(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-13
(54)【発明の名称】呼吸器合胞体ウイルスおよび他のパラミクソウイルスに対する抗体およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240205BHJP
C07K 16/10 20060101ALI20240205BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240205BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240205BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240205BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240205BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240205BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240205BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240205BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240205BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240205BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/10 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
C12P21/08
A61K39/395 S
A61P31/14
A61P11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547808
(86)(22)【出願日】2022-02-08
(85)【翻訳文提出日】2023-10-06
(86)【国際出願番号】 US2022015652
(87)【国際公開番号】W WO2022173745
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521268141
【氏名又は名称】ヒューマブス・バイオメッド・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】Humabs BioMed SA
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】コルティ,ダヴィデ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA14
4C085BA57
4C085CC08
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、パラミクソウイルスに結合し、パラミクソウイルスによる感染を中和することができる抗体を提供する。パラミクソウイルスは、例えば、呼吸器合胞体ウイルス、メタニューモウイルス、またはマウスの肺炎ウイルスであることができる。抗体は、抗体のインビボ安定性、抗体の1つまたは複数のエフェクター機能、またはその両方を改善するFc領域の修飾を含む。パラミクソウイルス感染を予防および/または処置するための抗体組成物、該抗体をコードするポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、および該抗体の使用方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む抗体:
(i)それぞれ配列番号1のアミノ酸配列を有する2つの重鎖ポリペプチド;および
(ii)それぞれ配列番号4のアミノ酸配列を有する2つの軽鎖ポリペプチド。
【請求項2】
以下を含む抗体:
(i)それぞれ配列番号2のアミノ酸配列を有する2つの重鎖ポリペプチド;および
(ii)それぞれ配列番号4のアミノ酸配列を有する2つの軽鎖ポリペプチド。
【請求項3】
以下を含む抗体:
(i)それぞれ配列番号3のアミノ酸配列を有する2つの重鎖ポリペプチド;および
(ii)それぞれ配列番号4のアミノ酸配列を有する2つの軽鎖ポリペプチド。
【請求項4】
以下を含む抗体:
(i)それぞれ配列番号6のアミノ酸配列を含む2つの重鎖ポリペプチド;および
(ii)それぞれ配列番号4のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖ポリペプチド。
【請求項5】
以下を含む抗体:
(i)それぞれ配列番号7のアミノ酸配列を含む2つの重鎖ポリペプチド;および
(ii)それぞれ配列番号4のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖ポリペプチド。
【請求項6】
以下を含む抗体:
(i)それぞれ配列番号8のアミノ酸配列を含む2つの重鎖ポリペプチド;および
(ii)それぞれ配列番号4のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖ポリペプチド。
【請求項7】
以下をコードする単離されたポリヌクレオチド:
(i)請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体;
(ii)請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体の重鎖;
(iii)請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体の軽鎖;または
(iv)請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体の重鎖および請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体の軽鎖。
【請求項8】
該ポリヌクレオチドがDNAまたはRNAを含み、所望により該RNAがmRNAを含み、さらに所望により該mRNAが修飾ヌクレオシド、キャップ-1構造、キャップ-2構造、またはそれらの任意の組み合わせを含む、および/またはプソイドウリジン、N6-メチルアデノンシン、5-メチルシチジン、2-チオウリジン、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項7に記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
請求項7または8に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項10】
請求項7または8に記載のポリヌクレオチドまたは請求項9に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体、請求項7または8に記載のポリヌクレオチド、請求項9に記載のベクター、および/または請求項10に記載の宿主細胞、ならびに薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤を含む、組成物。
【請求項12】
対象においてパラミクソウイルス感染症を予防する方法であって、有効量の請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体;請求項7または8に記載のポリヌクレオチド;請求項9に記載のベクター;請求項10に記載の宿主細胞;および/または請求項11に記載の組成物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項13】
対象においてパラミクソウイルス感染症を処置する方法であって、有効量の請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体;請求項7または8に記載のポリヌクレオチド;請求項9に記載のベクター;請求項10に記載の宿主細胞;および/または請求項11に記載の組成物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項14】
パラミクソウイルスが、呼吸器合胞体ウイルス、メタニューモウイルス、マウス肺炎ウイルス、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
対象においてパラミクソウイルス感染症を予防する方法において使用するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体、請求項7または8に記載のポリヌクレオチド、請求項9に記載のベクター、請求項10に記載の宿主細胞、および/または請求項11に記載の組成物であって、ここで所望により、パラミクソウイルスは、呼吸器合胞体ウイルス、メタニューモウイルス、マウス肺炎ウイルス、またはそれらの任意の組み合わせを含む、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、および/または組成物。
【請求項16】
対象においてパラミクソウイルス感染症を処置する方法において使用するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体、請求項7または8に記載のポリヌクレオチド、請求項9に記載のベクター、請求項10に記載の宿主細胞、および/または請求項11に記載の組成物であって、ここで所望により、パラミクソウイルスは、呼吸器合胞体ウイルス、メタニューモウイルス、マウス肺炎ウイルス、またはそれらの任意の組み合わせを含む、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、および/または組成物。
【請求項17】
対象においてパラミクソウイルス感染を予防するための薬剤の製造に使用するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体、請求項7または8に記載のポリヌクレオチド、請求項9に記載のベクター、請求項10に記載の宿主細胞、および/または請求項11に記載の組成物であって、ここで所望により、パラミクソウイルスが呼吸器合胞体ウイルス、メタニューモウイルス、マウス肺炎ウイルス、またはそれらの任意の組み合わせを含む、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、および/または組成物。
【請求項18】
対象においてパラミクソウイルス感染症を処置するための薬剤の製造に使用するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体、請求項7または8に記載のポリヌクレオチド、請求項9に記載のベクター、請求項10に記載の宿主細胞、および/または請求項11に記載の組成物であって、ここで所望により、パラミクソウイルスが呼吸器合胞体ウイルス、メタニューモウイルス、マウス肺炎ウイルス、またはそれらの任意の組み合わせを含む、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、および/または組成物。
【請求項19】
抗体を産生するのに十分な条件下および十分な時間、抗体を発現する宿主細胞を培養することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体を作製する方法。
【請求項20】
該抗体を単離および/または精製することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表に関する声明
本出願に関連する配列表は、紙のコピーの代わりにテキスト形式で提供され、参照により明細書に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名前は、930485_434WO_SEQUENCE_LISTING.txtである。テキストファイルは29.7KBで、2022年2月7日に作成され、EFS-Web経由で電子的に送信されている。
【背景技術】
【0002】
背景
呼吸器合胞体ウイルス、メタニューモウイルス、またはマウスの肺炎ウイルスなどのパラミクソウイルスによる感染を予防または処置するための手段が必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【
図1】
図1は、カニクイザルにおけるヒトIgG1抗体RSV_Ab(HC:配列番号5;LC:配列番号4)およびRSV_Ab_MLNS(HC:配列番号1;LC:配列番号4)のインビボ安定性を評価する前臨床研究のデザインを示す。安定性は、血漿中の総ヒトIgG1濃度(ヒトIgG1 CH2に特異的なマウスモノクローナル抗体(mAb)を使用)と中和活性を相関させることによって決定された。
【
図2】
図2は、
図1に示した前臨床研究の結果を示す。薬物動態(PK)は、コーティングされたDs-Cav1F抗原によって捕捉された、ELISAによって測定された血漿中の抗体濃度として計算された。
【
図3】
図3は、
図1に示した前臨床研究のさらなる結果を示す。データは、RSV_Ab(上)およびRSV_Ab_MLNS(下)の血中PKを示す。RSV_Ab_MLNSを投与された3匹の動物のうち2匹では、PKを113日目まで継続した。定量化はDsCav1ベースの抗原捕捉ELISAに基づいており(動物はRSVに対して免疫がないことが事前にスクリーニングされた):(再)分析は全ての試料に対して並行して実施された。12匹の動物のいずれにも明らかな抗薬物抗体(ADA)応答はなかった(9匹の動物のうち3匹には、操作された抗FluA抗体が投与された)。
【0004】
詳細な説明
本明細書では、パラミクソウイルスに結合し、パラミクソウイルスによる感染を中和することができる抗体が提供される。パラミクソウイルスは、例えば、呼吸器合胞体ウイルス、メタニューモウイルス、またはマウスの肺炎ウイルスであり得る。抗体は、抗体のインビボ安定性、抗体の1つまたは複数のエフェクター機能、またはその両方を改善するFc内の修飾を含む。
【0005】
いくつかの実施形態において、対象への抗体の単回投与後(例えば、ゆっくりとした静脈内注入によって投与)、抗体は、抗体の中和EC50(最大半分の中和に必要な抗体の濃度)以上の濃度で、最大100、最大200、最大300、最大400、最大500、最大600、最大700、最大800、最大900、最大1,000、最大1,100、最大1,200、または最大1,300時間、またはそれ以上、対象の血漿中に存在する。中和EC50は、インビトロアッセイの結果および/またはインビボアッセイの結果によって知らされ得る。いくつかの実施形態において、抗体は、所望によりインビトロ中和アッセイおよび/またはカニクイザルにおいて、1mlあたり約20マイクログラム(例えば、20マイクログラムなど)のRSVに対する中和EC50を含む。
【0006】
例えば、いくつかの実施形態において、カニクイザルへの15mg/kgでの抗体の単回投与後(例えば、ゆっくりとした静脈内注入によって投与)、抗体は、中和EC50以上の濃度で、最大100、最大200、最大300、最大400、最大500、最大600、最大700、最大800、最大900、最大1,000、最大1,100、最大1,200、または最大1,300時間、またはそれ以上、対象の血漿中に存在する。
【0007】
いくつかの実施形態において、カニクイザルへの15mg/kgでの抗体の単回投与後(例えば、ゆっくりとした静脈内注入によって投与)、抗体は、1000時間超、1,050時間超、1,100時間超、1,150時間超、1,200時間超、1,250時間超、1300時間超、またはそれ以上、または最大約1,250時間、または最大1,300時間、または最大1,200時間、または最大1,100時間、または最大1,000時間の期間、1mlあたり20マイクログラム以上の濃度で血漿中に存在する。特定の実施形態において、抗体は、所望によりインビトロ中和アッセイおよび/またはカニクイザルにおいて、1mlあたり約20マイクログラム(例えば、20マイクログラムなど)のRSVに対する中和EC50を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、カニクイザルへの15mg/kgでの抗体の単回投与後(例えば、ゆっくりとした静脈内注入によって投与)、抗体は、10日超、20日超、30日超、40日超、50日超、または最大55日、または最大50日、または最大60日の期間、1mlあたり20マイクログラム以上の濃度で血漿中に存在する。特定の実施形態において、抗体は、所望によりインビトロ中和アッセイおよび/またはカニクイザルにおいて、1mlあたり約20マイクログラム(例えば、20マイクログラムなど)のRSVに対する中和EC50を含む。
【発明の概要】
【0009】
いくつかの実施形態において、カニクイザルへの15mg/kgでの抗体の抗体組成物の単回投与の113日後(例えば、ゆっくりとした静脈内注入によって投与)、抗体は、1mlあたり2マイクログラムと1mlあたり10マイクログラムの間、または1mlあたり2マイクログラムと1mlあたり7マイクログラムの間、または1mlあたり約2、約3、約4、約5、約6、または約7マイクログラムの濃度で血漿中に存在する。
【0010】
いくつかの実施形態において、カニクイザルへの15mg/kgでの抗体または抗体組成物の単回投与後(例えば、ゆっくりとした静脈内注入によって投与)、抗体は、表Aに従って所定の時間に任意の1つまたは複数の濃度で血漿中に存在する。
【0011】
【0012】
抗体の血漿濃度は、例えば、DsCav1ベースの抗原捕捉ELISAを使用して定量することができる。対象におけるウイルスまたはウイルス量(例えば、カニクイザルにおけるRSV)の存在は、既知の技術および例えば鼻腔スワブなどの試料を使用して評価することができる。
【0013】
いくつかの実施形態において、例えばゆっくりとした静脈内投与注入による15mg/kgの抗体または抗体組成物の単回投与後56日目に測定されるように、抗体は、カニクイザルにおいて抗薬物抗体(ADA)応答を誘導しない。
【0014】
また、抗体ベクター、宿主細胞、および関連組成物をコードするポリヌクレオチド、ならびに、対象においてパラミクソウイルス感染症を予防または処置(例えば、軽減、遅延、除去、または防止)するためにおよび/または対象においてパラミクソウイルス感染症を予防または処置するための薬剤の製造において抗体、核酸、ベクター、宿主細胞、および関連組成物を使用する方法が、提供される。
【0015】
本開示をより詳細に説明する前に、本明細書で使用される特定の語の定義を提供することが本開示の理解に役立つ。追加の定義は、本開示全体にわたって説明される。
【0016】
本明細書において、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率範囲、または整数範囲は、別段の指示がない限り、列挙された範囲内の任意の整数の値、および適切な場合にはその分数(整数の10分の1および100分の1など)を含むものと理解されるべきである。また、ポリマーサブユニット、サイズまたは厚さなどの任意の物理的特徴に関して本明細書に記載される任意の数値範囲は、別段の指示がない限り、記載された範囲内の任意の整数を含むものと理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「約」なる語は、別段の指示がない限り、指示された範囲、値、または構造の±20%を意味する。本明細書で使用される「a」および「an」なる語は、列挙された構成要素の「1つまたは複数」を指すことを理解されたい。代替案(例えば、「または」)の使用は、代替案のいずれか、両方、またはそれらの任意の組み合わせを意味すると理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「含む(include)」、「有する」、および「含む(comprise)」なる語は同義的に使用され、その語およびその変形は非限定的に解釈されることを意図している。
【0017】
「所望の」または「所望により」は、その後に説明される要素、構成要素、事象、または状況が発生しても発生しなくてもよく、その説明は、その要素、構成要素、事象、または状況が発生する状況およびそれらが発生しない状況を含むことを意味する。
【0018】
さらに、本明細書に記載される構造およびサブユニットの様々な組み合わせに由来する個々の構築物または構築物群は、あたかも各構築物または構築物群が個別に説明されたのと同じ程度まで本出願によって開示されることを理解するべきである。したがって、特定の構造または特定のサブユニットの選択は、本開示の範囲内である。
【0019】
「~から本質的になる」なる語は、「~を含む」と同等ではなく、請求項の特定の材料または工程、または請求項に記載された主題の基本的特徴に実質的に影響を与えないものを指す。例えば、ドメイン、領域、モジュール、またはタンパク質のアミノ酸配列が、組み合わせて、ドメイン、領域、モジュール、またはタンパク質の長さの最大20%(例えば、最大15%、10%、8%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%)に寄与し、およびドメイン、領域、モジュール、またはタンパク質の活性(例えば、結合タンパク質の標的結合親和性)に実質的に影響しない(すなわち、40%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、または1%以下等、活性を50%を超えて減少させない)拡張、欠失、突然変異、またはそれらの組み合わせ(例えば、アミノ末端またはカルボキシ末端またはドメイン間のアミノ酸)を含む場合、タンパク質のドメイン、領域、またはモジュール(結合ドメインなど)またはタンパク質は、特定のアミノ酸配列「から本質的になる」。
【0020】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸」は、天然アミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様の様式で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣物を指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝暗号によってコードされているアミノ酸のほか、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、O-ホスホセリンなど、後に修飾されるアミノ酸も含む。アミノ酸類似体は、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合したα-炭素、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを有する化合物を指す。かかる類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造を保持している。アミノ酸模倣物は、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様の方法で機能する化合物を指す。
【0021】
本明細書で使用される場合、「突然変異」は、それぞれ参照または野生型の核酸分子またはポリペプチド分子と比較したときの、核酸分子またはポリペプチド分子の配列の変化を指す。突然変異は、ヌクレオチドまたはアミノ酸の置換、挿入、欠失など、配列にいくつかの異なるタイプの変化を引き起こすことができる。
【0022】
「保存的置換」は、特定のタンパク質の結合特性に大きな影響を与えたり変化させたりしないアミノ酸置換を指す。一般に、保存的置換は、置換されたアミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基に置き換えられるものである。保存的置換は、次の群のいずれかに見られる置換を含む:群1:アラニン(AlaまたはA)、グリシン(GlyまたはG)、セリン(SerまたはS)、スレオニン(ThrまたはT);群2:アスパラギン酸(AspまたはD)、グルタミン酸(GluまたはZ);群3:アスパラギン(AsnまたはN)、グルタミン(GlnまたはQ);群4:アルギニン(ArgまたはR)、リジン(LysまたはK)、ヒスチジン(HisまたはH);群5:イソロイシン(IleまたはI)、ロイシン(LeuまたはL)、メチオニン(MetまたはM)、バリン(ValまたはV);および群6:フェニルアラニン(PheまたはF)、チロシン(TyrまたはY)、トリプトファン(TrpまたはW)。さらに、または代わりに、アミノ酸は、同様の機能、化学構造、または組成(例えば、酸性、塩基性、脂肪族、芳香族、または硫黄含有)によって保存的置換群に分類することができる。例えば、脂肪族群は、置換の目的で、Gly、Ala、Val、Leu、およびIleを含んでもよい。他の保存的置換群は以下を含む:硫黄含有:Metおよびシステイン(CysまたはC);酸性:Asp、Glu、Asn、およびGln;小さな脂肪族、非極性またはわずかに極性の残基:Ala、Ser、Thr、Pro、およびGly;極性の負に帯電した残基およびそのアミド:Asp、Asn、Glu、およびGln;極性の正に荷電した残基:His、Arg、およびLys;大きな脂肪族、非極性残基:Met、Leu、Ile、Val、およびCys;および大きな芳香族残基:Phe、Tyr、およびTrp。追加情報は、Creighton (1984) Proteins, W.H. Freeman and Companyに記載されている。
【0023】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」または「ポリペプチド」は、アミノ酸残基のポリマーを指す。タンパク質は、天然アミノ酸ポリマー、および1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、および非天然アミノ酸ポリマーに適用される。
【0024】
「核酸分子」または「ポリヌクレオチド」または「ポリ核酸」は、天然のサブユニット(例えば、プリンまたはピリミジン塩基)または非天然のサブユニット(例えば、モルホリン環)で構成されることができる、共有結合したヌクレオチドを含むポリマー化合物を指す。プリン塩基は、アデニン、グアニン、ヒポキサンチン、キサンチンを含み、ピリミジン塩基はウラシル、チミン、シトシンを含む。核酸分子は、mRNA、マイクロRNA、siRNA、ウイルスゲノムRNA、および合成RNAを含むポリリボ核酸(RNA)と、cDNA、ゲノムDNA、および合成DNAを含むポリデオキシリボ核酸(DNA)を含み、それらのいずれも単一でも二本鎖でもよい。一本鎖の場合、核酸分子はコード鎖であっても非コード(アンチセンス)鎖であってもよい。アミノ酸配列をコードする核酸分子は、同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列を含む。ヌクレオチド配列の一部のバージョンは、転写時または転写後機構によってイントロンが除去される範囲でイントロンを含んでもよい。言い換えれば、異なるヌクレオチド配列は、遺伝暗号の冗長性または縮重の結果として、またはスプライシングによって、同じアミノ酸配列をコードしてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド(例えば、mRNA)は、修飾ヌクレオシド、キャップ-1構造、キャップ-2構造、またはそれらの任意の組み合わせを含む。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、プソイドウリジン、N6-メチルアデノンシン、5-メチルシチジン、2-チオウリジン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、プソイドウリジンは、N1-メチルプソイドウリジンを含む。これらの特徴は当技術分野で知られており、例えば、修飾ヌクレオシドおよびmRNAの特徴が参照により本明細書に組み込まれる、Zhang et al. Front. Immunol., DOI=10.3389/fimmu.2019.00594 (2019); Eyler et al. PNAS 116(46): 23068-23071; DOI: 10.1073/pnas.1821754116 (2019); Nance and Meier, ACS Cent. Sci. 2021, 7, 5, 748-756; doi.org/10.1021/acscentsci.1c00197 (2021), および van Hoecke and Roose, J. Translational Med 17:54 (2019); https://doi.org/10.1186/s12967-019-1804-8を参照されたい。
【0026】
「単離された」なる語は、材料がその元の環境(例えば、それが天然に存在する場合には自然環境)から除去されることを意味する。例えば、生きた動物に存在する天然の核酸またはポリペプチドは単離されないが、同じ核酸またはポリペプチドが自然系の共存物質の一部または全てから分離されて単離される。かかる核酸はベクターの一部である可能性がある、および/またはかかる核酸またはポリペプチドは組成物(例えば、細胞溶解物)の一部である可能性があり、そしてかかるベクターまたは組成物が核酸またはポリペプチドの自然環境の一部ではないという点で依然として単離される。「単離された」は、いくつかの実施形態において、対象の外部、例えば人体の外部にある抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、または組成物を表すこともできる。
【0027】
「遺伝子」なる語は、ポリペプチド鎖の生成に関与するDNAまたはRNAのセグメントを意味し;特定の状況において、コード領域の前後の領域(例えば、5’非翻訳領域(UTR)および3’UTR)、および個々のコードセグメント(エクソン)間の介在配列(イントロン)を含む。
【0028】
本明細書で使用される場合、「操作された」、「組換え」、または「非天然」なる語は、少なくとも1つの遺伝子改変を含むか、または遺伝子導入によって修飾された生物、微生物、細胞、核酸分子、またはベクターを指し、ここでかかる改変または修飾は遺伝子工学(すなわち人間の介入)によって導入される。かかる生物、微生物、細胞、核酸分子、またはベクターは、「修飾された」と表現することもできる。遺伝子改変は、例えば、機能的RNA、タンパク質、融合タンパク質または酵素をコードする発現可能な核酸分子を導入する修飾、または他の核酸分子の付加、欠失、置換、または細胞の遺伝物質の他の機能的破壊を含む。追加の修飾は、例えば、修飾によってポリヌクレオチド、遺伝子、またはオペロンの発現が変化する非コード調節領域を含む。操作された非天然核酸分子によってコードされるポリペプチドは、「操作された」ポリペプチドとして記載されることができる。
【0029】
本明細書で使用される場合、「異種」または「非内因性」または「外因性」は、宿主細胞または対象にネイティブでない遺伝子、タンパク質、化合物、核酸分子、または活性、または改変された宿主細胞または対象にネイティブな任意の遺伝子、タンパク質、化合物、核酸分子、または活性を指す。異種、非内因性、または外因性は、ネイティブおよび改変された遺伝子、タンパク質、化合物、または核酸分子との間で構造、活性、またはその両方が異なるように突然変異または改変された遺伝子、タンパク質、化合物、または核酸分子を含む。特定の実施形態において、異種、非内因性、または外因性の遺伝子、タンパク質、または核酸分子(例えば、受容体、リガンドなど)は、宿主細胞または対象にとって内因性ではなく、かかる遺伝子をコードする核酸であってもよい。タンパク質または核酸分子は、結合、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーションなどによって宿主細胞に追加されていてもよく、追加された核酸分子は宿主細胞のゲノムに組み込まれてもよく、または染色体外遺伝物質として存在することができる(例えば、プラスミドまたは他の自己複製ベクターとして)。「相同な」または「ホモログ」なる語は、宿主細胞、種または株内で見出されるかまたはそれらに由来する遺伝子、タンパク質、化合物、核酸分子、または活性を指す。例えば、ポリペプチドをコードする異種または外因性のポリヌクレオチドまたは遺伝子は、ネイティブなポリヌクレオチドまたは遺伝子と相同であり、相同のポリペプチドまたは活性をコードしてもよいが、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、改変された構造、配列、発現レベル、またはそれらの任意の組み合わせを有してもよい。非内因性ポリヌクレオチドまたは遺伝子、ならびにコードされたポリペプチドまたは活性は、同じ種、異なる種、またはそれらの組み合わせに由来してもよい。
【0030】
特定の実施形態において、宿主細胞に固有の核酸分子またはその一部は、改変または変異されている場合には宿主細胞に対して異種であるとみなされるか、または宿主細胞に固有の核酸分子は、それが改変されている場合には異種であるとみなされ得る。異種発現制御配列で改変されているか、または宿主細胞本来の核酸分子に通常は関連付けられていない内因性発現制御配列で改変されている。さらに、「異種」なる語は、宿主細胞とは異なる、変化する、または内因性ではない生物学的活性を指すことができる。本明細書に記載されるように、複数の異種核酸分子は、別々の核酸分子として、個別に制御される複数の遺伝子として、ポリシストロン性核酸分子として、抗体(または他のポリペプチド)をコードする単一の核酸分子として、またはそれらの任意の組み合わせとして宿主細胞中に導入することができる。
【0031】
本明細書で使用される場合、「内因性」または「天然」なる語は、宿主細胞または対象に通常存在するポリヌクレオチド、遺伝子、タンパク質、化合物、分子、または活性を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、「発現」なる語は、遺伝子などの核酸分子のコード配列に基づいてポリペプチドが生成されるプロセスを指す。該プロセスは、転写、転写後制御、転写後修飾、翻訳、翻訳後制御、翻訳後修飾、またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。発現された核酸分子は、典型的には、発現制御配列(例えば、プロモーター)に作動可能に連結される。
【0033】
「作動可能に連結された」なる語は、一方の機能が他方の機能によって影響を受けるように、単一の核酸断片上で2つ以上の核酸分子が結合することを指す。例えば、プロモーターは、そのコード配列の発現に影響を及ぼすことができる場合(すなわち、コード配列がプロモーターの転写制御下にある場合)、コード配列と作動可能に連結される。「連結されていない」は、関連する遺伝要素が互いに密接に関連しておらず、一方の機能が他方に影響を及ぼさないことを意味する。
【0034】
本明細書に記載される場合、2つ以上の異種核酸分子は、別々の核酸分子として、個別に制御される複数の遺伝子として、ポリシストロン性核酸分子として、タンパク質(例えば、抗体の重鎖)をコードする単一の核酸分子として、またはそれらの任意の組み合わせで、宿主(例えばヒト)または宿主細胞中に導入することができる。2つ以上の異種核酸分子が宿主または宿主細胞に導入される場合、2つ以上の異種核酸分子は、単一の核酸分子として(例えば、単一のベクター上に)別々に導入され得ることが理解される。ベクターは、単一部位または複数部位、またはそれらの任意の組み合わせで宿主染色体に組み込まれる。参照される異種核酸分子またはタンパク質活性の数は、宿主または宿主細胞に導入された別個の核酸分子の数ではなく、コード化核酸分子の数またはタンパク質活性の数を指す。
【0035】
「構築物」なる語は、組換え核酸分子(または文脈が明確に示す場合には、本開示のタンパク質)を含有する任意のポリヌクレオチドを指す。(ポリヌクレオチド)構築物は、ベクター(例えば、細菌ベクター、ウイルスベクター)中に存在しても、ゲノムに組み込まれてもよい。「ベクター」は、別の核酸分子を輸送することができる核酸分子である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス、RNAベクター、または染色体、非染色体、半合成または合成核酸分子を含んでもよい直鎖または環状DNAまたはRNA分子であってもよい。本開示のベクターは、トランスポゾン系も含む(例えば、Sleeping Beauty、例えばGeurts et al., Mol. Ther. 8:108, 2003: Mates et al., Nat. Genet. 41:753, 2009を参照)。例示的なベクターは、自律複製できるもの(エピソームのベクター)、ポリヌクレオチドを細胞ゲノムに送達できるもの(例えば、ウイルスベクター)、またはそれらが結合している核酸分子を発現できるもの(発現ベクター)である。
【0036】
本明細書で使用される場合、「発現ベクター」または「ベクター」は、適切な宿主において核酸分子の発現をもたらすことができる適切な制御配列に作動可能に連結された核酸分子を含有するDNA構築物を指す。かかる制御配列は、転写をもたらすプロモーター、かかる転写を制御する任意のオペレーター配列、適切なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、および転写および翻訳の終結を制御する配列を含む。ベクターは、プラスミド、ファージ粒子、ウイルス、または単に潜在的なゲノム挿入物であってもよい。適切な宿主に形質転換されると、ベクターは複製して宿主ゲノムとは独立して機能するか、場合によってはゲノム自体に組み込まれるかまたはベクター中に含有されるポリヌクレオチドをベクター配列なしでゲノムに送達してもよい。本明細書において、「プラスミド」、「発現プラスミド」、「ウイルス」、および「ベクター」は、しばしば同じ意味で使用される。
【0037】
核酸分子を細胞に挿入する文脈における「導入された」なる語は、「トランスフェクション」、「形質転換」、または「形質導入」を意味し、真核細胞または原核細胞への核酸分子の組み込みへの言及を含む。核酸分子は、細胞のゲノム(例えば、染色体、プラスミド、プラスチド、またはミトコンドリアDNA)に組み込まれるか、自律レプリコンに変換されるか、または一時的に発現されてもよい(例えば、トランスフェクトされたmRNA)。
【0038】
特定の実施形態において、本開示のポリヌクレオチドは、ベクターの特定の要素に作動可能に連結されてもよい。例えば、連結されるコード配列の発現およびプロセシングに影響を与えるのに必要なポリヌクレオチド配列は、作動可能に連結されてもよい。発現制御配列は、適切な転写開始、転写終結、プロモーター、およびエンハンサー配列;スプライシングおよびポリアデニル化シグナルなどの効率的なRNA処理シグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を高める配列(すなわち、コザックコンセンサス配列);タンパク質の安定性を高める配列;およびおそらくタンパク質の分泌を増強する配列を含んでもよい。発現制御配列は、それらが目的の遺伝子と連続している場合、およびトランスでまたは離れて作用して目的の遺伝子を制御する発現制御配列である場合、機能的に連結されてもよい。
【0039】
特定の実施形態において、ベクターは、プラスミドベクターまたはウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクターまたはγ-レトロウイルスベクター)を含む。ウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、オルトミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病ウイルスおよび水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、麻疹およびセンダイ)などのマイナス鎖RNAウイルス、ピコルナウイルスおよびアルファウイルスなどのプラス鎖RNAウイルス、およびアデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1型および2型、エプスタイン・バーウイルス、サイトメガロウイルス)、およびポックスウイルス(例えば、ワクシニア、鶏痘、およびカナリア痘)などの二本鎖DNAウイルスを含む。他のウイルスは、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポバウイルス、ヘパドナウイルス、および肝炎ウイルスを含む。レトロウイルスの例は、鳥白血病肉腫、哺乳動物のC型、B型ウイルス、D型ウイルス、HTLV-BLV群、レンチウイルス、スプマウイルスを含む(Coffin, J. M., Retroviridae: The viruses and their replication, In Fundamental Virology, Third Edition, B. N. Fields et al., Eds., Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia, 1996)。
【0040】
「レトロウイルス」は、逆転写酵素を使用してDNAに逆転写されるRNAゲノムを有するウイルスであり、次いで逆転写されたDNAは宿主細胞ゲノムに組み込まれる。「ガンマレトロウイルス」は、レトロウイルス科の属を指す。ガンマレトロウイルスの例は、マウス幹細胞ウイルス、マウス白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ肉腫ウイルス、および鳥網内皮症ウイルスを含む。
【0041】
「レンチウイルスベクター」には、遺伝子送達のためのHIVベースのレンチウイルスベクターが含まれ、これは組み込み型または非組み込み型であり得、比較的大きなパッケージング能力を有し、さまざまな異なる細胞型に形質導入することができる。レンチウイルスベクターは、通常、3つ(パッケージング、エンベロープ、トランスファー)またはそれ以上のプラスミドをプロデューサー細胞に一時的にトランスフェクションした後に生成される。HIVと同様に、レンチウイルスベクターは、ウイルス表面の糖タンパク質と細胞表面の受容体との相互作用を通じて標的細胞に侵入する。侵入すると、ウイルスRNAはウイルス逆転写酵素複合体によって媒介される逆転写を受ける。逆転写の産物は二本鎖線状ウイルスDNAであり、これは感染細胞のDNAへのウイルス組み込みの基質となる。
【0042】
特定の実施形態において、ウイルスベクターはガンマレトロウイルス、例えばモロニーマウス白血病ウイルス(MLV)由来ベクターであることができる。他の実施形態において、ウイルスベクターは、より複雑なレトロウイルス由来ベクター、例えばレンチウイルス由来ベクターであり得る。HIV-1由来のベクターはこのカテゴリーに属する。他の例は、HIV-2、FIV、ウマ伝染性貧血ウイルス、SIV、およびMaedi-Visnaウイルス(ヒツジレンチウイルス)由来のレンチウイルスベクターを含む。導入遺伝子を含有するウイルス粒子を哺乳類宿主細胞に形質導入するためにレトロウイルスおよびレンチウイルスのウイルスベクターおよびパッケージング細胞を使用する方法は、当技術分野で既知であり、例えばU.S. Patent 8,119,772; Walchli et al., PLoS One 6:327930, 2011; Zhao et al., J. Immunol. 174:4415, 2005; Engels et al., Hum. Gene Ther. 14:1155, 2003; Frecha et al., Mol. Ther. 18:1748, 2010; および Verhoeyen et al., Methods Mol. Biol. 506:97, 2009において以前に記載されている。レトロウイルスおよびレンチウイルスベクター構築物および発現系も市販されている。例えばアデノウイルスベースのベクターおよびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベースのベクターを含むDNAウイルスベクター;アンプリコンベクター、複製欠損HSVおよび弱毒化HSVを含む単純ヘルペスウイルス(HSV)由来のベクターを含む、他のウイルスベクターも、ポリヌクレオチド送達に使用することができる (Krisky et al., Gene Ther. 5:1517, 1998)。
【0043】
本開示の組成物および方法とともに使用できる他のベクターは、バキュロウイルスおよびαウイルスに由来するベクターを含む。(Jolly, D J. 1999. Emerging Viral Vectors. pp 209-40 in Friedmann T. ed. The Development of Human Gene Therapy. New York: Cold Spring Harbor Lab)、またはプラスミドベクター(sleeping beautyまたは他のトランスポゾンベクターなど)。
【0044】
ウイルスベクターゲノムが宿主細胞内で別個の転写物として発現される複数のポリヌクレオチドを含む場合、ウイルスベクターはまた、バイシストロン性またはマルチシストロン性発現を可能にする2つ(またはそれ以上)の転写物の間に追加の配列を含んでもよい。ウイルスベクターで使用されるかかる配列の例は、内部リボソーム侵入部位(IRES)、フリン切断部位、ウイルス2Aペプチド、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0045】
対象への直接投与のためのDNAベースの抗体をコードするプラスミドベクターを含むプラスミドベクターは、本明細書にさらに記載される。
【0046】
本明細書で使用される場合、「宿主」なる語は、目的のポリペプチド(例えば、本開示の抗体)を産生するための異種核酸分子による遺伝子改変の標的となる細胞または微生物を指す。「宿主」は、抗体をコードする核酸が投与される対象、および/または例えば呼吸器合胞体ウイルス、メタニューモウイルス、またはマウスのニューモウイルスなどのパラミクソウイルスを有する対象を指すこともできる。
【0047】
宿主細胞は、ベクターを受容するか、核酸の組み込みまたはタンパク質を発現することができる任意の個々の細胞または細胞培養物を含んでもよい。この語は、遺伝的または表現型的に同じであるか異なるかにかかわらず、宿主細胞の子孫も包含する。適切な宿主細胞はベクターに依存し、哺乳動物細胞、動物細胞、ヒト細胞、サル細胞、昆虫細胞、酵母細胞、および細菌細胞を含んでもよい。これらの細胞は、ウイルスベクターの使用、リン酸カルシウム沈殿による形質転換、DEAE-デキストラン、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、または他の方法によって、ベクターまたは他の物質を組み込むように誘導されてもよい。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2d ed. (Cold Spring Harbor Laboratory, 1989)を参照されたい。
【0048】
本明細書で使用される「抗原」または「Ag」は、免疫応答を引き起こす免疫原性分子を指す。この免疫応答は、抗体産生、特定の免疫担当細胞の活性化、補体の活性化、抗体依存性細胞毒性、またはそれらの任意の組み合わせに関与してもよい。抗原(免疫原性分子)は、例えば、ペプチド、糖ペプチド、ポリペプチド、糖ポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖、脂質等であり得る。抗原が合成、組換え生産、または生体試料に由来することができることは、容易に明らかである。1つまたは複数の抗原を含有することができる例示的な生物学的試料は、組織試料、糞便試料、細胞、体液、またはそれらの組み合わせを含む。抗原は、抗原を発現するように改変または遺伝子操作された細胞によって産生される。抗原はまた、パラミクソウイルス(例えば、Fタンパク質またはその一部)中に、例えばビリオン中に存在するか、またはパラミクソウイルスに感染した細胞の表面上に発現または提示されることができる。
【0049】
「エピトープ」または「抗原性エピトープ」なる語は、免疫グロブリン、または他の結合分子、ドメイン、またはタンパク質などの同族結合分子によって認識され、特異的に結合される任意の分子、構造、アミノ酸配列、またはタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は一般に、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面群を含有し、特定の三次元構造特性ならびに特定の電荷特性を有することができる。抗原がペプチドまたはタンパク質であるかまたはそれを含む場合、エピトープは、連続したアミノ酸(例えば、線状エピトープ)から構成されることができるか、またはタンパク質のフォールディングによって近接するタンパク質の異なる部分または領域からのアミノ酸(例えば、不連続または立体構造のエピトープ)、またはタンパク質のフォールディングに関係なく近接している非連続アミノ酸から構成されることができる。
【0050】
抗体
いくつかの実施形態において、本開示は、以下を含む単離抗体を提供する:(i)それぞれ配列番号1のアミノ酸配列を有する(すなわち、それを含むまたはからなる)2つの重鎖ポリペプチドが;および(ii)それぞれ配列番号4のアミノ酸配列を有する(すなわち、それを含むまたはからなる)2つの軽鎖ポリペプチド。
【0051】
他の実施形態において、本開示は、以下を含む単離抗体を提供する:(i)それぞれ配列番号2のアミノ酸配列を有する(すなわち、それを含むまたはからなる)2つの重鎖ポリペプチド;および(ii)それぞれ配列番号4のアミノ酸配列を有する(すなわち、それを含むまたはからなる)2つの軽鎖ポリペプチド。
【0052】
さらに他の実施形態において、本開示は、以下を含む単離抗体を提供する:(i)それぞれ配列番号3のアミノ酸配列を有する(すなわち、それを含むまたはからなる)2つの重鎖ポリペプチド;および(ii)それぞれ配列番号4のアミノ酸配列を有する(すなわち、それを含むまたはからなる)2つの軽鎖ポリペプチド。
【0053】
いくつかの実施形態において、本開示は、以下を含む単離抗体を提供する:(i)それぞれ配列番号6のアミノ酸配列を含む2つの重鎖ポリペプチド;および(ii)それぞれ配列番号4のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖ポリペプチド。
【0054】
いくつかの実施形態において、本開示は、以下を含む単離抗体を提供する:(i)それぞれ配列番号7のアミノ酸配列を含む2つの重鎖ポリペプチド;および(ii)それぞれ配列番号4のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖ポリペプチド。
【0055】
いくつかの実施形態において、本開示は、以下を含む単離抗体を提供する:(i)それぞれ配列番号8のアミノ酸配列を含む2つの重鎖ポリペプチド;および(ii)それぞれ配列番号4のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖ポリペプチド。
【0056】
本開示の抗体の2つの重鎖ポリペプチドは、結合してホモ二量体を形成する。2つの重鎖ポリペプチドのうちの1つは、2つの軽鎖ポリペプチドのうちの1つとさらに会合し、2つの重鎖ポリペプチドのうちの他方は、2つの軽鎖ポリペプチドのうちの他方とさらに会合する。
【0057】
抗体はパラミクソウイルスに結合し、パラミクソウイルスによる感染を中和することができる。パラミクソウイルスは、例えば、呼吸器合胞体ウイルス、メタニューモウイルス、またはマウスの肺炎ウイルスであることができる。
【0058】
本明細書で使用される場合、「中和抗体」は、宿主における感染を開始および/または永続させる病原体の能力を中和、すなわち予防、阻害、軽減、妨害、または妨害することができる抗体である。「中和抗体」および「中和する抗体」または「中和する抗体」なる語は、本明細書では互換的に使用される。本明細書で開示される実施形態のいずれかにおいて、抗体は、インビトロ感染モデルおよび/またはインビボ動物感染モデルおよび/またはヒトにおけるパラミクソウイルス感染を予防および/または中和することができる。
【0059】
抗体技術の分野の当業者によって理解される語には、本明細書で明示的に別段の定義がない限り、それぞれ当技術分野で取得された意味が与えられる。例えば、「抗体」なる語は、本明細書では、ジスルフィド結合によって接続される少なくとも2つの重(H)鎖(HC;重鎖ポリペプチドとも呼ばれる)および2つの軽(L)鎖(LC;軽鎖ポリペプチドとも呼ばれる)(すなわち、二価の四量体分子としてのLC-HC-HC-LC)を含むインタクトな抗体を指す。この語は、IgGおよびそのサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgM、IgE、IgA、およびIgDを含む、任意のクラスまたはサブクラスの抗体を含む、インタクトな抗体または完全長の抗体を包含する。
【0060】
「VL」または「VL」および「VH」または「VH」なる語は、それぞれ、抗体軽鎖および抗体重鎖からの可変結合領域を指す。可変結合領域は、「相補性決定領域」(CDR)および「フレームワーク領域」(FR)として知られる、明確に定義された個別のサブ領域を含む。「相補性決定領域」および「CDR」なる語は、「超可変領域」または「HVR」と同義であり、一般に、抗原特異性および/または抗体の結合親和性を共に与える抗体可変領域内のアミノ酸配列を指し、ここで連続するCDR(すなわち、CDR1およびCDR2、CDR2およびCDR3)は、フレームワーク領域によって一次構造において互いに分離されている。各可変領域には3つのCDRがある(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3、それぞれCDRHおよびCDRLとも呼ばれる)。特定の実施形態において、抗体VHは、以下の4つのFRおよび3つのCDRを含み:FR1-HCDR1-FR2-HCDR2-FR3-HCDR3-FR4;抗体VLは、以下の4つのFRおよび3つのCDRを含む:FR1-LCDR1-FR2-LCDR2-FR3-LCDR3-FR4。一般に、VHおよびVLは共に、それぞれのCDRを介して抗原結合部位を形成する。しかしながら、場合によっては、VH単独、VL単独、または1、2、3、4、または5つのCDRが、抗原結合に関与する。
【0061】
CDR領域およびフレームワーク領域の番号付けは、例えば、Kabat、Chothia、EU、IMGT、およびAHo番号付けスキーム(例えば、Kabat et al., “Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services, Public Health Service National Institutes of Health, 1991, 5th ed.; Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987)を参照); Lefranc et al., Dev. Comp. Immunol. 27:55, 2003; Honegger and Pluckthun, J. Mol. Bio. 309:657-670 (2001);および例えば分子オペレーティング環境(MOE)ソフトウェア(www.chemcomp.com)を使用してChemical Computing Group(CCG)によって開発された抗体番号付け方法などの任意の既知の方法またはスキームに従ってよい。同等の残基位置に注釈を付けることができ、抗原受容体番号付けおよび受容体分類(ANARCI)ソフトウェアツールを使用して異なる分子を比較できる(2016, Bioinformatics 15:298-300)。したがって、1つの番号付けスキームに従って本明細書に提供される例示的な可変ドメイン(VHまたはVL)配列のCDRの同定は、異なる番号付けスキームを使用して決定される同じ可変ドメインのCDRを含む抗体を排除するものではない。
【0062】
「CL」なる語は、「免疫グロブリン軽鎖定常領域」または「軽鎖定常領域」、すなわち、抗体軽鎖からの定常領域を指す。「CH」なる語は、「免疫グロブリン重鎖定常領域」または「重鎖定常領域」を指し、これは抗体アイソタイプに応じて、CH1、CH2、およびCH3(IgA、IgD、IgG)、またはCH1、CH2、CH3、およびCH4ドメイン(IgE、IgM)にさらに分割できる。抗体重鎖のFc領域については、本明細書でさらに説明する。本開示の実施形態のいずれかにおいて、本開示の抗体は、CL、CH1、CH2、およびCH3を含む。
【0063】
「Fab」(抗原結合フラグメント)は、抗原に結合する抗体の一部であり、1つまたは複数の鎖間ジスルフィド結合を介して軽鎖に結合した重鎖の可変領域およびCH1を含む。各Fabフラグメントは抗原結合に関して一価である、すなわちそれは単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理により、二価の抗原結合活性を有し、依然として抗原を架橋することができる、ジスルフィド結合した2つのFabフラグメントにほぼ対応する単一の大きなF(ab’)2フラグメントが得られる。FabとF(ab’)2はどちらも「抗原結合フラグメント」の例である。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域からの1つまたは複数のシステインを含む、CH1ドメインのカルボキシ末端に追加の数残基を有する点でFabフラグメントと異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’の本明細書における名称である。F(ab’)2抗体フラグメントは元々、間にヒンジシステインを有するFab’フラグメントのペアとして生成された。抗体フラグメントの他の化学結合も知られている。
【0064】
「Fv」は、完全な抗原認識部位および抗原結合部位を含有する小さな抗体フラグメントである。このフラグメントは通常、1つの重鎖可変領域ドメインと1つの軽鎖可変領域ドメインが緊密に非共有結合的に結合した二量体から構成される。しかしながら、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのCDRのみ含むFvの半分)であっても、時々結合部位全体よりも低い親和性ではあるものの、抗原を認識して結合する能力を有する。
【0065】
現在開示された抗体は、Fcポリペプチドを含む。「Fc」二量体は、ジスルフィドによって結合された両方の抗体H鎖のカルボキシ末端部分(すなわち、IgGのCH2およびCH3ドメイン)を構成する。抗体の「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然配列Fc領域またはアミノ酸配列変異体Fc領域)に起因する生物学的活性を指し、抗体アイソタイプによって異なる。抗体エフェクター機能の例は、以下を含む:C1q結合および補体依存性細胞毒性;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)の下方制御;およびB細胞の活性化。
【0066】
いくつかの実施形態において、抗体は、以下(ヒトIgG1を参照するEU番号)から選択される変異を含むFCポリペプチドを含む:G236A;S239D;A330L;およびI332E;または同じものの任意の2つ以上を含む組み合わせ;例えば、S239D/I332E;S239D/A330L/I332E;G236A/S239D/I332E;G236A/A330L/I332E(本明細書では「GAALIE」とも呼ばれる);またはG236A/S239D/A330L/I332E。いくつかの実施形態において、Fcポリペプチドまたはその断片は、S239Dを含まない。いくつかの実施形態において、Fcポリペプチドまたはその断片は、239位にSを含む。GAALIEは、FcRγIIaおよびFcγRIIIaに対する結合親和性を向上させ、FcγRIIbに対する結合親和性を低下させる。
【0067】
特定の実施形態において、Fcポリペプチドは、(例えば、約6.0のpHで)FcRnに対する結合親和性を改善する(例えば、FcRnへの結合を増強する)1つまたは複数のアミノ酸修飾を含み、いくつかの実施形態において、それによってFcポリペプチドを含む分子のインビボ半減期を延長する(例えば、それ以外は同じであるが修飾を含まない参照Fcポリペプチドまたは抗体と比較して)。特定の実施形態において、FCポリペプチドは、IgG(例えば、IgG1)Fcおよび半減期を拡張する突然変異を含むかまたはそれに由来し、半減期延長変異は、以下のいずれか1つまたは複数を含む:N434S;N434H;N434A;N434S;M252Y;S254T;T256E;T250Q;P257IQ311I;D376V;T307A;E380A(ヒトIgG1を参照するEU番号付け)。特定の実施形態において、半減期延長変異は、M428L/N434S(本明細書では「MLNS」または「LS」とも呼ばれる)を含む。特定の実施形態において、半減期延長変異は、M252Y/S254T/T256Eを含む。特定の実施形態において、半減期延長変異は、T250Q/M428Lを含む。特定の実施形態において、半減期延長変異は、P257I/Q311Iを含む。特定の実施形態において、半減期延長変異は、P257I/N434Hを含む。特定の実施形態において、半減期延長変異は、D376V/N434Hを含む。特定の実施形態において、半減期延長変異は、T307A/E380A/N434Aを含む。
【0068】
いくつかの実施形態において、抗体は、置換変異M428L/N434Sを含むFcポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、置換変異G236A/A330L/I332Eを含むFcポリペプチドを含む。特定の実施形態において、抗体は、G236A変異、A330L変異、およびI332E変異(GAALIE)を含み、S239D変異を含まない(例えば、239位に天然のSを含む)(例えば、IgG1)Fcポリペプチドを含む。特定の実施形態において、抗体は、置換変異:M428L/N434SおよびG236A/A330L/I332Eを含み、所望によりS239Dを含まないFcポリペプチドを含む。特定の実施形態において、抗体は、置換変異:M428L/N434SおよびG236A/S239D/A330L/I332E(ヒトIgG1を参照するEU番号付け)を含むFcポリペプチドを含む。
【0069】
例えば、哺乳動物細胞株での産生により抗体重鎖ポリペプチドの1つまたは複数のC末端リシンが除去されることができることが理解される(例えば、Liuetal.mAbs6(5):1145-1154(2014)を参照)。したがって、本開示の抗体は、C末端リジン残基が存在するかまたは存在しない重鎖ポリペプチドを含むことができる。換言すれば、重鎖ポリペプチドのC末端残基がリシンではない実施形態、およびリシンがC末端残基である実施形態が、包含される。特定の実施形態において、組成物は複数の本開示の抗体を含み、ここで1つまたは複数の抗体は重鎖ポリペプチドのC末端にリジン残基を含まず、そして1つまたは複数の抗体は重鎖ポリペプチドのC末端にリジン残基を含む。
【0070】
したがって、いくつかの実施形態において、本開示は、以下を含む単離抗体を提供する:(i)それぞれ配列番号6、配列番号7、または配列番号8のアミノ酸配列を含む2つの重鎖ポリペプチド;および(ii)それぞれ配列番号4のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖ポリペプチド。
【0071】
特定の実施形態において、抗体はグリコシル化を変化させる変異を含み、グリコシル化を変化させる変異はN297A、N297Q、またはN297Gを含み、および/または抗体は部分的または完全に非グリコシル化されている、および/または部分的または完全にアフコシル化されている。宿主細胞株および部分的または完全に非グリコシル化された抗体、または部分的または完全に非フコシル化された抗体を作製する方法は既知である(例えば、PCT Publication No. WO 2016/181357; Suzuki et al. Clin. Cancer Res. 13(6):1875-82 (2007); Huang et al. MAbs 6:1-12 (2018)を参照)。抗体のフコシル化は、アミノ酸変異を導入してフコシル化部位を導入または破壊することによって、抗体をフコシル化する能力を欠く(または阻害されたかまたは損なわれた能力を有する)ように遺伝子操作された宿主細胞内で抗体を発現させることによって、宿主細胞が抗体をフコシル化する能力が損なわれる条件下(例えば、2-フルオロ-L-フコース(2FF)の存在下)で抗体を発現させること等によって、行うことができる。
【0072】
特定の実施形態において、抗体は:アフコシル化されている;抗体をフコシル化できないかまたは抗体をフコシル化する能力が阻害された宿主細胞内で産生されている;宿主細胞によるフコシル化を阻害する条件下で産生されている;またはそれらの任意の組み合わせである。
【0073】
特定の実施形態において、抗体は、対象において検出可能なレベルの抗体が見出されなくなった後(すなわち、投与後に抗体が対象から除去されたとき)であっても、対象においてインビボで継続的な保護を誘導することができる。かかる防御は、本明細書ではワクチン効果と呼ばれる。理論に束縛されるものではないが、樹状細胞は抗体と抗原の複合体を内部に取り込み、その後、抗原に対する内因性免疫応答を誘導または寄与すると考えられている。特定の実施形態において、抗体は、例えば、抗原に対するT細胞免疫を誘導し得る樹状細胞を活性化することができ、例えば、G236A、A330L、およびI332Eを含むFcにおける変異などの1つまたは複数の修飾を含む。
【0074】
本願明細書で開示される実施形態のいずれにおいても、抗体はモノクローナルであることができる。本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」(mAb)なる語は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は場合によっては少量存在する可能性のある自然に発生する突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は特異性が高く、単一の抗原部位に対して指向される。さらに、異なるエピトープに対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原の単一のエピトープに対するものである。モノクローナル抗体は、その特異性に加えて、他の抗体に汚染されずに合成できるという利益もある。「モノクローナル」なる語は、何らかの特定の方法による抗体の産生を必要とするものとして解釈されるべきではない。例えば、本発明において有用なモノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature 256:495 (1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって調製されてもよく、または細菌、真核動物、または植物細胞における組換えDNA法を使用して作製されてもよい(例えば、米国特許第4,816,567号を参照)。モノクローナル抗体はまた、例えばClackson et al., Nature, 352:624-628 (1991) およびMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)に記載される技術を使用してファージ抗体ライブラリーから単離されてもよい。モノクローナル抗体は、PCT公開番号WO2004/076677A2に開示されている方法を使用して得られてもよい。
【0075】
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体に存在する配列のみを含有する抗体である。しかしながら、本明細書で使用される場合、ヒト抗体は、本明細書に記載される修飾および変異配列を含む、天然に存在するヒト抗体(例えば、ヒトから単離された抗体)には見出されない残基または修飾を含んでもよい。これらは典型的に、抗体の性能をさらに改良または強化するために作成される。場合によっては、ヒト抗体は、トランスジェニック動物によって産生される。例えば、米国特許第5,770,429号;6,596,541および7,049,426を参照されたい。
【0076】
ポリヌクレオチド、ベクター、および宿主細胞
別の態様において、本開示は、本開示の抗体またはその一部(例えば、CDR、VH、VL、重鎖、または軽鎖)のいずれかをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。開示されるポリヌクレオチドは、例えば、抗体の重鎖、抗体の軽鎖、抗体の重鎖および軽鎖、または抗体の2つの重鎖および2つの軽鎖をコードするものを含む。
【0077】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、宿主細胞における発現のためにコドン最適化されている。既知のコード配列から、既知の技術およびツール、例えば、GenScript(登録商標)OptimiumGene(登録商標)ツールまたはGeneArt(登録商標)(ThermoFisher)によるGene Synthesisを使用して、コドン最適化を実施でき;例えばScholten et al., Clin. Immunol. 119:135, 2006)も参照されたい。コドン最適化配列は、部分的にコドン最適化された配列(すなわち、1つまたは複数のコドンが宿主細胞における発現のために最適化される)および完全にコドン最適化された配列を含む。
【0078】
本開示の抗体をコードするポリヌクレオチドは、例えば、遺伝暗号の縮重、およびスプライシングなどにより、同じ抗体を依然としてコードしながら、異なるヌクレオチド配列を有してもよいことも理解される。
【0079】
特定の実施形態において、抗体またはその一部をコードするポリヌクレオチドは、例えば宿主細胞における抗体またはその一部の発現のための他の配列および/または特徴を含むポリヌクレオチドに含まれることが理解される。例示的な特徴は、プロモーター配列、ポリアデニル化配列、シグナルペプチドをコードする配列(例えば、発現された抗体重鎖または軽鎖のN末端に位置する)などを含む。
【0080】
本願明細書で開示される実施形態のいずれにおいても、ポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)を含むことができる。いくつかの実施形態において、RNAはメッセンジャーRNA(mRNA)を含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、修飾ヌクレオシド、キャップ-1構造、キャップ-2構造、またはそれらの任意の組み合わせを含む。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、プソイドウリジン、N6-メチルアデノンシン、5-メチルシチジン、2-チオウリジン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、プソイドウリジンは、N1-メチルプソイドウリジンを含む。
【0082】
本明細書に開示されるポリヌクレオチドを含むかまたは含有するベクターも、提供される。ベクターは、本明細書に開示されるベクターのいずれか1つまたは複数を含むことができる。特定の実施形態において、抗体またはその一部をコードするDNAプラスミド構築物を含むベクターが、提供される(例えば、いわゆる「DMAb」;例えば、その抗体をコードするDNA構築物およびその投与を含む関連使用方法が参照により本明細書に組み込まれるMuthumani et al., J Infect Dis. 214(3):369-378 (2016); Muthumani et al., Hum Vaccin Immunother 9:2253-2262 (2013);Flingai et al., Sci Rep. 5:12616 (2015); および Elliott et al., NPJ Vaccines 18 (2017)を参照)。特定の実施形態において、DNAプラスミド構築物は、抗体の重鎖および軽鎖(またはVHおよびVL)をコードする単一のオープンリーディングフレームを含み、ここで重鎖をコードする配列および軽鎖をコードする配列は、プロテアーゼ切断部位をコードするポリヌクレオチドおよび/または自己切断ペプチドをコードするポリヌクレオチドによって所望により分離される。いくつかの実施形態において、抗体の置換成分は、単一のプラスミドに含まれるポリヌクレオチドによってコードされる。他の実施形態において、抗体の置換成分は、2つ以上のプラスミドに含まれるポリヌクレオチドによってコードされる(例えば、第1のプラスミドは、重鎖、VH、またはVH+CHをコードするポリヌクレオチドを含み、第2のプラスミドは、同族軽鎖、VL、またはVL+CLをコードするポリヌクレオチドを含む)。例示的な発現ベクターは、Invitrogen(登録商標)から入手可能なpVax1である。本開示のDNAプラスミドは、例えばエレクトロポレーション(例えば筋肉内エレクトロポレーション)によって、または適切な製剤(例えばヒアルロニダーゼ)を用いて対象に送達することができる。いくつかの実施形態において、本開示のベクターは、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。シグナルペプチドは、成熟抗体上に存在してもしなくてもよい(例えば、酵素的に切断されることができる)。いくつかの実施形態において、本開示のベクターは、ポリアデニル化シグナル配列を含む。
【0083】
いくつかの実施形態において、本開示のベクターは、CMVプロモーターを含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、抗体重鎖、VH、またはFd(VH+CH1)をコードする第1のポリヌクレオチド(例えば、mRNA)を対象に投与することと、同族抗体軽鎖、VL、またはVL+CLをコードする第2のポリヌクレオチド(例えば、mRNA)を対象に投与することとを含む方法が、提供される。
【0085】
いくつかの実施形態において、抗体の重鎖および軽鎖をコードするポリヌクレオチド(例えば、mRNA)が提供される。いくつかの実施形態において、抗体の2つの重鎖および2つの軽鎖をコードするポリヌクレオチド(例えば、mRNA)が提供される。例えば、抗体をコードするmRNA構築物、ベクター、および関連技術が参照により本明細書に組み込まれるLi, JQ., Zhang, ZR., Zhang, HQ. et al. Intranasal delivery of replicating mRNA encoding neutralizing antibody against SARS-CoV-2 infection in mice. Sig Transduct Target Ther 6, 369 (2021). https://doi.org/10.1038/s41392-021-00783-1を参照されたい。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、アルファウイルスレプリコン粒子(VRP)送達システムを介して対象に送達される。いくつかの実施形態において、レプリコンは、2つのサブゲノムプロモーターを含む修飾VEEVレプリコンを含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドまたはレプリコンは、抗体の重鎖(またはVH、またはVH+1)および軽鎖(またはVL、またはVL+CL)を同時に翻訳することができる。いくつかの実施形態において、かかるポリヌクレオチドまたはレプリコンを対象に送達することを含む方法が提供される。
【0086】
さらなる態様において、本開示は、本開示による抗体を発現する;または本開示によるベクターまたはポリヌクレオチドを含むかまたは含有する宿主細胞も提供する。
【0087】
かかる細胞の例は、真核細胞、例えば酵母細胞、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞;および大腸菌などの原核細胞などを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、細胞は哺乳動物細胞である。特定のかかる実施形態において、細胞は、CHO細胞(例えば、DHFR-CHO細胞(例えば、Urlaub et al., PNAS 77:4216 (1980))、ヒト胎児腎臓細胞(例えば、HEK293T細胞)、PER.C6細胞、Y0細胞、Sp2/0細胞などの哺乳動物細胞株である。NS0細胞、ヒト肝細胞、例えば、HepaRG細胞、骨髄腫細胞またはハイブリドーマ細胞。哺乳動物宿主細胞株の他の例は、マウスセルトリ細胞(例えば、TM4細胞)、SV40で形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7);ベビーハムスター腎細胞(BHK);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76);サル腎細胞(CV1);ヒト子宮頸癌細胞(HELA);ヒト肺細胞(W138));ヒト肝細胞(HepG2);イヌ腎細胞(MDCK;バッファローラット肝細胞(BRL3A);マウス乳腫瘍(MMT060562);TRI細胞;MRC5細胞;およびFS4細胞を含む。抗体産生適した哺乳動物宿主細胞株は、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B. K. C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, N.J.), pp. 255-268 (2003)に記載されているものも含む。
【0088】
特定の実施形態において、宿主細胞は、大腸菌などの原核細胞である。大腸菌などの原核細胞におけるペプチドの発現は、十分に確立されている(例えば、Pluckthun, A. Bio/Technology 9:545-551 (1991)を参照されたい。例えば、抗体は細菌内で、特にグリコシル化の場合に産生されてもよい。細菌における抗体ポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号、第5,789,199号、および第5,840,523号を参照されたい。
【0089】
特定の実施形態において、細胞は、発現ベクターを用いて本発明のベクターでトランスフェクトされてもよい。「トランスフェクション」なる語は、真核細胞などの細胞への、DNAまたはRNA(例えば、mRNA)分子などの核酸分子の導入を指す。本明細書の文脈において、「トランスフェクション」なる語は、哺乳動物細胞を含む真核細胞などの細胞に核酸分子を導入するための当業者に既知の任意の方法を包含する。かかる方法は、例えば、エレクトロポレーション、例えばカチオン性脂質および/またはリポソームに基づくリポフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ナノ粒子に基づくトランスフェクション、ウイルスに基づくトランスフェクション、またはDEAE-デキストランまたはポリエチレンイミンなどのカチオン性ポリマーに基づくトランスフェクションなどを含む。特定の実施形態において、導入は非ウイルス性である。
【0090】
さらに、本開示の宿主細胞は、本開示によるベクター、例えば、ベクターを用いて安定にまたは一過的にトランスフェクトされてもよい。本開示による抗体を発現させるための方法。かかる実施形態において、細胞は、本明細書に記載されるベクターで安定にトランスフェクトされてもよい。あるいは、細胞は、本明細書に開示される抗体をコードする本開示によるベクターで一時的にトランスフェクトされてもよい。本願明細書で開示される実施形態のいずれにおいても、ポリヌクレオチドは宿主細胞に対して異種であってもよい。
【0091】
したがって、本開示は、本開示の抗体を異種発現する組換え宿主細胞も提供する。例えば、細胞は、抗体が完全にまたは部分的に得られた種とは異なる種のものであってもよい(例えば、ヒト抗体または操作されたヒト抗体を発現するCHO細胞)。いくつかの実施形態において、宿主細胞の細胞型は、自然界では抗体を発現しない。さらに、宿主細胞は、抗体の天然状態(または該抗体が操作されたかまたは由来する親抗体の天然状態)では存在しない抗体に翻訳後修飾(PTM;例えばグリコシル化またはフコシル化)を与えてもよい。かかるPTMは、機能的な差異(免疫原性の低下など)を引き起こしてもよい。したがって、本明細書に開示される宿主細胞によって産生される本開示の抗体は、その天然状態の抗体(または親抗体)とは異なる1つまたは複数の翻訳後修飾を含んでもよい(例えば、CHO細胞によって産生されるヒト抗体は、ヒトから単離されたときおよび/または天然のヒトB細胞または形質細胞によって産生されたときの抗体とは異なる、より多くの翻訳後修飾を含むことができる)。
【0092】
本開示の結合タンパク質を発現するのに有用な昆虫細胞は当技術分野で既知であり、例えば、Spodoptera frugipera Sf9細胞、Trichoplusia ni BTI-TN5B1-4細胞、およびSpodoptera frugipera SfSWT01「Mimic(登録商標)」細胞を含む。例えば、Palmberger et al., J. Biotechnol. 153(3-4):160-166 (2011)を参照されたい。特にヨトウガ(Spodoptera fragiperda)細胞のトランスフェクションについて昆虫細胞と組み合わせて使用されてもよい多くのバキュロウイルス株が、同定されている。
【0093】
糸状菌または酵母などの真核微生物も、タンパク質をコードするベクターのクローニングまたは発現に適した宿主であり、「ヒト化」グリコシル化経路を有する真菌および酵母株を含み、部分的または完全にヒトのグリコシル化パターンを有する抗体が産生される。Gerngross, Nat. Biotech. 22:1409-1414 (2004); Li et al., Nat. Biotech. 24:210-215 (2006)を参照されたい。
【0094】
植物細胞もまた、本開示の抗体を発現するための宿主として利用することができる。例えば、PLANTIBODIES(登録商標)技術(例えば、米国特許第5,959,177号、第6,040,498号、第6,420,548号、第7,125,978号、および第6,417,429号に記載)は、トランスジェニック植物を利用して抗体を産生する。
【0095】
特定の実施形態において、宿主細胞は哺乳動物細胞を含む。特定の実施形態において、宿主細胞は、CHO細胞、HEK293細胞、PER.C6細胞、Y0細胞、Sp2/0細胞、NS0細胞、ヒト肝細胞、骨髄腫細胞、またはハイブリドーマ細胞である。
【0096】
関連する態様において、本開示は、抗体を産生するための方法を提供し、この方法は、抗体を産生するのに十分な条件下および時間、本開示の宿主細胞を培養することを含む。組換えにより産生された抗体を単離および精製するために有用な方法は、一例として、組換え抗体を培地中に分泌する適切な宿主細胞/ベクター系から上清を取得し、次いで市販のフィルターを使用して培地を濃縮することを含んでもよい。濃縮後、濃縮物を単一の適切な精製マトリックス、またはアフィニティーマトリックスまたはイオン交換樹脂などの一連の適切なマトリックスに適用してもよい。1つまたは複数の逆相HPLC工程を使用して、組換えポリペプチドをさらに精製してもよい。これらの精製方法は、自然環境から免疫原を単離するときに使用してもよい。本明細書に記載の単離/組換え抗体の1つまたは複数の大規模生産方法は、適切な培養条件を維持するためにモニターおよび制御されるバッチ細胞培養を含む。可溶性抗体の精製は、本明細書に記載され当技術分野で知られ、国内および外国の規制当局の法律およびガイドラインに適合する方法に従って実施することができる。
【0097】
組成物
また、本明細書では、本開示の抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、または宿主細胞のいずれか1つまたは複数を単独でまたは任意の組み合わせで含み、薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤をさらに含むことができる組成物も、提供される。担体、賦形剤、および希釈剤は、本明細書でさらに詳細に説明される。
【0098】
特定の実施形態において、組成物は、複数の本開示の抗体を含み、ここで複数のうちの1つまたは複数の抗体は、重鎖ポリペプチドのC末端にリジン残基を含まず、そして複数のうちの1つまたは複数の抗体は、重鎖ポリペプチドのC末端にリジン残基を含む。
【0099】
特定の実施形態において、組成物は、第1のプラスミドを含む第1のベクター、および第2のプラスミドを含む第2のベクターを含み、ここで第1のプラスミドは、抗体の重鎖、VH、またはVH+CHをコードするポリヌクレオチドを含み、第2のプラスミドは、抗体の同族軽鎖、VL、またはVL+CLをコードするポリヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、組成物は、適切な送達ビヒクルまたは担体に結合されたポリヌクレオチド(例えば、mRNA)を含む。ヒト対象に投与するための例示的なビヒクルまたは担体は、リポソーム、固体脂質ナノ粒子、油性懸濁液、サブミクロン脂質エマルション、脂質微小気泡、逆脂質ミセル、蝸牛リポソーム、脂質微小管、脂質マイクロシリンダー、脂質ナノ粒子(LNP)、またはナノスケールプラットフォーム(例えば、Li et al. Wilery Interdiscip Rev. Nanomed Nanobiotechnol. 11(2):e1530 (2019)を参照)などの脂質または脂質由来送達ビヒクルを含む。適切なmRNAを設計し、mRNA-LNPを処方し、それを送達するための原理、試薬、および技術は、例えば、Pardi et al. (J Control Release 217345-351 (2015)); Thess et al. (Mol Ther 23: 1456-1464 (2015)); Thran et al. (EMBO Mol Med 9(10):1434-1448 (2017); Kose et al. (Sci. Immunol. 4 eaaw6647 (2019); および Sabnis et al. (Mol. Ther. 26:1509-1519 (2018)))に記載され、該技術は、キャッピング、コドン最適化、ヌクレオシド修飾、mRNAの精製、安定な脂質ナノ粒子へのmRNAの組み込み(例えば、イオン化カチオン性脂質/ホスファチジルコリン/コレステロール/PEG脂質、イオン化脂質;ジステアロイルPC:コレステロール:ポリエチレングリコール脂質)、ならびにその皮下、筋肉内、皮内、静脈内、腹腔内、および気管内投与を含み、参照により本明細書に組み込まれる。
【0100】
方法および使用
また、本明細書では、パラミクソウイルスの診断における(例えば、ヒト対象における、またはヒト対象から得られる試料における)本開示の抗体、核酸、ベクター、細胞、または組成物の使用方法も、提供される。
【0101】
診断方法(例えば、インビトロ、エクスビボ)は、抗体を試料と接触させることを含んでもよい。かかる試料は、対象から単離されてもよく、例えば、鼻道、副鼻腔、唾液腺、肺、肝臓、膵臓、腎臓、耳、目、胎盤、消化管、心臓、卵巣、下垂体、副腎、甲状腺、脳、皮膚、血液から採取された単離組織試料であってもよい。診断方法は、特に抗体と試料との接触後の抗原/抗体複合体の検出も含んでもよい。かかる検出工程はベンチで、すなわち人体または動物の体に接触することなく実施できる。検出方法の例は、当業者に周知であり、例えば直接的、間接的、およびサンドイッチELISAを含むELISA(酵素結合免疫吸着検定法)を含む。
【0102】
また、本開示の抗体またはそれを含む組成物、または本開示の核酸、ベクターは宿主細胞、またはそれらを含む組成物を使用して対象を処置する方法も提供され、ここで、対象は、例えば呼吸器合胞体ウイルス、メタニューモウイルス、マウス肺炎ウイルスなどのパラミクソウイルスに感染している、または感染するリスクがあると考えられている。「処置する」、「処置」、または「改善する」は、対象(例えば、ヒトまたは霊長類、ウマ、ネコ、イヌ、ヤギ、マウス、またはラットなどの非ヒト哺乳動物)の疾患、障害、または状態の医学的管理を指す。一般に、本開示の抗体、核酸、ベクター、宿主細胞、または組成物を含む適切な用量または処置レジメンは、治療的または予防的利益を引き出すのに十分な量で投与される。治療的または予防的/防止的利益は、改善した臨床転帰;病気に関連する症状の軽減または緩和;減少した症状の発生;向上した生活の質;より長い無病状態;病気の程度の軽減、病状の安定化;病気の進行の遅延または予防;寛解;生存;生存期間の延長;またはそれらの任意の組み合わせを含む。特定の実施形態において、治療的または予防的/防止的利益は、パラミクソウイルス感染症の処置のための入院の減少または予防を含む(すなわち、統計的に有意な方法での)。特定の実施形態において、治療的または予防的/防止的利益は、パラミクソウイルス感染症の処置のための入院期間の短縮を含む(すなわち、統計的に有意な方法での)。特定の実施形態において、治療的または予防的/防止的利益は、挿管および/または人工呼吸器装置の使用などの呼吸介入の必要性の減少または廃止を含む。特定の実施形態において、治療的または予防的/防止的利益は、後期疾患病状の逆転および/または死亡率の減少を含む。
【0103】
本開示の抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、または組成物の「治療有効量」または「有効量」は、統計的に有意な方法での改善した臨床転帰;病気に関連する症状の軽減または緩和;減少した症状の発生;向上した生活の質;より長い無病状態;病気の程度の軽減;病状の安定化;病気の進行の遅延;寛解;生存;または生存期間の延長を含む治療効果をもたらすのに十分な組成物または分子の量を指す。単独で投与される個々の活性成分に言及する場合、治療有効量とは、その成分またはその成分を単独で発現する細胞の効果を指す。組み合わせに言及する場合、治療有効量は、投与が連続的に、逐次的に、または同時に行われるかにかかわらず、治療効果をもたらす活性成分または活性成分を発現する細胞と組み合わせた補助活性成分の合計量を指す。
【0104】
したがって、特定の実施形態において、対象においてパラミクソウイルス(例えば、RSV、MPV、またはPVM)感染を処置するための方法が提供され、該方法は対象に有効量の抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、または本明細書に開示される組成物を投与することを含む。
【0105】
本開示によって処置されることができる対象は、一般に、獣医学目的のヒトおよび他の霊長類対象、例えばサルおよび類人猿である。マウスおよびラットなどの他のモデル生物も、本開示に従って処置されてもよい。前述の実施形態のいずれかにおいて、対象はヒト対象であってもよい。対象は男性でも女性でもよく、幼児、青少年、青年、成人、および老人の対象を含む任意の適切な年齢であることができる。
【0106】
特定の実施形態において、本開示に従って処置されるヒト対象は、乳児、小児、青年、若年成人、中年成人、または高齢者である。特定の実施形態において、本開示に従って処置されるヒト対象は、1歳未満、または1~5歳、または5~125歳(例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、または125歳(その範囲内またはその間のあらゆる年齢を含む)である。特定の実施形態において、本開示に従って処置されるヒト対象は、0~19歳、0~21歳、20~44歳、45~54歳、55~64歳、65~74歳、75~84歳、または85歳以上である。いくつかの実施形態において、対象は小児対象である。小児の対象は、診断または処置時の年齢が21歳以下の人を含む。特定の実施形態において、ヒト対象は、45~54歳、55~64歳、65~74歳、75~84歳、または85歳以上である。いくつかの実施形態において、ヒト対象は男性である。いくつかの実施形態において、ヒト対象は女性である。
【0107】
特定の実施形態において、処置は、曝露前後の予防として投与される。
【0108】
したがって、本開示の組成物の典型的な投与経路は、経口、局所、経皮、吸入、非経口、舌下、口腔、直腸、膣、および鼻内を含むが、これらに限定されない。本明細書で使用される「非経口」なる語は、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射または注入技術を含む。特定の実施形態において、投与することは、経口、静脈内、非経口、胃内、胸腔内、肺内、直腸内、皮内、腹腔内、腫瘍内、皮下、局所、経皮、槽内、くも膜下腔内、鼻内、および筋肉内から選択される経路によって投与することを含む。特定の実施形態において、方法は、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、または組成物を対象に経口投与する工程を含む。
【0109】
本発明の特定の実施形態による医薬組成物は、患者への組成物の投与時に、その中に含有される活性成分が生物学的に利用可能となるように製剤化される。対象または患者に投与される組成物は、1つまたは複数の投与単位の形態をとることができ、例えば、錠剤は単一の投与単位であり得、エアロゾル形態の本明細書に記載の抗体の容器は、複数の投与単位を保持し得る。かかる剤形を調製する実際の方法は、当業者には既知であるか、または明らかとなる。例えば、「Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition (Philadelphia College of Pharmacy and Science, 2000)を参照されたい。投与される組成物は、いずれにせよ、本明細書の教示に従って対象となる疾患または状態を処置するために、有効量の本開示の抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、または組成物を含有する。
【0110】
組成物は、固体または液体の形態であってもよい。いくつかの実施形態において、担体は粒子状であるため、組成物は例えば錠剤または粉末の形態である。担体は液体であってもよく、組成物は例えば経口油、注射用液体、または例えば吸入投与に有用なエアロゾルであってもよい。経口投与を意図する場合、医薬組成物は固体または液体のいずれかの形態であることが好ましく、本明細書において固体または液体とみなされる形態は、半固体、半液体、懸濁液およびゲルの形態を含む。
【0111】
経口投与用の固体組成物として、医薬組成物は、粉末、顆粒、圧縮錠剤、丸剤、カプセル、チューインガム、ウエハースなどに製剤化されてもよい。かかる固体組成物は、典型的には、1つまたは複数の不活性希釈剤または食用担体を含有する。さらに、以下の1つまたは複数が存在してもよい:カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチンなどの結合剤;デンプン、ラクトースまたはデキストリンなどの賦形剤、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、プリモゲル、コーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはSterotexなどの潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;スクロースまたはサッカリンなどの甘味料;ペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジ香料などの香料;および着色料。組成物がカプセル、例えばゼラチンカプセルの形態である場合、それは、上記タイプの材料に加えて、ポリエチレングリコールまたは油などの液体担体を含有してもよい。
【0112】
組成物は、液体、例えば、エリキシル剤、シロップ、溶液、エマルション、または懸濁液の形態であってもよい。液体は、2つの例として、経口投与用または注射による送達用であってもよい。経口投与を意図する場合、好ましい組成物は、本発明の化合物に加えて、甘味剤、保存剤、染料/着色剤および風味増強剤のうちの1つまたは複数を含有する。注射による投与を意図した組成物は、界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定剤および等張剤のうちの1つまたは複数を含んでもよい。
【0113】
液体医薬組成物は、溶液、懸濁液、または他の同様の形態であっても、以下のアジュバントのうちの1つまたは複数を含んでもよい:注射用水、生理食塩水、好ましくは生理食塩水、リンゲル液、等張性塩化ナトリウム、溶媒または懸濁媒体として機能し得る合成モノまたはジグリセリド、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の溶媒などの固定油などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝液、および塩化ナトリウムまたはブドウ糖などの張度調整剤。非経口製剤は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器、または複数回投与用バイアルに封入できる。生理食塩水は、好ましいアジュバントである。注射可能な医薬組成物は、好ましくは無菌である。
【0114】
非経口投与または経口投与のいずれかを意図した液体組成物は、適切な用量が得られるような量の本明細書に開示される抗体を含有すべきである。通常、この量は組成物中の抗体の少なくとも0.01%である。経口投与を目的とする場合、この量は、組成物の重量の0.1~約70%の間で変動し得る。特定の経口医薬組成物は、約4%から約75%の間の抗体を含有する。特定の実施形態において、本発明による医薬組成物および製剤は、非経口用量単位が希釈前に0.01~10重量%の抗体を含有するように調製される。
【0115】
組成物は、局所投与を目的としていてもよく、その場合、担体は溶液、乳濁液、軟膏またはゲル基剤を適切に含んでよい。例えば、基剤は、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、蜜蝋、鉱油、水およびアルコールなどの希釈剤、および乳化剤および安定剤のうちの1つまたは複数を含んでもよい。増粘剤は、局所投与用の組成物中に存在してもよい。経皮投与を目的とする場合、組成物は経皮パッチまたはイオン導入装置を含んでもよい。医薬組成物は、例えば、直腸内で溶けて薬物を放出する坐剤の形態で、直腸投与を目的としてもよい。直腸投与用の組成物は、適切な非刺激性賦形剤として油性基剤を含有してもよい。かかる基剤は、ラノリン、ココアバター、およびポリエチレングリコールを含むが、これらに限定されない。
【0116】
組成物は、固体または液体の投与単位の物理的形態を修飾する様々な材料を含んでもよい。例えば、組成物は、活性成分の周囲にコーティングシェルを形成する材料を含んでもよい。コーティングシェルを形成する材料は、典型的には不活性であり、例えば、砂糖、シェラック、および他の腸溶性コーティング剤から選択されてもよい。あるいは、活性成分をゼラチンカプセルに封入してもよい。固体または液体の形態の組成物は、本開示の抗体に結合し、それによって化合物の送達を助ける薬剤を含んでもよい。この能力で作用してもよい適切な薬剤は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体、1つまたは複数のタンパク質、またはリポソームを含む。組成物は本質的に、エアロゾルとして投与できる投与単位から構成されてもよい。エアロゾルなる語は、コロイド状のものから加圧パッケージで構成されるシステムに至るまで、さまざまなシステムを指すのに使用される。送達は、液化ガスまたは圧縮ガス、または有効成分を分配する適切なポンプシステムによって行われる。エアロゾルは、有効成分を送達するために、単相、二相、または三相系で送達されてもよい。エアロゾルの送達は、必要な容器、活性化剤、バルブ、サブ容器などを含み、これらは共にキットを形成してもよい。当業者であれば、過度の実験を行うことなく、好ましいエアロゾルを決定してもよい。
【0117】
本開示の組成物は本明細書に記載されるポリヌクレオチドの担体分子(例えば、脂質ナノ粒子、ナノスケール送達プラットフォームなど)も包含することが、理解される。
【0118】
医薬組成物は、製薬分野で周知の方法論によって調製されてもよい。例えば、注射により投与することを意図した組成物は、本明細書に記載の抗体、および所望により塩、緩衝剤および/または安定剤のうちの1つまたは複数を含む組成物を滅菌蒸留水と組み合わせて溶液を形成することによって調製できる。均一な溶液または懸濁液の形成を促進するために、界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤は、水性送達系における抗体の溶解または均一な懸濁を促進するために、ペプチド組成物と非共有結合的に相互作用する化合物である。
【0119】
一般に、適切な用量および処置計画は、(本明細書に記載されるような、改善された臨床転帰(例えば、より長い無病生存期間および/または全生存期間、または症状の重症度の軽減)を含む)治療的および/または予防的利益を提供するのに十分な量の組成物を提供する。予防的使用の場合、用量は、疾患または障害に関連する疾患を予防し、その発症を遅らせ、またはその重症度を軽減するのに十分な量でなければならない。本明細書に記載の方法に従って投与される組成物の予防的利益は、(インビトロおよびインビボ動物研究を含む)前臨床研究および臨床研究を実施し、そこから得られたデータを適切な統計的、生物学的、および臨床的方法および技術によって分析することによって決定することができ、これらは全て当業者によって容易に実施されることができる。
【0120】
組成物は、(例えば、パラミクソウイルス感染症を処置するために)有効量で投与され、これは、使用される特定の化合物の活性;化合物の代謝安定性および作用時間;対象者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事;投与の方法および時間;排泄率;薬の組み合わせ;特定の障害または状態の重症度;および治療を受けている対象を含む様々な要因に応じて変化する。特定の実施形態において、本開示の製剤および方法による治療の投与により、対象は、プラセボ処置対象または他の適切な対照対象と比較して、処置中の疾患または障害に関連する1つまたは複数の症状の約10%から最大約99%の減少を示す。
【0121】
一般に、抗体の治療上有効な1日量は、(体重70kgの哺乳動物の場合)約0.001mg/kg(すなわち、0.07mg)~約100mg/kg(すなわち、7.0g)であり;好ましくは、治療上有効な用量は、(体重70kgの哺乳動物の場合)約0.01mg/kg(すなわち、0.7mg)~約50mg/kg(すなわち、3.5g)であり;より好ましくは、治療有効用量は、(体重70kgの哺乳動物の場合)約1mg/kg(すなわち、70mg)~約25mg/kg(すなわち、1.75g)である。本開示のポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、および関連組成物の場合、治療有効量は抗体の場合とは異なってもよい。
【0122】
特定の実施形態において、方法は、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、または組成物を対象に2、3、4、5、6、7、8、9、10回、またはそれ以上投与することを含む。
【0123】
特定の実施形態において、方法は、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、または組成物を対象に複数回投与することを含み、ここで第2のまたは連続投与は、第1のまたは前の投与からそれぞれ、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約24、約48、約74、約96時間、またはそれを超える時点で行われる。
【0124】
特定の実施形態において、方法は、対象がパラミクソウイルスに感染する少なくとも1回前に、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、または組成物を投与することを含む。
【0125】
本開示の抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、または組成物を含む組成物は、1つまたは複数の他の治療薬の投与と同時に、投与前、または投与後に投与されてもよい。かかる併用療法は、本発明の化合物および1つまたは複数の追加の活性薬剤を含む単一の薬学的投与製剤の投与、ならびにそれ自体の別個の投与製剤中に本開示の抗体および各活性薬剤を含む組成物の投与を含んでもよい。例えば、本明細書に記載の抗体および他の活性薬剤は、錠剤またはカプセルなどの単一の経口投与組成物で共に患者に投与されることができ、または各薬剤は別々の経口投与製剤で投与されることができる。同様に、本明細書に記載の抗体および他の活性薬剤は、生理食塩水または他の生理学的に許容される溶液などの単一の非経口投与組成物で共に対象に投与されることができ、または各薬剤は別々の非経口投与製剤で投与されることができる。別個の投与製剤が使用される場合、抗体および1つまたは複数の追加の活性薬剤を含む組成物は、本質的に同時に、すなわち同時に、または別々に時間差を付けて、すなわち連続的および任意の順序で投与されてもよい。併用療法は、これら全てのレジメンを含むと理解されている。
【0126】
特定の実施形態において、本開示の1つまたは複数の抗体(または1つまたは複数の核酸、宿主細胞、ベクター、または組成物)と、1つまたは複数の抗炎症剤および/または1つまたは複数の抗ウイルス剤とを含む併用療法が、提供される。特定の実施形態において、1つまたは複数の抗炎症剤は、例えば、デキサメタゾン、プレドニゾンなどのコルチコステロイドを含む。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の抗炎症剤は、例えば、IL6(シルツキシマブなど)に、またはIL-6R(トシリズマブなど)に、またはIL-1β、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、FGF、G-CSF、GM-CSF、IFN-γ、IP-10、MCP-1、MIP-1A、MIP1-B、PDGR、TNF-α、またはVEGFに結合する抗体などのサイトカインアンタゴニストを含む。いくつかの実施形態において、ルキソリチニブおよび/またはアナキンラなどの抗炎症剤が使用される。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の抗ウイルス剤は、例えば、レムデシビル、ソホスブビル、アシクロビル、およびジドブジンなどのヌクレオチド類似体またはヌクレオチド類似体プロドラッグを含む。特定の実施形態において、抗ウイルス剤は、ロピナビル、オセルタミビル、ペラミビル、ザナミビル、リトナビル、ファビピラビル、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、併用療法はレロンリマブを含む。本開示の併用療法において使用するための抗炎症剤は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)も含む。かかる併用療法において、1つまたは複数の抗体(または1つまたは複数の核酸、宿主細胞、ベクター、または組成物)と、1つまたは複数の抗炎症剤および/または1つまたは複数の抗ウイルス剤とが任意の順序および配列で、または共に投与されることができることが理解される。
【0127】
いくつかの実施形態において、抗体(または1つまたは複数の核酸、宿主細胞、ベクター、または組成物)は、1つまたは複数の抗炎症剤および/または1つまたは複数の抗ウイルス剤を以前に投与されている対象に投与される。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の抗炎症剤および/または1つまたは複数の抗ウイルス剤は、抗体(または1つまたは複数の核酸、宿主細胞、ベクター、または組成物)を以前に投与されている対象に投与される。
【0128】
関連する態様において、本明細書で開示される抗体、ベクター、宿主細胞、および組成物の使用が、提供される。
【0129】
特定の実施形態において、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、または組成物は、対象においてパラミクソウイルス感染症を処置する方法において使用するために提供される。
【0130】
特定の実施形態において、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、または組成物は、対象においてパラミクソウイルス感染症を処置するための薬剤を製造または調製する方法において使用するために提供される。
【0131】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【0132】
本発明はまた、以下の非限定的な列挙された実施形態を提供する。
【0133】
実施形態1.以下を含む抗体:(i)それぞれ配列番号1のアミノ酸配列を有する2つの重鎖ポリペプチド;および(ii)それぞれ配列番号4のアミノ酸配列を有する2つの軽鎖ポリペプチド。
実施形態2:以下を含む抗体:(i)それぞれ配列番号2のアミノ酸配列を有する2つの重鎖ポリペプチド;および(ii)それぞれ配列番号4のアミノ酸配列を有する2つの軽鎖ポリペプチド。
実施形態3:以下を含む抗体:(i)それぞれ配列番号3のアミノ酸配列を有する2つの重鎖ポリペプチド;および (ii)それぞれ配列番号4のアミノ酸配列を有する2つの軽鎖ポリペプチド。
実施形態4:以下を含む抗体:(i)それぞれ配列番号6のアミノ酸配列を含む2つの重鎖ポリペプチド;および(ii)それぞれ配列番号4のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖ポリペプチド。
実施形態5:以下を含む抗体:(i)それぞれ配列番号7のアミノ酸配列を含む2つの重鎖ポリペプチド;および(ii)それぞれ配列番号4のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖ポリペプチド。
実施形態6:以下を含む抗体:(i)それぞれ配列番号8のアミノ酸配列を含む2つの重鎖ポリペプチド;および(ii)それぞれ配列番号4のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖ポリペプチド。
実施形態7:以下をコードする単離されたポリヌクレオチド:(i)実施形態1~6のいずれか1つの抗体;(ii)実施形態1~6のいずれか1つの抗体の重鎖;(iii)実施形態1~6のいずれか1つの抗体の軽鎖;または、(iv)実施形態1~6のいずれか1つの抗体の重鎖および実施形態1~6のいずれか1つの抗体の軽鎖。
実施形態8.ポリヌクレオチドがDNAまたはRNAを含み、所望によりRNAがmRNAを含み、さらに所望によりmRNAが修飾ヌクレオシド、キャップ-1構造、キャップ-2構造、またはそれらの任意の組み合わせを含む、および/またはプソイドウリジン、N6-メチルアデノンシン、5-メチルシチジン、2-チオウリジン、またはそれらの任意の組み合わせを含む、実施形態7のポリヌクレオチド。
実施形態9.実施形態7または8のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
実施形態10.実施形態7または8のポリヌクレオチド、または実施形態9のベクターを含む、宿主細胞。
実施形態11.実施形態1~6のいずれか1つの抗体、実施形態7または8のポリヌクレオチド、実施形態9のベクター、および/または実施形態10の宿主細胞、ならびに薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤を含む、組成物。
実施形態12.対象においてパラミクソウイルス感染症を予防する方法であって、有効量の実施形態1~6のいずれか1つの抗体;実施形態7または8のポリヌクレオチド;実施形態9のベクター;実施形態10の宿主細胞;および/または実施形態11の組成物を対象に投与することを含む、方法。
実施形態13.対象においてパラミクソウイルス感染症を処置する方法であって、有効量の実施形態1~6のいずれか1つの抗体;実施形態7または8のポリヌクレオチド;実施形態9のベクター;実施形態10の宿主細胞;および/または実施形態11の組成物を対象に投与することを含む、方法。
実施形態14.パラミクソウイルスが、呼吸器合胞体ウイルス、メタニューモウイルス、マウス肺炎ウイルス、またはそれらの任意の組み合わせを含む、実施形態12または13の方法。
実施形態15.対象においてパラミクソウイルス感染を予防する方法において使用するための、実施形態1~6のいずれか1つの抗体、実施形態7または8のポリヌクレオチド、実施形態9のベクター、実施形態10の宿主細胞、および/または実施形態11の組成物であって、ここで所望により、パラミクソウイルスは、呼吸器合胞体ウイルス、メタニューモウイルス、マウス肺炎ウイルス、またはそれらの任意の組み合わせを含む、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、および/または組成物。
実施形態16.対象においてパラミクソウイルス感染を処置する方法において使用するための、実施形態1~6のいずれか1つの抗体、実施形態7または8のポリヌクレオチド、実施形態9のベクター、実施形態10の宿主細胞、および/または実施形態11の組成物であって、ここで所望により、パラミクソウイルスは、呼吸器合胞体ウイルス、メタニューモウイルス、マウス肺炎ウイルス、またはそれらの任意の組み合わせを含む、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、および/または組成物。
実施形態17.対象においてパラミクソウイルス感染を予防するための薬剤の製造において使用するための、実施形態1~6のいずれか1つの抗体、実施形態7または8のポリヌクレオチド、実施形態9のベクター、実施形態10の宿主細胞、および/または実施形態11の組成物であって、ここで所望により、パラミクソウイルスは、呼吸器合胞体ウイルス、メタニューモウイルス、マウス肺炎ウイルス、またはそれらの任意の組み合わせを含む、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、および/または組成物。
実施形態18.対象においてパラミクソウイルス感染症を処置するための薬剤の製造において使用するための、実施形態1~6のいずれか1つの抗体、実施形態7または8のポリヌクレオチド、実施形態9のベクター、実施形態10の宿主細胞、および/または実施形態11の組成物であって、ここで所望により、パラミクソウイルスは、呼吸器合胞体ウイルス、メタニューモウイルス、マウス肺炎ウイルス、またはそれらの任意の組み合わせを含む、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、および/または組成物。
実施形態19.抗体を産生するのに十分な条件下および十分な時間、抗体を発現する宿主細胞を培養することを含む、実施形態1~6のいずれか1つの抗体を作製する方法。
実施形態20.抗体を単離および/または精製することをさらに含む、実施形態19の方法。
【0134】
実施例
実施例1
薬物動態研究
RSV_Abは、マウスにおいてインビトロおよびインビボでRSV、MPV、およびPVMを中和する。RSV_Ab(HCを含むIgG1:配列番号:5;LC:配列番号:4)およびRSV_Ab_MLNS(HCを含むIgG1:配列番号:1;LC:配列番号:4)の安定性を評価するために、カニクイザルを使用してインビボ研究を行った。研究設計を
図1に示す。データを
図2および3に示す。
図2に示すように、15mg/kg(ゆっくりとした静脈内注入)RSV_Ab_MLNSの用量後、RSV_Ab_MLNSは、投与後1250時間を含む投与後1000時間以降、1mlあたり20マイクログラムを超える濃度で血漿中に存在した。比較すると、RSV_Abはより低い濃度で存在した。
図3に示すように、RSV_Ab_MLNSはRSV_Abと比較して、長期間にわたって優れた安定性を示した。
【0135】
実施例2
RSV_AB_MLNSの予防的および治療的使用
RSV_Ab_MLNS、RSV_Ab_GAALIE(HC:配列番号:2;LC:配列番号:4を含むIgG1)、またはRSV_Ab_MLNS_GAALIE(HC:配列番号:3;LC:配列番号:4を含むIgG1)を、RSVに感染するリスクのあるヒト対象には予防的に、RSVを有するヒト対象には治療的に投与する。
【0136】
上述の様々な実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を提供することができる。本明細書で言及されている、および/または2021年2月9日に出願された米国特許出願第63/147,676号を含む出願データシートに記載されている全ての米国特許、米国特許出願公報、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許公報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。必要に応じて、実施形態の態様を修飾して、さまざまな特許、出願および出版物の概念を使用して、さらなる実施形態を提供することができる。
【0137】
上記の詳細な説明を考慮して、実施形態に対してこれらおよび他の変更を加えることができる。一般に、以下の特許請求の範囲において使用される語は、特許請求の範囲を明細書および特許請求の範囲に開示される特定の実施形態に限定するものと解釈されるべきではなく、かかる特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲とともに、全ての可能な実施形態を含むものと解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示によって限定されるものではない。
【配列表】
【国際調査報告】