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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-13
(54)【発明の名称】航空機推進ユニット
(51)【国際特許分類】
   B64D 27/34 20240101AFI20240205BHJP
   B64D 27/357 20240101ALI20240205BHJP
   B64D 35/021 20240101ALI20240205BHJP
【FI】
B64D27/34
B64D27/357
B64D35/021
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547872
(86)(22)【出願日】2022-02-09
(85)【翻訳文提出日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 US2022070585
(87)【国際公開番号】W WO2022174229
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】63/147,560
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520437526
【氏名又は名称】ジョビー エアロ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】JOBY AERO,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ワグナー、ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ランドシーデル、ブラッドリー
(72)【発明者】
【氏名】ミリア、ジョーイ
(72)【発明者】
【氏名】マカフィー、スコット
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル ヘースト、マーティン
(57)【要約】
航空機推進ユニットは、電気モーターと、電気モーターを動作させるために使用される少なくとも1つのアクセサリユニットと、インバータモジュールであって、電気モーターおよび少なくとも1つのアクセサリユニットに電力を供給する複数のインバータを含むインバータモジュールと、電気モーター及びインバータモジュールに結合された冷却システムであって、電気モーターおよび少なくとも1つのアクセサリユニットを通してまたはそれらに隣接して冷却剤を循環させるための冷却剤通路を備える冷却システムと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機推進ユニットであって、
電気モーターと、
前記電気モーターを動作させるために使用される少なくとも1つのアクセサリユニットと、
前記電気モーターおよび前記少なくとも1つのアクセサリユニットに電力を供給する複数のインバータを含むインバータモジュールと、
前記電気モーターおよび前記インバータモジュールに結合された冷却システムであって、前記電気モーターおよび前記インバータモジュールを通ってまたはそれらに隣接して冷却剤を循環させるための冷却剤通路を含む前記冷却システムと、を備える航空機推進ユニット。
【請求項2】
前記インバータモジュールは、前記電気モーター内に少なくとも部分的に入れ子構造になっている、請求項1に記載の航空機推進ユニット。
【請求項3】
前記インバータモジュールは、前記複数のインバータから前記冷却剤通路内の前記冷却剤に熱を伝達するための1つまたは複数の冷却板を含む、請求項1に記載の航空機推進ユニット。
【請求項4】
前記少なくとも1つのアクセサリユニットは、前記冷却剤通路を通って前記冷却剤を循環させるためのポンプを含む、請求項1に記載の航空機推進ユニット。
【請求項5】
前記冷却システムは、ラジエータを含み、前記ポンプは、前記ラジエータを通って空気を送風するためのファンを含む、請求項4に記載の航空機推進ユニット。
【請求項6】
前記少なくとも1つのアクセサリユニットは、前記航空機推進ユニットを垂直飛行配置と水平飛行配置との間で傾動させるティルト機構を含む、請求項1に記載の航空機推進ユニット。
【請求項7】
前記冷却システムは、ラジエータを含み、前記航空機推進ユニットが前記垂直飛行配置にある場合の使用時の前記ラジエータを通る空気流は、前記航空機推進ユニットが前記水平飛行配置にある場合よりも大きい、請求項6に記載の航空機推進ユニット。
【請求項8】
前記少なくとも1つのアクセサリユニットは、ロータブレードのピッチを調整するブレードピッチング機構を含む、請求項1に記載の航空機推進ユニット。
【請求項9】
前記インバータモジュールは、インバータモジュールハウジングを含み、前記インバータモジュールハウジングは、前記インバータモジュールから熱を伝達するための複数の冷却フィンを含む、請求項1に記載の航空機推進ユニット。
【請求項10】
前記インバータモジュールは、インバータモジュールハウジングを備え、前記インバータモジュールハウジングは、第1の領域と、前記第1の領域と離間した第2の領域とを含み、前記第1の領域および前記第2の領域は、冗長な複数のインバータを含む、請求項1に記載の航空機推進ユニット。
【請求項11】
前記第1および第2の領域は、ファイアウォールによって隔てられている、請求項10に記載の航空機推進ユニット。
【請求項12】
前記モーターは、前記モーターの回転軸の周りに配置されたステータおよびロータを含み、前記インバータモジュールは、前記ステータおよび前記ロータの内側に位置しており、前記インバータモジュールは、複数の回路基板に取り付けられた前記複数の回路基板を含み、前記複数の回路基板は、前記モーターの前記回転軸に垂直に積み重ねられた配置となっている、請求項1に記載の航空機推進ユニット。
【請求項13】
航空機であって、
胴体と
1つ又は複数の推力発生ユニットと、
前記推力発生ユニットを駆動する1つ又は複数の推進ユニットと、を備え、
各推進ユニットは、
電気モーターと、
前記電気モーターを動作させるために使用される少なくとも1つのアクセサリユニットと、
前記電気モーターおよび前記少なくとも1つのアクセサリユニットに電力を供給する複数のインバータを含むインバータモジュールと、
前記電気モーターおよび前記インバータモジュールに結合された冷却システムであって、前記電気モーターおよび前記インバータモジュールを通ってまたはそれらに隣接して冷却剤を循環させるための冷却剤通路を含む前記冷却システムと、を含む、航空機。
【請求項14】
前記インバータモジュールは、前記電気モーター内に少なくとも部分的に入れ子構造になっている、請求項13に記載の航空機。
【請求項15】
前記少なくとも1つのアクセサリユニットは、前記航空機推進ユニットを垂直飛行配置と水平飛行配置との間で傾動させるティルト機構を含み、前記冷却システムは、ラジエータを含み、前記航空機推進ユニットが前記垂直飛行配置にある場合の使用時の前記ラジエータを通る空気流は、前記航空機推進ユニットが前記水平飛行配置にある場合よりも大きい、請求項13に記載の航空機。
【請求項16】
前記少なくとも1つのアクセサリユニットは、前記航空機推進ユニットを垂直飛行配置と水平飛行配置との間で傾動させるティルト機構と、ロータブレードのピッチを調整するブレードピッチング機構と、を含む、請求項13に記載の航空機。
【請求項17】
前記インバータモジュールは、インバータモジュールハウジングを含み、前記インバータモジュールハウジングは、第1の領域と、前記第1の領域と離間した第2の領域と、を含み、前記第1の領域および前記第2の領域は、冗長な複数のインバータを含む、請求項13に記載の航空機。
【請求項18】
電気モーターと、前記電気モーターを動作させるために使用される少なくとも1つのアクセサリユニットと、インバータモジュールと、を備える航空機推進ユニットを冷却するための方法であって、前記インバータモジュールは、ハウジングと、前記電気モーターおよび前記少なくとも1つのアクセサリユニットに電力を供給する複数のインバータと、を含む、前記方法は、
前記電気モーター内に形成された冷却剤通路に冷却剤を循環させること、
前記インバータモジュールの前記ハウジングを通って前記冷却剤を循環させること、
熱交換器を通って前記冷却剤を循環させること、を備える、方法。
【請求項19】
前記インバータモジュールは、前記複数のインバータから前記冷却剤通路内の前記冷却剤に熱を伝達するための1つまたは複数の冷却板を含み、
前記1つまたは複数の冷却板を通過して前記冷却剤を循環させることをさらに備える請求項18に記載の方法。
【請求項20】
垂直飛行配置において前記熱交換器を通る空気流が増加するように、前記航空機推進ユニットを水平飛行配置と前記垂直飛行配置との間で傾動させることをさらに備える請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年2月9日に出願された米国特許出願第63/147,560号の利益を主張し、その内容は、明示的に記載されているかのように参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、航空分野に関し、より詳細には、航空機推進システムのパッケージングまたは冷却に関する。
【図面の簡単な説明】
【0003】
任意の特定の要素または動作の説明を容易に識別するために、参照番号における最上位桁は、その要素が最初に導入される図番号を指す。
図1図1は、いくつかの実施例による航空機の平面図である。
図2図2は、いくつかの実施例による図1の航空機で使用する航空機エネルギーシステムの概略図である。
図3図3は、いくつかの例による図1の航空機100で使用する航空機推進システム300の一部を示す。
図4図4は、いくつかの例による図3の航空機推進システムの一部をさらに示す。
図5図5は、いくつかの例による図3および図4の航空機推進システムの部分断面図を示す。
図6図6は、いくつかの例による航空機推進システムで使用されるインバータ基板を示す。
図7図7は、いくつかの例による図6のインバータ基板の複数のサーマルコインと冷却板との間の熱界面を示す。
図8図8は、いくつかの例による図3および図4の航空機推進システムの斜視図を示す。
図9A-9C】図9A図9Bおよび図9Cは、いくつかの例による航空機推進システムと、プロペラおよびナセルなどの関連する複数の構成要素との傾動を示す。
図10A-10C】図10A図10Bおよび図10Cは、いくつかの例による航空機推進システムと、プロペラおよびナセルなどの関連する複数の構成要素との傾動を示す。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本発明のいくつかの実施例の以下の説明は、本発明をこれらの実施例に限定することを意図するものではなく、当業者が本発明を製造および使用することを可能にすることを意図するものである。
【0005】
図1は、航空機100の平面図である。航空機100は、胴体114と、2つの翼112と、尾翼110と、複数のナセル(nacelles)118内に配置された傾動可能な複数のロータアセンブリ116として具体化された推進システム108とを含む。航空機100は、複数のナセルバッテリパック104及び複数の翼バッテリパック106として図1に具体化された1つ以上の電源を含む。図示の実施例では、複数のナセルバッテリパック104は、複数のインボードナセル(inboard nacelles)102内に配置されているが、当然ながら、複数のナセルバッテリパック104は航空機100の一部を形成する他のナセル118内に配置可能であることが理解されよう。バッテリパックは、図2を参照して説明されるエネルギーシステム200の一部を構成する。航空機100は、典型的には、電子インフラストラクチャ、制御面、冷却システム、着陸装置などの関連機器を含む。
【0006】
翼112は、前進飛行中に航空機100を支持するための揚力を発生させるように機能する。翼112は、追加的または代替的に、様々な構造的応力(例えば、空気力、重力、推進力、外部点荷重、分散荷重、および/または物体力など)の影響下で、バッテリパック202、バッテリモジュール204、および/または推進システム108を構造的に支持するように機能することができる。翼112は、航空機上で任意の適切な幾何形状および/または配置を有することができる。
【0007】
図2は、いくつかの実施例による図1の航空機100で使用する航空機エネルギーシステム200の概略図である。示されるように、エネルギーシステム200は、1つ以上のバッテリパック202を含む。各バッテリパック202は、1つ以上のバッテリモジュール204を含んでもよく、そのバッテリモジュール204は、いくつかのセル206を備えてもよい。
【0008】
典型的には、バッテリパック202に関連付けられるのは、1つ以上の電気推進システム108と、それをエネルギーシステム200の他のコンポーネントに接続するためのバッテリメイト(battery mate)208と、通気システムの一部としてのバースト膜210と、冷却のための流体循環システム212と、(動作中のバッテリから充電中のバッテリへの)電力の送達を規制し、バッテリパック202とエネルギーシステム200の電子インフラストラクチャとの統合を提供するパワーエレクトロニクス214とである。図1に示すように、推進システム108は、複数のロータアセンブリを備え得る。
【0009】
電子インフラストラクチャおよびパワーエレクトロニクス214は、追加的または代替的には、バッテリパック202を航空機のエネルギーシステムに統合するように機能することができる。電子インフラストラクチャは、バッテリ管理システム(BMS : Battery Management System)、パワーエレクトロニクス(HVアーキテクチャ、パワーコンポーネント等)、LVアーキテクチャ(例えば、車両ワイヤハーネス、データ接続など)、および/または任意の他の適切なコンポーネントを含むことができる。電子インフラストラクチャは、バッテリパックおよび/またはモジュール間で電力および/またはデータを伝送することができるモジュール間電気接続を含むことができる。モジュール間は、バルクヘッド接続、バスバー、ワイヤハーネス、および/または任意の他の好適なコンポーネントを含むことができる。
【0010】
バッテリパック202は、推進システム108に供給するための電気化学エネルギーを再充電可能な方法で蓄積するように機能する。バッテリパック202は、任意の適切な方法で航空機の周りに配置および/または分散され得る。バッテリパックは、翼内(例えば、翼の空洞の内側)、ナセルの内側、および/または航空機上の任意の他の適切な位置に配置されることができる。特定の実施例では、システムは、左翼のインボード部分内の第1のバッテリパックと、右翼のインボード部分内の第2のバッテリパックとを含む。第2の特定の実施例では、システムは、左翼のインボードナセル内の第1のバッテリパックと、右翼のインボードナセル内の第2のバッテリパックとを含む。バッテリパック202は、複数のバッテリモジュール204を含み得る。
【0011】
エネルギーシステム200は、動作中または充電中にバッテリパック202によって生成された熱を除去するためにバッテリパック202内で作動流体を循環させるように機能する冷却システム(例えば、流体循環システム212)を含む。バッテリセル206、バッテリモジュール204、および/またはバッテリパック202は、任意の適切な方法で冷却システムによって直列および/または並列に流体接続され得る。
【0012】
図3は、いくつかの例による図1の航空機100で使用する航空機推進システム300の一部を示す。航空機推進システム300は、モーター302と、航空機推進システム300の動作のためにモーター302と併せて使用される1つまたは複数のアクセサリユニットと、を含み、そのアクセサリユニットは、例えば、ブレードピッチング(blade pitching)機構304、ティルト(tilt)機構306、およびインバータシステム308を含み得る。より具体的には、図3は、インバータシステム308の半体を通る断面を示しており、インバータシステム308の両半体を通る断面については、さらなる図4を参照されたい。
【0013】
航空機推進システム300の動作に関連して使用されるアクセサリユニット又はシステムはまた、ラジエータ310、ファン312、ポンプ314、及びアキュムレータ(accumulator)316を含み得、これらは共に航空機推進システム300の冷却システムを構成する。複数の冷却システム構成要素は、互いに接続され、冷却剤通路320を介していくつかの冷却板322に結合される。
【0014】
インバータシステム308は、インバータハウジング318内に取り付けられたインバータ基板324、制御基板326、およびモーターインバータ基板340を含む。モーターインバータ基板340は、モーター302に電力を供給するインバータ350を含む。インバータ基板324は、複数のインバータ、例えば、電気接続348によってブレードピッチング機構304に結合されたインバータ334と、電気接続342によってティルト機構306に結合されたインバータ336と、電気接続344によって一体型ポンプ314およびファン312に結合されたインバータ338とを含む。モーター302は、電気接続346によってインバータ350に結合される。
【0015】
インバータシステム308は、モーター302、ブレードピッチング機構304、ティルト機構306、ファン312、ポンプ314に供給される電力を調整して、それらの動作を制御するように機能する。より具体的には、インバータシステム308は、いくつかの例では、各アクセサリユニット内の複数の交流(AC : alternating current)モーターに供給される電力の周波数及び/又は電圧を制御して、特定のアクセサリユニットの回転速度、変位及び/又はトルクを制御するように機能する。
【0016】
いくつかの例では、モーター302は、航空機100のロータ120に接続されるか、またはロータ120のハブに組み込まれる。モーター302は、インランナーモーター(in-runner motor)、アウトランナーモーター(outrunner motor)、および/または他の任意の適切なタイプのモーターであり得る。好ましくは、モーター302は、大径モーター、および/またはプロペラに高トルクおよび低速を提供するように設計および構成された(歯車装置などを有する)モーターである。モーター302は、任意の適切な電力能力および/または電力要求値を有することができる。好ましくは、モーター302は3相モーターであり、より好ましくは、冗長性および性能のために2つの独立した3相モーターとして巻かれる。モーター302は、80kW未満、500kW、500kW超、それらの値によって境界付けられる任意の範囲、および/または他の任意の好適な電力特性の電力閾値(例えば、ピーク電力、最大連続電力、公称電力、二重巻線モーターの巻線の個々のセットの最大電力等)を有することができる。特定の例では、モーター302は、100RPM未満、100RPM、5000RPM未満、5000RPM、5000RPM超、それらの値によって境界付けられる任意の範囲、および/または任意の適切な速度の最高速度でロータ120を回転させることができ、10N-m未満、50N-m、5000N-m、5000N-m超、それらの値によって境界付けられる任意の範囲、および/または任意の適切な最大トルクの最大トルクで動作することができる。
【0017】
インバータ336は、調整された電力をティルト機構306に供給するように構成されており、ティルト機構306は、いくつかの例では、前進配置とホバリングまたは垂直飛行配置との間でモーター302を枢動および/または平行移動させるように機能する。ティルト機構306は、図9A図9C及び図10A図10Cにより詳細に示すように、モーター302(及び/又はそれに取り付けられたインバータ)の後方/インボード部分又はモーター302の前方/インボード部分に結合することができ、モーター302を航空機の機体に結合する。
【0018】
インバータハウジング318は、制御基板326、インバータ基板324、及びインバータ基板340を囲む及び/又は構造的に支持するように機能する。インバータハウジング318は、追加的に又は代替的には、冷却システムの一部を構成するように機能することができ、冷却サブシステムのポンプ314及び/又はファン312を取り付けることができ、EMIシールドとして機能することができ、及び/又は他の機能を実行することができる。インバータハウジング318は、好ましくは、モーター302の一部分(例えば、前進配置における後方部分)内に入れ子構造になる(nest)ように、および/またはそれに取り付けられるように構成されるが、他の方法で構成されることもできる。
【0019】
インバータハウジング318は、冷却サブシステムの一部として機能し、及び/又はインバータハウジング318から作動流体(空気または液体冷却剤など)に熱エネルギーを伝達するように機能する複数の一体型要素を含むことができる。インバータハウジング318は、インバータハウジング318の基部および/または幅広面を閉鎖する一体型冷却板322を含み得る。インバータハウジング318はまた、インバータハウジング318の周囲から延びる複数の熱冷却フィン332を含み得る。図3および図4に示すようないくつかの例では、インバータハウジング318のベースプレートは、一組の内部冷却チャネルを有する冷却板322と、インバータハウジング318外部の後方部分にある(例えば、航空機推進システム300が前進配置にあるときに後方に面する)複数の冷却フィン332と、を含む。
【0020】
制御基板326は、(例えば、飛行プロセッサまたはFMSから)複数のコマンドを受信し、受信した複数のコマンドに基づいて複数のインバータ基板の動作を制御するように機能する。制御基板326は、加えて、種々のセンサを監視し、および/またはセンサーフィードバックに基づいて種々のアクセサリユニットもしくはアクチュエータを制御し、機上の飛行管理システム(FMS : flight management system)とインタフェース接続するように機能することができる。制御基板326は、フィールド指向制御(FOC : field-oriented control)またはベクトル制御を提供するように構成され得るが、追加的又は代替的には、直接トルク制御(DTC : direct torque control)、(例えば、ファン等の低電力アクチュエータのためのパルス幅変調による)スカラー制御を提供するように構成され得、および/または任意の好適な複数のアクチュエータのための任意の好適な制御を提供するように構成され得る。好ましくは、インバータハウジング318の各々の個別の冷却剤体積及び/又は小領域(subregion)内に配置された特定の制御基板326があり、この制御基板326は、インバータハウジング318のそれぞれの冷却剤体積(小領域)内の各インバータに電気的に接続され、及び/又は各インバータを制御する。しかしながら、追加的又は代替的には、インバータハウジング内の全てのインバータに接続され、及び/又は全てのインバータを制御する単一の制御基板326、又は各冷却剤体積内の2つ以上の制御基板があってもよい。制御基板326は、プリント回路基板(PCB : printed circuit board)であることが好ましいが、他の方法で適切に実装されることもできる。制御基板は、プロセッサカード及びゲート駆動回路を含むことができるが、制御基板は、追加的に又は代替的には、他の任意の適切な構成要素を含むことができる。
【0021】
インバータ基板324およびインバータ基板340は、モーター302、ブレードピッチング機構304、ティルト機構306、ファン312、ポンプ314などの複数のアクチュエータに供給される電力を調整して、制御基板326からの複数の信号に従ってそれらの作動を制御するように機能する。より具体的には、複数のインバータ基板は、(例えば、バッテリパック202などのオンボード(onboard)電源からの)DC電力を、(例えば、回転速度および/またはトルクを制御するために複数のACアクチュエータに供給される)特定の周波数および/または電圧の位相出力に変換する。各インバータ基板は、その組のそれぞれのアクチュエータの一組の巻線に関連付けられた1つまたは複数のインバータ回路(以下、「インバータ」)を含む。複数のインバータは、変圧器、抵抗器、トランジスタ(例えば、MOSFET)、コンデンサ(例えば、デカップリングDCリンクコンデンサ)、および/またはそれぞれのアクチュエータの複数の電力要求値に従って指定される電気回路を構成するように相互接続された他の任意の適切な複数の電気構成要素の任意の適切な配置、組合せ、および/または順列を含む。
【0022】
一組のインバータ基板は、好ましくは、アクチュエータセットの最高電力アクチュエータ(例えば、モーター302)用のインバータ回路を含む一次(例えば、高電力)インバータ基板340と、アクチュエータセットの残りのアクチュエータ用のインバータを含む二次(例えば、低電力)インバータ基板324と、を含む。高電力インバータ基板340(及び関連する最高電力アクチュエータ)の電力要求値は、(例えば、0.5未満、3、5、5超、それらの間の任意の比率、及び/又は任意の他の適切な値だけ)一次インバータ基板340の最大電力出力が二次インバータ基板324の最大電力出力よりも大きくなるように、アクチュエータセットの残りのアクチュエータの集合電力要求値を超えることができる。しかしながら、複数のインバータ基板は、追加的に又は代替的には、全てのインバータを収容する単一の基板、複数の二次(低電力)基板を含むこと、及び/又は複数のインバータは、任意の適切な組のインバータ基板に別様に分散されることができる。
【0023】
インバータ基板324、インバータ基板340、および制御基板326は、好ましくは、「積層」構成で配置されるが、他の方法で、インバータハウジングの1つ又は複数の幅広面/ベースプレートに平行に、モーターの回転軸408に垂直に、ファイアウォール(firewall)410に垂直に、および/または他の方法で適切に配置され得る。制御基板326は、好ましくは、一次インバータ基板340と二次インバータ基板324との間に配置されるが、追加的に又は代替的には、二次インバータ基板324の厚さ方向において一次インバータ基板340の反対側に配置されてもよく、及び/又は他の方法で適切に配置されてもよい。一組のインバータ基板および/または制御基板は、任意の適切な方法で分散され得る。センサや制御信号などの低電圧電力やデータは、フレキシブルプリント回路を使用して制御基板とインバータ基板との間でルーティングされることができる。逆に、インバータとアクチュエータとの間の電力接続は、好ましくは、バスバー接続及び/又は(例えば、積層基板の幅広面に直交する)強固な電気接続によって形成される。しかしながら、電力および/またはデータ接続は、他の方法で、インバータおよび/または制御基板の間で適切にルーティングされることができる。
【0024】
インバータ基板340には、複数のDCリンクコンデンサ(DC link capacitors)328が結合されている。複数のDCリンクコンデンサ328は、負荷平衡エネルギー蓄積デバイスを構成し、これは、瞬間的な電圧スパイク、サージ、およびEMIからインバータネットワークを保護するのに役立つ。DCリンクコンデンサ328は、セラミック、フィルム、および/またはそれらの混合物であり得る。複数のDCリンクコンデンサ328は、インバータ基板340の後側に沿って、および/またはインバータハウジング318のベースプレートに隣接して配置されることができる。第2の例では、複数のDCリンクコンデンサ328は、ファイアウォールの遠位におよび/またはインバータの周囲に沿って配置されることができる。複数のDCリンクコンデンサ328は、複数のDCリンクコンデンサ328から複数の冷却フィン332および冷却板322に熱を伝達する働きをする熱伝導性エポキシ330内に囲まれることができる。
【0025】
冷却板322および冷却板352は、制御基板326および/またはインバータ基板324およびインバータ基板340の複数の発熱部品、ならびに複数のDCリンクコンデンサ328から熱エネルギーを除去するように機能する。航空機推進システム300は、ハウジングのそれぞれの個別の冷却剤体積内に配置され(例えば、図4に示すようにファイアウォール410の各側に1つ)、単一のマルチインバータ(multi-inverter)とペアにされた(それに熱的に結合された)複数の個別の冷却板、および/または複数のマルチインバータに熱的に結合された複数の冷却板を含むことができる。マルチインバータは、複数のアクチュエータ用の電力を調整する単一のインバータである。各マルチインバータ内に熱的に単一の冷却板、各マルチインバータ内に複数の冷却板、複数のマルチインバータに熱的に結合された単一の冷却板、および/またはシステム内の任意の適切な数の冷却板が存在し得る。
【0026】
いくつかの例では、一組の冷却板は、一次インバータ基板340の熱発生領域に熱的に結合された一次冷却板322と、制御基板326および/または二次インバータ基板324に熱的に結合された1つまたは複数の二次冷却板352と、を含む。第1の例において、一次冷却板322は、一次インバータ基板340とインバータハウジング318との間に配置される(および/またはインバータハウジング318に一体化される)。第2の例では、1つ以上の二次冷却板352は、二次インバータ基板324と制御基板326(例えば、プロセッサカード)との間に配置され、それらに熱的に結合される。第2の例では、(二次インバータ基板324および制御基板326からの)1つまたは複数の二次冷却板352の幅広面への各熱発生領域の投影面積は、重なり合わないかまたは重なり合うことができる。しかしながら、1つ以上の二次冷却板352は、制御基板326及び/又は処理基板(及びその上の熱発生領域)に対して他の方法で配置され得る。いくつかの例では、複数の冷却板は、インバータハウジング318の本体に一体化されることができ、および/または複数の個別の冷却剤体積を(例えば、後端で)閉鎖するインバータハウジング318のベースプレートを形成することができる。そのような例では、単一の冷却板は、複数のマルチインバータのインバータ基板(および/または制御基板)の熱発生領域および/または幅広面にわたって延在し、両方のマルチインバータに熱的に接続された内部体積を含むことができる。そのような例では、冷却板は、並列の複数の冷媒流路を介して冗長な複数のマルチインバータを冷却することができるが、追加的にまたは代替的には、直列および並列の複数の冷媒の流れの任意の適切な組み合わせ/順列で複数のマルチインバータを冷却することができる。代替的には、単一の冷却板は、複数の流体チャネルを有する複数のマルチインバータに熱的に接続され得る(例えば、機械的に分離され、並列の冷媒流路を形成する)。
【0027】
冷却剤通路320を形成する複数の冷却剤ルーティング構成要素は、冷却剤(例えば、水/グリコール混合物、変圧器油など)の循環を、冷却板322および冷却板352を通って、またはそれに隣接して、またはその周りに方向付け、それら冷却板を冷却システムの残りの部分に結合する(すなわち、冷却ループを形成する)ように機能する。複数の冷却剤ルーティング構成要素は、任意の流体マニホールド、ホース、チューブ、パイプ、インバータのハウジング内のチャネル、モーターの本体内のチャネル、および/または他の任意の好適な冷却剤ルーティング構成要素を含むことができる。好ましくは、冷却剤通路320は、一次冷却板322を二次冷却板352に直列に(例えば、マルチインバータ内/小領域内で)流体接続する。冷却剤通路320は、単一の流体ループ(例えば、直列の全ての構成要素、ループのセクションを通過するように全て収束する並列流体流の複数のセクションなど)または複数の並列流体ループを形成することができる。しかしながら、冷却剤通路320は、直列/並列の冷却剤流の任意の好適な組み合わせおよび/または順列で、冷却システムの種々の冷却構成要素を相互接続することができる。複数の冷却剤ルーティング構成要素は、(例えば、流体マニホールドまたは他の流体ルーティングを介して)インバータ基板の厚さ内の複数のオリフィス(orifices)を通過することができ、および/または基板の周囲にルーティングされることができる。複数の冷却剤ルーティング構成要素は、インバータハウジング318の後方端部(例えば、取り付け側の近位、ポンプ/ラジエータの近位、冷却剤入口)における第1の冷却剤ルーティング終端と、インバータハウジング318の前方端部における第2の冷却剤ルーティング終端(例えば、出口)とを含むことができる。第2の冷却剤ルーティング終端は、好ましくは、モーター302に結合され、第1の冷却剤ルーティング終端は、好ましくは、ポンプ314に接合されるが、冷却剤通路320は、別様に、冷却システムの種々の構成要素を相互接続することができる。
【0028】
冷却剤通路320の複数の構成要素は、任意選択的には、熱を冷却剤から周囲環境に排出するように機能するラジエータ310を通して冷却剤流を方向付けることができる。いくつかの例では、ラジエータ310は、ティルト機構306の1つまたは複数の配置において、ラジエータ310を通る外部空気流(例えば、ファン312によるダクト流(ducted flow))が部分的および/または完全に(例えば、流れの方向、モーターの回転軸408に沿った長さ方向などにおいて)遮られるように、ティルト機構306に接するおよび/またはティルト機構306と隣接して入れ子構造にすることができる。特に、ラジエータ310およびティルト機構306を密接に入れ子構造にすること、および/またはラジエータ310を通る空気流を直接的に遮ることは、前進飛行中の実装密度および空気力学的効率を増加させることができ、モーター302およびインバータ基板340の電力要求値が低減される(ひいては、航空機推進システム300からの必要な熱が排除される)。同様に、移行中および/またはホバリング配置においてティルト機構306の変形中にラジエータ310をモーター302およびインバータハウジング318とともに変位させることは、電力および/または排熱要求値が最大である結果として熱負荷が最大であるときにラジエータ310によって達成される空気流および/または排熱を増加させることができる。さらに図9A図9Cおよび図10A図10Cを参照されたい。そのような事例では、モーター302と共に移動するラジエータ310によって、ホバリングまたは垂直飛行中の排熱を効果的に倍増させて、ラジエータ310を通る空気流を増加させることができる。しかしながら、システムは、任意の他の適切なラジエータ310を含むことができ、および/またはラジエータ310を通して冷却剤を適切に送ることができる。代替的には、システムは、冷凍システム(refrigeration system)および/または他の準周囲冷却アーキテクチャによって熱を排出することができる。
【0029】
いくつかの実施例では、複数の冷却剤ルーティング構成要素は、環境との圧力交換を伴わずに、冷却剤を完全に流動的に封入および含有することができる。そのような例では、複数の冷却剤ルーティング構成要素は、冷却剤をアキュムレータ316を通して方向付けることができ、それにより、流体圧力を調節し、過加圧を防止することができる。代替的には、冷却剤通路320は、冷却サブシステム内のガス蓄積を防止するために、周囲環境への受動的冷却剤通気(passive coolant venting)および/または他の任意の適切な圧力平衡機構を含むことができる。
【0030】
ポンプ314は、冷却剤通路320に沿って、冷却剤ルーティング構成要素、冷却板、および/またはアクチュエータを通して、冷却剤を循環させるように機能する。ポンプ314は、追加的または代替的には、モーター302および/または冷却板322からラジエータ310に冷却剤を輸送するように機能することができる。
【0031】
ファン312は、インバータハウジング318の複数の冷却フィン332を横切って及び/又はラジエータ310を通って周囲空気を循環させるように機能する。いくつかの例では、ファン312は、ポンプ314の回転シャフトに機械的に接続することができ、および/または他の方法でポンプ314と機械的に一体化されることができる。ファン312は、ポンプ314に直接的に連結され、ポンプシャフトの角速度に比例する角速度(例えば、ギアが外されたときの等価角速度)で回転するように構成されることができる。ファン312は、ダクト付き、および/またはダクトなし、および/または他の方法で適切に実装されることができる。追加的または代替的には、ファン312は、ポンプ314とは別個であってもよく(例えば、ラジエータアセンブリなどに一体化されていてもよく)、および/または別で電力供給されてもよい。
【0032】
航空機推進システム300は、任意選択的には、システムの動作を監視するように機能する複数のセンサを含むことができる。複数のセンサは、温度センサ(例えば、サーミスタ、熱電対等)、慣性センサ(例えば、加速度計、ジャイロスコープ、IMU等)、インピーダンスセンサ、ホール効果センサ、流量センサ(例えば、流量センサ、流体圧力センサ等)、および/または他の任意の好適なセンサを含むことができる。いくつかの例では、複数の温度センサを使用して、モーター巻線、軸受、冷却剤、および/または任意の他の適切な構成要素の温度を監視することができる。いくつかの例では、複数の流量センサは、冷却剤サブシステム内の冷却剤圧力および/または流量を監視することができる。しかしながら、システムは、任意の他の適切なセンサを含むことができる。複数のセンサは、好ましくは、制御基板326に通信可能に接続され、種々の作動制御スキーム(例えば、フィードフォワード、フィードバック等)と併せて採用されることができる。しかしながら、いくつかの例では、複数のセンサ入力が、オンボードインバータ基板(例えば、前進配置におけるスタックの先頭となるインバータ基板324、二次/トリプルインバータ基板(secondary/triple-inverter board))において受信されることが有利であり得る。そのようないくつかの例では、複数のセンサ入力は、複数のインバータから電気的に絶縁され、制御基板326(またはFMS)に中継されるインバータ基板324のセクションにおいて受信されることができる。したがって、制御基板326は、航空機推進システム300の様々なセンサに「間接的に」接続され、かつ/またはインバータ基板324を介して間接的に接続されると考えることができる。
【0033】
冷却剤のルーティングは、好ましくは、冷却剤流路の様々な部分にわたって実質的に均一に(例えば、10%未満、20%未満、50%未満だけ変化する、または正確に均一等)かつ/または一定の断面積で供給される。冷却剤は、好ましくは、(例えば、冷却剤温度が、モーターを通って5℃未満上昇する等、モーター302および/またはインバータハウジング318を通る冷却剤温度上昇が、いくつかの例において無視され得るように)複数の冷却剤ルーティング構成要素を通して高流量で循環される。
【0034】
いくつかの例では、ラジエータ310からの冷却剤通路320内の冷却剤は、ステータ404においてモーター302に入り、ステータ404内の複数の界磁コイルを通過するかまたは複数の界磁コイルの間を通過し、次いで電気バス(electrical bussing)406を通過する。次いで、冷却剤通路320内の冷却剤は、インバータハウジング318内に進み、冷却板352および冷却板322を通ってからポンプ314に戻り、そこからラジエータ310に戻る。従って、冷却剤通路は、モーター302を冷却するだけでなく、航空機100に関連付けられた複数のアクチュエータのインバータも冷却する統合冷却システムを提供する。冷却通路における流れの方向および構成要素の順序は、当然ながら、変更または逆にすることができる。
【0035】
作動機構(例えば、ティルト機構906)の外側にインバータをパッケージングすることによって、作動機構(例えば、ポンプ/ファン、モーター、ブレードピッチ機構など)の外側の複数のアクチュエータへのケーブルルーティングの複雑さを低減することができる。
【0036】
図4は、いくつかの例による図3の航空機推進システム300の一部をさらに示す。より詳細には、図4に示されているのは、図3に示されているインバータシステム308の両半体を通る断面図である。いくつかの例では、インバータハウジング318は、モーター302の径方向内側に延在するように構成され、モーター302のステータ404および/またはロータ402は、インバータハウジング318の一部分の(モーターの回転軸408に対して)径方向外側に配置される。そのような例では、インバータハウジング318は、モーター302の複数の永久磁石またはステータ404の径方向内側に延びることができる。インバータハウジング318の外周は、モーター302の径方向内周と同一平面に配置されてもよく、および/またはモーター302の径方向外周から挿入されてもよいが、他の方法で適切に構成されてもよい。より好ましくは、インバータハウジング318は、モーター302の電気バス406(例えば、複数のバスリング(bus rings))から径方向に挿入されることができ、かつ/またはステータ404のハウジングによって囲まれることができる。しかしながら、インバータハウジング318は、他の方法でモーターに対して適切に配置されることができる。インバータハウジング318は、電気バス端子、冷却剤チャネル/オリフィス、サーマル(熱)フィン、および/または任意の他の適切な特徴を任意の適切な配置で含むことができる。インバータハウジング318は、好ましくは、高い熱伝導率を有する金属(例えば、アルミニウム)から形成されるが、追加的に又は代替的には、断熱、電気絶縁、プラスチック、複合材料、鉄系金属(例えば、鉄)、鋼、銅、及び/又は任意の他の適切な材料を含むことができる。
【0037】
インバータハウジング318は、ファイアウォール410を含むことができ、このファイアウォール410は、インバータハウジングの内部を複数(例えば、2つ)の別個の冷却剤体積(例えば、流体的に隔離された第1の体積412および第2の体積414)に細分化するように、および/またはインバータハウジング318の内部の対向する部分間(例えば、ハウジング内の冗長または二次的な隔離された体積間)の熱事象の伝播を防止するように機能する。ファイアウォール410は、好ましくは、(例えば、図4に示すインバータハウジング318の上面および下面に対して垂直である)幅広の上面と下面との間でインバータハウジング318の内部を通って延在するが、他の方法で適切に配置されることもできる)。ファイアウォール410は、モーターの回転軸408に対して矢状面(sagittal plane)に沿って配置されることができ、および/または回転軸408に対して軸方向および径方向に延在することができるが、追加的または代替的には、他の方法で適切に配置されることができる。インバータハウジング318内のファイアウォール410によって画定された複数の冷却剤体積は、好ましくは対称であり、および/または実質的に等しい体積であるが、ファイアウォール410は、インバータハウジングを別様に適切に分割することができる。ファイアウォール410は、ハウジング外部と同じ材料(例えば、アルミニウム、鋼など)および/または任意の他の適切な材料から形成されることができる。
【0038】
インバータシステム308は、制御基板326および/またはインバータ基板324およびインバータ基板340の冗長なインスタンス(instance)(複数可)を含むことができ、各々は、別個の冷却剤体積に関連付けられる。しかしながら、複数の電子機器は、インバータハウジング318の別個の複数の冷却剤体積に共有されることもできる。共通の別個の冷却剤体積内の複数の電子機器は、好ましくは、一緒に接続され、協働して単一のインバータ(例えば、複数のアクチュエータのための電力を調整するマルチインバータ)を構成するが、代替として、遮断されるか、または別様に構成され得る。したがって、一組のインバータ基板を、各組のアクチュエータを別々に作動させることができる「マルチインバータ」(例えば、クワッドインバータ(quad inverter))とみなすことができる場合、ハウジングは、ファイアウォール410の両側で熱的に、機械的に、および/または電気的に絶縁することができる複数の上記マルチインバータを含むことができる。特定の例では、ファイアウォールは、インバータハウジングを、第1の体積412および第2の体積414などの2つの別個の部分に細分化することができ、各体積は、制御基板326と、協働してクワッドインバータを構成する2つのインバータ基板、インバータ基板324およびインバータ基板340とを含む。いくつかの例では、2つのクワッドインバータは、4つのアクチュエータのセットを協調的におよび/または独立して作動させることができる。したがって、インバータハウジング318は、インバータハウジング318内に共通にパッケージングされた(および/またはそれによって冷却された)合計8個のインバータに対して、(冗長な)2つのクワッドインバータを含むことができる。
【0039】
したがって、この技術の例は、単一の電気推進システム内で互いに機械的に結合された2つの独立した3相モーターと結合されたときに、単一のインバータシステム内および/または単一のインバータハウジング318内に二重冗長性(dual redundancy)を提供することができる。そのような例は、二重巻線アクチュエータ、二重インバータおよび/もしくは制御基板、別個の冷却構成要素を利用することができ、ならびに/または任意の他の好適な冗長性を提供することができる。そのような例は、同様に、冗長な複数のインバータ間の任意の熱事象の伝播を緩和するために、(例えば、ファイアウォール410を使用して)インバータハウジング318を別個の複数の冷却剤体積に細分化することができる。
【0040】
図5は、いくつかの例による図3および図4の航空機推進システム300の部分断面図を示す。特に、図4を参照して上述したように、インバータハウジング318は、モーター302の径方向内側で入れ子構造にされ、モーター302のステータ404および/またはロータ402は、インバータハウジング318の一部分の(モーターの回転軸408に対して)径方向外側に配置される。また、図5には、DCリンクコンデンサ328用の複数の冷却フィン332、一体化されたポンプ/ファン502、ラジエータ310、および冷却剤通路320を形成する複数の導管のいくつかが示されている。
【0041】
この構成は、インバータ/制御基板を通って電力および/または冷却を効率的にルーティングすることによって、高電力密度インバータパッケージング(high power-density inverter packaging)を提供する。いくつかの例では、システムは、ステータおよび/またはロータの内部に1つまたは複数のインバータ基板をパッケージングすることによって、ブラシレスDCモーター(例えば、モーター内にパッケージングされたインバータ)のパッケージング効率を向上させる。同様に、この構成は、モーター302及び/又はインバータハウジング318内に又は部分的に冷却サブシステムを密接に一体化することによって電力密度を向上させることができる。
【0042】
図6は、いくつかの例による航空機推進システム300で使用されるインバータ基板604を示す。インバータ基板604は、複数の発熱部品602を有する。いくつかの例では、これらは、インバータ基板324上にインバータ334、インバータ336、およびインバータ338を備えるSiCスイッチである。インバータ基板604の複数の発熱部品602は、インバータ基板604の厚さ方向で1つ又は複数の冷却板に対向して配置されることができる。そのような事例では、インバータ基板604は、インバータ基板604を通って延在し、1つまたは複数の発熱部品602を冷却板322などの1つまたは複数の冷却板に熱的に接続する、1つまたは複数の発熱部品602の基部に配置された(および/または発熱領域の周りに分散された)高伝導性材料の複数のサーマルコイン(thermal coins)606を含む熱伝達経路を含むことができる。
【0043】
複数のサーマルコイン606は、基板の厚さを通る熱抵抗を減少させるように機能する。複数のサーマルコイン606は、銅、アルミニウム、および/または他の高熱伝導性材料などの高熱伝導性材料から形成されることが好ましく、基板の短絡を回避するためにインバータ基板604の回路から電気的に絶縁されることが好ましい。一例では、複数のサーマルコイン606は、セラミック層または(例えば、材料の残りの部分よりも低い熱伝導率、基板よりも低い熱伝導率などを有する)他の電気絶縁層などの一体化された複数の電気絶縁層を含むことができ、その一例が図7に示されている。第2の例では、複数のサーマルコイン606は、周囲(例えば、電気部品とサーマルコインの露出部分との間、冷却板とサーマルコインとの間など)で電気絶縁コーティングまたはシール(seal)によって電気的に絶縁されることができる。
【0044】
いくつかの例では、インバータ基板604は、(例えば、同じインバータ基板の異なる発熱領域に熱的に結合された)冷却板からインバータ基板の構成要素/領域を熱的に遮断するように構成された遮断層を含むことができる。一例では、複数のフィルムコンデンサは、冷却板から熱的に遮断され、周囲空気に冷却されるが、複数のセラミックコンデンサは、液体冷却剤を使用して冷却される。これにより、MOSFETなどの(周囲温度をはるかに上回る高温に耐えることができる)大きな冷却要求値を有する発熱部品を、液体冷却剤を使用して別個に冷却することができる。DCリンクフィルムコンデンサとハウジングの冷却板/ベースプレートとの間の断熱は、(同等の厚さの)エアギャップの熱伝導率よりも小さい熱伝導率を有する、エアギャップの熱伝導率よりも大きい熱伝導率を有する、および/または任意の他の適切な熱特性を有することができる。
【0045】
図7は、いくつかの例による図6のインバータ基板の複数のサーマルコイン606と冷却板322との間の熱界面を示す。冷却板322に隣接して流体チャネル702が設けられており、この流体チャネルには、冷却剤通路320を介して冷却剤が供給される。熱伝導層706は、複数のサーマルコイン606と冷却する冷却板322との間に設けられる。電気絶縁層704は、複数のサーマルコイン606を冷却板322から及び互いから電気的に絶縁するために設けられる。他の例では、複数のサーマルコイン606は、電気絶縁体704に取り付けることができ、この電気絶縁体704は冷却板322aに取り付けられる。
【0046】
図8は、いくつかの例による図3および図4の航空機推進システム300の斜視図を示す。図8は、モーター302と、ファン312と、ラジエータ310と、冷却剤通路320の一部を形成する配管の一部との相対的な配置を示す。
【0047】
図9A図9Bおよび図9Cは、いくつかの例による航空機推進システム300と、プロペラ902およびナセル904などの関連する複数の構成要素との傾動を示す。航空機は、図示されるようなeVTOL航空機(例えば、マルチモーダル(multi-modal)航空機)であることが好ましいが、追加的に又は代替的には、任意の適切な航空機を含むことができる。航空機100は、好ましくは、前進配置(図9Aおよび図10A)と、ホバリングまたは垂直飛行配置(図9Cおよび図10C)との間で動作可能な複数の航空機推進システムを有するティルトローター(tiltrotor)航空機である。しかしながら、航空機は、代替的には、1つ以上のロータアセンブリまたは推進システムを有する固定翼航空機、1つ以上のロータアセンブリを有するヘリコプター(例えば、少なくとも1つのロータアセンブリまたは航空機推進システムが、水平推力を提供するように実質的に軸線方向に配向される)、ティルトウィング(tiltwing)航空機、無翼航空機(例えば、ヘリコプター、マルチコプター(multi-copter)、クアッドコプター(quadcopter))、および/または複数のプロペラまたは複数のロータによって推進される任意の他の適切な回転翼機または車両であり得る。
【0048】
図9A図9Cに示すように、一例では、(モーター302、インバータシステム308、およびラジエータ310と識別される)航空機推進システム300と、ブレードピッチング機構908を有するプロペラ902とを含むナセル904は、ナセル904の後部寄りに配置されたティルト機構906によって航空機100の残りの部分に対して傾動可能である。
【0049】
前進配置とホバリング配置との間で設定可能な航空機の推進ティルト機構に組み込まれた場合、複数の冷却サブシステムは、以下で説明するように、ホバリング配置において利用可能な空気流の増加を有利に用いることができる。
【0050】
図10A図10B、および図10Cは、いくつかの例によるナセル1004に対する航空機推進システム300およびプロペラ902などの複数の関連構成要素の傾動を示す。図10Bおよび図10Cに見られるように、この例では、(モーター302、インバータシステム308、およびラジエータ310と識別される)航空機推進システム300およびブレードピッチング機構1008を有するプロペラ1002は、ナセル1004の前部寄りに配置されたティルト機構1006によってナセル1004に対して傾動可能である。
【0051】
ホバリング配置である図10Cに見られるように、ラジエータ310は、垂直配置におけるようにナセル1004内に収容される場合とは対照的に、外気に曝される。これにより、ファン312から、およびプロペラ902からの隣接する空気流の結果として、ラジエータ310を通るより多くの空気流が生じる。ホバリングは水平飛行よりも高い電力要求値を有するので、ラジエータ310を通る増加した空気流によって提供される追加の冷却は有利であり得る。
【0052】
システムおよび/または方法の実施形態は、様々なシステムコンポーネントおよび様々な方法プロセスのあらゆる組合せおよび順列を含み得、本明細書で説明される方法および/またはプロセスの1つまたは複数の例は、本明細書で説明されるシステム、要素、および/またはエンティティの1つまたは複数の例によって、および/またはそれら1つまたは複数を使用して、非同期に(例えば、順次に)、同時に(例えば、並行して)、または他の任意の適切な順序で実行されることができる。
【0053】
推力発生要素を指すときに本明細書で利用される「ロータ」という用語は、ロータ、プロペラ、および/または他の任意の適切な回転式空力アクチュエータを指し得る。ロータは、関節型または半剛性ハブ(例えば、ブレードとハブとの接続は、関節型である、可撓性である、剛性である及び/又は別の方法で接続することができる)を利用する回転式空力アクチュエータを指し得、プロペラは、剛性ハブ(例えば、ブレードとハブとの接続は、関節型である、可撓性である、剛性である及び/又は別の方法で接続することができる)を利用する回転式空力アクチュエータを指し得るが、本明細書で使用される際、そのような区別は、明示的または黙示的でもなく、「ロータ」の使用は、どちらの構成も指し得、また、関節型もしくは剛性ブレードの他の任意の適切な構成及び/又は中心部材もしくはハブへのブレード接続の他の任意の適切な構成も指し得る。同様に、「プロペラ」の使用は、どちらの構成も指し得、関節型もしくは剛性ブレードの他の任意の適切な構成及び/又は中心部材もしくはハブへのブレード接続の他の任意の適切な構成も指し得る。従って、ティルトロータ航空機は、ティルトプロペラ航空機、ティルトプロップ航空機と呼ぶこと、および/または別の方法で適切に言及するもしくは説明することができる。
【0054】
制御基板、インバータ基板などに関連して本明細書で使用される「基板(board)」という用語は、好ましくは回路基板を指す。より好ましくは、「基板」は、集合的にプリント回路基板アセンブリ(PCBA : printed circuit board assembly)を形成することができる、プリント回路基板(PCB : printed circuit board)および/またはその上に組み立てられた複数の電子部品を指す。第1の例では、制御基板はPCBAである。第2の例では、インバータ基板はPCBAである。しかしながら、「基板」は、追加的に又は代替的には、片面PCB、両面PCB、多層PCB、リジッド(rigid)PCB、フレキシブルPCBを指すこと、及び/又は他の任意の適切な意味を有することができる。
【0055】
航空機は、1つ又は複数のアクチュエータ(例えば、ロータ/プロペラ、ティルト機構、ブレードピッチ機構、冷却システムなど)に電力を供給する任意の適切な形態の電力貯蔵または電力貯蔵ユニット(バッテリ、フライホイール、ウルトラキャパシタ(ultra-capacitor)、バッテリ、燃料タンクなど)を含むことができる。好ましい電力/燃料源はバッテリであるが、システムは、任意の適切な電力/燃料源とともに合理的に使用され得る。航空機は、補助電源及び/又は冗長な電源(例えば、バックアップバッテリ、複数のバッテリ)を含むこと、又は冗長な電源を除外することができる。航空機は、(例えば、複数のパック、ブリック(bricks)、モジュール、セル等であり、且つ直列及び/又は並列のアーキテクチャの任意の組み合わせの)任意の適切な電気的アーキテクチャ又は構成において、任意の適切なセルケミストリ(cell chemistries)(例えば、リチウムイオン、ニッケルカドミウム等)を有するバッテリを用いることができる。
【0056】
特定の例では、システムは、複数の傾動可能ロータアセンブリ(例えば、6つの傾動可能ロータアセンブリ)を含む電気ティルトローター航空機に統合される。電気ティルトローター航空機は、固定翼航空機、回転翼航空機として、及び固定翼状態と回転翼状態との間の任意の境界配置(liminal configuration)(例えば、複数のティルトロータアセンブリのうちの1つ又は複数が部分的に回転した状態となる)で動作することができる。この例における電気ティルトローター航空機の制御システムは、固定翼配置の、回転翼配置の、および/または固定翼配置と回転翼配置との間の複数の傾動可能ロータアセンブリに命令し、制御するように機能することができる。
【0057】
本明細書で使用される「実質的に」という用語は、正確に、おおよそ、所定の閾値または許容範囲内にあることを意味すること、および/または他の任意の適切な意味を有することができる。
【0058】
代替実施形態は、コンピュータ可読命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体において、上記の方法および/または処理モジュールを実装する。命令は、コンピュータ可読媒体および/または処理システムと統合された複数のコンピュータ実行可能コンポーネントによって実行されることができる。コンピュータ可読媒体は、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EEPROM、光デバイス(CDまたはDVD)、ハードドライブ、フロッピー(登録商標)ドライブ、非一時的コンピュータ可読媒体、または任意の適切なデバイスなどの任意の適切なコンピュータ可読媒体を含み得る。コンピュータ実行可能コンポーネントは、CPU、GPU、TPUS、マイクロプロセッサ、またはASICなど、非一時的コンピュータ可読媒体に接続されたコンピューティングシステムおよび/または処理システム(例えば、1つまたは複数の並設または分散されたリモートまたはローカルプロセッサを含む)を含むことができるが、命令は、代替的または追加的には、任意の適切な専用ハードウェアデバイスによって実行されることができる。
【0059】
システムおよび/または方法の実施形態は、様々なシステムコンポーネントおよび様々な方法プロセスのあらゆる組合せおよび順列を含み得、本明細書で説明される方法および/またはプロセスの1つ又は複数の例は、本明細書で説明されるシステム、要素、および/またはエンティティの1つまたは複数の例によって、および/またはそれらの1つ又は複数を使用して、非同期に(例えば、順次に)、同時に(例えば、並行して)、または他の任意の適切な順番で実行されることができる。
【0060】
当業者であれば、前述の詳細な説明ならびに図面および特許請求の範囲から認識されるように、以下の特許請求の範囲において定義される本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の実施例に対して修正および変更を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
【国際調査報告】