(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-13
(54)【発明の名称】半透明欠陥に対する眼科用レンズの検査用の方法
(51)【国際特許分類】
G01M 11/00 20060101AFI20240205BHJP
G01N 21/95 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
G01M11/00 L
G01N21/95 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544301
(86)(22)【出願日】2022-01-25
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 IB2022050648
(87)【国際公開番号】W WO2022162532
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100227835
【氏名又は名称】小川 剛孝
(72)【発明者】
【氏名】フラディミル ドフガル
(72)【発明者】
【氏名】ザンドラ クラウス
【テーマコード(参考)】
2G051
2G086
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB02
2G051BA10
2G051BB05
2G051CA03
2G051CA04
2G051CB05
2G051EB01
2G086FF05
(57)【要約】
眼科用レンズのレンズ本体の許容できない半透明欠陥の存在に対して眼科用レンズを検査する方法は、レンズ本体のエッジによって境界される領域でレーザー光をレンズ本体に照明するステップと、反射の方向と異なる所定の検出方向に照明レンズ本体によって散乱されるレーザー光の強度を検出するステップと、散乱レーザー光の検出強度を所定の閾値強度と比較するステップと、散乱レーザー光の検出強度が所定の閾値強度よりも高い少なくとも1つのコヒーレント領域のサイズを判定するステップと、少なくとも1つのコヒーレント領域のサイズが所定の閾値サイズよりも大きいかどうかを判定するステップと、少なくとも1つのコヒーレント領域のサイズが所定の閾値サイズよりも大きい場合、眼科用レンズを排除するステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科用レンズのレンズ本体(10)の許容できない半透明欠陥(12)の存在に対して眼科用レンズ(1)(特に、眼内レンズ)を検査する方法であって、
前記レンズ本体(10)のエッジ(100)によって境界される領域でレーザー光(20)を前記眼科用レンズ(1)(特に、前記眼内レンズ)の前記レンズ本体(10)に照明するステップと、
前記照明レーザー光(20)の反射(22)の方向と異なる所定の検出方向に前記照明レンズ本体(10)によって散乱されるレーザー光(21)の強度を検出するステップと、
前記散乱レーザー光(21)の前記検出強度を所定の閾値強度と比較するステップと、
前記散乱レーザー光(21)の前記検出強度が前記所定の閾値強度よりも高い少なくとも1つのコヒーレント領域(120)のサイズを判定するステップと、
前記少なくとも1つのコヒーレント領域(120)の前記サイズが所定の閾値サイズよりも大きいかどうかを判定するステップと、
前記少なくとも1つのコヒーレント領域(120)の前記サイズが前記所定の閾値サイズよりも大きい場合、前記レンズ本体(10)の半透明欠陥(12)の含有のために前記眼科用レンズ(1)を排除するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記散乱レーザー光(21)の前記検出強度を所定の閾値強度と比較する前記ステップを、
前記散乱レーザー光の前記検出強度を表す検出グレースケール値に前記散乱レーザー光(21)の前記検出強度を変換し、
前記所定の閾値強度を表す閾値グレースケール値に前記所定の閾値強度を変換し、
前記検出グレースケール値を前記閾値グレースケール値と比較する
ことによって実行し、
前記少なくとも1つのコヒーレント領域(120)の前記サイズが所定の閾値サイズよりも大きいかどうかを判定する前記ステップを、
前記グレースケール値が前記閾値グレースケール値を超える少なくとも1つのコヒーレント領域の前記サイズを判定する
ことによって実行する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
レーザーダイオード(20)を、前記眼科用レンズ(1)の前記レンズ本体(10)に照明するために使用する、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記レンズ本体(10)に照明する前記ステップは、前記レンズ本体(10)の前記エッジ(100)の境界内だけで前記レンズ本体(10)の面に衝突するレーザービームを前記レンズ本体(10)に照明するステップを含み、前記レーザービームは、前記レンズ本体(10)の前記面の領域の少なくとも80%の領域を含む定常衝突プロファイル(200、201)を有する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記レーザービームを、均等に分布した強度で視準し、前記定常衝突プロファイル(200)は、前記レンズ本体(10)を境界する前記エッジ(100)の直径(D1)よりも5%から10%小さい直径(D2)を有する円形プロファイルである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記レーザービームの前記定常衝突プロファイル(201)は、格子線(2010、2011)に沿って均等に分布した強度で、長方形に配置された格子線(2010、2011)を有する格子の形状を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記レンズ本体(10)に照明する前記ステップは、前記レンズ本体(10)の面に衝突プロファイル(202、203)を有するレーザービームを前記レンズ本体(10)に照明するステップを含み、前記レンズ本体(10)の前記面上の前記衝突プロファイル(202、203)は、前記レンズ本体(10)の前記面の前記領域の20%未満の領域を含み、所定の経路(2020、2030)に沿って前記レンズ本体(10)の前記面上で前記衝突プロファイル(202、203)を移動させ、前記レンズ本体(10)の異なる部分に連続的に照明するステップを含む、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記レーザービームを集束させ、前記衝突プロファイル(2020)は、円形スポットであり、前記円形スポットを、前記所定の経路(2020)に沿って前記レンズ本体(10)の前記面上で移動させる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記衝突プロファイル(2030)は、直線であり、前記直線を、前記所定の経路(2030)に沿って前記レンズ本体(10)の前記面上で移動させ、前記所定の経路(2030)は、前記衝突プロファイル(203)の前記直線に垂直である、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2021年1月26日に出願の米国仮特許出願第63/141,544号明細書への優先権を主張する、2022年1月14日に出願の米国非仮特許出願第17/648,059号明細書(その内容全体を参照により本明細書に引用したものとする)への優先権を主張する。
【0002】
本開示は、許容できない半透明欠陥の存在に対する眼科用レンズの検査用のシステム及び方法に関する。この出願の内容全体を参照により本明細書に引用したものとする。
【背景技術】
【0003】
眼科用レンズ(例えば、眼内レンズ)を、特に、顧客に納品される前に、許容できない外見上の欠陥の存在に対して検査する。眼内レンズは典型的に、エッジによって境界されたレンズ本体、及びレンズ本体に装着された2つの触覚部を含む。特に、レンズを、(例えば、白内障の手術中に)ユーザの眼に後で埋め込む時に、レンズ本体を、許容できない外見上の欠陥の存在に対して慎重に検査する必要がある。眼内レンズの像を収集する自動レンズ検査機器及び収集像の像解析を使用する場合でも、許容できない外見上の欠陥に対する眼内レンズのレンズ本体の検査を、熟練したオペレーターによって実行することが多い。
【0004】
眼内レンズの外見上の欠陥は、従来の照明条件下で(例えば、インコヒーレント可視光を用いた暗視野照明構成で)検査中によく見える外見上の欠陥(例えば、内包物、気泡、微小粒子など)を含み、更に、従来の照明条件下で通常実際に見えない外見上の欠陥を含む。通常実際に見えない外見上の欠陥は、「半透明」欠陥と呼ばれることが多く、仮にそうであるとしても、非常に熟練したオペレーターによってだけ検出可能である。
【0005】
しかし、これらの見えない欠陥は、非常に稀な場合に限り発生するが、ユーザの視力に悪影響を与えることがあるので、これらの見えない欠陥を、確実に検出すべきである。例えば、眼内レンズで発生することがある半透明の外見上の欠陥は、レンズ本体の面上のオレンジピール組織である一方、別の半透明欠陥は、ヘーズ(例えば、レンズ本体における一種のかなりの曇った部分)である。記載のように、このような半透明欠陥は、非常に稀にしか発生しない。しかし、半透明欠陥は、非常に熟練したオペレーターでも、検出するのが容易でない。
【0006】
従って、本開示の目的は、上述の欠点を克服し、許容できない半透明欠陥の確実な検出を可能にするシステム及び方法を提供することにある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
特定の実施形態において、本開示は、眼科用レンズのレンズ本体の許容できない半透明欠陥の存在に対して眼科用レンズ(特に、眼内レンズ)を検査する方法を提供し、レンズ本体のエッジによって境界される領域でレーザー光を眼科用レンズ(特に、眼内レンズ)のレンズ本体に照明するステップと、照明レーザー光の反射の方向と異なる所定の検出方向に照明レンズ本体によって散乱されるレーザー光の強度を検出するステップと、散乱レーザー光の検出強度を所定の閾値強度と比較するステップと、散乱レーザー光の検出強度が所定の閾値強度よりも高い少なくとも1つのコヒーレント領域のサイズを判定するステップと、少なくとも1つのコヒーレント領域のサイズが所定の閾値サイズよりも大きいかどうかを判定するステップと、少なくとも1つのコヒーレント領域のサイズが所定の閾値サイズよりも大きい場合、レンズ本体の半透明欠陥の含有のために眼科用レンズを排除するステップとを含む。
【0008】
本開示の特定の態様によれば、散乱レーザー光の検出強度を所定の閾値強度と比較するステップを、散乱レーザー光の検出強度を表す検出グレースケール値に散乱レーザー光の検出強度を変換し、所定の閾値強度を表す閾値グレースケール値に所定の閾値強度を変換し、検出グレースケール値を閾値グレースケール値と比較することによって実行してもよく、少なくとも1つのコヒーレント領域のサイズが所定の閾値サイズよりも大きいかどうかを判定するステップを、グレースケール値が閾値グレースケール値を超える少なくとも1つのコヒーレント領域のサイズを判定することによって実行してもよい。
【0009】
本開示の更なる態様によれば、レーザーダイオードを、眼科用レンズのレンズ本体に照明するために使用してもよい。
【0010】
本開示の更なる態様によれば、レンズ本体に照明するステップは、レンズ本体のエッジの境界内だけでレンズ本体の面に衝突するレーザービームをレンズ本体に照明するステップを含んでもよく、レーザービームは、レンズ本体の面の領域の少なくとも80%の領域を含む定常衝突プロファイルを有する。
【0011】
本開示の幾つかの実施形態において、レーザービームを、均等に分布した強度で視準してもよく、定常衝突プロファイルは、レンズ本体を境界するエッジの直径よりも5%から10%小さい直径を有する円形プロファイルであってもよい。
【0012】
本開示の幾つかの更なる実施形態において、レーザービームの定常衝突プロファイルは、格子線に沿って均等に分布した強度で、長方形に配置された格子線を有する格子の形状を有してもよい。
【0013】
本開示の更なる態様によれば、レンズ本体に照明するステップは、レンズ本体の面に衝突プロファイルを有するレーザービームをレンズ本体に照明するステップを含んでもよく、衝突プロファイルは、レンズ本体の面の領域の20%未満の領域を含み、所定の経路に沿ってレンズ本体の面上で衝突プロファイルを移動させ、レンズ本体の異なる部分に連続的に照明してもよい。
【0014】
本開示の幾つかの実施形態において、ビームを集束させてもよく、衝突プロファイルは、円形スポットであってもよく、円形スポットを、所定の経路に沿ってレンズ本体の面上で移動させてもよい。
【0015】
本開示の幾つかの更なる実施形態において、衝突プロファイルは、直線であり、直線を、所定の経路に沿ってレンズ本体の面上で移動させてもよく、所定の経路は、衝突プロファイルの直線に垂直である。
【0016】
本開示によって提供される方法は、幾つかの利点を有する。まず第1に、人間オペレーターの主観的判定無しで、技術的機器及び機械アルゴリズムによって得られる測定結果の測定値及び自動的評価に基づいて、眼科用レンズをレンズ本体の半透明欠陥の含有のために排除すべきであるか否かを判定するので、方法は、客観的方法である。これは、測定結果の一貫した解釈となり、人間オペレーターによる主観的解釈を排除する。第2に、検査されるべき眼科用レンズの照明用のレーザー光(より高い強度のコヒーレント光)の使用により、認識/検出されるには低過ぎる強度のためにこれまでは見えていない半透明欠陥が見えるようになる。有利なことに、単色は必要条件でないが、照明レーザー光は、単色である。単色レーザー光の場合、検出器の方へ半透明欠陥によって散乱される任意のレーザー光を検出する検出器は、単色レーザー光の波長と異なる波長を有する迷光(散乱光)を、検出器によって検出されないように遮断/濾波することができる、従って、検出器で信号対雑音比を増加することができるように、単色光の波長でだけ(又は、中心(単色)波長を中心とした非常に狭い帯域内で)感知できる必要がある。第3に、(好ましくは、単色)散乱レーザー光の強度を検出する検出器は、レーザー光の反射の方向と異なる所定の検出方向に散乱される光だけを検出するように配置される。従って、反射レーザー光は、検出器に衝突しないので、眼科用レンズによって反射されるレーザー光は、検出器における強度測定に悪影響を与えない。又は、これを他の言葉で言うと、眼科用レンズの検査を、暗視野照明構成で実行する。
【0017】
本開示による方法によって識別されるべき特定の種類の半透明欠陥を表すヘーズは典型的に、眼科用レンズのレンズ本体内に一種の「曇った」体積として現れ、(典型的に二次元の)検出器(例えば、CCD検出器)が、(コヒーレント領域内の任意の位置における)散乱レーザー光の検出強度が所定の閾値強度よりも高いコヒーレント領域としてこのような体積半透明欠陥によって散乱されるレーザー光を検出していることは注目すべきものである。更に、散乱光の検出強度が所定の閾値強度よりも高いこのコヒーレント領域が、所定の閾値サイズよりも大きい場合、眼科用レンズをレンズ本体の半透明欠陥の含有のために排除すべきであると判定する。
【0018】
眼科用レンズのレンズ本体が半透明欠陥(例えば、ヘーズ)を含むか否かの自動判定に関して、散乱レーザー光の検出強度を検出グレースケール値に変換してもよく、所定の閾値強度を閾値グレースケール値に更に変換する。このような場合、検出グレースケール値を閾値グレースケール値と比較し、グレースケール値が閾値グレースケール値を超えるコヒーレント領域のサイズの場合、眼科用レンズを排除する。
【0019】
検査されるべき眼科用レンズに照明するレーザーダイオードの使用は、レーザーダイオードが、市場で容易に入手できる小型で比較的安価な構成要素であるので、有利である。
【0020】
一般的に、レンズ本体の面の領域の少なくとも80%の領域を同時に含みながら、定常であり、レンズ本体のエッジの境界内だけにあるレンズ本体の(照明)面に衝突プロファイルを有するレーザービームを、レンズ本体に照明することができる。レンズ本体の面に衝突するレーザービームは、(照明)面を通ってレンズ本体に(少なくとも部分的に)入り、存在する場合、半透明欠陥によって散乱される。「レンズ本体のエッジの境界内」は、半透明欠陥に起因しない検出器において非常に多くの望ましくない迷光(散乱光)を生成することでエッジが知られているので、エッジ自体がレーザービームによって衝突されないことを意味する。「衝突プロファイル」は、レーザービームによって実際に衝突されるレンズ本体の面上の領域の幾何学的形状を示すように意図されている。「定常」は、レーザービームによって衝突されるレンズ本体の面上の領域が測定/判定中に位置を変えない(測定/判定中にレーザービームによって衝突される領域が常に同じである)ことを意味する。
【0021】
例えば、ビームは、均等に分布した強度を有する視準レーザービームであってもよく、定常衝突プロファイルは、円形プロファイルであってもよい。これは、眼科用レンズの面上で、レーザービームが円によって境界される一方、円によって境界される領域上で強度が同じであることを意味する。有利なことに、円形衝突プロファイルは、レンズ本体を境界する(円形)エッジの直径よりも5%から10%小さい直径を有してもよい。
【0022】
代わりに、レーザービームの衝突プロファイルは、長方形に配置された格子線を有する格子の形状を有してもよく、これらの長方形に配置された格子線に沿って強度を均等に分布させてもよい。長方形に配置された格子線によって境界されるこのような格子の個々のセルのメッシュサイズは、半透明欠陥を確実に検出することができるように十分小さく選択されるべきである。とにかく、半透明欠陥が存在し、ユーザの視力に影響を与えることがあるレンズ本体のこれらの部分が、衝突プロファイル内に位置するように、定常衝突プロファイル(即ち、レンズ本体の面上のレーザービームの外部境界)の全サイズを選択する。
【0023】
一般的に、レンズ本体の領域の20%未満の領域を含む衝突プロファイルをレンズ本体の面に有するレーザービームをレンズ本体に照明し、レンズ本体の異なる部分に連続的に照明するように所定の経路に沿ってレンズ本体の上でこの衝突プロファイルを移動させることもできる。このような所定の経路を、レーザービームの衝突プロファイルに従って選択してもよい。例えば、衝突プロファイルは、円形スポット(レンズ本体の面上の照明スポットが円によって境界されることを意味する)であってもよく、所定の経路は、スポットをレンズ本体の上で移動させる1つ又は複数の円(レンズ本体を通過する中心光軸と同心円)を含んでもよい。代わりに、円形スポットを移動させることができる所定の経路は、螺旋であってもよく、又は任意の他の幾何学的形状を有してもよい。衝突プロファイルの別の例は、直線(レンズ本体の面にわたって延在する)であってもよく、所定の経路は、直線に垂直であってもよく(レンズ本体の「平面」に平行な平面で延在してもよく)、その結果、衝突プロファイルの直線を、走査器の走査線のように、レンズ本体の面上で移動させる。
【0024】
本開示のシステム及び方法の更なる有利な態様は、略図を用いて実施形態の下記の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、特定の実施形態による、検査される眼科用レンズのレンズ本体に含まれる半透明欠陥を用いて、本開示の方法を実行する配置を示す。
【
図2】
図2は、本開示の特定の実施形態による、レンズ本体の面に衝突するレーザービームの定常円形衝突プロファイルを用いた、検査中の眼科用レンズを示す。
【
図3】
図3は、本開示の特定の実施形態による、格子の形状を有するレーザービームの定常衝突プロファイルを用いた、検査中の眼科用レンズを示す。
【
図4】
図4は、本開示の特定の実施形態による、レンズ本体の面上で移動される円形スポットの形の衝突プロファイルを用いた、検査中のレンズ本体の半透明欠陥を含む眼科用レンズを示す。
【
図5】
図5は、本開示の特定の実施形態による、レンズ本体の面上で移動される直線の形の衝突プロファイルを用いた、検査中の眼科用レンズを示す。
【
図6】
図6は、本開示の特定の実施形態による、半透明欠陥(ヘーズ)を含むレンズ本体を有する検査眼科用レンズの像を示す。
【
図7】
図7は、本開示の特定の実施形態による、半透明欠陥を含まないレンズ本体を有する検査眼科用レンズの像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本開示の特定の実施形態による方法を実行する配置を示す。分かるように、検査されるべき眼科用レンズ1(この場合、眼内レンズ)は、当技術分野で周知のように、レンズ本体10及び2つの触覚部11を含む。更に分かるように、レンズ本体10は、
図1に概略的に示すように、半透明欠陥12を含む。レンズ本体10は、(
図2から
図5で更に分かるように)円周方向に連続する円形エッジ100によって境界される。レーザーダイオード2によって放出されるレーザー光20をレンズ本体10に照明し、センサー(例えば、CCDアレイ)を含むカメラ3を、照明レーザー光20の反射の方向(破線22で示す)と異なる(カメラ3の方に向いて)所定の検出方向に配置する。レーザーダイオード2によって放出されるレーザー光の強度は一般的に、0.5mW/cm
2から5mW/cm
2の範囲にあってもよく、特に、約1mW/cm
2であってもよい。波長は一般的に、400nmから700nmの範囲にあってもよく、特に、約670nmであってもよい。適切なレーザーダイオードは、会社Thorlabs GmbH,Munchner Weg 1,85232 Bergkirchen,Germanyから入手できる型式L670VH1のレーザーダイオードであってもよい。
【0027】
図1に示す配置は、暗視野照明構造として知られており、照明レーザー光20をカメラ3の方へ散乱させるレンズ本体10に存在する構造散乱だけが、レンズ本体10の像で明構造として現れ、それ以外は、カメラ3によって収集されるレンズ本体10の像は暗い。これは、レンズ本体10に入り、所定の検出方向へ(即ち、カメラ3の方へ)レンズ本体10に含まれる半透明欠陥12によって散乱されるレーザー光を、カメラ3によって検出することができることを意味する。この散乱レーザー光21の強度を測定することができる。カメラ3の方へ所定の検出方向に伝搬する散乱レーザー光21は、半透明欠陥12によって散乱される光のごく少数にすぎないので、この散乱レーザー光21の強度は、(レンズ本体内の楕円によって囲まれる領域において
図6で更に分かるように)比較的低い。この散乱レーザー光21は、半透明欠陥12の存在を示す。
【0028】
図示の半透明欠陥12は、ヘーズであり、ヘーズは、面に存在しないが、レンズ本体10のバルク材料内に含まれる欠陥である。他の半透明欠陥(例えば、オレンジピール欠陥)は、面に存在することがある。散乱レーザー光21の強度を、カメラ3のセンサー(例えば、CCDアレイ)によって検出し、事前設定(所定)閾値強度と比較する。
【0029】
カメラ3のセンサー(例えば、CCDアレイ)の観点から、半透明欠陥12(図示のように、この欠陥は、バルク材料に含まれるので、体積欠陥であるヘーズである)は、散乱レーザー光21の検出強度が閾値強度よりも高いコヒーレント領域120として現れる(
図4参照)。更に、このコヒーレント領域120のサイズが所定の閾値サイズよりも大きい場合、半透明欠陥の含有のために、眼科用レンズ1を排除する。1つを超える半透明欠陥12をレンズ本体10に含む場合、散乱レーザー光21の強度が閾値強度を超える(従って、個々の半透明欠陥12を示す)個々のコヒーレント領域120のサイズを合計し、個々のコヒーレント領域120のサイズの合計が閾値サイズを超える場合、眼科用レンズ1を更に排除する。
【0030】
一実施形態において、散乱レーザー光21の検出強度及び所定の閾値強度を、グレースケール値(即ち、散乱レーザー光21の検出強度を表す検出グレースケール値、及び所定の閾値強度を表す閾値グレースケール値)にそれぞれ変換する。次に、検出グレースケール値を閾値グレースケール値と比較することによって、半透明欠陥12を表すコヒーレント領域のサイズが所定の閾値サイズを超えるかどうかの判定を実行することができる。
【0031】
下記の様々な異なる選択肢において、眼科用レンズ1の検査方法について説明し、又はより正確には、レーザー光20を眼科用レンズ1のレンズ本体10に照明してもよい。一般的に、これらの選択肢を、定常衝突プロファイル(即ち、移動しないプロファイル)を有するレーザービームをレンズ本体10に照明する選択肢、及びレンズ本体10の面上で移動される衝突プロファイルをレンズ本体10に照明する選択肢に細分することができる。これらの選択肢について、
図2から
図5を用いて後述する。
【0032】
図2は、本開示の特定の実施形態による、レーザー光がレンズ本体10を境界する円形エッジ100の境界内だけのレンズ本体10に照明する、即ち、エッジ100は非常に多くの望ましくない迷光を生成することが知られているので、円形エッジ100自体に照明されない(及び半透明欠陥12はエッジに存在しない)例を示す。この例において、レンズ本体10に照明するレーザー光20は、均等に(即ち、均一に)分布した強度を有する視準レーザービームであり、レーザービームは、定常円形衝突プロファイル200を有するレンズ本体10の面に衝突する。円形衝突プロファイル200は、レンズ本体10を境界するエッジ100の直径D1よりも5%から10%小さい直径D2を有する。
図2に示す例において、円形衝突プロファイル200の直径D2は、レンズ本体10の円形エッジ100の直径D1の約80%である。このようにレンズ本体に照明することにより、散乱光の強度の測定を、単一測定動作で実行することができる。
【0033】
図3は、本開示の特定の実施形態による、レーザー光がレンズ本体10を境界する円形エッジ100の境界内だけのレンズ本体10に再度照明する例を示す。しかし、
図2に示す例と違って、レーザービームの衝突プロファイル201は、長方形に配置された格子線2010、2011を有する格子の形状を有する。レーザーダイオード2(
図1)の不可欠な部分でもある絞り又は同様の構成要素を用いて、格子の形の衝突プロファイル201を容易に生成することができる。長方形に配置された格子線2010、2011は、散乱レーザー光の強度の測定を単一測定動作で実行することもできるために、格子線2010、2011によって境界されるメッシュの個々のセルの小さいサイズを有するメッシュを規定する。
【0034】
一般的に、定常衝突プロファイル200、201(円形であるか格子であるかにかかわらず)は、存在(又は半透明欠陥12の不在)に関して信頼できる判定を得るために、レンズ本体10の面の領域の少なくとも80%の領域を含む。
【0035】
図4は、本開示の特定の実施形態による、衝突プロファイル202が、レンズ本体10の全面(どちらかがレーザービームに面している表又は裏)の領域のサイズの約1/16であるサイズを有するレンズ本体10の面上の領域を含む円形スポットであるように集束されるビームをレーザー光がレンズ本体10に照明する例を示す。円形スポットを、
図4における破線円で示す所定の経路2020に沿ってレンズ本体の面上で移動させ、更に、レンズ本体10の面の領域の少なくとも80%の領域を含むように、
図4に示す破線円と同心円状で破線円の更なる円内部に沿って、円形スポットを移動させてもよい。この実施形態において、円形スポットが所定の経路2020に沿って移動する時に、散乱レーザー光の強度の測定を、連続的に実行する。代わりに、所定の経路は、螺旋の形状を有してもよく、又はレンズ本体10の面のこの領域を含む任意の他の適切な形状を有してもよい。
【0036】
図5は、本開示の特定の実施形態による、直線である衝突プロファイル203を有するビームをレーザー光がレンズ本体10に照明する例を示す。この直線を、走査されるべき物体の面上で移動される走査線と非常に似ている、
図5における破線で示すように、直線203に垂直な所定の経路2030に沿ってレンズ本体10の面上で移動させる。ここで更に、衝突プロファイル203が所定の経路2030に沿って移動する時に、散乱レーザー光の強度の測定を、連続的に実行する。
【0037】
図6は、本開示の特定の実施形態による、レンズ本体に半透明欠陥(ヘーズ)を含み、像に描かれた楕円によって囲まれた領域内にヘーズが見える、眼科用レンズ(ここで、眼内レンズ)の(暗視野)像を示す。レーザー光を使用する場合でも、ヘーズは、レンズ本体に殆ど見えず、少なくとも検出可能である。
図6と比較して、
図7は、本開示の特定の実施形態による、ヘーズを含まない眼内レンズの(暗視野)像を示す。
【0038】
図面に示す実施形態を用いて、様々な実施形態が説明されている。しかし、本開示の基礎となる教示から逸脱することなく、様々な修正を実施形態に加えることができるので、本開示は、図示及び記載の実施形態に限定されないものとする。従って、保護の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。
【国際調査報告】