(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-13
(54)【発明の名称】回転式医療装置用のドライブシャフトの設計、調整および安定化方法
(51)【国際特許分類】
A61M 60/416 20210101AFI20240205BHJP
A61M 60/126 20210101ALN20240205BHJP
A61B 17/32 20060101ALN20240205BHJP
【FI】
A61M60/416
A61M60/126
A61B17/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546365
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(85)【翻訳文提出日】2023-07-31
(86)【国際出願番号】 US2022070621
(87)【国際公開番号】W WO2022174249
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523073404
【氏名又は名称】カーディオウヴァスキュラァ システムズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘイゼルマン,ベンジャミン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン・デ・モーテル,トリスタン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ハンソン,マシュー ダブリュ.
【テーマコード(参考)】
4C077
4C160
【Fターム(参考)】
4C077AA04
4C077CC09
4C077DD10
4C160FF21
4C160MM36
(57)【要約】
血管内医療装置、例えば、限定されないが、血液ポンプ、回転式アテレクトミー装置、または回転式血栓切除装置のための、可撓性を有するドライブシャフトアセンブリが提供される。血液ポンプの実施形態は、電動モータおよび回転インペラを提供し、それらの間には回転ドライブシャフトが配置され、インペラを回転可能に駆動するように構成されている。ドライブシャフトは、電動モータと回転インペラとの間に接続されると、変形前の長さから変形した長さまで動かされ、回転インペラに近位方向に付勢力を与えて、インペラを所望の軸方向または直線位置に維持する。他の実施形態では、ドライブシャフトは、長さおよびばね定数を有する近位セクションと、相対的により長い長さおよび相対的により高いばね定数を有する遠位セクションとを備える。他の実施形態では、ハイポチューブおよび/または支持マンドレルが設けられていてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転モータシャフトと、前記回転モータシャフトを少なくとも部分的に囲むモータマニホールドとを有し、前記回転モータシャフトを回転するように構成された電動モータと、
インペラと、インペラシャフトと、前記インペラおよび前記インペラシャフトの一部を少なくとも部分的に囲むインペラハウジングとを有する血液ポンプと、
複数のワイヤ糸で形成され、変形前の長さ、近位端および遠位端を有し、細長く可撓性を有するドライブシャフトであって、前記ドライブシャフトの前記近位端は前記回転モータシャフトに回転可能に接続され、前記遠位端が前記インペラシャフトに回転可能に接続されたドライブシャフトと、を備え、
前記細長く可撓性を有するドライブシャフトは、前記回転モータシャフトと前記インペラシャフトとの間で前記変形前の長さよりも長い長さを有する伸張形態に変形されて、前記インペラと前記電動モータシャフトとの間に付勢組込み引張力を加える、血行動態補助装置。
【請求項2】
前記インペラハウジングは、近位の内表面を備え、前記インペラは、近位面を備え、前記付勢組込み引張力は、前記インペラの近位面を前記インペラハウジングの前記近位の内表面と接触した状態に維持する、請求項1に記載の血行動態補助装置。
【請求項3】
前記インペラの軸方向位置は、前記付勢組込み引張力を受けて維持される、請求項1に記載の血行動態補助装置。
【請求項4】
前記インペラは、前記付勢組込み引張力を受けて、前記インペラハウジング内の遠位軸方向の動きに抵抗する、請求項1に記載の血行動態補助装置。
【請求項5】
前記付勢組込み引張力は、20グラム~500グラムの範囲内である、請求項1に記載の血行動態補助装置。
【請求項6】
前記付勢組込み引張力は、220グラム~240グラムの範囲内である、請求項5に記載の血行動態補助装置。
【請求項7】
前記インペラハウジングおよび前記モータマニホールドと接続された外側シースをさらに備える、請求項1に記載の血行動態補助装置。
【請求項8】
前記外側シース内に配置され、前記ドライブシャフトの前記長さの少なくとも一部を囲む内側シースをさらに備える、請求項7に記載の血行動態補助装置。
【請求項9】
前記ドライブシャフトを20グラムから500グラムの間に加えられた力で軸方向に伸張した後、前記加えられた力を除去することによって、構造的伸張を除去するように構成された前記ドライブシャフトをさらに備える、請求項1に記載の血行動態補助装置。
【請求項10】
前記可撓性を有するドライブシャフトは、近位セクションの長さの一部を囲み、間隔を空けて配置された1つ以上のハイポチューブを備え、前記1つ以上のハイポチューブのそれぞれは、前記ドライブシャフトの前記ワイヤ糸に取り付けられ、前記1つ以上のハイポチューブに取り付けられた前記ワイヤ糸を軸方向位置に相互に固定するように構成されている、請求項1に記載の血行動態補助装置。
【請求項11】
前記ドライブシャフトは、
長さとばね定数とを有する近位セクションと、
前記近位セクションの長さよりも長い長さと、前記近位セクションのばね定数よりも大きいばね定数とを有する遠位セクションと、
をさらに備える、請求項1に記載の血行動態補助装置。
【請求項12】
前記ドライブシャフトは、前記遠位セクションの前記長さの一部を囲み、間隔を空けて配置された1つ以上のハイポチューブをさらに備え、前記1つ以上のハイポチューブのそれぞれは、前記ドライブシャフトの前記ワイヤ糸に取り付けられ、前記1つ以上のハイポチューブに取り付けられた前記ワイヤ糸を軸方向位置に相互に固定するように構成されている、請求項1に記載の血行動態補助装置。
【請求項13】
前記ドライブシャフトは、それを通る内側管腔を画定し、少なくとも1つの支持マンドレルが前記内側管腔内の前記ドライブシャフトの前記ワイヤ糸に配置され、および取り付けられ、前記少なくとも1つの支持マンドレルに取り付けられた前記ワイヤ糸は、軸方向位置に相互に固定されるように構成されている、請求項1に記載の血行動態補助装置。
【請求項14】
長さとばね定数とを有する近位セクションと、
前記近位セクションの長さよりも長い長さと、前記近位セクションのばね定数よりも大きいばね定数とを有する遠位セクションと、
を備える、血管内医療装置用の可撓性を有するドライブシャフトアセンブリ。
【請求項15】
前記近位セクションの前記長さの一部を囲み、間隔を空けて配置された1つ以上のハイポチューブをさらに備え、前記1つ以上のハイポチューブのそれぞれは、前記ドライブシャフトの前記ワイヤ糸に取り付けられ、前記1つ以上のハイポチューブに取り付けられた前記ワイヤ糸を軸方向位置に相互に固定するように構成されている、請求項14に記載のドライブシャフトアセンブリ。
【請求項16】
前記遠位セクションの前記長さの一部を囲み、間隔を空けて配置された1つ以上のハイポチューブをさらに備え、前記1つ以上のハイポチューブのそれぞれは、前記ドライブシャフトの前記ワイヤ糸に取り付けられ、前記1つ以上のハイポチューブに取り付けられた前記ワイヤ糸を軸方向位置に相互に固定するように構成されている、請求項15に記載のドライブシャフトアセンブリ。
【請求項17】
前記ドライブシャフトアセンブリは、それを通る内側管腔をさらに画定し、前記内側管腔内の前記近位セクションの前記ワイヤ糸に取り付けられた少なくとも1つの支持マンドレルを備え、前記少なくとも1つの支持マンドレルに取り付けられた前記ワイヤ糸は、軸方向位置に相互に固定されるように構成されている、請求項14に記載のドライブシャフトアセンブリ。
【請求項18】
前記ドライブシャフトアセンブリは、それを通る内側管腔をさらに画定し、前記内側管腔内の前記遠位セクションの前記ワイヤ糸に取り付けられた少なくとも1つの支持マンドレルを備え、前記少なくとも1つの支持マンドレルに取り付けられた前記ワイヤ糸は、軸方向位置に相互に固定されるように構成されている、請求項14に記載のドライブシャフトアセンブリ。
【請求項19】
前記血管内医療装置は、血液ポンプ、回転式アテレクトミー装置、および回転式血栓切除装置からなる群のうちの1つ以上を備える、請求項14の可撓性を有するドライブシャフトアセンブリ。
【請求項20】
長さとばね定数とを有する近位セクションと、
前記近位セクションの長さよりも長い長さと、前記近位セクションのばね定数よりも大きいばね定数とを有する遠位セクションと、
前記近位セクションおよび/または遠位セクションの前記長さの一部を囲み、間隔を空けて配置された1つ以上のハイポチューブとを備え、
前記1つ以上のハイポチューブのそれぞれは、前記ドライブシャフトの前記ワイヤ糸に取り付けられ、前記1つ以上のハイポチューブに取り付けられた前記ワイヤ糸を軸方向位置に相互に固定するように構成され、
前記ドライブシャフトアセンブリは、それを通る内側管腔をさらに画定し、前記内側管腔内の前記近位セクションおよび/または遠位セクションの前記ワイヤ糸に取り付けられた少なくとも1つの支持マンドレルを備え、前記少なくとも1つの支持マンドレルに取り付けられた前記ワイヤ糸は、軸方向位置に相互に固定されるように構成されている、血管内医療装置用の可撓性を有するドライブシャフトアセンブリ。
【請求項21】
前記血管内医療装置は、血液ポンプ、回転式アテレクトミー装置、および回転式血栓切除装置からなる群のうちの1つ以上を備える、請求項20に記載の可撓性を有するドライブシャフトアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明者
ベンジャミン・D・ヘイゼルマン(Benjamin D. Haselman)、米国民
トリスタン・A・ヴァン・デ・モーテル(Tristan A. Van de Moortele)、米国民
マシュー・W・ハンソン(Matthew W. Hanson)、米国民
関連出願の相互参照
本願は、2022年2月10日に出願され、「回転式医療装置用のドライブシャフトの設計、調整および安定化方法(DRIVE SHAFT DESIGN, CONDITIONING AND STABILIZATION METHODS FOR ROTATIONAL MEDICAL DEVICES)」と題された米国非仮特許出願第17/650565号に対する優先権を主張し、さらに、2021年2月11日に出願され、「血行動態補助装置用のドライブシャフトの設計、調整、固定方法(DRIVE SHAFT DESIGN, CONDITIONING, SECUREMENT METHODS FOR HEMODYNAMIC SUPPORT DEVICE)」と題された米国仮特許出願第63/148425号の利益を主張するものであり、これらの内容全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
連邦政府による支援を受けた研究開発に関する記載
該当なし
【0003】
本発明の背景
本発明の分野
【0004】
血管内使用のために構成され、ドライブシャフトの遠位端またはその付近にツールを有するドライブシャフトを回転駆動するように構成された外部モータを有する、回転式医療装置。
【背景技術】
【0005】
関連技術の説明
【0006】
一般に、血管内使用のための回転式医療装置は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6、494、890号明細書のアテレクトミー装置等のように、従動回転ドライブシャフトが取り付けられた外部に配置されたモータと、ドライブシャフトの遠位端またはその付近にあるツールとを備える。加えて、血液ポンプのような血行動態装置では、例えば、補助人工心臓は、患者の身体の外部に配置された電動モータによって生成されたトルクを伝達する。この場合、接続された電動モータは回転ドライブシャフトに沿ってトルクを発生させ、これは、患者の体内に配置された血液ポンプインペラと回転可能におよび作動可能に接続されている。他の場合では、電動モータは患者の体内に配置される、すなわち植込み型であってもよく、植え込まれた血液ポンプのインペラを回転させるように構成されていてもよい。
【0007】
少なくとも、患者の体外に配置された電動モータの場合は、ポンプインペラの軸方向位置を制御すべきである。一般に、このような装置では、インペラを囲む外側シースと、回転するインペラを支持するベアリングと、回転するインペラを囲みベアリングを支持するベアリングハウジングとの組み合わせによって、インペラが近位に動くことが防止されるか、または抑制される。しかしながら、本装置のインペラは、近位端が電動モータに接続され、遠位端が回転するインペラと接続されているドライブシャフトのみによって、近位、遠位、すなわち軸方向に動くことが概ね防止される。公知のドライブシャフトは、例えば、限定されないが、回転中のドライブシャフトの巻き上げおよび/または巻き戻りなど、ドライブシャフトの遠位端の配置を変化させる力を経験する。ドライブシャフトの遠位端の位置を移動させる事象および結果として生じる力は、例えば、限定されないが、起動中に、および/または血液ポンプによって生じた血流に伴う回転速度の変化を受けて起こり得る。これらの場合におけるドライブシャフトの巻き上げおよび/または巻き戻りは、公知のドライブシャフトの短縮および/または延長の原因となり、ひいてはドライブシャフトの遠位端およびそれに接続されたインペラの対応する軸方向の動きを引き起こす。場合によっては、ドライブシャフトの遠位端およびそれに接続されたインペラは、ドライブシャフトの公称軸に対して径方向に動くかもしれない。これらのインペラの動きの事象はいずれも、流量および流速等の測定パラメータが影響を受け得るため、非常に好ましくない。極端な場合、測定パラメータが設定された閾値を超え、それに応じて警報が発報される可能性がある。
【0008】
本明細書中に説明されている問題は、一般に、血管内使用のための細長く可撓性を有するドライブシャフトを備え、ドライブシャフトの遠位端またはその付近に配置されたツールを有する回転式医療装置に存在する。例えば、限定されないが、回転式アテレクトミー装置、血栓切除装置、および血液ポンプは、以下に説明する種々の実施形態から恩恵を得ることができる。
【0009】
本明細書中に開示される種々の発明は、とりわけ、これらの問題に対処する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
これらの図面は、特定の実施形態の例示的な説明であり、したがって、本開示を限定することを意図するものではない。
【0011】
【
図2】本発明の一実施形態を示す、力対変位のグラフを示す。
【
図3】本発明の一実施形態の側面部分断面図を示す。
【
図4】本発明の一実施形態の側面部分断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
【0013】
図面を参照して、外部モータ、例えば電気モータまたはタービン等に取り付けられ、ドライブシャフトの遠位端またはその付近にツールを有し、細長く可撓性を有するドライブシャフトが、遠位端の固定位置を維持する、すなわち、ツールの軸方向位置の固定を確保する発明を開示する。例えば、回転式アテレクトミー装置、血栓切除装置、および補助人工心臓(「VAD」)等の血液ポンプは、本明細書中に開示された実施形態の一部または全てから恩恵を得ることができる。
【0014】
概して、本開示は、血液ポンプに関する解決手段を説明するが、当業者は、一部または全てが回転式アテレクトミーおよび血栓切除装置のような他の装置に適用され得ることを確実に理解するであろう。
【0015】
したがって、血液ポンプに関連して本明細書中に教示される種々の実施形態は、患者の体外に配置された電動モータと接続されたドライブシャフトの回転中におけるインペラの配置、特に近位および遠位の、すなわち軸方向の配置を維持するために機能する。この場合、血液ポンプおよび接続されたドライブシャフトは、患者の血管系を目的の位置まで横断し、ドライブシャフトの近位端は患者の体外に延び、電気モータと回転可能に接続される。
【0016】
図1に示すように、例示の血液ポンプシステム100は、電動モータ10(患者の外部に配置される)と、近位端14、遠位端16、および少なくとも部分的に中空の内部領域Iをその中に画定するモータマニホールド12とを備える。示されているように、モータのロータまたはシャフト18は、電動モータ10と回転可能に接続され、モータ10から離れるようにモータマニホールド12の近位端14を通って内部領域I内に延びている。マニホールド12の近位端14は、モータ10から間隔を空けて離れて示されているが、他の実施形態では、このような間隔は必須でない場合もある。
【0017】
血液ポンプシステム100は、インペラシャフト22を有するインペラ20をさらに備え、インペラシャフト22は、インペラ20からマニホールド12およびモータシャフト18に向かって近位に延びている。インペラハウジング24は、インペラシャフト22の少なくとも一部を囲むように提供および構成されており、実施形態によっては、示されているように、インペラシャフト22の近位部分は、インペラハウジング24によって覆われたり囲まれたりしていない。実施形態によっては、インペラシャフト22は、インペラシャフト22が細長く可撓性を有するドライブシャフトまたはケーブル26との回転接続のためにアクセス可能であるようにして、インペラハウジング24によって完全に囲まれていてもよい。
【0018】
このように、システム100は、近位端がモータシャフト18と回転可能に接続され、遠位端がインペラシャフト22と接続されている、細長く可撓性を有するドライブシャフト26を備えており、回転運動およびトルクがモータシャフト18からドライブシャフト26を介してインペラシャフト22に伝達されることによって、モータシャフト18およびドライブシャフト26と実質的に同じ速度でインペラ20を回転させる。
【0019】
ドライブシャフト26は、連結具によってモータシャフト18およびインペラシャフト22と連結または接続されていてもよいし、当技術分野で周知のように、溶接されるか、または他の方法でモータシャフト18およびインペラシャフト22と固定的に接続されていてもよい。
【0020】
内側シース28はマニホールド12の遠位端16の一部に接続され、遠位方向に動くドライブシャフトを囲む。示されているように、内側シース28は、ドライブシャフト26の全長にわたって延びたり囲んだりはしておらず、代わりにドライブシャフト26の遠位端とインペラシャフト22との接続部の近位のポイントで終端する。他の実施形態では、内側シース28がドライブシャフト26の全長を覆うように延びていてもよい。
【0021】
外側シース30は、マニホールド12の遠位端16の一部に接続され、インペラハウジング24の近位端に接続され、内側シース28およびドライブシャフト26を効果的に囲んでいる。
【0022】
ドライブシャフト26の遠位端、ひいてはインペラシャフト22を介してドライブシャフト26の遠位端と接続されるインペラ20の遠位軸方向位置を維持するために、すなわち、その軸方向の並進を防止するために、ドライブシャフト26は、本明細書で「組込み張力」と呼ばれる、軸方向の変形、すなわち伸張、延長、または張力を受ける。この張力付与により、ドライブシャフト26のモータシャフト18との接続部とインペラシャフト22との間に、わずかに、またはわずかよりも大きく変形し、延長および伸張したドライブシャフト26が得られる。次に、変形して伸張したドライブシャフトは、インペラ20を近位軸方向に引っ張る付勢力を提供し、それにより、インペラ26の近位面27を、インペラハウジング24の内表面または内面25に対して固定のおよび所望の位置まで近位方向に引っ張る。実施形態によっては、インペラハウジング24の内表面25とインペラの近位面27との間にベアリングが介在していてもよい。これらの実施形態では、インペラの近位面は、変形して伸張したドライブシャフト26により生成される、付勢組込み引張力により、インペラハウジングの内表面24に対して保持される。例えば、限定されないが、リング状のベアリング(図示省略)がインペラ20の近位面27に結合されるか、または取り付けられてもよい。他の実施形態では、ベアリングスリーブ(図示省略)が設けられてもよく、インペラシャフト22はベアリングスリーブの内部で回転する。
【0023】
ドライブシャフト26の近位端が接続されるモータシャフト18は、配置位置に固定されていてもよく、インペラハウジング24は、実施形態によっては、インペラが外側シース30と接続され、ひいてはマニホールド12と接続されるため、固定位置を有する構造を提供する。その結果、インペラ20の近位表面が付勢されてインペラハウジングの近位の内表面25に対して接触すると、インペラ20は、それ以上近位方向に動くことができない。したがって、この構成は、インペラ20の少なくとも遠位方向への動きまたは並進を最小限にするおよび/または防止することにより、ドライブシャフト26がインペラ20の少なくとも軸方向の所望の配置を確実に維持することを支援する。変形して伸張したドライブシャフト26は、弾性的にまたは非弾性的に変形され得る、変形した付勢力構造を備えていてもよい。
【0024】
実施形態によっては、外側シース30の近位端は、最初に、マニホールド内に画定された中空の内部I内に、またはそれを通って、近位または遠位にスライド可能であってもよく、マニホールドは、実施形態によっては、外側シース30を収容するように構成された別個の中空チャネルを備えていてもよく、その結果、外側シース30は、近位または遠位方向にマニホールド12内に引っ張られるか、またはスライドさせることができ、ドライブシャフト26は、並進しないモータシャフト18に接続される。外側シース30を近位方向にモータ10に向かって引っ張り、スライドさせ、または並進させることでドライブシャフト26を短縮または圧縮し、外側シースを遠位方向に並進させることでドライブシャフト26を延長および延在させる。ドライブシャフト26の拡張または延長は、例えば歪ゲージ等の公知の技術によりリアルタイムで測定され得る所定の張力、延長力または伸張力の付与によって可能となる、所望の変形した伸張形態を実現し得る。所定の張力に達すると、インペラ20に近位方向の所望の付勢組込み引張力を加えつつ、マニホールド12、外側シース30、およびインペラハウジング24の軸方向位置を固定するために、外側シース30をマニホールド12に固定して、例えば接着し得る。
【0025】
変形させる所定の組込み引張力は、20グラムの張力~500グラムの張力の範囲内であってよい。好ましい所定の組込み引張力は、220グラム~240グラムの範囲内であってよく、230グラムを目標とする。上記にかかわらず、当業者は、本発明の目的を達成するために他の組込み張力を使用してもよいことを認識するであろう。
【0026】
実施形態によっては、変形して伸張したドライブシャフト26は、外側シース30を圧縮するように機能してもよく、これは、ひいては変形させる組込み引張力の低減をもたらす。例えば、230グラムの所定の組込み引張力は、外側シース30の圧縮後、実際には約180グラムのドライブシャフト26を変形させる組込み張力を与え得る。他の実施形態では、外側シース30は、所定量の組込み引張力によって圧縮されないように構成されてもよく、所定の組込み引張力の目標は、低減されないか、またはわずかに低減されるのみである。
【0027】
このように、概して、所定の組込み引張力の目標は、実施形態によっては外側シース30の圧縮に起因して低減され得る。これは、外側シース30の圧縮が、最終的には、変形して伸張したドライブシャフト26の長さを減少させ、それによってインペラ20とマニホールド12との間でドライブシャフト26にかかる付勢伸張力を低減させるからである。
【0028】
他の実施形態では、マニホールド12とインペラハウジング24との間隔は、ドライブシャフト26の近位および遠位端がそれぞれ接続されるモータシャフト18とインペラシャフト22との相対的な位置として固定されて既知であってもよい。ドライブシャフト26の長さは、モータシャフト18とインペラシャフト22との間に固定されたドライブシャフト26の伸張変形によって所定量の付勢組込み引張力を提供するために、モータシャフト18およびインペラシャフト22の固定された接続位置の間隔よりも短くなるように選択されてよい。
【0029】
少なくとも内側シース28、外側シース30、およびドライブシャフト26は、患者の血管系を並進する際に患者の血管系に適応するように湾曲していてもよい。この湾曲によって、ドライブシャフト26と内側シース28との間の隙間が、ドライブシャフト26の組込み張力を低減させ得る。そのため、組込み張力は、インペラ20がその固定された所望の軸方向位置に留まるように、すなわち、全範囲の曲げおよび回転使用にわたって遠位軸方向に並進しないように、十分に高い必要がある。
【0030】
さらに、公知のドライブシャフト26は、特に相対的に回転速度の高い回転張力下に置かれた場合、および血液等の流体環境で回転するインペラ20、アテレクトミーの研磨ヘッド、または血栓切除装置のような遠位の負荷を受けた場合、自然にわずかに長くなる傾向があってよい。この現象は「構造的伸張」として公知である。このドライブシャフト26の構造的伸張または伸びは、回復可能または可逆的でないかもしれず、インペラ20が回転中により自由に軸方向に動くようになる、すなわち、結果として、インペラ20は、ここで伸ばされているドライブシャフト26によって所望の軸方向位置に堅固には保持されない場合がある。この問題を軽減するために、ドライブシャフト26には、最終的な血液ポンプ装置100に組み込まれる前に、少なくとも1回の伸張および弛緩サイクルを備える周期的な伸張工程を施してもよい。例えば、ドライブシャフト26は、上記で説明した所定の組込み引張力の目標の例えば約2倍よりも大きい、または場合によっては2倍超または2倍未満の、軸方向に加えられる力によって、伸張されるか、または伸ばされてもよく、その後、伸張張力は緩やかに解放される。完全に弛緩すると、1回のサイクルが完了する。この工程は、ドライブシャフト26の構造的伸張の潜在性を最小限にする、および/または除去するために、例えば2~4回等、1回よりも多く繰り返してもよい。
【0031】
特定の実施形態では、ドライブシャフト26は、ドライブシャフト26の設置長さ、すなわち、モータシャフト18の取り付け部およびインペラシャフト22の取り付け部が軸方向位置に固定されている場合のこれらの取り付け部間のドライブシャフト26の長さよりも長い長さまでドライブシャフト26を軸方向に伸張するのに十分な、軸方向に加えられる力を加えることによって、説明したように単に周期的に伸張すればよい。
【0032】
構造的伸張を最小限にする、または排除する周期的な伸張は、単独で行われてもよいし、上述した組込み張力変形工程と併用して行われてもよい。
【0033】
上述した周期的な伸張工程および関連する恩恵は、回転式アテレクトミーおよび血栓切除術のドライブシャフトに容易に適用されることを、当業者は理解するであろう。2021年8月20日に出願され、「インペラの作動領域内に非対称質量分布を有する血栓および/または軟性プラークの除去のためのシステム、方法および装置(Systems, Methods and Devices for Removal of Thrombus and/or Soft Plaque with Asymmetric Mass Distribution within Working Region of Impeller)」と題された米国特許出願第17/407、468号には、回転ドライブシャフトを有する血栓切除システムの一例が開示され、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれている。さらに、2019年10月31日に発行された米国特許第10、517、631号には、回転式アテレクトミー装置の一例が開示され、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0034】
図2は、伸張目標力を決定するために組込み張力の目標を使用してドライブシャフトの構造的伸張の最小化および/または除去のための周期的な伸張工程を施したドライブシャフトの時間分析を示す。このように、対象となるドライブシャフトは、さらなる組立てのためにドライブシャフトを受け入れる前に、例えば組込み張力の2倍等の目標力まで、1回以上伸張される。目標力は、組込み張力の2倍よりも大きくても、2倍に等しくても、または2倍未満でもよく、上記のように、周期的な伸張は、要求される結果を達成するために1回または複数回行ってもよい。例えば、周期的な伸張は、組立て前にシャフトを軸方向に200~600gまで伸張し、0gに戻すことを1~8サイクル行うことを含んでもよい。
図2は周期的な伸張1および伸張2の一例を示しており、アセンブリの回転軸が直線状に保たれているとき、シャフトに175g±20gの伸張張力がかかるように、軸方向に加えられる力がシャフトに与えられる。加えて、ドライブシャフトは、組込み張力の目標に関係なく伸張されてよく、上述のようにドライブシャフトの設置長さよりも長い長さまで単に伸張されてもよい。
【0035】
図3および4は、遠位セクション34のより高いばね定数に対してより低いばね定数を有する近位セクション32を備えたドライブシャフト26を示しており、遠位セクションのより高いばね定数は、より低いばね定数の近位セクションと比べて、遠位セクションを伸張および短縮しにくくする。ドライブシャフト26は、
図1に関連して説明したものと同様に使用されてもよく、したがって、そこで説明されている接続部およびシステム100の構成要素は
図3および4にも適用されることが理解される。概して、近位セクション32の長さは相対的に短くてよく、モータのロータ18から遠位に離れるように延び、場合によってはモータマニホールド12から遠位に短い距離伸びている。
【0036】
相対的に高いばね定数を有する遠位セクション34は、したがって、上述のように近位セクション32から延びてインペラシャフト22と接続している。ドライブシャフト26の遠位セクション34のより高いばね定数は、より良好な疲労を与え、ドライブシャフト26の近位セクション32よりもずっと長い長さに延びるため望ましく、説明したように、遠位セクション34は、近位セクション32よりも伸びまたは短縮に対して強い。本明細書中に説明されているばね定数の差は、本質的に異なるばね定数を有する材料を提供すること、近位セクションに比べてより密度の高いワイヤ糸の巻きを遠位セクションに提供すること、遠位端に逆向きに巻かれた糸を提供すること、遠位端内の1つ以上の隣接するワイヤコイルを接続して、それが離れて伸張することを防止すること、をはじめとする様々な方法で実現され得るが、これに限定されるものではない。
【0037】
図3および4に示すように、上述の好ましくない構造的伸張を除去または軽減するするために、近位セクション32の長さおよび/または遠位セクション34の長さよりも短い長さからなる少なくとも1つのハイポチューブ36を、例えばスエージ加工または他の公知の取り付け方法で、ドライブシャフト26上に取り付けてもよい。
図3のように、ハイポチューブは、相対的により低いばね定数の近位セクション32および/または遠位セクション34のドライブシャフト26の複数のワイヤ巻線または糸の上に取り付けられている。近位セクション32に適用されると、ハイポチューブ36により覆われた近位セクション32の領域、例えばドライブシャフト26のワイヤ糸が軸方向位置で効果的に固定されるため、回転中に伸ばされ得る近位セクション32の長さが短縮される。同様に、より高いばね定数の遠位セクションも、遠位セクションの一部分の上に取り付けられた1つ以上のハイポチューブを備えていてもよく、それにより、ハイポチューブがその下にあるドライブシャフトのワイヤ巻線またはコイルを軸方向位置に固定するため、回転中に伸ばされ得る遠位セクションの長さを減少させる。これらのハイポチューブ36はまた、特定の実施形態において、ドライブシャフトに組み込まれた組込み引張力の損失に抵抗する、および/またはそれを最小限に抑えるように機能する。遠位セクション34に沿って間隔を空けた位置に1つ以上のハイポチューブ36を設けることにより、同じ効果が実現され得る。場合によっては、
図3に示すように、ハイポチューブ36は、近位セクション32および遠位セクションの両方に重なっているか、またはまたがっていてもよい。
【0038】
実施形態によっては、ハイポチューブ36は、例えば、ドライブシャフトのばね定数がその長さに沿って同じである
図1のドライブシャフト26において用いられてもよい。
【0039】
図3のように2つ以上のハイポチューブ36が使用される場合、隣接するハイポチューブ36の間には距離がある。間隔を空けて配置されたハイポチューブ36により、ドライブシャフト26は、上記の利点を提供しながら、蛇行した血管系を横断するのに役立つ良好な曲げ、可撓特性を有することができる。
【0040】
図4は、追加的な構造である1つ以上のマンドレル38を示し、これは、近位セクション32でドライブシャフトの管腔内に配置され、スエージングまたは他の公知の方法によって管腔を画定するドライブシャフト26の内表面に取り付けられており、それによって、軸方向位置に固定されたマンドレル38に取り付けられたドライブシャフト26の部分を効果的に固定する。これらのマンドレル38は、ハイポチューブ36に覆われていない領域に設けられて、より低いばね定数の近位セクション32において、曲げおよび/または伸びおよび/または組込み引張力の低減に対する追加的な支持および抵抗を提供してもよい。加えて、マンドレル38の存在は、ドライブシャフト26のループ形成および/または巻き付きによってドライブシャフト26がそれ自体に巻き付くことに抵抗する。示されているように、ドライブシャフト26は間隔を空けて配置されたマンドレル38の間の領域で伸張することができるので、隣接するマンドレル38の間には、ドライブシャフト26の近位セクション32がそのより低いばね定数を保つことができる距離があってもよい。患者の血管系の横断を支援する曲げ能力を提供すること。マンドレル38はまた、遠位セクション34においても同じ効果で使用され得る。
【0041】
ハイポチューブは、記載された目的および利点を達成するために、マンドレルと共に、またはマンドレルなしで使用してもよい。同様に、マンドレル38は、記載された利点を達成するために、ハイポチューブ36と共に、またはハイポチューブ36なしで使用してもよい。
【0042】
当業者は、本明細書に提供されるハイポチューブおよび/またはマンドレルの開示が、回転式アテレクトミーおよび/または血栓切除装置に使用される細長いドライブシャフトに記載の利点を提供するために容易に適用されることを理解するであろう。
【0043】
本発明および本明細書に記載されたその用途の説明は、例示的なものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。様々な実施形態の構成は、この発明の解釈内で他の実施形態と組み合わされてもよい。本明細書に開示された実施形態の変形および修正が可能であり、実施形態の様々な要素の実用的な代替物および等価物が、この特許文献の研究の上、当業者に理解され得る。本明細書に開示された実施形態のこれらのおよび他の変形ならびに修正は、本発明の範囲および精神から逸脱することなくなされ得る。
【国際調査報告】