(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-13
(54)【発明の名称】潤滑剤-冷媒組成物を含有する蒸気圧縮システム
(51)【国際特許分類】
F25B 43/02 20060101AFI20240205BHJP
C09K 5/04 20060101ALI20240205BHJP
C10M 105/38 20060101ALI20240205BHJP
F25B 1/02 20060101ALI20240205BHJP
F25B 1/04 20060101ALI20240205BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240205BHJP
C10N 40/30 20060101ALN20240205BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20240205BHJP
【FI】
F25B43/02 M
C09K5/04 F
C10M105/38
F25B1/02 Z
F25B1/04 Z
F25B1/00 396A
C10N40:30
C10N30:00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545192
(86)(22)【出願日】2022-01-25
(85)【翻訳文提出日】2023-07-26
(86)【国際出願番号】 US2022013597
(87)【国際公開番号】W WO2022164764
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルーク デイビッド シモーニ
(72)【発明者】
【氏名】バーバラ ハビランド マイナー
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BB34A
4H104LA11
4H104PA20
(57)【要約】
本開示は、ポリオールエステル潤滑剤、テトラフルオロプロペン、及びジフルオロメタンを含む潤滑組成物を収容する冷凍、空調、及びヒートポンプ装置に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発機、圧縮機、凝縮機、及び膨張装置を備え、前記圧縮機が、ポリオールエステル潤滑剤、ジフルオロメタン、及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む潤滑組成物を収容する潤滑剤リザーバを備える、冷蔵、空調、又はヒートポンプ装置。
【請求項2】
前記ポリオールエステル潤滑剤が、カルボン酸を、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びこれらの混合物からなる群から選択されるネオペンチル骨格を含むポリオールと反応させることによって得られる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ポリオールエステル潤滑剤が、アルコールを2~15個の炭素を有するカルボン酸と反応させることによって得られる、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記カルボン酸が、直鎖又は分岐鎖である、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ポリオールエステル潤滑剤が、約40℃で約10~約200センチストークスの粘度を有する、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記圧縮機が、回転圧縮機、往復圧縮機、又はスクロール圧縮機である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
空調装置である、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
冷蔵装置である、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
ヒートポンプ装置である、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記潤滑組成物が、
a.約2~7重量パーセントのジフルオロメタン、約6~18重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約75~91重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、
b.約5~14重量パーセントのジフルオロメタン、約3~9重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約76~92重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、又は
c.約1~4重量パーセントのジフルオロメタン、約7~20重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約77~92重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、
を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記潤滑組成物が、
a.約2~6.5重量パーセントのジフルオロメタン、約6~17重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約77~91重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、
b.約5~13重量パーセントのジフルオロメタン、約3~8重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約80~92重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、又は
c.約2~4重量パーセントのジフルオロメタン、約7~19重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約78~92重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、
を含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記潤滑組成物が、
a.約3~6.5重量パーセントのジフルオロメタン、約8~17重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約77~88重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、
b.約7~13重量パーセントのジフルオロメタン、約3~8重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約80~89重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、又は
c.約3~4重量パーセントのジフルオロメタン、約9~19重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約78~89重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、
を含む、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記潤滑組成物が、
a.約6~7重量パーセントのジフルオロメタン、約6~18重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約75~78重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、
b.約7~9重量パーセントのジフルオロメタン、約7~9重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約76~81重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、又は
c.約1~4重量パーセントのジフルオロメタン、約18~20重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約77~79重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、
を含む、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
a.約2~7重量パーセントのジフルオロメタン、約6~18重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約75~91重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、
b.約5~14重量パーセントのジフルオロメタン、約3~9重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約76~92重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、又は
c.約1~4重量パーセントのジフルオロメタン、約7~20重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約77~92重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、
を含む、潤滑組成物。
【請求項15】
a.約2~6.5重量パーセントのジフルオロメタン、約6~17重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約77~91重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、
b.約5~13重量パーセントのジフルオロメタン、約3~8重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約80~92重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、又は
c.約2~4重量パーセントのジフルオロメタン、約7~19重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約78~92重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、
を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
a.約3~6.5重量パーセントのジフルオロメタン、約8~17重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約77~88重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、
b.約7~13重量パーセントのジフルオロメタン、約3~8重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約80~89重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、又は
c.約3~4重量パーセントのジフルオロメタン、約9~19重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約78~89重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、
を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
a.約6~7重量パーセントのジフルオロメタン、約6~18重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約75~78重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、
b.約7~9重量パーセントのジフルオロメタン、約7~9重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約76~81重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、又は
c.約1~4重量パーセントのジフルオロメタン、約18~20重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約77~79重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、
を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
冷蔵、空調、又はヒートポンプシステムにおける圧縮機を潤滑する方法であって、POE潤滑剤を前記圧縮機に添加することと、前記システムに冷媒を充填することと、前記システムを動作させることと、を含み、前記圧縮機が潤滑剤リザーバを備え、前記冷媒が、ジフルオロメタン及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含有し、前記潤滑剤リザーバが、POE、ジフルオロメタン、及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを収容する、方法。
【請求項19】
前記潤滑剤リザーバ内の前記組成物が、請求項14~17のいずれかに記載の組成物を含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラフルオロプロペン及びジフルオロメタン及びポリオールエステル潤滑剤を含有する冷媒と共に使用するための冷蔵、空調、及びヒートポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒業界は、オゾン層破壊及び地球温暖化に関して環境に悪影響を与えない冷媒を探し求めてきた。多くの冷媒及び冷媒ブレンドが、地球温暖化効果の低い及びオゾン層の破壊が少ないないしはゼロであるとして提案されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の潤滑剤がこれらの新規組成物で有用である場合もあるが、これらのシステムを確実に適切に機能させるためには、このような冷媒及びブレンドの溶解挙動を理解することが必要である。したがって、潤滑剤を含む冷媒混合物の研究が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
蒸発機、圧縮機、凝縮機、及び膨張装置を備え、当該圧縮機が、ポリオールエステル潤滑剤、ジフルオロメタン、及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む潤滑組成物を収容する潤滑剤リザーバを備える、冷蔵、空調、又はヒートポンプ装置が、本明細書に提供される。
【0005】
また、冷蔵、空調、又はヒートポンプシステムにおける圧縮機を潤滑する方法であって、POE潤滑剤を当該圧縮機に添加することと、当該システムに冷媒を充填することと、当該システムを動作させることと、を含み、当該圧縮機が、潤滑剤リザーバを備え、当該冷媒が、ジフルオロメタン及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含有する、方法も、本明細書に提供される。
【0006】
また、本明細書に記載の冷蔵、空調、又はヒートポンプ装置を用いて冷却及び加熱するための組成物及び方法も、本明細書に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の装置の主要な構成要素の一実施形態の図である。
【
図2】潤滑剤リザーバ(又は油溜め)の位置を示す圧縮機の一実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
驚くべきことに、異なる冷媒、例えば、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン及びジフルオロメタンの潤滑剤への溶解度は同じではないことが見出された。したがって、特定の組成の冷媒ブレンドが潤滑剤に可溶化した場合、潤滑剤相に溶解する冷媒の組成は、元々配合された冷媒ブレンドに必ずしも対応するものではない。
【0009】
定義
冷媒は、熱の伝達に使用されるサイクル中に液体から気体への相変化を受け、再び液体に戻る伝熱流体として定義される。
【0010】
冷却システムは、特定の空間において加熱又は冷却効果を生じるために使用されるシステム(又は機器)である。伝熱又は冷却システムは、移動システム又は固定システムであり得る。
【0011】
冷蔵システムの例は、固定伝熱システム、エアコン、冷凍庫、冷蔵庫、ヒートポンプ、水冷機、満液式蒸発チラー、直接膨張式チラー、ウォークインクーラー、可搬式又は輸送冷蔵システム、可搬式伝熱システム、可搬式空調ユニット、車両の客室を冷却及び加熱するための自動車用ヒートポンプを含む可搬式ヒートポンプ、除湿器、及びこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない、任意の種類の冷蔵システム及び空調システムである。
【0012】
冷蔵能力(冷却能力とも呼ばれる)は、循環している冷媒1ポンド当たりの蒸発器内の冷媒のエンタルピーの変化、又は蒸発器から出る冷媒蒸気の単位体積(容積)当たりの蒸発器内の冷媒によって除去される熱、を定義する用語である。冷蔵能力は、冷媒又は伝熱組成物が、冷却を生じる能力の尺度である。したがって、この能力が高ければ高いほど、より高程度の冷却を生じる。冷却速度は、蒸発器内の冷媒によって除去される単位時間当たりの熱を指す。
【0013】
性能係数(Coefficient of performance、COP)は、除去された熱量を、そのサイクルを運転するのに必要であったエネルギー入力で割ったものである。COPが高ければ高いほど、エネルギー効率がより高いということである。COPは、内部温度と外部温度との特定の組み合わせでの冷却設備又は空調設備の効率評価であるエネルギー効率比(energy efficiency ratio、EER)と直接関連がある。
【0014】
温度勾配(単に「勾配」と呼ばれることもある)は、任意の過冷却又は過熱を除く、冷媒システムの構成要素内の冷媒による相変化プロセスの開始温度と終了温度との間の差異の絶対値である。この用語は、近共沸混合物又は非共沸組成物の、凝縮又は蒸発について説明するために使用され得る。冷却、空調又はヒートポンプシステムの温度勾配を指す場合、蒸発器内の温度勾配と凝縮器の温度勾配との平均値である平均温度勾配を提供することが一般的である。
【0015】
正味冷却効果とは、有用な冷却を生み出すために冷媒1kgが蒸発器内で吸収する熱量である。
【0016】
質量流量は、所定の時間に、冷蔵、ヒートポンプ又は空調システムを介して循環する冷媒の量(キログラム)である。
【0017】
本明細書で使用するとき、用語「潤滑剤」又は「油」とは、部品の焼付き防止を補助するために圧縮機に潤滑を提供する、組成物又は圧縮機に添加される(そして、任意の伝熱システム内で使用中に任意の伝熱組成物と接触する)任意の材料を意味する。
【0018】
本明細書で使用するとき、相溶化剤は、伝熱システム潤滑剤中の、開示される組成物のヒドロフルオロカーボンの溶解度を改善する化合物である。いくつかの実施形態では、相溶化剤により圧縮機への油戻しが改善される。いくつかの実施形態では、組成物をシステム潤滑剤と共に使用して、油リッチ相の粘度を低下させる。
【0019】
本明細書で使用するとき、油戻しとは、伝熱組成物の、伝熱システムを介して潤滑剤を運び、圧縮機にその潤滑剤を戻す能力を指す。すなわち、使用中、圧縮機潤滑剤の一部が、伝熱組成物によって圧縮機からシステムの他の部分に運び出されることは珍しいことではない。そのようなシステムでは、潤滑剤が効率良く圧縮機に戻らない場合、最終的に、潤滑の不足により圧縮機が故障する。
【0020】
本明細書で使用するとき、「紫外線」染料は、電磁スペクトルの紫外線又は「近」紫外線領域内で光を吸収する紫外線蛍光性組成物又はリン光性組成物として定義される。10ナノメートル~約775ナノメートルの範囲内の波長を有する、少なくともいくらかの放射線を発する紫外線照射下において、紫外線蛍光染料によって生じた蛍光が検出され得る。
【0021】
可燃性は、発火する及び/又は炎を伝播させる組成物の能力を意味するために使用される用語である。冷媒及び他の伝熱組成物について、燃焼下限濃度(lower flammability limit、「LFL」)とは、ASTM(American Society of Testing and Material、米国材料検査協会)E681に記述されている試験条件下で組成物の均質混合物及び空気を介して火炎伝播することができる空気中における伝熱組成物の最低濃度である。可燃上限(upper flammability limit、「UFL」)とは、同じ試験条件下で組成物の均質混合物及び空気を介して火炎伝播することができる、空気中における伝熱組成物の最高濃度である。また、ASTM-E681の条件下で試験することによって、冷媒化合物又は混合物が可燃性であるか不燃性であるかが判定される。
【0022】
冷媒が漏れる際には、混合物の低沸点成分が優先的に漏れ得る。これにより、システム内並びに蒸気漏れの組成は、漏れる時間にわたって変化する場合がある。これにより、不燃性の混合物は、漏れが想定される状況下で可燃性になり得る。また、ASHRAE(American Society of Heating,Refrigeration and Air-conditioning Engineers、米国加熱、冷蔵及び空調工学会)によって不燃性として分類されるためには、冷媒又は伝熱組成物は、配合時のみならず漏れ状態下でも、不燃性でなければならない。ASHRAEは様々な可燃性分類を定義している。クラス1の冷媒は火炎を伝播しない。クラス3の冷媒はより高い可燃性を有し、クラス2の冷媒は可燃性と呼ばれる。クラス2L冷媒は可燃性が低く、燃焼速度は10cm/秒以下である。
【0023】
地球温暖化係数(global warming potential、GWP)は、1キログラムの二酸化炭素の排出と比較して、1キログラムの特定の温室効果ガスの大気排出に起因する相対的な地球温暖化への寄与を推定するための指数である。GWPは、様々な対象期間について計算することができ、所与のガスの大気寿命の影響を示す。100年間を対象期間とするGWPが、一般的に参照される値である。混合物については、各成分に関する個々のGWPに基づいて加重平均を計算することができる。
【0024】
オゾン破壊係数(ozone depletion potential、ODP)は、物質によって生じるオゾン破壊の程度を指す数値である。ODPは、化学物質がオゾンに及ぼす影響を、類似の質量のCFC-11(フルオロトリクロロメタン)による影響と比較した比率である。このため、CFC-11のODPが1.0と定義される。他のCFC及びHCFCは、0.01~1.0の範囲のODPを有する。HFCは、塩素又は他のオゾン破壊性ハロゲンを含有しないので、ODPはゼロである。
【0025】
本明細書で使用するとき、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語、又はこれらの他の任意の変化形は、非排他的な包含を網羅することを意図する。例えば、列挙する要素を含む、組成物、プロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されない他の要素、又はそのような組成物、プロセス、方法、物品、若しくは装置などに内在する他の要素を含み得る。
【0026】
移行句「からなる(consisting of)」は、特定されていないあらゆる要素、工程、又は成分を除外する。特許請求の範囲における場合、このような句は、材料に通常付随する不純物を除き、列挙された材料以外の材料を含むことに対して特許請求の範囲を閉ざすことになる。語句「からなる」がプリアンブルの直後ではなく特許請求の範囲の本文の分節内で現れる場合、この語句はその節内に示される要素のみを限定するものであり、その他の要素が特許請求の範囲全体から除外されるわけではない。
【0027】
移行句「~から本質的になる」は、文字どおり開示されているものに加えて、材料、工程、特徴、構成成分、又は要素を含む、組成物、方法、又は装置を定義するために使用されるが、ただし、これらの追加的に含まれる材料、工程、特徴、構成成分、又は要素は、請求される発明の基本的及び新規の特性に実質的に影響を及ぼさない。用語「から本質的になる」は、「含む」と「からなる」との間の中間の意味をもつ。典型的には、冷媒混合物の成分及び冷媒混合物自体は、冷媒混合物の新規及び基本的特性に実質的に影響を及ぼすことのない少量(例えば、総計約0.5重量%未満)の不純物及び/又は副生成物(例えば、冷媒成分の産生又は他のシステムからの冷媒成分の再利用)を含有してもよい。
【0028】
出願人らが、発明又はその一部分を、「含む」などの非限定的な用語で定義した場合、(特に明記しない限り)その記載は用語「から本質的になる」又は「からなる」を用いる発明も記載しているように解釈されるべきであることが容易に理解されるべきである。
【0029】
また、「a」又は「an」の使用は、本明細書に記載される要素及び成分を説明するために用いられる。これは、単に便宜上なされるものであり、本発明の範囲の全般的な意味を与えるためのものである。この記載は、1つ又は少なくとも1つを含むものと解釈されるべきであり、単数形は、別の意味を有することが明白でない限り、複数形も含む。
【0030】
別途定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明の属する当該技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の方法及び材料を、開示された組成物の実施形態の実践又は試験において使用することができるが、好適な方法及び材料を下に記載する。本明細書において言及する全ての刊行物、特許出願、特許、及びその他の参照文献は、特定の一節を引用するものでない限り、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾が生じた場合には、定義を含め、本明細書が優先される。更に、材料、方法、及び実施例は、単なる例証であり、限定することを意図するものではない。
【0031】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペンは更に、HFO-1234yf、HFC-1234yf、又はR1234yfと称される場合もある。HFO-1234yfは、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245eb)又は1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-245cb)の脱フッ化水素によるなどの、当該技術分野において既知の方法によって作製され得る。
【0032】
ジフルオロメタン(HFC-32又はR-32)は、商業的に利用可能であるか、又は例えば、塩化メチレンの脱塩素フッ素化など当該技術分野において既知の方法によって作製され得る。
【0033】
装置
蒸発機、圧縮機、凝縮機、及び膨張装置を備え、当該圧縮機が、ポリオールエステル潤滑剤、ジフルオロメタン、及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む潤滑組成物を収容する潤滑剤リザーバを備える、冷蔵、空調、又はヒートポンプ装置が、本明細書に開示される。
図1は、本装置100の一実施形態の図であり、蒸発機20、圧縮機30、凝縮機40、及び膨張装置10の位置を示す。
【0034】
本冷蔵、空調、又はヒートポンプ装置の圧縮機は、冷媒ガスの凝縮前に該ガスを圧縮するか又はその圧力を上昇させる機能を果たすことができる冷蔵、空調、又はヒートポンプシステムで使用するために設計された任意の圧縮機であってよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、装置内の圧縮機は、回転圧縮機、往復圧縮機、及びスクロール圧縮機を含み得るが、これらに限定されない。更に、圧縮機は、密閉型又は半密閉型の圧縮機であってもよい。特に、圧縮機は、可動構成要素の焼き付きを防止するために過剰の潤滑剤を収容する潤滑剤リザーバを有していてよい。
【0036】
図2を参照すると、圧縮機30の一実施形態の図は、圧縮機を通る冷媒の流れ及び油溜め35の位置を示している。この実施形態では、圧縮機の下部は、過剰の潤滑剤のリザーバとして機能する。油溜め又は潤滑剤リザーバ35内の組成物は、ポリオールエステル潤滑剤であるHFO-1234yf及びHFC-32で構成される。冷媒ガスは、圧縮機取り入れ口32で低温低圧蒸気として圧縮機に流入する。冷媒ガスは圧縮機内で圧縮され、圧縮機吐出口33で高温高圧蒸気として圧縮機から出る。
【0037】
本発明の装置の蒸気圧縮サイクルを使用して、空調、冷蔵、冷凍、又は加熱を提供することができる。装置は、少なくとも蒸発機、圧縮機、凝縮機、及び膨張装置、並びに冷媒蒸気又は伝熱流体のための各要素間の輸送ラインを備える。蒸発機及び凝縮機は、冷媒又は伝熱流体と別の流体又は物体との間の熱交換を可能にする熱交換機を備える。
【0038】
装置内で使用される蒸発機は、膨張蒸発機又は満液式蒸発機であってよい。そして、蒸発機は、並流モード(2つの流れが他方に対して垂直である)又は向流モード(2つの流れは平行であるが、他方とは反対方向である)で動作することができる。更に、蒸発機は、向流傾向を有する並流モードで動作することもでき、したがって、向流熱交換によって実現される利益の一部を提供する。
【0039】
凝縮機も、蒸発機と同様に、並流モード、向流モード、又は向流傾向を有する並流モードで動作することができる。
【0040】
内部熱交換機は、装置による熱伝達の全体的な効率を改善するための方法として使用することができる。更に、効率を改善する他の既知の方法を本発明の装置に含めてもよい。
【0041】
ポリオールエステル潤滑剤
本発明の潤滑剤は、ポリオールエステル(POE)潤滑剤又は油を含む。POE潤滑剤は、典型的には、カルボン酸又はカルボン酸の混合物と、アルコール又はアルコールの混合物との化学反応(エステル化)によって形成される。この反応中に形成される水は、逆反応(すなわち、加水分解)を回避するために除去される。
【0042】
カルボン酸は、典型的には、一官能性、二官能性、又は多官能性の酸である。カルボン酸は、典型的には、多官能性酸である。カルボン酸の例としては、2-エチルヘキサン酸を含むエチルヘキサン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸を含むトリメチルヘキサン酸、直鎖オクタン酸を含むオクタン酸、n-ペンタン酸を含むペンタン酸、ジメチルペンタン酸を含むネオ酸、C5~C20カルボン酸、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。カルボン酸はまた、大豆、ヤシ、オリーブ、菜種、綿実、ココナツ、パーム核、トウモロコシ、ヒマシ、ゴマ、ホホバ、ピーナッツ、ヒマワリなどの植物及び植物性油、並びにこれらの混合物を含むがこれらに限定されない天然源に由来していてもよい。天然油カルボン酸は、典型的には、C18酸であるが、とりわけC12~C20酸も含む。
【0043】
アルコールは、一官能性、二官能性、又は多官能性のアルコールであってよい。多官能性アルコール又はポリオールは、2つ以上のヒドロキシル基を含有する。ポリオールは、典型的には、二、三、又は四官能性である。ポリオールの例としては、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
一実施形態では、POE潤滑剤は、1つ以上のポリオールと共に1つ以上の一官能性カルボン酸を使用して配合される。別の実施形態では、POE潤滑剤は、1つ以上の一官能性アルコールと共に1つ以上の二官能性カルボン酸を使用して配合される。別の実施形態では、POE潤滑剤は、異なるPOE潤滑剤の混合物を使用して配合される。別の実施形態では、POE潤滑剤は、1つ以上のC5~C10カルボン酸を使用して配合される。
【0045】
好ましい実施形態では、ポリオールは、好ましくは、ネオペンチル骨格を有するもの、好ましくは、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びこれらの混合物である。最も好ましくは、ポリオールは、ペンタエリスリトール骨格を有する。
【0046】
好ましい実施形態では、カルボン酸は、好ましくは2~15個の炭素を含有する。別の実施形態では、炭素骨格は、好ましくは直鎖又は分岐鎖である。好ましいカルボン酸の例としては、n-ペンタン酸、n-ヘキサン酸、n-ヘプタン酸、n-オクタン酸、アジピン酸、コハク酸、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
一部のアルコール官能基は、反応においてエステル化されなくてもよいが、その量は典型的には少ない。したがって、POEは、-CH2-O-(C=O)-基に対して0~5モルパーセントの-CH2OH基を含んでいてもよい。
【0048】
更なるPOE潤滑剤としては、式(I):
R1[OC(O)R2]n (I)
(式中、
R1は、任意選択で少なくとも1つのヒドロキシル基によって置換されていてもよい並びに/又は-O-、-N-、及び-S-からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む、直鎖又は分岐鎖の炭化水素置換基であり、
各R2は、互いに独立して、
i)H、
ii)脂肪族炭化水素置換基、
iii)分岐鎖炭化水素置換基、
iv)置換基ii)及び/又はiii)と8~14個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素置換基との混合物、
からなる群から選択され、
nは、少なくとも2の整数である)のものが挙げられる。
【0049】
本発明の文脈において、炭化水素置換基は、炭素原子及び水素原子からなる置換基を指す。
【0050】
一実施形態では、ポリオールは、一般式(II):
R1(OH)n (II)
(式中、R1は、任意選択で少なくとも1つのヒドロキシル基、好ましくは2つのヒドロキシル基によって置換されていてもよい並びに/又は-O-、-N-、及び-S-からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む、直鎖又は分岐鎖の炭化水素置換基であり、nは、少なくとも2の整数である)を有する。
【0051】
一実施形態では、R1は、4~40個の炭素原子、好ましくは4~20個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖の炭化水素置換基を表す。
【0052】
別の実施形態では、R1は、少なくとも1個の酸素原子を含む直鎖又は分岐鎖の炭化水素置換基である。
【0053】
別の実施形態では、R1は、少なくとも1個の酸素原子によって置換された、4~10個の炭素原子、好ましくは5個の炭素原子を含む分岐鎖炭化水素置換基である。
【0054】
一実施形態では、ポリオールは、2~10個のヒドロキシル基、好ましくは2~6個のヒドロキシル基を含む。
【0055】
別の実施形態では、ポリオールは、例えばポリエーテルポリオールなどの1つ以上のオキシアルキレン基を含んでいてもよい。
【0056】
別の実施形態では、ポリオールは、好ましくは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、ネオペンチルグリコール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、トリグリセロール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ヘキサグリセロール、及びこれらの混合物からなる群から選択される。別の実施形態では、ポリオールは、好ましくはペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールである。
【0057】
一実施形態では、カルボン酸は、一般式(III):
R2COOH (III)
(式中、
R2は、
i)H、
ii)脂肪族炭化水素置換基、
iii)分岐鎖炭化水素置換基、
iv)置換基ii)及び/又はiii)と8~14個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素置換基との混合物、
からなる群から選択され、
nは、少なくとも2の整数である)によって表すことができる。
【0058】
特定の実施形態では、R2は、1~10個、1~7個、特に1~6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素置換基である。
【0059】
いくつかの実施形態では、R2は、4~20個の炭素原子、5~14個の炭素原子、又は6~8個の炭素原子を有する分岐鎖炭化水素置換基である。
【0060】
本発明の一実施形態では、分岐鎖炭化水素置換基は、以下の一般式(IV):
--C(R3)(R4)(R5) (IV)
(式中、
R3、R4、及びR5は、互いに独立してアルキル基であり、アルキル基のうちの少なくとも1つは少なくとも2つの炭素原子を含有する)を有する。このような分岐アルキル基は、カルボキシル基に結合すると、「ネオ基」という名称で知られ、対応する酸は「ネオ酸」として知られる。一実施形態では、R3及びR4はメチル基であり、R5は少なくとも2つの炭素原子を含むアルキル基である。
【0061】
一態様では、置換基R2は、1個以上のカルボキシル基、又は-COOR6などのエステル基を含んでいてよく、R6は、アルキル、ヒドロキシアルキル、又はヒドロキシアルキルオキシアルキル基を表す。
【0062】
好ましくは、式(III)を有するR2COOH酸は、モノカルボン酸である。
【0063】
炭化水素置換基が脂肪族であるカルボン酸の例は、特に、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、及びヘプタン酸である。炭化水素置換基が分岐しているカルボン酸の例は、特に、2-エチル-n-酪酸、2-ヘキシルデカン酸、イソステアリン酸、2-メチルヘキサン酸、2-メチルブタン酸、3-メチルブタン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、2-エチルヘキサン酸、ネオヘプタン酸、及びネオデカン酸である。
【0064】
式(I)を有するポリオールエステルの調製において使用することができる第3の種類のカルボン酸は、8~14個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素置換基を含むカルボン酸である。例としては、デカン酸、ドデカン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸などが挙げられる。ジカルボン酸としては、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸などが挙げられる。
【0065】
好ましい一実施形態によれば、式(I)のポリオールエステルを調製するために使用されるカルボン酸は、モノカルボン酸とジカルボン酸との混合物を含み、該モノカルボン酸の割合が大部分を構成する。ジカルボン酸が存在すると、特に、より高い粘度を有するポリオールエステルが形成される。
【0066】
特に、カルボン酸とポリオールとの間の反応による式(I)を有するポリオールエステルの形成反応は、酸によって触媒される反応である。それは特に可逆反応であり、大量の酸の使用によって又は反応中に形成される水を除去することによって完了することができる。
【0067】
エステル化反応は、硫酸、リン酸などの有機酸又は無機酸の存在下で行うことができる。いくつかの実施形態では、反応は、任意の触媒の非存在下で行われる。
【0068】
所望の結果に応じて混合物中のカルボン酸及びポリオールの量を変化させてもよい。全てのヒドロキシル基をエステル化させる特定の場合では、全てのヒドロキシルと反応させるために十分な量のカルボン酸を添加しなければならない。
【0069】
一実施形態によれば、カルボン酸混合物の使用中に、後者をポリオールと順次反応させることができる。別の実施形態によれば、カルボン酸の混合物の使用中に、ポリオールは、最初にカルボン酸、典型的には最も高い分子量を有するカルボン酸と反応し、続いて、脂肪族炭化水素鎖を有するカルボン酸と反応する。
【0070】
一実施形態によれば、エステルは、酸の存在下、高温で、反応中に形成される水を除去しながら、カルボン酸(又はその無水物若しくはエステル誘導体)とポリオールとを反応させるによって形成することができる。典型的には、反応は、75~200℃の温度で行ってよい。
【0071】
好ましい一実施形態によれば、ポリオールエステルは、ペンタエリスリトールアルコールと、カルボン酸:イソノナン酸、8~10個の炭素原子の脂肪族炭化水素置換基を有する少なくとも1つの酸、及びヘプタン酸の混合物とから得られる。好ましいポリオールエステルは、ペンタエリスリトールと、イソノナン酸70%、8~10個の炭素原子の脂肪族炭化水素置換基を有する少なくとも1つのカルボン酸少なくとも15%、及びヘプタン酸15%の混合物とから得られる。一例は、CPI Engineering Services Inc.によって販売されているSolest 68油である。
【0072】
好ましい一実施形態によれば、ポリオールエステルは、ジペンタエリスリトールアルコールと、カルボン酸:イソノナン酸、8~10個の炭素原子の脂肪族炭化水素置換基を有する少なくとも1つの酸、及びヘプタン酸の混合物とから得られる。好ましくは、本発明のポリオールエステルは、以下の式(I-A)又は(I-B):
【0073】
【化1】
(式中、各Rは、独立して、
a)1~10個の炭素原子、2~9個の炭素原子、若しくは4~9個の炭素原子、若しくは1~6個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素置換基、又は
b)4~20個の炭素原子、4~14個の炭素原子、若しくは4~9個の炭素原子を含む分岐鎖炭化水素置換基、
を表す)のうちの1つを有する。
【0074】
特に、式(I-A)又は式(I-B)のポリオールエステルは、異なる置換基Rを含む。
【0075】
別の実施形態によれば、本発明のポリオールエステルは、8個以下の炭素原子を含む1つ以上の分岐カルボン酸の少なくとも1つのエステルを含む。エステルは、特に、当該分岐カルボン酸を1つ以上のポリオールと反応させることによって得られる。
【0076】
好ましい一実施形態によれば、分岐カルボン酸は、2-メチルブタン酸、3-メチルブタン酸、及びそれらの混合物の中から選択される。
【0077】
好ましい一実施形態によれば、ポリオールは、ネオペンチルグリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、及びこれらの混合物で構成される群から選択される。
【0078】
好ましい一実施形態によれば、ポリオールエステルは、以下から得られる:
i)2-メチルブタン酸、3-メチルブタン酸、及びこれらの混合物の中から選択されるカルボン酸、並びに
ii)ネオペンチルグリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、及びこれらの混合物で構成される群から選択されるポリオール。
【0079】
別の実施形態によれば、本発明によるポリオールエステルは、以下によって得られるポリ(ネオペンチルポリオール)エステルである:
i)以下の式(V)を有するネオペンチルポリオール:
【0080】
【化2】
(式中、
各Rは、互いに独立して、CH
3、C
2H
5、又はCH
2OHを表し、
pは、1~4の整数である)
を、2~15個の炭素原子を有する少なくとも1つのモノカルボン酸と、酸触媒の存在下において、カルボキシル基とヒドロキシル基とのモル比1:1未満で反応させて、部分的にエステル化されたポリ(ネオペンチル)ポリオール組成物を形成し、
ii)工程i)の終わりに得られた部分的にエステル化されたポリ(ネオペンチル)ポリオール組成物を、2~15個の炭素原子を有する別のカルボン酸と反応させて、ポリ(ネオペンチルポリ)エステルの最終組成物を形成する。好ましくは、反応i)は、1:4~1:2のモル比で行われる。
【0081】
好ましくは、ネオペンチルポリオールは、以下の式(VI):
【0082】
【化3】
(式中、各Rは、互いに独立して、CH
3、C
2H
5、又はCH
2OHを表す)を有する。
【0083】
好ましいネオペンチルポリオールは、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、テトラエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、及びネオペンチルグリコールの中から選択される。特に、ネオペンチルポリオールは、ペンタエリスリトールである。
【0084】
好ましくは、POEベースの潤滑剤を生成するために、単一のネオペンチルポリオールを使用する。場合によっては、2つ以上のネオペンチルポリオールを使用する。これは特に、市販のペンタエリスリトール製品が少量のジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、及びテトラエリスリトールを含む場合である。
【0085】
モノカルボン酸は、特に、以下の一般式(VII):
R’C(O)OH (VII)
(式中、R’は、直鎖又は分岐鎖C1~C12アルキル置換基、C6~C12アリール置換基、C6~C30アラルキル置換基である)を有する。好ましくは、R’は、C4~C10、好ましくはC5~C9のアルキル置換基である。
【0086】
特に、モノカルボン酸は、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、n-オクタン酸、n-ノナン酸、n-デカン酸、3-メチルブタン酸、2-メチルブタン酸、2,4-ジメチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、3,3,5-トリメチルヘキサン酸、安息香酸、及びそれらの混合物で構成される群から選択される。
【0087】
好ましい一実施形態によれば、モノカルボン酸は、n-ヘプタン酸、又はn-ヘプタン酸と別の直鎖モノカルボン酸、特にn-オクタン酸及び/又はn-デカン酸との混合物である。
【0088】
別の実施形態によれば、本発明によるポリオールエステルは、以下の式(VIII):
【0089】
【化4】
(式中、
R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、及びR
12は、互いに独立して、H又はCH
3であり、
a、b、c、y、x、及びzは、互いに独立して、整数であり、
a+x、b+y、及びc+zは、互いに独立して、1~20の整数であり、
R
13、R
14、及びR
15は、互いに独立して、脂肪族又は分岐鎖アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、アルキルシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールシクロアルキル、シクロアルキルアリール、アルキルシクロアルキルアリール、アルキルアリールシクロアルキル、アリールシクロアルキルアルキル、アリールアルキルシクロアルキル、シクロアルキルアルキルアリール、及びシクロアルキルアリールアルキルで構成される群から選択され、
R
13、R
14、及びR
15は、1~17個の炭素原子を有し、任意選択で置換されてもよい)を満たす。
【0090】
別の実施形態によれば、本発明によるポリオールエステルは、以下の式(IX):
【0091】
【化5】
(式中、
R
17及びR
18の各々は、互いに独立して、H又はCH
3であり、
m及びnの各々は、互いに独立して、m+nが1~10の範囲の整数である整数であり、
R
16及びR
19は、互いに独立して、脂肪族又は分岐アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、アルキルシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールシクロアルキル、シクロアルキルアリール、アルキルシクロアルキルアリール、アルキルアリールシクロアルキル、アリールシクロアルキルアルキル、アリールアルキルシクロアルキル、シクロアルキルアルキルアリール、及びシクロアルキルアリールアルキルで構成される群から選択され、
R
16及びR
19は、1~17個の炭素原子を有し、任意選択で置換されてもよい)を有する。
【0092】
ポリオールエステル潤滑剤は、鉱油、シリコーン油、天然パラフィン、ナフテン、合成パラフィン、アルキルベンゼン、ポリ-アルファオレフィン、ポリ-アルケングリコール、ポリビニルエーテル、及びこれらの混合物からなる群から選択される潤滑剤又は油を含むがこれらに限定されない他の潤滑剤と組み合わせて使用してもよい。
【0093】
一実施形態では、POE潤滑剤は、約40℃で、約1~1000センチストークス(cSt)、又は約10~200cSt、又は約15~100cSt、又は約30~80cSt、又は約32~68cStの粘度を有し得る。本明細書に記載のPOE潤滑剤の典型的な粘度は、約40℃で約32~68cStである。
【0094】
冷媒
冷媒ブレンドは、HFO-1234yf及びHFC-32を含む冷媒の混合物を含む。冷媒ブレンドR-454A、R-454B、及びR-454Cは、ASHRAE Standard 34-2019においてAmerican Society of Heating,Refrigerating and Air-Conditioning Engineers,Inc.(ASHRAE)によって定義された特定の比率のHFO-1234yfとHFC-32との混合物である。R-454Aは、65重量パーセント±2.0重量パーセントのHFO-1234yfと35重量パーセント±2.0重量パーセントのHFC-32とのブレンドである。R-454Bは、31.1重量パーセント±1.0重量パーセントのHFO-1234yfと68.9重量パーセント±1.0重量パーセントのHFC-32とのブレンドである。R-454Cは、78.5重量パーセント±2.0重量パーセントのHFO-1234yfと21.5重量パーセント±2.0重量パーセントのHFC-32とのブレンドである。
【0095】
冷媒ブレンドは、所望の量の個々の成分を合わせるための任意の簡便な方法によって調製することができる。好ましい方法は、所望の成分量を計量し、その後、適切な容器内で成分を組み合わせることである。所望の場合、撹拌を使用してもよい。
【0096】
更に、上記のような冷媒ブレンドは、新たに生成された又は再利用された成分を用いて調製することができる。冷媒ブレンド組成物を作製する方法は、
i)保存容器などの冷媒容器又は既存の伝熱システムからHFC-32、HFO-1234yf、又はその両方を回収し、
ii)当該HFC-32、HFO-1234yf、又はその両方の再利用を可能にするのに十分な程度不純物を除去し、
iii)任意選択で、本明細書に記載される組成物を生成するために、当該再生された体積のHFC-32、HFO-1234yf、又はその両方の全て又は一部を合わせること、を含み得る。
【0097】
除去される不純物は、水;空気、酸素、窒素、二酸化炭素、又は他のガスなどの非凝縮性ガス;残留潤滑剤又は油;いずれか又は両方の成分の分解によって生成される他の有機成分;冷媒が回収される元のシステムにおける金属の腐食若しくは損傷又はエラストマーの分解によって存在する可能性のある固体又は他の残留物を含み得る。回収された成分は、Air-conditioning,Heating and Refrigeration Institute(AHRI)からの「AHRI Standard 700-2017 for Specifications for Fluorocarbon Refrigerants」の要件を満たす程度まで清浄にすることができる。一般に、これらの基準は、要件の中でも特に、1.5体積パーセント未満の非凝縮性ガス(空気、酸素、窒素などを含む);10重量ppm以下の水;0.5重量パーセントの他の揮発性不純物;及び0.01重量又は体積パーセント以下の高沸点残留物を必要とする。
【0098】
一実施形態では、冷蔵、空調、又はヒートポンプ装置は、蒸発機、圧縮機、凝縮機、及び膨張装置を備え、当該圧縮機は、ポリオールエステル潤滑剤、ジフルオロメタン、及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む潤滑組成物を収容する潤滑剤リザーバを備える。潤滑組成物は、約2~7重量パーセントのジフルオロメタン、約6~18重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約75~91重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤を含み得る。別の実施形態では、潤滑組成物は、約5~14重量パーセントのジフルオロメタン、約3~9重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約76~92重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤を含み得る。別の実施形態では、潤滑組成物は、約1~4重量パーセントのジフルオロメタン、約7~20重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約77~92重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤を含み得る。
【0099】
一実施形態では、潤滑組成物は、約2~6.5重量パーセントのジフルオロメタン、約6~17重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約77~91重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤を含み得る。別の実施形態では、潤滑組成物は、約5~13重量パーセントのジフルオロメタン、約3~8重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約80~92重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤を含み得る。別の実施形態では、潤滑組成物は、約2~4重量パーセントのジフルオロメタン、約7~19重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約78~92重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤を含む。
【0100】
一実施形態では、潤滑組成物は、約3~6.5重量パーセントのジフルオロメタン、約8~17重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約77~88重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤を含む。別の実施形態では、潤滑組成物は、約7~13重量パーセントのジフルオロメタン、約3~8重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約80~89重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤を含む。別の実施形態では、潤滑組成物は、約3~4重量パーセントのジフルオロメタン、約9~19重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約78~89重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤を含む。
【0101】
一実施形態では、潤滑組成物は、約6~7重量パーセントのジフルオロメタン、約6~18重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約75~78重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤を含む。別の実施形態では、潤滑組成物は、約7~9重量パーセントのジフルオロメタン、約7~9重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約76~81重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤を含む。別の実施形態では、潤滑組成物は、約1~4重量パーセントのジフルオロメタン、約18~20重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約77~79重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤を含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、POE、HFO-1234yf、及びHFC-32を含有する潤滑組成物に加えて、開示される組成物は、任意選択の追加成分を含み得る。したがって、POE、HFO-1234yf、及びHFC-32を含有する潤滑組成物を含み、更に、染料(UV染料を含む)、可溶化剤、相溶剤、安定剤、重合阻害剤、トレーサー、摩耗防止剤、極圧剤、腐食及び酸化防止剤、金属表面エネルギー低下剤、金属表面不活性化剤、フリーラジカル捕捉剤、泡制御剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、洗剤、粘度調整剤、並びにこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の任意選択の追加成分を含む組成物が、本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、任意選択の追加成分は、添加剤と称されることもある。実際に、これらの任意選択の追加成分の多くは、これらの分類のうちの1つ以上に適合し、それら自体が1つ以上の性能特徴の達成に役立つ品質を有し得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、1つ以上の追加成分は、組成物全体に対して少量で存在する。いくつかの実施形態では、開示される組成物における量の添加剤(複数可)の濃度は、全組成物の約0.1重量パーセント未満から最高約5重量パーセント程度までである。本発明のいくつかの実施形態では、添加剤は、全組成物の約0.1重量%~約5重量%又は約0.1重量%~約3.5重量%の量で開示された組成物中に存在する。開示される組成物に対して選択される添加剤成分(複数可)は、有用性及び/又は個々の設備構成要素、若しくはシステムの要件に基づいて選択される。
【0104】
本発明の潤滑組成物で使用される追加成分は、少なくとも1つの染料を含んでいてよい。染料は、少なくとも1つの紫外線(ultra-violet、UV)染料であってもよい。紫外線染料は、蛍光染料であってよい。蛍光染料は、ナフタルイミド、ペリレン、クマリン、アントラセン、フェナントラセン(phenanthracene)、キサンテン、チオキサンテン、ナフトキサンテン、フルオレセイン、及び当該染料の誘導体、並びにこれらの組み合わせ(本段落で開示される先の染料又はこれらの誘導体のうちのいずれかの混合物を意味する)からなる群から選択されてもよい。
【0105】
いくつかの実施形態では、開示される組成物は、約0.001重量%~約1.0重量%のUV染料を含有する。他の実施形態では、紫外線染料は約0.005重量パーセント~約0.5重量パーセントの量で存在し、他の実施形態では、紫外線染料は全組成物の0.01重量パーセント~約0.25重量パーセントの量で存在する。
【0106】
UV染料は、装置(例えば、冷却ユニット、空調機、又はヒートポンプ)内での漏出点又は漏出点近傍において染料の蛍光を観察することができることから、組成物の漏出を検出するにあたって有用な成分である。UV発光(例えば、染料からの蛍光)は、紫外光下で観察され得る。したがって、このようなUV染料を含有する組成物が装置内の所与の点から漏出した場合、蛍光は、漏出点又は漏出点の近傍で検出され得る。
【0107】
本発明の潤滑組成物で使用され得る別の追加成分は、本開示の組成物への1つ以上の染料の溶解度を改善するために選択される少なくとも1つの可溶化剤を含み得る。いくつかの実施形態では、染料と可溶化剤との重量比は、約99:1~約1:1の範囲である。可溶化剤としては、炭化水素、炭化水素エーテル、ポリオキシアルキレングリコールエーテル(例えば、ジプロピレングリコールジメチルエーテル)、アミド、ニトリル、ケトン、クロロカーボン(例えば、塩化メチレン、トリクロロエチレン、クロロホルム、又はこれらの混合物)、エステル、ラクトン、芳香族エーテル、フルオロエーテル及び1,1,1-トリフルオロアルカン並びにこれらの混合物(本段落で開示されている可溶化剤のうちのいずれかの混合物を意味する)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0108】
いくつかの実施形態では、追加成分は、1つ以上の潤滑剤と開示される組成物との相溶性を改善するために少なくとも1つの相溶化剤を含む。相溶化剤は、炭化水素、炭化水素エーテル、ポリオキシアルキレングリコールエーテル(例えば、ジプロピレングリコールジメチルエーテル)、アミド、ニトリル、ケトン、クロロカーボン(例えば、塩化メチレン、トリクロロエチレン、クロロホルム、又はこれらの混合物)、エステル、ラクトン、芳香族エーテル、フルオロエーテル、1,1,1-トリフルオロアルカン、及びこれらの混合物(本段落で開示されている相溶化剤のうちのいずれかの混合物を意味する)からなる群から選択されてもよい。
【0109】
可溶化剤及び/又は相溶化剤は、炭素、水素及び酸素のみを含有するエーテルからなる炭化水素エーテル(例えば、ジメチルエーテル(dimethyl ether、DME))、及びこれらの混合物(本段落で開示される炭化水素エーテルのうちのいずれかの混合物を意味する)からなる群から選択されてもよい。
【0110】
相溶化剤は、3~15個の炭素原子を含有する直鎖又は環式脂肪族又は芳香族炭化水素相溶化剤であり得る。相溶化剤は、とりわけ、少なくとも、プロピレン及びプロパンを含むプロパン、n-ブタン及びイソブテンを含むブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン及びシクロペンタンを含むペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン、並びにデカンからなる群から選択され得る少なくとも1つの炭化水素であり得る。市販の炭化水素相溶化剤としては、これらに限定されるものではないが、Exxon Chemical(USA)から商標名Isopar(登録商標)Hで販売されているもの、ウンデカン(C11)とドデカン(C12)の混合物(高純度C11~C12イソパラフィン)、Aromatic150(C9~C11芳香族)、Aromatic200(C9~C15芳香族)及びNaptha140(C5~C11パラフィン、ナフテン及び芳香族炭化水素の混合物)並びにこれらの混合物(本段落で開示されている炭化水素のうちのいずれかの混合物を意味する)が挙げられる。
【0111】
相溶化剤は、代替的に、少なくとも1つのポリマー相溶化剤であってもよい。ポリマー相溶化剤は、フッ素化及び非フッ素化アクリレートのランダムコポリマーであり得、ポリマーは、式CH2=C(R1)CO2R2、CH2=C(R3)C6H4R4、及びCH2=C(R5)C6H4XR6で表される少なくとも1つのモノマーの繰り返し単位を含み、式中、Xは、酸素又は硫黄であり、R1、R3、及びR5は、H及びC1~C4のアルキル基からなる群から独立して選択され、R2、R4、及びR6は、C及びFを含有する炭素鎖系ラジカルからなる群から独立して選択され、チオエーテル、スルホキシド、又はスルホン基、及びこれらの混合物の形態で、H、Cl、エーテル酸素、又は硫黄を更に含有し得る。そのようなポリマー相溶化剤の例としては、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE,19898,USA)から商標名Zonyl(登録商標)(登録商標)PHSとして市販されているものが挙げられる。Zonyl(登録商標)PHSは、40重量パーセントのCH2=C(CH3)CO2CH2CH2(CF2CF2)mF(Zonyl(登録商標)(登録商標)フルオロメタクリレート又はZFMとも称される)(式中、mは、1~12、主に2~8である)及び60重量パーセントのラウリルメタクリレート(CH2=C(CH3)CO2(CH2)11CH3、LMAとも称される)を重合させることによって作製されたランダムコポリマーである。
【0112】
いくつかの実施形態では、相溶剤成分は、潤滑剤の金属への粘着性を低下させる方法で、熱交換器内で見出される金属銅、アルミニウム、鋼、又は他の金属及びその金属合金の表面エネルギーを低下させる添加剤約0.01~30重量%(相溶剤の総量に基づいて)を含有する。金属表面エネルギー低減添加剤の例としては、DuPontから商標名Zonyl(登録商標)FSA、Zonyl(登録商標)FSP、及びZonyl(登録商標)FSJとして市販されているものが挙げられる。
【0113】
本発明の組成物と共に使用され得る別の任意選択の追加成分は、金属表面不活性化剤であってもよい。金属表面不活性化材は、アレオキサリル(areoxalyl)ビス(ベンジリデン)ヒドラジド、N,N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナモイルヒドラジン、2,2,’-オキサミドビス-エチル-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート、N,N’-(ジサリチリデン(disalicyclidene))-1,2-ジアミノプロパン、並びにエチレンジアミン四酢酸及びその塩、並びにこれらの混合物(本段落で開示される金属表面不活性化剤のいずれかの混合物を意味する)からなる群から選択される。
【0114】
あるいは、本発明の潤滑組成物と共に使用される任意選択の追加成分は、ヒンダードフェノール、チオホスフェート、ブチル化トリフェニルホスホロチオネート、オルガノホスフェート、又はホスファイト、アリールアルキルエーテル、テルペン、テルペノイド、エポキシド、フッ素化エポキシド、オキセタン、アスコルビン酸、チオール、ラクトン、チオエーテル、アミン、ニトロメタン、アルキルシラン、ベンゾフェノン誘導体、アリールスルフィド、ジビニルテレフタル酸、ジフェニルテレフタル酸、イオン性液体、及びそれらの混合物からなる群から選択される安定剤であってもよい。
【0115】
安定剤は、以下からなる群から選択され得る:トコフェロール;ヒドロキノン;t-ブチルヒドロキノン;モノチオホスフェート;及びジチオホスフェート(Ciba Specialty Chemicals,Basel,Switzerland(以後「Ciba」)から商標名Irgalube(登録商標)63として市販);ジアルキルチオリン酸エステル(Cibaからそれぞれ商標名Irgalube(登録商標)353及びIrgalube(登録商標)350として市販);ブチル化トリフェニルホスホロチオネート(Cibaから商標名Irgalube(登録商標)232として市販);アミンホスフェート(Cibaから商標名Irgalube(登録商標)349(Ciba)として市販);ヒンダードホスファイト(CibaからIrgafos(登録商標)168として市販)、及びトリス-(ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(Cibaから商標名Irgafos(登録商標)OPHとして市販);(Di-n-オクチルホスファイト);及びイソデシルジフェニルホスファイト(Cibaから商標名Irgafos(登録商標)DDPPとして市販);トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、及びトリ(2-エチルヘキシル)ホスフェートなどのトリアルキルホスフェート;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、及びトリキシレニルホスフェートを含むトリアリールホスフェート、並びにイソプロピルフェニルホスフェート(isopropylphenyl phosphate、IPPP)及びビス(t-ブチルフェニル)フェニルホスフェート(bis(t-butylphenyl)phenyl phosphate、TBPP)を含む混合アルキルアリールホスフェート;ブチル化トリフェニルホスフェート(例えば、Syn-O-Ad(登録商標)8784を含む、商標名Syn-O-Ad(登録商標)として市販されているもの);tert-ブチル化トリフェニルホスフェート(例えば、商標名Durad(登録商標)620として市販されているもの);イソプロピル化トリフェニルホスフェート(例えば、商標名Durad(登録商標)220及びDurad(登録商標)110で市販されているもの);アニソール;1,4-ジメトキシベンゼン;1,4-ジエトキシベンゼン;1,3,5-トリメトキシベンゼン;ミルセン、アロオシメン、リモネン(特にd-リモネン);レチナール;α-又はβ-ピネン;メントール;ゲラニオール;ファルネソール;フィトール;ビタミンA;α-又はγ-テルピネン;δ-3-カレン;テルピノレン;フェランドレン;フェンチェン;ジペンテン;リコペンなどのカラテノイド(caratenoids)、βカロテン、及びゼアキサンチンなどのキサントフィル;ヘパキサンチン及びイソトレチノインなどのレチノイド;ボルナン;1,2-プロピレンオキシド;1,2-ブチレンオキシド;n-ブチルグリシジルエーテル;トリフルオロメチルオキシラン;1,1-ビス(トリフルオロメチル)オキシラン;3-エチル-3-ヒドロキシメチル-オキセタン、例えば、OXT-101(東亜合成);3-エチル-3-((フェノキシ)メチル)-オキセタン、例えば、OXT-211(東亜合成);3-エチル-3-((2-エチル-ヘキシルオキシ)メチル)-オキセタン、例えば、OXT-212(東亜合成);アスコルビン酸;メタンチオール(メチルメルカプタン);エタンチオール(エチルメルカプタン);コエンザイムA;ジメルカプトコハク酸(dimercaptosuccinic acid、DMSA);グレープフルーツメルカプタン((R)-2-(4-メチルシクロヘキサ-3-エニル)プロパン-2-チオール));システイン((R)-2-アミノ-3-スルファニル-プロパン酸);リポアミド(1,2-ジチオラン-3-ペンタンアミド);5,7-ビス(1,1-ジメチルエチル)-3-[2,3(又は3,4-)-ジメチルフェニル]-2(3H)-ベンゾフラノン(Cibaから商標名Irganox(登録商標)HP-136として市販);ベンジルフェニルスルフィド;ジフェニルスルフィド;ジイソプロピルアミン;ジオクタデシル3,3’-チオジプロピオネート(Cibaから商標名Irganox(登録商標)PS802(Ciba)として市販);ジドデシル3,3’-チオプロピオネート(Cibaから商標名Irganox(登録商標)PS800として市販);ジ-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(Cibaから商標名Tinuvin(登録商標)770として市販);ポリ-(N-ヒドロキシエチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシ-ピペリジルスクシネート(Cibaから商標名Tinuvin(登録商標)622LD(Ciba)として市販);メチルビスタローアミン;ビスタローアミン;フェノール-α-ナフチルアミン;ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン(bis(dimethylamino)methylsilane、DMAMS);トリス(トリメチルシリル)シラン(tris(trimethylsilyl)silane、TTMSS);ビニルトリエトキシシラン;ビニルトリメトキシシラン;2,5-ジフルオロベンゾフェノン;2’,5’-ジヒドロキシアセトフェノン;2-アミノベンゾフェノン;2-クロロベンゾフェノン;ベンジルフェニルスルフィド;ジフェニルスルフィド;ジベンジルスルフィド;イオン性液体;並びにこれらの混合物及びこれらの組み合わせ。
【0116】
あるいは、本発明の潤滑組成物と共に使用される任意選択の追加成分は、イオン性液体安定化剤であってもよい。イオン性液体安定剤は、室温(約25℃)で液体である有機塩からなる群から選択され得、これらの塩は、ピリジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、オキサゾリウム、及びトリアゾリウム、並びにこれらの混合物からなる群から選択されるカチオンと、[BF4]-、[PF6]-、[SbF6]-、[CF3SO3]-、[HCF2CF2SO3]-、[CF3HFCCF2SO3]-、[HCClFCF2SO3]-、[(CF3SO2)2N]-、[(CF3CF2SO2)2N]-、[(CF3SO2)3C]-、[CF3CO2]-、及びF-、並びにこれらの混合物からなる群から選択されるアニオンとを含有する。いくつかの実施形態では、イオン性液体安定剤は、emim BF4(1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート);bmim BF4(1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラボレート);emim PF6(1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート);及びbmim PF6(1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート)(これらは全てFluka(Sigma-Aldrich)から入手可能である)からなる群から選択される。
【0117】
いくつかの実施形態では、安定剤は、ヒンダードフェノールであり得、これは、例えば、アルキル化モノフェノール、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール;2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール;2,4-ジメチル-6-tertブチルフェノール;トコフェロールなど、ヒドロキノン及びアルキル化ヒドロキノン、例えば、t-ブチルヒドロキノン、ヒドロキノンの他の誘導体など、ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、例えば、4,4’-チオ-ビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール);4,4’-チオビス(3-メチル-6-tertブチルフェノール);2,2’-チオビス(4メチル-6-tert-ブチルフェノール)など、アルキリデン-ビスフェノール、例えば、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール);4,4’-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール);2,2-又は4,4-ビフェノールジオール誘導体;2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tertブチルフェノール);2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tertブチルフェノール);4,4-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール);4,4-イソプロピリデンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール);2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-ノニルフェノール);2,2’-イソブチリデンビス(4,6-ジメチルフェノール;2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール、2,2-又は4,4-ビフェニルジオール、例えば、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール);ブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluene、BHT、又は2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、ヘテロ原子を含むビスフェノール、例えば、2,6-ジ-tert-アルファ-ジメチルアミノ-p-クレゾール、4,4-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)など;アシルアミノフェノール;2,6-ジ-tert-ブチル-4(N,N’-ジメチルアミノメチルフェノール);スルフィド、例えば、ビス(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルベンジル)スルフィド;ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、並びにこれらの混合物などの、1つ以上の置換若しくは環式、直鎖、又は分枝鎖脂肪族置換基を含むフェノールを含む、任意の置換フェノール化合物である。
【0118】
いくつかの実施形態において、安定化剤は、上に詳述したもののうち、単一の安定化化合物であってもよい。他の実施形態において、安定化剤は、上に詳述した当該クラスの同一のクラスに属する化合物であるか、又は異なるクラスに属する化合物であるかを問わず、これら安定化化合物のうちの2つ以上の混合物であってもよい。
【0119】
特に、任意選択の追加成分は、重合阻害剤であり得る。重合阻害剤としては、テルペン又はテルペノイド、ブチル化トリフェニルホスホロチオネート、ベンゾフェノン及びその誘導体、テレフタレート、フェノール、エポキシド並びにこれらのクラスの任意の組み合わせを挙げることができる。重合阻害剤としては、ミルセン、アロオシメン、リモネン(特に、d-リモネン);レチナール;ピネン(α又はβ形態);メントール;ゲラニオール;ファルネソール;ファルネセン(α又はβ形態);フィトール;ビタミンA;テルピネン(α又はγ形態);δ-3-カレン;テルピノレン;フェランドレン;フェンチェン;ジペンテン;リコペンなどのカラテノイド(caratenoids)、βカロテン、及びゼアキサンチンなどのキサントフィル;ヘパキサンチン及びイソトレチノインなどのレチノイド;ボルナン、ブチル化トリフェニルホスホロチオネート(Cibaから商標名Irgalube(登録商標)232で販売されている)、ジビニルテレフタレート、ジフェニルテレフタレート、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トコフェロール、ヒドロキノン、1,2-プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、ブチルフェニルグリシジル(butylphenylglycidy)エーテル、ペンチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキシルフェニルグリシジルエーテル、ヘプチルフェニルグリシジルエーテル、オクチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、デシルフェニルグリシジルエーテル、グリシジルメチルフェニルエーテル、1,4-グリシジルフェニルジエーテル、4-メトキシフェニルグリシジルエーテル、ナフチルグリシジルエーテル、1,4-ジグリシジルナフチルジエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、n-ブチルグリシジルエーテル、イソブチルグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリフルオロメチルオキシラン、1,1-ビス(トリフルオロメチル)オキシラン、及びこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0120】
いくつかの実施形態において、特定の化合物は、安定剤及び重合阻害剤として作用することがあり、したがって、各クラスにおける可能な化合物のこれらのリストには重複がある。
【0121】
あるいは、本発明の潤滑組成物と共に使用される任意選択の追加成分は、トレーサーであってもよい。トレーサーは、単一の化合物であってもよいが、同一のクラスの化合物又は異なるクラスの化合物の2つ以上のトレーサー化合物であってもよい。いくつかの実施形態では、トレーサーは、全組成物の重量に基づいて、約1重量百万分率(ppm)~約5000ppmの合計濃度で組成物中に存在する。他の実施形態では、トレーサーは、約10ppm~約1000ppmの合計濃度で存在する。他の実施形態では、トレーサーは、約20ppm~約500ppmの合計濃度で存在する。他の実施形態では、トレーサーは、約25ppm~約500ppmの合計濃度で存在する。他の実施形態では、トレーサーは、約50ppm~約500ppmの合計濃度で存在する。代替的に、トレーサーは、約100ppm~約300ppmの合計濃度で存在する。
【0122】
トレーサーは、ヒドロフルオロカーボン(hydrofluorocarbon、HFC)、重水素化ヒドロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン(chlorofluororcarbon、CFC)、ヒドロフルオロクロロカーボン(hydrofluorochlorocarbon、HCFC)、クロロカーボン、パーフルオロカーボン、フルオロエーテル、臭素化化合物、ヨウ素酸化合物、アルコール、アルデヒド及びケトン、亜酸化窒素及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。あるいは、トレーサーは、トリフルオロメタン(HFC-23)、ジクロロジフルオロメタンCFC-12)、クロロジフルオロメタン(HCFC-22)、塩化メチル(R-40)、クロロフルオロメタン(HCFC-31)、フルオロエタン(HFC-161)、1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)、クロロペンタフルオロエタン(CFC-115)、1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン(CFC-114)、1,1-ジクロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン(CFC-114a)、2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HCFC-124)、ペンタフルオロエタン(HFC-125)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236fa)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea)、1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)、1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-245cb)、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245eb)、1,1,2,2-テトラフルオロプロパン(HFC-254cb)、1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HFC-254eb)、1,1,1-トリフルオロプロパン(HFC-263fb)、1,1-ジフルオロ-2-クロロエチレン(HCFC-1122)、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチレン(CFC-1113)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC-365mfc)、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロペンタン(HFC-43-10mee)、1,1,1,2,2,3,4,5,5,6,6,7,7,7-テトラデカフルオロヘプタン、ヘキサフルオロブタジエン、3,3,3-トリフルオロプロピン、ヨードトリフルオロメタン、重水素化炭化水素、重水素化ヒドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、フルオロエーテル、臭素化化合物、ヨード化化合物、アルコール、アルデヒド、ケトン、亜酸化窒素(N2O)、及びこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。いくつかの実施形態では、トレーサーは、2つ以上のハイドロフルオロカーボン、又は1つ以上のパーフルオロカーボンと組み合わされた1つのハイドロフルオロカーボンを含有するブレンドである。他の実施形態では、トレーサーは、少なくとも1つのCFCと、少なくとも1つのHCFC、HFC、又はPFCとのブレンドである。
【0123】
組成物の何らかの希釈、混入、又は他の変更の検出を可能にするために、所定の量でトレーサーが本発明の組成物に添加されてもよい。加えて、トレーサーにより、競合の侵害生成物に対して特許権者の生成物を特定することにより、既存の特許権を侵害する生成物の検出を行えるようにしてもよい。更に、一実施形態では、トレーサー化合物により、生成物を生成する製造プロセスの検出を行えるようにすることで、ひいては、特定の製造プロセス化学に対する特許侵害の検出を行えるようにしてもよい。
【0124】
本発明の組成物と共に使用され得る添加剤は、代替的には、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2007/0284555号に詳細に記載されているようにパーフルオロポリエーテルであってもよい。
【0125】
非冷媒成分に好適であると上で記載した特定の添加剤は、冷媒として可能性があるものとして特定されていることが理解されるであろう。しかしながら、本発明によれば、これらの添加剤が使用される場合、本発明の冷媒混合物の新規かつ基本的特性に影響を及ぼす量では存在しない。冷媒混合物及びこれらを含有する本発明の組成物は、HFC-32及びHFO-1234yf以外の冷媒を約0.5重量%以下含有することが好ましい。
【実施例】
【0126】
実施例1
冷却性能-空調
本発明の組成物の空調及びヒートポンプ装置の典型的な条件における冷却性能を判定し、表1に表示する。以下の特定の条件における本発明の組成物の物性測定から、圧縮機吐出温度(T_吐出)、平均温度勾配(平均勾配-蒸発機における温度勾配と凝縮機における温度勾配との平均)、冷却容量(CAP_c)、及び性能係数(COP-エネルギー効率の尺度)を算出する。
蒸発機温度 10℃
凝縮機温度 46.1℃
過熱量 11.1K
過冷却量 8.3K
圧縮機効率 70%
【0127】
【0128】
実施例2
冷却性能-中温冷蔵
本発明の組成物のための中温冷蔵装置の典型的な条件における冷却性能を判定し、表2に表示する。以下の特定の条件における本発明の組成物の物性測定から、圧縮機吐出温度(T_吐出)、平均温度勾配(平均勾配-蒸発機における温度勾配と凝縮機における温度勾配との平均)、冷却容量(CAP_c)、及び性能係数(COP-エネルギー効率の尺度)を算出する。
蒸発機温度 -7℃
凝縮機温度 40.0℃
リターン温度 18℃
圧縮機効率 70%
【0129】
【0130】
実施例3
冷却性能-低温冷蔵
本発明の組成物のための低温冷蔵装置の典型的な条件における冷却性能を判定し、表3に表示する。以下の特定の条件における本発明の組成物の物性測定から、圧縮機吐出温度(T_吐出)、平均温度勾配(平均勾配-蒸発機における温度勾配と凝縮機における温度勾配との平均)、冷却容量(CAP_c)、及び性能係数(COP-エネルギー効率の尺度)を算出する。
蒸発機温度 -35℃
凝縮機温度 40.0℃
リターン温度 10℃
圧縮機効率 70%
【0131】
【0132】
実施例4
空調、中温冷蔵、及び低温冷蔵条件における冷媒潤滑剤組成物
R-32/R-1234yf/POE32-3MAF混合物のそれぞれについて、油「溜め」中の液相の作業動粘度を計算した。典型的には、冷蔵潤滑剤業界では、モデル化されたVLE及び得られる液体粘度は、蒸気空間が非常に小さくなるようにシステムが事実上泡立ち点にある限定されたデータに基づく。この結果、液相中の冷媒ブレンドの組成は、その公称組成のものとなり、蒸気は、より優先的に可溶する成分がより薄い組成である。これは、典型的には住宅用AC及び冷蔵システムにおいて使用される密閉圧縮機内の冷媒/潤滑油混合物の実際の状態とは一致しない。これらのシステムでは、循環冷媒が本質的に公称組成であり、液体油リッチな相における冷媒画分に、より優先的に可溶する成分が多く含まれるように、冷媒充填量の潤滑剤充填量に対する比がはるかに大きい。R-32とR-1234yfとの混合物であるR-454A、B、及びCブレンドの場合、油リッチ相には、R-1234yfが多く含まれており、R-32は枯渇している。これにより、予測される実際の作業粘度よりも粘度が大きくなる。これは、POE油における潤滑性を改善する予想外の結果であるが、その理由は、液体の冷媒画分が公称組成である場合の予測粘度が、より低粘度であるR-32の過大推定濃度でより希薄であるためである。場合によっては、予測粘度から実際の粘度へのこの偏差は、10%増加に近い。
【0133】
表4A、表4B、及び表4Cには、R-454A、R-454B、及びR-454Cを用いて運転した後にシステムの電源を切ったときに油溜めに存在する組成物を示す。公称冷媒がPOE中に溶解していると考えられるときの組成物と、既知の優先的な1234yf溶解度に基づく組成物が使用されるときの組成物の両方。更に、各32/1234yf/POE組成物についての粘度が示されており、実際の組成物粘度が、優先的な1234yf溶解度に基づく公称粘度とは異なることを実証している。
【0134】
表5A、表5B、及び表5Cには、空調システムがR-454A、R-454B、及びR-454Cを用いて定常状態で稼働しているときに油溜め中に存在する組成物を示す。公称冷媒がPOE中に溶解していると考えられるときの組成物と、既知の優先的な1234yf溶解度に基づく組成物が使用されるときの組成物の両方。更に、各32/1234yf/POE組成物についての粘度が示されており、実際の組成物粘度が、優先的な1234yf溶解度に基づく公称粘度とは異なることを実証している。
【0135】
表6A、表6B及び表6Cには、中温冷蔵システムがR-454A、R-454B、及びR-454Cを用いて定常状態で稼働しているときに油溜め中に存在する組成物を示す。公称冷媒がPOE中に溶解していると考えられるときの組成物と、既知の優先的な1234yf溶解度に基づく組成物が使用されるときの組成物の両方。更に、各32/1234yf/POE組成物についての粘度が示されており、実際の組成物粘度が、優先的な1234yf溶解度に基づく公称粘度とは異なることを実証している。
【0136】
表7A、表7B及び表7Cには、低温冷蔵システムがR-454A、R-454B、及びR-454Cを用いて定常状態で作動しているときに油溜め中に存在する組成物を示す。公称冷媒がPOE中に溶解していると考えられるときの組成物と、既知の優先的な1234yf溶解度に基づく組成物が使用されるときの組成物の両方。更に、各32/1234yf/POE組成物についての粘度が示されており、実際の組成物粘度が、優先的な1234yf溶解度に基づく公称粘度とは異なることを実証している。
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
結果は、全ての場合において、1234yfが潤滑剤中でR-32よりも優先的に高い溶解度を有することを示しており、これは予想外である。この結果、油相中の1234yfのレベルが増加する。1234yfは、R-32よりも潤滑剤の作業粘度の低下に対する影響が小さいので、得られる粘度は、公称冷媒組成物が潤滑剤中に溶解していると仮定した場合に予想される粘度よりも高い。
【0142】
追加の実施形態
実施形態A1:
a)約2~7重量パーセントのジフルオロメタン、約6~18重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約75~91重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、
b)約5~14重量パーセントのジフルオロメタン、約3~9重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約76~92重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、又は
c)約1~4重量パーセントのジフルオロメタン、約7~20重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約77~92重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、
を含む潤滑組成物。
実施形態A2:
a)約2~6.5重量パーセントのジフルオロメタン、約6~17重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約77~91重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、
b)約5~13重量パーセントのジフルオロメタン、約3~8重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約80~92重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、又は
c)約2~4重量パーセントのジフルオロメタン、約7~19重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約78~92重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、
を含む、実施形態A1に記載の組成物。
実施形態A3:
a)約3~6.5重量パーセントのジフルオロメタン、約8~17重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約77~88重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、
b)約7~13重量パーセントのジフルオロメタン、約3~8重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約80~89重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、又は
c)約3~4重量パーセントのジフルオロメタン、約9~19重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約78~89重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、
を含む、実施形態A1~A2のいずれかに記載の組成物。
実施形態A4:
a)約6~7重量パーセントのジフルオロメタン、約6~18重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約75~78重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、
b)約7~9重量パーセントのジフルオロメタン、約7~9重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約76~81重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、又は
c)約1~4重量パーセントのジフルオロメタン、約18~20重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約77~79重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、
を含む、実施形態A1~A3のいずれかに記載の組成物。
実施形態B1:蒸発機、圧縮機、凝縮機、及び膨張装置を備え、当該圧縮機が、ポリオールエステル潤滑剤、ジフルオロメタン、及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む潤滑組成物を収容する潤滑剤リザーバを備える、冷蔵、空調、又はヒートポンプ装置。
実施形態B2:実施形態A1~A4のいずれかに記載の組成物を含む潤滑組成物を収容する、実施形態B1に記載の冷蔵、空調、又はヒートポンプ装置。
実施形態B3:当該ポリオールエステル潤滑剤が、カルボン酸を、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びこれらの混合物からなる群から選択されるネオペンチル骨格を含むポリオールと反応させることによって得られる、実施形態B1~B2のいずれかに記載の装置。
実施形態B4当:該ポリオールエステル潤滑剤が、アルコールを2~15個の炭素を有するカルボン酸と反応させることによって得られる、実施形態B1~B3のいずれかに記載の装置。
実施形態B5:当該カルボン酸が、直鎖又は分岐鎖である、実施形態B1~B4のいずれかに記載の装置。
実施形態B6:当該ポリオールエステル潤滑剤が、約40℃で約10~約200センチストークスの粘度を有する、実施形態B1~B5のいずれかに記載の装置。
実施形態B7;当該圧縮機が、回転圧縮機、往復圧縮機、又はスクロール圧縮機である、実施形態B1~B6のいずれかに記載の装置。
実施形態B8:空調装置である、実施形態B1~B7のいずれかに記載の装置。
実施形態B9:冷蔵装置である、実施形態B1~B8のいずれかに記載の装置。
実施形態B10:ヒートポンプ装置である、実施形態B1~B9のいずれかに記載の装置。
実施形態C1:冷蔵、空調、又はヒートポンプシステムにおける圧縮機を潤滑する方法であって、POE潤滑剤を当該圧縮機に添加することと、当該システムに冷媒を充填することと、当該システムを動作させることと、を含み、当該圧縮機が潤滑剤リザーバを備え、当該冷媒が、ジフルオロメタン及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含有し、当該潤滑剤リザーバが、POE、ジフルオロメタン、及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを収容する、方法。
実施形態C2:当該潤滑剤リザーバが、実施形態A1~A4のいずれかに記載の組成物を収容する、実施形態C1に記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発機、圧縮機、凝縮機、及び膨張装置を備え、前記圧縮機が、ポリオールエステル潤滑剤、ジフルオロメタン、及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む潤滑組成物を収容する潤滑剤リザーバを備える、冷蔵、空調、又はヒートポンプ装置。
【請求項2】
前記ポリオールエステル潤滑剤が、カルボン酸を、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びこれらの混合物からなる群から選択されるネオペンチル骨格を含むポリオールと反応させることによって得られる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ポリオールエステル潤滑剤が、アルコールを2~15個の炭素を有するカルボン酸と反応させることによって得られる、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記カルボン酸が、直鎖又は分岐鎖である、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ポリオールエステル潤滑剤が、約40℃で約10~約200センチストークスの粘度を有する、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記圧縮機が、回転圧縮機、往復圧縮機、又はスクロール圧縮機である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
空調装置である、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
冷蔵装置である、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
ヒートポンプ装置である、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記潤滑組成物が、
a.約2~7重量パーセントのジフルオロメタン、約6~18重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約75~91重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、
b.約5~14重量パーセントのジフルオロメタン、約3~9重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約76~92重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、又は
c.約1~4重量パーセントのジフルオロメタン、約7~20重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約77~92重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、
を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
a.約2~7重量パーセントのジフルオロメタン、約6~18重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約75~91重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、
b.約5~14重量パーセントのジフルオロメタン、約3~9重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約76~92重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、又は
c.約1~4重量パーセントのジフルオロメタン、約7~20重量パーセントの2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び約77~92重量パーセントのポリオールエステル潤滑剤、
を含む潤滑組成物。
【請求項12】
冷蔵、空調、又はヒートポンプシステムにおける圧縮機を潤滑する方法であって、POE潤滑剤を前記圧縮機に添加することと、前記システムに冷媒を充填することと、前記システムを動作させることと、を含み、前記圧縮機が潤滑剤リザーバを備え、前記冷媒が、ジフルオロメタン及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含有し、前記潤滑剤リザーバが、POE、ジフルオロメタン、及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを収容する、方法。
【国際調査報告】