(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-13
(54)【発明の名称】微量投与シリンジポンプ用の二方向のプランジャ前進機構を備えたシリンジ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20240205BHJP
【FI】
A61M5/315 510
A61M5/315 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543346
(86)(22)【出願日】2022-01-12
(85)【翻訳文提出日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 US2022012190
(87)【国際公開番号】W WO2022159316
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス アンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ボープレ
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066HH02
4C066HH12
4C066HH30
(57)【要約】
微量投与シリンジポンプ用のシリンジが開示される。シリンジは、出口ポートを有するリザーバと、トラックを有するプランジャであって、プランジャは、リザーバの一部の内部に受容される、プランジャと、シャフトの一端に接続された歯車と、シャフトの他端に隣接して配置されたピンとを備えるプランジャ駆動機構であって、プランジャ駆動機構は、プランジャの内部に受容され、ピンは、トラックの内部に配置されて、トラックに係合する、プランジャ駆動機構と、を含む。使用時、第1の方向への歯車の回転は、ピンがトラック内を移動するときに、プランジャを、第1の距離、リザーバ内へ前進させ、第1の方向とは反対の第2の方向への歯車の回転は、ピンがトラック内を移動するときに、プランジャを、さらなる距離、リザーバ内へ前進させる。この設計は、モータの暴走故障時の過剰な投与を防止する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジであって、前記シリンジは、
出口ポートを有するリザーバと、
トラックを有するプランジャであって、前記プランジャは、前記リザーバの一部の内部に受容される、前記プランジャと、
シャフトの一端に接続された歯車と、前記シャフトの他端に隣接して配置されたピンとを備える、プランジャ駆動機構であって、前記プランジャ駆動機構は、前記プランジャの内部に受容され、前記ピンは、前記トラックの内部に配置されて、前記トラックと係合する、前記プランジャ駆動機構と、を含み、
前記歯車の第1の方向への回転は、前記ピンが、前記トラック内を移動するときに、前記プランジャを、第1の距離、前記リザーバ内に前進させ、前記歯車の前記第1の方向と反対の第2の方向への回転は、前記ピンが、前記トラック内を移動するときに、前記プランジャを、さらなる距離、前記リザーバ内に前進させることを特徴とするシリンジ。
【請求項2】
請求項1に記載のシリンジであって、前記トラックは、複数のスロットを備えることを特徴とするシリンジ。
【請求項3】
請求項2に記載のシリンジであって、前記ピンは、前記歯車が、前記第1の方向に回転させられるとき、前記複数のスロットのうちの第1のスロット内を移動し、前記歯車が前記第2の方向に回転させられるとき、前記複数のスロットのうちの第2のスロット内を移動することを特徴とするシリンジ。
【請求項4】
請求項2に記載のシリンジであって、前記スロットのそれぞれは、直線状走行部、カム走行部、および、終点を含むことを特徴とするシリンジ。
【請求項5】
請求項2に記載のシリンジであって、前記トラックおよび前記複数のスロットは、前記プランジャの内壁に切り込まれることを特徴とするシリンジ。
【請求項6】
請求項2に記載のシリンジであって、前記複数のスロットのそれぞれは、分離壁によって隣接するスロットから分離されることを特徴とするシリンジ。
【請求項7】
請求項2に記載のシリンジであって、前記複数のスロットは、前記トラック内でジグザグパターンを形成することを特徴とするシリンジ。
【請求項8】
請求項1に記載のシリンジであって、前記プランジャは、さらに、前記トラックと連通するバイパストラックを含むことを特徴とするシリンジ。
【請求項9】
請求項1に記載のシリンジであって、前記プランジャは、さらに、Oリングを有するピストンを含むことを特徴とするシリンジ。
【請求項10】
請求項4に記載のシリンジであって、前記プランジャは、さらに、ピストンを含み、前記カム走行部は、前記ピストンから離れる方向に傾斜していることを特徴とするシリンジ。
【請求項11】
請求項2に記載のシリンジであって、前記トラックおよび前記複数のスロットは、前記プランジャの壁を貫通して形成されることを特徴とするシリンジ。
【請求項12】
シリンジであって、前記シリンジは、
出口ポートを有するリザーバと、
トラックを有するプランジャであって、前記トラックは、複数のスロットを備え、前記スロットのそれぞれは、直線走行部、カム走行部、および、終点を備え、前記プランジャは、前記リザーバの一部の内部に受容される、前記プランジャと、
シャフトの一端に接続された歯車と、前記シャフトの他端に隣接して配置されたピンとを備えるプランジャ駆動機構であって、前記プランジャ駆動機構は、前記プランジャの内部に受容され、前記ピンは、前記トラックの内部に配置されて、前記トラックと係合する、前記プランジャ駆動機構と、を含み、
前記歯車の第1の方向への回転は、前記ピンが、前記複数のスロットのうちの第1のスロット内を移動するときに、前記プランジャを、第1の距離、前記リザーバ内へ前進させ、前記歯車の前記第1の方向と反対の第2の方向への回転は、前記ピンが、前記複数のスロットのうちの第2のスロット内を移動するときに、前記プランジャを、さらなる距離、前記リザーバ内へ前進させることを特徴とするシリンジ。
【請求項13】
請求項12に記載のシリンジであって、前記複数のスロットの前記第1のスロットは、前記複数のスロットの前記第2のスロットに隣接していることを特徴とするシリンジ。
【請求項14】
請求項12に記載のシリンジであって、前記トラックおよび前記複数のスロットは、前記プランジャの内壁に切り込まれることを特徴とするシリンジ。
【請求項15】
請求項12に記載のシリンジであって、前記複数のスロットのそれぞれは、分離壁によって隣接するスロットから分離されることを特徴とするシリンジ。
【請求項16】
請求項12に記載のシリンジであって、前記複数のスロットは、前記トラック内でジグザグパターンを形成することを特徴とするシリンジ。
【請求項17】
請求項12に記載のシリンジであって、前記プランジャは、さらに、前記トラックと連通するバイパストラックを含むことを特徴とするシリンジ。
【請求項18】
請求項12に記載のシリンジであって、前記プランジャは、さらに、Oリングを有するピストンを含むことを特徴とするシリンジ。
【請求項19】
請求項12に記載のシリンジであって、前記プランジャは、さらに、ピストンを含み、前記カム走行部は、前記ピストンから離れる方向に傾斜していることを特徴とするシリンジ。
【請求項20】
請求項12に記載のシリンジであって、前記トラックおよび前記複数のスロットは、前記プランジャの壁を貫通して切り込まれることを特徴とするシリンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示分野
本開示は、概して、微量投与シリンジポンプ用のシリンジに関し、より詳細には、二方向の前進機構および暴走ポンプモータの安全機能を有するシリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
開示の背景
このセクションは、本開示に関連する発明概念に対する、必ずしも従来技術ではない、背景情報を提供する。
【0003】
微量投与シリンジポンプは、当技術分野で知られており、いくつか例を挙げると、インスリン、他のホルモン、化学療法薬、抗生物質、および、鎮痛剤などの、薬剤を送達するためにしばしば使用される。これらの装置は、一般にリザーバ、プランジャ、および、薬剤を患者に送達するために、リザーバ内にプランジャを駆動する手段を備える、シリンジを含む。しばしば、プランジャを駆動するための手段は、端部歯車が、一方向に回転方式で駆動されると外側に伸縮する、伸縮式ねじ駆動のセットを備える。他のシステムは、プランジャに接続されたナットを駆動するために、回転させられる螺合ロッドを使用し、ロッドの回転は、ナットを上方に駆動し、プランジャをリザーバ内に駆動する。他のシステムは、プランジャをリザーバに駆動するために、シザリングシステムを使用する。一般に、全てのこれらシステムのための機構は、通常、プランジャを駆動する部品の回転を含み、回転は、常に同じ方向である。
【0004】
これらの従来技術のプランジャ駆動機構のすべてに伴う1つの問題は、過剰投与の問題に対処するために、複雑な方法を必要とすることである。そのような問題は、暴走したモータ事象が発生したときに生じ得る。そのような事象において、前述の機構のいずれかを介してプランジャを駆動するモータは、意図された用量の送達後も動作し続け、したがって、投与が継続し、患者は、過剰投与され得る。
【0005】
暴走したモータ事象の問題を回避し、費用効果が高く簡単な方法でそうする、プランジャ駆動機構を提供することが望ましい。本発明は、暴走したモータ事象に対する、エレガントで、機械的で、常に「オン状態」のガードを提供する。また、本発明は、微量投与シリンジポンプシステムでの正確で再現性のある投与を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の態様は、微量投与シリンジポンプ用のシリンジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の概要
このセクションは、本開示の一般的な概要を提供し、その全範囲、または、全ての特徴、態様、および、目的の包括的な開示として解釈されることを意図されない。
【0008】
本発明の一態様は、微量投与シリンジポンプ用のシリンジである。シリンジは、出口ポートを有するリザーバと、トラックを有するプランジャであって、プランジャは、リザーバの一部の内部に受容される、プランジャと、シャフトの一端に接続された歯車と、シャフトの他端に隣接して配置されたピンとを備えるプランジャ駆動装置であって、プランジャ駆動装置は、プランジャの内部に受容され、ピンは、トラックの内部に配置されて、トラックと係合する、プランジャ駆動装置とを備え、それにより、歯車の第1の方向への回転は、ピンがトラック内で移動するとき、第1の距離、プランジャをリザーバ内で前進させ、第1方向とは反対の第2方向への歯車の回転は、ピンがトラック内で移動するとき、第2の距離、プランジャをリザーバ内で前進させ、第2の距離は、第1の距離よりも大きい。
【0009】
本開示の別の態様は、微量投与シリンジポンプ用のシリンジを提供することである。シリンジは、出口ポートを有するリザーバと、トラックを有するプランジャであって、トラックは複数のスロットを備え、各スロットは直線走行部、カム走行部および終点を備え、プランジャはリザーバの一部の内部に受容される、プランジャと、シャフトの一端に接続された歯車と、シャフトの他端に隣接して配置されたピンとを備える、プランジャ駆動機構であって、プランジャ駆動機構は、プランジャの内部に受容され、ピンは、トラック内部に配置され、トラックに係合する、プランジャ駆動機構とを含み、第1の方向への歯車の回転は、ピンが、複数のスロットのうちの第1のスロット内を移動するときに、プランジャを、リザーバ内へ第1の距離で前進させ、第1の方向とは反対の第2の方向への歯車の回転は、ピンが第2のスロット内を移動するとき、第1の距離よりも大きい第2の距離で、プランジャを、リザーバ内へ前進させる。
【0010】
本開示のこれらおよび他の特徴および利点は、本明細書の詳細な説明から、当業者により明らかになるであろう。以下、詳細な説明に付随する図面が説明される。
【0011】
本明細書で説明される図面は、選択された態様のみであって、すべてではない実施の、例示の目的のためのものであり、本開示を、実際に示されるもののみに限定することを意図されない。これを念頭に置くと、本開示の例示的な態様のさまざまな特徴および利点は、添付の図面と組み合わせて考慮されると、以下の説明および添付の特許請求の範囲から、当技術分野における通常の技術を有する者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に従って設計された、シリンジ用のリザーバを示す図である。
【
図2】本発明に従って設計された、シリンジ用のプランジャを示す図である。
【
図3】本発明に従って設計された、シリンジ用のプランジャ前進装置を示す図である。
【
図4】
図1のリザーバ、
図2のプランジャ、
図3のプランジャ前進装置を使用した、初期装填位置にある、本発明に従って設計された、組立てシリンジを示す図である。
【
図5】リザーバ内へのプランジャの部分的前進後の、
図4の組立てシリンジを示す図である。
【
図6】
図2に示される、本発明に従って設計されたプランジャの、トラックシステムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
開示の詳細な説明
以下の説明では、本開示の理解を提供するために、詳細が説明される。
【0014】
明確にするために、本明細書では、関連分野の当業者に本開示の範囲を伝えるために、例示的な態様が説明される。本開示のさまざまな態様の完全な理解を提供するために、特定の構成要素、装置、および、方法の例などの、多くの具体的な詳細が説明される。周知のプロセス、周知の装置構造、周知の技術などの特定の詳細は、当業者に、すでによく理解されているため、特定の詳細は、本明細書で説明される必要がないこと、および、例示的な実施形態は、多くの異なる形態で具体化され得、いずれも本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではないことが、当業者には明らかであろう。
【0015】
本明細書で使用される用語は、特定の例示的な態様のみの説明のためのものであり、限定することを意図されない。本明細書で使用される場合、単数形「一つ(a)」、「一つ(an)」、および、「その(the)」は、文脈が、そうでないと明らかに指示しない限り、複数形も含むことを意図され得る。「備える」、「備えている」、「含む」、「含んでいる」、および、「有している」は、包括的であり、したがって、記載された特徴、完全体、工程、操作、要素、および/または、構成要素の存在を特定するが、1つまたは複数の他の特徴、完全体、工程、操作、要素、構成要素、および/または、それらの群の存在を排除しない。本明細書に記載される方法工程、手順、および、操作は、実行順序として特に特定されない限り、説明または図示された特定の順序でのそれらの実行を、必ずや必要とすると解釈されるべきではない。また、追加のステップまたは代替の工程が採用され得ることが、理解されるべきである。
【0016】
要素または構造が、他の要素または構造に「接する」、「係合される」「接続される」、「結合される」、「動作可能に接続される」、または、「動作可能に通信している」と言及される場合、それは、他の要素または層に、直接、接し、係合され、接続され、または、結合され得るか、または、介在する要素または構造が存在し得る。対照的に、ある要素が、別の要素または構造に「直接接する」、「直接係合される」、「直接接続される」、または、「直接結合される」と言及される場合、介在する要素や層が不存在であり得る。要素間の関係を説明するために使用される他の単語は、同様に解釈されるべきである(例えば、「の間」に対して「の間に直接」、「隣接して」に対して「直接隣接して」など)。本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、関連する列挙された項目の1つまたは複数の、任意の、および、全ての組み合わせを含む。
【0017】
第1、第2、第3などの用語は、本明細書では様々な要素、構成要素、領域、層、および/または、セクションを説明するために使用され得るが、これらの要素、構成要素、領域、層、および/または、セクションは、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、1つの要素、構成要素、領域、層、または、セクションを、別の要素、構成要素、領域、層、または、セクションから区別するためにのみ使用され得る。「第1」、「第2」、および、その他の数の用語は、本明細書で使用される場合、文脈によって明確に、かつ明示的に指示されない限り、連続または順序を意味しない。したがって、例示的な実施形態の教示から逸脱することなく、以下で説明される、第1の要素、構成要素、領域、層、または、セクションは、第2の要素、構成要素、領域、層、または、セクションと称され得るであろう。
【0018】
本明細書では、説明の目的で、用語の「上」、「下」、「右」、「左」、「後」、「前」、「垂直」、「水平」、および、それらの派生語は、図において方向づけられるように、本発明に関連するだろう。しかしながら、本開示は、明示的に反対の方向に特定される場合を除き、様々な代替の向き、および、工程のシーケンスを想定し得ることが理解されるべきである。また、添付の図面に示され、以下の詳細な説明に記載される、特定の装置および処理は、添付の特許請求の範囲で定義される、本発明の概念の例示的な態様であることが、理解されるべきである。したがって、本明細書に開示される態様に関する、特定の寸法、および、その他の物理的特性は、特許請求の範囲が、そうでないと明示的に述べない限り、限定しているとみなされるべきではない。
【0019】
シリンジは、リザーバを含み、リザーバは、また、シリンジのバレルとして知られる。本明細書および特許請求の範囲では、2つの用語は、互換的に使用されるであろう。典型的なシリンジは、少なくとも、バレル、プランジャ、および、プランジャ駆動機構を備える。
【0020】
図1には、本発明に従って設計された、シリンジ用のリザーバが、全体的に10で示される。リザーバ10は、形状がほぼ円筒形であり、開いた第1端14から閉じた第2端16まで延びる、バレル壁12を含む。第2端16は、出口ポート18を含み、薬剤は、出口ポート18を通って出て、リザーバ10から分配される。出口ポート18は、最終的に患者に接続され、薬剤を患者に送達する。リザーバ10は、好ましくは、任意の充填ポート20を含む。あるいは、リザーバ10は、当業者に知られるように、開放端14を通して、または、出口ポート18を通して、充填され得るであろう。リザーバ10は、好ましくは、一体型の設計で形成される。それは、例示のみで、熱可塑性材料などの、非金属ポリマー材料から形成され得る。あるいは、それは、例示のみで、ステンレス鋼または金属合金などの、金属材料から形成され得る。
【0021】
図2には、本発明に従って設計された、シリンジ用のプランジャが、全体的に40で示される。プランジャ40は、リザーバ10の内側にぴったりと嵌合するような大きさとされた、円筒形のプランジャバレル42を含む。これは、プランジャ40の外径が、リザーバ10の内径より、ほんのわずかに小さいことを意味する。プランジャバレル42は、閉鎖端46の反対側に開放端44を有する。閉鎖端46は、傾斜リム52および溝54を備えた前面50を有する、一体型ピストン48を含む。溝54は、後壁58の反対側の前壁56および底部60を含む。溝54は、Oリングの受容のためのものであり、また、Oリンググランドとして知られる。明確にするために、Oリングは示されないが、当業者は、Oリングが、一般的に、ピストン48とリザーバ10の内壁との間にシールを提供するために使用され、プランジャ40がリザーバ10内で前進させられるとき、リザーバ10からの薬剤の漏れを防ぐということを容易に理解するであろう。当業者は、溝54に対する適切な体積充填率、圧縮率、伸び率を有するOリング、および、Oリングを形成するエラストマーまたはゴム材料を選択するための設計上の考慮事項を理解するであろう。また、
図2には、プランジャバレル42の外側からバレル42の内部に貫通する、任意の貫通孔62が示される。任意の貫通孔62は、本明細書で説明されるように、一実施形態における、構成要素の組み立てを可能にするためのものである。プランジャバレル42の内壁の一部は、トラック64を含む。任意の貫通孔62が存在する場合、トラック64は、そのとき、図示されるように、貫通孔62に向い合う。トラック64は、複数のスロット66を備え、一実施形態では、スロット66は、プランジャバレル42の内壁に切り込まれる。一実施形態で示されるように、各スロット66は、スロット66の直線走行部68、カム走行部70、および、終点72を含む。カム走行部70は、また、カム面として知られる。この実施形態では、カム走行部70は、ピストン48から離れる方向に傾斜している。各スロット66は、トラックの長さに沿って、隣接するスロット66に接続する。スロット66は、当業者により理解されるように、図示されたもの以外の形状を有し得る。スロット66は、分離壁74によって、互いに分離される。スロット66は、トラック64に沿ってジグザグパターンを形成する。各ジグ部および各ザグ部は、本明細書に記載されるように、互いに、同等の用量を送達するように設計される。プランジャ40は、また、
図6に記載されるように、バイパストラック120を含み得る。トラック64は、プランジャバレル42の内壁に切り込まれ、そこを貫通しないように示されるが、これは、そうである必要がない。プランジャ40は、必要に応じて、トラック64が、プランジャバレル42を通って完全に切り込まれることを可能にするように、十分に高い強度の材料から形成され得る。プランジャ40は、好ましくは、一体部品として形成され、熱可塑性樹脂などの高分子材料、あるいは、ステンレス鋼や金属合金などの金属から形成され得る。
【0022】
図3には、本発明に従って設計された、シリンジ用のプランジャ前進装置が、全体的に90で示される。プランジャ前進装置90は、一端に、平歯車などの歯車92を含む。シャフト94は、歯車92に固定され、歯車92の対向側に、シャフト94の貫通孔98に受容されるピン96が存在する。ピン96は、接着剤を使用して所定の位置に固定され得、または、貫通孔98に摩擦嵌めされ得る。一実施形態では、ピン96は、シリンジの組み立て前に、貫通孔98に固定されるか、別の実施形態では、それは、本明細書で説明されるように、組み立て中に貫通孔98内に配置される。歯車92は、微量投与シリンジポンプ(図示せず)のモータに動作可能に接続され、モータは、プランジャ前進装置90を、時計方向と反時計方向の両方に回転させるために使用される。これは、当業者に理解されるように、モータの被動シャフトと歯車92との間に、1つまたは複数の駆動歯車を使用して達成され得る。歯車92のこの駆動は、ピン96が、時計回りまたは反時計回りの方向に回転し、一方で、両方向で、同じ回転面に留まることをもたらすだろう。プランジャ前進装置90は、本明細書に記載されるように、ピン96を含む一体部品として形成され得る。プランジャ前進装置90およびピン96は、ポリマー組成物、例えば、熱可塑性組成物から形成され得る。あるいは、プランジャ前進装置90およびピン96は、金属材料、例えば、ステンレス鋼または金属合金から形成され得る。
【0023】
図4は、本発明に従って設計された、組立てシリンジを、全体的に110で示す。シリンジ110は、初期装填位置で示され、リザーバ10、プランジャ40、および、プランジャ前進装置90を含む。充填ポート20は、存在する場合、シリンジ110がこの位置にあり、ピストン48がリザーバのすぐ内側に位置づけられるときに、リザーバ10が充填され得るように配置される。使用時、シリンジ110は、微量投与シリンジポンプ(図示せず)の内部に配置され、少なくともリザーバ10の閉鎖端16および歯車92で支持されるであろう。それは、また、微量投与シリンジポンプの内部に配置される場合、リザーバ10の開放端14で支持され得る。それは、使用中、特に、プランジャ40が、プランジャ前進装置90によってリザーバ10内に入れ子式にはめ込まれるときに、リザーバ10のいかなる軸方向または長手方向の移動をも防止するように支持される。プランジャ前進装置90は、歯車92によって駆動されると、時計回りと反時計回りの両方の方向に回転させられ得る。プランジャ前進装置90は、少なくとも歯車92の位置で支持され、その回転および使用中、シャフト94の長手方向の動きを防止する。一実施形態では、上述されたように、プランジャ40は、トラック64に向かいあって貫通孔62を含む。その実施形態において、シリンジ110を組み立てるために、ピン96のないプランジャ前進装置90が、プランジャ40の開放端44に挿入される。次に、シャフト94の貫通孔98が、プランジャ40の貫通孔62と位置合わせされ、プランジャ40の貫通孔62を利用して、ピン96が、シャフト94の貫通孔98に挿入され得る。ピン96は、それが、貫通孔98内に受容されたときに、トラック64に完全に係合し、トラック64内で動くのに十分な長さを有する。
図4に示されるように、シリンジ110がこの位置にあるとき、ピン96は、ピストン48に最も近いスロット66に位置づけられる。
【0024】
図5は、リザーバ10内へのプランジャ40の部分的な前進後の、
図4の組立てシリンジ110を示す。前進は、時計回りと反時計回りの両方の方向での、択一的な方式での、プランジャ前進装置90と、それによる、ピン96の回転によって引き起こされる。回転方向が変更されると、ピン96がトラック64内で動き、それと係合し、あるスロット66から次のスロット66に移動し、プランジャ40は、リザーバ10内に駆動され、したがって薬剤が、出口ポート18から押し出される。シャフト94が、各々の方向に回転させられる間、プランジャ前進装置90は、長手方向の位置を変えないが、プランジャ40は、リザーバ10内において、長手方向に移動する。この動きは、
図6によく示される。
【0025】
図6は、
図2に示される、本発明に従って設計されたプランジャ40の、トラック64を示す概略図である。それは、トラック64をより詳細に示し、また、一実施形態において、シリンジ110を組み立てるのに使用され得る、任意のバイパストラック120示す。一実施形態において、ピン96は、シリンジ110の組み立て前に、貫通孔98内に固定され、バイパストラック120は、プランジャ前進装置90が、プランジャ40に挿入されることを可能にするために使用される。この組立方法では、ピン96は、バイパストラック120のピン入口ポイントで、プランジャ40に挿入され、その後、ピン96は、バイパストラック120内で進んで、シャフト94が、プランジャ40に完全に挿入され得る。シャフト94がプランジャ40に完全に挿入されると、ピン96は、トラック64の先頭のピン静止ポイント126に位置づけられるであろう。バイパストラック120を有さない実施形態では、ピン96は、貫通孔62および貫通孔98が位置合わせされたときに、貫通孔62および貫通孔98に挿入される。バイパスチャネル120を有する実施形態では、バイパスチャネル120は、微量投与シリンジポンプにおけるシリンジ110の使用の開始時にのみアクセス可能である。用量の送達が開始されると、バイパスチャネル120は、もはや、ピン96によってアクセスされ得ない。投薬の開始時に、モータが、歯車92を間違った方向に回転させると、ピン96は、ピン静止ポイント126に固定され、プランジャ40は、その場で回転し、用量は、投与されないであろう。投与は、本明細書に記載されるように、歯車92の回転が、逆にされた後に始まるであろう。両方の実施形態において、ピン96は、薬剤の最初の用量が、リザーバ10から投与される前に、ピン静止ポイント126に配置される。
【0026】
シリンジ110の機構は、
図6への特別な参照で説明されるであろう。説明の簡単化のため、
図6における上方向の動きが、シャフト94の時計回りの回転として、および、
図6の下方向への動きが、シャフト94の反時計回りの回転として説明されるであろうが、当業者は、それが、逆の向きで記述され得るであろうことを理解するであろう。戻って
図6を参照すると、最初の用量が投与されるとき、歯車92は、時計回り方向に回転させられ、ピン96は、ピン静止ポイント126から、第1の移動経路128に沿って、第1の移動経路128の終点130まで動かされる。第1の移動経路128は、カム走行部70および終点72が続く、直線走行部68を含む。ピン96が回転させられると、カム走行部70の形状、ピストン48から離れる方向の下向きの傾斜により、ピン96が、カム走行部70に当接して回転すると、ピン96は、プランジャ40をリザーバ10内に動かすであろう。これは、ピン96が、回転の方向に関係なく、ピン96の回転中、常に同じ回転面にあり、カム走行部70が、ピストン48から離れる方向に傾斜部を有しているために生じる。したがって、プランジャ前進装置90は、長手方向に移動し得ず、カム走行部70に当接するピン96の回転は、プランジャ40を、歯車92から離れてリザーバ10内に入れ子式にはめ込む。ピン96が終点72に到達すると、歯車92がさらに時計回り方向に回転させられたとしても、プランジャ40のリザーバ10内へのさらなる前進は、ないであろう。その代わりに、プランジャ40は、リザーバ10内の所定の位置で、単に回転するであろう。これは、微量投与シリンジポンプモータ(図示せず)が動作不良を生じ、歯車を時計周りに回転させ続ける状況での、過剰な投与を防止する安全機能である。要約すると、歯車92の第1の方向への回転は、プランジャ40を、第1の距離、リザーバ10内へ前進させ、第1の用量を送達する。通常の機能では、歯車92の回転を逆にし、それを反時計回りの態様で回転させることによって、次の用量が送達される。歯車92が、反時計回りの回転で駆動されると、ピン96は、第2用量ピン移動経路132に沿って、ピン位置130からピン位置134まで移動する。第2用量移動経路132は、終点72で終わるカム走行部70が続く、最初の直線走行部68を含む。再び、暴走したモータの動作不良では、ピン96がピン位置134に達すると、反時計回りの継続した回転は、別の用量を前進させず、プランジャ40は、それ以上前進することなく、単にリザーバ10で回転するであろう。したがって、第1の方向と反対の方向の、歯車92の第2の方向の回転は、プランジャ40を、さらなる距離、リザーバ10内へ前進させて、第2の用量を送達する。第3の用量の送達では、歯車92の回転は、反時計回り方向と逆の方向に、交替させられ、ピン96は、第3用量移動経路136に沿って、ピン位置134からピン位置138まで移動する。第3用量移動経路136は、直線走行部68と、それに続くカム走行部70および終点72を含む。図から理解されるように、各投与の後に歯車92の回転方向を逆転させ続けることは、ピン96が、プランジャ40の開放端44でトラック64の端に到達するまで、リザーバ10内へ、さらに続けて、プランジャ40を前進させ続けるであろう。したがって、人は、どのようにピン96がトラック64のジグザグパターンを通って移動して、各ジグ部およびザグ部で用量を送達するか、および、各用量が同じであることを理解し得る。分離壁74の幅に対するカム走行部70の長さは、ピン96が、カム走行部70に沿って、スロット66の終点72まで下降し、歯車92の回転が逆転させられて、次の用量を送達するとき、ピン96が、以前に移動させられたスロット66の直線走行部68に跳ね戻りし得ないことを確実にする。上述されるように、スロット66は、スロット形状が、歯車92が一回転方向に駆動されるときに、プランジャ40をリザーバ10内に進め、歯車92が反対の回転方向に駆動されるときに、リザーバ10内にさらに進める、カム走行部70の形状を含む限り、図示されたもの以外の他の形状を有し得る。この説明から理解され得るように、シリンジ110が、歯車92に適用される交互の回転方向を備えて、上記されるように使用されると、プランジャ40は、歯車92からさらに離れ、リザーバ10内に入れ子状にはまり込む。各々の回転方向の変更は、プランジャ40を、さらにリザーバ10内に進める。ピン96がトラック64の端に到達すると、プランジャ40は、もはや、それ以上、リザーバ10内に駆動され得ず、歯車92のいかなる回転も、リザーバ10内の所定の位置で、プランジャ40を回転させるだけである。リザーバ10とプランジャ前進装置90の相対位置は、使用中、微量投与シリンジポンプの内部で変化しない。プランジャ前進装置90は、正逆に回転するだけで、長手方向の移動はなく、同様に、リザーバ10も、長手方向の動きを有しない。
【0027】
説明されるように、本発明によるシリンジ110は、当業者には公知の、微量投与シリンジポンプで使用されるように設計される。本発明は、所定の回転方向に歯車92を駆動し続ける、シリンジポンプ内の暴走したモータによって引き起こされる、薬剤の過剰投与のいかなる可能性をも防止する。この安全機能は、トラック64の機械設計の結果であり、したがって、安全機能は、このシリンジ110において、常に「オン状態」である。微量投与シリンジポンプは、例えば、インスリン、他のホルモン、化学療法薬、抗生物質、鎮痛剤などの薬剤を送達するために一般的に使用される。したがって、正確な投与を確実にする必要性は極めて重要であり、本発明は、それが起こることを確実にする。そのような微量投与シリンジポンプに見られる、モータの回転駆動方向は、当技術分野で知られているように、電気信号を切り替えることによって、および、ソフトウェアを介して、制御され得る。本発明は、また、本発明が、シリンジポンプにおける精密なモータ制御の必要性、および、モータエンコーダシステムの必要性を排除するので、有利である。本発明の好ましい特徴は、ピン96が、各スロット66の終点72に到達すると、各投与サイクルにおいて、ピン96のある程度の過剰回転を含むことである。これは、ピン96が、適切な投与のために、各回転において、終点72に到達することを確実にする。それは、また、製造工程において、厳密に制御されるものである必要のない製造公差を可能にするのに役立ち、それは、回転が逆にされるとき、正確に制御する必要性を軽減する。微量投与シリンジポンプは、モータの機能を制御し、必要な投与量と分配された投与量を監視するためのソフトウェアを含むであろう。たとえば、場合によっては、ソフトウェアは、適切な量の薬剤を送達するために、連続して3回の投与サイクルに携わるようにモータに命令し得る。他の例では、一度に、単回用量が送達されるであろう。さらに、ソフトウェアは、1時間ごとに用量を送達するようにモータに命令し得るであろう。ソフトウェアによるそのような用量制御は、当業者には知られており、本明細書ではこれ以上説明されないであろう。
【0028】
前述の開示は、関連する法的基準に従って説明されており、したがって、説明は本質的に限定的ではなく、例示的である。いくつかの例示的な実施形態では、周知のプロセス、周知の装置構造、および、周知の技術は、詳細に説明されない。開示された実施形態に対する変形および修正は、当業者には明らかになり、本開示の範囲内に入り得る。したがって、この開示に与えられる法的保護の範囲は、以下の特許請求の範囲を検討することによってのみ決定され得る。
【国際調査報告】