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特表2024-506227成長ホルモン融合タンパク質及びその調製方法並びに使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-13
(54)【発明の名称】成長ホルモン融合タンパク質及びその調製方法並びに使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/18 20060101AFI20240205BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240205BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240205BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240205BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240205BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240205BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240205BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240205BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240205BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20240205BHJP
   C07K 14/475 20060101ALI20240205BHJP
   A61K 38/27 20060101ALI20240205BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240205BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240205BHJP
   A61P 5/06 20060101ALI20240205BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20240205BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20240205BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240205BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240205BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240205BHJP
【FI】
C12N15/18
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K19/00
C12P21/02 H
C07K16/18
C07K14/475
A61K38/27
A61K48/00
A61K35/12
A61P5/06
A61P1/14
A61P19/08
A61P43/00 111
A61K39/395 Y
C12N15/13 ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515840
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(85)【翻訳文提出日】2023-03-08
(86)【国際出願番号】 CN2022089962
(87)【国際公開番号】W WO2023123776
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202111658414.X
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523085164
【氏名又は名称】ジェイ・エイチ・エム バイオファーマシューティカル(ハンチョウ)カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JHM BIOPHARMACEUTICAL(HANGZHOU)CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Rooms 501,502,503 and 504,Building 9,Hexiang Science and Technology Center,Qiantang District,Hangzhou,Zhejiang 310018,China
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】バオ,グゥオチィン
(72)【発明者】
【氏名】グゥオ,リミン
(72)【発明者】
【氏名】シェン,ユバオ
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,シン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジアナン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,チャオ
(72)【発明者】
【氏名】ウー,チ
(72)【発明者】
【氏名】スン,バオツャイ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG13
4B064AG26
4B064CA02
4B064CA06
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA41
4C084DB22
4C084NA14
4C084ZA661
4C084ZA961
4C084ZC041
4C084ZC411
4C084ZC541
4C085AA33
4C085BB42
4C085CC22
4C085DD62
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB65
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZA66
4C087ZA96
4C087ZC04
4C087ZC41
4C087ZC54
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA31
4H045DA75
4H045EA30
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は成長ホルモン融合タンパク質及びその調製方法と使用に関し、本発明の実施例によれば、成長ホルモン融合タンパク質は、第1の定常領域Fcセグメントと第2の定常領域Fcセグメントを有する二本鎖構造体と、前記二本鎖構造体の前記第1の定常領域Fcセグメントに連結される成長ホルモンと、を含み、前記成長ホルモンのN末端にメチオニンを有さなく、前記成長ホルモン融合タンパク質は非哺乳細胞の発現系によって発現される。本発明の実施例によれば、成長ホルモンと二本鎖構造体を融合することによって、成長ホルモンの体内の半減期を延長することができ、また、各二本鎖構造体に1つの成長ホルモンしか担持しないため、成長ホルモンの活性サイトが立体障害の影響を受けないため、その活性がより強くなり、また成長ホルモンのN末端にメチオニンを有さないため、安全性がより高い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成長ホルモン融合タンパク質であって、
第1の定常領域Fcセグメントと第2の定常領域Fcセグメントを有する二本鎖構造体と、
前記二本鎖構造体の前記第1の定常領域Fcセグメントに連結される成長ホルモンと、
を含み、
前記成長ホルモンのN末端にメチオニンを有さなく、
前記成長ホルモン融合タンパク質は非哺乳細胞の発現系によって発現されることを特徴とする成長ホルモン融合タンパク質。
【請求項2】
前記成長ホルモン融合タンパク質はグリコシル化修飾を受けていないことを特徴とする請求項1に記載の成長ホルモン融合タンパク質。
【請求項3】
前記非哺乳細胞発現系は原核発現系と下等真核発現系のいずれかを少なくとも含み、好ましくは前記非哺乳細胞発現系は大腸菌発現系と酵母発現系のいずれかを少なくとも含む、ことを特徴とする請求項1または2に記載の成長ホルモン融合タンパク質。
【請求項4】
前記成長ホルモンは、
(a)、SEQ ID NO:1で示されるアミノ酸配列、
FPTIPLSRLFDNAMLRAHRLHQLAFDTYQEFEEAYIPKEQKYSFLQNPQTSLCFSESIPTPSNREETQQKSNLELLRISLLLIQSWLEPVQFLRSVFANSLVYGASDSNVYDLLKDLEEGIQTLMGRLEDGSPRTGQIFKQTYSKFDTNSHNDDALLKNYGLLYCFRKDMDKVETFLRIVQXRSVEGSXGF、
は、G、AまたはSを示し、
は、G、A、S、Cまたは欠落を示し、
は、G、A、S、Cまたは欠落を示し、
または
(b)、(a)と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列、
のいずれかを含む、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の成長ホルモン融合タンパク質。
【請求項5】
一端が前記成長ホルモンに連結され、他端が前記二本鎖構造体に連結され、少なくとも1つの配列単位GXaaPXaaを含む連結ペプチドをさらに含み、
各前記配列単位の中で、各Xaaはそれぞれ独立してA、E及びKのいずれかを示し、各Xaaはそれぞれ独立してQ及びNのいずれかを示す、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の成長ホルモン融合タンパク質。
【請求項6】
前記連結ペプチドは1~20個、好ましくは1~5個、より好ましくは3個の前記配列単位を含む、ことを特徴とする請求項5に記載の成長ホルモン融合タンパク質。
【請求項7】
前記成長ホルモンのC末端は前記連結ペプチドに連結される、ことを特徴とする請求項5または6に記載の成長ホルモン融合タンパク質。
【請求項8】
前記第1の定常領域Fcセグメントと前記第2の定常領域Fcセグメントは異なるアミノ酸配列を有する、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の成長ホルモン融合タンパク質。
【請求項9】
前記第1の定常領域Fcセグメントと前記第2の定常領域Fcセグメントは体外でイソダイマーを形成するのに適する、ことを特徴とする請求項8に記載の成長ホルモン融合タンパク質。
【請求項10】
前記第1の定常領域Fcセグメントと前記第2の定常領域Fcセグメントはそれぞれ独立してSEQ ID NO:2で示されるアミノ酸配列:
SKYGPPXPPXPAPXAXGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFXSTYRVVSVLTVLHQDWLXGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLX10CX11VKGFYPSDIAVEWESX12GQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLX13SRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGKを有し、
はR、K、D、EまたはCを示し、
はR、K、D、EまたはCを示し、
はR、K、D、Eまたは欠落を示し、
はA、R、K、D、Eまたは欠落を示し、
はD、E、G、QまたはNを示し、
はD、E、G、QまたはNを示し、
10はG、SまたはWを示し、
11はA、G、PまたはLを示し、
12はD、E、G、QまたはNを示し、
13はI、P、VまたはYを示す、ことを特徴とする請求項8または9に記載の成長ホルモン融合タンパク質。
【請求項11】
、X、X及びXのうちの少なくとも1つはKまたはEまたはCである、ことを特徴とする請求項10に記載の成長ホルモン融合タンパク質。
【請求項12】
前記第1の定常領域Fcセグメントでは、
はCを示し、
はCを示し、
はKを示し、
はEを示し、
はNを示し、
はNを示し、
10はWを示し、
11はLを示し、
12はNを示し、
13はYを示す、ことを特徴とする請求項10に記載の成長ホルモン融合タンパク質。
【請求項13】
前記第2の定常領域Fcセグメントでは、
はCを示し、
はCを示し、
はEを示し、
はKを示し、
はQを示し、
はQを示し、
10はSを示し、
11はAを示し、
12はQを示し、
13はVを示す、ことを特徴とする請求項10に記載の成長ホルモン融合タンパク質。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の成長ホルモン融合タンパク質をコードする、ことを特徴とする核酸分子。
【請求項15】
請求項14に記載の核酸分子を担持する、ことを特徴とする発現ベクター。
【請求項16】
請求項14に記載の核酸分子、または
請求項15に記載の発現ベクターを含む、ことを特徴とする組換え細胞。
【請求項17】
請求項1~13のいずれか1項に記載の成長ホルモン融合タンパク質の調製方法であって、
二本鎖構造体の第1の単量体と第2の単量体を取得するステップであって、前記第1の単量体は第1の定常領域Fcセグメントを有し、前記第2の単量体は第2の定常領域Fcセグメントを有し、前記第1の定常領域Fcセグメントに成長ホルモンが連結されるステップと、
前記第1の単量体と前記第2の単量体をイソダイマーにして、前記成長ホルモン融合タンパク質を取得するステップと、を含む、ことを特徴とする成長ホルモン融合タンパク質の調製方法。
【請求項18】
前記イソダイマーは体外で形成される、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の単量体と前記第2の単量体は非哺乳細胞発現系で発現される、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の単量体と前記第2の単量体は同じ前記非哺乳細胞発現系で発現される、ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1~13のいずれか1項に記載の成長ホルモン融合タンパク質を含む、ことを特徴とする薬物組成物。
【請求項22】
請求項1~13のいずれか1項に記載の成長ホルモン融合タンパク質、請求項14に記載の核酸分子、請求項15に記載の発現ベクター、請求項16に記載の組換え細胞、請求項17~20のいずれか1項に記載の方法によって調製された成長ホルモン融合タンパク質、請求項21に記載の薬物組成物の、成長ホルモン異常に関連する疾患を治療または予防するための薬物の調製における使用。
【請求項23】
前記成長ホルモン異常に関連する疾患は、
小児成長ホルモン欠乏症、ターナー症候群、慢性腎不全による小人症、特発性小人症、成人成長ホルモン欠乏、短腸症候群、FGFR3突然変異の軟骨発育不全から選ばれる1種を少なくとも含む、ことを特徴とする請求項22に記載の使用。
【請求項24】
被験者における成長ホルモン異常に関連する疾患を治療または予防するための方法であって、前記被験者に請求項1~13のいずれか1項に記載の成長ホルモン融合タンパク質、請求項14に記載の核酸分子、請求項15に記載の発現ベクター、請求項16に記載の組換え細胞、請求項17~20のいずれか1項に記載の方法によって調製された成長ホルモン融合タンパク質、または請求項21に記載の薬物組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項25】
前記成長ホルモン異常に関連する疾患は、
小児成長ホルモン欠乏症、ターナー症候群、慢性腎不全による小人症、特発性小人症、成人成長ホルモン欠乏、短腸症候群、FGFR3突然変異の軟骨発育不全から選ばれる1種を少なくとも含む、ことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
成長ホルモン異常に関連する疾患を治療または予防するための使用の、請求項1~13のいずれか1項に記載の成長ホルモン融合タンパク質、請求項14に記載の核酸分子、請求項15に記載の発現ベクター、請求項16に記載の組換え細胞、請求項17~20のいずれか1項に記載の方法によって調製された成長ホルモン融合タンパク質、または請求項21に記載の薬物組成物。
【請求項27】
前記成長ホルモン異常に関連する疾患は、
小児成長ホルモン欠乏症、ターナー症候群、慢性腎不全による小人症、特発性小人症、成人成長ホルモン欠乏、短腸症候群、FGFR3突然変異の軟骨発育不全から選ばれる1種を少なくとも含む、ことを特徴とする請求項26に記載の使用の請求項1~13のいずれか1項に記載の成長ホルモン融合タンパク質、請求項14に記載の核酸分子、請求項15に記載の発現ベクター、請求項16に記載の組換え細胞、請求項17~20のいずれか1項に記載の方法によって調製された成長ホルモン融合タンパク質、または請求項21に記載の薬物組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオテクノロジー分野に関し、具体的に、本発明は成長ホルモン融合タンパク質及びその調製方法並びに使用に関し、より具体的に、本発明は成長ホルモン融合タンパク質、核酸分子、発現ベクター、組換え細胞、成長ホルモン融合タンパク質の調製方法、薬物組成物及び成長ホルモン融合タンパク質、核酸分子、発現ベクター、組換え細胞または薬物組成物の薬物の調製における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト成長ホルモン(human growth hormone、hGH)脳下垂体の前葉から分泌されるタンパク質ホルモンで、191個のアミノ酸からなり、分子量は22.1KDaであり、成長ホルモンは骨の成長を促進し、生体タンパク質の合成及び脂肪の分解を促進し、筋肉細胞の数と筋肉細胞の体積を増やし、免疫系を調整し、免疫能力を増強する。成長ホルモンは子供の内因性成長ホルモンの欠乏による小人症、ターナー症候群、成人GHD、火傷と創傷修復などの病状の治療に用いることができ、慢性腎不全による小人症、短腸症候群、高齢者の抗老化を治療するために用いることもできる。
【0003】
国内市場の長寿命成長ホルモンはPEG化によってその半減期を延長し、長期的な目的を達成する。しかし、PEG化された組換えヒト成長ホルモンを成長ホルモン欠乏症にかかった子供に使用した場合、患児の体内のインスリン様成長因子-1(IGF-1)レベルは正常レベルに回復できなかったと報告されている。臨床前の動物実験では、実験動物にPEG化されたタンパク質薬を繰り返し投与すると、空胞病変を引き起こすことが示された。また、通常の成長ホルモン発現産物、特に大腸菌で発現する成長ホルモンについて、目的タンパク質遺伝子の開始に塩基ATGの存在が必須であるため、発現タンパク質のN末端に必ずメチオニンが含まれており、N末端にメチオニンを含まない成長ホルモンを得るには、タンパク質のN末端融合シグナルペプチドの作用によって実現する必要がある。N末端メチオニンの存在、特に成長ホルモンのN末端メチオニンの存在は、治療に副作用をもたらす。
【0004】
したがって、従来の長寿命成長ホルモン技術は改善する余裕がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の技術に存在する成長ホルモンの上記問題を十分に考慮し、組換え成長ホルモンをさらに研究する過程において、意外にも、大腸菌などの一部の発現系は、シグナルペプチドの作用を介さずに、N末端にメチオニンを担持しない成長ホルモンに直接発現できることが示された。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明はN末端にメチオニンを担持しない組換え成長ホルモンを効果的に調製する方法を提供する。
【0007】
第1の態様では、本発明は成長ホルモン融合タンパク質を提供し、本発明の実施例によれば、第1の定常領域Fcセグメントと第2の定常領域Fcセグメントを有する二本鎖構造体と、前記二本鎖構造体の前記第1の定常領域Fcセグメントに連結される成長ホルモンと、を含み、前記成長ホルモンのN末端にメチオニンを有さなく、前記成長ホルモン融合タンパク質は非哺乳細胞の発現系によって発現される。本発明の実施例によれば、成長ホルモンと二本鎖構造体を融合することによって、成長ホルモンの体内の半減期を延長することができ、また、各二本鎖構造体に1つの成長ホルモンしか担持しないため、成長ホルモンの活性サイトが立体障害の影響を受けないため、その活性がより強くなり、また成長ホルモンのN末端にメチオニンを有さないため、安全性がより高い。
【0008】
第2の態様では、本発明は核酸分子を提供し、本発明の実施例によれば、前記核酸分子は第1の態様に記載の成長ホルモン融合タンパク質をコードする。該核酸分子を利用することで上記融合タンパク質を発現するために効果的に使用でき、特に原核生物や下等真核生物の発現系では上記成長ホルモンの単量体を効果的に発現することができ、さらに体外で組み立てることで最終的な成長ホルモン融合タンパク質を形成することができる。
【0009】
第3の態様では、本発明は、発現ベクターを更に提供し、本発明の実施例によれば、前記発現ベクターは第2の態様に記載の核酸分子を担持する。該発現ベクターを利用することで、細胞内で上記融合タンパク質を効果的に発現でき、特に原核生物や下等真核生物の発現系では上記成長ホルモンの単量体を効果的に発現することができ、さらに体外で組み立てることで最終的な成長ホルモン融合タンパク質を形成することができる。
【0010】
第4の態様では、本発明は組換え細胞を更に提供し、本発明の実施例によれば、該組換え細胞は、前述の核酸分子、または前述の発現ベクターを含む。
【0011】
第5の態様では、本発明は第1の態様に記載の成長ホルモン融合タンパク質の調製方法を更に提供し、二本鎖構造体の第1の単量体と第2の単量体を取得するステップであって、前記第1の単量体は第1の定常領域Fcセグメントを有し、前記第2の単量体は第2の定常領域Fcセグメントを有し、前記第1の定常領域Fcセグメントに成長ホルモンが連結されるステップと、前記第1の単量体と前記第2の単量体をイソダイマーにして、前記成長ホルモン融合タンパク質を取得するステップと、を含む。
【0012】
これにより、前述の成長ホルモン融合タンパク質を効果的に調製することができる。
【0013】
本発明の実施例によれば、前記イソダイマーは体外で形成される。
【0014】
本発明の実施例によれば、前記第1の単量体と前記第2の単量体は非哺乳細胞の発現系で発現される。
【0015】
本発明の実施例によれば、前記第1の単量体と前記第2の単量体は同じ非哺乳細胞の発現系で発現される。
【0016】
第6の態様では、本発明は第1の態様に記載の成長ホルモン融合タンパク質を含む薬物組成物を提供する。
【0017】
第7の態様では、本発明は前述成長ホルモン融合タンパク質、前述核酸分子、前述発現ベクター、前述組換え細胞、前述の融合タンパク質の調製方法により調製された成長ホルモン融合タンパク質、または前述薬物組成物の薬物の調製における使用を更に提供し、前記薬物は、成長ホルモン異常に関連する疾患の治療または予防に用いられる。
【0018】
第8の態様では、本発明は、被験者における成長ホルモン異常に関連する疾患を治療または予防するための方法を提供し、前記被験者に前述成長ホルモン融合タンパク質、前述核酸分子、前述発現ベクター、前述組換え細胞、前述融合タンパク質の調製方法により調製された成長ホルモン融合タンパク質、または前述薬物組成物を投与するステップを含む。
【0019】
第9の態様では、本発明は、成長ホルモン異常に関連する疾患を治療または予防するための使用の前述成長ホルモン融合タンパク質、前述核酸分子、前述発現ベクター、前述組換え細胞、前述融合タンパク質の調製方法により調製された成長ホルモン融合タンパク質、または前述薬物組成物を更に提供する。
【0020】
本発明の実施例によれば、前記成長ホルモン異常に関連する疾患は、小児成長ホルモン欠乏症、ターナー症候群、慢性腎不全による小人症、特発性小人症、成人成長ホルモン欠乏、短腸症候群、FGFR3突然変異の軟骨発育不全から選ばれる少なくとも1つを含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施例による融合タンパク質の構成模式図である。
図2】本発明の成長ホルモン融合タンパク質の体内で動物の成長促進作用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例を詳しく説明し、図面を参照して説明する実施例は例示的なものであり、本発明を解釈するために使用され、本発明を制限するためのものとして理解されるべきではない。
【0023】
本発明を説明する過程において、本明細書に係る用語を解釈及び説明し、これらの解釈と説明は手段を理解しやすくするためのものに過ぎず、本発明の保護手段を制限するためのものとして見なされるべきではない。
【0024】
特に明記されていない限り、本明細書で使用される「成長ホルモン」という用語は、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモンと同一もしくは一定の相同性を有するが、生物学的機能にマイナスの影響を受けないタンパク質(または「変異体」と呼ばれる)のことであり、当業者は、既知の天然のヒト成長ホルモンのアミノ酸配列と通常の遺伝子編集手段を組み合わせることにより、所望の定点突然変異を容易に得ることができる。
【0025】
特に明記されていない限り、本明細書で使用される「融合タンパク質」という用語は、少なくとも2つのタンパク質またはポリペプチドが融合した新型タンパク質であり、通常、遺伝子工学等の技術によって上記の融合操作、例えばDNA組換え技術によって得られた2つの遺伝子が組換えられた発現産物を実現することができる。ここでは、成長ホルモンと二本鎖構造体のFcセグメントが融合した状態を指すが、説明する必要がある点として、成長ホルモン融合タンパク質はタンパク質のすべての部分が融合によって形成されることを意味するわけではなく、例えば、二本鎖構造体中の2つのFcセグメント部分がジスルフィド結合などの化学的結合によって連結される。
【0026】
特に明記されていない限り、本明細書で使用される「同一性」という用語は、通常の方法によって2つのタンパク質配列の間の同一性を決定することができ、例えば、Ausubel等、編集(1995)、Current Protocols in Molecular Biology、第19章(Greene Publishing and Wiley-Interscience、New York);及びALIGNプログラム (Dayhoff(1978)、Atlas of Protein Sequence and Structure 5:Suppl.3(National Biomedical Research Foundation、Washington、D.C.)を参照する。照合配列と測定配列の同一性について、Needleman等(1970)J.Mol.Biol.48:443の相同性照合アルゴリズム、Smith等(1981)Adv.Appl.Math.2:482の局所相同性アルゴリズム、Pearson等(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.85:2444の類似性検索方法、Smith-Waterman アルゴリズ(Meth.Mol.Biol.70:173-187(1997)、及びBLASTP、BLASTN、及びBLASTXアルゴリズ(Altschul等(1990)J.Mol.Biol.215:403-410参照)を含む。これらのアルゴリズムを利用したコンピュータプログラムも入手可能であり、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェア、またはWU-BLAST-2(Altschul等、Meth.Enzym.、266:460-480(1996))、またはGAP、BESTFIT、BLAST Altschul、以上のFASTAとTFASTA(Genetics Computing Group(GCG)パッケージ、バージョン8、Madison、Wisconsin、USAで入手可能である)、Intelligenetics、Mountain View、Californiaに提供されたPC/GeneプログラムにおけるCLUSTAL等を含むが、これらに限定されない。
【0027】
特に明記されていない限り、本明細書で使用される「発現ベクター」という用語は、適切な宿主でDNAの発現を可能にする適切な制御配列と操作可能に連結されたDNA配列を含むDNA構築体を指す。このような制御配列には、転写を実現するプロモーター、任意に選択可能に転写を制御する操作遺伝子配列、mRNA上の適切なリボソーム結合サイトをコードする配列、及び転写と翻訳終了を制御する配列が含まれてもよい。細胞種類によって異なる発現ベクターを使用することが好ましい。ここで使用するように、「宿主菌株」または「宿主細胞」とは、本発明のDNAを含む発現ベクターに用いられる適切な宿主を指す。本明細書では、使用される「非哺乳細胞発現系」とは、哺乳動物細胞以外の宿主細胞を用いて発現する系であり、例えば、原核細胞または下等真核細胞などの微生物細胞である。
【0028】
本発明は、発明者が従来の成長ホルモン製剤について鋭意研究した結果、完成した。小児と成人の成長ホルモン欠乏(GHD)は、外来の成長ホルモンを補充することで治療することができる。現在、商業化組換えヒト成長ホルモンには普通成長ホルモンと長寿命成長ホルモンがあり、普通成長ホルモンの体内半減期が短く、約2-3時間であり、注射後すぐに肝臓、腎臓で除去されるため、毎日皮下注射で投与する必要があり、患者に多くの苦痛を与えるとともに、長期的に体内に組換えヒト成長ホルモンを注射しても、少数の人の体内で抗体を生成し、治療効果に影響を及ぼす。長寿命成長ホルモンは普通成長ホルモンの体内半減期が短いという欠点を克服し、高い活性を保持すると同時に、人の体内半減期を大幅に延長させ、毎週またはより長い時間の皮下注射の投与を実現でき、患者の薬物依存性を大幅に改善する。
【0029】
組換えヒト成長ホルモンは組換えDNA技術によって生産され、そのアミノ酸配列は天然のヒト成長ホルモンと全く同じで、191個のアミノ酸からなるポリペプチド鎖であり、53位と165位及び182位と189位の間に2対のジスルフィド結合を形成する。成長ホルモン分子の表面には、それぞれ結合サイト1と結合サイト2の2つの受容体結合サイトが存在し、血液循環中の成長ホルモンは目的の組織に到達した後、まず細胞膜上の1つの成長ホルモン受容体と結合し、それから、もう1つの成長ホルモン受容体と結合して、受容体ダイマー複合体(1つの成長ホルモン分子が2つの成長ホルモン受容体と結合する)を形成し、下流のJAK2信号経路を活性化し、これによって成長促進及びその他の機能作用を発揮する。
【0030】
下垂体由来のヒト成長ホルモンから組換えヒト成長ホルモン、さらに長寿命組換えヒト成長ホルモンまで、その発展は複数の異なる段階を経た。第1世代の成長ホルモンは下垂体から抽出した下垂体由来の成長ホルモンであり、その由来は制限され、純度が低く、ウイルスに汚染されやすく、長期の使用はウイルス感染リスクがある。第2世代の成長ホルモンはGenentechがE.coli封入体技術を用いて開発した192個のアミノ酸を含む組換えヒト成長ホルモンであり、タンパク質のN末端には開始メチオニンが含まれているため、抗体が生じやすく、長期的な使用は成長ホルモンの治療作用を大幅に低下させる。また、その製剤の粉針の形のため、調製の過程で凍結乾燥する必要があり、容易に凝集体を形成し、体内の成長促進作用に影響を及ぼす。
【0031】
近年の成長ホルモンは微小球、ヒアルロン酸、PEG修飾等の長寿命製剤技術によって製造された長寿命組換えヒト成長ホルモン水針である。長寿命化の実現は、毎日投与するのではなく、週に1回投与することで、患者コンプライアンスを高める。製剤の水針の形も、粉針の悪い欠点を克服する。しかし、これらの製剤はいずれも新しい高分子化合物を導入しており、外因性高分子化合物の長期使用は、体内抗体の生成を引き起こしたり、または免疫原性などの副作用を引き起こしたりして、体内の薬効を低下させる。
【0032】
国内で発売された長寿命成長ホルモンは主にPEG化によってその半減期を延長し、長寿命の目的を達成する。しかし、PEG化された組換えヒト成長ホルモンを成長ホルモン欠乏症にかかった小児に使用した場合、患児の体内のインスリン様成長因子-1(IGF-1)レベルは正常レベルに回復できなかったと報告されている。また、臨床前動物試験の過程で試験動物にPEG化されたタンパク質薬物を繰り返して投与すると、脂肪空胞病変を引き起こすことがわかった。
【0033】
ファイザー社のSomatrogonは、新しい分子実体であり、天然のヒト成長ホルモン配列のC末端とN末端にそれぞれ2個と1個のヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)βサブユニット由来のC末端ペプチド(CTP)を融合させ、その半減期を延長させ、体内の長寿命化を実現する。Novo NordiskのSomapacitanは組換えヒト成長ホルモンの101番目のロイシンをシステイン(L101C)に突然変異し、この突然変異システインに脂肪酸側鎖を連結させることで、体内の長寿命化を実現し、化学合成および/または化学修飾技術で成長ホルモンの長寿命化を実現すると同時に、体内に導入されて高分子生成物を合成し、または脂肪酸鎖を合成し、長期的な使用は体に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0034】
また、発明者は、従来の発現系の多くは哺乳動物細胞であり、その発現グリコシル化ベクターは成長ホルモンの長寿命化を実現し、成長ホルモンとその受容体の作用の特殊性から、成長ホルモン-受容体ダイマー複合体を形成する必要があり、しかも、1つの成長ホルモン分子に2つの受容体分子を結合しなければ、体内生物学的効果を正常に発揮できず、異なる成長ホルモン-受容体ダイマー複合体構造が成長ホルモンの体内生物学的効果の程度に影響を及ぼし、成長ホルモンとその受容体が結合する立体障害が生じ、薬効が低下することを発見した。哺乳動物細胞はFc融合タンパク質やポリペプチドの調製に実用性を実現し、臨床治療の薬物に対する需要を大きく満たすが、その特点は調製プロセスが煩雑で、調製周期が長く、調製コストが高く、プロセスの拡大が困難であり、糖型の差異や電荷異性体が生じやすいことである。これにより、発明者は、大腸菌などの微生物発現系、例えば原核発現系または下等真核発現系を提案し、大腸菌は発現産物が均一で、無グリコシル化修飾で、糖型の差異及び電荷異性体が存在しなく、且つ発酵周期が短く、コストが低い顕著な利点を有するため、特に無グリコシル化に求められる組換えタンパク質の生産に特に適用する。
【0035】
発明者は、鋭意研究した結果、従来の成長ホルモンと比較して、純度がより高く、薬効がより良く、副作用がより低く、より安全で、品質がより容易に制御され、コストがより低い天然担体を含む長寿命成長ホルモン製剤を提案し、同時に、成長ホルモンとその受容体の作用原理に合わせて構造設計を行い、大腸菌発現システムを用いて長寿命成長ホルモンを生産し、患者のこの製品に対する需要を満たす。これにより、天然担体を用いてその長寿命化を実現し、遺伝子工学的発現を完全に実現でき、調製コストが顕著に削減された新しい長寿命成長ホルモン調製技術を採用することができ、調製された成長ホルモンは純度が高く、活性(力価)が高く、薬効がよいという特点があり、他の長寿命成長ホルモンに比べ、特に高活性、低コストという顕著な優位性がある。
【0036】
これにより、第1の態様では、本発明は、成長ホルモン融合タンパク質を提供し、本発明の実施例によれば、第1の定常領域Fcセグメントと第2の定常領域Fcセグメントを有する二本鎖構造体と、前記二本鎖構造体の前記第1の定常領域Fcセグメントに連結される成長ホルモンと、を含み、前記成長ホルモンのN末端にメチオニンを有さなく、前記成長ホルモン融合タンパク質は非哺乳細胞の発現系によって発現される。
【0037】
本発明の実施例によれば、成長ホルモンと二本鎖構造体を融合することによって、成長ホルモンの体内の半減期を延長することができ、また、各二本鎖構造体に1つの成長ホルモンしか担持しないため、成長ホルモンの活性サイトが立体障害の影響を受けないため、その活性がより強くなり、また成長ホルモンのN末端にメチオニンを有さないため、安全性がより高い。
【0038】
ここでの二本鎖構造体は第1の単量体と第2の単量体を含み、第1の単量体は第1の定常領域Fcセグメントを有し、第2の単量体は第2の定常領域Fcセグメントを有し、第1の定常領域Fcセグメントに成長ホルモンが連結され、具体的に、第1の単量体の構造はhGH-linker-CH2-CH3であり、第2の単量体の構造はCH2-CH3であり、且つ第1の単量体と第2の単量体とはジスルフィド結合によって連結される。本発明による二本鎖構造体では、定常領域FcセグメントにはヒトIgG4 Fcを採用し、天然のヒトIgG4 FcのCH2、CH3の部分配列に対してアミノ酸配列の突然変異を行い、独立して設計された剛性Linker配列によって第1の単量体と第2の単量体を形成する。本発明における二本鎖構造体のFcセグメントにヒトIgG4 FcのCH2、CH3の部分配列を採用するのは、IgG4 Fcが体内補体を介したCDC効果とNK細胞を介したADCC効果を起こさないことを考慮したためであり、天然のヒトIgG4 Fcヒンジ領域をLinkerとして採用せず、独自設計のLinkerを採用したのは、IgG4分子が体内でFab-arm交換の過程を経る可能性を回避し、IgG4 Fcによる成長ホルモンの立体障害を回避するためである。
【0039】
本発明の実施例によれば、前記成長ホルモン融合タンパク質はグリコシル化修飾を受けていない。これにより、糖型の差異による免疫原性リスクを回避することができ、また、成長ホルモン融合タンパク質はグリコシル化修飾を受けていないため、調製時に、糖型の差異による品質制御が困難であることを考慮する必要がなく、調製や品質制御の面でより有利である。
【0040】
グリコシル化修飾は主に哺乳細胞が発現するタンパク質で発生し、大腸菌自体はグリコシル化作用がないため、当然、その発現するタンパク質はグリコシル化修飾がない。正しいグリコシル化修飾タンパク質は人体の天然タンパク質に近いが、CHO細胞などの哺乳細胞、中国ハムスター卵巣細胞(Chinese Hamster Ovary)の略称は、非ヒト哺乳動物細胞系であり、発現糖型は人体内の天然タンパク質糖型と異なり、免疫反応などの副作用を引き起こす可能性がある。大腸菌を用いてグリコシル化修飾を受けていないタンパク質を発現させることにより、グリコシル化による副反応を避けることができる。グリコシル化を受けていないFcと成長ホルモンとの融合を採用することにより、成長ホルモンの体内の長寿命化を良く実現し、成長ホルモン活性にも影響を与えず、グリコシル化によって上記作用を実現する必要がない。
【0041】
本発明の実施例によれば、前記非哺乳細胞発現系は原核発現系と下等真核発現系のいずれか一方を少なくとも含み、好ましくは、前記非哺乳細胞発現系は大腸菌発現系と酵母発現系のいずれか一方を少なくとも含む。例えば、前記非哺乳細胞発現系は原核発現系と下等真核発現系の少なくとも1つを含む。好ましくは、前記非哺乳細胞発現系は大腸菌発現系、酵母発現系の少なくとも1つを少なくとも含む。本発明の実施例によれば、原核発現系と下等真核発現系の少なくとも1つを採用することにより、その投資が相対的に少なく、培養コストが低く、操作しやすく、培養時間が短く且つ高密度発酵の発現系を実現でき、例えば大腸菌、その品質の均一さがより良く、より容易に制御され、且つ発明者が、意外にも原核発現系と下等真核発現系の少なくとも1つは目的のタンパク質のグリコシル化が発生しなく、糖型の差異による免疫原性リスク、及び無糖型の差異及び電荷異性体による品質制御が困難になる可能性がある問題を回避し、同時に、これらの発現系は無動物源性培地を採用し、その安全性がより高い。
【0042】
本発明の実施例によれば、前記成長ホルモンは以下のアミノ酸配列の1つを有し、
(a)SEQ ID NO:1で示されるアミノ酸配列、
FPTIPLSRLFDNAMLRAHRLHQLAFDTYQEFEEAYIPKEQKYSFLQNPQTSLCFSESIPTPSNREETQQKSNLELLRISLLLIQSWLEPVQFLRSVFANSLVYGASDSNVYDLLKDLEEGIQTLMGRLEDGSPRTGQIFKQTYSKFDTNSHNDDALLKNYGLLYCFRKDMDKVETFLRIVQXRSVEGSXGF、
はG、AまたはSを示し、
はG、A、S、Cまたは欠落を示し、
はG、A、S、Cまたは欠落を示し、
または
(b)は(a)と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%の同一性のアミノ酸配列を有し、例えば、(a)のアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%の同一性のアミノ酸配列を有し、前提として、XはG、AまたはSを示し、XはG、A、S、Cまたは欠落を示し、且つXはG、A、S、Cまたは欠落を示す。
【0043】
野生型成長ホルモンのN末端にメチオニンが含まれるため、長期的に使用すると、体内で抗体が生じ、治療効果に影響を及ぼす。N末端にMを含まない成長ホルモンを形成するために、N末端にアミノ酸X(G、AまたはS)を加え、このように、発現後、タンパク質のN末端にMがないことが言うまでもない。N末端に新しいアミノ酸を加えないと、配列に示すような1番目のアミノ酸がFである場合、発現後にN末端にまたMが存在する。
【0044】
本発明において、SEQ ID NO:1で示されるアミノ酸配列の中でXはG、AまたはSを示す前提で、当業者は、XとX非成長ホルモンの活性中心により、X、Xはそれぞれ独立してアミノ酸の置換及び欠落を行うことができ、例えばX、Xはそれぞれ独立してG、A、S、Cまたは欠落を示すことができることを理解することができる。XとX位置でのアミノ酸の置換または欠落は、全体的な成長ホルモン活性に影響を与えないが、一方で、体外で組み立てる過程でジスルフィド結合ミスマッチを回避し、不正確な配座を形成するタンパク質、成長ホルモンの体内活性に影響を与え、及び誤った配座タンパク質の形成に起因する可能性のある体内免疫反応を避ける。
【0045】
本発明によるSEQ ID NO:1で示されるアミノ酸配列のN末端にメチオニンが含まず、N末端メチオアンモニアMによる副作用を起こさない。且つ天然のヒト成長ホルモンよりも、N末端Xアミノ酸は成長ホルモンの空間的構造及び生物活性に影響を与えない。
【0046】
本発明の実施例によれば、一端が前記成長ホルモンに連結され、他端が前記二本鎖構造体に連結される連結ペプチドをさらに含み、前記連結ペプチドは少なくとも1つの配列単位GXaaPXaaを含み、各前記配列単位の中で、各Xaaはそれぞれ独立してA、E及びKのいずれかを示し、各Xaaはそれぞれ独立してQとNのいずれかを示す。本発明の実施例によれば、各前記配列単位の中で、各Xaaはそれぞれ独立してA、E及びKの少なくとも1つを示し、各Xaaはそれぞれ独立してQとNの少なくとも1つを示す。
【0047】
本発明の実施例によれば、前記連結ペプチドは前記配列単位を1~20個、好ましくは1~5個、より好ましくは3個含む。本発明の実施例によれば、前記成長ホルモンのC末端は前記連結ペプチドに連結される。従来の連結ペプチドと比べて、本発明の実施例による連結ペプチドはGおよび/またはAおよび/またはPおよび/またはQおよび/またはKおよび/またはEおよび/またはNアミノ酸を豊富に含む小さなペプチド単位及びその単位の直列体であり、このような連結ペプチドは柔軟性がなく、より剛性のある構造であり、成長ホルモン活性サイトへの干渉を回避し、これにより、最終的に得られた融合タンパク質の生物活性をより向上することができる。
【0048】
発明者は、前記連結ペプチドは可撓性ジョイントである場合、通常の(G)x構造のように、mは1-4、nは0-4、xは1-20の間の整数であり、該構造は柔軟性が高く、該構造と融合した2つのタンパク質空間的構造に「遮蔽」が起こりやすく、立体障害が生じ、これにより、目的のタンパク質活性に影響を及ぼすことを発見した。一方で、本発明における成長ホルモンの活性サイトはC端に近い領域に存在し、Linkerの設計が悪いと、FcのN末端が成長ホルモンのC端に近い領域の活性サイトに影響を及ぼし、立体障害を形成する。剛性構造Linkerは剛性を持っているため、融合した2つのタンパク質は、それぞれ独立して自分の空間配座を保つことができ、空間の「遮蔽」現象が生じない。そこで、本発明では、特定の剛性ジョイントを採用し、FcのN末端が成長ホルモンのC端に近い領域の活性サイトに与える影響を避けることができる。
【0049】
成長ホルモン活性サイトへの干渉の原因は以下の通りである。(1)linkerの長さ。linkerが長いほど、linker自体及びFcの両方は成長ホルモンの活性サイトに影響を及ぼす可能性があり、特に本発明における成長ホルモンの1つの活性サイトがC端に近い領域にあり、その後にlinkerであり、その後に融合した他のタンパク質(Fcセグメント)であり、空間的構造が近く、影響を及ぼす可能性がある。Linkerも短くしてはいけなく、そうでないと、立体障害が発生する。発明者は、本発明の上記長さのlinkerを採用すると、成長ホルモン活性サイトに干渉を与えなく、成長ホルモンの活性に影響を与えないことを発見した。(2)linkerの構造。発明者は、linker構造は柔軟性が強すぎて、融合した2つのタンパク質が空間で「揺れ」やすく、互いにそれぞれの配座に影響を与え、または立体障害を形成し、タンパク質とその受容体との結合に影響を与え、タンパク質の体内生物学作用(本発明はhGH/GHR受容体複合体を形成し、下流へシグナル伝達を行い、体内のIGF-1レベルの変化を引き起こし、成長を促進する)に影響を与えるため、本発明は剛性Linkerを選択することにより、Linker前後の2つのタンパク質の空間的位置を「ほぼ固定」することができ、Linker前後の2つのタンパク質の空間的構造がそれぞれ独立して存在し、互いの配座に影響を与えたり、立体障害を形成したりしなく、成長ホルモンとその受容体の結合を阻止したり、及び体内生物学的効果の発揮に影響を与えたりしないことを発見した。
【0050】
本発明の実施例によれば、前記第1の定常領域Fcセグメントと前記第2の定常領域Fcセグメントは異なるアミノ酸配列を有する。これにより、融合タンパク質がホモダイマーを形成することを避ける。本発明の実施例によれば、前記第1の定常領域Fcセグメントと前記第2の定常領域Fcセグメントは体外でイソダイマーを形成するのに適している。本発明の実施例によれば、前記第1の定常領域Fcセグメントと前記第2の定常領域Fcセグメントはそれぞれ独立してSEQ ID NO:2で示されるアミノ酸配列:SKYGPPXPPXPAPXAXGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFXSTYRVVSVLTVLHQDWLXGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLX10CX11VKGFYPSDIAVEWESX12GQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLX13SRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGKを有する。
ここで、
はR、K、D、EまたはCを示し、
はR、K、D、EまたはCを示し、
はR、K、D、Eまたは欠落を示し、
はA、R、K、D、Eまたは欠落を示し、
はD、E、G、QまたはNを示し、
はD、E、G、QまたはNを示し、
10はG、SまたはWを示し、
11はA、G、PまたはLを示し、
12はD、E、G、QまたはNを示し、
13はI、P、VまたはYを示す。
【0051】
本発明の実施例によれば、X、X、X及びXのうちの少なくとも1つはKまたはEまたはCである。
【0052】
本発明の実施例によれば、前記第1の定常領域Fcセグメントでは、
はCを示し、
はCを示し、
はKを示し、
はEを示し、
はNを示し、
はNを示し、
10はWを示し、
11はLを示し、
12はNを示し、
13はYを示す。
【0053】
本発明の実施例によれば、前記第2の定常領域Fcセグメントでは、
はCを示し、
はCを示し、
はEを示し、
はKを示し、
はQを示し、
はQを示し、
10はSを示し、
11はAを示し、
12はQを示し、
13はVを示す。
【0054】
これにより、融合タンパク質が体外でイソダイマーを形成する効率を更に向上させ、ホモダイマーの形成を避け、生産効率を向上させ、生産コストを削減させる。
【0055】
本発明の実施例によれば、本発明はIgG4 Fcを開始配列として用いるのは、IgG4分子が体内補体を介したCDC効果とNK細胞を介したADCC効果を持たないため、IgG機能効果による成長ホルモン受容体細胞への攻撃を回避し、安全性があると同時に、Fcによって長寿命化を実現できるからである。
【0056】
本発明の実施例によれば、IgG4 Fcをオリジナル配列として用い、本発明の発明者は一連の改造措置によって、Fcの変異体を取得し、意外にもホモダイマーの形成を効果的に回避できることを発見した。発明者の分析の結果、改造後のFcセグメントの電荷分布はイソダイマーの形成に寄与すると同時に、構造もより安定であり、製剤の長期保存中の多量体の形成(より安定である)を効果的に回避でき、且つ改造後のFcセグメントの三次元構造もイソダイマーの形成に有利であり、目的分子中の第1の変異体定常領域Fcと第2の変異体定常領域Fcとの安定した結合を実現する。また、改造後のFcセグメントでは、タンパク質の翻訳後修飾を避けるため、目的サイトのアミノ酸突然変異を行った。翻訳後修飾(例えば脱アミド化、酸化、異性化等)はタンパク質発現後のよく見られる修飾過程であり、タンパク質とポリペプチド系薬物に普遍的に存在し、タンパク質等の生物製品の品質に深刻な影響を及ぼし、予測しにくい薬物の臨床副作用を引き起こす。その中で、脱アミド化は最もよく見られるタンパク質翻訳後修飾形式である。目的分子タンパク質の翻訳後修飾、特に脱アミド化の発生を避けるために、本発明の実施例によれば、発明者はHPLC液相図によって本発明の融合タンパク質に修飾体の発生がないことを証明する。
【0057】
本発明の実施例によれば、本発明の融合タンパク質は天然のhGH/GHR作用メカニズムを利用して、体内のより有効な作用、より低い投与量を実現することができる。体内で成長ホルモンとその受容体が結合するには、まず、成長ホルモンサイト1との受容体が結合して、成長ホルモン/受容体複合体を形成し、受容体複合体がさらに別の成長ホルモン受容体と結合して、成長ホルモン/受容体ダイマー複合体を形成し、さらに下流のJAK2信号経路を活性化して、成長を促進し、他の機能作用を発揮する。成長ホルモン/受容体ダイマー複合体の形成は、体内の作用を発揮する鍵である。本発明の実施例による融合タンパク質は成長ホルモン-受容体(hGH/GHR)の結合過程において生じる可能性がある立体障害効果を十分に考慮しており、長寿命担体(Fc)が生じる可能性がある立体障害、成長ホルモン自体及び連結ペプチドが生じる可能性がある立体障害を含む。本発明の実施例によれば、融合タンパク質構造の担体分子、連結ペプチド及び効果分子はいずれも立体障害効果が生じる可能性があり、効果分子効果機能の正常な発揮を及ぼす可能性があり、その中で、立体障害が生じる可能性がある主な影響要素の一つである連結ペプチド配列は、効果分子の受容体結合領域及び位置と関連し、融合タンパク質構造の異なる分子(担体と効果分子)が互いに影響を与えず、長寿命を実現すると同時に、分子効果が影響(長寿命、有効)を受けず、融合分子間の立体障害を効果的に低下するために、成長ホルモン分子の受容体結合サイトを十分に露出し、長寿命を実現すると同時に、体内生物活性(効果)を最大化にする。
【0058】
本発明の実施例によれば、上記融合タンパク質は原核細胞や下等真核細胞などの非哺乳動物細胞を用いる微生物発現系である。これにより、品質を制御しやすくなり、同時に、調製コストが大幅に低くなる。原核発現系発現産物は目的タンパク質のグリコシル化が発生しなく、糖型の差異による免疫原性リスク、及び無糖型の差異及び電荷異性体による品質制御が困難になる可能性がある問題を回避し、同時に、原核系の培養には無動物源性培地を採用し、その安全性がより高く、及び低コスト調製の優位として周知である。
【0059】
本発明の実施例によれば、体外細胞レベルの実験により、本発明の高活性組換え長寿命ヒト成長ホルモン融合タンパク質は体外結合活性及び生物学的活性が、販売されている長寿命ヒト成長ホルモンより顕著に高いことが示された。動物の体内試験によると、本発明の高活性組換え長寿命ヒト成長ホルモン融合タンパク質は体内薬効が販売されている長寿命ヒト成長ホルモンより顕著に高く、良好な体内PKレベルを有することが示された。成長促進試験によると、普通のヒト成長ホルモン及び販売されている長寿命ヒト成長ホルモンよりも、本発明の組換えヒト成長ホルモン融合タンパク質の成長促進作用が顕著であることが示された。また、体外FcRn結合実験によると、活性は人体の天然IgG4 Fc効果と同じで、その体内でより長い半減期を持つ可能性があり、1週またはそれ以上の時間に1回投与することを実現でき、投与頻度を大幅に減少させ、患者のコンプライアンスを増加させることができることが示された。体外細胞検査による高活性組換え長寿命ヒト成長ホルモン融合タンパク質とGHR結合活性は、両方が設計の期待通りの結合特性を有し、高活性組換え長寿命ヒト成長ホルモン融合タンパク質は小さな立体障害を有することが示された。
【0060】
第2の態様では、本発明は核酸分子をさらに提供し、本発明の実施例によれば、前記核酸分子は第1の態様に記載の成長ホルモン融合タンパク質をコードする。該核酸分子を利用することで上記融合タンパク質を発現するために効果的に用いられることができ、特に原核生物や下等真核生物の発現系では上記成長ホルモンの単量体を効果的に発現することができ、さらに体外で組み立てることで最終的な成長ホルモン融合タンパク質を形成することができる。なお、ここでの核酸分子は上記融合タンパク質のすべての配列をコードする必要がなく、2種類の核酸分子を含んでもよく、それぞれ2つの単量体をコードし、さらに体外で組み立てることでイソダイマーを取得すればよい。例えば、前記第1の単量体は第1の定常領域Fcセグメントを有し、前記第2の単量体は第2の定常領域Fcセグメントを有し、前記第1の定常領域Fcセグメントに成長ホルモンが連結される。
【0061】
第3の態様では、本発明は発現ベクターを更に提供し、前記発現ベクターは第2の態様に記載の核酸分子を担持する。該発現ベクターを利用することで、細胞内で上記融合タンパク質を効果的に発現することができ、特に原核生物や下等真核生物の発現系では上記成長ホルモンの単量体を効果的に発現することができ、さらに体外で組み立てることで最終的な成長ホルモン融合タンパク質を形成することができる。
【0062】
第4の態様では、本発明は組換え細胞を更に提供し、本発明の実施例によれば、該組換え細胞は、前述の核酸分子、または前述の発現ベクターを含む。
【0063】
第5の態様では、本発明は第1の態様に記載の成長ホルモン融合タンパク質の調製方法を更に提供し、二本鎖構造体の第1の単量体と第2の単量体を取得するステップであって、前記第1の単量体は第1の定常領域Fcセグメントを有し、前記第2の単量体は第2の定常領域Fcセグメントを有し、前記第1の定常領域Fcセグメントに成長ホルモンが連結されるステップと、前記第1の単量体と前記第2の単量体をイソダイマーにして、前記成長ホルモン融合タンパク質を取得するステップと、を含む。
【0064】
これにより、前述の成長ホルモン融合タンパク質を効果的に調製することができる。
【0065】
本発明の実施例は、非哺乳動物細胞を用いて上記単量体の発現を行うことができ、哺乳動物細胞発現系例えばCHOに比べて、CHO細胞は長寿命成長ホルモンを発現し、ホモダイマー産物を発現すると、発現タンパク質分子が均一で、品質が良く、純度が高い。しかし、イソダイマー産物を発現すると、大きな問題があり、その中で最も大きな問題は、発現産物が不均一で、目的産物の純度が低く、最も主な不純物であるイソダイマーを形成する2つの単量体からなるそれぞれのホモダイマーは、目的イソダイマーと2つの単量体のホモダイマーの性質が近いため、発現産物から除去することが困難であることである。またCHO発現系を採用すると、培地成分が複雑であり、培養コストが高く、ウイルス汚染リスクが大きく、培養時間が長く、制御過程が複雑であり、染菌リスクが大きく、しかも、CHO細胞反応器は原核細胞反応器よりも投資が莫大であり、または使い捨て生物反応器を採用すると、コストが高く、投資が大きい。
【0066】
本発明の実施例によれば、投資が相対的に少なく、培養コストが低く、操作しやすく、培養時間が短く、且つ高密度発酵を実現できる微生物発現系、例えば大腸菌発現系(コストがより低く、品質の均一さがより良く、制御しやすくなる)を採用し、合成した高分子化学物質を長寿命担体として使用せず、且つ体外カップリングも不要である。体外で組み立てることによって、タンパク質の精製過程でイソダイマーに自動的に組み立てられるが、且つ発明者は意外にもイソダイマーの組み立て過程で、CHO細胞の発現過程で発生するイソダイマーを構成する2つの単量体からなるそれぞれのホモダイマーがないことを発見した。本発明の第1の単量体と第2の単量体の体外の組み立ては当該技術分野で知られている体外の組み立て方法によって実現されてもよく、または本発明の後述する具体的な実施例に記載する方法によって実現されてもよい。大腸菌を培養した後、発現を誘導し、細胞を破砕することにより、封入体を収穫する。簡単な精製により、高純度のイソダイマー構造の目的産物を得ることができる。
【0067】
第6の態様では、本発明は第1の態様に記載の成長ホルモン融合タンパク質を含む薬物組成物を更に提供する。
【0068】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記薬物組成物は、第1の態様に記載の成長ホルモン融合タンパク質、及び薬学的に許容できる賦形剤を含む。
【0069】
第7の態様では、本発明は、前述成長ホルモン融合タンパク質、前述核酸分子、前述発現ベクター、前述組換え細胞、前述融合タンパク質の調製方法により調製された成長ホルモン融合タンパク質、または前述薬物組成物の薬物調製における使用を更に提供し、前記薬物は、成長ホルモン異常に関連する疾患を治療または予防するために使用される。
【0070】
第8の態様では、本発明は、被験者における成長ホルモン異常に関連する疾患を治療または予防するための方法を更に提供し、前記被験者に前述成長ホルモン融合タンパク質、前述核酸分子、前述発現ベクター、前述組換え細胞、前述融合タンパク質の調製方法により調製された成長ホルモン融合タンパク質、または前述薬物組成物を投与するステップを含む。
【0071】
第9の態様では、本発明は、成長ホルモン異常に関連する疾患を治療または予防するための使用の前述成長ホルモン融合タンパク質、前述核酸分子、前述発現ベクター、前述組換え細胞、前述融合タンパク質の調製方法により調製された成長ホルモン融合タンパク質、または前述薬物組成物を更に提供する。
【0072】
本発明の実施例によれば、前記成長ホルモン異常に関連する疾患は、小児成長ホルモン欠乏症、ターナー症候群、慢性腎不全による小人症、特発性小人症、成人成長ホルモン欠乏、短腸症候群、FGFR3突然変異の軟骨発育不全から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0073】
本発明において、特に説明しない限り、「rhGH」、「成長ホルモン」、「hGH」、「ヒト成長ホルモン」という用語は、交換可能に使用される。
【0074】
以下、実施例を組み合わせて本発明の手段を解釈する。当業者は、以下の実施例が本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではないことを理解することができる。実施例に具体的な技術または条件が示されない場合、当該分野の文献に記載されている技術または条件に従って、または製品の明細書に従って実行する必要がある。用いられる試薬または機器にメーカーが示されない場合、市販によって購入できる従来の製品である。
【0075】
以下、実施例によって本発明の具体的なステップを詳細に説明するが、実施例によって制限されない。
【0076】
実施例1:rhGH-Fc/Fc発現ベクターの設計及び構築
【0077】
1.1 目的遺伝子設計及び合成
目的タンパク質アミノ酸配列に従って、目的遺伝子ヌクレオチド配列を設計し、大腸菌嗜好コドンに基づいて最適化し、そのヌクレオチド配列、例えばSEQ ID NO:3(第1の変異体)、SEQ ID NO:4(第2の変異体)を決定する。設計配列は宝生物工学(大連)有限公司に合成を依頼する。
【0078】
SEQ ID NO:3で示されるヌクレオチド配列は以下の通りである。
TCTAGAAATAATTTTGTTTAACTTTAAGAAGGAGATATACCATGAGCTTCCCGACCATCCCGCTGTCTCGTCTGTTCGACAACGCTATGCTGCGTGCTCACCGTCTGCACCAGCTGGCGTTCGACACCTACCAGGAATTTGAAGAAGCTTACATCCCGAAAGAACAGAAATACTCTTTCCTGCAGAACCCGCAGACCTCTCTGTGCTTCTCTGAATCTATCCCGACCCCGTCTAACCGTGAAGAAACCCAGCAGAAATCTAACCTGGAACTGCTGCGTATCTCTCTGCTGCTGATCCAGTCTTGGCTGGAACCGGTTCAGTTCCTGCGTTCTGTTTTCGCTAACTCTCTGGTTTACGGTGCTTCTGACTCTAACGTTTACGACCTGCTGAAAGACCTGGAAGAAGGTATCCAGACCCTGATGGGTCGTCTGGAAGACGGTTCTCCGCGTACCGGTCAGATCTTCAAACAGACCTACTCTAAATTCGACACCAACTCTCACAACGACGACGCTCTGCTGAAAAACTACGGTCTGCTGTACTGCTTCCGTAAAGACATGGACAAAGTTGAAACCTTCCTGCGTATCGTTCAGTGCCGTTCTGTTGAAGGTTCTTGCGGTTTCGGAGCACCTCAGGGTGCTCCACAAGGCGCGCCGCAAAGCAAATACGGCCCGCCATGTCCACCGTGTCCAGCACCGAAGGCTGAAGGCGGTCCGTCTGTTTTTCTGTTTCCGCCGAAACCGAAAGACACCCTGATGATTAGTCGTACCCCGGAAGTTACCTGCGTTGTTGTTGACGTCAGCCAGGAAGATCCGGAAGTTCAGTTCAACTGGTACGTTGACGGCGTTGAAGTTCATAACGCGAAAACCAAACCGCGCGAAGAACAGTTCAACAGTACCTATCGCGTTGTTAGCGTACTGACCGTTCTGCATCAGGATTGGCTGAACGGCAAAGAGTACAAATGCAAAGTCAGCAACAAAGGCCTGCCGAGCAGCATTGAAAAAACCATCAGCAAAGCGAAAGGCCAACCGCGCGAACCGCAAGTTTATACCCTGCCGCCGTCTCAGGAAGAAATGACCAAAAACCAGGTCAGCCTGTGGTGTCTGGTTAAAGGCTTCTACCCGAGCGATATCGCAGTTGAGTGGGAAAGTAACGGTCAACCGGAGAACAACTATAAAACCACCCCGCCGGTTCTGGATAGCGACGGTAGCTTTTTCCTGTACAGTCGTCTGACCGTTGATAAAAGCCGTTGGCAGGAAGGCAACGTTTTTAGCTGTAGCGTCATGCACGAAGCCCTGCATAACCATTACACCCAGAAAAGCCTGAGCCTGAGTCTGGGTAAATAATAAGGATCC
SEQ ID NO:4で示されるヌクレオチド配列は以下の通りである。
TCTAGAAATAATTTTGTTTAACTTTAAGAAGGAGATATACCATGTCTAAATACGGCCCGCCATGTCCACCGTGTCCAGCACCGGAGGCTAAAGGTGGTCCGAGCGTGTTCCTGTTTCCACCGAAACCGAAAGATACCCTGATGATTTCTCGTACTCCGGAGGTAACTTGCGTAGTAGTTGATGTGAGCCAGGAAGATCCGGAGGTGCAGTTCAACTGGTATGTTGACGGTGTTGAGGTTCATAACGCCAAGACTAAACCACGTGAAGAACAGTTCCAAAGCACCTACCGTGTGGTAAGCGTGCTGACCGTTCTGCACCAAGATTGGCTGCAAGGTAAGGAGTACAAATGTAAAGTAAGCAACAAAGGCCTGCCGAGCAGCATTGAGAAGACCATCTCTAAGGCTAAAGGTCAACCACGCGAGCCGCAGGTGTACACTCTGCCACCAAGCCAGGAAGAGATGACCAAGAATCAGGTGTCTCTGAGTTGTGCAGTTAAGGGTTTCTACCCGAGCGATATTGCGGTAGAATGGGAATCTCAAGGTCAGCCGGAGAACAACTATAAGACCACTCCACCAGTTCTGGATTCCGACGGCTCTTTCTTCCTGGTATCCCGTCTGACCGTTGACAAATCCCGTTGGCAGGAAGGCAACGTGTTCTCTTGTTCTGTTATGCACGAGGCGCTGCACAACCACTACACCCAGAAGTCTCTGTCCCTGAGCCTGGGTAAATAATAAGGATCC
SEQ ID NO:3(第1の変異体)がコードするアミノ酸配列はSEQ ID NO:5で示される。
SFPTIPLSRLFDNAMLRAHRLHQLAFDTYQEFEEAYIPKEQKYSFLQNPQTSLCFSESIPTPSNREETQQKSNLELLRISLLLIQSWLEPVQFLRSVFANSLVYGASDSNVYDLLKDLEEGIQTLMGRLEDGSPRTGQIFKQTYSKFDTNSHNDDALLKNYGLLYCFRKDMDKVETFLRIVQCRSVEGSCGFGAPQGAPQGAPQSKYGPPCPPCPAPKAEGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
SEQ ID NO:4(第2の変異体)がコードするアミノ酸配列はSEQ ID NO:6で示される。
SKYGPPCPPCPAPEAKGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFQSTYRVVSVLTVLHQDWLQGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESQGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
【0079】
1.2 発現ベクターの構築
目的遺伝子の両端にはそれぞれXbaIとBamHI酵素切断サイトがあり、それぞれXbaIとBamHI二酵素切断目的遺伝子配列及びpET-28a(+)担体を用いて、ガムを切断して回収し、酵素切断後の目的遺伝子断片とpET-28a(+)酵素切断後の長い断片を連結し、変換、スクリーニングし、目的遺伝子を発現する遺伝子工学菌を取得する。
【0080】
実施例2:rhGH-Fc/Fcタンパク質の発現及び精製
目的遺伝子工学菌をLB培地の入った薬剤瓶に投入して培養し、OD600が1.6-2.0に達するまで、5L発酵槽に移して培養し、開始培養体積が2.5Lで、培養温度が37℃で、攪拌回転数が600rpmであり、OD600が50に上昇するまで誘導を開始し、誘導剤がIPTGであり、濃度が0.5mMであり、誘導時間が4-6hである。
【0081】
発酵液の菌体の成長を鏡検査し、発現状況を観察した。10000rpm、4℃で遠心分離により菌体を収集する。
【0082】
菌体を収集して高圧ホモジナイザーで破砕し、破砕圧力が700-800Barであり、完全な細胞が存在しないのを鏡検査するまで少なくとも2つの循環を行う。遠心分離により封入体を収集する。
【0083】
体外の組み立て:まず、第1の変異体及び第2の変異体の封入体タンパク質を同じ8M尿素を含む封入体溶解Bufferにそれぞれ溶解し、すべてが溶解した後、両者が1:1の体積比で混合し、封入体溶解液を取得し、封入体溶解液を均一に混合した後に1:10-1:100の体積比で組み立て緩衝液に加え、一晩静置して放置する。その中で封入体溶解Bufferは以下の成分を含み、TrisまたはTris-HCl、濃度50-100mM、NaCl、濃度100-150 mM、アルギニン、濃度10-50 mM、EDTA、濃度5-20 mM、pH値6.0-8.0であり、上記組み立て緩衝液は以下の成分を含み、TrisまたはTris-HCl、濃度10-20mM、NaCl、濃度10-50 mM、アルギニン、濃度100-500 mM、GSSG、濃度10-20 mM、GSH、濃度0-5 mM、EDTA、濃度5-10 mM、Buffer pH値5.0-7.0である。
【0084】
タンパク質の精製:一晩静置して混合液を1.0Mの塩酸でpH値を3.0-3.5に調整し、protein Aクロマトグラフィーを行い、溶離液のpH値を6.0-7.0に調整し、それぞれ疎水クロマトグラフィー、陰イオンクロマトグラフィーを行い、精製後の目的タンパク質を得た。Protein Aクロマトグラフィー条件:平衡緩衝液:20 mM NaHPO、0.15 M NaCl、pH 7.0、洗脱緩衝液:0.1 M glycine、pH 3.0、中和緩衝液:1 M Tris、pH 8.5とする。疎水クロマトグラフィー条件は、平衡緩衝液:10-30 mM TrisまたはTris-HCl、0.5-1.0M NaCl、pH 6.0-7.0とする。洗脱緩衝液:10-30 mM TrisまたはTris-HCl、pH 6.0-7.0とする。陰イオンクロマトグラフィー条件:平衡緩衝液:10-30 mM TrisまたはTris-HCl、 pH 6.0-7.0とする。洗脱緩衝液:10-30 mM TrisまたはTris-HCl、0.5-1.0M NaCl、pH 6.0-7.0とする。
【0085】
実施例3:細胞生物学的活性に対するrhGH-Fc/Fcタンパク質における剛性ジョイントと柔軟性ジョイントの影響
【0086】
実施例1のSEQ ID NO:5における剛性ジョイント-(GAPQ)-を柔軟性ジョイント-(GGGGS)-に置き換え、実施例2と同様して柔軟性ジョイントを含む成長ホルモン融合タンパク質(サンプル名称GH(GGGGS))を取得し、実施例2で得られたrhGH-Fc/Fcタンパク質(サンプル名称GH(GAPQ))と生物学的活性を比較する。
【0087】
生物学的活性の検出過程:対数成長期のBAF3/GHR細胞を採取し、培養ボトル中の細胞懸濁液をピペットで50mlの遠心分離管に移り、1000rpmで5min遠心分離した後、上清液を除去し、2mlの分析培地で細胞を重懸濁して単細胞懸濁液を作製し、細胞懸濁液を15mlの分析培地の入った培養ボトル内に入れて均一に混ぜ、COインキュベーターに入れて24-36時間空腹にする。
【0088】
分析培地の成分は下記表1に示される。
【表1】
【0089】
空腹培養後のBAF3/GHR細胞を採取し、培養ボトル内の細胞懸濁液をピペットで50mlの遠心分離管に移り、1000rpmで5min遠心分離した後上清液を除去し、2mlの分析培地で細胞を重懸濁して単細胞懸濁液を作製する。10μlの単細胞懸濁液を10μlのトリパンブルー染色液に加え、細胞計数器または顕微鏡で計数する。
【0090】
分析培地で細胞密度を2.0±0.2×10 個/mlに調整し、50μl/ウェルで、96ウェルの細胞培養板のB-G行2-12列内に敷き、B-G行1列目のウェルごとに50μlの分析培地を加え、96ウェルの細胞培養板をCOインキュベーターに入れて1h培養する。
【0091】
サンプル処理:無菌水で供試品(サンプルGH(GGGGS)、サンプルGH(GAPQ))を濃度1mg/mlまで溶解する。供試品溶液の予備希釈:分析培地で供試品を濃度が100ng/mlの供試品溶液に希釈し、毎回の希釈倍数は100倍以下とする。供試品:1枚の透明な96ウェル板を希釈板として取り、希釈板にB12-G12(陽性対照)とB2-G2以外、各ウェルに100μlの分析培地を加える。希釈板のE2-G2ウェルに、それぞれ100ng/mlの供試品溶液を150μl加える。12チャンネルのマイクロピペットを用いて酵素プレート上で4倍希釈した。1列目(B2-G2)から50μLを吸引して、2列目に移り、20回混合した。次に、2列目から50μLを吸引して3列目に移り、20回混合した。B10-G10列まで酵素プレート全体上でこのステップを繰り返す。B10-G10列から50μLの溶液を吸引した後に除去する。
【0092】
供試品の添加:96ウェル細胞培養板で1h培養した後、12チャンネルのマイクロピペットを使用して、希釈板のB行からG行の各ウェルから50μlを細胞を含む96ウェル培養板の対応するウェル内に移る。移った後、96ウェル細胞培養板を30s軽く振って、次に、COインキュベーターの中で68-72h培養する。96ウェル細胞培養板での培養が完了した後に、各添加ウェルに10μlのAlamar-Blue検出液を添加し、COインキュベーターに入れて4時間培養し続ける。96ウェル板を酵素マーカーに入れ、励起光が544nmで、発射光が590nmで、検出する。
【0093】
生物学的活性の検出結果は下記表2に示される。
【0094】
【表2】
【0095】
上記表2の結果から、本発明の剛性ジョイントを有するrhGH-Fc/Fcタンパク質は、柔軟性ジョイントを含む成長ホルモン融合タンパク質よりも、EC50が小さく、生物学的活性が高いことが示された。発明者は、本発明による成長ホルモン融合タンパク質が、剛性ジョイントを利用して第1の単量体と二本鎖構造体を連結することで、タンパク質が自分の空間配座を保ち、構造「遮蔽」現象が発生しないことを発見した。本発明は剛性ジョイントを使用することで、成長ホルモンのC端に近い領域の活性サイトに対するFcのN末端の影響を回避することができ、これにより、成長ホルモンの細胞生物学的活性を更に向上させる。
【0096】
実施例4:rhGH-Fc/Fcタンパク質の細胞生物学的活性測定
【0097】
実施例3と同様な方法でJHM0202と市販対照品(ポリエチレングリコール組換えヒト成長ホルモン注射液)の細胞生物学的活性検出を行う。rhGH-Fc/Fcタンパク質及び市販対照品の細胞生物学的活性は表3(EC50:nM)に示される。
【0098】
【表3】
【0099】
表3中の1st、2nd、3rdとは、3回の生物学的活性の反復測定によって得られた結果である。
【0100】
上記データから分かるように、実施例2で精製して得られたrhGH-Fc/Fcタンパク質サンプル(JHM0202)は、市販対照品よりも小さいEC50値(平均値比1/2.98)を示した。JHM0202タンパク質はより良い体外細胞生物学的活性を有することが示された。
【0101】
実施例5:rhGH-Fc/Fcタンパク質とFcRnの結合活性
【0102】
rhGH-Fc/Fcタンパク質は成長ホルモンとIgG4 Fcの融合タンパク質であり、IgG4 FcはpH依存的にFc受容体(FcRn)と結合し、受容体を介した再循環メカニズムにより、成長ホルモン半減期を延長し、SPR技術でrhGH-Fc/Fcタンパク質とFcRnとの結合の親和力定数(KD)を検出する。
【0103】
脱塩カラムでFcRnサンプルを処理し、CM5チップを活性化し、rhGH-Fc/Fcタンパク質サンプルを6μg/mLに希釈して注入し、サンプルをカップリングし、チップを閉じる。分析物FcRnを46.875、93.75、187.5、375、750、1500、3000及び6000nMという8つの濃度に希釈し、注入して検出し、結合時間が60sであり、解離時間は90sである。実験データを平衡法でフィッティングして動力学データを得、結果を表4に示す。
【0104】
【表4】
【0105】
SPRの結果から、rhGH-Fc/Fcサンプル(JHM0202)、IgG4 Fc及びヒトFcRnはpH6.0条件下で親和力が同等であることが示され、rhGH-Fc/Fcタンパク質は天然ヒトIgG4 Fcと類似の体内半減期を有し、rhGHの体内長寿命化を実現できることが示される。
【0106】
実施例6:rhGH-Fc/Fcタンパク質の体内成長促進生物学的活性の測定
【0107】
実験において若齢の雄性SDラットを採用し、耳道法手術で下垂体を摘出し、それぞれ術後2、3週間で重量を量り、2~3週間の体重増加率が±10%以内で、外観が健康的なラットをモデリングに成功したモデルとした。体重増加率(±6.0%)に基づいて40匹のモデルを好適に選択し、体重と体重増加率でランダムに均一に4群に分け、それぞれモデル対照群(0nmol/kg)、JHM0202被験サンプル群(51nmol/kg、週に1回注射)、市販対照品群(ポリエチレングリコール組換えヒト成長ホルモン注射液、51 nmol/kg、週に1回注射)及び組換えヒト成長ホルモン注射液対照群(9 nmol/kg)(組換えヒト成長ホルモン注射液は普通の成長ホルモンであり、毎日に1回注射)、群ごとに10匹である。他の10匹の偽手術ラットを正常対照群(0nmol/kg)とした。
【0108】
グループ分けして皮下注射で投与し、組換えヒト成長ホルモン注射液対照群は毎日1回、連続4週間投与する。残りの実験群は1回/週、合計4回投与する。測定指標:毎日に体重を1回量り、体重増加率を計算する。実験の結果を図2に示す。体重増加率のデータ結果から、モデル対照群に比べて、各投与群は顕著な体重増加を示したことが分かった。JHM0202被験サンプル群と市販対照品群はいずれも偽手術対照群の正常ラットと同等の体重増加に達した。組換えヒト成長ホルモン注射液対照群と比較して、JHM0202被験サンプル群の28日目の体重増加率は組換えヒト成長ホルモン注射液対照群(p<0.05)より顕著に大きい。JHM0202被験サンプル群の28日の体重増加率は市販対照品群より高い。上記結果から、JHM0202被験サンプル群が良好な体内成長促進作用を示すことが分かった。
【0109】
実施例7:rhGH-Fc/Fcタンパク質体内薬物動態
【0110】
供試サンプルJHM0202と市販対照品(ポリエチレングリコール組換えヒト成長ホルモン注射液)のラットの体内での薬物動態。12匹の雄性ラットをランダムに2群に分け、供試品JHM0202群に6匹、市販対照品群に6匹であり、それぞれ皮下にJHM0202サンプル51nmol/kg及び市販対照品51nmol/kgを単回注射する。各群のサンプルの採集時間点は、投与前(0h)及び投与後2h、4h、8h、12h、24h、48h、72h、96h、120h、168h、216hである。
【0111】
ELISA法で生物サンプル中の血中濃度を検出し、WinNonLin8.0ソフトウェアを用いて非房室モデルに従って薬物動態パラメータを計算し、表5を参照する。
【0112】
【表5】
【0113】
ラットは単回皮下単回投与量JHM0202及び市販対照品を投与した後、両薬物の血中濃度はいずれも先に上昇した後に低下する傾向を示し、且つピーク到達時間の範囲が比較的に一致している。JHM0202は市販対照品よりも小さい体内消除定数Kel(1/3.6)及び長い体内消除半減期T1/2(3.78/1)を示し、JHM0202は市販対照品(1.25/1)よりもピーク到達血中濃度Cmaxが高く、JHM0202は市販対照品(1.28/1)よりも体内曝露の程度AUC0-tも高い。JHM0202は市販対照品よりもより良い体内薬物代謝特性を有し、より長い体内半減期を実現することができ、長寿命化作用がより顕著である。
【0114】
実施例8:ラットIGF-1レベルに対するrhGH-Fc/Fcタンパク質の影響
【0115】
ラットの眼窩静脈叢採血は約1mLであり、3800rpmで血漿を遠心分離して、Elisa法によりIGF-1の含有量を測定する。
【0116】
投与前、D3、D24で、モデル対照群ラットは正常対照群(p<0.05)よりも血漿IGF-1含有量が顕著に低い。モデル対照群、被験サンプル群、市販対照品群(ポリエチレングリコール組換えヒト成長ホルモン注射液)及び組換えヒト成長ホルモン注射液対照群(普通の成長ホルモン、毎日1回注射)は、ラット血漿IGF-1含有量が投与前の各群間で有意差はなかった。表6は各実験群におけるラット血漿IGF-1含有量の変化が示された。
【0117】
【表6】
備考:* p<0.05 モデル群との比較
【0118】
IGF-1基づく分析結果によると、投与前に、各投与群のラット血漿IGF-1含有量が正常対照群(p<0.05)より有意に低いが、各投与群間に有意差はなかった。3日目、JHM0202被験サンプル群及び市販対照品群のラット血漿IGF-1含有量は組換えヒト成長ホルモン注射液対照群(p<0.05)より有意に大きく、且つJHM0202被験サンプル群のラット血漿IGF-1含有量は市販対照品群より大きく、正常対照群よりも大きい。24日目、JHM0202被験サンプル群及び市販対照品群のラット血漿IGF-1含有量は組換えヒト成長ホルモン注射液対照群(p<0.05)より有意に大きく、JHM0202被験サンプル群のラット血漿IGF-1含有量は市販対照品群より大きく、同時に、正常対照群よりも大きい。JHM0202被験サンプル群が市販対照品群よりも良い体内刺激成長作用を有し、同時に、組換えヒト成長ホルモン注射液対照群よりも非常に良い体内刺激成長作用を有する。
【0119】
本明細書の説明では、「一実施例」、「いくつかの実施例」、「例」、「具体的な例」、または「いくつかの例」という参照用語等の説明は、該実施例または例を組み合わせて説明した具体的な特徴、構造、材料または特点が本発明の少なくとも1つの実施例または例に含まれる。本明細書では、上記用語の模式的な記述は、必ずしも同じ実施例または例を対象とする必要がない。また、説明された具体的な特徴、構造、材料または特点はいずれかまたは複数の実施例または例において適切な方法で組み合わせることができる。なお、互いに矛盾しない場合、当業者は本明細書に説明された異なる実施例または例及び異なる実施例または例の特徴を組み合わせることができる。
【0120】
以上で本発明の実施例を示して説明したが、上記実施例は例示的なものであり、本発明を制限するものとして理解されることができないことを理解でき、当業者は、本発明の範囲で上記実施例に対して変化、修正、置換及び変形を行うことができる。
【0121】
本願は、出願番号が202111658414.X、出願日が2021年12月30日である中国特許出願の優先権を主張し、上記中国特許出願の内容の全てを参照として援用することにより本願に取り入れる。
図1
図2
【配列表】
2024506227000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-03-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成長ホルモン融合タンパク質であって、
第1の定常領域Fcセグメントと第2の定常領域Fcセグメントを有する二本鎖構造体と、
前記二本鎖構造体の前記第1の定常領域Fcセグメントに連結される成長ホルモンと、
を含み、
前記成長ホルモンのN末端にメチオニンを有さなく、
前記成長ホルモン融合タンパク質は非哺乳細胞の発現系によって発現されることを特徴とする成長ホルモン融合タンパク質。
【請求項2】
前記成長ホルモン融合タンパク質はグリコシル化修飾を受けていないことを特徴とする請求項1に記載の成長ホルモン融合タンパク質。
【請求項3】
前記非哺乳細胞発現系は原核発現系と下等真核発現系のいずれかを少なくとも含み、好ましくは前記非哺乳細胞発現系は大腸菌発現系と酵母発現系のいずれかを少なくとも含む、ことを特徴とする請求項1または2に記載の成長ホルモン融合タンパク質。
【請求項4】
前記成長ホルモンは、
(a)、SEQ ID NO:1で示されるアミノ酸配列、
FPTIPLSRLFDNAMLRAHRLHQLAFDTYQEFEEAYIPKEQKYSFLQNPQTSLCFSESIPTPSNREETQQKSNLELLRISLLLIQSWLEPVQFLRSVFANSLVYGASDSNVYDLLKDLEEGIQTLMGRLEDGSPRTGQIFKQTYSKFDTNSHNDDALLKNYGLLYCFRKDMDKVETFLRIVQXRSVEGSXGF、
は、G、AまたはSを示し、
は、G、A、S、Cまたは欠落を示し、
は、G、A、S、Cまたは欠落を示し、
または
(b)、(a)と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列、
のいずれかを含む、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の成長ホルモン融合タンパク質。
【請求項5】
一端が前記成長ホルモンに連結され、他端が前記二本鎖構造体に連結され、少なくとも1つの配列単位GXaaPXaaを含む連結ペプチドをさらに含み、
各前記配列単位の中で、各Xaaはそれぞれ独立してA、E及びKのいずれかを示し、各Xaaはそれぞれ独立してQ及びNのいずれかを示す、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の成長ホルモン融合タンパク質。
【請求項6】
前記連結ペプチドは1~20個、好ましくは1~5個、より好ましくは3個の前記配列単位を含む、ことを特徴とする請求項5に記載の成長ホルモン融合タンパク質。
【請求項7】
前記成長ホルモンのC末端は前記連結ペプチドに連結される、ことを特徴とする請求項5または6に記載の成長ホルモン融合タンパク質。
【請求項8】
前記第1の定常領域Fcセグメントと前記第2の定常領域Fcセグメントは異なるアミノ酸配列を有する、ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の成長ホルモン融合タンパク質。
【請求項9】
前記第1の定常領域Fcセグメントと前記第2の定常領域Fcセグメントは体外でイソダイマーを形成するのに適する、ことを特徴とする請求項8に記載の成長ホルモン融合タンパク質。
【請求項10】
前記第1の定常領域Fcセグメントと前記第2の定常領域Fcセグメントはそれぞれ独立してSEQ ID NO:2で示されるアミノ酸配列:
SKYGPPXPPXPAPXAXGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFXSTYRVVSVLTVLHQDWLXGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLX10CX11VKGFYPSDIAVEWESX12GQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLX13SRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGKを有し、
はR、K、D、EまたはCを示し、
はR、K、D、EまたはCを示し、
はR、K、D、Eまたは欠落を示し、
はA、R、K、D、Eまたは欠落を示し、
はD、E、G、QまたはNを示し、
はD、E、G、QまたはNを示し、
10はG、SまたはWを示し、
11はA、G、PまたはLを示し、
12はD、E、G、QまたはNを示し、
13はI、P、VまたはYを示す、ことを特徴とする請求項8または9に記載の成長ホルモン融合タンパク質。
【請求項11】
、X、X及びXのうちの少なくとも1つはKまたはEまたはCである、ことを特徴とする請求項10に記載の成長ホルモン融合タンパク質。
【請求項12】
前記第1の定常領域Fcセグメントでは、
はCを示し、
はCを示し、
はKを示し、
はEを示し、
はNを示し、
はNを示し、
10はWを示し、
11はLを示し、
12はNを示し、
13はYを示す、ことを特徴とする請求項10に記載の成長ホルモン融合タンパク質。
【請求項13】
前記第2の定常領域Fcセグメントでは、
はCを示し、
はCを示し、
はEを示し、
はKを示し、
はQを示し、
はQを示し、
10はSを示し、
11はAを示し、
12はQを示し、
13はVを示す、ことを特徴とする請求項10に記載の成長ホルモン融合タンパク質。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の成長ホルモン融合タンパク質をコードする、ことを特徴とする核酸分子。
【請求項15】
請求項14に記載の核酸分子を担持する、ことを特徴とする発現ベクター。
【請求項16】
請求項14に記載の核酸分子、または
請求項15に記載の発現ベクターを含む、ことを特徴とする組換え細胞。
【請求項17】
請求項1~13のいずれか1項に記載の成長ホルモン融合タンパク質の調製方法であって、
二本鎖構造体の第1の単量体と第2の単量体を取得するステップであって、前記第1の単量体は第1の定常領域Fcセグメントを有し、前記第2の単量体は第2の定常領域Fcセグメントを有し、前記第1の定常領域Fcセグメントに成長ホルモンが連結されるステップと、
前記第1の単量体と前記第2の単量体をイソダイマーにして、前記成長ホルモン融合タンパク質を取得するステップと、を含む、ことを特徴とする成長ホルモン融合タンパク質の調製方法。
【請求項18】
前記イソダイマーは体外で形成される、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の単量体と前記第2の単量体は非哺乳細胞発現系で発現される、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の単量体と前記第2の単量体は同じ前記非哺乳細胞発現系で発現される、ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1~13のいずれか1項に記載の成長ホルモン融合タンパク質を含む、ことを特徴とする薬物組成物。
【請求項22】
請求項1~13のいずれか1項に記載の成長ホルモン融合タンパク質、請求項14に記載の核酸分子、請求項15に記載の発現ベクター、請求項16に記載の組換え細胞、請求項17~20のいずれか1項に記載の方法によって調製された成長ホルモン融合タンパク質、請求項21に記載の薬物組成物の、成長ホルモン異常に関連する疾患を治療または予防するための薬物の調製における使用。
【請求項23】
前記成長ホルモン異常に関連する疾患は、
小児成長ホルモン欠乏症、ターナー症候群、慢性腎不全による小柄、特発性小柄、成人成長ホルモン欠乏、短腸症候群、FGFR3突然変異の軟骨発育不全から選ばれる1種を少なくとも含む、ことを特徴とする請求項22に記載の使用。
【国際調査報告】