(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-13
(54)【発明の名称】無線送受信機
(51)【国際特許分類】
H04B 1/38 20150101AFI20240205BHJP
H04B 7/15 20060101ALI20240205BHJP
H04B 7/06 20060101ALI20240205BHJP
H04B 7/08 20060101ALI20240205BHJP
H01Q 3/36 20060101ALI20240205BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
H04B1/38
H04B7/15
H04B7/06 950
H04B7/08 800
H01Q3/36
H01Q21/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544441
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(85)【翻訳文提出日】2023-09-14
(86)【国際出願番号】 GB2022000008
(87)【国際公開番号】W WO2022157479
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523277334
【氏名又は名称】株式会社Visban
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アロキア,ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】スクペク,チャー
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼田 良輔
【テーマコード(参考)】
5J021
5K011
5K072
【Fターム(参考)】
5J021AA09
5J021AB04
5J021AB06
5J021AB07
5J021FA03
5J021FA06
5J021FA07
5J021FA10
5J021FA23
5J021FA26
5J021GA02
5J021JA07
5J021JA08
5K011AA06
5K011BA04
5K011DA02
5K011DA12
5K011DA27
5K011JA01
5K011JA08
5K072AA02
5K072AA29
5K072BB02
5K072BB13
5K072DD11
5K072DD15
5K072GG02
5K072GG05
5K072GG14
5K072GG22
(57)【要約】
無線送受信機(1)は、第1(3)及び第2(4)の対向する面を有し、第1(2)及び第2(3)の対向する面の間に厚さを有する平面基板(2)を含む。無線送受信機(1)はまた、第1の面(3)上に支持されたある数の第1のアンテナ(Rx
1、・・・、Rx
N)を含む。無線送受信機(1)はまた、第2の面(4)上に支持されたある数の第2のアンテナ(Tx
1,,Tx
M)を含む。無線送受信機(1)はまた、平面基板(2)によって支持され、第1のアンテナ(Rx
1、・・・、Rx
N)と第2のアンテナ(Tx
1、・・・、Tx
M)とに接続された回路(7)を含む。回路(7)は、回路(7)と第1のアンテナ(Rx
1、・・・、Rx
N)との間及び/または回路(7)と第2のアンテナ(Tx
1、・・・、Tx
M)との間で信号を送信するために平面基板(2)の厚さを通して形成されたある数のビア(8)を含む。回路(7)は、第1のアンテナ(Rx
1、・・・、Rx
N)を第1のフェーズドアレイ(5)として制御して、無線信号(9)を受信するように構成されている。第1のフェーズドアレイ(5)は指向性であり、第1の面(3)の法線(10)に対する鋭角(θ
R)の第1の範囲内で制御可能に配向可能である。回路(7)はまた、第2のアンテナ(Tx
1、・・・、Tx
M)を第2のフェーズドアレイ(6)として制御して、第1のフェーズドアレイ(5)を用いて受信した無線信号を再送信(11)するように構成されている。第2のフェーズドアレイ(6)は指向性であり、第2の面(4)の法線(12)に対する鋭角(θ
T)の第2の範囲内で制御可能に配向可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線送受信機であって、
第1及び第2の対向する面を有し、前記第1及び第2の対向する面の間に厚さを有する平面基板と、
前記第1の面上に支持された複数の第1のアンテナと、
前記第2の面上に支持された複数の第2のアンテナと、
前記平面基板によって支持され、前記複数の第1のアンテナと前記複数の第2のアンテナとに接続された回路であって、前記回路は、前記回路と前記第1のアンテナとの間及び/または前記回路と前記第2のアンテナとの間で信号を送信するために、前記平面基板の前記厚さを通して形成された複数のビアを含み、前記回路は、
前記複数の第1のアンテナを第1のフェーズドアレイとして制御して無線信号を受信することであって、前記第1のフェーズドアレイは指向性であり、前記第1の面の法線に対する鋭角の第1の範囲内で制御可能に配向可能である、前記制御することと、
前記複数の第2のアンテナを第2のフェーズドアレイとして制御して、前記第1のフェーズドアレイを用いて受信した前記無線信号を再送信することであって、前記第2のフェーズドアレイは指向性であり、前記第2の面の法線に対する鋭角の第2の範囲内で制御可能に配向可能である、前記制御することと、を行うように構成される、前記無線送受信機。
【請求項2】
前記回路は、前記第1の面上に支持された1つ以上のコンポーネント及び/または前記第2の面上に支持された1つ以上のコンポーネントを含む、請求項1に記載の無線送受信機。
【請求項3】
前記平面基板は2層以上の積層体を含み、前記回路は、前記積層体平面基板内に支持された1つ以上のコンポーネントを含む、請求項1または請求項2に記載の無線送受信機。
【請求項4】
前記回路は、前記第1の面上に支持された第1のマイクロストリップ線路と前記第2の面上に支持された第2のマイクロストリップ線路とを含み、前記第1及び第2のマイクロストリップ線路は、対応するビアによって接続される、請求項1~3のいずれか1項に記載の無線送受信機。
【請求項5】
前記回路は、前記平面基板にフリップチップボンディングされた1つ以上のコンポーネントを含む請求項1~4のいずれか1項に記載の無線送受信機。
【請求項6】
前記回路は、前記第1のフェーズドアレイのアナログビームフォーミング及び/または前記第2のフェーズドアレイのアナログビームステアリングのために構成されたアナログ回路を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の無線送受信機。
【請求項7】
前記アナログ回路は、前記第1のフェーズドアレイの各第1のアンテナに対応する第1のバラクタダイオードを含み、各第1のバラクタダイオードは、前記個々の第1のアンテナから受信した信号に位相シフトを適用するように構成され、
前記回路は、前記第1のバラクタダイオードの静電容量を制御することによって、前記複数の第1のアンテナを前記第1のフェーズドアレイとして制御するように構成されている、請求項6に記載の無線送受信機。
【請求項8】
前記アナログ回路は、前記第2のフェーズドアレイの各第2のアンテナに対応する第2のバラクタダイオードを含み、各第2のバラクタダイオードは、前記個々の第2のアンテナに送信されている信号に位相シフトを適用するように構成され、
前記回路は、前記第2のバラクタダイオードの静電容量を制御することによって、前記複数の第2のアンテナを前記第2のフェーズドアレイとして制御するように構成されている、請求項6または請求項7に記載の無線送受信機。
【請求項9】
前記回路は、前記第1のフェーズドアレイのデジタルビームフォーミング及び/または前記第2のフェーズドアレイのデジタルビームステアリングのために構成された1つ以上のデジタル回路を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の無線送受信機。
【請求項10】
前記複数の第1のアンテナは複数の第1のサブアレイ内に配列され、各第1のサブアレイは前記第1のアンテナのうちの2つ以上を含み、
前記複数の第2のアンテナは複数の第2のサブアレイ内に配列され、各第2のサブアレイは前記第2のアンテナのうちの2つ以上を含み、
前記回路は、ハイブリッドビームフォーミング及び/またはビームステアリングのために構成されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の無線送受信機。
【請求項11】
前記回路は、
複数の第1のアナログ回路であって、各第1のアナログ回路は、個々の第1のサブアレイから受信した信号に対してアナログビームフォーミングを行うように構成されている、前記複数の第1のアナログ回路と、
複数の第2のアナログ回路であって、各第2のアナログ回路は、個々の第2のサブアレイに対してアナログビームステアリングを行うように構成されている、前記複数の第2のアナログ回路と、
前記第1のアナログ回路から受信した信号に対してデジタルビームフォーミングを行って加算信号を取得し、前記加算信号に対してビームステアリングを行って、複数の送信信号を生成し個々の第2のアナログ回路に出力するように構成された1つ以上のデジタル回路と、を含む、請求項10に記載の無線送受信機。
【請求項12】
前記第2の面上に支持された複数の第3のアンテナと、
前記第1の面上に支持された複数の第4のアンテナと、をさらに含み、
前記回路はさらに、
前記複数の第3のアンテナを第3のフェーズドアレイとして制御して無線信号を受信することであって、前記第3のフェーズドアレイは指向性であり、前記第2の面の法線に対する鋭角の第3の範囲内で制御可能に配向可能である、前記制御することと、
前記複数の第4のアンテナを第4のフェーズドアレイとして制御して、前記第3のフェーズドアレイを用いて受信した前記無線信号を再送信することであって、前記第4のフェーズドアレイは指向性であり、前記第2の面の法線に対する鋭角の第4の範囲内で制御可能に配向可能である、前記制御することと、を行うように構成されている、請求項1~11のいずれか1項に記載の無線送受信機。
【請求項13】
前記回路は、交互サイクルの第1の期間中に、
前記複数の第1のアンテナを前記第1のフェーズドアレイとして制御して前記無線信号を受信することと、
前記複数の第2のアンテナを前記第2のフェーズドアレイとして制御して、前記第1のフェーズドアレイを用いて受信した前記無線信号を再送信することと、を行うように構成され、
前記回路は、前記交互サイクルの第2の期間中に、
前記複数の第2のアンテナを前記第2のフェーズドアレイとして制御して前記無線信号を受信することと、
前記複数の第1のアンテナを前記第1のフェーズドアレイとして制御して、前記第2のフェーズドアレイを用いて受信した前記無線信号を再送信することと、を行うように構成される、請求項1~11のいずれか1項に記載の無線送受信機。
【請求項14】
前記第2の面から離れるように送信される前記無線信号は、前記第1の面から離れるように送信される無線信号よりも出力が低い、請求項12または請求項13に記載の無線送受信機。
【請求項15】
前記第1のアンテナ及び/または第2のアンテナは、前記平面基板の誘電正接よりも小さい誘電正接を有する誘電体材料を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の無線送受信機。
【請求項16】
前記回路は、無線信号を受信して再送信するための2つ以上の通過帯域を規定し、前記回路は、前記通過帯域のうちの1つ以上が無効になり得るように構成可能である、請求項1~15のいずれか1項に記載の無線送受信機。
【請求項17】
前記無線送受信機は、時間多重無線通信システム内で無線信号を受信して再送信するように構成され、前記回路は、1つ以上の選択されたサービスプロバイダに対応する無線信号のみを再送信するように構成可能である、請求項1~15のいずれか1項に記載の無線送受信機。
【請求項18】
無線送受信機であって、
複数の第1のアンテナと、
複数の第2のアンテナと、
前記複数の第1のアンテナと前記複数の第2のアンテナとに接続された回路と、を含み、前記回路は、
前記複数の第1のアンテナを第1のフェーズドアレイとして制御して無線信号を受信することであって、前記第1のフェーズドアレイは指向性であり、第1の角度範囲内で制御可能に配向可能である、前記制御することと、
前記複数の第2のアンテナを第2のフェーズドアレイとして制御して、前記第1のフェーズドアレイを用いて受信した前記無線信号を再送信することであって、前記第2のフェーズドアレイは指向性であり、前記第2の面の法線に対する第2の角度範囲内で制御可能に配向可能である、前記制御することと、を行うように構成され、
前記回路は、無線信号を受信して再送信するための2つ以上の通過帯域を規定し、前記回路は、前記通過帯域のうちの1つ以上が無効になり得るように構成可能である、前記無線送受信機。
【請求項19】
前記2つ以上の通過帯域のそれぞれが、1つ以上のアナログフィルタを含む請求項18に記載の無線送受信機。
【請求項20】
前記2つ以上の通過帯域のそれぞれが、1つ以上のデジタルフィルタを含む請求項18または請求項19に記載の無線送受信機。
【請求項21】
前記回路は、前記2つ以上の通過帯域のそれぞれが、1回限りの構成プロセスの間に独立に有効または無効にされ得るように、構成可能である、請求項18~20のいずれか1項に記載の無線送受信機。
【請求項22】
前記回路は、前記2つ以上の通過帯域のそれぞれが、使用中に独立に有効または無効にされ得るように、構成可能である、請求項18~20のいずれか1項に記載の無線送受信機。
【請求項23】
無線送受信機であって、
複数の第1のアンテナと、
複数の第2のアンテナと、
前記複数の第1のアンテナと前記複数の第2のアンテナとに接続された回路と、を含み、前記回路は、
前記複数の第1のアンテナを第1のフェーズドアレイとして制御して無線信号を受信することであって、前記第1のフェーズドアレイは指向性であり、第1の角度範囲内で制御可能に配向可能である、前記制御することと、
前記複数の第2のアンテナを第2のフェーズドアレイとして制御して、前記第1のフェーズドアレイを用いて受信した前記無線信号を再送信することであって、前記第2のフェーズドアレイは指向性であり、前記第2の面の法線に対する第2の角度範囲内で制御可能に配向可能である、前記制御することと、を行うように構成され、
前記無線送受信機は、時間多重無線通信システム内で無線信号を受信して再送信するように構成され、前記回路は、1つ以上の選択されたサービスプロバイダに対応する無線信号のみを再送信するように構成可能である、前記無線送受信機。
【請求項24】
前記回路と前記複数の第1のアンテナとの間の接続の全長が、前記平面基板によって支持され、
前記回路と前記複数の第2のアンテナとの間の接続の全長が、前記平面基板によって支持される、請求項1~23のいずれか1項に記載の無線送受信機。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか1項に記載の前記無線送受信機を含む構造物。
【請求項26】
請求項1~24のいずれか1項に記載の無線送受信機または請求項25に記載の構造物を使用する方法であって、
前記複数の第1のアンテナを第1のフェーズドアレイとして制御して無線信号を受信することであって、前記第1のフェーズドアレイは指向性であり、第1の角度範囲内で制御可能に配向可能である、前記制御することと、
前記複数の第2のアンテナを第2のフェーズドアレイとして制御して、前記第1のフェーズドアレイを用いて受信した前記無線信号を再送信することであって、前記第2のフェーズドアレイは指向性であり、第2の角度範囲内で制御可能に配向可能である、前記制御することと、を含む前記方法。
【請求項27】
無線送受信機であって、
第1及び第2の対向する面を有し、前記第1及び第2の対向する面の間に厚さを有する平面基板と、
前記第1の面上に支持された複数の第1のアンテナと、
前記第2の面上に支持された複数の第2のアンテナと、
前記平面基板によって支持され、前記複数の第1のアンテナと前記複数の第2のアンテナとに接続された回路であって、前記回路は、前記回路と前記第1のアンテナとの間及び/または前記回路と前記第2のアンテナとの間で信号を送信するために、前記平面基板の前記厚さを通して形成された複数のビアを含み、前記回路は、
無線信号を受信するように前記複数の第1のアンテナを制御することと、
前記複数の第2のアンテナを第2のフェーズドアレイとして制御して、前記第1のフェーズドアレイを用いて受信した前記無線信号を再送信することであって、前記第2のフェーズドアレイは指向性であり、前記第2の面の法線に対する鋭角の第2の範囲内で制御可能に配向可能である、前記制御することと、を行うように構成される、前記無線送受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線送受信機及び無線送受信機を動作させるための方法に関し、詳細には、5GHzを超える周波数を伴う無線信号に対する無線送受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信ネットワークが、データレートを向上させるために高周波数側に移行するにつれ、それに伴う波長の減少により、送信機への見通し線のないエリア(たとえば、都市部、森林地帯、構造物内など)において均一なカバレージを実現することに関する問題が生じる可能性がある。
【0003】
無線通信ネットワークが5GHz以上の周波数(しばしば、「第5世代」または「5G」と言われる)に移行し始めると、酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)及び水蒸気(H2O)などの大気ガスによる減衰の影響が、いくつかの周波数帯域において著しくなる可能性がある。大気気象の影響により、このような問題点が悪化する可能性があり、たとえば減衰が60dB.m-1の領域に達する場合がある。
【0004】
5GHz未満の周波数では、建物及び競技場などの構造物の内部に無線ネットワークカバレージを提供することがすでに問題となっている。高周波数側に移行すると、構造物内に進入する信号強度がさらに劣化する。熱調節に関連する建物のガラスの改良、たとえば、建物をより涼しく保つのを助けるために薄い金属化層を含めることによって、外部からの無線信号がさらに減衰する場合がある。
【0005】
CN106992807Aには、5G通信用の信号中継システムが記載されている。システムは、第1の受信アンテナ、第1の低雑音増幅器モジュール、及び第1の送信アンテナを含むダウンリンク信号増強サブシステムを含んでいる。システムはまた、第2の受信アンテナ、第2の低雑音増幅器モジュール、及び第2の送信アンテナを含むアップリンク信号増強サブシステムを含んでいる。5G通信用の記載された信号中継システムは、壁またはガラスを通過する信号をサポートする。基地局によって送られる5G信号を増幅して屋内無線端末に送信することができ、屋内無線端末の信号を増幅して基地局にアップロードすることができる。
【0006】
US2018/139521A1には、光ファイバネットワークとの間で通信信号を送信/受信するように構成された建物の外側の第1の送受信装置を含む、光ファイバネットワークへのアクセスをもたらすための透明な無線ブリッジが記載されている。窓の外側に取り付けられた第1のガラスシートが、第1の送受信装置に通信可能に結合され、第1の送受信装置との間で通信信号を送受信するように構成された第1のアンテナを含んでいる。第2のガラスシートが、窓の内側に取り付けられ、第1のアンテナとの間で通信信号を無線で送受信するように構成された第2のアンテナを含んでいる。無線ブリッジはまた、建物の内部に配置され、第2のアンテナに通信可能に結合されて、第2のアンテナとの間でデータを無線で送受信するように構成された第2の送受信装置を含んでいる。
【0007】
US2015/380816A1には、ドナーアンテナと隣接する基地局との間で最適な配向点を一貫して維持することができるアンテナ制御システム及び方法が記載されている。基地局からの信号を受信するためのアンテナ制御システムは、窓ガラスの内側に固定されることによって配置されアレイアンテナによって構成されるアンテナモジュールを含むドナーアンテナと、複数の伝送線を含む移相器と、移相器を制御してアンテナモジュールの配向方向を変えるように構成された位相制御器と、を含んでいる。リピータが、アンテナモジュールによって受信された受信信号を測定するための測定モジュールを含んでいる。分析モジュールは、測定モジュールの測定結果に基づいて、アンテナモジュールの各配向方向における信号品質パラメータを分析するためのものである。生成モジュールは、分析モジュールの分析結果に基づいて、アンテナモジュールの配向方向を制御するためのアンテナ制御信号を生成するためのものである。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、第1及び第2の対向する面を有し、第1及び第2の対向する面の間に厚さを有する平面基板を含む無線送受信機が提供される。無線送受信機はまた、第1の面上に支持されたある数の第1のアンテナを含む。無線送受信機はまた、第2の面上に支持されたある数の第2のアンテナを含む。無線送受信機はまた、平面基板によって支持され、第1のアンテナ及び第2のアンテナに接続された回路を含む。回路は、回路と第1のアンテナとの間及び/ または回路と第2のアンテナとの間で信号を送信するために平面基板の厚さを通して形成されたある数のビアを含む。回路は、第1のアンテナを第1のフェーズドアレイとして制御して、無線信号を受信するように構成されている。第1のフェーズドアレイは指向性であり、第1の面の法線に対する鋭角の第1の範囲内で制御可能に配向可能である。回路はまた、第2のアンテナを第2のフェーズドアレイとして制御して、第1のフェーズドアレイを用いて受信した無線信号を再送信するように構成されている。第2のフェーズドアレイは指向性であり、第2の面の法線に対する鋭角の第2の範囲内で制御可能に配向可能である。
【0009】
ビアは、層状にしてデバイスにパターニングし得るかまたはディスクリートコンポーネントとして異種統合し得る異なる機能のコンポーネントを相互接続するためであってもよい。
【0010】
第1のフェーズドアレイが配向される方向は、第1のフェーズドアレイの第1の放射パターンの主放射線ローブの軸に対応してもよい。第2のフェーズドアレイが配向される方向は、第2のフェーズドアレイの第2の放射パターンの主放射線ローブの軸に対応してもよい。
【0011】
第1及び第2のフェーズドアレイは、第1及び第2のフェーズドアレイの方向が固定されていないという意味で制御可能に配向可能であってもよく、回路による使用中に独立に変更してもよい。
【0012】
回路は、たとえば、伝導性配線、マイクロストリップ線路、伝導性ビアなどの物理的な配線リンクを用いて、第1のアンテナ及び第2のアンテナに接続してもよい。
【0013】
本明細書では、鋭角とは0~90度の間(0及び90度を含む)を意味する。鋭角の第1の範囲は、第1の面から離れる方に向かう第1の半球の全部または全部未満を含んでいてもよい。言い換えれば、鋭角の第1の範囲は、第1の半球全体を含む必要はない。鋭角の第2の範囲は、第2の面から離れる方に向かう第2の半球の全部または全部未満を含んでいてもよい。第1の半球と第2の半球とを組み合わせて、完全な球を規定してもよい。
【0014】
デバイスは、無線通信ネットワークの基地局を提供してもよい。デバイスは、無線通信ネットワークの中継局を提供してもよい。デバイスは、無線通信ネットワークの送受信装置を提供してもよい。
【0015】
平面基板は軟質フィルムまたはシートであってもよい。
【0016】
第1のアンテナは第1の面上に直接配置してもよい。1つ以上の誘電体層を、第1のアンテナと第1の面との間に配置してもよい。第2のアンテナは第2の面上に直接配置してもよい。1つ以上の誘電体層を、第2のアンテナと第2の面との間に配置してもよい。
【0017】
第1のフェーズドアレイは、使用中に第1の範囲内の任意の角度に制御可能に配向可能であってもよい。第1の範囲は、第1の面と平行な底面を有する半球全体を包含するように延びてもよい。しかし、第1の範囲は、半球よりも小さい角度の範囲を包含してもよい。第1の範囲は、2πステラジアン以下、3π/4ステラジアン以下、πステラジアン以下、またはπ/2ステラジアン以下であってもよい。第1の範囲は実質的に円錐形状であってもよい。第1の範囲は実質的にホーン形状であってもよい。第1の範囲は実質的にファン形状であってもよい。
【0018】
第1のフェーズドアレイは、使用中に第1及び/または第2の軸の周りに制御可能に配向可能であってもよい。第1の軸と第2の軸とは直交していてもよい。第1の軸と第2の軸は、無線送受信機が設置されたときに、重力に対する水平方向及び垂直方向に対応してもよい。第1のフェーズドアレイは、使用中に、第1の面の法線に対して鋭角に配向された天頂を有する球座標系の方位角及び/または極角の周りに制御可能に配向可能であってもよい。天頂は第1の面に垂直である必要はない。天頂は第1の面と平行である必要はない。
【0019】
第2のフェーズドアレイは、使用中に第2の範囲内の任意の角度に制御可能に配向可能であってもよい。第2の範囲は、第2の面と平行な底面を有する半球全体を包含するように延びてもよい。しかし、第2の範囲は、半球よりも小さい角度の範囲を包含してもよい。第2の範囲は、2πステラジアン以下、3π/4ステラジアン以下、πステラジアン以下、またはπ/2ステラジアン以下であってもよい。第2の範囲は実質的に円錐形状であってもよい。第2の範囲は実質的にホーン形状であってもよい。第2の範囲は実質的にファン形状であってもよい。
【0020】
第2のフェーズドアレイは、使用中に第2及び/または第2の軸の周りに制御可能に配向可能であってもよい。第2の軸と第2の軸とは直交していてもよい。第2の軸と第2の軸は、無線送受信機が設置されたときに、重力に対する水平方向及び垂直方向に対応してもよい。第2のフェーズドアレイは、使用中に、第2の面の法線に対して鋭角に配向された天頂を有する球座標系の方位角及び/または極角の周りに制御可能に配向可能であってもよい。天頂は第2の面に垂直である必要はない。天頂は第2の面と平行である必要はない。
【0021】
回路は、第1の面上に支持された1つ以上のコンポーネントを含んでいてもよい。回路は、第2の面上に支持された1つ以上のコンポーネントを含んでいてもよい。
【0022】
平面基板は、2層以上の積層体を含んでいてもよいし、2層以上の積層体の形態を取ってもよい。回路は、積層体平面基板内に支持された1つ以上のコンポーネントを含んでいてもよい。
【0023】
平面基板は透明であってもよい。透明とは、可視波長に対して最小透過率が50%である平面基板に対応してもよい。第1及び/または第2のアンテナを支持する無線送受信機の一部は、透明であっても不透明であってもよい。
【0024】
透明な平面基板は、ガラスを含んでいてもよいし、ガラスから形成してもよい。透明な平面基板は、限定することなく、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(ペット)、ポリエチレンナフタレート(ペン)、シクロオレフィンポリマー(COP)、または任意の他のポリマーであって、回路を支持するのに十分な機械的強度と、透けて見えるのに十分な透明性とを有するものを含む1つ以上のプラスチックを含んでいてもよいし、またはこれらのプラスチックの形態を取ってもよい。
【0025】
平面基板は、1層以上のガラス及び/またはプラスチック及び/または接着剤を含む積層体を含んでいてもよいし、積層体の形態を取ってもよい。積層体は1つ以上の導体層を含んでいてもよい。積層体の導体層は、内部(すなわち、第1の面と第2の面との間)、及び/または外部(すなわち、第1及び/または第2の面上に支持される)にあってもよい。積層体の1層以上が、回路の1つ以上のコンポーネントを支持してもよい。
【0026】
回路は、第1の面上に支持された第1のマイクロストリップ線路と、第2の面上に支持された第2のマイクロストリップ線路とを含んでいてもよい。第1及び第2のマイクロストリップ線路は、対応するビアによって接続してもよい。第1及び第2の面上に支持されたマイクロストリップ線路間を接続するビアは、マイクロストリップ線路にインピーダンス整合してもよい。回路は、第1の面上に支持されたある数の第1のマイクロストリップ線路を含んでいてもよい。回路は、第2の面上に支持されたある数の第2のマイクロストリップ線路を含んでいてもよい。任意のマイクロストリップ線路は、平面基板を通って延びるビアによって、平面基板の反対側で支持される回路の1つ以上のマイクロストリップ線路及び/または他のコンポーネントに接続してもよい。
【0027】
たとえば、第1の面と第2の面との間の放射伝達または容量結合と比べて、このような物理的接続は、平面基板が、損失誘電損失特性を有する材料(複数可)から形成されることを必要としない。必須ではないが、損失誘電損失特性を有する材料をやはり使用してもよい。
【0028】
回路は、平面基板にフリップチップボンディングされた1つ以上のコンポーネントを含んでいてもよい。回路の1つ以上のコンポーネントを、第1の面にフリップチップボンディングしてもよい。回路の1つ以上のコンポーネントを、第2の面にフリップチップボンディングしてもよい。回路の1つ以上のコンポーネントを、第1の面にフリップチップボンディングしてもよく、1つ以上のさらなるコンポーネントを、第2の面にフリップチップボンディングしてもよい。
【0029】
1つ以上のコンポーネントを、異種統合ロードマップ(HIR)に従って平面基板にフリップチップボンディングしてもよい。異種統合ロードマップ(HIR)は、シリコンシステムインパッケージ(SiP)技術のために開発された一連のガイドラインである。HIRは、たとえば、HIR2019版の出版物に説明されているガイドラインを指してもよい。半導体/フラットパネルデバイスをパッケージするための基板を用いた半導体/フラットパネルデバイスの製造には確立されているが、発明者の知る限りでは、HIRの方法は、プリント回路基板以外の基板上(たとえば、ガラス及び/または透明プラスチック基板上)での異種統合には、これまで適応されていなかった。HIRには、中間キャリアとしてガラス基板を用いることが含まれ得るが、本明細書で提案する形式の全体的なシステム統合がガラス上で行われているということは知らない。無線送受信機は、プリント回路基板基板(Print Circuit Board Substrate)を含んでいなくてもよい。無線送受信機は、プリント回路基板基板を含んでいなくてもよいが、プリント回路基板基板を含み得る別個にパッケージされたデバイス(たとえば電源)に接続してもよい。
【0030】
回路は、第1のフェーズドアレイのアナログビームフォーミング及び/または第2のフェーズドアレイのアナログビームステアリングのために構成されたアナログ回路を含んでいてもよい。アナログ回路は、デジタル領域に変換せずに無線信号を受信して再送信する。
【0031】
アナログ回路は、第1のフェーズドアレイの各第1のアンテナに対応する第1のバラクタダイオードを含んでいてもよい。各第1のバラクタダイオードは、個々の第1のアンテナから受信した信号に位相シフトを適用するように構成してもよい。回路は、第1のバラクタダイオードの静電容量を制御することによって、複数の第1のアンテナを第1のフェーズドアレイとして制御するように構成してもよい。回路は、各第1のバラクタダイオードに印加される逆バイアスを制御することによって、第1のバラクタダイオードの静電容量を制御するように構成してもよい。
【0032】
アナログ回路は、第2のフェーズドアレイの各第2のアンテナに対応する第2のバラクタダイオードを含んでいてもよい。各第2のバラクタダイオードは、個々の第2のアンテナに送信されている信号に位相シフトを適用するように構成してもよい。回路は、第2のバラクタダイオードの静電容量を制御することによって、複数の第2のアンテナを第2のフェーズドアレイとして制御するように構成してもよい。回路は、各第2のバラクタダイオードに印加される逆バイアスを制御することによって、第2のバラクタダイオードの静電容量を制御するように構成してもよい。
【0033】
回路は、第1のフェーズドアレイのデジタルビームフォーミング及び/または第2のフェーズドアレイのデジタルビームステアリング用に構成された1つ以上のデジタル回路を含んでいてもよい。回路は、第1のアンテナのそれぞれに対応するデジタルチャネルを含んでいてもよい。回路は、第2のアンテナのそれぞれに対応するデジタルチャネルを含んでいてもよい。
【0034】
回路はまた、第1のアンテナから受信した信号を送信帯域から基底帯域に変換するように構成されたダウンコンバージョンセクションを含んでいてもよい。回路はまた、ダウンコンバートされた信号に対してデジタルビームフォーミングを行って加算信号を取得し、加算信号に対してビームステアリングを行って複数の送信信号を生成及び出力するように構成された1つ以上のデジタル回路を含んでいてもよい。回路はまた、送信信号を基底帯域から送信帯域に変換し、アップコンバートされた送信信号を対応する第2のアンテナに出力するように構成されたアップコンバージョンセクションを含んでいてもよい。
【0035】
ダウンコンバージョン及びアップコンバージョンは信号搬送周波数を指す。ダウンコンバージョン及び/またはアップコンバージョンは、標準的なヘテロダイン技術及び装置を利用してもよい。基底帯域は、ゼロ周波数の搬送周波数もしくはゼロ周波数に近い搬送周波数、または同等に搬送周波数の不在を指してもよい。基底帯域に変換すると、より低い性能のアナログ/デジタルコンバーター(ADC)を用いることが可能になり得る。
【0036】
複数の第1のアンテナを、ある数の第1のサブアレイ内に配列してもよい。各第1のサブアレイは、第1のアンテナのうちの2つ以上を含んでいてもよい。第2のアンテナを、複数の第2のサブアレイ内に配列してもよい。各第2のサブアレイは、第2のアンテナのうちの2つ以上を含んでいてもよい。回路は、ハイブリッドビームフォーミング及び/またはビームステアリング用に構成してもよい。回路は、第1のサブアレイのそれぞれに対応するデジタルチャネルを含んでいてもよい。回路は、第2のサブアレイのそれぞれに対応するデジタルチャネルを含んでいてもよい。
【0037】
回路はまた、ある数の第1のアナログ回路を含んでいてもよい。各第1のアナログ回路は、個々の第1のサブアレイから受信した信号に対してアナログビームフォーミングを行うように構成してもよい。回路はまた、ある数の第2のアナログ回路を含んでいてもよい。各第2のアナログ回路は、個々の第2のサブアレイに対してアナログビームステアリングを行うように構成してもよい。回路はまた、第1のアナログ回路から受信した信号に対してデジタルビームフォーミングを行って加算信号を取得し、加算信号に対してビームステアリングを行って、ある数の送信信号を生成し個々の第2のアナログ回路に出力するように構成された1つ以上のデジタル回路を含んでいてもよい。
【0038】
各第1のアナログ回路は、個々の第1のサブアレイの各第1のアンテナに対応する第1のバラクタダイオードを含んでいてもよい。各第1のバラクタダイオードは、個々の第1のアンテナから受信した信号に位相シフトを適用するように構成してもよい。各第1のアナログ回路は、対応する第1のバラクタダイオードの静電容量を制御することによって、個々の第1のサブアレイから受信した信号に対してアナログビームフォーミングを行うように構成してもよい。各第1のアナログ回路は、各第1のバラクタダイオードに印加される逆バイアスを制御することによって、対応する第1のバラクタダイオードの静電容量を制御するように構成してもよい。
【0039】
各第2のアナログ回路は、個々の第2のサブアレイの各第2のアンテナに対応する第2のバラクタダイオードを含んでいてもよい。各第2のバラクタダイオードは、個々の第2のアンテナに送信されている信号に位相シフトを適用するように構成してもよい。各第2のアナログ回路は、対応する第2のバラクタダイオードの静電容量を制御することによって、個々の第2のサブアレイに対してアナログビームステアリングを行うように構成してもよい。各第2のアナログ回路は、各第2のバラクタダイオードに印加される逆バイアスを制御することによって、対応する第2のバラクタダイオードの静電容量を制御するように構成してもよい。
【0040】
回路はまた、第1のアナログ回路から受信した信号を、1つ以上のデジタル回路によって受信するために、送信帯域から基底帯域に変換するように構成されたダウンコンバージョンセクションを含んでいてもよい。回路はまた、1つ以上のデジタル回路から出力された送信信号を、個々の第2のアナログ回路によって受信するために、基底帯域から送信帯域に変換するように構成されたアップコンバージョンセクションを含んでいてもよい。
【0041】
回路は、1つ以上のフィルタを含んでいてもよい。フィルタは、膜バルク音響共振器(FBAR)を含んでもいてもよいし、またはその形式を取ってもよい。フィルタは、薄膜バルク音響共振器(TFBAR)を含んでもいてもよいし、またはその形式を取ってもよい。フィルタは、メタマテリアルを含んでもよいし、またはメタマテリアルから形成してもよい。無線送受信機での使用に適したメタマテリアルフィルタには、限定することなく、以下に記載されたメタマテリアルフィルタが含まれる。「Metamaterial Structure Inspired Miniature RF/Microwave Filters」,Abdullah Alburaikan,PhD Thesis(2016),The University of Manchester,https://www.escholar.manchester.ac.uk/uk-ac-man-scw:305308,(詳細には、56ページ以降を参照)。
【0042】
無線送受信機は、以下で使用される5Gの定義に従う無線信号用に構成してもよい。「5G Evolution:A View on 5G Cellular Technology Beyond 3GPP Release 15」,Amitabha Ghosh,Andreas Maeder,Matthew Baker and Devaki Chandramouli,IEEE Access(2019),Vol.7,pg 127639,DOI 10.1109/ACCESS.2019.2939938。
【0043】
無線送受信機は、5GHz~300GHz(両端を含む)の搬送周波数を有する無線信号用に構成してもよい。無線送受信機は、30GHz~300GHz(両端を含む)の搬送周波数を有する無線信号用に構成してもよい。無線送受信機は、NATOによって定義されるK(20GHz~40GHz)、L(40GHz~60GHz)、及びM(60GHz~100GHz)帯域のうちの1つ以上内の搬送周波数を有する無線信号用に構成してもよい。無線送受信機は、電気電子技術者協会(IEEE)によって定義されるKa(27GHz~40GHz)、V(40GHz~75GHz)、及びW(75GHz~110GHz)帯域のうちの1つ以上内の搬送周波数を有する無線信号用に構成してもよい。無線送受信機は、300GHzを超える搬送周波数を有する無線信号用に構成してもよい。無線送受信機は、1THz以上の搬送周波数を有する無線信号用に構成してもよい。無線送受信機は、5G信号である無線信号用に構成してもよい。無線送受信機は、6G信号である無線信号用に構成してもよい。無線送受信機は、7G信号である無線信号用に構成してもよい。
【0044】
無線送受信機はまた、第2の面上に支持されたある数の第3のアンテナと、第1の面上に支持されたある数の第4のアンテナとを含んでいてもよい。回路はまた、第3のアンテナを第3のフェーズドアレイとして制御して、無線信号を受信するように構成してもよい。第3のフェーズドアレイは、指向性であり、第2の面の法線に対する鋭角の第3の範囲内で制御可能に配向可能であってもよい。回路はまた、複数の第4のアンテナを第4のフェーズドアレイとして制御して、第3のフェーズドアレイを用いて受信した無線信号を再送信するように構成してもよい。第4のフェーズドアレイは、指向性であり、第2の面の法線に対する鋭角の第4の範囲内で制御可能に配向可能であってもよい。
【0045】
このようにして、デバイスは、第1及び第2のアンテナを用いて無線信号を第1の面から第2の面に中継してもよく、第3及び第4のアンテナを用いて逆方向に信号を中継してもよい。第1の面上では、第1のアンテナが受信用Rxアンテナを提供してもよく、第4のアンテナが送信用Txアンテナを提供してもよい。第2の面上では、第3のアンテナが受信用Rxアンテナを提供してもよく、第2のアンテナが送信用Txアンテナを提供してもよい。
【0046】
第1及び/または第2のアンテナに関して説明した任意の特徴は、第3及び/または第4のアンテナに対して複製してもよいし、またはそれらと組み合わせて用いてもよい。第1のアンテナから第2のアンテナに無線信号を中継することに関して説明した任意の特徴は、第3のアンテナから第4のアンテナに無線信号を中継することに対して複製してもよいし、またはそれと組み合わせて用いてもよい。第3及び第4のフェーズドアレイに対するビームフォーミング及び/またはビームステアリングは、アナログ、デジタル、またはハイブリッドアプローチを用いて実装してもよい。回路は、第1のアンテナから第2のアンテナに無線信号を中継することを制御するように構成された第1の回路と、第1の回路と同じであってもよい第2の回路(ただし、第2の回路は、第3のアンテナから第4のアンテナに無線信号を中継することを制御するように構成してもよい)とを含んでいてもよい。
【0047】
第3のアンテナは第2の面上に直接配置してもよい。1つ以上の誘電体層を、第3のアンテナと第2の面との間に配置してもよい。第4のアンテナは第1の面上に直接配置してもよい。1つ以上の誘電体層を、第4のアンテナと第1の面との間に配置してもよい。
【0048】
回路は、交互サイクルの第1の期間中に、第1のアンテナを第1のフェーズドアレイとして制御して無線信号を受信し、第2のアンテナを第2のフェーズドアレイとして制御して、第1のフェーズドアレイを用いて受信した無線信号を再送信するように構成してもよい。回路は、交互サイクルの第2の期間中に、複数の第2のアンテナを第2のフェーズドアレイとして制御して無線信号を受信し、複数の第1のアンテナを第1のフェーズドアレイとして制御して、第2のフェーズドアレイを用いて受信した無線信号を再送信するように構成してもよい。
【0049】
このようにして、第1及び第2のアンテナを多重化して送受信装置として機能するようにしてもよい。第1の期間中、無線信号を一方向に中継してもよく、第2の期間中、無線信号を中継する方向を逆転してもよい。第1及び第2の期間の交互サイクルは、無線送受信機が作動している間、繰り返してもよい。第1の期間と第2の期間とは長さが同じであってもよい。第1の期間と第2の期間とは長さが異なっていてもよい。
【0050】
第2の面から離れるように送信される無線信号は、第1の面から離れるように送信される無線信号より出力が低くてもよい。たとえば、第1の面は建物の外側に向けてもよく、第2の面は建物の内部に向けてもよい。建物の内部で再送信される無線信号に対して用いる電力レベルを、より広範な外部ネットワークへの送信に必要なものと比べて低減すると、デバイスの消費電力が減り得る。建物内で再送信される信号に対して低減した電力レベルを用いると、建物内の他の電子機器及び/または機器との干渉が減り得る。建物内で再送信される信号に対して低減した電力レベルを用いると、無線信号の強度について心配する任意の建物占有者/ユーザに安心感を与え得る。
【0051】
第1及び/または第2のアンテナは、平面基板の誘電正接よりも小さい誘電正接を有する誘電体材料を含んでいてもよい。
【0052】
誘電体材料は、周波数28GHzにおける平面基板の誘電正接よりも小さい誘電正接を有していてもよい。平面基板の誘電正接は、第1及び/または第2のアンテナに含まれる誘電体材料の誘電正接よりも2倍、3倍、5倍、または10倍大きくてもよい。平面基板の誘電正接は、周波数28GHzにおいて第1及び/または第2のアンテナに含まれる誘電体材料の誘電正接よりも2倍、3倍、5倍、または10倍大きくてもよい。誘電体材料は、接地と第1及び/または第2のアンテナの放射面との間に配置してもよい。第3及び/または第4のアンテナは誘電体材料を含んでいてもよい。誘電体材料は、接地とアンテナの放射面との間に配置してもよい。
【0053】
このようにして、デバイスは随意に、アンテナに対して低損失誘電体材料を利用し得るが、アンテナと回路との間の直接の配線接続は、平面基板を低損失材料から形成する必要はなく、代わりにシリカガラス及び/またはポリマーなどの比較的高誘電損失材料から形成してもよいことを意味する。この結果、ロールツーロール製造法に適した高損失だが柔軟なポリマーフィルムの使用を可能にすること等により、コスト及び製造の複雑さが減る場合がある。
【0054】
誘電体材料には、無機酸化物、シリカ、アルミナ、有機材料、フルオロポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、及びナノコンポジットのうちの1つ以上が含まれていてもよい。誘電体材料は、フィルムの形態を取ってもよく、1μm~1mm(両端を含む)の厚さであってもよい。誘電体材料は、同じ材料のアモルファス領域及び/または結晶領域を含んでいてもよい。誘電体材料が多形を示す場合、誘電体材料は、2つ以上の異なる多形体、及び随意にアモルファス材料を含んでいてもよい。
【0055】
誘電体材料の誘電正接は、周波数28GHzにおいて、10-3以下であってもよい。誘電体材料の誘電正接は、周波数28GHzにおいて、10-4以下、10-5以下、または10-6以下であってもよい。誘電体材料の誘電正接は、周波数28GHzにおいて、10-2以上、10-1以上、または1以上であってもよい。平面基板の誘電正接は、周波数28GHzにおいて、10-3以上であってもよい。
【0056】
第1のアンテナ及び/または第2のアンテナは、フォトリソグラフィを用いて形成してもよい。第3のアンテナ及び/または第4のアンテナは、フォトリソグラフィを用いて形成してもよい。第3のアンテナ及び/または第4のアンテナは、第1のアンテナ及び/または第2のアンテナと同じ誘電体材料を含んでいてもよい。
【0057】
回路は、無線信号を受信して再送信するために2つ以上の通過帯域を規定してもよい。回路は、通過帯域のうちの1つ以上を無効にし得るように構成可能であってもよい。異なる通過帯域は、無線通信ネットワークの異なるサービスプロバイダに対応してもよい。サービスプロバイダは、携帯電話、携帯電話サービス、及び/またはデータサービスプロバイダであってもよい。
【0058】
2つ以上の通過帯域のそれぞれは、1つ以上のアナログフィルタを含んでいてもよい。アナログフィルタは、膜バルク音響共振器(FBAR)を含んでもいてもよいし、またはその形式を取ってもよい。アナログフィルタは、薄膜バルク音響共振器(TFBAR)を含んでもいてもよいし、またはその形式を取ってもよい。アナログフィルタによって提供される各通過帯域の出力を接地して、その通過帯域を無効にしてもよい。通過帯域出力は、回路によって制御される個々のスイッチによって選択的に接地してもよい。
【0059】
2つ以上の通過帯域のそれぞれは、1つ以上のデジタルフィルタを含んでいてもよい。デジタルフィルタは、ビームフォーミング及び/またはビームステアリングを行うように構成されたデジタル回路によって提供してもよい。デジタルフィルタは、専用のデジタルフィルタリング回路によって提供してもよい。
【0060】
回路は、2つ以上の通過帯域のそれぞれが、1回限りの構成プロセスにおいて独立に有効または無効になるように構成可能であってもよい。1回限りの構成プロセスは、プログラマブル読み出し専用メモリ(プログラマブルROM)のプログラミングを含んでいてもよいし、またはその形式を取ってもよい。無線送受信機の初期構成では、各通過帯域出力はヒューズ接続によって接地してもよく、1回限りの構成プロセスは、有効にすべき通過帯域に対応するヒューズ接続を飛ばすことを含んでいてもよいし、またはその形態を取ってもよい。
【0061】
回路は、使用中に2つ以上の通過帯域のそれぞれが独立に有効または無効にされ得るように構成可能であってもよい。
【0062】
回路は、1つ以上の通過帯域を有効にし及び/または1つ以上の他の通過帯域を無効にする命令を含む通過帯域変更メッセージを受信するように構成してもよい。通過帯域変更メッセージは、無線送受信機がその一部または一部分を形成する無線ネットワークを通して受信してもよい。通過帯域変更メッセージは無線信号として受信してもよい。通過帯域変更メッセージは、回路によって規定される2つ以上の通過帯域のうちの1つ内で受信してもよい。通過帯域変更メッセージは、常に有効になっているさらなる通過帯域内で受信してもよい。
【0063】
無線送受信機は、時間多重無線通信システム内で無線信号を受信して再送信するように構成してもよい。回路は、1つ以上の選択されたサービスプロバイダに対応する無線信号のみを再送信するように構成可能であってもよい。回路は、たとえばパケットヘッダデータを用いて、受信した無線信号の送信元を特定するように構成してもよい。受信した無線信号の送信元が、選択されたサービスプロバイダの1つに対応することに応じて、回路を、複数の第2のアンテナを第2のフェーズドアレイとして制御して、その受信した無線信号を再送信するように構成してもよい。受信した無線信号の送信元が、選択されたサービスプロバイダの1つに対応しないことに応じて、回路はその受信した無線信号を再送信しなくてもよい。
【0064】
選択されたサービスプロバイダは、使用中に更新可能であってもよい。回路は、1つ以上のサービスプロバイダから発信される無線信号の再送信を可能にし及び/または1つ以上の他のサービスプロバイダから発信される無線信号の再送信を無効にするための命令を含む、選択されたサービスプロバイダ変更メッセージを受信するように構成してもよい。
【0065】
選択されたサービスプロバイダ変更メッセージは、無線送受信機がその一部である無線ネットワークを通して受信してもよい。選択されたサービスプロバイダ変更メッセージは、無線信号として受信してもよい。
【0066】
回路と複数の第1のアンテナとの間の接続の全長は平面基板によって支持されてもよく、回路と複数の第2のアンテナとの間の接続の全長は平面基板によって支持される。
【0067】
このようにして、複数の第1のアンテナと複数の第2のアンテナとの間で受信及び中継される信号は、決して平面基板を外れて配線されることはない(だが、それらは、本明細書で説明するようにビアを用いて平面基板を通して配線される)。
【0068】
第1の態様による無線送受信機は、第2の態様による無線送受信機及び/または第3の態様による無線送受信機の任意の特徴に対応する特徴を含んでいてもよい。
【0069】
本発明の第2の態様によれば、ある数の第1のアンテナ及びある数の第2のアンテナを含む無線送受信機が提供される。無線送受信機はまた、第1のアンテナ及び第2のアンテナに接続された回路を含む。回路は、複数の第1のアンテナを第1のフェーズドアレイとして制御して、無線信号を受信するように構成されている。第1のフェーズドアレイは指向性であり、第1の角度範囲内で制御可能に配向可能である。回路はまた、複数の第2のアンテナを第2のフェーズドアレイとして制御して、第1のフェーズドアレイを用いて受信した無線信号を再送信するように構成してもよい。第2のフェーズドアレイは指向性であり、第2の面の法線に対する第2の角度範囲内で制御可能に配向可能である。回路は、無線信号を受信して再送信するための2つ以上の通過帯域を規定する。回路は、通過帯域のうちの1つ以上を無効にし得るように構成可能であってもよい。
【0070】
第2の態様による無線送受信機は、第1の態様による無線送受信機及び/または第3の態様による無線送受信機の任意の特徴に対応する特徴を含んでいてもよい。
【0071】
無線送受信機はまた、第1及び第2の面を有する平面基板を含んでいてもよい。第1のアンテナは第1の面上に支持してもよい。第2のアンテナは第2の面上に支持してもよい。回路は、平面基板上に及び/または平面基板内に支持してもよい。第1の角度範囲は、第1の面の法線に対する鋭角の第1の範囲であってもよい。第2の角度範囲は、第2の面の法線に対する鋭角の第2の範囲であってもよい。
【0072】
異なる通過帯域は、無線通信ネットワークの異なるサービスプロバイダに対応してもよい。サービスプロバイダは、携帯電話、携帯電話サービス、及び/またはデータサービスプロバイダであってもよい。
【0073】
2つ以上の通過帯域のそれぞれは、1つ以上のアナログフィルタを含んでいてもよいし、またはその形態を取ってもよい。アナログフィルタは、膜バルク音響共振器(FBAR)を含んでもいてもよいし、またはその形式を取ってもよい。アナログフィルタは、薄膜バルク音響共振器(TFBAR)を含んでもいてもよいし、またはその形式を取ってもよい。アナログフィルタによって提供される各通過帯域の出力を接地して、その通過帯域を無効にしてもよい。通過帯域出力は、回路によって制御される個々のスイッチによって、選択的に接地してもよい。
【0074】
2つ以上の通過帯域のそれぞれは、1つ以上のデジタルフィルタを含んでいてもよいし、またはその形態を取ってもよい。デジタルフィルタは、ビームフォーミング及び/またはビームステアリングを行うように構成されたデジタル回路によって提供してもよい。デジタルフィルタは、専用のデジタルフィルタリング回路によって提供してもよい。
【0075】
回路は、2つ以上の通過帯域のそれぞれが、1回限りの構成プロセスの間に独立に有効または無効にされ得るように構成可能であってもよい。1回限りの構成プロセスは、プログラマブル読み出し専用メモリ(プログラマブルROM)のプログラミングを含んでいてもよいし、またはその形式を取ってもよい。
【0076】
無線送受信機の初期構成では、各通過帯域出力はヒューズ接続によって接地してもよく、1回限りの構成プロセスは、有効にすべき通過帯域に対応するヒューズ接続を飛ばすことを含んでいてもよいし、またはその形態を取ってもよい。
【0077】
回路は、使用中に2つ以上の通過帯域のそれぞれが独立に有効または無効にされ得るように構成可能であってもよい。回路は、1つ以上の通過帯域を有効にし及び/または1つ以上の他の通過帯域を無効にする命令を含む通過帯域変更メッセージを受信するように構成してもよい。通過帯域変更メッセージは、無線送受信機がその一部である無線ネットワークを通して受信してもよい。通過帯域変更メッセージは無線信号として受信してもよい。通過帯域変更メッセージは、回路によって規定される2つ以上の通過帯域のうちの1つ内で受信してもよい。通過帯域変更メッセージは、常に有効になっているさらなる通過帯域内で受信してもよい。
【0078】
本発明の第3の態様によれば、ある数の第1のアンテナ及びある数の第2のアンテナを含む無線送受信機が提供される。無線送受信機はまた、第1のアンテナ及び第2のアンテナに接続された回路を含む。回路は、第1のアンテナを第1のフェーズドアレイとして制御して、無線信号を受信するように構成されている。第1のフェーズドアレイは指向性であり、第1の角度範囲内で制御可能に配向可能である。回路はまた、第2のアンテナを第2のフェーズドアレイとして制御して、第1のフェーズドアレイを用いて受信した無線信号を再送信するように構成されている。第2のフェーズドアレイは指向性であり、第2の面の法線に対する第2の角度範囲内で制御可能に配向可能である。無線送受信機は、時間多重無線通信システム内で無線信号を受信して再送信するように構成されている。回路は、1つ以上の選択されたサービスプロバイダに対応する無線信号のみを再送信するように構成可能である。
【0079】
第3の態様による無線送受信機は、第1の態様による無線送受信機及び/または第2の態様による無線送受信機の任意の特徴に対応する特徴を含んでいてもよい。
【0080】
無線送受信機はまた、第1及び第2の面を有する平面基板を含んでいてもよい。第1のアンテナは第1の面上に支持してもよい。第2のアンテナは第2の面上に支持してもよい。回路は、平面基板上に及び/または平面基板内に支持してもよい。第1の角度範囲は、第1の面の法線に対する鋭角の第1の範囲であってもよい。第2の角度範囲は、第2の面の法線に対する鋭角の第2の範囲であってもよい。
【0081】
回路は、たとえばパケットヘッダデータを用いて、受信した無線信号の送信元を特定するように構成してもよい。受信した無線信号の送信元が、選択されたサービスプロバイダの1つに対応することに応じて、回路を、第2のアンテナを第2のフェーズドアレイとして制御して、その受信した無線信号を再送信するように構成してもよい。受信した無線信号の送信元が、選択されたサービスプロバイダの1つに対応しないことに応じて、回路はその受信した無線信号を再送信しなくてもよい。
【0082】
選択されたサービスプロバイダは、使用中に更新可能であってもよい。回路は、1つ以上のサービスプロバイダから発信される無線信号の再送信を可能にし及び/または1つ以上の他のサービスプロバイダから発信される無線信号の再送信を無効にするための命令を含む、選択されたサービスプロバイダ変更メッセージを受信するように構成してもよい。
【0083】
選択されたサービスプロバイダ変更メッセージは、無線送受信機がその一部である無線ネットワークを通して受信してもよい。選択されたサービスプロバイダ変更メッセージは、無線信号として受信してもよい。
【0084】
構造物が、第1、第2、及び/または第3の態様のうちのいずれか1つによる1つ以上の無線送受信機を含んでいてもよい。
【0085】
構造物は建物を含んでいてもよいし、またはその形態を取ってもよい。建物は商業用、住宅用、または市民の建物であってもよい。構造物は、たとえば、街路灯、ベンチ、バス停、道標または標識、パーキングメーター、安全バリア、宣伝広告板または掲示板などの街路備品の物品を含んでいてもよいし、またはその形態を取ってもよい。
【0086】
構造物は、内面及び外面を有する窓を含んでいてもよく、無線送受信機は窓の内面に取り付けてもよい。
【0087】
本発明の第4の態様によれば、第1、第2、及び/または第3の態様のうちのいずれか1つによる無線送受信機、または第1、第2、及び/または第3の態様のうちのいずれか1つによる無線送受信機を組み込んだ構造物を用いる方法が提供される。本方法は、第1のアンテナを第1のフェーズドアレイとして制御して、無線信号を受信することを含む。第1のフェーズドアレイは指向性であり、第1の角度範囲内で制御可能に配向可能である。本方法はまた、第2のアンテナを第2のフェーズドアレイとして制御して、第1のフェーズドアレイを用いて受信した無線信号を再送信することを含む。第2のフェーズドアレイは指向性であり、第2の角度範囲内で制御可能に配向可能である。
【0088】
本方法は、第1の態様による無線送受信機、第2の態様による無線送受信機、及び/または第3の態様による無線送受信機の任意の特徴に対応する特徴を含んでいてもよい。
【0089】
本発明の第5の態様によれば、第1及び第2の対向する面を有し、第1及び第2の対向する面の間に厚さを有する平面基板を含む無線送受信機が提供される。無線送受信機はまた、第1の面上に支持されたある数の第1のアンテナを含む。無線送受信機はまた、第2の面上に支持されたある数の第2のアンテナを含む。無線送受信機はまた、平面基板によって支持され、第1のアンテナ及び第2のアンテナに接続された回路を含む。回路は、回路と第1のアンテナとの間及び/または回路と第2のアンテナとの間で信号を送信するために平面基板の厚さを通して形成されたある数のビアを含む。回路は、無線信号を受信するために第1のアンテナを制御するように構成されている。回路はまた、第2のアンテナを第2のフェーズドアレイとして制御して、第1のフェーズドアレイを用いて受信した無線信号を再送信するように構成されている。第2のフェーズドアレイは指向性であり、第2の面の法線に対する鋭角の第2の範囲内で制御可能に配向可能である。
【0090】
第5の態様による無線送受信機は、第1の態様による無線送受信機、第2の態様による無線送受信機、第3の態様による無線送受信機、及び/または第4の態様による方法の任意の特徴に対応する特徴を含んでいてもよい。
【0091】
次に、本発明のある実施形態を、添付図面を参照して一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【
図1】窓に取り付けられた無線送受信機の概略断面図である。
【
図2】無線信号の指向性受信及び送信のために
図1の無線送受信機を用いる概略図である。
【
図3】アンテナアレイレイアウトの第1の例の概略平面図である。
【
図4】アンテナアレイレイアウトの第2の例の概略平面図である。
【
図5】アンテナアレイレイアウトの第3の例の概略平面図である。
【
図6】アンテナアレイレイアウトの第4の例の概略平面図である。
【
図7】アンテナスタックの第1の例の概略断面図である。
【
図8】アンテナスタックの第2の例の概略断面図である。
【
図9】アンテナスタックの第3の例の概略断面図である。
【
図10】アナログビームフォーミング及びビームステアリングを提供するための回路の概略ブロック図である。
【
図11】デジタルビームフォーミング及びビームステアリングを提供するための回路の概略ブロック図である。
【
図12】
図11の回路のいくつかの実装で使用されるデータバッファを概略的に例示する図である。
【
図13】
図14の回路内で使用される第1の受信サブアレイの概略ブロック図である
【
図14】アナログ及びデジタルビームフォーミング及びビームステアリングのハイブリッドを提供するための回路の概略ブロック図である。
【
図15】
図14の回路内で使用される第2の送信サブアレイの概略ブロック図である。
【
図16】第2の無線送受信機を概略的に例示する図である。
【
図17】
図16の第2の無線送受信機の代替的な構成を概略的に例示する図である。
【
図18】切替可能なフィルタバンクの概略ブロック図である。
【
図19】ヒューズを飛ばすことによって無効にされ得る通過帯域フィルタの概略ブロック図である。
【
図20】ヒューズを飛ばすことによって有効にされ得る通過帯域フィルタの概略ブロック図である。
【
図21】アナログビームフォーミング及びビームステアリングを提供するための第2の回路の一部の概略ブロック図である。
【
図22】アナログビームフォーミング及びビームステアリングを提供するための第3の回路の一部の概略ブロック図である。
【
図23】アナログビームフォーミング及びビームステアリングを提供するための第4の回路の一部の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0093】
以下の説明では、同様の部分は同様の参照数字によって表される。
基地局までの見通し線及び無線信号の大気及び/または天候による減衰の問題は、無線ネットワークにさらに無線送受信機を加えることによって対処され得る。しかし、これを実際に行うためには、無線送受信機として、小型で、高利得で、操作可能で、安価で、大量の電力を必要としないものが必要である。無線信号のポインティングベクトルの方向が、特に見通し外の環境の場合には、サービス性能の品質を最大にするために重要である。使用する無線送受信機が美的に目立たず、すなわち小型であり、好ましくは変装及び/または環境への統合が容易であるべきことも望ましい。本明細書では、数ある問題の中で、これらの問題点に対処する無線送受信機について説明する。
【0094】
無線通信に対する現在のインフラストラクチャでは、高周波数側に、たとえばmm波側に(またはそれを超えて)スケール変更することを難しくする制限及び根本的な問題に直面することが予想される。モバイルデータ、コンテンツストリーミングなどの新しいサービスのために、より高い帯域幅に対する要求がますます高まるにつれ、単一の送信塔によってカバーされるエリア(または「セル」)のサイズはますます小さくなった。この傾向は、「5G」と言われることが多い5GHzを超える周波数の場合でも続くと予想される。携帯電話の基地局の現在の従来のインフラストラクチャはすでにその限界に近づいており、無線通信ネットワークの増加が、高周波及び高データレートで動作する見通し内ポイントツーマルチポイントシステムに向かって移動するにつれ、新しいアプローチが必要となっている。このような高周波通信(たとえば、mm波)は、ビームフォーミング及びビームステアリングを可能にする大規模な多入力多出力アンテナアーキテクチャを使用することからかなり恩恵を受け得る。高指向性の動作は、マルチパス干渉に伴う問題点を避けるのに役立ち得る。
【0095】
高解像度ビデオストリーミング、クラウドベースサービス、拡張現実などの、ますます多様で没入型のモバイルデータサービスに対する消費者の需要の高まりにより、次世代の無線通信ネットワーク及びシステムは、競争力を維持するために、高スループット、低遅延、及び信頼性を提供する必要がある。たとえば、最大6GHzまで増える現在計画されているインフラストラクチャを超えて、十分に使われていないmm波周波数において利用可能なさらなる200GHzのスペクトルがあり、10~50Gb/秒の領域でのデータレートを潜在的にサポートすることができる。
【0096】
広域スペクトルは無制限という意味ではなく、他のサービスも同じかまたは隣接する帯域を用いる。スペクトルのかなりの部分が、単一の独立したモバイルネットワークオペレータに排他的に許可される場合、スペクトル利用が非効率になる。平均的な消費者は、mm波スペクトルとして、3~30GHz、及び30~40GHz(最大で300GHz)の範囲のスペクトルを伴うcm波を利用する場合がある。
【0097】
スマートシティインフラストラクチャ、ヘルスケア、自動運転車、及び他のいくつかのアプリケーションを含むミッションクリティカルなサービスに対して60~70GHzにおけるスペクトル共有もある。このようなサービスは好ましくは、連続的で高速かつ低遅延の接続にアクセスすべきであり、共有スペクトルは、デバイスが常に接続されていることを保証するのに役立つ可能性がある。
【0098】
本明細書は、無線信号、特に、無線通信ネットワーク(たとえば、モバイル/携帯電話サービス)におけるデータ送信用に使用される5GHzを超える無線信号を中継するための無線送受信機に関する。数ある特徴の中で、本明細書に記載の無線送受信機は、コンパクトで薄型であり、構築環境内の構造物への直接の取り付けまたは一体化を可能にする。本明細書による無線送受信機は、窓ガラスへの取り付けまたは一体化に対して特に好適であり得て、人間の観察者に透けて見えるように十分な透明性を保持し得る。
【0099】
これらの特徴によって、無線送受信機を構造物に追加して、範囲を改善し、死角を減らし、構造物の内部または地下(たとえば、地下鉄交通システム)に信号を中継するなどを行うことができる。
【0100】
【0101】
無線送受信機1は、第1の3及び第2の4の対向する面を有し、第1及び第2の対向する面3、4の間にt厚さを有する平面基板2を含む。数Nの第1のアンテナRx
1、・・・、Rx
n、・・・、Rx
Nを含む第1のアレイ5が、第1の面3上に支持され、数Mの第2のアンテナTx
1、・・・、Tx
m、・・・、Tx
Mを含む第2のアレイ6が、第2の面4上に支持されている。回路7が平面基板によって支持され、回路5が、N個の第1のアンテナRx
n及びM個の第2のアンテナTx
mに電気的に接続されている。回路7は、回路7と第1のアンテナRx
nの第1のアレイ5との間及び/または回路7と第2のアンテナTx
mの第2のアレイ6との間で無線周波数の電気信号を送信するために、平面基板2の厚さtを通して形成されたある数のビア8(
図7)を含む。
【0102】
無線送受信機1は、無線通信ネットワーク(たとえば、携帯電話及び同様のデバイスによって用いられるネットワーク)の送受信装置(代替的に「基地局」または「中継局」)を提供する。
【0103】
回路7は、第1のアンテナRxnのアレイ5を第1のフェーズドアレイ5として制御して、入力無線信号9を受信するように構成されている。第1のフェーズドアレイ5は指向性であり、第1の面3の法線10に対する鋭角θRの第1の範囲Δθ1内で制御可能に配向可能である。第1のフェーズドアレイ5が配向される方向は、第1のフェーズドアレイ5の第1の放射パターンの主放射線ローブの軸に対応し得る。第1の範囲Δθ1は、0~90度の範囲(両端を含む)であってもよく、すなわち0≦Δθ1≦90であってもよい。第1のΔθ1範囲は、第1の面3から離れる方に向かう第1の半球の全部または全部未満を含んでいてもよい。たとえば、第1の範囲は、2πステラジアン以下、3π/4ステラジアン以下、πステラジアン以下、またはπ/2ステラジアン以下の角度範囲を包含していてもよい。
【0104】
第1の範囲Δθ1は、第1の面10に対して法線10の周りに実質的に回転対称であってもよく、たとえば、第1の範囲Δθ1は、円錐形状、ホーン形状などであってもよい。しかし、範囲Δθ1は、第1の面3に対して法線10の周りに回転対称である必要はなく、たとえば、第1の範囲Δθ1は、平面内で実質的にファン形状であってもよい。全般的に、第1のフェーズドアレイ5を形成する第1のアンテナRxnの構成に応じて、第1のフェーズドアレイ5は、使用中に第1及び/または第2の軸の周りに制御可能に配向可能であってもよい。たとえば、極座標系(θR,φR)が法線10に対して規定される場合、使用中に第1のフェーズドアレイ5を操縦し得る最大極角θRmax及び最小極角θRminは、法線10の周りの方位角φの関数であってもよく、すなわちθRmin(φR)≦θR≦θRmax(φR)であってもよい。無線送受信機1を取り付けるとき、平面基板2は任意の角度に向けてもよい。たとえば、平面基板2は、法線10が水平面内にあるように、重力に対して垂直方向に取り付けてもよい。
【0105】
回路7はまた、第2のアンテナTxmのアレイ6を第2のフェーズドアレイ6として制御して、第1のフェーズドアレイ5を用いて受信した無線信号9の再送信に対応する出力無線信号11を送信するように構成されている。第2のフェーズドアレイ6は指向性であり、第2の面4の法線11に対する鋭角θTの第2の範囲Δθ2内で制御可能に配向可能である。反対側の半球内で第1の範囲Δθ1に配向されることに加えて、第2のフェーズドアレイ6及び第2の範囲Δθ2を、第1のフェーズドアレイ5及び第1の法線10に対する第1の範囲Δθ1に関して説明した任意の方法で、第2の法線12に対して構成してもよい。
【0106】
第1の5及び第2の6のフェーズドアレイは、第1及び第2のフェーズドアレイ5、6の配向方向が固定されておらず、回路7による使用中に独立に変更し得るという意味で、制御可能に配向可能である。たとえば、球座標系が、第1の法線10と位置合わせされた天頂によって規定されている場合、第1のフェーズドアレイ5に対する配向方向(放射線ローブの中心軸)は、(θR、φR)であってもよく、第2のフェーズドアレイ6に対する配向方向(放射線ローブの中心軸)は、(θT、φT)(0≦θR≦π/2及びπ/2≦θR≦πであり、可能性としてさらに、方位角の関数として個々の最大及び最小に制約されるθRmin(φR)≦θR≦θRmax(φR)、及びθTmin(φT)≦θT≦θTmax(φT))であってもよい。
【0107】
方向(θ
R,φ
R)は、第1のアンテナRx
1、・・・、Rx
Nによって受信される無線信号9を加算するために回路7によって使用される相対位相を調整することによって制御される。特に
図2を参照して、第1のフェーズドアレイ5内の第1のアンテナRx
nの間隔がd
1である場合、角度θ
Rで入射する無線信号9は、隣接する第1のアンテナRx
n、Rx
n+1間でd
1.sin(θ
R)の経路差を有する。
図2では、説明を簡単にするために、方位角φに対応する平面内での経路差d
1.sin(θ
R)を示す。経路差d
1sin(θ
R)は位相差に対応し、各第1のアンテナRx
nからの信号に適用される位相差を制御することによって、回路7は、特定の方向(θ
R,φ
R)から入射する無線信号9の強め合う干渉を選択し得て、一方で他の方向から入射する無線信号9は相殺的干渉による減衰を受ける。加算するために回路7によって使用される位相シフトに加えて、第1のフェーズドアレイ5の有効な放射パターンの全体形状も、個々の第1のアンテナRx
nの放射パターンに依存する。このプロセスは、「ビームフォーミング」と言われることが多い。フェーズドアレイを用いるビームフォーミングは確立された技術であるので、簡略にするために、本明細書では詳細に説明しない。
【0108】
同様に、回路7は、ビームステアリングプロセスにおいて第2のアンテナTx1、・・・、TxMを用いて方向(θT,φT)に無線信号11を再送信するための相対位相を制御する。ビームステアリングプロセスは、第1のフェーズドアレイ5に対するビームフォーミングの類似物である。同様に、簡略にするために、ビームステアリングの技術は本明細書では詳細に説明しない。
【0109】
全般的に、無線送受信機1は、一方向(θR、φR)、たとえば、無線通信ネットワークの放送用電波塔(または携帯電話の基地局)への方向から受信して、異なる方向(θT、φT)、たとえば建物の内部に向けて、または携帯電話などの特定のユーザデバイスにさえ向けて、再送信(再放送/中継)する。
【0110】
無線送受信機1は、5GHz~300GHz(両端を含む)、たとえば、NATOによって定義されるK(20GHz~40GHz)、L(40GHz~60GHz)及び/またはM(60GHz~100GHz)帯域のうちの1つ以上内の搬送周波数を有する無線信号9、11を送受信するように構成されている。それに加えてまたはその代わりに、無線送受信機1は、電気電子技術者協会(IEEE)によって定義されるK
a(27GHz~40GHz)、V(40GHz~75GHz)、及びW(75GHz~110GHz)帯域のうちの1つ以上内の搬送周波数を有する無線信号9、11を送受信するように構成してもよい。無線送受信機1は、動作の周波数帯域(複数可)によって特に限定されず、300GHzを超えるかまたは最大で1THz以上でさえある搬送周波数を有する無線信号9、11に対して調整してもよい。無線送受信機1は、「5G」、「6G」と言われる消費者データサービス、または任意の他の概念的世代のモバイルデータサービスに対応する無線信号9、11を中継してもよい。無線送受信機1は、以下の文献で使用される5Gの定義に従う無線信号用に構成してもよい。「5G Evolution:A View on 5G Cellular Technology Beyond 3GPP Release 15」,Amitabha Ghosh,Andreas Maeder,Matthew Baker and Devaki Chandramouli,IEEE Access(2019),Vol.7,pg 127639,DOI 10.1109/ACCESS.2019.2939938.
ビア8(
図7)は、回路7またはその部品を形成するために層状及び/またはパターニングしてデバイスにし得るかまたはディスクリートコンポーネントとして異種統合し得る異なる機能のコンポーネントの相互接続に対して用いられる。回路7は、たとえば、伝導性配線、マイクロストリップ線路、伝導性ビアなどの物理的な配線リンクを用いて、第1のアンテナRx
nのフェーズドアレイ5及び第2のアンテナTx
mのフェーズドアレイ6に接続される。
【0111】
回路7コンポーネント、平面基板2上または平面基板2内の第1のアンテナRx
n及び第2のアンテナTx
mを異種統合する方法は、無線送受信機1の重要な特徴である。詳細には、無線信号9、11は、第1及び第2の面3、4の間で放射結合されず、代わりにある数のビア8(
図7)を用いて基板2の厚さtを通して配管される。結果として、平面基板2の誘電損失特性は無線送受信機1の機能に実質的に関連せず、ガラス及び/または透明ポリマーなどの非従来型の材料を用いる可能性を開く。
【0112】
このようにして、平面基板2は随意に、透明材料(たとえば、可視波長に対する最小透過率が50%である)を用いて形成してもよい。透明な平面基板2は、ガラスを含んでいてもよいし、ガラスから形成してもよいし、または限定することなく以下を含む1つ以上のプラスチックを用いてもよい。ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(ペット)、ポリエチレンナフタレートペン、シクロオレフィンポリマー(COP)、または任意の他のポリマーであって、回路を支持するのに十分な機械的強度及び透けて見えるのに十分な透明性を有するもの。これらの材料は、従来、過度の誘電損失特性のために、無線周波数(RF)信号に対する回路基板及び/またはアンテナ基板としては用いられていない。しかし、ビア8(
図7)を用いて基板2を通して回路7までRF信号を配管することによって、これらのタイプの損失材料を用いてもよい。これは、アンテナRx
n、Tx
mのアレイ5、6を含む無線送受信機1のかなりの割合が潜在的に透明または半透明に形成され得るため、優位であり得る。たとえば、非常に細く及び/または薄い伝導性配線、金属ナノワイヤ、金属メッシュなどを用いて、アンテナRx
n、Tx
mを規定する。
【0113】
ほとんど透明な無線送受信機1を、内部の人々の視界を著しく不明瞭にすることも、窓13からの自然照明を低減することもなく、たとえば接着層14を用いて、建物または他の構造物の窓ガラス13の内面に貼り付け得る。このようにして、窓13に入射した無線信号9を、建物または構造物内のさらに深くに再送信し得る11。
【0114】
平面基板2は、材料の単一のモノリシックブロックである必要はなく、いくつかの例では、1層以上のガラス及び/またはプラスチック及び/または接着剤を含む積層体(図示せず)の形態を取ってもよい。積層体は、1つ以上の導体層を含んでいてもよい。導体層は、内部であってもよく(すなわち第1及び第2の面3、4の間)、及び/または外部であってもよい(すなわち、第1及び/または第2の面3、4上に支持される)。
平面基板2は柔軟であるのに十分に薄くてもよく、たとえばポリマー材料の薄膜またはシートであってもよい。
【0115】
第1のアンテナRxnを第1の面3上に直接配置してもよい。代替的に、1つ以上の誘電体層を、第1のアンテナRxnと第1の面3との間に配置して、たとえば、第1の面3上に第1のアンテナRxnの放射面及び接地面の両方を画定してもよい。同様に、第2のアンテナTxmを、第2の面4上に直接配置してもよいし、1つ以上の誘電体層によって第2の面4から分離してもよい。
【0116】
回路7を平面基板2と一体化することは特に限定されず、全般的に、回路7は、第1の面3上に支持された1つ以上のコンポーネントを含んでいてもよく、及び/または第2の面4上に支持された1つ以上のコンポーネントを含んでいてもよい。いくつかの例では、回路7は、それに加えてまたはその代わりに、平面基板2内に支持された1つ以上のコンポーネントを含んでいてもよい。たとえば、平面基板2が積層体である場合、回路7のコンポーネントを、積層体を組み立てたときに内部(第1及び第2の面3、4の間)である積層体を構成する層の1つ以上の表面上に支持してもよい。
【0117】
回路7は、平面基板2、たとえば、第1の面3、第2の面4、または平面基板2を組み立てたら積層体の内部となる層の面にフリップチップボンディングされた1つ以上のコンポーネントを含んでいてもよい。回路7のこのような1つ以上のコンポーネントは、異種統合ロードマップ(HIR)に従って平面基板2(またはその層)にフリップチップボンディングしてもよい。
【0118】
異種統合ロードマップ(HIR)は、シリコンシステムインパッケージ(SiP)技術のために開発された一連のガイドラインである。HIRは、たとえば、HIR2019版の出版物に説明されているガイドラインを指してもよい。半導体/フラットパネルデバイスをパッケージするための基板を用いた半導体/フラットパネルデバイスの製造に対して確立されているが、発明者の知る限りでは、HIRの方法は、プリント回路基板以外の基板上(たとえば、ガラス及び/または透明プラスチック基板上)での異種統合には、これまで適応されていなかった。HIRには、中間キャリアとしてガラス基板を用いることが記載されているが、本明細書の発明者らは、本明細書で提案する形式の全体的なシステム統合がガラスまたは透明ポリマー上で行われているということは知らない。いくつかの例では、無線送受信機1自体は、ガラス繊維エポキシ、ボール紙、銅張り積層板、FR2/FR4プリント回路基板ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの従来のプリント回路基板基板を含んでいなくてもよい。当然のことながら、これは、無線送受信機1が、従来のプリント回路基板基板(図示せず)を含み得る別個にパッケージされたデバイス(たとえば、電源(図示せず))に接続されることを排除するものではない。他の例では、従来のプリント回路基板基板(たとえば前述したもの)を、無線送受信機1及び/または回路7において、たとえば平面基板2として用いてもよい。
【0119】
回路7は、1つ以上のフィルタ、たとえば、1つ以上の膜バルク音響共振器(FBAR)、1つ以上の薄膜バルク音響共振器(TFBAR)、及び/または1つ以上のメタマテリアルを含んでいてもよい。無線送受信機での使用に適したメタマテリアルフィルタには、限定することなく、以下に記載されたメタマテリアルフィルタが含まれる。「Metamaterial Structure Inspired Miniature RF/Microwave Filters」,Abdullah Alburaikan,PhD Thesis(2016),The University of Manchester,https://www.escholar.manchester.ac.uk/uk-ac-man-scw:305308,(詳細には、56ページ以降を参照)。第1のアンテナRxnからの信号に対するフィルタは、近接するために第1の面3上に支持してもよく、第2のアンテナTxmへの信号に対するフィルタは、同じ理由で第2の面4上に支持してもよい。
【0120】
フィルムベースのバルク弾性波共振器は、同じ中心周波数を有する表面弾性波(SAW)共振器と比べて、低い挿入損失、25GHz帯域を含みそれを超える周波数帯域における高い選択性、低消費電力、及び高い絶縁を含む(しかしこれらに限定されない)特性を提供し得る。フィルムベースのバルク弾性波共振器は、高い(たとえば60GHz)周波数に対して構成してもよく、その高いQ値及び高い音速に大電力処理が組み合わさるため、急峻なフィルタスカートを示す場合がある。熱伝導が高い材料を用いる。考えられる材料としては、誘電体として窒化アルミニウム(AlN)が含まれ得る。これは圧電性であり、通常は200℃~300℃において最も広くマグネトロンスパッタリングされ、電極材料はプラチナ(Pt)から銅(Cu)の範囲である。たとえば、伝導性要素は、銅、Cuを用いて、銅、Cuと、タンタル、Ta、ニオビウム、Nb、モリブデン、Mo、タングステン、W、ジルコニウム、Zr、ハフニウム、Hf、レニウム、Re、オスミウム、Os、ルテニウム、Ru、ロジウム、Rh、チタン、Ti、バナジウム、V、クロム、Cr、及びニッケルNiから選択される1つ以上の高融点金属要素との合金を含む障壁層によって形成してもよい。電気及び熱の伝導性が高いので銅が好ましいが、意図した動作周波数における好適な電気伝導性及び表皮深さを条件として、他の金属を用いてもよい。モリブデンが良い選択であり得る。なぜならば、この金属は、ソース/ドレインメタライゼーション標準として任意のGen-Xフラットパネルラインにおいて広く利用できることに加えて、比較的適度な音響インピーダンス、密度、及び抵抗率の組み合わせを提供するからである。用語Gen-Xは、フラットパネル業界において使用される標準用語であり、基板のサイズを指す。たとえば、Gen10+は、最大で2840mm×3370mmの基板サイズを指す。
【0121】
平面基板2は、ヒートスプレッダ層(図示せず)を組み込んでもよい。ヒートスプレッダ層は、異種統合製造プロセス中に組み込んでもよい。ヒートスプレッダ層によって、ファンまたは他の冷却方法を必要とせずに、より高い電力での動作、及び/またはより高密度のアンテナ及び/またはマイクロストリップ相互接続の使用が可能になり得る。いくつかの例では、接地面層23、26(
図7)は銅から形成してもよく、さらにヒートスプレッダ層として機能してもよい。それに加えてまたはその代わりに、アンテナ誘電体層24、27(
図7)は、比較的高い熱伝導を有する誘電体、たとえば、AlN、またはAlO
x(特に、サファイア構造内のAl
2O
3)から形成してもよい。これらは、優れたヒートスプレッダ層としても機能し得る。
【0122】
第1及び第2のアンテナRxn、Txmは、好ましくは平面アンテナである。第1のアンテナRxn及び/または第2のアンテナTxmは、フォトリソグラフィを用いて形成してもよい。
【0123】
回路7と複数の第1のアンテナR1x、・・・、RxNとの間の接続の全長は、平面基板2によって支持され、回路7と複数の第2のアンテナTx1、・・・、TxMとの間の接続の全長は、平面基板2によって支持される。このようにして、中継されている信号は、平面基板を外れて配線されることはない。これは、より長い伝送線接続に伴う干渉を避けるのに役立ち得る。
【0124】
無線送受信機1は好ましくは、商業用、住宅用、または市民の建物(図示せず)の形態の構造物に取り付けられるか、またはそれらの一部として一体化される。代替的に、無線送受信機1は、たとえば、街路灯、ベンチ、バス停、道標または標識、パーキングメーター、安全バリア、宣伝広告板または掲示板などの街路備品(図示せず)の物品に取り付けてもよいし、またはそれらと一体化してもよい。いくつかの例では、無線送受信機1は、透明で、前述した方法で構造物の窓13に取り付けられる平面基板2を含む。
【0125】
図3も参照して、アンテナアレイレイアウト15の第1の例(以下、「第1のアンテナレイアウト」)を示す。
【0126】
第1のアンテナレイアウト15は、行及び列を形成するように配列されたある数の平面ストリップアンテナ16から形成される。ストリップアンテナ16はマイクロストリップアンテナの形態を取ってもよい。第1の面3上にまたはその上方に堆積された場合、第1のアンテナレイアウト15は、N個の第1のアンテナRx1、・・・、RxNの第1のフェーズドアレイ5を提供し得る。それに加えてまたはその代わりに、第2の面4上にまたはその上方に堆積された場合、第1のアンテナレイアウト15は、M個の第2のアンテナTx1、・・・、TxMの第2のフェーズドアレイ6を提供し得る。
【0127】
平面ストリップアンテナ16の放射面及び接地面は、損失を最小限にするために高い表面平滑性を備えた高伝導性(通常は銅)である必要がある。平面ストリップアンテナ16の放射面及び接地面は、任意の好適な技術を用いてパターニングしてもよく、フォトリソグラフィ、エッチング、電気メッキなどによって堆積させしてもよい。接地面(複数可)は放射電極の下方に配置してもよく、酸化アルミニウム(Al2Ox)、フルオロポリマー(たとえばPTFE/テフロン)、低損失ナノコンポジットなどの低損失誘電体によって分離してもよい。好ましくは、使用するすべての材料は、Gen-Xフラットパネル処理ラインとの適合しなければならない。
【0128】
図4も参照して、アンテナアレイレイアウト17の第2の例(以下、「第2のアンテナレイアウト」)を示す。
第2のアンテナレイアウト17は、行及び列を形成するように配列されたある数の平面ループアンテナ18から形成される。第1の面3上にまたはその上方に堆積された場合、第2のアンテナレイアウト17は、N個の第1のアンテナRx
1、・・・、Rx
Nの第1のフェーズドアレイ5を提供し得る。それに加えてまたはその代わりに、第2の面4上にまたはその上方に堆積された場合、第2のアンテナレイアウト17は、M個の第2のアンテナTx
1、・・・、Tx
Mの第2のフェーズドアレイ6を提供し得る。
【0129】
図4では円形として示しているが、平面ループアンテナ18は、個々のアンテナRx
n、Tx
mに対する放射パターンの所望の形状にのみ依存して、たとえば、正方形、長方形、または任意の正多角形もしくは不規則な多角形などの任意の形状であってもよい。
【0130】
より複雑な指向性平面アンテナを用いてもよい。たとえば、
図5も参照して、アンテナアレイレイアウト19の第3の例(以下、「第3のアンテナレイアウト」)を示す。
【0131】
第3のアンテナレイアウト17は、行及び列を形成するように配列されたある数の平面ヴィヴァルディアンテナ20から形成される。ヴィヴァルディアンテナ20はすべて、同じ方向を向いている。第1の面3上にまたはその上方に堆積された場合、第3のアンテナレイアウト19は、N個の第1のアンテナRx1、・・・、RxNの第1のフェーズドアレイ5を提供し得る。それに加えてまたはその代わりに、第2の面4上にまたはその上方に堆積された場合、第3のアンテナレイアウト19は、M個の第2のアンテナTx1、・・・、TxMの第2のフェーズドアレイ6を提供し得る。
【0132】
指向性アンテナを用いて第1及び第2のフェーズドアレイ5、6の一方または両方を形成すると、フェーズドアレイ5、6を操縦してアンテナ放射パターンのノードに対応するいくつかの角度にすることができなくなるという犠牲を払って、方向選択性が向上し得る。これには、異なる方向に向けられた指向性アンテナの複数のサブアレイを含むことによって対抗することができる。
【0133】
たとえば、
図6も参照して、アンテナアレイレイアウト21の第4の例(以下、「第4のアンテナレイアウト」)を示す。
【0134】
第4のアンテナレイアウト17は、例示したように右向きのある数の第1の平面ヴィヴァルディアンテナ20aと、例示したように左向きのある数の第2の平面ヴィヴァルディアンテナ20bとから形成される。第1のヴィヴァルディアンテナ20aは第1の2次元格子に配列され、第2のヴィヴァルディアンテナ20bは、第1の格子を相互貫通する第2の2次元格子に配列される。
【0135】
第1の面3上にまたはその上方に堆積された場合、第4のアンテナレイアウト21は、N個の第1のアンテナRx1、・・・、RxNの第1のフェーズドアレイ5を提供し得る。それに加えてまたはその代わりに、第2の面4上にまたはその上方に堆積された場合、第4のアンテナレイアウト21は、M個の第2のアンテナTx1、・・・、TxMの第2のフェーズドアレイ6を提供し得る。
【0136】
図3~6には特定の数のアンテナ16、18、20、20a、20bが示されているが、第1及び第2のアンテナRx
n、Tx
mの数N、Mは限定されない。実際の実装では、第1及び第2のフェーズドアレイ5、6のそれぞれは、数百、数千、さらには数万の第1及び第2のアンテナRx
n、Tx
mを含んでいてもよい。
【0137】
図3~6にはアンテナ16、18、20、20a、20bの特定の形状及び分布が示されているが、これらは限定ではない。全般的に、任意のタイプまたは形状のアンテナを用いてもよいが、製造及びスケール変更の実用性から、好ましくは平面アンテナを用いるべきである。アンテナは、任意の2次元格子タイプに基づいて、第1及び/または第2の面3、4を覆うアレイに配列してもよい。
【0138】
アンテナスタックの第1の例
図7も参照して、アンテナスタック22の第1の例(以下、「第1のスタック」)を示す。
【0139】
第1のスタック22は平面基板2を含む。第1の接地面層23が、第1の面3上に形成または支持される。第1のアンテナ誘電体層24が、第1の接地面層23上に形成または支持される。第1の導体層25が、第1のアンテナ誘電体層24上に形成または支持される。同様に、第2の接地面層26、第2のアンテナ誘電体層27、及び第2の導体層28が、第2の面4上に順に形成及び/または支持される。さらに、たとえば、層間接着力を改善するために、中間層を設けてもよい。
【0140】
第1のアンテナRx1、・・・、RxNは、第1の導体層25をパターニングすることによって形成される。マイクロストリップ線路、伝導性配線などの回路7の接続要素も、第1の導体層25内にパターニングされる。1つ以上の回路7コンポーネントを、第1の導体層25上に形成または支持してもよい。たとえば、FBARフィルタを第1の導体層25上に形成してもよく、及び/またはディスクリートコンポーネント/集積回路を、第1の導体層25の接続要素に結合(たとえばフリップチップボンディング)してもよい。同様に、第2のアンテナTx1、・・・、TxMは、第2の導体層28をパターニングすることによって形成される。接続要素及び随意に回路7コンポーネントは、第1の導体層25と同様に、第2の導体層28内にパターニングしてもよいし、第2の導体層28上に形成または支持してもよい。
【0141】
第1及び第2の導体層25、28の間の接続は、第1及び第2の面3、4の間を接続する厚さ貫通ビア8によって提供される。ビアは、基板2内に穿孔された孔を埋め戻すことによって形成してもよい。ビアはアンテナ誘電体層24、27も通る。第1及び第2の導体層25、28を接続するビア8は、接地面層23、26内にパターニングされたアパーチャ29によって接地面層23、26から電気絶縁されている。1つ以上の他のビア(図示せず)が、基板2を通って延びて接地面層23、26間を接続して、共通の接地電位を確保してもよい。
【0142】
他の例では、接地面層23、26を、アンテナの放射表面(及びアンテナへの接続)に直接対応する接地面導体のみを提供するようにパターニングしてもよい。接地面層23、26のパターニングは、無線送受信機1が透明であるべきときには好ましい場合があるが、その代わりに、接地面層23、26を、ポリマー、酸化インジウムスズ(ITO)、または同様の伝導性酸化物などの透明導電体から形成することができる。いくつかの例では、アンテナ誘電体層24、27は、第1及び第2の面3、4のすべてまたは実質的にすべてをカバーしてもよい。しかし、他の例では、アンテナ誘電体層24、27を、第1及び/または第2のアンテナRxn、Txmの放射要素と接地要素とを分離するために必要な場所にのみアンテナ誘電体層24、27が存在するように、パターニングまたは堆積してもよい。
【0143】
前述したように、RF信号は厚さtを通して放射的にではなく、ビア8を用いて送信されるため、平面基板2を、著しい誘電損失を示す材料から形成してもよい。ガラスまたは透明ポリマーなどの損失材料を用いる場合、アンテナ誘電体層24、27は、平面基板2の誘電正接tan(δ)(基板2が積層体であるときの実効的な全体の誘電正接tan(δ))よりも小さい誘電正接tan(δ)(δは損失角)を有する誘電体材料から形成するべきである。平面基板2とは異なり、アンテナ誘電体層24、27に対して使用する材料の誘電損失特性を考慮して最小限にするべきである。
【0144】
このようにして、無線送受信機は、アンテナ誘電体層24、27に対して低損失誘電体材料を利用し得るが、アンテナRxn、Txmと回路7のコンポーネントとの間の直接の配線接続(ビア8、マイクロストリップ線路などを用いる)は、平面基板2を低損失材料から形成する必要はなく、その代わりに、シリカガラス及び/またはポリマーなどの比較的高誘電損失材料から形成してもよいことを意味する。この結果、たとえば、ロールツーロール製造法に適した高損失だが柔軟なポリマーフィルムの使用が可能になることによって、コスト及び製造の複雑さが減る場合がある。
【0145】
アンテナ誘電体層24、27は、無機酸化物、シリカ、アルミナ、有機材料、フルオロポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、及びナノコンポジットのうちの1つ以上を含んでいてもよいし、またはこれらから形成してもよい。各アンテナ誘電体層24、27は、1μm~1mm(両端を含む)の厚さを有するフィルムの形態を取ってもよい。一方または両方のアンテナ誘電体層24、27の材料は、同じ材料のアモルファス領域及び/または結晶領域を含んでいてもよい。一方または両方のアンテナ誘電体層24、27の材料が多形を示す場合、材料は2つ以上の異なる多形体、及び随意にアモルファス材料を含んでいてもよい。アンテナ誘電体層24、27を形成するための材料はこれらの具体例に限定されないが、好ましくは、アンテナ誘電体層24、27の誘電正接tan(δ)は、周波数28GHzにおいて、10-3以下であるべきである。より好ましくは、アンテナ誘電体層24、27の誘電正接tan(δ)は、周波数28GHzにおいて、10-4、10-5、または10-6以下であってもよい。第1のスタック22の動作にとって重要ではないが、平面基板2の誘電正接は、周波数28GHzにおいて、10-3以上であってもよい。
【0146】
第1のアンテナRxn及び/または第1の面3上に支持される回路7のコンポーネントに接続するマイクロストリップ線路(図示せず)は、第2のアンテナTxm及び/または第2の面4上に支持される回路7のコンポーネントに接続するマイクロストリップ線路に、マイクロストリップ線路とインピーダンス整合するように構成されたビア8によって接続してもよい。
【0147】
アンテナスタックの第2の例
図8も参照して、アンテナスタック30の第2の例(以下、「第2のスタック」)を示す。
【0148】
第2のスタック30は、共通の接地面層33を挟むように結合された第1の層31及び第2の層32の積層体の形態の平面基板2を含む。共通の接地面層33は、第1の層31または第2の層32のいずれか上に堆積させてもよい。代替的に、共通の接地面33は、第1及び第2の層31、32間に結合された自立層(たとえば、伝導性シートまたはフォイル)であってもよい。第1及び第2の導体層25、28は、第1のスタック22について説明したのと同様に、個々の第1及び第2の面3、4上にパターニングされる。
【0149】
第1のスタック22とは異なり、第2のスタック30の平面基板2の誘電体材料は、より慎重な検討を必要とする場合がある。詳細には、第1及び第2の層31、32に対して高誘電損失材料を使用すると、導体層25、28と共通の接地面33との間に画定されるアンテナRxn、Txmの効率は、損なわれる場合がある。これは、薄い第1及び第2の層31、32(たとえば、薄いポリマー層)を用いることによって緩和され得る。第2のスタック30は、少なくともフェーズドアレイ5、6をもたらす部分が柔軟である無線送受信機1に対して、特に有用であり得る。
【0150】
接地面層23、26と同様に、共通の接地面層33は、ビア8を通過させるためのアパーチャ29を含む。代替的に、共通の接地面層33を、接地面層23、26に対して説明したのと同様にパターニングしてもよい。
【0151】
アンテナスタックの第3の例
図9も参照して、アンテナスタック34の第3の例(以下、「第3のスタック」)を示す。
【0152】
第3のスタック34は、第1の導体層25を支持する第1の面3と、第2の導体層28を支持する第2の面4とを有する平面基板2を含む。第1のアンテナRxnの放射導体35をもたらす第1の導体層25のセクションは、第2の導体層28内に画定された接地電極36によって基板2を挟んで対向してもよい。同様に、第2のアンテナTxmの放射導体37をもたらす第2の導体層28のセクションは、第1の導体層25内に画定された接地電極36によって基板2を挟んで対向してもよい。
【0153】
第2のスタック30と同様に、基板2に対して高誘電損失材料を使用すると、基板2にわたって規定されるアンテナRxn、Txmの効率は損なわれる場合がある。これは、より薄い基板を用いて緩和され得る。
【0154】
図9には図示しないが、ビア8は、第3のスタック34内の第1及び第2の導体層25、28間を依然として接続して、たとえば、RF信号を第1のアンテナRx
nから、第2の面4上でまたは上方で支持される回路7のコンポーネントに渡す。
【0155】
アナログビームフォーミング及びビームステアリングのための回路
無線送受信機1のビームフォーミング及びビームステアリングは、アナログ領域において実装してもよい。
【0156】
図10も参照して、アナログ回路38の形態の回路7の例を示す。
【0157】
アナログ回路38は、第1のフェーズドアレイのアナログビームフォーミング5及び第2のフェーズドアレイのアナログビームステアリング6に対して構成されている。アナログ回路38は、デジタル領域に変換することなく、無線信号9、11を受信及び再送信する。
【0158】
アナログ回路38は、低雑音増幅器39のバンク、ビームフォーミング位相アレイ40、信号加算器41、ビームステアリング位相アレイ42、送信増幅器43のバンク、及び制御器44を含む。
【0159】
無線信号9が、N個の第1のアンテナRx1、・・・、RxNの第1のフェーズドアレイ5に入射すると、個々の受信電気信号G1(t)、・・・、Gn(t)、・・・、GN(t)が、それぞれ誘導される。受信電気信号G1(t)、・・・、Gn(t)、・・・、GN(t)は、個々の低雑音増幅器391、・・・、39n、・・・、39Nによって受信される。それぞれ、対応する増幅信号S1(t)、・・・、Sn(t)、・・・、SN(t)を出力する。随意に、受信電気信号G1(t)、・・・、Gn(t)、・・・、GN(t)を、フィルタバンク45を用いて前処理してもよい。フィルタバンク45は、たとえば、予想または意図した周波数帯域の外にある信号を取り除くための信号処理フィルタを含んでいてもよい。
【0160】
ビームフォーミング位相アレイ40は、わずかに異なる遅延α1、・・・、αn、・・・、αNを、N個の増幅信号S1(t)、・・・、Sn(t)、・・・、SN(t)のそれぞれに適用する。たとえば、各増幅信号S1(t)、・・・、Sn(t)、・・・、SN(t)に対して、第1の増幅信号S1(t)は、量α1だけ遅延されて、対応する出力がS1(t+α1)となり、N個の増幅信号のうちn番目は、量αnだけ遅延されて、対応する出力がSn(t+αn)となる等。遅延α1、・・・、αn、・・・、αNを制御器44によって制御して、第1のフェーズドアレイ5の放射パターンの中心軸の方向(θR、φR)を、最大の強め合う干渉を受けるように操縦する。
【0161】
遅延された増幅信号S1(t+α1)、・・・、Sn(t+αn)、・・・、SN(t+αN)は、信号加算器41によって加算されて、加算信号ST(t)が生成される。
【0162】
【数1】
N個の増幅信号S
1(t)、・・・、S
n(t)、・・・、S
N(t)のそれぞれに適用される遅延α
1、・・・、α
n、・・・、α
Nと組み合わせると、加算の結果、第1のフェーズドアレイ5の方向(θ
R、φ
R)にまたはその近くに到着する無線信号9からの加算信号S
T(t)への寄与は、強め合うように結合し、一方で、著しく異なる角度から到着する無線信号9からの寄与は、弱め合うように干渉して、かなり減衰する。
【0163】
ビームステアリング位相アレイ42は、加算信号S
T(t)を受信して、数Mの出力信号P
1(t)、・・・、P
m(t)、・・・、P
M(t)に分割する。それぞれ、第2のアンテナTx
1、・・・、Tx
m、・・・、Tx
Mのうちの1つに対応する。各出力信号P
1(t)、・・・、P
m(t)、・・・、P
M(t)は、異なる遅延β
1、・・・、β
m、・・・、β
Mを加算信号S
T(t)に適用することによって生成される。M個の出力信号P
m(t)のm番目に対して、
【数2】
遅延β
1、・・・、β
m、・・・、β
Mを、制御器44によって制御して、第2のフェーズドアレイ6の方向(θ
T、φ
T)を、出力無線信号11の送信用に操縦する。
【0164】
出力信号P1(t)、・・・、Pm(t)、・・・、PM(t)のそれぞれは、個々の送信増幅器431、・・・、43m、・・・、43Mによって受信される。これらは、対応する送信信号H1(t)、・・・、Hm(t)、・・・、HM(t)を出力する。各送信信号H1(t)、・・・、Hm(t)、・・・、HM(t)は、個々の第2のアンテナTx1、・・・、Txm、・・・、TxMによって受信されて、電磁波が放射される。遅延β1、・・・、βm、・・・、βMの結果、第2のアンテナTx1、・・・、Txm、・・・、TxMによって放出された電磁波は、第2のフェーズドアレイ6の意図した方向(θT、φT)(強め合う干渉が存在する)またはその近くを除いて、相殺的干渉によって相殺されるかまたは少なくとも減衰する。最終結果は、出力された無線信号11は、遅延β1、・・・、βm、・・・、βMを用いて、制御器44によって設定された第2のフェーズドアレイ6の方向(θT、φT)の辺りに、方向付けられる。
【0165】
制御器44は、マイクロ制御器、1つ以上のデジタル電子プロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ、1つ以上の位相アレイ、1つ以上の位相検出器、1つ以上の移相器、または任意の他のデバイスであって、ビームフォーミングに対する遅延α1、・・・、αn、・・・、αN及びビームステアリングに対する遅延β1、・・・、βm、・・・、βMの制御に適したもの、の形態を取ってもよい。
【0166】
デジタルビームフォーミング及びビームステアリング用回路
無線送受信機1のビームフォーミング及びビームステアリングは、たとえばソフトウェア無線の分野からの方法を用いて、デジタル領域において実装してもよい。
【0167】
図11も参照して、デジタル回路47を含む第2の回路46の形態の回路7の例を示す。
【0168】
第2の回路46は、N個の第1のアンテナRx1、・・・、Rxn、・・・、RxNの第1のフェーズドアレイ5に接続された低雑音増幅器391、・・・、39n、・・・、39N のバンクを含む。これらは、アナログ回路38の場合と同様に、入力された無線信号9を、N個の増幅信号S1(t)、・・・、Sn(t)、・・・、SN(t)に変換する。デジタル回路47は、第1のフェーズドアレイ5からの増幅信号S1(t)、・・・、Sn(t)、・・・、SN(t)のデジタルビームフォーミングを行うように、またM個の出力信号P1(t)、・・・、Pm(t)、・・・、PM(t)を出力することによって第2のフェーズドアレイ6のデジタルビームステアリングを行うように構成されている。アナログ回路38の場合と同様に、第2の回路46はまた、送信増幅器431のバンク、・・・、43m、・・・、43Mを含む。これらは、出力信号P1(t)、・・・、Pm(t)、・・・、PM(t)を増幅して、送信信号H1(t)、・・・、Hm(t)、・・・、HM(t)を第2のアンテナTx1、・・・、Txm、・・・、TxMに与える。第2の回路46は、N個の第1のアンテナRx1、・・・、RxNのそれぞれに対応するデジタルチャネルと、M個の第2のアンテナTx1、・・・、TxMのそれぞれに対応するデジタルチャネルとを提供する。
【0169】
増幅信号S1(t)、・・・、Sn(t)、・・・、SN(t)のそれぞれは、デジタル回路47の個々のアナログ/デジタル変換器(ADC)481、・・・、48n、・・・、48Nによって受信される。ADC481、・・・、48n、・・・、48Nは、増幅信号S1(t)、・・・、Sn(t)、・・・、SN(t)を、サンプリング間隔δtでサンプリングする。デジタル回路47は使用中に連続的に動作するが、単に以下の解説を説明するために、時間t=kδtにおけるn番目の増幅信号のデジタルサンプリングを、Sn(tk)と表す(kは整数)。
【0170】
ビームフォーミング遅延ブロック49は、ビームフォーミングのために、遅延α1、・・・、αn、・・・、αNを、デジタル化された入力信号S1(tk)、・・・、Sn(tk)、SN(tk)に適用する。たとえば、遅延α1、・・・、αn、・・・、αNは、ADCS481、・・・、48Nのサンプリング間隔δtの整数倍であってもよい。代替的に、より細かい精度が必要な場合は、1つ以上の以前のサンプリングの間の補間を用いてもよい。たとえば、各チャネルは、バッファ最後のいくつかのサンプリング、たとえば3つの以前のサンプリング{Sn(tk)、Sn(tk-1)、Sn(tk-2)、Sn(tk-3)}のバッファを含んでいてもよく、多項式の補間式を用いて、各デジタルサンプリングを、サンプリング間隔の整数に対応しない遅延αnに対応する推定値にシフトさせてもよい。好ましくは、ADC481、・・・、48Nは、サンプリング間隔の整数倍を使用できるレート1/δtにおいてサンプリングする。これは、より正確で、それほど計算集約型でないからである。遅延α1、・・・、αn、・・・、αNは、デジタル回路47の制御器50によって制御される。
【0171】
遅延信号S1(tk+α1)、・・・、Sn(tk+αn)、SN(tk+αN)は、加算ブロック51によって加算されて、デジタル化された加算信号ST(tk)が生成される。
【0172】
図12も参照して、いくつかの例では、ビームフォーミングブロック49及び加算ブロック51は、各入力チャネルに対応して増幅信号S
1(t)、・・・、S
n(t)、・・・、S
N(t)の数Kのサンプリングを格納するバッファB
1、・・・、B
n、・・・、B
Nを用いて、統合された方法で実装してもよい。たとえば、最新のサンプリングが、k
番目の場合、N個のバッファB
nのn
番目が、サンプルB
n={S
n(t
k)、S
n(t
k-1)、・・・、S
n(t
k-K+1)}を格納する。そしてビームフォーミング操作を、N個のバッファB
1、・・・、B
n、・・・、B
Nのそれぞれから適切な遅延を伴うサンプルを選択して、それらを加算することによって行うことができる。第1のフェーズドアレイ5の一方向例では、デジタル化された加算信号S
T(t
k)を、以下の加算によって生成してもよい。
【0173】
【数3】
この例は、
図12の灰色の陰影によって例示されている。N>Kである場合には、加算は単に切り捨ててもよい。異なる遅延を用いてもよく、第1のフェーズドアレイ5の第2の方向例では、デジタル化された加算信号S
T(t
k)を、以下の加算によって生成してもよい。
【0174】
【数4】
この例は、
図12の陰影によって例示されている。この場合もやはり、インデックス2(n-1が)K-1を超えたら、加算は単に切り捨てることができる。加算にはすべてのバッファが含まれる必要はなく、たとえば、さらに別の方向は以下に対応してもよい。
【0175】
【数5】
この例は、
図12には例示しておらず、S
1(t
k)、S
3(t
k-1)、S
5(t
k-2)などを加算することに対応する。バッファB
1、・・・、B
m、・・・、B
Mを用いて、2つ以上の加算を同時に計算することができ、第1のアンテナRx
1、・・・、Rx
n、・・・、Rx
Nの単一のアレイ6を用いて、2つの「仮想の」指向性アンテナが並列に受信することができる。
【0176】
図11を再び参照して、ビームステアリング遅延ブロック52は、M個のデジタル化された出力信号P
1(t
k)、・・・、P
m(t
k)、・・・、P
M(t
k)を、遅延β
1、・・・、β
m、・・・、β
Mを、デジタル化された加算信号S
T(t
k)に適用することによって生成する。遅延β
1、・・・、β
m、・・・、β
Mが、サンプリング間隔δtの整数倍に対応する場合、ビームステアリング遅延ブロック52を、数K2の値のデジタル化された加算信号S
T(t
k)、すなわち、{S
T(t
k)、S
T(t
k-1)、S
T(t
k-K2+1)}を格納するバッファを用いて遅延値を出力ことによって、単純に実装してもよい。遅延β
1、・・・、β
m、・・・、β
Mが、サンプリング間隔δtの整数倍に対応しない場合、多項式の補間と組み合わせたバッファを用いてもよい。
【0177】
デジタル化された出力信号P1(tk)、・・・、Pm(tk)、・・・、PM(tk)は、アナログ出力信号P1(t)、・・・、Pm(t)、・・・、PM(t)に、個々のアナログデジタル変換器(DAC)531、53m、・・・、53Mによって変換される。
【0178】
ビームフォーミング及びビームステアリングのデジタル実装には、非常に高い帯域幅を伴うADC48及びDAC53が必要である。代替的な実装では、ビームフォーミング及びビームステアリング遅延ブロック49、52を省略して、ADC48及びDAC53を単一の時間に同期させる代わりに、制御器50がADC48を制御して、ずらした時間でサンプリングして、ビームフォーミング遅延α1、・・・、αn、・・・、αNを実装する。DAC53についても同様である。
【0179】
それに加えてまたはその代わりに、第2の回路46は、サンプリング前に、増幅信号S1(t)、・・・、SN(t)を送信帯域から基底帯域に変換するように構成されたダウンコンバータ541、・・・、54n、・・・、54Nを、各入力チャネルに含んでいてもよい。同様に、第2の回路はまた、デジタル回路47の出力を基底帯域から送信帯域に変換して戻すアップコンバータ 551、・・・、55m、・・・、55Mを、各出力チャネルに含んでいてもよい。デジタル処理のために基底帯域に変換すると、ADC48及びDAC53に対する帯域幅要求が減る。ダウンコンバータ54及びアップコンバータ55の例としては、局部発振器を利用した回路ヘテロダインを挙げてもよい。
【0180】
ハイブリッドビームフォーミング及びビームステアリング用回路
無線送受信機1のビームフォーミング及びビームステアリングは、部分的にアナログ領域及び部分的にデジタル領域において実装してもよい。
【0181】
図13~
図15も参照して、ハイブリッド回路56の形態の回路7の例を示す。
【0182】
特に
図14を参照して、第1のフェーズドアレイ5のN個の第1のアンテナRx
1、・・・、Rx
n、・・・、Rx
Nが、数Jの第1のサブアレイ57
1、・・・、57
j、・・・、57
J内に配列される。各第1のサブアレイ57
jは、2つ以上の第1のアンテナRx
nを含み、対応する集合受信信号58
jを、デジタル回路59の入力チャネルに与える。デジタル回路59はデジタル回路47と同じである。ただし、受信信号G
n(t)に対してデジタルビームフォーミングを行う代わりに、デジタル回路59は、J個の集合受信信号58
1、・・・、58
j、・・・、58
Jに対してデジタルビームフォーミングを行うように構成されている。同様に、デジタル回路59は、デジタルビームステアリングを行って、数Wの集合出力信号60
1、・・・、60
w、・・・、60
Wを生成するように構成されている。第2のフェーズドアレイ6のM個の第2のアンテナTx
1、・・・、Tx
m、・・・、Tx
Mは、W個の第2のサブアレイ61
1、・・・、61
w、・・・、61
W内に配列されている。それぞれは、個々の集合出力信号60
1、・・・、60
w、・・・、60
Wを受信する。
【0183】
特に
図13を参照して、第1のサブアレイ57
jをより詳細に示す。
【0184】
各第1のサブアレイ57
jは、数Njの第1のアンテナRx
1、・・・、Rx
Njと、受信信号G(t)に対してアナログビームフォーミングを行って、対応する集合受信信号58
jを生成するように構成されたアナログ回路とを含む。
図13において、第1のアンテナRx
1、・・・、Rx
Njは、第1のサブアレイ57
jを例示する目的で内部的に1からNjまで番号付けされているが、これらは、第1のアンテナRx
1、・・・、Rx
Nの全体数Nのうちの一部のみを表している。
【0185】
第1のサブアレイ57jのアナログ回路は、Nj個の第1のアンテナRx1、・・・、RxNjのそれぞれに対応する低雑音増幅器391、・・・、39Njと、ビームフォーミング位相アレイ40と、信号加算器41とを含んでおり、これらは、アナログ回路38の対応するコンポーネントと同様に構成されている。ただし、集合受信信号58jは、合計N個の受信信号G1(t)、・・・、GN(t)のうちのNjのサブセット上での加算にのみ対応する。第1のサブアレイ57jのビームフォーミング位相アレイ40によって適用される遅延α1、・・・、αNjは、予め設定して固定してもよいし、または代替的に、遅延α1、・・・、αNjは、デジタル回路59の制御器44によって提供される制御信号62によって制御してもよい。
【0186】
特に
図15を参照して、第2のサブアレイ61
wをより詳細に示す。
【0187】
各第2のサブアレイ61
wは、数Mwの第2のアンテナTx
1、・・・、Tx
Mwと、集合出力信号60
wに対してアナログビームステアリングを行って、第2のアンテナRx
1、・・・、Rx
Mwによって送信するための対応する送信信号H(t)を生成するように構成されたアナログ回路とを含む。
図15において、第2のアンテナTx
1、・・・、Tx
Mwは、第2のサブアレイ61
wを例示する目的で内部的に1からMwまで番号付けされているが、これらは、第2のアンテナTx
1、・・・、Tx
Mの全体数Mのうちの一部のみを表している。
【0188】
第2のサブアレイ61wのアナログ回路は、ビームステアリング位相アレイ42と、Mw個の第2のアンテナTx1、・・・、TxMwのそれぞれに対応する送信増幅器431、・・・、43Mwとを含んでおり、これらは、アナログ回路38の対応するコンポーネントと同様に構成されている。ただし、出力信号H(t)は、合計M個の第2のアンテナTx1、・・・、TxMのうちのMwのサブセットにのみ供給される。第2のサブアレイ61wのビームステアリング位相アレイ42によって適用される遅延β1、・・・、βMwは、予め設定して固定してもよいし、または代替的に、遅延β1、・・・、βMwは、デジタル回路59の制御器44によって提供される制御信号63によって制御してもよい。
【0189】
ハイブリッド回路56は随意に、各デジタルチャネルに対して、ダウンコンバータ541、・・・、54J及びアップコンバータ551、・・・、55Wを含んでいてもよい。
【0190】
ハイブリッド回路56を用いると、純粋なデジタルアプローチと比べて、必要なADC48及びDAC53の数、及びデータ処理能力に対する要件も削減しながら、ソフトウェア無線の柔軟性の一部が可能になり得る。
【0191】
二重中継用無線送受信機
前述した例では、第1の面3で受信した信号9を中継して第2の面4から再送信する11ことについて説明した。実際には、無線送受信機1は、無線信号を他の方向(第2の面4から第1の面3)にも中継する必要がある。これは、ある数の異なる方法で達成し得る。
【0192】
たとえば、回路7を、第1及び第2の期間の間で交互に繰り返すように構成してもよい。各交互サイクルの第1の期間中、回路7は、前述したように第1のフェーズドアレイ5を制御して無線信号9を受信してもよい。そして無線信号9は、出力信号11として第2のフェーズドアレイ6によって再送信される。各代替サイクルの第2の期間中、回路7は方向を逆転して、第2のフェーズドアレイ6が無線信号9を受信するようにしてもよい。そして無線信号9は、出力信号11として第1のフェーズドアレイ5によって再送信される。このようにして、第1及び第2のアンテナR1x、・・・、RxN、Tx1、・・・、TxMを時分割多重化して、送受信装置として機能させてもよい。第1の期間中に、無線信号9を一方向に中継し、第2の期間中に、無線信号9の中継方向を逆転する。第1及び第2の期間の交互サイクルを、デバイスが作動している間は繰り返す。第1の期間と第2の期間は、設置場所の要件に応じて、同じまたは異なる長さであってもよい。
【0193】
二重送信用の回路7は、前述した例のいずれかを適合及び/または複製することによって設けてもよい。
【0194】
代替的に、第1及び第2のアンテナR1x、・・・、RxN、Tx1、・・・、TxMの使用を時間多重化する代わりに、専用の送受信アンテナを第1及び第2の面3、4の両方によって支持してもよい。
【0195】
【0196】
第2の無線送受信機64は、前述したように、第1及び第2のフェーズドアレイ5、6を含む。第2の無線送受信機64はまた、第2の面4上に支持された数N2の第3のアンテナRx’1、・・・、Rx’N2と、第1の面3上に支持された数M2の第4のアンテナTx’1、・・・、Tx’M2とを含む。信号9を第1のフェーズドアレイ5から第2のフェーズドアレイ6に中継することに加えて、回路7はさらに、N2個の第3のアンテナRx’1、・・・、Rx’N2を第3のフェーズドアレイ65として制御して無線信号を受信し、またM2個の第4のアンテナTx’1、・・・、Tx’M2を第4のフェーズドアレイ66として制御して、第3のフェーズドアレイ65を用いて受信した無線信号を再送信するように構成されている。第2のフェーズドアレイ6と同様に、第3のフェーズドアレイ65は指向性であり、第2の面4の法線12に対する鋭角の第3の範囲Δθ3内で制御可能に配向可能である。第1のフェーズドアレイ5と同様に、第4のフェーズドアレイ66は指向性であり、第1の面3の法線10に対する鋭角の第4の範囲Δθ4内で制御可能に配向可能である。
【0197】
このようにして、第2の無線送受信機64は、第1及び第2のフェーズドアレイ5、6を用いて無線信号を第1の面3から第2の面4に中継してもよく、第3及び第4のフェーズドアレイ65、66を用いて信号を逆方向に中継してもよい。二重送信用の回路7は、前述した例のいずれかを適合及び/または複製することによって設けてもよい。
【0198】
図16では別個にグループ化されているように示しているが、第1及び第4のフェーズドアレイ5、66は、第1の面3の物理的に別個の領域に対応する必要はない。
【0199】
あるいは、
図17に示すように、第1のアンテナRx
1、・・・、Rx
Nに、第4のアンテナTx’
1、・・・、Tx’
M2が散在してもよい。同様に、第2のアンテナTx
1、・・・、Tx
Mに、第3のアンテナRx’
1、・・・、Rx’
N2が散在してもよい。
【0200】
二重(または双指向性)中継の例のいずれかを、第2の面4から離れるように送信される無線信号が、第1の面3から離れるように送信される無線信号よりも出力が低いように構成してもよい。
【0201】
たとえば、第1の面3を建物の外側に向けてもよく、一方で、第2の面4を建物の内側に向けてもよい。より広い外部ネットワークに送信して戻すために必要なものと比べて、建物の内部で再送信される無線信号に対して低減された電力レベルを用いると、無線送受信機64の消費電力が減り得る。建物内で再送信される信号に対して低減した電力レベルを用いると、建物内の他の電子機器及び/または機器との干渉が減り得る。建物内で再送信される信号に対して低減した電力レベルを用いると、無線信号の強度について心配する任意の建物占有者/ユーザに安心感を与え得る。
【0202】
周波数分割多重無線ネットワークにおける無線信号の選択性
任意的なフィルタバンク45は、信号処理機能を提供するものとして説明しているが、フィルタバンクは、それに加えてまたはその代わりに、一部の無線ネットワークサービスプロバイダから受信した無線信号9を、他のサービスプロバイダからの無線信号を中継することなく中継することを選択する機能を提供してもよい。
【0203】
図18も参照して、フィルタバンク45の一部の第1の例を示す。
【0204】
フィルタバンク45は回路6の一部であり、この例では、数NFの通過帯域フィルタ671、・・・、67NFを含み、それぞれが、N個の第1のアンテナRx1、・・・、RxNのn番目からの受信信号Gn(t)に対する通過帯域を規定する。各通過帯域フィルタ671、・・・、67NFは、周波数多重無線通信ネットワークにおける異なるサービスプロバイダに対応する。サービスプロバイダは、携帯電話サービスプロバイダ、データサービスプロバイダなどであってもよい。通過帯域フィルタ671、・・・、67NFは、たとえば、膜バルク音響共振器(FBAR)、薄膜バルク音響共振器(TFBAR)などのアナログフィルタの形態を取ってもよい。
【0205】
フィルタバンク45は、通過帯域67
1、・・・、67
NFのうちの1つ以上を無効にし得るように構成可能である。たとえば、
図18に示す例では、各通過帯域フィルタ67
1、・・・、67
NFの出力は、個々のスイッチSW
1、・・・、SW
NFによって以後の処理と接地との間で切替可能である。回路7は、2つ以上の通過帯域フィルタ67
1、・・・、67
NFのうちのそれぞれの出力を、使用中に独立に有効または無効にでき得るように、構成可能であってもよい。たとえば、各スイッチSW
1、・・・、SW
NFは、回路7の制御器44、50によって供給される制御信号68
1、・・・、68
NFによって制御してもよい。
【0206】
このようにして、無線送受信機1、64の所有者/設置者は、どのサービスプロバイダがそのインフラストラクチャを使用し得るかを制御して、使用中にこれを更新してもよい。たとえば、サブスクリプションを支払うサービスプロバイダに対応する通過帯域を有効にしてもよく、他の通過帯域を無効にする。緊急通話に対して及び/または緊急サービスにより使用される周波数帯域は、常に有効になっていてもよい。音声通話及びデータサービスに対して同じサービスプロバイダに異なる帯域が割り当てられるネットワークでは、無線送受信機1、64は、そのサービスプロバイダに対してデータサービスが無効になると同時に音声通話に対する信号を中継するように構成してもよい。
【0207】
回路7は、対応する通過帯域フィルタ671、・・・、67Fの出力を短絡させることによって、1つ以上の通過帯域を有効にし及び/または1つ以上の他の通過帯域を無効にする命令を含む通過帯域変更メッセージ(図示せず)を受信するように構成してもよい。通過帯域変更メッセージは、無線送受信機1、64がたとえば無線信号として一部または一部分を構成する無線ネットワークを通して受信してもよい。通過帯域変更メッセージは、常に有効になっている通過帯域内で受信してもよい。
【0208】
代替的に、アナログフィルタリングを用いる代わりに、異なるサービスプロバイダに対応する通過帯域を、たとえばデジタル回路47、59の一部として提供されるデジタルフィルタによって提供してもよい。
【0209】
通過帯域は好ましくは使用中に構成可能であるが、他の例では、回路7が、2つ以上の通過帯域のそれぞれが、1回限りの構成プロセスにおいて独立に有効または無効になるように構成可能であってもよい。
【0210】
たとえば、
図19も参照して、各通過帯域は、ヒューズ69を介して以後の処理のために接続された対応する通過帯域フィルタ67によって提供してもよい。一対の端子70、71をヒューズ69の両側に設けて、回路7の周囲部分を保護しながら、端子70、71間に高電流を流してヒューズ69を飛ばし、対応する通過帯域を無効にすることによって1回限りの構成を可能にしてもよい。
代替的に、
図20も参照して、ヒューズ69は最初に通過帯域フィルタ67の出力を接地に短絡させ得るため、1回限りの構成ステップでヒューズ69を飛ばして、対応する通過帯域を有効にする必要がある。
【0211】
また1回限りの構成プロセスを、たとえば、プログラマブル読み出し専用メモリ(プログラマブルROM)をプログラムすることによって、デジタルフィルタリングを用いて回路7に適用して通過帯域を提供してもよい。
【0212】
時分割多重無線ネットワークにおける無線信号の選択性
無線信号を中継する選択性は、周波数分割多重を利用する無線ネットワークに限定する必要はない。無線送受信機1、64は、それに加えてまたはその代わりに、時分割多重無線通信システム内で無線信号を受信して再送信するように構成してもよい。回路7は、1つ以上の選択されたサービスプロバイダに対応する無線信号9のみを再送信するように構成可能であってもよい。
【0213】
回路7は、たとえばパケットヘッダデータを用いて、受信した無線信号9の送信元を特定するように構成してもよい。代替的に、異なるサービスプロバイダに対するタイムウィンドウが既知である場合、回路7は、非選択サービスプロバイダに対応するタイムスロット中の中継を単に無効にしてもよい。
【0214】
受信した無線信号9の送信元が、選択されたサービスプロバイダ(たとえば、加入者)に対応する場合、回路7は、その受信した無線信号9を出力無線信号11として再送信する。そうでない場合には、受信した無線信号9は再送信しなくてもよい。緊急通信及び/または緊急サービスユーザに対する例外は、無線送受信機1、64内にプログラムしてもよい。
【0215】
選択されたサービスプロバイダは、使用中に更新可能であってもよい。たとえば、回路7は、1つ以上のサービスプロバイダから発信される無線信号の再送信を可能にし及び/または1つ以上の他のサービスプロバイダから発信される無線信号の再送信を無効にする命令を含む、選択されたサービスプロバイダ変更メッセージ(図示せず)を受信するように構成してもよい。選択されたサービスプロバイダ変更メッセージ(図示せず)は、無線送受信機がその一部である無線ネットワークを通して受信してもよい。
【0216】
変更
当然のことながら、前述した実施形態にいくつかの変更を施してもよい。そのような変更には、無線送受信機の設計、製造、及び使用においてすでに既知であり、また本明細書ですでに説明した特徴の代わりにまたはそれに加えて用いてもよい同等な特徴及び他の特徴が含まれていてもよい。一実施形態の特徴は、別の実施形態の特徴によって置き換えてもよいし、補足してもよい。たとえば、ある無線送受信機の特徴は、他の無線送受信機の特徴によって置き換えるかもしくは補足し、及び/またはあるアンテナ配列の特徴は、他のアンテナ配列の特徴によって置き換えるかまたは補足してもよい。
【0217】
平面基板2を含む無線送受信機1、64について説明してきた。しかし、どの無線信号を中継するかの選択性などの前述した特徴は、第1及び第2のフェーズドアレイ5、6ならびに随意に第3及び第4のフェーズドアレイ65、66が、平面基板の対向する面上に支持されない無線送受信機(図示せず)に適用してもよい。たとえば、第1及び第2のフェーズドアレイ5、6は、コーナーの周りで無線信号9を中継するために互いに角度をなして配向される一対の面上に支持してもよい。
【0218】
1つの特定の例では、さらなる無線送受信機(図示せず)が、N個の第1のアンテナRx1、・・・、RxN、M個の第2のアンテナTx1、・・・、TxM、及び回路7、38、47、56を含んでいてもよい。回路7、38、47、56は、N個の第1のアンテナRx1、・・・、RxNを第1のフェーズドアレイ7として制御して入力無線信号9を受信し、M個の第2のアンテナTx1、・・・、TxMを第2のフェーズドアレイ6として制御して出力無線信号11を送信するように構成してもよい。
【0219】
前述した無線送受信機1、64と同様に、第1のフェーズドアレイ5は指向性であり、第1の角度範囲Δθ1内で制御可能に配向可能であるが、この場合、範囲は平面基板2の第1の面3の法線10に対して制限されない。同様に、第2のフェーズドアレイ6は指向性であり、第2の角度範囲Δθ2内で制御可能に配向可能であり、範囲は平面基板2の第2の面4の法線12に対して拘束されない。
【0220】
バラクタダイオードを用いたアナログビームフォーミング
図10に示すアナログ回路38の実装では、個々の遅延α
1、・・・、α
n、・・・、α
N、β
1、・・・、β
m、・・・、β
Mを生成する際のビームフォーミング位相アレイ40及びビームステアリング位相アレイ42の機能は、個々のバラクタダイオード(「バリキャップ」と言われることもある)の可変静電容量によって提供してもよい。
【0221】
たとえば、
図21も参照して、第2のアナログ回路38bの一部を示す。
【0222】
図21には、受信アンテナRx
1、・・・、Rx
n、・・・、Rx
Nと信号加算器41との間の部分のみを示しているが、第2のアナログ回路38bはアナログ回路38と、ビームフォーミング位相アレイ40がN個のバラクタダイオードC(VR
1)、・・・、C(VR
n)、・・・、C(VR
N)のアレイの形態を取ることを除いて同じである。それぞれが有する可変静電容量C(VR
n)は、制御器44によって制御される対応する逆バイアスVR
1、・・・、VR
n、・・・、VR
Nの関数である。制御器44は、逆バイアスVR
1、・・・、VR
n、・・・、VR
Nを直接供給してもよいし、逆バイアスVR
1、・・・、VR
n、・・・、VR
NをバラクタダイオードC(VR
1)、・・・、C(VR
n)、・・・、C(VR
N)に提供する1つ以上の電圧源(図示せず)及び/または増幅器(図示せず)を制御してもよい。各バラクタダイオードC(VR
n)は、インピーダンス-i(ωC(VR
n))
-1を、対応する信号S
n(t)の経路内に注入して、ビームフォーミング遅延α
nを提供するように配列されている。ビームフォーミング位相アレイ40のバラクタダイオードは、基板2にフリップチップボンディングされた集積回路の一部であってもよい。
【0223】
図21に示す例では、各バラクタダイオードC(VR
n)が、システム接地と信号S
n(t)経路との間に接続されている。制御器44によって提供される逆バイアスVR
nは、バラクタダイオードC(VR
n)をブロッキング静電容量C
blockと直列に接続することによって、信号S
n(t)経路から分離される。ブロッキング静電容量C
blockは、バラクタダイオード静電容量C(VR
n)の(使用時の)上限よりも著しく大きくなければならない(たとえば、少なくとも10倍)。このようにして、全直列静電容量は、バラクタダイオード静電容量C(VR
n)によって占められる。
【0224】
図21に示す構成は典型的であり、信号経路S
1(t)、・・・、S
N(t)を、対応するバラクタダイオードC(VR
1)、・・・、C(VR
N)に結合するのに適した任意の他の回路を、代わりに用いてもよい。代替的な実装では、各バラクタダイオードC(VR
n)を、対応するアンテナRx
nと低雑音増幅器39
nとの間の信号経路に、代わりに接続することができる。
【0225】
ブロッキング静電容量Cblockは、逆バイアスVR1、・・・、VRn、・・・、VRNのうちの1つ以上が変化するとき、たとえば、第1及び/または第2のアレイ5、6に対する向き(複数可)θR、θTを変えるときに、過渡信号をブロックしないことが理解される。しかし、第1及び/または第2のアレイ5、6の向き(複数可)θR、θTを変える速度及び周波数は、RF信号9、11の搬送周波数よりも桁違いに小さく、フィルタリングによって簡単に取り除かれ得る。それに加えてまたはその代わりに、第1及び/または第2のアレイ5、6に対する向き(複数可)θR、θTを変えている期間中に、無線信号の中継を一時的にスイッチオフしてもよい。
【0226】
それに加えてまたはその代わりに、ビームステアリング位相アレイ42は、M個のバラクタダイオードのアレイを含んでいても(またはその形態を取っても)よい。たとえば、
図22も参照して、第3のアナログ回路38cの一部を示す。
【0227】
図22には、部分信号加算器41と送信アンテナTx
1、・・・、Tx
m、・・・、Tx
Mとの間の部分のみを示しているが、第2のアナログ回路38cはアナログ回路38及び/または第2のアナログ回路38bと、ビームステアリング位相アレイ42がM個のバラクタダイオードC(VR
1)、・・・、C(VR
m)、・・・、C(VR
M)のアレイの形態を取ることを除いて、同じである。それぞれが有する静電容量C(VR
m)は、制御器44によって供給される対応する逆バイアスVR
1、・・・、VR
m、・・・、VR
Mの関数である。制御器44は、逆バイアスVR
1、・・・、VR
m、・・・、VR
Mを直接供給してもよいし、逆バイアスVR
1、・・・、VR
m、・・・、VR
MをバラクタダイオードC(VR
1)、・・・、C(VR
m)、・・・、C(VR
M)に提供する1つ以上の電圧源(図示せず)及び/または増幅器(図示せず)を制御してもよい。各バラクタダイオードC(VR
m)は、ビームフォーミング遅延β
mを提供するインピーダンス-i(ωC(VR
m))
-1を加算信号S
T(t)内に注入して、対応する出力信号P
m(t)を提供する。ビームステアリング位相アレイ42のバラクタダイオードは、基板2にフリップチップボンディングされた集積回路の一部であってもよい(同じ集積回路が、ビームフォーミング位相アレイ40及びビームステアリング位相アレイ42の両方にバラクタダイオード提供してもよい)。
【0228】
図22に示す構成は典型的であり、バラクタダイオード静電容量C(VR
1)、・・・、C(VR
M)を加算信号S
T(t)に結合して、対応する出力信号P
1(t)、・・・、P
M(t)を提供するのに適した任意の他の回路を、代わりに用いてもよい。代替的な実装では、各バラクタダイオードC(VR
m)を、対応する送信増幅器43
mとアンテナTx
mとの間の点に、代わりに接続することができる。
【0229】
数Mの送信増幅器43
1、・・・、43
Mを用いる例について説明してきたが、ビームステアリングと増幅の順序は逆であってもよい。たとえば、
図23も参照して、第4のアナログ回路38dの一部を示す。
【0230】
第4のアナログ回路38dは第3のアナログ回路38cと同じである。ただし、加算信号ST(t)が単一の送信増幅器43によって増幅されて、基本送信信号HT(t)を出力する。基本送信信号HT(t)はその後に、M個の送信チャネルに分割され、アンテナTx1、・・・、TxMによる送信用の送信信号H1(t)、・・・、HM(t)が、M個のバラクタダイオードC(VR1)、・・・、C(VRM)のアレイの形態のビームステアリング位相アレイ42によって生成される。
【0231】
同様に、ハイブリッド回路56のいくつかの実装(図示せず)では、第1のサブアレイ57のビームフォーミング位相アレイ40及び/または第2のサブアレイ61のビームステアリング位相アレイ42を、バラクタダイオードを用いて実装してもよい。全般的に、前述した例のいずれかのビームフォーミング及び/またはビームステアリングを、
図21~
図23に関連して説明したように、バラクタダイオードC(VR)を用いて実装及び/または置き換えてもよい。
【0232】
バラクタダイオードC(VRn)、C(VRm)と直列に接続されたブロッキング静電容量Cblockを、平面基板2の第1及び/または第2の面3、4上に支持して実装してもよい。たとえば、第1及び/または第2の導体層25、28のエリアならびに第1、第2、または共通の接地面層23、26、33の対応する領域をパターニングすることによって。さらなる誘電体(図示せず)を、ブロッキング静電容量Cblockに対応する領域内に堆積させてもよいし、または既存のアンテナ誘電体層24、27を用いてもよい。
【0233】
広角受信
複数の第1のアンテナRx1、・・・、RxNを第1のフェーズドアレイ5として制御し、複数の第2のアンテナTx1、・・・、TxMを第2のフェーズドアレイ5として制御するように構成された無線送受信機1、64について説明してきた。言い換えれば、信号の送信及び受信が両方向である。
【0234】
しかし、無線送受信機1、64を指向性送信のみで用いてもよい。言い換えれば、無線送受信機1、64は、ビームフォーミングを第1のフェーズドアレイ5に適用する必要はなく、代わりに、受信信号9に対して第1のアンテナRx1、・・・、RxNをモニタするだけである。特定の方向へのビームフォーミングによって、その方向に発信されるより弱い信号を検出できる一方で、ビームフォーミングの実効を省略することで、第1のアンテナRx1、・・・、RxNが、広範囲の角度からの信号を検出することができる(個々のアンテナの放射線/アンテナパターン、間隔などによって決定される)。そして、任意の受信信号9を、前述したように第2のフェーズドアレイ6のビームステアリングによって、特定の送信方向θTに再一斉送信11してもよい。
【0235】
同様に、第1のアンテナRx1、・・・、RxNを第1のフェーズドアレイ5として制御して特定の方向から受信してもよく、一方で、第2のアンテナTx1、・・・、TxMはビームステアリングされず、広範囲の角度にわたって(ビームステアリングと比べて)、たとえば、ほぼ半球で、放射する。
【0236】
全般的に、無線送受信機1、64は次のように操作してもよい。
【0237】
A.指向性受信及び再送信用
B.無指向性受信及び指向性再送信用、または
C.指向性受信及び無指向性再送信用。
【0238】
用語「無指向性」は、ビームフォーミング/ビームステアリングのために意図的な位相シフトを適用することはしないことを指す。言い換えれば、受信または送信における任意の指向性は、アンテナRx1、・・・、RxN、Tx1、・・・、Txmの形状、及び個々のアレイの幾何学的形状などのみから生じる。中継の方向は、第1のアンテナRx1、・・・、RxNから第2のアンテナTx1、・・・、TxMに限定する必要はなく、中継の方向は逆であってもよいし、時間とともに交互であってもよい。
【0239】
無線送受信機1、64は、モードA、B、及びCとして列挙したモードの間で、異なる時点で変化してもよい。モード間での切り替えは、所定のスケジュールに従ってもよく、動作中に動的に決定してもよい。代替的に、より広範な通信ネットワークにおいて、所与の無線送受信機1、64が果たそうとする役割に応じて、設置時に特定のモードを構成してもよい。
【0240】
本出願では、特許請求の範囲を特徴の特定の組み合わせに対して説明してきたが、当然のことながら、本発明の開示の範囲には、本明細書で明示的または黙示的のいずれかで開示した任意の新規特徴もしくは特徴の任意の新規な組み合わせまたはそれらの任意の一般化も含まれ、それらが、任意の請求項において現時点で請求されるものと同じ発明に関するか否かに、及びそれらが、本発明が軽減するのと同じ技術的な問題のいずれかまたは全てを軽減するか否かに拘わらない。出願人は、本出願またはそこから派生する任意のさらなる出願の手続き中に、このような特徴及び/またはこのような特徴の組み合わせに対して新しい特許請求の範囲が考案され得ることを、本明細書により通知する。
【国際調査報告】