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特表2024-506324ポータブル持続的腎代替療法システムおよび方法
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  • 特表-ポータブル持続的腎代替療法システムおよび方法 図1A
  • 特表-ポータブル持続的腎代替療法システムおよび方法 図1B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-13
(54)【発明の名称】ポータブル持続的腎代替療法システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20240205BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20240205BHJP
   A61M 60/113 20210101ALI20240205BHJP
【FI】
A61M1/16
A61M1/36 103
A61M1/36 145
A61M60/113
A61M1/16 113
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547820
(86)(22)【出願日】2022-02-04
(85)【翻訳文提出日】2023-08-10
(86)【国際出願番号】 US2022070529
(87)【国際公開番号】W WO2022170348
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】63/145,695
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523298627
【氏名又は名称】グーラ、ビクター
【氏名又は名称原語表記】GURA,Victor
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】グーラ、ビクター
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077CC04
4C077DD07
4C077HH02
4C077HH03
4C077HH07
4C077HH10
4C077HH12
4C077HH20
4C077JJ07
4C077JJ08
4C077JJ19
4C077JJ28
4C077KK17
4C077KK23
4C077KK25
(57)【要約】
書開示される様々な実施形態は、持続的腎代替療法のためのポータブルシステムに関する。本開示は、透析器、血液回路、透析液回路、キャニスタ、ポンプ、およびハウジングを含むシステムを含む。ハウジングは、透析器、回路、キャニスタおよびポンプを含むシステムを収容することができる。システムは、能動的搬送モードと静止モードとの間で切り換え可能である。能動的搬送モードでは、構成要素はハウジング内に収容可能であり、システムに取り付けられている間、患者の可動性を許容する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
持続的腎代替療法のためのポータブルシステムであって、該ポータブルシステムは、
透析器と、
患者から血液を受容し、前記透析器を通して血液を循環させ、浄化された血液を患者に戻すように構成された血液回路と、
前記透析器を通して透析液を循環させ、血液から不純物を除去するように構成された透析液回路と、
少なくとも1つの吸着剤を含むキャニスタであって、前記透析液回路に流体接続可能であるとともに、前記透析液から不純物を除去するように構成されたキャニスタと、
前記血液回路および前記透析液回路に流体接続されたポンプであって、前記血液および前記透析液を同時に駆動するように構成されたポンプと、
前記システムを収容するハウジングであって、前記透析器、前記血液回路、前記透析液回路、前記キャニスタ、および前記ポンプが、前記ハウジング内に一体的に配置される、ハウジングと
を備え、
前記システムは、能動的搬送モードと静止モードとの間で切り換えられるように構成され、
前記能動的搬送モードでは、前記透析器、前記血液回路、前記透析液、および前記キャニスタが前記ハウジング内に収容され、患者が前記システムに繋がれた状態で、患者が移動することを許容するものであり、
前記静止モードは、前記患者が静止している間に使用するためのものである、ポータブルシステム。
【請求項2】
前記能動的搬送モードにおいて、前記システムは、前記ポンプに電力を供給するように構成されたポータブル電源をさらに備える、請求項1に記載のポータブルシステム。
【請求項3】
前記ポータブル電源は充電式バッテリを備える、請求項2に記載のポータブルシステム。
【請求項4】
前記静止モードにおいて、前記システムはAC電源をさらに備える、請求項1に記載のポータブルシステム。
【請求項5】
前記透析液回路は、約250mLから350mLの透析液で動作するように構成される、請求項1に記載のポータブルシステム。
【請求項6】
前記ポータブルシステムは、約30ポンド(約13.6キログラム)以下の重量を有する、請求項1に記載のポータブルシステム。
【請求項7】
前記血液回路に流体接続された気泡検出器をさらに備え、前記気泡検出器は、前記血液回路内の気泡を検出することが可能であり、気泡が検出されたときに気泡の情報を生成するように構成される、請求項1に記載のポータブルシステム。
【請求項8】
故障状態中に作動するように構成された血液クランプをさらに備え、該血液クランプの作動は、前記血液回路からの血液が前記患者に戻ることを防止するために、前記血液回路の戻り部分の閉塞を含む、請求項1に記載のポータブルシステム。
【請求項9】
前記透析器の遠位にある前記透析液回路に接続された血液漏れ検出器をさらに備え、該血液漏れ検出器は、前記透析液回路において血液が検出された場合に監視してアラームを発動するように構成される、請求項1に記載のポータブルシステム。
【請求項10】
前記システムと前記患者との間の流体漏れを検出するように構成された濡れセンサをさらに備える、請求項1に記載のポータブルシステム。
【請求項11】
前記システム内のアンモニアを監視するように構成され、アンモニアが所定の閾値を超えて検出された場合にアラームを発動するように構成されたアンモニアセンサをさらに備える、請求項1に記載のポータブルシステム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの吸着剤は、炭素、木炭、リン酸ジルコニウム、含水酸化ジルコニウム、ジルコニウム合金、ジルコニウムを含有する有機化合物、ジルコニウムを含有する無機化合物、ジルコニウムを含有する鉱物、ウレアーゼ、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のポータブルシステム。
【請求項13】
前記システムから微粒子を除去するように構成されたフィルタをさらに備え、前記フィルタは、前記ポンプおよび前記透析液回路に流体接続されている、請求項1に記載のポータブルシステム。
【請求項14】
前記ポンプは、並列脈動ポンプを含む、請求項1に記載のポータブルシステム。
【請求項15】
前記ハウジングは、トランク、バックパック、ハードケース、およびスーツケースを含む群から選択されるポータブルケースを含む、請求項1に記載のポータブルシステム。
【請求項16】
患者が搬送されている間に、または無菌環境において持続的腎代替療法を実施する方法であって、
患者が能動的搬送モードでポータブル持続的腎代替療法システムに接続されている間に前記患者を搬送することと、
前記患者を搬送している間に前記ポータブル持続的腎代替療法システムを用いて血液から毒素を持続的に除去することと
を含む方法。
【請求項17】
前記ポータブル持続的腎代替療法システムを静止モードに切り換えることと、
前記静止モードにある間に血液から毒素を除去し続けることと
をさらに含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ポータブル持続的腎代替療法システムにポータブルエネルギー源から電力供給することをさらに含む請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記ポータブル持続的腎代替療法システムを使用することは、約250mLから350mLの透析液を使用することを含む請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記ポータブル持続的腎代替療法システムを使用することは、約250mLから300mLの透析液を使用することを含む請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
持続的腎代替療法(CRRT:continuous renal replacement therapy)は、急性腎損傷を経験している患者、および血行力学的に不安定な患者に腎支援を提供するために使用することができる。急性腎障害は重症患者にしばしば生じる合併症であり、戦場、戦闘状態、その他の一過性の環境などの過酷な環境で負傷した患者に起こることもある。
【発明の概要】
【0002】
本開示の追加の態様および利点は、以下の詳細な説明から当業者に容易に明らかになるであろう。以下の詳細な説明では、本開示を実施するために意図されるいくつかの形態または最良の形態の単なる例示として、本開示のいくつかの例のみが示されて説明される。理解されるように、本開示は他の例および異なる例を可能とするものであり、その詳細は、全て本開示から逸脱することなく、様々な明白な点において改変が可能である。したがって、図面及び詳細な説明は、本質的に例示的であり、限定的ではないとみなされるべきである。
【0003】
本明細書では、持続的腎代替療法(CRRT)のためのシステムおよび方法が開示される。ポータブルCRRT(PCRRT)システムは、厳しい環境を含む任意の環境で使用するために可搬式であり、従来の療法と比較してより少ない量の水を用いてポータブル電力で動作することができる。この電池作動式吸着剤ベースの装置は、急性腎不全を有する危篤状態の患者の腎機能を代替することができる。
【0004】
この装置は、透析フィルタの中空繊維の内腔を通して患者の血液を循環させることができる。システムは、向流を使用することができる。システムは、気泡検出器、血液クランプ、血液漏出検出器、濡れセンサ、およびアンモニアセンサを含むことができる。
【0005】
PCRRTシステムは、主外部AC電力の喪失中および能動的な搬送中に電力を供給することができるポータブル電源などの様々な電源に基づいて動作することができる。PCRRTシステムは、2つのモード、すなわち、持ち運び可能なケースに収納される能動的搬送モードと、使用のためにセットアップされ得る静止モードとを有することができる。加えて、PCRTTシステムは、CRRTのための現在市販されている装置と比較して、より少ない量の水を使用可能である。
【0006】
本明細書で説明するように、PCRRTシステムは、RRTを実施するための資源が不足しているか、または存在しないような過酷な環境などにおいて、急性腎障害(AKI)患者に腎代替療法(RRT)を提供するために使用することができる。
【0007】
RRTは、腎臓の正常な血液濾過機能を代替することができる。RRTは、例えば、急性腎障害(AKI:Acute Kidney Injury)または慢性腎疾患などの腎不全を有する患者において使用することができる。RRTは、透析(血液透析腹膜透析)、血液濾過、血液透析濾過、または腎置換を含み得る。RRTは、腎臓が正常に機能していない人の血液を浄化するプロセスである。
【0008】
歴史的に、RRTを必要とする重度のAKIの割合は、紛争中に上昇してきた。例えば、朝鮮戦争では、戦闘による負傷者の200人に1人が死傷者であり、傷害死(DOW:died of wounds)した患者の約25%から約78%がRRTで治療可能なAKIを有していた可能性がある。RRT技術の進歩により、RRTを受けている患者の死亡率は、朝鮮戦争時の約60%乃至70%から、最近のイラク戦争やアフガニスタン戦争では約40%から50%に減少した可能性がある。全体として、容易に配備可能なRRT能力は、厳格な設定においてDOWレートを約14%乃至40%減少させることができる。
【0009】
腎臓は、正常に機能している場合、患者のpHおよび電解質レベルのバランスをとり、過剰な流体を除去する。RRT療法は、腎臓に対する大きな外傷(例えば、AKI)を負った場合に、これらの機能を補ったり代替したりすることを目的とする。したがって、不安定な血圧および電解質異常を有する患者などの危篤状態の患者にそのような腎機能を提供するための装置および方法が望まれる。
【0010】
一般的に使用される透析器は、患者を3乃至4時間にわたって治療する。この種の装置は、鈍い血行動態、酸性度、および電解質バランスの課題に耐えることができない患者に使用することが困難である。このため、持続RRT(CRRT)を用いることができる。CRRTは、他のタイプのRRTと比較して心臓に与えるストレスが少ない、より遅いタイプの透析である。数時間にわたる透析の代わりに、CRRTを1日24時間行って、老廃物および流体を患者からゆっくりと持続的に除去することができる。CRRTは、透析回路が凝固しないようにするための特別な抗凝固療法(anticoagulation)を含むことができる。
【0011】
CRRT装置は、通常の透析器よりも3乃至5倍少ない血流を使用することができる。CRRT装置は、一度に数時間血液を濾過するのではなく、生体腎臓のように24時間持続的に機能することができる。しかしながら、CRRT装置は、機能するために、依然として多くの量の水および大きな電源を必要とする可能性がある。
【0012】
現在のCRRTの形態には、多くの欠点がある。例えば、この処置を受ける人々は、供給の利用可能性に起因して移動ができず、かつ処置中には大型の固定装置に繋がれるため、自立が制限されたり、透析器およびCRRT装置のような信頼性の高い技術が必要であったり、複雑な手順および装置の知識を有する看護師および技術者のような医療従事者が必要であったり、透析器の設置および洗浄に継続的かつ反復的な時間が必要であったりする。
【0013】
CRRTは持続的かつ長時間行われるため、紛争中、戦場、災害中、または環境の変化といった過酷な環境では、CRRTは通常、患者を紛争現場から迅速に避難させることができない限り、使用できない。このような環境では、場合によっては、ダメージコントロール蘇生法(DCR:damage control resuscitation)またはダメージコントロール手術(DCS:damage control surgery)が使用され得る。しかしながら、将来の紛争では、避難能力が制限され、DCRまたはDCSの能力が低下する可能性がある。
【0014】
特に、過酷な環境でのCRRTは、CRRT処置中に使用される電気および新鮮で清潔な水へのアクセスによって使用が制限される。場合によって、電池または発電機が使用され得るが、適切ではないことがある。さらに、紛争地域および大災害地域では、清潔な水を大量に確保することは難しい場合がある。CRRT装置は、新鮮な水だけでなく、得ることがより困難であり得る滅菌水を必要とする。必要となる滅菌水の量が減ることは、容易に展開可能なポータブルCRRT装置にとって望ましい。
【0015】
一例では、持続的腎代替療法のためのポータブルシステムが提供される。システムは、透析器、血液回路、透析液回路、キャニスタ、ポンプ、およびハウジングを含むことができる。血液回路は、患者から血液を受容し、透析器を通して血液を循環させ、浄化された血液を患者に戻すように構成することができる。透析液回路は、透析器を通して透析液を循環させ、血液から不純物を除去するように構成することができる。キャニスタは、少なくとも1つの吸着剤を含むことができ、キャニスタは、透析液回路に流体接続可能であり、キャニスタは、透析液から不純物を除去するように構成される。ポンプは、血液回路および透析液回路に流体接続することができ、ポンプは、血液および透析液を透析器向流を通して同時に駆動するように構成される。ハウジングは、透析器、回路、キャニスタおよびポンプを含むシステムを収容することができる。システムは、能動的搬送モードと静止モードとの間で切り換え可能である。能動的搬送モードでは、構成要素はハウジング内に収容可能であり、システムに取り付けられている間、患者の可動性を許容する。
【0016】
患者が搬送されている間または過酷な環境にいる間に持続的腎代替療法を実施する方法であって、患者の身体に位置するポータブルシステムを用いて血液から毒素を持続的に除去することであって、毒素を除去することは、システムに取り付けられている間、患者の移動を可能にする能動的搬送モードと、患者が静止している間に使用する静止モードとの間で切り換えられるように構成されたポータブル持続的腎代替療法システムを用いることを含む、方法。
【0017】
必ずしも一定の縮尺で描かれていない図面において、同様の数字は、異なる図における同様の構成要素を説明することがある。異なる添え字を有する同様の数字は、同様の構成要素の異なる例を表し得る。図面は、概して限定としてではなく、例として本明細書で議論される種々の実施形態を図示する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】一例におけるPCRRTシステムの概略図を示す。
図1B】一例におけるPCRRTシステムの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のいくつかの例が本明細書に示され、説明されてきたが、そのような例示は例としてのみ提供されることが当業者には明らかであろう。当業者であれば、本発明から逸脱することなく、多数の改変、変更、および置換を思いつくであろう。本明細書に記載される本発明の例に対する様々な代替物が、本発明を実施する際に使用され得ることが理解されるべきである。
【0020】
本開示は、とりわけ、ポータブル持続的腎代替法(PCRRT)システムおよび方法を説明する。PCRRTシステムは、透析器、血液回路、透析液回路、キャニスタ、ポンプ、およびハウジングを含むことができる。ハウジングは、透析器、回路、キャニスタおよびポンプを含むシステムを収容することができる。システムは、能動的搬送モードと静止モードとの間で切り換え可能である。能動的搬送モードでは、構成要素はハウジング内に収容可能であり、システムに取り付けられている間、患者の可動性を許容する。
【0021】
図1A乃至図1Bは、一例におけるPCRRTシステム100の概略図を示す。システム100は、透析器110と、血液回路120と、透析液回路130と、キャニスタ140,141,142と、ポンプ150と、ハウジング160と、電源170と、濡れセンサ180と、制御ユニット190とを含み得る。
【0022】
透析器110は、透析液入力112、透析液出力114、血液入口116、および血液出口118を有することができる。血液回路120は、入口121、血液クランプ122、生理食塩水フラッシュ123、補助ポンプ124、ヘパリン源125、気泡検出器126、流量センサ127、血液クランプ128、および出口129を含むことができる。透析液回路130は、血液検出器131と、補助ポンプ132および限外濾過液収集器133と、流量センサ134と、電解質源136を有する補助ポンプ135とを含むことができる。キャニスタ140,141,142は、透析液回路130上にあってもよく、1つ以上の通気孔143を有し、1つ以上のアンモニアセンサ146に加えて、補助ポンプ144および重炭酸ナトリウム源145に接続され得る。ポンプ150は、血液回路120および透析液回路130の両方に流体接続することができる。ハウジング160は、他の構成要素を取り囲むことができる。電源は、バッテリ171およびAC電源ジャック172を含むことができる。濡れセンサ180は、患者181、血液回路120、および透析液回路130に接続され得る。
【0023】
システム100において、2つの別個の流路(1つは血液用(血液回路120)であり、もう1つは透析液用(透析液回路130)である)が存在する。血液および透析液の両方は、二重チャネルの脈動ポンプ150によって、透析器110を介して送り込まれ得る。キャニスタ140,141,142内の吸着剤は、透析器110を介して循環される透析液を持続的に浄化および再生することができる。患者の血液は、中空糸透析器であり得る透析器110を通して送り込まれ得る。透析液は、患者の血液の流れ方向とは反対の流れ方向に透析器110を介してポンプで汲み上げられ得る。通常は腎臓によって除去される血液中の毒素および流体は、透析器内の繊維壁の孔を通って透析液へと通過することができる。毒素および流体は、透析液が吸着剤キャニスタ140,141,142を通って再循環されるときに除去され得る。反対の相の流れは、透析液と血液との間の分子の交換をより効率的に可能にするために、脈動的に行われ得る。
【0024】
透析器110は、血液回路120及び透析液回路130の両方に流体接続することができる。透析液は、透析器110を通って第1の方向に流れることができ、血液は、透析器110を通って向流で流れる。向流は、透析液回路130と血液回路120との間の勾配を最大化することができるため、透析器110の膜を横切る交換を最大化する。血流からの毒素は、血液および透析液が半多孔性膜の対向する表面を横切って流れるときに、透析器110の半多孔性膜を横切って透析液中に拡散することができる。一例では、血流は血液回路120を通って時計回りに移動することができ、透析液は透析液回路130を通って反時計回りに流れることができる。
【0025】
システム100において、毒素は、24時間にわたって一定の速度で除去され得る。二種類の毒素、即ちタンパク質に結合した毒素、および遊離毒素が存在する。遊離毒素は、一般に、より毒性があると考えられる。24時間にわたる除去を必要とする毒素の例としては、p-クレシルおよびインドキシル硫酸が挙げられる。これらは、タンパク質結合毒素(P-BUTS:protein bound toxins)と呼ばれる一群の毒素の一部である。唯一の毒性である遊離型は尿中に出てくるので、健康な患者であればその濃度は低く保たれる。透析では、遊離分画が透析中に出てきて、遊離毒素のレベルも低くなるが、患者が透析器にかかるとすぐに、タンパク質と結合した毒素が遊離分画と再平衡化し、再び毒性レベルまで上昇する。約25の既知のP-BUTSが存在する。システム100は、24時間にわたって一定速度で毒素を除去するように構成することができる。
【0026】
血液回路120は、患者から血液を受容し、透析器110を通して血液を循環させ、浄化された血液を患者に戻すように構成することができる。血液回路120は、入口121、血液クランプ122、生理食塩水フラッシュ123、補助ポンプ124、ヘパリン源125、気泡検出器126、流量センサ127、血液クランプ128、および出口129を含むことができる。血液回路120は、患者から血液を受け取る第1の部分120aと、患者に血液を戻す第2の部分120bとを含むことができる。第1の部分120aは、未透析血液を含有することができ、第2の部分120bは、透析血液を含有することができる。血液回路120は、例えば血液の流れに適したチューブまたは他の導管から形成され得る。
【0027】
血液回路120の第1の部分120aにおいて、入口121は、患者への取り付けのために構成され得る。入口付近で、血液クランプ122は、血液回路内の流れの開始および停止を可能にするように構成することができる。生理食塩水フラッシュ123は、生理食塩水を提供するために、入口121の近くで血液回路120に追加的に接続され得る。
【0028】
場合によっては、注入口121は、システム100の血液回路120内で血栓が形成されるのを防止するために血流に抗凝血剤を添加するため等の抗凝血剤注入口であってもよい。場合によっては、抗凝血剤用の接続部が、補助ポンプ124のような注入口121とは別に設けられてもよい。そのような接続部は、ヘパリン源125などの抗凝血剤リザーバに接続され得る。抗凝血剤の例としては、ヘパリン、またはより具体的には、当業者に知られている中でもとりわけ、低分子量ヘパリン、直接トロンビン阻害薬、ダナパロイド、アンクロッド、r-ヒルジン、アブシキシマブ、チロフィバンおよびアルガトロバンを挙げることができる。任意選択的に、任意の例において、抗凝血剤注入口は、ポンプ150の後など、血液回路120上の他の場所に配置され得る。血液回路120への1つ以上の抗凝血剤の注入は、例えばポンプ150によって行われ得る。
【0029】
血液回路120の第1の部分120aは、毒素についてまだ処置されていない患者からの血液の流れを含んでもよい。第2の部分120bは、毒素の処置を受けた患者に戻る血液の流れを含んでもよい。第1の部分120aにおいて、血液回路120は、入口121からポンプ150を通って血液入口116を介して透析器110への血液を流すことができ、毒素は、透析器110内の繊維を横切って透析液へ移動することができる。第2の部分120bでは、血液出口118で透析器を出ると、血液は出口129に向かって患者に向かって流れることができる。血流は、気泡検出器126および流量センサ127など、任意の例に含まれ得るいくつかの任意選択の構成要素を通って流れることができる。
【0030】
気泡検出器126は、第2の部分120bなど、透析器110の下流で血液回路120に接続され得る。気泡検出器126は、血流中の気泡を検出し、検出された場合に気泡の表示を生成するように構成され得る。場合によっては、気泡検出器126は、血液回路120内の指定された気泡サイズを検出することができる。気泡の検出は、制御ユニット190およびユーザインターフェース195に通信可能である。制御ユニット190は、血流内の気泡の検出に応じて、システム100を休止および/または電源オフするように構成可能である。
【0031】
流量センサ127は、血液回路120の第2の部分120b内など、血液回路120に対して直列または並列であってもよい。流量センサ127は、血液がシステム100を通って流れる速度を測定するように構成され得る。流量センサ127は、機械式流量計、圧力式流量計、可変面積流量計、光学式流量計、それらの組合せ、または他のタイプの流量センサであってもよい。
【0032】
血液回路120上の流量センサ127は、所定の期間にわたって血液回路を通って移動する血液の体積を検出することができる。この情報は、制御ユニット190に通信可能であるため、回路を通る血液の流れを監視することができる。血流が正常範囲外である場合、制御ユニット190は、透析器110およびポンプ150の動きを変更することにより、システム100を通る血液および/または透析液の流れを変更することができる。例えば、血流が遅すぎる場合、対処される必要があり得る凝血塊または閉塞を示し得る。任意選択的に、任意の例において、流れの変化は、ユーザインターフェース195上などで、聴覚的、視覚的、触覚的、又は他の情報などのアラームをユーザに発動させてもよい。血流が速すぎる場合、制御ユニット190は、ポンプ150の機構を遅くすることにより、システム100内の流体の流れを調節することができる。
【0033】
血液回路120は、故障状態中に作動するように構成された血液クランプ128をさらに含むことができる。血液クランプ128の作動は、血液回路120からの血液が患者に戻ることを防止するために、血液回路120の戻り部分120bの閉塞を含むことができる。障害状態の間、血液クランプ128は、静脈戻り部分120bを閉塞して、任意の関連する危険状態を患者から隔離するように発動することができる。
【0034】
血液回路120において、血液は、毒素の除去のために透析器110内にポンプで汲み上げられ得る。透析器110は、血液をポンプで送り込むことができるルーメンを有する透析器ファイバを含むことができる。血液凝固は、ヘパリン源125から補助ポンプ124で送り込まれる抗凝血剤またはヘパリンによって軽減され得る。透析器110を通って循環した後、浄化された血液を患者に戻すことができる。血液は、血液回路120の出口129を通って患者に戻され得る。
【0035】
透析液回路130は、透析器110を通して透析液を循環させ、血液から不純物を除去するように構成することができる。透析液回路130は、血液検出器131と、補助ポンプ132および限外濾過液収集器133と、流量センサ134と、電解質源136を有する補助ポンプ135とを含むことができる。
【0036】
透析液回路は、第1の部分130aおよび第2の部分130bを含むことができる。透析液回路130は、それを通る透析液の流れのための滅菌透析液回路であり得る。透析液回路130は、透析器110およびポンプ150を通り、キャニスタ140,141,142を通り、透析器110に戻る透析液の流れを可能にする。透析液回路130は、例えば透析液の流れに適したチューブまたは他の導管から形成され得る。
【0037】
透析液回路130の第1の部分130aは、透析液回路130を血液検出器131に接続する血液検出アクセスポートを含むことができる。血液検出アクセスポートは、透析器110を出る透析液中の血液の存在を検出することができるように、血液検出器131に接続され得る。場合によっては、透析器110の膜の破損により、血液が透析液流に侵入してしまうことがある。血液検出器131は、透析液中の血液の検出時に制御ユニット190がシステム100を一時停止および/または電源オフするように、あるいは制御ユニット190が使用者へのアラームを開始させるように、制御ユニット190と通信することができる。
【0038】
透析液は、ポンプ150によって、透析器110から透析液出力114を通って透析液回路の第1の部分130a内へ、キャニスタ140,141,142に向かって駆動され得る。場合によっては、透析液回路の第1の部分130aは、補助ポンプ132に接続され得る。透析液は、キャニスタ140,141,142を通して駆動され得、キャニスタ内の吸着剤が透析液を処理し、次いで透析液は、透析液回路130の第2の部分130bに流出する。透析液回路の第2の部分130bにおいて、透析液は、キャニスタ140,141,142から透析器110に向かって戻るように推進され得、そこで透析液は、透析液入力112を通って透析器110に進入することができる。
【0039】
血液検出器131は、透析器110の遠位にある透析液回路130に接続された血液漏出検出器であり得る。したがって、血液検出器131は、透析液回路内で血液が検出された場合に監視してアラームを発動するように構成され得る。
【0040】
補助ポンプ132および限外濾過液収集器133は、システムから限外濾過液を除去し、システム容積を維持するように構成され得る。透析液からの限外濾過液は、透析液回路130から出ることができ、バッグ、キャニスタ、または限外濾過液を回収するための任意の他のリザーバとすることができる限外濾過液回収器133内に回収することができる。補助ポンプ132は、透析液回路130から限外濾過液収集器133への限外濾過液の流れを制御するために使用可能である。限外濾過ポンプ132は、マイクロポンプであり得る。限外濾過液の除去は、透析液からの水およびナトリウムの除去を提供することができる。例えば、限外濾過液除去速度は、血行動態の鈍い変化を低減または回避するために、生理学的速度に維持され得る。
【0041】
任意選択的に、任意の例において、1つ以上の流量センサ134は、代替的に又は追加的に、透析液の流量を測定するために透析液回路上にあってもよい。流量センサ134は、機械式流量計、圧力式流量計、可変面積流量計、光学式流量計、それらの組合せ、または他のタイプの流量センサであってもよい。
【0042】
任意選択的に、任意の例において、透析液回路130は、システムから微粒子を除去するなどのために、1つ以上のフィルタを含むことができる。
任意選択的に、任意の例において、透析液回路130は、任意選択的な電解質が透析液流に注入可能である1つ以上の点を含むことができる。電解質ホメオスタシスの維持を容易にするために、1つ以上のタイプの任意の電解質溶液が透析液流に添加され得る。例えば、重炭酸ナトリウム、カルシウム、および/またはマグネシウムを含む電解質補充溶液などの1つまたは複数の任意選択の電解質補充溶液を、1つまたは複数の任意選択の電解質注入点で透析液流に注入することができる。電解質補充補助ポンプは、透析液が再生吸着剤カートリッジを通過した後に、透析液中にカルシウム、マグネシウム、および潜在的にカリウムを導入することができる。
【0043】
任意選択的に、任意の例において、透析液回路の第2の部分130bは、電解質源136を有する補助ポンプ135に近接した1つ以上の電解質注入ポートを含むことができる。電解質リザーバは、電解質溶液を保持することができる。任意選択的に、任意の例において、電解質溶液は、透析液のpHを調整するために使用され得る。電解質溶液は、例えば、重炭酸ナトリウム溶液であり得る。電解質溶液は、電解質注入ポートを介して透析液流に注入され得る。電解質溶液の透析液流への流れは、電解質溶液ポンプによって制御され得る。このような電解質溶液ポンプは、最大で毎時約5ミリリットル(mL/hr)、例えば、約1mL/hrから約2mL/hr、最大で約5mL/hrを汲み上げるように構成され得る。
【0044】
システム100において、透析液回路130は、他のCRRTシステムと比較してより少量の透析液で動作するように構成可能である。例えば、透析液回路130は、約250mLから350mLの透析液、または約300mLの透析液で動作するように構成可能である。例において、システム100は、約30ポンド(約13.6キログラム)以下の重量を有することができる。
【0045】
キャニスタ140,141,142は、透析液回路130上にあってもよく、1つ以上の通気孔143を有し、補助ポンプ144および重炭酸ナトリウム源145に接続され得る。キャニスタ140,141,142はそれぞれ、少なくとも1つの吸着剤を含むことができる。キャニスタ140,141,142は、例えば直列で透析液回路130に流体接続され得る。キャニスタ140,141,142は、透析液から不純物を除去するように構成可能である。
【0046】
キャニスタ140,141,142は、例えば、木炭であり得る吸着剤を含むことができる。任意選択的に、任意の例において、キャニスタ140,141,142は、有機尿毒症代謝産物及び重金属のうちの1つ以上を除去するように構成された吸着剤を含むことができる。任意選択的に、任意の例において、吸着剤は、クレアチニン、尿酸及びB2ミクログロブリン、p-クレソール、インドール酢酸及び馬尿酸塩のうちの1つ以上を除去するように構成され得る。一例では、吸着剤は、木炭などの活性炭を含むことができる。透析装置140,141,142を出た透析液は、透析器110に入る透析液が浄化された透析液であるように、再生された透析液とすることができる。
【0047】
吸着剤は、粉末、カートリッジ、または他の適切な変形の形態であってもよい。場合によっては、吸着剤は複数の層を含むことができる。収着剤は、炭素、木炭、リン酸ジルコニウム、含水酸化ジルコニウム、ジルコニウム合金、ジルコニウムを含有する有機化合物、ジルコニウムを含有する無機化合物、ジルコニウムを含有する鉱物、ウレアーゼ、またはそれらの組み合わせを含むことができる。様々な吸着剤は、例えば、尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解し、二酸化炭素を排出しながらアンモニアを吸着することができる。種々の吸着剤は、例えば、カルシウム、マグネシウム、カリウム、およびそれらの組み合わせを除去することができる。場合によっては、吸着剤のうちの1つ以上は、リン、クレアチニン、中間分子、尿毒症毒素、およびそれらの組み合わせを吸着することができる。
【0048】
キャニスタは、例えば、粉末層の間にフィルタを含むことができる。フィルタは、セルロース材料で形成され得る。これにより、吸着剤を通る層流を可能にし、種々の吸着剤の材料層間の分離を提供し、吸着剤の粒子間の流路を防ぐとともに、粉末の混合または漏出を防止することができる。
【0049】
第1のキャニスタ140は、例えば、固定化ウレアーゼおよびリン酸ジルコニウム陽イオン交換体を含むことができる。第2のキャニスタ141は、例えば、リン酸ジルコニウム陽イオン交換体および含水酸化ジルコニウムを含むことができる。第3のキャニスタ142は、例えば、活性炭を含むことができる。場合によっては、吸着剤の量、種類、および順序を変更することができる。
【0050】
場合によっては、システムは、システム内のアンモニアを監視するように構成され、アンモニアが所定の閾値を超えて検出された場合にアラームを発動するように構成されたアンモニアセンサ146を含むことができる。システム中の高レベルのアンモニアは、リン酸ジルコニウムなどの吸着剤が飽和している可能性があり、交換が必要であることを示す場合がある。
【0051】
任意選択的に、任意の例において、透析液回路130は、補助ポンプ144を備えた1つ以上の重炭酸塩源145を含むことができる。補助ポンプ144を始動させて、キャニスタ140および141を通過した後の透析液に重炭酸塩を導入することができる。
【0052】
ポンプ150は、システムを通して血液および透析液の両方を移動させるべく、血液回路120および透析液回路130の両方に流体接続され得る。ポンプ150は、透析器の向流を通して血液および透析液を同時に駆動するように構成され得る。
【0053】
場合によって、ポンプ150は、パルス状の逆位相で作動可能である。ポンプ150は、透析器110内の透析フィルタの膜を横切る流体および分子のより効率的な移送をもたらすパターンを導入することができる。これにより、血液からの毒素のクリアランスを改善することができる。フローパターンは、例えば、尿毒症毒素のクリアランスを可能にし得るが、β2ミクログロブリンおよび血清リンの除去を可能にし得る。このような拍動流では、フィルタの血液室内の圧力および流量は、透析液室内で流量および圧力の両方が最低点であるときに、最大点となる。これらの正反対の高低点が断続的に反転し、透析器膜の細孔を横切る「プッシュプル」トラフィックが生じる。これは、透析フィルタ内の分子および流体の対流移動の有効性を増加させることによって、装置が小型化であるにもかかわらず、尿毒症毒素のクリアランスを改善することができる。
【0054】
ポンプ150は、交互並列脈動ポンプ(side-to-side pulsatile pump)であってもよい。交互並列脈動ポンプ150は、充電式バッテリを含むバッテリによって、および/または壁コンセントによって電力供給され得る。例えば、ポンプ150の搬送を可能にすることによって、システム100などのポンプ150を組み込む透析システムの搬送を容易にするために、並列脈動ポンプ150はバッテリによって電力が供給され得る。そのような交互並列ポンプの例は、ビクター・グーラに付与された米国特許出願第15/890,718号(現在、米国特許第10,933,183号として発行されている)に開示されており、その全内容は本明細書に援用される。
【0055】
交互並列脈動ポンプ150は、ポンプケーシング内に、患者からの血液が流れることが可能な血液チューブと、透析液が流れることが可能な透析液チューブとを保持するように構成され得る。ポンプは、血液室チューブに第1の圧力を、透析液室チューブに第2の圧力を交互に加えるために、側方から側方への運動を提供するように構成された圧縮ディスクを含むことができる。これは、血液回路120および透析液回路130の交互のポンピングを可能にすることができる。場合によっては、ポンプはモータおよびギアボックスによって駆動され得る。ポンプ150は、例えば、血液パルスのピークが透析液流のピークと90度から180度位相がずれるように、血液パルスが透析液パルスと位相がずれている拍動流を生成することができる。
【0056】
本明細書で説明される1つ以上の交互並列脈動ポンプは、既知のポンプに関連付けられる問題を低減または排除しながら、血液および透析液の両方のための所望のポンピング体積を提供するように構成され得る。任意選択的に、任意の例において、本明細書に記載される1つ以上の交互並列脈動ポンプは、約35ミリリットル/分(mL/分)を超えるポンピング体積を提供することができる。任意選択的に、任意の例において、交互並列脈動ポンプを使用する透析システムは、約100mL/分の透析液の流量を提供することができる。
【0057】
ハウジング160は、透析器、血液回路透析液回路、キャニスタ、およびポンプを含む他の構成要素を取り囲むことができる。ハウジングは、システム100を搬送するのに適したプラスチック、複合材料、または金属材料であってもよい。例では、ハウジング160は、トランク、バックパック、ハードケース、スーツケースなどのポータブル容器を備えることができ、可搬性のための車輪、ならびに人の身体に取り付けるためのストラップなどを含むことができる。
【0058】
ハウジング160及びシステム100は、能動的搬送モードと静止モードとの間で切り換えられるように構成され得る。能動的搬送モードでは、透析器、血液回路、透析液、およびキャニスタをハウジング内に収容することができる。能動的搬送モードは、システム100に取り付けられている間の患者の動きやすくすることができる。静止モードは、患者が静止しているときのためのものであり得る。
【0059】
電源170は、システム100に接続されたバッテリまたは充電式バッテリなどのポータブル電源であってもよい。場合によっては、電源170は、壁コンセントに差し込むためのオプションをさらに含むことができる。例えば、システムが能動的搬送モードにあるとき、ポータブル電源、例えばバッテリ171を使用してポンプに電力を供給することができる。ポータブル電源は、充電式バッテリを備えるポータブル電源であってもよい。静止モードでは、システムは、AC電力ジャック172を使用して、AC電源を備える壁コンセントに差し込むことができる。
【0060】
濡れセンサ180は、患者181、血液回路120、および透析液回路130に接続され得る。濡れセンサ180は、システムと患者との間の流体漏れを検出するように構成され得る。例えば、濡れセンサ180は、PCRRTシステム100を患者に接続するために使用されるカテーテルまたはカニューレの間の流体漏れを検出するために使用され得る。検出された流体漏れは、アラームまたは故障状態を発動し、システム100の機能を休止させることができる。
【0061】
制御ユニット190は、システム100の1つまたは複数の構成要素と電気的に通信することができる。例えば、制御ユニット190は、気泡検出器126および血液検出器131と通信することができるため、気泡が血流中で検出されたとき、および/または血液が透析液流中で検出されたときにアラームを開始する。任意選択的に、任意の例において、制御ユニット190は、血流中の気泡及び/又は透析液流中の血液の検出時に、システム100を一時停止及び/又は電源切断するように構成される。任意選択的に、任意の例において、制御ユニット190は、ポンプ150を制御して、システム100を通る血液及び/又は透析液の所望の流れを提供するように構成される。制御ユニット190は、透析液への電解質の流れ、血流への抗凝血剤、および/または透析液からの限外濾過液を制御するように構成された1つまたは複数の任意選択のポンプを制御することができる。
【0062】
ユーザインターフェース195は、患者がシステム100のステータス更新を見るか、または機能を監視することを可能にすることができる。ユーザインターフェース195は、例えば、ボタン、スクリーン、ライト、またはシステムが適切に機能しているかどうかを伝えることができる他の情報を含むことができる。
【0063】
持続的腎代替療法を実施する方法は、患者が搬送されている間に、または無菌環境において行われ得る。本方法は、患者が能動的搬送モードでポータブル持続的腎代替療法システムに接続されている間に患者を搬送することと、患者を搬送している間にポータブル持続的腎代替療法システムを用いて血液から毒素を持続的に除去することとを含むことができる。
【0064】
PCRRTは、電気の壁コンセントへのアクセス可能な接続がなく、滅菌流体の体積がより少ない無菌環境において、損傷または疾病によるAKIに罹患している患者を治療するために使用することができる。例えば、PCRRTシステムは、負傷者を緊急に避難させることができない戦場において、公衆衛生の緊急事態において、またはCRRTの中断が患者を危険にさらす体外生命維持装置での患者の能動的搬送中に中断されないCRRTを提供するために使用することができる。
【0065】
PCRRTは、静止モードおよび能動的搬送モードの両方で使用するための可搬装置であってもよい。PCRRTは、患者のベッドサイドまたは患者の部屋などにおいて静止モードで使用することができる。PCRRTは、1日当たり30から40リットルと比較して、1日当たり最大約300mLなど、低減された量の透析液を使用することができる。能動的搬送モードでは、PCRRTは、例えば、バッテリ駆動であってもよく、処置を中断する必要なく患者に可動性を与える。PCRRTは、例えば、患者をある場所から別の場所へ、ガーニーによって、乗り物で、または飛行中に能動的に搬送する間に使用することができる。
【0066】
各種注記および例
例1は、持続的腎代替療法のためのポータブルシステムを含むことができる。該ポータブルシステムは、透析器と、患者から血液を受容し、透析器を通して血液を循環させ、浄化された血液を患者に戻すように構成された血液回路と、前記透析器を通して透析液を循環させ、血液から不純物を除去するように構成された透析液回路と、少なくとも1つの吸着剤を含むキャニスタであって、前記透析液回路に流体接続可能であるとともに、前記透析液から不純物を除去するように構成されたキャニスタと、前記血液回路および前記透析液回路に流体接続されたポンプであって、前記血液および前記透析液を同時に駆動するように構成されたポンプと、前記システムを収容するハウジングであって、前記透析器、前記血液回路、前記透析液回路、前記キャニスタ、および前記ポンプが、前記ハウジング内に一体的に配置される、ハウジングとを備え、前記システムは、能動的搬送モードと静止モードとの間で切り換えられるように構成され、前記能動的搬送モードでは、前記透析器、前記血液回路、前記透析液、および前記キャニスタが前記ハウジング内に収容され、患者が前記システムに繋がれた状態で、患者が移動することを許容するものであり、前記静止モードは、前記患者が静止している間に使用するためのものである、ポータブルシステム。
【0067】
例2は、例1を含むことができ、前記能動的搬送モードにおいて、前記システムは、前記ポンプに電力を供給するように構成されたポータブル電源をさらに備える。
例3は、例1又は例2を含むことができ、前記ポータブル電源は、充電式バッテリを備える。
【0068】
例4は、例1乃至例3の何れか1つを含むことができ、前記静止モードにおいて、前記システムはAC電源をさらに備える。
例5は、例1乃至例4の何れか1つを含むことができ、前記透析液回路は、約250mLから350mLの透析液で動作するように構成される。
【0069】
例6は、例1乃至例5の何れか1つを含むことができ、前記ポータブルシステムは、約30ポンド(約13.6キログラム)以下の重量を有する。
例7は、例1乃至例6の何れか1つを含むことができ、前記血液回路に流体接続された気泡検出器をさらに備え、前記気泡検出器は、前記血液回路内の気泡を検出することが可能であり、気泡が検出されたときに気泡の情報を生成するように構成される。
【0070】
例8は、例1乃至例7の何れか1つを含むことができ、故障状態中に作動するように構成された血液クランプをさらに備え、該血液クランプの作動は、前記血液回路からの血液が前記患者に戻ることを防止するために、前記血液回路の戻り部分の閉塞を含む。
【0071】
例9は、例1乃至例8の何れか1つを含むことができ、前記透析器の遠位にある前記透析液回路に接続された血液漏れ検出器をさらに備え、該血液漏れ検出器は、前記透析液回路において血液が検出された場合に監視してアラームを発動するように構成される。
【0072】
例10は、例1乃至例9の何れか1つを含むことができ、前記システムと前記患者との間の流体漏れを検出するように構成された漏れセンサをさらに備える。
例11は、例1乃至例10の何れか1つを含むことができ、前記システム内のアンモニアを監視するように構成され、アンモニアが所定の閾値を超えて検出された場合にアラームを発動するように構成されたアンモニアセンサをさらに備える。
【0073】
例12は、例1乃至例11の何れか1つを含むことができ、前記少なくとも1つの吸着剤は、炭素、木炭、リン酸ジルコニウム、含水酸化ジルコニウム、ジルコニウム合金、ジルコニウムを含有する有機化合物、ジルコニウムを含有する無機化合物、ジルコニウムを含有する鉱物、ウレアーゼ、またはそれらの組み合わせを含む。
【0074】
例13は、例1乃至例12の何れか1つを含むことができ、前記システムから微粒子を除去するように構成されたフィルタをさらに備え、該フィルタは、前記ポンプおよび前記透析液回路に流体接続される。
【0075】
例14は、例1乃至例13の何れか1つを含むことができ、前記ポンプは並列脈動ポンプを含む。
例15は、例1乃至例14の何れか1つを含むことができ、前記ハウジングはトランク、バックパック、ハードケースおよびスーツケースを含む群から選択されるポータブルケースを含む。
【0076】
例16は、患者が搬送されている間または無菌環境にいる間に持続的腎代替療法を実施する方法であって、患者が能動的搬送モードでポータブル持続的腎代替療法システムに接続されている間に前記患者を搬送することと、前記患者を搬送している間に前記ポータブル持続的腎代替療法システムを用いて血液から毒素を持続的に除去することとを含む方法を含むことができる。
【0077】
例17は、例16を含むことができ、前記ポータブル持続的腎代替療法システムを静止モードに切り換えることと、前記静止モードにある間に血液から毒素を除去し続けることとをさらに含む。
【0078】
例18は、例16乃至例17の何れか1つを含むことができ、前記ポータブル持続的腎代替療法システムにポータブルエネルギー源から電力供給することをさらに含む。
例19は、例15乃至例18の何れか1つを含むことができ、前記ポータブル持続的腎代替療法システムを使用することは、約250mLから350mLの透析液を使用することを含む。
【0079】
例20は、例15乃至例19の何れか1つを含むことができ、前記ポータブル持続的腎代替療法システムを使用することは、約250mLから300mLの透析液を使用することを含む。
【0080】
これらの非限定的な例の各々は、単独で存在し得るか、または他の例のうちの1つ以上との種々の順序もしくは組み合わせで組み合わせられてもよい。
上記の詳細な説明には、詳細な説明の一部を構成する添付の図面への参照が含まれている。図面は、例示として、発明が実施され得る特定の実施形態を示している。これらの実施形態は、本明細書では「例」とも呼ばれる。そのような例は、図示されているかまたは説明されているものに加えて要素を含むことができる。しかしながら、本発明者らは、図示されるかまたは説明される要素のみが提供される例をも考慮している。さらに、本発明者らは、本明細書に図示されるかまたは記載される特定の例(またはその例の1つまたは複数の態様)に関して、または本明細書に図示されるかまたは記載される他の例(またはそれら例の1つまたは複数の態様)に関して、図示されるかまたは説明される要素(またはそれら要素の1つまたは複数の態様)の任意の組み合わせまたは順列を使用する例をも考慮している。
【0081】
本明細書と参照により援用された文書との間で一貫性のない使用法がある場合、この明細書の使用法が優先される。
本明細書では、「1」または「1つ」という用語は、特許文献において一般的であるように、「少なくとも1つ」または「1つ以上」の他の例または使用法とは無関係に、1つまたは複数を含むために使用されている。本明細書では、「または」という用語は、特に明記されていない限り、「AまたはB」は「BではなくA」、「AではなくB」、そして「AおよびB」を含むように、非排他的なものを参照するために使用される。本明細書において、「含む(including)」および「~の場合に(in which)」という用語は、「含む(comprising)」および「ここで(wherein)」という対応する用語の平易な英語の同等物として使用される。また、以下の特許請求の範囲において、「含む」および「備える」という用語は、非限定的であり、すなわち、請求項に記載されたそのような用語とともに列挙されたものに加えて複数の要素を含むシステム、デバイス、物品、組成物、配合物、またはプロセスは、依然として特許請求の範囲内にあると見なされる。さらに、以下の特許請求の範囲において、「第1」、「第2」、および「第3」などの用語は、単にラベルとして使用され、それらの目的語に数値要件を課すことを意図するものではない。
【0082】
本明細書で説明されている方法の例は、少なくとも部分的にマシンまたはコンピュータで実施され得る。いくつかの例は、上記の例で説明された方法を実行するように電子デバイスを構成するように動作可能な命令で符号化されたコンピュータ可読媒体またはマシン可読媒体を含むことができる。そのような方法の実装は、マイクロコード、アセンブリ言語コード、高級言語コードなどのようなコードを含むことができる。このようなコードは、さまざまなメソッドを実行するためのコンピュータで読み取り可能な命令を含むことができる。コードは、コンピュータプログラム製品の一部を形成し得る。さらに、一例では、コードは、実行中または他の時間などに、1つまたは複数の揮発性、非一時的、または不揮発性の有形のコンピュータ可読媒体に有形に格納され得る。これらの有形のコンピュータ可読媒体の例は、ハードディスク、リムーバブル磁気ディスク、リムーバブル光ディスク(例えば、コンパクトディスクおよびデジタルビデオディスク)、磁気カセット、メモリカードまたはメモリスティック、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)などを含み得るが、これらに限定されない。
【0083】
上記の説明は、例示を目的としたものであり、限定的なものではない。例えば、上記の例(またはその1つまたは複数の態様)は、互いに組み合わせて使用され得る。上記の説明を検討することにより、当業者などによれば、他の実施形態が使用され得る。要約書は、読者が技術的開示の性質を迅速に確認できるようにするために提供されている。それは、特許請求の範囲の範囲または意味を解釈または制限するために使用されないことを理解した上で提出される。また、上記の詳細な説明では、開示を合理化するために、様々な特徴が一緒にグループ化され得る。これは、請求項に記載されていない開示された機能が任意の請求項に不可欠であることを意図していると解釈されるべきではない。むしろ、本発明の主題は、特定の開示された実施形態のすべての特徴よりも少ない特徴にあってもよい。したがって、以下の特許請求の範囲は、例または実施形態として詳細な説明に組み込まれ、各請求項は、別個の実施形態としてそれ自体で有効であり、そのような実施形態は、様々な組み合わせまたは順列で互いに組み合わせることができると考えられる。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して、そのような特許請求の範囲が権利を与えられている均等物の全範囲とともに決定されるべきである。
図1A
図1B
【国際調査報告】