(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-13
(54)【発明の名称】整形手術のための回転インパクタ
(51)【国際特許分類】
A61B 17/92 20060101AFI20240205BHJP
A61B 17/16 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
A61B17/92
A61B17/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545234
(86)(22)【出願日】2022-01-26
(85)【翻訳文提出日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 US2022013787
(87)【国際公開番号】W WO2022164836
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523281881
【氏名又は名称】フィデーリス・パートナーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ペディシニ
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア・ペディシニ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL11
4C160LL26
(57)【要約】
整形手術用の回転インパクタは、出力アンビルと、出力アンビルに対して直線力および回転力を与えることができるハンマとを含む。アンビルは、リードねじ要素上で移動可能であり得、それによってエネルギー蓄積手段でエネルギーを生成することと、リードねじ要素に沿って移動してアンビルに衝撃を与えることとを交互に行う。回転インパクタの、手術中の反射力および/または反射トルクを低減するために、粘弾性機構または減衰機構が使用される。インパクタによる高周波の直線衝撃により、外科医が外科手術をうまく実行するためにインパクタに外部押力を供給する必要性が回避される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
整形手術用の回転および直線衝撃ツールであって、
ハウジングと、
モータと、
衝撃ハンマと、
出力アンビルと、
エネルギー蓄積手段と
を備え、
前記エネルギー蓄積手段が、前記ツールの動作サイクルの一部の間、前記衝撃ハンマの近位にあり、
前記衝撃ハンマが、前記エネルギー蓄積手段によってエネルギーを与えられた後に、移動して、前記出力アンビルに回転力および直線力のうち少なくとも1つを与える、ツール。
【請求項2】
前記エネルギー蓄積手段がリードねじおよび機械ばねを備える、請求項1に記載のツール。
【請求項3】
閾値トルクが10インチポンドを超過すると、前記衝撃ハンマが前記エネルギー蓄積手段によってエネルギーを与えられる、請求項1に記載のツール。
【請求項4】
手術器具および減衰機構をさらに備え、前記減衰機構が、前記手術器具に印加される反動トルクをピークトルクの50%未満に低減する、請求項1に記載のツール。
【請求項5】
直線衝撃が、1回の衝撃につき1ミリメートル未満のストロークに限定される、請求項1に記載のツール。
【請求項6】
衝撃と非衝撃との間の移行が音響信号を含む、請求項1に記載のツール。
【請求項7】
センサをさらに備え、10回の衝撃による前進が0.01mm未満である場合には、前記センサが、前記ツールを停止させる、低速化させる、光を放射させる、または他の形でキューを提供させる、請求項1に記載のツール。
【請求項8】
センサをさらに備え、前記ツールの位置が、衝撃の間に、および前記ツールがその原位置の少なくとも90%に回復した後で判定される、請求項1に記載のツール。
【請求項9】
手術者または手術ロボットによって前記ツールに印加された力の量の状態として、手術部位に直線の衝撃力が与えられる、請求項1に記載のツール。
【請求項10】
制御手段をさらに備え、前記モータの速度が、回転動作し、または回転して衝撃を与えている間、一定の出力RPMを維持するように適合する、請求項1に記載のツール。
【請求項11】
整形手術用の回転衝撃ツールであって、
ハウジングと、
モータと、
衝撃ハンマと、
出力アンビルと、
リードねじ要素と、
エネルギー蓄積手段と
を備え、
前記エネルギー蓄積手段が、前記ツールの動作サイクルの一部の間、前記衝撃ハンマの近位にあり、
前記衝撃ハンマが、前記リードねじ要素上に配設されており、前記モータによって回転され、前記出力アンビルに接触して、前記出力アンビルを選択的に回転させ、
前記出力アンビルが回転を停止すると、前記衝撃ハンマが前記リードねじ要素に沿って平行移動して前記エネルギー蓄積手段にエネルギーを与え、
前記衝撃ハンマが前記出力アンビルから離れて十分な距離を平行移動した後に、前記エネルギー蓄積手段が前記衝撃ハンマにそのエネルギーを与え、前記ハンマに前記リードねじ要素に沿って加速させ、前記出力アンビルに回転衝撃を与えさせる、ツール。
【請求項12】
閾値トルクが10インチポンドを超過すると、前記衝撃ハンマが前記エネルギー蓄積手段によってエネルギーを与えられる、請求項11に記載のツール。
【請求項13】
手術器具および減衰機構をさらに備え、前記減衰機構が、前記手術器具に印加される反動トルクをピークトルクの50%未満に低減する、請求項11に記載のツール。
【請求項14】
直線衝撃が、1回の衝撃につき1ミリメートル未満のストロークに限定される、請求項11に記載のツール。
【請求項15】
衝撃と非衝撃との間の移行が音響信号を含む、請求項11に記載のツール。
【請求項16】
センサをさらに備え、10回の衝撃による前進が0.01mm未満である場合には、前記センサが、前記ツールを停止させる、低速化させる、光を放射させる、または他の形でキューを提供させる、請求項11に記載のツール。
【請求項17】
センサをさらに備え、前記ツールの位置が、衝撃の間に、および前記ツールがその原位置の少なくとも90%に回復した後で判定される、請求項11に記載のツール。
【請求項18】
手術者または手術ロボットによって前記ツールに印加された力の量の状態として、手術部位に直線の衝撃力が与えられる、請求項11に記載のツール。
【請求項19】
制御手段をさらに備え、前記モータの速度が、回転動作し、または回転して衝撃を与えている間、一定の出力RPMを維持するように適合する、請求項11に記載のツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は非仮出願であり、米国特許法第119条の下で、2021年1月26日出願の係属中の米国特許仮出願第63/141,786号、2021年5月14日出願の係属中の米国特許仮出願第63/188,542号、および2021年11月21日出願の係属中の米国特許仮出願第63/277,754号の優先権を主張するものであり、これらの開示は参照によって組み込まれる。
【0002】
本開示は外科医および/または手術用ロボットが使用するための回転衝撃リーマに関し、より詳細には、外科医および/またはロボットに伝わる反動力が些少な回転衝撃リーマに関する。
【背景技術】
【0003】
手術の現在の動向は、手術プロセスにおけるロボット支援の利用に向かっている。この点に関して、ロボットのエンドエフェクタは、たとえば外科手術を実行するためにロボットによって使用され得る。エンドエフェクタは、一実施形態では、手術部位と係合して相互作用することができる、ロボットの先端のデバイス、ツール、またはマニピュレータである。エンドエフェクタは、ロボットによって外科的処置を実行するように導かれる。ロボット手術の分野では、エンドエフェクタは手術用ツールを備え得る。
【0004】
現在まで、手術におけるロボット自動化は、エネルギー要件の低い腹腔鏡手技・手術では十分に有効であったが、大きな力およびエネルギーが日常的である整形外科的な環境では、ロボットの採用が遅れている。そのような環境および整形手術の分野では、手術用ロボットは、一般的な大骨の手術用ツール(鋸、ドリルまたはリーマなど)から生じる大きな反動力を扱うことができないため、より大きなエネルギー要件によって、別の手法(機械加工など)が必要とされている。
【0005】
大骨の手術で使用される例示的なロボットには、Stryker社のMAKO製品がある。MAKOには、拡張計画(enhanced planning)、動的接合バランス、およびロボットアーム支援の骨準備といった、3つの目的がある。
【0006】
ロボットは、その動作の一部として、手術部位を通じて、そのエンドエフェクタを正確に移動し、誘導し、かつ操作するために、手術部位の骨ジオメトリを識別する必要がある。骨ジオメトリのそのような識別はレジストレーションと称される。既存の手術用動力器具は、整形手術に使用されたとき、かなりの量の反動トルク(手術用リーマの場合など)または衝撃(手術用衝撃ツールの場合など)をもたらす。このトルクおよび/または衝撃によって、ロボットのレジストレーションが損なわれる可能性があるばかりでなく、ロボットの非常に複雑な機構および構成要素が破損する可能性もある。
【0007】
回転リーマは、人工股関節の寛骨臼カップ用の空洞を準備するときなど、股関節手術および股関節交換手術に使用される。これらの回転ツールは、外科的処置に関連するかなりの反動トルクがある。これによって、手術を実行している外科医の握りからツールがもぎ取られ、ひどい場合には、外科医の手首または前腕に損傷を与える可能性がある。明らかに、そのような反動トルクは、ナビゲーション誤差または誘導誤差の原因となり得、ロボットによる使用の場合には、大抵の場合レジストレーションが失われてロボットが停止する。これは、試験によって事実であることが示されており、大骨の整形手術にロボットを使用することに関する最も一般的な苦情のうちの1つである。
【0008】
ナビゲーション能力は、ほぼ間違いなく整形外科ロボッティクスの最も重要な機能である。手術の成功のために、ロボットは、ツール(または機器)を、骨に対する正確な向きおよび位置合わせで保持しなければならない。手術機器が定位境界から離れてしまうと、手術は、機器の給電が続いている場合の柔組織に対する傷害を含む、いくつかの欠点を被り得る。現在入手可能な回転ツールは大きな不安定化力(リーマが骨の硬い部分に遭遇すること、および/またはひっかかることに起因する反動トルク)を生成する可能性がある。これらの力は、ロボットのプログラムされたナビゲーションの妨げになり、ロボットを停止させる可能性がある。
【0009】
その上、外科医用に設計された手術用動力器具を単純にロボットに配置することには、少なくとも2つの問題がある。第1に、ツールから伝わる反動力/反動トルクによって、ロボットが、その誘導経路から外れる可能性がある。第2に、大骨の手術では、ロボットは、大抵の場合、寛骨臼へのリーマの進行を可能にする十分な直線力を供給することができない。外科医は、大抵の場合、所望の結果を実現するためにツールに直線力をかける必要がある。
【0010】
したがって、外科医による手術をより容易にすることに加えて、ロボットへの経路を作成し、最終的には完全自律型の手術を可能にする衝撃ツール(本明細書ではインパクタとも称される)が必要とされている。そのため、本開示は、衝撃を使用することにより、反射トルクを大幅に低減する一方で現行の回転手術用リーマと同様の結果を実現する、回転手術用ツールおよび/または回転/直線手術用ツールを提供するものである。その上、回転衝撃を増補するために直線衝撃が使用される場合には、従来の手術用リーマやドリルと比較して、直線力の要件も回転力の要件も大幅に低減される。たとえば、現在の技術では、手術用リーマを手術部位に進めるために必要なすべての直線力を外科医が印加する必要がある。この直線力は25ポンドを超過することがあり、これは手術用ロボットが提供可能な力よりもはるかに大きい。開示されたツールによる直線衝撃は、外科医からの必要な直線支持力を約50%低減することが明らかになった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来技術に特有の前述の欠点に鑑みて、本開示の目的は、整形外科的な手術用ツールの使用から生じる、大きい反動力に対する解決策を提供することである。これらの解決策は、手術中に手術機器(たとえばその位置決め)をよりよく制御することができるように、手術用ロボットおよび/または外科医にかかる反動力を低減するために機能する。本開示は、反動力を低減することに加えて、外科医および/またはロボットが、最小限の力でツールを誘導すればよいように、手術を完了するために必要な力のすべてまたはかなりの部分を機械的に供給することも目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態では、本開示は、大骨の整形手術中に反動力を最小化するように構成された整形手術用の回転衝撃ツールを提供する。ツールは、好ましくは、ツール先端からツールのつかみ面に作用するピーク反動力を減少させる機構(吸収手段など)を備える。そのようなつかみ面は、必ずしもそれに限定されないが、外科医による手動操作用に設計されたツールの場合のハンドグリップなど、または手術用ロボットに結合して作動されるツールの場合の円筒体もしくは他の取付け手段を含み得る。「手術用ツール」および「インパクタ」は、本明細書で開示される本発明を指し、「手術器具」は、手術用ツールの出力に対する付属品を指すことを理解されたい。たとえば、手術用ツールは回転衝撃ハンドピースを指し、手術器具は、手術用ツールの出力に取り付ける準半球のリーマを指し得る。
【0013】
一実施形態では、反動力をより長い期間にわたって分散させることができる減衰機構を使用することにより反動力がさらに低減され、これによりつかみ面における反動力またはつかみ面で感じられる反動力を低減する。前記実施形態では、減衰機構は、反動トルクがツールハウジングから絶縁され、したがって外科医/ロボットからも絶縁されるように、モータマウントとツールのハウジングとの間に粘弾性または非ニュートン流体を含む。この減衰機構はまた、モータ駆動装置をハンマリング機構から分離するために使用され得、よって、この減衰機構の位置は、好ましくはつかみ面とツールハウジングとの間、および/またはモータマウントとツールハウジングとの間にあるが、変化し得ることが明らかである。別の実施形態では、ツールは、反動力を吸収して、より長い期間にわたって拡散するための対抗運動要素も備え得る。
【0014】
一実施形態では、ツールが備えるトルク感知手段は、閾値トルクの値に達するかまたは上回ると、回転衝撃力を手術器具に伝達する回転衝撃機構を始動し得る。前記閾値トルクの値は、好ましくは、操縦ロボットまたは外科医の手首に傷をつける恐れのあるトルクよりも低いトルクである。この移行は、30~50インチポンドのあたりで生じることが明らかになった。次いで、ツールは、手術器具に伝達され、かつ/または平行移動される、衝撃ハンマ上の回転衝撃力を始動し得る。
【0015】
さらに別の実施形態では、本開示は、大骨の整形手術中に反動力を最小化するように構成された整形手術用の回転および直線衝撃ツールを提供する。ツールは、ツール先端からツールのつかみ面に作用するピーク反動力を減少させる機構(吸収手段など)を備え得る。そのようなつかみ面は、必ずしもそれに限定されないが、外科医による手動操作用に設計されたツールの場合のハンドグリップなど、または手術用ロボットに結合して作動されるツールの場合の円筒体もしくは他の取付け手段を含み得る。「手術用ツール」は、本明細書で開示される本発明を指し、「手術器具」は、手術用ツールの出力に対する付属品を指すことを理解されたい。たとえば、手術用ツールは回転/直線衝撃ハンドピースを指し得、手術器具は、手術用ツールの出力に取り付ける準半球のリーマを指し得る。
【0016】
一実施形態では、インパクタまたは衝撃ツールは、ハンマ、出力アンビル、およびエネルギー蓄積手段(一実施形態では、この手段はばねを備え得る)を備える。ハンマとアンビルとは、動作可能に結合され、リードねじ要素(その一例にはTorqspline(登録商標)(トルクスプライン(登録商標))がある)によって回転され得る。「トルクスプライン(登録商標)」という用語は、本開示ではリードねじ要素の例示的な実施形態として使用され、そのため、「トルクスプライン(登録商標)」という用語は、限定するものと考えられるべきではないことが理解される。回転したとき、出力アンビルに十分な負荷がかかると、出力アンビルおよびハンマは、トルクスプライン要素による回転を一時的に停止することができ、ハンマは、トルクスプラインを進んで平行移動し得、衝撃を与えるターゲットである対象から離れ、エネルギー蓄積手段にエネルギーを与え、ついにエネルギーを与えられたエネルギー蓄積手段がハンマに作用することが可能になるようにハンマと出力アンビルとが整列すると、ハンマがトルクスプラインを(回転しながら)平行移動して戻ることが可能になり、最小の反動トルクで出力アンビルに衝撃を与える。
【0017】
最小の反動トルクは2つのことの結果であり、第1は、ハンマを出力アンビルから実質的に分離することである。これは、反動トルクを、エネルギー蓄積手段(たとえばばね)およびトルクスプラインのピッチにのみ依拠するある特定の閾値に制限する。第2に、ハンマから出力アンビルに急激な衝撃をかけると、衝撃リーマは、外科医に対する最小の反動トルクで、高負荷領域(寛骨臼における強膜骨/骨棘など)を乗り越えることができる。アンビルにおけるハンマの衝撃の結果として生成された大きい衝撃力により、高負荷領域が最小の反動トルクで突破される。
【0018】
当業者であれば、前述の機構におけるハンマの平行移動と回転運動とを、回転方向と直線方向との両方に同時に衝撃を与えるようなやり方で分配し得ることが考えられる。リーミングプロセスに直線の衝撃要素を追加することは、リーミングステージの全体的な速度を高めるとともに、外科医の疲労も軽減することが明らかになった(外科医は、通常のリーマを用いる直線の押力を印加する必要はない。この押力は、25ポンドを超える場合がある)。一実施形態では、直線方向におけるハンマの衝撃は、ハンマおよび/または出力アンビルに配設された衝撃要素によって達成され、この要素は、本明細書の他のところでより具体的に説明されるように、ハンマが、出力アンビルと接触するとき、直線衝撃を与えまたは受ける。
【0019】
一実施形態では、ツールが備えるトルク感知手段は、出力アンビルおよび/またはハンマの回転運動を停止させ得る。
【0020】
別の実施形態では、手術用衝撃ツールは、ハンマ、出力アンビル、およびエネルギー蓄積手段(一実施形態では、この手段は波形ばねを備え得る)を備える。ハンマとアンビルとは、動作可能に結合され、リードねじ(トルクスプラインねじなど)要素によって回転され得る。ツールは、カム(筒形カムなど)およびカム従動子と、衝撃ロッドとをさらに備える。ハンマが回転すると、アンビルが回転して、アンビルは衝撃ロッドにトルクを出力することができる。衝撃ロッドが筒形カムを回転させて、波形ばねを圧縮することができる。カム従動子が筒形カムをクリアした後に、波形ばねが伸長してカムおよび衝撃ロッドを前方へ押し進め、アンビルに対する直線衝撃を生成することができる。
【0021】
別の実施形態では、回転および直線のインパクタまたは衝撃ツールは、ハンマ、出力アンビル、およびエネルギー蓄積手段(一実施形態では、この手段は少なくとも1つの波形ばねを備え、さらなる実施形態では直線アクチュエータばねおよび回転ばねを備え得る)を備える。ハンマとアンビルとは、動作可能に結合され、リードねじ要素(トルクスプラインなど)によって回転され得る。ユーザが出力アンビルを骨表面に押し込むとき、アンビルは、ユーザが出力アンビルを骨表面に押し込む力の量に依拠して、直線アクチュエータばねも圧縮し、回転衝撃のみまたは回転衝撃と直線衝撃との両方を供給する。
【0022】
本開示の利益および特徴は、以下の発明を実施するための形態および特許請求の範囲を、添付図面とともに参照すればより良く理解されるはずであり、類似の要素は類似の記号によって識別される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本開示の例示的な実施形態による、手術器具に回転運動を与えるために使用される回転ハンマを示す図である。
【
図2】本開示の例示的な実施形態による、外科医および/または手術用ロボットに反射される衝撃を低減する減衰機構を示す図である。
【
図3】本開示の例示的な実施形態による、反動力が印加される期間を拡大することによるこの力の低減の計算例を示す図である。
【
図4】本開示の例示的な実施形態による、回転衝撃と直線衝撃との両方から外科医および/または手術用ロボットに反射される衝撃を低減する減衰機構を示す図である。
【
図5】本開示の例示的な実施形態による整形外科用衝撃ツールの断面図である。
【
図6】本開示の例示的な実施形態による整形外科用衝撃ツールの、例示のハンマおよび例示の出力アンビルを示す図である。
【
図7】本開示の例示的な実施形態による、カムを備える直線および回転インパクタを示す図である。
【
図8】本開示の例示的な実施形態による、カムおよび衝撃バーを備える直線および回転インパクタを示す別の図である。
【
図9】本開示の例示的な実施形態による、少なくとも1つの緩衝器を備える直線および回転インパクタを示す図である。
【
図10】本開示の例示的な実施形態による、位置に応じて出力に衝撃を伝える少なくとも1つの緩衝器を備える直線および回転インパクタを示す図である。
【
図11】本開示の別の例示的な実施形態による、少なくとも1つの緩衝器を備える直線および回転インパクタを示す図である。
【
図12】本開示の別の例示的な実施形態による、少なくとも1つの緩衝器を備える直線および回転インパクタを示す図である。
【
図13】一般的な手術用リーマの後部に印加される力と、直線および回転インパクタの例示的な実施形態によって与えられる直線力との比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
例示のために詳述する、本明細書で説明される例示的な実施形態は、構造および設計において多くの変更を施される。しかしながら、本開示は、示されて説明された、特定の手術用ツール、ロボット、ロボットのエンドエフェクタ、または何らかの仲介物に限定されないことは強調されるべきである。すなわち、都合がよいと示唆または表現され得る状況であれば、様々な省略や均等物の代替が企図されることは理解されるが、これらは、本開示の特許請求の範囲の趣旨または範囲から逸脱することなく、応用または実装形態を対象とするように意図されている。本明細書では、「第1の」、「第2の」などの用語は、何らかの順序、量、または重要性を表すものではなく、1つの要素と別の要素とを区別するために使用され、また、「1つの(a)」および「1つの(an)」という用語は、本明細書では、量の限定を表すのではなく、引用された品目が少なくとも1つ存在することを表す。
【0025】
本開示が提供するのは、整形手術用の回転直線衝撃ツールであり、より具体的には、大骨の整形手術中の反動力を最小化するように設計されたツールである。本明細書で使用されるツールは、回転インパクタまたは回転と直線とを組み合わせたインパクタとも称され得る。この状況の回転衝撃ツールは、手術器具に対する一定の回転運動をもたらし、ある特定の状態(すなわち、反動トルクが閾値に達した場合および/または閾値を超過した場合)の下で回転衝撃をさらに供給することができるツールであると理解されてよい。このツールは、回転と直線とを組み合わせた衝撃を生成するための機構をさらに含み得る。
【0026】
本明細書で開示されたツールは、ツール先端からツールのつかみ面に作用するピーク反動力を減少させる機構(吸収手段など)を含む。そのようなつかみ面は、必ずしもそれに限定されないが、外科医による手動操作用に設計されたツールの場合のハンドグリップなど、または手術用ロボットに結合して作動されるツールの場合の円筒体もしくは他の取付け手段を含み得る。本明細書で使用される「反動力」は、ロボットおよび/または外科医の取付け面またはつかみ面に反射される、直線または回転の衝撃および/または力もしくはトルクを含み得る。
【0027】
一実施形態では、
図1に示されるように、手術器具50に対する回転作用は、回転ハンマなどの衝撃機構20を介して伝達される。一実施形態では、ツール100は、衝撃バー(回転ハンマ20など)に対して動作可能に結合されたモータ駆動装置10を備える。モータ10は、回転ハンマの回転運動をもたらす。回転ハンマ20は、スチールローラボールを介してカミング面30に対して動作可能に結合されている。回転ハンマは、出力アンビルと選択的に係合し、この出力アンビルは、ツールの境界面に結合され得る。前記境界面は手術器具を受けて回転させることができる。ツールは、出力アンビル40を、回転ハンマによって作動されている間、作動位置に維持するための少なくとも1つの軸受42も備え得る。回転ハンマ20は、出力アンビル上で閾値トルクに達するまで出力アンビルを回転させる。前記閾値トルクに達した後に、ローラボールは、回転ハンマと出力アンビルとの接触がなくなるまで、ばね22に対抗して回転ハンマを引き戻す。この時点で、回転ハンマがより速い速度まで加速され、ばね22が回転ハンマを前方に押し進め、ハンマは、出力アンビルと再係合して回転衝撃を与えることが可能になる。
【0028】
回転衝撃機構と出力との間に低減手段を入れると、出力衝撃エネルギーを犠牲にすることなく、既存の回転衝撃機構の安全プロフィールを改善することが明らかになった。この発見により、出力の最高rpmを合理的な速度に保ったまま、出力の過大な回転速度の可能性を回避しつつ(回避できないと、体液が手術室に飛び散って、リーミングが制御不能になり、柔組織の損傷をもたらす可能性がある)、トルクを増加することができる。
【0029】
一実施形態では、出力アンビル30は、衝撃軸に沿って直線状に移動することができる。ばね22は、回転ハンマ20の表面が出力アンビル24の表面と接触して、エネルギーをばね22から直線方向に伝達しながらハンマからの回転衝撃ももたらすように、回転ハンマ20を移動させることによって、直線衝撃を与えることができる。この実施形態では、手術器具にも直線衝撃がもたらされるように、前記ばねは、出力アンビルを通って平行移動することが可能であってもよい。リーミングプロセス中の直線衝撃の利点が
図13に示されている。曲線501は、リーミングプロセス中に外科医がリーマハンドピースの後部に与える一般的な一定の力(一般的には25ポンドを上回る)を示す。曲線502は、本明細書で開示された直線衝撃機構によって手術部位に与えられた急激な直線衝撃を示す。高周波数の直線衝撃の利点は、外科医および/またはロボットは、外科手術をうまく実行するために、同様の外部押力をツールの後部に供給する必要がないことである。
【0030】
図2に示される一実施形態では、手術中の手術用衝撃ツールの反射力および/または反射トルクを低減するために、粘弾性機構または減衰機構70が使用される。機構70は、ツール100のモータ10の上、まわり、または近隣に、ある程度の回転自由な動きができるように配設され得るが、衝撃ハンマ20による衝撃の間の、予測可能な補償、減衰ならびに回復を可能するための回転ばね定数も有することになる。この機構70は、本明細書において以下でさらに説明される回転衝撃ツールにも組み込まれ得ることが明らかであろう。
図4を参照して、衝撃ツールの反射された回転力および/または直線力を低減するために減衰機構80および90が設けられ得る。
【0031】
さらなる実施形態では、ツールは、患者に対する空間位置を確立する1つまたは複数のセンサ39を備える。さらなる実施形態では、ツールが、衝撃前の位置の少なくとも90%まで回復してから、ロボットまたは他のデバイスにツールの位置を通信するように、空間位置を判定する測定が衝撃と統合される。このセンサ測定の統合システムは、必要なときにのみ測定することによって計算能力を効率的に利用し、最も正確で有効な位置データのみ収集して通信するので、有利であることが明らかである。
【0032】
一実施形態では、ツールは、「自由飛行する衝撃部材」を使用することにより、はね返り力または反動力からツール機能を分離するようなやり方で設計される。本明細書で使用される自由飛行(または放出)部材は、ツールの可動部材またはツール内の可動部材であり、その動きの一部がツールに対して自由飛行する)。受け部材への放出部材の衝撃は、ツールの手術器具に均一な力(たとえば出力40)を与えるが、同様に重要なのは、放出部材の発射が、スリーブ、スライドケージなどによって補償され得る予測可能な衝撃であるという事実である。一実施形態では、つかみ面における反動力は、放出部材が表面に衝撃を与える期間を(
図3に示されるように)拡大することによって低減される。これは、運動量の保存(m
1v
1=m
2v
2)によって達成され、衝撃に関してF
1Δt
1=F
2Δt
2(ここで、Fは力であり、Δtはこの力が生じる期間である)と書くこともできる。この式は直線の運動量に関するものであるが、この概念は回転の運動量にも同様に当てはまる。
【0033】
次に
図3を参照して、本開示の例示的な実施形態による、反動力が印加される期間を拡大することによるこの力の低減の計算例が示されている。一実施形態では、衝撃ハンマによって生成される反動力は、たとえば(
図4に示されるように)力がモータマウントまたはつかみ面に与えられる期間を拡大することによって低減され得る。これは、上記で論じられたように運動量保存の法則によって起こる。期間(Δt)は、たとえば、モータマウントとツールハウジングとの間、またはつかみ面とツールハウジングとの間に粘弾性機構または減衰機構70を使用することによって拡大され得る。
【0034】
図4に示される別の実施形態では、ツール100の回転作用が直線作用と組み合わされ得る。本開示によって企図される直線衝撃は、1回の衝撃につき1mm未満のスローを含み、この衝撃は、寛骨臼のリーミングの初期のステージで実行される。意外にも、回転衝撃と組み合わせて小さな直線衝撃を追加すると、寛骨臼の初期のリーミングにおいて外科医に必要とされる直線力を50%以上低減することが明らかになった。一実施形態では、モータ10が、ハンマ20の直線運動と回転運動との両方をもたらす。そのような一実施形態では、カミング面30は、衝撃バー20の直線の(すなわち軸方向の)動きの力を出力40(および手術器具50)に変換することを可能にするための直線ランプと、ハンマ20の回転運動の力を出力40(および手術器具50)に変換することを可能にするための回転ランプとを備え得る。一実施形態では、ツールがさらに備えるばねは、直線衝撃用のカミング面が、ハンマを、出力から離れる方向に平行移動させるとき、圧縮され得る。ばねはハンマの平行移動によって圧縮され得る。ハンマがカミング面の直線ランプから離脱した後に、ばねがハンマに作用して、ハンマを直線方向に移動させ、出力に衝撃を与える。ツール100は、出力40の回転運動および直線運動を促進するための軸受42をさらに備え得る。一実施形態では、ツール100は、ハンマ20による、出力40への直線力と回転力との両方の変換を、および出力40への回転力のみの変換を、(たとえばスイッチ36によって)選択することを可能にし得る。一実施形態では、直線衝撃は、ツールの心棒の1回転につき0.5mm未満に限定される。
【0035】
一実施形態では、ツールは、直線変位および/または回転変位のいずれかにおける変化に関係するときの衝撃の力を測定することにより、衝撃部位(すなわち手術部位)の剛性を判定する能力を有する。たとえば、ツールは、回転ハンマからの衝撃を10回カウントし、その衝撃の期間にわたって、リーマが、0.1度だけ回転移動し、0.001インチだけ直線移動したと(センサなどによって)判定してもよい。ツールは、その結果、リーマがもはや進出していないことを(ステータスライト、音響、またはツールの動作の中止もしくは減速によって)外科医/ロボットに指示してよく、外科医またはロボットのいずれかが、衝撃を与え続けるかそれとも停止するのかを判断することができる。
【0036】
さらなる実施形態では、
図2に示されるように、つかみ面または取付け面は、(Sorbothaneなどの)材料から作製され得る力を吸収するスリーブすなわちスリーブ80と整列され得る。これは、反動力を吸収し、長い期間にわたって拡散することにより、外科医および/またはロボットに対するツールの反動力を低減するために使用され得る。
【0037】
一実施形態では、ツールが備える内部吸収手段は、たとえばウレタン(Sorbothaneおよびビスコースを含むが必ずしもそれに限定されない)などの衝撃吸収材料を含む。さらなる実施形態では、内部吸収手段は、減衰材料および/または減衰機構とばね復元機構とを備える。さらなる実施形態では、そのような機構は、衝撃吸収用のウレタン、ゴム、発泡体、プラスチックなどの単一材料に組み合わされ得る。そのような単一材料は非金属に限定されない。
【0038】
別の実施形態では、内部吸収手段は流体の減衰システムを含む。
【0039】
一実施形態では、回転衝撃ツールは、ツールの本体から見た反動トルクを制限するように、過負荷クラッチを備える。
【0040】
さらに別の実施形態において、
図5および
図6に示されるように、回転および直線の運動を特徴とする回転直線衝撃ツール200が示されており、この運動によって、ハンマ220が出力アンビル230をたたくことができ、たとえばこの出力アンビル230が次に手術領域に衝撃を伝え得る。一実施形態では、ツール200は、トルクスプライン215などのリードねじに対して動作可能に結合されたモータおよびギアボックス210を備える。モータは、トルクスプラインの回転運動をもたらす。トルクスプライン215が含むリードナット216は、トルクスプライン215が回転するとき回転し、アンビルに伝わるトルクは、衝撃を与えるための閾値トルクよりも小さい。ハンマ220は、リードナット216と一緒に回転するように、リードナット216に対して動作可能に結合される。ハンマ220は、回転するとき、出力アンビル230と選択的に係合して回転させ得る。
【0041】
一実施形態では、ハンマ220は、ハンマ220の表面222から離れて長手方向に延在する少なくとも1つの歯または他の突起221を備える。一実施形態では、出力アンビル230は、アンビルの本体232から離れて横方向に延在する少なくとも1つの歯または他の突起231を備える。一実施形態では、ハンマの少なくとも1つの歯(または突起)221は、ハンマ220が回転するとき、そのような係合によって出力アンビル230が回転するように、出力アンビル230の少なくとも1つの歯(または突起)231と係合し得る。この回転は、出力アンビル230が回転を停止するように出力アンビル230に十分に大きい負荷が与えられるまで継続し得る。これにより、突起231と出力アンビル230との係合および突起221とハンマ220との係合が継続しているので、ハンマ220の回転も停止する。
【0042】
一実施形態では、衝撃ツール200は、エネルギー蓄積手段240(たとえばダイばねなど)およびリードねじ要素(その典型的な例はトルクスプライン215である)をさらに備える。一実施形態では、ダイばね240は、ツール200のリードナット216とモータ210との間に配設される。ばねのコイルによって、トルクスプライン215のまわりにばね240を配置するのが容易になることは明らかであろう。一実施形態では、トルクスプラインは常に回転している。そのような一実施形態では、ハンマ220の回転が停止したとき、リードナット216およびリードナット216が取り付けられたハンマ220は、(出力アンビル230から離れて)後方へ平行移動することになる。リードナット216およびハンマ220のそのような後方への平行移動は、ダイばね240を圧縮する。移動および圧縮は、ハンマ220の少なくとも1つの突起221が出力アンビル230の少なくとも1つの突起231から離脱するようにハンマ220が後方へ十分な距離を移動するまで、継続する。
【0043】
ハンマ220が、その少なくとも1つの突起221が出力アンビル230の少なくとも1つの突起231から離脱するように、後方へ十分な距離を移動すると、ハンマの歯は、アンビルの歯をクリアするまでアンビルの歯に沿ってスライドし、ばね240が伸長して、ハンマ220の高速回転運動が、トルクスプライン215を戻り出力アンビル230に向かって押し進められる。ハンマ220のこの高速回転運動が、アンビルに急激な回転衝撃をもたらすことになり、この急激な力は、衝撃ツール200が、リーミング作用を妨げていた骨構造または異形に打ち勝つのに十分なものである。一実施形態では、モータ210は、ハンマ220が退却している(閾値トルクに達して、回転衝撃が生じるように設定されたことを示す)とき、その速度が増加するようにプログラムされ得る。これには、回転衝撃のステージであろうと一定回転のステージであろうと、一定の出力RPMを維持するという利点がある。
【0044】
そのような衝撃機構により、従来の整形外科的リーミングツールと比較して、リーミングにおいてはるかに大きい回転トルクを実現することが可能になる。この改善は少なくとも200%であり、反動トルクの低減は、従来の整形外科的リーミングツールによって達成され得るものの2倍を超える。予想外の発見において、ツールは、手術用リーミングが完了したときまたはほぼ完了したとき、(衝撃から音響信号が生じる)衝撃モードから(音響信号が最小になる)非衝撃モードに切り換わることが明らかになった。
【0045】
ばね240が伸張することによってハンマ220がトルクスプライン215を戻されると、ハンマ220から直線エネルギーならびに回転エネルギーが利用可能になる。一実施形態では、ハンマ220から出力アンビル230への直線衝撃および直線力の伝達を助長するために圧縮要素250が設けられる。圧縮要素250は、好ましくはハンマの表面222と出力アンビル230との間に配設される。一実施形態では、ばね240の伸張の結果としてハンマ220がトルクスプライン215を戻り平行移動するとき、ハンマ220の表面222は、出力アンビル230の本体232に衝撃を与える。一実施形態では、圧縮要素250はエラストマ材料の摩擦ディスクを備える。そのような一実施形態では、要素250は、ハンマ220の回転エネルギーの一部を吸収して、このエネルギーを出力アンビル230に作用する直線力に変換する。
【0046】
さらなる実施形態では、ツール200は、患者に対する空間位置を確立する1つまたは複数のセンサ(図示せず)を備える。さらなる実施形態では、ツール200が、衝撃前の位置の少なくとも90%まで回復してから、ロボットまたは他のデバイスにツールの位置を通信するように、空間位置を判定する測定が衝撃と統合される。このセンサ測定の統合システムは、必要なときにのみ測定することによって計算能力を効率的に利用し、最も正確な位置データのみ通信するので、有利であることが明らかである。
【0047】
一実施形態では、ツール200は、直線変位および/または回転変位のいずれかにおける変化に関係するときの衝撃の力を測定することにより、衝撃部位(すなわち手術部位)の剛性を判定する能力を有する。たとえば、ツール200は、出力アンビル230からの衝撃を10回カウントし、その衝撃の期間にわたって、リーマが、0.1度だけ回転移動し、0.001インチだけ直線移動したと判定してもよい。ツール200は、リーマがもはや進出していないことを外科医/ロボットに指示することができ、外科医またはロボットのいずれかが判断することができる。一実施形態では、ツール200が備える内部吸収手段(図示せず)は、ツールのハウジングの内部、またはツールの握りもしくは取付け面にあってもよく、ウレタンSorbothaneまたはビスコースなどの衝撃吸収エラストマ材料を含み得る。
【0048】
別の実施形態では、
図7および
図8に示されるように、回転直線衝撃ツール300は、モータ310と、ハンマ320と、出力アンビル330と、直線エネルギー蓄積手段340(一実施形態では、この手段は波形ばねを備え得る)と、回転エネルギー蓄積手段342とを備える。ハンマとアンビルとは、動作可能に結合され、トルクスプライン315などのリードねじによって回転され得る。ツールは、カム350(筒形カムなど)および少なくとも1つのカム従動子352と、衝撃ロッド360とをさらに備える。衝撃ロッド360は、カム350の内部に少なくとも部分的に含有されており、カムに回動力を与えて回転または循環させることができる。ツール300は、少なくとも1つの緩衝器380をさらに備える。アンビル330は、アンビル330に対するカム350および衝撃ロッド360の直線移動を受けてこれを可能にするための溝332を備える。
【0049】
この実施形態では、ツール300による回転衝撃は、本明細書の他のところで開示されたツール200によって実行される回転衝撃と同様に達成される。一実施形態では、モータ310は、トルクスプライン315の回転運動をもたらす。トルクスプライン315が含むリードナット316は、トルクスプライン315が回転するとき回転する。ハンマ320は、リードナット316と一緒に回転するように、リードナット316に対して動作可能に結合される。ハンマ320は、回転するとき、出力アンビル330と選択的に係合して出力アンビル330を回転させ、閾値トルクに依拠して、衝撃を与えても与えなくてもよい。
【0050】
ツール300による直線衝撃のために、衝撃ロッド360が部分的にアンビル330の内部に配設され、さらに、カム350に対して動作可能に結合される。アンビル330の(ハンマ320の回転による)回転が、衝撃バー360に対するトルクを出力して、このトルクが筒形カム350を回転させる。カム従動子352は、波形ばね340ならびに筒形カムに対して動作可能に結合される。筒形カム350が回転するとき、カム従動子352が筒形カムの進路を辿り、位置エネルギーをばねに蓄積するためのプロセスにおいて波形ばね340を圧縮する。アンビル330の溝によって、衝撃ロッド360および筒形カム350が、この動作段階中はアンビル330に対して直線状に移動することができる。カム従動子352が筒形カム350の進路をクリアした後に、波形ばねが、蓄積されたエネルギーを解放し、カム350および衝撃ロッド360を手術部位の方向へ押し進める。カムおよびロッドが、手術部位に対して近位のアンビル溝332の先端などにおいてアンビル330に衝撃を与え、それによってツールの出力に直線の衝撃力を与える。ツールのはね返りを低減して制御を向上するために、
図7に示されるように、アンビル330の直線移動を制限するための緩衝器380が設けられ得る。
【0051】
別の実施形態では、
図9、
図10、
図11および
図12に示されるように、回転直線衝撃ツール400は、モータ410と、ハンマ420と、出力アンビル430と、一実施形態では少なくとも1つの波形ばねを備え得るエネルギー蓄積手段440とを備える。ハンマ420とアンビル430とは、動作可能に結合され、リードねじ要素(トルクスプライン415など)によって回転され得る。ツール400は、停止緩衝器481および衝撃緩衝器482などの少なくとも1つの緩衝器を含み得る。停止緩衝器は、好ましくはアンビル430とハウジングとの間に配設される。衝撃緩衝器482は、たとえばハンマ420と接触するアンビル430の先端に配設されてよい。外科医またはロボットが、アンビルに結合された手術器具485を骨表面へと押し進めると、アンビルが、少なくとも1つのばね440(ならびに、一実施形態では、直線アクチュエータばね441および回転ばね442)を圧縮して、直線衝撃ならびに回転衝撃が可能になる。
【0052】
この実施形態では、ツール400による回転衝撃は、本明細書の他のところで開示されたツール200およびツール300によって実行される回転衝撃と同様に達成される。一実施形態では、モータ410は、トルクスプライン415の回転運動をもたらす。トルクスプライン415が含むリードナット416は、トルクスプライン415が回転するとき回転する。ハンマ420は、リードナット416と一緒に回転するように、リードナット416に対して動作可能に結合される。ハンマ420は、回転するとき、出力アンビル430と選択的に係合して出力アンビル430を回転させ得る。
【0053】
一実施形態では、ハンマ420は、ハンマ420の表面422から離れて長手方向に延在する少なくとも1つの歯または他の突起421を備える。一実施形態では、出力アンビル430は、アンビルの本体432から離れて横方向に延在する少なくとも1つの歯または他の突起431を備える。一実施形態では、ハンマの少なくとも1つの歯(または突起)421は、出力アンビル430の少なくとも1つの歯(または突起)431と係合し得、ハンマ420が回転するとき、そのような係合によって出力アンビル430が回転する。回転は、出力アンビル430が回転を停止するように、出力アンビル430に十分に大きい負荷が与えられる(手術用リーミングの過程などでは、ツールは骨棘に遭遇する)まで継続し得る。これにより、突起431と出力アンビル430との係合および突起421とハンマ420との係合が継続しているので、ハンマ420の回転も停止する。
【0054】
一実施形態では、ばね440は、ツール400のリードナット416とモータ410との間に配設される。一実施形態では、ばね440は波形ばねを備える。ばね440のコイルによって、トルクスプライン415のまわりにばね440を配置するのが容易になることは明らかであろう。一実施形態では、トルクスプラインは常に回転している。そのような一実施形態では、ハンマ420の回転が停止したとき、リードナット416およびリードナット416が取り付けられたハンマ420は、後方へ(出力アンビル430から離れて)移動することになる。リードナット416およびハンマ420のそのような後方への平行移動は、ばね440を圧縮する。平行移動および圧縮は、ハンマ420の少なくとも1つの突起421が
図16に示されるように出力アンビル430の少なくとも1つの突起431から離脱するように、ハンマ420が後方へ十分な距離を移動するまで継続する。
【0055】
ハンマ420が、その少なくとも1つの突起421が出力アンビル430の少なくとも1つの突起431から離脱するように、後方へ十分な距離を移動すると、ハンマは、その歯がスライドしてアンビルの歯を通過するまで回転し続け、次いで、回転ばね442が伸長して、ハンマ420の高速回転運動が、トルクスプライン415から離れる方へ出力アンビル430および衝撃緩衝器482に向かって押し進められる。ハンマ420のこの高速回転運動が、出力アンビル430の少なくとも1つの突起431に急激な回転衝撃をもたらすことになり、出力アンビル430に対するこの急激な力は、衝撃ツール400が、リーミング作用を妨げていた骨構造または異形に打ち勝つのに十分なものである。一実施形態では、モータ410は、ハンマ420が退却している(閾値トルクに達して、回転衝撃が生じるように設定されたことを示す)とき、その速度が増加するようにプログラムされ得る。これは、回転衝撃のステージであろうと一定回転のステージであろうと、一定の出力RPMを維持するのに都合が良いであろう。
【0056】
回転ばね442が伸張することによってハンマ420がトルクスプライン415から離れる方へ押し進められると、手術部位に衝撃を与えるために、アンビル430で直線エネルギーならびに回転エネルギーが利用可能になり得る。すなわち、ツールは、ハンマがトルクスプラインから離れる方へ移動するのに先立って、直線アクチュエータばね441の圧縮の程度に依拠して、アンビル430に直線衝撃と回転衝撃との両方を与え得る。一実施形態では、衝撃緩衝器482が、ハンマ420から出力アンビル430への直線衝撃および直線力の伝達を助長する。一実施形態では、ハンマ420の表面422が衝撃緩衝器482に衝撃を与え、衝撃緩衝器482が、回転ばね442の伸張の結果として、アンビル430に直線衝撃を伝達する。
【0057】
ユーザによっておよび/またはツール400が手術部位に対抗して置かれたときのツール400の質量によって、直線アクチュエータばね441が圧縮され得ることが明らかであろう。ツール400が手術部位に対抗して配設されたとき、ユーザは、追加の圧力をツール400に印加することによってばね441の圧縮を増進させてよい。ばね441が、十分に圧縮されて、ハンマ420から直線衝撃および直線力が出力アンビル430に伝わらないうちに伸長するための時間(このばねのばね定数に依拠する)がなければ、アンビル430が直線力を受けて手術部位に伝達することになる。ハンマ420が出力アンビル430にその回転エネルギーを伝達する前に、直線アクチュエータばね441が十分に圧縮されていなければ、エネルギーは、回転によって、または停止緩衝器481を通して、吸収される。
【0058】
本開示は、手術用ツールからつかみ面および/または取付け面への反動力を低減するという利益を提供するものである。別の利益は、ツールが、外力(たとえば、リーマを手術部位に進出させるために、リーマハンドピースに向かって前屈みになった外科医からの外力)を必要とすることなく、手術を完成するのに必要なかなりの力を供給することである。これによって、ロボット手術の場合にはロボットプラットフォーム上の消耗および摩損がより少なくなり、外科医が手術する場合には疲労がより軽減される。これは、ロボットの手術用ツールの場合のロボットの精度および能力も改善し、手術用ロボットによるレジストレーションの損失の事例を激減し得る。
【0059】
本開示の特定の実施形態の前述の説明は、解説および説明のために提示されたものである。これらの説明は、網羅的であること、または本開示を開示された厳密な形態に限定することを意図するものではなく、明らかに、上記の教示の観点から多くの修正形態および変形形態が可能である。例示的な実施形態は、本開示の原理およびその実用的応用について最もよく説明することにより、他の当業者が、本開示と、企図された特定の使用状況に適する様々な修正形態を伴う様々な実施形態とを最もよく利用することができるように選択して説明されたものである。
【符号の説明】
【0060】
10 モータ駆動装置
20 衝撃機構、回転ハンマ、衝撃ハンマ
22 ばね
30 カミング面、出力アンビル
39 センサ
40 出力アンビル
42 軸受
50 手術器具
70 減衰機構
80 減衰機構、スリーブ
90 減衰機構
100 ツール
200 回転直線衝撃ツール
210 モータおよびギアボックス
215 トルクスプライン
216 リードナット
220 ハンマ
221 少なくとも1つの歯または他の突起
222 ハンマの表面
230 出力アンビル
231 少なくとも1つの歯または他の突起
232 アンビルの本体
240 エネルギー蓄積手段、ダイばね
250 圧縮要素
300 回転直線衝撃ツール
310 モータ
315 トルクスプライン
316 リードナット
320 ハンマ
330 出力アンビル
332 溝、アンビル溝
340 直線エネルギー蓄積手段、波形ばね
342 回転エネルギー蓄積手段
350 カム、筒形カム
352 カム従動子
360 衝撃ロッド
380 緩衝器
400 回転直線衝撃ツール
410 モータ
415 トルクスプライン
416 リードナット
420 ハンマ
421 少なくとも1つの歯または他の突起
422 ハンマの表面
430 出力アンビル
431 少なくとも1つの歯または他の突起
440 エネルギー蓄積手段、ばね
441 直線アクチュエータばね
442 回転ばね
481 停止緩衝器
482 衝撃緩衝器
485 手術器具
【国際調査報告】