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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-13
(54)【発明の名称】軽量水素分配システム及び部品
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20240205BHJP
   C22C 38/22 20060101ALI20240205BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240205BHJP
【FI】
C22C38/00 301F
C22C38/22
C22C38/00 301Z
H01M8/04 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544289
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(85)【翻訳文提出日】2023-09-19
(86)【国際出願番号】 EP2022051238
(87)【国際公開番号】W WO2022157247
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】21152585.2
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523275765
【氏名又は名称】ポッペ・ウント・ポットホフ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】POPPE + POTTHOFF GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コールマイヤー,カトリーン
(72)【発明者】
【氏名】シュナイデビント,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ビュルケルト,ダービト-ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ハルホフ,ブルクハルト
(72)【発明者】
【氏名】クロンホルツ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】リクス,ビョルン
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA59
5H127BB02
(57)【要約】
本開示は、少なくとも0.1MPaからの圧力範囲で動作可能であるエネルギー変換システムの燃料分配システム用の水素運搬部品であって、本体と、本体内の少なくとも1つのガス導管と、少なくとも1つのガス導管を介して連通した少なくとも1つのガス入口及び少なくとも1つのガス出口とを備え、本体は、以下の組成、すなわち0.18~0.45重量%の炭素、0.15~0.40重量%のケイ素、0.4~1.0重量%のマンガン、0.4~1.2重量%のクロム、0.08~0.35重量%のモリブデン、最大0.035重量%のリン、最大0.04重量%の硫黄、鉄及び製錬関連の鋼付随元素を有する焼戻し鋼で実質的に製作され、焼戻し鋼は、以下の特性、すなわち、650MPa~950MPaの範囲の引張強度、500MPa~850MPaの範囲の降伏強度又は0.2%弾性限界、及び12%~35%の範囲の破断伸びを有する、水素運搬部品に関する。さらに、本開示は、水素分配システム、エネルギー変換設備、及び乗り物用のドライブシステムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも0.1MPaの圧力範囲で動作可能であるエネルギー変換システムの燃料分配システム用の水素運搬部品であって、
本体と、
前記本体内の少なくとも1つのガス導管と、
前記少なくとも1つのガス導管を介して連通した少なくとも1つのガス入口及び少なくとも1つのガス出口と
を備え、
前記本体は、以下の組成:
- 0.18~0.45重量%の炭素、
- 0.15~0.40重量%のケイ素、
- 0.4~1.0重量%のマンガン、
- 0.4~1.2重量%のクロム、
- 0.08~0.35重量%のモリブデン、
- 最大0.035重量%のリン、
- 最大0.04重量%の硫黄、
- 鉄及び製錬関連の鋼付随元素
を有する焼戻し鋼で実質的に製作され、
前記焼戻し鋼は、以下の特性:
- 650MPa~950MPaの範囲の引張強度、
- 500MPa~850MPaの範囲の降伏強度又は0.2%弾性限界、及び
- 12%~35%の範囲の破断伸び
を有する、水素運搬部品。
【請求項2】
前記焼戻し鋼は、前記少なくとも1つのガス導管の内側において、最大200μm、好ましくは最大130μmの欠陥深さを有する、請求項1に記載の水素案内部品。
【請求項3】
前記焼戻し鋼の前記炭素の含有量は、0.18~0.33重量%の範囲、好ましくは0.22~0.29重量%の範囲にある、先行する請求項のいずれか1項に記載の水素案内部品。
【請求項4】
前記焼戻し鋼の前記リンの含有量は、0.025重量%以下であり、かつ/又は前記焼戻し鋼の前記硫黄の含有量は、0.010重量%以下である、先行する請求項のいずれか1項に記載の水素案内部品。
【請求項5】
前記焼戻し鋼の前記引張強度は、700MPa~950MPaの範囲、好ましくは750MPa~950MPaの範囲、さらにより好ましくは750MPa~900MPaの範囲にあり、かつ/又は、
前記焼戻し鋼の前記降伏強度又は前記0.2%弾性限界は、600MPa~850MPaの範囲、より好ましくは650MPa~800MPaの範囲にあり、かつ/又は、
前記焼戻し鋼の前記破断伸びは、13%~30%の範囲、好ましくは14%~28%の範囲、さらにより好ましくは15%~25%の範囲にある、先行する請求項のいずれか1項に記載の水素案内部品。
【請求項6】
前記本体のうちの前記ガス導管を囲む部分が、0.8mm~9.0mmの範囲、好ましくは1.0mm~6.0mmの範囲、より好ましくは1.0mm~5.0mmの範囲の最大肉厚を有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の水素案内部品。
【請求項7】
前記部品は、少なくとも1つの溶接接続部及び/又は少なくとも1つのはんだ付け接続部によって接続された少なくとも2つのサブユニットを備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の水素案内部品。
【請求項8】
前記部品は、パイプ、弁、T字ピース、圧力リデューサ、フィルタ、流量制限器、又は共通分配器であり、あるいはこれらの機能のうちの少なくとも2つを1つの部品に組み合わせている、先行する請求項のいずれか1項に記載の水素案内部品。
【請求項9】
前記本体は、連続動作において、少なくとも30MPa、好ましくは少なくとも70MPa、より好ましくは少なくとも100MPaの内部ガス圧力に耐える、先行する請求項のいずれか1項に記載の水素案内部品。
【請求項10】
前記本体の外面は、以下のコーティング:亜鉛-ニッケルコーティング、ガルバニックコーティング、電気泳動析出によって生成されたコーティング、又は粉末コーティングのうちの少なくとも1つで覆われる、先行する請求項のいずれか1項に記載の水素案内部品。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の少なくとも1つの第1の水素案内部品と、好ましくは請求項1~10のいずれか1項に記載の少なくとも1つの第2の水素案内部品とを、連通させて備える、エネルギー変換システム用の水素分配システム。
【請求項12】
高圧部と、好ましくは低圧部と、前記高圧部を前記低圧部に接続する圧力リデューサとを備え、前記高圧部は、少なくとも30MPa、好ましくは少なくとも70MPa、より好ましくは少なくとも100MPaの動作圧力に合わせて設計されている、請求項11に記載の水素分配システム。
【請求項13】
前記高圧部は、以下の部品:外側タンク弁又は内側タンク弁、フィルタ、逆止弁、少なくとも1つの充てん導管及び少なくとも1つの取り出し導管、コアレッサーフィルタ、T字ピース、充てんノズル、共通分配器、及びソレノイド弁のうちの1つ以上を備える、請求項12に記載の水素分配システム。
【請求項14】
水素供給ライン又は水素タンクと、
水素燃焼機関、水素ガスタービン、及び/又は燃料電池と、
前記供給ライン又は前記タンクから前記燃焼機関、前記ガスタービン、及び/又は前記燃料電池へと水素を供給する請求項11~13のいずれか1項に記載の水素分配システムと
を備える、固定型又は移動式エネルギー変換システム。
【請求項15】
少なくとも1つの高圧水素タンクと、
水素燃焼機関、水素ガスタービン、及び/又は燃料電池と、
前記少なくとも1つの高圧水素タンクから前記燃焼機関、前記ガスタービン、及び/又は前記燃料電池へと水素を供給する請求項11~13のいずれか1項に記載の水素分配システムと
を備える、乗り物用の水素推進システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.技術分野
本発明は、特には乗り物のドライブトレイン用であり、焼戻し鋼から製造される軽量水素案内部品、及びそれらから構成される軽量水素分配システムに関する。
【0002】
2.技術水準
約120MJ/kgのエネルギー密度、及び排出物を出さない酸素水素反応(2H+O→2HO)ゆえに、水素分子(H)は、熱機関(例えば、ガスタービン及び燃焼機関)及び燃料電池に理想的な燃料である。
【0003】
(例えば、乗り物のドライブトレイン又は発電用の固定型設備の燃料供給における)従来のH分配システムは、典型的には、高いニッケルの含有量(通常は、12.5重量%を上回る)を有するオーステナイト系ステンレス鋼(例えば、1.4435型、稀には1.4571型)から製造される。この材料の種類に関して、面心立方結晶格子を有することにより、とりわけ高いガス圧において生じる水素脆化の問題を回避できることが知られている(Materials Science and Technology,Volume 33,Issue 13(2017)を参照)。
【0004】
しかしながら、従来のオーステナイト系ステンレス鋼は、高価である(とりわけ、ニッケル及びモリブデンの含有量が多いため)。したがって、欧州特許第2850215号明細書が、モリブデンを含まず、ニッケルの含有量が6~9重量%と少ないオーステナイト鋼を提案している。
【0005】
また、オーステナイト鋼の機械的特性は、多くの場合、とりわけ最新の高圧タンクが使用される場合に、H分配システムの製造にあまり適していない。例えば、1.4435型のオーステナイト系ステンレス鋼は、通常は、600MPa未満の引張強度、250MPa未満の0.2%弾性限界、及び45%を超える破断伸びを有するにすぎない。そのような材料から製造されるH部品の典型的には大きい重量は、特には最新のHを動力とする乗り物(例えば、乗用車、トラック、鉄道車両、航空機、船舶、ドローン、など)のドライブトレインにとって、決定的な欠点となり得る。
【0006】
さらに、オーステナイト系ステンレス鋼は、加工がより困難かつ/又は普通でない加工方法を必要とする可能性もあり、したがって、例えば燃焼機関又は燃料電池のためのH分配システムを大量生産するために、新しい製造設備を設置しなければならず、あるいは既存の製造設備を複雑なやり方で改造しなければならない。総合的に、オーステナイト系ステンレス鋼から製造されるH分配システムの上述の欠点は、Hエネルギー技術の大規模な使用にとって、大きな障害を呈する。
【0007】
この背景において、欧州特許第2278035号明細書が、良好なH脆性及び900MPa~950MPaの範囲の引張強度を備え、以下の組成:
- 0.10~0.20重量%の炭素、
- 0.10~0.40重量%のケイ素、
- 0.50~1.20重量%のマンガン、
- 0.75~1.75重量%のニッケル、
- 0.20~0.80重量%のクロム、
- 0.31~0.50重量%の銅、
- 0.10~1.00重量%のモリブデン、
- 0.01~0.10重量%のバナジウム、
- 0.0005~0.005重量%のホウ素、
- 0.01重量%未満の窒素、
- 0.01~0.10重量%のニオブ及び/又は0.005~0.050重量%のチタン;
- その他の鉄及び不可避の不純物
を有する材料を開示している。
【0008】
しかしながら、そのような材料の製造及び成分は、やはり複雑かつ高価であり、したがって、とりわけH分配システムの大量生産に適していない。
【0009】
したがって、本発明の根底にある目的は、技術水準の上述の欠点のいくつかを少なくとも部分的に軽減することである。
【0010】
3.発明の概要
上記の課題は、本出願の独立請求項の主題によって少なくとも部分的に解決される。例示的な実施形態が、従属請求項に記載される。
【0011】
一実施形態において、本発明は、少なくとも0.1MPaの圧力範囲で動作可能であり、本体と、本体内の少なくとも1つのガスラインと、少なくとも1つのガスラインを介して連通した少なくとも1つのガス入口及び少なくとも1つのガス出口とを備えるエネルギー変換システムの燃料分配システム用の水素運搬部品を提供する。本体は、以下の組成:
- 0.18~0.45重量%の炭素、
- 0.15~0.40重量%のケイ素、
- 0.4~1.0重量%のマンガン、
- 0.4~1.2重量%のクロム、
- 0.08~0.35重量%のモリブデン、
- 最大0.035重量%のリン、
- 最大0.04重量%の硫黄、
- 鉄及び製錬関連の鋼付随元素
を有する焼戻し鋼で実質的に製作される。本体を実質的に形成する焼戻し鋼は、以下の特性:
- 650MPa~950MPaの範囲の引張強度、
- 500MPa~850MPaの範囲の降伏強度又は0.2%弾性限界、及び
- 12%~35%の範囲の破断伸び
をさらに有する。
【0012】
特に明記されない限り、材料特性は、関連の工業規格に従って(例えば、ISO 6892-1に従って)決定されるべきである。さらに、この場所及び以下において、用語「実質的に」は、「典型的な設計、測定、及び/又は製造の公差の範囲内」と理解されるべきである。同様に、焼戻し鋼が鉱石から得られるか、あるいはリサイクル材料から得られるかに応じて、異なる鋼付随元素が存在し得ることを理解されたい。
【0013】
上記の水素案内部品は、例えば、パイプ(図2を参照)、弁(図3A及び図3Bを参照)、T字ピース、圧力リデューサ、フィルタ、流量制限器、又は共通分配器(例えば、図1)であってよく、あるいはこれらの機能のうちの少なくとも2つを1つの共通部品に組み合わせてよい。
【0014】
部品の本体は、連続動作において、少なくとも30MPa、好ましくは少なくとも70MPa、より好ましくは少なくとも100MPaの内部ガス圧力に耐えるように作られる。
【0015】
とりわけ、本体のうちのガス導管を囲む部分が、わずか0.8mm~9mmの範囲、好ましくは1mm~6mmの範囲、より好ましくは1mm~5mmの範囲の最大肉厚を有することができる。
【0016】
したがって、H分配システムを、技術水準と比較して著しく重量が小さいが、それにもかかわらず(高い)耐圧性を有し、水素によって引き起こされる脆化に耐え、容易に加工(例えば、CNCフライス加工、穿孔、曲げ加工、及び/又は溶接)することができるそのような部品から製造することができる。技術水準とは対照的に、例えばディーゼルドライブトレインの製造にも使用される長期の実績のある製造方法を使用することができる。
【0017】
ここで説明される部品及び分配システムの水素によって引き起こされる脆化に対する耐性を、少なくとも1つのガス導管の内側において肉厚の最大5%までの欠陥深さを有する焼戻し鋼によって、さらに改善できることが示されている。特には、欠陥深さは、最大200μm、好ましくは最大130μmであってよい。
【0018】
特には肉厚が小さく、成形性及び接合性が良好である高圧部品及び高圧分配システムに関して、本体の焼戻し鋼の炭素の含有量が、0.18~0.33重量%の範囲、好ましくは0.22~0.29重量%の範囲にあるとさらに好都合である。
【0019】
上述の部品及び分配システムの脆化に対する耐性を、焼戻し鋼のリンの含有量を0.025重量%以下にし、かつ/あるいは焼戻し鋼の硫黄の含有量を0.010重量%以下にすることによって、さらに改善することができる。
【0020】
上述の部品及び分配システム(例えば、耐圧、Hとの適合性、並びに/あるいは形成性及び接合性)へのきわめて高い要求に関して、焼戻し鋼の引張強度は、700MPa~950MPaの範囲、好ましくは750MPa~950MPaの範囲、さらにより好ましくは750MPa~900MPaの範囲にあってよく、かつ/又は、焼戻し鋼の降伏強度又は0.2%弾性限界は、600MPa~850MPaの範囲、より好ましくは650MPa~800MPaの範囲にあり、かつ/又は、焼戻し鋼の破断伸びは、13%~30%の範囲、好ましくは14%~28%の範囲、さらにより好ましくは15%~25%の範囲にある。
【0021】
例えば、上述の部品は、少なくとも1つの溶接接続部及び/又は少なくとも1つのはんだ付け接続部によって接続された少なくとも2つのサブユニットを備えることができる。
【0022】
さらに、本発明のいくつかの実施形態において、それぞれの部品の本体の外面を、以下のコーティング:亜鉛-ニッケルコーティング、ガルバニックコーティング、電気泳動析出によって生成されたコーティング、又は粉末コーティングのうちの少なくとも1つで覆うことができる。
【0023】
この場合、選択されるコーティングは、上述の部品及びシステムについて、屋外で困難な天候又は環境条件(例えば、拡散縁塩を溶解させた水の噴霧)下であっても連続使用を保証することができるように、DIN EN ISO 9227に従って、少なくとも96時間、好ましくは少なくとも150時間、より好ましくは少なくとも720時間にわたって、耐食性(例えば、赤さびに対して)であってよい。
【0024】
上述の水素案内部品の本体を実質的に形成する焼戻し鋼の材料特性を、例えば、第1のステップにおいて適切な出発材料(例えば、高温パイプ又は同様の半完成品)を微細構造の冷間加工によって所望の機械的強度を得るために冷間成形することで達成することができる。続いて、所望の上記の機械的特性を得るために、形成された出発材料にアニーリング処理を施すことができる。最後に、品質管理のために、得られた材料の特性を測定することができ、適切な半製品を選択することができる。
【0025】
さらなる実施形態において、本発明は、上述のような少なくとも1つの第1の水素案内部品と、好ましくは上述のような少なくとも1つの第2の水素案内部品とを備え、これら2つの部品が、ねじ接続部、ユニオンナット付き圧縮ヘッド、並びに/あるいは溶接接続部及び/又ははんだ付け接続部を介して連通しているエネルギー変換システム用の水素分配システムを提供する。
【0026】
例えば、そのような水素分配システムは、高圧部と、好ましくは低圧部と、高圧部を低圧部に接続する圧力リデューサとを備えることができ、高圧部は、少なくとも30MPa、好ましくは少なくとも70MPa、より好ましくは少なくとも100MPaの動作圧力に合わせて設計される。
【0027】
高圧部は、以下の部品:外側タンク弁又は内側タンク弁、フィルタ、逆止弁、圧力逃がし弁、少なくとも1つの充てん導管及び少なくとも1つの取り出し導管、コアレッサーフィルタ、T字ピース、充てんノズル、共通分配器、及びソレノイド弁のうちの1つ以上を備えることができる。
【0028】
このような分配システムは、特には軽量であるという理由で、とりわけH駆動の航空機、ドローン、列車、船舶、又は自動車などのH乗り物のドライブトレイン、並びに/あるいはH発電システムに適する。
【0029】
例えば、固定型又は移動式エネルギー変換システムが、以下の部品:水素供給ライン又は水素タンクと、水素燃焼機関、水素ガスタービン、及び/又は燃料電池と、供給ライン又はタンクから燃焼機関、ガスタービン、及び/又は燃料電池へと水素を供給する、上述のような水素分配システムとを備えることができる。
【0030】
さらに、乗り物用のH推進システムが、少なくとも1つの高圧水素タンクと、水素燃焼機関、水素ガスタービン、及び/又は燃料電池と、少なくとも1つの高圧水素タンクから燃焼機関、ガスタービン、及び/又は燃料電池へと水素を供給する上述のような水素分配システムとを備えることができる。
【0031】
4.図面の説明
本発明の特定の態様を、添付の図面を参照して以下で説明する。図面において:
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態による水素燃焼機関のための水素分配システムのサブシステム。
図2】本発明の一実施形態による圧縮ヘッド及びユニオンナットを有するZ字形の水素分配管。
図3A】本発明の一実施形態による弁アセンブリ用の逆止弁。
図3B図3Aの弁の弁本体の縦断面。
【発明を実施するための形態】
【0033】
5.いくつかの例示的な実施形態の詳細な説明
本発明のいくつかの例示的な実施形態が、自動車のHドライブトレイン用のいくつかの例示的な分配システム及び部品の例を使用して、以下で説明される。しかしながら、本発明は、船舶、列車、航空機、又はドローンなどの他の乗り物、並びにエネルギー変換又は発電のための移動型システム又は固定型システムにおいても、同様に使用することが可能である。特徴のさまざまな組み合わせが、本発明の図示される実施形態を参照して、ここで説明される。当然ながら、本発明を実現するために、記載される実施形態のすべての特徴が存在する必要はない。さらに、本開示及び特許請求の範囲によって定義される本発明の保護の範囲から逸脱することなく、実施形態を、技術的に矛盾がなく、好都合であるならば、或る実施形態の特定の特徴を別の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせることによって変更することが可能である。
【0034】
図1が、本発明の一実施形態による4気筒H燃焼機関のためのH高圧分配システムのサブシステムを示している。ここで、分配システムは、2つのガス供給ライン120によって供給される2つのガス入口接続部112を有する共通分配器110を備える。本実施形態において、ガス供給ライン120は、10mmの外径及び7mmの内径を有する(ガス供給ライン120の断面170を参照)。したがって、この実施形態において、2つの供給ライン120の肉厚は1.5mmである。
【0035】
共通分配器110を、締結ブロック140を介して、例えば燃焼機関に固定することができる(例えば、ねじ接続部によって)。締結ブロック140は水素と接触しないため、図示のH分配システムの水素案内部品の本体とは異なる材料から製造することもできる(上記の項目2を参照)。共通分配器110は、4つの出力接続部114をさらに有し、その各々に、関連の燃焼シリンダ(図示せず)の関連の噴射装置にHガスを導くH分配パイプ130が接続される。分配パイプ130は、6.35mmの外径及び4mmの内径を有する。したがって、分配パイプ130の肉厚は、1.125mmである(分配パイプ120の断面160を参照)。
【0036】
図示の分配システム、とりわけガス供給ライン120及び分配パイプ130のパイプ直径は、30MPaのガス圧力を有するH高圧タンクと共に稼働するように設計される。しかしながら、本発明は、より高い動作圧力(例えば、70MPa又は100MPa)に合わせて設計されたH部品及びH分配システムも含む。
【0037】
図2が、本発明の一実施形態によるZ字形のH分配管210を示している。管210を、ユニオンナット220を有する2つの圧縮ヘッド222を介して、H分配システムの他の部品に接続することができる。分配管210の本体(及び、随意により圧縮ヘッド及びユニオンナット)を構成する焼戻し鋼の材料特性(上記の項目2を参照)は、分配管210の耐圧性を損なうことなく、小さな曲げ半径を有する高度に曲げられた管を製造することを可能にする。例えば、曲げ半径は、管の直径の1.5~2.2の範囲内であってよい。
【0038】
分配管210を外部の影響(例えば、腐食)から保護するために、分配管210の本体の外面(及び、随意により圧縮ヘッド222及びユニオンナット220の外面)は、コーティングで覆われる。例えば、亜鉛-ニッケルコーティング、ガルバニックコーティング、電気泳動析出によって製造されたコーティング(例えば、陰極浸漬コーティング)、又は粉末コーティングを、上述のようにこの目的のために使用することができる。好ましくは、そのようなコーティングは、DIN EN ISO 9227に従って、少なくとも96時間、より好ましくは少なくとも150時間、さらにより好ましくは少なくとも720時間にわたって耐食性(例えば、赤さびに対して)である。このようなコーティングは、図1に示したH部品又は上述した他の部品にも用いることができる。
【0039】
図3Aが、本発明のさらなる実施形態によるさらなる水素運搬H部品を示している。これは逆止弁310であり、例えば弁アセンブリ312又は充てん導管(図示せず)に使用することができる。逆止弁310は、軸方向に配置されたガス入口340と、半径方向に配置された2つのガス出口330とを有する弁本体320、及び閉鎖キャップ335を備える。
【0040】
弁本体320、及び随意により閉鎖キャップ335は、上記の項目2で説明したような焼戻し鋼で作られる。これにより、肉厚が小さく、H脆性が良好であり、耐圧性であって、技術水準と比較して軽量であり、製造も容易である逆止弁を製造することが可能になる。逆止弁310の本体320は、例えばそのH適合性及び耐圧性を損なうことなく、CNCフライス加工及び/又は穿孔が容易に可能である。この場合、小さい肉厚(例えば、0.8mm~5mmの範囲内)を実現することができるにもかかわらず、連続動作における高圧への耐性及び最大100MPa以上の動作圧力を保証することができる。
【0041】
図3Bが、図3Aの逆止弁310の本体320の縦断面を示している。ガス入口340から2つのガス出口330へのガス流が、破線の矢印で示されている。図示の構成において、弁は、金属製の封止ボール360を弁本体320の封止面に押し付ける逆止ばね350によって閉じられている。ガス入口340におけるHガス圧力が、逆止ばね350によってもたらされる封止圧力を超えると、逆止弁は開き、Hガスがガス入口340から2つのガス出口330へと流れることができる。
【0042】
本発明によれば、弁本体320、及び随意により封止ボール360、並びに随意により逆止ばね350が、上記の項目2で説明したような焼戻し鋼で作られる。これにより、Hに適合し、高い圧力に耐え、軽量であり、大量生産にきわめて適している逆止弁(並びに、他の種類の弁又はH部品)を製造することが可能になる。
【0043】
したがって、本発明によって可能になる重量低減及び効率向上は、環境に優しいHエネルギー技術のブレークスルーを助けることに大いに貢献することができる。
図1
図2
図3A
図3B
【国際調査報告】