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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-13
(54)【発明の名称】シリンダ油の製造
(51)【国際特許分類】
   C10M 171/02 20060101AFI20240205BHJP
   C10N 40/26 20060101ALN20240205BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20240205BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20240205BHJP
【FI】
C10M171/02
C10N40:26
C10N40:25
C10N30:00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547919
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2022053287
(87)【国際公開番号】W WO2022171757
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】PA202100157
(32)【優先日】2021-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502209039
【氏名又は名称】エー・ピー・モラー-マースク エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ジュマイン,シャンバ
(72)【発明者】
【氏名】バク ヴァイマル,ヘンリク
(72)【発明者】
【氏名】エンブルトン,マーク パトリック
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104LA20
4H104PA41
4H104PA45
(57)【要約】
船舶用往復動内燃機関用の様々な動粘度を有する1つ以上のシリンダ油を製造する方法が開示される。この方法は、第1の動粘度及び第1のBNを有する第1の流体を提供することと、第1の動粘度とは異なる第2の動粘度及び第2のBNを有する第2の流体を提供することと、第1の流体と第2の流体を第1の比率で配合して、100℃で14mm/s以下の動粘度を有する第1のシリンダ油を生成することとを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶用往復動内燃機関用の様々な動粘度を有する1つ以上のシリンダ油を製造する方法であって、
第1の動粘度及び第1のBNを有する第1の流体を提供することと、
前記第1の動粘度とは異なる第2の動粘度及び第2のBNを有する第2の流体を提供することと、
前記第1の流体と前記第2の流体を第1の比率で配合して、100℃で14mm/s以下の動粘度を有する第1のシリンダ油を生成することと
を含む、前記方法。
【請求項2】
エンジン動作パラメータ及び/またはエンジン状態パラメータに基づいて、前記第1のシリンダ油の目標動粘度を決定することと、
前記第1の動粘度及び第2の動粘度を含むパラメータセットに基づいて、前記第1のシリンダ油の前記目標動粘度に対応する前記第1の流体と前記第2の流体との目標比率範囲を決定することと、
前記第1の比率が、前記第1のシリンダ油の前記目標動粘度に対応する前記目標比率範囲内に設定されるように、前記第1の流体と前記第2の流体とを配合することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記配合が、前記第1の流体及び前記第2の流体と、第3の動粘度及び第3のBNを有する第3の流体とを配合して、前記第1のシリンダ油を生成することを含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
エンジン動作パラメータ及び/またはエンジン状態パラメータに基づいて、前記第1のシリンダ油の目標BNを決定することと、
少なくとも前記第1のBN、前記第2のBN、及び前記第3のBNを含むパラメータセットに基づいて、前記第1のシリンダ油の前記目標BNに対応する前記第1の流体と前記第2の流体の目標比率範囲を決定することと、
前記第1の比率が、前記第1のシリンダ油の前記目標BNに対応する前記目標比率内に設定されるように前記配合を行うことと
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の流体と前記第2の流体を前記第1の比率とは異なる第2の比率で配合することによって、前記第1のシリンダ油の動粘度よりも高い動粘度を有する第2のシリンダ油を生成することをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のシリンダ油が、前記第2のシリンダ油とは異なるBNを有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記エンジン動作パラメータまたはエンジン状態パラメータが、燃料の硫黄含有量、エンジン負荷、エンジン速度、相対空気湿度、シリンダ鉄摩耗排出量、総鉄シリンダ潤滑剤の残留BN、及びシリンダ油ライナー壁の温度のうちの少なくとも1つである、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の流体がシステム油であり、及び/または
前記第2の流体が添加剤パッケージ、新しいシリンダ油、もしくは使用済みのシリンダ油であり、及び/または
前記第3の流体が基油である、
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の流体、第2の流体、または第3の流体のうちの少なくとも1つが、少なくとも部分的に使用された油である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
船舶用往復動内燃機関を動作させる方法であって、
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法により、100℃における動粘度が14mm/s以下であるシリンダ油を製造することと、
前記船舶用往復動内燃機関のシリンダに前記シリンダ油を供給することと
を含む、前記方法。
【請求項11】
前記シリンダ油の動粘度が、前記船舶用往復動内燃機関に対してメーカーが推奨する最小シリンダ油動粘度よりも低い、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記船舶用往復動内燃機関が、60%以下のエンジン負荷で動作している、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記船舶用往復動内燃機関が2ストローククロスヘッドエンジンである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
シリンダ油を調製するための装置であって、
ブレンダーと、
第1の動粘度及び第1のBNを有する第1の流体を収容する第1の容器であって、前記ブレンダーと選択可能に流体連通している前記第1の容器と、
第2の動粘度及び第2のBNを有する第2の流体を収容する第2の容器であって、前記ブレンダーと選択可能に流体連通している前記第2の容器と、
100℃で14mm/s以下の所望の目標粘度及び目標BNを有するシリンダ油を提供するために、前記ブレンダーに供給する第1の流体の量及び第2の流体の量を決定するコントローラと
を含む、前記装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装置を備える船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用往復動内燃機関用の様々な動粘度を有する1つ以上のシリンダ油を製造する方法、船舶用往復動内燃機関を動作させる方法、シリンダ油を調製するための装置、及びシリンダ油を調製するための装置を含む船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
コンテナ船などの船舶には、重油などを燃料とするエンジンが搭載されている。船舶の毎日のランニングコストに最も大きく影響するのは燃料消費量である。さらに、消費される燃料の量は、生成される汚染物質(例えば、二酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO)及び/または硫黄酸化物(SO))の量に直接対応する。燃料消費量は、エンジンの動作効率及び/またはエンジンの動作速度に影響される。
【0003】
船舶のエンジンの部品は、動作中に潤滑が必要である。潤滑の有効性はエンジンの動作効率に影響し、ひいてはエンジンの動作中に消費される燃料の量にも影響する。エンジン内の摩擦損失は、適切な潤滑によって減らすことができる。
【0004】
シリンダ油は、船舶用往復動内燃機関のシリンダの潤滑に使用される。シリンダ油には、ピストン及び/またはピストンリングとシリンダライナーとの間に油膜を形成し、表面間の摩擦を低減することにより、ピストン、ピストンリング、及びシリンダライナーの機械的摩耗を軽減するなど、さまざまな機能がある。
【0005】
ピストン及び/またはピストンリングとシリンダライナーとの間に適切な潤滑特性を有する油膜を形成する能力は、シリンダ油の粘度に少なくとも部分的に依存する。粘度が高くなると表面間の油膜が厚くなり、それによって摩耗をよりよく制御できることが教示されている。シリンダ油の粘度は通常、100℃で少なくとも18.5mm/sである。CIMACなどの主要な非営利団体と船舶用往復動内燃機関のメーカーは、2ストローククロスヘッドエンジンなどの船舶用往復動内燃機関を安全に動作させるためには、シリンダ油のSAE(Society of Automotive Engineering)粘度グレードがSAE 50(100℃での粘度が少なくとも16.3mm/s)でなければならないと述べている。動粘度が低いシリンダ油は潤滑特性が劣ると教示されている。これは、表面間に形成される油膜が薄いため、エンジン部品の摩耗が増加し、スカッフィングが増加し、腐食が増加するからである。
【0006】
シリンダ油のさらなる機能は、硫黄含有燃料の燃焼によって形成される硫黄酸を中和することによって、ピストンの材料及びライナーの材料の腐食を軽減することである。ピストン及びシリンダライナーの腐食を軽減する能力は、シリンダ油の塩基価(BN)と呼ばれるシリンダ油のアルカリ度に少なくとも部分的に依存する。BNは通常、油1グラムあたりの水酸化カリウムのミリグラム数(mg KOH/g)で表される。船舶用途の場合、シリンダ油のBNは通常、エンジンの駆動に使用される燃料の硫黄含有量に応じて25~140である。ただし、燃料の硫黄含有量またはエンジン負荷の変化により、シリンダ油に必要なBNはエンジンの動作中に変化する場合がある。
【0007】
船舶には、エンジン動作中の様々な要件に応じて、さまざまなアルカリ度のシリンダ油を船上で生成するための配合システムを設けることができる。このプロセスは、必要なシリンダ油の目標BNによって決まり、目標動粘度は考慮されない。
【0008】
本発明の実施形態は、上述の問題に対処しながら、船舶用往復動内燃機関の動作中に生成される燃料消費量及び汚染物質の量を削減できるようにすることを目的とする。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第1の態様は、船舶用往復動内燃機関用の様々な動粘度を有する1つ以上のシリンダ油を製造する方法を提供し、この方法は、第1の動粘度及び第1のBNを有する第1の流体を提供することと、第1の動粘度とは異なる第2の動粘度及び第2のBNを有する第2の流体を提供することと、第1の流体と第2の流体を第1の比率で配合して、100℃で14mm/s以下の動粘度を有する第1のシリンダ油を生成することとを含む。
【0010】
本発明者らは、動粘度を低下させた(例えば、エンジンメーカーが推奨する最小動粘度を下回る)シリンダ油を提供することにより、エンジンの作動中の摩擦損失を低減したシリンダ油の潤滑が可能になることを確認した。シリンダ油の粘度が低いということは、ピストンとシリンダライナーとの間に形成される油膜がより薄いことを意味し、流体摩擦が減少することにつながる。摩擦損失の低減は、エンジン動作中の燃料消費量の低減につながり、ひいては生成される汚染物質の量の低減につながる。
【0011】
驚くべきことに、本発明者らは、動粘度の低下がピストン及び/またはシリンダライナーの摩耗を制御する油の能力に重大な悪影響を及ぼさず、例ではエンジン部品の摩耗をより良く制御できることをさらに確認した。そこで、本発明者らは、船舶用往復動内燃機関に確実に使用できる低動粘度のシリンダ油を初めて提供した。
【0012】
任意に、この方法は、船舶上などの沖合で実行される。有利なことに、陸上と比較して船舶上でこの方法を実行すると、シリンダ油の特性を動作中のエンジンの要件を満たすように適合させることができる。
【0013】
本明細書に記載されているすべての動粘度は、特に明記されていない限り、100℃の温度で測定される。100℃における油の動粘度はセンチストーク(cSt)で表すことができる。したがって、100℃における動粘度が14mm/s以下の第1のシリンダ油は、14cStと同じである。実施例において、第1のシリンダ油の動粘度は、13.5mm/s以下、または13mm/s以下、または12.5mm/s以下、または10mm/s以下である。実施例において、第1のシリンダ油の動粘度は、8mm/s以上、例えば8mm/sから14mm/s、または8mm/sから12.5mm/s、または8mm/sから10mm/sである。
【0014】
任意選択で、第1のシリンダ油の動粘度は、SAE粘度グレードSAE40、またはSAE30、またはSAE20に相当する。第1のシリンダ油は、エンジンのシリンダ内のピストンライナー及びピストンリングの潤滑に使用するのに適した任意の粘度指数を有する。実施例では、第1のシリンダ油の粘度指数は59から120である。
【0015】
任意選択で、第1のシリンダ油のBNは、15~160mgKOH/g、または25~150mgKOH/g、または40~140mgKOH/g、または50~120mgKOH/gである。
【0016】
任意選択で、この方法は、エンジン動作パラメータ及び/またはエンジン状態パラメータに基づいて、第1のシリンダ油の目標動粘度を決定することを含む。
【0017】
任意選択で、この方法は、第1の動粘度及び第2の動粘度を含むパラメータセットに基づいて、第1のシリンダ油の目標動粘度に対応する第1の流体対第2の流体の目標比率範囲を決定することと、第1比率が、第1のシリンダ油の目標動粘度に対応する目標比率範囲内に設定されるように、第1の流体と第2の流体とを配合することとを含む。したがって、シリンダ油は、エンジンの動作中、エンジンの動作及び/または状態に適した動粘度を有するように適合される。
【0018】
任意選択で、本明細書に記載される任意の目標比率範囲について、目標比率範囲の上限は、目標比率範囲の下限に等しい。例えば、目標比率範囲は単一の目標比率であり、第1の比率が第1の目標比率となるように配合が実行される。
【0019】
任意選択で、配合は、第1の流体及び第2の流体と、第3の動粘度及び第3のBNを有する第3の流体とを配合して、第1のシリンダ油を生成することを含む。第3の流体は、第1のシリンダ油を生成する比率で第1及び第2の流体と配合される。第3の流体を提供すると、第1のシリンダ油の動粘度とアルカリ度の両方を制御できる。
【0020】
任意選択で、この方法は、エンジン動作パラメータまたはエンジン状態パラメータに基づいて、第1のシリンダ油の目標BNを決定することを含む。
【0021】
任意選択で、この方法は、少なくとも第1のBN、第2のBN、及び第3のBNを含むパラメータセットに基づいて、第1のシリンダ油の目標BNに対応する第1の流体対第2の流体の目標比率範囲を決定することと、第1比率が第1のシリンダ油の目標BNに対応する目標比率に設定されるように、配合することとを含む。実施例では、パラメータセットはまた、第1の流体の動粘度、第2の流体の動粘度、第3の流体の動粘度、及び第3の流体のBNのうちの少なくとも1つを含む。実施例において、決定することは、第1の流体に対する第3の流体の比、及び/または第2の流体に対する第3の流体の比を決定することをさらに含む。例えば、決定することは、第1のシリンダ油を生成するために配合する第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の量を決定することを含む。
【0022】
任意選択で、この方法は、第1の流体と第2の流体を第1の比率とは異なる第2の比率で配合することによって、第1のシリンダ油の動粘度よりも高い動粘度を有する第2のシリンダ油を生成することをさらに含む。船舶用エンジンの動作中、シリンダの潤滑要件は通常、時間の経過とともに変化する。例えば、エンジンが異なる速度で動作する。実施例において、第2のシリンダ油は、シリンダの新たな潤滑要件に適合した動粘度を有する。第2のシリンダ油は、任意の適切な動粘度を有する。実施例において、第2のシリンダ油の動粘度は、エンジンメーカーが推奨する最小動粘度を下回り、例えば、14mm/s以下、または13.5mm/s以下、または13mm/s以下、または12.5mm/s以下、または10mm/s以下である。実施例において、第2のシリンダ油の動粘度は、8mm/s以上、例えば8mm/sから14mm/s、または8mm/sから12.5mm/s、または8mm/sから10mm/sである。他の実施例では、第2のシリンダ油の動粘度は、14mm/sを超え、例えば16.5mm/s以上である(例えば、エンジンメーカーが推奨する動粘度範囲内の動粘度)。
【0023】
任意選択で、第1のシリンダ油は、第2のシリンダ油とは異なるBNを有する。エンジンの動作中に、燃料油の硫黄含有量が変化する可能性があり、例えば、生成される硫黄酸の量が変化することがある。第1のシリンダ油とは異なるBNを有する第2のシリンダ油を提供することは、シリンダに適切なアルカリ度のシリンダ油を提供することを意味することができる。
【0024】
任意選択で、第2のシリンダ油のBNは、15~160mgKOH/g、または25~150mgKOH/g、または40~140mgKOH/g、または50~120mgKOH/gである。
【0025】
任意選択で、この方法は、エンジン動作パラメータまたはエンジン状態パラメータに基づいて、第2のシリンダ油の目標動粘度を決定することを含む。
【0026】
任意選択で、この方法は、第1の動粘度及び第2の動粘度を含むパラメータセットに基づいて、第2のシリンダ油の目標動粘度に対応する第1の流体対第2の流体の目標比率範囲を決定することと、第2比率が、第2のシリンダ油の目標動粘度に対応する目標比率範囲内に設定されるように、第1の流体と第2の流体とを配合することとを含む。
【0027】
任意選択で、この方法は、エンジン動作パラメータまたはエンジン状態パラメータに基づいて、第2のシリンダ油の目標BNを決定することを含む。
【0028】
任意選択で、第2のシリンダ油を生成することは、第1の流体及び第2の流体を、第3の動粘度及び第3のBNを有する第3の流体と配合して、第2のシリンダ油を生成することを含み、この方法は、少なくとも第1のBN、第2のBN、及び第3のBNを含むパラメータセットに基づいて、第2のシリンダ油の目標BNに対応する第1の流体対第2の流体の目標比率範囲を決定することと、第2比率が第2のシリンダ油の目標BNに対応する目標比率に設定されるように、配合することとを含む。実施例において、決定することは、第1の流体に対する第3の流体の比、及び/または第2の流体に対する第3の流体の比を決定することをさらに含む。例えば、決定することは、第2のシリンダ油を生成するために配合する第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の量を決定することを含む。
【0029】
任意選択で、エンジン動作パラメータまたはエンジン状態パラメータは、燃料の硫黄含有量、エンジン負荷、エンジン速度、相対空気湿度、シリンダ鉄摩耗排出量、総鉄摩耗排出量、酸化鉄排出量、シリンダ潤滑剤の残留BN、及びシリンダ油ライナーの温度のうちの少なくとも1つである。
【0030】
任意選択で、第1の流体はシステム油である。実施例において、システム油の動粘度は10~15mm/sである。通常、システム油の動粘度はSAE粘度グレードSAE 30に相当する。例えば、システム油の動粘度は11~12mm/sである。実施例において、システム油は、使用済みシステム油など、少なくとも部分的に使用されたシステム油である。使用済みのシステム油を使用すると、エンジンの作動コストが削減される。他の実施例では、システム油は新しい(バージン)油である。システム油のBNは通常、5~30、例えば5~10である。システム油が新しいシリンダ油である場合などの実施例では、システム油のBNは5~8である。
【0031】
任意選択で、第2の流体は、添加剤パッケージ、新しいシリンダ油、または使用済みのシリンダ油である。
【0032】
任意選択で、第3の流体は基油である。実施例では、基油の動粘度は3~8mm/sである。通常、基油の動粘度はSAE粘度グレードSAE 20に相当する。例えば、基油の動粘度は4~7mm/sである。有利なことに、基油は通常低コストであり、したがって、配合物に基油を含めることにより、シリンダ油の製造コストが削減される。基油のBNは通常、1未満、例えば0.5未満、または0.1未満である。
【0033】
任意選択で、第1の流体、第2の流体、または第3の流体のうちの少なくとも1つは、少なくとも部分的に使用された油、例えば使用済みの油である。使用済みのシステム油を使用すると、エンジンの作動コストが削減される。
【0034】
任意選択で、第1の流体、第2の流体、及び(存在する場合)第3の流体のうちの少なくとも1つはモノグレード油である。例えば、第1の流体、第2の流体、及び(存在する場合)第3の流体のそれぞれはモノグレード油である。任意選択で、第1の流体、第2の流体、及び(存在する場合)第3の流体のうちの少なくとも1つはマルチグレード油である。例えば、第1の流体、第2の流体、及び(存在する場合)第3の流体のそれぞれはマルチグレード油である。
【0035】
任意選択で、第1のシリンダ油及び/または第2のシリンダ油は全損失シリンダ油である。
【0036】
本発明の第2の態様は、船舶用往復動内燃機関を動作させる方法を提供し、この方法は、上述の方法により100℃で動粘度が14mm/s以下のシリンダ油を製造することと、船舶用往復動内燃機関のシリンダにシリンダ油を供給することとを含む。
【0037】
驚くべきことに、本発明者らは、2ストローククロスヘッドエンジンなどの船舶用往復動内燃機関の安全な動作が、14mm/s未満の粘度を有するシリンダ油で維持できることを確認した。
【0038】
任意選択で、シリンダ油の動粘度は、船舶用往復動内燃機関に対してメーカーが推奨する最小シリンダ油動粘度よりも低い。
【0039】
任意選択で、船舶用往復動内燃機関は、60%以下のエンジン負荷で動作している。例えば、エンジンは、エンジンの最大速度よりも有意に低い速度で動作している可能性がある(「低速汽走」と呼ばれることもある)。他の実施例では、船舶用往復動内燃機関は、60%を超える、例えば最大70%または80%のエンジン負荷で動作している。
【0040】
任意選択で、船舶用往復動内燃機関は2ストローククロスヘッドエンジンである。実施例において、2ストローククロスヘッドエンジンは低速エンジンである。
【0041】
本発明の第3の態様は、シリンダ油を調製するための装置を提供し、この装置は、ブレンダーと、第1の動粘度及び第1のBNを有する第1の流体を収容する第1の容器であって、ブレンダーと選択可能に流体連通している第1の容器と、第2の動粘度及び第2のBNを有する第2の流体を収容する第2の容器であって、ブレンダーと選択可能に流体連通している第2の容器と、所望の目標粘度及び目標BNを有するシリンダ油を提供するために、ブレンダーに供給する第1の流体の量及び第2の流体の量を決定するコントローラとを含み、目標動粘度は、100℃で14mm/s以下である。
【0042】
任意選択で、コントローラは、ブレンダーに第1の流体と第2の流体を決定された比率で配合させて(例えば、決定された量の第1の流体と決定された量の第2の流体を配合させる)シリンダ油を生成するように構成されている。
【0043】
任意選択で、装置は船舶に搭載される。
【0044】
任意選択で、第1の容器は第1の流体を含む。第1流体は、例えばシステム油である。
【0045】
任意選択で、第2の容器は第2の流体を含む。第2の流体は、例えば、添加剤パッケージ、新しいシリンダ油、または使用済みのシリンダ油である。
【0046】
任意選択で、装置は、第3の動粘度及び第3のBNを有する第3の流体を収容する第3の容器をさらに備え、第3の容器はブレンダーと選択可能に流体連通している。例えば、第3の容器は、基油などの第3の流体を収容する。
【0047】
任意選択で、装置は、装置で調製されたシリンダ油を貯蔵するための貯蔵タンクを備える。貯蔵タンクは、導管を介してブレンダーに接続され、導管には、貯蔵タンクとブレンダーとの選択可能な流体連通を可能にするバルブ、及び/または生成されたシリンダ油をブレンダーから貯蔵タンクに圧送するためのポンプが任意選択に設けられる。任意選択で、貯蔵タンクは、例えば、貯蔵タンクからシリンダライナーへのシリンダ油の流れを制御するためのバルブ、及び/またはシリンダ油を貯蔵タンクからシリンダライナーに圧送するためのポンプを介して、シリンダのシリンダライナーと選択可能に流体連通している。
【0048】
任意選択で、装置のブレンダーは、生成されたシリンダ油をシリンダライナーに供給するために、シリンダのシリンダライナーと選択可能に流体連通している。
【0049】
任意選択で、コントローラは、メモリ及び1つ以上のプロセッサを備え、第1の容器からブレンダーへの第1の流体の流れを制御するための第1のバルブ及び/または第1の容器からブレンダーに第1の流体を圧送するための第1のポンプと、第2の容器からブレンダーへの第1の流体の流れを制御するための第2のバルブ及び/または第2の容器からブレンダーに第2の流体を圧送するための第2のポンプと、任意選択で、第3の容器からブレンダーへの第3の流体の流れを制御するための第3のバルブ及び/または第3の容器からブレンダーに第3の流体を圧送するための第3のポンプと、ブレンダーとそれぞれに通信可能に接続され、それらを制御する。
【0050】
任意選択で、コントローラは、エンジン状態パラメータ及び/またはエンジン動作パラメータ及び/または流体状態パラメータを示すデータを受信するように構成されている。
【0051】
本発明の第4の態様は、第3の態様に関して上述した装置を備える船舶を提供する。
【0052】
任意選択で、船舶は、コンテナ船、タンカー、乾貨物船、冷凍船などの貨物船である。任意選択で、船舶は旅客船である。
【0053】
任意選択で、船舶はコンテナ船である。
【0054】
本発明の一態様に関連して説明された特徴は、互換性がある範囲で他のあらゆる態様と組み合わせて明示的に開示される。
【0055】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付の図面を参照して例のみとして示される、本発明の好ましい実施形態の以下の説明から明らかとなろう。
【0056】
本発明の実施形態は、ここで添付の図面を参照してほんの一例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】本発明の一実施形態に係る船舶の一例の概略側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るシリンダ油を調製するための例示的な装置の概略図である。
図3】本発明の別の実施形態に係るシリンダ油を調製するための例示的な装置の概略図である。
図4】本発明の一実施形態に係る1つ以上のシリンダ油を生成する方法の一例を示すフローチャートである。
図5】本発明の別の実施形態に係る1つ以上のシリンダ油を生成する方法の一例を示すフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態に係る船舶用往復動内燃機関の動作方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は、一実施例に係る船舶の一例の概略側面図を示す。この実施形態では、船舶はコンテナ船1である。他の実施形態では、船舶は、タンカー、ドライバルク船もしくは冷凍船などの別の形態の貨物船、または旅客船またはシリンダ油を使用する他の船舶であってもよい。
【0059】
船舶1は、船体2、及び船体2の内部の1つ以上のエンジン室3を有する。船舶1は、エンジン室3に配置される4ストロークまたは2ストロークの自己着火燃焼エンジンなど、1つ以上の大型内燃機関4によって動力を供給される。エンジン(複数可)4は、(1つ以上のプロペラなどの)推進機構を駆動する。船舶1はまた、船舶1上の様々な電力消費者に電力及び/または熱を供給する1つ以上の補助エンジン(発電機セットとして知られる)を備えることもできる。船舶1はまた、エンジン(複数可)4にシリンダ油を供給するための、シリンダ油を調製するための装置10、20を備える。装置10、20は、図2または図3に示される装置など、本発明の一実施形態として本明細書に記載されるシリンダ油を調製するための任意の装置であってもよい。
【0060】
エンジン4は、船舶用2ストローク内燃機関である。図1に示される例では、エンジン4は船舶用重燃料油によって動力を供給される。他の例(図示せず)では、船舶用2ストローク内燃機関は、重燃料油以外の燃料、例えば、船舶用軽油、船舶用ディーゼル油、船舶用ガスオイル、液体天然ガス、液体石油ガス、バイオ燃料、メタノール、エタノール、アンモニア、水素、メタン、バイオメタン、またはそれらの組み合わせによって動力を供給される。これらの例では、燃料は天然燃料でも合成燃料でもよい。2ストローク内燃機関は、ディーゼルユニフローエンジンやオットーサイクルエンジンなどの任意の適切なエンジンである。当業者は船舶1の構成要素及びシステムに精通しているため、簡潔にするためにそれ以上の詳細な説明は省略する。
【0061】
図2は、一実施例に係るシリンダ油を調製するための装置10の概略図を示す。装置10は、図1に示す船舶のエンジン4または本明細書に記載の任意の変形例などのエンジンのシリンダのシリンダライナーにシリンダ油を供給するためのものである。
【0062】
大まかに言うと、装置10は、流体を配合してシリンダ油を提供するためのブレンダー110と、第1の動粘度及び第1のBNを有する第1の流体を収容する第1の容器120であって、ブレンダー110と選択可能に流体連通している第1の容器120と、第2の動粘度及び第2のBNを有する第2の流体を収容する第2の容器130であって、ブレンダー110と選択可能に流体連通している第2の容器130と、所望の目標粘度及び目標BNを有するシリンダ油を提供するために、ブレンダー110に供給する第1の流体の量及び第2の流体の量(例えば、第1の流体と第2の流体の比)を決定するコントローラ140とを含み、目標動粘度は、14mm/s以下である。実施例では、コントローラ140はさらに、ブレンダー110に第1の流体と第2の流体を所定の比率で配合させるように構成される。
【0063】
より具体的には、図2では、第1の容器120は、バルブ122を介してブレンダー110に接続されており、バルブ122を介して第1の流体が第1の容器120からブレンダー110に流れる。バルブは、第1の容器120からブレンダー110への第1の流体の流れを制御するためのものである。例えば、バルブは、第1の容器120からブレンダー110への第1の流体の流れを防止または妨げるために閉じることができ、第1の容器120からブレンダー110への第1の流体の流れを可能にするために開くことができる。したがって、第1の容器120は、ブレンダー110と選択可能に流体連通している。任意選択で、バルブ122を操作して、第1の容器120からブレンダー110への第1の流体の制限された流れを可能にすることができる(例えば、バルブ122を「部分的に」閉じるか、または「部分的に」開くことができる)。バルブは手動で、または本明細書でさらに説明するコントローラを介して操作可能である。他の実施例(図示せず)では、第1の容器120は、第1の流体を第1の容器120からブレンダー110に圧送するためのポンプを介してブレンダー110と選択可能に流体連通している。
【0064】
実施例において、第1の容器120は、システム油などの第1の流体を収容する。システム油は、船舶用低速2ストロークディーゼルエンジンのクランクケース潤滑システムに使用するのに適した油である。システム油はバージン油(例えば、クランクケース潤滑システムで使用されていない)であってもよく、その場合、第1の容器120は通常、バージンシステム油を貯蔵するための貯蔵タンクである。あるいは、システム油は、少なくとも部分的に使用されたシステム油、例えばクランクケース潤滑システムの周りに循環されたシステム油である。この場合、実施例では、第1の容器120は、使用済みシステム油を貯蔵するための貯蔵タンクである。このような使用済みシステム油貯蔵タンクは、例えば、クランクケースと流体接続されて、クランクケースから使用済みシステム油を受け取る。実施例では、使用済みシステム油貯蔵タンクは、使用済みシステム油をクランクケースから使用済みシステム油タンクに圧送するためのポンプを介してクランクケースに接続されている。システム油が少なくとも部分的に使用済みシステム油である他の実施例では、第1の容器120はエンジンのクランクケース内にある、またはエンジンのクランクケースである。例えば、第1の容器120は、エンジンのクランクケース内のサンプである。
【0065】
図2では、第2の容器130は、バルブ132を介してブレンダー110に接続されており、バルブ132を介して第2の流体が第2の容器130からブレンダー110に流れる。より具体的には、バルブは、第2の容器130からブレンダー110への第2の流体の流れを制御するためのものである。例えば、バルブは、第2の容器130からブレンダー110への第2の流体の流れを防止または妨げるために閉じることができ、第2の容器130からブレンダー110への第2の流体の流れを可能にするために開くことができる。したがって、第2の容器130は、ブレンダー110と選択可能に流体連通している。任意選択で、バルブ132を操作して、第2の容器130からブレンダー110への第2の流体の制限された流れを可能にすることができる(例えば、バルブ132を「部分的に」閉じるか、または「部分的に」開くことができる)。バルブ132は手動で、または本明細書でさらに説明するコントローラを介して操作可能である。他の実施例(図示せず)では、第2の容器130は、第2の流体を第2の容器130からブレンダー110に圧送するためのポンプを介してブレンダー110に接続される。
【0066】
実施例において、第2の容器130は、添加剤パッケージ、バージンシリンダ油、または少なくとも部分的に使用されたシリンダ油(例えば、ピストン及びシリンダライナーを潤滑するためにシリンダに供給され、その後収集されたシリンダ油)などの第2の流体を収容する。
【0067】
第2の流体が添加剤パッケージである場合、第2の容器130は添加剤パッケージを貯蔵するための貯蔵タンクである。添加剤パッケージは通常、基油と、過塩基性及び/または中性洗剤(金属アルカリ塩)などの1つ以上の添加剤と、場合により他の性能添加剤とを含む。添加剤パッケージは通常、高い動粘度(多くの場合、100℃で50~200mm/s、例えば100mm/s以上)及び高いBN(多くの場合、150~400)を有する。
【0068】
第2の流体がバージンシリンダ油(例えば、ピストン及びシリンダライナーの潤滑にまだ使用されていないシリンダ油)である場合、第2の容器130は、シリンダ油を貯蔵するための貯蔵タンクである。通常、バージンシリンダ油の動粘度は16~21mm/sであり、BNは15~145である。
【0069】
第2の流体が使用済みのシリンダ油(例えば、ある時点でピストン及びシリンダライナーを潤滑するために使用されたシリンダ油)である場合、第2の容器130は、いくつかの実施例では、使用済みのシリンダ油を貯蔵するための貯蔵タンクである。他の実施例では、使用済みのシリンダ油が代わりにまたは追加としてシリンダからブレンダーに直接供給される。この場合、第2の容器130はエンジンのシリンダである。
【0070】
装置10は、装置10を制御するためのコントローラ140を備える。コントローラ140は、メモリ及び1つ以上のプロセッサを備える。メモリ回路は、1つ以上のプロセッサによって実行されると、コントローラに本明細書に記載の方法を実行させる機械可読命令を記憶するように配置されている。実施例において、コントローラ140は、第1の容器120からブレンダー110への第1の流体の流れを制御するための第1のバルブ122と、第2の容器130からブレンダー110への第2の流体の流れを制御するための第2のバルブ132と、ブレンダー110とそれぞれに通信可能に接続され、それらを制御する。いくつかの実施例では、これらの要素の一部またはすべては、コントローラ140以外のエンティティによって制御される。
【0071】
コントローラ140は、シリンダ油を供給するために必要な流体の比率を決定するように構成されている。例えば、コントローラ140は、シリンダ油を供給するためにブレンダ110に送られる第1の流体と第2の流体の量に対応する第1の流体と第2の流体の比率を決定するように構成されている。したがって、コントローラ140は、決定された比率に従って制御された量の第1の流体をブレンダー110に提供するように第1のバルブ122を制御し、決定された比率に従って制御された量の第2の流体をブレンダー110に提供するように第2のバルブ132を制御するように構成されている。この比率は、典型的には質量比である(したがって、コントローラ140は、ブレンダー110に送られる第1の流体の質量と第2の流体の質量を決定するように構成される)が、場合によっては体積比であってもよい(したがって、コントローラ140は、ブレンダー110に送られる第1の流体の体積と第2の流体の体積を決定するように構成されている。
【0072】
実施例では、コントローラ140は、1つ以上の他のエンティティ(図示せず)から受信したデータに基づいて流体の比率を決定するように構成されている。いくつかの実施例では、コントローラ140は、ユーザが目標動粘度などの情報を提供した1つ以上のユーザ入力デバイス(複数可)(図示せず)からデータを受信するように構成される。目標動粘度を示すデータを受信すると、コントローラ140は、例えば、コントローラ140のメモリに記憶されたルックアップテーブルからのデータ(例えば、第1及び第2の流体の動粘度及び/または粘度指数に関する情報を含む)に基づいて、及び/またはコントローラ140のメモリに記憶されたアルゴリズム方程式に基づいて、目標粘度を有するシリンダ油を提供するために必要な流体の比率を決定するように構成される。他の実施例では、コントローラは、図3に関してより詳細に説明される、エンジン状態パラメータまたはエンジン動作パラメータを示すデータを受信するように構成されている。他の実施例では、コントローラは、第1の流体、第2の流体、生成されたシリンダ油、またはそれらの任意の組み合わせに関する流体状態パラメータを示すデータを受信するように構成されている。例えば、コントローラは、第1の流体、第2の流体、生成されたシリンダ油、またはそれらの任意の組み合わせの動粘度、アルカリ度(BN)、及び/または温度を示すデータを受信するように構成される。
【0073】
コントローラ140は、14mm/s以下の目標動粘度を有するシリンダ油を提供するためにブレンダ110に供給する第1の流体の量と第2の流体の量を決定するように構成される。
【0074】
図3は、別の実施例に係るシリンダ油を調製するための装置20の概略図を示す。図3に示される装置20のいくつかの要素は、図2に関連して既に説明された要素に対応し、この場合、参照符号は、図2で使用される参照符号に100を加えたものである。
【0075】
大まかに言うと、装置20は、流体を配合してシリンダ油を提供するためのブレンダー210と、第1の動粘度及び第1のBNを有する第1の流体を収容する第1の容器220であって、ブレンダー210と選択可能に流体連通している第1の容器220と、第2の動粘度及び第2のBNを有する第2の流体を収容する第2の容器230であって、ブレンダー210と選択可能に流体連通している第2の容器230と、第3の動粘度及び第3のBNを有する第3の流体を収容する第3の容器250であって、ブレンダー210と選択可能に流体連通している第3の容器250と、所望の目標粘度及び目標BNを有するシリンダ油を提供するために、ブレンダー210に供給する第1の流体の量、第2の流体の量、及び第3の流体の量を決定するコントローラ240とを含み、目標動粘度は、14mm/s以下である。
【0076】
より具体的には、装置20は、システムを通して流体を圧送するための1つ以上のポンプを備える。1つ以上のポンプは、任意の適切な形態をとることができる。1つ以上のポンプは、流体の流れを制御するためのそれぞれのバルブ(図示せず)とともに任意に設けられる。このようなバルブがない場合、ポンプが各容器220、230、250からブレンダー210への流体の流れを制御するため、1つ以上のポンプは、装置の要素間の選択的な流体連通、例えば、各容器220、230、250とブレンダー210との間の選択的な流体連通に使用される。いくつかの実施例では、動作していないとき(例えば、ポンプがポンピングしていないとき)、ポンプを通る流れまたは逆流が存在する可能性があるが、そのような流れまたは逆流は、ブレンダー210に提供される流体の量に実質的な影響を及ぼさない程度の大きさである。したがって、容器220、230、250のそれぞれは、ブレンダー210と選択可能に流体連通している。
【0077】
この実施例では、装置20は、第1の流体を第1の容器220からブレンダー210に圧送するためのポンプ222を備える。ポンプ222は、本明細書でさらに説明するように、コントローラ240によって選択的に制御される。第1の容器20は、図2に示す装置10の第1の容器に対応し、図3に示す実施例に係る装置内で機能するように必要に応じて適合されている。
【0078】
装置20は、第2の流体を第2の容器230からブレンダー210に圧送するためのポンプ232を備える。ポンプ232は、本明細書でさらに説明するように、コントローラ240によって選択的に制御される。第2の容器230は、図2に示す装置10の第2の容器130に対応し、図3に示す実施例に係る装置内で機能するように必要に応じて適合される。
【0079】
装置20は、第3の流体を第3の容器250からブレンダーに圧送するためのポンプ252を備える。ポンプ232は、本明細書でさらに説明するように、コントローラ240によって選択的に制御される。
【0080】
実施例において、第3の容器250は、基油などの第3の流体を収容する。基油は、潤滑製品を提供するために他の成分と組み合わせるのに通常適した油である。基油の動粘度は、典型的には4~7mm/sである。第3の容器250は、典型的には、基油を貯蔵するための貯蔵タンクである。実施例において、基油はバージン基油である(例えば、機械部品の潤滑に使用されていない)。他の実施例では、基油は使用済みまたはリサイクル基油(例えば、機械部品の潤滑に使用されており、場合によりブレンダー210に供給する前に添加剤及び/または汚染物質が除去されている)である。
【0081】
いくつかの実施例(図示せず)では、第1の流体を圧送するポンプ222及び/または第2の流体を圧送するポンプ232及び/または第3の流体を圧送するポンプ252は省略される。例えば、それらはバルブに置き換えられ、第1の流体及び/または第2の流体及び/または第3の流体は、重力の影響下で、または装置20の別のポンプが動作することによってブレンダー210に流れる。
【0082】
他の実施例(図示せず)では、各容器220、230、250がそれぞれのポンプを介してブレンダー210に接続されるのではなく、各容器220、230、250が1つのポンプを介してブレンダー210に接続され、このポンプは、容器220、230、250のそれぞれに選択的に接続及び切断され、ブレンダー210の1つの入口に流体接続されている。動作中、例えば、ポンプは、第1の容器220に接続され、第2の容器230及び第3の容器250から切断されており、ある量の第1の流体を第1の容器220からブレンダー210に圧送する。その後、ポンプは第1の容器220から切断されて第2の容器230に接続され、ある量の第2の流体を第2の容器230からブレンダー210に圧送する。その後、ポンプは第2の容器230から切断されて第3の容器250に接続され、ある量の第3の流体を第3の容器250からブレンダー210に圧送する。
【0083】
図2に示される実施例と同様に、装置20は、装置20を制御するためのコントローラ240を備える。
【0084】
コントローラ240には、目標動粘度範囲内の動粘度を有するブレンダー210内で調製されたシリンダ油をもたらす、第1の流体(例えば、システム油)、第2の流体(例えば、添加剤パッケージ)、及び任意選択で第3の流体(基油)の必要な割合を決定するアルゴリズムが提供される。例えば、コントローラ240は、コントローラ240のプロセッサ(図示せず)によって実行されると、目標動粘度範囲内の動粘度を有する調製シリンダ油を提供するためにプロセッサに第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の必要な割合を決定させる命令を記憶する非一時的なコンピュータ可読媒体を備える。
【0085】
コントローラ240は、ブレンダー210及びポンプ222、232、252を制御して、適切な量のそれぞれの流体をブレンダー210に送達するように構成されている。例えば、コントローラ240は、コントローラ240によって決定された流体の必要な割合に従って、適切な量の流体がブレンダー210に提供されるように、各ポンプを一定期間動作させるように構成されている。
【0086】
実施例において、コントローラ240は、異なる粘度及び/またはBNを有する第2のシリンダ油を提供するための流体の比率を再計算するように構成されている。例えば、第1のシリンダ油を配合した後、コントローラ240が、シリンダライナーの温度の変化及び/もしくは燃料の硫黄含有量の変化を示すデータ、ならびに/または入力データ生成器(ユーザ入力デバイスまたはセンサなど)からのデータを受信すると、コントローラ240は、変更された条件下でシリンダライナーを潤滑するのに適切な動粘度及び/または適切なBNを有する第2シリンダ油をもたらす、第1の流体、第2の流体、及び(任意選択で)第3の流体の必要な割合を決定するように構成され、この動粘度及び/またはBNが第1のシリンダ油とは異なる。
【0087】
コントローラ240は、エンジンに関する情報を示すデータを生成するための1つ以上の入力データ生成器からエンジンに関する情報を示すデータを受信する。実施例では、データの少なくとも一部は、パラメータを検出するための1つ以上のセンサによって提供される。実施例において、データの少なくとも一部は、例えばユーザインターフェース(図示せず)の一部として提供されるユーザ入力デバイスを用いてデータを入力することによって、ユーザによって提供される情報を含むメモリから提供される。実施例では、データの少なくとも一部は、コントローラ240のメモリに含まれるルックアップテーブルから取得される。
【0088】
コントローラ240は、入力データ生成器アレイ280の1つ以上の入力データ生成器に通信可能に接続され、入力データ生成器からデータを受信する。各入力データ生成器は、エンジン動作パラメータ及び/またはエンジン状態パラメータを示すデータをコントローラ240に提供する。一般に、各入力データ生成器は、エンジン動作パラメータまたはエンジン状態パラメータ(または前記パラメータを示すパラメータ)を感知するためのセンサであるか、あるいはエンジン動作パラメータまたはエンジン状態パラメータを示すデータを含むメモリである。例えば、入力データ生成器は、コントローラ240に通信できるパラメータ(例えば、エンジン4に供給されている硫黄含有燃料)を示すデータが入力されたメモリを備え得る。入力データ生成器またはコントローラ240は、通常、メモリから受信したデータ及びコントローラ240または入力データ生成器に記憶されたルックアップテーブルに基づいて、エンジン動作パラメータまたはエンジン状態パラメータを決定する。
【0089】
図3において、入力データ生成器アレイ280は、燃料の硫黄含有量を示すデータを生成する入力データ生成器282と、エンジン4のエンジン負荷を示すデータを生成する入力データ生成器284と、エンジン4のエンジン速度を示すデータを生成する入力データ生成器286と、シリンダ内の相対空気湿度を示すデータを生成する入力データ生成器288と、シリンダの鉄摩耗放出量を示すデータを生成する入力データ生成器290と、シリンダ潤滑剤残留BNを示すデータを生成する入力データ生成器292と、シリンダ油ライナーの温度を示すデータを生成する入力データ生成器294とを含む。実施例では、入力データ生成器のうちの1つ以上は、ユーザインターフェースに含まれるユーザ入力デバイスである。
【0090】
実施例では、入力データ生成器は、エンジン動作パラメータもしくはエンジン状態パラメータを感知し、そのパラメータを示すデータを生成するためのセンサ、またはエンジン動作パラメータもしくはエンジン状態パラメータに関連するパラメータを感知するためのセンサであり、そのパラメータに基づいてセンサ及び/またはコントローラ240はエンジン動作パラメータもしくはエンジン状態パラメータを決定する。例えば、燃料の硫黄分を示すデータを生成する入力データ生成器282は、例えば燃料油の硫黄分など、エンジン4に供給される燃料油の特性を感知する燃料センサである(例えば、インラインまたはオフラインの蛍光X線油中硫黄分析装置)。相対空気湿度を示すデータを生成する入力データ生成器288は、相対空気湿度を感知するためにエンジン4のシリンダ内またはシリンダの近くに配置された湿度計である。シリンダの鉄摩耗放出量を示すデータを生成する入力データ生成器290は、シリンダ内の鉄摩耗放出を検出するように構成された磁力計である。シリンダ潤滑剤残留BNを示すデータを生成する入力データ生成器292は、シリンダ内のシリンダ油を分析するように構成された赤外分光計である。シリンダ油ライナー温度を示すデータを生成する入力データ生成器294は、エンジン4のシリンダ内またはシリンダの近くに配置されて温度を感知する温度センサ、例えば温度計、熱電対、サーミスタ等である。
【0091】
他の実施例では、コントローラ240は、上述の入力データ生成器の任意の組み合わせに通信可能に接続され、そこからデータを受信する。
【0092】
他の実施例(図示せず)では、コントローラ240は、システム油、添加剤パケット、基油、生成されたシリンダ油、またはそれらの任意の組み合わせに関する流体状態パラメータを示すデータを受信するように構成される。コントローラ240は、流体状態パラメータを示す1つ以上の入力データ生成器に通信可能に接続され、そこからデータを受信する。通常、各入力データ生成器は、流体状態パラメータ(または前記パラメータを示すパラメータ)を感知するためのセンサ、または流体状態パラメータに関する情報を含むメモリである。
【0093】
流体状態パラメータには、流体の動粘度、アルカリ度(BN)、及び/または温度が含まれる。実施例では、動粘度を示すデータを生成する入力データ生成器は、流体の動粘度を検出するように構成された粘度センサである。アルカリ度を示すデータを生成する入力データ生成器は、流体のアルカリ度を検出するように構成された赤外分光計である。流体温度を示すデータを生成する入力データ生成器は、温度計、熱電対、サーミスタなど、流体内または流体近くに配置された温度を感知する温度センサである。
【0094】
実施例において、コントローラ240は、第1及び/または第2のシリンダ油の目標BNを取得または決定するように構成されている。コントローラ240は、情報(例えば、燃料の硫黄含有量を示す入力データ生成器282からのデータ)を受け取り、コントローラ240のメモリに格納されたルックアップテーブルから、またはコントローラ240のメモリに格納されたアルゴリズムを使用することによって目標BNを決定するように構成されている。
【0095】
ブレンダー210は、ブレンダー内で調製されたシリンダ油を貯蔵するための貯蔵タンク260と選択可能に流体連通している。貯蔵タンク260は、例えばデイタンクである。ブレンダー210と貯蔵タンク260との間には、調製されたシリンダ油を貯蔵タンク260に圧送するためのポンプ212が配置されている。コントローラ240は、選択的にポンプ212に、調製されたシリンダ油をブレンダー210から貯蔵タンク260に圧送させるように構成される。他の実施例(図示せず)では、コントローラ240はポンプ212に通信可能に接続されておらず、代わりにポンプ212は別個のコントローラによって制御される。
【0096】
貯蔵タンク260は、エンジン4のシリンダライナー270と選択可能に流体連通している。貯蔵タンク260とシリンダライナー270との間には、貯蔵されたシリンダ油を貯蔵タンク260からシリンダライナー270に圧送するためのポンプ262が配置されている。図3の実施例では、ポンプ262は、配合装置20の一部ではないコントローラによって制御される。他の実施例(図示せず)では、配合装置20のコントローラ240は、ポンプ262に、貯蔵されたシリンダ油を貯蔵タンク260からシリンダライナー270に圧送させるように選択的に構成されている。
【0097】
他の実施例(図示せず)では、貯蔵タンク260が省略され、ブレンダー210がポンプを介してシリンダライナー270に流体接続され、調製された流体がブレンダー210からシリンダライナー270に直接提供されるようになっている。
【0098】
図4は、一実施例に係る船舶用往復動内燃機関用の様々な動粘度を有する1つ以上のシリンダ油を製造する方法を示すフローチャートを示す。方法30は、第1の動粘度及び第1のBNを有する第1の流体を提供すること310と、第1の動粘度とは異なる第2の動粘度及び第2のBNを有する第2の流体を提供すること320と、第1の流体と第2の流体を第1の比率で配合して、100℃で14mm/s以下の動粘度を有する第1のシリンダ油を生成すること330とを含む。実施例において、図4の方法30は、以上で説明したような装置を使用して実行される。
【0099】
配合すること330の比率は、ブレンダー110、210に提供される第1の流体の量と、ブレンダー110、210に提供される第2の流体の量とに依存する。
【0100】
第1の流体を提供すること310は、通常、第1の流体、例えばシステム油を含む第1の容器120、220から制御された量の第1の流体を提供することを含む。制御された量は、流体を第1の比率で配合するのに必要な第1の流体の量に対応する。実施例における供給すること310は、コントローラ140、240によって制御され、例えば、コントローラ140、240は、ポンプに、ある量の第1の流体を第1の容器120、220からブレンダー110、210に圧送させる。他の実施例では、供給すること310は手動で制御され、例えば、オペレータがバルブ122またはポンプ222を操作して、制御された量をブレンダー110、210に供給する。
【0101】
第2の流体を提供すること320は、通常、第2の流体、例えば添加剤パケットを含む第2の容器130、230から制御された量の第2の流体を提供することを含む。制御された量は、流体を第1の比率で配合するのに必要な第2の流体の量に対応する。実施例における供給すること320は、コントローラ140、240によって制御され、例えば、コントローラ140、240は、ポンプに、ある量の第2の流体を第2の容器130、230からブレンダー110、210に圧送させる。他の実施例では、供給すること320は手動で制御され、例えば、オペレータがバルブ132またはポンプ232を操作して、制御された量をブレンダー110、210に供給する。
【0102】
ブレンダー110、210が制御された量の第1の流体及び第2の流体を受け取った場合、第1の比率で配合すること330は、ブレンダー110、210を操作して流体を第1の比率で配合し、それによって100°Cで14mm/s以下の粘度を有する第1のシリンダ油を提供することを含む。
【0103】
図5は、様々な動粘度を有する1つ以上のシリンダ油を製造する方法40の別の実施例を示すフローチャートを示す。図5に示す方法40は、例えば、図3に示す装置を使用して実行することができる。方法40は、エンジン動作パラメータ及び/またはエンジン状態パラメータに基づいて、第1のシリンダ油の目標動粘度を決定すること410を含む。例えば、この方法は、コントローラ140、240が、エンジン動作パラメータ及び/またはエンジン状態パラメータを示すデータを(例えば、入力データ生成器アレイ280の入力データ生成器のいずれかから)受信し、任意選択で、コントローラ140、240のメモリに含まれるデータ及びルックアップテーブルに基づいてパラメータを決定することと、コントローラ140、240がパラメータに基づいて第1のシリンダ油の目標動粘度を決定することとを含む。実施例では、第1シリンダ油の目標動粘度は14mm/s以下である。
【0104】
この方法は、少なくとも第1の流体の粘度、第2の流体の粘度、及び第3の流体の粘度を含むパラメータセットに基づいて、第1のシリンダ油の目標動粘度に対応する第1の流体と第2の流体との目標比率範囲を決定すること420をさらに含む。コントローラ140、240は通常、そのメモリ内に少なくとも第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の動粘度を含む。実施例では、決定すること420は、コントローラ110、210が、そのメモリ内の第1の流体、第2の流体、及び第3の流体の動粘度ならびにルックアップテーブルに基づいて、第1の流体と第2の流体との目標比率範囲を決定することを含む。通常、目標比率範囲を決定することは、ブレンダー110、210に提供する第1の流体の量の範囲を決定することと、ブレンダー110、210に提供する第2の流体の量の範囲を決定することとを含む。任意選択で、決定することは、ブレンダー110、210に提供する第3の流体の量の範囲を決定することも含む。
【0105】
この方法は、少なくとも第1の流体のBN、第2の流体のBN、及び第3の流体のBNを含むパラメータセットに基づいて、第1のシリンダ油の目標BNに対応する第1の流体と第2の流体との目標比率範囲を決定すること430をさらに含む。コントローラ140、240は通常、そのメモリ内に少なくとも第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のBNを含む。実施例では、決定すること430は、コントローラ110、210が、そのメモリ内の第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のBNならびにルックアップテーブルに基づいて、第1の流体と第2の流体との目標比率範囲を決定することを含む。通常、目標比率範囲を決定することは、ブレンダー110、210に提供する第1の流体の量の範囲を決定することと、ブレンダー110、210に提供する第2の流体の量の範囲を決定することとを含む。任意選択で、決定することは、ブレンダー110、210に提供する第3の流体の量の範囲を決定することも含む。
【0106】
方法40はさらに、シリンダ油の目標動粘度及び/またはシリンダ油の目標BNに対応する目標比率範囲内に設定される比率で、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体をブレンダー110、210に提供すること440を含む。典型的には、比率を提供すること440は、流体がブレンダー110、210に供給されると、ブレンダー110、210がその比率の流体を含むように、制御された量の第1の流体、第2の流体、及び第3の流体をブレンダー110、210に提供することを含む。
【0107】
方法40は、シリンダ油が14mm/s以下の動粘度を有するように配合すること450をさらに含む。
【0108】
図6は、船舶用往復動内燃機関を動作させる方法50を示すフローチャートを示す。方法50は、シリンダ油を生成すること510を含む。シリンダ油を生成すること510は、生成されたシリンダ油が100℃で14mm/s以下の動粘度を有するように、上記の方法のいずれかを実行することを含む。方法50はさらに、生成されたシリンダ油を船舶用往復動内燃機関のシリンダ、例えばシリンダのシリンダライナーに供給すること520を含む。供給することは、典型的には、生成されたシリンダ油を貯蔵タンク260(例えば、デイタンク)からシリンダライナー270に圧送することを含む。
【実施例
【0109】
61776kWの出力を有する12RT-flex96C-Bエンジンを、30%の最大連続定格での動作期間を含む、10%の最大連続定格の平均エンジン負荷で53,267時間動作させた。
【0110】
まず、既知のシリンダ油に対応するベースラインデータを提供するために、16.2mm/sの動粘度を有するシリンダ油(「基準シリンダ油」)を使用してエンジンを第1の期間にわたって動作させた。
【0111】
その後、表1に示す粘度を有するシリンダ油を機内で製造し、動作中にエンジンのシリンダライナーに供給した。
【表1】
【0112】
上記のシリンダ油でエンジンを動作させた後、シリンダライナーの研磨摩耗、付着摩耗、及び腐食摩耗を評価した。評価結果を表2に示す。

【表2】
【0113】
表2に示すように、粘度が低下したシリンダ油を使用してエンジンを動作させた第2の期間では、シリンダライナーやピストンリングの摩耗は増加しなかった。
【0114】
燃料消費量は、基準シリンダ油を使用した第1の動作期間と、動粘度が低下したシリンダ油を使用した第2の動作期間について計算された。第2の動作期間の燃料消費量は第1の期間よりも2g/KWH減少し、燃料消費量の1%削減に相当する。
【0115】
他の実施形態では、上述した実施形態の2つ以上を組み合わせてよい。他の実施形態では、一実施形態の特徴を1つ以上の他の実施形態の特徴と組み合わせてよい。
【0116】
本発明の実施形態は、特に図示した実施例を参照して説明してきた。しかしながら、本発明の範囲内で説明した例に対して変形及び修正がなされてもよいことが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】