態においては、1以上の支持型は、いかなる形状、サイズ、及び複雑さによっても定義しうる。各支持型用の材料は、例えば、樹脂様の、又はファイバグラスとエポキシ樹脂の生地などといったファイバグラス樹脂又はその他のあらゆる適切な材料であってよい。ファイバグラスとエポキシ樹脂の生地は、これを湿らせた後24時間で硬化することで作製しうる。他の構成においては、支持型を用いて作製された型枠は、コンクリートが硬化した後に取り壊される使い捨て用であってよい。すなわち、支持型そのものは最終的に形成された構造物のいかなる部分をも構成することはない。
【0058】
ある実施形態においては、各支持型は除去された後に破壊されるか又は処分される使い捨ての支持型であってよい。代替的な実施形態においては、1以上の支持型が再利用可能であってよい。例えば、ある支持型は、同じ構造物を作るために何度か再利用されうるように取り外し可能であってよい。ある支持型は、不特定回数だけ取り外し可能、且つ再利用可能であってさえもよい。そのような再利用可能な支持型の再利用を容易にするために、1以上のフラップ、シール、ジッパー、又はその他の適切な特徴部が、再利用可能な支持型を破壊することなく成型後の支持型の取り外しを可能にする。
【0059】
種々の実施形態においては、流体建築材料はコンクリートに限定されなくてよい。実際、均一な流体として型に流し込まれることができ、構造物の固体を作り出すために後に硬化するその他のあらゆる材料を用いることができる。例えば、宇宙用途のために代替的な建築材料は、上述した硬化する樹脂、エポキシ樹脂、又はその他の適切な構造材料を含みうる。その他の構成では、支持型は、単にヒータをオフにすることにより凝固する構造材料が確実に液体状態を保つように加熱されてよい。
【0060】
種々の実施形態においては、1以上の支持型は、別個に膨張させることのできる複数の部分が接続されうる1つの支持型のように区分化されていてよい。これにより、とりわけ比較的大きな、さらに/あるいは複雑な形状及び複雑な用途の、全体の型と完成した構造物について、より良い制御が可能となる。
【0061】
ある実施形態においては、ポストテンション加工が用いられてよい。例えば、スリーブ又はパイプが、ひとたび支持型がはがし取られるか、さもなくば除去されても、端部は支持型の内部に固定されてアクセス可能なように支持型の内部に配置されていてよい。スリーブは固定具要素を含んでいてよく、又は、固定具要素は外側に取り付けられていてもよい。スリーブは別個の物であってよく、又は、同一素材で途切れなく作られて最終的に硬化したコンクリートの内部に「パイプ」を生成する、支持型の一体的な部分であったとしてもよい。代替的に、「硬いバルーン」エポキシ樹脂の選択肢は、両端への穴あけステップ、開けた穴にパイプを通すステップ、及び、流体コンクリート又はその他のあらゆる適切な流体構造材料を流し込むステップの前に端部を閉じるステップを含んでよい。
【0062】
種々の実施形態において、支持型は、硬化して完成した構造物が斜角や面取りした面を備えるように、型の複数の縁部が傾斜しているか又は面取りした面を備えて打設されるように設計されてよい。斜角は剥離や脱型に役立つ。というのも縁部の欠けにつながりうる平角又は鋭角がないことを保証するからである。1以上の斜角及び/又は面取りした面を組み込む他の利点は、これらの形状が、隠せなければ組み立て後に一層目立つ可能性のある、打設における小規模で不可避な欠陥を隠すことができる点にある。
【0063】
開示された実施形態においては、膨張可能な支持型の自然な形状は、斜角をフィレット形状に置き換えることができ、これによって制作が比較的複雑であるか又は難しいために通常は不要とされうる、望ましい設計決定である丸みを帯びた縁部の形成を可能にする。代替的な設計構成では、仕上がった縁部の最小限の形状と鋭さとを制限するために、異なる要素を作るために用いられる材料を考慮に入れることができる。設計が鋭い縁部を必要とするならば、漆喰塗り、タイル張り、ペンキ塗りなどの時に構造物に使用され、追加されうる美的な仕上げ要素がいつも存在する。
【0064】
種々の実施形態においては、完成した構造物又は構造物のコンポーネントは、あらゆる形状の強化鉄筋又はその他の別個の材料を使用する複合材料コンクリートを含んでいる。実際、特に、開示された構造物は、その他の材料も別個の補強するコンポーネントも追加していない、1つの均質に混合された複合材料から形成されていると考えられる。ある構成においては、複合コンクリート材料のコンクリート部分は、単位容積あたりのセメントや細かい粒子が、通常のプレキャストコンクリートの最大で2倍まで大量に含まれていてよい。一般的に、小さな骨材は「マイクロコンクリート(micro-concrete)」材料を供給しうる。例えば、あるマイクロコンクリート材料は、最大サイズが2mmであってよい。使用されるコンクリートの種類は、米国コンクリート学会によって定義された自己充填コンクリート、軽量コンクリート及び/又は超高性能コンクリートを含んでいてよい。
【0065】
たいていのコンクリート型枠は応力と張力とに関連した収縮をするので、均質な複合材料コンクリート混合物は、このような収縮効果を弱めるために、繊維、場合によっては異なる種類(例えば金属、ポリマー、その他)の繊維の混合物を大量に含んでいてよい。収縮によって引き起こされうる小さな割れを減少させるか又はなくすために、典型的な構造物の繊維に加え、より小さな「割れ防止(anti-cracking)」繊維を複合コンクリート材料に追加することができる。
【0066】
コンクリートに使用することのできる多くの様々な種類の繊維があり、それらは広く普及している標準的なものから、非常に実験的なものまで様々である;布強化材を「構造化された」繊維強化材として考えることもできるほか、コンクリート塊の中に分散させるのではなく、要素の表面上に塗布される繊維や布地などもある。繊維に注目すると、構造的と、構造的でないという2つの大きなカテゴリがある。構造的な繊維は、少なくとも、相対的に大きな骨材粒子と同じくらいの大きさなので、それらは骨材粒子と絡み合ってその構造的物性をコンクリートへと移すことができる。複合コンクリート混合物に含まれうる様々な種類の繊維は、とりわけ、鋼鉄の繊維又は「Dramix」繊維、構造的ポリプロピレン繊維、非構造的ポリプロピレン繊維を含みうる。
【0067】
種々の実施形態においては、アルミニウム合金繊維がコンクリート材料中に混合されうる。そのようなアルミニウム合金繊維は、例えばアルミニウム飲料缶を裁断することによって形成することができる。ある構成においては、これはアルミニウム飲料缶の上面と下面とを取り除いて、缶の側壁を、繊維を形成するためにひも形状へと切断することを含みうる。ある構成においては、ひも又は繊維は、およそ30mm未満の長さと2mm未満の厚みとを有していてよい。ひも又は繊維の幅は、所与の用途又は構造物にとって適切であるように異なっていてよい。
【0068】
建築材料内に繊維を含有させるステップに加え、支持型の生地内に繊維が組み込まれていることも考えられる。例えば、1つのアプローチは、エポキシ樹脂に水分を含ませるステップ、及びそれを硬化させることによって、膨張したらその形状を保持することのできるファイバグラスとエポキシ樹脂のバルーン又は支持型を作製するステップを含む。支持型に繊維を添加することで、支持型の生地材料を強化し、より大きくより複雑な構造物を実現することができる。
【0069】
図11A及び11Bは、型と基礎との連結の例をそれぞれ側面断面図と正面断面図とで示したものである。図11Aの構成1100は、型の構造物を現存する基礎に連結させるための1つのアプローチを示したものである。1以上の型1110の組み立てと据え付けに先立って、全体の構造物の基礎1120は、型1110を用いて打設されることになっている構造物の1又は複数の要素と連結するために仕上げられ、そして準備されうる。1以上の鉄筋コンポーネント1122は、連結フランジ1124を用いて型1110の内部に形成された構造物と連結されうる全体の構造物の基礎1120から延びていてよい。基礎とフーチングは、プレキャスト建築のためのあらゆる適切な標準作業手順に従うことができる。
【0070】
図11Bの構成1150は、型の構造物と既存の基礎とを連結するための別のアプローチを示したものである。図示したように、これは垂直の要素、例えば、部分的にソケット1154内へと導入することができ、組み立て後に現場で固定されうるプレキャストの柱1152を含んでいてよい。ボルト締めしたコラムシュー(column shoes)、アンカーボルト及び/又は溶接したアンカープレートなどの代替的な機構も使用しうる。ある構成においては、コンクリート内に埋め込まれたままの状態でフーチングソケットとの良好な連結を保証する、リブ付きロスト型枠要素1156を使用することができる。この要素と基礎ソケットとの間の間隙は、プレキャスト建築における通常の手順でありうる、セメント系グラウト1158又はその他の適切な材料で充填することができる。ある構成においては、金属の要素が型と連結されうる。
【0071】
図12は、代替的な形成プロセスを用いた構造物の形成の代替的な方法1200の一例のフローチャートを示したものである。代替的な方法1200は、上記の方法200と似通ったものでありうるが、支持型は、最初に空気又はあらゆる他の流体で膨張されている必要がないという明らかな例外を有している。より正確に言えば、流体コンクリート又はその他の構造材料は、いかなる事前の流体による膨張プロセスもなしに、支持型内に直接充填されてよい。方法1200は、大まかに代替的な形成プロセスを今まで以上に詳しく提供しており、示していない種々のステップや詳細も含まれうることは容易に分かるであろう。例えば、追加された詳細は、全体の結合した構造物を完成させるために複数の別個の支持型を用いて複数の構造物のコンポーネントを形成することを含んでいてよい。この場合もやはり、全体の構造物は、所望の建築物、像、又はいかなるその他の適切な構造物であってよい。
【0072】
開始ステップ1202の後、第1の加工ステップ1204は、支持型の設計を含んでいてよい。このことは、所望の最終的な構造物のコンポーネントを何にするかを決定するステップと、そして所望の最終的な構造物のコンポーネントをもたらす支持型を設計するためのソフトウェア及び/又はその他のプランニング技術を使用するステップとを含んでいてよい。
【0073】
次の加工ステップ1206においては、支持型はステップ1204において決定された設計にしたがって作製されうる。この場合もやはり、支持型は適切な厚みと強度とを有するファイバグラス樹脂材料から形成されていてよい。代替的に、ファイバグラス樹脂よりも、しなやかなプラスチック生地が用いられてもよい。さらにその他の構成においては、しなやかなエポキシ樹脂とファイバグラスの材料が支持型を作るために用いられてよい。
【0074】
続く判定ステップ1208においては、すべての所望の支持型が作られているかどうかに関する照会が行われてよい。もしすべての所望の支持型が作られていない場合には、次にステップ1204とステップ1206とが、全体の構造物を完成させるための、所望のすべての複数の構造物のコンポーネントを形成することのできる所望の数の支持型が作られるまで、繰り返されうる。ある構成においては、ステップ1204は、すべての支持型が設計されるまで繰り返すことができ、続いてステップ1206は、設計図を用いてすべての支持型が作られるまで繰り返すことができる。
【0075】
次の加工ステップ1210においては、支持型は、例えば水分を含んだコンクリート複合材料などの流体構造材料で直接充填されてよい。流体構造材料は、上に述べた、例えば1以上の繊維状の材料が埋め込まれたようないかなる材料であってもよい。
【0076】
続く判定ステップ1212においては、すべての支持型が流体構造材料で充填されているかどうかについて照会が行われてよい。もしすべての支持型が流体構造材料で充填されていない場合には、次にステップ1210が繰り返されてよく、すべての所望の構造物の型が充填されるまで、追加的な構造物の型が充填されてよい。
【0077】
次の加工ステップ1214においては、流体構造材料は、1又は複数の支持型の内部で硬化されてよい。この場合もやはり、これにはおよそ48から72時間を必要としうるが、使用される特定の材料や温度や全体の硬化した構造物のサイズによって、他の所要時間もありうる。
【0078】
続く加工ステップ1218においては、完成した構造物の1又は複数のコンポーネントを残すために、1又は複数の支持型が除去されうる。このことは、使い捨ての支持型を除去することと潜在的には破壊すること、又は再利用可能な支持型の注意深い除去を適宜含んでいてよい。そして方法は終了ステップ1220で終了する。
【0079】
上述の開示は、明瞭性および理解の目的で、例示と実施例とによって詳細に説明されてきたが、上述の開示は、本開示の精神または本質的な特徴から逸脱することなく、数多くの他の具体的な変形や実施形態に具体化されうることが認識されるであろう。特定の変更や修正が実施されてもよく、本開示は前述の詳細によって限定されるべきものではなく、むしろ添付の特許請求の範囲によって定義されるべきものであることが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
【国際調査報告】