(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-13
(54)【発明の名称】NMR用途向けの絶縁体及び/又は構成材料
(51)【国際特許分類】
G01N 24/00 20060101AFI20240205BHJP
【FI】
G01N24/00 510A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545916
(86)(22)【出願日】2022-01-26
(85)【翻訳文提出日】2023-08-21
(86)【国際出願番号】 EP2022051785
(87)【国際公開番号】W WO2022171440
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523283771
【氏名又は名称】クアッド システムズ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケスラー,クレメンス
(57)【要約】
以下の成分:(A)40重量パーセント~99.99重量パーセントのハロゲン化ポリマー又は過ハロゲン化ポリマーとして選択される少なくとも1種の熱可塑性ポリマー材料又は熱硬化性ポリマー材料、(B)0.01重量パーセント~60重量パーセントの少なくとも1種の無機の粒状の反磁性材料又は常磁性材料、(C)0重量パーセント~39.99重量パーセントの(B)とは異なる少なくとも1種の添加剤からなるコンパウンドは、少なくとも1テスラの静磁場を用いる核磁気共鳴デバイスの検出に関連する空間領域(9)における構成材料、さらに、対応する構成要素、特に本発明者らが提案する試料保持器、並びにそのような構成要素の製造方法、及びそのような構成要素の使用として提案される。
【選択図】
図4b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1テスラの静磁場を用いる核磁気共鳴デバイスの検出に関連する空間領域(9)における構成材料としての、以下の成分からなるコンパウンドの使用:
(A)40重量パーセント~99.99重量パーセントのハロゲン化ポリマー又は過ハロゲン化ポリマーとして選択される少なくとも1種の熱可塑性ポリマー材料又は熱硬化性ポリマー材料
(B)0.01重量パーセント~60重量パーセントの少なくとも1種の無機又は有機金属の粒状の反磁性材料又は常磁性材料
(C)0重量パーセント~39.99重量パーセントの(B)とは異なる少なくとも1種の添加剤
【請求項2】
成分(A)の前記ポリマー材料は、少なくとも100℃、好ましくは少なくとも200℃又は少なくとも300℃の融点及び/又は分解点を有するハロゲン化ポリマー又は過ハロゲン化ポリマーとして選択され、
特に
1Hを含まない、及び/又は好ましくは低い誘電損失を有するポリマー、特に(ペル)フルオロポリマー、(ペル)クロロポリマー、又は(ペル)フルオロクロロポリマーからなる群から選択され、
更に好ましくは、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ペルフルオロアルコキシポリマー(PFA)、フッ素化エチレン-プロピレン(FEP)、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、過フッ素化エラストマー(FFPM/FFKM)、フルオロカーボン[クロロトリフルオロエチレンビニリデンフルオリド](FPM/FKM)、フルオロエラストマー[テトラフルオロエチレン-プロピレン](FEPM)、又はそれらの塩素化された類似体若しくはブレンドからなる群から選択され、及び/又は、
前記成分(A)は、熱可塑性ポリマーである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記成分(A)及び/又は前記成分(B)及び/又は前記成分(C)又は前記コンパウンド全体は、
1H水素を含まないか、又は
1H水素を本質的に含まず、及び/又は、
前記コンパウンドは、完全に重水素化されているか、又は本質的に完全に重水素化されている、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記無機又は有機金属の粒状の反磁性材料又は常磁性材料は、金属酸化物を含む金属塩、好ましくは常磁性材料の場合には遷移金属酸化物を含む遷移金属塩であり、
好ましくは、前記無機又は有機金属の粒状の常磁性材料は、
酸化セリウム、特に酸化クロム(Cr
2O
3)、ZrO
2、TiO
2、Y
2O
3として選択され、
常磁性酸化マンガン、特にMnO、MnO
2、Mn
3O
4から選択され、若しくは
CeO
2、又は
それらの混合物若しくは複合塩からなる群から選択され、
好ましくは、前記無機又は有機金属の粒状の常磁性材料は、酸化クロム(Cr
2O
3)、CeO
2、又はそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
成分(B)の割合は、0.05重量パーセント~20重量パーセントの範囲内、好ましくは0.1重量パーセント~2重量パーセント若しくは0.1重量パーセント~1重量パーセントの範囲内、又は0.1重量パーセント~0.3重量パーセントの範囲内である、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記コンパウンドの体積磁化率は、室温での試料溶媒、特に水の体積磁化率と一致するように成分(B)の対応する割合によって適合される、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
成分(C)の割合は、0重量パーセント~5重量パーセントの範囲内、好ましくは0.1重量パーセント~2重量パーセントの範囲内であり、更に好ましくは、コンパウンドの成分(C)は、
1Hを含まないか、又は
1Hを本質的に含まない、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
少なくとも1テスラの静磁場を用いる核磁気共鳴デバイスの検出に関連する空間領域(9)における構成材料として使用される、以下の成分からなるコンパウンド:
(A)40重量パーセント~99.99重量パーセントのハロゲン化ポリマー又は過ハロゲン化ポリマーとして選択される少なくとも1種の熱可塑性ポリマー材料又は熱硬化性ポリマー材料
(B)0.01重量パーセント~60重量パーセントの少なくとも1種の無機の粒状の反磁性材料又は常磁性材料
(C)0重量パーセント~39.99重量パーセントの(B)とは異なる少なくとも1種の添加剤
【請求項9】
請求項8に記載のコンパウンドを含むか又はコンパウンドからなる少なくとも1テスラの静磁場を用いる核磁気共鳴デバイスの検出に関連する空間領域(9)において使用される、構成要素及び/又は絶縁要素。
【請求項10】
少なくとも前記検出に関連する空間領域(9)において前記コンパウンドを含むか又はコンパウンドからなる核磁気共鳴試料保持器の形態である、請求項9に記載の構成要素。
【請求項11】
請求項10に記載の核磁気共鳴試料保持器(8)であって、溶解形態及び/又は懸濁形態で分析される物質を含む液体試料用の容器の形態であり、前記コンパウンドの体積磁化率が前記液体試料の溶媒の体積磁化率に整合されている、前記核磁気共鳴試料保持器。
【請求項12】
請求項11に記載の核磁気共鳴試料保持器(8)であって、
前記液体試料用のキャビティ(12)を備え、そのキャビティの体積は、前記試料保持器が適切かつ適合された前記核磁気共鳴デバイスの前記検出領域に限定されるが、前記試料保持器の更なる部分は、入口手段(16)、閉鎖手段(15、17)、体積補償手段(18)、封止/保持手段(19)のうちの少なくとも1つを除く、大部分が前記コンパウンドで作られているか、又は、
前記液体試料用のキャビティ(12)を備え、そのキャビティ(12)の体積は、前記試料保持器が適切かつ適合された前記核磁気共鳴デバイスの前記検出領域に限定され、かつ前記キャビティ(12)は、好ましくは円筒形のガラス試料管によって半径方向に境界が定められており、かつ少なくとも一方の軸方向側、好ましくは両方の軸方向側が前記コンパウンドの少なくとも1つの好ましくは円柱形のプラグによって境され、前記プラグは、前記ガラス試料管に挿入され、
前記液体試料と前記少なくとも1つのプラグとの間の境界面で前記液体試料と前記プラグ材料とが互いに直に接しており、好ましくは前記少なくとも1つのプラグの外径は、前記ガラス試料管の内径に本質的に対応する、前記核磁気共鳴試料保持器。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の核磁気共鳴試料保持器(8)であって、下方中実材料部分(20)と、隣接する試料キャビティ部分(21)と、上方中実材料部分(22)とを備え、
前記上方中実材料部分(22)は、好ましくは、本質的に前記コンパウンドから作られたプラグ(13)及び/又は(17)を備える、前記核磁気共鳴試料保持器。
【請求項14】
核磁気共鳴を使用して液体試料を測定するための、請求項11~13のいずれか一項に記載の核磁気共鳴試料保持器(8)の使用であって、前記試料保持器の前記コンパウンドの体積磁化率は、前記試料の液体の体積磁化率に適合され、
好ましくは、前記体積磁化率は、好ましくは重水素化形態又は非重水素化形態の水、アセトン、メタノール、クロロホルムのうちの少なくとも1つから選択される典型的なNMR溶媒の体積磁化率に適合される、前記使用。
【請求項15】
請求項11~13のいずれか一項に記載の核磁気共鳴試料保持器(8)を製造する方法であって、以下の成分:
(A)40重量パーセント~99.99重量パーセントのハロゲン化ポリマー又は過ハロゲン化ポリマーとして選択される少なくとも1種の熱可塑性ポリマー材料又は熱硬化性ポリマー材料
(B)0.01重量パーセント~60重量パーセントの少なくとも1種の無機の粒状の反磁性材料又は常磁性材料
(C)0重量パーセント~39.99重量パーセントの(B)とは異なる少なくとも1種の添加剤
からなるコンパウンドを使用して、好ましくは、均質な粉末混合物が得られるまで、好ましくは(A)~(C)の粉末を混合した後、引き続き、少なくとも200℃又は少なくとも300℃の高温で、好ましくは少なくとも100kg/cm
2、少なくとも200kg/cm
2、又は少なくとも250kg/cm
2の高圧にて焼結する、機械加工で、及び/又は射出成形プロセスで、前記試料保持器を形成し、
成分(B)の割合は、前記試料保持器の体積磁化率が、保持される試料、特に保持される液体試料の体積磁化率と一致するように、好ましくは水の体積磁化率と一致するように適合される、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁化率の整合を伴うNMR用途向けの絶縁体及び/又は構成材料としての特定のコンパウンドの使用に関する。さらに、本発明は、そのようなコンパウンドに基づくNMR用途向けのデバイス及び要素、並びにそのようなデバイスを製造する方法及びそのようなデバイスの使用、並びにこれらの使用に適切かつ適合された前記コンパウンドに関する。
【背景技術】
【0002】
高い信号対雑音比、したがって高い感度及び選択性/分解能を達成するには、高磁場核磁気共鳴(NMR)測定において、試料及び照射/検出領域内の磁場の均一性が極めて重要である。この目標を達成するには、磁石を取り巻く全般的な環境だけでなく、特に照射/検出コイルの周囲の臨界体積が、これらの照射/検出コイルの周囲だけでなく、コイル内に挿入された対応する試料の領域においても、その領域内の磁場の均一性を可能な限り乱さないよう注意する必要がある。
【0003】
これらの要素によって引き起こされる部分的な均一性を、対応する補償要素、いわゆるシムによって補償することができる。シミング(shimming;磁場均一度調整)には、アクティブ及びパッシブの2つの種類が存在する。アクティブシミングでは、電流の調整が可能なコイルが使用される。パッシブシミングでは、良好な磁性品質を有する鋼片が必要とされる。鋼片は永久磁石又は超電導磁石の近くに配置される。これらの鋼片は磁化され、それら自体が磁場を生ずる。どちらの場合にも、超電導磁石の全体的な磁場に追加の磁場(コイル又は鋼によって生成される)が加わることで、磁場全体の均一性が高まる。
【0004】
特許文献1では、ジャイロ磁気方式の分析装置の有感領域(sensitive volume)内に存在する構造要素を含む材料の磁場均一性を増進することが求められている。磁場を横切る軸に沿って試料が回転されると、軸方向の均一性を確立する必要性が低下する。溶媒の磁化率に一致するプラグを使用して、試料をRFプローブコイルの中央領域内に拘束することで、磁気的な意味で機器に対して相対的に不可視となる。材料の磁化率を調整して、外部からの信号を取り入れずに磁気摂動を抑制する所望の値を達成することができる。対応する磁化率が整合された材料は、様々な磁化率の樹脂を混合することによって得られる。
【0005】
特許文献2は、試料管を備える核磁気装置において使用される試料管であって、ガラス物質から形成されており、上記ガラス物質の磁化率が、試験される液体試料の磁化率に近似した磁化率を上記試料管に与えるのに十分な量の1種以上の常磁性物質及び/又は反磁性物質をその中に組み込むことによって調整された、上記試料管を開示している。
【0006】
特許文献3は、1種以上の試料の高スループット磁気センシングを実施する方法を開示している。この方法は、第1のバルク磁化率を有する第1の試料を選択することと、第1のバルク磁化率に整合された第2のバルク磁化率を有する多数のウェルを含むアッセイプレートを選択することと、第1の試料を複数のウェル内に導入することと、第1の試料が入った複数のウェルに対して磁気センシングを実施することとを含む。高スループット磁気センシングに関連するアッセイプレート、キャップ、キット、並びに他のデバイス及び方法も開示されている。この文献は、特定のポリエーテルイミドのウェルプレートを開示していること以外、磁化率が適応され得る更なる特定の系を開示しておらず、考えられる材料の大規模なリストを開示しているにすぎない。
【0007】
特許文献4は、ガラスの代わりにポリマー材料で作られた核磁気共鳴(NMR)試料管を開示している。このような管はガラス管よりも薄いため、内容積及び試料サイズが増加する。このような管は、特定の溶媒の磁化率により近付くように整合されるとも主張されている。このような管はより高い機械的安定性を有するため、NMRプロセシングの間の管の破損がより少なくなる。このような管は、相互作用系における減算アーティファクトを最小限に抑えるために試料の分離及び混合を可能にする様々な同心状の管配置にも適している。この文献には、単一のポリマー材料からなる試料管しか開示されていない。
【0008】
特許文献5は、第1の磁化率を有する材料で作られた、核磁気共鳴(NMR)分光計において分析される上記第1の磁化率と等しくない磁化率を有する試料物質を収容する試料容器であって、試料物質に面する内部境界面と、更なる磁化率を示す環境に面する外部境界面とを有する、上記試料容器を開示している。試料物質に面する境界面及び環境に面する境界面の形状は、試料物質で満たされた試料管をNMR分光計の事前に均一にした磁場へと導入した際に試料物質内部の磁場がほぼ均一なままとなるように、境界面での磁化率の不連続性を整合するよう調整されている。
【0009】
特許文献6は、概して、ジャイロ磁気共鳴の方法及び装置、より詳細には、試料体積にわたる磁場均一性を改善し、それによりジャイロ磁気共鳴スペクトルの極めて高い分解能を得ることができる新規の方法及び装置に関する。例えば、高分解能ジャイロ磁気共鳴分光法、プロセス制御、及び磁場の正確な測定にとって有用であると主張されている。より詳細には、上記特許は、試料を収容し、かつ試料全体を分極磁場に浸すキャビティを含むプローブを備えたジャイロ磁気共鳴装置を記載し、上記プローブ手段が、上記プローブ手段内に収容されたジャイロ磁性体のジャイロ磁気共鳴を励起及び検出する複数の要素を備え、上記プローブ内には、磁化率の異なる第1の材料、第2の材料、及び第3の材料によって占有される空間領域が存在し、上記第2の材料及び第3の材料が、上記プローブの構造部分を形成し、上記2種の材料のプローブ構造部分の上記第2の材料及び第3の材料が、上記2種の材料の構造部分の磁化率を上記第1の材料の磁化率に整合させるよう適切に釣り合いが取られた量の常磁性材料及び反磁性材料で構成されており、これにより上記3種の材料の複合プローブの空間領域が、プローブキャビティ内に配置されたジャイロ磁性体の試料全体から見て実質的に一様な磁化率を有することになり、こうして試料内の望ましくない磁場勾配を防止する。
【0010】
特許文献7は、動作周波数で磁気共鳴を示す試料と、試料からの磁気共鳴信号を受け取る試料を包囲する導電性構造物と、試料及び導電性構造物を包み込む固形ジャケットとを備えた磁場プローブを記載している。このジャケットは、その中に溶解された常磁性ドーパントを含む硬化した二成分エポキシ系で作られ、ドーパントの濃度は、ジャケットが導電性構造物の磁化率と実質的に同一の磁化率を有するように選択される。
【0011】
特許文献2は、ガラス物質から形成されている試料管を備える核磁気装置において使用されるデバイスに関し、上記ガラス物質の磁化率が、試験される液体試料の磁化率に近似した磁化率を上記試料管に与えるのに十分な量の1種以上の常磁性物質及び/又は反磁性物質をその中に組み込むことによって調整されている。
【0012】
特許文献8は、密封容器、例えば食品容器及び飲料容器並びに他の容器、特に特定の実施形態によれば、伝導性であるが一般に非強磁性の金属又は他の伝導性材料で作られた密封容器を分析するNMR分光法用の方法及びデバイスに関する。汚染物質を検出する方略の多くは、破壊される容器(a container to be violated)、容器又は生成物を破壊し得るプロセスを必要とし、大規模な用途においては実用的ではない。開示される発明は、金属容器又は伝導性容器内の汚染物質及び/又は密輸品をNMR分光法によって検出する方法及びデバイスを提供することによって、これらの問題及び他の問題を克服している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第4,549,136号
【特許文献2】米国特許第5,831,434号
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/160439号
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/024055号
【特許文献5】米国特許出願公開第2008/106263号
【特許文献6】米国特許第3,091,732号
【特許文献7】米国特許出願公開第2009/295389号
【特許文献8】国際公開第2014/138136号
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、核磁気共鳴用途において使用することができ、特に5T超、又は取りあえずは(in the meantime)27T超にも上る高磁場用途に使用することができる新しい材料であって、試料の取り扱いに関する改善された適性を有し、特に対応するデバイスの設定を適合させる必要なしに又はそのような適合の必要性を減らして試料を変更することを目的とする、上記材料を提案することである。
【0015】
本発明の背後にある一般的な着想は、分析される試料の体積磁化率を最大限に模倣し、検出用及び/又は照射用の関連する体積内で体積磁化率の空間的変化を伴うのを避ける材料を見つけて利用可能にすることである。特に、これは液体試料用に提案され、試料容量を減らし、それに対応して所定量の試料に対して濃度及び信号対雑音比を高めることを可能にし、各試料に対してシミングする必要性を可能な限り避けることを目的としている。また、提案された材料は、製造に関して取り扱いが容易であるが、提案された材料で作られた対応する保持器への試料の積載/充填に関しても取り扱いを容易にする。
【0016】
高分解能NMRにおいて、主要な設計上の課題は、重要な関心領域(critical volume of interest)内の磁場(B0)の歪みを可能な限り小さく保つことである。これにより、この関心領域において使用される全ての材料は、z軸に沿った幾何学的均一性又は包囲媒体と整合された体積磁化率を有するはずであり、これにより歪みは可能な限り小さく保たれ、その結果、最高の信号対雑音比に対して、可能な限り小さなNMR信号の線幅がもたらされる。
【0017】
好ましくは、コンパウンドの体積磁化率は、試料系(例えば、生体試料分子)を溶解及び/又は懸濁するのに使用される溶媒の体積磁化率に適合される。したがって相応して、コンパウンドの体積磁化率は、以下の表のリストに示される対応する溶媒の体積磁化率に適合されることが好ましく、この適合とは、典型的には、コンパウンドの体積磁化率が、対応する絶対値の±5%の範囲内、好ましくは±2%の範囲内、最も好ましくは±1%の範囲内、又は更には±0.5%の範囲内となるようにすることである:
【0018】
【0019】
均一な幾何学形状に関しては、材料の幾何学形状が検出有効体積(detection active volume)内でz方向に均一である限り、B0(有効体積内)は歪まない。検出有効体積は、典型的には、照射/検出コイルによって囲まれた体積に、検出有効体積の上下(z方向)にその体積の典型的には50%のマージンを加えたものとして定義される。
【0020】
多くの場合、設計要素の均一な幾何学形状は不可能である。この場合、関心領域内の材料は、対応する封入された媒体に関して磁気的に補償される(又は体積磁化率が整合される)必要がある。例えば、NMR試料を包囲するNMRコイル材料は、対応する温度可変のフローガス(N2又は空気)に関して磁気的に補償される必要がある。
【0021】
最適条件に向けたこの体積磁化率の整合は、上述の検出有効体積と、z軸に沿った上下の対応する拡張部(extension)及び対応するマージンとに限定されず、体積磁化率の空間的変化がコイルによって照射/検出される高周波場全体に影響を与えることになるため、コイルの半径方向裏側(radially behind)及びコイルの半径方向外側の領域も含み得ることに留意すべきである。これは、試料領域だけでなくコイルの半径方向外側の領域も含む検出及び磁場均一性に関連する体積を定義しており、提案された材料は、その検出及び磁場均一性に関連する体積内で使用するのに適切かつ適合されており、その使用はそのような材料で作られた試料保持器に限定されない。詳細には、提案された材料又はコンパウンドを、コイルの埋設若しくはコイルの包囲に、又はコイル及び試料領域の近傍にある対応するプローブヘッドの一部の形成に使用することができる。
【0022】
高分解能NMRでは、導体、例えばNMRコイルには、磁化率が整合された材料が使用されている。絶縁体/誘電体材料の場合には、従来技術の上記の議論において指摘したように、NMR管用のガラスを補償し、磁化率を整合させることによる、幾つかの取り組みが行われた。一方、使用媒体に近い磁化率の整合を得るのに、標準的なポリマーも使用されている。
【0023】
したがって、本発明の第1の態様によれば、少なくとも1テスラの静磁場を用いる核磁気共鳴デバイスの検出に関連する空間領域における構成材料として、以下の成分からなるコンパウンドの使用が提案される:
(A)40重量パーセント~99.99重量パーセント、好ましくは、40重量パーセント~99.95重量パーセントのハロゲン化ポリマー又は過ハロゲン化ポリマーとして通常選択される少なくとも1種の熱可塑性ポリマー材料又は熱硬化性ポリマー材料
(B)0.01重量パーセント~60重量パーセント、好ましくは、0.05重量パーセント~60重量パーセントの少なくとも1種の無機又は有機金属の粒状の反磁性材料又は常磁性材料
(C)0重量パーセント~39.99重量パーセント、好ましくは、0重量パーセント~39.95重量パーセントの(B)とは異なる少なくとも1種の添加剤
((A)~(C)は常にコンパウンド全体が100%となるように補充される)。
【0024】
このコンパウンドにより、成分(A)としてポリマー材料を使用することが可能となり、こうして脆いガラス及びそれに伴うかなり大きな壁厚が回避され、製造プロセス及び補修プロセスが簡素化され、対応する適切かつ必要とされる量の成分(B)を添加することによって最終コンパウンドの体積磁化率を非常に細かく調整することが可能となる。
【0025】
現在までのところ、関心領域内の要素を設計する構成材料として使用することができる体積磁化率が整合された絶縁材料は存在しない。本発明で提案されるコンパウンド単独によって、又は特に好ましい実施形態によれば、その組合せによって、利用可能になる好ましい要件は、以下の通りである:
磁化率が整合される
機械加工可能/成形可能である
機械的に安定している
1Hのバックグラウンドがない
誘電性であり、RF損失が少ない
破損しない
軽量である
費用対効果が高い
温度が安定性している
NMR溶媒が安定性している。
【0026】
以下の発明は概して、そのような理想的な特性を有する体積磁化率材料を記載する。
【0027】
提案されたコンパウンドは、成分(A)としての適切なポリマーと、成分(B)としての適切な誘電体との混合物を含むか、又はそれらからなる:
【0028】
成分(A)のポリマーは、ハロゲン化ポリマー又は過ハロゲン化ポリマーとして選択され、例えば、PFA、PTFE等であってよく、好ましくは、これは、1Hを本質的に又は全く含まないポリマーである。
【0029】
製造上の理由から、過ハロゲン化ポリマーでさえも1Hの残留分を含む可能性がある。残留1Hを少し有する過ハロゲン化ポリマーを使用することが好ましく、好ましくは、過ハロゲン化ポリマーは、コンパウンド中のハロゲン原子含有量の合計に対して1mol%未満、好ましくは50ppm未満又は1ppm未満、更により好ましくは50ppb未満又は1ppb未満の1Hを有するべきである。
【0030】
また溶媒に応じて、誘電体を常磁性(又は反磁性)誘電体材料となるように選択することができ、これは、例えば有機材料又は有機金属材料であってもよく、セラミック材料であってもよい。水の補償のために、好ましくは、CeO2又はCr2O3を単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0031】
最終生成物に応じて、ポリマー及びセラミックの常磁性及び/又は反磁性の材料の粉末を混合することによってコンパウンドを製造し、次いでブロックにホットプレス(焼結)し、その後、機械加工する(低容量の用途)か、又は押出機内で混合して、対応する工具において射出成形する(高容量の用途)ことができる。コンパウンド(A)の熱可塑性ペレット又は溶融材料を成分(B)の粉末と混合し、得られた材料を、必要に応じて成分(C)を補充して、溶融混合及び/又は押出成形することも可能である。
【0032】
焼結に適切かつ適合されたポリマーは、例えばPTFEである。
【0033】
射出成形に適切かつ適合されたポリマーは、例えばPFAである。
【0034】
より一般的に言えば、第1の好ましい実施形態によれば、成分(A)のポリマー材料はハロゲン化ポリマー又は過ハロゲン化ポリマーとして選択され、特に好ましくは1Hを含まず、かつ更に好ましくは低い誘電損失を有するポリマーであり、好ましくは100Hzで最大0.002又は最大0.001、及び/又は3GHzで最大0.002又は最大0.001又は最大0.0005の誘電損失(tanδ)を有するポリマー材料である。
【0035】
好ましくは、成分(A)及び/又はコンパウンド全体は、少なくとも100℃、好ましくは少なくとも200℃又は少なくとも300℃の融点及び/又は分解点を有する。
【0036】
特に好ましくは、成分(A)は、(ペル)フルオロポリマー、(ペル)クロロポリマー、又は(ペル)フルオロクロロポリマーからなる群から選択される。
【0037】
例えば、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)(Kel-F)、ペルフルオロアルコキシポリマー(PFA)、フッ素化エチレン-プロピレン(FEP)、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、過フッ素化エラストマー(FFKM、FKM)、クロロトリフルオロエチレンビニリデンフルオリド、フルオロエラストマー[テトラフルオロエチレン-プロピレン](FEPM)、又はそれらの完全に若しくは部分的に塩素化された類似体若しくはブレンドからなる群から選択される系が考えられる。
【0038】
好ましくは、成分(A)は、熱可塑性ポリマー又は焼結により硬化し得るポリマーである。
【0039】
検出及び/又は照射とのクロストークを避けるために、コンパウンド、特に成分(A)が1H水素を含まないか、又は本質的に含まない場合が更に好ましいことがある。
【0040】
検出及び/又は照射とのクロストークを避けるために、コンパウンド、特に成分(A)が完全に重水素化されているか、又は本質的に完全に重水素化されている場合が好ましいこともある。
【0041】
提案された使用は、無機又は有機金属の粒状の反磁性又は常磁性材料が金属塩(本明細書では、この用語には明示的に金属酸化物が含まれる)、好ましくは遷移金属塩(本明細書では、この用語には明示的に遷移金属酸化物が含まれる)であることを更に特徴とし得る。
【0042】
更に別の好ましい実施形態によれば、無機又は有機金属の粒状の常磁性材料は、金属、特に遷移金属酸化物であり、より好ましくは酸化セリウムからなる群から選択され、特に酸化クロム(Cr2O3)、ZrO2、TiO2、Y2O3、若しくはCeO2、又はそれらの混合物若しくは複合塩として選択される。酸化クロム(Cr2O3)、CeO2、又はそれらの組合せからなる群から選択される無機又は有機金属の粒状の常磁性材料が好ましい。
【0043】
典型的には、出発材料としての無機又は有機金属の粒状材料は、0.1ミクロン~100ミクロンの範囲内、好ましくは1ミクロン~30ミクロンの範囲内の粒子サイズを有する。好ましくは、無機又は有機金属の粒状材料は、当該材料中において均質かつ微細に分散されており、弱凝集又は強凝集を示さないため、最終コンパウンドにおいて、分散した個々の分離粒子サイズが、依然として0.1ミクロン~100ミクロンの範囲内、好ましくは1ミクロン~30ミクロンの範囲内にある。
【0044】
成分(B)の割合は、好ましくは0.05重量パーセント~40重量パーセント、又は0.01重量パーセント~20重量パーセント、又は0.07重量パーセント~10重量パーセントの範囲内であり、例えばCr2O3の場合には0.14重量%であり、例えばZrO2、TiO2、Y2O3、又はCeO2の場合には15%である(重量パーセントは常にコンパウンド全体に対して計算される)。
【0045】
提案された使用は、更に好ましくは、コンパウンドの体積磁化率が、室温での水の体積磁化率と一致するように成分(B)の対応する割合によって適合されることを特徴とする。
【0046】
典型的には、成分(C)の割合は、0重量パーセント~5重量パーセントの範囲内、好ましくは0.1重量パーセント~2重量パーセントの範囲内であり、更に好ましくは、コンパウンドの成分(C)は、1H水素を含まないか、又は1H水素を本質的に含まない。
【0047】
本発明の別の態様によれば、本発明は、特に少なくとも1テスラの静磁場を用いる核磁気共鳴デバイスの検出に関連する空間領域における構成材料として使用される、以下の成分からなるコンパウンドに関する:
(A)40重量パーセント~99.9重量パーセント、好ましくは、40重量パーセント~99.95重量パーセントのハロゲン化ポリマー又は過ハロゲン化ポリマーとして通常選択される少なくとも1種の熱可塑性ポリマー材料又は熱硬化性ポリマー材料
(B)0.01重量パーセント~60重量パーセント、好ましくは、0.05重量パーセント~60重量パーセントの少なくとも1種の無機の粒状の反磁性材料又は常磁性材料
(C)0重量パーセント~39.99重量パーセント、好ましくは、0重量パーセント~39.95重量パーセントの(B)とは異なる少なくとも1種の添加剤
((A)~(C)は常にコンパウンド全体が100%となるように補充される)。
【0048】
本発明の更に別の態様によれば、本発明は、上記で定義したコンパウンドを含むか又はそれからなる、少なくとも1テスラの静磁場を用いる核磁気共鳴デバイスの検出に関連する空間領域において使用される、構成要素及び/又は絶縁要素に関する。
【0049】
本発明の別の態様によれば、本発明は、少なくとも検出に関連する空間領域に上記で詳述したコンパウンドを含むか又はそれからなる核磁気共鳴試料保持器に関する。
【0050】
高分解能NMRにおいては、標準的な試料容器はガラス管であり、例えば5mmの外径及び4.2mmの内径、長さ180mmで、片側開きである。典型的には、この試料容器には、40mmの高さで液体が充填される(540μlの試料容量)。NMR有効体積は、典型的にはわずか20mmである。有効体積の上下10mmの液柱は、磁化率が整合された緩衝であり、ここでNMRコイルのB1強度は無視できる値まで低減される。この磁化率が整合された緩衝がなければ、有効体積内のB0歪みは、高分解能NMRの場合には壊滅的な高さとなる。
【0051】
この種の体積磁化率が整合された緩衝には、幾つかの不利点がある:
【0052】
例えば、最大100%の、より多い試料容量が必要とされる。タンパク質の場合に、これにより非常に高価になり、時間がかかり、タンパク質に対しては諸経費が増える。
【0053】
B1はすぐには(デジタル的に)ゼロに低下しない。残念なことに、NMRコイルは、B0均一性が既に著しく低下している磁化率が整合された緩衝体積からの信号も検出してしまう(例えば、不十分な水の抑制がもたらされる)。
【0054】
提案された体積磁化率が整合された材料により、以下の利点を有するNMR容器を設計することが可能となる:
はるかに短い
緩衝体積がなく、有効体積しか必要とされない
破損しない
軽量である
費用対効果が高い
試料交換器における移送が容易である
RF損失が極めて少ない
体積が明確に定められている。
【0055】
このような核磁気共鳴試料保持器の第1の好ましい実施形態によれば、該保持器は、溶解形態及び/又は懸濁形態で分析される物質を含む液体試料用の容器の形態を取り、上記コンパウンドの体積磁化率が液体試料の溶媒の体積磁化率に整合されている。
【0056】
好ましくは、試料保持器は、液体試料用のキャビティを備え、その体積は、試料保持器が適切かつ適合された核磁気共鳴デバイスの検出領域に限定されるが、試料保持器の更なる部分は、入口手段、閉鎖手段、体積補償手段、封止/保持手段のうちの少なくとも1つを除く、大部分が上記コンパウンドで作られている。
【0057】
このような核磁気共鳴試料保持器の別の好ましい実施形態によれば、その試料保持器は、液体試料用のキャビティを備え、そのキャビティの体積は、試料保持器が適切かつ適合された核磁気共鳴デバイスの検出領域に限定される。この場合、キャビティは、好ましくは円筒形(好ましくは従来通りで、両端が開いた管又は底部が閉じたガラス試料保持器であり得る)のガラス試料管によって半径方向に境界が定められており、少なくとも一方の軸方向側、好ましくは両方の軸方向側が上記コンパウンドの少なくとも1つの好ましくは円柱形のプラグによって境される。液体試料と少なくとも1つのプラグとの間の境界面で液体試料とプラグ材料とが互いに直に接するように、1つ以上のプラグが上記ガラス試料管に挿入される。好ましくは、試料からの液体がガラス壁とプラグとの間に侵入することができないように、及び/又は磁化率の差を大きくするエアギャップが存在しないように、上記少なくとも1つのプラグの外径は上記ガラス試料管の内径に本質的に対応sしている。
【0058】
したがって、最終製品は、キャップとしても形成することができる対応するプラグを備えた容器であり得る。
【0059】
全ての気泡が取り除かれるように、例えばシリンジで試料液体を充填する小さな孔を備えたキャップを設計することができる。
【0060】
セプタムを使用して、試料の移送中に液体が失われるのを防ぐことができる。
【0061】
孔の直径は臨界値を下回るべきである。この領域内の溶媒から生ずる信号は無視可能であるべきである。
【0062】
溶媒としての水の場合、例えば、0.14重量パーセントのCr2O3と混合されたPTFEは、水の体積磁化率に整合された材料をもたらすことができる。
【0063】
PTFEの機械的特性を最適化するには、セラミック粉末でのより高い充填含有量、例えばPTFE中15重量パーセントのCeO2が推奨される。
【0064】
更に好ましくは、試料保持器は、下方中実材料部分と、隣接する試料キャビティ部分と、上方中実材料部分とを備え、上記上方中実材料部分は、好ましくは、本質的に上記コンパウンドから作られたプラグ及び/又はを備える。
【0065】
本発明の更に別の態様によれば、本発明は、核磁気共鳴を使用して液体試料を測定するための、特に上記で詳述した核磁気共鳴試料保持器の使用に関し、試料保持器のコンパウンドの体積磁化率は、試料の液体の体積磁化率に適合され、好ましくは、体積磁化率は、水の体積磁化率に適合される。
【0066】
最後に述べるが決して軽んずべきでないものであるが、本発明は、特に上記で概要を述べた核磁気共鳴試料保持器(8)を製造する方法に関し、以下の成分からなるコンパウンドを使用し、好ましくは機械加工及び/又は焼結及び/又は射出成形プロセスで、試料保持器を形成し、成分(B)の割合は、試料保持器の体積磁化率が、保持される試料、特に保持される液体試料の体積磁化率と一致するように、好ましくは水の体積磁化率と一致するように適合される:
(A)40重量パーセント~99.99重量パーセント、好ましくは、40重量パーセント~99.95重量パーセントのハロゲン化ポリマー又は過ハロゲン化ポリマーとして通常選択される少なくとも1種の熱可塑性ポリマー材料又は熱硬化性ポリマー材料
(B)0.01重量パーセント~60重量パーセント、好ましくは、0.05重量パーセント~60重量パーセントの少なくとも1種の無機の粒状の反磁性材料又は常磁性材料
(C)0重量パーセント~39.99重量パーセント、好ましくは、0重量パーセント~39.95重量パーセントの(B)とは異なる少なくとも1種の添加剤
【0067】
本発明の更なる実施形態は、従属請求項に記載される。
【0068】
本発明の好ましい実施形態は、図面を参照して以下で述べられる。図面は、本発明の現在の好ましい実施形態を示すためのものであるが、それを制限するためのもではない。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】
図1は、軸方向断面における円筒形高磁場磁石での従来の高分解能核磁気共鳴測定機構を示す図である。
【
図2】
図2は、液体状態NMR測定用の高分解能核磁気共鳴測定機構の測定領域を通した詳細な軸方向断面を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態による高分解能核磁気共鳴測定用の磁化率が整合された容器を通過する軸方向断面の概略図である。
【
図4a】
図4aは、第1の実施形態(a)による高分解能核磁気共鳴測定用の磁化率が整合された容器を通過する軸方向断面の概略図である。
【
図4b】
図4bは、更なる封止/保持要素及び膨張補償体積を含む第2の実施形態による高分解能核磁気共鳴測定用の磁化率が整合された容器を通過する軸方向断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
図1は、典型的な高分解能NMR機構を通過する軸方向断面を示している。液体試料が入った円筒形のガラス管の形態のNMR試料1が実際のNMRプローブヘッド5内に保持されている。プローブヘッド5内に、実際のNMR照射/検出コイル3が取り付けられており、典型的には、その上下が高周波シールド2によって包囲されている。さらに、プローブヘッド内、及び/又はNMRプローブヘッド取付部7内、又は実際の磁石の内側部分内には、実際の常温磁石ボア6を越えて、シム用の追加のコイル等が存在してもよい。
【0071】
磁場10の方向は機構内の垂直軸に沿っており、軸方向の磁気中心は水平線4によって示されている。この線は、典型的には、対応するコイル配置3の垂直中心にある。コイル3は関心領域9を画定し、この関心領域は検出体積を含むが、実際のコイルの更に上方及び更に下方にも至り、実際のコイルの半径方向外側にも延在し、これは、コイルの高周波場によってカバーされるため、磁場均一性に関連する体積である。この関心領域9では、高い信号対雑音比を達成し、歪みを回避するのに磁気均一性が極めて重要である。この関心領域9は、提案されたコンパウンドが特に役立つ場所である。それというのも、その体積磁化率は、実際の試料の体積磁化率に適合されているからであり、これは事実上、照射及び/又は検出においてコイルによって感知される(felled by)体積磁化率の変化が最大限まで均一であり、空間次元における体積磁化率の変化によって影響されないことを意味する。この関心領域は、典型的には、サドルコイル又はソレノイドコイル3の軸方向の高さによって通常画定される実際の検出有効体積の長さ12の上下50%にB場方向に沿って延在している。
【0072】
これは、
図2において更に図解されており、そこでは、関心領域9が検出有効体積の高さ12との関連で示されており、実際の検出有効体積は、この高さ12に沿ってコイル3によって囲まれた空間である。液柱は、典型的には、有効体積の高さ12の上下50%(50% above and below the active volume height 12)の高さを有し、これが本質的に関心領域9の高さを画定する。半径方向では、典型的には、サドルコイルの場合に円柱によって画定される関心領域は、それぞれの半径方向側でコイルの直径を50%超えて延在する。
【0073】
実際の試料の体積磁化率によって規定される体積磁化率の条件を本質的に乱すことなく、本出願において提案されるコンパウンドをこの関心領域9において使用することができる。
【0074】
PTFE/Cr2O3コンパウンドの形態の提案されたコンパウンドは、例えば、以下の通りに得ることができる:
【0075】
10kgのPTFE(純度99%、粒度10μm~30μm(d50))+14グラム(gr)のCr2O3(純度99.9%、粒度1μm~20μm(d50))をドラムに量り入れ、-15℃まで少なくとも24時間冷却し、予備混合し、混合凝集体とともに再混合し、混合物を適切な型内に注ぎ、300kg/cm2で加圧し、3分間保持し、ゆっくりと減圧し、離型した後に、少なくとも12時間脱ガスし、最高365℃で焼結する。
【0076】
得られた材料を、標準的な機械加工技術を使用してあらゆる種類の所望の形状に機械加工することができる。特に、以下で更に論じるように、試料保持器に必要とされる要素を機械加工することが可能である。
【0077】
得られた材料は-9.03×10-6(SI)の体積磁化率を有し、これは同じ範囲内である典型的な水試料の磁化率に整合されている。
【0078】
図3は、そのようなコンパウンドから作られたNMR管を概略的に図解している。このNMR管は、キャビティが最底部まで延在する従来のガラス管とは対照的に、この場合に、下方部分20がコンパウンドで中実であるため、実際の試料用のキャビティを含まない。実際の試料用のキャビティはキャビティ部分21に限定され、この部分は更に同じコンパウンドから作られたプラグによって蓋をされる。このような機構では、下方部分とキャビティ21との間の境界面、及びキャビティ21とプラグ13との間の境界面で体積磁化率の許容することができない段差が引き起こされ、信号対雑音比及び感度の損失につながるが、提案されたコンパウンド材料の体積磁化率の整合によって、そのような段差は存在せず、試料体積がはるかに小さいにもかかわらず、信号対雑音比及び感度を維持することができ、こうして、所定量の利用可能な実際の物質に対してより高い濃度又はより小さな容量の実際の物質を分析することが可能となる。
【0079】
図4は、そのような試料保持器の2つの異なる実施形態を図解している。a)には、
図3とは対照的に、単純な円柱形のプラグ13はないが、成形されたプラグ17があり、その最下部のみがキャビティ12の上部に入り込んで封止されている実施形態が示されている。この17は、試料保持器の下方部分に固定的に取り付けられていてもよく、又は容器の充填及び排出を可能にするように取り外し可能であってもよい。また、例えば積層造形法を使用すれば、このようなデバイスを一体で作ることも可能である。
【0080】
17が容器の下方部分に固定的に取り付けられる場合、狭い充填/排出チャネル16を有することが有用であり、充填/排出チャネル16は、その液体部分が測定に干渉するのを一切避けるために十分に小さい直径を有するべきである。対応するデバイスの上部はセプタム15によって閉じられていてもよい。
【0081】
図4b)は、17が対応する封止要素19、例えばOリングによって容器の下部に対して更に封止されている別の実施形態を図解している。それに加えて、チャネル16の上方に、コイルの検出空間のほぼ外側に小さな体積部18を設けて、温度及び/又は圧力によって引き起こされる試料の体積変化に対する補償を提供することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 NMR試料
2 高周波シールド
3 NMR照射/検出コイル
4 軸方向の磁気中心
5 NMRプローブヘッド
6 常温磁石ボア
7 NMRプローブヘッド取り付け部
8 NMR管
9 関心領域、すなわち検出及び磁場均一性に関連する体積部
10 磁場の方向、z方向、B0
11 8内の液柱、典型的には40mmの軸方向の長さ
12 検出有効体積の高さ、典型的には20mmの軸方向の長さ
13 体積磁化率が整合された材料からなるプラグ
14 体積磁化率が整合された材料からなる容器
15 セプタム
16 充填/排出チャネル
17 キャップ
18 熱膨張補償体積部
19 封止/保持要素
20 下方中実材料部分
21 キャビティ部分
22 上方中実材料部分
【国際調査報告】